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特許7655018ヘッドユニットの位置決め機構並びに画像形成装置およびヘッドユニットの位置決め方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-25
(45)【発行日】2025-04-02
(54)【発明の名称】ヘッドユニットの位置決め機構並びに画像形成装置およびヘッドユニットの位置決め方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20250326BHJP
【FI】
B41J2/01 307
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021039511
(22)【出願日】2021-03-11
(65)【公開番号】P2022139226
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2024-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100177644
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 和樹
(72)【発明者】
【氏名】山崎 俊介
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-522794(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0238595(US,A1)
【文献】特開2014-110359(JP,A)
【文献】特表2005-515458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向に沿って媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部の上方に対向し、前記媒体に向かって液滴を吐出するヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットを、前記媒体に印刷を行う印刷位置と、前記印刷位置よりも前記搬送部から離れた位置である退避位置との間で昇降させる昇降部と、
前記搬送部と前記ヘッドユニットのいずれか一方において前記搬送方向と前記搬送方向と交差する方向である幅方向とに間隔をあけて設けられた3つのブロックと、
前記搬送部と前記ヘッドユニットのいずれか他方において3つの前記ブロックに対向する位置に設けられた3つのピンと、を備え、
各々の前記ブロックには、前記搬送部と前記ヘッドユニットのいずれか他方から離れるに従って狭くなるように傾斜した一対の傾斜面を有する位置決め溝が凹設され、
3つの前記ブロックは、
前記位置決め溝が前記搬送方向と前記幅方向のいずれか一方に沿って延設され、前記傾斜面が同じ向きに形成された2つの第1のブロックと、
前記位置決め溝が前記搬送方向と前記幅方向のいずれか他方に沿って延設され、前記傾斜面が前記第1のブロックの前記傾斜面に対して平面視で前記搬送方向と前記幅方向とが成す角度回転させた向きに形成された1つの第2のブロックと、を有し、
各々の前記ピンは、前記ヘッドユニットを前記印刷位置に配置させた状態で、前記ブロックの一対の前記傾斜面に2点で接触し、
少なくとも1つの前記ブロックまたは少なくとも1つの前記ピンを、少なくとも平面視で前記位置決め溝の延設方向と交差する方向に沿って移動させる移動調整部を更に備えたことを特徴とするヘッドユニットの位置決め機構。
【請求項2】
前記ヘッドユニットは、前記搬送方向よりも前記幅方向に長く形成され、
2つの前記第1のブロックは、前記ヘッドユニットの前記幅方向の両側に対応する位置に設けられ、
一方の前記第1のブロックと前記第2のブロックとは、前記ヘッドユニットの前記搬送方向の両側に対応する位置に設けられ、
前記第1のブロックの前記位置決め溝は前記幅方向に沿って延設され、前記第2のブロックの前記位置決め溝は前記搬送方向に沿って延設され、
前記移動調整部は、他方の前記第1のブロックまたは他方の前記第1のブロックに接触可能な前記ピンを、前記搬送方向に沿って移動させることを特徴とする請求項に記載のヘッドユニットの位置決め機構。
【請求項3】
少なくとも1つの前記ブロックまたは少なくとも1つの前記ピンを昇降させる昇降調整部を更に備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のヘッドユニットの位置決め機構。
【請求項4】
請求項1ないしのいずれか1項に記載のヘッドユニットの位置決め機構を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
搬送方向に沿って媒体を搬送する搬送部の上方に対向し、前記媒体に向かって液滴を吐出するヘッドユニットであって、前記媒体に印刷を行う印刷位置と、前記印刷位置よりも前記搬送部から離れた位置である退避位置との間で昇降可能とされるヘッドユニットの位置決め方法であって、
前記搬送部と前記ヘッドユニットのいずれか一方において前記搬送方向と前記搬送方向と交差する方向である幅方向とに間隔をあけて設けられた3つのブロックには、それぞれ、前記搬送部と前記ヘッドユニットのいずれか他方から離れるに従って狭くなるように傾斜した一対の傾斜面を有する位置決め溝が凹設され、
3つの前記ブロックは、
前記位置決め溝が前記搬送方向と前記幅方向のいずれか一方に沿って延設され、前記傾斜面が同じ向きに形成された2つの第1のブロックと、
前記位置決め溝が前記搬送方向と前記幅方向のいずれか他方に沿って延設され、前記傾斜面が前記第1のブロックの前記傾斜面に対して平面視で前記搬送方向と前記幅方向とが成す角度回転させた向きに形成された1つの第2のブロックと、を有し、
前記ヘッドユニットを前記印刷位置に配置させた状態で、前記搬送部と前記ヘッドユニットのいずれか他方において3つの前記ブロックに対向する位置に設けられた3つのピンを、それぞれ、一対の前記傾斜面に2点で接触させる位置決め工程と、
前記位置決め工程の実行前または実行後に、少なくとも1つの前記ブロックまたは少なくとも1つの前記ピンを、少なくとも平面視で前記位置決め溝の延設方向と交差する方向に沿って移動させる移動調整工程と、を備えたことを特徴とするヘッドユニットの位置決め方法。
【請求項6】
前記ヘッドユニットは、前記搬送方向よりも前記幅方向に長く形成され、
2つの前記第1のブロックは、前記ヘッドユニットの前記幅方向の両側に対応する位置に設けられ、
一方の前記第1のブロックと前記第2のブロックとは、前記ヘッドユニットの前記搬送方向の両側に対応する位置に設けられ、
前記第1のブロックの前記位置決め溝は前記幅方向に沿って延設され、前記第2のブロックの前記位置決め溝は前記搬送方向に沿って延設され、
前記移動調整工程では、他方の前記第1のブロックまたは他方の前記第1のブロックに接触可能な前記ピンが前記搬送方向に沿って移動されることを特徴とする請求項に記載のヘッドユニットの位置決め方法。
【請求項7】
前記位置決め工程の実行前または実行後に、少なくとも1つの前記ブロックまたは少なくとも1つの前記ピンを昇降させる昇降調整工程を更に備えたことを特徴とする請求項5または6に記載のヘッドユニットの位置決め方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドユニットの位置決め機構並びに画像形成装置およびヘッドユニットの位置決め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットノズルユニットが、シートに近接して印刷を施す印刷位置とシートから離反する退避位置との間でフレームに移動自在に支持されたシートデジタル印刷機が知られている(特許文献1)。このシートデジタル印刷機では、フレーム側に設けられたテーパピン部とインクジェットノズルユニット側に設けられたテーパ孔部とが相補的な形状に形成され、テーパピン部をテーパ孔部に嵌合させることで、インクジェットノズルヘッドを印刷位置に正確に位置決めしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6321920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したシートデジタル印刷機では、テーパピン部とテーパ孔部とのテーパの角度(形状)や大きさ等を高い精度で一致させなければ、正確に嵌合させることができなかった。したがって、テーパピン部とテーパ孔部との僅かな精度誤差によって、がたつきが生じたり、正確な位置決めができなったりする虞があった。
【0005】
本発明は、上記事情を考慮し、ヘッドユニットの正確な位置決めを容易に行うことができるヘッドユニットの位置決め機構並びに画像形成装置およびヘッドユニットの位置決め方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のヘッドユニットの位置決め機構は、搬送方向に沿って媒体を搬送する搬送部と、前記搬送部の上方に対向し、前記媒体に向かって液滴を吐出するヘッドユニットと、前記ヘッドユニットを、前記媒体に印刷を行う印刷位置と、前記印刷位置よりも前記搬送部から離れた位置である退避位置との間で昇降させる昇降部と、前記搬送部と前記ヘッドユニットのいずれか一方において前記搬送方向と前記搬送方向と交差する方向である幅方向とに間隔をあけて設けられた3つのブロックと、前記搬送部と前記ヘッドユニットのいずれか他方において3つの前記ブロックに対向する位置に設けられた3つのピンと、を備え、各々の前記ブロックには、前記搬送部と前記ヘッドユニットのいずれか他方から離れるに従って狭くなるように傾斜した一対の傾斜面を有する位置決め溝が凹設され、3つの前記ブロックは、前記位置決め溝が前記搬送方向と前記幅方向のいずれか一方に沿って延設され、前記傾斜面が同じ向きに形成された2つの第1のブロックと、前記位置決め溝が前記搬送方向と前記幅方向のいずれか他方に沿って延設され、前記傾斜面が前記第1のブロックの前記傾斜面に対して平面視で前記搬送方向と前記幅方向とが成す角度回転させた向きに形成された1つの第2のブロックと、を有し、各々の前記ピンは、前記ヘッドユニットを前記印刷位置に配置させた状態で、前記ブロックの一対の前記傾斜面に2点で接触する。
【0007】
この場合、少なくとも1つの前記ブロックまたは少なくとも1つの前記ピンを、少なくとも平面視で前記位置決め溝の延設方向と交差する方向に沿って移動させる移動調整部を更に備えてもよい。
【0008】
この場合、前記ヘッドユニットは、前記搬送方向よりも前記幅方向に長く形成され、2つの前記第1のブロックは、前記ヘッドユニットの前記幅方向の両側に対応する位置に設けられ、一方の前記第1のブロックと前記第2のブロックとは、前記ヘッドユニットの前記搬送方向の両側に対応する位置に設けられ、前記第1のブロックの前記位置決め溝は前記幅方向に沿って延設され、前記第2のブロックの前記位置決め溝は前記搬送方向に沿って延設され、前記移動調整部は、他方の前記第1のブロックまたは他方の前記第1のブロックに接触可能な前記ピンを、前記搬送方向に沿って移動させてもよい。
【0009】
この場合、少なくとも1つの前記ブロックまたは少なくとも1つの前記ピンを昇降させる昇降調整部を更に備えてもよい。
【0010】
本発明の画像形成装置は、上記のいずれかに記載のヘッドユニットの位置決め機構を備えている。
【0011】
本発明は、搬送方向に沿って媒体を搬送する搬送部の上方に対向し、前記媒体に向かって液滴を吐出するヘッドユニットであって、前記媒体に印刷を行う印刷位置と、前記印刷位置よりも前記搬送部から離れた位置である退避位置との間で昇降可能とされるヘッドユニットの位置決め方法であって、前記搬送部と前記ヘッドユニットのいずれか一方において前記搬送方向と前記搬送方向と交差する方向である幅方向とに間隔をあけて設けられた3つのブロックには、それぞれ、前記搬送部と前記ヘッドユニットのいずれか他方から離れるに従って狭くなるように傾斜した一対の傾斜面を有する位置決め溝が凹設され、3つの前記ブロックは、前記位置決め溝が前記搬送方向と前記幅方向のいずれか一方に沿って延設され、前記傾斜面が同じ向きに形成された2つの第1のブロックと、前記位置決め溝が前記搬送方向と前記幅方向のいずれか他方に沿って延設され、前記傾斜面が前記第1のブロックの前記傾斜面に対して平面視で前記搬送方向と前記幅方向とが成す角度回転させた向きに形成された1つの第2のブロックと、を有し、前記ヘッドユニットを前記印刷位置に配置させた状態で、前記搬送部と前記ヘッドユニットのいずれか他方において3つの前記ブロックに対向する位置に設けられた3つのピンを、それぞれ、一対の前記傾斜面に2点で接触させる位置決め工程を備えている。
【0012】
この場合、前記位置決め工程の実行前または実行後に、少なくとも1つの前記ブロックまたは少なくとも1つの前記ピンを、少なくとも平面視で前記位置決め溝の延設方向と交差する方向に沿って移動させる移動調整工程を更に備えてもよい。
【0013】
この場合、前記ヘッドユニットは、前記搬送方向よりも前記幅方向に長く形成され、2つの前記第1のブロックは、前記ヘッドユニットの前記幅方向の両側に対応する位置に設けられ、一方の前記第1のブロックと前記第2のブロックとは、前記ヘッドユニットの前記搬送方向の両側に対応する位置に設けられ、前記第1のブロックの前記位置決め溝は前記幅方向に沿って延設され、前記第2のブロックの前記位置決め溝は前記搬送方向に沿って延設され、前記移動調整工程では、他方の前記第1のブロックまたは他方の前記第1のブロックに接触可能な前記ピンが前記搬送方向に沿って移動されてもよい。
【0014】
この場合、前記位置決め工程の実行前または実行後に、少なくとも1つの前記ブロックまたは少なくとも1つの前記ピンを昇降させる昇降調整工程を更に備えてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ヘッドユニットの正確な位置決めを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の内部構造を示す概略図(正面図)である。
図2】本発明の一実施形態に係る画像形成装置のヘッドユニットおよび位置決め機構を示す斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る画像形成装置のヘッドユニットおよび位置決め機構を示す底面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る画像形成装置のヘッドユニットおよび位置決め機構を示す側面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の昇降部を示す斜視図である。
図6A】本発明の一実施形態に係る画像形成装置のヘッドユニットおよび保守部であって、ヘッドユニットを退避位置に移動させた状態を示す側面図である。
図6B】本発明の一実施形態に係る画像形成装置のヘッドユニットおよび保守部であって、キャップユニットをヘッドユニットに対向させた状態を示す側面図である。
図6C】本発明の一実施形態に係る画像形成装置のヘッドユニットおよび保守部であって、キャッピングした状態を示す側面図である。
図7A】本発明の一実施形態に係る画像形成装置のヘッドユニットおよび保守部であって、ヘッドユニットを退避位置に移動させた状態を示す側面図である。
図7B】本発明の一実施形態に係る画像形成装置のヘッドユニットおよび保守部であって、ワイプユニットをヘッドユニットに対向させた状態を示す側面図である。
図7C】本発明の一実施形態に係る画像形成装置のヘッドユニットおよび保守部であって、ワイピング可能な状態を示す側面図である。
図8】本発明の一実施形態に係る位置決め機構の移動調整部および昇降調整部を後方から示す断面図である。
図9】本発明の一実施形態に係る位置決め機構の移動調整部の作用を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、図面に示すFr、Rr、L、R、U、Dは、前、後、左、右、上、下を示している。本明細書では方向や位置を示す用語を用いるが、それらの用語は説明の便宜のために用いるものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0018】
[画像形成装置の概要]
図1を参照して、画像形成装置1について説明する。図1は画像形成装置1の内部構造を示す概略図(正面図)である。
【0019】
画像形成装置1は、インク滴を吐出して用紙S(媒体)に画像を形成するインクジェット式のプリンターである。画像形成装置1は、各種機器が収容された箱型形状のハウジング2を備えている。ハウジング2の下部には用紙Sがセットされる給紙カセット3Aが収容され、ハウジング2の右側面には用紙Sが手差しでセットされる手差しトレイ3Bが設置されている。ハウジング2の左側面の上側には、画像形成済みの用紙Sが積載される排紙トレイ4が設置されている。
【0020】
ハウジング2内の右側部には、給紙カセット3Aからハウジング2の略中央に位置する画像形成部12に向けて用紙Sを搬送するための第1の搬送経路5が形成されている。第1の搬送経路5の上流には給紙カセット3Aの用紙束から用紙Sを取り出す給紙部10Aが設けられ、第1の搬送経路5の下流にはレジストローラー11が設けられている。また、第1の搬送経路5の下流は手差しトレイ3Bの給紙経路6に連なり、給紙経路6には手差しトレイ3Bの用紙束から用紙Sを取り出す給紙部10Bが設けられている。
【0021】
画像形成部12には、複数色(例えば、ブラック、シアン、マゼンタおよびイエロー)に対応した複数(例えば4つ)のヘッドユニット13が設けられている。各々のヘッドユニット13は、用紙Sに向かってインク滴を吐出する1つ以上(例えば3つ)の吐出ヘッド20を含んでいる(図2参照)。各々の吐出ヘッド20は、複数の吐出ノズル(図示せず)が開口したノズル面20A(図2参照)を有し、吐出ノズルからインク(液体)を吐出する。別の表現をすれば、ヘッドユニット13は、インク(液体)を吐出する。なお、各々の吐出ヘッド20はチューブ(図示せず)を介して各色のインクを収容したインクパック(図示せず)に連通しており、インクパックから吐出ヘッド20にインクが供給される。本実施形態では、上述のように、ヘッドユニット13は、3つの吐出ヘッド20を含んでいる。ヘッドユニット13に含まれる吐出ヘッド20の個数は1つでもよい。また、後述の位置決め機構50は、吐出ヘッド20に設けられてもよい。そのような場合、1つの吐出ヘッド20がヘッドユニット13に相当することになる。
【0022】
画像形成部12(ヘッドユニット13)の下方には、左右方向(搬送方向)に沿って用紙Sを搬送する搬送部14が設けられている。搬送部14は、複数の張架ローラー26に掛け渡された搬送ベルト25と、搬送ベルト25で囲まれた範囲内に設けられた吸引部27と、複数の張架ローラー26や吸引部27を支持する一対の搬送フレーム28(図3等参照)と、を有している。複数の張架ローラー26は、軸周りに回転する状態で一対の搬送フレーム28に支持されている。搬送ベルト25には多数の貫通穴(図示せず)が形成されており、吸引部27は搬送ベルト25の貫通穴に負圧を生じさせる。
【0023】
画像形成部12の左側(搬送方向の下流側)には、用紙Sを挟みながら搬送することで用紙Sのカールを矯正するデカール装置15が設けられている。また、ハウジング2内の左側部には、デカール装置15から排紙トレイ4に向けて用紙Sを搬送する第2の搬送経路7が形成されている。第2の搬送経路7の下流には、用紙Sを排紙トレイ4に排出する排紙部16が設けられている。第2の搬送経路7の中間には、用紙Sの排出先を排紙トレイ4と後述する第3の搬送経路8に切り替える分岐部材9が設けられている。
【0024】
ハウジング2内の上部には、第2の搬送経路7の途中の分岐部材9からレジストローラー11に用紙Sを搬送するための第3の搬送経路8が形成されている。第3の搬送経路8の途中には、用紙Sを表裏反転させる反転部17が設けられている。
【0025】
画像形成装置1(ハウジング2の内部)には、様々な制御対象機器を適宜制御するための制御部18が設けられている。制御部18は、メモリーに記憶されたプログラムやパラメーターに従って各種の演算処理を実行するプロセッサー等を含んでいる。なお、制御部18は、プログラム等を実行するプロセッサー等に代えて、集積回路等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現されてもよい。
【0026】
[画像形成処理]
ここで、図1を参照して、画像形成装置1による画像形成処理について説明する。制御部18は、様々な制御対象機器を適宜制御し、以下のように画像形成処理を実行する。
【0027】
給紙部10A、10Bは、給紙カセット3Aまたは手差しトレイ3Bから取り出した用紙Sを第1の搬送経路5または給紙経路6に送り出す。レジストローラー11は、印刷前(片面印刷用)の用紙Sを一時的に塞き止めてスキュー補正し、ヘッドユニット13(吐出ヘッド20)からのインク滴の吐出タイミングに合わせて、印刷前の用紙Sを搬送ベルト25上へ送り出す。用紙Sは、搬送ベルト25上に吸着され、走行する搬送ベルト25によって下流側へと搬送される。搬送部14の上方に対向するヘッドユニット13は、搬送ベルト25上の用紙Sにインク滴を吐出し、画像を形成する(印刷する)。画像形成部12を通過した用紙Sは、搬送ベルト25への吸着が解除され、デカール装置15に送られる。デカール装置15は、用紙Sに生じたカールを矯正する。
【0028】
片面印刷を実行した場合、分岐部材9は、第2の搬送経路7を開き、第3の搬送経路8を閉じる。片面印刷された用紙Sは、第2の搬送経路7を通って排紙トレイ4に排出される。両面印刷を実行した場合、分岐部材9は、第2の搬送経路7を閉じ、第3の搬送経路8を開く。片面印刷された用紙Sは、第3の搬送経路8に進入し、反転部17で表裏反転され、再びレジストローラー11に向けて搬送される。その後、上記した片面印刷時と同様の順序で用紙Sの裏面に画像が形成され、両面印刷された用紙Sは、カール矯正され、排紙トレイ4に排出される。
【0029】
ところで、インクジェット式の画像形成装置1には、吐出ヘッド20の保守を行う複数(例えば4つ)の保守部40が備えられている。また、画像形成装置1には、各々のヘッドユニット13を昇降させる昇降部30を備えており、吐出ヘッド20の保守はヘッドユニット13を用紙Sに画像を形成する位置よりも上昇させた状態で行われる。
【0030】
[ヘッドユニット]
まず、図2ないし図4を参照して、ヘッドユニット13について説明する。図2はヘッドユニット13を示す斜視図である。図3はヘッドユニット13を示す底面図であり、図4はヘッドユニット13を示す側面図である。なお、4つのヘッドユニット13は略同一構造であるため、本明細書では、主に1つのヘッドユニットの13について説明する。また、3つの吐出ヘッド20は略同一構造であるため、本明細書では、主に1つの吐出ヘッド20について説明する。
【0031】
ヘッドユニット13は、インク滴を吐出する3つの吐出ヘッド20と、3つの吐出ヘッド20を支持するホルダー21と、を有している。ホルダー21の上部には、吐出ヘッド20を覆うようにカバー22が設けられ、ヘッドユニット13は、全体的に左右方向(搬送方向)よりも前後方向(幅方向)に長い略角筒状に形成されている。
【0032】
吐出ヘッド20は、前後方向(搬送方向(左右方向)と交差する方向である幅方向)に長い略直方体状に形成されている。吐出ヘッド20は、圧電素子に電圧を加えて変形させることでインクを吐出ノズルから吐出させる所謂ピエゾ方式のインクジェットヘッドである。なお、吐出ヘッド20は、ピエゾ方式に限らず、サーマル方式等のインクの吐出法を採用してもよい。
【0033】
ホルダー21は、例えば、板金等を折り曲げて正面視で略U字に形成されている。ホルダー21には、吐出ヘッド20を装着するための3つの開口が正面視で千鳥状に穿設されている。詳細には、用紙Sの搬送方向の上流側(右側)に2つの開口が形成され、搬送方向の下流側(左側)に1つの開口が形成されている。吐出ヘッド20は、ノズル面20Aをホルダー21の開口から下方に露出させた状態でホルダー21に固定されている。したがって、3つの吐出ヘッド20は、平面視で千鳥状に配置されている。
【0034】
[昇降部]
次に、図5を参照して、昇降部30について説明する。図5は昇降部30を示す斜視図である。
【0035】
昇降部30は、一対のプレート31と、昇降駆動部32と、を有している。一対のプレート31は、前後方向(幅方向)に間隔をあけて立設されている。昇降駆動部32は、一対のボールネジ33と、一対のガイドレール34と、昇降モーター35と、を有している。
【0036】
一対のボールネジ33および一対のガイドレール34は、一対のプレート31の内面に上下方向に延びた姿勢で支持されている。各ボールネジ33の上端部には、従動スプロケット36が固定されている。昇降モーター35は、後方のプレート31の上部にマウントプレート31Aを介して固定されている。昇降モーター35の出力軸には、駆動スプロケット37が固定されている。後方のプレート31の上部には、駆動スプロケット37と従動スプロケット36との中間に中間スプロケット38が設けられている。これらのスプロケット36~38には、タイミングベルト39が掛け渡されている。昇降モーター35は制御部18に電気的に接続されて駆動制御される。昇降モーター35の駆動力(駆動スプロケット37の回転力)は、タイミングベルト39を介して一対のボールネジ33を回転させる。
【0037】
ヘッドユニット13(ホルダー21)は、一対のプレート31の間に配置され、一対のブラケット23を介して一対のボールネジ33および一対のガイドレール34に係合している。昇降モーター35を正方向または逆方向に回転させることで、一対のボールネジ33も正逆回転する。一対のボールネジ33の正逆回転に伴って、ヘッドユニット13(ホルダー21)は一対のガイドレール34に案内されながら昇降する。昇降部30は、ヘッドユニット13を、搬送部14(用紙S)に近接させて用紙Sに印刷を行う印刷位置P1と、印刷位置P1よりも搬送部14から離れた位置である退避位置P2との間で昇降させる。
【0038】
[保守部]
次に、図1および図6Aを参照して、保守部40について説明する。図6Aはヘッドユニット13を退避位置P2に移動させた状態を示す側面図である。
【0039】
図1に示すように、4つの保守部40は4つのヘッドユニット13に対応して設けられており、例えば、各々の保守部40はヘッドユニット13の左側に配置されている。つまり、4つのヘッドユニット13と4つの保守部40とは、搬送方向に沿って交互に配置されている。なお、4つの保守部40は略同一構造であるため、本明細書では、主に1つの保守部40について説明する。
【0040】
図6Aに示すように、保守部40は、キャップユニット41と、ワイプユニット42と、支持体43と、を有している。キャップユニット41とワイプユニット42とは、上下方向に重なるように並んで支持体43に支持されている。ワイプユニット42は、キャップユニット41の上方に配置されている。
【0041】
キャップユニット41は、3つの吐出ヘッド20のノズル面20Aを覆う(キャッピングを行う)3つのキャップ44を有している。キャップユニット41は、ノズル面20Aをキャッピングすることで、乾燥したインクや増粘したインクが吐出ノズルに詰まることを予防する。なお、キャップユニット41は、吐出ノズルに詰まったインクを強制的に吸引するための吸引機構(図示せず)を含んでいてもよい。
【0042】
ワイプユニット42は、3つの吐出ヘッド20のノズル面20Aを拭き取る(ワイピングを行う)3つのワイプブレード45を有している。また、ワイプユニット42は、ノズル面20Aに押し付けたワイプブレード45を前後方向(幅方向)に移動させるワイプ駆動部(図示せず)を有し、ワイプブレード45を前後方向に往復移動させることでノズル面20Aのワイピングが行われる。ワイプユニット42は、ノズル面20Aに付着したインク等を除去することに加え、吐出ノズル内に詰まりかけたインクを除去し、吐出ヘッド20の目詰まりを修復する。
【0043】
支持体43は、キャップユニット41とワイプユニット42とを左右方向(搬送方向)に沿ってスライド可能に支持している。支持体43には、キャップユニット41等をスライドさせるための進退駆動部(図示せず)が設けられている。
【0044】
[保守動作]
ここで、図6A図6Cおよび図7A図7Cを参照して、保守部40による保守動作について説明する。図6Bはキャップユニット41をヘッドユニット13に対向させた状態を示す側面図である。図6Cはキャッピングした状態を示す側面図である。図7Aはヘッドユニット13を退避位置P2に移動させた状態を示す側面図である。図7Bはワイプユニット42をヘッドユニット13に対向させた状態を示す側面図である。図7Cはワイピング可能な状態を示す側面図である。
【0045】
キャップユニット41によるキャッピングを行う場合、図6Aに示すように、昇降部30はヘッドユニット13を上昇させ退避位置P2に配置する。各吐出ヘッド20のノズル面20Aは、キャップ44よりも上方に配置される。続いて、図6Bに示すように、キャップユニット41は、進退駆動部によって右方に押し出され、ヘッドユニット13(吐出ヘッド20)の下方に対向する。次に、図6Cに示すように、昇降部30は、ヘッドユニット13を僅かに下降させ、各吐出ヘッド20をキャップ44に密着させる。これにより、キャッピングが完了する。
【0046】
ワイプユニット42によるワイピングを行う場合、図7Aに示すように、昇降部30はヘッドユニット13を上昇させ退避位置P2に配置する。吐出ヘッド20のノズル面20Aは、ワイプブレード45よりも上方に配置される。ワイピングを行う際の退避位置P2は、キャッピングを行う際よりも上方に設定されている。つまり、退避位置P2には、キャッピング用とワイピング用の2つの高さがあるが、印刷位置P1よりも上方に離間させる位置という点で共通しているため、本明細書では特に区別せずに、単に退避位置P2を呼ぶこととする。
【0047】
続いて、図7Bに示すように、ワイプユニット42は、進退駆動部によって右方に押し出され、ヘッドユニット13(吐出ヘッド20)の下方に対向する。次に、図7Cに示すように、昇降部30は、ヘッドユニット13を僅かに下降させ、吐出ヘッド20をワイプブレード45に密着させる。ワイプ駆動部によってワイプブレード45が前後方向に往復移動することで、ノズル面20Aに付着したインクが拭き取られる。なお、図7B等では、ワイプユニット42の押し出しに伴ってキャップユニット41も一緒に押し出されていたが、ワイプユニット42のみを押し出す構成としてもよい(図示せず)。
【0048】
以上説明したように、保守部40によって保守動作が行われる。保守動作(キャッピング、ワイピング)が終了した後、昇降部30はヘッドユニット13を僅かに上昇させ、進退駆動部はキャップユニット41やワイプユニット42を引き戻し、ヘッドユニット13(吐出ヘッド20)の下方から退避させる。その後、昇降部30は、ヘッドユニット13を退避位置P2から印刷位置P1に下降させる。なお、ヘッドユニット13は、保守動作の際に昇降されていたが、これに限らず、搬送部14で用紙S詰まり(ジャム)が発生した場合にも昇降されることがある。つまり、ジャムが発生した場合、昇降部30はヘッドユニット13を印刷位置P1から退避位置P2に移動させ、ユーザーは詰まった用紙Sを除去する。
【0049】
ところで、吐出されたインク滴によって用紙Sに適正な画像を形成するためには、各々のヘッドユニット13を搬送方向に対して直交させることや、4つのヘッドユニット13を互いに平行に配置すること等が要求される。したがって、各々のヘッドユニット13の印刷位置P1は、適正な画像形成を担保するために予め定められており、画像形成装置1の製造時に調整されている。この画像形成装置1では、保守動作時やジャム処理時にヘッドユニット13を昇降させる構成であるため、保守動作やジャム処理が終了した後に、退避位置P2にあるヘッドユニット13を正確に印刷位置P1に戻すことが重要となる。そこで、本実施形態に係る画像形成装置1は、ヘッドユニット13を正確に印刷位置P1に位置決めするための位置決め機構50を備えている。
【0050】
[位置決め機構]
図2ないし図4図8を参照して、位置決め機構50について説明する。図8は移動調整部53および昇降調整部54を後方から示す断面図である。
【0051】
位置決め機構50は、上記したヘッドユニット13および昇降部30に加え、3つのブロック51と、3つのピン52と、移動調整部53と、昇降調整部54と、を備えている。
【0052】
<ブロック>
図2に示すように、各々のブロック51は、例えば、アルミ合金や鉄等の金属製で、概ね直方体状に形成されている。各々のブロック51には、上面から下方に向かって(ヘッドユニット13のいずれか他方から離れるに従って)狭くなるように傾斜した一対の傾斜面56を有する位置決め溝55が凹設されている。位置決め溝55は、ブロック51の上面から略三角形状に掘られた溝である。一対の傾斜面56は、位置決め溝55を構成する内面であって、略V字を成すように傾斜している。
【0053】
図3および図4に示すように、3つのブロック51は、搬送ベルト25を挟んで前後両側に配置された一対の搬送フレーム28の上面に設けられている。3つのブロック51は、搬送部14において左右方向(搬送方向)と前後方向(幅方向)とに間隔をあけて設けられている。詳細には、3つのブロック51は、前後方向に離間して設けられた2つの第1のブロック51Aと、前方の第1のブロック51Aに対して右方に離間して設けられた1つの第2のブロック51Bと、を有している。なお、本明細書では、第1のブロック51Aと第2のブロック51Bとで共通する説明では符号に算用数字のみを付す。また、本明細書では、説明の便宜のため、前方の第1のブロック51Aの符号には「(F)」を追加し、後方の第1のブロック51Aの符号には「(R)」を追加し、2つの第1のブロック51Aに共通する説明では符号「(F)、(R)」を省略する。
【0054】
図3に示すように、2つの第1のブロック51Aは、ヘッドユニット13の前後方向の両側に対応する位置に設けられ、前方の第1のブロック51A(F)と第2のブロック51Bとは、ヘッドユニット13の左右方向の両側に対応する位置に設けられている。ヘッドユニット13が前後方向に長い形状であるため、2つの第1のブロック51Aの中心間距離(D)が第1のブロック51A(F)と第2のブロック51Bと中心間距離(W)よりも長く設定されている。また、2つの第1のブロック51Aと、この2つの第1のブロック51Aに挟まれた2つの吐出ヘッド20とは、前後方向に一列に並設されている。また、第1のブロック51A(F)と第2のブロック51Bとは左右方向に一列に並設されている。したがって、3つのブロック51は、平面視で略直角三角形の頂点を成す位置に配置されている。なお、第1のブロック51A(F)と第2のブロック51Bとは搬送フレーム28の上面に固定され、第1のブロック51A(R)は左右方向(搬送方向)に沿ってスライド可能に搬送フレーム28の上面に設けられている。
【0055】
図2および図3に示すように、2つの第1のブロック51Aの位置決め溝55は前後方向(幅方向)に沿って延設され、2つの第1のブロック51Aの傾斜面56は同じ向きに形成されている。第2のブロック51Bの位置決め溝55は左右方向(搬送方向)に沿って延設され、第2のブロック51Bの傾斜面56は第1のブロック51Aの傾斜面56に対して平面視で搬送方向と幅方向とが成す角度回転させた向きに形成されている。すなわち、第1のブロック51Aの一対の傾斜面56は、第1のブロック51Aを正面(または背面)から見た際に略V字状を成し、第2のブロック51Bの一対の傾斜面56は、第2のブロック51Bを側面から見た際に略V字状を成している。なお、搬送方向と幅方向との成す角度は45度以上135度以下、さらに60度以上120度にするが望ましく、さらに、搬送方向と幅方向とは直交しているのが望ましい。
【0056】
<ピン>
図2ないし図4に示すように、各々のピン52は、例えば、アルミ合金や鉄等の金属製で、断面が円形となる棒状に形成されている。3つのピン52は、ヘッドユニット13において3つのブロック51に対向する位置に設けられている。詳細には、3つのピン52は、ホルダー21の下面において底面視で略直角三角形の頂点を成す位置に配置されている。各々のピン52は、ホルダー21から下方に向かって延設されている。各々のピン52の下端部は、略半球状に丸められている。各々のピン52は、ブロック51の位置決め溝55の中間まで嵌り込む程度の直径に形成されている。各々のピン52(の先端部)は、ヘッドユニット13を印刷位置P1に配置させた状態で、ブロック51の一対の傾斜面56に2点で接触する(図2の円内を参照)。なお、ヘッドユニット13を退避位置P2に配置させた状態では、各々のピン52は、ブロック51の一対の傾斜面56から上方に離間している(図示せず)。また、詳細は後述するが、各々のピン52は、昇降調整部54によって昇降されるため、ホルダー21に対して上下方向にスライド可能に支持されている。また、各々のピン52の上端部は、ホルダー21を貫通して、ホルダー21の上面から突き出している。
【0057】
<移動調整部>
図8に示すように、移動調整部53は、第1のブロック51A(R)を、平面視で位置決め溝55の延設方向に交差する方向である移動方向、例えば左右方向(搬送方向)に沿って移動させる機能を有している。移動調整部53は、後方の搬送フレーム28上に設けられている。移動調整部53は、調整ネジ60と、調整バネ61と、を有している。なお、延設方向と移動方向との成す角度は45度以上135度以下、さらに60度以上120度にするが望ましく、さらに、延設方向と移動方向とは直交しているのが望ましい。
【0058】
調整ネジ60は、第1のブロック51A(R)の左方において搬送フレーム28上に立設されたネジ支持部62に支持されている。調整ネジ60の周面には雄ネジ(図示せず)が形成され、ネジ支持部62には雌ネジが切られたネジ穴(図示せず)が開口している。調整ネジ60は、ネジ支持部62のネジ穴を貫通し、雌ネジに螺合した状態で支持されている。調整バネ61は、第1のブロック51A(R)の右方において搬送フレーム28上に立設された台座部63と第1のブロック51A(R)との間に架設されている。調整バネ61は、圧縮コイルスプリングであって、第1のブロック51A(R)を調整ネジ60の先端に押し付ける。
【0059】
<昇降調整部>
図8に示すように、昇降調整部54は、3つのピン52を昇降させる機能を有している。昇降調整部54は、ヘッドユニット13のホルダー21上に設けられている。昇降調整部54は、3つの昇降カム65と、3つの昇降バネ66と、を有している。なお、3つの昇降カム65は同一構造であるため、以下では1つの昇降カム65について説明する。これと同様に、以下では1つの昇降バネ66について説明する。
【0060】
昇降カム65は、ホルダー21上に立設されたカム支持部67に軸周りに回転可能に支持されている。昇降カム65は、回転軸からカム面(周面)までの半径が不均一とされた偏心カム(円板カム)であって、昇降カム65のカム面は、ピン52の上端部に形成されたフランジ部52Aに接触している。また、昇降カム65は、ギア列等(図示せず)を介してカムモーター68に接続されている。カムモーター68は、回転角度等を制御可能なステッピングモーター等であり、制御部18に電気的に接続されている。カムモーター68は、制御部18に駆動や回転角度等を制御され、昇降カム65を正逆回転させる。
【0061】
昇降バネ66は、ピン52の上部に巻き付けられ、ホルダー21とフランジ部52Aとの間に架設されている。昇降バネ66は、圧縮コイルスプリングであって、ピン52のフランジ部52Aを昇降カム65のカム面に押し付ける。
【0062】
[ヘッドユニットの位置決め方法]
次に、図2図8および図9を参照して、ヘッドユニット13の位置決め方法について説明する。図9は移動調整部53の作用を説明する平面図である。
【0063】
<位置決め工程>
保守動作やジャム処理が終了した後、制御部18は位置決め工程を実行する。位置決め工程では、制御部18が昇降モーター35を駆動制御し、ヘッドユニット13を退避位置P2から印刷位置P1に下降させる。下降が進むと、ピン52の先端がブロック51の位置決め溝55に進入し始める。ヘッドユニット13が印刷位置P1に配置された状態になると、3つのピン52(の先端部)は、それぞれ、一対の傾斜面56に2点で接触する(図2の円内を参照)。以上によって、ヘッドユニット13は、正確な印刷位置P1に位置決めされた状態になる。
【0064】
以上説明した本実施形態に係るヘッドユニット13の位置決め機構50(位置決め方法)によれば、ピン52の先端部の2点が一対の傾斜面56に当接することで、ピン52は傾斜方向に移動不能となり安定する。また、仮に、ピン52の直径や位置決め溝55の幅や深さ等が設計上の寸法と僅かに異なっていたとしても、ピン52の先端部が一対の傾斜面56に2点で当接することで、がたつきの発生を抑制することができる。さらに、仮に、ピン52の軸心が位置決め溝55の中心から僅かにずれていたとしても、ヘッドユニット13が退避位置P2から印刷位置P1に下降する過程において、ピン52の先端部は一方の傾斜面56に沿って下方に摺動し、やがて他方の傾斜面56にも接触する。つまり、ピン52と位置決め溝55との位置が僅かにずれていたとしても、ピン52は傾斜面56に案内されながら確実に2点で一対の傾斜面56に接することになる。これらにより、ピン52と位置決め溝55とを高い精度をもって相補的な形状にする必要が無くなり、ヘッドユニット13の正確な位置決めを容易に行うことができる。
【0065】
また、本実施形態に係る位置決め機構50では、第1のブロック51Aの傾斜面56と第2のブロック51Bの傾斜面56とが互いに平面上で90度回転した向きにされていた。すなわち、2つの第1のブロック51Aの位置決め溝55が前後方向(幅方向)に沿って延設され、第2のブロック51Bの位置決め溝55が左右方向(搬送方向)に沿って延設されていた。この構成によれば、2つの第1のブロック51Aの位置決め溝55に係合させた2つのピン52を搬送方向に位置決めすることができ、第2のブロック51Bの位置決め溝55に係合させたピン52を幅方向に位置決めすることができる。これにより、ヘッドユニット13を搬送方向および幅方向に位置決めすることができると共に平面上での回転方向にも位置決めすることができる。
【0066】
<移動調整工程>
次に、画像形成装置1の製造時や定期メンテナンス時などに、作業者は移動調整工程を実行する。移動調整工程では、第1のブロック51A(R)を左右方向(搬送方向)に沿って移動させ、例えば、各々のヘッドユニット13を搬送方向に対して直交させたり、4つのヘッドユニット13を互いに平行に配置したりする等の調整を行う。なお、移動調整工程は、上記した位置決め工程の実行前に行われてもよいし、位置決め工程の実行後に行われてもよい。
【0067】
具体的には、作業者が調整ネジ60(図8参照)を捩じ込むと、図9に示すように、第1のブロック51A(R)は調整バネ61の付勢力に抗して右方に移動する。すると、各ピン52が位置決め溝55に沿ってスライドしながら、ヘッドユニット13が平面視で時計回りに回転する。これにより、ヘッドユニット13の平面上における姿勢が変更(調整)される。また、作業者が調整ネジ60を引き抜く方向に回すと、第1のブロック51A(R)は調整バネ61の付勢力によって左方に移動し、ヘッドユニット13は平面視で反時計回りに回転する(図示せず)。
【0068】
以上説明した本実施形態に係る位置決め機構50(位置決め方法)によれば、移動調整部53が第1のブロック51A(R)を搬送方向に沿って移動させることで、ピン52とブロック51との平面上での位置を調整することができる。これにより、ヘッドユニット13を更に正確に位置決めすることが可能になり、各々のヘッドユニット13を搬送方向に対して直交させる姿勢とし、4つのヘッドユニット13を平行に配置することができる。
【0069】
また、本実施形態に係る位置決め機構50では、移動調整部53が、ヘッドユニット13の後方(幅方向の他方)に単独で位置する第1のブロック51A(R)を搬送方向に沿って移動させる構成とした。この構成によれば、後方の第1のブロック51A(R)を大きく移動させたとしても、ヘッドユニット13の前方の移動量を小さくすることができる。これにより、ヘッドユニット13を回転方向に微調整することができる。
【0070】
<昇降調整工程>
次に、画像形成処理の前などに、制御部18は印刷に用いられる用紙Sの厚さに応じて昇降調整工程を実行する。昇降調整工程では、3つのピン52を昇降させ、ヘッドユニット13(吐出ヘッド20)と搬送部14(搬送ベルト25)との距離を変更(調整)する。なお、用紙Sの厚さは、ユーザーが画像形成装置1のタッチパネル(図示せず)等を手動操作して制御部18へ入力してもよいし、給紙カセット3Aや手差しトレイ3B等に設けられた用紙Sの厚みを検知するセンサー(図示せず)から制御部18へ入力されてもよい。また、昇降調整工程は、上記した位置決め工程の実行前に行われてもよいし、位置決め工程の実行後に行われてもよい。
【0071】
具体的には、図8に示すように、制御部18はカムモーター68を駆動制御し、昇降カム65を所望の角度まで回転させる。昇降カム65の回転に伴って、ピン52は、昇降バネ66の付勢力に抗して押し下げたり、昇降バネ66の付勢力によって押し上げられたりする。昇降カム65は所望の角度で保持され、ホルダー21からのピン52の突き出し量が変化する。このピン52の先端部をブロック51の位置決め溝55に嵌めることで、搬送部14に対するヘッドユニット13の高さが変化する。なお、カムモーター68の回転角度と、昇降カム65によるピン52の押し込み量との関係は、予め制御部18のメモリーに記憶されている。
【0072】
以上説明した本実施形態に係る位置決め機構50(位置決め方法)によれば、昇降調整部54が各ピン52を昇降させることで、ヘッドユニット13と搬送部14との距離を調整することができる。これにより、印刷を行う用紙Sの厚みに応じてヘッドユニット13の高さを調整することで、用紙Sとノズル面20Aとの距離(インク滴の吐出距離)を一定にすることができる。その結果、良好な画像形成(印刷)を担保することができる。
【0073】
なお、本実施形態に係る位置決め機構50では、ブロック51が搬送部14(搬送フレーム28の上面)に設けられ、ピン52がヘッドユニット13(ホルダー21の下面)に設けられていたが、本発明はこれに限定されない。これとは逆に、ブロック51がヘッドユニット13に設けられ、ピン52が搬送部14に設けられてもよい(図示せず)。
【0074】
また、本実施形態に係る位置決め機構50では、2つの第1のブロック51Aの間の距離(D)が第1のブロック51A(F)と第2のブロック51Bとの間の距離(W)よりも長く設定されていたが、これに限らず、距離(D)が距離(W)より短く設定されてもよいし、距離(W)と同一であってもよい(図示せず)。また、3つのブロック51は、平面視で略直角三角形の頂点を成す位置に配置されていたが、これに限らず、例えば、二等辺三角形や正三角形等の異なる三角形の頂点を成す位置に配置されてもよい(図示せず)。
【0075】
また、本実施形態に係る位置決め機構50では、略V字状断面を有する位置決め溝55がブロック51に凹設されていたが、本発明はこれに限定されない。位置決め溝55は、一対の傾斜面56を有していればよく、例えば、一対の傾斜面56の下端を水平面として略台形状の断面を有してもよい(図示せず)。
【0076】
また、本実施形態に係る位置決め機構50では、第1のブロック51Aの位置決め溝55が前後方向(幅方向)に延設され、第2のブロック51Bの位置決め溝55が左右方向(搬送方向)に延設されていたが、本発明はこれに限定されない。これとは逆に、第1のブロック51Aの位置決め溝55が左右方向(搬送方向)に延設され、第2のブロック51Bの位置決め溝55が前後方向(幅方向)に延設されてもよい(図示せず)。
【0077】
また、本実施形態に係る位置決め機構50では、ピン52の先端部が半球状に丸められていたが、これに限らず、例えば、ピン52の先端は平坦な端面を形成していてもよい(図示せず)。つまり、ピン52の先端形状は、一対の傾斜面56に2点で接することができれば、どのような形状であってもよい。
【0078】
また、本実施形態に係る位置決め機構50では、移動調整部53によって移動される第1のブロック51A(R)が左右方向にスライド可能に設けられ、昇降調整部54によって昇降される各ピン52が上下方向にスライド可能に設けられていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、移動調整部53と昇降調整部54の少なくとも一方は省略されてもよく、この場合には、第1のブロック51A(R)や各ピン52が固定的に設けられていてもよい。
【0079】
また、本実施形態に係る位置決め機構50では、移動調整部53が第1のブロック51A(R)を搬送方向に沿って移動させていたが、本発明はこれに限定されない。移動調整部53は、少なくとも1つのブロック51を、少なくとも平面視で位置決め溝55の延設方向に直交する方向に沿って移動させることができればよく、例えば、3つ全てのブロック51を搬送方向または/および幅方向に沿って移動させてもよい(図示せず)。また、移動調整部53は、ブロック51を移動させていたが、これに限らず、少なくとも1つのピン52を、少なくとも平面視で位置決め溝55の延設方向に直交する方向に沿って移動させてもよい(図示せず)。
【0080】
また、本実施形態に係る位置決め機構50では、昇降調整部54が3つのピン52を昇降させていたが、本発明はこれに限定されない。昇降調整部54は、少なくとも1つのピン52を昇降させることができればよい(図示せず)。また、昇降調整部54は、ピン52の昇降に代えて、少なくとも1つのブロック51を昇降させてもよい(図示せず)。
【0081】
また、本実施形態に係る位置決め機構50では、移動調整部53が調整ネジ60を備えていたが、これに代えて、昇降調整部54のような偏心カム(図示せず)を備えてもよい。昇降調整部54が昇降カム65を備えていたが、これに代えて、移動調整部53のようなネジ部材(図示せず)を備えてもよい。移動調整部53や昇降調整部54は、ブロック51やピン52を移動(昇降)させる機構として、ボールネジ、ソレノイド、ピストン・シリンダー、ラック・アンド・ピニオン等を採用してもよい(図示せず)。また、昇降部30は、ヘッドユニット13を昇降させる機構としてボールネジ33を採用していたが、これに限らず、昇降調整部54等のように、カム機構、ソレノイド、ピストン・シリンダー、ラック・アンド・ピニオン等を採用してもよい(図示せず)。
【0082】
また、本実施形態に係る位置決め機構50では、移動調整部53が手動で、昇降調整部54がモーター駆動であったが、本発明はこれに限定されない。移動調整部53がモーター駆動とされ、昇降調整部54が手動とされてもよい(図示せず)。
【0083】
また、本実施形態に係る画像形成装置1は、カラープリンターであったが、これに限らず、モノクロプリンター、コピー機、ファクシミリ等であってもよい。
【0084】
なお、上記実施形態の説明は、本発明に係るヘッドユニットの位置決め機構並びに画像形成装置およびヘッドユニットの位置決め方法における一態様を示すものであって、本発明の技術範囲は、上記実施態様に限定されるものではない。本発明は技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよく、特許請求の範囲は技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様を含んでいる。
【符号の説明】
【0085】
1 画像形成装置
13 ヘッドユニット
14 搬送部
30 昇降部
50 位置決め機構
51 ブロック
51A 第1のブロック
51B 第2のブロック
52 ピン
53 移動調整部
54 昇降調整部
55 位置決め溝
56 傾斜面
S 用紙(媒体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8
図9