(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-25
(45)【発行日】2025-04-02
(54)【発明の名称】車両の衝撃吸収構造
(51)【国際特許分類】
B60R 19/48 20060101AFI20250326BHJP
【FI】
B60R19/48 G
(21)【出願番号】P 2021090681
(22)【出願日】2021-05-28
【審査請求日】2024-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100142550
【氏名又は名称】重泉 達志
(74)【代理人】
【識別番号】100180758
【氏名又は名称】荒木 利之
(72)【発明者】
【氏名】音辻 大翼
(72)【発明者】
【氏名】高橋 賢司
【審査官】近藤 利充
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-165977(JP,A)
【文献】特開2012-166766(JP,A)
【文献】特開2016-150706(JP,A)
【文献】特開2018-167695(JP,A)
【文献】特開2015-101241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前端側に設置され、車幅方向へ延びる衝撃吸収体と、
前記衝撃吸収体の前側に内蔵される圧力センサと、
前記衝撃吸収体の前面を覆う被覆部を有するカバー体と、を備え、
前記カバー体は、前記被覆部の下端側に接続され前記衝撃吸収体の下面に沿って後方へ延びる延在部と、前記延在部の後端側に接続され前記衝撃吸収体の下方で前記被覆部よりも前方まで突出する突出部と、を有し、
前記延在部の後端は、前記圧力センサよりも後方に位置する車両の衝撃吸収構造。
【請求項2】
前記カバー体の前記延在部は、後下がりに形成され、
前記衝撃吸収体は、上面が後下がりに形成される請求項1に記載の車両の衝撃吸収構造。
【請求項3】
前記衝撃吸収体は、前方へ向かって上下寸法が小さくなるよう形成され、
前記カバー体の前記延在部の後端は、前記衝撃吸収体の前後中央よりも前側に位置する請求項1または2に記載の車両の衝撃吸収構造。
【請求項4】
前記衝撃吸収体は、前方へ向かって上下寸法が大きくなるよう形成され、
前記カバー体の前記延在部の後端は、前記衝撃吸収体の前後中央よりも後側に位置する請求項1または2に記載の車両の衝撃吸収構造。
【請求項5】
前記衝撃吸収体は、前後にわたって上下寸法が一定に形成され、
前記カバー体の前記延在部の後端は、前記衝撃吸収体の前後中央付近に位置する請求項1または2に記載の車両の衝撃吸収構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車幅方向へ延びる衝撃吸収体を備えた車両の衝撃吸収構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の衝撃吸収構造として、バンパレインフォースの前面に圧力チャンバが取り付けられ、バンパレインフォースとバンパカバーの間に車幅方向へ延びるアブソーバを配設されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。アブソーバは、圧力チャンバの下方に配置された本体部と、本体部の上方に配置されるスペーサ部と、を有し、スペーサ部の前面は、本体部の前面よりも後方に配置される。これにより、歩行者以外の衝突体が車両用バンパに衝突した場合に、本体部が圧縮変形した後、スペーサ部が圧力チャンバ側へ変形するようにし、圧力チャンバの変形量を小さくしている。このようにして、歩行者以外の衝突体が車両用バンパに衝突した際の圧力検出器から衝突判定部へ出力される信号の出力値と、歩行者が車両用バンパに衝突した際の出力値との差を大きくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両の衝撃吸収構造において、圧力センサが衝撃吸収体の前側に内蔵される場合がある。この場合、特許文献1に記載の衝撃吸収構造を適用することはできない。
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、圧力センサが衝撃吸収体の前側に内蔵される構成であっても、衝突物に応じて圧力センサへの入力に差を生じさせることのできる車両の衝撃吸収構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、車両の前端側に設置され、車幅方向へ延びる衝撃吸収体と、前記衝撃吸収体の前側に内蔵される圧力センサと、前記衝撃吸収体の前面を覆う被覆部を有するカバー体と、を備え、前記カバー体は、前記被覆部の下端側に接続され前記衝撃吸収部の下面に沿って後方へ延びる延在部と、前記延在部の後端側に接続され前記衝撃吸収体の下方で前記衝撃吸収体の前端よりも前方まで突出する突出部と、を有し、前記延在部の後端は、前記圧力センサよりも後方に位置する車両の衝撃吸収構造が提供される。
【0007】
この車両の衝撃吸収構造によれば、車両の衝突物との衝突時に、衝撃吸収構造に対する衝突物からの入力が上側である場合と下側である場合とで、圧力センサへの入力に差を生じさせることができる。
衝突物からの入力が衝撃吸収構造の上側である場合、衝突物からの入力は、カバー体の前端の上側から後方へ加えられる。このとき、カバー体の被覆部により衝撃吸収体の前側が押圧され、衝撃吸収体の前側が潰れることにより、圧力センサへ比較的大きな入力が加えられる。
一方、衝突物からの入力が衝撃吸収構造の下側である場合、衝突物からの入力は、カバー体の前端の下側から後方へ加えられる。ここで、カバー体の突出部は、被覆部よりも前方へ突出していることから、衝突物からの入力がカバー体の突出部から延在部の後端側へ伝達され、カバー体の延在部は前端側を中心として回転する。この結果、カバー体の延在部の後端側が上方へ移動し、延在部の後端側により衝撃吸収体が上方へ曲げられる。このとき、カバー体の延在部の後端が、圧力センサよりも後方に位置していることから、衝撃吸収体における圧力センサ付近の変形量を小さくして、圧力センサへの入力を、衝突物からの入力が衝撃吸収構造の上側である場合と比べて小さくすることができる。
【0008】
また、上記車両の衝撃吸収構造において、前記カバー体の前記延在部は、後下がりに形成され、前記衝撃吸収体は、上面が後下がりに形成されてもよい。
【0009】
この車両の衝撃吸収構造によれば、カバー体の延在部の後端側が比較的下方に位置することから、衝撃吸収構造の下側に衝突物が侵入する場合に、衝突物からの入力を衝撃吸収体へ伝達させやすいレイアウトとすることができる。また、衝撃吸収体の上面を後下がりとすることで、カバー体の延在部の後端側からの入力に直交する方向へ上面の向きを近づけることができ、衝撃吸収体の曲げ変形量を大きくすることができる。
【0010】
また、上記車両の衝撃吸収構造において、前記衝撃吸収体は、前方へ向かって上下寸法が小さくなるよう形成され、前記カバー体の前記延在部の後端は、前記衝撃吸収体の前後中央よりも前側に位置してもよい。
【0011】
この車両の衝撃吸収構造によれば、カバー体の延在部の後端が衝撃吸収体の前後中央より前側に位置することから、衝撃吸収構造に対する衝突物の入力が下側である場合に、前方へ向かって上下寸法が小さくなる衝撃吸収体を比較的大きく変形させることができる。
【0012】
また、上記車両の衝撃吸収構造において、前記衝撃吸収体は、前方へ向かって上下寸法が大きくなるよう形成され、前記カバー体の前記延在部の後端は、前記衝撃吸収体の前後中央よりも後側に位置してもよい。
【0013】
この車両の衝撃吸収構造によれば、カバー体の延在部の後端が衝撃吸収体の前後中央より後側に位置することから、衝撃吸収構造に対する衝突物の入力が下側である場合に、前方へ向かって上下寸法が大きくなる衝撃吸収体を比較的大きく変形させることができる。
【0014】
また、上記車両の衝撃吸収構造において、前記衝撃吸収体は、前後にわたって上下寸法が一定に形成され、前記カバー体の前記延在部の後端は、前記衝撃吸収体の前後中央付近に位置してもよい。
【0015】
この車両の衝撃吸収構造によれば、カバー体の延在部の後端が衝撃吸収体の前後中央付近に位置することから、衝撃吸収構造に対する衝突物の入力が下側である場合に、前後にわたって上下寸法が一定の衝撃吸収体を比較的大きく変形させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の車両の衝撃吸収構造によれば、圧力センサが衝撃吸収体の前側に内蔵される構成であっても、衝突物に応じて圧力センサへの入力に差を生じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態を示す車両の外観斜視図である。
【
図5】中央側衝撃吸収部に対する衝突物の入力が上側である場合の中央側衝撃吸収部の作用説明図である。
【
図6】中央側衝撃吸収部に対する衝突物の入力が下側である場合の中央側衝撃吸収部の作用説明図である。
【
図7】変形例を示す中央側衝撃吸収部の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1から
図6は本発明の一実施形態を示すものであり、
図1は本発明の一実施形態を示す車両の外観斜視図、
図2は車体前部の斜視説明図、
図3は衝撃吸収構造の分解斜視説明図、
図4は中央側衝撃吸収部の側面断面図、
図5は中央側衝撃吸収部に対する衝突物の入力が上側である場合の中央側衝撃吸収部の作用説明図、
図6は中央側衝撃吸収部に対する衝突物の入力が下側である場合の中央側衝撃吸収部の作用説明図である。
【0019】
図1に示すように、この車両100の衝撃吸収構造は、車両100の前端の意匠面をなすバンパフェイス101の後方に設けられる。
図2に示すように、バンパフェイス100の後方に、車幅方向へ延びる複数の衝撃吸収部1,2,3が設けられる。
図2では説明のため、バンパフェイス100を車体4側から外した状態を示している。本実施形態においては、下側衝撃吸収部1、中央側衝撃吸収部2、上側衝撃吸収部3の3つの衝撃吸収部が設けられる。各衝撃吸収部1,2,3は、それぞれ、車体4の所定箇所に固定される。
【0020】
図2に示すように、車体4は、例えば鋼板をプレス成型したパネル状の部材を集成し、スポット溶接等で接合して構成されている。車体4は、前後方向へ延びる左右一対のサイドフレーム(図示せず)と、各サイドフレームの前端をブラケットを介して連結し車幅方向へ延びるバンパビーム41と、各サイドフレームの前端側に接続され上下方向へ延びる左右一対のラジエータパネル42と、各ラジエータパネル42の下端を連結し車幅方向へ延びるラジエータロアサポート43と、各ラジエータパネル42の上端を連結し車幅方向へ延びるラジエータアッパサポート44と、ラジエータアッパサポート44の車幅方向端部と前後方向へ延びる左右一対のアッパフレーム(図示せず)とを接続する左右一対の接続部材45と、を備えている。バンパビーム41はラジエータアッパサポート44よりも車幅方向外側に長く形成され、ラジエータアッパサポート44の車幅方向外側には左右一対のヘッドランプ(図示せず)が配置される。
【0021】
また、車体4は、サブフレーム46を備えている。サブフレーム46は、各サイドフレームよりも下方で前後方向へ延びる左右一対の前後延在部46aと、各前後延在部46aの前端を連結し車幅方向へ延びる車幅延在部46bと、を有する。車幅延在部46bは、ラジエータロアサポート43よりも前方に配置される。
【0022】
下側衝撃吸収部1は、サブフレーム46の車幅延在部46bの前側に設けられる。本実施形態においては、下側衝撃吸収部1は、前側部分11と、後側部分12とに分割して構成され、前側部分11及び後側部分12が一体的に車体4に設けられる。下側衝撃吸収部1の材質は任意であるが、例えば樹脂とすることができ、本実施形態においては、前側部分11及び後側部分12は非発泡ポリプロピレンからなる。
【0023】
上側衝撃吸収部3は、ラジエータアッパサポート44の前側に設けられる。
図4に示すように、上側衝撃吸収部3は、前端が衝突体との衝突部をなす前側部分31と、前側部分31と車体4との間に介在するブラケット部32と、を有する。上側衝撃吸収部3の材質は任意であるが、例えば金属とすることができ、本実施形態においては、前側部分31及びブラケット部32は鋼板からなる。
【0024】
中央側衝撃吸収部2は、バンパビーム41の前側に設けられる。本実施形態においては、中央側衝撃吸収部2は、バンパビーム41に固定される衝撃吸収体21と、衝撃吸収体21の前側に内蔵される圧力センサ22と、衝撃吸収体21の前面を覆うカバー体23と、を有する。衝撃吸収体21は、例えば発泡プロピレン等の発泡樹脂からなる。圧力センサ22は、パイプ状に形成され、例えばシリコン等の樹脂からなる。カバー体23は、例えば非発泡プロピレン等の非発泡樹脂からなる。尚、衝撃吸収体21、圧力センサ22、カバー体23の材質は、それぞれ、適宜変更可能である。
【0025】
衝撃吸収体21は、全体としてバンパビーム2に沿って車幅方向へ延び、
図4に示すように、車幅方向中央側において、前方へ向かって上下寸法が小さくなるよう形成される。本実施形態においては、衝撃吸収体21の上面21aは、ほぼ水平に形成され、衝撃吸収体21の下面21bは、前上がりに傾斜して形成される。衝撃吸収体21の前端には、圧力センサ22を受容する凹部21cが形成される。本実施形態においては、凹部21cは、衝撃吸収体21の前端の上下中央に形成される。また、本実施形態においては、衝撃吸収体21の前面21dは下方へ向かって前方へ傾斜し、衝撃吸収体21の後面21eはバンパビーム41の前面に沿って鉛直に形成される。
【0026】
圧力センサ22は、断面円形のパイプ状であり、両端には図示しない検出部が接続される。検出部にて、圧力センサ22が圧縮された際の圧力変動が検出される。
【0027】
カバー体23は、車幅方向へ延びる所定厚さの板材であり、衝撃吸収体21の前面21dを覆う被覆部23aを有する。また、カバー体23は、車幅方向中央側において、被覆部23aの上端から斜め上側後方へ延びる上端部23bと、被覆部23aの上下方向所定位置から斜め上側前方へ延びる上方突出部23cと、被覆部23aの下端から衝撃吸収体21の下面21bに沿って後方へ延びる延在部23dと、延在部23dの後端から下方へ延びる接続部23eと、接続部23eの下端から斜め下側前方へ延びる下方突出部23fと、下方突出部23fの前端から斜め下側後方へ延びる下端部23gと、を有する。また、カバー体23は、面外方向が車幅方向となる所定厚さのリブ23h,23iを有する。本実施形態においては、被覆部23aの前面、上端部23bの上面及び延在部23dの下面に立設される上側リブ23hと、延在部23dの下面、接続部23eの前面及び下方突出部23fの上面により画成される凹部を塞ぐ下側リブ23iと、が形成される。
【0028】
具体的に、カバー体23の被覆部23aは、衝撃吸収体21の前面21dに沿って下方へ向かって前方へ傾斜し、凹部21cを塞ぐ。また、上端部23bは、後方へ向かって衝撃吸収体21の上面21aから徐々に離隔していく。本実施形態においては、カバー体23の被覆部23aと上端部23bとの間に面取り部23jが形成されている。
【0029】
上方突出部23cは、被覆部23a上に上側リブ23hと同じ高さに形成され、上側リブ23hとの交差部で、上側リブ23hと一体化している。また、延在部23dは、後端が圧力センサ22よりも後方に位置している。本実施形態においては、延在部23dの後端は、衝撃吸収体21の前後中央よりも前側に位置している。また、本実施形態においては、カバー体23の被覆部23aと延在部23dとの間に面取り部23kが形成されている。
【0030】
接続部23eの後方には、車両衝突時に接続部23eが移動可能なスペースが確保されている。また、下方突出部23fの前端は、衝撃吸収体21の前端よりも前方へ位置している。本実施形態においては、カバー体23の下方突出部23fと下端部23gとの間に面取り部23lが形成されている。また、本実施形態においては、斜め下側後方へ延びる下端部23gは、下方突出部23fと接続される前側部分23g1と、前側部分23g1よりも水平寄りに形成された後側部分23g2とから構成される。
【0031】
上側リブ23hは、車幅方向に間隔をおいて、複数形成される。本実施形態においては、各上側リブ23hは、被覆部23aの前面に上下方向にわたって形成される前部と、上端部23bの上面に前後方向にわたって形成される上部と、延在部23dの下面の前側に形成される下部と、を有する。
【0032】
また、下側リブ23iは、車幅方向に間隔をおいて、複数形成される。各下側リブ23iは、延在部23dの下面、接続部23eの前面及び下方突出部23fの上面により形成される凹部の後側を塞いでいる。本実施形態においては、下側リブ23iの前端は、前後方向について、圧力センサ22と重なる位置に形成される。
【0033】
以上のように構成された衝撃吸収構造によれば、車両100の衝突物との衝突時に、中央側衝撃吸収部2に対する衝突物の入力が上側である場合と下側である場合とで、圧力センサ22への入力に差を生じさせることができる。
【0034】
図5に示すように、衝突物からの入力が中央側衝撃吸収部2の上側である場合、衝突物からの入力は、カバー体23の前端の上側から後方へ加えられる。衝突物が歩行者等である場合、衝突物からの入力は、カバー体23の上方突出部23cの前端から斜め下側後方へ加えられ被覆部23aへ伝達される。このとき、各上側リブ23hにより上方突出部23cの変形が抑制され、衝突物からの入力は被覆部23aへ的確に伝達される。これにより、カバー体23の被覆部23aにより衝撃吸収体21の前側が押圧され、衝撃吸収体21の前側が潰れることにより、圧力センサ22へ比較的大きな入力が加えられる。
【0035】
一方、
図6に示すように、衝突物からの入力が中央側衝撃吸収部2の下側である場合、衝突物からの入力は、カバー体23の前端の下側から後方へ加わる。衝突物が路上障害物等である場合、衝突物からの入力は、カバー体23の下方突出部23fの前端から後方へ加えられ延在部23dの後端側へ伝達される。このとき、カバー体23の下方突出部23fが、被覆部23aよりも前方へ突出していることから、衝突物からの入力は下方突出部23fへ確実に加えられる。また、各下側リブ23iにより延在部23d、接続部23e及び下方突出部23fの変形が抑制され、衝突物からの入力は延在部23dの後端側へ的確に伝達される。さらに、カバー体23の延在部23dが後下がりに形成され、延在部23dの後端側が比較的下方に位置することから、中央側衝撃吸収部2の下側に衝突物が侵入する場合に、衝突物からの入力を衝撃吸収体21へ伝達させやすいレイアウトとなっている。
【0036】
衝突物からの入力がカバー体23の延在部23dの後端側へ伝達されると、カバー体23の延在部23dは前端側を中心として回転する。この結果、カバー体23の延在部23dの後端側が上方へ移動し、延在部23dの後端側により衝撃吸収体21が上方へ曲げられる。このとき、カバー体23の延在部23dの後端が、圧力センサ22よりも後方に位置していることから、衝撃吸収体21における圧力センサ22付近の変形量を小さくして、圧力センサ22への入力を、衝突物からの入力が中央側衝撃吸収部2の上側である場合と比べて小さくすることができる。本実施形態においては、カバー体23の延在部23dの後端が衝撃吸収体21の前後中央より前側に位置することから、前方へ向かって上下寸法が大きくなる衝撃吸収体21を比較的大きく変形させることができる。
【0037】
尚、前記実施形態においては、衝撃吸収構造が3つの衝撃吸収部を備えるものを示したが、衝撃吸部の数は任意に変更することができる。また、バンパビームに設置される中央側衝撃吸収部に本発明を適用したものを示したが、ラジエータアッパサポートに設置される上側衝撃吸収部やラジエータロアサポートに設置される下側衝撃吸収体に本発明を適用することも可能である。
【0038】
また、前記実施形態においては、衝撃吸収体21が前方へ向かって上下寸法が小さくなるよう形成されたものを示したが、例えば
図7に示すように、衝撃吸収体121の上下寸法が前後にわたって一定であってもよい。カバー体123の延在部123dの後端位置は、圧力センサ22より後方であれば任意であるが、この衝撃吸収体121に対しては、
図7に示すように、カバー体123の延在部123dの後端を、衝撃吸収体121の前後中央付近に位置させると、衝撃吸収体121を比較的大きく変形させることができ好ましい。ここで、衝撃吸収体121の前後中央に対し、衝撃吸収体121の前後寸法の10%までのずれ量ならば、前後中央付近ということができる。
図7のカバー体132は、延在部123dの後端位置に応じて、前方突出部123fの後端及び接続部123eが衝撃吸収体121の前後中央付近に位置している。さらに、衝撃吸収体が前方へ向かって上下寸法が大きくされていてもよく、この場合は、カバー体の延在部の後端が衝撃吸収体の前後中央よりも後側に位置することが好ましい。また、
図7の衝撃吸収体121は、上面121aが後下がりに形成されていることから、カバー体123の延在部123dの後端側からの入力に直交する方向へ上面の向きを近づけることができ、衝撃吸収体121の曲げ変形量を大きくすることができる。
【0039】
また、前記実施形態においては、カバー体23の延在部23dが後下がりに形成されたものを示したが、延在部は水平又は後上がりに形成されていてもよい。また、下方突出部23fが接続部23eを介して間接的に延在部23dの後端側に接続されるものを示したが、下方突出部23fが直接的に延在部23dの後端側と接続されていてもよい。また、延在部23dについては、被覆部23aの下端側と直接的に接続されるものを示したが、被覆部23aの下端側と間接的に接続されていてもよい。その他、カバー体23の各部形状は、必要に応じて適宜変更することができ、例えば、各面取り部23j,23k,23lや、上端部23b、上方突出部23c及び下端部23gを省いた構成とすることも可能である。
【0040】
また、前記実施形態においては、衝撃吸収体21とカバー体23を別部材としたものを示したが、衝撃吸収体21とカバー体23は一体に成形されていてもよい。
【0041】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0042】
2 中央側衝撃吸収部
21 衝撃吸収体
22 圧力センサ
23 カバー体
23a 被覆部
23d 延在部
23f 下方突出部
100 車両
121 衝撃吸収体
121a 上面
123 カバー体
123d 延在部
123f 下方突出部