(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-25
(45)【発行日】2025-04-02
(54)【発明の名称】通信システム、通信装置および通信制御方法
(51)【国際特許分類】
H04L 12/42 20060101AFI20250326BHJP
【FI】
H04L12/42 Z
(21)【出願番号】P 2021010180
(22)【出願日】2021-01-26
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨山 純恵
(72)【発明者】
【氏名】辻本 敬一
【審査官】羽岡 さやか
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-117195(JP,A)
【文献】特開2008-252208(JP,A)
【文献】国際公開第2017/056140(WO,A1)
【文献】特開2008-166990(JP,A)
【文献】特開2011-193200(JP,A)
【文献】特開2002-101107(JP,A)
【文献】特開2008-167008(JP,A)
【文献】特開2014-239477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リングネットワークを構成し、かつ、対向装置との間で1対1の接続トポロジーを構築する複数の通信装置を備え、
前記リングネットワークには閉塞するリンクが設定され、
前記複数の通信装置の各々は、前記リングネットワークの導通の監視のための導通監視フレームを送受信することにより前記リングネットワーク上の対向装置のMAC(Media Access Control)アドレスを学習し、その学習したMACアドレスをリングポートに関連付けたテーブルを記憶し、前記リングネットワーク上でデータフレームを転送する際には、
収容するクライアントのMACアドレスを学習することなく、前記テーブルに基づいて前記データフレームを転送する、通信システム。
【請求項2】
前記複数の通信装置の各々は、前記対向装置に転送すべき前記データフレームをクライアントポートから受信すると、前記対向装置との間の通信のために前記クライアントポートに割り当てられたVLAN(Virtual LAN) IDを含むVLANタグを前記データフレームに付与する、請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記複数の通信装置の各々は、前記リングネットワークの前記導通の監視のために、前記VLAN IDに属するクライアントポートのうちの1つにUP MEP(Maintenance association End Point)を設定して、Ethernet OAM(Operations,Administration,Maintenance)に従う導通監視フレームの送受信を実行する、請求項2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記リングネットワークの導通の監視において前記リングネットワーク上の障害が検出された場合には、前記閉塞するリンクが開放されるとともに、前記複数の通信装置が、導通監視フレームの送受信による前記MACアドレスの再学習を実行して、前記テーブルにおける前記MACアドレスと前記リングポートとの間の関連付けを更新する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項5】
前記複数の通信装置のうちの少なくとも2つの通信装置は、運用系と待機系とを含む冗長化構成を有し、
前記運用系による導通監視フレームの送受信において前記リングネットワークの前記導通が不可の場合には、前記待機系の前記テーブルに基づいて、前記リングネットワーク上で前記データフレームを転送する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項6】
前記複数の通信装置は、
集約ノードに対応する、少なくとも1つの通信装置と、
クライアント収容ノードに対応する、少なくとも1つの通信装置とを含み、
前記集約ノードと前記クライアント収容ノードとは、前記集約ノードと前記クライアント収容ノードとをつなぐ論理経路であるサービスパスを構成する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項7】
前記通信システムは、
集約ノードに対応する、少なくとも1つの通信装置と、
各々がクライアント収容ノードに対応する、複数の通信装置とを含む、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項8】
リングネットワーク上に設けられて、前記リングネットワーク上の対向装置との間で1対1の接続トポロジーを構築する通信装置であって、
前記リングネットワークの導通の監視のための導通監視フレームを送受信することにより前記対向装置との間の導通を監視する監視部と、
前記導通の監視結果に基づいて、前記対向装置のMAC(Media Access Control)アドレスを学習し、その学習したMACアドレスをリングポートに関連付けたテーブルを記憶するMACアドレス学習部と、
前記学習した前記対向装置のMACアドレスと前記リングポートとを用いて前記通信装置と前記対向装置とをつなぐ論理経路であるサービスパスを設定するサービスパス設定部と、
前記リングネットワーク上でデータフレームを転送する際には、
収容するクライアントのMACアドレスを学習することなく、前記サービスパス設定部によって設定されたサービスパスに従って、前記データフレームを転送するサービスパス転送部とを備える、通信装置。
【請求項9】
対向装置との間で1対1の接続トポロジーを構築する複数の通信装置によって構成され、かつ、閉塞するリンクが設定されたリングネットワークにおける、通信制御方法であって、
前記複数の通信装置の各々が、前記リングネットワークの導通の監視のための導通監視フレームを送受信することにより、前記対向装置のMAC(Media Access Control)アドレスを学習するステップと、
前記複数の通信装置の各々に、MACアドレスをリングポートに関連付けたテーブルを、学習した前記MACアドレスにより更新させるステップと、
前記テーブルに基づいて、前記リングネットワーク上でデータフレームを転送する際には、
前記複数の通信装置の各々が収容するクライアントのMACアドレスを学習することなく、前記データフレームを転送するステップとを備える、通信制御方法。
【請求項10】
リングネットワーク上に設けられて、前記リングネットワーク上の対向装置との間で1対1の接続トポロジーを構築する通信装置による、通信制御方法であって、
前記対向装置との間の導通を、導通監視フレームを送受信することにより監視するステップと、
前記導通の監視結果に基づいて、前記対向装置のMAC(Media Access Control)アド
レスを学習するステップと、
前記MACアドレスと前記通信装置のリングポートと関連付けたテーブルを、学習したMACアドレスによって更新するステップと、
前記通信装置と前記対向装置とをつなぐ論理経路であるサービスパスを設定するステップと、
前記リングネットワーク上でデータフレームを転送する際には、
前記通信装置が収容するクライアントのMACアドレスを学習することなく、設定された前記サービスパスに従って前記データフレームを転送するステップとを備える、通信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信システム、通信装置および通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のノードをリング状に接続して構成されたリングネットワークが知られている。たとえばITU-T(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector) G.8032(非特許文献1)は、Ethernet(登録商標)リングプロテクション(ERP)を規定する。
【0003】
ITU-T G.8032 ERPでは、イーサネット(登録商標)によるリング構成のネットワークにおいて、閉塞するリンク(Ring Protection Link)を設定することによって、経路のループが発生することを抑止する。リングを構成するノードの間で導通が監視され、導通監視において障害が検出された場合には、リンクの閉塞を解除するとともに、各ノードにおいて学習したMAC(Media Access Control)アドレスを記録するMACアドレス学習テーブル(FDB: Filtering Data Baseとも呼ばれる)をフラッシュする。次に、各ノードは、パケットをフラッディングすることによりMACアドレスを再学習して、その学習したMACアドレスを用いてFDBを更新する。リンク障害時にMACアドレスを再学習することによって、フレームの転送経路を切り替えることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】ITU-T G.8032/Y.1344(03/2020) "Ethernet ring protection switching"、[online]、[2020年12月10日検索]、インターネット<URL:https://www.itu.int/rec/dologin_pub.asp?lang=e&id=T-REC-G.8032-202003-I!!PDF-E&type=items>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
たとえばメトロネットワークあるいはバックボーンネットワークのように、多数のユーザ(クライアント)のデータが通過するネットワークがある。このようなネットワークにおいて、各ノードが、そのノードの収容するクライアントのMACアドレスを学習すると仮定した場合、膨大なFDBが必要となる。
【0006】
このような問題を解決可能な1つの方法として、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.1ahにおいて規定されるPBB(Provider Backbone Bridge)がある(IEEEは登録商標)。IEEE802.1ah PBBでは、各クライアントのデータを、いわゆるMAC-in-MACという方式に従ってカプセル化する。MAC-in-MAC方式では、各ノードが、クライアントのMACアドレスを隠蔽して、メトロネットワークあるいはバックボーンネットワークを構成するノードのMACアドレスのみを学習する。したがって、各ノード内でのMACアドレス学習数を大幅に削減することが可能となる。
【0007】
PBBエッジノードからバックボーンネットワークへのフレーム送信では、PBBヘッダの宛先アドレス(B-MAC DA)を用いて、エッジノードの出力ポートを決定する。通常のブリッジでは、B-MAC DAをキーとしてFDBを検索することによって、フレームの出力先が決定される。しかし、PBB機能をサポートするスイッチには、PBBエッジノードとして動作させる場合に、カプセル化後の出力ポートの決定処理においてFDBを検索せず、FDBとは独立したテーブルを参照して出力先を決定するものがある。このような機能を有する装置の場合、ITU-T G.8032で規定されたリンク障害時の処理を実行するのみでは、自動的に出力ポートを決定することができない。
【0008】
一方、レイヤ2でのMACアドレス学習に依存せずにフレームの出力先を決定する方式も提示されている。たとえばRFC(Request For Comments)7623あるいはRFC6329は、BGP(Border Gateway Protocol)あるいはIS-IS(Intermediate System to Intermediate System)などのルーティングプロトコルを拡張して、B-MACやI-SIDの情報を制御プレーン上で伝達することにより、レイヤ2でのMACアドレス学習によらずに出力先を決定する方式を提示する。しかし、リングを構成するノードがBGP/IS-ISをサポートしていなければならないため、ノードに求められる要件が増えるといった問題がある。
【0009】
本開示の目的は、クライアントMACアドレスの学習を不要とし、かつ、特定の方式に依存することなく、リングネットワークを構築するノード間でのフレームの転送を可能にする通信システム、通信装置、および通信制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の通信システムは、リングネットワークを構成し、かつ、対向装置との間で1対1の接続トポロジーを構築する複数の通信装置を備える。リングネットワークには閉塞するリンクが設定される。複数の通信装置の各々は、リングネットワークの導通を監視して、リングネットワーク上の対向装置のMAC(Media Access Control)アドレスを学習し、その学習したMACアドレスをリングポートに関連付けたテーブルを記憶し、前記テーブルに基づいて、リングネットワーク上でフレームを転送する。
【0011】
本開示の通信装置は、リングネットワーク上に設けられて、リングネットワーク上の対向装置との間で1対1の接続トポロジーを構築する通信装置であって、対向装置との間の導通を監視する監視部と、導通の監視結果に基づいて、対向装置のMAC(Media Access Control)アドレスを学習し、その学習したMACアドレスをリングポートに関連付けたテーブルを記憶するMACアドレス学習部と、通信装置と対向装置とをつなぐ論理経路であるサービスパスを設定するサービスパス設定部と、サービスパス設定部によって設定されたサービスパスに従ってフレームを転送するサービスパス転送部とを備える。
【0012】
本開示の通信制御方法は、対向装置との間で1対1の接続トポロジーを構築する複数の通信装置によって構成され、かつ、閉塞するリンクが設定されたリングネットワークにおける、通信制御方法であって、複数の通信装置の各々に、リングネットワークの導通の監視を通じて、対向装置のMAC(Media Access Control)アドレスを学習させるステップと、複数の通信装置の各々に、MACアドレスをリングポートに関連付けたテーブルを、学習したMACアドレスにより更新させるステップと、テーブルに基づいて、リングネットワーク上でフレームを転送するステップとを備える。
【0013】
本開示の通信制御方法は、リングネットワーク上に設けられて、リングネットワーク上の対向装置との間で1対1の接続トポロジーを構築する通信装置による、通信制御方法であって、対向装置との間の導通を監視するステップと、導通の監視結果に基づいて、対向装置のMAC(Media Access Control)アドレスを学習するステップと、MACアドレスと通信装置のリングポートと関連付けたテーブルを、学習したMACアドレスによって更新するステップと、通信装置と対向装置とをつなぐ論理経路であるサービスパスを設定するステップと、設定されたサービスパスに従ってフレームを転送するステップとを備える。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、クライアントMACアドレスの学習を不要とし、かつ、特定の方式に依存することなく、リングネットワークを構築するノード間でのフレームの転送が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に従う通信システムの構成例を示した図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施の形態に係る通信装置の構成を説明するためのブロック図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施の形態に係るデータフレームの転送における、VLANタグの付与および削除を説明するための図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施の形態に係る通信システムの通常時の動作を説明するフローチャートである。
【
図5】
図5は、リングの構成が変更された場合における、ノードの動作を説明するためのフローチャートである。
【
図6】
図6は、本開示の実施の形態に係る通信システムの冗長構成の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0017】
(1) 本開示の実施の形態に係る通信システムは、リングネットワークを構成し、かつ、対向装置との間で1対1の接続トポロジーを構築する複数の通信装置を備える。リングネットワークには閉塞するリンクが設定される。複数の通信装置の各々は、リングネットワークの導通を監視して、リングネットワーク上の対向装置のMAC(Media Access Control)アドレスを学習し、その学習したMACアドレスをリングポートに関連付けたテーブルを記憶し、前記テーブルに基づいて、リングネットワーク上でフレームを転送する。
【0018】
この構成によれば、各通信装置は、学習した対向装置のMACアドレスと、当該通信装置のリングポートとを関連付けたテーブルを記憶する。このテーブルに基づいてフレームの転送先が決定される。したがって、各通信装置に収容されるクライアントのMACアドレスを学習する必要がない。さらに、FDBを利用してフレームの出力先を決定することができるので、特定の方式(たとえばFDBとは別のテーブルを用いてフレームの出力先を決定する)に依存することなく、フレームの転送が可能になる。
【0019】
(2) 上記(1)に記載の通信システムにおいて、複数の通信装置の各々は、対向装置に転送すべきフレームをクライアントポートから受信すると、対向装置との間の通信のために割り当てられたVLAN(Virtual LAN) IDを含むVLANタグをフレームに付与する。
【0020】
この構成によれば、特定の方式に限定されることなく、フレームの転送が可能になる。たとえば、本開示の実施の形態は、IEEE802.1ahにおいて規定されるPBBに適用可能であるが、当該PBBにのみ適用されるものと限定されない。ただし、上記構成によれば、IEEE802.1ah PBBにおけるカプセル化よりも簡単にフレームの転送を実現することができる。
【0021】
(3) 上記(2)に記載の通信システムにおいて、複数の通信装置の各々は、リングネットワークの導通の監視のために、VLAN IDに属するクライアントポートのうちの1つにUP MEP(Maintenance association End Point)を設定して、Ethernet OAM(Operations,Administration,Maintenance)に従うメッセージの送受信を実行する。
【0022】
この構成によれば、各通信装置においてUP MEPを使用することにより、スイッチ機能を経由してCCMフレームが転送される。したがって、通信装置のどのリングポートに対向装置が接続されていても、MACアドレスを学習することができる。したがって、各通信装置において、フレームを出力すべきリングポートを決定することができる。
【0023】
(4) 上記(1)~(3)のいずれかに記載の通信システムにおいて、リングネットワークの導通の監視においてリングネットワーク上の障害が検出された場合には、閉塞するリンクが開放されるとともに、複数の通信装置が、MACアドレスの再学習を実行して、テーブルにおけるMACアドレスとリングポートとの間の関連付けを更新する。
【0024】
この構成によれば、リングネットワーク上に障害が発生した場合において、MACアドレスの再学習により、フレームを出力すべきリングポートを再決定することができる。したがって、リングネットワークの障害発生時に、フレームの転送経路を切り替えることができる。
【0025】
(5) 上記(1)~(4)のいずれかに記載の通信システムにおいて、複数の通信装置のうちの少なくとも1つの通信装置は、運用系と待機系とを含む冗長化構成を有し、運用系によるリングネットワークの導通が不可の場合には、待機系のテーブルに基づいて、リングネットワーク上でフレームを転送する。
【0026】
この構成によれば、通信装置が冗長機能を有するので、運用系に障害が生じた際に、フレームの転送のためのポートを待機系側に切り替えることができる。したがって、フレームの転送を継続することができる。
【0027】
(6) 上記(1)~(5)のいずれかに記載の通信システムにおいて、複数の通信装置は、集約ノードに対応する、少なくとも1つの通信装置と、クライアント収容ノードに対応する、少なくとも1つの通信装置とを含み、集約ノードとクライアント収容ノードとは、集約ノードとクライアント収容ノードとをつなぐ論理経路であるサービスパスを構成する。
【0028】
上記によれば、集約ノードおよびクライアント収容ノードの各々は、自己に対向するノードのMACアドレスのみに基づいて、サービスパスを利用した伝送が可能となる。したがって、クライアントのMACアドレスを学習する必要がなくなるので、MACアドレス学習テーブルのサイズを抑制することができる。
【0029】
(7) 上記(1)~(6)のいずれかに記載の通信システムは、集約ノードに対応する、少なくとも1つの通信装置と、各々がクライアント収容ノードに対応する、複数の通信装置とを含む。
【0030】
上記によれば、各クライアント収容ノードにおいて収容されたフレームを、そのフレーム内のクライアントMACアドレスを参照することなく転送することができる。
【0031】
(8) 本開示の実施の形態に係る通信装置は、リングネットワーク上に設けられて、リングネットワーク上の対向装置との間で1対1の接続トポロジーを構築する通信装置であって、対向装置との間の導通を監視する監視部と、導通の監視結果に基づいて、対向装置のMAC(Media Access Control)アドレスを学習し、その学習したMACアドレスをリングポートに関連付けたテーブルを記憶するMACアドレス学習部と、通信装置と対向装置とをつなぐ論理経路であるサービスパスを設定するサービスパス設定部と、サービスパス設定部によって設定されたサービスパスに従ってフレームを転送するサービスパス転送部とを備える。
【0032】
この構成によれば、通信装置は、対向装置のMACアドレスを学習して、そのMACアドレスと、通信装置のリングポートとを関連付ける。これにより、リングネットワーク上の2つの通信装置が1対1の接続トポロジーを構築する際に、クライアントMACアドレスの学習が不要となる。さらに、通信装置は、サービスパスを設定して、そのサービスパスに沿ってフレームを転送する。したがって、特定の方式(たとえばFDBとは別のテーブルを用いてフレームの出力先を決定する)に依存することなく、リングネットワークを構築するノード間でのフレームの転送が可能になる。
【0033】
(9) 本開示の実施の形態に係る通信制御方法は、対向装置との間で1対1の接続トポロジーを構築する複数の通信装置によって構成され、かつ、閉塞するリンクが設定されたリングネットワークにおける、通信制御方法であって、複数の通信装置の各々に、リングネットワークの導通の監視を通じて、対向装置のMAC(Media Access Control)アドレスを学習させるステップと、複数の通信装置の各々に、MACアドレスをリングポートに関連付けたテーブルを、学習したMACアドレスにより更新させるステップと、テーブルに基づいて、リングネットワーク上でフレームを転送するステップとを備える。
【0034】
この構成によれば、クライアントMACアドレスの学習が不要とし、かつ、特定の方式に依存することなく、リングネットワークを構築するノード間でのフレームの転送が可能になる。
【0035】
(10) 本開示の実施の形態に係る通信制御方法は、リングネットワーク上に設けられて、リングネットワーク上の対向装置との間で1対1の接続トポロジーを構築する通信装置による、通信制御方法であって、対向装置との間の導通を監視するステップと、導通の監視結果に基づいて、対向装置のMAC(Media Access Control)アドレスを学習するステップと、MACアドレスと通信装置のリングポートと関連付けたテーブルを、学習したMACアドレスによって更新するステップと、通信装置と対向装置とをつなぐ論理経路であるサービスパスを設定するステップと、設定された前記サービスパスに従ってフレームを転送するステップとを備える。
【0036】
この構成によれば、クライアントMACアドレスの学習が不要とし、かつ、特定の方式に依存することなく、リングネットワークを構築するノード間でのフレームの転送が可能になる。
【0037】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0038】
図1は、本開示の一実施形態に従う通信システムの構成例を示した図である。
図1に示すように、本開示の一実施形態に従う通信システム100は、複数のノードを有する。各ノードには、本開示の実施形態に係る通信装置が設けられる。
図1には、通信装置10H、10G、10A、10Bが例示される。通信装置10H、10G、10A、10Bは、たとえばL2(レイヤ2)スイッチであるが特に限定されない。
【0039】
通信システム100において、複数のノードは、クライアントのデータを収容する少なくとも1つのクライアント収容ノードと、クライアントのデータを集約する少なくとも1つの集約ノードにより構成される。
図1に示した例では、通信装置10A、10B、10Gがクライアント収容ノードに相当し、通信装置10Hが集約ノードに相当する。
図1において、通信装置10A、10B、10Gをそれぞれ「クライアント収容ノードA」、「クライアント収容ノードB」、「クライアント収容ノードG」と表わすとともに、通信装置10Hを「集約ノードH」と表わす。また、以後の説明においても、通信装置を「ノード」と呼ぶ場合もある。
【0040】
複数の通信装置(ノード)は、上述したITU-T G.8032 ERPに従ってリング状に接続される。リングネットワークを構成するために、各通信装置は、リングポートであるポートP0,P1を有する。経路のループを防ぐために、閉塞するリンク(RPL: Ring Protection Link)が設定される。たとえば
図1に示すように、通常時には、通信装置10HのポートP0と通信装置10G(クライアント収容ノードG)のポートP1との間のリンクが閉塞される。ただし、閉塞するリンクは、通信システム100の要件などに基づいて、任意に設定することができる。
【0041】
クライアントのデータを収容するために、各通信装置(ノード)は、クライアントポートC0を有する。通信装置10A、10B、10GのクライアントポートC0には、それぞれネットワーク機器20A,20B,20Gが接続される。たとえばネットワーク機器20A,20B,20Gは、集合型メディアコンバータであるが、特に限定されない。集合型メディアコンバータは、単体型メディアコンバータに対向接続され、単体型メディアコンバータは、LANなどのクライアントネットワークに接続される。
図1に示す例では、ネットワーク機器31,32が単体型メディアコンバータに該当し、クライアントネットワーク4が、当該単体型メディアコンバータに接続されるネットワークに該当する。
【0042】
通信装置10HのクライアントポートC0は、たとえばコアルータあるいはL3(レイヤ3)ルータなどのネットワーク機器20Hに接続される。ネットワーク機器20Hは、広域ネットワーク1(たとえばデータセンタあるいはクラウドなどのネットワーク)に接続される。
【0043】
拠点間の接続サービスあるいはアクセスサービスなどでは、クライアントの拠点とサービス提供者のセンターとの間で、論理的に1対1(P2P:ポイントツーポイント)型の接続によるE-LINE構成が採られる場合がある。ネットワークの仮想化あるいはネットワーク機器の分散化において、クライアントのデータをクラウド上のサーバに転送し、クラウド内で転送制御処理を行うような場合も同様である。
【0044】
本開示の実施の形態においても通信システム100上のクライアント収容ノードは、集約ノードと通信を行うことによって、E-LINEによる1対1型の接続トポロジーを構成する。通信システム100上に複数の集約ノードが有る場合には、クライアント収容ノードは、複数の集約ノードのうちのいずれか1つの集約ノードとの通信によって、1対1型の接続トポロジーを構成する。
【0045】
本開示の実施の形態では、同一の集約ノードに接続されるクライアントポートを1つのVLAN(Virtual Local Area Network)にグルーピングする。グルーピングされたポートの1つに、UP MEP(Maintenance association End Point;管理終端ポイント)を設定して、対向する2つのノード間で、Ethernet OAM(Operations,Administration,Maintenance)に従う定常監視(Continuity Check)を実行する。具体的には、対向する2つのノード間で定期的にメッセージ(CCM: Continuity Check Message)を送受信する。これにより、各ノードは対向ノードのMACアドレスを、リングポート0(ポートP0)あるいはリングポート1(ポートP1)のいずれかで学習する。各ノードは、MACアドレスの学習結果をFDBとして保持する。FDBは、対向ノードのMACアドレスと、当該対向ノードとの間での送受信のための自ノードのリングポートとを関連付けたデータベースである。このように、各ノード(通信装置)においてUP MEPを使用することにより、スイッチ機能を経由してCCMフレームが転送される。したがって、通信装置のどのリングポートに対向装置が接続されていても、MACアドレスを学習することができる。これにより各通信装置において、フレームを出力すべきリングポートを決定することができる。
【0046】
クライアント収容ノードと集約ノードとの間のEthernetリング上の通信は、IEEE802.1QあるいはIEEE802.1adによって規定されるVLAN(Virtual Local Area Network)タグをデータフレームに付与して行われる。また、各ノードは、VLAN ID(VID)ごとに、入力ポート(Inport)、その入力ポートに割り当てられるトランク(Outport)および出力ポート(Member)を関連付けるためのテーブル(本開示では「転送テーブル」と称する)を有する。
【0047】
したがって、本開示の実施の形態において、通信システムは、Ethernetリング上で付与されたVLAN-IDによってデータフレームを識別および転送可能な論理経路を形成することができる。この論理経路は、1対1の接続トポロジーを集約ノードとクライアント収容ノードとの間で実現する。この論理経路は、広域ネットワークとクライアントネットワークとを接続する論理経路でもある。当該論理経路におけるデータフレームの転送では、データフレームに含まれるクライアントのMACアドレスを参照する必要がない。これにより、本開示の実施の形態では、特定の方式に限定されることなく、リングネットワーク上でフレームの転送が可能になる。本開示の実施の形態では、この論理経路を「サービスパス」と呼ぶ。
【0048】
サービスパスにおけるデータフレームの転送において、各ノードは、データフレームに含まれるクライアントのMACアドレスを参照する必要がない。したがって各ノードは、収容するクライアントのMACアドレスを学習することを要求されない。これにより、各ノードが有するFDBのサイズが大きくなることを抑えることができる。
【0049】
以下に、
図1に示した通信システム100におけるフレームの転送について説明する。なお、VIDの値は、本開示の実施の形態を分かりやすく説明するために用いた例であり、本開示の実施の形態を限定することを意図しない。
【0050】
(1) クライアント収容ノードAから集約ノードHへの転送
クライアント収容ノードAは、MACアドレスの学習により、MACアドレス学習テーブル(FDB(A))を更新する。クライアント収容ノードAは、クライアントからのデータを、イーサネットフレームの形式で、ポートC0において受信する。クライアント収容ノードAは、MACアドレス学習テーブル(FDB(A))および転送テーブルに基づいて、このデータをポートP0から出力すると決定して、データフレームにS-TAGを付与する。S-TAGに含まれるSVID(Service provider VLAN ID)の値は、クライアントに応じて設定された値であり、この例では101~110のいずれかである。そして、クライアント収容ノードAは、そのデータフレームをポートP0から送信する。フレームは途中のノードを中継して集約ノードHへ転送される。
【0051】
(2) クライアント収容ノードBから集約ノードHへの転送
クライアント収容ノードAと同様に、クライアント収容ノードBは、MACアドレスの学習により、MACアドレス学習テーブル(FDB(B))を更新する。クライアント収容ノードBは、クライアントからのデータをポートC0において受信する。クライアント収容ノードBは、MACアドレス学習テーブル(FDB(B))および転送テーブルに基づいて、このデータをポートP0から出力すると決定し、データフレームにS-TAGを付与する。この例では、S-TAGに含まれるSVIDの値は、201~210のいずれかである。そして、クライアント収容ノードBは、そのデータフレームをポートP0から送信する。
【0052】
クライアント収容ノードBからのデータフレームは、クライアント収容ノードAのポートP1に入力される。クライアント収容ノードAは、SVIDの値に基づき、そのデータフレームを転送すべきと判断して、ポートP0から、データフレームを出力する。クライアント収容ノードAと集約ノードHとの間のノードも同様に、データフレームを転送する。したがって、データフレームは集約ノードHへ転送される。
【0053】
(3) クライアント収容ノードGから集約ノードHへの転送
クライアント収容ノードGから集約ノードHへの転送は、基本的に、クライアント収容ノードAまたはクライアント収容ノードBから集約ノードHへの転送と同じである。なお、クライアント収容ノードGにおいて、S-TAGに含まれるSVIDの値は、301~310のいずれかである。クライアント収容ノードGは、そのデータフレームをポートP0から送信する。データフレームは、途中のノードを経由して集約ノードHへと転送される。
【0054】
(4) 集約ノードHからクライアント収容ノードA,B,Gへの転送
集約ノードHは、ポートC0において、広域ネットワーク1からフレームを受信する。集約ノードHは、MACアドレス学習テーブル(FDB(H))および転送テーブルを参照して、このデータフレームをポートP0に転送すると決定する。そして、集約ノードHは、そのデータフレームをポートP0から送信する。
【0055】
各クライアント収容ノードは、ポートP0において受信したフレームに付与されたSVIDが自己のクライアントのVLAN IDと一致する場合には、そのフレームをクライアントポートC0に転送する。一方、クライアント収容ノードは、フレームのSVIDが自己のクライアントのVLAN IDと一致しない場合は、そのフレームをポートP1から出力することによって、データフレームを中継する。
【0056】
(5)リングネットワーク上で障害が発生した場合
Ethernetリング上で障害が発生した場合には、RPLの閉塞状態が解除され、各ノードにおいてFDBがクリア(フラッシュ)される。その直後にCCMフレームがフラッディング(受信ポート以外のすべてのポートに転送)される。これによって、各ノードでは、新たにMACアドレスの学習が行われて、出力ポートが再設定される。すなわちFDBおよび転送テーブルが更新される。すなわち、通信システム100に、新しいサービスパスが形成される。通信システム100は、このサービスパスを利用してフレームを転送する。
【0057】
図2は、本開示の実施の形態に係る通信装置の構成を説明するためのブロック図である。
図2に示す構成は、通信装置10H、10G、10A、10Bに共通である。したがって、
図2では、通信装置10H、10G、10A、10Bを、まとめて「通信装置10」と表記する。なお、本開示の実施の形態に係る通信装置は、ハードウェアによる設定あるいはソフトウェアによる設定によって、集約ノードとして機能させることができるだけでなく、クライアント収容ノードとしても機能させることができる。
【0058】
本開示の実施の形態に係る通信装置10は、ポートP0(リングポート0)と、ポートP1(リングポート1)と、N個(Nは1以上の任意の整数)のクライアントポートC1,C2,・・・,Cnと、フレーム中継部50と、導通監視制御部61と、Ethernetリング制御部62と、サービスパス設定部63とを含む。フレーム中継部50は、VLAN処理部51と、制御フレーム処理部52と、MACアドレス学習部53と、サービスパス転送部54とを含む。
【0059】
ポートP0,P1(リングポート0およびリングポート1)は、隣接するリングノードと接続することによって、Ethernetリングを構成するポートである。クライアントポートC1~Cnの各々は、データフレームを伝送するための信号であるクライアント信号(クライアント信号1、クライアント信号2、・・・クライアント信号N)を送受信するポートであり、
図1に示したクライアントポートC0に対応する。
【0060】
フレーム中継部50は、イーサネットフレームを転送するスイッチとして機能する。詳細に説明すると、VLAN処理部51は、サービスパスのVLAN ID(SVID)付与、VLAN IDの削除および、イーサネットフレームの透過処理を担う。制御フレーム処理部52は、導通監視およびEthernetリング制御を行うための制御フレームの送受信を担う。MACアドレス学習部53は、リングノードのMACアドレスを学習して、その学習したMACアドレスをMACアドレス学習テーブル(FDB)56として記憶する。サービスパス転送部54は、クライアントポートとの間でのクライアント信号の送受信を担うとともに、リングポートに接続されたサービスパスを介してクライアント信号を転送する。
【0061】
導通監視制御部61は、Ethernet OAM CCMフレームを送受信して、隣接するノードおよびサービスパスを終端するノードとの間で定常的な導通監視を行う。Ethernetリング制御部62は、ITU-T G.8032 ERPに準拠したEthernetリング・プロテクション機能を制御する。サービスパス設定部63は、導通監視制御部61からの導通可否の情報、Ethernetリング制御部62からのトポロジー変化の情報およびMACアドレス学習部からのリングノードの学習状態変化のイベントに基づいて転送テーブルを更新する。さらに、サービスパス設定部63は、転送テーブルの更新内容にしたがって、サービスパス転送部54の設定を行う。
【0062】
図3は、本開示の実施の形態に係るデータフレームの転送における、VLANタグの付与および削除を説明するための図である。
図3に示すように、ノード10_1(自ノード)は、クライアントポートC1~Cnのいずれか(たとえばクライアントポートC1)においてデータフレームを受信すると、そのデータフレームにVLAN ID(Outer VID)を付与する。そして、ノード10_1はリング上にフレームを送信する。
【0063】
図3には、フレームの概略構成が示されている。「DA」は宛先アドレス、「SA」は送信元アドレス、「DATA」はユーザデータ、「FCS」はフレームチェックシーケンスを表わす。また、VLANタグは、TPID(タグプロトコル識別子、IEEE802.1adでは「0x88a8」)およびVID(この例では101)を含む。
【0064】
ノード10_1以外の他のノードは、自ノードに収容するVLANのデータフレームとは異なるフレームをリングポート間で転送する。したがって、データフレームは、ノード10_2~10_Mの間で転送されて、集約ノードであるノード10_Nに到達する。ノード10_Nでは、リングポート0(ポートP0)において受信したデータフレームに対して、最外部のVLANタグを削除する。ノード10_Nでは、クライアントデータのVLAN-IDに基づいて、ポートA1~Amの中から出力すべきポートを決定して、その決定されたポートからデータフレームを転送する。
【0065】
図4は、本開示の実施の形態に係る通信システムの通常時の動作を説明するフローチャートである。動作が開始されると、まずステップS11において、各ノード(通信装置)は、対向するサービスパス終端ノードのMACアドレスを設定する。次にステップS12において、各ノードは、対向するサービスパス終端ノードに対して導通監視フレーム(CCM)の送信を開始する。これにより、ステップS13において、各ノードは、導通監視フレームを受信する。
【0066】
ステップS14において、ノードのMACアドレス学習部53(
図2を参照)は、導通監視フレームに基づいてMACアドレスを学習して、MACアドレス学習テーブル(FDB)56(
図2を参照)を更新する。
【0067】
ステップS15において、ノードは、導通監視フレームの送信元が、サービスパス終端ノードであるか否かを判定する。送信元がサービスパス終端ノードである場合(ステップS15においてYES)、処理はステップS16に進む。一方、送信元が、サービスパス終端ノードとは異なるノードである場合(ステップS15においてNO)、処理はステップS13に戻る。
【0068】
ステップS16では、サービスパス終端ノードのMACアドレスが、MACアドレス学習テーブル上に新規に追加されたアドレスか否かを判断する。既に登録されたMACアドレスである場合(ステップS16においてNO)、処理はステップS17に進む。一方、サービスパス終端ノードのMACアドレスが、MACアドレス学習テーブル上に新規に追加されたアドレスである場合(ステップS16においてYES)、処理はステップS18に進む。
【0069】
ステップS17において、サービスパス終端ノードからの導通監視フレームの受信(ステップS13)において受信ポートが変化したかどうかを判断する。受信ポートに変化が無い場合(ステップS17においてNO)、処理はステップS13に戻る。この場合、サービスパスには変更がない。一方、受信ポートが変化した場合(ステップS17においてYES)、処理はステップS18に進む。
【0070】
ステップS18以後の処理は、サービスパスを変更する(または新たなサービスパスを設定する)ための処理である。ステップS18において、ノードは、導通監視フレームの受信ポートの方向にサービスパスを設定または更新する。次にステップS19において、サービスパス設定部63は、転送テーブルを更新するとともに、その更新した内容に従って、サービスパス転送部54に対してサービスパスの設定を行う。ステップS19の後、処理はステップS13に戻される。これにより、クライアント信号を転送するための新たなサービスパスが形成される。
【0071】
図5は、リングの構成が変更された場合における、ノードの動作を説明するためのフローチャートである。リングの構成が変更された場合とは、たとえばリングネットワークにおいて障害が発生した場合、あるいは、その障害から復旧した場合に該当する。
【0072】
障害発生時または障害からの復旧時には、まず、ステップS21において、リングネットワーク上のいずれかのノードが障害発生メッセージまたは障害復旧通知メッセージを受信する。ノード自身が障害の発生あるいは障害の復旧を検知した場合には、当該ノードが、障害発生メッセージまたは障害復旧通知メッセージをリングネットワーク上に送信する。
【0073】
ステップS22において、障害発生メッセージまたは障害復旧通知メッセージを受信(または送信)したノードは、自身がRPLを管理するオーナーノードに該当するか否かを判断する。オーナーノードではない場合(ステップS22においてNO)、処理はステップS23に進む。一方、自ノードがオーナーノードである場合(ステップS22においてYES)、処理は後述するステップS24に進む。
【0074】
ステップS23において、RPLの開放または閉塞が行われる。具体的には、障害発生時にはRPLが開放される。一方、障害からの復旧時にはRPLが閉塞される。次に、処理はステップS24に進む。
【0075】
ステップS24において、ノードのEthernetリング制御部62(
図2を参照)は、MACアドレス学習テーブル56の内容をクリアするようにMACアドレス学習部53を制御する。ステップS25において、MACアドレス学習部53がMACアドレス学習テーブル56の内容をクリアする。これによってサービスパスの設定もクリアされる。
【0076】
ステップS26において、サービスパス設定部63は、転送テーブルを更新するとともに、その更新した内容に従って、サービスパス転送部54に対してサービスパスの設定を行う。これにより、新しいサービスパスが構築される。ステップS26の処理が終了すると、通常時の動作フローチャートのループの開始ステップ(
図4に示したステップS11)に進む。
【0077】
なお、本開示の実施の形態に係る通信システムの構成は、限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0078】
図6は、本開示の実施の形態に係る通信システムの冗長構成の例を示した図である。本開示の実施の形態に係る通信システム101において、クライアントのデータを集約する拠点(1)は、たとえばノードH(通信装置10H)およびノードG(通信装置10G)により構成することができる。同様に、クライアントのデータを収容する拠点(2)は、たとえばノードA(通信装置10A)およびノードB(通信装置10B)により構成することができる。通信装置10H,10G,10A,10Bの構成は、
図2に示した構成と同じであるので、以後の説明は繰り返さない。
【0079】
拠点(1)では、ノードHを運用系(
図6において「Primary」と示す)とし、ノードGを待機系(
図6において「Secondary」と示す)としてもよい。逆にノードGが運用系となり、ノードHが待機系であってもよい。ノードH,Gの各々は、ネットワーク機器20H(たとえばコアルータ)と物理的に接続される。LAG(Link Aggregation Group)により、各ノードとネットワーク機器20Hとの間の物理的なリンクを論理的な1つのリンクとして扱うことができる。
【0080】
同様に、拠点(2)では、ノードAを運用系とし、ノードBを待機系とすることができる(ノードBを運用系とし、ノードAを待機系としてもよい)。ノードA,Bの各々は、ネットワーク機器20A(たとえば集合型メディアコンバータ)と接続される。LAG(Link Aggregation Group)により、各ノードとネットワーク機器20Aとの間の物理的なリンクを論理的な1つのリンクとして扱うことができる。
【0081】
各ノードは、対向ノードを指定して、CCMにより、常時導通確認を動作させる。指定される対向ノードは、運用系、待機系の両方である。したがって、
図6に示す例では、ノードH,Gの各々は、ノードA,Bの両方との間で、CCMの送受信により、常時導通確認を行う。一方、ノードA,Bの各々も、CCMにより、ノードH,Gの両方との間で、CCMの送受信により、常時導通確認を行う。
【0082】
この構成によれば、対向装置が冗長機能を有する拠点(1)または拠点(2)において、仮に、運用系ノードの故障等の障害発生によってCCM監視がタイムアウトした場合にも、フレームの転送のためのポートを待機系側に切り替えることができる。したがって、フレームの転送を継続することができるので、通信サービスを継続することができる。なお、本開示の実施の形態は、リングネットワーク上の少なくとも1つのノードにおいて通信装置が運用系、待機系の両方を備えた冗長化構成を有する形態を含みうる。すべてのノードにおいて通信装置が冗長化されているのでもよい。
【0083】
以上のように、本開示の実施の形態に係る通信システムでは、サービスパスを形成してデータを転送する。各ノードはFDBを利用してデータを転送するので、クライアントMACアドレスを記憶する必要がない。さらに、本開示の実施の形態に係る通信システムでは、特定の方式に限定されずにデータを転送することができる。
【0084】
たとえば、上述したIEEE802.1ahにおいて規定されるPBBでは、MAC-in-MAC方式のカプセル化によるPBBネットワークを構成するノードは、エッジノードであるBEB(Backbone Edge Bridge)と、コアノードであるBCB(Backbone Core Bridge)とからなる。クライアントを収容するエッジノードでは、クライアントデータのVLAN情報をI-Tag識別子(I-SID)にマッピングし、自ノードのMACアドレスを送信元アドレスとしたPBBヘッダを付与したフレームをバックボーンネットワークに送出する。また、エッジノードは、バックボーンネットワークから自ノード宛てのフレームに付与されたI-Tag識別子によって、当該フレームを転送すべきクライアントを決定する。そしてエッジノードは、フレームからPBBヘッダを取り外して、そのフレームを該当のクライアントに転送する。
【0085】
IEEE802.1ah PBBでは、カプセル化されるMACフレームにB-TagおよびI-Tagという二種類のVLAN(Virtual Local Area Network)タグを使用する。これによってイーサネットを用いた大規模なマルチポイントのレイヤ2接続サービスの構築を可能としている。このようなMAC-in-MACによるPBBにも、本開示の実施の形態は適用可能である。また、出力先を決定するために、各ノードにFDBとは独立したテーブルを用意する必要をなくすことができる。
【0086】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0087】
1 広域ネットワーク
4 クライアントネットワーク
10,10A,10B,10G,10H 通信装置
10_1~10_N ノード
20A,20B,20G,20H,31,32 ネットワーク機器
50 フレーム中継部
51 VLAN処理部
52 制御フレーム処理部
53 MACアドレス学習部
54 サービスパス転送部
56 MACアドレス学習テーブル
61 導通監視制御部
62 Ethernetリング制御部
63 サービスパス設定部
100,101 通信システム
A,B,G クライアント収容ノード
H 集約ノード
S11~S19,S21~S26 ステップ