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特許7655833スパークプラグ及びスパークプラグの製造方法
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  • 特許-スパークプラグ及びスパークプラグの製造方法 図1
  • 特許-スパークプラグ及びスパークプラグの製造方法 図2
  • 特許-スパークプラグ及びスパークプラグの製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-25
(45)【発行日】2025-04-02
(54)【発明の名称】スパークプラグ及びスパークプラグの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01T 13/20 20060101AFI20250326BHJP
【FI】
H01T13/20 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021170128
(22)【出願日】2021-10-18
(65)【公開番号】P2023060489
(43)【公開日】2023-04-28
【審査請求日】2024-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(74)【代理人】
【識別番号】100142686
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 浩貴
(72)【発明者】
【氏名】木村 順二
(72)【発明者】
【氏名】小松 大祐
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-093285(JP,A)
【文献】特開平05-016581(JP,A)
【文献】特表2021-521025(JP,A)
【文献】特開2016-093926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/06
B23K 26/00-26/70
H01T 7/00-23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の主体金具と、前記主体金具の内部に保持されるとともに前記主体金具の軸線方向後端側から突出する絶縁体とを備え、
記絶縁体の外表面に識別部が形成されているスパークプラグであって、
前記絶縁体はアルミナを主成分として形成されており、
前記識別部は、前記外表面上に形成される第1層と、前記第1層の表面の一部に形成されるとともに前記第1層と識別可能である第2層と、からなり、
前記第1層は明度7以上であり、前記第2層は明度5以下であり、
前記第1層のうち表面に前記第2層が形成されている部分の厚さが、前記第1層のうち露出している部分の厚さより厚くなっているスパークプラグ。
【請求項2】
前記第2層の表面粗さRaは、前記第1層の表面粗さRaより大きい請求項1記載のスパークプラグ。
【請求項3】
前記第1層は不透明である請求項1又は2に記載のスパークプラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパークプラグ及びスパークプラグの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用エンジンなどの内燃機関の着火手段として、スパークプラグが用いられている。スパークプラグは、例えば、軸状の中心電極と、その中心電極を内側に保持する略円筒状の絶縁体と、その絶縁体を内側に保持する主体金具とを有している。
【0003】
一般に、スパークプラグには、メーカ名やロゴマークあるいは品番など、文字や記号その他の画像などからなるマークが付されている。例えば、特許文献1には、スパークプラグの表面に文字、記号、画像等を表すマーキング層が形成されているスパークプラグが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-22227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の発明者は、スパークプラグの表面のマークの読み取り精度について改善の余地があると考えた。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、表面のマークを精度良く読み取り可能なスパークプラグを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの局面に係るスパークプラグは、筒状の主体金具と、前記主体金具の内部に保持されるとともに前記主体金具の軸線方向後端側から突出する絶縁体とを備え、前記主体金具又は前記絶縁体の外表面に識別部が形成されているスパークプラグであって、前記識別部は、前記外表面上に形成されるとともに第1層と、前記第1層の表面の一部に形成されるとともに前記第1層と識別可能である第2層と、からなり、前記第1層のうち表面に前記第2層が形成されている部分の厚さが、前記第1層のうち露出している部分の厚さより厚くなっている。
【0008】
上記構成によれば、識別部が、第1層と、第1層の表面の一部に形成されるとともに第1層と識別可能である第2層と、からなるので、識別部が単層からなる場合のように外表面の傷や汚れに依存して読み取り精度が低下することを抑制できる。また、識別部は、スパークプラグの出荷時に互いに擦れ合って一部がはがれてしまうことがあるが、識別部が形成されている領域において第2層が第1層からはがれてしまった場合と比べて第1層が外表面からはがれてしまった場合には読み取り精度が著しく低下する。ここで、上記構成によれば、第1層のうち表面に第2層が形成されている部分の厚さが、第1層のうち露出している部分より厚くなっているため、第1層のうち出荷時に特にはがれやすい露出している部分がはがれてしまうことを抑制し、読み取り精度の低下を抑制できる。
【0009】
本発明の一つの局面に係るスパークプラグでは、前記絶縁体はアルミナを主成分として形成されており、前記識別部は前記絶縁体上に形成されており、前記第1層は明度が7以上であり、前記第2層は明度が5以下としてもよい。
【0010】
上記構成によれば、アルミナを主成分とする絶縁体と明度7以上の第1層とが同系統の色となるため、仮に第1層の一部がはがれてしまったとしても読み取り精度が著しく低下することを抑制できる。また、第1層と第2層とで明度に差があるので、第1層と第2層との間にコントラストが生じて識別部の読み取りが容易になる。
【0011】
本発明の一つの局面に係るスパークプラグでは、前記第2層の表面粗さRaは、第1層の表面粗さRaより大きい構成としてもよい。
【0012】
上記構成によれば、第1層と比べてより外側に位置する第2層において、表面での読み取り用の照射光の反射率を抑えることができるため、識別部の読み取り性が低下することを抑制することができる。
【0013】
本発明の一つの局面に係るスパークプラグでは、前記第1層が不透明としてもよい。
【0014】
上記構成によれば、外表面の状態による識別部の読み取り精度の低下を抑制することができる。
【0015】
本発明のもう一つの局面に係るスパークプラグの製造方法では、自身の外表面に識別部が形成されているスパークプラグの製造方法であって、前記識別部は、前記外表面上に、視認可能な第1層を形成する第1工程と、前記第1工程の後に前記第1層上の一部に前記第1層と識別可能であり、かつ、視認可能な第2層を形成する第2工程と、を含む。
【0016】
上記構成によれば、識別部が、第1層と、第1層の表面の一部に形成されるとともに第1層と識別可能である第2層と、からなるので、識別部が単層からなる場合のように外表面の傷や汚れに依存して読み取り精度が低下することを抑制できる。
【0017】
本発明のもう一つの局面に係るスパークプラグの製造方法では、前記第2工程において、前記第2層は、前記第1層上に積層された層の一部を除去することで前記第2層を形成してもよい。
【0018】
上記構成によれば、形状の精度がより高い識別部を形成することができる。
【0019】
本発明のもう一つの局面に係るスパークプラグの製造方法では、さらに、前記第2工程において、前記第1層上に積層された層の一部を除去する際に前記外表面が露出しないように除去してもよい。
【0020】
上記構成によれば、第1層上に積層された層の一部を除去する際に外表面に傷をつけてしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1の実施形態に係るスパークプラグの外観図である。
図2図1に示すスパークプラグにおける識別部形成領域の断面構成を示す模式図である。
図3図1に示すスパークプラグにおける識別部の形成過程を工程順に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
第1の実施形態:
図1は第1の実施形態に係るスパークプラグの外観図である。スパークプラグ1は、絶縁体50及び主体金具30を備えている。
【0023】
絶縁体50は、スパークプラグ1の長手方向に延びる略円筒形状の部材である。絶縁体50は、絶縁性、耐熱性及び熱伝導性に優れた材料で形成されている。例えば、絶縁体50は、アルミナを主成分として形成されている。絶縁体50の一方の端部(先端部51)には、中心電極21が設けられている。また、絶縁体50の他方の端部(後端部)には、端子金具52が取り付けられている。なお、絶縁体50はその表面に釉薬層が設けられていてもよく、その場合には、釉薬層まで含めて本発明に係る「絶縁体」とする。
【0024】
中心電極21は、その先端部が絶縁体50の先端部51から突出した状態で、絶縁体50の軸孔に貫通保持されている。中心電極21は、その先端部が略円筒形状の絶縁体50の軸線O上に位置するように、絶縁体50に対して取り付けられている。中心電極21は略円柱形状を有しており、その先端部分はテーパ状に縮系している。なお、中心電極21の先端部は、例えば、円柱状に成形された貴金属チップにて構成してもよい。
【0025】
主体金具30は、内燃機関のネジ穴に固定される略円筒形状の部材である。主体金具30は、絶縁体50を部分的に覆うように設けられている。主体金具30は、導電性を有する金属材料で形成されており、このような金属材料としては、低炭素鋼、又は鉄を主成分とする金属材料が挙げられる。なお、主体金具にはメッキ層が設けられていてもよくその場合には、メッキ層まで含めて本発明に係る「主体金具」とする。
【0026】
主体金具30は、主に、加締め部31、工具係合部32、湾曲部33、座部34、及び胴部35などを有している。
【0027】
加締め部31及び湾曲部33は、絶縁体50に主体金具30を取り付けるための部位である。工具係合部32は、内燃機関のネジ穴に主体金具30を取り付けるときにレンチなどの工具を係合させる部位である。座部34は、工具係合部32と胴部35との間に位置している。スパークプラグ1が内燃機関に取り付けられた状態で、座部34には、環状のガスケットが配置される。胴部35は、絶縁体50の先端部51側に位置している。スパークプラグ1が内燃機関に取り付けられる際には、胴部35の外周に形成されたネジ溝が内燃機関のネジ穴に螺合される。
【0028】
また、主体金具30の先端部側(胴部35が位置する側)には、接地電極41が取り付けられている。接地電極41は、全体がL字形に屈曲する板状体で、基端側が主体金具30の先端面に接合固定されている。接地電極41の先端部は、絶縁体50の軸線Oの仮想延長線が通過する位置まで延びている。なお、図示はしないが、接地電極41の先端部の近傍には、中心電極21側に向かって突出する凸部が形成されていてもよい。
【0029】
中心電極21及び接地電極41は、例えば、Ni(ニッケル)を主成分として含むNi基合金等の金属材料を母材として形成される。Ni基合金に添加される合金元素としては、Al(アルミニウム)等があげられる。中心電極21及び接地電極41は、その内部に、熱伝導性に優れた金属、例えば、Cu(銅)又はCu合金等の金属材料からなる芯材を有していてもよい。
【0030】
(スパークプラグの識別部について)
スパークプラグ1には、識別部の一例である二次元コード10が付されている。二次元コード10は、例えば、Datamatrixコード、QRコード(登録商標)などである。二次元コード10には、スパークプラグ1の製品情報、製造過程における履歴情報などといった個々のスパークプラグを識別するための各種情報が含まれている。
【0031】
なお、本発明では、識別部は二次元コードに限定されない。二次元コード以外の識別部としては、例えば、バーコードなどの一次元コード、文字、記号、及び画像などで構成されるものが挙げられる。また、識別部は、一次元コード、二次元コード、文字、記号、及び画像のうちいくつかを組み合わせて構成されるものであってもよい。
【0032】
一実施例では、図1に示すように、二次元コード10は、絶縁体50の外周面の任意の位置に付されている。絶縁体50の外表面における二次元コード10が形成されている領域を識別部形成領域10aと呼ぶ。
【0033】
図2には、スパークプラグ1の識別部形成領域10aの断面構成を示す。絶縁体50上に形成された二次元コード10は、絶縁体50上に形成される第1層11と第1層11上の一部に形成される第2層12とを有している。なお、第1層11と第2層12とは識別可能な状態となっている。また、第1層11のうちその表面に第2層12が形成されている部分の厚さAは第2層12が形成されていない部分の厚さBよりも厚くなっている。これにより、第1層11のうち表面に第2層12が形成されていない部分は識別部の表面からの深さが深くなっているため、出荷時に外力によりはがれてしまうことを抑制できる。
【0034】
本実施形態では、第1層11及び第2層12の原料は特に限定されないが、第1層11は、例えば、明度7以上の白色のインクからなり、第2層12は、例えば、明度5以下の第1層11とは異なる色のインクからなる。第1層11が明度7以上であると、仮に第1層11がはがれたとしても、アルミナを主成分とする絶縁体50と第1層11とが同系統の色であるため二次元コード10の読み取り精度が著しく低下することを抑制できる。また、第2層12が明度5以下であることで、明度7以上の第1層11との明度の差によって第1層11と第2層12との間でコントラストが生じ、識別部の読み取りが容易になる。
【0035】
さらに、第2層12の表面粗さは第1層11の表面粗さよりも大きいことが好ましい。なお、本発明に係る「表面粗さ」とは、平均算術表面粗さのことを示す。これにより、第1層11と比べてより外側に位置する第2層12において、表面での読み取り用の照射光の反射率を抑えることができるため、二次元コード10の読み取り性が低下することを抑制することができる。
【0036】
また、第1層11は不透明であることが好ましい。これにより、絶縁体50のうち第1層11が形成されている部分に傷や汚れ等がついていたとしても第1層11によりその傷や汚れ等を覆うことで二次元コード10の読み取り精度が低下することを抑制できる。
(スパークプラグの製造方法)
【0037】
続いて、スパークプラグ1の製造方法について説明する。ここでは、スパークプラグ1の製造方法の中でも、二次元コード10などのマークを形成する工程を中心に説明する。スパークプラグ1の製造方法における、それ以外の製造工程については、従来のスパークプラグの製造方法と同様の製造方法が適用できる。
【0038】
図3の(a)から(c)には、スパークプラグの1の製造方法に含まれる二次元コード10の形成過程を工程順に示す。以下では、スパークプラグ1の完成品に対して二次元コード10を形成する場合を例に挙げて説明する。しかし、製造途中のスパークプラグ1の構成部品に対して、以下に説明する方法と同様の方法で二次元コード10を形成してもよい。
【0039】
先ず、二次元コード10が付されていない状態のスパークプラグを準備する。そして、絶縁体50の表面に第1層11を形成する(図3(a)参照)。第1層11は、例えば、上述したような白色のインクを絶縁体50の表面に印刷して形成することができる。
【0040】
続いて、形成した第1層11上に後に第2層12となる層(以下、中間形成層13と呼ぶ。)を形成する(図3(b)参照)。中間形成層13は、例えば、上述したような第1層11とは異なる色のインクを第1層11の第1層11の表面に印刷して形成することができる。
【0041】
第1層11上に中間形成層13を形成した後、中間形成層13の所定の領域にレーザLを照射し、第1層が露出するようにして中間形成層13を部分的に削ることで第2層12を形成する(図3(b)、(c)参照)。また、このときレーザを照射した領域において主体金具30の表面が露出するまで第1層11を削らないようにする。なお、レーザLの種類は特に限定されず、例えば、YAGレーザやファイバーレーザを用いて、パルス照射又は連続照射で照射することができる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0043】
上記実施の形態では、二次元コード10を絶縁体50の表面に形成する場合について説明したが、主体金具30上に形成することも当然可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 :スパークプラグ
10 :二次元コード
11 :第1層
12 :第2層
13 :中間形成層
21 :中心電極
30 :主体金具
41 :接地電極
50 :絶縁体
図1
図2
図3