(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-25
(45)【発行日】2025-04-02
(54)【発明の名称】免疫チェックポイント阻害サプリメント
(51)【国際特許分類】
A61K 36/07 20060101AFI20250326BHJP
A61K 35/744 20150101ALI20250326BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250326BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250326BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20250326BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20250326BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20250326BHJP
【FI】
A61K36/07
A61K35/744
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P37/04
A23L33/10
A23L33/135
(21)【出願番号】P 2023172382
(22)【出願日】2023-10-03
【審査請求日】2024-01-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】309037826
【氏名又は名称】RAPAS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【氏名又は名称】白川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】北村 啓子
(72)【発明者】
【氏名】樫本 逸志
【審査官】伊藤 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-187488(JP,A)
【文献】特開2018-083807(JP,A)
【文献】国際公開第2006/112037(WO,A1)
【文献】特開2010-275235(JP,A)
【文献】特開2022-033444(JP,A)
【文献】The Journal of Microbiology,2007年,Vol.45, No.5,pp.373-378
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともヒメマツタケの亜臨界水抽出物を含有する免疫チェックポイント阻害サプリメントであって、
ヒメマツタケの亜臨界水抽出物を5~80重量%、
ササク
レヒトヨタケ抽出物を1~10重量%、
クリスパタス菌を10重量%含有することを特徴とする免疫チェックポイント阻害サプリメント。
【請求項2】
少なくともヒメマツタケの亜臨界水抽出物を含有する免疫チェックポイント阻害サプリメントであって、
ヒメマツタケの亜臨界水抽出物を5~60重量%、
ササク
レヒトヨタケ抽出物を1~20重量%、
クリスパタス菌を
1重量%含有することを特徴とする免疫チェックポイント阻害サプリメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒメマツタケの亜臨界水抽出物を含有する免疫チェックポイント阻害サプリメントに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、癌の新たな治療法として、癌免疫療法が注目されている。癌細胞と、これを認識して攻撃するT細胞等との間に、癌抗原を提示した主要組織適合性複合体をT細胞受容体が認識して生じるシグナルの他に、免疫促進性又は抑制性に作用する補助シグナルのメカニズムがあることが報告され、このメカニズムに焦点を当てた治療の可能性に関心が高まっている。このメカニズムにおいて免疫抑制性シグナルを誘導し得る分子は、「免疫チェックポイント分子」と呼ばれており、PD-1リガンド経路に関与するT細胞上のPD-1受容体及び癌細胞上で発現するリガンドPD-L1及びPD-L2、CTLA4経路に関与するT細胞上のCTLA4受容体等が知られている(非特許文献1及び2)。
【0003】
このPD-1分子は、CD28ファミリーに属する免疫抑制性補助シグナル受容体であり、活性化したT細胞、B細胞及び骨髄系細胞に発現し、そのリガンドとの結合によって、抗原特異的にT細胞活性を抑制することが示された(非特許文献1)。PD-1のリガンドとしては、B7ファミリーに属するPD-L1及びPD-L2が知られている。PD-1経路は、癌細胞に対する免疫の抑制に関与しているとされており、この経路を標的とした抗PD-1抗体や抗PD-L1抗体が癌治療薬候補として期待され、抗体医薬の開発が進んでいる(特許文献1~3)。抗PD-1抗体の例としては、ニボルマブ(Nivolumab)(オプジーボ(Opdivo(登録商標)))及びペンブロリズマブ(Pembrolizumab)が知られている。
【0004】
CTLA4は、1987年にBrunet等により同定され、促進性補助シグナルB7/CD28経路によって活性化したT細胞に対してCD28と競合的に作用することで、T細胞免疫応答の抑制に関わる分子であることが示されている(非特許文献2)。抗CTLA4抗体の例として、イピリムマブ(Ipilimumab)が知られている。
【0005】
最近の研究では、それぞれの癌に特有な遺伝子変異が存在することがわかってきている。肺癌では「ALK融合遺伝子」「EGFR遺伝子変異」といった特有の遺伝子変異がみられ、これらの遺伝子変異をターゲットとした「個別化治療」を行うことができるようになりつつある。最近、AXLキナーゼの活性化が新たなEGFR-TKI耐性機序となることが報告された。さらに、AXLと上皮間葉転換(EMT)との関連が指摘され、予後の悪化や腫瘍増大、転移にも関与することが報告されている。AXLは様々な癌において過剰発現し、増殖や進展に関与しており、また、AXLの活性化はEGFR-TKIの他、抗癌剤シスプラチンやHER2標的薬ラパチニブ(lapatinib)等、種々の抗癌剤の耐性獲得に関与していることが知られている。
【0006】
一方、キノコ類は、古来より東洋医学にも使用されており、悪性腫瘍の予防や治療に対しても、免疫強化やアポトーシスの誘導などにより有益であるとされている。その中でも、特にヒメマツタケ(Agaricus blazei murrill)は、抗腫瘍活性が高く、ヒメマツタケ中の多糖体β‐(1→6)‐D‐グルカンタンパク質複合体(FIII2b画分)がマクロファージやNK細胞を活性化して、癌に対して増殖抑制作用をもつ。さらに、樹状細胞の活性化作用というあらたな免疫機構のメカニズムも解明されている(特許文献4)。しかしながら、これまで、キノコ抽出液で、上述のAXLの阻害効果や免疫チェックポイント阻害効果等に関しては、報告されてこなかった。
【0007】
上述した免疫チェックポイント分子に対して阻害的に作用する薬剤、いわゆる「免疫チェックポイント阻害剤」は、臨床的にも効果が認められつつある。しかしながら、抗体医薬による治療は非常に費用がかかるために、患者にとっての負担は過度なものとなり得る。
【0008】
特許文献5には、免疫チェックポイント分子等の免疫系で抑制的に作用するタンパク質の発現及び/又は機能に対して阻害的に作用し、癌に対する免疫能を向上させることができる天然由来の成分が開示されている。具体的には、以下の通りである。
1.ヒメマツタケ(Agarigus blazei Murill)アルカリ抽出物又は亜臨界水抽出物を有効成分として含有する、抗癌剤耐性抑制剤。
2.免疫チェックポイント分子の発現及び/又は機能を阻害する免疫チェックポイント阻害剤である、上記1記載の抗癌剤耐性抑制剤。
3.免疫チェックポイント分子がPD-1、PD-L1、PD-L2及び/又はCTLA4分子である、上記2記載の抗癌剤耐性抑制剤。
4.AXL、ADAM17及び/若しくはHMGB1の発現及び/又は機能を阻害する、上記1~3のいずれか記載の抗癌剤耐性抑制剤。
5.ヒメマツタケアルカリ抽出物又は亜臨界水抽出物が分子量100,000未満の有効成分を含む、上記1~4のいずれか記載の抗癌剤耐性抑制剤。
6.前記有効成分がSDS-ポリアクリルアミド電気泳動で17kD、26kD、又は36kDに検出されるタンパク質の1種以上を含む、上記1~5のいずれか記載の抗癌剤耐性抑制剤。
7.前記有効成分が0.3 M~3.0 M NaCl濃度で溶出した後に回収した成分を含む、上記1~6のいずれか記載の抗癌剤耐性抑制剤。
8.上記1~7のいずれか記載の抗癌剤耐性抑制剤を含有する、癌治療剤。
9.以下の工程:
(a)ヒメマツタケ子実体に対して80-100℃の熱水を用いる抽出工程、及び
(b)上記工程(a)で得られる残渣に対して3-10% NaOH水溶液を用いる抽出工程を含み、上記工程(b)で得られたろ液をヒメマツタケアルカリ抽出物として取得する、上記1~7のいずれか記載の抗癌剤耐性抑制剤の製造方法。
10.以下の工程:
(a)ヒメマツタケ子実体に対して80-100℃の熱水を用いる抽出工程、及び
(b)上記工程(a)で得られる残渣に対して気圧2-5MPa、温度120-200℃の亜臨界水を用いる抽出工程を含み、上記工程(b)で得られた抽出液をヒメマツタケ亜臨界水抽出物として取得する、上記1~7のいずれか記載の抗癌剤耐性抑制剤の製造方法。
【0009】
特許文献5記載の技術により、免疫チェックポイント分子等の免疫系で抑制的に作用するタンパク質の発現及び/又は機能に対して阻害的に作用し、癌に対する免疫応答を促進させ得る天然由来の薬剤の提供が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許第4409430号明細書
【文献】特許第5159730号明細書
【文献】特許第5885764号明細書
【文献】特開2015-78164号公報
【文献】特許第7141630号明細書
【非特許文献】
【0011】
【文献】Annu Rev Immunol, 26: 677-704, 2008
【文献】Nature 328: 267-270, 1987
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
「ササクレヒトヨタケ(別名:コプリヌス)」は、かさ先端に丸みを帯びた円筒形を呈するキノコの一種である。また、「クリスパタス菌」は、出産時の母親の産道を経由して乳幼児の腸内に受け継がれる腸内菌である。上述した「ヒメマツタケ(Agarigus blazei Murill)アルカリ抽出物又は亜臨界水抽出物」が、免疫チェックポイント阻害剤として有効であることは明白であるものの、「ササクレヒトヨタケ(別名:コプリヌス)」および「クリスパタス菌」と混合させることで、相乗効果が得られることについては、これまで検証されてこなかった。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ヒメマツタケ(アガリクス)亜臨界水抽出物、コプリヌス(ササクレヒトヨタケ粉末)、クリスパタス菌を混合させ、免疫チェックポイント阻害機能を有するサプリメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)上記の目的を達成するために、本願は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の一態様に係る免疫チェックポイント阻害サプリメントは、少なくともヒメマツタケの亜臨界水抽出物を含有する免疫チェックポイント阻害サプリメントであって、ヒメマツタケの亜臨界水抽出物を5~80重量%、ササクヒトヨタケ抽出物を1~10重量%、クリスパタス菌を0.1~10重量%含有することを特徴とする。
【0015】
(2)また、本発明の免疫チェックポイント阻害サプリメントは、少なくともヒメマツタケの亜臨界水抽出物を含有する免疫チェックポイント阻害サプリメントであって、ヒメマツタケの亜臨界水抽出物を5~60重量%、ササクヒトヨタケ抽出物を1~20重量%、クリスパタス菌を0.1~20重量%含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、免疫細胞の「ガン細胞からの防御力」と「ガン細胞への攻撃力」の両方が兼ね備えられることになり、大きな相乗効果が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】ガン細胞がT細胞の攻撃にブレーキをかける様子を模式的に示した図である。
【
図2】免疫チェックポイントを阻害することで、T細胞本来のガン細胞への攻撃機能が発揮される様子を模式的に示した図である。
【
図3】亜臨界水抽出法を用いて免疫チェックポイント阻害効果のあるサプリメントを製造する様子を模式的に示した図である。
【
図4】免疫チェックポイント阻害と同時に免疫力を効果した様子を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[免疫チェックポイント阻害剤について]
人体の免疫細胞は、ガン細胞を攻撃する機能と共に、その攻撃を抑止する「ブレーキ」の機能も備えていることが知られている。
図1は、ガン細胞がT細胞の攻撃にブレーキをかける様子を模式的に示した図である。
図1に示すように、免疫細胞の一つであるT細胞には、「PD-1」というブレーキの役割の受容体が存在する。攻撃を受けるガン細胞は、自らの存続のためにT細胞の攻撃に対抗して、「PD-L1」という分子を出し、このPD-L1がT細胞のPD-1受容体と結合して、T細胞の攻撃を抑制する。このメカニズムは、2018年ノーベル医学生理学賞を受賞した京都大学の本庶教授によって解明された。
【0019】
このように免疫にブレーキをかける「PD-L1」分子は、「免疫チェックポイント分子」と呼ばれる。このメカニズムの解明に基づき、「免疫チェックポイント分子」の働きを阻害し、ガン細胞に対する免疫細胞の攻撃機能にブレーキがかからないようにブロックする「ニボルマブ」と「ドスタルリマブ」が開発された。
図2は、免疫チェックポイントを阻害することで、T細胞本来のガン細胞への攻撃機能が発揮される様子を模式的に示した図である。このように、T細胞の攻撃機能にブレーキがかからないため、免疫細胞本来のガン細胞攻撃力が発揮できるようになる。このようなガン治療薬は「免疫チェックポイント阻害剤」と呼ばれる。
【0020】
[天然由来成分による免疫チェックポイント阻害剤について]
サプリメント業界においても、天然由来成分による免疫チェックポイント阻害剤の開発が進められていた。「岩出菌学研究所」は、独自の研究と探索で、キノコ種である「ヒメマツタケ」の細胞壁中に、天然由来の免疫チェックポイント阻害効果のある有効成分を発見した。ブラジルには、日本に自生していない「カワリハラタケ(岩出博士により仮登録)」というキノコが存在する。そして、このカワリハラタケの担子菌をブラジルから日本に取り寄せ、10年の歳月をかけて1975年に岩出菌学研究所の研究所所長である岩出亥之助(いわで いのすけ)氏によって世界で初めて人工栽培に成功したキノコが「ヒメマツタケ」である。
【0021】
岩出菌学研究所は、三重大学等と提携し、この「ヒメマツタケ」について約50年間に渡り共同研究を実施している。研究所所長の岩出亥之助氏は、もっとも安全且つ有効成分が多く含まれる高品質のヒメマツタケを安定的に栽培するために、基になる「種菌」を作製する必要があると考えた。そして、年月をかけて試験を繰り返し、高品質のヒメマツタケを栽培するのに最も適した種菌が作製され、「岩出101株」と名付けられた。現在、岩出101株を種菌としたヒメマツタケの栽培は、南米のパラグアイとブラジルで無農薬有機栽培によって行われている。免疫チェックポイント阻害効果のある成分が多く含まれる岩出101株を種菌とするヒメマツタケは、画期的な日本の誇る新種のキノコであるといえる。
【0022】
さて、ヒメマツタケに免疫チェックポイント阻害効果のある有効成分が存在しているとしても、ヒメマツタケをそのまま食しただけでは、十分な免疫チェックポイント阻害効果を得ることはできない。これは、免疫チェックポイント阻害効果のある有効成分は、ヒメマツタケの非常に頑丈な細胞壁中に存在し、人間はこの細胞壁を分解する消化酵素を持っていないため、十分に有効成分を吸収できないからである。従って、ヒメマツタケから免疫チェックポイント阻害効果を得るためには、ヒメマツタケ細胞壁中の有効成分を抽出し、サプリメントに加工した上で摂取することが望ましい。ここで、現在のサプリメントに使用されているヒメマツタケ抽出物の抽出方法は、熱水抽出法、細胞壁破壊法などが存在する。しかし、免疫チェックポイント阻害効果のある有効成分は、熱水抽出法、細胞壁破壊法などでの抽出は困難であることが知られている。
【0023】
岩出菌学研究所と三重大学等は、共同研究の結果、「亜臨界水抽出法」という抽出技術を活用し、ヒメマツタケ細胞壁中の免疫チェックポイント阻害効果のある有効成分を効率よく抽出することに成功した。
図3は、亜臨界水抽出法を用いて免疫チェックポイント阻害効果のあるサプリメントを製造する様子を模式的に示した図である。この亜臨界水抽出法は、有機溶剤、酵素、酸、塩基などを使用せず、水と温度・圧力だけで抽出する。この方法により、ヒメマツタケの細胞壁から免疫チェックポイント阻害効果のある有効成分を、組成及び活性を壊さず、且つ効率的に抽出することが可能となった(特許第7141630 号)。
【0024】
この方法による抽出物は、「ヒメマツタケ亜臨界水抽出物(通称:CP-101)」と呼ばれる。「CP-101」は、「天然由来の免疫チェックポイント阻害剤」といえるサプリメントである。免疫チェックポイント阻害効果のある有効成分が多く含まれる岩出101株を種菌としたヒメマツタケが使用され、副作用の心配もないとされている。
【0025】
[ササクレヒトヨタケについて]
ササクレヒトヨタケ(別名:コプリヌス)は、かさ先端に丸みを帯びた円筒形を呈するキノコの一種であり、エルゴチオネインという含硫アミノ酸を含むことから、近年、種々の業界で注目を浴びている。このエルゴチオネイン(L-Ergothioneine)は、抗酸化活性が非常に高く、L-システインやアスコルビン酸(ビタミンC)など他の抗酸化成分よりも強い活性が認められている。美容作用があることも知られており、エルゴチオネインには、しわやたるみを防ぐエラスターゼ活性阻害作用やシミの原因をつくらないチロシナーゼ活性阻害作用などもあるといわれている。また、エルゴチオネインには、抗炎症作用や細胞エネルギー増進作用、抗ストレス作用など様々な効用があるといわれており、エルゴチオネインには、活性酸素の一種であるスーパーオキシドラジカルを認識し、捉える働きがあることが分かっている。
【0026】
[クリスタパス菌について]
クリスパタス菌は、元々女性の膣内に存在する乳酸菌であり、出産時の母親の産道を経由して乳幼児の腸内に受け継がれる。クリスパタス菌は、腸内にて、アレルギーや感染症の発症リスクを軽減させると言われている。腸内のクリスパタス菌は加齢とともに減少していき、それに伴い症例の発症リスクも上昇していくと考えられており、サプリメントとして摂取することで、クリスパタス菌を補給する方法が注目されている。
【0027】
[ササクヒトヨタケ抽出物とクリスパタス菌との混合]
上述したように、CP-101は、免疫チェックポイントを阻害する。一方、ササクレヒトヨタケ抽出物とクリスパタス菌の混合物は、免疫力を大幅に強化する。
図4は、免疫チェックポイント阻害と同時に免疫力を効果した様子を模式的に示した図である。
図4に示すように、CP-101、ササクレヒトヨタケ抽出物、およびクリスパタス菌の3種類を摂取することによって、免疫細胞の「ガン細胞からの防御力」と「ガン細胞への攻撃力」の両方が兼ね備えられることになり、大きな相乗効果が期待できると考えられる。
【実施例1】
【0028】
本発明者らは、A社の協力を得て、「ササクヒトヨタケ抽出物とヒメマツタケ亜臨界水抽出物との混合物」について、単独およびクリスパタス菌との併用での免疫活性(インターロイキン12の産生誘導を指標とする免疫活性作用)を測定した。
【0029】
[試験概要]
サンプルとして、「ササクヒトヨタケ抽出物とヒメマツタケ亜臨界水抽出物との混合物」および「クリスパタス菌(10%、1%、0.1%)」を使用した。
【0030】
[試験デザイン]
動物免疫細胞を用いたインターロイキン12(IL-12)産生誘導能の評価試験とした。ここで、「IL-12」とは、免疫細胞が産生し、免疫賦活や抗アレルギー作用を導くサイトカインと呼ばれるタンパク質である。「IL-12」は、生体の免疫力を司る「NK細胞」を活性化させ、免疫力を高める機能を有する。さらに、「IL-12」は、抗アレルギー作用を導く「Th1細胞」を活性化し、アレルギー症状の緩和に貢献していることが報告されている。
【0031】
[試験方法]
「細胞」は、マクロファージ様株化細胞(免疫細胞)を使用した。「培地」として、培養細胞を懸濁後、マイクロプレートに分注し、被験物質を最終濃度になるように添加して産生された培養上清中の「IL-12」の量をELISA法により測定した。
【0032】
[結果と考察]
図5は、上記試験の結果を示すグラフであり、以下のことを読み取ることができる。
・コントロールの免疫活性(IL-12pg/ml)…3
・「ササクヒトヨタケ抽出物とヒメマツタケ亜臨界水抽出物との混合物」の免疫活性(IL-12pg/ml)…6
・「ササクヒトヨタケ抽出物とヒメマツタケ亜臨界水抽出物との混合物」と「クリスパタス菌10%」との混合物の免疫活性(IL-12pg/ml)…159
・「クリスパタス菌10%」の免疫活性(IL-12pg/ml)…100
また、
図6は、上記試験の他の結果を示すグラフであり、以下のことを読み取ることができる。
・コントロールの免疫活性(IL-12pg/ml)…3
・「ササクヒトヨタケ抽出物とヒメマツタケ亜臨界水抽出物との混合物」の免疫活性(IL-12pg/ml)…6
・「ササクヒトヨタケ抽出物とヒメマツタケ亜臨界水抽出物との混合物」と「クリスパタス菌1%」との混合物の免疫活性(IL-12pg/ml)…136
・「クリスパタス菌1%」の免疫活性(IL-12pg/ml)…65
また、
図7は、上記試験の他の結果を示すグラフであり、以下のことを読み取ることができる。
・コントロールの免疫活性(IL-12pg/ml)…3
・「ササクヒトヨタケ抽出物とヒメマツタケ亜臨界水抽出物との混合物」の免疫活性(IL-12pg/ml)…6
・「ササクヒトヨタケ抽出物とヒメマツタケ亜臨界水抽出物との混合物」と「クリスパタス菌0.1%」との混合物の免疫活性(IL-12pg/ml)…98
・「クリスパタス菌0.1%」の免疫活性(IL-12pg/ml)…35
すなわち、「ササクヒトヨタケ抽出物とヒメマツタケ亜臨界水抽出物との混合物」に対して、「クリスパタス菌」を10%、1%、0.1%をそれぞれ添加した際に、それぞれ単独で使用するよりも免疫活性が高まった。
【0033】
[サプリメントについて]
本実施形態に係る「免疫チェックポイント阻害サプリメント」は、主原料を「ヒメマツタケ亜臨界水抽出物(CP-101)、ササクレヒトヨタケ抽出物、クリスパタス菌」とし、形状を「打錠またはハードカプセルを推奨」とし、一日の推奨量(CP-101として)を次のように定める。
・健常者のガン予防目的:50mg/日、
・ガン患者の治療目的: 100mg~ 200mg/日
【要約】 (修正有)
【課題】ヒメマツタケ(アガリクス)亜臨界水抽出物、コプリヌス(ササクレヒトヨタケ粉末)、クリスパタス菌を混合させ、免疫チェックポイント阻害機能を有するサプリメントを提供する。
【解決手段】少なくともヒメマツタケの亜臨界水抽出物を含有する免疫チェックポイント阻害サプリメントであって、ヒメマツタケの亜臨界水抽出物を5~80重量%、ササクヒトヨタケ抽出物を1~10重量%、クリスパタス菌を0.1~10重量%含有することを特徴とする。
【選択図】
図3