(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-25
(45)【発行日】2025-04-02
(54)【発明の名称】動画処理システム、動画再生装置、動画再生方法、および動画再生プログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 5/93 20060101AFI20250326BHJP
H04N 5/765 20060101ALI20250326BHJP
H04N 5/783 20060101ALI20250326BHJP
H04N 23/60 20230101ALI20250326BHJP
H04N 23/73 20230101ALI20250326BHJP
【FI】
H04N5/93
H04N5/765
H04N5/783
H04N23/60 300
H04N23/60 500
H04N23/73
(21)【出願番号】P 2021135630
(22)【出願日】2021-08-23
【審査請求日】2024-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健二
【審査官】鈴木 隆夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-107991(JP,A)
【文献】国際公開第2017/150237(WO,A1)
【文献】特開2015-226306(JP,A)
【文献】特開2016-201617(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0225405(US,A1)
【文献】国際公開第2021/193403(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/80-9/956
H04N 5/76-5/775
H04N 23/40-23/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置と、動画再生装置とを備え、
前記撮像装置は、
被写体を撮影する撮像部と、
前記撮像部による撮影の露出度合いを切り替える露出度合い切替部と、
前記露出度合い切替部で実行された露出度合いの切り替え処理に基づいて、前記撮像部で撮影された動画データ内における露出度合い切替タイミングの情報および切替タイミングごとの切替後の露出度合いの情報を含む露出度合い切替タグ情報を生成する露出度合い切替タグ生成部とを有し、
前記動画再生装置は、
前記動画データ内における再生速度の切替タイミングの情報を含む再生速度切替タグ情報を記憶する再生速度切替タグ記憶部と、
前記動画データの中から、所定以上の動きがある前記被写体の領域部分を動き領域として検出する動き領域検出部と、
前記動画データを所定の再生速度で再生させ、再生中に前記再生速度切替タグ情報に基づいて再生速度を切り替えるタイミングが到来したことを検知すると、当該検知した時点における露出度合いの情報を前記露出度合い切替タグ情報に基づいて取得し、取得した露出度合いの情報に基づいて前記動き領域検出部で検出された動き領域の輝度を変更して、切替後の再生速度で再生させる再生制御部と
を備えることを特徴とする動画処理システム。
【請求項2】
前記動画再生装置の再生制御部は、前記動画データを撮影速度に対応した速度で再生させ、前記再生速度切替タグ情報に基づいて再生速度を切り替えるタイミングが到来したことを検知すると、前記取得した露出度合いの情報に基づいて、前記動き領域検出部で検出された動き領域の輝度を上げて、撮影速度よりも遅い速度に切り替えて再生させる
ことを特徴とする請求項1に記載の動画処理システム。
【請求項3】
撮影された動画データ内における露出度合い切替タイミングの情報および切替タイミングごとの切替後の露出度合いの情報を含む露出度合い切替タグ情報を記憶する露出度合い切替タグ記憶部と、
前記動画データ内における再生速度の切替タイミングの情報を含む再生速度切替タグ情報を記憶する再生速度切替タグ記憶部と、
前記動画データの中から、所定以上の動きがある被写体の領域部分を動き領域として検出する動き領域検出部と、
前記動画データを所定の再生速度で再生させ、再生中に前記再生速度切替タグ情報に基づいて再生速度を切り替えるタイミングが到来したことを検知すると、当該検知した時点における露出度合いの情報を前記露出度合い切替タグ情報に基づいて取得し、取得した露出度合いの情報に基づいて前記動き領域検出部で検出された動き領域の輝度を変更して、切替後の再生速度で再生させる再生制御部と
を有することを特徴とする動画再生装置。
【請求項4】
動画再生装置が、
撮影された動画データ内における露出度合い切替タイミングの情報および切替タイミングごとの切替後の露出度合いの情報を含む露出度合い切替タグ情報と、前記動画データ内における再生速度の切替タイミングの情報を含む再生速度切替タグ情報とを前記動画再生装置の記憶部に記憶し、
前記動画データの中から、所定以上の動きがある被写体の領域部分を動き領域として検出し、
前記動画データを所定の再生速度で再生する再生中に、前記再生速度切替タグ情報に基づいて再生速度を切り替えるタイミングが到来したことを検知すると、当該検知した時点における露出度合いの情報を前記露出度合い切替タグ情報に基づいて取得し、取得した露出度合いの情報に基づいて、検出された前記動き領域の輝度を変更して、切替後の再生速度で再生する
ことを特徴とする動画再生方法。
【請求項5】
コンピュータに、
撮影された動画データ内における露出度合い切替タイミングの情報および切替タイミングごとの切替後の露出度合いの情報を含む露出度合い切替タグ情報を記憶する露出度合い切替タグ記憶機能と、
前記動画データ内における再生速度の切替タイミングの情報を含む再生速度切替タグ情報を記憶する再生速度切替タグ記憶機能と、
前記動画データの中から、所定以上の動きがある被写体の領域部分を動き領域として検出する動き領域検出機能と、
前記動画データを所定の再生速度で再生させ、再生中に前記再生速度切替タグ情報に基づいて再生速度を切り替えるタイミングが到来したことを検知すると、当該検知した時点における露出度合いの情報を前記露出度合い切替タグ情報に基づいて取得し、取得した露出度合いの情報に基づいて前記動き領域検出機能により検出された動き領域の輝度を変更して、切替後の再生速度で再生させる再生制御機能と
を実現させるための動画再生プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動画処理システム、動画再生装置、動画再生方法、および動画再生プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
スポーツ選手の指導などにおいて、ハイスピードカメラ装置により高いフレームレートで撮影した動画を、動画再生装置により一般的なフレームレートでスローモーション再生させて活用する機会が増加している。スローモーション再生を行うことで、肉眼では追うことができないスポーツ選手の素早い動きを把握することができる。
【0003】
その際に、撮影した動画をすべてスローモーション再生すると長時間を要するため、当該動画の中の所望のシーンのみをスローモーション再生させたい場合がある。
【0004】
動画の中の所望のシーンのみをスローモーション再生させるために、動画データ中の該当する位置にタグ情報を付加しておく技術がある。動画データの中にタグ情報を付加しておくことで、視聴時に所望のシーンのみをスローモーション再生させ、それ以外のシーンは通常速度で再生させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように所望のシーンのみをスローモーション再生させるようにすると、視聴している際に、所望のシーンの位置で再生速度が通常速度からスローモーション再生に切り替わる。このとき、視聴しているユーザは、再生速度が急に変わったことにより画面内で注目したい被写体を即座に認識することが困難になるという問題があった。
【0007】
また、被写体の動きが速いシーンを撮影する際には、再生時に当該被写体の動きを鮮明に視認できるようにするためにシャッタースピードを上げる場合があるが、シャッタースピードを上げると撮像情報の輝度が低くなり、所望の被写体を視認しづらくなるという問題があった。
【0008】
本発明は、撮像装置で撮影された動画を、所望のシーン部分のみ再生速度を下げて再生させる際に、ユーザが注目する被写体を認識しやすい状態で再生させることが可能な、動画処理システム、動画再生装置、動画再生方法、および動画再生プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の動画処理システムは、撮像装置と、動画再生装置とを備え、前記撮像装置は、被写体を撮影する撮像部と、前記撮像部による撮影の露出度合いを切り替える露出度合い切替部と、前記露出度合い切替部で実行された露出度合いの切り替え処理に基づいて、前記撮像部で撮影された動画データ内における露出度合い切替タイミングの情報および切替タイミングごとの切替後の露出度合いの情報を含む露出度合い切替タグ情報を生成する露出度合い切替タグ生成部とを有し、前記動画再生装置は、前記動画データ内における再生速度の切替タイミングの情報を含む再生速度切替タグ情報を記憶する再生速度切替タグ記憶部と、前記動画データの中から、所定以上の動きがある前記被写体の領域部分を動き領域として検出する動き領域検出部と、前記動画データを所定の再生速度で再生させ、再生中に前記再生速度切替タグ情報に基づいて再生速度を切り替えるタイミングが到来したことを検知すると、当該検知した時点における露出度合いの情報を前記露出度合い切替タグ情報に基づいて取得し、取得した露出度合いの情報に基づいて前記動き領域検出部で検出された動き領域の輝度を変更して、切替後の再生速度で再生させる再生制御部とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の動画再生装置は、撮影された動画データ内における露出度合い切替タイミングの情報および切替タイミングごとの切替後の露出度合いの情報を含む露出度合い切替タグ情報を記憶する露出度合い切替タグ記憶部と、前記動画データ内における再生速度の切替タイミングの情報を含む再生速度切替タグ情報を記憶する再生速度切替タグ記憶部と、前記動画データの中から、所定以上の動きがある被写体の領域部分を動き領域として検出する動き領域検出部と、前記動画データを所定の再生速度で再生させ、再生中に前記再生速度切替タグ情報に基づいて再生速度を切り替えるタイミングが到来したことを検知すると、当該検知した時点における露出度合いの情報を前記露出度合い切替タグ情報に基づいて取得し、取得した露出度合いの情報に基づいて前記動き領域検出部で検出された動き領域の輝度を変更して、切替後の再生速度で再生させる再生制御部とを有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の動画再生方法は、動画再生装置が、撮影された動画データ内における露出度合い切替タイミングの情報および切替タイミングごとの切替後の露出度合いの情報を含む露出度合い切替タグ情報と、前記動画データ内における再生速度の切替タイミングの情報を含む再生速度切替タグ情報とを前記動画再生装置の記憶部に記憶し、前記動画データの中から、所定以上の動きがある被写体の領域部分を動き領域として検出し、前記動画データを所定の再生速度で再生する再生中に、前記再生速度切替タグ情報に基づいて再生速度を切り替えるタイミングが到来したことを検知すると、当該検知した時点における露出度合いの情報を前記露出度合い切替タグ情報に基づいて取得し、取得した露出度合いの情報に基づいて、検出された前記動き領域の輝度を変更して、切替後の再生速度で再生することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の動画再生プログラムはコンピュータに、撮影された動画データ内における露出度合い切替タイミングの情報および切替タイミングごとの切替後の露出度合いの情報を含む露出度合い切替タグ情報を記憶する露出度合い切替タグ記憶機能と、前記動画データ内における再生速度の切替タイミングの情報を含む再生速度切替タグ情報を記憶する再生速度切替タグ記憶機能と、前記動画データの中から、所定以上の動きがある被写体の領域部分を動き領域として検出する動き領域検出機能と、前記動画データを所定の再生速度で再生させ、再生中に前記再生速度切替タグ情報に基づいて再生速度を切り替えるタイミングが到来したことを検知すると、当該検知した時点における露出度合いの情報を前記露出度合い切替タグ情報に基づいて取得し、取得した露出度合いの情報に基づいて前記動き領域検出機能により検出された動き領域の輝度を変更して、切替後の再生速度で再生させる再生制御機能と実現させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の動画処理システム、動画再生装置、動画再生方法、および動画再生プログラムによれば、撮像装置で撮影された動画を、所望のシーン部分のみ再生速度を下げて再生させる際に、ユーザが注目する被写体を認識しやすい状態で再生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態による動画処理システムのハイスピードカメラ装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態による動画処理システムの動画再生装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態によるハイスピードカメラ装置が実行する処理を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態によるハイスピードカメラ装置が生成するシャッタースピード切替タグ情報テーブルの一例である。
【
図5】本発明の一実施形態によるハイスピードカメラ装置が生成する再生速度切替タグ情報テーブルの一例である。
【
図6】本発明の一実施形態による動画再生装置が実行する処理を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の一実施形態による動画再生装置で再生する動画データと、当該動画データに関するシャッタースピード切替タグの位置と、再生速度切替タグの位置との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の一実施形態による動画処理システムについて、図面を参照して説明する。
【0016】
〈一実施形態による動画処理システムの構成〉
図1および
図2に示すように、本実施形態による動画処理システム1は、撮像装置としてのハイスピードカメラ装置10と、動画再生装置20とを備える。
【0017】
ハイスピードカメラ装置10は、第1入力部11と、撮像部12と、第1CPU13と、第1記憶部14と、第1通信部15とを有する。
【0018】
第1入力部11は、ユーザによる撮像開始操作、撮像停止操作、シャッタースピード切替操作、後述する再生速度切替タグを生成するためのタイミング指定操作、動画データ送信操作等の情報を入力する。撮像部12は、再生時にスローモーションでなめらかに再生可能になるように予め設定された通常時よりも高いフレームレート、例えば120FPS(frames per second)で、設定されたシャッタースピードで被写体を動画撮影する。本実施形態では撮像部12による撮影時のフレームレートが120FPSの場合について説明するが、これには限定されず、240FPS、300FPS等、一般的な通常時のフレームレート60FPSよりも高い他の値のフレームレートでもよい。
【0019】
第1CPU13は、撮像制御部131と、露出度合い切替部としてのシャッタースピード切替部132と、露出度合い切替タグ生成部としてのシャッタースピード切替タグ生成部133と、再生速度切替タグ生成部134と、データ送信制御部135とを有する。
【0020】
撮像制御部131は、第1入力部11から入力された情報に基づいて、撮像部12による撮像処理の開始および停止の動作を制御する。シャッタースピード切替部132は、撮像部12による撮影中に第1入力部11から入力された指示に基づいて撮影のシャッタースピードを切り替える。
【0021】
シャッタースピード切替タグ生成部133は、シャッタースピード切替部132で実行されたシャッタースピードの切り替え処理に基づいて、撮影された動画データ内におけるシャッタースピードの切替タイミングを示す情報、および切替タイミングごとの切替後のシャッタースピード情報を含む露出度合いとしてのシャッタースピード切替タグの情報を生成する。動画データ内におけるシャッタースピード切替タイミングを示す情報は、例えば動画の撮影開始からの経過時間で示される。
【0022】
再生速度切替タグ生成部134は、撮像部12による撮影中に第1入力部11から入力された、動画データ内で再生速度を切り替えるタイミングを指定する操作の情報を含む再生速度切替タグの情報を生成する。動画データ内で再生速度を切り替えるタイミングを指定する操作の情報は例えば、動画の撮影開始からの経過時間で示される。
【0023】
データ送信制御部135は、第1入力部11から入力された情報に基づいて、第1記憶部14に記憶された情報を第1通信部15から動画再生装置20に送信させる。
【0024】
第1記憶部14は、第1動画データ記憶部141と、第1シャッタースピード切替タグ記憶部142と、第1再生速度切替タグ記憶部143とを有する。
【0025】
第1動画データ記憶部141は、撮像部12で撮影された動画データを記憶する。第1シャッタースピード切替タグ記憶部142は、シャッタースピード切替タグ生成部133で生成されたシャッタースピード切替タグの情報を記憶する。第1再生速度切替タグ記憶部143は、再生速度切替タグ生成部134で生成された再生速度切替タグの情報を記憶する。第1通信部15は、有線または無線通信、例えば有線LAN、無線LAN等により動画再生装置20と通信する。
【0026】
図2に示すように、動画再生装置20は、第2通信部21と、第2入力部22と、第2記憶部23と、表示部24と、第2CPU25とを有する。第2通信部21は、ハイスピードカメラ装置10と通信する。第2入力部22は、ユーザによる動画再生操作の情報を入力する。
【0027】
第2記憶部23は、第2動画データ記憶部231と、第2シャッタースピード切替タグ記憶部232と、第2再生速度切替タグ記憶部233とを有する。第2動画データ記憶部231は、ハイスピードカメラ装置10から送信された動画データを記憶する。第2シャッタースピード切替タグ記憶部232は、ハイスピードカメラ装置10から送信されたシャッタースピード切替タグの情報を記憶する。第2再生速度切替タグ記憶部233は、ハイスピードカメラ装置10から送信された再生速度切替タグの情報を記憶する。
【0028】
表示部24は、第2CPU25の制御により、第2動画データ記憶部231に記憶された動画データを表示する。
【0029】
第2CPU25は、データ取得部251と、データ読み込み部252と、再生制御部253と、動きベクトル検出部254と、動き領域検出部255とを有する。
【0030】
データ取得部251は、ハイスピードカメラ装置10から送信された情報を、第2通信部を介して取得し、第2記憶部に送出する。データ読み込み部252は、第2入力部22から動画再生操作の情報が入力されると、第2動画データ記憶部231に記憶された動画データを読み込む。
【0031】
再生制御部253は、データ読み込み部252で読み込んだ動画データの再生を、撮影速度に対応した速度で開始させる。本実施形態では、当該動画データの撮影時のフレームレートを、撮影速度として用いる。再生制御部253は、動画データの再生中に再生速度切替タグに基づいて再生速度を切り替えるタイミングが到来したことを検知すると、当該検知した時点におけるシャッタースピードの情報を、シャッタースピード切替タグ情報に基づいて取得する。加えて、再生制御部253は、後述する動き領域検出部255で検出される動き領域の輝度を、動画データ内の該当するタイミングにおけるシャッタースピードに対する通常撮影時のシャッタースピードの比率分だけ上げて、所定時間スローモーション再生させる。
【0032】
動きベクトル検出部254は、データ読み込み部252で読み込んだ動画データのフレーム内の動きベクトルを検出する。動き領域検出部255は、動きベクトル検出部254で検出された動きベクトルに基づいて、動画データのフレームの中から、所定値以上の動きがある被写体の領域部分を動き領域として検出する。
【0033】
〈一実施形態による動画処理システムの動作〉
次に、本実施形態による動画処理システム1の動作について説明する。まず、
図3のフローチャートを参照して、ハイスピードカメラ装置10で実行される動画撮影処理について説明する。
【0034】
ユーザがハイスピードカメラ装置10で撮影開始操作を行うと第1入力部11から当該操作の情報が入力され(S1の「YES」)、撮像制御部131の制御により撮像部12が撮影を開始する。このとき撮像部12は、予め設定されたフレームレート120FPSの撮影速度、且つシャッタースピード1/120秒で撮影を開始する。撮像部12が撮影を開始すると、撮影により生成された動画データXが順次第1動画データ記憶部141に記憶される(S2)。また、撮像部12が撮影を開始すると、シャッタースピード切替タグ生成部133は、撮影開始時のシャッタースピード1/120秒の情報を保持する。
【0035】
撮影中、ユーザはハイスピードカメラ装置10で、被写体の動きに応じてシャッタースピードを切り替える操作を行う。例えばユーザは、被写体の動きが速くなるシーンの前に、動画データXの被写体の動きをなめらかに再生させるためにシャッタースピードを1/240秒に上げる操作を行う。このときユーザは、下記式(1)において0<n≦1となる範囲の値Sで、シャッタースピードを切り替えることができる。
【0036】
S=n×(1/[撮影中のフレームレート=120]) …(1)
ユーザがハイスピードカメラ装置10でシャッタースピードを切り替える操作を行うと、第1入力部11から当該操作の情報が入力される(S3の「YES」)。そして、入力された情報に基づいてシャッタースピード切替部132が、撮像部12のシャッタースピードの設定を1/240秒に切り替える。撮像部12は、切り替えられたシャッタースピードで、撮影を継続する。
【0037】
シャッタースピード切替部132によりシャッタースピードが切り替えられると、シャッタースピード切替タグ生成部133は、当該切替処理に関する、撮影された動画データX内におけるシャッタースピード切替タイミングおよび切替タイミングごとの切替後のシャッタースピードの情報を保持する(S4)。ステップS4の処理は、撮影停止操作の情報が入力されるまでの間、シャッタースピードの切替操作の情報が入力される都度、実行される(S5の「NO」→S3の「YES」)。
【0038】
また撮影中、ユーザはハイスピードカメラ装置10で、被写体の動きに応じて再生時の再生速度を切り替えるタイミングを指定する操作を行う。例えばユーザは、被写体の動きが速くなるシーンが開始すると、再生時の再生速度を下げてスローモーション再生を開始させるタイミングを指定する操作を行う。
【0039】
ユーザがハイスピードカメラ装置10で再生速度を切り替えるタイミングを指定する操作を行うと、第1入力部11から当該操作の情報が入力される(S3の「NO」→S6の「YES」)。再生速度切替タグ生成部134は、入力された情報に基づいて、撮影された動画データX内における再生速度の切替タイミングの情報を保持する(S7)。この再生速度の切替タイミングの情報を保持する処理は、撮影停止操作の情報が入力されるまでの間、再生速度の切替タイミングの指定操作情報が入力される都度、実行される(S5の「NO」→S3の「NO」→S6の「YES」)。
【0040】
そして、ユーザがハイスピードカメラ装置10で撮影停止操作を行うと、第1入力部11から当該操作の情報が入力され(S5の「YES」)、撮像制御部131の制御により撮像部12の撮影処理が停止する。
【0041】
撮影処理が停止すると、シャッタースピード切替タグ生成部133が、撮影中に保持した情報を含むシャッタースピード切替タグ情報テーブルを生成し、撮影開始時のシャッタースピード1/120秒の情報とともに第1記憶部14の第1シャッタースピード切替タグ記憶部142に記憶させる。シャッタースピード切替タグ生成部133は、シャッタースピード切替タグ情報をCSVファイルとして生成してもよい。
【0042】
第1シャッタースピード切替タグ記憶部142に記憶されたシャッタースピード切替タグ情報テーブルの一例を、
図4に示す。
図4のシャッタースピード切替タグ情報テーブルT1には、動画撮影中にユーザが行ったシャッタースピードを切り替える操作に基づいて生成された、第1のシャッタースピード切替タグ(第1Sタグ)および第2のシャッタースピード切替タグ(第2Sタグ)の情報が格納されている。
【0043】
第1Sタグの情報は、シャッタースピードの切替タイミングを示す情報である「10秒」、および当該切替タイミングによる切替後のシャッタースピードの情報「1/240秒」を含む。このシャッタースピードの切替タイミングを示す情報は、撮影開始からユーザによる切替操作までの経過時間である。つまり、第1Sタグは、撮影開始から10秒経過したタイミングでユーザが行った、シャッタースピードの設定を1/240秒に切り替える操作に基づいて生成されたタグである。
【0044】
同様に第2Sタグは、撮影開始から30秒経過したタイミングでユーザが行った、シャッタースピードの設定を1/120秒に切り替える操作に基づいて生成されたタグである。
【0045】
また、撮影処理が停止すると、再生速度切替タグ生成部134が、撮影中に保持した情報を含む再生速度切替タグの情報テーブルを生成し、第1再生速度切替タグ記憶部143に記憶させる(S8)。再生速度切替タグ生成部134は、再生速度切替タグ情報をCSVファイルとして生成してもよい。
【0046】
第1再生速度切替タグ記憶部143に記憶された再生速度切替タグ情報テーブルの一例を、
図5に示す。
図5の再生速度切替タグ情報テーブルT2には、動画撮影中にユーザが行った再生速度の切替タイミングを指定する操作に基づいて生成された、第1の再生速度切替タグ(第1Rタグ)の情報が格納されている。
【0047】
第1Rタグの情報は、再生速度の切替タイミングを示す情報である「12秒」、および切替後の速度による再生時間の情報「10秒」を含む。この再生速度の切替タイミングを示す情報は、撮影開始からのユーザにより切替操作までの経過時間である。つまり、撮影開始から12秒経過したタイミングでユーザが行った、再生時に10秒間のスローモーション再生を開始させるタイミングを指定する操作に基づいて生成されたタグである。
【0048】
これらの情報が記憶された後、ユーザが動画データ送信操作を行うと、データ送信制御部135の制御により第1通信部15が、第1記憶部14に記憶された動画データX、撮影開始時のシャッタースピードの情報、シャッタースピード切替タグの情報、および再生速度切替タグの情報を動画再生装置20に送信する(S9)。
【0049】
動画再生装置20では、ハイスピードカメラ装置10から送信された情報を、第2通信部21を介してデータ取得部251が取得する。データ取得部251は、取得した情報のうち、動画データXを第2動画データ記憶部231に記憶させ、撮影開始時のシャッタースピードの情報およびシャッタースピード切替タグの情報を第2シャッタースピード切替タグ記憶部232に記憶させ、再生速度切替タグの情報を第2再生速度切替タグに記憶させる。以上で、動画撮影処理の説明を終了する。
【0050】
次に、動画再生装置20で実行される動画再生処理について、
図6のフローチャートを参照して説明する。
【0051】
ユーザが動画再生装置20で動画再生を指示する操作を行うと第2入力部22から当該操作の情報が入力され(S11の「YES」)、データ読み込み部252が第2動画データ記憶部231から動画データXの読み込みを開始する(S12)。そして、再生制御部253が、読み込んだ動画データXを表示部24に表示させて再生を開始させる(S13)。再生制御部253による通常の動画再生速度は60FPS(frames per second)であるが、本実施形態において動画データXを再生する際は、ハイスピードカメラ装置10による撮影時の撮影速度と同じ速度である120FPSで再生を開始する。
【0052】
再生制御部253は、動画データXの再生中に、第2再生速度切替タグ記憶部233に記憶された再生速度切替タグに基づいて、再生速度を切り替えるタイミングが到来したか否かを監視する。具体的には再生制御部253は、再生開始から、第1Rタグのシャッタースピードの切替タイミングで示される時間「12秒」が経過したか否かを監視する。
【0053】
再生開始から12秒が経過し、再生制御部253が再生速度を切り替えるタイミングが到来したことを検知すると(S14の「YES」)、動きベクトル検出部254が、データ読み込み部252が読み込んだ動画データXの再生中のフレームから、動きベクトルを検出する処理を開始する。
【0054】
そして、動き領域検出部255が、動きベクトル検出部254で検出された動きベクトルに基づいて、動画データXの再生中のフレームの中から、所定値以上の動きがある被写体の領域部分を動き領域として検出する。
【0055】
ここで動き領域が検出されると(S15の「YES」)再生制御部253は、当該第1Rタグで示されるタイミング(再生開始から12秒経過時)におけるシャッタースピードの情報を、第2シャッタースピード切替タグ記憶部232に記憶されたシャッタースピード切替タグ情報に基づいて取得する。
【0056】
ここでは
図7に示すように、第1Rタグで示されるタイミングの直前である再生開始から10秒経過時に、第1Sタグで示されるようにシャッタースピードが切り替えられている。これにより、再生制御部253は、シャッタースピード切替タグ情報テーブルT1から、当該第1Rタグで示されるタイミングにおけるシャッタースピードの情報として、第1Sタグによる切替後のシャッタースピードの情報「1/240秒」を取得する。
【0057】
このとき、シャッタースピードが撮影開始時の1/120秒から、その1/2である1/240秒に切り替えられていることにより、動画データX内の該当するフレームの輝度は撮影開始時の1/2になっている。ここで再生制御部253は、動き領域の輝度を、取得したシャッタースピード1/240秒に対する、予め設定された通常撮影時のシャッタースピード1/60秒の比率である4倍分上げて設定する(S16)。
【0058】
そして再生制御部253は、動き領域の輝度を4倍に上げた状態で、動画データXの再生速度を通常の再生速度である60FPSに切り替えて、第1Rタグ情報テーブルT2に基づいて10秒間スローモーション再生を行う(S17)。
【0059】
ステップS15において、動画データXの中に動き領域が検出されなかったときには(S15の「NO」)、輝度の変更は行わずに、10秒間スローモーション再生を行う(S17)。
【0060】
再生制御部253は、ステップS15~S17の処理を、スローモーション再生が終了するまで繰り返す(S18の「NO」)。これにより、再生速度を切り替えるタイミングが到来した時点では動き領域が検出されなかったが、スローモーション再生中に動き領域が検出された場合にも、検出された時点から当該動き領域の輝度が高くなる。また、再生速度を切り替えるタイミングが到来した時点ではシャッタースピードが1/120秒であり、スローモーション再生中に1/240秒に切り替えられた場合には、スローモーション再生開始時は動き領域の輝度が2倍になり、シャッタースピード切替後は4倍になる。
【0061】
再生開始から22秒経過し、動画データX内の10秒間のスローモーション再生シーンが終了すると(S18の「YES」)ステップS13に戻り、再生制御部253は、撮影速度と同じ120FPSの速度で動画データXの再生を継続する。その際、再生制御部253は、変更した輝度を通常状態に戻す。
【0062】
再生制御部253が動画データXの再生を終了すると(S14の「NO」→S19の「NO」)、処理を終了する。
【0063】
以上の実施形態によれば、ハイスピードカメラ装置で撮影された動画を、通常のシーンは撮影時と同じフレームレートで再生させ、高速なシャッタースピードに切り替えられて撮影されたユーザの所望のシーンは、動きのある被写体の領域の輝度を上げてスローモーション再生させることで、ユーザが注目するシーンの所望の被写体の部分を認識しやすい状態で再生させることができる。
【0064】
上述した実施形態において、動画再生装置20の再生制御部253は、第2再生速度切替タグ記憶部233に記憶された再生速度切替タグの情報を表示部24に表示させてもよい。また、動画再生装置20は、表示された再生速度切替タグの情報を視認したユーザの操作により、再生速度切替タグの位置を調整する機能を有していてもよい。一方、シャッタースピード切替タグの情報は、ユーザにより調整される情報ではないため、表示部24には表示されない。
【0065】
また、上述した実施形態では、ユーザにより指定された再生速度を切り替えるタイミングにおけるシャッタースピードの設定値に基づいて、動画再生装置が動画データ内の動き領域の輝度を調整する場合について説明した。しかしこれには限定されず、動画再生装置20は、シャッタースピードの設定値に替えて、露出度合いを調整する他の要素であるISO感度または絞り値に基づいて動き領域の輝度を調整するようにしてもよい。
【0066】
上述した実施形態においては、ハイスピードカメラ装置10から動画再生装置20に動画データを送信する際に、有線または無線通信により送信する場合について説明した。しかしこれには限定されず、ハイスピードカメラ装置10で第1記憶部14に記憶された情報をメモリカードやUSBメモリ等の記録媒体に保存し、この記録媒体を動画再生装置20に装着して動画データを移行させるようにしてもよい。この場合、ハイスピードカメラ装置10は、データ送信制御部135および第1通信部15を有さない構成としてもよい。
【0067】
また、上述した動画再生装置20の機能構成をプログラム化してコンピュータに組み込むことにより、当該コンピュータを動画再生装置20として機能させる動画再生プログラムを構築することも可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 動画処理システム
10 ハイスピードカメラ装置
11 第1入力部
12 撮像部
13 第1CPU
14 第1記憶部
15 第1通信部
20 動画再生装置
21 第2通信部
22 第2入力部
23 第2記憶部
24 表示部
25 第2CPU
131 撮像制御部
132 シャッタースピード切替部
133 シャッタースピード切替タグ生成部
134 再生速度切替タグ生成部
135 データ送信制御部
141 第1動画データ記憶部
142 第1シャッタースピード切替タグ記憶部
143 第1再生速度切替タグ記憶部
231 第2動画データ記憶部
232 第2シャッタースピード切替タグ記憶部
233 第2再生速度切替タグ記憶部
233 再生速度切替タグ記憶部
251 データ取得部
252 データ読み込み部
253 再生制御部
254 動きベクトル検出部
255 動き領域検出部