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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-25
(45)【発行日】2025-04-02
(54)【発明の名称】電子レンジ
(51)【国際特許分類】
   F24C 7/02 20060101AFI20250326BHJP
【FI】
F24C7/02 511M
F24C7/02 511C
F24C7/02 551B
F24C7/02 551C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021053912
(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2022151028
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2023-11-01
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002473
【氏名又は名称】象印マホービン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】金井 孝博
(72)【発明者】
【氏名】石井 琢也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 義治
(72)【発明者】
【氏名】稗田 雅則
(72)【発明者】
【氏名】椋田 朋訓
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-144970(JP,A)
【文献】特開2011-163697(JP,A)
【文献】特開2011-021767(JP,A)
【文献】特開2003-257614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 7/02
H05B 6/46 - 6/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁、天壁、一対の側壁及び後壁によって画定され、これらの壁がそれぞれマイクロ波反射体からなる加熱室と、前記加熱室内の調理物を加熱するためのマグネトロンとを有する電子レンジ本体と、
前記電子レンジ本体に開閉可能に取り付けられ、前記加熱室の前側の開口を塞ぐ扉と、
前記一対の側壁にそれぞれ前後方向に延びるように設けられた一対のガイドレールと、
前記一対のガイドレールに着脱可能に配置され、前記調理物が配置されるプレートと、
前記プレートの上方に配置されたヒータと
を備え、
前記マグネトロンによるマイクロ波は、前記加熱室の前記底壁と前記プレートとの間に照射され、
前記ガイドレールに配置した前記プレートの前記後壁側には、前記マグネトロンが照射したマイクロ波が通過可能なマイクロ波通過部が設けられており、更に、
前記一対の側壁の前記ガイドレールの下方に、それぞれ前後方向に延びるように設けられた一対の下側ガイドレールと、
前記一対の下側ガイドレールに着脱可能に配置され、前記プレートの前後方向の寸法よりも前後方向の寸法が長い下側プレートと
を備える、電子レンジ。
【請求項2】
前記プレートは金属製である、請求項1に記載の電子レンジ。
【請求項3】
前記マイクロ波通過部の前後方向の寸法は30mm以上である、請求項1又は2に記載の電子レンジ。
【請求項4】
前記マイクロ波通過部は、前記プレートと前記加熱室の前記後壁との間に設けられた空隙部からなる、請求項1から3のいずれか1項に記載の電子レンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、調理物を配置するプレートを加熱室の後壁に近接して配置するようにした電子レンジが開示されている。この電子レンジでは、マグネトロンが照射したマイクロ波の殆どをプレートと電磁波反射体の間に導くことで、短時間で調理物に焦げ目を付けるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-149877号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電子レンジでは、マグネトロンが照射したマイクロ波の殆どがプレートと電磁波反射体の間に導かれるため、調理物の上側での加熱が不十分である。よって、特許文献1の電子レンジには、調理物の加熱に関して改善の余地がある。
【0005】
本発明は、調理物の加熱を効率化できる電子レンジを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書において、電子レンジという用語は、特に言及する場合を除き、オーブンとしての機能を有するもの(オーブンレンジ)、及びグリルとしての機能を有するものを含む。
【0007】
本発明の一態様は、底壁、天壁、一対の側壁及び後壁によって画定され、これらの壁がそれぞれマイクロ波反射体からなる加熱室と、前記加熱室内の調理物を加熱するためのマグネトロンとを有する電子レンジ本体と、前記電子レンジ本体に開閉可能に取り付けられ、前記加熱室の前側の開口を塞ぐ扉と、前記一対の側壁にそれぞれ前後方向に延びるように設けられた一対のガイドレールと、前記一対のガイドレールに着脱可能に配置され、前記調理物が配置されるプレートとを備え、前記マグネトロンによるマイクロ波は、前記加熱室の前記底壁と前記プレートとの間に照射され、前記ガイドレールに配置した前記プレートの前記後壁側には、前記マグネトロンが照射したマイクロ波が通過可能なマイクロ波通過部が設けられている、電子レンジを提供する。ここで、前記プレートの前記後壁側とは、プレート自体の後壁側にマイクロ波通過部を設ける構成、及びプレートよりも後壁側にマイクロ波通過部を設ける構成の両方が含まれる。
【0008】
加熱室を画定する全ての壁がマイクロ波反射体からなり、プレートの後壁側にはマイクロ波通過部が設けられている。そのため、マグネトロンが照射したマイクロ波のうち後壁側に向かうマイクロ波は、後壁と一対の側壁とで全て反射され、マイクロ波通過部を通過してプレートの上側へ漏れなく回りこんだ後、天壁で更に反射されて、プレート上に配置された調理物の上側に照射される。よって、調理物の加熱を効率化できる。
【0009】
前記マイクロ波通過部の前後方向の寸法は30mm以上である。
【0010】
マイクロ波通過部の前後方向の寸法が30mm以上であるため、マイクロ波通過部を通してプレートの上側にマイクロ波を確実に回りこませることができる。
【0011】
前記マイクロ波通過部は、前記プレートと前記加熱室の前記後壁との間に設けられた空隙部からなる。
【0012】
マイクロ波通過部が空隙部からなるため、後壁側に向かうマイクロ波をプレートの上側へ確実に通過させることができる。
【0013】
前記一対の側壁のうちの少なくとも一方、又は前記一対のガイドレールのうちの少なくとも一方に、前記プレートの後方への移動を規制するストッパを備える。
【0014】
ストッパによってプレートの後方への移動が規制されるため、後壁とプレートの間にマイクロ波が通過可能な空隙部を確保できる。
【0015】
前記空隙部の少なくとも一部は、前記後壁に後方へ窪むように設けられた凹部によって構成されている。
【0016】
後壁に後方へ窪む凹部が設けられているため、後壁とプレートの間にマイクロ波が通過可能な空隙部を確保できる。
【0017】
前記扉は、前記マイクロ波を反射する反射層を有するガラス製の窓部を備え、前記ガイドレールに配置した前記プレートの前端と前記扉との間の間隔は0mm以上30mm未満である。
【0018】
扉とプレートの間からマイクロ波を回りこませる場合、マイクロ波を透過可能なガラス製の窓部近辺をマイクロ波が通過するため、マイクロ波が減衰されやすい。これに対して、本態様では、扉とプレートの間の間隔が、マイクロ波の通過を防止ないし抑制可能な0mm以上30mm未満に設定されているため、マグネトロンが照射したマイクロ波の殆どを、プレートの後壁側のマイクロ波通過部を通してプレートの上側へ回りこませることができる。よって、マイクロ波を効率的に調理物に照射できるため、調理物の加熱を効率化できる。
【0019】
前記電子レンジ本体は、前記加熱室内の前記プレートの上方に位置するヒータを備える。
【0020】
プレートの上方にヒータを備えるため、調理物の上面に焦げ目を迅速につけることができる。
【0021】
前記プレートは金属製である。ここで、金属製のプレートには、表面にシリカ(二酸化ケイ素)を主成分とするガラス質の釉薬を焼き付けたホーロープレートが含まれる。
【0022】
プレートが金属製であるため、マイクロ波通過部を通してプレートの上側へマイクロ波を漏れなく回りこませ、調理物を効率的に加熱できる。また、金属製のプレートはヒータ加熱にも使用できる。よって、調理物に応じた加熱コースによってプレートを交換する必要がないため、ユーザの利便性を向上できる。
【0023】
前記一対の側壁の前記ガイドレールの下方に、それぞれ前後方向に延びるように設けられた一対の下側ガイドレールと、前記一対の下側ガイドレールに着脱可能に配置され、前記プレートの前後方向の寸法よりも前後方向の寸法が長い下側プレートとを備える。
【0024】
上側のプレートと下側のプレートとはヒータからの距離が異なるため、ヒータによる加熱量もそれぞれ異なる。よって、調理物に応じて上側プレートと下側プレートを選択的に使用することで、調理物に応じた理想的な加熱を行うことができる。
【0025】
前記マグネトロンによるマイクロ波加熱と、前記ヒータによるヒータ加熱とを切り換える制御部を備える。
【0026】
マグネトロンによるマイクロ波加熱とヒータによるヒータ加熱とを自動的に切り換える制御部を備える。そのため、マイクロ波加熱によって調理物の中心部まで火を通し、ヒータ加熱によって調理物の表面に焦げ目を素早くつける等、調理物に応じて理想的な加熱を行うことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の電子レンジでは、調理物の加熱を効率化できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1実施形態に係る電子レンジの斜視図。
図2】本発明の第1実施形態に係る電子レンジの正面図。
図3】電子レンジ本体とプレートの分解斜視図。
図4図1のIV-IV線での模式的な断面図。
図5図2のV-V線での模式的な断面図。
図6図4のVI-VIでの模式的な断面図。
図7】上側プレートのみを配置した図5と同様の断面図。
図8図5のVIII部分の拡大図。
図9】プレートの分解斜視図。
図10】本発明の第2実施形態に係る電子レンジの図5と同様の断面図。
図11】変形例に係る電子レンジの図5と同様の断面図。
図12】変形例に係る電子レンジの図6と同様の断面図。
図13】他の変形例に係る電子レンジの図6と同様の断面図。
図14】加熱室内で発生する電界と磁界の概念図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0030】
(第1実施形態)
図1から図3は、本発明の第1実施形態に係る電子レンジ1を示す。個々の図において、X方向が電子レンジ本体10の前後方向であり、Y方向が電子レンジ本体10の幅方向であり、Z方向が電子レンジ本体10の高さ方向である。
【0031】
図1から図3を参照すると、電子レンジ1は、電子レンジ本体10と、電子レンジ本体10に開閉可能に取り付けられた扉20と、電子レンジ本体10内に着脱可能に配置される2種類のプレート40,45とを備える。
【0032】
電子レンジ本体10は、筐体11内に加熱室12を備える。加熱室12は、図1において手前側が開口17となっている直方体状の空間である。図4及び図5を参照すると、加熱室12は、いずれも矩形状の底壁13、天壁14、一対の側壁15、及び後壁16によって画定されている。これらの壁13~16はいずれも、マイクロ波反射体である金属板からなる。
【0033】
底壁13は、XY平面に沿って延び、図示しない支持枠によって筐体11の底壁上に所定間隔をあけて支持されている。天壁14は、底壁13の高さ方向Z上側に対向して配設され、XY平面に沿って延びている。一対の側壁15は、互いに幅方向Yに対向し、それぞれXZ平面に沿って延びている。一対の側壁15それぞれの下端は底壁13に連なり、一対の側壁15それぞれの上端は天壁14に連なっている。底壁13、天壁14及び一対の側壁15それぞれの前端は、筐体11の前壁に連なり、加熱室12の開口17を画定している。後壁16は、YZ平面に沿って延びており、底壁13、天壁14及び一対の側壁15それぞれの後端に連なっている。
【0034】
図1及び図5を参照すると、扉20は、筐体11の前側に取り付けられ、加熱室12の開口17を開放可能に塞ぐ。扉20は、幅方向Yに延びる回転軸(図示せず)を中心として、図1に示す開位置と、図5に示す閉位置とに回転可能である。扉20は、金属製で不透明な枠体21と、加熱室12内を透視可能な窓部22とを備える。
【0035】
図5に最も明瞭に示すように、窓部22は、加熱室12を臨む内窓23と、内窓23の外側に間隔をあけて配置された外窓24とを備える。内窓23と外窓24はいずれもマイクロ波を透過可能なガラス製である。内窓23と外窓24の間には、内窓23の外側に隣接するようにマイクロ波を反射する反射層25が設けられている。反射層25は、視認性確保のために、例えば直径1mmの多数の孔を設けたパンチングメタルからなる。
【0036】
引き続いて図5を参照すると、電子レンジ本体10は更に、マグネトロン30、ヒータ31、及び制御部33を備える。また、電子レンジ本体10は上側プレート40を配置する上側ガイドレール35と、下側プレート45を配置する下側ガイドレール38とを備える。
【0037】
マグネトロン30は、筐体11と加熱室12の間に配置され、加熱室12内の調理物をマイクロ波によってマイクロ波加熱する。より具体的には、底壁13の中央には給電口18が設けられており、この給電口18の下面にダクト30aが取り付けられている。マグネトロン30は、ダクト30a内に取り付けられ、制御部33に電気的に接続されている。但し、給電口18は、加熱室12の底壁13と上側プレート40との間であれば、後壁16に設けられてもよいし、一対の側壁15のうちの一方に設けられてもよい。
【0038】
ヒータ31は、上側プレート40上に位置するように天壁14側に配置され、加熱室12内の調理物を輻射熱によってヒータ加熱する。本実施形態では、ヒータ31は、前後方向Xに間隔をあけて一対配置されており、それぞれ一対の側壁15のうちの一方から他方にかけて幅方向Yに延びている。但し、ヒータ31は、上側プレート40の前後方向Xの中央に位置するように1本のみ設けられてもよいし、3本以上設けられてもよい。
【0039】
制御部33は、マグネトロン30とヒータ31をそれぞれ制御し、加熱室12内の調理物を加熱する。制御部33には、例えば1個のマイクロコンピュータを用いることができる。制御部33による加熱処理には、調理終了までマグネトロン30のみを駆動させるマイクロ波加熱コースと、調理終了までヒータ31のみを駆動させるヒータ加熱コースと、マグネトロン30とヒータ31の両方を駆動させる複合加熱コースとが含まれる。
【0040】
複合加熱で制御部33は、例えば、マグネトロン33によるマイクロ波加熱とヒータ31によるヒータ加熱とを自動的に切り換えて、調理物の加熱を行う。具体的には、マグネトロン33を駆動し、マイクロ波加熱によって調理物の中心部まで火を通す。予め設定されたマイクロ波加熱時間、又はユーザが設定したマイクロ波加熱時間が経過すると、マグネトロン33の駆動を停止する。続いて、ヒータ31を駆動し、ヒータ加熱によって調理物の表面に焦げ目をつける。予め設定されたヒータ加熱時間、又はユーザが設定したヒータ加熱時間が経過すると、ヒータ31の駆動を停止する。
【0041】
図4及び図5を参照すると、一対の上側ガイドレール35はそれぞれ、一対の側壁15のうち高さ方向Zの同じ位置に配置され、前後方向Xへ水平に延びている。一対の上側ガイドレール35上には、上側プレート40の後方への移動を規制するストッパ36が設けられている。ストッパ36は、一対の側壁15からそれぞれ幅方向Y内側へ突出している。
【0042】
ストッパ36は、それぞれ一対の上側ガイドレール35の後端に位置するように設けられているが、一対の上側ガイドレール35の中間部分にそれぞれ設けられていてもよい。また、ストッパ36は、一対の上側ガイドレール35からそれぞれ上向きに突出していてもよい。また、ストッパ36は、一対の側壁15のうちの一方のみ、又は一対の上側ガイドレール35のうちの一方のみに設けられていてもよい。
【0043】
引き続いて図4及び図5を参照すると、一対の下側ガイドレール38はそれぞれ、一対の側壁15のうち、上側ガイドレール35の下方に間隔をあけて配設されている。一対の下側ガイドレール38はそれぞれ、高さ方向Zの同じ位置に配置され、前後方向Xへ水平に延びている。下側ガイドレール38上には、移動規制用のストッパは設けられていない。
【0044】
図1及び図3を参照すると、上側プレート40は、両側が一対の上側ガイドレール35上にそれぞれ載置されることで、加熱室12に支持される。上側プレート40は、マイクロ波加熱コース、ヒータ加熱コース、及び複合加熱コースの全てで使用可能である。
【0045】
図8及び図9を参照すると、上側プレート40は、プレート本体41と、プレート本体41の外周に取り付けられた絶縁カバー42とを備える。
【0046】
プレート本体41は、平面視で長方形状の底壁部41aと、底壁部41aの外周に立設された外周壁部41bとを備える。底壁部41aには何ら貫通孔は設けられていない。外周壁部41bの上端には、内向きに曲げ加工された断面略円筒状のカール部41cが設けられている。底壁部41a、外周壁部41b及びカール部41cを含む全体はマイクロ波反射体からなる。例えば、プレート本体41を金属製とすることで、全体をマイクロ波反射体とすることができる。ここで、金属製のプレート本体41には、表面にシリカ(二酸化ケイ素)を主成分とするガラス質の釉薬を焼き付けたホーロープレートが含まれる。このホーロープレートを用いる場合、絶縁カバー42は設けなくてもよい。
【0047】
絶縁カバー42は、絶縁性を有する耐熱性ゴム又は耐熱性樹脂からなり、マグネトロン30によるマイクロ波加熱時に放電を防ぐために設けられている。絶縁カバー42は、底壁部41aの外面外周部を覆う環状の底カバー部42aと、外周壁部41bの外面を覆う側面カバー部42bと、カール部41cの外面を覆う上カバー部42cとを備える。絶縁カバー42は、本実施形態ではプレート本体41の全周を覆うように四角筒状に設けられているが、プレート本体41のうち、少なくとも加熱室12の側壁15と接する部分及び近接する部分のみに設けてもよい。
【0048】
図1及び図3を参照すると、下側プレート45は、両側が一対の下側ガイドレール38上にそれぞれ載置されることで、加熱室12に支持される。下側プレート45は、ヒータ加熱コースのみで使用可能である。下側プレート45には、上側プレート40のような絶縁カバーは用いられていない。但し、上側プレート40と同様に、下側プレート45にも絶縁カバーを設けてもよい。
【0049】
下側プレート45は、上側プレート40のプレート本体41と同様に、平面視で長方形状の底壁部と、底壁部の外周に立設された外周壁部とを備える。底壁部には何ら貫通孔は設けられていない。外周壁部の上端には、内向きに曲げ加工された断面略円筒状のカール部が設けられている。底壁部、外周壁部及びカール部を含む全体はマイクロ波反射体からなる。例えば、下側プレート45を金属製とすることで、全体をマイクロ波反射体とすることができる。金属製の下側プレート45には、表面にシリカ(二酸化ケイ素)を主成分とするガラス質の釉薬を焼き付けたホーロープレートが含まれる。
【0050】
次に、上側プレート40及び下側プレート45それぞれの寸法設定について、具体的に説明する。なお、以下に説明では、個々のプレート40,45について前端及び後端という用語を使用するが、実際の使用上、個々のプレート40,45には前側及び後側の区別はない。
【0051】
図4図5及び図6を参照すると、上側プレート40は、幅方向Yの寸法W1よりも前後方向Xの寸法D1が小さい平面視長方形状である。下側プレート45も、幅方向Yの寸法W2よりも前後方向Xの寸法D2が小さい平面視長方形状である。上側プレート40の幅方向Yの寸法W1と、下側プレート45の幅方向Yの寸法W2とは、同じである。上側プレート40の前後方向Xの寸法D1と、下側プレート45の前後方向Xの寸法D2とは異なっており、下側プレート45の寸法D2は上側プレート40の寸法D1よりも長い。下側プレート45の寸法D2は、加熱室12の前後方向Xの寸法、つまり、後壁16の内面から扉20の内面までの寸法よりも若干小さく、後壁16及び扉20に対して干渉しない程度の隙間を確保できる長さに設定されている。
【0052】
図5及び図6を参照すると、上側プレート40の前後方向Xの中央よりも後壁16側には、マイクロ波が通過可能な第1空隙部(マイクロ波通過部)43Aが設けられている。より具体的には、上側プレート40の後端がストッパ36に当接した状態で、上側プレート40の後端と加熱室12の後壁16との間には、定められた間隔S1の第1空隙部43Aが、上側プレート40の全幅方向Yにかけて形成される。言い換えれば、上側プレート40の後端と加熱室12の後壁16との間に間隔S1の第1空隙部43Aが形成されるように、上側ガイドレール35上にストッパ36が設けられている。第1空隙部43Aの前後方向Xの間隔(寸法)S1は、マグネトロン30が照射したマイクロ波が低減することなく通過可能な30mm以上である。第1空隙部43Aの間隔S1の上限は無いが、過度に大きくすると、上側プレート40上の調理物配置スペースが少なくなる点で好ましくない。
【0053】
上側プレート40の後端がストッパ36に当接した状態で、上側プレート40の前端と扉20との間には、定められた間隔S2の第2空隙部43Bが形成される。言い換えれば、上側プレート40の前端と扉20との間に間隔S2の第2空隙部43Bが形成されるように、ストッパ36の前後方向Xの位置と、上側プレート40の前後方向Xの寸法D1とが設定されている。第2空隙部43Bの前後方向Xの間隔(寸法)S2は、マグネトロン30が照射したマイクロ波の通過を防止ないし抑制可能な0mm以上30mm未満である。
【0054】
マグネトロン30によってマイクロ波を照射すると、加熱室12内には、図14に示す電磁波が発生し、向きが異なる電界と磁界が生じる。これらの電界と磁界の強さ(振幅の大きさ)が食品を温める強さに相当する。マグネトロン30による発振周波数は2450MHzであるため、電磁波の波長(λ)は約120mmになる。電磁波のピークは、節(ゼロ点)から波長の4分の1となるため、30mm以上の隙間があれば、最も強い電界と磁界を通過させることができる。第1空隙部43Aではマイクロ波の通過を積極的に許容するために、第1空隙部43Aの間隔S1を30mm以上としている。第2空隙部43Bではマイクロ波の通過を防止ないし抑制するために、第2空隙部43Bの間隔S2を0mm以上30mm未満としている。
【0055】
下側プレート45を下側ガイドレール38上に配置した状態で、下側プレート45の後端と加熱室12の後壁16との間には間隔S3の第1空隙部46Aが形成され、下側プレート45の前端と扉20との間には間隔S4の第2空隙部46Bが形成される。第1空隙部46Aの前後方向Xの間隔S3、及び第2空隙部46Bの前後方向Xの間隔S4は、いずれもマグネトロン30が照射したマイクロ波の通過を防止ないし抑制可能な0mm以上30mm未満である。また、本実施形態では、第1空隙部46Aの間隔S3と第2空隙部46Bの間隔S4の合計寸法(S3+S4)を、0mm以上30mm未満に設定されている。
【0056】
次に、制御部33による加熱処理について説明する。
【0057】
図7に示すように、マイクロ波加熱コースの場合、上側プレート40を使用できる。上側ガイドレール35に上側プレート40を配置し、下側ガイドレール38に下側プレート45を配置しない場合、加熱室12内は、上側プレート40よりも下側の空間Aと、上側プレート40よりも上側の空間Bとに区画される。下側空間Aと上側空間Bは、第1空隙部43Aを介して連通している。
【0058】
制御部33によってマイクロ波加熱が実行されると、図7に破線で示すように、マグネトロン30からマイクロ波が、ダクト30a及び給電口18を通して加熱室12内に放射状に照射される。加熱室12を画定する壁13~16と上側プレート40はマイクロ波反射体からなり、扉20はマイクロ波反射体からなる反射層25を備える。また、扉20と上側プレート40の間の第2空隙部43Bの間隔S2(図5参照)は、マイクロ波の通過を防止ないし抑制可能な0mm以上30mm未満である。そのため、マイクロ波が照射された下側空間Aのうち第1空隙部43Aよりも前側では、マイクロ波が繰り返し反射される。
【0059】
下側空間Aのうち第1空隙部43Aが形成された領域では、マイクロ波は、第1空隙部43Aを通って上側空間Bに入射する。また、後壁16及び一対の側壁15のうち、第1空隙部43Aを画定する部分に向かうマイクロ波は、後壁16と側壁15でそれぞれ反射され、第1空隙部43Aを通して上側空間Bに入射する。上側空間Bでは、マイクロ波は、上側プレート40上に配置された調理物の上面に入射されるまで、天壁14、一対の側壁15及び上側プレート40で繰り返し反射される。
【0060】
扉20と上側プレート40の間の第2空隙部43Bの間隔S2(図5参照)は、マイクロ波の通過を防止ないし抑制可能な0mm以上30mm未満である。そのため、第2空隙部43Bを通って、下側空間Aのマイクロ波が上側空間Bに入り込むことが防止ないし抑制される。また、ガラス製の窓部22が反射層25を備えていても、窓部22からのマイクロ波の漏れ根絶は困難であるが、第2空隙部43Bではマイクロ波の通過が防止ないし抑制されているため、窓部22からのマイクロ波の漏れを最小限に抑えることができる。
【0061】
以上のように、本実施形態では、マグネトロン30が照射したマイクロ波の殆どを、第1空隙部43Aを通して上側空間Bに回りこませ、調理物に入射させることができる。よって、マイクロ波を効率的に調理物に照射できるため、調理物の加熱を効率化できる。
【0062】
複合加熱コースの場合、前述したマイクロ波加熱に引き続いてヒータ加熱が行われる。具体的には、制御部33は、マグネトロン30によるマイクロ波の照射を停止した後、ヒータ31を駆動させ、輻射熱によって調理物を加熱する。これにより、調理物の中心部を加熱した後、調理物の上面に焦げ目を迅速につけることができる。
【0063】
ヒータ加熱コースでは、上側プレート40のみが使用される場合と、下側プレート45のみが使用される場合と、上側プレート40と下側プレート45の両方が使用される場合とがある。加熱室12内に配置した上側プレート40と下側プレート45は、ヒータ31からの距離が異なるため、ヒータ31による加熱量もそれぞれ異なる。よって、上側プレート40及び下側プレート45のうちの一方を用いることで、調理物に応じた理想的な加熱を行うことができる。また、上側プレート40及び下側プレート45の両方を用いることで、異なる2つの調理を一度に行うことができる。
【0064】
このように構成した電子レンジ1は、以下の特徴を有する。
【0065】
加熱室12を画定する全ての壁13~16がマイクロ波反射体からなり、上側プレート40の後壁16側には第1空隙部(マイクロ波通過部)43Aが設けられている。そのため、マグネトロン30が照射したマイクロ波のうち後壁16側に向かうマイクロ波は、後壁16と一対の側壁15とで全て反射され、第1空隙部43Aを通過して上側プレート40の上側へ漏れなく回りこむ。その後、天壁14で更に反射されて、上側プレート40上に配置された調理物の上側に照射される。よって、調理物の加熱を効率化できる。
【0066】
第1空隙部43Aの前後方向の寸法S1が30mm以上であるため、第1空隙部43Aを通して上側プレート40の上側にマイクロ波を確実に回りこませることができる。
【0067】
マイクロ波通過部が上側プレート40と加熱室12の後壁16との間に設けられた第1空隙部43Aからなるため、後壁16側に向かうマイクロ波を上側プレート40の上側へ確実に通過させることができる。
【0068】
ストッパ36によって上側プレート40の後方への移動が規制されるため、後壁16と上側プレート40の間にマイクロ波が通過可能な第1空隙部43Aを確保できる。
【0069】
扉20と上側プレート40の間からマイクロ波を回りこませる場合、マイクロ波を透過可能なガラス製の窓部22近辺をマイクロ波が通過するため、マイクロ波が減衰されやすい。これに対して本実施形態では、扉20と上側プレート40の間の間隔S2が、マイクロ波の通過を防止ないし抑制可能な0mm以上30mm未満に設定されているため、マグネトロン30が照射したマイクロ波の殆どを、上側プレート40の後端側の第1空隙部43Aから上側プレート40の上側へ回りこませることができる。よって、マイクロ波を効率的に調理物に照射できるため、調理物の加熱を効率化できる。
【0070】
上側プレート40の上方にヒータ31を備えるため、調理物の上面に焦げ目を迅速につけることができる。
【0071】
上側プレート40が金属製であるため、第1空隙部43を通して上側プレート40の上側へマイクロ波を漏れなく回りこませ、調理物を効率的に加熱できる。また、金属製の上側プレート40はヒータ加熱にも使用できる。よって、調理物に応じた加熱コースによってプレートを交換する必要がないため、ユーザの利便性を向上できる。
【0072】
上側プレート40と下側プレート45とはヒータ31からの距離が異なるため、ヒータ31による加熱量もそれぞれ異なる。よって、調理物に応じて上側プレート40と下側プレート45を選択的に使用することで、調理物に応じた理想的な加熱を行うことができる。
【0073】
マグネトロン30によるマイクロ波加熱とヒータ31によるヒータ加熱とを自動的に切り換える制御部33を備える。そのため、マイクロ波加熱によって調理物の中心部まで火を通し、ヒータ加熱によって調理物の表面に焦げ目を素早くつける等、調理物に応じて理想的な加熱を行うことができる。
【0074】
(第2実施形態)
図10は第2実施形態の電子レンジ1を示す。この電子レンジ1では、加熱室12の後壁16に設けた凹部16bによって、第1空隙部43Aを確保した点で第1実施形態と相違する。
【0075】
凹部16bは、後壁本体16aにそれぞれ連なる上板部16c、下板部16d、及び一対の側板部16eを備える。また、凹部16bは、上板部16c、下板部16d、及び一対の側板部16eそれぞれの後端に連なる端板部16fを備える。
【0076】
上板部16cは、前後方向Xの前側から後側に向けて下側へ傾斜した平板状であり、全体が装着状態の上側プレート40よりも上側に位置する。下板部16dは、前後方向Xの前側から後側に向けて上側へ傾斜する平板状であり、全体が装着状態の上側プレート40よりも下側に位置する。一対の側板部16eはそれぞれ、上板部16c及び下板部16dそれぞれの側端に連なっており、全体が装着状態の上側プレート40よりも幅方向Yの外側に位置する。
【0077】
端板部16fは、後壁本体16aに対して平行に位置するように、YZ平面に沿って延びている。この端板部16fと上側プレート40の後端との間に第1空隙部43Aが形成されており、この第1空隙部43Aの前後方向の間隔S1が8mm以上に設定されている。ストッパ36を形成する位置は、端板部16fを基準として設定されている。
【0078】
このように構成した第2実施形態では、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。また、第2実施形態では、第1空隙部43Aの一部が、後壁16に後方へ窪むように設けられた凹部16bによって構成されている。そのため、後壁16と上側プレート40の間にマイクロ波が通過可能な第1空隙部43Aを確保できる。また、第1空隙部43Aの確保のために、上側プレート40を過度に小さくする必要はない。よって、調理物の配置スペースを十分に確保できる。
【0079】
なお、本発明の電子レンジ1は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0080】
例えば、図11に示すように、上側プレート40を加熱室12の前後方向の中央に配置し、上側プレート40と扉20の間には、30mm以上の間隔S2で第2空隙部43Bを設けてもよい。
【0081】
図10に示す第2実施形態では、上側プレート40の寸法D1を下側プレート45の寸法D2(図5参照)と同一にし、第1空隙部43Aの全部が凹部16bによって構成されてもよい。
【0082】
図12に示すように、第1空隙部(マイクロ波通過部)43Aは、上側プレート40自体の後壁16側に形成した切欠部40aによって構成されてもよい。図12の例では切欠部40aは、矩形状であるが、円弧状であってもよく、その形状は必要に応じて変更が可能である。また、切欠部40aの幅方向Yの寸法wは、マグネトロン30が照射したマイクロ波が低減することなく通過可能な30mm以上であり、上限は無い。上側プレート40の後端と加熱室12の後壁16との間、及び上側プレート40の前端と扉20との間には、いずれもマグネトロン30が照射したマイクロ波の通過を防止ないし抑制可能な0mm以上30mm未満の空隙部が形成されるように、上側プレート40の前後方向Xの寸法D1は設定される。このようにすれば、前記実施形態と同様の作用及び効果を得ることができるうえ、上側ガイドレール35のストッパ36が不要であるため構成を簡素化できる。
【0083】
図12に示す切欠部40aの代わりに打抜部によって第1空隙部(マイクロ波通過部)43Aを構成してもよい。打抜部は上側プレート40の後端よりも前側に設けられる。但し、打抜部は、上側プレート40の前後方向Xの中央よりも後端(後壁16)寄りに設けられる。また、打抜部の対向する縁の間の間隔は、マイクロ波が低減することなく通過可能な30mm以上に設定される。
【0084】
図13に示すように、上側プレート40は、扉20側に配置される金属製のプレート本体41と、後壁16側に配置される樹脂(マイクロ波透過体)製の成形部44とを備える構成とし、成形部44がマイクロ波通過部を構成するようにしてもよい。このような上側プレート40は、インサート成形によって製造できる。上側プレート40の前後方向Xの寸法D1、つまりプレート本体41の前端から成形部44の後端までの寸法は、加熱室12の後壁16との間及び扉20との間に0mm以上30mm未満の空隙部が形成される長さに設定される。このようにしても、前記実施形態と同様の作用及び効果を得ることができるうえ、上側ガイドレール35のストッパ36が不要であるため構成を簡素化できる。
【0085】
図13に示す成形部44を上側プレート40とは別体で設けてもよい。また、図6に示す第1空隙部43Aに、樹脂製の成形部品(いわゆるスペーサ)を配置してもよい。このようにしても、前記実施形態と同様の作用及び効果を得ることができるうえ、上側ガイドレール35のストッパ36が不要であるため構成を簡素化できる。
【0086】
下側ガイドレール38を設けずに、上側プレート40のみを配置可能としてもよい。ヒータ31を設けずに、マイクロ波加熱のみを実行可能としてもよい。
【0087】
マグネトロン30が照射したマイクロ波が、下側ガイドレール38に配置した下側プレート45の後端と加熱室12の後壁16との間の第1空隙部46Aを通過可能としてもよい。つまり、第1空隙部46Aの前後方向Xの寸法(間隔S3)を、マグネトロン30が照射したマイクロ波が積極的に通過可能な距離にしてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 電子レンジ
10 電子レンジ本体
11 筐体
12 加熱室
13 底壁
14 天壁
15 側壁
16 後壁
16a 後壁本体
16b 凹部
16c 上板部
16d 下板部
16e 側板部
16f 端板部
17 開口
18 給電口
20 扉
21 枠体
22 窓部
23 内窓
24 外窓
25 反射層
30 マグネトロン
30a ダクト
31 ヒータ
33 制御部
35 上側ガイドレール
36 ストッパ
38 下側ガイドレール
40 上側プレート
40a 切欠部
41 プレート本体
41a 底壁部
41b 外周壁部
41c カール部
42 絶縁カバー
42a 底カバー部
42b 側面カバー部
42c 上カバー部
43A 第1空隙部(マイクロ波通過部)
43B 第2空隙部
44 成形部(マイクロ波通過部)
45 下側プレート
46A 第1空隙部
46B 第2空隙部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14