(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-25
(45)【発行日】2025-04-02
(54)【発明の名称】自動二輪車用タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/03 20060101AFI20250326BHJP
B60C 5/00 20060101ALI20250326BHJP
B60C 11/13 20060101ALI20250326BHJP
【FI】
B60C11/03 E
B60C5/00 H
B60C11/03 C
B60C11/03 300E
B60C11/13 C
(21)【出願番号】P 2021072104
(22)【出願日】2021-04-21
【審査請求日】2024-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】野口 能寿
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-060436(JP,A)
【文献】特開2015-058913(JP,A)
【文献】特開2019-111973(JP,A)
【文献】特開2014-198498(JP,A)
【文献】特開平01-311903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00 - 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有する自動二輪車用タイヤであって、
前記トレッド部は、第1トレッド端と、第2トレッド端と、これらの間をタイヤ周方向に対して互いに逆向きに傾斜して延びる複数本の第1傾斜主溝と複数本の第2傾斜主溝とを含み、
前記複数本の第1傾斜主溝と前記複数本の第2傾斜主溝とは、それぞれ、タイヤ周方向に交互に配され、かつ、互いに繋がっており、
前記トレッド部には、前記第1傾斜主溝と前記第2傾斜主溝と前記第1トレッド端とで囲まれる略三角形状の第1領域が複数区画されており、
前記第1領域は、複数本の副溝によって複数のブロックに区分されており、
前記複数のブロックは、ブロック踏面の面積が最大となる最大ブロックと、ブロック踏面の面積が最小となる最小ブロックとを含み、
前記最大ブロックのブロック踏面の面積A1と前記最小ブロックのブロック踏面の面積A2との比(A2/A1)は、40%~80%であ
り、
前記最大ブロックと前記最小ブロックとは、タイヤ周方向で隣接しており、
前記
最大ブロック及び前記最小ブロックは、前記第1トレッド端に隣接している、
自動二輪車用タイヤ。
【請求項2】
前記副溝は、前記第1傾斜主溝と前記第1トレッド端との間を延びる第1副溝と、前記第1副溝に繋がる第2副溝とを含む、請求項1に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項3】
前記第2副溝の溝幅は、前記第1副溝の溝幅よりも小さい、請求項2に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項4】
前記第2副溝の溝深さは、前記第1副溝の溝深さよりも小さい、請求項2又は3に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項5】
前記第1副溝は、前記第1傾斜主溝に繋がる第1部分と、前記第1部分に繋がり、かつ、前記第1部分のタイヤ周方向に対する傾斜の角度よりも大きい角度の第2部分とを含み、
前記第2部分の長さは、前記第1部分の長さよりも小さい、請求項2ないし4のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項6】
前記第2副溝の長さは、前記第2部分の長さよりも大きい、請求項5に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項7】
前記第1傾斜主溝、前記第2傾斜主溝及び前記第1副溝のタイヤ周方向に対する角度は、それぞれ、40度以上である、請求項2ないし6のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項8】
前記第1傾斜主溝は、タイヤ赤道を跨って延びる第1主傾斜部と、前記第1主傾斜部のタイヤ周方向に対する角度よりも大きく傾斜し、かつ、前記第1主傾斜部よりも前記第2トレッド端側に配される第1副傾斜部とを含み、
前記第2傾斜主溝は、タイヤ赤道を跨って延びる第2主傾斜部と、前記第2主傾斜部のタイヤ周方向に対する角度よりも大きく傾斜し、かつ、前記第2主傾斜部よりも前記第1トレッド端側に配される第2副傾斜部とを含み、
前記第1主傾斜部は、前記第2副傾斜部に繋がる、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項9】
前記第2主傾斜部は、前記第1副傾斜部に繋がる、請求項8に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項10】
前記第1傾斜主溝及び前記第2傾斜主溝は、それぞれ、前記第1トレッド端及び前記第2トレッド端に連通することなく終端する、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項11】
前記トレッド部には、前記第1傾斜主溝と前記第2傾斜主溝と前記第2トレッド端とで囲まれる略三角形状の第2領域が複数区画されており、
前記第2領域は、複数本の副溝によって複数のブロックに区分されており、
前記複数のブロックは、ブロック踏面の面積が最大となる最大ブロックと、ブロック踏面の面積が最小となる最小ブロックとを含み、
前記最大ブロックのブロック踏面の面積A1’と前記最小ブロックのブロック踏面の面積A2’との比(A2’/A1’)は、40%~80%である、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、トレッド部に、互いに逆向きに傾斜しかつ交互に配された第1傾斜主溝及び第2傾斜主溝が設けられた自動二輪車用タイヤが記載されている。前記トレッド部は、前記第1傾斜主溝、前記第2傾斜主溝及び第1トレッド端に囲まれた第1領域を含んでいる。前記第1領域は、複数のブロックを含み、前記各ブロックは、各頂点の角度がいずれも45度以上である接地面を含んでいる。このような空気入りタイヤは、オンロード性能及びオフロード性能を高めつつ、優れた耐偏摩耗性能を発揮するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のようなタイヤでは、オンロードでの旋回走行時の過渡特性や軽快性については、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、オフロード性能や耐偏摩耗性能を維持しながら、旋回走行時の過渡特性や軽快性をさらに向上させることができる自動二輪車用タイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有する自動二輪車用タイヤであって、前記トレッド部は、第1トレッド端と、第2トレッド端と、これらの間をタイヤ周方向に対して互いに逆向きに傾斜して延びる複数本の第1傾斜主溝と複数本の第2傾斜主溝とを含み、前記複数本の第1傾斜主溝と前記複数本の第2傾斜主溝とは、それぞれ、タイヤ周方向に交互に配され、かつ、互いに繋がっており、前記トレッド部には、前記第1傾斜主溝と前記第2傾斜主溝と前記第1トレッド端とで囲まれる略三角形状の第1領域が複数区画されており、前記第1領域は、複数本の副溝によって複数のブロックに区分されており、前記複数のブロックは、ブロック踏面の面積が最大となる最大ブロックと、ブロック踏面の面積が最小となる最小ブロックとを含み、前記最大ブロックのブロック踏面の面積A1と前記最小ブロックのブロック踏面の面積A2との比(A2/A1)は、40%~80%である。
【0007】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記副溝が、前記第1傾斜主溝と前記第1トレッド端との間を延びる第1副溝と、前記第1副溝に繋がる第2副溝とを含む、のが望ましい。
【0008】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記第2副溝の溝幅が、前記第1副溝の溝幅よりも小さい、のが望ましい。
【0009】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記第2副溝の溝深さが、前記第1副溝の溝深さよりも小さい、のが望ましい。
【0010】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記第1副溝が、前記第1傾斜主溝に繋がる第1部分と、前記第1部分に繋がり、かつ、前記第1部分のタイヤ周方向に対する傾斜の角度よりも大きい角度の第2部分とを含み、前記第2部分の長さは、前記第1部分の長さよりも小さい、のが望ましい。
【0011】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記第2副溝の長さが、前記第2部分の長さよりも大きい、のが望ましい。
【0012】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記第1傾斜主溝、前記第2傾斜主溝及び前記第1副溝のタイヤ周方向に対する角度が、それぞれ、40度以上である、のが望ましい。
【0013】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記第1傾斜主溝が、タイヤ赤道を跨って延びる第1主傾斜部と、前記第1主傾斜部のタイヤ周方向に対する角度よりも大きく、かつ、前記第1主傾斜部よりも前記第2トレッド端側に配される第1副傾斜部とを含み、前記第2傾斜主溝は、タイヤ赤道を跨って延びる第2主傾斜部と、前記第2主傾斜部のタイヤ周方向に対する角度よりも大きく、かつ、前記第2主傾斜部よりも前記第1トレッド端側に配される第2副傾斜部とを含み、前記第1主傾斜部は、前記第2副傾斜部に繋がる、のが望ましい。
【0014】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記第2主傾斜部が、前記第1副傾斜部に繋がる、のが望ましい。
【0015】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記第1傾斜主溝及び前記第2傾斜主溝が、それぞれ、前記第1トレッド端及び前記第2トレッド端に連通することなく終端する、のが望ましい。
【0016】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記最大ブロックと前記最小ブロックとが、タイヤ周方向で隣接している、のが望ましい。
【0017】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記トレッド部には、前記第1傾斜主溝と前記第2傾斜主溝と前記第2トレッド端とで囲まれる略三角形状の第2領域が複数区画されており、前記第2領域は、複数本の副溝によって複数のブロックに区分されており、前記複数のブロックは、ブロック踏面の面積が最大となる最大ブロックと、ブロック踏面の面積が最小となる最小ブロックとを含み、前記最大ブロックのブロック踏面の面積A1’と前記最小ブロックのブロック踏面の面積A2’との比(A2’/A1’)は、40%~80%である、のが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の自動二輪車用タイヤは、上記の構成を採用することで、オフロード性能や耐偏摩耗性能を維持しながら、旋回走行時の過渡特性や軽快性をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態を示す自動二輪車用タイヤの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本発明の一実施形態を示す自動二輪車用タイヤ1(以下、単に「タイヤ」ということがある。)の正規状態における横断面図である。
図2は、タイヤ1のトレッド部2を展開した平面図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、オンロードとオフロードとが混在するコースの走行に適している。本実施形態のタイヤ1は、例えば、自動二輪車の後輪に用いられる。なお、タイヤ1は、自動二輪車の前輪に用いられても良い。
図1は、
図2のA-A線断面図である。
【0021】
前記「正規状態」は、タイヤ1が正規リム(図示省略)にリム組みされ、かつ、正規内圧が充填された無負荷の状態である。本明細書では特に断りがない限り、タイヤ1の各部の寸法は、正規状態で測定された値である。
【0022】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0023】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0024】
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、前記正規状態において、トレッド部2の外面2sが、タイヤ半径方向外側に凸の円弧状に湾曲している。このようなタイヤ1は、キャンバー角が大きい旋回時においても十分な接地面積を得ることができる。
【0025】
トレッド部2は、第1トレッド端(図では、右側)Te1と第2トレッド端(図では、左側)Te2とを有している。第1トレッド端Te1及び第2トレッド端Te2は、トレッド部2のタイヤ軸方向の両端に相当し、例えば、最大キャンバー角付近での旋回時にはこれらが接地し得る。
【0026】
図2に示されるように、トレッド部2は、第1トレッド端Te1と第2トレッド端Te2との間をタイヤ周方向に対して互いに逆向きに傾斜して延びる複数本の第1傾斜主溝3と複数本の第2傾斜主溝4とを含んでいる。
【0027】
複数本の第1傾斜主溝3と複数本の第2傾斜主溝4とは、それぞれ、タイヤ周方向に交互に配され、かつ、互いに繋がっている。これにより、トレッド部2には、第1傾斜主溝3と第2傾斜主溝4と第1トレッド端Te1とで囲まれる略三角形状の第1領域S1が複数区画されている。
【0028】
第1領域S1は、複数本の副溝5によって複数のブロック6に区分されている。第1領域S1には、例えば、4~8個のブロック6が設けられるのが望ましい。複数のブロック6は、ブロック踏面7aの面積が最大となる最大ブロック7と、ブロック踏面8aの面積が最小となる最小ブロック8とを含んでいる。
【0029】
そして、最大ブロック7のブロック踏面7aの面積A1と最小ブロック8のブロック踏面8aの面積A2との比(A2/A1)は、40%~80%である。比(A2/A1)が40%以上であるので、第1領域S1の各ブロック6の剛性差が小さくなる。これにより、オンロードでの旋回走行の初期から後期にかけての過渡特性や軽快性が向上する。また、第1領域S1において、ブロック剛性差が小さくなるため、耐偏摩耗性能が維持される。さらに、比(A2/A1)が80%以下であるので、第1領域S1では、各ブロック6の接地時にアンバランスな変形が生じ、第1傾斜主溝3、第2傾斜主溝4及び副溝5での泥排出作用が高められ、オフロード性能も向上する。本明細書では、「過渡特性」は、旋回走行の初期から後期にかけての車体の倒し込みのスムーズさをいう。また、「軽快性」は、ライダーが意識的にキャンバー角を変化させたときの、車体の応答性をいう。さらに、オンロードでの旋回走行の過渡特性や軽快性を合わせて、「オンロード性能」という場合がある。
【0030】
トレッド部2は、本実施形態では、タイヤ回転方向Rが定められている。なお、本発明のトレッド部2は、タイヤ回転方向Rが定められたものに限定されるものではない。
【0031】
第1傾斜主溝3は、第1トレッド端Te1及び第2トレッド端Te2(以下、単に、これらを「トレッド端Te」という倍がある)に連通することなく終端している。同様に、第2傾斜主溝4は、両トレッド端Teに連通することなく終端している。このような第1傾斜主溝3及び第2傾斜主溝4は、大きな横力の作用するトレッド端Teの剛性の低下を抑制して、オンロード性能を向上する。特に限定されるものではないが、各トレッド端Teと、第1傾斜主溝3の第1端3e又は第2傾斜主溝4の第1端4eとの間のタイヤ軸方向の距離Laは、1mm以上が望ましく、2mm以上がより望ましく、5mm以下が望ましく、4mm以下がより望ましい。第1端3e、4eは、他の溝と繋がることなく、トレッド部2の外面2sで途切れる端という。
【0032】
第1傾斜主溝3は、タイヤ赤道Cを跨って延びる第1主傾斜部3Aと、第1主傾斜部3Aのタイヤ周方向に対する角度θ1よりも大きく傾斜し、かつ、第1主傾斜部3Aよりも第2トレッド端Te2側に配される第1副傾斜部3Bとを含んでいる。第1主傾斜部3Aと第1副傾斜部3Bとは、本実施形態では、タイヤ周方向の一方側(図では上側)に凸の屈曲部K1を介して繋がっている。
【0033】
第2傾斜主溝4は、タイヤ赤道Cを跨って延びる第2主傾斜部4Aと、第2主傾斜部4Aのタイヤ周方向に対する角度θ3よりも大きく傾斜し、かつ、第2主傾斜部4Aよりも第1トレッド端Te1側に配される第2副傾斜部4Bとを含んでいる。第2主傾斜部4Aと第2副傾斜部4Bとは、本実施形態では、タイヤ周方向の一方側(図では上側)に凸の屈曲部K2を介して繋がっている。
【0034】
第1主傾斜部3Aは、第2副傾斜部4Bに繋がっている。また、第2主傾斜部4Aは、第1副傾斜部3Bに繋がっている。これにより、第1傾斜主溝3及び第2傾斜主溝4のタイヤ軸方向の長さL1が大きく確保されるので、泥土に対するせん断力が高められる。このため、優れたオフロード性能が発揮される。本実施形態の第1主傾斜部3Aは、第2傾斜主溝4の屈曲部K2に繋がることなく、屈曲部K2よりも第1トレッド端Te1側で第2副傾斜部4Bに繋がっている。本実施形態の第2主傾斜部4Aは、第1傾斜主溝3の屈曲部K1に繋がることなく、屈曲部K1よりも第2トレッド端Te2側で第1副傾斜部3Bに繋がっている。
【0035】
特に限定されるものではないが、第1主傾斜部3Aの角度θ1及び第2主傾斜部4Aの角度θ3は、30度以上が望ましく、40度以上がさらに望ましく、60度以下が望ましく、50度以下がさらに望ましい。また、第1副傾斜部3Bのタイヤ周方向に対する角度θ2及び第2副傾斜部4Bのタイヤ周方向に対する角度θ4は、35度以上が望ましく、45度以上がさらに望ましく、65度以下が望ましく、55度以下がさらに望ましい。
【0036】
図3は、
図2の第1領域S1の拡大図である。
図3に示されるように、副溝5は、例えば、タイヤ周方向に対して傾斜して延びている。このような副溝5は、タイヤ軸方向成分を有するので、泥土に対するせん断力を発揮しオフロード性能を高める。
【0037】
副溝5は、第1傾斜主溝3と第1トレッド端Te1との間を延びる第1副溝11と、第1副溝11に繋がる第2副溝12とを含んでいる。第1副溝11は、例えば、第1トレッド端Te1側の外端11eが第1トレッド端Te1に繋がることなくトレッド部2内で終端している。第2副溝12は、両端が溝に繋がっている。本明細書では、「溝」は、溝幅が1.5mm以上の溝状体をいう。
【0038】
第1副溝11の外端11eと第1トレッド端Te1との間のタイヤ軸方向の距離Lbは、距離Laと同じであるのが望ましい。距離Lbは、例えば、1mm以上が望ましく、2mm以上がより望ましく、5mm以下が望ましく、4mm以下がより望ましい。
【0039】
第1副溝11は、第1傾斜主溝3に繋がる第1部分11Aと、第1部分11Aに繋がり、かつ、第1部分11Aのタイヤ周方向に対する傾斜の角度θ5よりも大きい角度θ6の第2部分11Bとを含んでいる。このような第1副溝11は、前記横力の作用する第1トレッド端Te1付近のタイヤ軸方向の剛性を大きく維持する。第1部分11Aと第2部分11Bとは、タイヤ周方向の一方側へ凸の屈曲部K3を介して繋がっている。第1部分11Aの角度θ5と第2部分11Bの角度θ6との差(θ6-θ5)は、20度以上が望ましく、25度以上がさらに望ましく、50度以下が望ましく、45度以下がさらに望ましい。
【0040】
第1副溝11は、本実施形態では、タイヤ軸方向の長さが小さい第1短副溝13と、第1短副溝13よりもタイヤ軸方向の長さが大きい第1長副溝14とを含んでいる。第1長副溝14は、本実施形態では、第1短副溝13よりも第2傾斜主溝4側に配されている。第1長副溝14の第1部分11Aは、第1短副溝13の第1部分11Aよりも第2主傾斜部4Aの角度θ3に近い角度で傾斜している。
【0041】
第1部分11Aは、第2傾斜主溝4の第2主傾斜部4Aに沿って延びている。これにより、第1部分11Aと第2主傾斜部4Aとで区分されるブロック6、及び、第1部分11A間で区分されるブロック6の第1部分11Aと直交方向の剛性差が小さくなり、耐偏摩耗性能が高められる。本明細書では、前記「沿って延びている」とは、第1部分11Aの角度θ5と第2主傾斜部4Aの角度θ3(
図2に示す)の差の絶対値が20度以下の態様をいう。
【0042】
第2部分11Bの長さLdは、第1部分11Aの長さLcよりも小さく形成されている。これにより、トラクション性能が維持されるとともに、タイヤ1の回転を利用して、第1部分11A内の泥土がタイヤ回転方向Rの後着側にスムーズに排出される。特に限定されるものではないが、第2部分11Bの長さLdは、トレッド展開半幅TWh(
図2に示す)の35%以上が望ましく、40%以上がさらに望ましく、55%以下が望ましく、50%以下がさらに望ましい。トレッド展開半幅TWhは、タイヤ赤道Cから各トレッド端Teまでのトレッド部2の外面2sに沿った長さである。また、副溝5の各長さは、各副溝5の溝中心線での長さである。
【0043】
図4は、
図2の第1領域S1の拡大図である。
図4に示されるように、第1副溝11の溝幅W2は、第1傾斜主溝3及び第2傾斜主溝4の溝幅W1の80%以上が望ましく、90%以上がさらに望ましく、120%以下が望ましく、110%以下がさらに望ましい。第1副溝11の溝幅W2は、本実施形態では、第1傾斜主溝3の溝幅W1と同じである。第1副溝11の溝幅W2は、トレッド展開半幅TWhの10%以上が望ましく、15%以上がさらに望ましく、30%以下が望ましく、25%以下がさらに望ましい。
【0044】
第2副溝12は、例えば、直線状に延びている。このような第2副溝12は、各ブロック6に生じる偏摩耗を抑制する。
【0045】
第2副溝12は、例えば、第1長副溝14と第2傾斜主溝4とを繋ぐ主溝側第2副溝17と、第1長副溝14と第1短副溝13とを繋ぐ副溝側第2副溝18とを含んでいる。主溝側第2副溝17は、例えば、第1トレッド端Te1側に位置する外側第2副溝19と、外側第2副溝19よりもタイヤ軸方向の内側(第2トレッド端Te2側)に位置する内側第2副溝20とを含んでいる。
【0046】
これにより、第1領域S1には、6つのブロック6が形成される。第2傾斜主溝4と第1長副溝14との間には、3つのブロック6が形成される。また、第1長副溝14と第1短副溝13との間には、2つのブロック6が形成される。第1短副溝13と第1傾斜主溝3と第1トレッド端Te1との間には、1つのブロック6が形成される。
【0047】
本実施形態の最大ブロック7は、第1長副溝14と第1短副溝13と副溝側第2副溝18と第1トレッド端Te1とで区分される。本実施形態の最小ブロック8は、第2傾斜主溝4と第1長副溝14と外側第2副溝19と第1トレッド端Te1とで区分される。本実施形態のように、第1傾斜主溝3、第2傾斜主溝4及び第1副溝11が第1トレッド端Te1に繋がっていない場合、ブロック踏面6aの面積は、以下のように定義される。ブロック踏面6aの面積は、第1トレッド端Te1に繋がっていない部分において、各溝の長手に延びる溝縁を第1トレッド端Te1まで延長させた仮想溝縁eを含めて形成される仮想のブロック踏面6vの面積で定義される。
図4には、仮想のブロック踏面6vがハッチで示される。
【0048】
最大ブロック7と最小ブロック8とは、本実施形態では、タイヤ周方向に隣接している。このように、ブロック剛性が最大となる最大ブロック7とブロック剛性が最小となる最小ブロック8とがタイヤ周方向に隣接しているので、最大ブロック7及び最小ブロック8の接地時のアンバランスな変形が大きくなり、高いオフロード性能が発揮される。
【0049】
第2副溝12の長さLeは、第2部分11Bの長さLd(
図3に示す)よりも大きく形成されている。このような第2副溝12は、第2副溝12で形成されるブロック6のタイヤ周方向の剛性を高く維持して、耐偏摩耗性能を向上する。本実施形態では、全ての第2副溝12の長さLeが第2部分11Bの長さLdよりも大きく形成されている。
【0050】
第2副溝12の溝幅W3は、例えば、第1副溝11の溝幅W2よりも小さく形成されている。このような第2副溝12は、ブロック剛性を維持して耐偏摩耗性能を高める。第2副溝12の溝幅W3は、第1副溝11の溝幅W2の30%以上が望ましく、40%以上がさらに望ましく、80%以下が望ましく、70%以下がさらに望ましい。
【0051】
第2副溝12のタイヤ周方向に対する角度θ7は、例えば、第1副溝11の第1部分11Aの角度θ5(
図3に示す)よりも小さく形成されている。このような第2副溝12は、タイヤ1の転動を利用できるので、溝幅を小さくしたことによる泥排出作用の低減が抑制されるとともに、第2副溝12に隣接するブロック6の剛性低下を抑えて耐偏摩耗性能を高める。このような観点より、第1部分11Aの角度θ5と第2副溝12の角度θ7との差(θ5-θ7)は、5度以上が望ましく、10度以上がさらに望ましく、25度以下が望ましく、20度以下がさらに望ましい。第2副溝12の角度θ7は、5度以上が望ましく、10度以上がさらに望ましく、20度以下が望ましく、15度以下がさらに望ましい。
【0052】
図1に示されるように、第2副溝12の溝深さd3は、第1副溝11の溝深さd2よりも小さいのが望ましい。これにより、上述の作用が効果的に発揮される。第2副溝12の溝深さd3は、2mm以上が望ましく、4mm以下が望ましい。第1副溝11の溝深さd2は、3mm以上が望ましく、6mm以下が望ましい。第1傾斜主溝3及び第2傾斜主溝4の溝深さd1は、第2副溝12の溝深さd3よりも大きいのが望ましく、例えば、3mm以上が望ましく、6mm以下が望ましい。
【0053】
図5は、本実施形態のトレッド部2の展開平面図である。
図5に示されるように、トレッド部2には、第1傾斜主溝3と第2傾斜主溝4と第2トレッド端Te2とで囲まれる略三角形状の第2領域S2が複数区画されている。第2領域S2は、複数本の副溝5によって複数のブロック6に区分されている。
【0054】
第2領域S2の副溝5は、第2傾斜主溝4と第2トレッド端Te2との間を延びる第3副溝23と、第3副溝23に繋がる第4副溝24とを含んでいる。本実施形態の第3副溝23は、本実施形態の第1副溝11と同じ形状であるので、その詳細な説明が省略される。本実施形態の第4副溝24は、本実施形態の第2副溝12と同じ形状であるので、その詳細な説明が省略される。
【0055】
また、このような第3副溝23と第4副溝24とによって形成される第2領域S2のブロック6は、第1領域S1に形成されるブロック6と同じ形状に形成される。複数のブロック6は、ブロック踏面9aの面積が最大となる最大ブロック9と、ブロック踏面10aの面積が最小となる最小ブロック10とを含んでいる。そして、最大ブロック9のブロック踏面9aの面積A1’と最小ブロック10のブロック踏面10aの面積A2’との比(A2’/A1’)は、40%~80%であるのが望ましい。最大ブロック9は、本実施形態では、第1領域S1の最大ブロック7と同じ形状である。最小ブロック10は、本実施形態では、第1領域S1の最小ブロック8と同じ形状である。
【0056】
第1傾斜主溝3、第2傾斜主溝4及び第1副溝11のタイヤ周方向に対する角度α1、α2、α3は、それぞれ、40度以上であるのが望ましい。このような溝3、4、11は、大きなトラクションを発揮する。これら角度α1、α2、α3は、それぞれ、溝3、4、11の溝中心線の両端間を繋ぐ仮想直線Pで規定される。
【0057】
以上、本発明の一実施形態の自動二輪車用タイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例】
【0058】
図1の基本構造及び
図2のトレッドパターンを有する自動二輪車用タイヤが、表1の仕様に基づき試作された。そして、各テストタイヤのオンロード性能、オフロード性能及び耐偏摩耗性能についてテストがされた。
【0059】
<オンロード性能・オフロード性能・耐偏摩耗性能>
テストタイヤが下記テスト車両に装着されて、テストライダーが乾燥アスファルト路面及び泥土路面のテストコースを走行させた。オンロード性能は、乾燥アスファルト路面走行時の過渡特性や軽快性について、テストライダーの官能により評価されたものである。オフロード性能は、泥土路面走行時のトラクションや旋回時の走行安定性について、テストライダーの官能により評価されたものである。耐偏摩耗性能は、前記オンロード性能のテスト後、偏摩耗の発生状態についてテストライダーの目視で評価されたものである。結果は、いずれも、10点を満点とする10点法で示される。
テスト車両:排気量500ccの自動二輪車
タイヤサイズ(前輪、後輪):120/70R17、160/60R17
リムサイズ(前輪、後輪):3.50×17、4.50×17
タイヤ内圧(全輪):250kPa
テストの結果が表1に示される。
【0060】
【0061】
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例のタイヤに比べて、オフロード性能や耐偏摩耗性能が維持されつつ、旋回走行時の過渡特性や軽快性が向上していることが理解される。
【0062】
1 自動二輪車用タイヤ
2 トレッド部
3 第1傾斜主溝
4 第2傾斜主溝
5 副溝
6 ブロック
7 最大ブロック
7a ブロック踏面
8 最小ブロック
8a ブロック踏面
S1 第1領域
Te1 第1トレッド端