(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-25
(45)【発行日】2025-04-02
(54)【発明の名称】ボディカバー
(51)【国際特許分類】
B62J 23/00 20060101AFI20250326BHJP
B62J 17/00 20200101ALI20250326BHJP
【FI】
B62J23/00 H
B62J17/00
B62J23/00 C
(21)【出願番号】P 2021046858
(22)【出願日】2021-03-22
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】澤田 富智美
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-187974(JP,A)
【文献】特開昭62-265083(JP,A)
【文献】実開平01-090682(JP,U)
【文献】特開2014-184867(JP,A)
【文献】特開2006-347343(JP,A)
【文献】米国特許第04479676(US,A)
【文献】中国特許出願公開第110979529(CN,A)
【文献】特開2016-008001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 23/00
B62J 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部にラジエータが配置された鞍乗型車両のボディカバーであって、
前記ラジエータを側方から覆うベースボディカバーを備え、
前記ベースボディカバーには、当該ベースボディカバーの外側からの走行風を前記ラジエータの後方空間に導く開口
と、前記開口の後縁に車体前方を向いた壁面と、が形成され、
前記壁面が前記開口の前縁よりも左右方向外側まで広がり、走行風が前記壁面に当たって前記開口に流れ込み、
前記開口から前記ラジエータの後方空間に走行風が導かれて、前記ラジエータから後方に向かう熱風に走行風が左右方向外側から合流し、走行風によって熱風の流れが車幅方向内側に押し込まれることを特徴とするボディカバー。
【請求項2】
側面視にて、前記ベースボディカバーには、前記ラジエータの後方空間を露出させる前記開口が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のボディカバー。
【請求項3】
前記ベースボディカバーはメインフレームを側方から覆っており、
前記ベースボディカバーには、当該ベースボディカバーと前記メインフレームの隙間を仕切る遮蔽板が形成されていることを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載のボディカバー。
【請求項4】
前記ベースボディカバーの外側に取り付けられたアウターボディカバーを備え、
側面視にて、前記アウターボディカバーの一部が前記開口に重なることを特徴とする請求項1から
請求項3のいずれか1項に記載のボディカバー。
【請求項5】
車体前部にラジエータが配置された鞍乗型車両のボディカバーであって、
前記ラジエータを側方から覆うベースボディカバー
と、
前記ベースボディカバーの外側に取り付けられたアウターボディカバーと、を備え、
前記ベースボディカバーには、当該ベースボディカバーの外側からの走行風を前記ラジエータの後方空間に導く開口
と、前記開口の後縁に車体前方を向いた壁面と、が形成され、
側面視にて、前記アウターボディカバーの一部が前記開口に重なり、
前記壁面が前記アウターボディカバーの内側面に向かって延びており、
前記開口から前記ラジエータの後方空間に走行風が導かれて、前記ラジエータから後方に向かう熱風に走行風が左右方向外側から合流し、走行風によって熱風の流れが車幅方向内側に押し込まれることを特徴とするボディカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボディカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鞍乗型車両には車体フレームに車両外装として各種カバー部材が取り付けられている。鞍乗型車両として、車両前部の側面を形成するボディカバーを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のボディカバーは、フロントカウルの後方でヘッドパイプ及びラジエータ等を側方から覆うように配置されている。ボディカバーからフロントフォークの下部が前方に突き出しており、フロントフォークの下部に支持された前輪が露出されている。鞍乗型車両の走行時には、ボディカバーの左右方向内側に走行風が入り込んでラジエータ等が冷却されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、軽快な外観を得るためにコンパクトに形成されたボディカバー等では、ラジエータからの熱風が車体フレームとボディカバーの間を通って乗員に向けて拡散される場合があった。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、ラジエータから後方に向かう熱風から乗員を保護することができるボディカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のボディカバーは、車体前部にラジエータが配置された鞍乗型車両のボディカバーであって、前記ラジエータを側方から覆うベースボディカバーを備え、前記ベースボディカバーには、当該ベースボディカバーの外側からの走行風を前記ラジエータの後方空間に導く開口と、前記開口の後縁に車体前方を向いた壁面と、が形成され、前記壁面が前記開口の前縁よりも左右方向外側まで広がり、走行風が前記壁面に当たって前記開口に流れ込み、前記開口から前記ラジエータの後方空間に走行風が導かれて、前記ラジエータから後方に向かう熱風に走行風が左右方向外側から合流し、走行風によって熱風の流れが車幅方向内側に押し込まれることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様のボディカバーによれば、開口を通じてベースボディカバーの外側から内側に走行風が取り込まれる。開口からラジエータの後方空間に走行風が導かれて、ラジエータから後方に向かう熱風に走行風が左右方向外側から合流する。走行風によって熱風の流れが車幅方向内側に押し込まれて熱風の左右方向への拡散が抑えられる。よって、車体の左右方向外側に位置する乗員の脚部がラジエータからの熱風から効果的に保護される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施例の鞍乗型車両の車両前部の斜視図である。
【
図3】本実施例の車両前部からボディカバーの一部を外した左側面図である。
【
図5】本実施例のボディカバーの一部を切断した側面図である。
【
図6】
図2のボディカバーをA-A線に沿って切断した断面図である。
【
図7】
図2のボディカバーをB-B線に沿って切断した断面図である。
【
図8】
図2のボディカバーをC-C線に沿って切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様のボディカバーは、ラジエータが配置された鞍乗型車両の車体前部に取り付けられている。ボディカバーは、ベースボディカバーによってラジエータを側方から覆っている。ベースボディカバーには、このベースボディカバーの外側からの走行風をラジエータの後方空間に導く開口が形成され、開口を通じてベースボディカバーの外側から内側に走行風が取り込まれる。開口からラジエータの後方空間に走行風が導かれて、ラジエータから後方に向かう熱風に走行風が左右方向外側から合流する。走行風によって熱風の流れが車幅方向内側に押し込まれて熱風の左右方向への拡散が抑えられる。よって、車体の左右方向外側に位置する乗員の脚部がラジエータからの熱風から効果的に保護される。
【実施例】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本実施例のボディカバーが適用された鞍乗型車両について説明する。
図1は本実施例の鞍乗型車両の車両前部の斜視図である。また、以下の図では、矢印FRは車両前方、矢印REは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。
【0011】
図1に示すように、鞍乗型車両1は、アルミ鋳造によって形成されるツインスパー型の車体フレーム10に、エンジン16や電装系等の各種部品を搭載して構成されている。車体フレーム10はヘッドパイプ11から左右に分岐して後方に延びる一対のメインフレーム12と、ヘッドパイプ11から左右に分岐して下方に延びる一対のダウンフレーム13とを有している。一対のメインフレーム12によってエンジン16の後部が支持され、一対のダウンフレーム13によってエンジン16の前部が支持されている。エンジン16が車体フレーム10に支持されることで車両全体の剛性が確保されている。
【0012】
メインフレーム12の前側部分はタンクレールになっており、タンクレール上に燃料タンク17が配置されている。メインフレーム12の後側部分はボディフレームになっており、ボディフレームの上部からシートレール14及びバックステー15が後方に向かって延びている。シートレール14上にはライダーシート18が配置されている。ヘッドパイプ11にはステアリングシャフト(不図示)を介して一対のフロントフォーク21が操舵可能に支持されている。フロントフォーク21の下部には前輪22が回転可能に支持されており、前輪22の上部はフロントフェンダ23によって覆われている。
【0013】
ヘッドパイプ11の下方でエンジン16のシリンダヘッドの前方にラジエータ24が配置されている。ラジエータ24には、多数の細菅又は放熱フィンを有するラジエータコアが設けられている。ラジエータコアに流れる冷媒とラジエータコアに吹き付けられた走行風の間で熱交換が実施されている。ヘッドパイプ11の前方にはヘッドランプユニット25が設けられている。ヘッドランプユニット25は縦長に形成されており、2つの発光部が上下に並んで配置されている。ヘッドランプユニット25の周囲にはヘッドランプカバー26が取り付けられている。
【0014】
鞍乗型車両1には、ラジエータ24を左右側方から覆う一対のボディカバー30が取り付けられている。本実施例のようにコンパクトなボディカバー30では、ラジエータ24の背面から左右方向に拡散された熱風を乗員の脚部よりも左右方向外側に逸らして、ラジエータ24の熱風から乗員の脚部を保護することが難しい。そこで、本実施例のボディカバー30には、ボディカバー30の外側からラジエータ24の後方空間に走行風を取り込む開口36が形成され、開口36(
図2参照)から入り込んだ走行風が左右方向外側から熱風に合流することで熱風の左右方向への拡散が抑えられている。
【0015】
以下、
図2から
図4を参照して、ボディカバーの詳細構成について説明する。
図2は本実施例の車両前部の左側面図である。
図3は本実施例の車両前部からボディカバーの一部を外した左側面図である。
図4は本実施例の車両前部の前面図である。
【0016】
図2から
図4に示すように、ボディカバー30は、ヘッドランプカバー26の後方に配置され、ヘッドランプカバー26と共に鞍乗型車両1の車両前部の外装を形成している。ボディカバー30は、車体フレーム10の前部に固定されたベースボディカバー31と、ベースボディカバー31の外側のアッパーボディカバー61及びアウターボディカバー51と、ベースボディカバー31の内側のインナーボディカバー65と、を有している。ベースボディカバー31の外側面の高さ方向の中間部から下部にわたってアウターボディカバー51が配置され、ベースボディカバー31の外側面の上部にアッパーボディカバー61が配置されている。
【0017】
ベースボディカバー31は、前輪22の上方で車体フレーム10(メインフレーム12)を側方から覆うと共に前輪22の後方でラジエータ24を側方から覆っている。ベースボディカバー31は左右幅が小さな上半部32と左右幅が大きな下半部33を有している。ベースボディカバー31の外側面の上側よりも下側、すなわち上半部32の外側面よりも下半部33の外側面が左右方向外側に突き出して段差面34(特に
図4参照)が形成されている。段差面34はベースボディカバー31の前縁から後方に向かって斜め上方に延びており、この段差面34を境目にしてベースボディカバー31が上半部32と下半部33に分かれている。
【0018】
段差面34の前縁は前輪22の上端よりも上方に位置している。段差面34の延在方向の中間位置が部分的に切り欠かれて縦溝35が形成されている。縦溝35は下半部33の後述する開口36に向かって延びている。縦溝35を挟んで段差面34が前半部分と後半部分に分かれており、段差面34の前半部分の上方には段差面34に沿って長孔37が形成され、段差面34の後半部分の上方には段差面34に沿って突状部38が形成されている。長孔37には後述するアウターボディカバー51の板状部52が取り付けられ、突状部38の上面が板状部52の上面に連続するように形成されている。
【0019】
ベースボディカバー31の下半部33には、段差面34の下方に側面視三角形状の開口36が形成されている。開口36は、ラジエータ24の側方でメインフレーム12の前方において、ベースボディカバー31の内側と外側を連ねている。詳細は後述するが、縦溝35を通じて開口36に走行風が導かれ、ベースボディカバー31の内側に走行風が取り込まれる。開口36の前縁は後縁よりも左右方向内側に位置しており、開口36の後縁には左右幅が大きな壁面39(
図6参照)が形成されている。この開口36の後縁の壁面39に前方からの走行風が当たることで、開口36からベースボディカバー31の内側に走行風が取り込まれる。
【0020】
前面視にてベースボディカバー31の段差面34の下側よりも上側、すなわち下半部33の前面が上半部32の前面よりも左右方向外側に広がって下部前面41が形成されている。下部前面41は、正面を向いた正面部分と、斜め前方を向いた斜面部分とによって形成されている。下部前面41は段差面34の下方で窪んでおり、窪み42から段差面34の前縁に向かって下部前面41が前方に突き出している(特に
図3参照)。下部前面41から段差面34に向かう傾斜が急峻になるため、下部前面41に受け止められた泥水に走行風が吹き付けられても、泥水が段差面34の前縁を乗り越え難くなっている。
【0021】
また、ベースボディカバー31の段差面34よりも下側の下部外側面43が段差面34の側縁に向かって左右方向外側に突き出している(特に
図4参照)。下部外側面43に付着した泥水に走行風が吹き付けられても、泥水が段差面34の側縁を乗り越え難くなっている。ベースボディカバー31の前側部分では、段差面34の前縁及び側縁が外方に突き出すことで、段差面34よりも上方に泥水が向かい難くなって乗員への泥水の付着が抑えられている。側面視にてベースボディカバー31の下半部33は前輪22の後部に部分的に重なっている。下半部33の内面からはメインフレーム12に向けて遮蔽板44(
図6参照)が突き出している。この遮蔽板44により、開口36の内側に水や泥が入っても、後上方のエアクリーナ(不図示)の吸入口など車体内部に入り込み難くなる。
【0022】
ベースボディカバー31の長孔37や突状部38の上方には、上半部32の外側面が左右方向外側に膨らんで膨出部45が形成されている。膨出部45はベースボディカバー31の前縁から後方に向かって斜め上方に延びており、膨出部45には複数の開口が形成されている。上半部32の上縁には、上半部32の外側面が左右方向内側に窪んで膨出部45に沿った横溝46が形成されている。膨出部45の外側面にはアッパーボディカバー61が取り付けられている。アッパーボディカバー61は、膨出部45全体を外側から覆うようにベースボディカバー31の前縁から後方に向かって斜め上方に延びている。
【0023】
アウターボディカバー51は、アッパーボディカバー61の下方でベースボディカバー31の外側に取り付けられている。アウターボディカバー51には、ベースボディカバー31の段差面34を上方から覆う庇状の板状部52と、板状部52の後方に連結部53を介して連なるリアカバー部54とが形成されている。板状部52はベースボディカバー31の長孔37に取り付けられ、段差面34よりも上方で板状部52が前後に延びている。板状部52の前縁が段差面34の前縁よりも前方に位置しており、前輪22に跳ね上げられた泥水が庇状の板状部52によって広い範囲で受け止められる。
【0024】
板状部52はベースボディカバー31の外側面から左右方向外側に向かって下向きに傾斜し、板状部52の左右方向外側の側縁には下方に屈曲した返し部55が形成されている。返し部55の内面と段差面34の左右方向外側の側縁には隙間が空けられ、返し部55が段差面34の側縁よりも下方まで延びている(特に
図4参照)。板状部52に受け止められた泥水が返し部55から段差面34の下方まで流れ落ち易く、板状部52よりも上方に泥水が向かい難くなって乗員への泥水の付着が抑えられている。なお、返し部55が板状部52の前半部に形成されているが、返し部55が板状部52の長手方向に沿って全体的に形成されていてもよい。
【0025】
段差面34と庇状の板状部52によって走行風の通り路が形成されている。段差面34の前縁と板状部52の前縁によって走行風の入口が形成されており、走行風の入口に対して前方からの走行風が入り込んでいる。上記したように返し部55の内面と段差面34に隙間が空いており、隙間にも走行風が入り込んでいる。これらの走行風が板状部52の内側で整流されて、走行風による走行抵抗が減らされている。このように、段差面34と板状部52は、前輪22から跳ね上げられた泥水を受け止めるだけでなく、走行抵抗を減少可能な走行風の通り路をボディカバー30に形成している。
【0026】
板状部52の後部が縦溝35の上方に位置しており、板状部52の後部には連結部53が設けられている。連結部53には後方に向かって左右方向内側に傾斜した内壁面56(
図6参照)が形成されており、連結部53の内壁面56によって板状部52の内側を通る走行風が縦溝35に導かれている。連結部53の下部にはリアカバー部54が設けられている。リアカバー部54は前後上下に広がってベースボディカバー31の外側を覆っている。側面視にてリアカバー部54の一部が縦溝35及び開口36に重なることで、縦溝35から開口36に走行風が導かれてベースボディカバー31の内側に効率的に走行風が取り込まれる。
【0027】
インナーボディカバー65は、ベースボディカバー31の前縁に沿って、ベースボディカバー31の内側に取り付けられている。インナーボディカバー65の下部はベースボディカバー31の下部前面41に沿って形成されている。インナーボディカバー65の下部は斜め前方を向いた斜面になっており、ベースボディカバー31の下部前面41と共に前方からの水滴を受け止めている。なお、ベースボディカバー31、インナーボディカバー65、アウターボディカバー51、アッパーボディカバー61の固定方法は特に限定されず、例えば、ネジ止め、掛け止め、クリップ止め等によって固定される。
【0028】
図5から
図8を参照して、ボディカバーの走行風の通り路について説明する。
図5は本実施例のボディカバーの一部を切断した側面図である。
図6は
図2のボディカバーをA-A線に沿って切断した断面図である。
図7は
図2のボディカバーをB-B線に沿って切断した断面図である。
図8は
図2のボディカバーをC-C線に沿って切断した断面図である。
【0029】
図5及び
図6に示すように、ベースボディカバー31の段差面34とアウターボディカバー51の板状部52によって走行風の通り路が形成されている。ベースボディカバー31には、段差面34の左右方向外側の側縁が凹状に切り欠かれて縦溝35が形成されている。縦溝35の左右方向外側には連結部53の内壁面56が位置付けられている。また、ベースボディカバー31には、段差面34の下方にベースボディカバー31の内側と外側を連ねる開口36が形成されている。縦溝35の上端は段差面34に連なり、縦溝35の下端は開口36まで延びている。
【0030】
側面視にて、開口36はラジエータ24の上端よりも下方かつラジエータ24の後側に位置している(特に、
図3参照)。すなわち、ベースボディカバー31には、ラジエータ24の後方空間を露出させるように開口36が形成されている。本実施例ではラジエータ24が後方に湾曲しているため、開口36からラジエータ24の背面が露出している。開口36の後縁には車体前方を向いた壁面39が形成され、壁面39が開口36の前縁よりも左右方向外側まで広がっている。上記したように、縦溝35及び開口36はリアカバー部54によって左右方向外側から部分的に覆われている。
【0031】
矢印F1に示すように、前方からボディカバー30に走行風が吹き付けられると、段差面34と板状部52の間を走行風が後方に向かって流れている。また、矢印F2に示すように、段差面34の側縁と返し部55の隙間からも走行風が入り込み、段差面34の板状部52の間を走行風が後方に向かって流れている。そして、矢印F3に示すように、連結部53の内壁面56によって走行風が縦溝35に向けてガイドされて、縦溝35を通って開口36に走行風が流れ込んでいる。このとき、縦溝35が側方からリアカバー部54に部分的に覆われることで走行風が開口36に流れ込み易くなっている。
【0032】
図7に示すように、水平断面視にてベースボディカバー31の外面が開口36の前縁に向かって左右方向内側に傾斜している。このベースボディカバー31の斜面の延長線上に壁面39が存在しないため、矢印F4に示す走行風がベースボディカバー31の斜面からダイレクトに開口36に流れ込んでいる。
図8に示すように、水平断面視にてベースボディカバー31の外面が開口36の前縁に向かって左右方向外側に傾斜している。このベースボディカバー31の斜面の延長線上に壁面39が存在するため、矢印F5に示すベースボディカバー31に沿った走行風が壁面39に当たって開口36に流れ込んでいる。
【0033】
このとき、
図6に示すように、ベースボディカバー31にはベースボディカバー31とメインフレーム12の隙間を仕切る遮蔽板44が形成されている。遮蔽板44の内縁はメインフレーム12の外側面に沿って前後に延びており、遮蔽板44によってベースボディカバー31とメインフレーム12の隙間が仕切られている。また、遮蔽板44は開口36よりも上方に位置している。このため、例えば矢印F3-F5に示す走行風が、開口36からベースボディカバー31とメインフレーム12の隙間に向かわずに、メインフレーム12の内側のラジエータ24の後方空間に向かい易くなっている。
【0034】
図7及び
図8の矢印F6に示すように、ラジエータ24のラジエータコアの背面から後方に熱風が流れている。開口36からラジエータ24の後方空間に走行風が流れ込むことで、ラジエータ24の後方空間で走行風によって左右方向外側から熱風が押し込まれている。走行風によって熱風の左右方向への拡散が抑えられて、メインフレーム12とボディカバー30の隙間を通って乗員の脚部に熱風が向かい難くなっている。このように、コンパクトなボディカバー30であっても、ラジエータ24の熱風の拡散が抑えられることで乗員の脚部が保護されている。また、外気によって熱風温度が下げられている。
【0035】
以上、本実施例によれば、開口36を通じてベースボディカバー31の外側から内側に走行風が取り込まれる。開口36からラジエータ24の後方空間に走行風が導かれて、ラジエータ24から後方に向かう熱風に走行風が左右方向外側から合流する。走行風によって熱風の流れが車幅方向内側に押し込まれて熱風の左右方向への拡散が抑えられる。よって、車体の左右方向外側に位置する乗員の脚部がラジエータ24からの熱風から効果的に保護される。
【0036】
なお、本実施例では、ボディカバーがベースボディカバー、アッパーボディカバー、アウターボディカバー、インナーボディカバーを備えているが、ボディカバーは少なくともベースボディカバーを備えていればよい。
【0037】
また、本実施例では、ベースボディカバーの段差面とアウターボディカバーの板状部によって走行風の通り路が形成されているが、ベースボディカバーに開口が形成されていればベースボディカバーの外形は特に限定されない。
【0038】
また、本実施例では、アウターボディカバーが板状部とリアカバー部を連結部で連結して形成されているが、アウターボディカバーの外形は特に限定されない。
【0039】
また、本実施例では、ベースボディカバーには、側面視にてラジエータの上端よりも下方かつラジエータの後側に開口が形成されているが、開口の位置は特に限定されない。開口はベースボディカバーの外側からの走行風をラジエータの後方空間に導くように形成されていればよい。
【0040】
また、本実施例では、ベースボディカバーの開口の後縁に車体前方を向いた壁面が形成され、ベースボディカバーに遮蔽板が形成されているが、ベースボディカバーには壁面及び遮蔽板が形成されていなくてもよい。
【0041】
また、本実施例では、ラジエータの後方空間は、ラジエータとエンジンの間の空間を示しているが、一対のボディカバーの内側でラジエータから熱風が発生する空間であればよい。
【0042】
また、鞍乗型車両とは、乗員がシートに跨った姿勢で乗車する車両全般に限定されず、乗員がシートに跨らずに乗車する小型のスクータタイプの車両も含んでいる。
【0043】
以上の通り、本実施例のボディカバー(30)は、車体前部にラジエータ(24)が配置された鞍乗型車両(1)のボディカバーであって、ラジエータを側方から覆うベースボディカバー(31)を備え、ベースボディカバーには、当該ベースボディカバーの外側からの走行風をラジエータの後方空間に導く開口(36)が形成されている。この構成によれば、開口を通じてベースボディカバーの外側から内側に走行風が取り込まれる。開口からラジエータの後方空間に走行風が導かれて、ラジエータから後方に向かう熱風に走行風が左右方向外側から合流する。走行風によって熱風の流れが車幅方向内側に押し込まれて熱風の左右方向への拡散が抑えられる。よって、車体の左右方向外側に位置する乗員の脚部がラジエータからの熱風から効果的に保護される。
【0044】
本実施例のボディカバーにおいて、側面視にて、ベースボディカバーには、ラジエータの後方空間を露出させる開口が形成されている。この構成によれば、ラジエータの後方空間にダイレクトに走行風が導かれて、熱風の左右方向外側への拡散が効果的に抑えられる。
【0045】
本実施例のボディカバーにおいて、ベースボディカバーには、開口の後縁に車体前方を向いた壁面(39)が形成され、壁面が開口の前縁よりも左右方向外側まで広がっている。この構成によれば、開口の後縁の壁面に前方からの走行風が当たることで、開口からラジエータの後方空間に走行風が導かれ、熱風の左右方向外側への拡散が効果的に抑えられる。
【0046】
本実施例のボディカバーにおいて、ベースボディカバーはメインフレーム(12)を側方から覆っており、ベースボディカバーには、当該ベースボディカバーとメインフレームの隙間を仕切る遮蔽板(44)が形成されている。この構成によれば、遮蔽板によってベースボディカバーとメインフレームの隙間に走行風が流れ難くなって、開口からベースボディカバーの内側に走行風が流れ込み易くなる。
【0047】
本実施例のボディカバーにおいて、ベースボディカバーの外側に取り付けられたアウターボディカバー(51)を備え、側面視にて、アウターボディカバーの一部が開口に重なる。この構成によれば、アウターボディカバーの一部によって開口が側方から部分的に覆われて、ベースボディカバーの内側に効率的に走行風が取り込まれる。
【0048】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0049】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0050】
1 :鞍乗型車両
12 :メインフレーム
24 :ラジエータ
30 :ボディカバー
31 :ベースボディカバー
36 :開口
39 :壁面
43 :下部外側面
44 :遮蔽板
51 :アウターボディカバー