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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-25
(45)【発行日】2025-04-02
(54)【発明の名称】駆動ユニット
(51)【国際特許分類】
   F16H 33/02 20060101AFI20250326BHJP
   A61H 3/00 20060101ALN20250326BHJP
【FI】
F16H33/02 B
A61H3/00 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024527974
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(86)【国際出願番号】 JP2022023878
(87)【国際公開番号】W WO2023242976
(87)【国際公開日】2023-12-21
【審査請求日】2024-10-23
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、ムーンショット型研究開発事業「(1)活力ある社会を創る適応自在AIロボット群/(2)Cooperation of AI-Robot Enablers」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】タフリシ セイエド アミル
(72)【発明者】
【氏名】平田 泰久
【審査官】金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-93342(JP,A)
【文献】特開2021-10954(JP,A)
【文献】特開2021-124170(JP,A)
【文献】国際公開第2017/175691(WO,A1)
【文献】特開2002-119017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 33/02
A61H 3/00
B25J 11/00,17/00,19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの渦巻型バネを含む弾性構造体と、
前記渦巻型バネに回転駆動力を与えるモータと、
前記モータの本体部に対して固定された第1リンクと、
前記渦巻型バネに対して着脱可能な第2リンクと、を備える、駆動ユニット。
【請求項2】
前記渦巻型バネが有する渦巻状の隙間に配置された膨張可能なチューブをさらに備える、請求項1に記載の駆動ユニット。
【請求項3】
前記弾性構造体は、前記渦巻型バネを含む2つの渦巻型バネを含み、
前記2つの渦巻型バネは、互いに巻き方向が異なっており、
前記第2リンクは、前記2つの渦巻型バネに対して着脱可能である、請求項1に記載の駆動ユニット。
【請求項4】
前記2つの渦巻型バネがそれぞれ有する渦巻状の隙間に配置された、膨張可能な2つのチューブをさらに備える、請求項3に記載の駆動ユニット。
【請求項5】
前記モータを含む2つのモータを備え、
前記2つのモータは、前記2つの渦巻型バネにそれぞれ回転駆動力を与える、請求項3に記載の駆動ユニット。
【請求項6】
前記第2リンクに固定された着脱部をさらに備え、
前記着脱部は、前記弾性構造体を収容可能な環状部と、前記環状部の内周面に形成されて前記モータの軸方向に延びるリブと、を有し、
前記渦巻型バネは、前記リブと嵌合する溝を有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の駆動ユニット。
【請求項7】
前記第2リンクに固定された着脱部と、
前記着脱部を前記弾性構造体に対して接近および離隔させることが可能な着脱用モータと、をさらに備え、
前記弾性構造体の外周面には永久磁石が配置され、
前記着脱部は、前記永久磁石との間で吸引力を生じさせることが可能な電磁ロックを有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の駆動ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、駆動ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ユーザの身体にかかる負担を軽減可能な歩行補助装置が開示されている。この歩行補助装置では、モータの駆動により、大腿部装着具に対して下腿部装着具を揺動させることで、歩行の補助を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-106955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術における駆動ユニットは、特許文献1のモータのように、歩行補助等の特定の目的にのみ用いられることが殆どであった。
本願発明者は、鋭意検討の末、より多様な目的に用いることが可能な駆動ユニットに想到するに至った。
【0005】
すなわち本開示は、より多様な目的に用いることが可能な駆動ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る駆動ユニットの一つの態様は、少なくとも1つの渦巻型バネを含む弾性構造体と、前記渦巻型バネに回転駆動力を与えるモータと、前記モータの本体部に対して固定された第1リンクと、前記渦巻型バネに対して着脱可能な第2リンクと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、より多様な目的に用いることが可能な駆動ユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る駆動ユニット(ジョイントモード)の斜視図である。
図2】本実施形態に係る駆動ユニット(ホイールモード)の斜視図である。
図3図1に示す駆動ユニットの分解斜視図である。
図4図3に示す着脱部を単体で軸方向から見た図である。
図5図4のリブ周辺を拡大した斜視図である。
図6図1の駆動ユニットを、ジョイントモードからホイールモードへと転換する手順を説明する図である。
図7】本実施形態に係る駆動ユニットの制御系を説明するブロック図である。
図8】本実施形態に係る駆動ユニットの用途の一例を説明する図である。
図9】本実施形態に係る駆動ユニットの用途の一例を説明する図である。
図10】本実施形態に係る駆動ユニットの用途の一例を説明する図である。
図11】本実施形態に係る駆動ユニットの用途の一例を説明する図である。
図12】本実施形態に係る駆動ユニットの用途の一例を説明する図である。
図13】本実施形態に係る駆動ユニットの用途の一例を説明する図である。
図14】変形例に係る駆動ユニット(ホイールモード)の斜視図である。
図15図14に示す駆動ユニットを、異なるアングルから見た斜視図である。
図16図14に示す駆動ユニットの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態について説明する。なお、本開示の範囲は、以下の実施形態に限定されず、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
図1図2は、本実施形態に係る駆動ユニット1を示す斜視図である。図1は駆動ユニット1が「ジョイントモード」である場合を示し、図2は駆動ユニット1が「ホイールモード」である場合を示す。すなわち、本実施形態の駆動ユニット1は、ジョイントモードとホイールモードとの間で、モードの転換が可能である。
【0011】
図1図2に示すように、駆動ユニット1は、弾性構造体10と、2つのモータ(第1のモータ31および第2のモータ32)と、第1リンク60と、第2リンク50と、着脱部40と、を備えている。モータ31、32としては、例えばDCモータを採用してもよいし、その他の種類のモータを採用してもよい。図1に示すジョイントモードでは、第1リンク60と第2リンク50とが、中心軸線Oを中心として揺動する。図2に示すホイールモードでは、第1リンク60および第2リンク50の相対位置が保たれたまま、弾性構造体10が中心軸線Oを中心として回転する。中心軸線Oは、モータ31、32の回転中心と一致している。
【0012】
(方向定義)
本明細書では、中心軸線Oに沿った方向を「軸方向」という。軸方向から見て、中心軸線Oに交差する方向を径方向といい、中心軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0013】
図3は、駆動ユニット1の分解斜視図である。図3に示すように、弾性構造体10は、2つの渦巻型バネ(第1の渦巻型バネ11および第2の渦巻型バネ12)を含んでいる。2つの渦巻型バネ11、12は、軸方向において並べて配置されている。2つの渦巻型バネ11、12は、巻き方向が互いに異なっている。すなわち、中心軸線Oに沿う方向から見たとき、2つの渦巻型バネ11、12のうち一方はCW方向に巻かれており、他方はCCW方向に巻かれている。
【0014】
渦巻型バネ11、12は、例えば金属の薄板によって形成されている。ただし、渦巻型バネ11、12の材質は変更してもよい。駆動ユニット1は、第1の連結部材13(図6(a)参照)と、第2の連結部材14と、を有している。渦巻型バネ11の径方向における内側の端部(すなわち、渦巻の中心部)は、連結部材13に固定されている。渦巻型バネ12の径方向における内側の端部は、連結部材14に固定されている。連結部材13、14は、軸方向に延びる筒状である。連結部材13、14は軸方向に並べて配置されている。
【0015】
連結部材13、14がそれぞれ有する穴部はいわゆるDカット形状であり、モータ31、32の回転軸31b、32bとそれぞれ嵌合する。回転軸31b、32bの先端もそれぞれDカット形状を有している。このため、モータ31、32の回転駆動力は、連結部材13、14を介して、渦巻型バネ11、12にそれぞれ伝達される。すなわち、連結部材13は渦巻型バネ11とモータ31とを連結しており、連結部材14は渦巻型バネ12とモータ32とを連結している。モータ31、32と渦巻型バネ11、12との連結状態は、駆動ユニット1がジョイントモードであるかホイールモードであるかに関わらず不変である。
【0016】
図3に示すように、駆動ユニット1は、2つの膨張可能なチューブ(第1のチューブ21および第2のチューブ22)を備えている。チューブ21は、渦巻型バネ11が有する渦巻状の隙間の内側に配置されている。チューブ22は、渦巻型バネ12が有する渦巻状の隙間の内側に配置されている。チューブ21、22はそれぞれ管状である。図3等では図示を省略するが、チューブ21、22の端部はポンプ5(図7参照)に接続されている。チューブ21、22は弾性を有していることが、より好ましい。
【0017】
ポンプ5がチューブ21、22に空気を供給すると、チューブ21、22が膨らむ。なお、駆動ユニット1が2つのポンプ5を有し、それぞれのポンプ5が個別にチューブ21、22に接続されていてもよい。あるいは、1つのポンプ5に対して2つのチューブ21、22が接続されていてもよい。ポンプ5に代えて、他の形式の空気供給装置を、チューブ21、22に接続してもよい。膨らんだ状態のチューブ21、22は、力を減衰させて伝達するダンパとして機能する。
【0018】
図3に示すように、第2リンク50は、着脱部40に固定されている。第2リンク50と着脱部40とは一体として形成されていてもよい。第1リンク60は、接続部材61と、第1支持部材62と、第2支持部材63と、を有している。詳細な説明は省略するが、接続部材61、第1支持部材62、および第2支持部材63は、ネジなどによって互いに固定されている。なお、第1リンク60は2つ以下または4つ以上の部材で構成されていてもよい。また、ネジ以外の固定手段によって、第1リンク60の各部材を互いに固定してもよい。
【0019】
第1支持部材62は、第1側壁部62aと、第1支持部62bと、を有している。第2支持部材63は、第2側壁部63aと、第2支持部63bと、を有している。第1側壁部62aおよび第2側壁部63aはそれぞれ板状である。図1に示すように、第1側壁部62aおよび第2側壁部63aは軸方向において互いに向き合っている。第1側壁部62aと第2側壁部63aとの間に、弾性構造体10および着脱部40が位置している。
【0020】
第1支持部62bは第1側壁部62aの径方向内側の端部に位置し、第2支持部63bは第2側壁部63aの径方向内側の端部に位置している。第1支持部62bおよび第2支持部63bは軸方向に延びる円筒状である。第1支持部62bの内側に、モータ31の本体部31aが固定されている。第2支持部63bの内側に、モータ32の本体部32aが固定されている。このため、モータ31、32は、各本体部31a、32aが第1支持部62b、第2支持部63bに支持された状態で、各回転軸31b、32bを回転させることができる。
【0021】
接続部材61は、第1側壁部62aの径方向外側の端部と、第2側壁部63aの径方向外側の端部と、を接続している。接続部材61、第1支持部材62、および第2支持部材63により、第1リンク60は全体としてC字状を有している。
【0022】
図4に示すように、着脱部40は、環状部41と、複数のリブ42と、複数の保持部43と、突出部44と、を有する。環状部41は軸方向から見て環状である。駆動ユニット1がジョイントモードである場合、環状部41の内側に、弾性構造体10、チューブ21、22等が配置される。複数のリブ42および複数の保持部43は、環状部41の内周面に、周方向に間隔を空けて形成されている。突出部44は環状部41から径方向外側に突出している。突出部44には、第2リンク50が固定される。
【0023】
図5に示すように、リブ42は軸方向に延びている。また、保持部43は、フランジ部43aと、対向部43bと、を有している。フランジ部43aは、リブ42から径方向内側に延びている。対向部43bは、フランジ部43aの径方向内側の端部から、軸方向に延びている。対向部43bと環状部41とは、径方向において対向している。環状部41のうち、対向部43bと対向する部分に、リブ42が配置されている。
【0024】
対向部43bと環状部41との間には隙間が設けられており、この隙間に、渦巻型バネ11、12のそれぞれの最外周部が収容される。渦巻型バネ11の最外周部には、複数のリブ42にそれぞれ嵌合する複数の溝11aが形成されている(図3参照)。同様に、渦巻型バネ12の最外周部にも、複数のリブ42にそれぞれ嵌合する複数の溝12aが形成されている。溝11a、12aは、渦巻型バネ11、12の外周面から径方向内側に窪むとともに、軸方向に延びている。渦巻型バネ11の溝11aおよび渦巻型バネ12の溝12aは、共通のリブ42に対して嵌合していてもよい。あるいは、溝11a、12aは、それぞれ異なるリブ42に対して嵌合していてもよい。
【0025】
駆動ユニット1がジョイントモード(図1)のとき、リブ42と溝11a、12aとが嵌合する。一方、駆動ユニット1がホイールモード(図2)のとき、リブ42と溝11a、12aとの嵌合が解除される。
【0026】
本明細書では、渦巻型バネ11、12、連結部材13、14、チューブ21、22、第1リンク60、第2リンク50、および着脱部40を合わせて、「転換機構M」と呼ぶ場合がある。転換機構Mは、ホイールモードとジョイントモードとの間で駆動ユニット1が転換することを可能としている。
図6を用いて、駆動ユニット1をジョイントモード(図1)からホイールモード(図2)に転換する際の手順を説明する。
【0027】
まず、図6(a)に示すように、着脱部40および第2リンク50を軸方向(図6(a)の矢印方向)にスライドさせる。これにより、渦巻型バネ11、12の溝11a、12aから、着脱部40のリブ42が離脱する。次に図6(b)に示すように、着脱部40および第2リンク50を中心軸線O回りに回転させる。これにより、駆動ユニット1は図2に示すホイールモードとなる。第2リンク50と第1リンク60との相対位置(中心軸線O周りの相対的な角度)が安定するように、第2リンク50および第1リンク60を留め具等で固定してもよい。特に、弾性構造体10を車椅子等の車輪として用いる場合は、第2リンク50および第1リンク60の相対位置を固定するとよい。
駆動ユニット1をホイールモードに転換した後、渦巻型バネ11、12の外周(すなわち弾性構造体10の外周)に、弾性を有する環状部材を嵌めてもよい。環状部材には、タイヤのように、衝撃を吸収する機能や、走行面との間のスリップを抑止する機能などを付加することができる。環状部材の材質としては、例えばゴム、シリコンなどが挙げられる。ホイールモードからジョイントモードへと転換する際には、上記説明と逆の手順を行えばよい。
【0028】
以下、ジョイントモードの場合およびホイールモードの場合における、各部の動作を説明する。
【0029】
<ジョイントモードの場合>
ジョイントモードでは、着脱部40のリブ42と、渦巻型バネ11、12の溝11a、12aと、が嵌合している。この状態では、少なくとも嵌合している部分において、渦巻型バネ11、12と着脱部40とが固定される。渦巻型バネ11、12のそれぞれの最外周部は、環状部41と保持部43との間で挟まれるため、リブ42と溝11a、12aとが嵌合している状態が保持される。つまり保持部43は、リブ42および溝11a、12aの嵌合状態を保持する役割を有する。
【0030】
モータ31、32が回転すると、その回転は連結部材13、14を介して渦巻型バネ11、12の中心部に伝わる。渦巻型バネ11、12は弾性を有するため、リブ42と嵌合している部分から離れた箇所では、渦巻型バネ11、12が着脱部40に対して相対移動することができる。例えば、モータ31が渦巻型バネ11の巻き方向と反対方向に回転した場合、渦巻型バネ11の中心部は連結部材13の外周に巻き取られる。このとき、モータ31による回転力の少なくとも一部は、渦巻型バネ11を介して、着脱部40にも伝わる。なお「巻き方向」とは、渦巻形状の中心から外側に向かうときにおける、その渦巻の周回方向である。
【0031】
モータ31と同様に、モータ32の回転力の少なくとも一部も、着脱部40に伝わる。着脱部40は第2リンク50に固定されている。つまり、駆動ユニット1がジョイントモードの場合には、モータ31、32の回転によって、第2リンク50と第1リンク60とが中心軸線Oを中心に揺動することになる。モータ31、32の回転という入力が、第2リンク50および第1リンク60の揺動という出力となって現れる際の応答性(回転力の伝達率、応答速度等)は、チューブ21、22に供給される空気の圧力によって制御できる。
【0032】
例えば、チューブ21、22に空気を供給すると、チューブ21、22が渦巻型バネ11、12が有する隙間の内側で膨張する。チューブ21、22が膨張して渦巻型バネ11、12に密接すると、弾性構造体10の見かけ上の剛性が高まる。これにより、入力(モータ31、32の回転)から出力(第2リンク50および第1リンク60の揺動)までの回転力の伝達率および応答速度が上昇する。弾性構造体10の見かけ上の剛性は、チューブ21、22内の空気の圧力と相関がある。つまり、チューブ21、22内の空気の圧力を高めると回転力の伝達率および応答速度が上昇し、空気の圧力を低下させると回転力の伝達率および応答速度が低下する。
【0033】
<ホイールモードの場合>
ホイールモードでは、図2に示すように、渦巻型バネ11、12が着脱部40の環状部41の内側に収容されていない。言い換えると、弾性構造体10が露出している。この状態でモータ31、32を回転させると、渦巻型バネ11、12が中心軸線O回りに回転する。したがって、弾性構造体10を一つのホイールとみなすことができる。また、チューブ21、22に供給する空気の圧力およびモータ31、32の回転方向を制御することで、弾性構造体10の外径を変化させることも可能である。
【0034】
例えば、チューブ21、22に供給する空気の圧力を高めると、チューブ21、22が膨張し、弾性構造体10の外径が大きくなる。逆に、チューブ21、22に供給する空気の圧力を低下させると、チューブ21、22が収縮し、弾性構造体10の外径が小さくなる。また、例えばモータ31を渦巻型バネ11の巻き方向とは逆方向に回転させると、渦巻型バネ11の外径が大きくなる。逆に、モータ31を渦巻型バネ11の巻き方向と同じ方向に回転させると、渦巻型バネ11の外径は小さくなる。図2では、弾性構造体10の外径を、着脱部40における環状部41の外径よりも大きくした状態を示している。
【0035】
駆動ユニット1は、少なくとも6つ(モータ31の回転方向、モータ31の回転速度、モータ32の回転方向、モータ32の回転速度、チューブ21の圧力、およびチューブ22の圧力)の制御パラメータを有する。これら6つの制御パラメータを用いて、ホイールとしての弾性構造体10の外径、回転方向、回転速度を制御することが可能である。
【0036】
次に、駆動ユニット1の制御系について、図7を用いて説明する。図7に示すように、駆動ユニット1は制御ユニットCによって制御される。本明細書では、駆動ユニット1および制御ユニットCを合わせて「駆動システムS」と呼ぶ場合がある。
図7に示すように、駆動ユニット1には、IMU(Inertial Measurement Unit)センサ4が含まれている。IMUセンサ4は、転換機構Mの姿勢または回転速度等の物理量を計測可能となっている。「転換機構Mの姿勢」には、例えば、駆動ユニット1がジョイントモードである場合に、第1リンク60と第2リンク50とがなす角度が含まれる。「回転速度」には、例えば、駆動ユニット1がホイールモードである場合の、弾性構造体10の回転速度が含まれる。上記以外の物理量を、IMUセンサ4によって計測してもよい。IMUセンサ4による計測結果は制御ユニットCに入力される。制御ユニットCは、IMUセンサ4による計測結果に基づき、駆動ユニット1のフィードバック制御を実行してもよい。
【0037】
制御ユニットCには、コントローラ2、組み込みシステム3、圧力センサ6、モータセンサ7、ドライバ8等が含まれる。ポンプ5がチューブ21、22に空気を供給すると、チューブ21、22内の圧力が高まる。この圧力は圧力センサ6によって計測される。モータセンサ7は、モータ31、32に流れる電流を計測する電流センサ、モータ31、32の回転角を計測するエンコーダ、等を含む。圧力センサ6およびモータセンサ7による計測データは、組み込みシステム3に入力される。
【0038】
コントローラ2は、組み込みシステム3から情報を受け取るとともに、駆動ユニット1を制御するための制御信号を生成する。制御信号は、フィードバック制御における演算結果を反映したものであってもよい。制御信号は、組み込みシステム3を介して、ドライバ8に入力される。ドライバ8は、制御信号に基づき、電流および電圧をモータ31、32およびポンプ5に供給する。これにより、モータ31、32は弾性構造体10を回転させ、ポンプ5はチューブ21、22に空気を供給する。
【0039】
コントローラ2、組み込みシステム3等の各機能は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め記憶装置(不図示)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることで記憶装置にインストールされてもよい。
【0040】
次に、駆動ユニット1の用途の例について説明する。なお、図8図13では、駆動ユニット1の各部材を模式的に示している。
図8に示すように、駆動ユニット1は、歩行補助装置の一部として用いることができる。具体的には、駆動ユニット1をジョイントモードとして、第2リンク50および第1リンク60をそれぞれ、歩行補助装置の外骨格の一部とする。第2リンク50および第1リンク60の揺動により、使用者の歩行を補助することができる。
【0041】
図9に示すように、駆動ユニット1は、車椅子の一部として用いることができる。具体的には、駆動ユニット1をホイールモードとして、弾性構造体10を車輪として用い、第2リンク50および第1リンク60を椅子の支持骨格として用いる。弾性構造体10の外径を変化させることで、使用者の体型に合わせた車輪の大きさとすることができる。また、図8に示す歩行補助装置と、図9に示す車椅子と、を同一の駆動ユニット1を用いて実現することも可能である。
【0042】
図10に示すように、駆動ユニット1は、使用者の立ち上がり動作をアシストする装置に用いることができる。具体的には、図10(a)に示すように、車椅子の一部として用いられている駆動ユニット1(ホイールモード)において、図10(b)に示すように、弾性構造体10の外径を小さく変形させる。このとき、渦巻型バネ11、12には、弾性エネルギーが蓄えられる。この弾性エネルギーを開放させつつ、弾性構造体10の外径を大きく変形させることで、図10(c)に示すように、使用者の立ち上がりをアシストすることができる。
【0043】
図11に示すように、駆動ユニット1は、車輪の外径が変化する車椅子の一部として用いることができる。具体的には、2つの駆動ユニット1がそれぞれ有する弾性構造体10を車椅子の両輪として用いる。図11(a)~(c)に示すように、一方の車輪が段差を乗り越える際に、その車輪(弾性構造体10)の外径を小さくし、他方の車輪の外径は一定とする。この場合、車椅子が段差を乗り越える際に、使用者の姿勢が崩れることを回避することができる。
【0044】
図12に示すように、駆動ユニット1は、自動ブレーキ機能を実装した車椅子の一部として用いることができる。具体的には、車椅子に、4つの駆動ユニット1を設ける。前方に位置する2つの駆動ユニット1の各弾性構造体10を、前方車輪Wfとする。後方に位置する2つの駆動ユニット1の各弾性構造体10を、後方車輪Wrとする。図12(a)、(b)に示すように、走行中の車椅子が障害物に接近したとき、後方車輪Wrの外径を小さくし、前方車輪Wfの外径を大きくする。これにより、車椅子の重心Gが後方車輪Wrに向けて移動するとともに、重心Gと地面との間の距離が小さくなる。この状態では、車椅子が急停車したときに使用者が体感する力の大きさが、より小さくなる。車椅子に前方の障害物を検知する障害物センサを搭載し、障害物センサを駆動システムS(図7参照)に組み入れることで、自動ブレーキ機能を実現してもよい。また、車椅子における異なる複数の箇所に、慣性力センサを設けて、車椅子システムの位置、状態等を把握してもよい。
【0045】
図13に示すように、駆動ユニット1は、車両用の車輪として用いることができる。車両の前輪および後輪としてそれぞれ用いられる弾性構造体10の外径を変化させることで、車両の姿勢を高い自由度で制御することが可能となる。
【0046】
なお、本実施形態における弾性構造体10は、2つの渦巻型バネ11、12を含んでいる。しかしながら、渦巻型バネの数は1つであってもよい。また、チューブ21、22は無くてもよい。これらの場合も、駆動ユニット1はジョイントモードとホイールモードとの間でモードの切り替えが可能であり、多様な用途に用いることができる。渦巻型バネの数に合わせて、駆動ユニット1が備えるチューブおよびモータの数を1つとしてもよい。
【0047】
以上説明したように、本開示に係る駆動ユニット1は、少なくとも1つの渦巻型バネ(第1の渦巻型バネ11または第2の渦巻型バネ12)を含む弾性構造体10と、渦巻型バネに回転駆動力を与えるモータ(第1のモータ31または第2のモータ32)と、モータの本体部に対して固定された第1リンク60と、渦巻型バネに対して着脱可能な第2リンク50と、を備える。本開示によれば、多様な目的に用いることが可能な駆動ユニット1を提供できる。
【0048】
また、駆動ユニット1は、渦巻型バネが有する渦巻状の隙間に配置された膨張可能なチューブ(第1のチューブ21または第2のチューブ22)をさらに備えてもよい。この場合、チューブに供給する空気の圧力を制御することで、チューブが有する減衰性能を変化させたり、弾性構造体10の見かけ上の剛性を変化させたりすることができる。
【0049】
また、弾性構造体10は、2つの渦巻型バネ11、12を含み、2つの渦巻型バネ11、12は互いに巻き方向が異なっており、第2リンク50は2つの渦巻型バネ11、12に対して着脱可能であってもよい。このように2つの渦巻型バネ11、12を用いることで、駆動ユニット1の制御の自由度が高まり、より多様な用途に用いることが可能となる。
【0050】
また、駆動ユニット1は、2つの渦巻型バネ11、12がそれぞれ有する渦巻状の隙間に配置された、膨張可能な2つのチューブ21、22を備えてもよい。この場合、2つのチューブ21、22にそれぞれ供給する空気の圧力を制御パラメータとして用いることで、駆動ユニット1の制御の自由度をさらに高めることができる。
【0051】
また、駆動ユニット1は、2つのモータ31、32を備え、2つのモータ31、32は、2つの渦巻型バネ11、12にそれぞれ回転駆動力を与えてもよい。この場合、2つのモータ31、32の回転方向および回転速度を制御パラメータとして用いることで、駆動ユニット1の制御の自由度をさらに高めることができる。
【0052】
また、駆動ユニット1は、第2リンク50に固定された着脱部40をさらに備え、着脱部40は、弾性構造体10を収容可能な環状部41と、環状部41の内周面に形成されてモータ31、32の軸方向(中心軸線Oに沿う方向)に延びるリブ42と、を有し、渦巻型バネ11、12は、リブ42と嵌合する溝11a、12aを有してもよい。この場合、ジョイントモードにおいてリブ42と溝11a、12aとを嵌合させて、モータ31、32の駆動力を、渦巻型バネ11、12および着脱部40を介して第2リンク50に伝えることができる。したがって、第1リンク60と第2リンク50とを揺動させることができる。また、ホイールモードにおいて、溝11a、12aからリブ42を離脱させることで、弾性構造体10が第1リンク60および第2リンク50に対して回転可能な状態とし、弾性構造体10を車輪として用いることができる。そして、着脱部40を弾性構造体10に対して軸方向にスライドさせることで、ジョイントモードとホイールモードとの間で駆動ユニット1を転換することが可能である。
【0053】
(変形例)
次に、前記実施形態の変形例について説明する。変形例に係る駆動ユニット1Aを図14に示す。なお、駆動ユニット1Aにおいて、駆動ユニット1と同様の部分については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0054】
図14に示すように、駆動ユニット1Aは、着脱部40Aと、第2リンク50Aと、一対の着脱用モータ33と、一対の揺動アーム70と、一対のベアリング80と、を有している。揺動アーム70の一方の端部は、ベアリング80を介して第1リンク60に接続されている。また、ベアリング80は中心軸線Oと同軸上に配置されている。このため、揺動アーム70は、中心軸線Oを中心として揺動することができる。ただし、ベアリング80は電磁ロック機能を有しており、揺動アーム70が揺動可能な状態と、揺動不可能な状態と、を切り替えることができる。各着脱用モータ33は、各揺動アーム70の他方の端部に固定されている。第2リンク50Aは、着脱部40Aに固定されている。また、第2リンク50Aは、一対のモータ接続部51を有している。各モータ接続部51は、第2リンク50Aから、各着脱用モータ33に向けて延びている。モータ接続部51は、着脱用モータ33に直接または間接的に接続されている。モータ接続部51は、着脱用モータ33の回転駆動力を、第2リンク50Aおよび着脱部40Aに伝えるための部位である。
【0055】
着脱部40Aは、円弧状部41Aを有している。円弧状部41Aは半円弧状である。駆動ユニット1Aがジョイントモード(図示は省略)のとき、弾性構造体10に対して、円弧状部41Aが径方向外側から当接または近接する。また、駆動ユニット1Aがホイールモード(図14)のとき円弧状部41Aは弾性構造体10に対して離隔する。
【0056】
図15に示すように、円弧状部41Aの内周面には、複数の電磁ロック42Aが設けられている。これらの電磁ロック42Aと対応するように、弾性構造体10の外周面(つまり渦巻型バネ11、12の各外周面)には、複数の永久磁石15が固定されている。
【0057】
駆動ユニット1Aがジョイントモードのとき、電磁ロック42Aは電力が供給されて電磁石として機能し、永久磁石15との間で吸引力(磁力)を生じさせる。この吸引力によって、着脱部40Aが弾性構造体10の外周面に固定される。したがって、モータ31、32が駆動すると、回転駆動力は弾性構造体10を介して着脱部40Aに伝わる。また、着脱部40Aは、第2リンク50Aを介して、揺動アーム70に接続されている。結果として、モータ31、32が駆動すると、第2リンク50Aと第1リンク60とが中心軸線O回りに相対的に揺動する。なお、第2リンク50Aと第1リンク60とを相対的に揺動させる際は、ベアリング80の電磁ロックをオフにする。第2リンク50Aおよび第1リンク60の相対角度を固定したい場合、ベアリング80の電磁ロックをオンにすればよい。
【0058】
駆動ユニット1Aをジョイントモードからホイールモードに切り替える場合、着脱部40Aの電磁ロック42Aをオフにする。また、着脱用モータ33を駆動させて、第2リンク50Aを、着脱用モータ33の中心軸線O1回りに回転させる。これにより、着脱部40Aが弾性構造体10から離隔し、ホイールモードとなる。
【0059】
駆動ユニット1Aをホイールモードからジョイントモードに切り替える場合、着脱用モータ33を駆動させて、第2リンク50Aを、着脱用モータ33の中心軸線O1回りに回転させる。これにより、着脱部40Aが弾性構造体10に接近する。さらに、着脱部40Aの電磁ロック42Aをオンにする。これにより、電磁ロック42Aと永久磁石15との間で吸引力が作用し、着脱部40Aと弾性構造体10とが固定され、ホイールモードとなる。
【0060】
以上説明したように、変形例に係る駆動ユニット1Aは、第2リンク50Aに固定された着脱部40Aと、着脱部40Aを弾性構造体10に対して接近および離隔させることが可能な着脱用モータ33と、を備える。弾性構造体10の外周面には永久磁石15が配置され、着脱部40Aは、永久磁石15との間で吸引力を生じさせることが可能な電磁ロック42Aを有する。このような構成のよれば、電磁ロック42Aおよび着脱用モータ33の制御によって、ジョイントモードとホイールモードとの間の転換が可能である。したがって、モードの転換がより容易な駆動ユニット1Aを提供することができる。
【0061】
なお、本開示の技術的範囲は前記実施の形態に限定されず、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0062】
例えば、前記実施形態では、第2リンク50は着脱部40とともに渦巻型バネ11、12に対して着脱可能であった。しかしながら、着脱部40と第2リンク50とが一体に形成され、第2リンク50自体が環状部41等を有する構成を採用してもよい。
【0063】
その他、上記した実施の形態あるいは変形例を、適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1、1A…駆動ユニット 10…弾性構造体 11、12…渦巻型バネ 11a、12a…溝 15…永久磁石 21、22…チューブ 31、32…モータ 33…着脱用モータ 40、40A…着脱部 41…環状部 42…リブ 42A…電磁ロック 50、50A…第2リンク 60…第1リンク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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