(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-25
(45)【発行日】2025-04-02
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10D 30/01 20250101AFI20250326BHJP
H10D 8/01 20250101ALI20250326BHJP
H10D 8/50 20250101ALI20250326BHJP
H10D 12/00 20250101ALI20250326BHJP
H10D 30/66 20250101ALI20250326BHJP
H10D 62/10 20250101ALI20250326BHJP
H10D 84/80 20250101ALI20250326BHJP
【FI】
H10D30/01 301H
H10D8/01 A
H10D8/50 C
H10D8/50 F
H10D8/50 J
H10D12/00 101P
H10D12/00 103S
H10D30/01 301A
H10D30/66 101H
H10D30/66 101T
H10D30/66 102G
H10D30/66 103Q
H10D30/66 103S
H10D30/66 201A
H10D62/10 101D
H10D62/10 101V
H10D84/80 101A
H10D84/80 203D
(21)【出願番号】P 2023126254
(22)【出願日】2023-08-02
(62)【分割の表示】P 2022019310の分割
【原出願日】2019-03-18
【審査請求日】2023-08-29
(31)【優先権主張番号】P 2018051655
(32)【優先日】2018-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉村 尚
(72)【発明者】
【氏名】小野澤 勇一
(72)【発明者】
【氏名】瀧下 博
(72)【発明者】
【氏名】目黒 美佐稀
(72)【発明者】
【氏名】窪内 源宜
(72)【発明者】
【氏名】兒玉 奈緒子
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/155122(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/030444(WO,A1)
【文献】特開2015-153784(JP,A)
【文献】国際公開第2017/047285(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/146148(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/141141(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/055352(WO,A1)
【文献】特開2003-152198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10D 30/01
H10D 30/66
H10D 84/80
H10D 12/00
H10D 8/50
H10D 62/10
H10D 8/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型のドーパントを備えた半導体基板と、
前記半導体基板の一方の主面にエミッタ領域が設けられたトランジスタ部、および、前記一方の主面にアノード領域が設けられたダイオード部を備える活性部と、
前記半導体基板のドーパントの濃度よりも高いドーピング濃度を有し、前記半導体基板の深さ方向における水素濃度分布が第1位置においてピークを有する高濃度領域と、
前記高濃度領域よりも、前記半導体基板の一方の主面側に設けられ、前記第1位置よりも前記一方の主面側の第2位置において、結晶欠陥密度が最も高いセンターピークを有する、または、前記高濃度領域よりも、前記半導体基板の他方の主面側に設けられ、前記第1位置よりも前記他方の主面側の第2位置において、結晶欠陥密度が最も高いセンターピークを有する第1結晶欠陥領域と
を備え、
前記トランジスタ部は、前記他方の主面に第2導電型のコレクタ領域を有し、
前記ダイオード部は、前記他方の主面に第1導電型のカソード領域を有し、
前記トランジスタ部は、配列方向に配列され、且つ、延伸方向に延伸する複数のゲートトレンチ部またはダミートレンチ部を有し、
前記トランジスタ部は、前記配列方向において前記ゲートトレンチ部または前記ダミートレンチ部に接する第1メサ部を有し、
前記ダイオード部は、前記配列方向に複数の前記ダミートレンチ部を有し、
前記ダイオード部は、前記配列方向において前記ダミートレンチ部に接する第3メサ部を有し、
前記トランジスタ部は、前記配列方向において最も前記ダイオード部側に設けられた前記ゲートトレンチ部よりも前記ダイオード部側に、前記配列方向において1つ以上の前記ダミートレンチ部に挟まれた前記第1メサ部を有し、
前記第1結晶欠陥領域
および前記高濃度領域の前記配列方向における端部は、前記配列方向において最も前記ダイオード部側に設けられた前記ゲートトレンチ部よりも前記ダイオード部側に設けられた前記第1メサ部または前記ダミートレンチ部に位置
し、
前記高濃度領域の少なくとも一部は前記ダイオード部に設けられている
半導体装置。
【請求項2】
第1導電型のドーパントを備えた半導体基板と、
前記半導体基板の一方の主面にエミッタ領域が設けられたトランジスタ部、および、前記一方の主面にアノード領域が設けられたダイオード部を備える活性部と、
前記半導体基板のドーパントの濃度よりも高いドーピング濃度を有し、前記半導体基板の深さ方向における水素濃度分布が第1位置においてピークを有する高濃度領域と、
前記高濃度領域よりも、前記半導体基板の一方の主面側に設けられ、前記第1位置よりも前記一方の主面側の第2位置において、結晶欠陥密度が最も高いセンターピークを有する第1結晶欠陥領域と
を備え、
前記トランジスタ部は、前記半導体基板の他方の主面に第2導電型のコレクタ領域を有し、
前記ダイオード部は、前記他方の主面に第1導電型のカソード領域を有し、
前記トランジスタ部は、配列方向に配列され、且つ、延伸方向に延伸する複数のゲートトレンチ部またはダミートレンチ部を有し、
前記トランジスタ部は、前記配列方向において前記ゲートトレンチ部または前記ダミートレンチ部に接する第1メサ部を有し、
前記ダイオード部は、前記配列方向に複数の前記ダミートレンチ部を有し、
前記ダイオード部は、前記配列方向において前記ダミートレンチ部に接する第3メサ部を有し、
前記トランジスタ部は、前記配列方向において最も前記ダイオード部側に設けられた前記ゲートトレンチ部よりも前記ダイオード部側に、前記配列方向において1つ以上の前記ダミートレンチ部に挟まれた前記第1メサ部を有し、
前記第1結晶欠陥領域の前記配列方向における端部は、前記配列方向において最も前記ダイオード部側に設けられた前記ゲートトレンチ部よりも前記ダイオード部側に設けられた前記第1メサ部または前記ダミートレンチ部に位置し、
前記第1位置は、前記半導体基板の前記深さ方向における中央よりも前記一方の主面側に配置されている
半導体装置。
【請求項3】
第1導電型のドーパントを備えた半導体基板と、
前記半導体基板の一方の主面にエミッタ領域が設けられたトランジスタ部、および、前記一方の主面にアノード領域が設けられたダイオード部を備える活性部と、
前記半導体基板のドーパントの濃度よりも高いドーピング濃度を有し、前記半導体基板の深さ方向における水素濃度分布が第1位置においてピークを有する高濃度領域と、
前記高濃度領域よりも、前記半導体基板の一方の主面側に設けられ、前記第1位置よりも前記一方の主面側の第2位置において、結晶欠陥密度が最も高いセンターピークを有する第1結晶欠陥領域と
を備え、
前記トランジスタ部は、前記半導体基板の他方の主面に第2導電型のコレクタ領域を有し、
前記ダイオード部は、前記他方の主面に第1導電型のカソード領域を有し、
前記トランジスタ部は、配列方向に配列され、且つ、延伸方向に延伸する複数のゲートトレンチ部またはダミートレンチ部を有し、
前記トランジスタ部は、前記配列方向において前記ゲートトレンチ部または前記ダミートレンチ部に接する第1メサ部を有し、
前記ダイオード部は、前記配列方向に複数の前記ダミートレンチ部を有し、
前記ダイオード部は、前記配列方向において前記ダミートレンチ部に接する第3メサ部を有し、
前記トランジスタ部は、前記配列方向において最も前記ダイオード部側に設けられた前記ゲートトレンチ部よりも前記ダイオード部側に、前記配列方向において1つ以上の前記ダミートレンチ部に挟まれた前記第1メサ部を有し、
前記第1結晶欠陥領域の前記配列方向における端部は、前記配列方向において最も前記ダイオード部側に設けられた前記ゲートトレンチ部よりも前記ダイオード部側に設けられた前記第1メサ部または前記ダミートレンチ部に位置し、
前記第1位置と前記第2位置との距離は、20μm以下である
半導体装置。
【請求項4】
第1導電型のドーパントを備えた半導体基板と、
前記半導体基板の一方の主面にエミッタ領域が設けられたトランジスタ部、および、前記一方の主面にアノード領域が設けられたダイオード部を備える活性部と、
前記半導体基板のドーパントの濃度よりも高いドーピング濃度を有し、前記半導体基板の深さ方向における水素濃度分布が第1位置においてピークを有する高濃度領域と、
前記高濃度領域よりも、前記半導体基板の一方の主面側に設けられ、前記第1位置よりも前記一方の主面側の第2位置において、結晶欠陥密度が最も高いセンターピークを有する、または、前記高濃度領域よりも、前記半導体基板の他方の主面側に設けられ、前記第1位置よりも前記他方の主面側の第2位置において、結晶欠陥密度が最も高いセンターピークを有する第1結晶欠陥領域と
を備え、
前記トランジスタ部は、前記他方の主面に第2導電型のコレクタ領域を有し、
前記ダイオード部は、前記他方の主面に第1導電型のカソード領域を有し、
前記トランジスタ部は、配列方向に配列され、且つ、延伸方向に延伸する複数のゲートトレンチ部またはダミートレンチ部を有し、
前記トランジスタ部は、前記配列方向において前記ゲートトレンチ部または前記ダミートレンチ部に接する第1メサ部を有し、
前記ダイオード部は、前記配列方向に複数の前記ダミートレンチ部を有し、
前記ダイオード部は、前記配列方向において前記ダミートレンチ部に接する第3メサ部を有し、
前記トランジスタ部は、前記配列方向において最も前記ダイオード部側に設けられた前記ゲートトレンチ部よりも前記ダイオード部側に、前記配列方向において1つ以上の前記ダミートレンチ部に挟まれた前記第1メサ部を有し、
前記第1結晶欠陥領域の前記配列方向における端部は、前記配列方向において最も前記ダイオード部側に設けられた前記ゲートトレンチ部よりも前記ダイオード部側に設けられた前記第1メサ部または前記ダミートレンチ部に位置し、
前記半導体基板は、前記一方の主面から前記ゲートトレンチ部および前記ダミートレンチ部よりも深くまで設けられ、前記ゲートトレンチ部および前記ダミートレンチ部の前記延伸方向の端部を覆っている第2導電型のウェル領域を更に備え、
前記第1結晶欠陥領域は、前記延伸方向において、前記活性部から前記ウェル領域に向かって形成され、
前記第1結晶欠陥領域の前記延伸方向における端部は、前記ウェル領域の内部に位置している
半導体装置。
【請求項5】
第1導電型のドーパントを備えた半導体基板と、
前記半導体基板の一方の主面にエミッタ領域が設けられたトランジスタ部、および、前記一方の主面にアノード領域が設けられたダイオード部を備える活性部と、
前記半導体基板のドーパントの濃度よりも高いドーピング濃度を有し、前記半導体基板の深さ方向における水素濃度分布が第1位置においてピークを有する高濃度領域と、
前記高濃度領域よりも、前記半導体基板の一方の主面側に設けられ、前記第1位置よりも前記一方の主面側の第2位置において、結晶欠陥密度が最も高いセンターピークを有する第1結晶欠陥領域と
を備え、
前記トランジスタ部は、前記半導体基板の他方の主面に第2導電型のコレクタ領域を有し、
前記ダイオード部は、前記他方の主面に第1導電型のカソード領域を有し、
前記トランジスタ部は、配列方向に配列され、且つ、延伸方向に延伸する複数のゲートトレンチ部またはダミートレンチ部を有し、
前記トランジスタ部は、前記配列方向において前記ゲートトレンチ部または前記ダミートレンチ部に接する第1メサ部を有し、
前記ダイオード部は、前記配列方向に複数の前記ダミートレンチ部を有し、
前記ダイオード部は、前記配列方向において前記ダミートレンチ部に接する第3メサ部を有し、
前記トランジスタ部は、前記配列方向において最も前記ダイオード部側に設けられた前記ゲートトレンチ部よりも前記ダイオード部側に、前記配列方向において1つ以上の前記ダミートレンチ部に挟まれた前記第1メサ部を有し、
前記第1結晶欠陥領域の前記配列方向における端部は、前記配列方向において最も前記ダイオード部側に設けられた前記ゲートトレンチ部よりも前記ダイオード部側に設けられた前記第1メサ部または前記ダミートレンチ部に位置し、
前記半導体基板の前記深さ方向における前記水素濃度分布は、
前記第1位置よりも前記一方の主面側に設けられ、前記第1位置から前記一方の主面に向かって水素濃度が減少する第1の裾と、
前記第1位置よりも前記半導体基板の他方の主面側に設けられ、前記第1位置から前記他方の主面に向かって、前記第1の裾よりも急峻に前記水素濃度が減少する第2の裾と
を有する
半導体装置。
【請求項6】
第1導電型のドーパントを備えた半導体基板と、
前記半導体基板の一方の主面にエミッタ領域が設けられたトランジスタ部、および、前記一方の主面にアノード領域が設けられたダイオード部を備える活性部と、
前記半導体基板のドーパントの濃度よりも高いドーピング濃度を有し、前記半導体基板の深さ方向における水素濃度分布が第1位置においてピークを有する高濃度領域と、
前記高濃度領域よりも、前記半導体基板の他方の主面側に設けられ、前記第1位置よりも前記他方の主面側の第2位置において、結晶欠陥密度が最も高いセンターピークを有する第1結晶欠陥領域と
を備え、
前記トランジスタ部は、前記他方の主面に第2導電型のコレクタ領域を有し、
前記ダイオード部は、前記他方の主面に第1導電型のカソード領域を有し、
前記トランジスタ部は、配列方向に配列され、且つ、延伸方向に延伸する複数のゲートトレンチ部またはダミートレンチ部を有し、
前記トランジスタ部は、前記配列方向において前記ゲートトレンチ部または前記ダミートレンチ部に接する第1メサ部を有し、
前記ダイオード部は、前記配列方向に複数の前記ダミートレンチ部を有し、
前記ダイオード部は、前記配列方向において前記ダミートレンチ部に接する第3メサ部を有し、
前記トランジスタ部は、前記配列方向において最も前記ダイオード部側に設けられた前記ゲートトレンチ部よりも前記ダイオード部側に、前記配列方向において1つ以上の前記ダミートレンチ部に挟まれた前記第1メサ部を有し、
前記第1結晶欠陥領域の前記配列方向における端部は、前記配列方向において最も前記ダイオード部側に設けられた前記ゲートトレンチ部よりも前記ダイオード部側に設けられた前記第1メサ部または前記ダミートレンチ部に位置し、
前記半導体基板の前記深さ方向における前記水素濃度分布は、
前記第1位置よりも前記他方の主面側に設けられ、前記第1位置から前記他方の主面に向かって水素濃度が減少する第1の裾と、
前記第1位置よりも前記半導体基板の一方の主面側に設けられ、前記第1位置から前記一方の主面に向かって、前記第1の裾よりも急峻に前記水素濃度が減少する第2の裾と
を有する
半導体装置。
【請求項7】
前記第1メサ部は、前記一方の主面において前記エミッタ領域が設けられ、
前記トランジスタ部は、前記ダイオード部と隣り合う境界部を有し、
前記境界部は、第2導電型のベース領域が前記一方の主面に露出する第2メサ部を有する
請求項
1から6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記深さ方向における前記ドーピング濃度の分布は、前記第1位置において、水素濃度よりも低濃度の第1ドナーピークを有する
請求項1から
7のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1結晶欠陥領域の結晶欠陥密度分布は、前記センターピークから前記他方の主面に向かって、前記第1の裾の領域において減少する第3の裾を有する
請求項
5に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1結晶欠陥領域の結晶欠陥密度分布は、前記センターピークから前記一方の主面に向かって、前記第1の裾の領域において減少する第3の裾を有する
請求項6に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記トランジスタ部は、前記第1メサ部を複数有し、
少なくとも1つの前記第1メサ部は、前記第1メサ部に接する前記ダミートレンチ部に挟まれている
請求項1から
10のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記境界部の前記他方の主面には、前記トランジスタ部の前記コレクタ領域が延伸しており、
前記ダイオード部において前記境界部に最も近い1つ以上の第3メサ部の前記他方の主面には、前記カソード領域が設けられておらず、前記境界部の前記コレクタ領域が延伸している
請求項
7に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第1結晶欠陥領域の前記延伸方向における端部は、前記カソード領域の端部よりも前記活性部の外側に延伸している
請求項1から
12のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記半導体基板は、前記エミッタ領域よりもドーピング濃度が低い第1導電型のドリフト領域を有し、
前記第1結晶欠陥領域におけるキャリア濃度は、前記
ドリフト領域のドーピング濃度よりも低い
請求項1から
13のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記ゲートトレンチ部は、
導電材料で形成されるゲート導電部と、
前記ゲート導電部と前記半導体基板を絶縁するゲート絶縁膜を有し、
前記一方の主面に設けられ、前記ゲート導電部と接続されるゲートランナーおよびゲート金属層を更に備え、
上面視において、前記第1結晶欠陥領域の少なくとも一部は前記ゲートランナーまたは前記ゲート金属層と重なっている
請求項
13に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)等の半導体装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1 米国特許出願公開第2005/0116249号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
半導体装置においては、キャリアライフタイムを制御することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、第1導電型のドーパントを備えた半導体基板と、前記半導体基板の一方の主面にエミッタ領域が設けられたトランジスタ部、および、前記一方の主面にアノード領域が設けられたダイオード部を備える活性部と、前記半導体基板のドーパントの濃度よりも高いドーピング濃度を有し、前記半導体基板の深さ方向における水素濃度分布が第1位置においてピークを有する高濃度領域と、前記高濃度領域よりも、前記半導体基板の一方の主面側に設けられ、前記第1位置よりも前記一方の主面側の第2位置において、結晶欠陥密度が最も高いセンターピークを有する、または、前記高濃度領域よりも、前記半導体基板の他方の主面側に設けられ、前記第1位置よりも前記他方の主面側の第2位置において、結晶欠陥密度が最も高いセンターピークを有する第1結晶欠陥領域とを備える半導体装置を提供する。上記半導体装置において、前記トランジスタ部は、前記他方の主面に第2導電型のコレクタ領域を有してよい。上記いずれかの半導体装置において、前記ダイオード部は、前記他方の主面に第1導電型のカソード領域を有してよい。上記いずれかの半導体装置において、前記トランジスタ部は、配列方向に配列され、且つ、延伸方向に延伸する複数のゲートトレンチ部またはダミートレンチ部を有してよい。上記いずれかの半導体装置において、前記トランジスタ部は、前記配列方向において前記ゲートトレンチ部または前記ダミートレンチ部に接する第1メサ部を有してよい。上記いずれかの半導体装置において、前記ダイオード部は、前記配列方向に複数の前記ダミートレンチ部を有してよい。上記いずれかの半導体装置において、前記ダイオード部は、前記配列方向において前記ダミートレンチ部に接する第3メサ部を有してよい。上記いずれかの半導体装置において、前記トランジスタ部は、前記配列方向において最も前記ダイオード部側に設けられた前記ゲートトレンチ部よりも前記ダイオード部側に、前記配列方向において1つ以上の前記ダミートレンチ部に挟まれた前記第1メサ部を有してよい。上記いずれかの半導体装置において、前記第1結晶欠陥領域の前記配列方向における端部は、前記配列方向において最も前記ダイオード部側に設けられた前記ゲートトレンチ部よりも前記ダイオード部側に設けられた前記第1メサ部または前記ダミートレンチ部に位置してよい。
【0005】
上記いずれかの半導体装置において、前記第1メサ部は、前記一方の主面において前記エミッタ領域が設けられてよい。上記いずれかの半導体装置において、前記トランジスタ部は、前記ダイオード部と隣り合う境界部を有してよい。前記トランジスタ部は、前記ダイオード部と隣り合う境界部を有してよい。上記いずれかの半導体装置において、前記境界部は、第2導電型のベース領域が前記一方の主面に露出する第2メサ部を有してよい。
【0006】
上記いずれかの半導体装置において、前記第1結晶欠陥領域は、前記高濃度領域よりも前記一方の主面側に設けられ、前記第2位置は、前記第1位置よりも前記一方の主面側に設けられてよい。
【0007】
上記いずれかの半導体装置において、前記半導体基板の前記深さ方向における前記水素濃度分布は、前記第1位置よりも前記一方の主面側に設けられ、前記第1位置から前記一方の主面に向かって水素濃度が減少する第1の裾と、前記第1位置よりも前記半導体基板の他方の主面側に設けられ、前記第1位置から前記他方の主面に向かって、前記第1の裾よりも急峻に前記水素濃度が減少する第2の裾とを有してよい。
【0008】
上記いずれかの半導体装置において、前記第1結晶欠陥領域は、前記高濃度領域よりも前記他方の主面側に設けられ、前記第2位置は、前記第1位置よりも前記他方の主面側に設けられてよい。
【0009】
上記いずれかの半導体装置において、前記半導体基板の前記深さ方向における前記水素濃度分布は、前記第1位置よりも前記他方の主面側に設けられ、前記第1位置から前記他方の主面に向かって水素濃度が減少する第1の裾と、前記第1位置よりも前記半導体基板の一方の主面側に設けられ、前記第1位置から前記一方の主面に向かって、前記第1の裾よりも急峻に前記水素濃度が減少する第2の裾とを有してよい。
【0010】
上記いずれかの半導体装置において、前記深さ方向における前記ドーピング濃度の分布は、前記第1位置において、水素濃度よりも低濃度の第1ドナーピークを有してよい。
【0011】
上記いずれかの半導体装置において、前記第1結晶欠陥領域の結晶欠陥密度分布は、前記センターピークから前記他方の主面に向かって、前記第1の裾の領域において減少する第3の裾を有してよい。
【0012】
上記いずれかの半導体装置において、前記第1結晶欠陥領域の結晶欠陥密度分布は、前記センターピークから前記一方の主面に向かって、前記第1の裾の領域において減少する第3の裾を有してよい。
【0013】
上記いずれかの半導体装置において、前記トランジスタ部は、前記第1メサ部を複数有し、少なくとも1つの前記第1メサ部は、前記第1メサ部に接する前記ダミートレンチ部に挟まれていてよい。
【0014】
上記いずれかの半導体装置において、前記境界部の前記他方の主面には、前記トランジスタ部の前記コレクタ領域が延伸しており、前記ダイオード部において前記境界部に最も近い1つ以上の第3メサ部の前記他方の主面には、前記カソード領域が設けられておらず、前記境界部の前記コレクタ領域が延伸していてよい。
【0015】
上記いずれかの半導体装置において、前記第1結晶欠陥領域の前記延伸方向における端部は、前記カソード領域の端部よりも前記活性部の外側に延伸していてよい。
【0016】
上記いずれかの半導体装置において、前記第1結晶欠陥領域におけるキャリア濃度は、前記半導体基板のドーパントのドーピング濃度よりも低くてよい。
【0017】
上記いずれかの半導体装置は、前記一方の主面から前記ゲートトレンチ部および前記ダミートレンチ部よりも深くまで設けられ、前記ゲートトレンチ部および前記ダミートレンチ部の前記延伸方向の端部を覆っている第2導電型のウェル領域を更に備えてよい。上記いずれかの半導体装置において、前記第1結晶欠陥領域の前記延伸方向における端部は、前記ウェル領域の内部に位置していてよい。
【0018】
上記いずれかの半導体装置において、前記ゲートトレンチ部は、導電材料で形成されるゲート導電部と、前記ゲート導電部と前記半導体基板を絶縁するゲート絶縁膜を有し、前記一方の主面に設けられ、前記ゲート導電部と接続されるゲートランナーおよびゲート金属層を更に備え、上面視において、前記第1結晶欠陥領域の少なくとも一部は前記ゲートランナーまたは前記ゲート金属層と重なっていてよい。
【0019】
本発明の第2の態様においては、第1導電型のドーパントを備えた半導体基板と、前記半導体基板の一方の主面にエミッタ領域が設けられたトランジスタ部、または、前記一方の主面にアノード領域が設けられたダイオード部を備える活性部と、前記半導体基板のドーパントの濃度よりも高いドーピング濃度を有し、前記半導体基板の深さ方向における水素濃度分布が第1位置においてピークを有する高濃度領域と、前記高濃度領域よりも、前記半導体基板の他方の主面側に設けられ、前記第1位置よりも前記他方の主面側の第2位置において、結晶欠陥密度が最も高いセンターピークを有する第1結晶欠陥領域とを備える半導体装置を提供する。前記半導体基板の前記深さ方向における前記水素濃度分布は、前記第1位置よりも前記他方の主面側に設けられ、前記第1位置から前記他方の主面に向かって水素濃度が減少する第1の裾と、前記第1位置よりも前記半導体基板の一方の主面側に設けられ、前記第1位置から前記一方の主面に向かって、前記第1の裾よりも急峻に前記水素濃度が減少する第2の裾とを有してよい。前記深さ方向における前記ドーピング濃度の分布は、前記第1位置において、水素濃度よりも低濃度の第1ドナーピークを有してよい。
【0020】
前記第1位置は、前記半導体基板の前記深さ方向における中央よりも前記一方の主面側に配置されてよい。前記第1位置は、前記半導体基板の前記深さ方向における中央よりも前記他方の主面側に配置されてよい。前記第1結晶欠陥領域の結晶欠陥密度分布は、前記センターピークから前記一方の主面に向かって、前記第1の裾の領域において減少する第3の裾を有してよい。前記半導体基板は、前記第1ドナーピークを含んで設けられた第1導電型のドリフト領域と、前記半導体基板の前記一方の主面と前記ドリフト領域との間に設けられた第2導電型のアノード領域と、前記半導体基板の前記他方の主面と前記ドリフト領域との間に設けられた第1導電型のカソード領域と、を備えてよい。
【0021】
前記アノード領域の前記結晶欠陥密度は、前記ドリフト領域における前記結晶欠陥密度と同一であってよい。前記深さ方向におけるキャリア移動度分布は、前記第2位置においてキャリア移動度が最小であってよい。前記深さ方向におけるキャリア移動度分布は、前記第2位置においてキャリア移動度が最小であってよい。前記第2位置における前記キャリア移動度は、前記第1ドナーピークにおける前記キャリア移動度よりも小さく、且つ、前記第1ドナーピークよりも前記一方の主面側の前記ドリフト領域の前記キャリア移動度よりも小さくてよい。
【0022】
前記半導体基板は、前記第1ドナーピークを含んで設けられた第1導電型のドリフト領域を有してよい。前記高濃度領域よりも前記他方の主面側の前記ドリフト領域におけるドーピング濃度は、前記高濃度領域よりも前記一方の主面側のドリフト領域におけるドーピング濃度よりも高くてよい。前記第1結晶欠陥領域において、拡がり抵抗測定法で測定されるキャリア濃度は前記ドーピング濃度よりも小さくてよい。前記半導体基板は、前記ドリフト領域と、前記半導体基板の前記他方の主面との間に、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い第1導電型のバッファ領域を有してよい。前記バッファ領域の前記深さ方向のドーピング濃度分布は、一以上のドーピング濃度ピークを有してよい。
【0023】
前記バッファ領域の前記深さ方向のドーピング濃度分布は、複数のドーピング濃度ピークを有してよい。前記深さ方向に沿って前記バッファ領域内の隣り合う2つのドーピング濃度ピークの間に、前記結晶欠陥密度のセンターピークを有する第2結晶欠陥領域を備えてよい。前記バッファ領域のドーピング濃度分布は、複数のドーピング濃度ピークを有してよい。前記バッファ領域の複数のドーピング濃度ピークのうち最も前記他方の主面側に位置するドーピング濃度ピークよりも、前記半導体基板の他方の主面側に、結晶欠陥密度のセンターピークを有する第2結晶欠陥領域を備えてよい。前記第1位置における前記ドーピング濃度が、1×1014(/cm3)以上1×1015(/cm3)以下であってよい。
【0024】
半導体装置は、前記半導体基板の前記他方の主面と接する領域に第2導電型のコレクタ領域が設けられたトランジスタ部と、前記半導体基板の前記他方の主面と接する領域に、前記半導体基板のドーパントの濃度よりもドーピング濃度の高い第1導電型のカソード領域が設けられたダイオード部とを備えてよい。前記ダイオード部は、前記第1結晶欠陥領域を含んでよい。前記トランジスタ部は、前記第1結晶欠陥領域を含んでよい。前記トランジスタ部は、前記ダイオード部と接する領域に前記第1結晶欠陥領域を含んでよい。半導体装置は、前記半導体基板の外周端との間に配置されたエッジ終端構造部を備えてよい。前記エッジ終端構造部は、前記第1結晶欠陥領域を含んでよい。前記水素濃度分布の前記ピークと、前記第1結晶欠陥領域の前記センターピークとの距離は、20μm以下であってよい。
【0025】
本発明の第3の態様においては、第1導電型のドーパントを備えた半導体基板と、前記半導体基板の一方の主面にエミッタ領域が設けられたトランジスタ部、または、前記一方の主面にアノード領域が設けられたダイオード部を備える活性部とを備える半導体装置の製造方法を提供する。製造方法は、前記半導体基板の他方の主面から前記半導体基板の深さ方向に水素イオンを注入する第1ステップと、前記半導体基板を第1温度でアニールして、前記水素イオンの注入の最大水素濃度の位置に生成した結晶欠陥を低減させ、前記水素イオンの注入で形成された結晶欠陥の欠陥密度が最大値となる位置を、前記最大水素濃度の位置よりも、前記他方の主面側に形成するステップと、を備えてよい。
【0026】
製造方法は、前記半導体基板の他方の主面から前記半導体基板の深さ方向に水素イオンを注入する前記第1ステップの前に、前記半導体基板の他方の主面から前記半導体基板の深さ方向に水素イオンを注入する第2ステップと、前記水素イオンが前記他方の主面から注入された前記半導体基板を、前記第1温度よりも高い第2温度でアニールするステップと、を備えてよい。前記半導体基板の他方の主面から前記半導体基板の深さ方向に水素イオンを注入する前記第2ステップは、前記半導体基板の深さ方向に、前記水素イオンの濃度分布のピークの位置が異なるように、前記水素イオンを複数回注入するステップを含んでよい。製造方法は、前記第1温度でアニールするステップの後に、前記半導体基板をチップ化するステップと、チップ化された前記半導体基板を、回路基板に第3温度ではんだ付けするはんだステップとを備えてよい。前記第3温度は前記第1温度よりも低くてよい。
【0027】
前記水素イオンを注入する前記第1ステップにおいて、前記半導体基板の前記他方の主面からの飛程が8μm以上となる加速エネルギーで、前記水素イオンを注入してよい。前記水素イオンを注入する前記第1ステップにおける加速エネルギーが、1.0MeV以上であってよい。前記加速エネルギーが、1.5MeV以上であってよい。
【0028】
前記水素イオンを注入する前記第1ステップにおける加速エネルギーが、11.0MeV以下であってよい。前記加速エネルギーが、5.0MeV以下であってよい。前記加速エネルギーが、2.0MeV以下であってよい。前記水素イオンを注入する前記第1ステップにおける前記水素イオンのドーズ量が、1.0×1012/cm2以上であってよい。前記水素イオンを注入する前記第1ステップにおける前記水素イオンのドーズ量が、1.0×1015/cm2以下であってよい。
【0029】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1A】本発明の一つの実施形態に係る半導体装置100の一例を示す上面図である。
【
図1B】半導体装置100の部分的なYZ断面の一例を示す図である。
【
図2】比較例の半導体装置150の断面を示す図である。
【
図3】
図1Bに示す実施例に係る半導体装置100におけるa-a'線、および、比較例に係る半導体装置150におけるz-z'線に沿ったネットドーピング濃度(A)、水素濃度およびヘリウム濃度(B)、結晶欠陥密度(C)、キャリアライフタイム(D)キャリア移動度(E)およびキャリア濃度(F)の各分布図を示す。
【
図4】本実施形態に係る半導体装置100の断面の他の一例を示す図である。
【
図5】本実施形態に係る半導体装置100の断面の他の一例を示す図である。
【
図6】本実施形態に係る半導体装置100の断面の他の一例を示す図である。
【
図7A】
図5に示す実施例に係る半導体装置100におけるc-c'線に沿ったネットドーピング濃度(A)、水素濃度(B)、結晶欠陥密度(C)、キャリアライフタイム(D)、キャリア移動度(E)およびキャリア濃度(F)の各分布図を示す。
【
図7B】下面23側の結晶欠陥領域19-2を、ヘリウムイオンを注入して形成した場合の、ネットドーピング濃度(A)、水素濃度(B)、結晶欠陥密度(C)、キャリアライフタイム(D)、キャリア移動度(E)およびキャリア濃度(F)の各分布図を示す。
【
図7C】ネットドーピング濃度(A)、水素濃度(B)、結晶欠陥密度(C)、キャリアライフタイム(D)、キャリア移動度(E)およびキャリア濃度(F)の各分布図の他の例を示す。
【
図7D】ネットドーピング濃度(A)、水素濃度(B)、結晶欠陥密度(C)、キャリアライフタイム(D)、キャリア移動度(E)およびキャリア濃度(F)の各分布図の他の例を示す。
【
図8A】本実施形態に係る半導体装置200の上面の一例を部分的に示す図である。
【
図8B】半導体装置200の上面の他の例を部分的に示す図である。
【
図8C】半導体装置200の上面の他の例を部分的に示す図である。
【
図8D】半導体装置200の上面の他の例を部分的に示す図である。
【
図10A】本実施形態に係る半導体装置の製造方法の概要の一例を示す図である。
【
図10B】半導体装置の製造方法の他の例を示す図である。
【
図11】本実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す図である。
【
図12】
図11におけるh-h'線に沿った、水素濃度(B)、結晶欠陥密度(C)およびキャリア濃度(F)の各分布を示す図である。
【
図13】本実施形態に係る半導体装置の製造方法の他の一例を示す図である。
【
図14】本実施形態に係る半導体装置の製造方法の他の一例を示す図である。
【
図15】本実施形態に係る半導体装置の製造方法の概要の一例を示す図である。
【
図16】半導体基板10の上面21側から水素イオン(本例ではプロトン)を注入して、結晶欠陥領域19および高濃度領域26を形成するステップを説明する図である。
【
図17】半導体基板10の下面23側から水素イオン(本例ではプロトン)を注入して、結晶欠陥領域19および高濃度領域26を形成するステップを説明する図である。
【
図18】
図17に示す半導体装置100における、ネットドーピング濃度(A)、水素濃度(B)、結晶欠陥密度(C)、キャリアライフタイム(D)キャリア移動度(E)およびキャリア濃度(F)の深さ方向の分布図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0032】
本明細書においては半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は重力方向、または、半導体装置の実装時における基板等への取り付け方向に限定されない。
【0033】
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。本明細書では、半導体基板の上面と平行な面をXY面とし、半導体基板の上面と垂直な深さ方向をZ軸とする。
【0034】
各実施例においては、第1導電型をN型、第2導電型をP型とした例を示しているが、第1導電型をP型、第2導電型をN型としてもよい。この場合、各実施例における基板、層、領域等の導電型は、それぞれ逆の極性となる。また、本明細書においてP+型(またはN+型)と記載した場合、P型(またはN型)よりもドーピング濃度が高いことを意味し、P-型(またはN-型)と記載した場合、P型(またはN型)よりもドーピング濃度が低いことを意味する。
【0035】
本明細書においてドーピング濃度とは、ドナーまたはアクセプタ化した不純物の濃度を指す。本明細書において、ドナーおよびアクセプタの濃度差(すなわちネットドーピング濃度)をドーピング濃度とする場合がある。また、ドーピング領域におけるドーピング濃度分布のピーク値を、当該ドーピング領域におけるドーピング濃度とする場合がある。
【0036】
図1Aは、本発明の一つの実施形態に係る半導体装置100の一例を示す上面図である。半導体装置100は、半導体基板10を備える。半導体基板10は、シリコン基板であってよく、炭化シリコン基板であってよく、窒化ガリウム等の窒化物半導体基板等であってもよく、ダイヤモンド半導体基板であってよく、酸化ガリウム等の酸化物半導体基板であってもよい。本例の半導体基板10はシリコン基板である。
図1Aにおいては、半導体基板10の外周の端部を外周端140とする。
【0037】
半導体装置100は、活性部120およびエッジ終端構造部92を備える。活性部120は、半導体装置100をオン状態に制御した場合に半導体基板10の上面と下面との間で主電流が流れる領域である。即ち、半導体基板10の上面から下面、または下面から上面に、半導体基板10の内部を深さ方向に電流が流れる領域である。活性部120の上方には、後述する層間絶縁膜およびエミッタ電極等が設けられるが、
図1Aでは省略している。エミッタ電極により覆われる領域を活性部120としてよい。
【0038】
活性部120には、トランジスタ部70およびダイオード部80の少なくとも一方が設けられている。トランジスタ部70は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)等のトランジスタを含む。ダイオード部80は、還流ダイオード(FWD)等のダイオードを含む。
図1Aの例では、トランジスタ部70およびダイオード部80が、所定の配列方向(Y軸方向)に沿って並んで配置されている。トランジスタ部70およびダイオード部80は、配列方向に沿って交互に接して配置されてよい。活性部120において、Y軸方向における両端には、トランジスタ部70が設けられてよい。他の例では、活性部120にはダイオード部80が設けられ、トランジスタ部70が設けられていなくてもよい。
【0039】
それぞれのダイオード部80には、半導体基板10の下面に接する領域にN+型のカソード領域が設けられている。
図1Aにおいて、実線で示すダイオード部80は、半導体基板10の下面23にカソード領域82が設けられた領域である。本例の半導体装置100において、半導体基板10の下面に接する領域のうち、カソード領域82以外の領域には、コレクタ領域22が設けられる。
【0040】
ダイオード部80は、カソード領域82をZ軸方向に投影した領域である。トランジスタ部70は、半導体基板10の下面にコレクタ領域22が設けられ、且つ、半導体基板10の上面に、後述するエミッタ領域およびゲートトレンチ部を含む単位構造が周期的に設けられた領域である。カソード領域82を投影した領域を、X軸方向に活性部120の端部またはゲートランナー48まで伸ばした延長領域81(
図1Aにおいて、ダイオード部80を延長した破線で示される部分)も、ダイオード部80に含めてよい。
【0041】
本例の半導体装置100は、ゲート金属層50およびゲートランナー48を更に備えている。また半導体装置100は、ゲートパッド116およびエミッタパッド118等の各パッドを有してよい。ゲートパッド116は、ゲート金属層50およびゲートランナー48と電気的に接続されている。エミッタパッド118は、エミッタ電極52と電気的に接続されている。
【0042】
ゲート金属層50は、半導体基板10の上面視で活性部120を囲うように設けられてよい。ゲートパッド116およびエミッタパッド118は、ゲート金属層50に囲まれた領域内に配置されてよい。ゲート金属層50は、アルミニウム、または、アルミニウムシリコン合金等の金属材料で形成されてよい。ゲート金属層50は、層間絶縁膜により半導体基板10と絶縁されている。また、ゲート金属層50は、エミッタ電極とは分離して設けられている。ゲート金属層50は、ゲートパッド116に印加されたゲート電圧をトランジスタ部70に伝達する。
【0043】
ゲートランナー48は、ゲート金属層50と、トランジスタ部70とを接続する。ゲートランナー48は、不純物がドープされたポリシリコン等の半導体材料で形成されてよい。ゲートランナー48の一部は、活性部120の上方に設けられてよい。
図1Aに示すゲートランナー48は、活性部120をY軸方向に横切って設けられている。これにより、ゲート金属層50から離れた活性部120の内側においても、ゲート電圧の低下および遅延を抑制できる。ゲートランナー48の一部は、ゲート金属層50に沿って、活性部120を囲んで配置されていてもよい。ゲートランナー48は、活性部120の端部において、トランジスタ部70と接続されてよい。
【0044】
エッジ終端構造部92は、半導体基板10の上面において、活性部120と半導体基板10の外周端140との間に設けられる。本例では、エッジ終端構造部92と活性部120との間に、ゲート金属層50が配置されている。エッジ終端構造部92は、半導体基板10の上面において活性部120を囲むように環状に配置されてよい。本例のエッジ終端構造部92は、半導体基板10の外周端140に沿って配置されている。エッジ終端構造部92は、半導体基板10の上面側の電界集中を緩和する。エッジ終端構造部92は、例えばガードリング、フィールドプレート、リサーフおよびこれらを組み合わせた構造を有する。
【0045】
図1Bは、半導体装置100の部分的なYZ断面の一例を示す図である。本例では、
図1Aにおいて説明したダイオード部80の部分的なYZ断面を示している。上述したように、半導体装置100は、活性部120に
図1Bに示すダイオード部80が設けられ、トランジスタ部70が設けられていないチップであってよく、活性部120にダイオード部80およびトランジスタ部70が設けられたチップであってもよい。いずれのチップであっても、ダイオード部80は、
図1Bから
図7Dにおいて説明する半導体装置100と同一の構造を有してよい。また、ダイオード部80は、
図9Aから
図9C、
図16、
図17において説明する半導体装置100と同様に、ダミートレンチ部30を備えていてもよい。本例の
図1Bでは、ダミートレンチ部30は省略している。なお、ダイオード部80において、ダミートレンチ部30は無くてもよい。本例の半導体装置100は、半導体基板10、上面側電極53および下面側電極27を有する。上面側電極53は、半導体基板10の上面21に設けられる。下面側電極27は、半導体基板10の下面23に設けられる。上面側電極53および下面側電極27は、金属等の導電材料で形成される。上面21および下面23は、半導体基板10の主面である。
【0046】
半導体基板10は、第1導電型のドリフト領域18を有する。本例のドリフト領域18はN-型である。ドリフト領域18は、半導体基板10において、他のドーピング領域が設けられずに残存した領域であってよい。半導体基板10のドーパントは、リンまたはアンチモンなどN型のドナーであってよい。一例として、本例の半導体基板10のドーパントはリンである。ドーパントの化学濃度に対するドナー濃度の割合を、ドナー化率と称する。半導体基板10におけるドーパントのドナー化率は、ドーパントの化学濃度の90%以上、100%以下であってよい。本例のリンまたはアンチモンのドナー化率は、95%以上、100%以下であってよい。
【0047】
ドリフト領域18のドーピング濃度は、半導体基板10のドーピング濃度と一致してよい。ドリフト領域18のドーピング濃度が半導体基板10のドーピング濃度と一致する場合は、ドリフト領域18のドーパントは半導体基板10のドーパントと一致してよい。あるいは、ドリフト領域18のドーピング濃度は、半導体基板10のドーピング濃度よりも2倍以上高くてよい。この場合、ドリフト領域18のドーパントは半導体基板10のドーパントと異なってよい。一例として、ドリフト領域18のドーパントは水素であり、半導体基板10のドーパントはリンまたはアンチモンである。
【0048】
半導体基板10の単結晶ウェハーは、チョクラルスキー法(CZ法)、磁場印加チョクラルスキー法(MCZ法)、フロートゾーン法(FZ法)などで形成されたインゴットから製造してよい。一例として、半導体基板10の単結晶ウェハーは、磁場印加チョクラルスキー法(MCZ法)で製造されたウェハーである。
【0049】
ドリフト領域18の上方には、第1導電型のアノード領域14が設けられる。本例のアノード領域14は、一例としてP-型である。アノード領域14は、Z軸方向においてドリフト領域18と上面21との間に設けられてよい。本例においては、アノード領域14の上面は、上面21に接して設けられる。また、本例においては、アノード領域14は、ドリフト領域18に接して設けられる。
【0050】
ドリフト領域18の下方には、ドリフト領域18よりもドーピング濃度の高い第1導電型のカソード領域82が設けられる。本例のカソード領域82は、一例としてN+型である。カソード領域82は、下面23に接して設けられる。また、本例においては、カソード領域82とドリフト領域18は、接して設けられる。カソード領域82は、半導体基板10の下面23からリン等のイオンを注入してアニールすることで形成してよい。
【0051】
本例の半導体装置100は、半導体基板10の内部に高濃度領域26が設けられる。高濃度領域26は、水素イオンを上面21から注入して形成してよい。水素イオンはプロトン、デュトロン、トリトンであってよい。本例ではプロトンである。半導体基板10の深さ方向における水素の濃度分布は、半導体基板10の一方の主面(本例では上面21)から、半導体基板10の深さ方向に予め定められた距離Dps離間した第1位置Psに、濃度分布のピークを有する。
図1Bにおいて、第1位置Psにおける水素の濃度分布のピークを、「×」の記号(マーカー)にて示している。第1位置Psは、半導体基板の厚さTの1/2よりも上面21側に配置されてよい。
【0052】
半導体基板10の深さ方向における水素の濃度分布は、第1位置Psよりも上面21側に、当該ピークよりも濃度の小さい、濃度分布の裾を有する。なお、水素の濃度分布および濃度分布の裾については、後述する。
【0053】
高濃度領域26は、第1位置Psを含む範囲に設けられる。高濃度領域26は、水素ドナーを含む。高濃度領域26は、水素ドナーとして、水素(H)、酸素(O)、空孔(V)がそれぞれ1つ以上クラスター状に結合した、VOH複合欠陥を含んでよい。VOH複合欠陥はN型のドナーとなる場合がある。本明細書では、VOH複合欠陥を単に水素ドナーと称することがある。また、水素の化学濃度を、水素濃度と称することがある。本例の高濃度領域26は、一例としてN+型である。
【0054】
半導体基板10の酸素は、意図的に導入されてよく、意図せずに導入されてもよい。半導体基板10の酸素は、半導体基板10の主面に形成された酸化膜から導入されてもよい。半導体基板10の酸素の濃度は、1×1016(/cm3)以上1×1018(/cm3)以下であってよく、5×1016(/cm3)以上5×1017(/cm3)以下であってよい。
【0055】
水素ドナーは、半導体基板10の主面(本例では上面21)から水素イオンを注入したあとに形成される。水素イオンの注入後に、半導体基板10を熱的にアニールすることにより、水素ドナーのドナー化率を増加させてよい。水素イオンを注入することで、水素が最大濃度で存在する領域(すなわち水素イオンの飛程Rpに対応する領域)では水素ドナーが形成される。さらに半導体基板10をアニールすることにより、VOH複合欠陥の形成が促進され、水素ドナーの濃度が増加する。これにより、ドリフト領域18よりもドーピング濃度の高い高濃度領域26が形成される。高濃度領域26は、Z軸方向(半導体基板10の主面に垂直な深さ方向)においてドリフト領域18に挟まれるように形成されてよい。なお、高濃度領域26の形成方法については、後述する。
【0056】
第1位置Psは、高濃度領域26のドーピング濃度のZ軸方向におけるピーク位置であってよい。本明細書では、第1位置Psにおける水素ドナー濃度のピークを、ドナーピークと呼ぶことがある。高濃度領域26の第1位置Psにおけるドーピング濃度は、1×1013(/cm3)以上1×1017(/cm3)以下であってよく、1×1014(/cm3)以上1×1016(/cm3)以下であってよく、1×1014(/cm3)以上1×1015(/cm3)以下であってよい。
【0057】
高濃度領域26の上方には、結晶欠陥領域19-1が設けられる。結晶欠陥領域19-1は、上面21から水素イオンを注入することにより形成される結晶欠陥を含む領域であってよい。
図1Bにおいて、結晶欠陥領域19-1が設けられるZ軸方向の範囲を、両矢印にて示している。
【0058】
結晶欠陥領域19-1は、上面21からZ軸方向に距離Dks離間した位置Ksに、結晶欠陥密度のピークを有する。結晶欠陥領域19-1は、位置Ksから上面21まで設けられてよい。結晶欠陥は、キャリアの再結合中心(センター)となる欠陥であってよく、空孔(V)や複空孔(VV)を主体としてよい。結晶欠陥密度とは、再結合中心の密度であってよい。一般的にはドナーやアクセプタなどのドーパントも結晶欠陥に含まれるが、本明細書では、結晶欠陥を、再結合中心としてキャリアの再結合に主に機能する欠陥とする。
【0059】
本例において、結晶欠陥領域19-1における結晶欠陥密度のZ軸方向におけるピークを、センターピークと称する。センターピークのZ軸方向における位置を位置Ksとする。位置Ksは、上面21を基準として、高濃度領域26のドーピング濃度のピーク位置である第1位置Psよりも浅い位置に設けられる。即ち、距離Dksは距離Dpsよりも小さい。
図1Bにおいて、位置Ksにおける結晶欠陥密度のセンターピークを、「+」の記号(マーカー)で示している。
【0060】
本例の半導体装置100においては、水素イオン注入により生成した結晶欠陥でキャリアライフタイムを制御する。本例では、ライフタイムを制御(低下)させる領域は、水素イオンが停止して水素が最も多く存在する水素濃度の最大値の位置(飛程、Rp)とは、Z軸方向における位置が異なる領域に設けられる。本例でライフタイムを低下させる領域は、水素濃度の最大値の位置よりも上面21側に浅い領域、つまり水素イオンの通過領域である。水素イオンが半導体基板10を通過中に、半導体の原子(本例ではシリコン)に衝突してエネルギーが減衰し、結晶にダメージを与えることで、水素イオンの飛程Rpよりも浅い領域(通過領域)に結晶欠陥を多く形成する。これにより、水素イオンの通過領域に結晶欠陥領域を形成し、ライフタイムを制御する。
【0061】
一方、水素濃度が最大となる位置の近傍では、水素が多量に存在することで、空孔や複空孔に存在するダングリング・ボンドを、水素が終端する。これにより、水素濃度が最大となる位置の近傍では、再結合中心の密度は通過領域よりも極めて少なくなり、キャリアの再結合への寄与が、通過領域と比べてほとんど無いといえる。
【0062】
結晶欠陥領域19-1における結晶欠陥密度のセンターピークを、上面側ライフタイム制御領域74としてよい。上面側ライフタイム制御領域74は、半導体基板10の他の領域に比べて、結晶欠陥密度が高い。本例におけるライフタイム制御領域の形成範囲については、後述する。
【0063】
図2は、比較例の半導体装置150の断面を示す図である。比較例の半導体装置150は、
図1Bに示す本例の半導体装置100において、上面側ライフタイム制御領域74の代わりに上面側ライフタイム制御領域274が設けられる点と、高濃度領域26が設けられない点で、
図1Bに示す半導体装置100と異なる。上面側ライフタイム制御領域274は、ヘリウムを上面21から注入することにより形成される。
【0064】
比較例の半導体装置150において、上面側ライフタイム制御領域274は、Z軸方向における位置Ks'に設けられる。上面21から位置Ks'までのZ軸方向における距離Dks'は、
図1Bに示す半導体装置100における距離Dksよりも小さい。
【0065】
ヘリウムイオンと水素イオンを、半導体基板10の上面21から同じ加速エネルギーで注入すると、ヘリウムイオンよりも水素イオンの方が、上面21から半導体基板10の深さ方向に深くまで注入される。このため、距離Dksは距離Dks'よりも大きい。
【0066】
比較例の半導体装置150においては、半導体基板10の内部に注入されたヘリウムは、アニールしても、水素と比べてほとんどドナー化しない。このため、比較例の半導体装置150においては、高濃度領域26が設けられない。さらに、本例の半導体装置100と異なり、比較例の半導体装置150では、空孔や複空孔に存在するダングリング・ボンドを終端する水素が存在しない(または水素濃度が非常に低い)ので、再結合中心である結晶欠陥密度が最大となるピーク位置は、半導体基板10内でヘリウムが最も多く存在するヘリウム濃度のピーク位置と重なる。このため、キャリアの再結合が最も頻繁に行われる位置は、ヘリウム濃度のピーク位置である。
【0067】
図3は、
図1Bに示す実施例に係る半導体装置100におけるa-a'線、および、比較例に係る半導体装置150におけるz-z'線に沿ったネットドーピング濃度(A)、水素濃度およびヘリウム濃度(B)、結晶欠陥密度(C)、キャリアライフタイム(D)キャリア移動度(E)およびキャリア濃度(F)の各分布図を示す。上述したように、半導体装置100においては水素イオンを半導体基板10に注入することで上面側ライフタイム制御領域74を形成しており、半導体装置150においてはヘリウムイオンを半導体基板10に注入することで上面側ライフタイム制御領域274を形成している。ただしネットドーピング濃度(A)は、半導体装置100の例だけを示している。
図3においては、半導体装置100における各分布図を実線で示しており、半導体装置150における各分布図を破線で示している。
【0068】
分布図(A)、(B)、(C)、(D)、(F)の縦軸は対数(log)スケール表示であり、分布図(E)の縦軸は線形(linear)スケール表示である。
図3において縦軸が対数スケール表示の分布図は、横軸との交差する点での縦軸の値は0ではなく0より大きい所定の値である。各分布図において横軸は線形スケール表示である。
図3における各分布図の横軸は、半導体基板10の上面21からの深さを示している。
【0069】
分布図(A)は、電気的に活性化したドナーおよびアクセプタの正味のドーピング濃度分布(すなわち、ドナー濃度およびアクセプタ濃度の差分の分布)を示している。
図1Bに示したように、位置Psにおいてネットドーピング濃度はピーク(ドナーピーク)を有する。本例では、位置Psを含み、且つ、ドリフト領域18よりもネットドーピング濃度が高い領域を高濃度領域26としている。高濃度領域26は、ネットドーピング濃度が、位置Psにおけるネットドーピング濃度の半値より大きい領域であってもよい。高濃度領域26の位置Psにおけるネットドーピング濃度のピーク濃度を、Npと称する。
【0070】
分布図(A)においては、半導体基板10のドーピング濃度N0よりドーピング濃度が高いN型の領域を、N+型としている。本例では、高濃度領域26よりも深い位置に設けられたドリフト領域18のドーピング濃度が、ドーピング濃度N0と一致している。アノード領域14と高濃度領域26との間に設けられたドリフト領域18は、半導体基板10の上面21から注入された水素イオンが通過する。当該ドリフト領域18のドーピング濃度は、残留した水素ドナーにより、半導体基板10のドーピング濃度N0よりも高くなっていてもよい。当該ドリフト領域18のドーピング濃度の平均値は、半導体基板10のドーピング濃度N0の3倍以下であってよい。
【0071】
なお、アノード領域14とドリフト領域18の間に、ドリフト領域18よりも高濃度でN型の蓄積領域16を備えてよい。蓄積領域16は、ドナーのドーパントがドリフト領域18よりも高い濃度で蓄積した部分である。蓄積領域16は、深さ方向に2つ以上備えられてよい。2つ以上の蓄積領域16は、ドーピング濃度のピークが2つ以上であってよい。隣り合う2つのピークの間は、N型であってよい。2つ以上の蓄積領域16は、キンク状の形状であってもよい。
【0072】
分布図(B)は、注入された水素またはヘリウムの化学的な濃度を示している。半導体装置100においては水素濃度を示しており、半導体装置150においてはヘリウム濃度を示している。一例として原子の化学的な濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS)で測定できる。ヘリウムおよび水素の濃度は、注入されたヘリウムイオンおよび水素イオンが、アニールにより拡散した分布となっている。拡散の度合は、アニール時間、アニール温度等に応じて制御できる。水素濃度は、位置Psにおいてピークを有している。ヘリウム濃度は、位置Dks'においてピークを有している。
【0073】
水素濃度は水素の化学濃度であり、水素濃度が最も高いピークの位置Psでの濃度をHpと称する。水素濃度のピーク濃度Hpは、位置Psにおけるネットドーピング濃度のピーク濃度Npよりも高い。水素ドナーのドナー化率をαとすると、Np=αHpであり、αは0.001~0.5であってよい。すなわち、水素濃度は、ドナー濃度よりも1桁程度高い場合があり、2桁以上高い場合がある。
【0074】
上述したように水素の濃度分布は、ピークの位置Psから一方の主面(本例では上面21)に向かう裾Sを有する。裾Sは、ピーク位置Psより浅い領域における水素の濃度分布と、ピーク位置Psより深い領域における水素の濃度分布とを比べた場合に、変化が緩やかな方の濃度分布を指している。つまり、水素の濃度分布は、水素イオンが注入された方の主面に向かって裾Sを引いている。裾Sは、上面21まで達していてよく、上面21までは達していなくともよい。また、分布図(A)に示したように、高濃度領域26よりも浅い側のドリフト領域18の平均ドーピング濃度と、深い側のドリフト領域18の平均ドーピング濃度とを比較して、平均ドーピング濃度が高い側に、水素の濃度分布の裾Sが存在していると判別してもよい。
【0075】
分布図(C)は、半導体基板10に水素イオンまたはヘリウムイオンを注入した後に、所定の条件でアニールした後の結晶欠陥密度を示している。ヘリウムイオンを注入した半導体装置150においては、結晶欠陥密度の分布と、ヘリウム濃度の分布とは同様の形状を有する。例えば、ヘリウム濃度のピークの位置Dks'と、結晶欠陥密度のピークの位置Ks'は一致している。
【0076】
高濃度領域26のネットドーピング濃度が、位置Psよりも下面23側で半導体基板10のドーピング濃度N0と略一致する位置を位置Z0とする。位置Z0よりも下面23側において、結晶欠陥密度は十分小さい値Nr0となってよい。結晶欠陥密度が十分小さい値Nr0であるとは、キャリアのライフタイムが以下に述べるτ0よりも小さくならない程度に、結晶欠陥密度が低い値を有することである。一例として、空孔または複空孔の濃度をNr0とし、温度が300KにおいてNr0が1×1012atoms/cm3かそれより小さくてよく、1×1011atoms/cm3以下であってもよく、1×1010atoms/cm3以下であってもよい。アノード領域14と、ドリフト領域18または蓄積領域16とのpn接合の位置J0において、結晶欠陥密度が、Nr0より高くてよい。
【0077】
ヘリウムイオンを注入したことにより生じる空孔および複空孔等の結晶欠陥の密度は、ヘリウムイオンが最も多く注入される位置Dks'近傍で最も高くなる。上述したように、半導体装置150においては基板中に水素がほとんど存在しないので、アニールしても結晶欠陥はほとんど低減しない。このため、アニール前後で結晶欠陥密度の分布は維持される。
【0078】
これに対して、水素イオンを注入した半導体装置100においては、水素により結晶欠陥が終端されるので、結晶欠陥密度の分布と、水素濃度の分布とは、異なる形状を有する。例えば、水素濃度のピークの位置Psと、結晶欠陥密度のピークの位置Ksは一致していない。本例の結晶欠陥密度のピークの位置Ksは、水素濃度のピーク位置Psよりも、半導体基板10の上面21側に配置されている。結晶欠陥密度は、位置Ksよりも上面21側において単調に減少してよい。結晶欠陥密度は、位置Ksよりも下面23側において、上面21側よりも急峻に、単調に減少してよい。
【0079】
水素濃度のピーク位置Ps近傍では、多量の水素が空孔および複空孔等のダングリング・ボンドを終端する。このため、水素濃度のピーク位置Ps近傍における結晶欠陥密度は、結晶欠陥密度のピーク位置Ksにおける結晶欠陥密度よりも、非常に小さくなる。本明細書では、ピーク濃度(Hp)の1%より大きい濃度を示す分布の幅を1%全幅または、FW1%Mと称する。ピーク位置Psの近傍とは、ピーク位置Psを中心とした1%全幅の範囲内の領域を指してよい。結晶欠陥密度のピークの位置Ksは、ピーク位置Psを中心とした1%全幅の範囲よりも浅い位置に設けられてよい。
【0080】
ただし、結晶欠陥密度のピーク位置Ksと、水素濃度のピーク位置Psとの距離Dは、アニールにより水素が半導体基板10内を拡散する距離に応じて定まる。距離Dは、40μm以下であってよく、20μm以下であってよく、10μm以下であってもよい。距離Dは、1μm以上であってよく3μm以上であってよく、5μm以上であってもよい。距離Dは、水素濃度の1%全幅以上でよい。距離Dは、位置Psにおけるネットドーピング濃度の1%全幅以上でよい。この場合、ネットドーピング濃度の1%全幅は、0.01Npにおけるピークの幅である。距離Dの値の範囲は、前記の上限値および下限値の組み合わせであってよい。結晶欠陥密度分布は、一例として、陽電子消滅法により空孔・複空孔の密度分布を測定することで観測することができる。
【0081】
分布図(D)は、半導体基板10に水素イオンまたはヘリウムイオンを注入した後に、所定の条件でアニールした後のキャリアライフタイム分布を示している。ヘリウムイオンを注入した半導体装置150においては、キャリアライフタイム分布は、結晶欠陥密度分布の縦軸を反転させた形状になっている。例えば、キャリアライフタイムが最小値となる位置は、結晶欠陥密度のセンターピーク位置Ks'と一致している。
【0082】
水素イオンを注入した半導体装置100においても同様に、キャリアライフタイム分布は、結晶欠陥密度分布の縦軸を反転させた形状になっている。例えば、キャリアライフタイムが最小値となる位置は、結晶欠陥密度のセンターピーク位置Ksと一致している。なお、水素濃度のピーク位置Psを中心としたFW1%Mの範囲内の領域では、半導体装置100のキャリアライフタイムは、最大値τ0となっていてよい。最大値τ0は、水素濃度のピーク位置Psよりも下面23側のドリフト領域18におけるキャリアライフタイムであってよい。
【0083】
位置Z0よりも下面23側において、キャリアライフタイムが十分大きい値τ0であってよい。キャリアライフタイムが十分大きい値τ0であるとは、ライフタイムキラーまたは空孔や複空孔を主体とする欠陥を、半導体基板10に意図的に導入させていない場合のキャリアライフタイムであってよい。温度が300Kにおいて、τ0は10μs以上あってよく、30μs以上であってよい。一例として、τ0は10μsである。アノード領域14と、ドリフト領域18または蓄積領域16とのpn接合の位置J0において、キャリアライフタイムがτ0より小さくてよい。
【0084】
分布図(E)は、半導体基板10に水素イオンまたはヘリウムイオンを注入した後に、所定の条件でアニールした後の、キャリアの移動度の分布を示している。位置Z0よりも下面23側において、キャリアの移動度が、理想的な結晶構造の場合の移動度μ0であってよい。移動度μ0は、一例として温度が300Kのシリコンの場合、電子が1360cm2/(Vs)、正孔が495cm2/(Vs)である。アノード領域14と、ドリフト領域18または蓄積領域16とのpn接合の位置J0において、キャリアの移動度がμ0より小さくてよい。
【0085】
分布図(F)は、半導体基板10に水素イオンまたはヘリウムイオンを注入した後に、所定の条件でアニールした後の、キャリア濃度の分布を示している。キャリア濃度は、一例として拡がり抵抗測定法(SR測定法)で測定できる。
【0086】
SR測定法では、拡がり抵抗を比抵抗に換算して、比抵抗からキャリア濃度を算出する。比抵抗をρ(Ω・cm)、移動度をμ(cm2/(V・s))、電荷素量をq(C)、キャリア濃度をN(/cm3)とすると、N=1/(μqρ)であらわされる。
【0087】
SR測定法においては、キャリアの移動度として、半導体基板10の結晶状態が理想的な状態の値を用いる。しかしイオン注入により半導体基板10にダメージが残ると、半導体基板10の結晶状態が崩れディスオーダー状態になり、実際には移動度は低下している。本来は、SR測定における移動度として、低下した移動度を用いるべきであるが、低下した移動度の値を測定することは困難である。このため分布図(F)の例のSR測定においては、移動度として理想的な値を用いている。このため、上述したキャリア濃度の式の分母が大きくなり、キャリア濃度は低下する。つまり分布図(F)において、水素イオンが通過した領域(半導体基板10のアノード領域14の下端から高濃度領域26までの領域)においては、測定されたキャリア濃度が全体的に下がっている。ただし、水素イオンの飛程Rp近傍の高濃度領域26においては、水素濃度が高いので水素終端効果によりディスオーダー状態が緩和され、移動度が結晶状態の値に近づく。さらに水素ドナーも形成される。このため、半導体基板10のキャリア濃度N0よりもキャリア濃度が高くなっている。
【0088】
ヘリウムイオンを注入した半導体装置150においては、ヘリウム濃度のピーク位置Ks'近傍(すなわち、結晶欠陥密度のピーク位置近傍)の狭い領域において、キャリア濃度が小さくなっている。なお、半導体基板10にヘリウムイオンを注入して結晶欠陥を形成する場合、ヘリウム濃度のピーク位置、キャリア濃度が極小を示す位置、結晶欠陥密度のピーク位置およびキャリアライフタイムが極小を示す位置は、全て位置Ks'で一致する。
【0089】
半導体基板10に水素イオンを注入して結晶欠陥を形成する場合も、アニール前においては、水素濃度のピーク位置Psと、結晶欠陥密度のピーク位置とは一致する場合が多い。しかし、水素イオン注入後にアニールすると、水素濃度のピーク位置から半導体基板10の上面21に向けて水素が拡散して、空孔・複空孔に含まれるダングリング・ボンドを水素が終端する。このため、アニール後の結晶欠陥密度は、水素濃度のピーク位置Psの前後において減少する。このため、水素濃度がピークとなる位置Ps近傍のキャリアライフタイムは増加し、ほぼτ0になる。
【0090】
ライフタイム制御領域(本例では上面側ライフタイム制御領域74)は、分布図(B)のように水素濃度がピークから裾を示す主面側(本例では上面21側)において、分布図(F)のようにキャリア濃度が半導体基板10のキャリア濃度N0よりも低くなっている領域であってよい。また、分布図(C)のように空孔・複空孔の密度分布を測定し、ピーク位置Psよりも上面21側において、下面23側よりも空孔・複空孔密度が高い領域を、ライフタイム制御領域としてもよい。あるいは、空孔・複空孔密度分布が、最大値の位置Ksを挟んで最大値の1%となる2つの位置の幅(FW1%M)の領域を、ライフタイム制御領域としてもよい。さらにまた、簡単に、上述のように結晶欠陥密度がピークとなる位置Ksをライフタイム制御領域としてもよい。
【0091】
図4は、本実施形態に係る半導体装置100の断面の他の一例を示す図である。本例の半導体装置100は、水素イオンを下面23側から注入し、高濃度領域26が下面23側に設けられ、結晶欠陥領域19-2が下面23側に設けられる点で、
図1Bに示す半導体装置100と異なる。下面23側とは、半導体基板10のZ軸方向における中央よりも、下面23側の領域を指す。
【0092】
本例の半導体装置100において、半導体基板10の深さ方向における水素の濃度分布は、半導体基板10の一方の主面(本例では下面23)から、半導体基板10の深さ方向に予め定められた距離Dpb離間した第1位置Pbに、濃度分布のピークを有する。
図4において、第1位置Pbにおける水素の濃度分布のピークを、「×」の記号(マーカー)にて示している。第1位置Pbは、半導体基板の厚さTの1/2よりも下面23側に配置されてよい。
【0093】
半導体基板10の深さ方向における水素の濃度分布は、第1位置Pbよりも下面23側に、当該ピークよりも濃度の小さい、濃度分布の裾S(
図3参照)を有する。Z軸方向において、第1位置Pbは第1位置Psよりも下方に配置されてよい。
【0094】
本例の半導体装置100において、半導体基板10は、ドリフト領域18と、半導体基板10の下面23との間において、ドリフト領域18よりもドーピング濃度の高い高濃度領域26を有してよい。高濃度領域26は、第1位置Pbを含んで設けられる。本例の高濃度領域26は、下面23から水素イオンを注入した半導体基板10をアニールすることにより形成される領域であってよい。水素イオンを注入した後に半導体基板10をアニールすることにより、水素がドナー化し、ドリフト領域18よりもドーピング濃度の高い高濃度領域26が形成される。
【0095】
本例の半導体装置100は、高濃度領域26は、Z軸方向においてドリフト領域18に挟まれるように設けられる。高濃度領域26は、ドリフト領域18よりもドーピング濃度が高いので、アノード領域14の下面側から広がる空乏層がカソード領域82へ到達することを防ぐことができる。
【0096】
高濃度領域26の下方には、結晶欠陥領域19-2が設けられる。結晶欠陥領域19-2は、下面23から水素イオンを注入することにより形成される結晶欠陥を含む領域であってよい。
図4において、結晶欠陥領域19-2が設けられるZ軸方向の範囲を、両矢印にて示している。
【0097】
結晶欠陥領域19-2は、下面23からZ軸方向に距離Dkb離間した位置Kbに、結晶欠陥密度のセンターピークを有する。結晶欠陥領域19-2は、位置Kbから下面23まで設けられてよい。
【0098】
本例において、結晶欠陥領域19-2における結晶欠陥密度のZ軸方向におけるピークをセンターピークとする。センターピークのZ軸方向における位置を位置Kbとする。
図3において説明したように、水素イオンを注入して結晶欠陥を形成した場合、水素濃度のピーク位置に比べて、結晶欠陥密度のピーク位置は、水素イオンを注入した主面(本例では下面23)側に配置される。このため位置Kbは、下面23を基準として、高濃度領域26のドーピング濃度のピーク位置である第1位置Pbよりも浅い位置に設けられる。即ち、距離Dkbは距離Dpbよりも小さい。
図4において、位置Kbにおける結晶欠陥密度のセンターピークを、「+」の記号(マーカー)で示している。
【0099】
本例の半導体装置100においては、水素イオン注入により生成した結晶欠陥でキャリアライフタイムを制御する。本例の半導体装置100において、結晶欠陥領域19-2における結晶欠陥密度のセンターピークを、下面側ライフタイム制御領域78としてよい。下面側ライフタイム制御領域78は、半導体基板10の他の領域に比べて、結晶欠陥密度が高い。
【0100】
図5は、本実施形態に係る半導体装置100の断面の他の一例を示す図である。本例の半導体装置100においては、
図1Bに示した半導体装置100の構成に加えて、ドリフト領域18の下方に、ドリフト領域18よりもドーピング濃度の高い第1導電型のバッファ領域20が設けられる。本例のバッファ領域20は、一例としてN+型である。バッファ領域20は、Z軸方向においてドリフト領域18と下面23との間に設けられてよい。本例においては、バッファ領域20は、ドリフト領域18に接して設けられる。バッファ領域20は、アノード領域14の下面側から広がる空乏層がカソード領域82に到達することを防ぐ、フィールドストップ領域として機能することができる。
【0101】
本例の半導体装置100は、バッファ領域20において、水素の濃度分布が複数の位置に濃度分布のピークを有する。即ち、バッファ領域20の上面側から下面側に向かって、位置Pb4、位置Pb3、位置Pb2および位置Pb1の4箇所に、濃度分布のピークを有する。
図5において、Z軸方向の複数の位置における水素の濃度分布のピークを、「×」の記号(マーカー)にて示している。本例のバッファ領域20は、半導体基板10に下面23から位置Pb4、位置Pb3、位置Pb2および位置Pb1に水素イオンを注入した後に、半導体基板10をアニールすることにより形成される領域であってよい。
【0102】
本例の半導体装置100には、複数の結晶欠陥領域19が設けられる。半導体基板10の上面21側には結晶欠陥領域19-1が設けられ、下面23側には、結晶欠陥領域19-2が設けられる。
【0103】
結晶欠陥領域19-1は、上面21から水素イオンを注入することにより形成される結晶欠陥を含む領域である。結晶欠陥領域19-1は、
図1Bに示した結晶欠陥領域19-1と同様である。結晶欠陥領域19-2は、下面23から水素イオンまたはヘリウムイオンを注入することにより形成される結晶欠陥を含む領域である。結晶欠陥領域19-2は必須な構成ではなく、必要に応じて備えてもよい領域である。結晶欠陥領域19-2は、バッファ領域20の内部に設けられてよい。
図5において、結晶欠陥領域19-1が設けられるZ軸方向の範囲を、それぞれ両矢印にて示している。
【0104】
結晶欠陥領域19-2は、半導体基板10の深さ方向において、水素濃度の複数のピークの間に、結晶欠陥密度のセンターピークを有してよい。即ち、結晶欠陥領域19-2は、Z軸方向において、バッファ領域20の水素濃度のピーク位置である位置Pb1と位置Pb2との間、位置Pb2と位置Pb3との間、位置Pb3と位置Pb4との間のいずれかに、結晶欠陥密度のセンターピークを有してよい。また、結晶欠陥領域19-2の全体が、水素濃度のいずれかのピーク位置の間に設けられてよい。本例の結晶欠陥領域19-2は、位置Pb1と位置Pb2との間の位置Kbに、結晶欠陥密度のセンターピークを有する一例を示している。
図5において、位置Pb1と位置Pb2との間における結晶欠陥密度のセンターピークを、「+」の記号(マーカー)で示している。
【0105】
本例の半導体装置100においては、水素イオン注入により生成した結晶欠陥でキャリアライフタイムを制御する。本例の半導体装置100において、結晶欠陥領域19-2における結晶欠陥密度のセンターピークを、下面側ライフタイム制御領域78とする。
【0106】
本例の結晶欠陥領域19-2は、下面23から位置Pb2に水素イオンまたはヘリウムイオンを注入したときに形成された結晶欠陥を含む。
図3において説明したように、水素イオンを注入して結晶欠陥を形成した場合、水素濃度のピーク位置に比べて、結晶欠陥密度のピーク位置は、水素イオンを注入した主面側に配置される。
【0107】
図6は、本実施形態に係る半導体装置100の断面の他の一例を示す図である。
図6に示す半導体装置100は、下面側ライフタイム制御領域78が、Z軸方向において位置Pb1よりも下方に設けられる点で、
図5に示す半導体装置100と異なる。結晶欠陥領域19-2は、半導体基板10の下面23まで設けられてよい。
【0108】
下面側ライフタイム制御領域78のZ軸方向における位置は、Z軸方向における複数の位置への水素イオンの注入ステップ(工程)と、水素イオンを注入した半導体基板10のアニールステップの順番を調整することにより、調整することができる。水素イオンの注入ステップおよびアニールステップは、後述する。
【0109】
図7Aは、
図5に示す実施例に係る半導体装置100におけるc-c'線に沿ったネットドーピング濃度(A)、水素濃度(B)、結晶欠陥密度(C)、キャリアライフタイム(D)、キャリア移動度(E)およびキャリア濃度(F)の各分布図を示す。各分布図における縦軸および横軸は、
図3に示した対応する各分布図と同様である。
【0110】
分布図(A)は、電気的に活性化したドナーおよびアクセプタの正味のドーピング濃度分布を示している。
図5に示したように、バッファ領域20は、複数の位置Pb4、Pb3、Pb2、Pb1に、ドーピング濃度のピーク(ドナーピーク)を有する。また、高濃度領域26は、位置Psにドーピング濃度のピーク(ドナーピーク)を有する。それぞれのドナーピークの間のドーピング濃度は、半導体基板10のドーピング濃度N
0より高くてよく、同一の濃度であってもよい。本例では、位置Psと位置Pb4との間の少なくとも一部の領域のドーピング濃度が、ドーピング濃度N
0となっている。半導体基板10のドーパントは、リン等であってよい。ドーピング濃度N
0は、
図3の分布図(A)にて説明したN
0であってよい。
【0111】
分布図(A)においては、ドリフト領域18のドーピング濃度よりドーピング濃度が高いN型の領域を、N+型としている。位置Psと位置Pb4との間のドリフト領域18の少なくとも一部の領域のドーピング濃度は、位置Psよりも上面21側のドリフト領域18のドーピング濃度より低くてもよい。上面21側のドリフト領域18は、半導体基板10の上面21から注入された水素イオンが通過する。このため、当該ドリフト領域18のドーピング濃度は、残留した水素ドナーにより、半導体基板10のドーピング濃度N0よりも高くなっていてもよい。上面21側のドリフト領域18のドーピング濃度の平均値は、半導体基板10のドーピング濃度N0の3倍以下であってよい。
【0112】
位置Pb4、Pb3、Pb2、Pb1には、半導体基板10の下面23から水素イオンが注入されている。このため、位置Pb4よりも下面23側の領域のドーピング濃度は、全体として半導体基板10のドーピング濃度N0よりも高くなっていてよい。すなわち、2つの水素ドナーのピーク(本例では位置Psと位置Pb4それぞれの水素ドナーのピーク)に、深さ方向で挟まれた領域のドリフト領域18のドーピング濃度(本例ではドナー濃度)が最も低い。この2つの水素ドナーのピークに挟まれた領域のドーピング濃度(本例ではドナー濃度)は、半導体基板10のドーピング濃度N0であり、ドーピング濃度分布は略平坦であってよい。そして2つの水素ドナーのピークで、位置Psから上面21側、および位置Pb4から下面23側のドーピング濃度は、半導体基板10のドーピング濃度N0より高くなっていてよい。なお、本例におけるカソード領域82は、リンを注入して拡散することで形成されている。
【0113】
分布図(B)は、注入された水素の化学的な濃度を示している。水素濃度のそれぞれのピークは、水素イオンが注入された主面側に裾を有している。本例では、位置Psにおける水素濃度のピークは上面21側に裾Sを有している。即ち、本例の水素の濃度分布は、上面21側において、第1位置Psから上面21まで、緩やかに単調減少する。裾Sは、ドリフト領域18およびアノード領域14にわたって設けられてよい。
【0114】
本例の水素の濃度分布は、第1位置Psから下面23側においては、裾Sよりも濃度分布の変化が急峻な裾を有する。即ち、水素の分布は、第1位置Psよりも上面21側および下面23側において、非対称の分布を示す。
【0115】
また、位置Pb4、Pb3、Pb2、Pb1におけるそれぞれの水素濃度のピークは下面23側に裾S'を有している。位置Pb4、Pb3、Pb2、Pb1におけるそれぞれの水素濃度のピークは、上面21側に、裾S'よりも濃度分布の変化が急峻な裾を有する。即ち、位置Pb4、Pb3、Pb2、Pb1における水素濃度の各ピークは、対応する位置Pb4、Pb3、Pb2、Pb1よりも上面21側および下面23側において、非対称の分布を示す。
【0116】
なお、上面21側から水素イオンを注入した位置のうち最も下面23側の位置(本例では位置Ps)と、下面23側から水素イオンを注入した位置のうち最も上面21側の位置(本例では位置Pb4)との間において、水素濃度は最小値となってよい。位置Psに注入された水素が拡散する分布と、位置Pb4に注入された水素が拡散する分布との和が最小になる位置が、水素濃度が最小値となる位置である。あるいは、水素濃度が最小値となる位置は、2つの水素ドナーのピーク(本例では位置Psと位置Pb4)に挟まれ、かつドーピング濃度が半導体基板10のドーピング濃度N0を示す略平坦なドーピング濃度分布の領域にあってよい。
【0117】
分布図(C)は、半導体基板10に水素イオンを注入した後に、所定の条件でアニールした後の結晶欠陥密度を示している。位置Psよりも上面21側における結晶欠陥密度の分布は、
図3の分布図(C)に示した半導体装置100の結晶欠陥密度の分布と同様である。結晶欠陥密度Nr
0は、
図3の分布図(C)にて説明したNr
0であってよい。位置Psよりも上面21側における位置Ksにおいて、結晶欠陥密度はピークを有する。結晶欠陥密度は、位置Ksよりも上面21側において単調に減少してよい。結晶欠陥密度は、位置Ksよりも下面23側において、上面21側よりも急峻に、単調に減少してよい。
【0118】
水素濃度のピーク位置Ps近傍における結晶欠陥密度は、結晶欠陥密度のピーク位置Ksにおける結晶欠陥密度よりも、非常に小さくなる。結晶欠陥密度のピークの位置Ksは、ピーク位置Psを中心とした1%全幅の範囲よりも浅い位置に設けられてよい。結晶欠陥密度のピーク位置Ksと、水素濃度のピーク位置Psとの距離Dは、40nm以下であってよく、20nm以下であってもよい。距離Dは、5μm以上10μm以下であってもよい。距離Dは、水素濃度の1%全幅以上でよい。距離Dは、位置Psにおけるネットドーピング濃度の1%全幅以上でよい。この場合、ネットドーピング濃度の1%全幅は、0.01Npにおけるピークの幅である。
【0119】
本例では、位置Pb2と位置Pb1との間の位置Kbに、結晶欠陥密度のピークが配置されている。位置Kbにおける結晶欠陥密度のピークは、下面23から位置Pb2に水素イオンを注入したときに形成された結晶欠陥を主に含む。本例では、位置Pb4より下面23側には、位置Kb以外に結晶欠陥密度のピークが設けられていない。
【0120】
例えば、位置Pb4、Pb3、Pb1に水素イオンを注入して、半導体基板10を第1の条件でアニールする。これにより、位置Pb4、Pb3、Pb1に水素濃度分布のピークが形成される。その後、位置Psおよび位置Pb2に水素イオンを注入して、半導体基板10を第2の条件でアニールする。第2の条件は、第1の条件よりもアニール温度が低い。位置Pb4、Pb3、Pb1に水素イオンを注入したことにより生じた結晶欠陥は、比較的に高温のアニールにより、ほとんどが終端される。これに対して、位置Psおよび位置Pb2に水素イオンを注入したことにより生じた結晶欠陥は、比較的に低温のアニールにより、位置Psおよび位置Pb2の近傍における結晶欠陥が終端される。位置Pb1の近傍にも水素が多く存在するので、位置Pb2に水素イオンを注入したことにより生じた結晶欠陥は、位置Pb1の近傍においても終端される割合が多い。このため、結晶欠陥密度は、位置Pb2と位置Pb1との間においてピークを有する。
【0121】
本例では、位置Psにおける水素濃度のピークは、水素イオンが注入された側(本例では上面21側)に、他の水素濃度のピークが設けられていない。一方で、位置Pb2における水素濃度のピークは、水素イオンが注入された側(本例では下面23側)に、他の水素濃度のピーク(位置Pb1)が設けられている。位置Psよりも上面21側における結晶欠陥密度の積分値は、位置Pb2よりも下面23側における結晶欠陥密度の積分値よりも大きくてよい。
【0122】
分布図(D)は、半導体基板10に水素イオンを注入した後に、所定の条件でアニールした後のキャリアライフタイム分布を示している。キャリアライフタイム分布は、結晶欠陥密度分布の縦軸を反転させた形状になっている。キャリアライフタイムτ
0は、
図3の分布図(D)にて説明したτ
0であってよい。例えば、キャリアライフタイムが最小値となる位置は、結晶欠陥密度のセンターピーク位置Ksと一致している。また、キャリアライフタイムが極小値となる位置は、結晶欠陥密度のセンターピーク位置Kbと一致している。
図3の分布図(D)と同様に、水素濃度の各ピーク位置Ps、Pb4、Pb3、Pb2、Pb1を中心としたFW1%Mの範囲内の領域では、半導体装置100のキャリアライフタイムは、最大値τ
0となっていてよい。
【0123】
分布図(E)は、半導体基板10に水素イオンを注入した後に、所定の条件でアニールした後の、キャリアの移動度の分布を示している。キャリアの移動度μ
0は、
図3の分布図(E)にて説明したμ
0であってよい。例えば、キャリアの移動度が最小値となる位置は、結晶欠陥密度のセンターピーク位置Ksと一致している。また、キャリアの移動度が極小値となる位置は、結晶欠陥密度のセンターピーク位置Kbと一致している。
図3の分布図(E)と同様に、水素濃度の各ピーク位置Ps、Pb4、Pb3、Pb2、Pb1を中心としたFW1%Mの範囲内の領域では、半導体装置100のキャリアの移動度は、最大値μ
0となっていてよい。
【0124】
分布図(F)は、半導体基板10に水素イオンを注入した後に、所定の条件でアニールした後の、キャリア濃度の分布を示している。
図3における分布図(F)と同様に、水素イオンが通過した領域(半導体基板10のアノード領域14の下端から位置Ps近傍までの領域)においては、測定されたキャリア濃度が全体的に下がっている。ただし、位置Pb4よりも下面23側の領域は、全体的に水素濃度が高いので、キャリア濃度は基板濃度N
0よりも高い。
【0125】
本例の半導体装置100は、アニール後の結晶欠陥密度は、水素濃度のピーク位置Psの前後において減少する。このため、水素濃度がピークとなる位置Ps近傍のキャリアライフタイムは増加し、ほぼτ0になる。
【0126】
図7Bは、下面23側の結晶欠陥領域19-2を、ヘリウムイオンを注入して形成した場合の、ネットドーピング濃度(A)、水素濃度およびヘリウム濃度(B)、結晶欠陥密度(C)、キャリアライフタイム(D)、キャリア移動度(E)およびキャリア濃度(F)の各分布図を示す。下面23側の結晶欠陥領域19-2を、ヘリウムイオンを注入して形成した以外は、
図7Aの例と同様である。ネットドーピング濃度(A)およびキャリア濃度(F)の分布は、
図7Aの例と同様である。
【0127】
分布図(B)は、化学的な水素濃度およびヘリウム濃度の分布を示している。水素濃度の分布は、
図7Aにおける水素濃度の分布と同一である。ただし本例では、バッファ領域20の内部にヘリウムが分布している。本例においてヘリウム濃度のピークは、位置Pb1よりも下面23側に配置されている。
【0128】
ヘリウム濃度のピークは、隣り合う水素濃度のピークの間に位置してもよい。すなわち、ヘリウム濃度のピークは、Pb4とPb3の間に位置してよいし、Pb3とPb2の間に位置してもよいし、Pb2とPb1の間に位置してもよい。一例として、分布図(B)の破線で示すヘリウム濃度のピークは、Pb2とPb1の間に位置する。ヘリウムは、Pb1より下面23側にピークを有する実線分布と、Pb2とPb1の間にピークを有する破線分布のどちらか一方のみの分布で導入されてよいし、両方の分布で導入されてもよい。
【0129】
分布図(C)は、半導体基板10に水素イオンおよびヘリウムイオンを注入した後に、所定の条件でアニールした後の結晶欠陥密度を示している。水素イオンを注入して形成された結晶欠陥領域19-1における結晶欠陥密度分布は、
図7Aの分布図(C)における結晶欠陥領域19-1の結晶欠陥密度分布と同一である。また、分布図(C)において破線で示した結晶欠陥領域19-2aは、分布図(B)において実線で示した位置にヘリウムを注入した場合の結晶欠陥領域である。結晶欠陥領域19-2bは、分布図(B)において破線で示した位置にヘリウムを注入した場合の結晶欠陥領域である。なお分布図(D)、(E)においても、結晶欠陥領域19-2aに対応する分布を実線で示し、結晶欠陥領域19-2bに対応する分布を破線で示している。ヘリウムイオンを注入して形成された結晶欠陥領域19-2aおよび19-2bの結晶欠陥密度分布は、ヘリウム濃度の分布と同様の形状を有している。例えば、結晶欠陥密度のピーク位置と、ヘリウム濃度のピーク位置とは一致している。
【0130】
分布図(D)は、半導体基板10に水素イオンおよびヘリウムイオンを注入した後に、所定の条件でアニールした後のキャリアライフタイム分布を示している。キャリアライフタイム分布は、結晶欠陥密度分布の縦軸を反転させた形状になっている。
【0131】
分布図(E)は、半導体基板10に水素イオンおよびヘリウムイオンを注入した後に、所定の条件でアニールした後の、キャリアの移動度の分布を示している。
【0132】
半導体基板10において、バッファ領域20およびバッファ領域20よりも下面23側の領域には水素が多く存在する。このため、ダングリング・ボンドが終端されやすく、結晶欠陥領域19を形成しづらい場合がある。これに対して、結晶欠陥領域19-2を、水素イオンよりも質量の大きいヘリウムイオンを注入して形成することで、空孔、複空孔等の結晶欠陥を形成しやすくなる。これにより、アニールにより結晶欠陥が終端されても、バッファ領域20およびバッファ領域20よりも下面23側に、ある程度の密度の結晶欠陥を残すことができる。バッファ領域20等に結晶欠陥領域19を設けることで、例えば半導体装置100のターンオフまたは逆回復等のスイッチングの終了期間において、テール電流を精度よく制御できる。
【0133】
図7Cは、ネットドーピング濃度(A)、水素濃度(B)、結晶欠陥密度(C)、キャリアライフタイム(D)、キャリア移動度(E)およびキャリア濃度(F)の各分布図の他の例を示す。各分布図における縦軸および横軸は、
図3に示した対応する各分布図と同様である。本例においては、アノード領域14(後述するトランジスタ部70においてはチャネルが形成されるベース領域17)および結晶欠陥領域19-1における、結晶欠陥密度(C)、キャリアライフタイム(D)、キャリア移動度(E)およびキャリア濃度(F)が、
図7Aおよび
図7Bの例と異なる。他の位置における各分布は、
図7Aおよび
図7Bのいずれかの例と同一である。
【0134】
本例においては、結晶欠陥密度(C)、キャリアライフタイム(D)、キャリア移動度(E)およびキャリア濃度(F)の各分布は、結晶欠陥領域19-1においてピークを有する。結晶欠陥密度分布のピークは、センターピーク位置Ksよりも上面21側に裾SV1を有し、下面23側に、裾SV1より急峻な裾SV2を有する。キャリアライフタイム分布のピークは、センターピーク位置Ksよりも上面21側に裾Sτ1を有し、下面23側に、裾Sτ1より急峻な裾Sτ2を有する。キャリア移動度分布のピークは、センターピーク位置Ksよりも上面21側に裾Sμ1を有し、下面23側に、裾Sμ1より急峻な裾Sμ2を有する。キャリア濃度分布のピークは、センターピーク位置Ksよりも上面21側に裾SN1を有し、下面23側に、裾SN1より急峻な裾SN2を有する。
【0135】
それぞれの裾は、各分布において、ピークにおける頂点から、所定の基準値と同一になるまでの部分であってよい。基準値は、結晶欠陥密度においてはドリフト領域18における最小値Nr0、キャリアライフタイムにおいてはドリフト領域における最大値τ0、キャリア移動度においてはドリフト領域18における最大値μ0、キャリア濃度においては水素濃度のピーク位置Psからバッファ領域20までの間における最小値N0を用いてよい。本明細書において同一とは10%以内の誤差を有する場合を含めてよい。
【0136】
本例の裾SV1、Sτ1、Sμ1およびSN1は、いずれもアノード領域14(トランジスタ部70においてはベース領域17)に到達しない。つまりアノード領域14およびベース領域17の、結晶欠陥密度、キャリアライフタイム、キャリア移動度およびキャリア濃度は、上述した基準値Nr0、τ0、μ0、N0と同一である。これにより、結晶欠陥を形成したことによるアノード領域14およびベース領域17への影響を低減できる。特に、ゲート閾値の変動が抑えられる。ゲート閾値は、ベース領域17のピーク濃度の位置で決まる。ベース領域17のピーク位置において結晶欠陥密度がNr0よりも高いと、ゲート閾値に影響する界面準位等が増加し、ゲート閾値が変化する場合がある。ベース領域17のピーク位置において結晶欠陥密度をNr0にすることで、ゲート閾値への影響を極小に抑えることができる。なお、例えば水素イオンの注入位置、水素イオン注入後のアニール条件を調整することで、各裾がアノード領域14およびベース領域17に到達しないように制御できる。
【0137】
図7Dは、ネットドーピング濃度(A)、水素濃度(B)、結晶欠陥密度(C)、キャリアライフタイム(D)、キャリア移動度(E)およびキャリア濃度(F)の各分布図の他の例を示す。各分布図における縦軸および横軸は、
図3に示した対応する各分布図と同様である。本例においては、アノード領域14(トランジスタ部70においてはベース領域17)および結晶欠陥領域19-1における、結晶欠陥密度(C)、キャリアライフタイム(D)、キャリア移動度(E)およびキャリア濃度(F)が、
図7Cの例と異なる。他の位置における各分布は、
図7Cの例と同一である。
【0138】
本例においては、裾SV1、Sτ1、Sμ1およびSN1の少なくとも一つが、アノード領域14またはベース領域17に到達している。ただし、アノード領域14およびベース領域17における結晶欠陥密度、キャリアライフタイム、キャリア移動度およびキャリア濃度は、上述した基準値Nr0、τ0、μ0、N0に十分近い。
【0139】
本例では、センターピーク位置Ksにおける結晶欠陥密度、キャリアライフタイム、キャリア移動度およびキャリア濃度を、Nrp、τp、μp、Npとする。また、アノード領域14またはベース領域17における結晶欠陥密度、キャリアライフタイム、キャリア移動度およびキャリア濃度を、Nrb、τb、μb、Nbとする。結晶欠陥密度Nrb、キャリアライフタイムτb、キャリア移動度μbおよびキャリア濃度Nbは、アノード領域14またはベース領域17と、ドリフト領域18等のN型領域とのPN接合の位置おける値を用いてよい。なおキャリア濃度Nbについては、当該PN接合と接するN型領域におけるキャリア濃度の極大値を用いてよい。
【0140】
結晶欠陥密度Nrb、キャリアライフタイムτb、キャリア移動度μbおよびキャリア濃度Nbは、センターピーク位置Ksにおける結晶欠陥密度Nrp、キャリアライフタイムτp、キャリア移動度μpおよびキャリア濃度Npの半分以下であってよく、1/4以下であってよく、1/10以下であってよく、1/100以下であってもよい。これにより、結晶欠陥を形成したことによるアノード領域14およびベース領域17への影響を低減できる。
【0141】
図8Aは、本実施形態に係る半導体装置200の上面の一例を部分的に示す図である。本例の半導体装置200は、トランジスタ部70およびトランジスタ部70に隣接して設けられたダイオード部80を備える半導体チップである。半導体装置200の上面は、
図1Aに示した半導体装置100の上面と同一であってよい。トランジスタ部70は、IGBT等のトランジスタを含む。境界部90は、トランジスタ部70のうちダイオード部80に隣接する領域である。ダイオード部80は、半導体基板10の上面においてFWD(Free Wheel Diode)等のダイオードを含む。
図8Aにおいては、チップ端部周辺のチップ上面を示しており、他の領域を省略している。
【0142】
また、
図8Aにおいては、半導体装置200における半導体基板10の活性領域を示すが、半導体装置200は、活性領域を囲んでエッジ終端構造部を有してよい。活性領域は、半導体装置200をオン状態に制御した場合に電流が流れる領域を指す。エッジ終端構造部は、半導体基板10の上面21側の電界集中を緩和する。エッジ終端構造部は、例えばガードリング、フィールドプレート、リサーフおよびこれらを組み合わせた構造を有する。
【0143】
本例の半導体装置200は、半導体基板10の内部に設けられ、且つ、半導体基板10の上面に露出するゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12、ベース領域17およびコンタクト領域15を備える。また、本例の半導体装置200は、半導体基板10の上面21の上方に設けられたエミッタ電極52およびゲート金属層50を備える。エミッタ電極52およびゲート金属層50は、互いに分離して設けられる。
【0144】
エミッタ電極52およびゲート金属層50と、半導体基板10の上面21との間には層間絶縁膜が設けられるが、
図8Aでは省略している。本例の層間絶縁膜には、コンタクトホール56、コンタクトホール49およびコンタクトホール54が、当該層間絶縁膜を貫通して設けられる。
【0145】
また、エミッタ電極52は、コンタクトホール56を通って、ダミートレンチ部30内のダミー導電部と接続される。エミッタ電極52とダミー導電部との間には、不純物がドープされたポリシリコン等の、導電性を有する材料で形成された接続部25が設けられてよい。接続部25と半導体基板10の上面21との間には、酸化膜等の絶縁膜が設けられる。
【0146】
ゲート金属層50は、コンタクトホール49を通って、ゲートランナー48と接触する。ゲートランナー48は、不純物がドープされたポリシリコン等で形成される。ゲートランナー48は、半導体基板10の上面21において、ゲートトレンチ部40内のゲート導電部と接続される。ゲートランナー48は、ダミートレンチ部30内のダミー導電部とは接続されない。
【0147】
本例のゲートランナー48は、コンタクトホール49の下方から、ゲートトレンチ部40の先端部まで形成される。ゲートランナー48と半導体基板10の上面21との間には、酸化膜等の絶縁膜が形成される。
【0148】
ゲートトレンチ部40の先端部において、ゲート導電部は半導体基板10の上面21に露出している。ゲートトレンチ部40は、ゲート導電部の当該露出した部分にて、ゲートランナー48と接触する。
【0149】
エミッタ電極52およびゲート金属層50は、金属を含む材料で形成される。エミッタ電極52の少なくとも一部の領域は、アルミニウムまたはアルミニウム‐シリコン合金で形成されてよい。
【0150】
ゲート金属層50の少なくとも一部の領域は、アルミニウムまたはアルミニウム‐シリコン合金で形成されてよい。エミッタ電極52およびゲート金属層50は、アルミニウム等で形成された領域の下層にチタンやチタン化合物等で形成されたバリアメタルを有してよい。また、エミッタ電極52およびゲート金属層50は、コンタクトホール内においてタングステン等で形成されたプラグを有してもよい。
【0151】
1つ以上のゲートトレンチ部40および1つ以上のダミートレンチ部30は、所定の配列方向(本例ではY軸方向)に沿って所定の間隔で配列される。本例のゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面21に平行であって配列方向と垂直な延伸方向(本例ではX軸方向)に沿って延伸する2つの延伸部分39と、2つの延伸部分39を接続する接続部分41を有してよい。接続部分41の少なくとも一部は、曲線状に形成されることが好ましい。ゲートトレンチ部40の2つの延伸部分39の端部を接続することで、延伸部分39の端部における電界集中を緩和することができる。本明細書では、ゲートトレンチ部40のそれぞれの延伸部分39を、一つのゲートトレンチ部40として扱う場合がある。ゲートランナー48は、ゲートトレンチ部40の接続部分41において、ゲート導電部と接続してよい。
【0152】
本例のダミートレンチ部30は、ゲートトレンチ部40と同様に、半導体基板10の上面21においてU字形状を有してよい。即ち、本例のダミートレンチ部30は、延伸方向に沿って延伸する2つの延伸部分29と、2つの延伸部分29を接続する接続部分31を有してよい。
【0153】
エミッタ電極52は、ゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12、ベース領域17およびコンタクト領域15の上方に形成される。ウェル領域11は第2導電型である。ウェル領域11は、一例としてP+型である。ウェル領域11は、ゲート金属層50が設けられる側の活性領域の端部から、予め定められた範囲で形成される。ウェル領域11の拡散深さは、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の深さよりも深くてよい。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の、ゲート金属層50側の一部の領域は、ウェル領域11に形成される。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の延伸方向の端の底は、ウェル領域11に覆われてよい。
【0154】
半導体基板10の上面21と平行な面内において、Y軸方向には各トレンチ部に隣接してメサ部が設けられる。メサ部とは、隣り合う2つのトレンチ部に挟まれた半導体基板の部分である。メサ部は、半導体基板10の上面21から、各トレンチ部の最も深い底部の深さまでの部分であってよい。隣り合う2つのトレンチ部の延伸部分に挟まれる領域をメサ部としてよい。
【0155】
トランジスタ部70においては、各トレンチ部に隣接して第1メサ部60が設けられる。トランジスタ部70におけるダイオード部80との境界である境界部90においては、隣り合うダミートレンチ部30に挟まれた領域に第2メサ部62が設けられる。ダイオード部80においては、隣り合うダミートレンチ部30に挟まれた領域に第3メサ部64が設けられる。
【0156】
第1メサ部60、第2メサ部62および第3メサ部64のX軸方向における両端部には、一例として、半導体基板10の上面21に露出して、第2導電型のベース領域17が設けられる。本例のベース領域17は、一例としてP-型である。なお、
図8Aは、当該ベース領域17のX軸方向の一方の端部のみを示している。
【0157】
第1メサ部60の上面には、ゲートトレンチ部40と接してエミッタ領域12が設けられる。エミッタ領域12は、第1メサ部60を挟んでX軸方向に延伸する2本のトレンチ部の一方から他方まで、Y軸方向に設けられてよい。エミッタ領域12は、コンタクトホール54の下方にも設けられている。
【0158】
エミッタ領域12は、ダミートレンチ部30と接してよく、接しなくてもよい。本例においては、エミッタ領域12がダミートレンチ部30と接して設けられる。本例のエミッタ領域12は第1導電型である。本例のエミッタ領域12は、一例としてN+型である。
【0159】
第1メサ部60の上面には、ベース領域17よりもドーピング濃度の高い第2導電型のコンタクト領域15が設けられる。本例のコンタクト領域15は、一例としてP+型である。第1メサ部60において、エミッタ領域12およびコンタクト領域15は、ゲートトレンチ部40の延伸方向に交互に設けられてよい。コンタクト領域15は、第1メサ部60を挟んでX軸方向に延伸する2本のトレンチ部の一方から他方まで、Y軸方向に設けられてよい。コンタクト領域15は、コンタクトホール54の下方にも設けられている。
【0160】
コンタクト領域15は、ゲートトレンチ部40と接してよく、接しなくてもよい。また、コンタクト領域15は、ダミートレンチ部30と接してよく、接しなくてもよい。本例においては、コンタクト領域15が、ダミートレンチ部30およびゲートトレンチ部40と接して設けられる。
【0161】
第2メサ部62の上面には、コンタクト領域15が設けられる。一つの第2メサ部62の上面に設けられるコンタクト領域15の面積は、一つの第1メサ部60の上面に設けられるコンタクト領域15の面積よりも大きい。一つの第2メサ部62の上面に設けられるコンタクト領域15の面積は、一つの第3メサ部64の上面に設けられるコンタクト領域15の面積よりも大きくてよい。第2メサ部62において、コンタクト領域15はコンタクトホール54の下方にも設けられている。
【0162】
第2メサ部62の上面におけるコンタクト領域15は、第2メサ部62のX軸方向における両端部に設けられるベース領域17に挟まれる領域全体に設けられてよい。第2メサ部62では、第1メサ部60と比べてターンオフ時のキャリアの引き抜きを効果的に行う。
【0163】
第3メサ部64の上面には、X軸方向における両端部にコンタクト領域15が設けられる。また、第3メサ部64の上面において、第3メサ部64のX軸方向における両端部に設けられるコンタクト領域15に挟まれる領域には、ベース領域17が設けられる。ベース領域17は、X軸方向において当該コンタクト領域15に挟まれる領域全体に設けられてよい。第3メサ部64において、ベース領域17は、コンタクトホール54の下方にも設けられている。コンタクト領域15は、コンタクトホール54の下方にも設けられてよい。
【0164】
第3メサ部64には、コンタクト領域15およびベース領域17が、第3メサ部64を挟む一方のダミートレンチ部30から、他方のダミートレンチ部30に渡って形成される。即ち、半導体基板の上面において、第3メサ部64のY軸方向の幅と、第3メサ部64に設けられたコンタクト領域15またはベース領域17のY軸方向の幅は、等しい。
【0165】
第3メサ部64には、エミッタ領域12が形成されなくてよく、形成されてもよい。本例においては、第3メサ部64にエミッタ領域12が形成されない。
【0166】
本例の半導体装置200は、ダイオード部80において、ダミートレンチ部30が設けられる。隣接するダミートレンチ部30のそれぞれの直線状の延伸部分29は、接続部分31で接続されてよい。第3メサ部64は、それぞれのダミートレンチ部30に挟まれる領域である。
【0167】
ダイオード部80は、半導体基板10の下面23側において、第1導電型のカソード領域82を有する。本例のカソード領域82は、一例としてN+型である。
図8Aに、半導体基板10の上面視でカソード領域82が設けられる領域を一点鎖線部で示している。ダイオード部80は、カソード領域82を半導体基板10の上面21に投影した領域であってよい。また、カソード領域82が部分的に設けられた第3メサ部64全体と、当該第3メサ部64に隣接するダミートレンチ部30とをダイオード部80に含めてもよい。カソード領域82を半導体基板10の上面21に投影した領域は、コンタクト領域15からX軸方向正側に離れていてよい。
【0168】
半導体基板10の下面23においてカソード領域82が形成されていない領域には、第2導電型のコレクタ領域が形成されてよい。本例のコレクタ領域は、一例としてP+型である。ダイオード部80におけるコンタクトホール54のX軸方向負側の端部を半導体基板10の下面23に投影した位置には、コレクタ領域が形成されてよい。
【0169】
境界部90を除くトランジスタ部70において、コンタクトホール54は、コンタクト領域15およびエミッタ領域12の各領域の上方に形成される。境界部90に隣接する第1メサ部60を除く第1メサ部60において、コンタクトホール54は、
図8Aの上面視で、X軸方向に延伸するゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30と重ならないように設けられてよい。コンタクトホール54のY軸方向の幅は、エミッタ領域12およびコンタクト領域15のY軸方向の幅よりも小さくてよい。
【0170】
境界部90を除くトランジスタ部70において、コンタクトホール54は、
図8Aに示す半導体基板10の上面視で、第1メサ部60のX軸方向最も負側に設けられるコンタクト領域15の上方から、X軸方向の最も正側に設けられるコンタクト領域15の上方まで、連続して設けられてよい。コンタクトホール54は、
図8Aに示す半導体基板10の上面視で、第1メサ部60のX軸方向最も負側に設けられるコンタクト領域15の少なくとも一部と重なるように設けられてよい。コンタクトホール54は、
図8Aに示す半導体基板10の上面視で、第1メサ部60のX軸方向最も正側に設けられるコンタクト領域15の少なくとも一部と重なるように設けられてよい。
【0171】
境界部90において、コンタクトホール54は、コンタクト領域15の上方に形成される。第2メサ部62において、コンタクトホール54は、
図8Aに示す半導体基板10の上面視で、X軸方向に延伸するダミートレンチ部30と重ならないように設けられてよい。コンタクトホール54のY軸方向の幅は、コンタクト領域15のY軸方向の幅よりも小さくてよい。
【0172】
境界部90において、コンタクトホール54は、
図8Aに示す上面視で、第2メサ部62に設けられるコンタクト領域15の上方に、X軸方向に連続して設けられてよい。コンタクトホール54は、
図8Aに示す上面視で、第2メサ部62に設けられるコンタクト領域15の少なくとも一部と重なるように設けられてよい。
【0173】
ダイオード部80において、コンタクトホール54は、ベース領域17およびコンタクト領域15の上方に形成される。第3メサ部64において、コンタクトホール54は、
図8Aに示す上面視で、X軸方向に延伸するダミートレンチ部30と重ならないように設けられてよい。コンタクトホール54のY軸方向の幅は、ベース領域17およびコンタクト領域15のY軸方向の幅よりも小さくてよい。
【0174】
ダイオード部80において、コンタクトホール54は、
図8Aに示す上面視で、第3メサ部64のX軸方向最も負側に設けられるコンタクト領域15の上方から、X軸方向の最も正側に設けられるコンタクト領域15の上方まで、連続して設けられてよい。コンタクトホール54は、
図8Aに示す上面視で、第3メサ部64のX軸方向負側に設けられるコンタクト領域15の少なくとも一部と重なるように設けられてよい。コンタクトホール54は、
図8Aに示す上面視で、第3メサ部64のX軸方向正側に設けられるコンタクト領域15の少なくとも一部と重なるように設けられてよい。
【0175】
トランジスタ部70においては、ベース領域17の下方に第1導電型の蓄積領域16が設けられてよい。本例の蓄積領域16は、一例としてN+型である。
図8Aにおいて、蓄積領域16が形成される範囲を破線で示している。蓄積領域16は、半導体基板の上面視で、-X軸方向の端のコンタクト領域15とコンタクトホール54とが重なる領域から、+X軸方向側に形成されてよい。なお、ダイオード部80においては、蓄積領域16は設けられなくてよいが、設けられてもよい。
【0176】
本例の半導体装置200は、半導体基板10の内部に結晶欠陥領域19を有する。半導体装置200は、
図1Aから
図6に示したように、上面21側の結晶欠陥領域19-1と、下面23側の結晶欠陥領域19-2の一方を有してよく、両方を有してもよい。本例の半導体装置200は、結晶欠陥領域19-1および19-2の両方を有している。結晶欠陥領域19-2は、トランジスタ部70およびダイオード部80の全体に設けられてよい。結晶欠陥領域19-1は、ダイオード部80の全体と、トランジスタ部70の一部に設けられてよい。
【0177】
図8Aにおいては、結晶欠陥領域19-1が設けられる領域を一点鎖線と矢印で示している。本例では、結晶欠陥領域19-1は、XY面におけるダイオード部80の全体と、トランジスタ部70においてゲートトレンチ部40と重ならない領域に配置されている。結晶欠陥領域19-1は、ダイオード部80から、トランジスタ部70においてダイオード部80に最も近いゲートトレンチ部40に隣接する第1メサ部60まで、Y軸方向に連続して設けられていてよい。他の例では、結晶欠陥領域19-1は、トランジスタ部70において、それぞれのゲートトレンチ部40と重ならないように、Y軸方向において離散的に配置されていてもよい。
【0178】
図8Bは、半導体装置200の上面の他の例を部分的に示す図である。本例の半導体装置200は、結晶欠陥領域19-1の配置が、
図8Aの例と異なる。他の構造は、
図8Aの例と同一である。
【0179】
本例の半導体装置200は、結晶欠陥領域19-1が、トランジスタ部70のゲートトレンチ部40と重なって配置されている。より具体的には、トランジスタ部70のゲートトレンチ部40のうち、ダイオード部80に最も近く配置された1つ以上のゲートトレンチ部40と、結晶欠陥領域19-1とが重なって配置されている。結晶欠陥領域19-1は、それぞれのトランジスタ部70のゲートトレンチ部40のうち、少なくともY軸方向における中央に配置された第1メサ部60とは重ならないように配置されてよい。
【0180】
図8Cは、半導体装置200の上面の他の例を部分的に示す図である。本例の半導体装置200は、結晶欠陥領域19-1およびカソード領域82の配置が、
図8Aの例と異なる。他の構造は、
図8Aの例と同一である。
【0181】
結晶欠陥領域19-1は、X軸方向およびY軸方向において、カソード領域82よりも広い範囲に設けられてよい。
図8Cでは、Y軸方向において、結晶欠陥領域19-1が境界部90およびダイオード部80に配置され、境界部90以外のトランジスタ部70には配置されていない。境界部90の一つの第2メサ部62の上面に露出するコンタクト領域15の面積は、トランジスタ部70の一つの第1メサ部60の上面に露出するコンタクト領域15の面積よりも大きい。第2メサ部62は、第1メサ部60におけるエミッタ領域12をコンタクト領域15に置き換えた構成を有してよい。カソード領域82は、Y軸方向においてダイオード部80の少なくとも一部に設けられている。本例では、Y軸方向において、トランジスタ部70に挟まれた領域をダイオード部80とする。
図8Cのカソード領域82は、ダイオード部80において境界部90に最も近い1つ以上の第3メサ部64には設けられていない。
図8Cのカソード領域82は、ダイオード部80において、コンタクト領域15からX軸方向に離れて設けられている。
【0182】
また、結晶欠陥領域19-1のX軸方向における端部は、カソード領域82のX軸方向における端部と、ゲート金属層50との間に配置されている。結晶欠陥領域19-1のX軸方向における端部は、コンタクトホール54と、ゲート金属層50との間に配置されてよい(
図8Cにおける、結晶欠陥領域19-1a)。他の例では、結晶欠陥領域19-1のX軸方向における端部は、ダミートレンチ部30と、ゲート金属層50との間に配置されてもよい(
図8Cにおける結晶欠陥領域19-1b)。
【0183】
結晶欠陥領域19-1のX軸方向における端部は、上面視でウェル領域11の内部に位置してよい(
図8Cにおける結晶欠陥領域19-1b)。P型のウェル領域11は、P型のアノード領域14またはベース領域17よりもドーピング濃度が高い。結晶欠陥領域19-1がウェル領域11にも設けられることで、ウェル領域11からカソード領域82に向かう正孔の注入を抑えることができる。
【0184】
結晶欠陥領域19-1のY軸方向における端部は、トランジスタ部70のゲートトレンチ部40の中で、最もダイオード部80側に設けられたゲートトレンチ部40よりもダイオード部80側の第1メサ部60またはダミートレンチ部30に位置してもよい(
図8Cにおける結晶欠陥領域19-1c)。これにより、ゲート閾値に影響を与えずに、トランジスタ部70からカソード領域82に向かう正孔の注入を抑えることができる。
【0185】
結晶欠陥領域19-1は、X軸方向においてゲートランナー48またはゲート金属層50まで延伸してもよい。結晶欠陥領域19-1のX軸方向における端部は、ゲートランナー48にあってよいし、ゲート金属層50にあってよいし、ゲート金属層50を超えて位置してもよい。これにより、ゲートランナー48またはゲート金属層50に残留するキャリアを低減し、スイッチング動作への影響を抑えることができる。
【0186】
ゲートランナー48またはゲート金属層50の下面23側にはゲート絶縁膜が形成されているが、反転層チャネルは形成されない領域でもある。結晶欠陥領域19-1の形成のためのイオン注入時には、ゲートランナー48またはゲート金属層50の下面23側のゲート絶縁膜にも注入されたイオンが導入されるか、または通過する。そのため、ゲート絶縁膜にもイオン注入時のダメージが形成されることがある。しかしながら、ゲートランナー48またはゲート金属層50の下面23側には反転層チャネルは形成されないので、ゲート閾値への影響は十分小さい。
【0187】
第2メサ部62の上面におけるコンタクト領域15は、第2メサ部62のX軸方向における両端部に設けられるベース領域17に挟まれる領域全体に設けられなくてもよい。具体的には、第2メサ部62上面におけるコンタクト領域15は、コンタクトホール54の両端を覆うだけで、当該コンタクト領域15に挟まれる第2メサ部62上面はベース領域17が露出してよい。第2メサ部62上面において、当該露出するベース領域17の面積は、コンタクトホール54の両端を覆うコンタクト領域15の面積より大きくてよく、10倍以上であってよい。また、ダイオード部80の構成と同一であってもよい。
【0188】
図8Dは、半導体装置200の上面の他の例を部分的に示す図である。本例の半導体装置200は、カソード領域82のY軸方向における配置が、
図8Cの例と異なる。他の構造は、
図8Cの例と同一である。結晶欠陥領域19-1のY軸方向における端部の位置は、
図8Cの例と同一であってよい。
【0189】
本例のカソード領域82は、Y軸方向においてダイオード部80の全体に設けられている。またY軸方向において、結晶欠陥領域19-1は、トランジスタ部70のうちダイオード部80に接する一部の領域に設けられている。結晶欠陥領域19-1は、境界部90以外の第1メサ部60にも設けられてよい。ただし結晶欠陥領域19-1は、トランジスタ部70のY軸方向における中央を含む所定の範囲には設けられていない。このような構成により、カソード領域82から、トランジスタ部70の上面側にキャリアが流れることを抑制できる。
【0190】
図9Aは、
図8Aにおけるd-d'断面の一例を示す図である。d-d'断面は、トランジスタ部70およびダイオード部80において、エミッタ領域12およびコンタクト領域15を通過するYZ面である。本例の半導体装置200は、d-d'断面において、半導体基板10、層間絶縁膜38、エミッタ電極52およびコレクタ電極24を有する。エミッタ電極52は、半導体基板10の上面21および層間絶縁膜38の上面に設けられる。
【0191】
なお、領域Aは、
図5に示す半導体装置100に対応する。ただし、
図5に示す半導体装置100においては、
図9Aにおけるダミートレンチ部30および層間絶縁膜38が設けられていない。また、
図9Aにおけるエミッタ電極52は、
図5における上面側電極53に対応する。
【0192】
コレクタ電極24は、半導体基板10の下面23に設けられる。エミッタ電極52およびコレクタ電極24は、金属等の導電材料で形成される。
【0193】
半導体基板10は、シリコン基板であってよく、炭化シリコン基板であってよく、窒化ガリウム等の窒化物半導体基板等であってもよい。本例の半導体基板10はシリコン基板である。
【0194】
半導体基板10は、第1導電型のドリフト領域18を備える。本例のドリフト領域18はN-型である。ドリフト領域18は、半導体基板10において、他のドーピング領域が設けられずに残存した領域であってよい。
【0195】
半導体基板10の上面21には、1つ以上のゲートトレンチ部40および1つ以上のダミートレンチ部30が設けられる。各トレンチ部は、上面21から、ベース領域17を貫通して、ドリフト領域18に到達して設けられている。
【0196】
ゲートトレンチ部40は、上面21に設けられたゲートトレンチ、並びにゲートトレンチ内に設けられたゲート絶縁膜42およびゲート導電部44を有する。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁を覆って設けられる。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁の半導体を酸化または窒化して形成してよい。ゲート導電部44は、ゲートトレンチの内部においてゲート絶縁膜42よりも内側に設けられる。即ち、ゲート絶縁膜42は、ゲート導電部44と半導体基板10とを絶縁する。ゲート導電部44は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。
【0197】
ゲート導電部44は、ゲートトレンチ部40の内部において、ゲート絶縁膜42に囲まれて設けられる。ゲート導電部44は、深さ方向において、ゲート絶縁膜42を挟んで、少なくとも隣接するベース領域17と対向する領域を含む。当該断面におけるゲートトレンチ部40は、上面21において層間絶縁膜38により覆われる。ゲート導電部44に所定の電圧が印加されると、ベース領域17のうちゲートトレンチに接する界面の表層に電子の反転層によるチャネルが形成される。
【0198】
ダミートレンチ部30は、当該断面において、ゲートトレンチ部40と同一の構造を有してよい。ダミートレンチ部30は、上面21側に設けられたダミートレンチ、並びにダミートレンチ内に設けられたダミー絶縁膜32およびダミー導電部34を有する。ダミートレンチの上端は、Z軸方向において上面21と同じ位置であってよい。ダミー絶縁膜32は、ダミートレンチの内壁を覆って設けられる。ダミー導電部34は、ダミートレンチ部30の内部において、ダミー絶縁膜32に囲まれて設けられる。ダミー絶縁膜32は、ダミー導電部34と半導体基板10とを絶縁する。
【0199】
ダミー導電部34は、ゲート導電部44と同一の材料で形成されてよい。例えば、ダミー導電部34は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。ダミー導電部34は、深さ方向においてゲート導電部44と同一の長さを有してよい。なお、ダミートレンチ部30およびゲートトレンチ部40の底部は下方側に凸の曲面状(断面においては曲線状)であってよい。
【0200】
第1メサ部60において、ドリフト領域18の上方には、ゲートトレンチ部40に接して蓄積領域16が設けられる。蓄積領域16が複数設けられる場合、それぞれの蓄積領域16はZ軸方向に並んで配置される。蓄積領域16は、一例としてN+型である。蓄積領域16のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高く、ドーパントがドリフト領域18よりも高濃度に蓄積している。蓄積領域16を設けることで、キャリア注入促進効果(IE効果)を高めて、オン電圧を低減することができる。
【0201】
蓄積領域16は、第1メサ部60において、ダミートレンチ部30に接していてよいが、離れていてもよい。
図9Aは、蓄積領域16がダミートレンチ部30と接して設けられる一例を示している。
【0202】
第1メサ部60において、蓄積領域16の上方には、ゲートトレンチ部40に接して第2導電型のベース領域17が設けられる。ベース領域17は、一例としてN-型である。第1メサ部60において、ベース領域17は、ダミートレンチ部30に接して設けられてよい。
【0203】
境界部90の第2メサ部62において、ドリフト領域18の上方には、ダミートレンチ部30に接して第2導電型のベース領域17が設けられる。ダイオード部80の第3メサ部64において、ドリフト領域18の上方には、ダミートレンチ部30に接して第2導電型のアノード領域14が設けられる。アノード領域14は上面21に接して設けられる。
【0204】
第1メサ部60には、d-d'断面において、上面21に接して、且つ、ゲートトレンチ部40と接してエミッタ領域12が設けられる。エミッタ領域12のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。第1メサ部60には、当該d-d'断面のX軸方向正側および負側に、上面21に接して、且つ、ゲートトレンチ部40と接してコンタクト領域15が設けられる。
【0205】
第2メサ部62において、上面21にはダミートレンチ部30と隣接してコンタクト領域15が設けられる。コンタクト領域15は、ダミートレンチ部30と接していてよいが、離れていてもよい。
図9Aは、コンタクト領域15がダミートレンチ部30と接して設けられる一例を示している。
【0206】
トランジスタ部70において、ドリフト領域18の下方には、第2導電型のコレクタ領域22が設けられる。本例のコレクタ領域22は、一例としてP+型である。コレクタ領域22は、下面23に接して設けられる。ダイオード部80において、ドリフト領域18の下方には、ドリフト領域18よりもドーピング濃度の高い第1導電型のカソード領域82が設けられる。本例のカソード領域82は、一例としてN+型である。カソード領域82は、下面23に接して設けられる。
【0207】
本例の半導体装置200において、半導体基板10は、ドリフト領域18と、半導体基板10の下面23との間において、ドリフト領域18よりもドーピング濃度の高い第1導電型のバッファ領域20を有してよい。バッファ領域20は、第1位置Ps'を含んで設けられる。本例のバッファ領域は、一例としてN+型である。本例においては、バッファ領域20は、ドリフト領域18に接して設けられる。
【0208】
本例の半導体装置200は、半導体基板10の内部に水素を含む領域が設けられる。本例の半導体装置200において、半導体基板10の深さ方向における水素の濃度分布は、半導体基板10の一方の主面、即ち上面21から、半導体基板10の深さ方向に予め定められた距離Dps離間した第1位置Psに、濃度分布のピークを有する。
【0209】
図9Aにおいて、第1位置Psにおける水素の濃度分布のピークを、「×」の記号(マーカー)にて示している。第1位置Psは、半導体基板10の厚さTの1/2よりも上面21側に配置されている。半導体基板10には、第1位置Psに注入された水素を含む領域として、高濃度領域26が設けられている。XY面において、
図8Aに示した結晶欠陥領域19-1と同一の範囲に設けられている。つまり、高濃度領域26は、XY面において、ダイオード部80の全体と、トランジスタ部70におけるゲートトレンチ部40と重ならない領域の少なくとも一部とに設けられている。
【0210】
本例の半導体装置200は、バッファ領域20において、水素の濃度分布が複数の位置にピークを有する。即ち、バッファ領域20の上面側から下面側にわたり、位置Pb4、位置Pb3、位置Pb2および位置Pb1の4箇所に、濃度分布のピークを有する。
図9Aにおいて、Z軸方向の複数の位置における水素の濃度分布のピークを、「×」の記号(マーカー)にて示している。
【0211】
本例のバッファ領域20は、半導体基板10に下面23から位置Pb4、位置Pb3、位置Pb2および位置Pb1に注入された水素を、アニールすることにより形成される領域であってよい。水素を注入した半導体基板10をアニールすることにより、水素がドナー化し、ドリフト領域18よりもドーピング濃度の高いバッファ領域20が形成される。なお、バッファ領域20の形成については、後述する。
【0212】
第1位置Psは、水素を注入した半導体基板10をアニールした後における高濃度領域26のドーピング濃度のピーク位置であってよい。アニール後において、第1位置Psにおけるドーピング濃度は、1×1014(/cm3)以上1×1015(/cm3)以下であってよい。
【0213】
本例の半導体装置200において、バッファ領域20は、ドリフト領域18よりもドーピング濃度が高い。このため、バッファ領域20は、アノード領域14およびベース領域17の下面側から広がる空乏層が、カソード領域82およびコレクタ領域22へ到達することを防ぐ、フィールドストップ領域として機能することができる。
【0214】
本例の半導体装置200には、結晶欠陥領域19-1および19-2が設けられる。
図8Aに示したように、結晶欠陥領域19-1は、ダイオード部80の全体と、トランジスタ部70におけるゲートトレンチ部40と重ならない領域の少なくとも一部とに設けられている。結晶欠陥領域19-2は、XY面においてダイオード部80の全体と、トランジスタ部70の全体とに設けられてよい。
【0215】
図9Bは、
図8Bにおけるd-d'断面の一例を示す図である。本例の半導体装置200は、
図9Aに示した半導体装置200に対して、結晶欠陥領域19-1および高濃度領域26が設けられるXY面における範囲が異なる。他の構造は、
図9Aに示した例と同一である。
【0216】
本例では、結晶欠陥領域19-1および高濃度領域26は、XY面においてダイオード部80の全体と、トランジスタ部70の一部に設けられている。トランジスタ部70においては、ダイオード部80に接する領域であって、1つ以上のゲートトレンチ部40と重なる領域に、結晶欠陥領域19-1および高濃度領域26が設けられている。
【0217】
図9Cは、
図8Cにおけるd-d'断面の一例を示す図である。本例の半導体装置200は、
図9Aに示した半導体装置200に対して、結晶欠陥領域19-1cおよび高濃度領域26が設けられるXY面における範囲、およびコレクタ領域22とカソード領域82の境界位置が異なる。他の構造は、
図9Aに示した例と同一である。
【0218】
図10Aは、本実施形態に係る半導体装置の製造方法の概要の一例を示す図である。本例では、上面21側の結晶欠陥領域19-1を水素イオン(本例ではプロトン)の注入により形成し、下面23側の結晶欠陥領域19-2をヘリウムイオンの注入により形成する。本例の半導体装置の製造方法は、一例として、
図10Aに示すように、ステップS1006以降においてプロトンを注入する前に、ステップS1002における下面23へのイオン注入、および、ステップS1004における下面23のレーザーアニールを実施する。
【0219】
ステップS1002において下面23へ注入するイオンは、一例としてB(ボロン)およびP(リン)である。ステップS1002においては、ボロンおよびリンを一例として、それぞれを下面23においてP型とする領域およびN型とする領域に注入する。
【0220】
ステップS1004において、ステップS1002で注入したボロンおよびリンをレーザーアニールする。ステップS1004により、ボロンが注入された領域にコレクタ領域22が、リンが注入された領域にカソード領域82が、それぞれ形成される。
【0221】
続いて、ステップS1006において下面23からプロトンを注入する。ステップS1006におけるプロトン注入は、ステップS1006-1、ステップS1006-2、ステップS1006-3およびステップS1006-4に示すように、複数回実施してよい。本例は、ステップS1006において、プロトン注入を4回実施する例を示している。ステップS1006においては、バッファ領域20を形成すべき領域にプロトンを注入している。
【0222】
ステップS1008において、プロトンが注入された半導体基板10を第2の温度でアニールする。本例において、第2の温度は330℃以上450℃以下であってよく、一例として370℃であってよい。さらに第2の温度は、350℃以上420℃以下であってよく、370℃以上400℃以下であってよい。ステップS1008におけるアニール時間は、30分以上10時間以下であってよく、本例では5時間である。さらに、ステップS1008におけるアニール時間は、1時間以上7時間以下であってよい。
【0223】
続いて、ステップS1010において下面23からヘリウムイオンを注入する。また、上面21からプロトンを注入する。ヘリウムイオンは、結晶欠陥領域19-2の欠陥密度ピークを形成すべき深さに注入する。プロトンは、結晶欠陥領域19-1の欠陥密度ピークを形成すべき領域よりも深い位置に注入する。プロトンは、高濃度領域26を形成すべき深さに注入してよい。ヘリウムイオンの注入と、プロトンの注入とは、いずれが先であってもよい。
【0224】
ステップS1012において、プロトンおよびヘリウムイオンが注入された半導体基板10を第1の温度でアニールする。第1の温度は、第2の温度より低い。本例において、第1の温度は360℃であってよい。
【0225】
ステップS1012における第1の温度は、ステップS1010で注入した水素イオンのピーク位置Psとその近傍(例えばFW1%の領域)で、水素が空孔・複空孔に含まれるダングリング・ボンドを終端する温度であってよい。第1の温度は、例えば300℃以上420℃以下であってよく、本例では360℃である。さらに第1の温度は、330℃以上400℃以下であってよく、350℃以上380℃以下であってよい。また、第1の温度は、370℃未満であってよく、360℃以下であってもよい。
【0226】
ステップS1012におけるアニール時間は、ステップS1008におけるアニール時間より短くてよい。ステップS1012におけるアニール時間は、30分以上8時間以下であってよく、本例では1時間である。さらに、ステップS1012におけるアニール時間は、1時間以上5時間以下であってもよい。ステップS1012におけるアニール温度またはアニール時間の少なくとも一方を、ステップS1008におけるアニール温度またはアニール時間より小さくすることで、プロトンおよびヘリウムイオンを注入することで生じた結晶欠陥を残存させることが容易になる。このような工程で、
図7Bに示したような半導体装置を形成できる。
【0227】
さらに、ステップS1012の後に、図示しない下面23への電極形成ステップを行ってよい。電極形成ステップは、1つ以上の金属膜の成膜ステップを含む。金属膜の成膜ステップの後に、電極アニールステップを行ってよい。電極アニールステップの温度は、第1の温度より低い。一例として、140℃以上330℃以下であってよい。電極アニールステップの温度は、220℃以上であってもよい。
【0228】
また、半導体装置は、ダイシングにより半導体基板がチップ化された後に、DCB(Direct Copper Bond)基板等の回路基板にはんだ付けされる場合がある。このときのはんだ付け温度を第3の温度とする。ステップS1012におけるアニールの第1の温度は、はんだ付け時における第3の温度より高い。一例として、はんだ付けの温度は、280℃以上、400℃以下であってよい。なお、第3の温度は、第1の温度よりも低ければ、電極アニールステップの温度より低くてよく、同じであってよく、高くてもよい。
【0229】
また、はんだ付けの時間は、100秒以上、500秒以下であってよい。ステップS1012におけるアニールの時間は、はんだ付けの時間より長くてよい。このような条件により、はんだ付け時に、結晶欠陥が水素で終端されることを抑制できる。ステップS1012におけるアニールの時間は、10分以上であってよく、30分以上であってもよい。当該アニールの時間は、2時間以下であってよく、1時間以下であってもよい。以上より、第2の温度T2、第1の温度T1、第3の温度T3とすると、T2>T1>T3であることが好ましい。
【0230】
図10Bは、半導体装置の製造方法の他の例を示す図である。本例では、上面21側の結晶欠陥領域19-1および下面23側の結晶欠陥領域19-2をプロトン注入により形成する。本例のステップS1002およびS1004は、
図10Aに示したステップS1002およびS1004と同様である。
【0231】
ステップS1006において、下面23からプロトンを注入する。ステップS1006におけるプロトン注入は、ステップS1006-1、ステップS1006-2およびステップS1006-3に示すように、複数回実施してよい。ステップS1006においては、バッファ領域20に形成すべき複数の水素ピークのうち、1つの水素ピークを除いた水素ピークの位置にプロトンを注入する。本例は、ステップS1006において、プロトン注入を3回実施する例を示している。
【0232】
ステップS1008において、プロトンが注入された半導体基板10を第2の温度でアニールする。本例において、第2の温度は370℃であってよい。アニール時間は5時間であってよい。
【0233】
続いて、ステップS1011において上面21および下面23からプロトンを注入する。下面23からは、バッファ領域20に形成すべき複数の水素ピークのうち、ステップS1006においてプロトンを注入しなかった水素ピークの位置に、プロトンを注入する。上面21からは、結晶欠陥領域19-1の欠陥密度ピークを形成すべき領域よりも深い位置にプロトンを注入する。上面21からのプロトンの注入と、下面23からのプロトンの注入とは、いずれが先であってもよい。
【0234】
ステップS1012において、プロトンおよびヘリウムイオンが注入された半導体基板10を第1の温度でアニールする。ステップS1012は、
図10Aに示したステップS1012と同一である。このような工程で、
図7Aに示したような半導体装置を形成できる。
【0235】
図11は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す図である。
図11は、
図10Aに示すステップS1010およびステップS1012を詳細に示す図である。
図11に示すように、ステップS1010において、半導体基板10の一方の主面、即ち上面21から、半導体基板10の深さ方向にプロトンを注入する。本例においては、半導体基板10の深さ方向に、上面21から距離Dps離間した第1位置Psの深さに、プロトンを注入する。
図11において、第1位置Psの深さに注入されたプロトンを、「×」にて示している。ステップS1010において、プロトンの注入量は、1×10
12(/cm
2)以上1×10
13(/cm
2)以下であってよい。
【0236】
上面21からのプロトンの注入により、半導体基板10上面21から第1位置Psまで結晶欠陥が生じる。また、上面21からのプロトンの注入により、水素濃度は第1位置Psをピークとして、半導体基板10の深さ方向に分布する。またステップS1010においては、下面23から半導体基板10の深さ方向にヘリウムイオンを注入する。本例では、位置Kbに、ヘリウムイオンを注入する。
【0237】
続いて、ステップS1012において、プロトンおよびヘリウムイオンを注入した半導体基板10を第1の温度でアニールする。第1の温度は、360℃であってよい。アニール時間は、1時間であってよい。ステップS1012により、プロトンおよびヘリウムイオンの注入により生じた結晶欠陥を水素により終端させる。これにより、位置Ksおよび位置Kbに結晶欠陥密度のピークを形成する。また、当該アニールにより、第1位置Psに注入した水素をドナー化させる。
【0238】
本例の半導体装置は、位置Ksを濃度分布のピークとして、半導体装置の深さ方向に分布する結晶欠陥領域19-1を、上面側ライフタイム制御領域74として用いる。また、本例の半導体装置は、水素がドナー化された、第1位置Psを含む領域を、高濃度領域26として用いる。
【0239】
図12は、
図11におけるh-h'線に沿った、水素濃度(B)、結晶欠陥密度(C)およびキャリア濃度(F)の各分布を示す図である。
図12において、
図11のステップS1010におけるアニール前における分布を破線で示し、ステップS1012におけるアニール後の分布を実線で示している。
【0240】
分布図(B)に示すように、水素濃度は、アニール前において第1位置Psをピークとして分布する。アニールにより水素が拡散することで、水素の濃度分布はZ軸方向に広がる。アニール後の水素濃度の分布は、第1位置Psよりも上面21側には、濃度分布の裾Sを有する。水素の濃度は、第1位置Psよりも下面23側よりも上面21側の方が、緩やかに分布する。
【0241】
分布図(C)に示すように、アニール前の結晶欠陥密度の分布は、アニール前の水素濃度分布の形状と同様である。例えば、アニール前の結晶欠陥密度のピーク位置は、アニール前の水素濃度のピーク位置Psと同一である。半導体基板10をアニールすることで、水素がZ軸方向に拡散するとともに、ダングリング・ボンドを終端する。上述したように、水素濃度のピーク近傍においては多量の水素が存在するので、ピーク位置Psの近傍においては結晶欠陥はほとんど終端される。
【0242】
分布図(F)は、アニール後のキャリア濃度の分布を示している。分布図(F)は、
図7Bにおける分布図(F)の一部と同一である。分布図(B)および(C)に示したように、水素イオンを上面21側から注入してアニールすることで、高濃度領域26と、高濃度領域26よりも上面21側に結晶欠陥領域19-1が形成される。
【0243】
図13は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法の他の一例を示す図である。
図13は、
図10Bに示すステップS1006、ステップS1008、ステップS1011、並びにステップS1012を詳細に示す図である。
【0244】
図13に示すように、本例の半導体装置の製造方法は、半導体基板10の深さ方向に、水素の濃度分布のピークの位置が異なるように、プロトンを複数回注入するステップを含む。即ち、ステップS1006において、半導体基板10の他方の主面、即ち下面23から、半導体基板10の深さ方向にプロトンを注入する。ステップS1006においては、バッファ領域20に形成すべき複数の水素ピークのうち、1つの水素ピークを除いた水素ピークの位置にプロトンを注入する。本例では、ステップS1006において、位置Pb4、Pb3、Pb1に順次プロトンを注入している。ステップS1006においてプロトンを注入した後、ステップS1008において半導体基板10をアニールする。一例として、アニール温度は370℃、アニール時間は5時間である。
【0245】
続いて、ステップS1011において、下面23から、位置Pb2に、プロトンを注入する。また、上面21から、位置Psにプロトンを注入する。
【0246】
続いて、ステップS1012において、半導体基板10をアニールする。一例としてアニール温度は360℃、アニール時間は、1時間である。ステップS1012により、結晶欠陥領域19-1、結晶欠陥領域19-2および高濃度領域26を形成する。
【0247】
図14は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法の他の一例を示す図である。
図14に示す半導体装置の製造方法は、
図13に示すステップS1006において位置Pb1に代えて位置Pb2にプロトンを注入する点、および、ステップS1011において位置Pb1にプロトンを注入する点で、
図13に示す半導体装置の製造方法と異なる。本例においては、結晶欠陥領域19-2の結晶欠陥密度のピーク位置Kbは、位置Pb1よりも下面23側に配置される。このように、ステップS1006およびステップS1011においてプロトンを注入する位置を調整することで、結晶欠陥密度のピーク位置Kbを調整できる。
【0248】
図15は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法の概要の他の一例を示す図である。本例の半導体装置の製造方法は、
図10Bに示したステップS1011における上面21からのプロトン注入ステップと、下面23からのプロトン注入ステップとの間にアニールステップを有する点で
図10Bの例と異なる。ステップS1002からS1008は、
図10Bに示した例と同一である。
【0249】
本例ではステップS1011-1において、下面23からプロトンを注入する。ステップS1011-1の後、ステップS1012-1においてアニールを行う。ステップS1012-1におけるアニール温度は、ステップS1008におけるアニール温度より低い。ステップS1012-1におけるアニール時間は、ステップS1008におけるアニール時間より短くてよい。当該アニールは、例えば360℃、1時間である。
【0250】
次にステップS1011-2において、上面21からプロトンを注入する。ステップS1011-2の後、ステップS1012-2においてアニールを行う。ステップS1012-2におけるアニール温度は、ステップS1012-1におけるアニール温度より低い。ただしステップS1012-2におけるアニール温度は、チップはんだ付け工程におけるはんだ付け温度より高いことが好ましい。なお、ステップS1011-1およびステップS1011-2は順番を入れ替えてもよい。
【0251】
図16は、半導体基板10の上面21側から水素イオン(本例ではプロトン)を注入して、結晶欠陥領域19および高濃度領域26を形成するステップを説明する図である。プロトンを注入しない領域は、フォトレジスト等のマスク110で覆われている。マスク110は、エミッタ電極52上に設けられてよい。マスク110の厚みT110は、プロトンを半導体基板10に注入する深さ(飛程)に比べて十分大きい。例えばプロトンの飛程が8μmの場合、厚みT110は33μm以上である。
【0252】
プロトンを注入するステップにおいて、半導体基板10の上面21からの飛程が8μm以上となる加速エネルギーで、水素イオンを注入してよい。これにより、各トレンチ部の下端よりも下方に、結晶欠陥領域19を形成できる。プロトンの加速エネルギーは、600keV以上であってよく、1.0MeV以上であってよく、1.5MeV以上であってもよい。これにより、プロトンの飛程を8μm以上にできる。1.0MeVの加速エネルギーの場合、プロトンの飛程は例えば16μm程度である。1.5MeVの加速エネルギーの場合、プロトンの飛程は例えば30μm程度である。
【0253】
プロトンの加速エネルギーは、5.0MeV以上であってもよい。5.0MeVの加速エネルギーの場合、プロトンの飛程は例えば215μm程度である。この場合、より深い位置にプロトンを注入できる。また、半導体基板10の下面23側からプロトンを注入しても、トレンチ部の下端近傍にプロトンを注入できる。また、半導体基板10の下面23を研削して薄化する工程の前であっても、半導体基板10の下面23側からプロトンを注入して、トレンチ部の下端近傍にプロトンを注入できる。半導体基板10の下面23からプロトンを注入した後に、半導体基板10の下面23を研削してもよい。
【0254】
プロトンの加速エネルギーは、11.0MeV以下であってよく、5.0MeV以下であってもよい。これにより、プロトンが深すぎる位置に注入されることを抑制できる。また、プロトンが半導体基板10を貫通することを抑制できる。プロトンの加速エネルギーは、2.0MeV以下であってもよい。2.0MeVの加速エネルギーの場合、プロトンの飛程は例えば47μm程度である。
【0255】
また、プロトンのドーズ量は、1.0×1012/cm2以上であってよい。これにより、十分な密度の欠陥を形成できる。また、プロトンのドーズ量は、1.0×1015/cm2以下であってよい。これにより、例えば8μmの飛程で上面21からプロトンを注入しても、結晶欠陥密度がアノード領域14またはベース領域17に与える影響を抑制できる。
【0256】
図17は、半導体基板10の下面23側から水素イオン(本例ではプロトン)を注入して、結晶欠陥領域19および高濃度領域26を形成するステップを説明する図である。プロトンを注入しない領域は、フォトレジスト等のマスク110で覆われている。マスク110は、コレクタ電極24上に設けられてよい。マスク110の厚みT110は、プロトンを半導体基板10に注入する深さ(飛程)に比べて十分大きい。
【0257】
マスク110がフォトレジスト等の有機膜の場合、マスク110の厚みT110の下限値Y1(μm)は、水素イオンの注入深さをX1(μm)とすると、X1(μm)に対して、以下の関係式(数1)であらわされる下限値Y1(μm)であってよい。
(数1)
Y1=5.52317×(X1)0.79538
これにより、マスク110で覆われた領域は、水素イオンを十分遮蔽することができる。マスク110がフォトレジスト等の有機膜の場合、マスク110の厚みT110の下限値をY2(μm)は、水素イオンをイオン注入するときの加速エネルギーをE1(eV)とすると、E1(eV)に対して、以下の関係式(数2)であらわされる下限値Y2(μm)であってよい。
(数2)
Y2=1.07515×10-11×(E1)2+3.83637×10-5×(E1)
以上により、マスク110で覆われた領域は、水素イオンを十分遮蔽することができる。
【0258】
プロトンを注入するステップにおいて、プロトンの注入位置と、半導体基板10の上面21との距離が8μm以上となる加速エネルギーで、水素イオンを注入してよい。プロトンの加速エネルギーは、2.0MeV以上であってよく、3.0MeV以上であってよく、4.0MeV以上であってもよい。加速エネルギーを調整することで、半導体基板10の上面21側に、高濃度領域26を形成できる。蓄積領域16の位置に、高濃度領域26を形成してもよい。
【0259】
図18は、
図17に示す半導体装置100における、ネットドーピング濃度(A)、水素濃度(B)、結晶欠陥密度(C)、キャリアライフタイム(D)キャリア移動度(E)およびキャリア濃度(F)の深さ方向の分布図を示す。上述したように、本例においては水素イオンを半導体基板10の下面23から注入することで高濃度領域26を形成している。
【0260】
分布図(A)に示すように、ネットドーピング濃度は、位置Pb4よりも上面21側の位置Pfまで、濃度N0よりも濃度の高い領域を備えてよい。下面23側から位置Psまで水素イオンが半導体基板10を通過し、空孔および複空孔を主体とする結晶欠陥が形成される。位置Pb4から位置Pfは水素濃度が十分高いため、結晶欠陥のダングリング・ボンドが水素で終端され、水素ドナーが形成される。
【0261】
分布図(B)に示すように、水素濃度は、位置Psにおいてピークを有している。本例の水素の濃度分布は、ピークの位置Psから一方の主面(本例では下面23)に向かう裾Sを有する。位置Psと、位置Pb4との間における水素濃度は、アノード領域14における水素濃度よりも高くてよい。
【0262】
分布図(C)に示すように、結晶欠陥密度分布は、位置Ksにおいてピークを有している。結晶欠陥密度分布は、位置Ksから下面23に向かう裾SV1と、上面21に向かう裾SV2を有する。本例の裾SV1は、裾SV2よりもなだらかである。結晶欠陥密度が濃度Nr0より高い領域は、位置Prから位置Pfまでの領域である。
【0263】
分布図(D)に示すように、キャリアライフタイム分布は、位置Ksにおいてピークを有している。キャリアライフタイム分布は、位置Ksから下面23に向かう裾Sτ1と、上面21に向かう裾Sτ2を有する。本例の裾Sτ1は、裾Sτ2よりもなだらかである。キャリアライフタイムがτ0より低い領域は、位置Prから位置Pfまでの領域である。
【0264】
分布図(E)に示すように、キャリア移動度分布は、位置Ksにおいてピークを有している。キャリア移動度分布は、位置Ksから下面23に向かう裾Sμ1と、上面21に向かう裾Sμ3を有する。本例の裾Sμ1は、裾Sμ3よりもなだらかである。キャリア移動度がμ0より低い領域は、位置Prから位置Pfまでの領域である。
【0265】
分布図(F)に示すように、キャリア濃度分布は、位置Ksにおいてピークを有している。キャリア濃度分布は、位置Ksから下面23に向かう裾SN1と、上面21に向かう裾SN3を有する。本例の裾SN1は、裾SN3よりもなだらかである。本例の裾SV1、Sτ1、Sμ1およびSN1は、バッファ領域20に到達していてよく、到達していなくてもよい。
【0266】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0267】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0268】
10・・・半導体基板、11・・・ウェル領域、12・・・エミッタ領域、14・・・アノード領域、15・・・コンタクト領域、16・・・蓄積領域、17・・・ベース領域、18・・・ドリフト領域、19・・・結晶欠陥領域、19-1・・・結晶欠陥領域、19-2・・・結晶欠陥領域、20・・・バッファ領域、21・・・上面、22・・・コレクタ領域、23・・・下面、24・・・コレクタ電極、26・・・高濃度領域、27・・・下面側電極、29・・・延伸部分、30・・・ダミートレンチ部、31・・・接続部分、32・・・ダミー絶縁膜、34・・・ダミー導電部、38・・・層間絶縁膜、39・・・延伸部分、40・・・ゲートトレンチ部、41・・・接続部分、42・・・ゲート絶縁膜、44・・・ゲート導電部、48・・・ゲートランナー、49・・・コンタクトホール、50・・・ゲート金属層、52・・・エミッタ電極、53・・・上面側電極、54・・・コンタクトホール、56・・・コンタクトホール、58・・・バリアメタル、60・・・第1メサ部、62・・・第2メサ部、64・・・第3メサ部、70・・・トランジスタ部、74・・・上面側ライフタイム制御領域、78・・・下面側ライフタイム制御領域、80・・・ダイオード部、81・・・延長領域、82・・・カソード領域、90・・・境界部、92・・・エッジ終端構造部、100・・・半導体装置、110・・・マスク、116・・・ゲートパッド、118・・・エミッタパッド、120・・・活性部、140・・・外周端、150・・・半導体装置、200・・・半導体装置、274・・・上面側ライフタイム制御領域