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  • 特許-ベース部用ゴム組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-25
(45)【発行日】2025-04-02
(54)【発明の名称】ベース部用ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 7/00 20060101AFI20250326BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20250326BHJP
   C08L 9/06 20060101ALI20250326BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20250326BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20250326BHJP
   B60C 7/00 20060101ALI20250326BHJP
【FI】
C08L7/00
C08L9/00
C08L9/06
C08K7/02
C08K3/04
B60C7/00 B
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021069296
(22)【出願日】2021-04-15
(65)【公開番号】P2022164066
(43)【公開日】2022-10-27
【審査請求日】2024-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長井 遥
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-161173(JP,A)
【文献】特開2003-320807(JP,A)
【文献】国際公開第02/038398(WO,A1)
【文献】特開2002-144810(JP,A)
【文献】特開2011-201512(JP,A)
【文献】特開昭57-047205(JP,A)
【文献】特開昭57-070705(JP,A)
【文献】特開2008-138080(JP,A)
【文献】特開2010-024414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 7/00-21/00
C08K 7/02
C08K 3/04
B60C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム成分、ミクロ繊維、および平均粒子径が30nm以上150nm以下のカーボンブラックを含有するベース部用ゴム組成物であって、
前記ジエン系ゴム成分が、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム、およびスチレンブタジエンゴムを含み、
前記ジエン系ゴム成分中に、イソプレン系ゴムを72~98質量%含み、
前記ミクロ繊維の繊維径の最小値に対する最大値の比が1.2以上であるゴム組成物(ただし、前記ミクロ繊維の繊維径の最小値および最大値は、前記ベース部用ゴム組成物の試料を凍結粉砕した後、ゴムシートの押し出し方向に垂直な面で切断し、その断面を透過型電子顕微鏡で観察し、任意に選択した100本のミクロ繊維のうち繊維径の最大値および最小値として求められる)
【請求項2】
ジエン系ゴム成分、ミクロ繊維、および平均粒子径が30nm以上150nm以下のカーボンブラックを含有するベース部用ゴム組成物であって、
前記ジエン系ゴム成分が、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム、およびスチレンブタジエンゴムを含み、
前記ミクロ繊維は、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、セルロース系繊維、キチン系繊維、およびキトサン系繊維からなる群より選ばれる少なくとも1つであり、
前記ミクロ繊維の繊維径の最小値に対する最大値の比が1.2以上であるゴム組成物(ただし、前記ミクロ繊維の繊維径の最小値および最大値は、前記ベース部用ゴム組成物の試料を凍結粉砕した後、ゴムシートの押し出し方向に垂直な面で切断し、その断面を透過型電子顕微鏡で観察し、任意に選択した100本のミクロ繊維のうち繊維径の最大値および最小値として求められる)
【請求項3】
前記ジエン系ゴム成分中に、イソプレン系ゴムを72~98質量%含む、請求項記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記ミクロ繊維の平均繊維径が5.0~100μmである、請求項1~3のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記ジエン系ゴム成分100質量部に対し、前記ミクロ繊維を1~45質量部含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記ジエン系ゴム成分中に、ブタジエンゴムを5~18質量%含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記ジエン系ゴム成分100質量部に対し、平均粒子径が40nm以上150nm以下のカーボンブラックを40質量部以上100質量部以下含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項8】
前記ジエン系ゴム成分100質量部に対し、樹脂成分を0.1~20質量部含有する、請求項1~のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項9】
前記ミクロ繊維がポリエチレンテレフタレート繊維である、請求項1~8のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載のゴム組成物をベース部に用いたソリッドタイヤ。
【請求項11】
前記ベース部内に二層以上のコード層を備え、
前記コード層が、適用リムへの組み付け前のタイヤ姿勢で、タイヤ赤道面付近の領域に少なくとも一つの間隙部を有する、請求項10記載のソリッドタイヤ。
【請求項12】
リム幅に対する前記コード層のタイヤ幅方向の最大幅の比が0.2~0.8であり、
タイヤ断面高さに対するリム径ラインからのタイヤ半径方向最大高さの比が0.05~0.60であり、
タイヤ断面高さに対するリム径ラインからのタイヤ半径方向最小高さの比が0.01~0.50である、請求項11記載のソリッドタイヤ。
【請求項13】
前記間隙部のタイヤ幅方向最小幅が1mm以上であり、かつ、前記コード層のタイヤ幅方向の最大幅の70%以下である、請求項11または12記載のソリッドタイヤ。
【請求項14】
前記コード層のタイヤ幅方向の最大幅に対する前記コード層のコードを配置した領域のタイヤ幅方向の最大幅の比が0.2~0.8である、請求項1113のいずれか一項に記載のソリッドタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベース部用ゴム組成物および該ゴム組成物をベース部に用いたソリッドタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
トラクッシュタイヤなどのソリッドタイヤは、フォークリフトなどの産業車両用タイヤとして使用されている。産業用車両は、比較的低速かつ高荷重で使用され、悪路の状況下で使用されるため、耐カット性能、耐摩耗性能等の諸特性が要求される。
【0003】
特許文献1には、高硬質ゴム組成物をベース部に用い、破壊特性等に優れたトラクッシュタイヤが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-118444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、耐カット性能および耐発熱性能の総合性能が改善されたベース部用ゴム組成物および該ゴム組成物をベース部に用いたソリッドタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討した結果、特定のジエン系ゴム成分に、繊維径分布の広いミクロ繊維、および大粒径のカーボンブラックを配合したゴム組成物が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、
〔1〕ジエン系ゴム成分、ミクロ繊維、および平均粒子径が30nm以上のカーボンブラックを含有するベース部用ゴム組成物であって、前記ジエン系ゴム成分が、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム、およびスチレンブタジエンゴムを含み、前記ミクロ繊維の繊維径の最小値に対する最大値の比が1.2以上であるゴム組成物、
〔2〕前記ジエン系ゴム成分中に、イソプレン系ゴムを70質量%以上含む、上記〔1〕記載のゴム組成物、
〔3〕前記ジエン系ゴム成分100質量部に対し、平均粒子径が40nm以上のカーボンブラックを40質量部以上含有する、上記〔1〕または〔2〕記載のゴム組成物、
〔4〕前記ミクロ繊維の平均繊維径が0.1~100μmである、上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のゴム組成物、
〔5〕前記ジエン系ゴム成分100質量部に対し、前記ミクロ繊維を1~100質量部含有する、上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のゴム組成物、
〔6〕前記ジエン系ゴム成分100質量部に対し、樹脂成分を0.1~20質量部含有する、上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のゴム組成物、
〔7〕上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載のゴム組成物をベース部に用いたソリッドタイヤ、
〔8〕前記ベース部内に二層以上のコード層を備え、前記コード層が、適用リムへの組み付け前のタイヤ姿勢で、タイヤ赤道面付近の領域に少なくとも一つの間隙部を有する、上記〔7〕記載のソリッドタイヤ、
〔9〕リム幅に対する前記コード層のタイヤ幅方向の最大幅の比が0.2~0.8であり、タイヤ断面高さに対するリム径ラインからのタイヤ半径方向最大高さの比が0.05~0.60であり、タイヤ断面高さに対するリム径ラインからのタイヤ半径方向最小高さの比が0.01~0.50である、上記〔7〕または〔8〕記載のソリッドタイヤ、
〔10〕前記間隙部のタイヤ幅方向最小幅が1mm以上であり、かつ、前記コード層のタイヤ幅方向の最大幅の70%以下である、上記〔7〕~〔9〕のいずれかに記載のソリッドタイヤ、
〔11〕前記コード層のタイヤ幅方向の最大幅に対する前記コード層のコードを配置した領域のタイヤ幅方向の最大幅の比が0.2~0.8である、上記〔7〕~〔10〕のいずれかに記載のソリッドタイヤ、に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐カット性能および耐発熱性能の総合性能が改善されたベース部用ゴム組成物および該ゴム組成物をベース部に用いたソリッドタイヤが提供される。また、好ましい態様においては、ソリッドタイヤの耐久性も改善される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示のソリッドタイヤの一の実施形態を示す、適用リムへの組み付け前のタイヤ姿勢におけるタイヤ子午線断面図である。
図2】ソリッドタイヤの他の実施形態を示す、適用リムへの組み付け前のタイヤ姿勢におけるタイヤ子午線断面図である。
図3】本開示においてゴム組成物の耐カット性能を評価するために用いる試験装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示に係るベース部用ゴム組成物は、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム、およびスチレンブタジエンゴムを含むジエン系ゴム成分、ミクロ繊維、および平均粒子径が30nm以上のカーボンブラックを含有し、前記ジエン系ゴム成分が、前記ミクロ繊維の繊維径の最小値に対する最大値の比が1.2以上である。理論に拘束されることは意図しないが、本開示の効果が発揮されるメカニズムとしては、例えば以下のように考えられる。
【0011】
単一のゴム相にドメインが大きいミクロ繊維が存在すると、ミクロ繊維とゴム相との境界を起点に亀裂が生じることが懸念される。そこで、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム、およびスチレンブタジエンゴムを含むゴム成分とし、かつ、繊維径の分布が広いミクロ繊維を用いることにより、これらが協同的に作用することで、多成分からなるゴム成分により大小さまざまなポリマードメインが形成され、その結果亀裂を生じにくくすることができ、亀裂が発生しても、いずれかの界面で亀裂が止まる確率が高くなると考えられる。
【0012】
また、フィラーとして平均粒子径が大きいカーボンブラックを使用することにより、平均粒子径が小さいカーボンブラックに比べてミクロ繊維と絡まりやすくなり、かつ、ゴム成分とも相互作用するので、補強性の小さいミクロ繊維単独で配合するよりも、亀裂が生じにくくなり、ゴムの強度がより向上すると考えられる。他方、平均粒子径の大きいカーボンブラックを使用することで、ゴムの発熱性を下げることができると考えられる。
【0013】
以上のように、特定のゴム成分、繊維径分布の広いミクロ繊維、および大粒径のカーボンブラックが協働することで、耐カット性能および耐発熱性能の総合性能が改善するという、特筆すべき効果が達成されると考えられる。
【0014】
本開示のベース部用ゴム組成物(以下、単にゴム組成物ということがある)は、前記ジエン系ゴム成分中に、イソプレン系ゴムを70質量%以上含むことが好ましい。
【0015】
前記ゴム組成物は、前記ジエン系ゴム成分100質量部に対し、平均粒子径が40nm以上のカーボンブラックを40質量部以上含有することが好ましい。
【0016】
前記ミクロ繊維の平均繊維径は、0.1~100μmであることが好ましい。
【0017】
前記ゴム組成物は、前記ジエン系ゴム成分100質量部に対し、前記ミクロ繊維を1~100質量部含有することが好ましい。
【0018】
前記ゴム組成物は、前記ジエン系ゴム成分100質量部に対し、樹脂成分を0.1~20質量部含有することが好ましい。
【0019】
本開示の他の実施形態は、前記ゴム組成物をベース部に用いたソリッドタイヤである。
【0020】
本開示のソリッドタイヤは、前記ベース部内に二層以上のコード層を備え、前記コード層が、適用リムへの組み付け前のタイヤ姿勢で、タイヤ赤道面付近の領域に少なくとも一つの間隙部を有することが好ましい。
【0021】
本開示のソリッドタイヤは、リム幅に対する前記コード層のタイヤ幅方向の最大幅の比が0.2~0.8であり、タイヤ断面高さに対するリム径ラインからのタイヤ半径方向最大高さの比が0.05~0.60であり、タイヤ断面高さに対するリム径ラインからのタイヤ半径方向最小高さの比が0.01~0.50であることが好ましい。
【0022】
前記間隙部のタイヤ幅方向最大幅は1mm以上であり、かつ前記コード層のタイヤ幅方向の最大幅の70%以下であることが好ましい。
【0023】
本開示のソリッドタイヤは、前記コード層のタイヤ幅方向の最大幅に対する前記コード層のコードを配置した領域のタイヤ幅方向の最大幅の比が0.2~0.8であることが好ましい。
【0024】
本開示の一実施形態であるベース部用ゴム組成物を含むソリッドタイヤについて、以下に詳細に説明する。但し、以下の記載は本発明を説明するための例示であり、本発明の技術的範囲をこの記載範囲にのみ限定する趣旨ではない。なお、本明細書において、「~」を用いて数値範囲を示す場合、その両端の数値を含むものとする。
【0025】
<ソリッドタイヤ>
図1に、本開示のソリッドタイヤの一の実施形態を示す、適用リムへの組み付け前のタイヤ姿勢におけるタイヤ子午線断面図を示すが、本開示はこれに限定されるものではない。
【0026】
本開示のソリッドタイヤは、リムに組み付けられる環状のベース部1と、ベース部1のタイヤ半径方向外側に設けられたトレッド部2とを備える。ソリッドタイヤは、ベース部1の内周面からトレッド表面に向かって所定の位置に、ソリッドタイヤの回転軸を中心に環状に設けられたコード層3を有している。コード層3は、タイヤ赤道面CLを挟んでタイヤ幅方向に離間して一対設けられており、タイヤ幅方向に離間した一対のコード層3の間には、ベース部1のゴム材料によって構成された間隙部4を有している。
【0027】
本開示のソリッドタイヤは、適用リムへの組み付け前のタイヤ姿勢で、コード層3のタイヤ赤道面付近の領域に少なくとも一つの間隙部4を設けることで、加硫時の幅方向の圧縮に対するコードの曲げを小さくするとともに、その間隙部のゴムで曲げ変形を吸収して、コード層3の座屈を低減することができる。その結果、タイヤの耐久性および耐リム滑り性を向上させることができる。ここで、タイヤ赤道面CL付近とは、タイヤ赤道面CLを中心として、リム幅Dの±10%の範囲をいうものとする。
【0028】
コード層3のコードは、スチールコードの他、有機繊維コードを用いることができる。
【0029】
リム幅Dに対するコード層3のタイヤ幅方向の最大幅Bdの比(Bd/D)は0.2~0.8が好ましく、0.4~0.8がより好ましい。タイヤ断面高さHに対するリム径ラインからのタイヤ半径方向最大高さh1の比(h1/H)は0.05~0.60が好ましく、0.05~0.45がより好ましく、0.07~0.30がさらに好ましい。タイヤ断面高さHに対するリム径ラインからのタイヤ半径方向最小高さh2の比(h2/H)は、0.01~0.50が好ましく、0.01~0.35がより好ましく、0.02~0.20がさらに好ましい。このような構成とすることにより、タイヤとリムとの接触部でのタイヤ周方向接触圧分布を均一にし、タイヤ負荷転動時に均一に保持してリムとの摩擦力を向上させることができ、その結果、耐リム滑り性を高めることができる。なお、本開示において、タイヤ半径方向最大高さh1は、タイヤ幅方向断面において、リム径ラインから測ってコード層3の半径方向の最外位置までの距離をいい、タイヤ半径方向最小高さh2は、タイヤ幅方向断面において、リム径ラインから測ってコード層3の半径方向の最内位置までの距離をいうものとする。
【0030】
間隙部4のタイヤ幅方向最小幅Sは1mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましく5mm以上がさらに好ましく、10mm以上が特に好ましい。また、間隙部4のタイヤ幅方向最小幅Sは、コード層3のタイヤ幅方向の最大幅Bdの70%以下が好ましく、60%以下がより好ましく、50%以下がさらに好ましく、40%以下が特に好ましい。間隙部4のタイヤ幅方向最小幅Sを前記の範囲とすることにより、タイヤの耐久性と耐リム滑り性の効果を両立させることができる。なお、本開示において、間隙部4のタイヤ幅方向最小幅Sは、タイヤ幅方向に離間した一対のコード層3の間の間隙のうち、最小の幅を意味するものとする。
【0031】
コード層3のタイヤ幅方向の最大幅Bdに対するコード層3のコードを配置した領域のタイヤ幅方向の最大幅の比は、0.2~0.8であることが好ましく、0.4~0.7であることがより好ましい。前記の範囲とすることにより、耐リム滑り性を低減させることなく、タイヤの耐久性を向上させることができる。なお、本開示において、コード層3のコードを配置した領域のタイヤ幅方向の最大幅は、タイヤ幅方向の最大幅Bdから空隙部のタイヤ幅方向最小幅Sを除いた長さとし、図1ではタイヤ赤道面を挟んだ両側部のe1+e2で表される長さである。
【0032】
二層のコード層3のコードは、タイヤ周方向に対して5°~80°の角度で傾斜させ、それぞれのコード層のコードを相互に交錯させることで、タイヤの外的入力に対するコードの拘束力を緩和して、リム滑り性をより低減することができる。
【0033】
本開示のソリッドタイヤは、ベース部1のリム径ラインより下部の片側もしくは両側(図2では片側)に、タイヤ径方向内側に突出する突起部5を設けてもよい。かかる突起部5は、リム組に使用するサイドリングを使用せずに組付けできる構造であり、リム組時間を短縮化でき、リムコストを低減することができる。
【0034】
<ゴム成分>
本開示に係るベース部を構成するゴム組成物(ベース部用ゴム組成物)は、イソプレン系ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)およびブタジエンゴム(BR)を含むジエン系ゴムを含有する。該ジエン系ゴムは、イソプレン系ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)およびブタジエンゴム(BR)のみからなるジエン系ゴム成分としてもよい。
【0035】
(イソプレン系ゴム)
イソプレン系ゴムとしては、例えば、イソプレンゴム(IR)および天然ゴム等タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。天然ゴムには、非改質天然ゴム(NR)の他に、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素化天然ゴム(HNR)、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)、グラフト化天然ゴム等の改質天然ゴム等も含まれる。これらのイソプレン系ゴムは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
NRとしては、特に限定されず、タイヤ業界において一般的なものを用いることができ、例えば、SIR20、RSS#3、TSR20等が挙げられる。
【0037】
イソプレン系ゴムのジエン系ゴム成分中の含有量は、耐カット性能の観点から、70質量%以上が好ましく、72質量%以上がより好ましく、75質量%以上がさらに好ましい。また、該含有量は、98質量%以下が好ましく、94質量%以下がより好ましく、90質量%以下がさらに好ましく、86質量%以下が特に好ましい。
【0038】
(BR)
BRとしては特に限定されず、例えば、シス含量(シス-1,4-結合ブタジエン単位量)が90モル%以上のBR(ハイシスBR)、希土類元素系触媒を用いて合成された希土類系ブタジエンゴム(希土類系BR)、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR(SPB含有BR)、変性BR(ハイシス変性BR、ローシス変性BR)等タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。
【0039】
ハイシスBRとしては、例えば、日本ゼオン(株)製のもの、宇部興産(株)製のもの、JSR(株)製のもの等が挙げられる。ハイシスBRを含有することで低温特性および耐摩耗性能を向上させることができる。ハイシスBRのシス含量は、90モル%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましく、96モル%以上がさらに好ましく、97モル%以上が特に好ましい。なお、本開示において、シス含量は、赤外吸収スペクトル分析により算出される値である。
【0040】
希土類系BRとしては、希土類元素系触媒を用いて合成され、ビニル結合量(1,2-結合ブタジエン単位量)が好ましくは1.8モル%以下、より好ましくは1.0モル%以下、さらに好ましくは0.8%モル以下であり、シス含量(シス-1,4-結合ブタジエン単位量)が好ましくは95モル%以上、より好ましくは96%モル以上、さらに好ましくは97%以上である。希土類系BRとしては、例えば、ランクセス(株)製のものなどを用いることができる。
【0041】
SPB含有BRは、1,2-シンジオタクチックポリブタジエン結晶が、単にBR中に結晶を分散させたものではなく、BRと化学結合したうえで分散しているものが挙げられる。このようなSPB含有BRとしては、宇部興産(株)製のものなどを用いることができる。
【0042】
変性BRとしては、スズでカップリングされた末端変性BR、アルコキシシリル基および/またはアミノ基を有する末端変性BRが好適に用いられる。また、変性BRは、水素添加されていないもの、水素添加されているもののいずれであってもよい。このような変性BRとしては、日本ゼオン(株)製のもの、旭化成ケミカルズ(株)製のものなどを用いることができる。
【0043】
前記で列挙されたBRは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
BRの重量平均分子量(Mw)は、耐摩耗性およびグリップ性能等の観点から、30万以上が好ましく、35万以上がより好ましく、40万以上がさらに好ましい。また、架橋均一性等の観点からは、200万以下が好ましく、100万以下がより好ましい。なお、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTIPORE HZ-M)による測定値を基に、標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0045】
BRのジエン系ゴム成分中の含有量は、耐カット性能の観点から、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、7質量%以上が特に好ましい。また、該含有量は、29質量%以下が好ましく、27質量%以下がより好ましく、25質量%以下がさらに好ましく、22質量%以下がさらに好ましく、20質量%以下がさらに好ましく、18質量%以下が特に好ましい。
【0046】
(SBR)
SBRとしては特に限定はなく、溶液重合SBR(S-SBR)、乳化重合SBR(E-SBR)、これらの変性SBR(変性S-SBR、変性E-SBR)等が挙げられる。変性SBRとしては、末端および/または主鎖が変性されたSBR、スズ、ケイ素化合物等でカップリングされた変性SBR(縮合物、分岐構造を有するもの等)等が挙げられる。なかでも、耐発熱性能および耐摩耗性能を良好に改善できるという点から、E-SBRが好ましい。これらのSBRは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
SBRのジエン系ゴム成分中の含有量は、耐カット性能の観点から、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、7質量%以上が特に好ましい。また、該含有量は、29質量%以下が好ましく、27質量%以下がより好ましく、25質量%以下がさらに好ましく、22質量%以下がさらに好ましく、20質量%以下がさらに好ましく、18質量%以下が特に好ましい。
【0048】
本開示に係るジエン系ゴム成分として、前記のイソプレン系ゴム、SBRおよびBR以外のジエン系成分を含有してもよい。他のジエン系ゴム成分としては、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。これらその他のジエン系ゴム成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
<ミクロ繊維>
本開示のゴム組成物は、ミクロ繊維を含有する。かかるミクロ繊維としては、特に制限されず、天然繊維(植物繊維、動物繊維)、および化学繊維(合成繊維、半合成繊維、再生繊維)のいずれも使用可能である。前記のミクロ繊維は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
合成繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維等が挙げられ、PET繊維が好ましい。
【0051】
天然繊維としては、セルロース系繊維、キチン系繊維、キトサン系繊維等が挙げられる。
【0052】
ミクロ繊維の繊維径の最小値に対する最大値の比は、1.2以上であり、1.4以上が好ましく、1.6以上がより好ましく、1.7以上がさらに好ましく、1.8以上がさらに好ましく、1.9以上が特に好ましい。かかる繊維径の分布が広いミクロ繊維を用いることにより、ミクロ繊維とゴム相との境界を起点に亀裂が生じても、いずれかの界面で亀裂が止まる確率が高くなると考えられる。
【0053】
ミクロ繊維の平均繊維径は、ゴム組成物の剛性および加工性の観点から、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、1.0μm以上がさらに好ましく、5.0μm以上がさらに好ましく、11μm以上が特に好ましい。また、ゴム組成物の剛性および破壊強度の観点からは、100μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましく、60μm以下がさらに好ましく、45μm以下が特に好ましい。
【0054】
ミクロ繊維の微細繊維の繊維径の分布は、ゴム組成物の試料を凍結粉砕した後、ゴムシートの押し出し方向に垂直な面で切断し、その断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察するとともに、例えば、100本のミクロ繊維を任意に選択して繊維径を測定し、その測定結果に基づいて求められる。ミクロ繊維の繊維径の最小値および最大値は、TEMで観察した(例えば100本の)ミクロ繊維のうち繊維径の最大値および最小値として求められる。また、ミクロ繊維の平均繊維径は、その任意に選択したミクロ繊維の繊維径の数平均として求められる。
【0055】
ミクロ繊維の平均繊維長は、0.01mm以上が好ましく、0.05mm以上がより好ましく、0.10mmがさらに好ましく、0.50mmがさらに好ましく、1.0mmが特に好ましい。また、ミクロ繊維の平均繊維長は、ゴム組成物の剛性および破壊強度の観点から、20mm以下が好ましく、15mm以下がより好ましく、10mm以下がさらに好ましく、8.0mm以下が特に好ましい。なお、本開示において、ミクロ繊維の平均繊維長は、走査型電子顕微鏡写真の画像解析、透過型顕微鏡写真の画像解析、X線散乱データの解析、細孔電気抵抗法(コールター原理法)等によって測定できる。
【0056】
ジエン系ゴム成分100質量部に対するミクロ繊維の含有量は、耐カット性の観点から、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましく、7質量部以上が特に好ましい。また、ゴム組成物の破壊強度の観点からは、100質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましく、60質量部以下がさらに好ましく、50質量部以下がさらに好ましく、45質量部以下がさらに好ましく、40質量部以下がさらに好ましく、35質量部以下が特に好ましい。
【0057】
<カーボンブラック>
本開示のゴム組成物は、平均粒子径が30nm以上のカーボンブラックを含有する。このようなカーボンブラックとしては、N550、N660等が挙げられる。これらのカーボンブラックは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
カーボンブラックの平均粒子径は、ミクロ繊維と絡みやすくし、耐カット性を向上させる観点から、30nm以上であり、35nm以上が好ましく、40nm以上がより好ましく、45nm以上がさらに好ましい。また、カーボンブラックの平均粒子径は、耐候性や補強性の観点から、150nm以下が好ましく、125nm以下がより好ましく、100nm以下がさらに好ましい。なお、本明細書におけるカーボンブラックの平均粒子径は数平均粒子径であり、透過型電子顕微鏡により、任意の100個についての平均値として測定される。
【0059】
平均粒子径が30nm以上のカーボンブラックのゴム成分100質量部に対する含有量は、耐カット性の観点から、40質量部以上が好ましく、42質量部以上がより好ましく、45質量部以上がさらに好ましく、47質量部以上が特に好ましい。また、耐発熱性能の観点からは、100質量部以下が好ましく、90質量部以下がより好ましく、80質量部以下がさらに好ましい。
【0060】
本開示のゴム組成物は、平均粒子径が30nm未満のカーボンブラックを含有してもよいが、その含有量は、ゴム成分100質量部に対し、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、1質量部以下がさらに好ましく、平均粒子径が30nm未満のカーボンブラックを含有しないことが特に好ましい。
【0061】
カーボンブラック以外のフィラーとしては、例えば、シリカ、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、アルミナ、クレー、タルク等、タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。
【0062】
シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法により調製されたシリカ(無水シリカ)、湿式法により調製されたシリカ(含水シリカ)等、タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。なかでもシラノール基が多いという理由から、湿式法により調製された含水シリカが好ましい。これらのシリカは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、耐破壊性能および耐摩耗性能の観点から、110m2/g以上が好ましく、130m2/g以上がより好ましく、150m2/g以上がさらに好ましく、170m2/g以上が特に好ましい。また、耐発熱性能および加工性の観点からは、350m2/g以下が好ましく、300m2/g以下がより好ましく、250m2/g以下がさらに好ましい。なお、本明細書におけるシリカのN2SAは、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される値である。
【0064】
シリカを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、耐カット性能の観点から、30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましく、15質量部以下が特に好ましい。一方、シリカの含有量の下限値は特に制限されないが、例えば、ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上、3質量部以上、5質量部以上とすることができ、シリカを含有しなくてもよい。
【0065】
(シランカップリング剤)
シリカは、シランカップリング剤と併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド系シランカップリング剤;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、Momentive社製のNXT-Z100、NXT-Z45、NXT等のメルカプト系シランカップリング剤;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ系シランカップリング剤;γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のグリシドキシ系シランカップリング剤;3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシラン等のニトロ系シランカップリング剤;3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン等のクロロ系シランカップリング剤等が挙げられ、スルフィド系シランカップリング剤が好ましい。これらのシランカップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0066】
シランカップリング剤を含有する場合のシリカ100質量部に対する含有量は、シリカの分散性を高める観点から、8.0質量部以上が好ましく、8.5質量部以上がより好ましく、9.0質量部以上がさらに好ましく、9.5質量部以上が特に好ましい。また、耐摩耗性能の低下を防止する観点からは、18質量部以下が好ましく、16質量部以下がより好ましく、14質量部以下がさらに好ましく、12質量部以下が特に好ましい。
【0067】
<その他の配合剤>
本開示に係るゴム組成物には、前記成分以外にも、従来タイヤ工業で一般に使用される配合剤、例えば、オイル、樹脂成分、ワックス、加工助剤、老化防止剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤等を適宜含有することができる。
【0068】
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、動物油脂等が挙げられる。前記プロセスオイルとしてはパラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等が挙げられる。また、環境対策で多環式芳香族(polycyclic aromatic compound:PCA)化合物の含量の低いプロセスオイルを使用することもできる。前記低PCA含量プロセスオイルとしては、軽度抽出溶媒和物(MES)、処理留出物芳香族系抽出物(TDAE)、重ナフテン系オイル等が挙げられる。
【0069】
オイルを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましい。また、耐摩耗性能の観点からは、80質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましく、60質量部以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、オイルの含有量には、油展ゴムに含まれるオイル量も含まれる。
【0070】
樹脂成分としては、特に限定されないが、タイヤ工業で慣用される石油樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
本明細書において「C5系石油樹脂」とは、C5留分を重合することにより得られる樹脂をいう。C5留分としては、例えば、シクロペンタジエン、ペンテン、ペンタジエン、イソプレン等の炭素数4~5個相当の石油留分が挙げられる。C5系石油樹脂しては、ジシクロペンタジエン樹脂(DCPD樹脂)が好適に用いられる。
【0072】
本明細書において「芳香族系石油樹脂」とは、C9留分を重合することにより得られる樹脂をいい、それらを水素添加したものや変性したものであってもよい。C9留分としては、例えば、ビニルトルエン、アルキルスチレン、インデン、メチルインデン等の炭素数8~10個相当の石油留分が挙げられる。芳香族系石油樹脂の具体例としては、例えば、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、および芳香族ビニル系樹脂が好適に用いられる。芳香族ビニル系樹脂としては、経済的で、加工しやすく、かつ耐発熱性能に優れているという理由から、α-メチルスチレンもしくはスチレンの単独重合体またはα-メチルスチレンとスチレンとの共重合体が好ましく、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体がより好ましい。芳香族ビニル系樹脂としては、例えば、クレイトン社、イーストマンケミカル社等より市販されているものを使用することができる。
【0073】
本明細書において「C5C9系石油樹脂」とは、前記C5留分と前記C9留分を共重合することにより得られる樹脂をいい、それらを水素添加したものや変性したものであってもよい。C5留分およびC9留分としては、前記の石油留分が挙げられる。C5C9系石油樹脂としては、例えば、東ソー(株)、LUHUA社等より市販されているものを使用することができる。
【0074】
テルペン系樹脂としては、α-ピネン、β-ピネン、リモネン、ジペンテン等のテルペン化合物から選ばれる少なくとも1種からなるポリテルペン樹脂;前記テルペン化合物と芳香族化合物とを原料とする芳香族変性テルペン樹脂;テルペン化合物とフェノール系化合物とを原料とするテルペンフェノール樹脂;並びにこれらのテルペン系樹脂に水素添加処理を行ったもの(水素添加されたテルペン系樹脂)が挙げられる。芳香族変性テルペン樹脂の原料となる芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルトルエン等が挙げられる。テルペンフェノール樹脂の原料となるフェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノール等が挙げられる。
【0075】
ロジン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば天然樹脂ロジン、それを水素添加、不均化、二量化、エステル化等で変性したロジン変性樹脂等が挙げられる。
【0076】
フェノール系樹脂としては、特に限定されないが、フェノールホルムアルデヒド樹脂、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、アルキルフェノールアセチレン樹脂、オイル変性フェノールホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
【0077】
樹脂成分を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ウェットグリップ性能の観点から、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。また、耐発熱性能の観点からは、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましく、20質量部以下が特に好ましい。
【0078】
ワックスを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの耐候性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましい。また、ブルームによるタイヤの白色化防止の観点からは、8.0質量部以下が好ましく、6.0質量部以下がより好ましい。
【0079】
加工助剤としては、例えば、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、アミドエステル、シリカ表面活性剤、脂肪酸エステル、脂肪酸金属塩とアミドエステルとの混合物、脂肪酸金属塩と脂肪酸アミドとの混合物等が挙げられる。これらの加工助剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。加工助剤としては、例えば、Schill+Seilacher社、パフォーマンスアディティブス社等より市販されているものを使用することができる。
【0080】
加工助剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の改善効果を発揮させる観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、耐摩耗性および破壊強度の観点からは、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましい。
【0081】
老化防止剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アミン系、キノリン系、キノン系、フェノール系、イミダゾール系の各化合物や、カルバミン酸金属塩等の老化防止剤が挙げられ、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N-シクロヘキシル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン系老化防止剤、および2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン等のキノリン系老化防止剤が好ましい。これらの老化防止剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0082】
老化防止剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの耐オゾンクラック性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましい。また、耐摩耗性能やウェットグリップ性能の観点からは、10.0質量部以下が好ましく、5.0質量部以下がより好ましい。
【0083】
ステアリン酸を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、加硫速度の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0084】
酸化亜鉛を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましい。また、耐摩耗性能の観点からは、10.0質量部以下が好ましく、5.0質量部以下がより好ましい。
【0085】
加硫剤としては硫黄が好適に用いられる。硫黄としては、粉末硫黄、油処理硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄等を用いることができる。
【0086】
加硫剤として硫黄を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、十分な加硫反応を確保し、良好なグリップ性能および耐摩耗性能を得るという観点から、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましい。また、劣化の観点からは、3.0質量部以下が好ましく、2.5質量部以下がより好ましく、2.0質量部以下がさらに好ましい。なお、加硫剤として、オイル含有硫黄を使用する場合の加硫剤の含有量は、オイル含有硫黄に含まれる純硫黄分の合計含有量とする。
【0087】
硫黄以外の加硫剤としては、例えば、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物、1,6-ヘキサメチレン-ジチオ硫酸ナトリウム・二水和物、1,6-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン等が挙げられる。これらの硫黄以外の加硫剤は、田岡化学工業(株)、ランクセス(株)、フレクシス社等より市販されているものを使用することができる。
【0088】
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド-アミン系若しくはアルデヒド-アンモニア系、イミダゾリン系、またはキサンテート系加硫促進剤等が挙げられる。これらの加硫促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフェンアミド系、グアニジン系、およびチアゾール系加硫促進剤からなる群から選ばれる1以上の加硫促進剤が好ましい。
【0089】
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)等が挙げられる。なかでも、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)が好ましい。
【0090】
グアニジン系加硫促進剤としては、例えば、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1-o-トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ-o-トリルグアニジン塩、1,3-ジ-o-クメニルグアニジン、1,3-ジ-o-ビフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-クメニル-2-プロピオニルグアニジン等が挙げられる。なかでも、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)が好ましい。
【0091】
チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド等が挙げられる。なかでも、2-メルカプトベンゾチアゾールが好ましい。
【0092】
加硫促進剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましい。また、加硫促進剤のゴム成分100質量部に対する含有量は、8質量部以下が好ましく、7質量部以下がより好ましく、6質量部以下がさらに好ましい。加硫促進剤の含有量を上記範囲内とすることにより、破壊強度および伸びが確保できる傾向がある。
【0093】
本開示のゴム組成物は、公知の方法により製造することができる。例えば、前記の各成分をオープンロール、密閉式混練機(バンバリーミキサー、ニーダー等)等のゴム混練装置を用いて混練りすることにより製造できる。
【0094】
混練り工程は、例えば、加硫剤および加硫促進剤以外の配合剤および添加剤を混練りするベース練り工程と、ベース練り工程で得られた混練物に加硫剤および加硫促進剤を添加して混練りするファイナル練り(F練り)工程とを含んでなるものである。さらに、前記ベース練り工程は、所望により、複数の工程に分けることもできる。
【0095】
混練条件としては特に限定されるものではないが、例えば、ベース練り工程では、排出温度150~170℃で3~10分間混練りし、ファイナル練り工程では、70~110℃で1~5分間混練りする方法が挙げられる。加硫条件としては、特に限定されるものではなく、例えば、150~200℃で10~30分間加硫する方法が挙げられる。
【0096】
ベース部を備えたソリッドタイヤは、前記のゴム組成物を用いて、通常の方法により製造できる。すなわち、ゴム成分に対して上記各成分を必要に応じて配合した未加硫のゴム組成物を、所定の形状の口金を備えた押し出し機でベース部の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上でトレッド部および他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、通常の方法にて成型することにより、未加硫タイヤを形成し、この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、本開示のソリッドタイヤを製造することができる。
【実施例
【0097】
以下、本開示を実施例に基づいて説明するが、本開示はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0098】
以下、実施例および比較例において用いた各種薬品をまとめて示す。
NR:TSR20
BR:宇部興産(株)製のUBEPOL BR150B(シス含量:97モル%、Mw:44万)
SBR:JSR(株)製のSBR1502(E-SBR、スチレン含量:23.5質量%、ビニル含量:18モル%、Mw:42万)
カーボンブラック1:三菱化学(株)製のダイアブラックN550(平均粒子径:48nm)
カーボンブラック2:三菱化学(株)製のダイアブラックN660(平均粒子径:80nm)
カーボンブラック3:三菱化学(株)製のダイアブラックN220(平均粒子径:23nm)
ミクロ繊維1:PET繊維(平均繊維径:27μm、繊維径の最小値に対する最大値の比:2.1、平均繊維長:5mm)
ミクロ繊維2:PET繊維(平均繊維径:35μm、繊維径の最小値に対する最大値の比:1.8、平均繊維長:5mm)
ミクロ繊維3:PET繊維(平均繊維径:10μm、繊維径の最小値に対する最大値の比:1.1、平均繊維長:5mm)
シリカ:エボニックデグサ社製のウルトラシルVN3(N2SA:175m2/g)
シランカップリング剤:エボニックデグサ社製のSi266(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
樹脂成分:ヤスハラケミカル(株)製のYSレジン TO125(テルペンスチレン樹脂)
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸つばき
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
硫黄:日本乾溜工業(株)製のセイミOT(10%オイル含有不溶性硫黄)
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS))
【0099】
(実施例および比較例)
表1に示す配合処方にしたがい、1.7Lの密閉型バンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を排出温度170℃になるまで5分間混練りし、混練物を得た。さらに、得られた混練物を前記バンバリーミキサーにより、排出温度150℃で4分間、再度混練りした(リミル)。次に、2軸オープンロールを用いて、得られた混練物に硫黄および加硫促進剤を添加し、4分間、105℃になるまで練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で12分間プレス加硫することで、加硫ゴム組成物を作製した。また、実施例1の未加硫ゴム組成物を、所定の形状の口金を備えた押し出し機でベース部の形状に押し出し成形し、トレッド部および他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、プレス加硫することにより、トラクッシュタイヤを製造した。
【0100】
<耐カット性能の評価>
得られた加硫ゴム組成物の耐カット性能を、特開2019-113399号公報に記載の試験装置を用いて評価した。図3に試験装置32の基本構成を示す。
【0101】
得られた加硫ゴム組成物より、試験片34(長さ:100mm、幅:10mm、厚さ:10mm)を作製した。錘84の質量は、30kgに設定された。アーム82の長さLは、1.09mに設定された。刃52には、両刃(角度α=20°、厚さTB=2mm、幅(奥行)=20mm)が用いられた。
【0102】
試験片34の両端をそれぞれ試験装置の把持手段56で把持し、試験片の第一面が刃側に位置するように試験片を固定部50にセットした。アクチュエーター58により上側の把持手段を下側の把持手段に向かって移動させ、スペーサー60を試験片の裏面74に押し当て、試験片34を湾曲させた。湾曲状態にある試験片表面の輪郭を表す円弧の曲率半径は110mmとした。
【0103】
錘84を持ち上げてこの錘を放つことで、湾曲状態にある試験片の頂PTの部分に刃を打撃させた。錘が持ち上げられた状態でのアームが、錘が真下にある状態でのアームに対してなす初期の角度θは36°とした。
【0104】
刃がスチールコードに達したかは、打撃時の音で判断した。なお、打撃時に音がせず刃がスチールコードに達していなければ、試験片を新しい別の試験片に置き換え、角度θを2°大きくして、この新しい別の試験片について試験を行った。2°刻みで角度θを大きくしながら、刃がスチールコードに達するまで、この刃による試験片の打撃が繰り返し、スチールコードまで刃が到達した角度θを求めた。
【0105】
得られた角度θ、アームの長さLA、錘の質量および重力加速度から位置エネルギーを算出し、これを破壊エネルギー(J)として示した。また、比較例2の破壊エネルギーを100とし、下記式による指数を表示した。指数が大きいほど耐カット性能に優れることを示す。
(耐カット性能指数)
=(各配合例の破壊エネルギー)/(比較例2の破壊エネルギー)×100
【0106】
<耐発熱性能の評価>
得られた加硫ゴム組成物をシート状の加硫ゴム試験片とし、JIS K 6394:2007に準拠し、TA Instruments社製の粘弾性スペクトロメーターRSA-G2を用いて、温度70℃、初期歪み5%、動歪み±1%、周波数10Hzで、損失正接(tanδ)を測定した。また、70℃tanδの逆数の値について比較例2を100として指数表示した(耐発熱性能指数)。指数が大きいほど耐発熱性能に優れることを示す。
(耐発熱性能指数)=(比較例2の加硫ゴム試験片の70℃tanδ)/(各試験用タイヤの加硫ゴム試験片の70℃tanδ)×100
【0107】
なお、耐カット性能および耐発熱性能の総合性能(耐カット性能指数および耐発熱性能指数の総和)は、200超を性能目標値とする。
【0108】
【表1】
【0109】
表1の結果より、ジエン系ゴム成分に、繊維径分布の広いミクロ繊維、および大粒径のカーボンブラックを配合した本開示のベース部用ゴム組成物は、耐カット性能および耐発熱性能の総合性能が改善されていることがわかる。
【0110】
<耐久性の評価>
実施例1のゴム組成物をベース部に用いた前記のトラクッシュタイヤにつき、下記の方法で耐久性を評価した。各寸法(mm)は、表2に記載のとおりである。このタイヤを、サイズ18×7-8のリムに組み付けて、2トンフォークリフトのフロント荷重輪に装着した。
【0111】
【表2】
【0112】
車輌の走行時間メータで、試験開始時より2000時間走行した時点で、車輌からタイヤを取り外し、タイヤの外観および解剖における耐久的な不具合の有無を確認したところ、不具合は確認されず、トラクッシュタイヤは良好な耐久性を有していた。
【符号の説明】
【0113】
1 ベース部
2 トレッド部
3 コード層
4 間隙部
32 試験装置
34 試験片
50 固定部
52 刃
54 打撃部
56 把持手段
58 アクチュエーター
60 スペーサー
74 裏面
76 表面
82 アーム
84 錘
図1
図2
図3