IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電気株式会社の特許一覧

特許7655345情報処理システム、照明制御装置、照明制御方法、及びプログラム
<>
  • 特許-情報処理システム、照明制御装置、照明制御方法、及びプログラム 図1
  • 特許-情報処理システム、照明制御装置、照明制御方法、及びプログラム 図2
  • 特許-情報処理システム、照明制御装置、照明制御方法、及びプログラム 図3
  • 特許-情報処理システム、照明制御装置、照明制御方法、及びプログラム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-25
(45)【発行日】2025-04-02
(54)【発明の名称】情報処理システム、照明制御装置、照明制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/74 20230101AFI20250326BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20250326BHJP
   G06V 40/18 20220101ALI20250326BHJP
   H04N 23/56 20230101ALI20250326BHJP
   A61B 5/1171 20160101ALI20250326BHJP
   G03B 3/00 20210101ALI20250326BHJP
   G03B 15/05 20210101ALI20250326BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20250326BHJP
【FI】
H04N23/74
G06T7/00 510D
G06V40/18
H04N23/56
A61B5/1171 300
G03B3/00
G03B15/05
G03B15/00 U
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023074481
(22)【出願日】2023-04-28
(62)【分割の表示】P 2021501892の分割
【原出願日】2020-02-12
(65)【公開番号】P2023113609
(43)【公開日】2023-08-16
【審査請求日】2023-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2019026940
(32)【優先日】2019-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】蝶野 慶一
(72)【発明者】
【氏名】赤司 竜一
(72)【発明者】
【氏名】荻野 有加
(72)【発明者】
【氏名】塚田 正人
【審査官】岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-338236(JP,A)
【文献】特開2008-152097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/222-5/257
H04N 23/00
H04N 23/40-23/76
H04N 23/90-23/959
G06T 1/00
G06T 1/60
G06T 7/00-7/90
G06V 10/00-20/90
G06V 30/418
G06V 40/16
G06V 40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者に光を照らす照明手段と、
所定の合焦位置又はその近傍で前記被験者を撮像する撮像手段と、
前記照明手段を制御して、前記合焦位置又はその近傍の前記被験者に第1の光量の光を照射する第1の照明制御と、前記合焦位置又はその近傍より前記照明手段に近い位置の前記被験者に前記被験者までの距離に基づいて設定される第2の光量の光を照射する第2の照明制御とを行う制御手段とを備え
前記制御手段は、前記撮像手段から供給される映像の明るさに基づいて、前記被験者が前記合焦位置を通過したか否かを判断し、前記被験者が前記合焦位置を通過したと判断した場合に、照明制御を前記第1の照明制御から前記第2の照明制御に切り替える、情報処理システム。
【請求項2】
前記照明手段はパルス状に光を出射し、
前記制御手段は、前記光のパルス幅、及びパルス強度の少なくとも一方を制御することで、前記被験者に照射される光量を制御する、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記撮像手段は、複数の虹彩カメラを有し、複数の虹彩カメラは互いに隣接する虹彩カメラ間で映像領域が重複するように配置され、前記複数の虹彩カメラの合焦位置は、前記前記被験者の虹彩が撮影される位置であり、
前記制御手段は、前記第2の光量の光を前記被験者に照射するように前記照明手段から出射する光を制御する場合、前記第1の光量の光を前記被験者に照射するように前記照明手段から出射する光を制御する場合に比べて、発光強度が低い、発光時間が短い、又は発光強度が低くかつ発光時間が短い光が前記照明手段から出射されるように前記照明手段を制御する、請求項1又は2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
照明手段を制御して、被験者を撮影する撮像手段の合焦位置又はその近傍の前記被験者に第1の光量の光を照射する第1の照明制御と、前記合焦位置又はその近傍より前記照明手段に近い位置の前記被験者に前記被験者までの距離に基づいて設定される第2の光量の光を照射する第2の照明制御を行う制御手段を備え
前記制御手段は、前記撮像手段から供給される映像の明るさに基づいて、前記被験者が前記合焦位置を通過したか否かを判断し、前記被験者が前記合焦位置を通過したと判断した場合に、照明制御を前記第1の照明制御から前記第2の照明制御に切り替える、照明制御装置。
【請求項5】
前記照明手段はパルス状に光を出射し、
前記制御手段は、前記光のパルス幅、及びパルス強度の少なくとも一方を制御することで、前記被験者に照射される光量を制御する、請求項4に記載の照明制御装置。
【請求項6】
前記撮像手段は、複数の虹彩カメラを有し、複数の虹彩カメラは互いに隣接する虹彩カメラ間で映像領域が重複するように配置され、前記複数の虹彩カメラの合焦位置は、前記被験者の虹彩が撮影される位置であり、
前記制御手段は、前記第2の光量の光を前記被験者に照射するように前記照明手段から出射する光を制御する場合、前記第1の光量の光を前記被験者に照射するように前記照明手段から出射する光を制御する場合に比べて、発光強度が低い、発光時間が短い、又は発光強度が低くかつ発光時間が短い光が前記照明手段から出射されるように前記照明手段を制御する、請求項4又は5に記載の照明制御装置。
【請求項7】
前記撮像手段は前記被験者の虹彩映像を撮像し、
前記第1の光量は、前記合焦位置において前記被験者の虹彩映像が所定の品質で撮像される光量である、請求項4から6何れか1項に記載の照明制御装置。
【請求項8】
照明手段を制御して、被験者を撮影する撮像手段の合焦位置又はその近傍の前記被験者に第1の光量の光を照射する第1の照明制御と、前記合焦位置又はその近傍より前記照明手段に近い位置の前記被験者に前記被験者までの距離に基づいて設定される第2の光量の光を照射する第2の照明制御とを行い、
前記撮像手段から供給される映像の明るさに基づいて、前記被験者が前記合焦位置を通過したか否かを判断し、前記被験者が前記合焦位置を通過したと判断した場合に、照明制御を前記第1の照明制御から前記第2の照明制御に切り替える照明制御方法。
【請求項9】
照明手段を制御して、被験者を撮影する撮像手段の合焦位置又はその近傍の前記被験者に第1の光量の光を照射する第1の照明制御と、前記合焦位置又はその近傍より前記照明手段に近い位置の前記被験者に前記被験者までの距離に基づいて設定される第2の光量の光を照射する第2の照明制御とを行い、
前記撮像手段から供給される映像の明るさに基づいて、前記被験者が前記合焦位置を通過したか否かを判断し、前記被験者が前記合焦位置を通過したと判断した場合に、照明制御を前記第1の照明制御から前記第2の照明制御に切り替える処理をプロセッサに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、照明制御装置、方法、システム、及びコンピュータ可読媒体に関し、特に虹彩を用いる認証の用途に用いられ得る照明制御装置、方法、システム、及びコンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
虹彩を用いる生体認証が知られている。この生体認証では、撮像装置を用いて被験者の虹彩が撮像され、撮像された虹彩のパターンから特徴量が抽出される。被験者を認証する場合、抽出された特徴量とあらかじめデータベースに登録された特徴量とが照合され、照合スコアに基づいて合否が判断される。一方、認証対象の被験者を登録する場合、抽出された特徴量がデータベースに追加される。
【0003】
非特許文献1に記載されるように、瞳孔を取り囲むドーナツ型の組織である虹彩は、非常に複雑なパターンで、人それぞれに固有のものとなる。また、虹彩の撮像においては、被験者の目に近赤外光が照射される。
【0004】
非特許文献2に記載されるように、虹彩の撮像においては、虹彩の半径を100画素から140画素で表現できる解像度で虹彩映像が撮像される。また、被験者の目に照射される近赤外光の波長は700nmから900nmとなる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】細矢、「虹彩による認証システムについて」、生体医工学44(1), page33-39, 2006
【文献】Daugman, "How Iris Recognition Works," https://www.cl.cam.ac.uk/~jgd1000/irisrecog.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
虹彩の直径は約1cmであり、その半径を100画素で表現しようとすると、50μm粒度となる。このように、虹彩のパターンは微細なため、被験者と撮像手段との距離が長く、被験者が移動する条件において、認証や照合できる品質で虹彩パターンを撮像するための明るさを保ちつつ、近接した被験者に対して強い光の照射を防止することは困難である。
【0007】
本開示は、上記事情に鑑み、近接した被験者に対する強い光の照射を防止することができる照明制御装置、方法、システム、及びコンピュータ可読媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示は、第1の態様として、被験者を誘導するための誘導手段と、前記被験者に光を照らす照明手段と、前記被験者を撮像するための撮像手段と、前記被験者に照射される光量が一定以下となるように制御する制御手段とを備える照明制御システムを提供する。
【0009】
本開示は、第2の態様として、移動する被験者に向けて光を出射する照明手段から前記被験者に照射される光量が一定以下となるように、前記照明手段から出射する光を制御する制御手段を備える照明制御装置を提供する。
【0010】
本開示は、第3の態様として、移動する被験者に向けて光を出射する照明手段から前記被験者に照射される光量が一定以下となるように、前記照明手段から出射する光を制御する照明制御方法を提供する。
【0011】
本開示は、第4の態様として、移動する被験者に向けて光を出射する照明手段から前記被験者に照射される光量が一定以下となるように、前記照明手段から出射する光を制御する処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを格納するコンピュータ可読媒体を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本開示に係る照明制御装置、方法、システム、及びコンピュータ可読媒体は、近接した被験者に対する強い光の照射を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の一実施形態に係る照明制御システムを含む画像処理システムを示すブロック図。
図2】虹彩撮像制御の様子を示す図。
図3】画像処理システムにおける動作手順を示すフローチャート。
図4】コンピュータ装置の構成例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の実施の形態の説明に先立ち、課題を定量化する。以下では、Automated border control systems(ABC)の運用条件などで想定される下記の条件を例として説明する。被験者と撮像手段の距離(被験者とゲートの間の距離)は2mであり、水平視野、すなわち被験者1人の両目をカバーできる水平方向の範囲は0.2mであるとする。また、垂直視野、すなわち、典型的には男性である背の高い被験者の目から、典型的には女性である背の低い被験者の目までカバーできる垂直方向の範囲は0.4mであるとする。また、ゲートに対する被験者の歩行速度(移動速度)は、成人のゆっくりとした歩行速度の平均値、例えば1m/sであるとする。
【0015】
距離2mの位置を、その遠方から歩いてくる被験者の虹彩を合焦して捉える位置(合焦位置)とする場合、認証や照合できる品質で虹彩パターンを撮像できるレベルの光を、照明手段から被験者に照射する必要がある。例えば、合焦位置である2m先の位置において被験者に照射される光量が5mW/cmであるとする。被験者に照射される光量は、被験者と照明の間の距離の二乗に比例して減衰し、1m先の位置において被験者に照射される光量は20mW/cmとなる。近距離の被験者に対して強い光が照射されることは、安全性の観点で好ましくない。
【0016】
一方で、1m先の位置で被験者に照射される光量を5mW/cmとすると、2m先の位置で被験者に照射される光量は1.25mW/cmとなる。虹彩パターンの撮像では、例えば、移動する被験者の虹彩パターン動きブレが発生しないように短い露光時間で撮像が行われる場合がある。また、移動する被験者の虹彩パターンを鮮明にとれる被写界深度を広くできるように、撮像装置において大きな絞り値が用いられる場合があり、撮像装置の光学系で光量が多く損なわれる場合がある。このような事情から、光量を低下させると、認証や照合で使用できる品質で虹彩パターンを撮像できない可能性がある。
【0017】
虹彩のパターンは微細なため、被験者と照明との距離が長く、被験者が照明に向かって移動する条件で、認証や照合できる品質で虹彩パターンを撮像するための明るさを保ちつつ、照明に近接した被験者に対して強い光を照射することを防止することは困難である。
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施の形態を説明する。図1は、本開示の一実施形態に係る照明制御システムを含む画像処理システムを示す。画像処理システムは、全体撮像器100、誘導器200、照明器300、虹彩撮像器401~404、及び制御器500を有する。なお、図1では、虹彩撮像器の数を4台としているが、虹彩撮像器の台数は特に限定されない。虹彩撮像器の数は、カバーしたい視野範囲や、利用できる虹彩撮像器の解像度などに応じて、適宜設定され得る。
【0019】
全体撮像器(全体撮像手段)100は、背の高い被験者から背の低い被験者までの全体をカバーできるように、広い視野範囲で被験者を撮像する。全体撮像器100は、被験者を顔で認証できる解像度を備えていてもよい。
【0020】
制御器(制御手段)500は、全体撮像器100から供給される全体映像を監視し、誘導器(誘導手段)200、照明器(照明手段)300、及び複数の虹彩撮像器(撮像手段)401~404を制御する。制御器500の機能は、ハードウェアで構成することも可能であるが、コンピュータプログラムにより実現することも可能である。制御器500は、全体撮像器100から供給される全体映像、又は外部入力に基づいて被験者に対する生体認証の開始を判断する。
【0021】
制御器500が実施する制御は、誘導制御、照明制御、及び虹彩撮像制御を含む。制御器500は、誘導制御では、被験者を誘導するための誘導制御情報を誘導器200に供給する。誘導器200は、誘導制御情報に基づいて被験者を誘導する。誘導器200は、例えばディスプレイやスピーカなどを含む。誘導器200は、例えば、生体認証を開始することを提示するための映像や音声をディスプレイやスピーカで提示する。また、誘導器200は、虹彩撮像器に被験者の視線を誘導させるための映像や音声などをディスプレイやスピーカで提示する。
【0022】
制御器500は、照明制御では、被験者に照明光を照射するための照明制御情報を照明器300に供給する。照明器300は、照明制御情報に基づいて被験者に光(例えば近赤外光)を照射する。照明器300は、光源であるLED(Light Emitting Diode)や同期信号発生器を含む。照明器300から被験者に照射される光量は、LEDへの供給電流値、LEDの点灯時間、及び点灯周期で決定される、照明制御情報は、これらの数値を含む。LEDを常時点灯させない場合、LEDの点灯周期は、複数の虹彩撮像器401~404のフレームレートと同期される。
【0023】
制御器500は、虹彩撮像制御では、全体撮像器100から供給される全体映像に基づいて、複数の虹彩撮像器401~404のうち、被験者の目を含む領域を好適に撮像できる虹彩撮像器を決定する。また、制御器500は、決定した虹彩撮像器内で高速に読み出す注視領域の垂直位置を決定する。
【0024】
図2は、虹彩撮像制御の様子を示す図である。図2を用いて、虹彩撮像制御の詳細を説明する。ここでは、虹彩撮像器401~404に、12M画素(水平4000画素、垂直3000画素)かつ60fpsの汎用カメラが使用される場合を想定する。そのようなカメラは、産業用カメラなどで普及品となりつつある。虹彩で認証できる粒度の50μmで撮像する場合、各虹彩撮像器の水平視野と垂直視野はそれぞれ0.2m(4000×50[μm]=0.2[m])と0.15m(3000×50[μm]=0.15[m])となる。
【0025】
複数の虹彩撮像器401~404は、垂直方向に互いに積み重ねられるように配置される。このとき、複数の虹彩撮像器401~404のそれぞれは、隣接する虹彩撮像器との間で映像領域が一部重複するように配置される。虹彩撮像器401~404は、例えば隣接する虹彩撮像器間で、映像領域が2.5cm重複するように配置される。その場合、2m先の合焦位置にて、4台で水平0.2mと垂直0.45m((0.15-0.025)+(0.15-0.025-0.025)+(0.15-0.025-0.025)+(0.15-0.025)m)の視野を確保できる。つまり、水平0.2mと垂直0.4mの要求視野を確保できる。なお、図面と上述した説明により、各虹彩撮像器は同じ視野範囲であり、互いに異なる位置に配置されることが分かる。
【0026】
各虹彩撮像器のフレームレートが60fpsである場合、そのままでは要求フレームレート100fpsを満たせない。ここで、産業用カメラなどでは、注視領域モードがある。注視領域モードでは、画面全体ではなく、注視領域として設定された部分領域のみが読み出される。このような注視領域モードを利用することで、フレームレートを高めることができる。
【0027】
制御器500は、任意の虹彩撮像器に注視領域を設定し、その虹彩撮像器から注視領域の画像を読み出す。図2の例では、画面半分の水平4000画素、垂直1500画素の部分領域が注視領域として設定される例が示されている。この場合、1フレームあたりの画素数が全体の1/2となるため、全画面を読み出す場合のフレームレート60fpsの2倍の120fpsにフレームレートを高めることができる。ただし、部分領域の水平視野と垂直視野は、それぞれ0.2mと0.75mとなる。なお、人の両目は水平方向に並ぶ。このため、注視領域モードにおいては、両目を撮像できるように、水平ではなく垂直の画素数を削減することが好ましい。
【0028】
上記した隣接する虹彩撮像器で映像領域が重複する範囲で目領域が撮像されない条件では、目領域を撮像する虹彩撮像器は4台の虹彩撮像器401~404のうちの何れか1台のみとなる。また、120fpsで読み出させる条件は、その虹彩撮像器内の部分領域となる。制御器500は、複数の虹彩撮像器401~404のうち目領域を好適に撮像できる虹彩撮像器を推定し、その虹彩撮像器内で高速に読み出す注視領域の垂直位置を推定する。
【0029】
上記推定は、次に示す方法で実現できる。全体撮像器100は、被験者を顔で認証できる解像度を有しており、制御器500は、全体撮像器100で撮像された全体映像における被験者の目位置を導出する。制御器500は、全体撮像器100と各虹彩撮像器のカメラパラメータと配置関係とを用いて、全体映像における被験者の目位置に対応する虹彩撮像器と、その撮像器内で存在する目位置を導出する。注視領域モードを利用することで、水平0.2m及び垂直0.4mよりも広い視野と100fpsより高い時間分解能とを、汎用カメラを用いて実現できる。
【0030】
なお、上記した注視領域モードで垂直位置を変更すると、撮像開始までに遅延が発生する。このため、上記の推定においては、被験者が虹彩撮像器の合焦位置である2m先よりも先、例えば3m先で撮像される映像を用いればよい。3m先の被験者を顔で認証できる解像度は2M画素程度のカメラでも実現可能であり、全体撮像器100には、虹彩撮像カメラより低いスペックのカメラを利用できる。
【0031】
制御器500は、上述した虹彩撮像制御に基づいて、虹彩撮像器401~404のそれぞれに虹彩撮像情報を供給する。制御器500は、被験者の目領域をうつす虹彩撮像器には、注視領域の垂直位置を含む虹彩撮像情報を供給する。制御器500は、その他の虹彩撮像器については、任意の虹彩撮像情報を供給してもよい。制御器500は、例えば虹彩映像の総データ量を削減する目的で、虹彩映像の供給停止の情報を含む虹彩撮像情報をその他の虹彩撮像器に供給してもよい。
【0032】
虹彩撮像器401~404は、それぞれ、制御器500から供給される虹彩撮像情報に基づいて、虹彩映像を制御器500に供給する。このとき、虹彩撮像器401~404は、虹彩撮像情報を用いて制御器500から設定された注視領域の画像(虹彩映像)を、制御器500に出力する。虹彩撮像器401~404は、注視領域の虹彩映像に対して非可逆圧縮を適用し、圧縮した虹彩映像を制御器500に出力してもよい。例えば、虹彩撮像器401~404は、量子化(画素ごとに圧縮)、予測符号化と量子化(複数の画素の組で圧縮)、又は変換符号化と量子化との組み合わせ(複数の画素の組で圧縮)を用いて、注視領域の虹彩映像を圧縮する。制御器500は、虹彩撮像器401~404から供給される虹彩映像を用いて、背景技術で述べた認証や登録を行う。制御器500は、次の被験者が存在する場合、あるいは、認証や登録に失敗した場合、次の処理に戻る。
【0033】
ここで、本実施形態において、制御器500は、照明器300から移動する被験者に照射される光量が一定以下となるように、照明器300から出射する光を制御する。照明器300は、例えばパルス状に光を出射する。その場合、制御器500は、照明器300から出射する光のパルス幅、及びパルス強度の少なくとも一方を制御することで、被験者に照射される光量を制御する。パルス幅は、LEDなどの点灯時間に対応し、パルス強度は、LEDへの供給電流に対応する。制御器500は、例えば、照明器300と被験者との間の距離に応じて、照明器300から出射する光を制御する。制御器500は、例えば、例えば距離の関数である所定の計算式を用いて照明器300から出射する光量を計算する。あるいは、制御器500は、距離と照明器300から出射する光量との関係を定義するテーブルを用い、距離に応じて、照明器300から出射する光量を決定してもよい。
【0034】
本実施形態において、制御器500が実施する照明制御は、第1の照明制御と第2の照明制御とを含む。制御器500は、被験者の位置が、虹彩撮像器の合焦位置の近傍か、又はそれよりも遠い場合、第1の照明制御を行う。制御器500は、被験者が虹彩撮像器の合焦位置を通過した後、第2の照明制御を行う。本実施形態において、制御器500は、照明制御方法を実施する照明制御装置としても機能する。なお、本実施形態において、撮像手段に虹彩撮像器401~404が用いられる例を説明しているが、撮像手段に被験者を撮像するものであればよく、虹彩撮像器401~404のみには特に限定されない。
【0035】
制御器500は、第1の照明制御では、虹彩撮像器の合焦位置において、被験者の虹彩パターンを、認証や照合に使用できる品質で撮像できる明るさの光が被験者に照射される光量の光を、照明器300から出射させる。制御器500は、第1の照明制御では、例えば照明器300から出射する光量を、制御上の最大値にする。第1の照明制御時に被験者に照射される光量は、例えば所定の安全基準を満たす光量であるとする。
【0036】
制御器500は、第2の照明制御では、被験者に照射される光量が一定以下となるように、照明制御情報を通じて、照明器300から出射する光量を制御する。制御器500は、第2の照明制御では、照明器300から出射する光量を、制御上の最大値から減少させる。例えば、制御器500は、第2の照明制御では、照明器300のLEDへの供給電流値を、第1の照明制御時に比べて低下させ、照明器300の発光強度を低下させる。あるいは、制御器500は、第2の照明制御では、照明器300のLEDの点灯時間(発光時間)を、第1の照明制御時に比べて短くする。制御器500は、第2の照明制御では、第1の照明制御時に比べて、照明器300のLEDへの供給電流値を低下させ、かつ、LEDの点灯時間を短くしてもよい。制御器500は、第2の照明制御では、照明器300を消灯してもよい。つまり、被験者への光照射を停止してもよい。
【0037】
なお、被験者が虹彩撮像器の合焦位置を通過することは、被験者が合焦位置よりも手前側に移動して照明器300や虹彩撮像器401~404に近づくことを意味する。制御器500は、認証や登録が十分に高速に動作する場合、認証や登録が完了した時刻を、被験者が合焦位置を通過した時刻とみなし、被験者が合焦位置を既に通過していると判断してもよい。制御器500は、被験者が合焦位置を既に通過していると判断した場合、照明制御を第1の照明制御から第2の照明制御に切り替えてもよい。
【0038】
制御器500が、被験者が合焦位置を通過したか否かを判断する手法は特に限定されない。例えば、制御器500は、Time of Flight(ToF)などの測距機能を有する全体撮像器100を利用することによって得られる被験者の位置情報を用いて、被験者が合焦位置を既に通過したか否かを判断してもよい。あるいは、制御器500は、虹彩撮像器から供給される虹彩映像の明るさを監視し、虹彩映像の明るさに基づいて、被験者が合焦位置を既に通過したか否かを判断してもよい。虹彩映像の明るさは被験者に照射される光量に依存して変化する。被験者が照明器300に近づくほど虹彩映像が明るくなるため、虹彩映像の明るさに基づいて、被験者のある程度の位置を判断可能である。
【0039】
続いて、動作手順を説明する。図3は、画像処理システムにおける動作手順を示す。制御器500は、誘導制御を行い、誘導器200を用いて被験者を誘導する(ステップS1001)。制御器500は、第1の照明制御を行い、照明器300を用いて被験者に赤外光を照射する(ステップS1002)。制御器500は、上述した虹彩撮像制御を行い、複数の虹彩撮像器401~404を用いて撮像された虹彩の画像(虹彩映像)を取得する(ステップS1003)。ステップS1003で取得された虹彩映像は、虹彩認証や登録のために使用される。ステップS1003では、制御器500は、上述したように、ある被験者に対して虹彩撮像器401~404の全てから虹彩映像を得る必要はない。制御器500は、被験者の目領域を撮像している虹彩撮像器から、虹彩映像を取得する。
【0040】
制御器500は、ステップS1003で取得した虹彩映像を用いて虹彩認証を行い、或いは虹彩映像を登録する(ステップS1004)。制御器500は、第2の照明制御を行い、照明器300から被験者に照射される光量を一定以下とする(ステップS1005)。なお、第2の照明制御は、認証又は登録の後に実施されるとは限られない。例えば、認証や登録が十分に高速に動作しない場合は、ステップS1005をステップS1004より先行して実施し、認証や登録が完了する前に第2の照明制御を実施してもよい。
【0041】
制御器500は、次の被験者がいるか否か、或いは再認証若しくは再登録を行うか否かを判断する(ステップS1006)。次の被験者がいる場合、又は再認証若しくは再登録を行うと判断された場合、処理はステップS1001に戻り、誘導制御から処理が実施される。
【0042】
なお、本実施形態の全体撮像器100が顔で認証できる解像度を備えており、被験者を顔認証するため特徴量をデータベースに保有しており、かつ、被験者を虹彩認証するための特徴量をデータベースに保有してない場合、本開示に係る装置は、顔認証に基づいて被験者を特定し、抽出したその虹彩の特徴量をデータベースに登録する用途にも使用できる。また、本開示に係る装置は、虹彩撮像制御で得られる目位置情報、又は、虹彩撮像器で得られた虹彩映像を認証若しくは登録する際に得られる目位置情報に基づいて被験者の身長情報を推定し、データベースに登録する用途にも使用できる。さらに、本開示に係る装置は、推定した身長情報を用いて、複数の虹彩撮像器から目領域を好適に撮像できる虹彩撮像器と同撮像器内で高速に読み出す注視領域の垂直位置の決定や校正に用いることができる。
【0043】
本実施形態では、制御器500は、虹彩撮像器の合焦位置において、被験者の虹彩パターンを、認証や照合に使用できる品質で撮像できる明るさの光が被験者に照射される光量の光を、照明器300から出射させる。制御器500は、被験者が合焦位置を通過した後は、被験者に照射される光量が一定以下となるように、照明器300から出射する光量を制御する。このようにすることで、被験者と撮像手段の距離が長く、被験者が移動する条件で、認証や照合できる品質で虹彩パターンを撮像するための明るさを保ちつつ、照明に近接した被験者に対して強い光を照射することを防止できる。
【0044】
なお、図2では、水平4000画素×垂直1500画素の部分領域が注視領域として設定される例を示したが、本開示はこれには限定されない。注視領域の形状は矩形には限定されず、また注視領域の数も1つには限定されない。制御器500は、例えば全体撮像器100で撮像された全体映像(俯瞰映像)から被験者の右目及び左目の位置を導出し、右目の位置に対応した注視領域と、左目の位置に対応した注視領域とを虹彩撮像器に設定してもよい。その場合、虹彩撮像器は、右目の虹彩映像、及び左目の虹彩映像を制御器500に供給する。注視領域の形状は、矩形であってもよいし、楕円形であってもよい。制御器500は、俯瞰映像に代えて、虹彩撮像器が撮像した虹彩映像に基づいて被験者の右目及び左目の位置を導出してもよい。例えば、制御器500は、図2に示される部分領域を一旦注視領域として設定し、その注視領域の映像から右目及び左目の位置を導出してもよい。その場合、制御器500は、導出した右目及び左目の位置に基づいて、右目の位置に対応した部分領域と、左目の位置に対応した部分領域とを、それぞれ注視領域として虹彩撮像器に設定してもよい。
【0045】
上記実施形態において、制御器500は、コンピュータ装置として構成され得る。図4は、制御器500に用いられ得る情報処理装置(コンピュータ装置)の構成例を示す。情報処理装置600は、制御部(CPU:Central Processing Unit)610、記憶部620、ROM(Read Only Memory)630、RAM(Random Access Memory)640、通信インタフェース(IF:Interface)650、及びユーザインタフェース660を有する。
【0046】
通信インタフェース650は、有線通信手段又は無線通信手段などを介して、情報処理装置600と通信ネットワークとを接続するためのインタフェースである。ユーザインタフェース660は、例えばディスプレイなどの表示部を含む。また、ユーザインタフェース660は、キーボード、マウス、及びタッチパネルなどの入力部を含む。
【0047】
記憶部620は、各種のデータを保持できる補助記憶装置である。記憶部620は、必ずしも情報処理装置600の一部である必要はなく、外部記憶装置であってもよいし、ネットワークを介して情報処理装置600に接続されたクラウドストレージであってもよい。ROM630は、不揮発性の記憶装置である。ROM630には、例えば比較的容量が少ないフラッシュメモリなどの半導体記憶装置が用いられる。CPU610が実行するプログラムは、記憶部620又はROM630に格納され得る。
【0048】
上記プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体を用いて格納され、情報処理装置600に供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記憶媒体を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、又はハードディスクなどの磁気記録媒体、例えば光磁気ディスクなどの光磁気記録媒体、CD(compact disc)、又はDVD(digital versatile disk)などの光ディスク媒体、及び、マスクROM、PROM(programmable ROM)、EPROM(erasable PROM)、フラッシュROM、又はRAMなどの半導体メモリを含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体を用いてコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバなどの有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0049】
RAM640は、揮発性の記憶装置である。RAM640には、DRAM(Dynamic Random Access Memory)又はSRAM(Static Random Access Memory)などの各種半導体メモリデバイスが用いられる。RAM640は、データなどを一時的に格納する内部バッファとして用いられ得る。CPU610は、記憶部620又はROM630に格納されたプログラムをRAM640に展開し、実行する。CPU610がプログラムを実行することで、例えば誘導制御、照明制御、及び虹彩撮像制御を含む各種制御が実行される。
【0050】
以上、本開示の実施形態を詳細に説明したが、本開示は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に対して変更や修正を加えたものも、本開示に含まれる。
【0051】
この出願は、2019年2月18日に出願された日本出願特願2019-026940を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0052】
100:全体撮像器
200:誘導器
300:照明器
401~404:虹彩撮像器
500:制御器
600:情報処理装置
図1
図2
図3
図4