(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-25
(45)【発行日】2025-04-02
(54)【発明の名称】滅菌対象の管理システム
(51)【国際特許分類】
G16H 40/40 20180101AFI20250326BHJP
A61L 2/24 20060101ALI20250326BHJP
A61L 2/07 20060101ALI20250326BHJP
【FI】
G16H40/40
A61L2/24
A61L2/07
(21)【出願番号】P 2021078761
(22)【出願日】2021-05-06
【審査請求日】2024-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 昌志
【審査官】鹿野 博嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-003994(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0052078(US,A1)
【文献】特開2002-011080(JP,A)
【文献】特開2020-065690(JP,A)
【文献】特開2017-153966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 10/00-99/00
A61L 2/00- 2/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
滅菌器で滅菌される
医療器具を含む複数の滅菌対象と複数の前記滅菌対象のそれぞれの滅菌条件との関係を示す登録データを記憶する登録データベース部と、
前記登録データに基づいて、前記滅菌対象をファミリに分類するグルーピング部と、
前記滅菌対象の重量及び前記滅菌対象を収容する包装部材の種類の少なくとも一方を含む規定のルールに基づいて、前記滅菌器における前記滅菌対象の推奨位置を決定する推奨位置決定部と、
前記グルーピング部により分類されたファミリ
及び前記推奨位置を出力装置に出力させる出力制御部と、を備える、
滅菌対象の管理システム。
【請求項2】
前記グルーピング部は、前記滅菌条件が同一である複数の前記滅菌対象を1つのファミリに分類し、
前記ファミリを構成する前記滅菌対象は、前記滅菌器により規定のプロセス条件で同時に滅菌される、
請求項1に記載の滅菌対象の管理システム。
【請求項3】
前記滅菌対象を識別する識別装置の識別データを取得する識別データ取得部と、
前記識別データに基づいて、前記滅菌対象が前記推奨位置に配置されているか否かを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づいて、前記滅菌対象が前記推奨位置に配置されていないことを報知装置に報知させる報知制御部と、を備える、
請求項
1又は請求項
2に記載の滅菌対象の管理システム。
【請求項4】
前記滅菌対象を識別する識別装置の識別データを取得する識別データ取得部と、
前記識別データに基づいて、前記滅菌対象が前記グルーピング部により分類された前記ファミリに属しているか否かを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づいて、前記滅菌対象が前記ファミリに属していないことを報知装置に報知させる報知制御部と、を備える、
請求項1
又は請求項
2に記載の滅菌対象の管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、滅菌対象の管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療機器の滅菌バリデーションの一つにパラメトリックリリースという考え方がある。パラメトリックリリースとは、滅菌プロセスのプロセスパラメータが予め定められた許容範囲内であることを証明する記録に基づいて、医療機器が滅菌済みであることを保証することをいう。特許文献1にはパラメトリックリリースに係る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
医療機器は、多種多様である。そのため、医療機器を効率良く適切に滅菌するためには、医療機器を同一のプロセスパラメータで滅菌可能なファミリに分類して、ファミリごとに滅菌処理することが好ましい。しかし、医療現場は多忙であり、医療機器の分類作業を適切に実施できる人材は限られる。そのため、医療現場において医療機器の分類作業が適切に実施されない場合がある。
【0005】
本開示は、滅菌対象の分類作業を支援する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従えば、滅菌器で滅菌される複数の滅菌対象と複数の滅菌対象のそれぞれの滅菌条件との関係を示す登録データを記憶する登録データベース部と、登録データに基づいて、滅菌対象をファミリに分類するグルーピング部と、グルーピング部により分類されたファミリを出力装置に出力させる出力制御部と、を備える、滅菌対象の管理システムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、滅菌対象の分類作業を支援する技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る滅菌対象の管理システムを模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る滅菌器を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る滅菌対象を処理空間に収納する方法を示す模式図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る搬送台車を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る滅菌対象の管理システムを示すブロック図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る滅菌対象の管理方法を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施形態に係る登録データを説明するための図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係るグルーピング部による処理を説明するための図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る出力装置の出力例を示す図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る識別装置が識別番号及びファミリ番号を読み取っている状態を模式的に示す図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係るコンピュータシステムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示は実施形態に限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
[管理システムの概要]
図1は、実施形態に係る滅菌対象の管理システム1を模式的に示す図である。
図1に示すように、管理システム1は、情報端末2と、滅菌器3と、識別装置4と、報知装置5とを備える。
【0011】
情報端末2は、コンピュータシステムを含む。情報端末2として、パーソナルコンピュータが例示される。パーソナルコンピュータとして、タブレット型パーソナルコンピュータ又はノート型パーソナルコンピュータが例示される。
【0012】
滅菌器3は、滅菌対象Sを滅菌する。実施形態において、滅菌器3は、蒸気滅菌器である。蒸気滅菌器は、蒸気を用いて滅菌対象Sを滅菌する。滅菌対象Sは、搬送台車6により滅菌器3に収納される。
【0013】
識別装置4は、滅菌器3に収納される滅菌対象Sを識別する。滅菌対象Sに識別データが付与される。識別装置4は、識別データを読み取ることによって、滅菌対象Sを識別する。実施形態において、識別装置4は、滅菌器3に配置される。
【0014】
報知装置5は、識別装置4の識別結果に基づいて、滅菌器3に収納される滅菌対象Sが適正ではないことを報知する。実施形態において、報知装置5は、滅菌器3に配置される。
【0015】
情報端末2と滅菌器3とは、通信システム7を介して通信することができる。通信システム7として、ローカルエリアネットワーク(LAN:Local Area Network)、インターネット(internet)、又は携帯電話通信網が例示される。
【0016】
[滅菌器]
図2は、実施形態に係る滅菌器3を模式的に示す図である。滅菌器3は、滅菌槽8と、ジャケット9と、ジャケット給蒸装置10と、ジャケットドレン排出装置11と、ジャケット排気装置12と、減圧装置13と、復圧装置14と、滅菌槽給蒸装置15と、滅菌槽ドレン排出装置16と、滅菌槽排気装置17と、ジャケット圧力センサ18と、滅菌槽圧力センサ19と、滅菌槽温度センサ20とを備える。
【0017】
滅菌槽8は、滅菌対象Sが収納される処理空間21を有する。処理空間21は、滅菌槽8の内部空間である。滅菌槽8の一部に出入口が設けられる。滅菌槽8の出入口は、ドア(不図示)により開閉される。管理システム1のユーザは、ドアを開けることにより、滅菌槽8の出入口を介して、処理空間21に滅菌対象Sを搬入したり、処理空間21から滅菌対象Sを搬出したりすることができる。
【0018】
ジャケット9は、滅菌槽8の周囲に配置される。滅菌槽8とジャケット9との間にジャケット空間22が形成される。
【0019】
ジャケット給蒸装置10は、ジャケット空間22に蒸気を供給する。ジャケット給蒸装置10は、蒸気供給源(不図示)とジャケット空間22とを接続するジャケット給蒸ライン23と、ジャケット給蒸ライン23に配置されるジャケット給蒸弁24とを有する。蒸気供給源からの蒸気は、ジャケット給蒸ライン23を介してジャケット空間22に供給される。ジャケット給蒸装置10は、ジャケット空間22に対する蒸気の供給と供給停止とを切り換えることができる。ジャケット給蒸弁24が開閉されることにより、ジャケット空間22に対する蒸気の供給と供給停止とが切り換えられる。
【0020】
ジャケットドレン排出装置11は、ジャケット空間22において生成されたドレンをジャケット空間22から排出する。ジャケットドレン排出装置11は、ジャケット空間22に接続されるジャケットドレン排出ライン25と、ジャケットドレン排出ライン25に配置される蒸気トラップ26及び逆止弁27とを有する。ジャケット空間22において生成されたドレンは、ジャケットドレン排出ライン25を介してジャケット空間22から排出される。
【0021】
ジャケット排気装置12は、ジャケット空間22から気体を排出する。ジャケット排気装置12は、ジャケット空間22に接続されるジャケット排気ライン28と、ジャケット排気ライン28に配置されるジャケット排気弁29及び逆止弁30とを有する。ジャケット空間22の気体は、ジャケット排気ライン28を介してジャケット空間22から排出される。ジャケット排気弁29が開いた状態でジャケット空間22に蒸気が供給されることにより、ジャケット空間22の気体がジャケット排気ライン28を介してジャケット空間22から追い出される。実施形態において、ジャケット排気弁29は、ジャケット排気弁29を通過する気体の温度に基づいて開閉する温度調整弁である。ジャケット排気弁29は、ジャケット排気弁29を通過する気体の温度が作動温度以上になると閉じる。
【0022】
減圧装置13は、処理空間21から気体を排出して処理空間21を減圧する。減圧装置13は、処理空間21に接続される真空ライン31と、真空ライン31に配置される真空弁32、真空ポンプ33、及び逆止弁34とを有する。真空ポンプ33が駆動することにより、処理空間21の気体が真空ポンプ33により吸引され、真空ライン31を介して処理空間21から排出される。減圧装置13は、処理空間21の減圧と減圧停止とを切り換えることができる。真空ポンプ33の駆動と駆動停止とが切り換えられることにより、処理空間21の減圧と減圧停止とが切り換えられる。
【0023】
復圧装置14は、減圧された処理空間21に外気を供給して処理空間21を復圧する。復圧装置14は、処理空間21に接続される給気ライン35と、給気ライン35に配置される無菌フィルタ36、給気弁37、及び逆止弁38とを有する。処理空間21が減圧された状態で給気弁37を開くことにより、給気ライン35を介して外気が処理空間21に供給される。給気ライン35を介して外気が処理空間21に供給されることにより、処理空間21が復圧される。
【0024】
滅菌槽給蒸装置15は、処理空間21に蒸気を供給する。滅菌槽給蒸装置15は、蒸気供給源(不図示)と処理空間21とを接続する滅菌槽給蒸ライン39と、滅菌槽給蒸ライン39に配置される滅菌槽給蒸弁40とを有する。蒸気供給源からの蒸気は、滅菌槽給蒸ライン39を介して処理空間21に供給される。滅菌槽給蒸装置15は、処理空間21に対する蒸気の供給と供給停止とを切り換えることができる。滅菌槽給蒸弁40が開閉されることにより、処理空間21に対する蒸気の供給と供給停止とが切り換えられる。
【0025】
滅菌槽ドレン排出装置16は、処理空間21において生成されたドレンを処理空間21から排出する。滅菌槽ドレン排出装置16は、処理空間21に接続される滅菌槽ドレン排出ライン41と、滅菌槽ドレン排出ライン41に配置される蒸気トラップ42及び逆止弁43とを有する。処理空間21において生成されたドレンは、滅菌槽ドレン排出ライン41を介して処理空間21から排出される。
【0026】
滅菌槽排気装置17は、処理空間21から気体を排出する。滅菌槽排気装置17は、滅菌槽ドレン排出ライン41の少なくとも一部を介して処理空間21に接続される滅菌槽排気ライン44と、滅菌槽排気ライン44に配置される滅菌槽排気弁45及び逆止弁46とを有する。処理空間21の気体は、滅菌槽ドレン排出ライン41の少なくとも一部及び滅菌槽排気ライン44を介して処理空間21から排出される。滅菌槽排気弁45が開いた状態で処理空間21に蒸気が供給されることにより、処理空間21の気体が滅菌槽ドレン排出ライン41の少なくとも一部及び滅菌槽排気ライン44を介して処理空間21から追い出される。
【0027】
真空ライン31の下流側の端部、ジャケット排気ライン28の下流側の端部、及び滅菌槽排気ライン44の下流側の端部のそれぞれは、滅菌槽ドレン排出ライン41の第1部分41Aに接続される。ジャケットドレン排出ライン25の下流側の端部は、滅菌槽ドレン排出ライン41の第2部分41Bに接続される。第1部分41Aは、逆止弁43よりも下流側に規定される。第2部分41Bは、第1部分41Aよりも下流側に規定される。第1部分41Aと第2部分41Bとの間の滅菌槽ドレン排出ライン41に逆止弁47が配置される。
【0028】
ジャケット圧力センサ18は、ジャケット空間22の圧力を検出する。
【0029】
滅菌槽圧力センサ19は、処理空間21の圧力を検出する。
【0030】
滅菌槽温度センサ20は、処理空間21の温度を検出する。
【0031】
次に、滅菌器3の動作について説明する。実施形態において、滅菌器3は、処理空間21から空気を排除する空気排除処理、処理空間21に収納された滅菌対象Sを滅菌する滅菌処理、及び滅菌対象Sを乾燥する乾燥処理を実施する。また、ジャケット空間22に蒸気が供給され、ジャケット空間22が加熱される。
【0032】
処理空間21からの空気排除処理の前に、搬送台車6により滅菌対象Sが処理空間21に収納される。また、処理空間21からの空気排除処理の前に、ジャケット空間22の空気が蒸気に置換される。ジャケット空間22の空気を蒸気に置換する場合、ジャケット給蒸装置10によりジャケット空間22に蒸気が供給され、ジャケット排気装置12によりジャケット空間22から気体が排出される。実施形態においては、ジャケット排気弁29が開いた状態でジャケット給蒸弁24が開くことにより、ジャケット空間22に蒸気が供給され、ジャケット空間22から空気が押し出される。
【0033】
ジャケット空間22に蒸気が供給されることにより、ジャケット空間22の温度が上昇する。また、ジャケット排気弁29を通過する気体の温度が上昇する。ジャケット排気弁29を通過する気体の温度が作動温度以上になると、ジャケット排気弁29が閉じる。ジャケット排気弁29が閉じることにより、ジャケット排気装置12によるジャケット空間22からの気体の排出が停止される。ジャケット空間22からの気体の排出が停止された状態で、ジャケット給蒸装置10によりジャケット空間22に蒸気が供給される。ジャケット圧力センサ18の検出結果に基づいて、ジャケット空間22が一定の圧力を維持するように、ジャケット給蒸装置10による蒸気の供給が制御される。ジャケット空間22において生成されたドレンは、ジャケットドレン排出装置11によりジャケット空間22から排出される。
【0034】
ジャケット空間22が蒸気で満たされた後、処理空間21からの空気排除処理が開始される。処理空間21から空気を排除する場合、減圧装置13による減圧が停止された状態で、滅菌槽給蒸装置15により処理空間21に蒸気が供給され、滅菌槽排気装置17により処理空間21から気体が排出される。実施形態においては、滅菌槽排気弁45が開いた状態で滅菌槽給蒸弁40が開くことにより、処理空間21に蒸気が供給され、処理空間21から空気が押し出される。滅菌槽給蒸装置15による蒸気の供給と滅菌槽排気装置17による気体の排出とが終了した後、減圧装置13により処理空間21が減圧される。実施形態においては、滅菌槽給蒸弁40及び滅菌槽排気弁45のそれぞれが閉じた状態で真空弁32が開くことにより、処理空間21が減圧される。減圧装置13による減圧が終了した後、滅菌槽給蒸装置15により処理空間21に蒸気が供給される。処理空間21が大気圧になるまで滅菌槽給蒸装置15により処理空間21に蒸気が供給された後、減圧装置13により処理空間21が減圧される。処理空間21の減圧と処理空間21に対する蒸気の供給とが複数回繰り返されることにより、処理空間21から空気が排除される。
【0035】
処理空間21からの空気排除処理が終了した後、滅菌対象Sの滅菌処理が開始される。減圧装置13による減圧が停止された状態で、滅菌槽給蒸装置15により処理空間21に蒸気が供給される。滅菌槽温度センサ20の検出結果に基づいて、処理空間21が規定の滅菌温度に規定の滅菌時間だけ維持されるように、滅菌槽給蒸装置15による蒸気の供給が制御される。滅菌対象Sが収納されている処理空間21が蒸気で満たされることにより、滅菌対象Sが滅菌される。
【0036】
滅菌対象Sの滅菌処理が終了した後、滅菌対象Sの乾燥処理が開始される。滅菌槽給蒸装置15による蒸気の供給が停止された状態で、滅菌槽排気装置17により処理空間21から気体が排出される。実施形態においては、滅菌槽給蒸弁40が閉じた状態で滅菌槽排気弁45が開くことにより、処理空間21から蒸気が排出される。処理空間21から蒸気が排出された後、減圧装置13により処理空間21が減圧される。処理空間21が減圧されることにより、滅菌対象Sが乾燥される。
【0037】
[収納方法]
図3は、実施形態に係る滅菌対象Sを処理空間21に収納する方法を示す模式図である。
図4は、実施形態に係る搬送台車6を示す斜視図である。
【0038】
搬送台車6は、滅菌対象Sを支持するワゴン48と、ワゴン48を搬送するストレッチャ49とを有する。
【0039】
ワゴン48は、支柱50と、棚51と、車輪52とを有する。支柱50は、4本設けられる。棚51は、滅菌対象Sを支持する。滅菌対象Sは、棚51に載置される。滅菌対象Sは、滅菌バッグ、不織布、又は滅菌コンテナのような包装部材に収容された状態で、棚51に載置される。なお、滅菌対象Sは、包装部材に収容されない状態で、棚51に載置されてもよい。
【0040】
棚51は、上下方向に間隔をあけて複数設けられる。棚51は、棚板53と、棚板53の下方に配置される水受板54とを有する。なお、最下段の棚51は、水受板54を有しない。棚板53は、複数の貫通孔55を有する。滅菌対象Sは、棚板53に載置される。水受板54は、棚板53又は滅菌対象Sからの凝縮水を受ける。支柱50にパイプ56が固定される。棚板53及び水受板54は、パイプ56を介して支柱50に支持される。
【0041】
車輪52は、最下段の棚51に取り付けられる。車輪52の回転により、ワゴン48は走行可能である。
【0042】
ストレッチャ49は、ワゴン48を支持した状態で走行可能である。ストレッチャ49は、台座57と、車輪58と、ハンドル59とを有する。台座57は、ワゴン48を支持する。ワゴン48は、台座57に載置される。台座57にガイドレール60が設けられる。ワゴン48の車輪52は、ガイドレール60にガイドされる。車輪58は、台座57の下部に取り付けられる。車輪58の回転により、ストレッチャ49は走行可能である。ハンドル59は、管理システム1のユーザに握られる。管理システム1のユーザは、ハンドル59を握ってストレッチャ49を走行させることができる。
【0043】
ワゴン48は、ストレッチャ49と滅菌槽8とを移動可能である。処理空間21の底部にガイドレール61が設けられる。ワゴン48の車輪52は、台座57から処理空間21に移動した後、ガイドレール61にガイドされる。滅菌対象Sは、ワゴン48の棚51に載置された状態で、処理空間21に収納される。
【0044】
[管理システムの機能]
図5は、実施形態に係る滅菌対象Sの管理システム1を示すブロック図である。
【0045】
情報端末2は、制御装置62と、入力装置63と、出力装置64と、通信装置65とを有する。
【0046】
制御装置62は、コンピュータシステムを含む。
【0047】
入力装置63は、管理システム1のユーザに操作される。入力装置63として、タッチパネル又はコンピュータ用キーボートが例示される。入力装置63は、管理システム1のユーザに操作されることにより入力信号を生成する。入力装置63により生成された入力信号は、制御装置62に送信される。
【0048】
出力装置64は、管理システム1のユーザに出力データを提供する。出力装置64として、表示装置が例示される。表示装置として、フラットパネルディスプレイが例示される。なお、出力装置64は、音声出力装置でもよい。
【0049】
通信装置65は、通信システム7を介して滅菌器3と通信する。
【0050】
滅菌器3は、制御装置66と、通信装置67と、識別装置4と、報知装置5とを有する。
【0051】
制御装置66は、コンピュータシステムを含む。
【0052】
通信装置67は、通信システム7を介して情報端末2と通信する。
【0053】
識別装置4は、滅菌器3に収納される滅菌対象Sを識別する。滅菌対象Sに識別データが付与される。識別装置4は、識別データを読み取ることによって、滅菌対象Sを識別する。実施形態において、識別データは、滅菌対象Sに付与された識別番号を含む。識別番号が記載されたシート又はカードが滅菌対象Sに付される。
【0054】
また、識別装置4は、滅菌対象Sが載置されたワゴン48を識別する。ワゴン48に識別データが付与される。識別装置4は、識別データを読み取ることによって、ワゴン48を識別する。実施形態において、識別データは、ワゴン48に付与されたファミリ番号を含む。ファミリ番号が記載されたシート又はカードがワゴン48に付される。
【0055】
識別装置4は、識別番号及びファミリ番号を読み取り可能なカメラを含む。識別装置4は、識別番号を認識することによって、滅菌対象Sを識別する。識別装置4は、ファミリ番号を認識することによって、ワゴン48を識別する。
【0056】
なお、識別データがバーコードであり、識別装置4がバーコードリーダでもよい。識別データがRFタグに書き込まれ、識別装置4がRFIDリーダでもよい。識別データがICタグに書き込まれ、識別装置4がICタグリーダでもよい。
【0057】
報知装置5は、識別装置4の識別結果に基づいて、滅菌器3に収納される滅菌対象Sが適正ではないことを報知する報知データを出力する。
【0058】
報知装置5として、表示装置、ランプ、及びブザーが例示される。表示装置は、報知データとして表示データを表示する。ランプは、報知データとして規定の発光パターンで光を出力する。ブザーは、報知データとして規定の出力パターンで音を出力する。なお、報知装置5は、情報端末2に設けられてもよい。
【0059】
制御装置62は、登録データベース部68と、グルーピング部69と、推奨位置決定部70と、出力制御部71とを有する。
【0060】
登録データベース部68は、滅菌器3で滅菌される複数の滅菌対象Sと複数の滅菌対象のそれぞれの滅菌条件との関係を示す登録データを記憶する。実施形態において、滅菌対象Sは、医療器具を含む。滅菌対象Sについて推奨される滅菌条件が予め定められている。滅菌条件は、滅菌温度及び滅菌時間を含む。推奨される滅菌条件は、例えば医療器具メーカーより提供される。管理システム1のユーザは、入力装置63を操作して、複数の滅菌対象Sと複数の滅菌対象Sのそれぞれについての滅菌条件とを入力する。管理システム1のユーザにより入力された滅菌対象Sと滅菌条件との関係を示す登録データが登録データベース部68に記憶される。
【0061】
グルーピング部69は、登録データベース部68に記憶されている登録データに基づいて、滅菌対象Sをファミリに分類する。実施形態において、グルーピング部69は、滅菌条件が同一である複数の滅菌対象Sを1つのファミリに分類する。
【0062】
推奨位置決定部70は、規定のルールに基づいて、滅菌器3における滅菌対象Sの推奨位置を決定する。実施形態において、滅菌対象Sは、ワゴン48に載置される。推奨位置は、ワゴン48において推奨される滅菌対象Sの載置位置を含む。
【0063】
規定のルールは、滅菌対象Sの重量を含む。重量が大きい滅菌対象Sはワゴン48の下段の棚51に載置され、重量が小さい滅菌対象Sはワゴン48の上段の棚51に載置され、重量が中間値の滅菌対象Sはワゴン48の中段の棚51に載置されるように、滅菌対象Sの推奨位置に係るルールが予め定められている。
【0064】
また、規定のルールは、滅菌対象Sを収容する包装部材の種類を含む。上述のように、実施形態において、滅菌対象は、医療器具を含む。包装部材は、滅菌バッグ、不織布、及び滅菌コンテナを含む。滅菌バッグに収容された滅菌対象Sはワゴン48の上段の棚51に載置され、不織布に収容された滅菌対象Sはワゴン48の中段の棚51に載置され、滅菌コンテナに収容された滅菌対象Sはワゴン48の下段の棚51に載置されるように、滅菌対象Sの推奨位置に係るルールが予め定められている。
【0065】
出力制御部71は、グルーピング部69により分類されたファミリを出力装置64に出力させる。また、出力制御部71は、推奨位置決定部70により決定された滅菌対象Sの推奨位置を出力装置64に出力させる。
【0066】
制御装置66は、識別データ取得部72と、判定部73と、報知制御部74と、プロセス制御部75と、プロセスデータベース部76とを有する。
【0067】
識別データ取得部72は、滅菌対象Sを識別する識別装置4の識別データを取得する。また、識別データ取得部72は、ワゴン48を識別する識別装置4の識別データを取得する。
【0068】
判定部73は、識別データ取得部72により取得された識別データに基づいて、滅菌対象Sがワゴン48において推奨位置に配置されているか否かを判定する。また、判定部73は、識別データ取得部72により取得された識別データに基づいて、滅菌対象Sがグルーピング部69により分類されたファミリに属しているか否かを判定する。実施形態において、1つのファミリを構成する複数の滅菌対象Sは、1つのワゴン48に載置される。識別装置4は、ワゴン48に付与されたファミリ番号及びワゴン48に載置されている滅菌対象Sに付与された識別番号のそれぞれを読み取る。判定部73は、識別データ取得部72により取得されたファミリ番号に係る識別データ及び識別番号に係る識別データに基づいて、滅菌対象Sがグルーピング部69により分類されたファミリに属しているか否かを判定することができる。
【0069】
報知制御部74は、判定部73の判定結果に基づいて、滅菌対象Sが推奨位置に配置されていないことを報知装置5に報知させる。また、報知制御部74は、判定部73の判定結果に基づいて、滅菌対象Sがファミリに属していないことを報知装置5に報知させる。すなわち、識別データ取得部72により取得された識別データに基づいて、滅菌対象Sが推奨位置に配置されていないと判定部73に判定された場合、報知制御部74は、滅菌対象Sが推奨位置に配置されていないことを報知装置5に報知させる。また、識別データ取得部72により取得された識別データに基づいて、滅菌対象Sがグルーピング部69により分類されたファミリに属していないと判定部73に判定された場合、報知制御部74は、滅菌対象Sがファミリに属していないことを報知装置5に報知させる。
【0070】
プロセス制御部75は、処理空間21に収納されている滅菌対象Sが規定のプロセス条件で滅菌されるように滅菌器3を制御する。プロセス条件は、滅菌プロセスを規定するプロセスパラメータを含む。プロセスパラメータは、滅菌温度及び滅菌時間を含む。1つのファミリを構成する複数の滅菌対象Sは、滅菌槽8の処理空間21に一緒に収容され、滅菌器3により規定のプロセス条件で同時に滅菌される。1つのファミリを構成する複数の滅菌対象Sは、1つのワゴン48に載置された状態で、滅菌器3により規定のプロセス条件で同時に滅菌される。
【0071】
プロセスデータベース部76は、滅菌器3で滅菌される複数のファミリの滅菌条件と複数のファミリのそれぞれのプロセス条件との関係を示すプロセスデータを記憶する。複数のファミリのそれぞれについて、ファミリの滅菌条件を満足するプロセス条件が予め定められている。ファミリの滅菌条件とプロセス条件との関係を示すプロセスデータがプロセスデータベース部76に記憶される。
【0072】
プロセス制御部75は、処理空間21に収納されるファミリの滅菌条件と、プロセスデータベース部76に記憶されているプロセスデータとに基づいて、処理空間21に収納されたファミリを構成する複数の滅菌対象が推奨されるプロセス条件で同時に滅菌されるように、滅菌器3を制御する。
【0073】
[管理方法]
図6は、実施形態に係る滅菌対象Sの管理方法を示すフローチャートである。管理システム1のユーザは、入力装置63を操作して、医療現場に存在する複数の滅菌対象Sと複数の滅菌対象Sのそれぞれについての滅菌条件とを入力する。上述のように、推奨される滅菌条件は、例えば医療器具メーカーより提供される。登録データベース部68は、入力装置63により入力された滅菌対象Sと滅菌条件との関係を示す登録データを記憶する(ステップSA1)。
【0074】
図7は、実施形態に係る登録データを説明するための図である。登録データは、医療現場に存在する複数の滅菌対象Sと複数の滅菌対象Sのそれぞれの滅菌条件との関係を示す。滅菌条件は、滅菌温度及び滅菌時間を含む。
【0075】
医療業界においては、複数の医療器具がセットで販売されたり取り扱われたりする場合が多い。
図7に示す例において、滅菌対象Sは、第1オペセットから第9オペセット及び第1外来セットから第6外来セットであることとする。1つのセットに、例えば複数のメス又は鉗子が含まれる。また、1つのセットを構成する複数の医療器具は、包装部材に収容された状態で販売されたり取り扱われたりする場合が多い。
図7に示す例において、包装部材は、滅菌バッグ、不織布、及び滅菌コンテナを含む。
【0076】
図7に示す例において、登録データは、滅菌対象Sと、滅菌対象Sの重量と、滅菌対象を収容する包装部材の種類と、滅菌温度の推奨値と、滅菌時間の推奨値と関係を示す。
【0077】
なお、登録データは、滅菌対象Sの構造及び材質を含んでもよい。
【0078】
管理システム1のユーザは、医療現場に存在する複数の滅菌対象Sのそれぞれについて、入力装置63により、重量、包装部材の種類、滅菌温度の推奨値、及び滅菌時間の推奨値を入力する。登録データベース部68は、入力装置63により入力された滅菌対象Sと重量と包装部材の種類と滅菌温度の推奨値と滅菌時間の推奨値との関係を示す登録データを記憶する。
【0079】
なお、
図7に示す登録データは一例である。医療現場に存在する滅菌対象Sは多種多様である。
【0080】
グルーピング部69は、登録データベース部68に記憶されている登録データに基づいて、滅菌対象Sをファミリに分類する(ステップSA2)。
【0081】
図8は、実施形態に係るグルーピング部69による処理を説明するための図である。グルーピング部69は、滅菌条件が同一である複数の滅菌対象Sを1つのファミリに分類する。
図8に示す例において、複数の滅菌対象Sは、第1ファミリと、第2ファミリと、第3ファミリとに分類される。第1ファミリに属する滅菌対象Sの滅菌温度は132℃であり滅菌時間は10分である。第2ファミリに属する滅菌対象Sの滅菌温度は121℃であり滅菌時間は18分である。第3ファミリに属する滅菌対象Sの滅菌温度は135℃であり滅菌時間は3分である。
【0082】
推奨位置決定部70は、規定のルールに基づいて、滅菌器3における滅菌対象Sの推奨位置を決定する(ステップSA3)。
【0083】
出力制御部71は、グルーピング部69により分類されたファミリを出力装置64に出力させる。また、出力制御部71は、推奨位置決定部70により決定された滅菌対象Sの推奨位置を出力装置64に出力させる(ステップSA4)。
【0084】
図9は、実施形態に係る出力装置64の出力例を示す図である。
図9において、出力装置64は、情報端末2が有する表示装置であることとする。
【0085】
図9に示すように、出力制御部71は、グルーピング部69により分類されたファミリを情報端末2の表示装置に表示させる。
図9に示す例において、出力制御部71は、グルーピング部69により分類された第1ファミリを情報端末2の表示装置に表示させる。
図9に示す例において、情報端末2の表示装置には、第1ファミリに属する複数の滅菌対象Sの一覧が表示される。
【0086】
また、出力制御部71は、推奨位置決定部70により決定された滅菌対象Sの推奨位置を情報端末2の表示装置に表示させる。実施形態において、推奨位置は、ワゴン48において推奨される滅菌対象Sの載置位置を含む。上述のように、推奨位置決定部70は、規定のルールに基づいて、滅菌器3における滅菌対象Sの推奨位置を決定する。規定のルールは、滅菌対象Sの重量及び包装部材の種類を含む。
【0087】
実施形態において、規定のルールは、重量が大きい滅菌対象Sをワゴン48の下段の棚51に載置し、重量が小さい滅菌対象Sをワゴン48の上段の棚51に載置し、重量が中間値の滅菌対象Sをワゴン48の中段の棚51に載置することを定める。また、規定のルールは、滅菌コンテナに収容された滅菌対象Sをワゴン48の下段の棚51に載置し、不織布に収容された滅菌対象Sをワゴン48の中段の棚51に載置し、滅菌バッグに収容された滅菌対象Sをワゴン48の上段の棚51に載置することを定める。
【0088】
推奨位置決定部70は、棚51の大きさ、滅菌対象Sの数、及び包装部材の大きさ等も考慮して、規定のルールに基づいて、ワゴン48における滅菌対象Sの推奨位置を決定する。
【0089】
実施形態においては、
図9に示すように、出力制御部71は、ワゴン48の下段の棚51に載置すべき滅菌対象Sの一覧、ワゴン48の中段の棚51に載置すべき滅菌対象Sの一覧、及びワゴン48の上段の棚51に載置すべき滅菌対象Sの一覧を情報端末2の表示装置に表示させる。なお、
図9に示す例において、出力制御部71は「以下は[第1ファミリ]に属する医療器具です。ワゴンには以下のように載せてください。」というメッセージを情報端末2の表示装置に表示させる。
【0090】
管理システム1のユーザは、
図9に示したような情報端末2の表示装置に表示された出力データに従って、滅菌対象Sをワゴン48に載置する。すなわち、管理システム1のユーザは、滅菌条件が同一である第1ファミリに属する複数の滅菌対象Sを1つのワゴン48に載置する。また、管理システム1のユーザは、滅菌対象Sが推奨位置に配置されるように、滅菌対象Sをワゴン48の棚51に載置する。
【0091】
ワゴン48に載置された複数の滅菌対象Sのそれぞれには、滅菌対象Sを識別するための識別番号が付される。また、第1ファミリの滅菌対象Sが載置されたワゴン48には、ファミリを識別するためのファミリ番号が付される。実施形態において、ワゴン48には、ワゴン48に第1ファミリの滅菌対象Sが載置されていることを示す第1ファミリ番号が付される。
【0092】
ステップSA2において分類されたファミリ及びステップSA3において決定された推奨位置は、通信システム7を介して情報端末2から滅菌器3に送信される。滅菌器3の制御装置66は、情報端末2から送信されたファミリ及び推奨位置を取得する。実施形態において、情報端末2は、第1ファミリの滅菌条件、第1ファミリに属する滅菌対象S、及び滅菌対象Sの推奨位置を滅菌器3に送信する。滅菌器3の制御装置66は、情報端末2から送信された第1ファミリの滅菌条件、第1ファミリに属する滅菌対象S、及び滅菌対象Sの推奨位置を取得する(ステップSB1)。
【0093】
プロセス制御部75は、情報端末2から送信された第1ファミリの滅菌条件と、プロセスデータベース部76に記憶されているプロセスデータとに基づいて、処理空間21に収納される第1ファミリの滅菌条件を満足するプロセス条件を決定する(ステップSB2)。
【0094】
管理システム1のユーザは、第1ファミリの滅菌対象Sが載置された搬送台車6を滅菌器3に移送する。識別装置4は、ワゴン48が処理空間21に収納される前に、滅菌対象Sに付された識別番号及びワゴン48に付されたファミリ番号を読み取る。
【0095】
図10は、実施形態に係る識別装置4が識別番号及びファミリ番号を読み取っている状態を模式的に示す図である。
図10に示す例において、下段の棚51には、識別番号「A-1」、「A-2」、「A-3」、及び「A-7」の滅菌対象Sが載置されている。中段の棚51には、識別番号「A-4」、「A-5」、及び「A-6」の滅菌対象Sが載置されている。上段の棚51には、識別番号「A-8」、「A-9」、及び「A-10」の滅菌対象Sが載置されている。また、ワゴン48には、ワゴン48に載置されている滅菌対象Sのファミリが第1ファミリであることを示すファミリ番号「A」が付されている。
【0096】
図10は、処理空間21に収納される滅菌対象Sが適正である例を示す。すなわち、
図10に示す例において、ワゴン48に載置されている全部の滅菌対象Sが第1ファミリに属しており、全部の滅菌対象Sが推奨位置に配置されている。
【0097】
識別装置4は、ワゴン48が処理空間21に収納される前に、滅菌対象Sに付された識別番号及びワゴン48に付されたファミリ番号を読み取る。識別データ取得部72は、滅菌対象Sを識別する識別データ及びワゴン48を識別する識別データを取得する。滅菌対象Sを識別する識別データは、識別番号を含む。ワゴン48を識別する識別データは、ファミリ番号を含む(ステップSB3)。
【0098】
判定部73は、識別データ取得部72により取得された識別データに基づいて、ワゴン48に載置されている全部の滅菌対象Sがグルーピング部69により分類された第1ファミリに属しているか否かを判定する(ステップSB4)。
【0099】
ステップSB4において、ワゴン48に載置されている全部の滅菌対象Sが第1ファミリに属していると判定した場合(ステップSB4:Yes)、判定部73は、識別データ取得部72により取得された識別データに基づいて、滅菌対象Sがワゴン48において推奨位置に配置されているか否かを判定する(ステップSB5)。
【0100】
ステップSB5において、滅菌対象Sがワゴン48において推奨位置に配置されているか否かを判定された場合(ステップSB5:Yes)、ワゴン48が処理空間21に収納された後、プロセス制御部75は、処理空間21に配置された滅菌対象Sの滅菌処理を開始する(ステップSB6)。
【0101】
なお、上述のように、滅菌処理の開始前に、処理空間21からの空気排除処理が実施される。
【0102】
ステップSB4において、ワゴン48に載置されている滅菌対象Sの少なくとも一つが第1ファミリに属していないと判定された場合(ステップSB4:No)、報知制御部74は、ワゴン48に載置されている滅菌対象Sの少なくとも一つが第1ファミリに属していないことを報知装置5に報知させる(ステップSB7)。
【0103】
例えば、ワゴン48に第2ファミリ又は第3ファミリの滅菌対象Sが紛れ込んでいる場合、報知装置5から報知データが出力される。管理システム1のユーザは、ワゴン48に不適正な滅菌対象Sが載置されていることを認識することができる。管理システム1のユーザは、ワゴン48に載置されている滅菌対象Sの全部が第1ファミリに属する滅菌対象Sになるように滅菌対象Sを載せ換えることができる。滅菌対象Sが載せ換えられた後、ステップSB3の処理に戻る。
【0104】
ステップSB5において、滅菌対象Sの少なくとも一つが推奨位置に配置されていないと判定された場合(ステップSB5:No)、報知制御部74は、滅菌対象Sが推奨位置に配置されていないことを報知装置5に報知させる(ステップSB8)。
【0105】
例えば、ワゴン48の下段の棚51に識別番号「A-8」の滅菌対象Sが載置されている場合、報知装置5から報知データが出力される。管理システム1のユーザは、滅菌対象Sが推奨位置に配置されていないことを認識することができる。管理システム1のユーザは、全部の滅菌対象Sが推奨位置に配置されるように、滅菌対象Sを載せ換えることができる。滅菌対象Sが載せ換えられた後、ステップSB3の処理に戻る。
【0106】
[コンピュータシステム]
図11は、実施形態に係るコンピュータシステム1000を示すブロック図である。上述の制御装置62及び制御装置66のそれぞれは、コンピュータシステム1000を含む。コンピュータシステム1000は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサ1001と、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリ及びRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含むメインメモリ1002と、ストレージ1003と、入出力回路を含むインターフェース1004とを有する。制御装置62及び制御装置66の機能は、プログラムとしてストレージ1003に記憶されている。プロセッサ1001は、プログラムをストレージ1003から読み出してメインメモリ1002に展開し、プログラムに従って上述の処理を実行する。なお、プログラムは、ネットワークを介してコンピュータシステム1000に配信されてもよい。
【0107】
[効果]
以上説明したように、実施形態に係る滅菌対象Sの管理システム1は、滅菌器3で滅菌される複数の滅菌対象Sと複数の滅菌対象Sのそれぞれの滅菌条件との関係を示す登録データを記憶する登録データベース部68と、登録データに基づいて、滅菌対象Sをファミリに分類するグルーピング部69と、グルーピング部69により分類されたファミリを出力装置64に出力させる出力制御部71と、を備える。グルーピング部69により、滅菌対象Sが同一のプロセスパラメータで滅菌可能なファミリに分類される。グルーピング部69により分類されたファミリが出力装置64に出力されることにより、管理システム1のユーザは、出力装置64を確認しながら滅菌対象Sを適切に分類することができる。管理システム1は、滅菌対象Sの分類作業を実施するユーザを支援することができる。
【0108】
グルーピング部69は、滅菌条件が同一である複数の滅菌対象Sを1つのファミリに分類する。これにより、滅菌対象Sは、適切に分類され、効率良く適切に滅菌される。
【0109】
ファミリを構成する滅菌対象Sは、滅菌器3により規定のプロセス条件で同時に滅菌される。これにより、滅菌対象Sは、効率良く適切に滅菌される。
【0110】
実施形態において、管理システム1は、規定のルールに基づいて、滅菌器3における滅菌対象Sの推奨位置を決定する推奨位置決定部70を備える。出力制御部71は、推奨位置を出力装置64に出力させる。これにより、管理システム1のユーザは、出力装置64を確認しながら滅菌対象Sを推奨位置に配置することができる。
【0111】
実施形態において、滅菌対象Sは、医療器具を含む。規定のルールは、滅菌対象Sの重量及び滅菌対象Sを収容する包装部材の種類を含む。例えば重量が大きい滅菌対象Sが下方に配置されたり、処理空間21において発生した凝縮水の浸入を抑制できる包装部材が下方に配置されたりすることにより、滅菌対象Sは、効率良く適切に滅菌される。
【0112】
管理システム1は、滅菌対象Sを識別する識別装置4の識別データを取得する識別データ取得部72と、識別データに基づいて、滅菌対象Sが推奨位置に配置されているか否かを判定する判定部73と、判定部73の判定結果に基づいて、滅菌対象Sが推奨位置に配置されていないことを報知装置5に報知させる報知制御部74とを備える。これにより、滅菌対象Sが推奨位置に配置されていない場合、管理システム1のユーザは、報知装置5の報知により、滅菌対象Sが推奨位置に配置されていないことを認識することができる。管理システム1のユーザは、全部の滅菌対象Sが推奨位置に配置されるように、滅菌対象Sを載せ換えることができる。
【0113】
管理システム1は、滅菌対象Sを識別する識別装置4の識別データを取得する識別データ取得部72と、識別データに基づいて、滅菌対象Sがグルーピング部69により分類されたファミリに属しているか否かを判定する判定部73と、判定部73の判定結果に基づいて、滅菌対象Sがファミリに属していないことを報知装置5に報知させる報知制御部74とを備える。これにより、例えば第2ファミリ又は第3ファミリの滅菌対象Sが第1ファミリに紛れ込んでいる場合、管理システム1のユーザは、報知装置5の報知により、滅菌器3に搬入しようとしているファミリに別のファミリの滅菌対象Sが紛れ込んでいることを認識することができる。管理システム1のユーザは、滅菌器3に搬入しようとしている全部の滅菌対象Sが1つのファミリに属するように滅菌対象Sを載せ換えることができる。
【0114】
[その他の実施形態]
上述の実施形態において、搬送台車6は、滅菌対象Sを支持するワゴン48と、ワゴン48を移動するストレッチャ49とを有することとした。また、ストレッチャ49から分離されたワゴン48が滅菌対象Sを支持した状態で処理空間21に収納されることとした。ワゴン48とストレッチャ49とが分離されず、搬送台車6が滅菌対象Sを支持した状態で処理空間21に収納されてもよい。また、搬送台車6が滅菌対象Sを支持した状態で処理空間21に収納される場合、搬送台車6の車輪をガイドするガイドレールが処理空間21に設けられてもよいし、設けられなくてもよい。
【0115】
また、ストレッチャ49は省略されてもよい。任意の搬送方法で滅菌対象Sを支持するワゴン48が処理空間21に搬入されてもよい。ワゴン48を処理空間21に搬入する場合、例えばポータブル方式のガイドレールを用いて、ワゴン48を処理空間21に搬入してもよい。
【0116】
また、ワゴン48を用いることなく、滅菌対象Sが処理空間21に収納されてもよい。例えば、処理空間21に棚が設けられている場合、管理システム1のユーザが滅菌対象Sを処理空間21の棚に載置してもよい。また、識別装置4は、滅菌対象Sが処理空間21に収納された後に、滅菌対象Sを認識してもよい。例えば、識別装置4が処理空間21の内側を認識可能な位置に配置され、処理空間21の棚に滅菌対象Sが載置された後、識別装置4が処理空間21に収納されている滅菌対象Sを認識してもよい。判定部73は、滅菌対象Sが処理空間21に収納された後に、滅菌対象Sがグルーピング部69により分類されたファミリに属しているか否かを判定したり、滅菌対象Sが処理空間21の棚の推奨位置に配置されているか否かを判定したりすることができる。
【0117】
上述の実施形態において、識別装置4及び報知装置5のそれぞれが滅菌器3に設けられることとした。識別装置4及び報知装置5の一方又は両方が滅菌器3の外部に設けられてもよい。滅菌器3と識別装置4とが別々に設けられる場合において、情報端末2と滅菌器3と識別装置4とが通信システム7を介して相互に通信してもよい。滅菌器3と報知装置5とが別々に設けられる場合において、情報端末2と滅菌器3と報知装置5とが通信システム7を介して相互に通信してもよい。
【0118】
上述の実施形態において、制御装置66の機能の一部又は全部が情報端末2に設けられてもよい。例えば、制御装置66の識別データ取得部72、判定部73、及び報知制御部74が、情報端末2の制御装置62に設けられてもよい。また、制御装置62の機能の一部又は全部が滅菌器3に設けられてもよい。例えば、制御装置62の登録データベース部68、グルーピング部69、推奨位置決定部70、及び出力制御部71が、滅菌器3の制御装置66に設けられてもよい。
【0119】
上述の実施形態において、登録データベース部68、グルーピング部69、推奨位置決定部70、出力制御部71、識別データ取得部72、判定部73、報知制御部74、プロセス制御部75、及びプロセスデータベース部76のそれぞれの機能が、別々のハードウエアにより発揮されてもよい。
【符号の説明】
【0120】
1…管理システム、2…情報端末、3…滅菌器、4…識別装置、5…報知装置、6…搬送台車、7…通信システム、8…滅菌槽、9…ジャケット、10…ジャケット給蒸装置、11…ジャケットドレン排出装置、12…ジャケット排気装置、13…減圧装置、14…復圧装置、15…滅菌槽給蒸装置、16…滅菌槽ドレン排出装置、17…滅菌槽排気装置、18…ジャケット圧力センサ、19…滅菌槽圧力センサ、20…滅菌槽温度センサ、21…処理空間、22…ジャケット空間、23…ジャケット給蒸ライン、24…ジャケット給蒸弁、25…ジャケットドレン排出ライン、26…蒸気トラップ、27…逆止弁、28…ジャケット排気ライン、29…ジャケット排気弁、30…逆止弁、31…真空ライン、32…真空弁、33…真空ポンプ、34…逆止弁、35…給気ライン、36…無菌フィルタ、37…給気弁、38…逆止弁、39…滅菌槽給蒸ライン、40…滅菌槽給蒸弁、41…滅菌槽ドレン排出ライン、41A…第1部分、41B…第2部分、42…蒸気トラップ、43…逆止弁、44…滅菌槽排気ライン、45…滅菌槽排気弁、46…逆止弁、47…逆止弁、48…ワゴン、49…ストレッチャ、50…支柱、51…棚、52…車輪、53…棚板、54…水受板、55…貫通孔、56…パイプ、57…台座、58…車輪、59…ハンドル、60…ガイドレール、61…ガイドレール、62…制御装置、63…入力装置、64…出力装置、65…通信装置、66…制御装置、67…通信装置、68…登録データベース部、69…グルーピング部、70…推奨位置決定部、71…出力制御部、72…識別データ取得部、73…判定部、74…報知制御部、75…プロセス制御部、76…プロセスデータベース部、1000…コンピュータシステム、1001…プロセッサ、1002…メインメモリ、1003…ストレージ、1004…インターフェース、S…滅菌対象。