(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-25
(45)【発行日】2025-04-02
(54)【発明の名称】内燃機関の制御システム
(51)【国際特許分類】
F02M 26/15 20160101AFI20250326BHJP
F01N 3/023 20060101ALI20250326BHJP
F01N 3/033 20060101ALI20250326BHJP
F02D 43/00 20060101ALI20250326BHJP
【FI】
F02M26/15
F01N3/023 K
F01N3/033 J
F01N3/023 A
F02D43/00 301N
F02D43/00 301T
(21)【出願番号】P 2022038908
(22)【出願日】2022-03-14
【審査請求日】2024-02-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】川島 一仁
(72)【発明者】
【氏名】津田 正広
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 真由子
(72)【発明者】
【氏名】山本 譲
(72)【発明者】
【氏名】橋本 賢治
(72)【発明者】
【氏名】原 義高
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-203924(JP,A)
【文献】特開2018-053880(JP,A)
【文献】特開2003-027921(JP,A)
【文献】特開2016-186242(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0186376(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 21/00
F02M 26/00
F02D 13/00 - 45/00
F01N 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオ燃料が混合された燃料を使用可能な内燃機関の制御システムであって、
前記内燃機関に排気循環ガスを導入する排気循環装置と、
前記内燃機関と、前記排気循環装置を制御する制御装置と、
前記内燃機関の排気中の粒子状物質を捕集するフィルタと、
を備え、
前記制御装置は、前記バイオ燃料の混合率に応じて前記内燃機関の同一運転条件における前記排気循環ガスの導入量を変更
し、
前記バイオ燃料の混合率が高いほど、前記排気循環ガスの導入量を増加させ、
前記フィルタの状態に基づき前記フィルタの再生を許可するための第1条件が成立し、かつ前記内燃機関の運転状態に基づき前記フィルタの再生を禁止する第2条件が不成立の場合に、前記フィルタを再生する再生制御を実行し、
前記第2条件が成立する場合に、前記バイオ燃料の混合率が高いほど前記増加させた前記排気循環ガスの前記導入量から低減させる前記排気循環ガスの低減量を取得し、前記バイオ燃料の混合率が高いほど前記増加させた前記排気循環ガスの前記導入量から前記低減量を差し引いた量の前記排気循環ガスを前記内燃機関に導入する補正制御を実行する、
内燃機関の制御システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記補正制御において、第1条件の成立回数が多いほど、前記低減量を減少させる、
請求項
1に記載の内燃機関の制御システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記フィルタに捕集された前記粒子状物質の堆積量を取得し、前記堆積量が所定量以上の場合、前記補正制御を実行する、
請求項
1または
2に記載の内燃機関の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の排気を循環して内燃機関に導入する排気循環装置が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1は、圧縮時着火方式のガソリンエンジンにおいて、燃料のオクタン価に応じて排気循環ガスの導入量を変更する内燃機関の制御システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、二酸化炭素削減のため、バイオ燃料を石油由来の燃料に混合した混合燃料が販売さている。バイオ燃料は、従来の燃料に比べて発熱量が低い。このため、排気循環ガスの導入量もバイオ燃料の混合率に応じて変更することが好ましい。
【0005】
本開示の課題は、バイオ燃料の混合率に応じた最適な排気循環ガスの導入量を実現できる内燃機関の制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る内燃機関の制御システムは、バイオ燃料が混合された燃料を使用可能な内燃機関の制御システムであって、前記内燃機関に排気循環ガスを導入する排気循環装置と、前記内燃機関と、前記排気循環装置を制御する制御装置と、を備える。前記制御装置は、前記バイオ燃料の混合率に応じて同一運転条件における前記排気循環ガスの導入量を変更する。
【0007】
この内燃機関の制御システムによれば、同一運転条件であっても、バイオ燃料の混合率に応じて排気循環ガスの導入量を変更する。これによって、バイオ燃料の混合率に応じた最適な排気循環ガスの導入量を実現できる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、バイオ燃料の混合率に応じた最適な排気循環ガスの導入量を実現できる内燃機関の制御システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態による内燃機関の制御システムのシステム図。
【
図2】本開示の実施形態による制御装置が判定する混合割合を示す図。
【
図3】本開示の実施形態による制御装置の制御手順を示すフローチャート。
【
図4】本開示の実施形態によるB0(軽油10割)燃料と、B100(バイオ燃料10割)燃料における、排気循環ガスの導入量に対する粒子状物質の発生量(PM量)と窒素酸化物の発生量(NOx量)の関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下明細書において吸気、または排気の流れる方向に対して上流側を上流と明細書に記し、下流側を下流と明細書に記す。
【0011】
図1に示すように、内燃機関2の制御システム1は、燃料噴射弁(噴射弁の一例)2cと、フィルタ4と、PMセンサ(検知部の一例)6と、排気循環装置8と、燃料タンク10と、給油リッド12と、過給機14と、インタークーラ16と、スロットル弁18と、制御装置20と、を備える。本実施形態の内燃機関2は、燃料タンク10にバイオ燃料(第1燃料の一例)と、軽油(第2燃料の一例)を使用可能なディーゼルエンジンである。内燃機関2は、吸気通路2aから吸気を気筒2bに送り、燃料噴射弁2cから噴射した燃料と混合する。内燃機関2は、ピストン2dで混合気を圧縮し、自着火する。本実施形態の内燃機関2は、車両(例えば、自動車)に搭載される。
【0012】
本実施形態では、内燃機関2は、気筒2bから排出された排気が過給機14のタービン14aを回転させる。タービン14aは、同軸上に配置されたコンプレッサ14bを回転させ、吸気を過給する。過給した吸気はインタークーラ16によって冷却される。しかし、過給機14は必ずしも必要ではない。
【0013】
フィルタ4は、排気を浄化する排気浄化装置3に配置される。フィルタ4は、排気中に含まれる粒子状物質を捕集する。本実施形態では、フィルタ4は、ディーゼルエンジンの粒子状物質(PM)を捕集するディーゼルパーティキュレータフィルタである。フィルタ4の上流には、酸化触媒4aが配置される。排気浄化装置3は、フィルタ4の下流に配置される、図示しないNOxトラップ、または尿素選択還元触媒などを有してもよい。
【0014】
PMセンサ6は、フィルタ4の上流に配置され、粒子状物質の堆積状態を検知する。PMセンサ6は、粒子状物質が堆積すると電流値が変化するセンサである。具体的には、粒子状物質が堆積すると電流が流れやすくなり、電流値が増加する。PMセンサ6は、ヒータ6aを有する。ヒータ6aは、PMセンサ6に堆積した粒子状物質を焼き除去する。PMセンサ6のその他の構成は、既存のPMセンサと同様であればよく、より詳細な説明は省略する。本実施形態では、PMセンサ6は、酸化触媒4aとフィルタ4との間に配置される。これによって、PMセンサ6に燃料の燃え残り等が付着することを抑制できる。しかし、PMセンサ6は、酸化触媒4aよりも上流に配置されてもよい。PMセンサ6は、制御装置20と電気的に接続され、電流値を制御装置20に送信する。また、ヒータ6aの作動は、制御装置20によって制御される。
【0015】
排気循環装置8は、内燃機関2に排気循環ガスを導入する装置である。より具体的には、排気循環装置8は、気筒2bから排出された排気を吸気通路2aに循環する装置である。排気循環装置8は、排気循環通路8aと、排気循環弁8bと、を有する。排気循環通路8aは、排気通路4bと吸気通路2aとを接続する。排気循環弁8bは、排気循環通路8a上に設けられ、排気循環通路8aを開閉することによって、排気から循環された排気循環ガスを吸気通路2aに導入する。排気循環弁8bは、制御装置20と電気的に接続され、制御装置20によって制御される。制御装置20は、排気循環弁8bを制御し、排気循環ガスの吸気への導入量を制御する。本実施形態では制御装置20は、スロットル弁18を制御し、スロットル弁18を閉じることによって吸気通路2aに負圧を発生させる。制御装置20は、これによっても排気循環ガスの導入量を制御できる。
【0016】
燃料タンク10は、バイオ燃料と軽油とを貯蔵し、燃料噴射弁2cに供給するための装置である。本実施形態では、燃料タンク10は、給油口10aを開閉する給油リッド12と、燃料レベルセンサ10bと、を有する。給油リッド12は、制御装置20と電気的に接続され給油リッド12の開閉状態を制御装置20に送信する。燃料レベルセンサ10bは、制御装置20と電気的に接続され、燃料タンク10の燃料の残存量(燃料レベル)を制御装置20に送信する。
【0017】
制御装置20は、バイオ燃料によって堆積される粒子状物質の堆積量を予め設定した第1堆積量と、軽油によって堆積される粒子状物質の堆積量を予め設定したで第2堆積量と、PMセンサ6によって検知した粒子状物質の第3堆積量と、に基づいて、バイオ燃料と軽油の混合割合(混合率)を判定する判定制御を実行する。
【0018】
より具体的には、
図2に示すように、制御装置20は、内燃機関2にバイオ燃料のみを使用した場合における、所定時間中の粒子状物質の堆積量である第1堆積量の変化(
図2の一点鎖線参照)を記憶している。制御装置20は、内燃機関2に軽油のみを使用した場合における、所定時間中の粒子状物質の堆積量である第2堆積量の変化(
図2の破線参照)も記憶している。所定時間は、第1堆積量の変化および第2堆積量の変化を実験によって計測した時間であってもよい。制御装置20は、第1堆積量と、第2堆積量と、PMセンサ6から取得した第3堆積量(
図2の実線参照)と、を比較し、バイオ燃料と軽油の混合割合を判定する。
【0019】
本実施形態では制御装置20は、第1堆積量と第2堆積量とに基づいて、バイオ燃料と軽油の混合割合に応じた推定堆積量(
図2の二点鎖線参照)を演算している。制御装置20は、PMセンサ6の電流値から、実際に排気中に流れる粒子状物質の堆積量に相当する第3堆積量を取得する。制御装置20は、取得した第3堆積量と推定堆積量を比較することによって、推定した混合割合に対して、実際の混合割合が高いか低いかを判定する。制御装置20は、推定した混合割合に対して第3堆積量が多い場合、軽油の割合を推定した割合よりも高く補正する。一方、制御装置20は、推定した混合割合に対して第3堆積量が少ない場合、バイオ燃料の割合を推定した割合よりも高く補正する。これによって、制御装置20は、混合割合を判定できる。なお、PMセンサ6は、粒子状物質がPMセンサ6のセンサ素子に堆積するまでの一定期間は、不感帯を有する。制御装置20は、この間も、推定堆積量を演算している。
【0020】
制御装置20は、排気循環ガスの導入割合を決定し、排気循環ガスの導入量が、エアクリーナ32に取り付けられたエアフロセンサ22によって検知した吸気量に対して決定した導入割合となるように、排気循環弁8bの開度を制御する。制御装置20は、内燃機関2の運転領域ごとに排気循環ガスの導入割合を定めたマップに基づいて、排気循環ガスの導入割合を決定してもよい。
【0021】
また、制御装置20は、フィルタ4の再生条件(第1条件の一例)が成立すると、フィルタ4を再生する再生制御を実行する。本実施形態では、制御装置20は、フィルタ4の再生条件が成立したか否かを、フィルタ4に粒子状物質の堆積量が所定量以上か否かによって判断する。所定の粒子状物質が堆積したか否かは、例えば、フィルタ前後の圧力差などによって検知可能である。その他、所定の粒子状物質が堆積したか否かは、PMセンサ6によって検知してもよい。
【0022】
さらに、本実施形態では、フィルタ4を再生する前にフィルタ4の上流の排気温度を上昇させる昇温制御を実行する。制御装置20は、昇温制御において、内燃機関2の膨張行程の後半に燃料噴射弁2cから燃料を噴射する。これによって、燃料がフィルタ4の上流に配置される酸化触媒4aに供給される。酸化触媒4aに供給された燃料は、酸化触媒4aに拡散し、吸着され、燃焼反応する。これによって、酸化触媒4aを通過した排気は、温度が上昇する。この結果、フィルタ4に流入する排気が高温になる。高温になった排気は、フィルタ4に捕集された粒子状物質を燃焼させ、フィルタ4を再生する。
【0023】
また、制御装置20は、フィルタ4の再生条件が成立した場合であっても、フィルタ4の再生を禁止する条件(第2条件の一例)が成立した場合、フィルタ4の再生制御を禁止する。
【0024】
例えば、制御装置20は、内燃機関2が所定負荷で運転される場合、フィルタ4の再生制御を禁止する。所定の負荷は、例えば、アクセルペダル30が全開の場合である。このような場合、内燃機関2に要求される出力が高い。このような内燃機関2の状態では、燃料噴射量も増加する。このため、制御装置20は、燃料を昇温制御ではなく内燃機関2の出力に使用する必要がある。
【0025】
また、例えば、内燃機関2が低回転で運転され、車両の速度が低い状態では、フィルタ4の再生によって内燃機関2の回転数が上昇すると、車両のユーザに不快感を与える。制御装置20は、このような状態では、再生条件が成立していないと判断してもよい。
【0026】
その他、制御装置20は、排気温度がフィルタ4を再生する温度としては低すぎる場合、または高すぎる場合、再生制御を禁止してもよい。いずれにせよ、制御装置20は、内燃機関2の運転状態や、車両の走行状態に応じて、排気温度、燃料噴射量、内燃機関2の回転数、車両の速度などのパラメータを監視し、それらパラメータに基づいて、フィルタ4の再生制御を禁止してもよい。
【0027】
このほか、制御装置20は、エアフロセンサ22、およびアクセルポジションセンサ30aなどのセンサから取得した値に基づいて、内燃機関2が所望の運転状態となるように、燃料噴射弁2c、排気循環弁8b、および過給機14の過給圧、などの各装置の制御を実行してもよい。制御装置20は、実際には、演算装置と、メモリと、入出力バッファ等とを含むマイクロコンピュータによって構成されるECU(Electrоnic Control Unit)である。制御装置20は、メモリに格納されたマップおよびプログラムに基づいて、内燃機関2が、所望の運転状態となるように各装置を制御する。なお、各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)により処理することも可能である。
【0028】
次に、
図3のフローチャートを用いて、制御装置20が実行する制御手順について説明する。なお、制御装置20は、図示しないイグニッションスイッチがオンされると制御動作を開始する。
【0029】
ステップS1では、制御装置20は、バイオ燃料と軽油の混合割合(混合率)を取得する。制御装置20は、混合割合を取得するとステップS2に処理を進める。制御装置20は、給油されたと判断した際に混合割合を取得してもよい。制御装置20は、給油リッド12の開閉状態を検知し、給油リッド12が開いた場合に、給油が開始されたと判断してもよい。その他、制御装置20は、燃料レベルが上昇したと判断した場合に給油がされたと判断してもよい。
【0030】
ステップS2では制御装置20は、混合割合が増加したか否か判断する。制御装置20は、給油後に判定制御を実行し、判定制御を実行した際に給油前に比べて混合割合が増加したか否か判断してもよい。また、制御装置20は、判定制御を所定時間ごとに実行し、前回の判定制御の実行時にくらべて、今回の判定制御を実行した際の混合割合が増加した場合に、混合割合が増加したと判断してもよい。制御装置20は、混合割合が増加したと判断した場合(ステップS2 YES)、ステップS3に処理を進める。制御装置20は、混合割合が増加しなかったと判断した場合(ステップS2 NO)、ステップS1に処理を戻す。
【0031】
ステップS3では制御装置20は、同一運転条件における排気循環ガスの導入量を増加させる。例えば、軽油のみ(バイオ燃料がゼロパーセント)において、所定運転条件での排気循環ガスの導入量が吸気量に対して10パーセントであったとする。その後、給油されバイオ燃料の混合割合が30パーセントに増加したとする。この場合、制御装置20は、排気循環ガスの導入量を吸気量に対して30パーセントにまで増加させてもよい。
【0032】
バイオ燃料は、軽油に比べて発熱量が少ない。このため、排気循環ガスの導入量を増加させても、粒子状物質(すす)がでにくい。したがって、制御装置20は、バイオ燃料の混合割合が高いほど、排気循環ガスの増加量を大きくしてもよい。これによって、ポンプロスを抑制でき、燃費が向上する。制御装置20は、排気循環ガスの導入量を増加させると、ステップS4に処理を進める。
【0033】
ステップS4では、制御装置20は、フィルタ4の再生条件が成立したか否か判断する。制御装置20は、フィルタ4の再生条件が成立したと判断した場合(ステップS4 YES)、ステップS5に処理を進め、フィルタ4の再生条件が成立した回数をカウントする。制御装置20は、フィルタ4の再生条件が成立した回数をカウントすると、ステップS6に処理を進める。
【0034】
ステップS6では、制御装置20は、再生制御の禁止条件が成立したか否か判断する。制御装置20は、再生制御の禁止条件が成立したと判断した場合(ステップS6 YES)、ステップS7に処理を進める。
【0035】
ステップS7では、制御装置20は、再生条件の成立したカウント数が所定回数(所定成立回数)以上か否か判断する。制御装置20は、再生条件のカウント数が所定回数以上であると判断した場合、ステップS8に処理を進める。
【0036】
ステップS8では、制御装置20は、フィルタ4の強制再生条件が成立したか否か判断する。本実施形態では、制御装置20は、フィルタ4の再生条件が成立した回数が増加するにつれて、再生制御を禁止する条件を緩和する。例えば、車両のユーザに不快感を与えるために禁止していた、内燃機関2が低回転で運転され、車両の速度が低い状態においては、フィルタ4の再生条件が成立した回数が所定回数以上の場合は、強制再生条件を成立させる。制御装置20は、フィルタ4の強制再生条件が成立していないと判断した場合(ステップS8 NO)、ステップS9に処理を進める。
【0037】
ステップS9では、制御装置20は、導入量を低減させる量である低減量分の排気循環ガスを、ステップS3で増加した排気循環ガスの導入量から減少させる補正制御を実行する。例えば、制御装置20がステップS3において排気循環ガスの導入量を吸気量に対して10パーセントから30パーセントまで増加させた場合、制御装置20は、排気循環ガスの導入量を吸気量に対して30パーセントから20パーセントまで(低減量としては10パーセント分)減少する補正制御を実行してもよい。
【0038】
このように、再生条件が成立しているにもかかわらず、禁止条件によってフィルタ4の再生制御が実行されない場合、制御装置20は、増加した排気循環ガスの導入量を減らしてフィルタ4に堆積する粒子状物質の堆積量が増加しないようにする。一方、制御装置20は、フィルタ4の再生条件が成立した回数(成立回数)が多いほど、低減量を減少させる。フィルタ4の再生条件が成立した回数が多いほど、強制再生制御の実行が近い。このため、排気循環ガスを導入し粒子状物質の堆積量が増えても強制再生制御が実行されることによって除去される。制御装置20は、補正制御を実行すると、ステップS1に処理を戻す。
【0039】
ステップS2において、制御装置20が、混合割合が増加していないと判断した場合(ステップS2 NO)、制御装置20は、ステップS1に処理を戻す。ステップS4において制御装置20がフィルタ4の再生条件が成立していないと判断した場合(ステップS4 NO)、制御装置20は、ステップS1に処理を戻す。
【0040】
ステップS6において、制御装置20が、禁止条件が不成立であると判断した場合(ステップS6 NO)、制御装置20は、ステップS10に処理を進め、再生制御を実行する。
【0041】
ステップS7において、制御装置20がフィルタ4の再生条件の成立したカウント数が所定回数未満であると判断した場合(ステップS7 NO)、制御装置20はステップS1に処理を戻す。言い換えると、制御装置20は、フィルタ4の再生条件の成立したカウント数が所定回数未満の場合、補正制御を実行しない。フィルタ4の再生条件は、粒子状物質の堆積量が多くなるほど成立しやすい。制御装置20は、フィルタ4のカウント数が少なく、粒子状物質の堆積量が少ない場合では、補正制御を実行する必要がない。ステップS7において、制御装置20は、フィルタ4の再生条件が成立したカウント数が所定回数を超えるか否かを判断する。制御装置20は、カウント数が所定回数を超えると判断した場合(ステップS7 YES)、ステップS8に処理を進める。ステップS7において、制御装置20が、カウント数が所定回数に満たないと判断した場合(ステップS7 NO)、制御装置20は、ステップS1に処理を戻す。
【0042】
ステップS8では、制御装置20は、強制再生条件が成立したか否かを判断する。制御装置20がフィルタ4の強制再生条件が成立しないと判断した場合(ステップS8 NO)、制御装置20は、ステップS9に処理を進めて補正制御を行い、ステップS1に処理を戻す。制御装置20が、フィルタ4の強制再生条件が成立すると判断した場合(ステップS8 YES)、制御装置20は、ステップS10に処理を進める。ステップS10では、制御装置20は、再生制御を実行し、ステップS1に処理を戻す。制御装置20は、ステップS8で、強制再生条件が成立しないと判断した場合(ステップS8 NO)、ステップS9に処理を進める。ステップS9では、制御装置20は補正制御を行い、ステップS1に処理を戻す。制御装置20は、このようなステップS1からステップS10までの処理を所定時間毎に繰り返し実行する。
【0043】
以上説明した通り、本開示の内燃機関2の制御システム1によれば、内燃機関2が同一運転条件であっても、バイオ燃料の混合割合に応じて排気循環ガスの導入量を変更する。
図4に示すように、一般的には、排気循環ガスの導入量が増加するほど窒素酸化物の発生量(NOx量)は減少する一方で、粒子状物質の発生量(PM量)は増加する。
図4の丸で囲んだA領域から
図4の丸で囲んだB領域まで排気循環ガスの導入量を増加させた場合、B0(軽油)燃料ではPM量が極端に増える一方、NOx量が減少しにくい。一方、B100(バイオ)燃料は排気循環ガスを増加させると、PM量はB0燃料に比べて増えない一方で、NOx量は減少効果が見られる。このため、制御装置20は、バイオ燃料の混合割合が多いほど、排気循環ガス量を増加させることによって、PM量の増加量を抑制しつつ、NOx量を減らすことができる。NOx量(NOxの排出量)が減れば、例えばNOxトラップのNOxパージ制御の頻度、あるいは尿素選択還元触媒の尿素水の噴射頻度、などを抑制できる。これによって、燃料消費の抑制や、尿素水の消費抑制ができる。
【0044】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0045】
(a)上記実施形態では、フィルタ4を用いたディーゼルエンジンを例に説明したが、本開示はこれに限定されない。内燃機関2は、ガソリンエンジンであってもよい。この場合、内燃機関2は、バイオエタノール燃料(第1燃料の一例)と、ガソリン(第2燃料の一例)を使用可能な内燃機関2であってもよい。また、この場合、フィルタ4は、ガソリンパーティキュレートフィルタであってもよい。
【0046】
(b)上記実施形態では、内燃機関2の制御システム1を、ディーゼルエンジンを搭載する車両に適用した例を説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、内燃機関2の制御システム1を、外部充電または外部給電が可能なプラグインハイブリッド車両(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)に適用してもよい。
【0047】
(c)上記実施形態では、制御装置20がバイオ燃料と軽油の混合割合を判定する判定制御を実行し、混合割合を取得する例を用いて説明したが本開示はこれに限定されない。制御装置20は、例えば、燃料タンク10や燃料タンク10に接続される燃料配管等の燃料系に設置した、バイオ燃料と軽油の混合割合を検知可能なバイオ燃料混合率センサの出力値を用いて、混合割合を取得してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 :制御システム
2 :内燃機関
4 :フィルタ
8 :排気循環装置
20 :制御装置