(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-25
(45)【発行日】2025-04-02
(54)【発明の名称】吊り足場の構築方法及び構築用装置
(51)【国際特許分類】
E04G 7/28 20060101AFI20250326BHJP
E04G 7/08 20060101ALI20250326BHJP
E04G 3/24 20060101ALI20250326BHJP
【FI】
E04G7/28 302
E04G7/08
E04G3/24 302H
(21)【出願番号】P 2021090204
(22)【出願日】2021-05-28
【審査請求日】2024-05-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000101662
【氏名又は名称】アルインコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077791
【氏名又は名称】中野 収二
(72)【発明者】
【氏名】伴 和夫
(72)【発明者】
【氏名】美濃 咲月
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-081654(JP,A)
【文献】特公平07-103679(JP,B2)
【文献】特開2019-167708(JP,A)
【文献】実開昭52-010014(JP,U)
【文献】実開昭60-089355(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 1/00-7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設構築物に足場板を索条により吊持すると共に、多数の足場板を順次、既設構築物の延長方向に列設することにより構築される吊り足場であり、
前記足場板(1)は、床板(2)を支持する一対の桁側フレーム(3A)(3B)と、該桁側フレームに架設された妻側フレーム(4A)(4B)と、列設方向に隣り合う足場板を相互に接合する継手手段(6)を設けており、
列設方向に隣り合う先行側の足場板をメイン足場板(M)とし、後続側の足場板をサブ足場板(S)として、メイン足場板の妻側近傍部の下側に梁部材(13)を取付け固定し、該梁部材に延設された支持部(13b)をサブ足場板の下側に向けて配置させる準備工程を有し、
前記準備工程を経たメイン足場板とサブ足場板を索条(9)により吊持した状態で、
両足場板の桁側フレーム(3)を隣り合わせる隣接工程と、
両足場板を相互に前記継手手段(6)により接合する接合工程と、
前記メイン足場板(M)に取付け固定された梁部材の支持部(13b)の上にサブ足場板(S)を支持させる支持工程とにより、梁部材に組付けられた複数の足場板によりユニット(U)を形成するユニット形成方法を構成し、
前記ユニット形成方法を繰返して実施することにより、順次、ユニットを列設すると共に、先行側のユニットのサブ足場板(S)と後続側のユニットのメイン足場板(M)の間において前記継手手段(6)を接合することにより連結するユニット連結工程を有し、
前記ユニットにおける足場板のうち、メイン足場板(M)を索条(9)により吊持させた状態で、サブ足場板(S)から索条(9)を取り外し除去する工程を有して成ることを特徴とする吊り足場の構築方法。
【請求項2】
請求項1に記載の
吊り足場を構築するための足場板及び梁部材に関して、
足場板は、桁側フレーム(3)と平行に延びるセンターフレーム(5)を
床板(2)の下側に配設すると共に該センターフレームの両端部(5a)を妻側フレーム(4)に固着して連結し、
床板(2)の両側縁と妻側フレーム(4)の間に形成された開口部(12)に桁側フレーム(3)の両端部(3a)(3b)並びにセンターフレーム(5)の両端部(5a)を臨ませるように構成され、
前記梁部材(13)は、メイン足場板(M)の妻側近傍部の下側に取付け固定される基部(13a)と、該基部から延設された支持部(13b)を一体形成しており、
前記基部(13a)は、メイン足場板(M)の開口部(12)に下方から挿入された状態で、桁側フレーム(3)の端部(3a,3b)とセンターフレーム(5)の端部(5a)の少なくとも一方に取付固定される取付手段(14)を設けて成ることを特徴とする吊り足場の構築用装置。
【請求項3】
前記梁部材の基部(13a)に設けられた取付手段(14)は、メイン足場板(M)の開口部(12)に下方から挿入された状態で、桁側フレーム(3)の端部(3a,3b)の上面に係止するフック金具(15)と、センターフレーム(5)の端部(5a)を全周から抱持する固定金具(16)により構成されて成ることを特徴とする請求項2に記載の吊り足場の構築用装置。
【請求項4】
前記梁部材の支持部(13b)は、メイン足場板(M)に継手手段(6)を介して接合されたサブ足場板(S)のセンターフレーム(5)の端部(5a)を下側から接支する接支台(17)を設けて成ることを特徴とする請求項2又は3に記載の吊り足場の構築用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り足場の構築方法及び該構築方法を実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路や橋梁等の高架構築物その他の既設構築物は、高所における建設や改修に際し、該既設構築物に沿って延びる吊り足場が構築されている。
【0003】
吊り足場を構築するための吊下げ足場板(以下、単に「足場板」という。)は、一般的に
図1ないし
図3に示すように構成されている。
【0004】
足場板1は、離間して平行に配置された角形パイプ材等から成る第1桁側フレーム3Aと第2桁側フレーム3B(両者を区別しないときは単に「桁側フレーム3」という場合がある。)により矩形の床材2を支持するように構成されており、床材2の両側縁から突出する一対の桁側フレーム3A、3Bの両端部3a、3bには、それぞれ円形パイプ材から成る第1妻側フレーム4Aと第2妻側フレーム4B(両者を区別しないときは単に「妻側フレーム4」という場合がある。)が架設されている。
【0005】
更に、床材2の幅方向中央の下側には、円形パイプ材から成るセンターフレーム5が配設され、その両端部5a、5aを前記妻側フレーム4に溶接等で固着することにより連結している。
【0006】
多数の足場板を順次、列設するに際して、先行側の足場板1と後続側の足場板1は、相互に桁側フレーム3A、3Bの側面を隣り合わせると共に、妻側フレーム4A、4Bに設けられた継手手段6により連結されるように構成されている。尚、継手手段6は、桁側フレーム3A、3Bに設けられる場合もあり、要するに、列設方向に関して隣り合う足場板1、1を相互に連結するように構成されている。
【0007】
図例の場合、妻側フレーム4は、両端部が第1桁側フレーム3A及び第2桁側フレーム3Bの外側面から突出しないように構成され、両端部のうち、一方の端部を第1桁側フレーム3Aの外側面に開口させることによりソケット6aを形成し、他方の端部に挿着した部材を第2桁側フレーム3Bの外側面よりも外側に突出させることによりプラグ6bを形成しており、隣り合う足場板1、1の妻側フレーム4、4の間において、プラグ6bをソケット6aに挿入して連結することにより、継手手段6を構成している。
【0008】
この際、相互に嵌合されたソケット6aとプラグ6bは、連結ピン7を貫通状態で挿着することにより抜止め保持される。
【0009】
ところで、高速道路に代表されるように、高架構築物の延長方向は、必ずしも直線方向に限らず、カーブを描く曲線方向が含まれる。従って、吊り足場も、これに応じた方向に向けて構築する必要がある。このため、前記継手手段6は、ソケット6aをプラグ6bに摺動自在に挿入する構成とされている。そして、連結ピン7を挿入するプラグ6bの挿通孔を長孔8により形成し、該長孔8の範囲でプラグ6bとソケット6aの摺動を許すように構成しており、これにより、隣り合う足場板1、1の間隔が調節可能とされている。
【0010】
図例の場合、連結ピン7は、紛失防止用のチェーン等の索条に繋留され、該索条は、第1桁側フレーム3Aの端部3a、3aに固設したブラケット7aに係着されている。
【0011】
吊り足場の構築に際して、足場板1は、前記ソケット6aとプラグ6bを交互に連結することにより、既設構築物に沿って列設され、チェーン等の索条9により、既設構築物の下側に吊持される。このようなチェーン等の索条9による吊持を可能にするため、前記床材2には、前記センターフレーム5に臨む窓孔10が所定間隔をあけて開設されており、前記フレーム5には、各窓孔10に臨む環状の吊下げ金具11が設けられている。従って、前記吊下げ金具11に索条9を連結することにより、該金具11を介してフレーム5を吊持するように構成されている。
【0012】
図示省略しているが、チェーン等の索条9は、1本の索条を下端で折返すことにより2条を並設したものとして垂設され、折返し部を前記吊下げ金具11に挿通することにより、該金具11を吊持する。従って、索条9は、図示のように、折返し部をセンターフレーム5の端部5aに巻回させることにより、該端部5aを吊持するためにも使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特許第6366472号公報
【文献】特許第6426917号公報
【文献】特許第6663726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
吊り足場を構築するために列設された多数の足場板は、全て、それぞれが複数本の索条9により吊持されている。
【0015】
上述のように、隣り合う先行側の足場板と後続側の足場板は、継手手段6により連結されているが、継手手段6は、両足場板の間隔を調節可能として連結するためのものであり、互いの荷重を支持し合う剛体構造を形成していない。従って、各々の足場板を複数本の索条9により吊持していることが必要であり、もしも、足場板から索条を取り外し除去したときは、その足場板は落下するおそれがあり、極めて危険である。
【0016】
このため、構築された吊り足場の床面上には多数の索条9が林立した状態で張り巡らされることになる。
【0017】
ところで、吊り足場は、先行設置された足場板により構築された床面に対して、順次、増設用の足場板を所定位置まで運搬することにより供給し、後続する足場板を継ぎ足しつつ増設することにより、床面を拡張する構成とされている
【0018】
しかしながら、上述のように多数本の索条が張り巡らされた状況において、長尺で大型の足場板を持ち運ぶ際には、索条の干渉を回避しながら行わなければならず、運搬作業が煩雑であり、作業のための労力と時間を強いられるという問題がある。
【0019】
その他、足場板の運搬に限らず、作業者が床面の上を往来する際にも、多数の索条により円滑な往来が妨げられるという問題がある。
【0020】
そこで、本発明は、吊り足場の床面上に林立状態で張り巡らされる索条に関し、少なくとも吊り足場の構築体において直線方向に向けて列設される足場板から索条を取り外し除去するように構成することが可能なことを知見した結果、索条の本数を減少させることにより上記問題を解決した吊り足場の構築方法及び構築用装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
そこで、本発明の吊り足場の構築方法が手段として構成したところは、既設構築物に足場板を索条により吊持すると共に、多数の足場板を順次、既設構築物の延長方向に列設することにより構築される吊り足場であり、前記足場板は、床板を支持する一対の桁側フレームと、該桁側フレームに架設された妻側フレームと、列設方向に隣り合う足場板を相互に接合する継手手段を設けており、列設方向に隣り合う先行側の足場板をメイン足場板とし、後続側の足場板をサブ足場板として、メイン足場板の妻側近傍部の下側に梁部材を取付け固定し、該梁部材に延設された支持部をサブ足場板の下側に向けて配置させる準備工程を有し、前記準備工程を経たメイン足場板とサブ足場板を索条により吊持した状態で、両足場板の桁側フレームを隣り合わせる隣接工程と、両足場板を相互に前記継手手段により接合する接合工程と、前記メイン足場板に取付け固定された梁部材の支持部の上にサブ足場板を支持させる支持工程とにより、梁部材に組付けられた複数の足場板によりユニットを形成するユニット形成方法を構成し、前記ユニット形成方法を繰返して実施することにより、順次、ユニットを列設すると共に、先行側のユニットのサブ足場板と後続側のユニットのメイン足場板の間において前記継手手段を接合することにより連結するユニット連結工程を有し、前記ユニットにおける足場板のうち、メイン足場板を索条により吊持させた状態で、サブ足場板から索条を取り外し除去する工程を有して成る点にある。
【0022】
また、本発明の吊り足場の構築用装置が手段として構成したところは、前記吊り足場を構築するための足場板及び梁部材に関して、足場板は、桁側フレームと平行に延びるセンターフレームを床板の下側に配設すると共に該センターフレームの両端部を妻側フレームに固着して連結し、床板の両側縁と妻側フレームの間に形成された開口部に桁側フレームの両端部並びにセンターフレームの両端部を臨ませるように構成されており、前記梁部材は、メイン足場板の妻側近傍部の下側に取付け固定される基部と、該基部から延設された支持部を一体形成しており、前記基部は、メイン足場板の開口部に下方から挿入された状態で、桁側フレームの端部とセンターフレームの端部の少なくとも一方に取付固定される取付手段を設けて成る点にある。
【0023】
本発明の実施形態において、前記梁部材の基部に設けられた取付手段は、メイン足場板の開口部に下方から挿入された状態で、桁側フレームの端部の上面に係止するフック金具と、センターフレームの端部を全周から抱持する固定金具により構成されている。
【0024】
前記梁部材の支持部は、メイン足場板に継手手段を介して接合されたサブ足場板のセンターフレームの端部を下側から接支する接支台を設けている。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、吊り足場構築体の全体における索条の本数を減少させることができ、従来技術において床面上に多数の索条が林立した状態で張り巡らされていた環境を改善することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】従来の吊り足場における足場板を示す斜視図である。
【
図2】従来の足場板の列設方法を示す斜視図である。
【
図3】従来の足場板を列設することにより構築された吊り足場の一部を示す斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に関して、梁部材に組付けられたメイン足場板とサブ足場板により形成されたユニットを示す斜視図である。
【
図5】第1実施形態に係る梁部材に関して、梁部材とメイン足場板を分離状態で示す斜視図である。
【
図6】梁部材の基部をメイン足場板に取付ける際の状態を示す斜視図である。
【
図7】梁部材の基部に設けられたフック金具をメイン足場板の桁側フレームの端部に係止した状態を示す斜視図である。
【
図8】梁部材の基部に設けられた固定金具をメイン足場板のセンターフレームの端部に固定することにより、準備工程を完了した状態を示す斜視図である。
【
図9】ユニット形成方法に関して、前記梁部材の支持部の上側でサブ足場板をメイン足場板に隣り合わせ、相互に継手手段を臨ませた状態を示す斜視図である。
【
図10】ユニット形成方法に関して、メイン足場板に対してサブ足場板を継手手段を介して接合し、サブ足場板を梁部材の支持部に支持させた状態を示す斜視図である。
【
図11】本発明の1実施形態に係る吊り足場の構築方法に関して、梁部材に組付けられるメイン足場板とサブ足場板によるユニットを形成するためのユニット形成方法の1サイクルを示しており、(A)は準備工程により梁部材が取付け固定されたメイン足場を索条により吊持した状態を示す斜視図、(B)はメイン足場板に後続側のサブ足場板を隣り合わせた隣接工程を示す斜視図、(C)はサブ足場板を継手手段によりメイン足場板に接合する接合工程と梁部材の支持部に支持させる支持工程を示す斜視図である。
【
図12】吊り足場の構築方法に関して、
図11に示したユニットを先行側として、組付方法を繰返して実施することにより後続側のにユニットを列設する方法を示しており、(A)は先行側のユニットのメイン足場板が索条で吊持されておりサブ足場板から索条を取り外し除去する索条除去工程を実施した状態を示す斜視図、(B)はユニット連結工程に関して先行側のユニットのサブ足場板に対し後続側のユニットを形成するためのメイン足場板を隣り合わせた状態を示す斜視図、(C)は継手手段を接合することによりユニット連結工程を終えた状態を示す斜視図である。
【
図13】吊り足場の構築方法に関して、
図12(C)の状態から、後続側においてユニット形成方法を実施している状態を示す斜視図である。
【
図14】本発明の1実施形態に係る方法により構築された吊り足場に関して、メイン足場板とサブ足場板の2つの足場板によりユニットを形成し、ユニット毎にサブ足場板から索条を取り外し除去することにより索条除去工程を実施した状態を示す斜視図である。
【
図15】本発明の別の実施形態に係る吊り足場の構築方法を実施するために使用する梁部材の第2実施形態を示す斜視図である。
【
図16】第2実施形態に係る梁部材に関して、並設された2つのメイン足場板に対して梁部材の基部を取付け固定し、該梁部材の支持部に1つのサブ足場板を支持させることにより、合計3つの足場板によりユニットが形成された状態を示す斜視図である。
【
図17】本発明の別の実施形態に係る方法により構築された吊り足場に関して、ユニットを形成する3つの足場板のうち、中央に位置するメイン足場板を索条により吊持させた状態で、その両側に位置するメイン足場板とサブ足場板から索条を取り外し除去することにより索条除去工程を実施した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下図面に基づいて本発明の好ましい実施形態を詳述する。
【0028】
(吊り足場の構築方法)
図4ないし
図14は、本発明に係る吊り足場の構築方法の1実施形態を示している。この際、足場板1は、
図1ないし
図3に基づいて上述した足場板と同様のものであり、吊り足場の構築方法は、このような足場板1を使用することにより実施され、索条9により吊持した状態で、多数の足場板1を順次、既設構築物の延長方向に列設することにより吊り足場を構築する。
【0029】
本発明の吊り足場の構築方法は、
図4ないし
図10に示すように、列設方向に隣り合う先行側の足場板1aをメイン足場板Mとし、後続側の足場板1bをサブ足場板Sとして、メイン足場板Mの妻側近傍部の下側に梁部材13の基部13aを取付け固定し、該梁部材13の基部13aから延設された支持部13bをサブ足場板Sの下側に向けて配置させる準備工程が実施される。
【0030】
そこで、前記準備工程を経ることにより梁部材13を取付け固定された先行側のメイン足場板1a(M)と、後続側のサブ足場板1b(S)は、それぞれ索条9a、9bにより吊持された状態で、両足場板の桁側フレーム3B、3Aを隣り合わせる隣接工程と、両足場板の相互に対向する妻側フレーム4を前記継手手段6により接合する接合工程と、前記メイン足場板1a(M)に取付け固定された梁部材13の基部13aから延設された支持部13bの上にサブ足場板1b(S)を支持させる支持工程とにより、梁部材13にメイン足場板1a(M)とサブ足場板1b(S)が組付けられたユニットUを形成するユニット形成方法が実施される。
【0031】
そして、前記ユニット形成方法を繰返して実施することにより、1番目のユニットU1から順次、ユニットU2、U3~Unが列設される。この際、先行側のユニットと後続側のユニットは、先行側のユニットのサブ足場板Sと後続側のユニットのメイン足場板Mの間において、継手手段6を接合することにより連結するユニット連結工程が実施される。
【0032】
図4ないし
図14に示す1実施形態の場合、前記ユニット形成方法が実施されたメイン足場板1a(M)とサブ足場板1b(S)の2つの足場板により1番目のユニットU1が形成されている。これにより、サブ足場板1b(S)の荷重は、メイン足場板1a(M)に取付け固定された梁部材13の支持部13bにより支持される。
【0033】
ところで、1番目のユニットU1に引き続いて列設される2番目のユニットU2は、先ず、準備工程を経ることにより梁部材13を取付け固定したメイン足場板1c(M)が索条9cにより吊持された状態で、1番目のユニットU1のサブ足場板1b(S)に対して継手手段6により接合される。従って、2番目のユニットU2が形成される前に、ユニット連結工程が実施される。
【0034】
その後、前記ユニット形成方法を繰返して実施することにより、2番目のユニットU2が形成される。つまり、メイン足場板1c(M)とその後続側のサブ足場板1d(S)をそれぞれ索条9c、9dにより吊持した状態で、前記隣接工程と、接合工程と、支持工程を実施し、これにより2番目のユニットU2が形成され、1番目のユニットU1に連結された状態で列設される。以後、同様にして、後続側のユニットU3~Unが列設される。
【0035】
ところで、ユニットUは、メイン足場板Mに取付け固定した梁部材13の支持部13bにサブ足場板Sを支持させる構成とされているので、メイン足場板Mを索条9で吊持している限り、サブ足場板Sから索条9を取り外し除去しても、サブ足場板Sは、荷重が梁部材13により支持されているので、落下することはない。
【0036】
そこで、ユニットUが形成されたときは、それ以後は、ユニットUのメイン足場板Mだけを索条9により吊持させておき、サブ足場板Sを吊持していた索条9を取り外し除去する索条除去工程が実施される。
【0037】
例えば、1番目のユニットU1において、サブ足場板1b(S)から索条9bを取り外し除去しても、該サブ足場板1b(S)は、落下するおそれはなく、支持状態が堅持されている。以後、ユニット連結工程を経て列設される後続側のU2、U3~Unにおいても、同様の索条除去工程が実施される。
【0038】
ところで、索条除去工程を実施するタイミングは、必ずしも、ユニットUを形成した直後でなくても良く、ユニットUを形成した後に、随時、実施すれば良い。例えば、
図12(C)に示す段階、つまり、先行側に形成されたユニットU1におけるサブ足場板1b(S)に対して、後続側で新たにユニットU2を形成するためのメイン足場板1c(M)が継手手段6を介して接合され、ユニット連結工程が実施されたときに、先行側のユニットU1におけるサブ足場板1bSを吊持していた索条9を取り外し除去する索条除去工程を実施しても良い。この場合、索条9bを取り外し除去されたサブ足場板1b(S)の荷重は、索条9aにより吊持されたメイン足場板1a(M)の梁部材13の支持部13bにより支持されている。そして、該サブ足場板1b(S)は、それぞれ継手手段6を介して、先行側では索条9aで吊持されたメイン足場板1a(M)に接合され、後続側では2番目のユニットU2を形成するために索条9cで吊持されたメイン足場板1c(M)に接合されているので、前後左右の位置ずれ移動が阻止されているので、作業者に安心感を与えることができる。
【0039】
(梁部材の第1実施形態)
図5ないし
図10は、上述した構築方法の1実施形態を実施するために使用する梁部材13の第1実施形態を示している。
梁部材13は、角形パイプ材等により枠組形成された高剛性のフレーム構造を備えており、基部13aと支持部13bを一連一体に形成している。
【0040】
足場板1の桁側フレーム3A、3Bの外側面の間隔寸法により規定される幅寸法Wに対して、基部13aの長さ寸法L1は、L1≦W(好ましくはL1=W)となるように形成され、支持部13bの長さ寸法L2は、L2≦W(好ましくはL2≒W)となるように形成されている。
【0041】
前記梁部材13の基部13aは、先行側のメイン足場板1a(M)の妻側近傍部の下側に取付け固定されるように構成され、支持部13bは、後続側のサブ足場板1b(S)の妻側近傍部の下側に向けて延びるように構成されている。
【0042】
前記基部13aの上面には、メイン足場板1a(M)の妻側に形成された開口部12に下方から挿入することにより取付け固定される取付手段14が固設されている。取付手段14は、メイン足場板1a(M)の先行側に配置される桁側フレーム3Aの端部3aに取付け固定される第1取付手段14aと、センターフレーム5の端部5aに取付け固定される第2取付手段14bにより構成することが好ましいが、堅固な取付け固定を可能とするこ構造のものであれば、第1取付手段14aと第2取付手段14bの一方だけで構成しても良い。或いは、図示していないが、更に第3取付手段を設けても良い。
【0043】
図示実施形態の場合、第1取付手段14aは、メイン足場板1a(M)の先行側に配置される桁側フレーム3Aの端部3aとセンターフレーム5の端部5aとの間に形成された開口部12aに下方から挿入することにより、桁側フレーム3Aの端部3aの上面に係止するフック金具15により構成されている。この際、フック金具15は、基部13aの上面との間に溝部を形成し、該溝部に前記端部3aを嵌入するように構成されていることが好ましい。
【0044】
これに対して、第2取付手段14bは、センターフレーム5の端部5aを下から抱持する溝形部材16aと、該溝形部材16aに挿脱自在に挿着され、挿着したとき該端部5aの上面を横断して係止する係止ピン16bから成る固定金具16により構成されている。
【0045】
その一方において、前記支持部13bの上面には、後続側のサブ足場板1b(S)のセンターフレーム5の端部5aを下側から接支する接支台17が固設されている。
【0046】
第1実施形態に係る梁部材13をメイン足場板1a(M)に取付け固定する準備工程を
図5ないし
図8に示しており、その後、後続側のサブ足場板1b(S)を組付けることによりユニットU1を形成するユニット形成方法を
図9及び
図10に示している。
【0047】
(準備工程)
梁部材13の基部13aをメイン足場板1a(M)の妻側近傍部の下側に取付け固定する際は、
図6及び
図7に示すように、梁部材13を傾斜姿勢として、索条9aにより吊持されたメイン足場板1a(M)の下方から、フック金具15を開口部12aに挿入し、フック金具15を桁側フレーム3Aの端部3aの上面に係止させる。この際、固定金具16は、係止ピン16bを抜いており、溝形部材16aの溝部を開放している。
【0048】
次いで、梁部材13を水平姿勢とするように持ち上げると、
図8に示すように、固定金具16の溝形部材16aの溝部にセンターフレーム5の端部5aが嵌合されるので、溝形部材16aに係止ピン16bを挿着すると、該係止ピン16bが端部5aの上面に係止される。従って、溝形部材16aと係止ピン16bにより、端部5aを全周から抱持する。この状態において、基部13aの上面とフック金具15の間の溝部に桁側フレーム3Aの端部3aが嵌合されており、フック金具15が該端部3aの上面と内側面に係合する。
【0049】
図示実施形態の場合、メイン足場板1a(M)を索条9aにより吊持した状態で、準備工程を実施しているが、地上等で準備工程を実施し、予め梁部材13を取付け固定したメイン足場板1a(M)を所定の高所まで引き上げ、高所においてメイン足場板1a(M)を索条9aにより吊持しても良い。
【0050】
(ユニット形成方法)
メイン足場板1a(M)を索条9aにより吊持した状態で、梁部材13の支持部13bを利用することにより、サブ足場板1b(S)を組付けてユニットU1を形成する際は、
図9に示すように、索条9bにより吊持されたサブ足場板1b(S)を傾斜姿勢として下向きとされた桁側フレーム3Bをメイン足場板1a(M)の桁側フレーム3Aに隣り合わせる(隣接工程)。両足場板の妻側フレーム4、4の継手手段6(ソケット6a及びプラグ6b)を対向させた状態で、
図10に示すように、サブ足場板1b(S)を支持部13bに向けて水平姿勢となるように下降させながら、継手手段6が接合される(接合工程)。これにより、サブ足場板1b(S)におけるセンターフレーム5の端部5aの下面が支持部13bの接支台17に接支され(支持工程)、ユニットU1が形成される。
【0051】
継手手段6が接合されていない状態で、サブ足場板1b(S)を傾斜姿勢から水平姿勢に向けて姿勢変更したとき、支持部13bの接支台17は、サブ足場板1b(S)におけるセンターフレーム5の端部5aに対向する位置に配設されており、前記端部5aの下面を受止める接支面17aと、前記端部5aの側面に臨む突部17bを設けている。
【0052】
このため、前記センターフレーム5の端部5aを突部17bの内側に沿わせて接支面17aに仮置きしたとき、継手手段6のソケット6aとプラグ6bが相互に中心を同一高さとして対向させられるように構成されており、この状態から、前記端部5aを接支面17aの上で摺動させることにより、サブ足場板1b(S)をメイン足場板1a(M)に向けて移動すると、ソケット6aとプラグ6bが挿着されるように構成されている。
【0053】
このように、接支台17は、接支面17aと突部17bにより、前記センターフレーム5の端部5aを受止めるための仮置き手段と、仮置きするときの位置決め手段を構成している。そして、接支面17aは、接合工程を容易に実施するために前記端部5aを摺動させる案内手段を構成している。
【0054】
尚、図例の構成の場合、索条9は、足場板1の吊下げ金具に連結しているが、センターフレーム5の端部5aに連結するように構成しても良い。例えば、梁部材13の全体の厚さ寸法T(
図5参照)を薄く形成しておけば、センターフレーム5の端部5aに索条9の取付け部を形成することが可能となる。
【0055】
(吊り足場の構築方法の1実施形態)
図11ないし
図14は、本発明に係る吊り足場の構築方法の1実施形態を示しており、
図11(A)ないし(C)は、列設方向に関する先行側のメイン足場板1a(M)と後続側のサブ足場板1b(S)を組付一体化してユニットUを形成するユニット形成方法の1サイクルを示している。この実施形態の場合、1つのメイン足場板Mと1つのサブ足場板SによりユニットUが構成され、ユニット毎にサブ足場板Sから索条9を取り外し除去する索条除去工程が実施される。
【0056】
図11(A)は、準備工程を経ることにより梁部材13を取付け固定したメイン足場板1a(M)が索条9aにより吊持されている状態を示しており、この状態から、サブ足場板1b(S)を索条9bにより吊持した状態で、上述のような隣接工程、接合工程、支持工程から成るユニット形成方法が実施され、
図12(A)に示すように、ユニットU1が形成される。
【0057】
引き続き前記ユニット形成方法を繰返して実施することにより、1番目のユニットU1から順次、ユニットU2、U3~Unが列設される。
【0058】
図12(A)に示すように、ユニットU1が形成されたとき、メイン足場板1a(M)だけを索条9aにより吊持させた状態で、サブ足場板1b(S)を吊持していた索条9bは取り外し除去される。つまり、索条除去工程が実施される。
【0059】
索条9bが取り外し除去されても、サブ足場板1b(S)の荷重は、索条9aにより吊持されたメイン足場板1a(M)の梁部材13の支持部13bにより支持されている。従って、該サブ足場板1b(S)は、落下するおそれがなく、支持状態を堅持する。以後、ユニット連結工程を経て列設される後続側のU2、U3~Unにおいても、同様の索条除去工程が実施される。
【0060】
ところで、
図11(A)ないし(C)及び
図12(A)に示すユニットUを形成するための組付方法において、組付作業中にサブ足場板1b(S)を吊持する索条9bは、ユニットUを形成した後は取外し除去されるものであるから、該足場板1bの直上から垂設することは必要でない。つまり、索条は、既設構築物に列設されたU字形アンカー等の吊元を選択することにより垂設され、その際、足場板の荷重を支持するための索条は、該足場板の直上に位置する吊元から垂設する必要があるのに対して、前記足場板1bの索条9bは、組付方法を実施している間だけ足場板1bの落下を防止すれば足りるので、そのような必要はない。そこで、サブ足場板1b(S)の索条9bは、メイン足場板1a(M)の吊元の近傍に位置する吊元から垂設しても良く、これにより、作業者は、メイン足場板1a(M)の上から身を乗り出さなくてもサブ足場板1b(S)の索条9bの垂設作業を行うことができるという利点がある。
【0061】
このようにして、
図14に示すように、構築後の吊り足場は、順次、構成されたユニットU1、U2、U3において、それぞれユニットUにおける1つのサブ足場板(S)から索条が除去され、吊り足場構築体の全体における索条の本数は、従来技術に比して1/2とされている。
【0062】
(吊り足場の構築方法の別の実施形態)
本発明の吊り足場の構築方法は、梁部材13を使用することにより組付けられたメイン足場板(M)とサブ足場板(S)によりユニットUを形成し、サブ足場板(S)の荷重を梁部材13に支持させることにより、該サブ足場板(S)から索条9を取り外し除去することを目的としている。
【0063】
そこで、この点に関して、上述の実施形態においては、1つのメイン足場板(M)と1つのサブ足場板(S)による合計2つの足場板によりユニットUを形成するように構成しているが、以下に説明する別の実施形態は、ユニットUを2つのメイン足場板(M1)(M2)と1つのサブ足場板(S)により形成し、これにより中央に位置するメイン足場板(M2)を索条9で吊持させ、両側に位置する2つの足場板(M1)(S)から索条9を取り外し除去することを可能としている。
【0064】
このため、
図15に示すような第2実施形態に係る梁部材13が使用される。この梁部材13は、並設される2つの第1メイン足場板1A(M1)及び第2メイン足場板1B(M2)の妻側近傍部の下側に取付け固定される第1基部13a1と第2基部13a2と、サブ足場板1C(S)の妻側近傍部の下側に向けて延びる支持部13bを一連に一体形成している。
【0065】
第1基部13a1及び第2基部13a2は、それぞれメイン第1メイン足場板1A(M1)及び第2メイン足場板1B(M2)に取付け固定される取付手段14を設けており、支持部13bは、サブ足場板1C(S)のセンターフレーム5の端部5aを下側から接支する接支台17を設けている。これらの取付手段14及び接支台17は、上述の第1実施形態に係る梁部材のものと同様の構成としたものを図示しているが、これに限るものではなく、以下に述べるユニット形成方法を可能にするものであれば良い。
【0066】
図16に示すように、相互に継手手段6により接合された第1メイン足場板1A(M1)及び第2メイン足場板1B(M2)の妻側近傍部の下側には、梁部材13の第1基部13a1及び第2基部13a2が取付け固定され、該梁部材13の支持部13bをサブ足場板1C(S)の下側に向けて配置させる準備工程が実施され、その後、支持部13bの上において、第2メイン足場板1B(M2)に対して、サブ足場板1C(S)を隣り合わせる隣接工程と、継手手段6を接合する接合工程と、該サブ足場板1C(S)を梁部材13の支持部13bに支持させる支持工程とから成るユニット形成方法が実施され、これによりユニットU1が形成される。
【0067】
以後は、上述の1実施形態の場合と同様のユニット連結工程を実施しながら、前記ユニット形成方法を繰返して実施することにより、
図17に示すように、1番目のユニットU1から順次、ユニットU2、U3~Unが列設される。
【0068】
順次、先行側のユニットに対して後続側のユニットを形成するための第1メイン足場板M1がユニット連結工程を実施することにより連結されたとき、先行側のユニットは、第2メイン足場板M2を索条9により吊持した状態で、第1メイン足場M1及びサブ足場板Sから索条を取り外し除去する索条除去工程が実施される。或いは、各ユニットUを形成する度に、索条除去工程を実施しても良い。
【0069】
このようにして、構築後の吊り足場は、順次、構成されたユニットU1、U2・・・において、それぞれユニットにおける2つの足場板から索条が除去されており、吊り足場構築体の全体における索条の本数は、従来技術に比して1/3とされている。
【符号の説明】
【0070】
1 足場板
2 床材
3 桁側フレーム
3A 第1桁側フレーム
3B 第2桁側フレーム
3a、3b 端部
4 妻側フレーム
4A 第1妻側フレーム
4B 第2妻側フレーム
5 センターフレーム
5a 端部
6 継手手段
6a ソケット
6b プラグ
7 連結ピン
7a ブラケット
8 長孔
9 索条
10 窓孔
11 吊下げ金具
12a、12b 開口部
13 梁部材
13a 基部
13b 支持部
14 取付手段
14a 第1取付手段
14b 第2取付手段
15 フック金具
16 固定金具
16a 溝形部材
16b 係止ピン
17 接支台
17a 接支面
17b 突部