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特許7655019クランクスプロケット及びクランクスプロケットの取付構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-25
(45)【発行日】2025-04-02
(54)【発明の名称】クランクスプロケット及びクランクスプロケットの取付構造
(51)【国際特許分類】
   F02B 77/00 20060101AFI20250326BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20250326BHJP
【FI】
F02B77/00 K
F16F15/02 Q
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021039851
(22)【出願日】2021-03-12
(65)【公開番号】P2022139454
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮代 広輝
(72)【発明者】
【氏名】眞鍋 和幹
(72)【発明者】
【氏名】原 由一
【審査官】上田 真誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-021981(JP,A)
【文献】特開2008-128316(JP,A)
【文献】実開平06-010087(JP,U)
【文献】特開2015-209974(JP,A)
【文献】独国実用新案第202018103329(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 77/00
F16H 55/30
F16F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のクランクシャフトの軸方向の一端側に取り付けられ、タイミングチェーンが巻き掛けられるクランクスプロケットであって、
前記クランクスプロケットは、スプロケット基体と、制振樹脂層とを備え、
前記スプロケット基体は、内周面及び外周面を有する環状部と、前記環状部の前記外周面に配置された歯部とを含み、
前記環状部の前記内周面に前記クランクシャフトに挿嵌されるための挿嵌孔が形成され、
前記制振樹脂層は、前記環状部の前記内周面における前記挿嵌孔を除く部分に形成され、
前記制振樹脂層は、前記環状部の前記内周面における前記挿嵌孔の内部に形成されておらず、
前記制振樹脂層は、耐熱性樹脂と、振動エネルギーを熱エネルギーに変換する制振フィラーとを含むことを特徴とするクランクスプロケット。
【請求項2】
前記制振樹脂層の厚さは、10μm以上であることを特徴とする請求項1に記載のクランクスプロケット。
【請求項3】
前記制振樹脂層における前記耐熱性樹脂及び前記制振フィラーの合計体積に対する前記制振フィラーの体積比は、40体積%以上60体積%以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のクランクスプロケット。
【請求項4】
前記制振フィラーは、熱可塑性エラストマーであることを特徴とする請求項1に記載のクランクスプロケット。
【請求項5】
前記制振フィラーは、ウレタン系化合物であることを特徴とする請求項1に記載のクランクスプロケット。
【請求項6】
前記制振フィラーは、ポリエチレン系化合物であることを特徴とする請求項1に記載のクランクスプロケット。
【請求項7】
前記制振フィラーは、エステル共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のクランクスプロケット。
【請求項8】
前記制振フィラーは、ゴム系材料であることを特徴とする請求項1に記載のクランクスプロケット。
【請求項9】
前記制振フィラーは、マイクロカプセル系材料であることを特徴とする請求項1に記載のクランクスプロケット。
【請求項10】
前記制振フィラーは、材料内部に空気層を含有する低密度材料であることを特徴とする請求項1に記載のクランクスプロケット。
【請求項11】
前記制振樹脂層は、ポリテトラフルオロチエチレン(PTFE)、二硫化モリブデン(MoS)、及びグラファイト(黒鉛)から選択される1種以上を含有する固体潤滑剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のクランクスプロケット。
【請求項12】
前記制振樹脂層は、アルミナ(Al)及びシリカから選択される1種以上を含有する硬質粒子をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のクランクスプロケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のクランクシャフトの軸方向の一端側に取り付けられ、タイミングチェーンが巻き掛けられるクランクスプロケット及びクランクスプロケットの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のエンジン等の内燃機関では、クランクシャフトがシリンダブロック等を含む内燃機関本体を貫通しており、クランクシャフトの軸方向の一端がシリンダブロックの外部に突出している。また、シリンダブロックの上部にはシリンダヘッドが取り付けられている。シリンダヘッドには、吸気用カムシャフトと排気用カムシャフトとが配置されている。そして、カムシャフト駆動機構によって、クランクシャフトにより各カムシャフトが回転駆動されるようになっている。
【0003】
カムシャフト駆動機構は、クランクシャフトの軸方向の一端側に取り付けられたクランクスプロケットと、吸気用カムシャフトの軸方向の一端側に取り付けられた吸気用カムスプロケットと、排気用カムシャフトの軸方向の一端側に取り付けられた排気用カムスプロケットとを備えている。また、カムシャフト駆動機構は、クランクスプロケット及び各カムスプロケットに巻き掛けられ、クランクスプロケットの駆動回転により各カムスプロケットを従動回転させるタイミングチェーンをさらに備えている。
【0004】
カムシャフト駆動機構として、例えば、特許文献1には、タイミングチェーンと接触する複数のローラと、複数のローラの支持軸の両端を支持するタイミングチェーンの走行方向に沿って設けられた対向する側板部材とからなるチェーンガイドであって、ローラの支持軸と、支持軸の両端を支持する側板部材の支持凹所との間に制振材を収容したチェーンガイドが適用された駆動機構が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-189201号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたカムシャフト駆動機構では、チェーンガイドが、タイミングチェーンと接触するローラの支持軸と、支持軸の両端を支持する側板部材の支持凹所との間に制振材を収容している。このため、タイミングチェーンとの接触で発生するローラの振動を制振材で吸収できる。これにより、チェーンガイドの側板部材に振動が伝達することを抑制することで振動や騒音を低減できる。
【0007】
このような従来のカムシャフト駆動機構では、タイミングチェーンとチェーンガイドとの接触で発生する振動がエンジン本体に伝達し、外部に騒音として放射されることを抑制できる。しかしながら、カムシャフト駆動機構では、タイミングチェーンと他の構成部品との接触等を原因とする振動やそれから発生する騒音を低減することがさらに求められている。さらに、自動車等の車両の電動化に伴い、NV(騒音及び振動)性能への要求水準が従来以上に高まっている。
【0008】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、振動の伝達を抑制できるクランクスプロケット及びクランクスプロケットの取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、本発明のクランクスプロケットは、内燃機関のクランクシャフトの軸方向の一端側に取り付けられ、タイミングチェーンが巻き掛けられるクランクスプロケットであって、上記クランクスプロケットは、スプロケット基体と、上記スプロケット基体の内周面又は歯面に形成された制振樹脂層とを備え、上記制振樹脂層は、耐熱性樹脂と、振動エネルギーを熱エネルギーに変換する制振フィラーとを含むことを特徴とする。
【0010】
本発明のクランクスプロケットによれば、振動の伝達を抑制できる。
【0011】
上記クランクスプロケットにおいては、上記制振樹脂層は、上記スプロケット基体の上記内周面に形成されたものでもよい。
【0012】
上記クランクスプロケットにおいては、上記制振樹脂層の厚さは、10μm以上でもよい。
【0013】
また、本発明のクランクスプロケットの取付構造は、タイミングチェーンが巻き掛けられるクランクスプロケットが、内燃機関のクランクシャフトの軸方向の一端側に取り付けられたクランクスプロケットの取付構造であって、上記クランクスプロケットのスプロケット基体の内周面と上記クランクシャフトのシャフト基体の外周面との間、又は上記スプロケット基体の歯面に制振樹脂層が配置され、上記制振樹脂層は、耐熱性樹脂と、振動エネルギーを熱エネルギーに変換する制振フィラーとを含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の取付構造によれば、振動の伝達を抑制できる。
【0015】
上記取付構造においては、上記制振樹脂層は、上記スプロケット基体の内周面と上記シャフト基体の外周面との間に配置されたものでもよい。
【0016】
上記取付構造においては、上記制振樹脂層は、上記スプロケット基体の上記内周面に形成され、上記クランクスプロケットに備えられたものでもよい。
【0017】
上記取付構造においては、上記制振樹脂層の厚さは、10μm以上でもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、振動の伝達を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係るクランクスプロケットの取付構造が適用されるエンジンを概略的に示す分解斜視図である。
図2】第1実施形態に係るクランクスプロケットの取付構造及びその周辺を示すエンジンの概略断面図である。
図3A図2に示すX部の拡大図である。
図3B図3AにおけるA-A線に沿った断面図である。
図4】落球試験機を模式的に示す断面図である。
図5】実施例1~11及び比較例1のテストピースにおける制振樹脂層の厚さに対する鋼球衝突時に生じた音の音圧レベルを示すグラフである。
図6】実施例8及び比較例1で得られた実装クランクスプロケットでのタイミングチェーンカバーに伝達される振動の音圧レベルのオーバーオール値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のクランクスプロケット及びクランクスプロケットの取付構造に係る実施形態について説明する。
【0021】
最初に、実施形態に係るクランクスプロケット及びクランクスプロケットの取付構造の概略について、第1実施形態に係るクランクスプロケット及びその取付構造を例示して説明する。図1は、第1実施形態に係るクランクスプロケットの取付構造が適用されるエンジンを概略的に示す分解斜視図である。図2は、第1実施形態に係るクランクスプロケットの取付構造及びその周辺を示すエンジンの概略断面図である。図3Aは、図2に示すX部の拡大図であり、図3Bは、図3AにおけるA-A線に沿った断面図である。
【0022】
図1に示すエンジンE(内燃機関)においては、シリンダブロック1(エンジン本体)の上部にシリンダヘッド11(エンジン本体)が取り付けられているとともに、シリンダブロック1の下部にクランクケース12(エンジン本体)を介してオイルパン13が取り付けられている。
【0023】
シリンダブロック1及びシリンダヘッド11は、鉄(鋳鉄)、アルミニウム、マグネシウム等の金属、これらを含む合金などにより構成されている。また、これらシリンダブロック1とシリンダヘッド11とは、図示しないガスケット(メタルガスケット又は液状ガスケット(FIPG:Formed In Place Gasket))を介して複数のボルトで締結されている。
【0024】
シリンダヘッド11には、吸気用カムシャフト14と排気用カムシャフト15とが配置されている。また、図2に示すように、クランクケース12には、クランクシャフト16が配置されている。そして、クランクシャフト16により各カムシャフト14,15が回転駆動されるようになっている。以下、各カムシャフト14,15を回転駆動させるためのカムシャフト駆動機構について説明する。
【0025】
カムシャフト駆動機構は、図1及び図2に示すように、クランクシャフト16の軸方向の一端側に回転一体に取り付けられたクランクスプロケット21と、シリンダヘッド11の吸気用カムシャフト14の軸方向の一端側に回転一体に取り付けられた吸気用カムスプロケット22と、シリンダヘッド11の排気用カムシャフト15の軸方向の一端側に回転一体に取り付けられた排気用カムスプロケット23とを備えている。また、カムシャフト駆動機構は、クランクスプロケット21及び各カムスプロケット22,23に巻き掛けられ、クランクスプロケット21の駆動回転により各カムスプロケット22,23を従動回転させるタイミングチェーン24をさらに備えている。
【0026】
クランクスプロケット21は、図3A及び図3Bに示すように、スプロケット基体21aと、スプロケット基体21aの環状部21arの内周面21ac(スプロケット基体の
内周面)に形成された制振樹脂層21bとを備えている。これにより、スプロケット基体21aの環状部21arの内周面21acと、シャフト基体16aの外周面16acとの間に制振樹脂層21bが配置されている。制振樹脂層21bは、耐熱性樹脂と、振動エネルギーを熱エネルギーに変換する制振フィラーとを含んでいる。
【0027】
カムシャフト駆動機構の下方には、図1及び図2に示すように、クランクシャフト16によりオイルポンプ32を回転駆動するオイルポンプ駆動機構が設けられている。オイルポンプ駆動機構は、クランクシャフト16のクランクスプロケット21よりもクランクケース12側に回転一体に取り付けられたオイルポンプ用スプロケット31と、オイルポンプ32の一端側に回転一体に取り付けられたオイルポンプスプロケット32aとを備えている。また、オイルポンプ駆動機構は、オイルポンプ用スプロケット31及びオイルポンプスプロケット32aに巻き掛けられ、オイルポンプ用スプロケット31の駆動回転によりオイルポンプスプロケット32aを従動回転させるオイルポンプドライブチェーン33をさらに備えている。
【0028】
カムシャフト駆動機構及びオイルポンプ駆動機構は、シリンダヘッド11、シリンダブロック1、及びクランクケース12の一端側の面において取り付けられたアルミニウム合金製のタイミングチェーンカバー4によって外方から覆われ、タイミングチェーンカバー4の内部空間に収容されている。なお、図1中において、25はタイミングチェーン24の張力を調整するチェーンテンショナ装置、26は排気用カムスプロケット23とクランクスプロケット21との間に位置するタイミングチェーン24の張架部分をガイドするチェーンバイブレーションダンパである。
【0029】
タイミングチェーンカバー4の内部に形成される空間にはタイミングチェーン24を潤滑するためエンジンオイルが循環される。このため、タイミングチェーンカバー4の端面であって、シリンダヘッド11及びシリンダブロック1との接合面には、シール部材として図示しない液状ガスケットが設けられている。液状ガスケットにより、タイミングチェーンカバー4の外縁部分からのオイル漏れを回避している。図2及び図3Aに示すように、クランクシャフト16の軸方向の一端は、タイミングチェーンカバー4の開口42bに挿通し、タイミングチェーンカバー4よりも外方に突出している。クランクシャフト16の軸方向の一端には、ベルト伝動によって各種補機類(オルタネータやエアコン用コンプレッサ等)を駆動させるためのクランクプーリ41が回転一体に取り付けられている。そして、クランクシャフト16が挿通するタイミングチェーンカバー4の開口42bの隙間には、オイル漏れを阻止するオイルシール60が設けられている。
【0030】
なお、エンジンEでは、エンジン自体をシャシーに懸架するためのエンジンマウントブラケット5がタイミングチェーンカバー4に設けられている。エンジンマウントブラケット5の素材は、剛性の高い鉄(鋳鉄)となっている。エンジンマウントブラケット5は、複数本の締結ボルト51,51,・・・によってタイミングチェーンカバー4に締結されるとともに、シリンダヘッド11にも締結されている。さらに、ウォータポンプ45が設けられている。ウォータポンプ45は、クランクシャフト16の回転力を受けて駆動して冷却水の循環動作を行うようになっている。
【0031】
以上のように構成されたエンジンEにおいて、第1実施形態に係るクランクスプロケット21の取付構造では、クランクスプロケット21のスプロケット基体21aの環状部21arの内周面21acと、クランクシャフト16のシャフト基体16aの外周面16acとの間に制振樹脂層21bが配置されており、制振樹脂層21bが、耐熱性樹脂と、振動エネルギーを熱エネルギーに変換する制振フィラーとを含んでいる。よって、スプロケット基体21a及びシャフト基体16aの間の振動の伝達を、制振樹脂層31aにより抑制できる。具体的には、例えば、スプロケット基体21aの歯部21at及びタイミングチェーン24が噛み合うことで発生する振動等のような振動の伝達を抑制できる。このため、その振動が、クランクシャフト16に伝達した後に、オイルシール60を経由してタイミングチェーンカバー4にまで伝達し、外部に騒音として放射されることを抑制できる。
【0032】
さらに、第1実施形態に係るクランクスプロケット21では、特許文献1に記載されたチェーンガイドの構造とは異なり、部品の既存の構造を大きく変更せずに、新たに制振樹脂層21bを形成するだけで、振動や騒音を抑制できる。
【0033】
従って、実施形態に係るクランクスプロケット及びクランクスプロケットの取付構造によれば、振動の伝達を抑制できる。そして、その振動から発生する騒音を抑制できる。さらに、部品の既存の構造を大きく変更せずに、振動や騒音を抑制できる。
【0034】
続いて、実施形態に係るクランクスプロケット及びクランクスプロケットの取付構造の詳細について、説明する。
【0035】
1.クランクスプロケット
クランクスプロケットは、内燃機関のクランクシャフトの軸方向の一端側に取り付けられ、タイミングチェーンが巻き掛けられるものであって、スプロケット基体と、上記スプロケット基体の内周面又は歯面に形成された制振樹脂層とを備える。
【0036】
(1)スプロケット基体
スプロケット基体は、内周面又は歯面を有するものであり、通常、第1実施形態に係るスプロケット基体のように、環状部と、環状部の外周面に配置された歯部とを含むものである。
【0037】
環状部は、クランクシャフトに挿嵌されるための挿嵌孔が形成され、内周面(スプロケット基体の内周面)を有する。環状部の材料としては、例えば、鋼等を用いることができる。歯部は、通常、等ピッチで環状部の外周面に複数配置され、歯面(スプロケット基体の歯面)を有する。歯部のピッチは、タイミングチェーンと噛み合うことができれば特に限定されない。歯部の材料としては、例えば、鋼等を用いることができる。
【0038】
(2)制振樹脂層
制振樹脂層は、上記スプロケット基体の内周面又は歯面に形成されたものである。上記制振樹脂層は、耐熱性樹脂と、振動エネルギーを熱エネルギーに変換する制振フィラーとを含む。
【0039】
制振樹脂層としては、上記スプロケット基体の内周面に設けられたものが好ましい。制振樹脂層がスプロケット基体の歯面に形成されたものである場合のように、スプロケット基体の歯部及びタイミングチェーンが噛み合う際に強い面圧が加わることがないので、剥離するおそれがないからである。
【0040】
制振樹脂層の厚さは、特に限定されないが、例えば、10μm以上が好ましく、中でも20μm以上が好ましく、特に50μm以上が好ましい。振動の伝達の遮断作用が十分に得られるようになるからである。制振樹脂層の厚さは、例えば、400μm以下が好ましく、中でも200μm以下が好ましく、特に100μm以下が好ましい。振動の遮断作用の向上が飽和するからであり、コーティングによる層の形成が容易になるからである。
【0041】
耐熱性樹脂は、特に限定されずに、100℃以上の熱変形温度を有するものであれば特に限定されないが、150℃以上の熱変形温度を有するものが好ましい。耐熱性樹脂の例としては、特に限定されずに、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリフェニルサルファイド樹脂等を挙げることができる。被膜を形成する際の作業性と摩擦による発熱に対する耐熱性の観点からポリアミドイミド樹脂がさらに好ましい。これらの耐熱性樹脂は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
制振フィラーは、振動エネルギーを熱エネルギーに変換するものである。制振フィラーとしては、特に限定されないが、低弾性率で変形し易い材料と、内部でエネルギー散逸が起こり易い材料とに大別できる。低弾性率で変形し易い材料とは、より具体的には、固体であるが、顕著に弾性的な特性と粘性的な特性の両方を合わせ持った材料のことである。弾性的な特性と粘性的な特性は全ての材料が合わせ持つ特性であるが、低弾性率で変形し易い材料は、顕著にこれらの特性の両方を合わせ持っている。このため、低弾性率で変形し易い材料を制振樹脂層に含有させることにより、常温域での制振樹脂層自体のゴム弾性を増加できる。これにより、制振樹脂層により効果的に外部から入力される振動を吸収し熱エネルギーに変換することで、振動の伝達を効果的に遮断できると考えられる。一方、内部でエネルギー散逸が起こり易い材料は、振動を材料内に存在する空気層で乱反射させて熱エネルギーへ変換させることにより、振動を減衰させる効果を有している。このため、内部でエネルギー散逸が起こり易い材料を制振樹脂層に含有させると、制振樹脂層により振動の伝達を効果的に遮断できると考えられる。
【0043】
低弾性率で変形し易い材料の例としては、熱可塑性エラストマー、ウレタン系化合物、ポリエチレン系化合物、エステル共重合体、ゴム系材料などが挙げられる。熱可塑性エラストマーは、一般的に、常温では、ゴムの特性を有し、高温では、熱可塑性プラスチックと同等の性能を有している。熱可塑性エラストマーの例としては、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらの例は、例えば、特開2016-113614号公報、特開2017-197733号公報等に挙げられている。ウレタン系化合物の例としては、ウレタン樹脂等が挙げられる。これらの例は、例えば、特開平8-183945号公報等に挙げられている。ポリエチレン系化合物の例としては、エチレンの単独重合体、エチレンとα-オレフィレン単量体との共重合体等が挙げられる。これらの例は、例えば、特表2009-532570号公報等に挙げられている。エステル共重合体の例としては、アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。これらの例は、例えば、特許第3209499号公報等に挙げられている。ゴム系材料の例としては、ブチルゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。これらの例は、例えば、特開2009-236172号公報等に挙げられている。
【0044】
内部でエネルギー散逸が起こり易い材料の例としては、マイクロカプセル系材料、低密度材料などが挙げられる。マイクロカプセル系材料の例としては、熱可塑性高分子からなるシェルの内部に所定の温度域になると膨張する気化物質を内包する熱膨張性マイクロカプセル等が挙げられる。これらの例は、特開2013-18855号公報等に挙げられている。低密度材料の例としては、例えば、材料内部に空気層を含有する材料全般であり、具体的には、例えば、発泡材料、多孔質体、不織布、層状化合物等が挙げられる。これらの例は、例えば、特開平3-221173号公報、特許第4203589号公報等に挙げられている。以上に挙げた制振フィラーは、1種のみを単独で使用しても良く、2種以上を併用してもよい。
【0045】
制振樹脂層は、耐熱性樹脂及び制振フィラーに加えて、固体潤滑剤や硬質粒子等の任意の成分を含んでもよい。制振樹脂層に、耐摩耗性、耐焼付き性、低摩擦特性等の特性を付与できるからである。固体潤滑剤としては、特に限定されずに、例えば、ポリテトラフルオロチエチレン(PTFE)、二硫化モリブデン(MoS)、グラファイト(黒鉛)等が挙げられる。これらの固体潤滑剤は、1種のみを単独で使用しても良く、2種以上を併用してもよい。硬質粒子としては、特に限定されずに、アルミナ(Al)、シリカ等が挙げられる。これらの硬質粒子は、1種のみを単独で使用しても良く、2種以上を併用してもよい。
【0046】
制振樹脂層における耐熱性樹脂及び制振フィラーの合計体積に対する制振フィラーの体積比は、特に限定されないが、例えば、20体積%以上80体積%以下が好ましく、中でも40体積%以上60体積%以下の範囲内が好ましい。これらの範囲の下限以上であることにより、より効率的に、フィラーによって、振動エネルギーを熱エネルギーに変換できるからである。また、これらの範囲の上限以下であることにより、樹脂コーティングとしての耐久性(例えば耐摩耗性や密着力など)を担保できるからである。なお、制振樹脂層における耐熱性樹脂及び制振フィラー以外の任意の成分の体積比は、特に限定されず、種類に応じて選択することができる。
【0047】
制振樹脂層は、特に限定されず、所望の周波数の振動の伝達を抑制するものであればよいが、例えば、周波数2kHzの振動の伝達を抑制するものが好ましい。騒音を特に効果的に抑制できるからである。なお、制振樹脂層を所望の周波数の振動の伝達を抑制するものに調整するためには、例えば、制振樹脂層における制振フィラーや耐熱性樹脂等の各成分の種類や含有量、制振樹脂層の厚さなどを調整すればよい。
【0048】
制振樹脂層の形成方法は、特に限定されないが、例えば、下記の方法等が挙げられる。
まず、所定量の耐熱性樹脂を有機溶剤に溶解させることで溶解液を調製する。次に、所定量の制振フィラーを溶解液に加え、必要に応じてさらに任意の成分を加え、混錬することで塗工材を調製する。次に、塗工材をスプロケット基体の内周面又は歯面に塗工する。次に、スプロケット基体に塗工された塗工材を加熱し、乾燥、硬化させる。これにより、制振樹脂層を形成する。
【0049】
上記の方法に用いる有機溶剤は、特に限定されずに耐熱性樹脂の種類に応じて選択される。有機溶剤としては、例えば、耐熱性樹脂としてポリアミドイミド樹脂を用いる場合には、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-エチル-2-ピロリドン(NEP)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、γ-ブチロラクトン(GBL)等が挙げられる。また、エポキシ樹脂を用いる場合には、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン等が挙げられる。
【0050】
塗工材を調製するための混錬の方法は、例えば、ニーダーを使用し、1時間混錬を行う方法等が挙げられる。塗工材のスプロケット基体への塗工方法は、特に限定されず、一般的な塗工方法を用いることができるが、スプレーコーティング、スクリーン印刷、ディッピング等が挙げられる。塗工材を乾燥、硬化させるための加熱条件は、特に限定されずに、例えば、100℃以上370℃以下の温度で30分以上3時間以下の時間加熱する条件等が挙げられる。
【0051】
2.クランクスプロケットの取付構造
クランクスプロケットの取付構造は、タイミングチェーンが巻き掛けられるクランクスプロケットが、内燃機関のクランクシャフトの軸方向の一端側に取り付けられた構造である。クランクスプロケットの取付構造では、上記クランクスプロケットのスプロケット基体の内周面と上記クランクシャフトのシャフト基体の外周面との間、又は上記スプロケット基体の歯面に制振樹脂層が配置されている。上記制振樹脂層は、耐熱性樹脂と、振動エネルギーを熱エネルギーに変換する制振フィラーとを含む。
【0052】
クランクスプロケットの取付構造としては、上記制振樹脂層が、上記スプロケット基体の内周面と上記シャフト基体の外周面との間に配置された構造が好ましい。制振樹脂層がスプロケット基体の歯面に形成されたものである場合のように、スプロケット基体の歯部及びタイミングチェーンが噛み合う際に強い面圧が加わることがないので、剥離するおそれがないからである。
【0053】
取付構造における制振樹脂層としては、上記クランクスプロケットに備えられたもの好ましい。具体的には、制振樹脂層としては、スプロケット基体の内周面又は歯面に形成され、クランクスプロケットに備えられたもの好ましい。制振樹脂層がシャフト基体の外周面に形成され、クランクシャフトに備えられたものである場合と比較して、制振樹脂層の形成プロセス等での部材の取り回しが容易となるからである。取付構造における制振樹脂層としては、中でも、上記スプロケット基体の上記内周面に形成され、上記クランクスプロケットに備えられたものが好ましい。
【0054】
取付構造における制振樹脂層の厚さ及び制振樹脂層に含まれる耐熱性樹脂及び制振フィラーについては、「1.クランクスプロケット (2)制振樹脂層」の項目に記載されたものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【実施例
【0055】
以下、実施例及び比較例を挙げて、実施形態に係るクランクスプロケット及びクランクスプロケットの取付構造をさらに具体的に説明する。
【0056】
[実施例1]
最初に、クランクスプロケットの制振樹脂層に形成に用いる塗工材を調製した。具体的には、まず、ポリアミドイミド樹脂を耐熱性樹脂として準備し、N-エチル-2-ピロリドン(NEP)(有機溶剤)に所定量溶解させることで溶解液を調製した。次に、熱可塑性エラストマーを制振フィラーとして準備し、溶解液に所定量加え、ニーダーを使用し、1時間混錬した。これにより、制振樹脂層における耐熱性樹脂及び制振フィラーの合計体積に対する制振フィラーの体積比が50体積%となるように、塗工材を調製した。
【0057】
続いて、ブロック形状の基材の表面に制振樹脂層が形成されたテストピースを作製した。具体的には、まず、SUS440Cからなるブロック形状の基材を準備し、基材の表面に塗工材をスプレーコーティングにより所定量塗工した。次に、基材に塗工された塗工材を180℃で90分間加熱することにより、有機溶剤を揮発させ、塗工材を乾燥、硬化させた。これにより、基材の表面に厚さが1μmの制振樹脂層を形成することでテストピースを作製した。
【0058】
[実施例2]
厚さが5μmとなるように制振樹脂層を形成した点を除いて、実施例1と同様にテストピースを作製した。
【0059】
[実施例3]
厚さが10μmとなるように制振樹脂層を形成した点を除いて、実施例1と同様にテストピースを作製した。
【0060】
[実施例4]
厚さが20μmとなるように制振樹脂層を形成した点を除いて、実施例1と同様にテストピースを作製した。
【0061】
[実施例5]
厚さが50μmとなるように制振樹脂層を形成した点を除いて、実施例1と同様にテストピースを作製した。
【0062】
[実施例6]
厚さが100μmとなるように制振樹脂層を形成した点を除いて、実施例1と同様にテストピースを作製した。
【0063】
[実施例7]
厚さが200μmとなるように制振樹脂層を形成した点を除いて、実施例1と同様にテストピースを作製した。
【0064】
[実施例8]
最初に、ウレタン樹脂を制振フィラーとして準備し、溶解液に所定量加えた点を除いて、実施例1と同様に塗工材を調製した。
【0065】
続いて、本実施例で調製した塗工材を用い、厚さが100μmとなるように制振樹脂層を形成した点を除いて、実施例1と同様にテストピースを作製した。
【0066】
続いて、スプロケット基体の内周面に制振樹脂層が形成されたクランクスプロケットを作製し、エンジンに実装することにより、実装クランクスプロケットを作製した。
【0067】
具体的には、まず、SUS440Cからなるスプロケット基体を準備した。次に、スプロケット基体の内周面に本実施例で調製した塗工材をスプレーコーティングにより所定量塗工した。次に、スプロケット基体に塗工された塗工材を180℃で90分間加熱することにより、有機溶剤を揮発させ、塗工材を乾燥、硬化させた。これにより、スプロケット基体の内周面に厚さが100μmの制振樹脂層を形成することでクランクスプロケットを作製した。
【0068】
次に、シリンダブロック、シリンダヘッド、クランクシャフト、カムシャフト、カムスプロケット、タイミングチェーン、及びタイミングチェーンカバー等を準備した。次に、クランクシャフトの軸方向の一端側にクランクスプロケットを回転一体に取り付けた。この際には、クランクスプロケットのスプロケット基体の内周面と、クランクシャフトのシャフト基体の外周面との間に制振樹脂層を配置した。次に、シリンダブロック、シリンダヘッド、クランクシャフト、カムシャフト、及びカムスプロケットを組み立て、クランクスプロケットが取り付けられたクランクシャフトをそれらに取り付けた。次に、タイミングチェーンをクランクスプロケット及びカムスプロケットに巻き掛け、タイミングチェーンカバー等をシリンダブロック等に取り付けた。これにより、エンジンを作製するとともに、実装クランクスプロケットを作製した。
【0069】
[実施例9]
最初に、厚さが200μmとなるように制振樹脂層を形成した点を除いて、実施例8と同様にテストピースを作製した。
【0070】
[実施例10]
最初に、マイクロカプセルを制振フィラーとして準備し、溶解液に所定量加えた点を除いて、実施例1と同様に塗工材を調製した。
【0071】
続いて、本実施例で調製した塗工材を用い、厚さが100μmとなるように制振樹脂層を形成した点を除いて、実施例1と同様にテストピースを作製した。
【0072】
[実施例11]
最初に、厚さが200μmとなるように制振樹脂層を形成した点を除いて、実施例10と同様にテストピースを作製した。
【0073】
[比較例1]
最初に、実施例1と同様のブロック形状の基材を準備し、制振樹脂層を形成せずにそのままテストピースとした。
【0074】
続いて、実施例8と同様のスプロケット基体を準備し、制振樹脂層を形成せずにそのままクランクスプロケットとした点を除いて、実施例1と同様に、エンジンを作製するとともに、実装クランクスプロケットを作製した。
【0075】
〔落球試験でのNV性能への制振樹脂層の厚さの影響の評価〕
実施例1~11及び比較例1で得られたテストピースについて、落球試験を行い、NV性能への制振樹脂層の厚さの影響を評価した。図4は、落球試験機を模式的に示す断面図である。
【0076】
落球試験では、図4に示すように、テストピースを落球試験機の土台の上部に設置された加速度ピックアップ上の鋼板上に設置した。設置の際には、実施例1~11のテストピースについては、制振樹脂層が鋼板に当接するようにした。これは、落球試験の目的が、部品と部品の隙間に配置した制振樹脂層に衝撃が付与された際、騒音がどの程度抑制されるかを測定することにあるからである。落球試験機では、テストピースの直上にφ6.3mmのSUJ2製鋼球が電磁石で保持される。落球試験では、鋼球の落球前の高さ(テストピース上面からの距離)を500mmとした上で、落球試験機の磁力をオフにすることで鋼球を落下させることにより、テストピースに衝突させた。そして、衝突時に生じた音を、テストピース直上に設置したマイクロホンで集音し、周波数20Hz~10kHz帯域でのオーバーオール値の音圧レベルを計測した。計測結果を下記の表1に示す。図5は、実施例1~11及び比較例1のテストピースにおける制振樹脂層の厚さに対する鋼球衝突時に生じた音の音圧レベルを示すグラフである。
【0077】
下記の表1及び図5に示すように、制振樹脂層の厚さの増加に伴い、音圧レベルが低減していることから、NV性能は制振樹脂層の厚さの増加に伴い向上すると考えられる。比較例1の基材のみからなるテストピース、及び制振樹脂層の組成が同一の実施例1~7のテストピースを比較すると、制振樹脂層の厚さが10μmより薄いテストピースでは、基材のみからなるテストピースに対する音圧レベルの低減効果は認められるものの、大幅な低減効果は認められない。一方、制振樹脂層の厚さが10μm以上のテストピースでは、基材のみからなるテストピースに対し、5dB以上の音圧レベルの低減効果が認められる。従って、制振樹脂層の厚さとしては、10μm以上が好ましく、中でも20μm以上、特に50μm以上が好ましいと考えられる。さらに、下記の表1及び図5に示すように、制振樹脂層の制振フィラーの種類を変更したとしても、同様の傾向が認められる。
【0078】
〔実装クランクスプロケットのNV性能の評価〕
実施例8及び比較例1で得られた実装クランクスプロケットのNV性能を評価した。
具体的には、実装クランクスプロケットが実装されたエンジンのタイミングチェーンカバー前方(30cm)に音圧測定用のマイクロホンを設置した。その上で、エンジンのアクチュエータを、手動により1000~5000rpmの回転数で回転させることによって、エンジンを駆動させた。そして、マイクロホンにより、タイミングチェーンカバーから放射される周波数20Hz~20kHz帯域の音圧レベルのオーバーオール値を計測した。計測結果を下記の表1に示す。図6は、実施例8及び比較例1で得られた実装クランクスプロケットでのタイミングチェーンカバーに伝達される振動の音圧レベルのオーバーオール値を示すグラフである。なお、下記の表1及び図6では、比較例の音圧レベルのオーバーオール値を基準値とし、実施例の音圧レベルのオーバーオール値を基準値に対する相対値で示した
【0079】
下記の表1及び図6に示すように、実施例8で得られた実装クランクスプロケットでは、比較例1で得られた実装クランクスプロケットと比較すると、音圧レベルの大幅な低減効果が認められる。制振樹脂層をスプロケット基体の内周面に形成する場合には、例えば、スプロケット基体の歯部及びタイミングチェーンが噛み合うことで発生する振動等のような振動が、スプロケット基体からシャフト基体に伝達することを抑制できると考えられる。
【0080】
【表1】
【0081】
以上、本発明のクランクスプロケット及びクランクスプロケットの取付構造に係る実施形態について詳述したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0082】
E エンジン(内燃機関)
1 シリンダブロック(エンジン本体)
4 タイミングチェーンカバー
11 シリンダヘッド(エンジン本体)
12 クランクケース(エンジン本体)
13 オイルパン
14 吸気用カムシャフト
15 排気用カムシャフト
16 クランクシャフト
16a シャフト基体
16ac 外周面
21 クランクスプロケット
21a スプロケット基体
21ac 内周面
21b 制振樹脂層
22 吸気用カムスプロケット
23 排気用カムスプロケット
24 タイミングチェーン
25 チェーンテンショナ装置
26 チェーンバイブレーションダンパ
31 オイルポンプ用スプロケット
32 オイルポンプ
32a オイルポンプスプロケット
33 オイルポンプドライブチェーン
41 クランクプーリ
42b 開口
60 オイルシール
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6