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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-25
(45)【発行日】2025-04-02
(54)【発明の名称】ベールおよびベールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21B 1/32 20060101AFI20250326BHJP
   D21C 5/02 20060101ALI20250326BHJP
【FI】
D21B1/32
D21C5/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024077367
(22)【出願日】2024-05-10
【審査請求日】2024-06-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 明裕
(72)【発明者】
【氏名】辻 和政
(72)【発明者】
【氏名】石川 友美子
(72)【発明者】
【氏名】山本 学
【審査官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-002501(JP,A)
【文献】特開2024-003765(JP,A)
【文献】特開2020-172717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/32
D21C 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも樹脂層および紙基材層を有する古紙からなるベールであり、
前記古紙の坪量が、100g/m以上であり、
前記古紙の面積の中央値が、20cm以上150cm以下であり、
前記古紙を水温23℃で24時間浸漬させた後の水のpHが、6.0以上である、ベール。
【請求項2】
少なくとも樹脂層および紙基材層を有する古紙からなるベールであり、
前記古紙の坪量が、100g/m 以上であり、
前記古紙の面積の中央値が、20cm 以上150cm 以下であり、
前記古紙の密度の中央値が、0.70g/cm以上である、ベール。
【請求項3】
少なくとも樹脂層および紙基材層を有する古紙からなるベールであり、
前記古紙の坪量が、100g/m 以上であり、
前記古紙の面積の中央値が、20cm 以上150cm 以下であり、
前記古紙の24時間の吸水度が、25%以上85%以下である、ベール。
【請求項4】
少なくとも樹脂層および紙基材層を有する古紙からなるベールであり、
前記古紙の坪量が、100g/m 以上であり、
前記古紙の面積の中央値が、20cm 以上150cm 以下であり、
前記古紙における、紙基材層中のサイズ剤の含有量が、0.2質量%以上2.1質量%以下である、ベール。
【請求項5】
密度が、0.3t/m以上1.0t/m以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載のベール。
【請求項6】
前記古紙が、さらに金属層を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のベール。
【請求項7】
少なくとも樹脂層および紙基材層を有する古紙を、圧縮成形してベールを得る成形工程を有し、
前記古紙の坪量が、100g/m以上であり、
前記古紙の面積の中央値が、20cm以上150cm以下であり、
成形工程の前に、古紙を洗浄する洗浄工程を有する、ベールの製造方法。
【請求項8】
ベール成形圧力が、500kN/m以上2500kN/m以下である、請求項に記載のベールの製造方法。
【請求項9】
成形工程の前に、古紙を破砕する破砕工程を有する、請求項7または8に記載のベールの製造方法。
【請求項10】
前記洗浄工程が、古紙を、中性またはアルカリ性の洗浄水で洗浄する工程である、請求項7または8に記載のベールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベールおよびベールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、廃棄物の削減や環境問題に対する関心の高まりから、世界的に脱プラスチックへの取り組みが加速している。そのため、さまざまな製品において、プラスチックの使用量を低減するために、プラスチックのみであった原料を、紙基材に樹脂層等がラミネートされたラミネート紙に変更する取り組みがされている。これらラミネート古紙は、特に食品用容器などの食品包材向けに用いられている。
従来、ラミネート紙は禁忌品として古紙利用されていなかったが、廃棄物の削減や環境問題に対する関心の高まりから、ラミネート紙の古紙としての利用が求められるようになっている。
一般に、古紙は、リサイクルするために、一時的にベールの状態にして保管がされる。
【0003】
特許文献1には、古紙、廃カートンなどといった廃物である圧縮可能な被圧縮物からベールを形成するための装置として、実質的に直方体状の形状を有すると共に、少なくとも1つの圧縮室と前記圧縮室内部を駆動手段によってプレス方向に往復動可能なプレス板とを有するプレスハウジングを備えた装置が開示されている。
また、特許文献2には、紙、段ボールなどを圧縮するベール・プレスとして、チャンバー内で往復動するピストン機構により圧縮してベール化する材料を受け入れるロード・チャンバーと、ロード・チャンバーの出口部分に形成され、圧縮された材料を摩擦力によって保持し、保持された材料に新たな材料をピストン機構によって押し付けるチョーク・チャンバーとを有する形式のベール・プレスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2010-521312号公報
【文献】国際公開第1998/33643号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、特許文献1および2に開示されているようなベールを成形する装置によって、古紙がベールに成形され、その後リサイクルに供されることとなる。しかしながら、特に食品包材として用いられた古紙は、古紙に残留した食品などの汚れにより腐敗が進み、リサイクルに供することが困難となる場合があった。また、成形されたベールの状態によっては、ベールに含まれる古紙の離解性が不十分となり、リサイクル性が低下する場合があった。
本発明の目的は、耐腐敗性に優れ、かつ、古紙の離解性にも優れるベール、および該ベールの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、坪量が特定の値以上であり、かつ、面積の中央値が一定の範囲内である古紙からなるベールが、上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[12]に関する。
[1] 少なくとも樹脂層および紙基材層を有する古紙からなるベールであり、前記古紙の坪量が、100g/m以上であり、前記古紙の面積の中央値が、20cm以上150cm以下である、ベール
[2] 前記古紙を水温23℃で24時間浸漬させた後の水のpHが、6.0以上である、[1]に記載のベール。
[3] 前記古紙の密度の中央値が、0.70g/cm以上である、[1]または[2]に記載のベール。
[4] 前記古紙の24時間の吸水度が、25%以上85%以下である、[1]~[3]のいずれか1つに記載のベール。
[5] 前記古紙における、紙基材層中のサイズ剤の含有量が、0.2質量%以上2.1質量%以下である、[1]~[4]のいずれか1つに記載のベール。
[6] 密度が、0.3t/m以上1.0t/m以下である、[1]~[5]のいずれか1つに記載のベール。
[7] 前記古紙が、さらに金属層を有する、[1]~[6]のいずれか1つに記載のベール。
[8] 少なくとも樹脂層および紙基材層を有する古紙を、圧縮成形してベールを得る成形工程を有し、前記古紙の坪量が、100g/m以上であり、前記古紙の面積の中央値が、20cm以上150cm以下である、ベールの製造方法。
[9] ベール成形圧力が、500kN/m以上2500kN/m以下である、[8]に記載のベールの製造方法。
[10]成形工程の前に、古紙を破砕する破砕工程を有する、[8]または[9]に記載のベールの製造方法。
[11] 成形工程の前に、古紙を洗浄する洗浄工程を有する、[8]~[10]のいずれか1つに記載のベールの製造方法。
[12] 前記洗浄工程が、古紙を、中性またはアルカリ性の洗浄水で洗浄する工程である、[11]に記載のベールの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、耐腐敗性に優れ、かつ、古紙の離解性にも優れるベール、および該ベールの製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[ベール]
本実施形態のベールは、少なくとも樹脂層および紙基材層を有する古紙からなるベールであり、前記古紙の坪量が、100g/m以上であり、前記古紙の面積の中央値が、20cm以上150cm以下である。
本実施形態のベールは、耐腐敗性に優れ、かつ、古紙の離解性にも優れる。この理由については定かではないが、以下のように考えられる。
一般に、少なくとも樹脂層および紙基材層を有し、坪量が100g/m以上であるようなラミネート紙は、食品包材に用いられることが多い。そのため、古紙として利用する際に、古紙に残留した食品などの汚れにより腐敗が進むため、腐敗臭が発生し、リサイクルに供することができない場合があった。また、前記ラミネート紙は、リサイクルのために離解処理を行う際に、樹脂層などにより、紙基材層への水の浸透が妨げられるため、離解性が低下する傾向があった。
これに対し、本実施形態のベールは、ベールを形成する古紙の面積の中央値が20cm以上であるため、ベール中の古紙間に適度な隙間を形成することができ、古紙の腐敗の進行を抑制できると考えられる。また、古紙の面積の中央値が150cm以下であると、リサイクルのために離解工程を行った際、古紙へ水が十分に浸透するため、離解性が向上すると考えられる。
【0009】
古紙の坪量は、古紙の離解性向上の観点から、100g/m以上であり、好ましくは120g/m以上600g/m以下、より好ましくは140g/m以上500g/m以下、さらに好ましくは160g/m以上400g/m以下、よりさらに好ましくは180g/m以上300g/m以下である。
古紙の坪量は、実施例に記載の方法により測定される。
【0010】
古紙の面積の中央値は、耐腐敗性向上および古紙の離解性向上の観点から、20cm以上150cm以下であり、好ましくは50cm以上120cm以下、より好ましくは70cm以上100cm以下である。
古紙の面積の中央値は、実施例に記載の方法により測定される。
【0011】
(古紙)
本実施形態において古紙は、少なくとも樹脂層および紙基材層を有する。
〔樹脂層〕
古紙における樹脂層を構成する樹脂としては、特に限定されないが、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ナイロンなどのポリアミド、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、スチレン-アクリル系共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体などが挙げられる。また、古紙が樹脂層を複数有する場合、各樹脂層を構成する樹脂は、同一でもよく、異なっていてもよい。
これらの中でも、樹脂層を構成する樹脂としては、リサイクル性の観点から、好ましくはポリオレフィン、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)から選ばれる1種以上、より好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)およびエチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)から選ばれる1種以上、さらに好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)および直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)から選ばれる1種以上である。
【0012】
古紙における樹脂層の坪量は、古紙の離解性向上の観点から、好ましくは5g/m以上120g/m以下、より好ましくは10g/m以上100g/m以下、さらに好ましくは15g/m以上80g/m以下、よりさらに好ましくは20g/m以上60g/m以下である。なお、古紙が複数の樹脂層を有する場合、前記古紙における樹脂層の坪量は、それぞれの樹脂層の合計の坪量を示す。
【0013】
古紙における樹脂層の厚さは、古紙の離解性向上の観点から、好ましくは5μm以上130μm以下、より好ましくは10μm以上110μm以下、さらに好ましくは15μm以上90μm以下、よりさらに好ましくは20μm以上70μm以下である。なお、古紙が複数の樹脂層を有する場合、前記古紙における樹脂層の厚さは、それぞれの樹脂層の合計の厚さを示す。
【0014】
〔紙基材層〕
紙基材層としては、植物由来の木材パルプを主成分として一般的に用いられている紙であれば特に制限はない。木材パルプとしては、特に限定されないが、例えば、広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、晒クラフトパルプ(BKP)、未晒クラフトパルプ(UKP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の機械パルプ等が挙げられる。
これらの中でも紙基材層は、リサイクル性の観点から、好ましくは広葉樹クラフトパルプおよび針葉樹クラフトパルプから選ばれる1種以上を含み、より好ましくは広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)および針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)から選ばれる1種以上、さらに好ましくは広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)および針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)から選ばれる1種以上を含む。
【0015】
また、紙基材層は顔料塗工層を有していてもよい。顔料塗工層は、1層であってもよいし、2層以上であってもよい。顔料塗工層は、顔料およびバインダーを含有することが好ましい。顔料としては、特に限定されないが、重質炭酸カルシウム、カオリン、プラスチックピグメント等が挙げられる。バインダーとしても、特に限定されないが、澱粉、スチレン-アクリル系共重合体ラテックス、スチレン-ブタジエン系共重合体ラテックス、オレフィン-カルボン酸エマルジョン共重合体ラテックス等が挙げられる。
【0016】
古紙における紙基材層の坪量は、古紙の離解性向上の観点から、好ましくは80g/m以上400g/m以下、より好ましくは100g/m以上350g/m以下、さらに好ましくは120g/m以上300g/m以下、よりさらに好ましくは150g/m以上250g/m以下である。
なお、古紙が複数の紙基材層を有する場合、前記古紙における紙基材層の坪量は、それぞれの紙基材層の合計の坪量を示す。
【0017】
古紙における紙基材層の厚さは、古紙の離解性向上の観点から、好ましくは100μm以上600μm以下、より好ましくは120μm以上550μm以下、さらに好ましくは150μm以上500μm以下、よりさらに好ましくは200μm以上450μm以下である。
なお、古紙が複数の紙基材層を有する場合、前記古紙における紙基材層の厚さは、それぞれの紙基材層の合計の厚さを示す。
【0018】
本実施形態において、古紙における、紙基材層中のサイズ剤の含有量は、好ましくは0.2質量%以上2.1質量%以下、より好ましくは0.4質量%以上1.8質量%以下、さらに好ましくは0.6質量%以上1.6質量%以下、よりさらに好ましくは0.8質量%以上1.4質量%以下である。
古紙における、紙基材層中のサイズ剤の含有量が0.2質量%以上であると、ベール成形前に古紙を洗浄した際などに、古紙中に残留する水分が低減されるため、耐腐敗性がより向上する。また、古紙における、紙基材層中のサイズ剤の含有量2.1質量%以下であると、ベールをリサイクルに供した際の離解工程において、古紙中に十分な水が浸透しやすいため、古紙の離解性がより向上する。
古紙おける紙基材層中のサイズ剤の含有量は、実施例に記載の方法により測定される。
【0019】
本実施形態において、古紙における紙基材層中のサイズ剤としては、例えば、ロジンサイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤等が挙げられる。
【0020】
本実施形態において、古紙における、紙基材層中の乾燥紙力増強剤および湿潤紙力増強剤の合計含有量は、耐腐敗性向上およびベールに含まれる古紙の離解性向上の観点から、好ましくは0.05質量%以上2.00質量%以下、より好ましくは0.10質量%以上1.50質量%以下、さらに好ましくは0.12質量%以上1.20質量%以下である。
【0021】
本実施形態において、古紙における、紙基材層中の乾燥紙力増強剤の含有量は、耐腐敗および古紙の離解性向上の観点から、好ましくは0.50質量%以上2.00質量%以下、より好ましくは0.65質量%以上1.60質量%以下、さらに好ましくは0.80質量%以上1.20質量%以下である。
また本実施形態において、古紙における、紙基材層中の湿潤紙力増強剤の含有量は、耐腐敗性向上およびベールに含まれる古紙の離解性向上の観点から、好ましくは0.05質量%以上0.25質量%以下、より好ましくは0.07質量%以上0.20質量%以下、さらに好ましくは0.10質量%以上0.15質量%以下である。
古紙おける紙基材層中の紙力増強剤の含有量は、実施例に記載の方法により測定される。
【0022】
本実施形態において、古紙における紙基材層中の紙力増強剤としては、乾燥紙力増強剤および湿潤紙力増強剤が挙げられる。乾燥紙力増強剤としては、例えば、ポリアクリルアミド、カチオン化澱粉、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。また、湿潤紙力増強剤としては、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン、ポリアミドエピクロロヒドリン、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。
【0023】
本実施形態において、古紙は、上記樹脂層および紙基材層以外に、適宜その他の層を有してもよい。その他の層としては、例えば、金属層、印刷層および接着剤層などが挙げられる。
【0024】
〔金属層〕
本実施形態において、古紙は、さらに金属層を有してもよい。本実施形態において、古紙の金属層は、アルミニウムを含むことが好ましい。また、本実施形態において、古紙の金属層は、アルミニウム箔であることがより好ましい。
【0025】
古紙が金属層を含む場合、古紙における金属層の坪量は、古紙の離解処理において金属層の微細化を抑制し、ベールに含まれる古紙の離解性を向上する観点から、好ましくは8g/m以上30g/m以下、より好ましくは10g/m以上27g/m以下、さらに好ましくは12g/m以上24g/m以下、よりさらに好ましくは14g/m以上22g/m以下である。
なお、古紙が複数の金属層を有する場合、前記古紙における金属層の坪量は、それぞれの金属層における坪量を示す。
【0026】
古紙が金属層を含む場合、古紙における金属層の厚さは、好ましくは1μm以上50μm以下、より好ましくは3μm以上40μm以下、さらに好ましくは5μm以上30μm以下、よりさらに好ましくは6μm以上20μm以下である。
なお、古紙が複数の金属層を有する場合、前記古紙における金属層の厚さは、それぞれの金属層における厚さを示す。
金属層の厚さが1μm以上であると、ベールをリサイクルに供する際、古紙の離解処理において金属層の微細化が抑制されるため、離解処理がより効率化される。また、金属層の厚さが50μm以下であると、古紙への水分の浸透が妨げられ難いため、古紙の離解性がより向上する。
【0027】
〔印刷層〕
本実施形態において、古紙は、さらに印刷層を有してもよい。
印刷層としては、例えば、紙基材層に設けられた印刷層が挙げられる。印刷層は、油性インキ、水性インキ、バイオマスインキなどの公知のインキを用いて形成されていてもよい。また、印刷される内容は、模様、図柄、情報(成分、賞味期限、QRコード(登録商標)など)であってもよい。また、印刷層は、印刷層が施される層において、一面に形成されていてもよく、一部に形成されていてもよい。
【0028】
〔接着剤層〕
本実施形態において、古紙は、さらに接着剤層を有してもよい。接着剤層は、主に、古紙が金属層を有する場合に、金属層と紙基材層と接着するため、および/または金属層と樹脂層とを接着するために形成される。
接着剤層を構成する樹脂としては、例えば、エチレン-メタクリル酸共重合樹脂(EMAA)、エチレン-アクリル酸共重合樹脂(EAA)、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、エチレン-エチルアクリレート共重合樹脂(EEA)、エチレン-ブチルアクリレート共重合樹脂(EBA)等が挙げられる。
【0029】
本実施形態において、古紙を水温23℃で24時間浸漬させた後の水のpHは、好ましくは6.0以上、より好ましくは7.0以上、さらに好ましくは8.0以上、よりさらに好ましくは12.0以上である。
古紙を水温23℃で24時間浸漬させた後の水のpHが6.0以上であると、ベールの腐敗を促進させる菌の繁殖が抑制されるため、耐腐敗性がより向上する。
古紙を水温23℃で24時間浸漬させた後の水のpHは、実施例に記載の方法により測定される。
【0030】
本実施形態において、古紙の密度の中央値は、好ましくは0.70g/cm以上であり、より好ましくは0.73g/cm以上1.00g/cm以下、さらに好ましくは0.76g/cm以上0.90g/cm以下である。
古紙の密度の中央値が0.70g/cm以上であると、ベール成形前に古紙を洗浄した際などに、古紙中に残留する水分が低減されるため、耐腐敗性がより向上する。また、古紙の密度の中央値が前記上限値以下の範囲内であると、ベールをリサイクルに供した際の離解工程において、古紙中に十分な水が浸透しやすいため、古紙の離解性がより向上する。
古紙の密度の中央値は、古紙原料の紙基材層を抄紙する際の脱水時のプレス線圧などにより、調整することができる。
【0031】
本実施形態において、古紙の24時間の吸水度は、好ましくは25%以上85%以下、より好ましくは30%以上80%以下、さらに好ましくは40%以上75%以下、よりさらに好ましくは、50%以上65%以下である。
古紙の24時間の吸水度が25%以上であると、ベールをリサイクルに供した際の離解工程において、古紙中に十分な水が浸透しやすいため、古紙の離解性がより向上する。また、古紙の24時間の吸水度が85%以下であると、ベール成形前に古紙を洗浄した際などに、古紙中に残留する水分が低減されるため、耐腐敗性がより向上する。
古紙の24時間の吸水度は、例えば古紙の紙基材層中のサイズ剤の含有量などによって調整される。なお、古紙の24時間の吸水度は、古紙を水に24時間浸漬させた際の、古紙の質量の増加量の割合から求められ、具体的には実施例に記載の方法により求められる。
【0032】
上記古紙としては、例えば、飲食品用容器、紙袋、および紙製カトラリ由来の古紙などが挙げられる。飲食品用容器としては、例えば、液体容器、食品用容器などが挙げられ、より具体的には、紙トレー、アセプティック容器、紙カップ、牛乳パックなどが挙げられる。これらの中でも、上記古紙としては、アセプティック容器古紙および紙カップ古紙から選ばれる1種以上であることが好ましい。
アセプティック容器古紙は、例えば、下記の(a1)~(a2)の構成を有する。なお、下記構成について、右側に記載の層が、アセプティック容器として用いられた際に、内容物と接触していた層を示す。また、下記の構成において、「(印刷層)」および「(接着剤層)」は任意の層であり、必要に応じ、有してもよく、有していなくてもよい。また、下記構成において、紙基材層は上述した顔料塗工層を有していてもよく、該顔料塗工層上に印刷層が設けられていてもよい。また、下記構成において、「樹脂層」は、1層でもよく、2層以上でもよい。
(a1):樹脂層/(印刷層)/紙基材層/樹脂層/金属層/(接着剤層)/樹脂層
(a2):樹脂層/(印刷層)/紙基材層/樹脂層/樹脂層(バリア層)/(接着剤層)/樹脂層
【0033】
紙カップ古紙は、例えば、下記の(b1)~(b5)の構成を有することが好ましい。なお、下記構成について、右側に記載の層が、紙カップとして用いられた際に、内容物と接触していた層を示す。また、下記の構成において、「(印刷層)」および「(接着剤層)」は任意の層であり、必要に応じ、有してもよく、有していなくてもよい。また、下記構成において、紙基材層は上述した顔料塗工層を有していてもよく、該顔料塗工層上に印刷層が設けられていてもよい。また、下記構成において、「樹脂層」は、1層でもよく、2層以上でもよい。
(b1):(印刷層)/紙基材層/樹脂層/(接着剤層)/金属層/(接着剤層)/樹脂層
(b2):(印刷層)/紙基材層/樹脂層/(接着剤層)/樹脂層
(b3):樹脂層/(印刷層)/紙基材層/樹脂層
(b4):(印刷層)/樹脂層/紙基材層/樹脂層
(b5):(印刷層)/紙基材層/樹脂層
【0034】
本実施形態において、ベールの密度は、好ましくは0.3t/m以上1.0t/m以下、より好ましくは0.4t/m以上0.8t/m以下、さらに好ましくは0.5t/m以上0.7t/m以下である。
ベールの密度が0.3t/m以上であると、ベール内での古紙同士が十分に密着しているため、ベールが崩れにくくなり、ベールのハンドリング性が向上する。また、ベールの密度が1.0t/m以下であると、ベール内で古紙が必要以上に押し固められないため、リサイクルに供する際にベールがほぐれやすくなり、離解性がより向上する。また、ベール内での古紙同士の間に適度な隙間が生じるため、ベール内の水分の抜け道が多くなり、腐敗臭の原因となる菌の増殖がより抑制され、耐腐敗性がより向上する。
【0035】
本実施形態において、ベールは、本発明の効果を損なわない範囲で、上記古紙以外のその他の古紙を含んでもよい。また、本実施形態において、ベールは、本発明の効果を損なわない範囲で、上記古紙以外の異物を含んでもよい。異物としては、ストロー、飲食品用容器のキャップ、飲食品用容器の蓋等が挙げられる。本実施形態において、ベール中の上記古紙の含有量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
【0036】
(用途)
本実施形態のベールは、上記の特徴を有することから、古紙のリサイクルに好ましく供することができ、古紙パルプの原料として好適に用いることができる。本実施形態のベールを原料とする古紙パルプは、種々の紙の原料として好ましく用いられる。抄造する紙の種類は、特に制限されず、例えば、印刷用紙、包装用紙、衛生用紙、板紙などが挙げられる。また、抄造した紙を加工して、包装容器(例えば、ティッシュ箱、紙コップのスリーブなど)を製造することも可能である。また、本実施形態のベールは、古紙に含まれる樹脂層由来の樹脂成分、および金属層由来の金属成分を回収し、これらをリサイクルに供することもできる。
【0037】
[ベールの製造方法]
本実施形態のベールの製造方法は、少なくとも樹脂層および紙基材層を有する古紙を、圧縮成形してベールを得る成形工程を有し、前記古紙の坪量が、100g/m以上であり、前記古紙の面積の中央値が、20cm以上150cm以下である。
本実施形態のベールの製造方法は、古紙の面積の中央値が20cm以上150cm以下であることで、ベールの耐腐敗性および古紙の離解性が向上する。
【0038】
本実施形態のベールの製造方法における古紙は、上述の本実施形態のベールで例示されている古紙と同様である。
【0039】
(成形工程)
本実施形態のベールの製造方法は、少なくとも樹脂層および紙基材層を有する古紙を、圧縮成形してベールを得る成形工程を有する。成形工程におけるベール成形装置としては、公知のベール成形装置を適宜使用すればよい。
【0040】
成形工程において、ベール成形圧力は、好ましくは500kN/m以上2500kN/m以下、より好ましくは750kN/m以上2250kN/m以下、さらに好ましくは1000kN/m以上2000kN/m以下である。
ベール成形圧力が上記範囲内であると、ベールの密度が、上述の所望のベールの密度の範囲になるため、ベールの耐腐敗性および古紙の離解性がより向上する。
【0041】
(破砕工程)
本実施形態のベールの製造方法は、ベール成形前に、古紙を破砕する破砕工程を有することが好ましい。すなわち、本実施形態のベールの製造方法は、上記成形工程の前に、古紙を破砕する破砕工程を有することが好ましい。破砕工程を有すると、成形工程に供する古紙が適度な大きさに揃えられるため、例えばベールをリサイクルに供する際、離解処理がより効率化され、古紙の離解性がより向上する。
破砕工程に用いる破砕機としては、破砕後の古紙の大きさに合わせて、1軸破砕機、2軸破砕機などを適宜用いることが好ましい。また、破砕工程を実施する際に、同時に後述の洗浄工程を実施する場合、破砕洗浄機などを適宜用いることが好ましい。
【0042】
破砕工程において、破砕機のフック数は、古紙の面積の中央値を所望の範囲内とする観点から、好ましくは2以上10以下、より好ましくは4以上8以下である。
【0043】
(洗浄工程)
本実施形態のベールの製造方法は、ベール成形前に、古紙を洗浄する洗浄工程を有することが好ましい。すなわち、本実施形態のベールの製造方法は、上記成形工程の前に、古紙を洗浄する洗浄工程を有することが好ましい。また、本実施形態のベールの製造方法が、洗浄工程の前に破砕工程を有する場合、洗浄工程は、破砕工程後の古紙を洗浄する工程であることが好ましい。
【0044】
また、洗浄工程において、古紙を洗浄するための洗浄水は、中性またはアルカリ性の洗浄水であることが好ましく、アルカリ性の洗浄水であることがより好ましい。すなわち、本実施形態のベールの洗浄方法において、洗浄工程は、古紙を、中性またはアルカリ性の洗浄水で洗浄する工程であることが好ましく、古紙を、アルカリ性の洗浄水で洗浄する工程であることがより好ましい。
なお、本明細書において、「中性」とは、pHが6.5より大きく7.5未満の範囲を示し、「アルカリ性」とは、pHが7.5以上の範囲を示す。
洗浄水が中性またはアルカリ性であると、ベールの腐敗を促進させる菌の栄養源となるたんぱく質などを、古紙から除去することができるため、ベールの耐腐敗性がより向上する。
【0045】
また、洗浄工程において、洗浄水のpHは、ベールの耐腐敗性向上の観点から、好ましくは6.5より大きく14.0以下、より好ましくは7.0以上12.0以下、さらに好ましくは7.5以上11.0以下、よりさらに好ましくは8.0以上10.5以下、一層好ましくは8.5以上10.0以下である。
【0046】
また、洗浄工程において、洗浄水は、ベールの耐腐敗性向上の観点から、水または水酸化ナトリウム水溶液が好ましく、水酸化ナトリウム水溶液がより好ましい。
洗浄水が水酸化ナトリウム水溶液である場合、洗浄水中の水酸化ナトリウムの濃度は、ベールの耐腐敗性向上の観点、および装置の保全性の観点から、好ましくは0.0001質量%(1質量ppm)以上5質量%以下、より好ましくは0.0002質量%(2質量ppm)以上1質量%以下、さらに好ましくは0.0003質量%(3質量ppm)以上0.01質量%(100質量ppm)以下、よりさらに好ましくは0.0004質量%(4質量ppm)以上0.001質量%(10質量ppm)以下である。
【0047】
洗浄工程は、破砕工程前に実施してもよく、破砕工程後で成形工程前に実施してもよく、破砕工程と洗浄工程を同時に行ってもよい。これらの中でも、洗浄効率の観点から、破砕工程後で成形工程前に洗浄工程を実施すること、または破砕工程と洗浄工程を同時に実施することが好ましく、破砕工程と洗浄工程を同時に実施することがより好ましい。
洗浄工程に用いる装置としては、公知の装置を適宜用いることができる。また、破砕工程と洗浄工程を同時に実施する場合は、破砕洗浄機などを適宜用いることが好ましい。
【実施例
【0048】
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により、限定的に解釈されるべきものではない。なお、実施例および比較例中の「部」および「%」は、特に断らない限り、それぞれ「質量部」および「質量%」を示す。また、実施例および比較例の操作は、特に断らない限り、23±1℃、50±2%RHの条件で行った。
【0049】
[ベールの製造]
<実施例1>
(古紙)
古紙として、表1の構成1の紙を飲料用紙容器として用いた後に回収された古紙(アセプティック包材古紙)を用いた。なお、飲料用紙容器として用いられた際の内容物は、牛乳、豆乳、および果汁入りジュース類などであった。
実施例1の構成1の古紙の紙基材層は、原料パルプ(パルプ配合(質量比):針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)/広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)=40/60、再離解フリーネス(CSF):550mL)100質量部に対し、サイズ剤としてロジンサイズ剤(荒川化学工業株式会社製、サイズパインN-881)を1.0質量部、乾燥紙力増強剤としてポリアクリルアミド系紙力増強剤(荒川化学工業株式会社製、PS117)を1.0質量部、硫酸バンドを1.0質量部添加した紙料(パルプスラリー)から得られたものを用いた。また、紙基材層を抄紙する際の脱水時のプレス線圧は、800kN/mであった。
(破砕工程・洗浄工程)
古紙を破砕洗浄機(A-tech株式会社製、紙容器リサイクル装置 PPRS)に投入し、フック数6の刃で破砕し、洗浄水(水酸化ナトリウム水溶液、濃度:5質量ppm、pH:9.0、新水使用量:24L/min)で洗浄した。
(ベール成形工程)
古紙約60kgを、ベール圧縮機(油研工業株式会社製、YB-32M-PA-10、ベールサイズ:640×430×350mm)に投入し、ベール成形圧力1800kN/mのベール成形圧力で圧縮し、ベールを得た。
【0050】
<実施例2>
破砕工程における刃のフック数を3としたこと、およびベール成形工程におけるベール成形圧力を1900kN/mとしたこと以外は、実施例1と同様にしてベールを得た。
【0051】
<実施例3>
破砕工程における刃のフック数を9としたこと、およびベール成形工程におけるベール成形圧力を1700kN/mとしたこと以外は、実施例1と同様にしてベールを得た。
【0052】
<実施例4>
洗浄工程における洗浄水を、水酸化ナトリウム水溶液(濃度:5質量%、pH:14.0)に変更した以外は、実施例1と同様にしてベールを得た。
【0053】
<実施例5>
洗浄工程における洗浄水を、水(水酸化ナトリウムの添加無し、pH:7.0)に変更した以外は、実施例1と同様にしてベールを得た。
【0054】
<実施例6>
古紙として、紙基材層を抄紙する際の脱水時のプレス線圧を750kN/mとして得られた構成1の古紙を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてベールを得た。
【0055】
<実施例7>
古紙として、紙基材層を抄紙する際の脱水時のプレス線圧を850kN/mとして得られた構成1の古紙を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてベールを得た。
【0056】
<実施例8>
古紙として、紙基材層を製造する際の紙料(パルプスラリー)へのサイズ剤の添加量が、原料パルプ100質量部に対して0.5質量部である構成1の古紙を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてベールを得た。
【0057】
<実施例9>
古紙として、紙基材層を製造する際の紙料(パルプスラリー)へのサイズ剤の添加量が、原料パルプ100質量部に対して0.8質量部である構成1の古紙を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてベールを得た。
【0058】
<実施例10>
古紙として、紙基材層を製造する際の紙料(パルプスラリー)へのサイズ剤の添加量が、原料パルプ100質量部に対して1.2質量部である構成1の古紙を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてベールを得た。
【0059】
<実施例11>
古紙として、紙基材層を製造する際の紙料(パルプスラリー)へのサイズ剤の添加量が、原料パルプ100質量部に対して1.5質量部である構成1の古紙を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてベールを得た。
【0060】
<実施例12>
ベール成形工程におけるベール成形圧力を1400kN/mとしたこと以外は、実施例1と同様にしてベールを得た。
【0061】
<実施例13>
ベール成形工程におけるベール成形圧力を2200kN/mとしたこと以外は、実施例1と同様にしてベールを得た。
【0062】
<実施例14>
古紙として、表1の構成2の紙を飲料用紙容器として用いた後に回収された古紙(紙カップ古紙)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてベールを得た。なお、飲料用紙容器として用いられた際の内容物は、アイスコーヒー、清涼飲料水、アイスクリームなどであった。
なお、実施例14の構成2の古紙の紙基材層は、原料パルプ(パルプ配合(質量比):針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)/広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)=40/60、再離解フリーネス(CSF):440mL)100質量部に対し、サイズ剤としてロジンサイズ剤(荒川化学工業株式会社製、サイズパインN-881)を1.0質量部、乾燥紙力増強剤としてポリアクリルアミド系紙力増強剤(荒川化学工業株式会社製、PS117)を1.0質量部、湿潤紙力増強剤としてポリアミドエピクロロヒドリン(星光PMC株式会社製、WS4024、湿潤紙力増強剤)を0.15質量部、硫酸バンドを1.0質量部添加した紙料(パルプスラリー)から得られたものを用いた。また、紙基材層を抄紙する際の脱水時のプレス線圧は、700kN/mであった。
【0063】
<実施例15>
古紙として、表1の構成3の紙を飲料用紙容器として用いた後に回収された古紙(紙カップ古紙)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてベールを得た。なお、飲料用紙容器として用いられた際の内容物は、ホットコーヒー、ココア、緑茶およびコーンスープなどであった。
なお、実施例15の構成3の古紙の紙基材層は、原料パルプ(パルプ配合(質量比):針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)/広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)=40/60、再離解フリーネス(CSF):440mL)100質量部に対し、サイズ剤としてロジンサイズ剤(荒川化学工業株式会社製、サイズパインN-881)を1.0質量部、乾燥紙力増強剤としてポリアクリルアミド系紙力増強剤(荒川化学工業株式会社製、PS117)を1.0質量部、湿潤紙力増強剤としてポリアミドエピクロロヒドリン(星光PMC株式会社製、WS4024、湿潤紙力増強剤)を0.15質量部、硫酸バンドを1.0質量部添加した紙料(パルプスラリー)から得られたものを用いた。また、紙基材層を抄紙する際の脱水時のプレス線圧は、700kN/mであった。
【0064】
<比較例1>
破砕工程を実施しなかったこと(洗浄工程は実施した)、およびベール成形工程におけるベール成形圧力を1900kN/mとしたこと以外は、実施例1と同様にしてベールを得た。
【0065】
<比較例2>
破砕工程における刃のフック数を12としたこと、およびベール成形工程におけるベール成形圧力を1700kN/mとしたこと以外は、実施例1と同様にしてベールを得た。
【0066】
実施例および比較例で用いた古紙の構成を表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
[評価・測定方法]
<古紙の面積の中央値>
実施例および比較例のベールから無作為に採取した古紙約100gを、ふるい(φ:20mm)にかけて微小古紙を除去し、残った古紙をEPSON Scanを用いてスキャンし、画像を取得した。スキャンした画像を、ImageJを用いて解析し、各古紙の面積を取得することで面積の中央値を算出した。
なお、面積の中央値とは、取得した各古紙の面積の値を小さい順に並べた時に、中央に位置する値を指す。
【0069】
<古紙を水温23℃で24時間浸漬させた後の水のpH>
実施例および比較例のベールから無作為に採取した古紙を絶乾させた後、該絶乾燥後の古紙質量の100倍の質量になるように、23℃に調温したイオン交換水を投入し、古紙を水に24時間浸漬させた。その後、古紙を浸漬後の水のpHを、pHメーター(F-12、株式会社堀場製作所製)を用いて測定し、これを古紙を水温23℃で24時間浸漬させた後の水のpHとした。
【0070】
<古紙の密度の中央値>
実施例および比較例のベールから無作為に採取した古紙を絶乾させた後、JIS P 8111:1998に規定された調湿環境下にて96時間調湿した。調湿後の古紙約100gを、ふるい(φ:20mm)にかけて微小古紙を除去し、残った古紙の密度を、JIS P 8118 :2014に準じて測定することで古紙の密度の中央値を算出した。
なお、密度の中央値とは、取得した各古紙の密度の値を小さい順に並べた時に、中央に位置する値を指す。
【0071】
<24時間の吸水度>
実施例および比較例のベールから無作為に採取した古紙を絶乾させた後、JIS P 8111:1998に規定された調湿環境下にて96時間調湿した。調湿後の古紙約10gを、水1L(水温:23±1℃)に24時間浸漬させた後、古紙を回収した。回収した古紙を1枚ずつ吸水紙(ADVANTEC社製、No.26、190mm×190mm)に配置し挟んだ状態とした後、金属ローラ(幅18cm、直径10cm、10kg)を圧力を加えずに1往復転がし、余分な水分を除去し、これを水に浸漬後の古紙とした。水に浸漬前後の古紙の質量を測定し(1mgの単位まで測定)、下記計算式より吸水度を求め、これを、古紙の24時間の吸水度とした。
[吸水度(%)]=([水に浸漬後の古紙の質量(g)]-[水に浸漬前の古紙の質量(g)])/[水に浸漬前の古紙の質量(g)]×100
【0072】
<サイズ剤乾燥紙力増強剤含有量、および湿潤紙力増強剤の含有量>
実施例および比較例のベールから無作為に採取した古紙を絶乾させた。絶乾後の古紙について、樹脂層等の紙基材層以外の層を、顕微鏡下で層の境界を確認しつつ、研削装置(有限会社佐川製作所製、砥石寸法φ50.8×12.7mm)を用いて研削して除去し、紙基材層を回収した。
回収した紙基材層より、紙基材層中のサイズ剤、乾燥紙力増強剤および湿潤紙力増強剤の含有量を、以下の測定条件で熱分解ガスクロマトグラフィー(GCMS)を用いて、それぞれ定量した。
(サイズ剤含有量の測定条件)
・熱分解炉温度:450℃
・測定時温度条件:100~325℃まで、15℃/minで昇温し測定
・使用カラム:HP-5MS(アジレント・テクノロジー社製)
・検量線:既知の濃度のロジンサイズ剤(荒川化学工業株式会社製、サイズパインN-881)を標品として検量線を作成した。
(乾燥紙力増強剤含有量の測定条件)
・熱分解炉温度:500℃
・測定時温度条件:40~270℃まで、10℃/minで昇温し測定
・使用カラム:HP-INNOWax(アジレント・テクノロジー社製)
・検量線:既知の濃度のポリアクリルアミド(荒川化学工業株式会社製、PS117、乾燥紙力増強剤)を標品として検量線を作成した。
(湿潤紙力増強剤含有量の測定条件)
・熱分解炉温度:500℃
・測定時温度条件:40~270℃まで、10℃/minで昇温し測定
・使用カラム:HP-INNOWax(アジレント・テクノロジー社製)
・検量線:既知の濃度のポリアミドエピクロロヒドリン(星光PMC株式会社製、WS4024、湿潤紙力増強剤)を標品として検量線を作成した。
【0073】
<ベール密度>
ベール成形工程の際に投入した古紙の重さと、得られたベールの体積から、ベール密度を算出した。
【0074】
<耐腐敗性>
実施例および比較例のベールに対し、側面のみ5本のPPバンド(もりや産業株式会社製、型番:12 J-S1)を、コードレスハンディ梱包機(ストラパック株式会社製、STB73、引締め強さ900N)を用いて等間隔に巻き、温度30℃、湿度70%RHの条件下で3日間保管した後の臭気を、官能評価により下記の「臭気の点数」を基に点数化した。
臭気の判定は、臭気判定士による5基準臭液を用いたパネル選定試験に合格したパネラーが行った。10人のパネラーの評価結果の平均点を求め、下記評価基準により耐腐敗性を評価した。なお、平均点が小さいほど、臭気が少ないことを示し、耐腐敗性に優れることを示す。
(臭気の点数)
0点:硫黄系化合物の臭いがしない
1点:硫黄系化合物の臭いが少し感知される
2点:硫黄系化合物の臭いが感知される
3点:硫黄系化合物の臭いが強く感知される
(耐腐敗性の評価基準)
A:パネラーの平均点が0点以上0.5点未満
B:パネラーの平均点が0.5点以上1.0点未満
C:パネラーの平均点が1.0点以上1.5点未満
D:パネラーの平均点が1.5点以上
【0075】
<離解性>
実施例および比較例のベールから、絶乾質量で60gの古紙を採取し、離解機(熊谷理機工業株式会社製、No.2532)を用いて15分間離解を行い、固形濃度3質量%のパルプスラリーを得た。その後、得られたパルプスラリーを、フラットスクリーン(熊谷理機工業株式会社製、No.230703、スリット:6カット)に、流量:10L/分で15分間の条件で投入した。フラットスクリーンを通過しなかった残渣物の絶乾質量から残渣率を求め、下記計算式で繊維回収率を求め、離解性の指標とした。
繊維回収率(%)={1-([残渣率(%)]/100)}/古紙の坪量における紙基材層の坪量の割合×100
残渣率(%)=[フラットスクリーンを通過しなかった残渣物の絶乾質量(g)]/[フラットスクリーンに投入したパルプスラリーの固形分質量(g)]×100
(評価結果)
A:繊維回収率が90%以上
B:繊維回収率が70%以上90%未満
C:繊維回収率が50%以上70%未満
D:繊維回収率が50%未満
【0076】
実施例および比較例における、測定・評価結果について、表2に示す。
【0077】
【表2】
【0078】
表2より、実施例1~15のベールは、古紙の面積の中央値が、20cm以上150cm以下であるため、耐腐敗性に優れ、かつ、古紙の離解性にも優れることが確認された。
一方、比較例1のベールは、古紙の面積の中央値が150cmよりも大きいため、離解性が劣る結果となった。また、比較例2のベールは、古紙の面積の中央値が20cm未満であるため、耐腐敗性が劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明のベールは、上記の特徴を有することから、耐腐敗性に優れ、かつ、古紙の離解性にも優れる。
【要約】
【課題】耐腐敗性に優れ、かつ、古紙の離解性にも優れるベール、および該ベールの製造方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも樹脂層および紙基材層を有する古紙からなるベールであり、前記古紙の坪量が、100g/m以上であり、前記古紙の面積の中央値が、20cm以上150cm以下である、ベール、および少なくとも樹脂層および紙基材層を有する古紙を、圧縮成形してベールを得る成形工程を有し、前記古紙の坪量が、100g/m以上であり、前記古紙の面積の中央値が、20cm以上150cm以下である、ベールの製造方法。
【選択図】なし