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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-25
(45)【発行日】2025-04-02
(54)【発明の名称】アクチュエータおよびコイル
(51)【国際特許分類】
   B06B 1/04 20060101AFI20250326BHJP
【FI】
B06B1/04 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021063219
(22)【出願日】2021-04-02
(65)【公開番号】P2022158374
(43)【公開日】2022-10-17
【審査請求日】2024-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 一彦
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-086321(JP,U)
【文献】特開2020-102902(JP,A)
【文献】特開昭59-162737(JP,A)
【文献】実開昭55-122308(JP,U)
【文献】特開2004-040001(JP,A)
【文献】国際公開第2010/103929(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0120299(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネットを備える可動体と、
コイル、前記コイルを保持するコイルホルダ、および前記コイルの外周側で当該コイルの巻回部から引き出された2本の引き出し線が接続される給電基板を備える支持体と、
前記可動体と前記支持体とを相対移動可能に接続する接続体と、
前記マグネットおよび前記コイルを備え、前記可動体と前記支持体とを相対移動させる磁気駆動機構と、を有し、
前記マグネットは、前記巻回部の厚み方向で当該コイルと対向し、
前記コイルは、第1巻回部、前記第1巻回部から内周側に引き出された第1内側引き出し線、および前記第1巻回部から外側に引き出された第1外側引き出し線、を有する第1空芯コイルと、巻回方向を同一として前記第1巻回部に前記厚み方向の他方から重ねられた第2巻回部、前記第2巻回部から内周側に引き出されて先端部分が前記第1内側引き出し線の先端部分に電気的に接続された第2内側引き出し線、および前記第2巻回部から外側に引き出された第2外側引き出し線、を有する第2空芯コイルと、を備え、
前記巻回部は、前記第1巻回部および前記第2巻回部を備え、
前記第1外側引き出し線および前記第2外側引き出し線は、2本の前記引き出し線であり、
前記第1巻回部は、前記厚み方向に多重に巻かれており、
前記第2巻回部は、前記厚み方向に多重に巻かれており、
前記第1内側引き出し線は、前記第1巻回部の前記厚み方向の一方に位置し、
前記第1外側引き出し線は、前記第1巻回部の前記厚み方向の他方に位置し、
前記第2内側引き出し線は、前記第2巻回部の前記厚み方向の一方に位置し、
前記第2外側引き出し線は、前記第2巻回部の前記厚み方向の他方に位置することを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記第1空芯コイルの内側および前記第2空芯コイルの内側に充填された充填部と、前記第1空芯コイルと前記第2空芯コイルとの間に介在して当該第1空芯コイルと当該第2空芯コイルとを接着するコイル接着部とを有する接着剤層を備え、
前記第1内側引き出し線と前記第2内側引き出し線とは、前記充填部の内部に封止されることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記接着剤層は、前記巻回部と前記コイルホルダとの間に介在して、前記コイルを前記コイルホルダに固定する巻回部固定部を備えることを特徴とする請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記第1空芯コイルと前記第2空芯コイルとは、同一の空芯コイルであることを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記給電基板として、第1給電基板と、前記巻回部の前記第1給電基板とは反対側に配置された第2給電基板と、を備え、
前記第1外側引き出し線は、前記第1給電基板に接続され、
前記第2外側引き出し線は、前記第2給電基板に接続されることを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
巻回部と、前記巻回部から引き出される2本のコイル線と、を有するコイルにおいて、
第1巻回部、前記第1巻回部から内周側に引き出された第1内側引き出し線、および前記第1巻回部から外側に引き出された第1外側引き出し線、を有する第1空芯コイルと、
巻回方向を同一として前記第1巻回部に前記厚み方向の他方から重ね合わされた第2巻回部、前記第2巻回部から内周側に引き出されて先端部分が前記第1内側引き出し線の先端部分に電気的に接続された第2内側引き出し線、および前記第2巻回部から外側に引き出された第2外側引き出し線、を有する第2空芯コイルと、
前記第1空芯コイルと前記第2空芯コイルとの間に介在して当該第1空芯コイルと当該第2空芯コイルとを接着する接着剤層と、を有し、
前記巻回部は、前記第1巻回部および前記第2巻回部を備え、
前記第1外側引き出し線および前記第2外側引き出し線は、2本の前記引き出し線であり、
前記第1巻回部は、前記厚み方向に多重に巻かれており、
前記第2巻回部は、前記厚み方向に多重に巻かれており、
前記第1内側引き出し線は、前記第1巻回部の前記厚み方向の一方に位置し、
前記第1外側引き出し線は、前記第1巻回部の前記厚み方向の他方に位置し、
前記第2内側引き出し線は、前記第2巻回部の前記厚み方向の一方に位置し、
前記第2外側引き出し線は、前記第2巻回部の前記厚み方向の他方に位置することを特徴とするコイル。
【請求項7】
前記接着剤層は、第1空芯コイルの内側および前記第2空芯コイルの内側に充填された充填部を備え、
前記第1内側引き出し線と前記第2内側引き出し線とは、前記充填部の内部に封止されることを特徴とする請求項6に記載のコイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネットとコイルとを備える磁気駆動機構により可動体を移動させるアクチュエータに関する。また、磁気駆動機構に用いられるコイルに関する。
【背景技術】
【0002】
情報を振動によって報知するデバイスとして、支持体に支持された可動体を磁気駆動機構によって振動させるアクチュエータが提案されている。特許文献1のアクチュータは、可動体と、支持体と、可動体と支持体とを相対移動可能に接続する接続体と、可動体と支持体とを相対移動させる磁気駆動機構と、を有する。可動体は、マグネットを備える。支持体は、コイルと、コイルを保持するコイルホルダと、コイルホルダに固定された給電基板と、を備える。マグネットとコイルとは、コイルの巻回部の厚み方向で対向して、磁気駆動機構を構成する。巻回部の中心穴は、マグネットとコイルとが対向する対向方向に開口する。巻回部から引き出されたコイル線は、巻回部の径方向外側に配置された給電基板に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-102902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コイルは、一般的に、その中心穴の形状を規定するための治具に対して、コイル線を高さ方向および外周側に巻回して、製造する。従って、コイルが完成したときに、コイル線の巻き始め部分は巻回部の内周側に位置し、巻き終わり部分は巻回部の外周側に位置する。よって、コイルを給電基板に接続する際に、巻き終わり部分はそのまま引き回して給電基板に接続できる。しかし、巻き始め部分は、巻回部の表面に沿って、巻回部の内周側から外周側に引き出した後に、給電基板に接続しなければならない。
【0005】
ここで、磁気駆動機構では、コイルの巻回部とマグネットとのギャップを狭くすれば、支持体と可動体とを相対移動させる推力を大きくすることができる。しかし、コイルを給電基板に接続するために、巻回部の表面にコイル線の巻き始め部分が這っている場合には、巻回部の表面とマグネットとのギャップは、コイル線の巻き始め部分が存在する分だけ、大きくなってしまう。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、コイル線の端部を巻回部の外周側で引き回すために、コイル線を巻回部の表面に沿って這わせる必要のないコイルを備えるアクチュエータを提供することにある。また、コイル線の端部を巻回部の外周側で引き回すために、コイル線の端部を巻回部の表面に沿って這わせる必要のないコイルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のアクチュエータは、マグネットを備える可動体と、コイル、前記コイルを保持するコイルホルダ、および前記コイルの外周側で当該コイルの巻回部から引き出された2本の引き出し線が接続される給電基板を備える支持体と、前記可動体と前記支持体とを相対移動可能に接続する接続体と、前記マグネットおよび前記コイルを備え、前記可動体と前記支持体とを相対移動させる磁気駆動機構と、を有し、前記マグネットは、前記巻回部の厚み方向で当該コイルと対向し、前記コイルは、第1巻回
部、前記第1巻回部から内周側に引き出された第1内側引き出し線、および前記第1巻回部から外側に引き出された第1外側引き出し線、を有する第1空芯コイルと、巻回方向を同一として前記第1巻回部に重ねられた第2巻回部、前記第2巻回部から内周側に引き出されて先端部分が前記第1内側引き出し線の先端部分に電気的に接続された第2内側引き出し線、および前記第2巻回部から外側に引き出された第2外側引き出し線、を有する第2空芯コイルと、を備え、前記巻回部は、前記第1巻回部および前記第2巻回部を備え、前記第1外側引き出し線および前記第2外側引き出し線は、2本の前記引き出し線であることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、コイルは、第1空芯コイルと、第2空芯コイルと、を備える。第1空芯コイルの第1巻回部と第2コイルの第2巻回部とは、巻回方向を同一にして重ねられてコイルの巻回部を構成する。また、第1空芯コイルにおいて、第1巻回部から内周側に引き出された第1内側引き出し線と、第2空芯コイルにおいて、第2巻回部から内周側に引き出された第1内側引き出し線とは、それぞれの先端部分が電気的に接続される。これにより、コイルは、2本の引き出し線として、第1巻回部かから外周側に引き出された第1外側引き出し線と、第2巻回部か第2外側引き出し線と、を備える。従って、巻回部から引き出された2本のコイル線を巻回部の外周側に位置する給電基板に接続する際に、コイル線を巻回部の表面に沿って這わせる必要がない。これにより、巻回部の表面とマグネットとを接近させることが容易となるので、コイルとマグネットとからなる磁気駆動機構により、可動体と支持体とを相対移動させる推力を得ることが容易となる。また、巻回部の表面とマグネットとを接近させることが容易となるので、コイルとマグネットとが対向するコイルの厚み方向において、装置を小型化することが可能となる。さらに、第1空芯コイルと第2空芯コイルとは、第1巻回部から内周側に引き出された第1内側引き出し線の先端部分と、第2巻回部から内周側に引き出された第2内側引き出し線の先端部分とが電気的に接続される。これにより、第1内側引き出し線の長さ寸法と、第2内側引き出し線の長さ寸法と、を十分に確保することができるので、第1内側引き出し線と、第2内側引き出し線とを、電気的に接続することが容易である。
【0009】
本発明において、前記第1空芯コイルの内側および前記第2空芯コイルの内側に充填された充填部と、前記第1空芯コイルと前記第2空芯コイルとの間に介在して当該第1空芯コイルと当該第2空芯コイルとを接着するコイル接着部とを有する接着剤層を備え、前記第1内側引き出し線と前記第2内側引き出し線とは、前記充填部の内部に封止されるものとすることができる。このようにすれば、接着剤層によって、第1空芯コイルと第2空芯コイルとを固定して、これらを一体化することができる。また、接着剤層の内部に、先端部分が互いに接続された第1内側引き出し線と第2内側引き出し線とを封止できる。従って、可動体と支持体とが相対移動して振動が発生した場合でも、第1内側引き出し線および第2内側引き出し線がコイルの巻回部の中心穴から外に移動してしまうことを防止できる。
【0010】
本発明において、前記接着剤層は、前記巻回部と前記コイルホルダとの間に介在して、前記コイルを前記コイルホルダに固定する巻回部固定部を備えるものとすることができる。このようにすれば、接着剤層によって、第1内側引き出し線および第2内側引き出し線の接着剤層内への封止、第1空芯コイルおよび第2空芯コイルの固定、並びにコイルの巻回部のコイルホルダへの固定を行うことができる。
【0011】
本発明において、前記第1空芯コイルと前記第2空芯コイルとは、同一の空芯コイルとすることができる。このようにすれば、コイルを構成する空芯コイルの部品点数を抑制できる。
【0012】
本発明において、前記給電基板として、第1給電基板と、前記巻回部の前記第1給電基
板とは反対側に配置された第2給電基板と、を備え、前記第1外側引き出し線は、前記第1給電基板に接続され、前記第2外側引き出し線は、前記第2給電基板に接続されるものとすることができる。すなわち、第1空芯コイルと第2空芯コイルとを中心穴回りで回転させれば、コイルから引き出される2本の引き出し線を、異なる方向に引き出すことができる。よって、コイルの巻回部の両側に配置された第1給電基板と第2給電基板とに、各引き出し線を接続することが容易となる。
【0013】
次に、本発明は、巻回部と、前記巻回部から引き出される2本の引き出し線と、を有するコイルにおいて、第1巻回部、前記第1巻回部から内周側に引き出された第1内側引き出し線、および前記第1巻回部から外側に引き出された第1外側引き出し線、を有する第1空芯コイルと、巻回方向を同一として前記第1巻回部の厚み方向に重ね合わされた第2巻回部、前記第2巻回部から内周側に引き出されて先端部分が前記第1内側引き出し線の先端部分に電気的に接続された第2内側引き出し線、および前記第2巻回部から外側に引き出された第2外側引き出し線、を有する第2空芯コイルと、前記第1空芯コイルと前記第2空芯コイルとの間に介在して当該第1空芯コイルと当該第2空芯コイルとを接着する接着剤層と、を有し、前記巻回部は、前記第1巻回部および前記第2巻回部を備え、前記第1外側引き出し線および前記第2外側引き出し線は、2本の前記引き出し線であることを特徴とする。
【0014】
本発明のコイルは、2本の引き出し線として、巻回部から外周側に引き出された第1外側引き出し線と第2外側引き出し線と備える。従って、巻回部から引き出された2本のコイル線を巻回部の外周側に位置する給電基板に接続する際に、コイル線を巻回部の表面に沿って這わせる必要がない。
【0015】
本発明において、前記接着剤層は、第1空芯コイルの内側および前記第2空芯コイルの内側に充填された充填部を備え、前記第1内側引き出し線と前記第2内側引き出し線とは、前記充填部の内部に封止されるものとすることができる。このようにすれば、このようにすれば、接着剤層によって、第1空芯コイルと第2空芯コイルとを固定して、これらを一体化することができる。また、接着剤層の内部に、先端部分が互いに接続された第1内側引き出し線と第2内側引き出し線とを封止できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のアクチュエータでは、2本のコイル線の端部を巻回部の外周側に位置する給電基板に接続する際に、コイル線を巻回部の表面に沿って這わせる必要がない。これにより、巻回部の表面とマグネットとを接近させることが容易となるので、コイルとマグネットとからなる磁気駆動機構により、可動体と支持体とを相対移動させる推力を得ることが容易となる。また、巻回部の表面とマグネットとを接近させることが容易となるので、コイルとマグネットとが対向するコイルの厚み方向において、装置を小型化することも可能となる。
【0017】
本発明のコイルによれば、2本のコイル線の端部を巻回部の外周側で引き回す際に、コイル線を巻回部の表面に沿って這わせる必要がない。また、コイルを構成する第1空芯コイルおよび第2空芯コイルは、それぞれの巻回部から内周側に引き出された引き出し線を備えており、これら引き出し線の先端部分が電気的に接続される。従って、第1内側引き出し線の長さ寸法と、第2内側引き出し線の長さ寸法と、を十分に確保することができ、第1内側引き出し線と、第2内側引き出し線とを、電気的に接続することが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明を適用したアクチュエータの斜視図である。
図2】アクチュエータを長手方向に切断した場合の断面図である。
図3】アクチュエータの分解斜視図である。
図4】ケースを取り外したアクチュエータの分解斜視図である。
図5】ケースを取り外した支持体の分解斜視図である。
図6】ケースを取り外した支持体を図5とは反対側から見た分解斜視図である。
図7】コイルのコイルホルダへの固定方法の説明図である。
図8】コイルの断面図である
図9】コイルの分解斜視図である。
図10】一般的なコイルの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
(全体構成)
図1は、本発明を適用したアクチュエータの斜視図である。図2は、アクチュエータを長手方向に切断した場合の断面図である。図3は、アクチュエータの分解斜視図である。図4は、ケースを取り外したアクチュエータの分解斜視図である。
【0021】
本例のアクチュエータ1は、振動によって情報を伝達する触覚デバイスとして用いられる。図1に示すように、アクチュエータ1は、直方体形状の外観を備える。アクチュエータ1は、その外観の短手方向に振動を発生させる。以下の説明では、振動が発生する短手方向をX方向、アクチュエータ1の長手方向であってX方向と直交する方向をY方向とする。また、以下の説明では、アクチュエータ1の厚み方向であって、X方向およびY方向と直交する方向をZ方向とする。また、X方向の一方をX1方向、他方をX2方向とする。Y方向の一方をY1方向、他方をY2方向とする。Z方向の一方をZ1方向、他方とZ2方向とする。
【0022】
図2に示すように、アクチュエータ1は、外形を規定するケース2を備える支持体3と、ケース2の内部に収容された可動体5と、を有する。また、アクチュエータ1は、支持体3と可動体5とをX方向に相対移動可能に接続する接続体6、7と、可動体5と支持体3とをX方向に相対移動させる磁気駆動機構8と、を備える。
【0023】
支持体3は、コイル10と、コイル10を保持するコイルホルダ11と、コイルホルダ11のZ1方向に重ねられた第1プレート12と、コイルホルダ11のZ2方向に重ねられた第2プレート13と、を備える。コイル10は、その厚み方向をZ方向に向けている。ケース2内において、コイル10は、Z方向の中央に位置する。また、支持体3は、コイルホルダ11のY1方向の端面に支持された給電基板14を備える。コイル10には、給電基板14を介して、電力が供給される。
【0024】
可動体5は、マグネット16と、ヨーク17と、を備える。マグネット16は、支持体3のコイル10とZ方向で対向する。コイル10とマグネット16とは、磁気駆動機構8を構成する。接続体6および接続体7は、それぞれ直方体形状の部材である。接続体6および接続体7は、それぞれ、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備える。
【0025】
(可動体)
図2図4に示すように、可動体5は、マグネット16として、第1マグネット21および第2マグネット22を備える。第1マグネット21は、コイル10のZ1方向に位置する。第2マグネット22は、コイル10のZ2方向に位置する。第1マグネット21および第2マグネット22は、X方向で2つに分極されている。第1マグネット21の着磁分極線は、X方向の中心をY方向に延びる。第2マグネット22の着磁分極線は、X方向の中心をY方向に延びる。
【0026】
ヨーク17は磁性材料からなる。ヨーク17は、第1ヨーク23および第2ヨーク24の2部材を組み立てて構成される。第1ヨーク23は、Y方向に長い平板状の第1板部25と、第1板部25のY方向の両端縁において、Y方向の中央部分からX方向の外側に向かってZ2方向に湾曲して、Z2方向に延びる一対の接続板部26と、を備える。第1マグネット21は、第1板部25のZ2方向の面に保持される。第2ヨーク24は、第1板部25とZ方向で対向する第2板部27と、第2板部27のY方向の中間部分からX1方向および他方側X2へ張り出した一対の張り出し部28を備える。第2マグネット22は、第2板部27のZ1方向の面に保持される。第2ヨーク24の一対の張り出し部28には、一対の接続板部26のZ2方向の先端部分が溶接等の方法で接合される。これにより、第1ヨーク23と第2ヨーク24とは一体とされて、ヨーク17を構成する。
【0027】
(支持体)
図5は、ケースを取り外した支持体の分解斜視図である。図6は、ケースを取り外した支持体を図5とは反対側から見た場合の分解斜視図である。図5は、支持体3をZ2方向の側から見た場合であり、図6は、支持体3をZ1方向の側から見た場合である。図7は、コイル10のコイルホルダ11への固定方法の説明図である。
【0028】
図1図2に示すように、ケース2は、Z方向に重ねられた第1ケース部材31および第2ケース部材32を備える。第1ケース部材31は、Z1方向からコイルホルダ11に取り付けられている。第2ケース部材32は、Z2方向からコイルホルダ11に取り付けられている。図3に示すように、第1ケース部材31は、長方形形状の第1板部33と、第1板部33のX方向の両端縁からZ1方向に延びる一対の側板部34と、を備える。一対の側板部34は、コイルホルダ11のX方向の両側に位置する。第2ケース部材32は、長方形形状の第2板部35と、第2板部35のX方向の両端縁からZ2方向に延びる一対の側板部36と、を備える。一対の側板部36は、コイルホルダ11のX方向の両側に位置する。
【0029】
図5図6に示すように、コイルホルダ11は、Z方向から見た場合の輪郭形状がY方向に長い長方形である。コイルホルダ11は、X方向の中央においてY方向に延びる板部40を備える。板部40の中央にはコイル配置穴41が設けられている。コイル配置穴41は、Y方向に長い長円状の貫通穴である。また、コイルホルダ11は、板部40のおけるY方向の中央部分を内側へ切り欠いた切欠き部42、43を備える。
【0030】
また、コイルホルダ11は、切欠き部42、43のY1方向において、板部40のX1方向の縁からZ1方向およびZ2方向に突出する側板部44と、板部40のX2方向の縁からZ1方向およびZ2方向に突出する側板部45と、を備える。側板部44における側板部45との対向面には、板部40からZ1方向、およびZ2方向に延びる溝部44aが複数設けられている。また、側板部45における側板部44との対向面には、板部40からZ1方向、およびZ2方向に延びる溝部45aが複数設けられている。さらに、コイルホルダ11は、板部40のY1方向の端縁からZ1方向に突出して、側板部44のY1方向の端と側板部45のY1方向の端とを接続する側板部46を備える。
【0031】
また、コイルホルダ11は、切欠き部42、43のY2方向において、板部40のX1方向の縁からZ1方向およびZ2方向に突出する側板部47と、板部40のX2方向の縁からZ1方向およびZ2方向に突出する側板部48と、を備える。さらに、コイルホルダ11は、板部40のY2方向の端縁からZ1方向およびZ2方向に突出して、側板部47のY2方向の端と、側板部48のY2方向の端とを接続する側板部49を備える。側板部47における側板部48との対向面には、板部40からZ1方向、およびZ2方向に延びる溝部47aが複数設けられている。また、側板部48における側板部47との対向面に
は、板部40からZ1方向、およびZ2方向に延びる溝部48aが複数設けられている。
【0032】
また、コイルホルダ11は、図5に示すように、X方向で対向する側板部44、45のY1方向の端部に一対のスリット51、52を備える。一対のスリット51、52のそれぞれはZ方向に延びる。一対のスリット51、52のZ2方向の端は、開口している。さらに、コイルホルダ11は、板部40のZ2方向の面に、コイル配置穴41からY1方向に平行に延びる2本のガイド溝53を備える。
【0033】
ここで、コイル10は、コイル線を長円状に巻回した巻回部55と、巻回部55の外周側からY1方向に引き出された第1外側引き出し線56および第2外側引き出し線57を有する。巻回部55は、X方向で並列してY方向に延びる2つの有効辺部分55aと、2つの有効辺部分55aのY方向の両端を繋ぐ円弧状の2つの湾曲辺部分55bとを備える。巻回部55は、コイル配置穴41に収容される。第1外側引き出し線56および第2外側引き出し線57は、それぞれコイル配置穴41からガイド溝53内に引き回される。コイル10は、図2に示す接着剤層59によってコイルホルダ11に固定される。なお、詳細は後述するが、図2図5図6に示すように、コイル10は、Z方向に重ねられた第1空芯コイル71と、第2空芯コイル72と、を備える。
【0034】
図4図5に示すように、給電基板14は、コイルホルダ11のY1方向の端に設けられた一対のスリット51、52を利用して、コイルホルダ11に保持される。すなわち、給電基板14は、X方向の両側の端縁が、Z2方向の側からからそれぞれスリット51、52に嵌め込まれている。これにより、給電基板14は、コイルホルダ11のうち、Y1方向で側板部44、側板部45、および側板部46に囲まれた開口部の開口縁により支持される。給電基板14は、配線パターン15が形成された基板表面をY1方向に向けている。給電基板14は、接着剤により、コイルホルダ11に固定される。
【0035】
ここで、図7に示すように、コイル10の巻回部55からガイド溝53に沿ってY1方向に引き出された第1外側引き出し線56は、Z2方向へ曲げられて、給電基板14に電気的に接続される。また、コイル10の巻回部55からガイド溝53に沿ってY1方向に引き出された第2外側引き出し線57は、Z2方向へ曲げられて、給電基板14に電気的に接続される。
【0036】
図5図6に示すように、第1プレート12は、板部40をZ1方向から覆う長方形形状の第1板部61と、第1板部61のX方向の両側からX方向の外側に向かってZ1方向に斜めに突出した複数の第1爪部62と、を有する。第1爪部62は、側板部44に設けられた溝部44a、側板部45に設けられた溝部45a、側板部47に設けられた溝部47a、側板部48に設けられた溝部48aにZ2方向の側から挿入される。第1プレート12がコイルホルダ11の板部40にZ1方向から接触したときに、第1爪部62は、側板部44、側板部45、側板部47、側板部48に弾性をもって当接した状態となる。
【0037】
また、第2プレート13は、板部40をZ2方向から覆う長方形形状に第2板部63と、第2板部63のX方向の両側からX方向の外側に向かってZ2方向に斜めに突出した複数の第2爪部64を有する。第2爪部64は、側板部44に設けられた溝部44a、側板部45に設けられた溝部45a、側板部47に設けられた溝部47a、側板部48に設けられた溝部48aに挿入される。第2プレート13がコイルホルダ11の板部40にZ2方向から接触したときに、第2爪部64は、側板部44、側板部45、側板部47、側板部48に弾性をもって当接した状態となる。
【0038】
(コイルのコイルホルダへの固定)
ここで、コイルのコイルホルダへの固定方法を説明する。図7に示すように、支持体3
を製造する際には、コイルホルダ11の板部40に第1プレート12をZ1方向から重ねる。そして、第1プレート12の第1爪部62を側板部44、45、47、48に設けた溝部44a、45a、47a、48aに挿入する。これにより、第1プレート12は、コイル配置穴41をZ1方向から塞いだ状態で、コイルホルダ11に支持される。
【0039】
次に、コイル10の巻回部55をコイル配置穴41に配置する。そして、巻回部55の中心穴10aに接着剤58を充填する。その後、コイルホルダ11の板部40に第2プレート13をZ2方向から重ねて、第2プレート13の第2爪部64を側板部44、45、47、48に設けた溝部44a、45a、47a、48aに挿入する。これにより、第2プレート13をコイルホルダ11に支持させる。
【0040】
ここで、巻回部55の中心穴10aに充填した接着剤58は、巻回部55のZ1方向では、巻回部55と第1プレート12との間から、第1プレート12とコイルホルダ11の板部40との隙間を伝わり、巻回部55とコイル配置穴41の内壁面との間に達する。また、接着剤58は、巻回部55のZ2方向では、巻回部55と第2プレート13との間から、第2プレート13とコイルホルダ11の板部40との隙間を伝わり、巻回部55とコイル配置穴41の内壁面との間に達する。
【0041】
従って、接着剤58を硬化させると、図2に示すように、巻回部55は、接着剤58が硬化した接着剤層59により、コイルホルダ11の板部40におけるコイル配置穴41の内壁面に固定される。また、第1プレート12は、接着剤層59によってコイルホルダ11の板部40に固定される。さらに、第2プレート13は、接着剤層59によってコイルホルダ11の板部40に固定される。言い換えれば、接着剤58が硬化した接着剤層59は、巻回部55の中心穴10aに充填された充填部59aと、巻回部55をコイルホルダ11の板部40に固定する巻回部固定部59bと、第1プレート12をコイルホルダ11の板部40に固定する第1プレート固定部59cと、第2プレート13をコイルホルダ11の板部40に固定する第2プレート固定部59dと、を備える。
【0042】
(接続体)
図2図4に示すように、接続体6、7は、それぞれX方向に長く延びる直方体形状である。接続体6は、第1ヨーク23と第1プレート12との間に配置されている。より詳細には、接続体6は2つの部材からなり、第1ヨーク23と第1プレート12とのY1方向の端部分、および、第1ヨーク23と第1プレート12とのY2方向の端部分の2か所に挟まれている。接続体7は、第2ヨーク24と第2プレート13との間に配置されている。より詳細には、接続体7は2つの部材からなり、第2ヨーク24のY1方向の端部分と第2プレート13とのY1方向の端部分との間、および、第2ヨーク24のY1方向の端部分と第2プレート13とのY2方向の端部分との間の2か所に挟まれている。接続体6、7は、シリコーンゲルからなるゲル状部材である。接続体6、接続体7は、支持体3と可動体5との間でZ方向に圧縮された状態とされている。
【0043】
ここで、可動体5が、接続体6、7を介して支持体3に支持された状態では、コイル10がZ方向で第1マグネット21と第2マグネット22との間に配置される。この状態をZ方向から見た場合には、巻回部55の有効辺部分55aは、Z1方向で第1マグネット21に対向し、Z2方向で第2マグネット22に対向する。また、第1ヨーク23の第1板部25および第2ヨーク24の第2板部27のY方向の両端部分が、X方向で、コイルホルダ11の側板部44と側板部45との間、および、側板部47と側板部48との間に配置される。さらに、ヨーク17の一対の接続板部26が、Y方向で側板部44と側板部47との間に位置する切欠き部43、および、側板部45と側板部48との間に位置する切欠き部44に位置する。コイルホルダ11の側板部44、側板部45、側板部47および側板部48は、可動体5がX方向に移動する際の可動範囲を規定する度当たり部として
機能する。
【0044】
(動作)
アクチュエータ1を搭載する機器からの配線は、給電基板14の配線パターン15に接続される。ここで、給電基板14を介してコイル10に所定方向の電流が供給されると、支持体3に支持された可動体5は、X方向の一方に移動する。その後、電流の向きが反転すると、可動体5は、X方向の他方に移動する。コイル10に供給される電流の向きの反転が繰り返されることにより、可動体5は振動する。
【0045】
(コイルの詳細)
次に、図8図9を参照して、コイル10の詳細を説明する。図8は、コイル10をX方向に切断した場合の断面図である。図9は、コイル10の分解斜視図である。
【0046】
まず、コイル10は、図5に示すように、コイル線を長円状に巻回した巻回部55と、巻回部55からY1方向に引き出された2本の引き出し線(第1外側引き出し線56および第2外側引き出し線57)を有する。巻回部55は、コイルホルダ11の板部40に設けられたコイル配置穴41に収容され、接着剤層59によってコイルホルダ11に固定されている。第1外側引き出し線56および第2外側引き出し線57は、巻回部55の外周側に位置する給電基板14に接続されている。
【0047】
ここで、コイル10は、第1空芯コイル71と、第2空芯コイル72とを、備える。図図9に示すように、第1空芯コイル71は、第1巻回部71a、第1巻回部71aから内周側に引き出された第1内側引き出し線71b、および第1巻回部71aから外側に引き出された第1外側引き出し線71c、を有する。第2空芯コイル72は、第2巻回部72a、第2巻回部72aから内周側に引き出された第2内側引き出し線72b、および第2巻回部72aから外側に引き出された第2外側引き出し線72c、を有する。
【0048】
第2空芯コイル72の第2巻回部72aは、巻回方向を同一として、第1巻回部71aのZ方向に重ねられている。第2巻回部72aから内周側に引き出された第2内側引き出し線72bの先端部分は、第1空芯コイル71の第1巻回部71aから内周側に引き出された第1内側引き出し線71bの先端部分に電気的に接続されている。第2内側引き出し線72bの先端部分と第1内側引き出し線71bの先端部分とは、半田、または、熱カシメにより、接続される。これにより、コイル10は、巻回部55として、第1空芯コイル71の第1巻回部71aおよび第2空芯コイル72の第2巻回部72aを備える。また、コイル10は、巻回部55から引き出される2本の引き出し線(コイル線の第1外側引き出し線56および第2外側引き出し線57)として、巻回部55のY1方向に引き出された第1外側引き出し線71cおよび第2外側引き出し線72cを備える。
【0049】
ここで、本例では、図7に示すように、アクチュエータ1の支持体3を構成する際に、コイル10の巻回部55の中心穴10aに接着剤58が充填される。コイル10の巻回部55の中心穴10aに充填された接着剤58は、図7に鎖線で示すように、互いの先端部分が接続された第1空芯コイル71の第1内側引き出し線71b、および第2空芯コイル72の第2内側引き出し線72bを覆う。また、コイル10の巻回部55の中心穴10aに充填された接着剤58は、第1プレート12とコイルホルダ11の板部40との隙間、巻回部55とコイル配置穴41の内壁面との間、第2プレート13とコイルホルダ11の板部40との隙間のみならず、第1空芯コイル71と第2空芯コイル72との間に流入する。
【0050】
従って、接着剤58を硬化させると図2に示すように、接着剤58が硬化した接着剤層59は、コイル10の中心穴10aに充填された充填部59aと、巻回部55をコイルホ
ルダ11の板部40に固定する巻回部固定部59bと、第1プレート12をコイルホルダ11の板部40に固定する第1プレート固定部59cと、第2プレート13をコイルホルダ11の板部40に固定する第2プレート固定部59dと、第1空芯コイル71と第2空芯コイル72とを接着するコイル接着部59eと、を有する。言い換えれば、コイル10は、図8に示すように、コイル10の中心穴10aに充填された充填部59aと、第1空芯コイル71と第2空芯コイル72とを接着するコイル接着部59eと、を有する。そして、第1空芯コイル71の第1内側引き出し線71bと第2空芯コイル72の第2内側引き出し線72bとは、互いに電気的に接続された状態で、充填部59aの内部に封止される。
【0051】
(作用効果)
図10は、一般的なコイルの製造方法の説明図である。一般的に、コイル100は、その開口部の形状を規定するための治具105に対し、コイル線を高さ方向および外周側に巻回して、巻回部101を構成する。従って、図10に示すように、コイル100が完成したときに、コイル線の巻き始め部分103は巻回部101の内周側に位置し、巻き終わり部分104は、巻回部101の外周側に位置する。よって、コイル100をコイル100の外周側に位置する給電基板に接続する際に、巻き終わり部分104はそのまま引き回して給電基板に接続できるが、巻き始め部分103は、巻回部101の表面101aに沿って内周側から外周側に引き出さなくてはならない。この結果、巻き始め部分103は、巻回部101の表面101aを内周側から外周側に這う横断部分103aを備えるものとなる。
【0052】
ここで、磁気駆動機構8では、コイル100の巻回部101とマグネット16とのギャップを狭くすれば、支持体3と可動体5とを相対移動させる推力を大きくすることができる。しかし、コイル100の巻回部101の表面101aにコイル線の巻き始め部分103が這っている場合には、巻回部101の表面101aとマグネット16とのギャップは、巻き始め部分103(横断部分103a)が存在する分だけ、離間させなければならない。
【0053】
これに対して、本例のコイル10は、図5図9に示すように、巻回部55から引き出される2本の第1外側引き出し線56および第2外側引き出し線57(第1外側引き出し線71cおよび第2外側引き出し線72c)は、いずれも巻回部55の外周側から引き出される。従って、巻回部55から引き出された2本のコイル線を巻回部55の外周側に位置する給電基板14に接続する際に、コイル線を巻回部55の表面に沿って這わせる必要がない。よって、磁気駆動機構8では、従来のコイル100を用いた場合と比較して、巻回部55とマグネット16とのギャップを狭することが可能となる。よって、支持体3と可動体5とを相対移動させる推力を大きくすることができる。
【0054】
また、巻回部55の表面とマグネット16とを接近させることが容易となるので、コイル10とマグネット16とが対向するコイル10の厚み方向において、アクチュエータ1を小型化することも可能となる。
【0055】
さらに、本例では、第1空芯コイル71と第2空芯コイル72とは、第1巻回部71aから内周側に引き出された第1内側引き出し線71bの先端部分と、第2巻回部72aから内周側に引き出された第2内側引き出し線72bの先端部分とが電気的に接続されている。言い換えれば、第1空芯コイル71と第2空芯コイル72とは、それぞれの巻回部55から内周側に引き出された引き出し線を備えており、これら引き出し線の先端部分が電気的に接続される。これにより、第1内側引き出し線71bの長さ寸法と第2内側引き出し線72bの長さ寸法とを十分に確保することができる。よって、第1内側引き出し線71bと、第2内側引き出し線72bとを、電気的に接続することが容易である。
【0056】
ここで、コイル10は、第1空芯コイル71の内側および第2空芯コイル72の内側に充填された充填部59aと、第1空芯コイル71と第2空芯コイル72との間に介在して当該第1空芯コイル71と当該第2空芯コイル72とを接着するコイル接着部59eとを有する接着剤層59を備える。第1内側引き出し線71bと第2内側引き出し線72bとは、充填部59aの内部に封止される。従って、接着剤層59によって、第1空芯コイル71と第2空芯コイル72とを固定して、これらを一体化することができる。また、接着剤層59の内部に、先端部分が互いに接続された第1内側引き出し線71bと第2内側引き出し線72bとを封止できる。従って、可動体5と支持体3とが相対移動して振動が発生した場合でも、第1内側引き出し線71bおよび第2内側引き出し線72bがコイル10の巻回部55の中心穴10aから外に出て、マグネット16などと干渉することを防止できる。
【0057】
また、本例によれば、接着剤層59により、コイル10の巻回部55のコイルホルダ11への固定、第1内側引き出し線71bおよび第2内側引き出し線72bの接着剤層59内による封止、および第1空芯コイル71および第2空芯コイル72の固定、を行うことができる。
【0058】
さらに、本例では、第1空芯コイル71と第2空芯コイル72とは、同一の空芯コイル10である。従って、コイル10を構成する空芯コイル10の部品点数を抑制できる。
【0059】
(変形例)
本例において、第1空芯コイル71と第2空芯コイル72とは、異なる形状の空芯コイル10としてもよい。例えば、第1空芯コイル71と第2空芯コイル72とは、巻回数が相違していてもよい。
【0060】
また、上記の例では、巻回部55から引き出される2本の第1外側引き出し線56および第2外側引き出し線57(第1外側引き出し線71cおよび第2外側引き出し線72c)は、いずれもY1方向に延びているが、第1外側引き出し線56(第1外側引き出し線71c)を巻回部55からY1方向に引き出し、第2外側引き出し線57(第2外側引き出し線72c)をY2方向に引き出してもよい。
【0061】
この場合には、第1空芯コイル71に対して、第2空芯コイル72を、それらの中心穴回りの巻回方向に180°回転させて積層する。また、この場合には、給電基板14として、第1給電基板と、巻回部55の第1給電基板とは反対側に配置された第2給電基板と、を備え、第1外側引き出し線71cは、第1給電基板に接続され、第2外側引き出し線72cは、第2給電基板に接続されるものとすることができる。
【符号の説明】
【0062】
1…アクチュエータ、2…ケース、3…支持体、4…側板部、5…可動体、6…接続体、7…接続体、8…磁気駆動機構、10…コイル、10a…中心穴、11…コイルホルダ、12…第1プレート、13…第2プレート、14…給電基板、14a…第1給電基板、14b…第2給電基板、15…配線パターン、16…マグネット、17…ヨーク、21…第1マグネット、22…第2マグネット、23…第1ヨーク、24…第2ヨーク、25…第1板部、26…接続板部、27…第2板部、28…張り出し部、31…第1ケース部材、32…第2ケース部材、33…第1板部、34…側板部、35…第2板部、36…側板部、40…板部、41…コイル配置穴、42、43…切欠き部、44、45、46、47、48、49…側板部、44a、45a、47a、18a…溝部、51、52…スリット、53…ガイド溝、55…巻回部、55a…有効辺部分、55b…湾曲辺部分、56…第1外側引き出し線、57…第2外側引き出し線、58…接着剤、59…接着剤層、59a…
充填部、59b…巻回部固定部、59c…第1プレート固定部、59d…第2プレート固定部、59e…コイル接着部、61…第1板部、62…第1爪部、63…第2板部、64…第2爪部、71…第1空芯コイル、71a…第1巻回部、71b…第1内側引き出し線、71c…第1外側引き出し線、72…第2空芯コイル、72a…第2巻回部、72b…第2内側引き出し線、72c…第2外側引き出し線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10