(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-25
(45)【発行日】2025-04-02
(54)【発明の名称】車体前部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20250326BHJP
B62D 25/16 20060101ALI20250326BHJP
B60Q 1/04 20060101ALI20250326BHJP
【FI】
B62D25/08 D
B62D25/16 B
B60Q1/04 A
(21)【出願番号】P 2021100493
(22)【出願日】2021-06-16
【審査請求日】2024-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島田 良輔
(72)【発明者】
【氏名】福島 慎二
(72)【発明者】
【氏名】青柳 宏紀
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-056488(JP,A)
【文献】特開2014-226982(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0134092(US,A1)
【文献】中国実用新案第206031188(CN,U)
【文献】特開2009-061996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
B62D 25/16
B60Q 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端部からフランジが延出するフェンダパネルと、
前記フェンダパネルの前方に配置されたヘッドランプと、
前記ヘッドランプの車幅方向外側の側方において前記フェンダパネルの前端部に上端部が連設するバンパフェースと、
前記フランジと前記バンパフェースの間に介在され、前記バンパフェースの上端部を前記フェンダパネルに固定するブラケットと、
前記フェンダパネルの前端部から延出するフランジに形成され、前記ヘッドランプを前記フランジに固定するための第1のランプ固定孔及び第2のランプ固定孔と、
前記フランジに形成され、前記ブラケットを前記フランジに固定するための第1のブラケット固定孔及び第2のブラケット固定孔と、を有し、
前記第1のランプ固定孔から前記第2のランプ固定孔までを結んだ第1の直線、及び、前記第1のブラケット固定孔から前記第2のブラケット固定孔までを結んだ第2の直線が、前記バンパフェースの上端部の稜線との間に分割線を形成する前記フェンダパネルの前端部の稜線と何れも平行であることを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記分割線は水平に対して傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記フランジに形成され、前記ブラケットを前記フランジに仮止めするための第3のブラケット固定孔と、を有し、
前記第3のブラケット固定孔は、前記フェンダパネルの前端部の前記稜線と平行な面を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記ヘッドランプは、前記第2のランプ固定孔に挿通される固定部材によって、前記ブラケットと一体的に前記フランジに固定され、
前記ブラケットは、前記第1のブラケット固定孔に挿通される固定部材によって、前記ヘッドランプと一体的に前記フランジに固定されることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の車体前部構造。
【請求項5】
前記第1のランプ固定孔は、一端が前記フランジの縁部において開放された貫通溝の終端に形成され、前記ヘッドランプに設けられた位置決めピンが係合されることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の車体前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェンダパネルの前端とバンパフェースの上端との分割線が、ヘッドランプユニットの車幅方向の外側の側方に設定された車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両においては、フェンダパネルの前端とバンパフェースの上端との分割線が、ヘッドランプユニットの車幅方向の外側の側方に設定された車体構造が知られている。
【0003】
この種の車体構造においては、一般に、フェンダパネルの前端とバンパフェースの上端との接続部において、ヘッドランプユニットの一部が固定されている。例えば、特許文献1には、フェンダパネルに取り付けられてバンパフェースを係止させるバンパホルダ(フランジ)に係止部を設け、ランプハウジングの後面部の車幅方向外側の下端部に設けた取付ブラケットを、スクリューを用いて係止部に車幅方向内側から係合させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1に開示された技術は、バンパフェースとは別の取付基準となる専用の係止部を用いて、ランプハウジングをフェンダパネルに固定するものである。従って、特許文献1に開示された技術では、フェンダパネルに対するバンパフェース及びヘッドライトの取付方向に、熱膨張や組み付け誤差等によるずれが生じやすく、外観上の(意匠的な)一体感を損なう虞がある。
【0006】
さらに、近年においては、車体の軽量化等の観点から、アルミ合金製のフェンダパネルが採用される傾向にある。このようなアルミ合金製のフェンダパネルは、鉄製のフェンダパネルに比べて、曲面の成型が困難である。このため、アルミ合金製のフェンダパネルを採用した車体では、フェンダパネルとバンパフェースとの分割線を水平に対して傾斜させ、樹脂製のバンパフェースを車体の上方(フェンダ側)まで拡張させることにより、所望の意匠面を形成するなどの対策が行われている。その一方で、フェンダパネルとバンパフェースとの分割線を傾斜させた車体構造では、特に、フェンダに対するバンパフェース及びヘッドライトの組み付け誤差が目立ちやすく、意匠的な一体感がより顕著に損なわれる虞がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、意匠的な一体感を損なうことなく、フェンダパネルにヘッドライトとバンパフェースを固定することができる車体前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様による車体前部構造は、前端部からフランジが延出するフェンダパネルと、前記フェンダパネルの前方に配置されたヘッドランプと、前記ヘッドランプの車幅方向外側の側方において前記フェンダパネルの前端部に上端部が連設するバンパフェースと、前記フランジと前記バンパフェースの間に介在され、前記バンパフェースの上端部を前記フェンダパネルに固定するブラケットと、前記フェンダパネルの前端部から延出するフランジに形成され、前記ヘッドランプを前記フランジに固定するための第1のランプ固定孔及び第2のランプ固定孔と、前記フランジに形成され、前記ブラケットを前記フランジに固定するための第1のブラケット固定孔及び第2のブラケット固定孔と、を有し、前記第1のランプ固定孔から前記第2のランプ固定孔までを結んだ第1の直線、及び、前記第1のブラケット固定孔から前記第2のブラケット固定孔までを結んだ第2の直線が、前記バンパフェースの上端部の稜線との間に分割線を形成する前記フェンダパネルの前端部の稜線と何れも平行であるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車体前部構造によれば、意匠的な一体感を損なうことなく、フェンダパネルにヘッドライトとバンパフェースを固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】車体に組み付けられたヘッドランプを示す斜視図
【
図7】フェンダパネルにフロントサイドブラケットを仮止めした状態を示す斜視図
【
図8】フェンダパネルにヘッドランプ及びバンパフェースと取り付けた状態を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図面は本発明の一実施形態に係り、
図1は車両の斜視図である。
【0012】
図1に示す車両1の車体2は、左右のフェンダパネル5と、各フェンダパネル5の前方に配置された左右のヘッドランプ6と、各ヘッドランプ6の車幅方向外側の側方において各フェンダパネル5の前端部に上端部が連設されたバンパフェース7と、左右のフェンダパネル5の間に配設されたエンジンフード8と、を備えて、前部の外観形状(意匠面)が構成されている。なお、車体2は左右対称な基本構成をなしているため、以下においては、
図2~
図8に示す車体2の左側の構成を例に説明する。
【0013】
フェンダパネル5は、例えば、アルミ合金製の板金成成型品によって構成されている。
【0014】
図2,3に示すように、フェンダパネル5の上部は、車体骨格を構成するフロントサイドアッパメンバ10に対し、ボルト締結等(図示せず)によって固定されている。
【0015】
また、フェンダパネル5の前部には、ヘッドランプ6の後端部を受容するための凹部15が形成されている。
【0016】
また、凹部15の車幅方向外側に隣接するフェンダパネル5の前端部からは、ヘッドランプ6及びバンパフェース7を固定するためのフランジ16が延出されている。このフランジ16は、フェンダパネル5の前端部(意匠面を構成する面の前端部)から延出する板金が、車体2の内側及び前方に順次屈曲されることにより形成されている。そして、このような屈曲形成が行われることにより、フェンダパネル5の前端部には、側面視した際に、水平方向に対し、所定角度にて傾斜する直線状の稜線Lfが形成されている。
【0017】
図4に示すように、フランジ16には、ヘッドランプ6を固定するための第1のランプ固定孔17及び第2のランプ固定孔18と、ブラケットとしてのフロントサイドブラケット9(後述する)を固定するための第1のブラケット固定孔19及び第2のブラケット固定孔20と、フロントサイドブラケット9(後述する)を仮止めするための第3のブラケット固定孔21及び第4のブラケット固定孔22と、が形成されている。
【0018】
さらに、フランジ16の裏面には、第2のブラケット固定孔20に対応する位置にナット20aが固定されている。
【0019】
なお、後述するが、第2のランプ固定孔18には、ヘッドランプ6のみならず、フロントサイドブラケット9も一体的に固定される。すなわち、第2のランプ固定孔18は、ブラケット固定孔としての機能を兼用する。また、第1のブラケット固定孔19には、フロントサイドブラケット9のみならず、ヘッドランプ6も一体的に固定される。すなわち、第1のブラケット固定孔19は、ランプ固定孔としての機能を兼用する。
【0020】
第1のランプ固定孔17及び第2のランプ固定孔18は、例えば、フランジ16の厚さ方向に貫通する丸孔によって構成されている。ここで、第1のランプ固定孔17は、一端がフランジの縁部において開放された貫通溝17aの終端に形成されている。なお、貫通溝17aは、フェンダパネル5が車体2に組み付けられた状態において、水平方向に延在するように設定されている。
【0021】
これら第1,第2のランプ固定孔17,18は、第1のランプ固定孔17の中心と第2のランプ固定孔18の中心とを結ぶ第1の直線L1が、フェンダパネル5の前端部の稜線Lfに対して平行となるよう、フランジ16上に配置されている。
【0022】
第1のブラケット固定孔19及び第2のブラケット固定孔20は、例えば、フランジ16の厚さ方向に貫通する丸孔によって構成されている。
【0023】
これら第1,第2のブラケット固定孔19,20は、第1のブラケット固定孔19の中心と第2のブラケット固定孔20の中心とを結ぶ第2の直線L2が、フェンダパネル5の前端部の稜線Lfに対して平行となるよう、フランジ16上に配置されている。
【0024】
第3のブラケット固定孔21は、例えば、フランジ16の厚さ方向に貫通する角孔によって構成されている。
【0025】
この第3のブラケット固定孔21は、例えば四角孔であり、フェンダパネル5の前端部の稜線Lfと平行な面(側壁)を有する。すなわち、第3のブラケット固定孔21は、当該第3のブラケット固定孔21の開口を構成する辺のうちの少なくとも1つに沿う第3の直線L3が、フェンダパネル5の前端部の稜線Lfに対して平行となるよう、フランジ16上に配置されている。
【0026】
以上のように、第1~第4の各固定孔17~20は、第1~第3の直線L1~L3が、互いに平行であり且つ稜線Lfに対してもそれぞれ平行となるように配置されている。
【0027】
第4のブラケット固定孔22は、例えば、フランジ16の厚さ方向に貫通する丸孔によって構成されている。
【0028】
ヘッドランプ6は、ランプ本体25と、ランプ本体25の前面を覆うレンズ26と、を有して構成されている。
【0029】
図2に示すように、ランプ本体25は、ヘッドランプ6を車体2に固定するためのブラケットとして、例えば、第1~第5のランプブラケット27~31を有する。
【0030】
第1のランプブラケット27は、例えば、車体骨格を構成するラジエータサポートメンバ33に対し、ヘッドランプ6の前部をボルト締結によって固定するためのブラケットである。このため、第1のランプブラケット27には、ラジエータサポートメンバ33に設けられたボルト孔33aに対応する位置に、ボルト挿通孔27aが設けられている。
【0031】
第2,第3のランプブラケット28,29は、ラジエータサポートメンバ33とフロントサイドアッパメンバ10とを連結するランプサポートメンバ34に対し、ヘッドランプ6の中途の上部及び後側の上部をボルト締結によって固定するためのブラケットである。
【0032】
このため、第2,第3のランプブラケット28,29には、ランプサポートメンバ34に設けられたボルト孔34a,34bに対応する位置に、ボルト挿通孔28a,29aが設けられている。
【0033】
第4のランプブラケット30は、フェンダパネル5の上部に対し、ヘッドランプ6の後側の上部をクリップ止めによって固定するためのブラケットである。
【0034】
このため、第4のランプブラケット30には、フェンダパネル5の上部に設けられたクリップ孔5aに対応する位置に、クリップ挿通孔30aが設けられている。
【0035】
第5のランプブラケット31は、フェンダパネル5のフランジ16に設けられた第1のランプ固定孔17及び第2のランプ固定孔18に対し、ヘッドランプ6の後側の下部を固定するためのブラケットである。
【0036】
このため、例えば、
図5に示すように、第5のランプブラケット31には、第1のランプ固定孔17に係合する係合ピン37が設けられている。
【0037】
この係合ピン37は、例えば、第5のランプブラケット31から突出する円柱状のピンによって構成されている。
【0038】
また、第5のランプブラケット31には、第2のランプ固定孔18に対応する位置に、クリップ挿通孔38が設けられている。
【0039】
このクリップ挿通孔38は、例えば、第4のランプブラケット30の厚さ方向に貫通する丸孔によって構成されている。
【0040】
さらに、ヘッドランプ6をフランジ16に対してフロントサイドブラケット9と一体的に固定するため、第5のランプブラケット31には、第1のブラケット固定孔19に対応する位置に、ボルト挿通孔39が設けられている。
【0041】
このボルト挿通孔39は、第5のランプブラケット31の厚さ方向に貫通する丸孔によって構成されている。さらに、第5のランプブラケット31の裏面には、ボルト挿通孔39に対応する位置に、ナット39aが固定されている。
【0042】
バンパフェース7は、例えば、樹脂成型品によって構成されている。
図2に示すように、このバンパフェース7の左右上部には、ヘッドランプ6の下部及び前部を受容するための凹部45が設けられている。
【0043】
また、各凹部45の車幅方向外側に隣接するバンパフェース7の上端部は、側面視した際に、水平方向に対し、フェンダパネル5の前端部と同様の傾斜角にて傾斜する直線状に形成されている。
【0044】
すなわち、バンパフェース7の上端部の稜線Lbは、側面視した際に、水平方向に対し、フェンダパネル5の前端部の稜線Lfと同様の傾斜角にて傾斜するように設定されている。
【0045】
さらに、バンパフェース7の上端部には、フェンダパネル5の前端部との合わせ面48が形成されている。この合わせ面48は、稜線Lbに沿ってバンパフェース7の内側に屈曲する平面によって構成されている。
【0046】
この合わせ面48には、複数(例えば、3個)の係止爪受49が設けられている。すなわち、各係止爪受49は、バンパフェース7の上端部の稜線Lbに沿って、合わせ面48上に設けられている。
【0047】
図6に示すように、フロントサイドブラケット9は、例えば、板状の樹脂成型品によって構成されている。このフロントサイドブラケット9は、ヘッドランプ6及びバンパフェース7がフェンダパネル5のフランジ16に取り付けられる際に、フランジ16とバンパフェース7との間に介在する部材である。
【0048】
このフロントサイドブラケット9には、バンパフェース7の外面(意匠面)の剛性を補助するための段差部55が設けられている。
【0049】
また、フロントサイドブラケット9には、フェンダパネル5のフランジ16に設けられた第1のランプ固定孔17に対応する位置に、逃げ孔57が設けられている。
【0050】
この逃げ孔57は、例えば、フロントサイドブラケット9の厚さ方向に貫通する長孔によって構成されている。そして、逃げ孔57が設けられることにより、ヘッドランプ6の係合ピン37が貫通溝17aを経て第1のランプ固定孔17に挿通される際に、フロントサイドブラケット9との干渉が防止される。
【0051】
また、フロントサイドブラケット9には、フェンダパネル5のフランジ16に設けられた第2のランプ固定孔18に対応する位置に、クリップ挿通孔58が設けられている。
【0052】
このクリップ挿通孔58は、例えば、フロントサイドブラケット9の厚さ方向に貫通する丸孔によって構成されている。
【0053】
また、フロントサイドブラケット9には、フェンダパネル5のフランジ16に設けられた第1のブラケット固定孔19及び第2のブラケット固定孔20に対応する位置であって、かつ、段差部55に対応する位置に、第1のボルト挿通孔59及び第2のボルト挿通孔60が設けられている。
【0054】
これら第1,第2のボルト挿通孔59,60は、例えば、フロントサイドブラケット9の厚さ方向に貫通する丸孔によって構成されている。
【0055】
また、フロントサイドブラケット9には、フェンダパネル5のフランジ16に設けられた第3のブラケット固定孔21に対応する位置に、係止凸部61が設けられている。
【0056】
この係止凸部61は、例えば、フロントサイドブラケット9の裏面から突出する角柱状の突起によって構成されている。この係止凸部61は、第3のブラケット固定孔21に形成された面のうち、少なくとも、フェンダパネル5の前端の稜線Lfに平行な面に対し、面接触する面を有する。そして、係止凸部61は、直線L3に沿って第3のブラケット固定孔21に面接触した状態にて挿通されて係止されることにより、フロントサイドブラケット9を、フェンダパネル5の前端の稜線Lfに対して位置決めした状態にて、フランジ16に仮止めさせる。
【0057】
より具体的には、係止凸部61は、フロントサイドブラケット9のフェンダパネル5側の稜線Lk(段差部55の稜線Lk)がフェンダパネル5の前端の稜線Lfに対して平行に対応するように、フランジ16に対してフロントサイドブラケット9を位置決めする。
【0058】
また、フロントサイドブラケット9には、フェンダパネル5の第4のブラケット固定孔22に対応する位置に、基準ピン62が設けられている。
【0059】
この基準ピン62は、例えば、フロントサイドブラケット9の裏面から突出する円柱状の突起によって構成されている。この基準ピン62は、第4のブラケット固定孔22に挿通されて係止されることにより、フロントサイドブラケット9を、フェンダパネル5に対して位置決めした状態にて、フランジ16に仮止めさせる。
【0060】
さらに、フロントサイドブラケット9には、稜線Lkに沿う位置であって、且つ、バンパフェース7の係止爪受49にそれぞれ対応する位置に、凹部63が設けられている。これらの各凹部63には、バンパフェース7の係止爪受49に係止可能なバンパ固定部としての係止爪64がそれぞれ設けられている。すなわち、各係止爪64は、第3の直線L3に沿って第3のブラケット固定孔21に面接触する係止凸部61の面に平行な稜線Lkに沿って設けられている。
【0061】
次に、これら車体2の前部を構成する各部材の組み立て工程について説明する。
【0062】
この組み立て工程では、まず、
図7に示すように、フロントサイドアッパメンバ10等に組み付けられたフェンダパネル5のフランジ16に対し、フロントサイドブラケット9が仮止めされる。
【0063】
具体的には、フランジ16に設けられた第3のブラケット固定孔21に対し、フロントサイドブラケット9に設けられた係止凸部61が挿入される。また、フランジ16に設けられた第4のブラケット固定孔22に対し、フロントサイドブラケット9に設けられた基準ピン62が挿入される。これらにより、フランジ16に対し、フロントサイドブラケット9が仮止めされる。
【0064】
このとき、第3のブラケット固定孔21を構成する面のうちフェンダパネル5の前端部の稜線Lfに平行な面に対し、係止爪61が面接触することにより、フェンダパネル5に対するフロントサイドブラケット9の位置決めが行われる。
【0065】
具体的には、フランジ16の第1,第2のランプ固定孔17,18に対応する位置に、フロントサイドブラケット9の逃げ孔57及びクリップ挿通孔58がそれぞれ位置決めされる。また、フランジ16の第1,第2のブラケット固定孔19,20に対応する位置に、フロントサイドブラケット9の第1,第2のボルト挿通孔59,60がそれぞれ位置決めされる。さらに、フロントサイドブラケット9は、当該フロントサイドブラケット9の稜線Lkが、フェンダパネル5の稜線Lfに対して平行となるように位置決めされる。
【0066】
次に、フェンダパネル5のフランジ16に対して、ヘッドランプ6が固定される。
【0067】
具体的には、ヘッドランプ6に設けられた第5のランプブラケット31に設けられた係合ピン37が、貫通溝17aの開放端から第1のランプ固定孔17に対して挿入される。これにより、フェンダパネル5に対して、ヘッドランプ6の位置決めが行われる。
【0068】
そして、ヘッドランプ6に設けられた第1~第3のランプブラケット27~29が、ラジエータサポートメンバ33、ランプサポートメンバ34の上部に対してそれぞれボルト締結される(
図3参照)。
【0069】
また、ヘッドランプ6に設けられた第4のランプブラケット30が、フェンダパネル5の上部に対してクリップ止めされる(
図3参照)。
【0070】
また、フロントサイドブラケット9に設けられたクリップ挿通孔58、フェンダパネル5のフランジ16に設けられた第2のランプ固定孔18、及び、第5のランプブラケット31に設けられたクリップ挿通孔38に対して固定部材としてのクリップ65が挿通される。これにより、フロントサイドブラケット9、フェンダパネル5のフランジ16、及び、第5のランプブラケット31が一体的に固定(クリップ止め)される。
【0071】
また、フロントサイドブラケット9に設けられた第1のボルト挿通孔59、フェンダパネル5のフランジ16に設けられた第1のブラケット固定孔19、及び、第5のランプブラケット31に設けられたボルト挿通孔39に対して挿通された固定部材としてのボルト66が、第5のランプブラケット31に設けられたナット39aに締結される。これにより、フロントサイドブラケット9、フェンダパネル5のフランジ16、及び、第5のランプブラケット31が、一体的に固定(ボルト締結)される。
【0072】
さらに、フロントサイドブラケット9に設けられた第2のボルト挿通孔60、フェンダパネル5のフランジ16に設けられた第2のブラケット固定孔20に対して挿通された固定部材としてのボルト67が、フランジ16に設けられたナット20aに締結される。これにより、フロントサイドブラケット9、及び、フェンダパネル5のフランジ16が、固定(ボルト締結)される。
【0073】
そして、これらのクリップ止め及びボルト締結により、ブラケット固定孔21と係止凸部61との係合及び第4のブラケット固定孔22と基準ピン62との係合によって仮止めされているフロントサイドブラケット9と、第1のランプ固定孔17と係合ピン37との係合によって仮止めされているヘッドランプ6と、がフェンダパネル5のフランジ16に対してより高精度に位置決めされ、固定される。
【0074】
この場合において、第2のランプ固定孔18は、クリップ止めによって、フロントサイドブラケット9についてもヘッドランプ6と一体的に固定する。また、第1のブラケット固定孔19は、ボルト締結によって、ヘッドランプ6についてもフロントサイドブラケット9と一体的に固定する。このため、ヘッドランプ6と、フロントサイドブラケット9との相対位置も、高精度に位置決めされる。
【0075】
次に、フェンダパネル5のフランジ16に対して、バンパフェース7が固定される。
【0076】
具体的には、フロントサイドブラケット9の各係止爪64に対し、バンパフェース7の各係止爪受49が係止される。すなわち、バンパフェース7の上端部は、フロントサイドブラケット9の稜線Lkに沿って固定される。
【0077】
このとき、フェンダパネル5のフランジ16に対してフロントサイドブラケット9が高精度に位置決めされて固定されており、フロントサイドブラケット9の稜線Lkは、フェンダパネル5の稜線Lfに対して高い精度にて平行となっている。従って、フロントサイドブラケット9の稜線Lkに沿って取り付けされるバンパフェース7の上端の稜線Lbは、フェンダパネル5の稜線Lfに対して平行となるように、高精度に位置決めされる。
【0078】
このような実施形態によれば、フェンダパネル5の前端部から延出するフランジ16に、ヘッドランプ6を固定するための第1のランプ固定孔17及び第2のランプ固定孔18と、フロントサイドブラケット9を固定するための第1のブラケット固定孔19及び第2のブラケット固定孔20と、を設け、第1のランプ固定孔17から第2のランプ固定孔18までを結んだ第1の直線L1と、第1のブラケット固定孔19から第2のブラケット固定孔20までを結んだ第2の直線L2と、をバンパフェース7の上端部の稜線との間に分割線を形成するフェンダパネルの前端部の稜線Lfに対して何れも平行となるように、第1,第2のランプ固定孔17,18及び第1,第2のブラケット固定孔19,20をフランジ16上に配置したことにより、意匠的な一体感を損なうことなく、フェンダパネル5にヘッドランプ6とバンパフェース7を固定することができる。
【0079】
すなわち、ヘッドランプ6のフェンダパネル5に対する固定、及び、バンパフェース7をフェンダパネル5に固定するためのフロントサイドブラケット9のフェンダパネル5に対する固定は、何れもフェンダパネル5の前端部の稜線Lfを基準として2点以上で行われるものである。従って、フェンダパネル5、ヘッドランプ6、及び、バンパフェース7の相互間の相対的な組み付け位置が適切な位置となるように、フェンダパネル5にヘッドランプ6及びバンパフェース7を組み付けることができる。特に、フェンダパネル5の前端部の稜線Lfとバンパフェース7の上端部の稜線Lbとが的確に平行となるように、フェンダパネル5にバンパフェース7を組み付けることができ、これら稜線Lfと稜線Lbとの間に形成される分割線の見栄えを良好なものとすることができる。
【0080】
加えて、フェンダパネル5にヘッドランプ6を固定するための第1,第2のランプ固定孔17,18を結んだ直線と、フェンダパネル5にフロントサイドブラケット9を固定するための第1,第2のブラケット固定孔19,20は、何れもフェンダパネル5の前端部の稜線Lfに対して平行となるように設定されている。従って、車体2の前部を構成する各部材に組み付け誤差や熱膨張等によるずれが発生した場合にも、これらの主なずれ方向を、稜線Lfの延在方向あるいは稜線Lfに平行な方向に制限することができ、フェンダパネル5、ヘッドランプ6、及び、バンパフェース7の相対的な位置関係を良好に維持することができる。
【0081】
フロントサイドブラケット9を、フランジ16に仮止めするための第3のブラケット固定孔21を角孔によって構成し、第3のブラケット固定孔21を構成する面のうちの少なくとも1つを、フェンダパネル5の前端部の稜線Lfと平行となるように設定することにより、フロントサイドブラケット9の仮止め精度を向上することができ、フェンダパネル5に対するフロントサイドブラケット9の組み付け精度を確保することができる。
【0082】
また、ヘッドランプ6をフェンダパネル5に組み付ける際に、第2のランプ固定孔18に挿通されるクリップ65によってフロントサイドブラケット9を一体的に固定するとともに、フロントサイドブラケット9をフェンダパネル5に組み付ける際に、第1のブラケット固定孔19に挿通されるボルト66によってヘッドランプ6を一体的に固定することにより、フェンダパネル5にバンパフェース7を組み付ける前における、ヘッドランプ6とフロントサイドブラケット9の相対位置をより高精度なものとすることができる。従って、ヘッドランプ6と、フロントサイドブラケット9に固定されるバンパフェース7との相対位置をより高精度なものとすることができる。
【0083】
さらに、一端がフランジ16の縁部において開放された貫通溝17aの終端に第1のランプ固定孔17を配置したことにより、係合ピン37を第1のランプ固定孔17に係合させてヘッドランプ6をフェンダパネル5に組み付ける際に、良好な組み立て性を確保することができる。
【0084】
以上の実施の形態に記載した発明は、その形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得るものである。
【0085】
例えば、上記実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、述べられている課題が解決でき、述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得るものである。
【符号の説明】
【0086】
1 … 車両
2 … 車体
5 … フェンダパネル
5a … クリップ孔
6 … ヘッドランプ
7 … バンパフェース
8 … エンジンフード
9 … フロントサイドブラケット
10 … フロントサイドアッパメンバ
15 … 凹部
16 … フランジ
17 … 第1のランプ固定孔
17a … 貫通溝
18 … 第2のランプ固定孔
19 … 第1のブラケット固定孔
20 … 第2のブラケット固定孔
20a … ナット
21 … 第3のブラケット固定孔
22 … 第4のブラケット固定孔
25 … ランプ本体
26 … レンズ
27 … 第1のランプブラケット
27a … ボルト挿通孔
28 … 第2のランプブラケット
28a … ボルト挿通孔
29 … 第3のランプブラケット
29a … ボルト挿通孔
30 … 第4のランプブラケット
30a … クリップ挿通孔
31 … 第5のランプブラケット
33 … ラジエータサポートメンバ
33a … ボルト孔
34 … ランプサポートメンバ
34a … ボルト孔
34b … ボルト孔
37 … 係合ピン
38 … ボルト挿通孔
39 … クリップ挿通孔
39a … ナット
45 … 凹部
48 … 合わせ面
49 … 係止爪受
55 … 段差部
57 … 逃げ孔
58 … クリップ挿通孔
59 … ボルト挿通孔
60 … ボルト挿通孔
61 … 係止凸部
62 … 基準ピン
63 … 凹部
64 … 係止爪
65 … クリップ
66 … ボルト
67 … ボルト
L1 … 第1の直線
L2 … 第2の直線
L3 … 第3の直線
Lb … 稜線
Lf … 稜線
Lb … 稜線