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特許7655835電子写真機器用帯電ロールおよび電子写真機器用帯電ロールの製造方法
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  • 特許-電子写真機器用帯電ロールおよび電子写真機器用帯電ロールの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-25
(45)【発行日】2025-04-02
(54)【発明の名称】電子写真機器用帯電ロールおよび電子写真機器用帯電ロールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/02 20060101AFI20250326BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20250326BHJP
【FI】
G03G15/02 101
F16C13/00 B
F16C13/00 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021177940
(22)【出願日】2021-10-29
(65)【公開番号】P2023067019
(43)【公開日】2023-05-16
【審査請求日】2024-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154483
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 和寛
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 仁宏
(72)【発明者】
【氏名】村井 愛実
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-003032(JP,A)
【文献】特開2000-169763(JP,A)
【文献】特開2017-215358(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0321609(US,A1)
【文献】特開平10-338790(JP,A)
【文献】特開平04-037878(JP,A)
【文献】特開平09-269652(JP,A)
【文献】特開2002-154697(JP,A)
【文献】実開平06-040959(JP,U)
【文献】特開2018-132658(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0257216(US,A1)
【文献】特開2018-141131(JP,A)
【文献】特開2012-117027(JP,A)
【文献】特開2020-055901(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2023/0144220(US,A1)
【文献】特開2012-247775(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102012208453(DE,A1)
【文献】特開平10-268613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/02
G03G 15/16
F16C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、前記軸体の外周面上に形成された弾性体層と、前記弾性体層の外周面上に形成された表層と、を備え、
前記表層が、下記の(A)~(D)を含有する、電子写真機器用帯電ロール。
(A)比誘電率2.2以上2.5以下の、フッ素ポリマーおよびシリコーンポリマーから選択される1種以上のポリマー
(B)カーボンブラック
(C)カルボキシル基を有する、エステル型ポリウレタン系高分子分散剤およびポリエチレンイミン系高分子分散剤から選択される1種以上の高分子分散剤
(D)側鎖にポリエステル構造を有するポリアミン系高分子分散剤
【請求項2】
前記(B)のDBP吸収量が115cm/100g以上160cm/100g以下であり、前記(B)の比表面積が25m/g以上75m/g以下であり、前記(B)の平均粒径が35nm以上75nm以下である、請求項1に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項3】
前記表層は、表面粗さを形成する粗さ形成用粒子を含有し、前記粗さ形成用粒子は、カルボニル基および水酸基のいずれかまたは両方を有する、請求項1または請求項2に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項4】
前記(B)に対する前記(D)の含有量が、質量比で、1.5以上3.0以下である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項5】
前記(B)に対する前記(C)の含有量が、質量比で、1.5以上3.0以下である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項6】
前記(D)のポリエステル末端が、環状体である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項7】
前記(C)は、主鎖にポリアルキレンオキシド構造を有する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項8】
前記(C)のカルボキシル基は、第4級アミン構造を有するカルボン酸塩基である、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の電子写真機器用帯電ロールの製造方法であって、
前記表層は、前記(A)~(D)を含む表層組成物によって形成しており、
前記表層組成物は、前記(B)と前記(D)を混合した後に前記(C)を混合し、次いで前記(A)を混合することによって形成する、電子写真機器用帯電ロールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器において好適に用いられる電子写真機器用帯電ロールおよび電子写真機器用帯電ロールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真機器の帯電ロールにおいては、帯電量の向上を目的に、表層にカーボンブラックが配合されることがある。また、表層のバインダーとして、フッ素樹脂が用いられることがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-268613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
表層のバインダーとしてフッ素樹脂が用いられると、カーボンブラックとの相性が悪く、カーボンブラックの分散性が悪化し、放電が不均一化する。これにより、均一帯電性が損なわれる。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、帯電性および均一帯電性に優れる電子写真機器用帯電ロールおよび電子写真機器用帯電ロールの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電子写真機器用帯電ロールは、軸体と、前記軸体の外周面上に形成された弾性体層と、前記弾性体層の外周面上に形成された表層と、を備え、前記表層が、下記の(A)~(D)を含有するものである。
(A)比誘電率2.2以上2.5以下の、フッ素ポリマーおよびシリコーンポリマーから選択される1種以上のポリマー
(B)カーボンブラック
(C)カルボキシル基を有する、エステル型ポリウレタン系高分子分散剤およびポリエチレンイミン系高分子分散剤から選択される1種以上の高分子分散剤
(D)側鎖にポリエステル構造を有するポリアミン系高分子分散剤
【0007】
前記(B)のDBP吸収量は115cm/100g以上160cm/100g以下であり、前記(B)の比表面積は25m/g以上75m/g以下であり、前記(B)の平均粒径は35nm以上75nm以下であるとよい。前記表層は、表面粗さを形成する粗さ形成用粒子を含有し、前記粗さ形成用粒子は、カルボニル基および水酸基のいずれかまたは両方を有するとよい。前記(B)に対する前記(D)の含有量は、質量比で、1.5以上3.0以下であるとよい。前記(B)に対する前記(C)の含有量は、質量比で、1.5以上3.0以下であるとよい。前記(D)のポリエステル末端は、環状体であるとよい。前記(C)は、主鎖にポリアルキレンオキシド構造を有するとよい。前記(C)のカルボキシル基は、第4級アミン構造を有するカルボン酸塩基であるとよい。
【0008】
そして、本発明に係る電子写真機器用帯電ロールの製造方法は、前記表層が、前記(A)~(D)を含む表層組成物によって形成しており、前記表層組成物が、前記(B)と前記(D)を混合した後に前記(C)を混合し、次いで前記(A)を混合することによって形成するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る電子写真機器用帯電ロールによれば、軸体と、前記軸体の外周面上に形成された弾性体層と、前記弾性体層の外周面上に形成された表層と、を備え、前記表層が、上記の(A)~(D)を含有することから、帯電性および均一帯電性に優れる。
【0010】
前記(B)のDBP吸収量が115cm/100g以上160cm/100g以下であり、前記(B)の比表面積が25m/g以上75m/g以下であり、前記(B)の平均粒径が35nm以上75nm以下であると、前記(B)は、低抵抗で高静電容量を発現することができる。これにより、帯電性を向上することができる。
【0011】
前記表層が、表面粗さを形成する粗さ形成用粒子を含有し、前記粗さ形成用粒子が、カルボニル基および水酸基のいずれかまたは両方を有すると、誘電率の高い材料で粗さ形成用粒子が構成されるため、帯電性を向上することができる。
【0012】
前記(B)に対する前記(D)の含有量が、質量比で、1.5以上3.0以下であると、前記(D)による前記(B)の立体障害での分散効果に優れ、均一帯電性が向上する。
【0013】
前記(C)に対する前記(D)の含有量が、質量比で、1.5以上3.0以下であると、前記(C)による前記(B)の静電反発での分散効果に優れ、均一帯電性が向上する。
【0014】
前記(D)のポリエステル末端が環状体であると、より一層、立体障害での分散効果を向上することができる。
【0015】
前記(C)が主鎖にポリアルキレンオキシド構造を有すると、前記(C)の静電反発性が高まり、前記(C)による前記(B)の静電反発での分散効果が向上し、均一帯電性が向上する。
【0016】
前記(C)のカルボキシル基が第4級アミン構造を有するカルボン酸塩基であると、前記(C)の立体障害性が高まり、前記(C)による前記(B)の立体障害での分散効果が向上し、均一帯電性が向上する。
【0017】
そして、本発明に係る電子写真機器用帯電ロールの製造方法によれば、前記表層が、前記(A)~(D)を含む表層組成物によって形成しており、前記表層組成物が、前記(B)と前記(D)を混合した後に前記(C)を混合し、次いで前記(A)を混合することによって形成することから、帯電性および均一帯電性に優れる電子写真機器用帯電ロールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る電子写真機器用帯電ロールの外観模式図(a)と、そのA-A線断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る電子写真機器用帯電ロール(以下、単に帯電ロールということがある。)について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電子写真機器用帯電ロールの外観模式図(a)と、そのA-A線断面図(b)である。
【0020】
帯電ロール10は、軸体12と、軸体12の外周面上に形成された弾性体層14と、弾性体層14の外周面上に形成された表層16と、を備える。弾性体層14は、帯電ロール10のベースとなる層(基層)である。表層16は帯電ロール10の表面に現れる層となっている。
【0021】
軸体12は、導電性を有するものであれば特に限定されない。具体的には、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属製の中実体、中空体からなる芯金などを例示することができる。軸体12の表面には、必要に応じて、接着剤、プライマーなどを塗布しても良い。つまり、弾性体層14は、接着剤層(プライマー層)を介して軸体12に接着されていてもよい。接着剤、プライマーなどには、必要に応じて導電化を行っても良い。
【0022】
弾性体層14は、架橋ゴムを含有する。弾性体層14は、未架橋ゴムを含有する導電性ゴム組成物により形成される。架橋ゴムは、未架橋ゴムを架橋することにより得られる。未架橋ゴムは、極性ゴムであってもよいし、非極性ゴムであってもよい。
【0023】
極性ゴムは、極性基を有するゴムであり、極性基としては、クロロ基、ニトリル基、カルボキシル基、エポキシ基などを挙げることができる。極性ゴムとしては、具体的には、ヒドリンゴム、ニトリルゴム(NBR)、ウレタンゴム(U)、アクリルゴム(アクリル酸エステルと2-クロロエチルビニルエーテルとの共重合体、ACM)、クロロプレンゴム(CR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)などを挙げることができる。極性ゴムのうちでは、体積抵抗率が特に低くなりやすいなどの観点から、ヒドリンゴム、ニトリルゴム(NBR)がより好ましい。
【0024】
ヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリンの単独重合体(CO)、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド二元共重合体(ECO)、エピクロルヒドリン-アリルグリシジルエーテル二元共重合体(GCO)、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル三元共重合体(GECO)などを挙げることができる。
【0025】
ウレタンゴムとしては、分子内にエーテル結合を有するポリエーテル型のウレタンゴムを挙げることができる。ポリエーテル型のウレタンゴムは、両末端にヒドロキシル基を有するポリエーテルとジイソシアネートとの反応により製造できる。ポリエーテルとしては、特に限定されるものではないが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどを挙げることができる。ジイソシアネートとしては、特に限定されるものではないが、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどを挙げることができる。
【0026】
非極性ゴムとしては、シリコーンゴム(Q)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)などが挙げられる。
【0027】
架橋剤としては、硫黄架橋剤、過酸化物架橋剤、脱塩素架橋剤を挙げることができる。これらの架橋剤は、単独で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いても良い。
【0028】
硫黄架橋剤としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄、塩化硫黄、チウラム系加硫促進剤、高分子多硫化物などの従来より公知の硫黄架橋剤を挙げることができる。
【0029】
過酸化物架橋剤としては、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ケトンパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、ジアシルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイドなどの従来より公知の過酸化物架橋剤を挙げることができる。
【0030】
脱塩素架橋剤としては、ジチオカーボネート化合物を挙げることができる。より具体的には、キノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、6-メチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、6-イソプロピルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、5,8-ジメチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネートなどを挙げることができる。
【0031】
架橋剤の配合量としては、ブリードしにくいなどの観点から、未架橋ゴム100質量部に対して、好ましくは0.1~2質量部の範囲内、より好ましくは0.3~1.8質量部の範囲内、さらに好ましくは0.5~1.5質量部の範囲内である。
【0032】
架橋剤として脱塩素架橋剤を用いる場合には、脱塩素架橋促進剤を併用しても良い。脱塩素架橋促進剤としては、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7(以下、DBUと略称する。)もしくはその弱酸塩を挙げることができる。脱塩素架橋促進剤は、DBUの形態として用いても良いが、その取り扱い面から、その弱酸塩の形態として用いることが好ましい。DBUの弱酸塩としては、炭酸塩、ステアリン酸塩、2-エチルヘキシル酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩、フェノール樹脂塩、2-メルカプトベンゾチアゾール塩、2-メルカプトベンズイミダゾール塩などを挙げることができる。
【0033】
脱塩素架橋促進剤の含有量としては、ブリードしにくいなどの観点から、未架橋ゴム100質量部に対して、0.1~2質量部の範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.3~1.8質量部の範囲内、さらに好ましくは0.5~1.5質量部の範囲内である。
【0034】
弾性体層14には、導電性付与のため、導電剤を配合することができる。導電剤としては、電子導電剤、イオン導電剤が挙げられる。電子導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、導電性金属酸化物が挙げられる。導電性金属酸化物としては、導電性チタン酸化物、導電性亜鉛酸化物、導電性スズ酸化物などが挙げられる。イオン導電剤としては、4級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤などが挙げられる。また、弾性体層14には、必要に応じて、各種添加剤を適宜添加しても良い。添加剤としては、滑剤、加硫促進剤、老化防止剤、光安定剤、粘度調整剤、加工助剤、難燃剤、可塑剤、発泡剤、充填剤、分散剤、消泡剤、顔料、離型剤などを挙げることができる。
【0035】
弾性体層14は、架橋ゴムの種類、イオン導電剤の配合量、電子導電剤の配合などにより、所定の体積抵抗率に調整することができる。弾性体層14の体積抵抗率は、用途などに応じて10~1010Ω・cm、10~10Ω・cm、10~10Ω・cmの範囲などに適宜設定すればよい。
【0036】
弾性体層14の厚みは、特に限定されるものではなく、用途などに応じて0.1~10mmの範囲内などで適宜設定すればよい。
【0037】
表層16は、下記の(A)~(D)を含有する。
(A)比誘電率2.2以上2.5以下の、フッ素ポリマーおよびシリコーンポリマーから選択される1種以上のポリマー
(B)カーボンブラック
(C)カルボキシル基を有する、エステル型ポリウレタン系高分子分散剤およびポリエチレンイミン系高分子分散剤から選択される1種以上の高分子分散剤
(D)側鎖にポリエステル構造を有するポリアミン系高分子分散剤
【0038】
(A)は、フッ素ポリマーおよびシリコーンポリマーから選択される1種以上のポリマーである。このように、(A)が低誘電率で低摩耗性の材料であることで、トナーやトナー外添剤の汚れを抑えることができる。一方で、(A)が低誘電率であると、(B)カーボンブラックとの相溶性が悪く、(B)カーボンブラックの分散性が低下する。これにより、均一帯電性が低下する。このため、本発明においては、上記(C)(D)の2種類の性質の異なる分散剤を併用する。これにより、(A)のような低誘電率のバインダーを用いる場合でも、(B)カーボンブラックの分散性を高くして、均一帯電性に優れるものとすることができる。
【0039】
(A)において、フッ素ポリマーは、フッ素基を含むポリマー(重合体)である。フッ素ポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)などが挙げられる。シリコーンポリマーは、オルガノポリシロキサンとして通常広く知られているものを用いることができる。シリコーンポリマーは、変性基を有するものであってもよい。変性シリコーンポリマーとしては、フェニル変性シリコーン、エーテル変性シリコーン、エステル変性シリコーンなどが挙げられる。
【0040】
(A)のフッ素ポリマーおよびシリコーンポリマーから選択される1種以上のポリマーは、比誘電率2.2以上2.5以下である。このように(A)が低誘電率で低摩耗性の材料であることで、トナーやトナー外添剤の汚れを抑えることができる。また、(A)の比誘電率が上記範囲内であることで、帯電ロール10は優れた帯電性を発揮することができる。(A)の比誘電率が2.2未満であると、(A)の静電容量が小さくなり、帯電性が悪くなる。そして、この観点から、(A)の比誘電率としては、好ましくは2.3以上である。一方、(A)の比誘電率が2.5超であると、(A)の双極子モーメントが多くなり、(C)や(D)の分散剤が(A)に付着しやすくなって、(C)や(D)と(B)の相互作用が小さくなり、(B)カーボンブラックの分散性が低下する。また、(A)の比誘電率が2.5超であると、帯電性の環境依存性が大きくなって環境依存性が悪くなる。そして、この観点から、(A)の比誘電率としては、好ましくは2.4以下である。
【0041】
(B)カーボンブラックは、帯電性の向上に寄与する。(B)カーボンブラックとしては、帯電性の向上などの観点から、低抵抗で高静電容量を発現するものとして、DBP吸収量、比表面積および平均粒径が所定範囲内であることが好ましい。
【0042】
(B)カーボンブラックのDBP吸収量は、静電容量の向上の観点から、好ましくは115cm/100g以上、より好ましくは120cm/100g以上、さらに好ましくは130cm/100g以上である。一方、(B)カーボンブラックのDBP吸収量は、放電性の向上の観点から、好ましくは160cm/100g以下、より好ましくは150cm/100g以下、さらに好ましくは140cm/100g以下である。カーボンブラックのDBP吸収量は、JIS K6221に準拠してカーボンブラック100gが吸収するDBP(ジブチルフタレート)量から算出される。
【0043】
(B)カーボンブラックは、静電容量の向上などの観点から、比較的、比表面積が小さく、粒径が大きいものが好ましい。具体的には、(B)カーボンブラックは、比表面積が、好ましくは75m/g以下、より好ましくは70m/g以下、さらに好ましくは60m/g以下である。また、平均粒径が、好ましくは35nm以上、より好ましくは40nm以上である。一方、(B)カーボンブラックは、低抵抗の観点から、比表面積が、好ましくは25m/g以上、より好ましくは30m/g以上である。また、平均粒径が、好ましくは75nm以下、より好ましくは70nm以下、さらに好ましくは60nm以下である。カーボンブラックの比表面積は、BET法にて測定される値である。カーボンブラックの平均粒径は、カーボンブラックを電子顕微鏡で観察して求めた算術平均径で表される。
【0044】
(B)カーボンブラックの含有量は、静電容量を確保しやすいなどの観点から、(A)100質量部に対し、5質量部以上であることが好ましい。より好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上である。また、(B)カーボンブラックの含有量は、放電不足を抑えやすいなどの観点から、(A)100質量部に対し、75質量部以下であることが好ましい。より好ましくは70質量部以下、さらに好ましくは60質量部以下である。そして、(A)100質量部に対し、(B)カーボンブラックの含有量が5質量部以上75質量部以下であると、抵抗および静電容量を好適範囲に維持しやすい。
【0045】
(C)および(D)は、低誘電率の(A)における(B)カーボンブラックの分散性を向上するために併用して用いるものである。(C)(D)のいずれか一方では(A)における(B)の分散効果は不十分であり、均一帯電性を満足できない。
【0046】
(C)は、カルボキシル基を有する分散剤である。カルボキシル基は、カルボン酸(-COOH)およびカルボン酸塩(-COOM)の両方を含む。Mは、1価以上の金属もしくは第4級アミンを示す。(C)は、(B)カーボンブラックの表面に吸着し、カルボキシル基を有することで、電気的な斥力で(B)カーボンブラックの粒子どうしが凝集するのを抑え、(B)カーボンブラックの分散性を高める。カルボキシル基としては、第4級アミン構造を有するカルボン酸塩基が特に好ましい。(C)の立体障害性が高まり、(C)による(B)の立体障害での分散効果が向上し、均一帯電性が向上する。
【0047】
(C)は、ポリマーで構成される高分子分散剤である。脂肪酸や脂肪酸塩などの低分子の分散剤よりも分子量が大きいため、立体障害を利用した(B)カーボンブラックの分散効果が期待できる。高分子分散剤である(C)としては、エステル型ポリウレタン系高分子分散剤、ポリエチレンイミン系高分子分散剤などが挙げられる。これらは、(C)として1種単独で含まれていてもよいし、2種以上組み合わせられていてもよい。
【0048】
エステル型ポリウレタン系高分子分散剤は、エステル型ウレタン基(-NH-COO-)の持つ双極子モーメントが大きいため、大きな静電反発効果を得やすい。また、ポリエチレンイミン系高分子分散剤は、イミン基の持つ双極子モーメントの大きさとポリエチレンイミン中のNH基の数の多さから、大きな静電反発効果を得やすい。
【0049】
エステル型ポリウレタンは、分子内にエステル結合を有する。エステル型ポリウレタンは、ポリオール成分としてポリエステルポリオールを含む。ポリエステルポリオールとしては、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキシレンアジペート、エチレンアジペートとブチレンアジペート、カーボネートジオール等との共重合体などが挙げられる。ポリウレタンのイソシアネート成分としては、特に限定されるものではないが、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)などが挙げられる。
【0050】
(C)は、主鎖にポリアルキレンオキシド構造を有するとよい。主鎖にポリアルキレンオキシド構造を有すると、より静電反発性が高まる。ポリアルキレンオキシド構造としては、ポリエチレンオキシド構造、ポリプロピレンオキシド構造などが挙げられる。
【0051】
カルボキシル基を有するエステル型ポリウレタン系高分子分散剤としては、Lubrizol製のソルスパース75500、76500、82500、83500などが挙げられる。カルボキシル基を有するポリエチレンイミン系高分子分散剤としては、Lubrizol製のソルスパース32500などが挙げられる。
【0052】
(C)の含有量は、(B)に対し、質量比で、1.5以上3.0以下であることが好ましい。上記含有量が3.0以下であることで、(C)どうしの凝集が抑えられ、帯電性の低下が抑えられる。また、この観点から、上記含有量は、より好ましくは2.5以下である。一方、上記含有量が1.5以上であることで、(C)の静電反発による(B)の分散効果を大きくすることができる。また、この観点から、上記含有量は、より好ましくは2.0以上である。
【0053】
(D)は、ポリアミン系高分子分散剤である。ポリアミンの分子鎖末端のアミノ基は、カーボンブラック表面のカルボキシル基や水酸基との親和性が良く、優先的にカーボンブラック表面に吸着することができる。(D)は、ポリアミン系高分子分散剤(ポリマーで構成される高分子分散剤)であることで、立体障害で(B)カーボンブラックの粒子どうしが凝集するのを抑え、(B)カーボンブラックの分散性を高める。
【0054】
(D)は、側鎖にポリエステル構造を有する。これにより、立体障害での分散効果をより向上することができる。また、そのポリエステル末端が環状体であると、より一層、立体障害での分散効果を向上することができる。ポリエステル末端の環状体としては、カプロラクトンなどが挙げられる。
【0055】
側鎖にポリエステル構造を有するポリアミン系高分子分散剤としては、Lubrizol製のソルスパース13240、24000などが挙げられる。また、味の素ファインテクノ製のアジスパーPB821などが挙げられる。
【0056】
(D)の含有量は、(B)に対し、質量比で、1.5以上3.0以下であることが好ましい。上記含有量が3.0以下であることで、(B)カーボンブラックの表面に(C)が付着できる部分が確保されやすく、(C)による(B)の分散効果が確保されやすい。これにより、(C)と(D)の併用効果が確保されやすい。また、この観点から、上記含有量は、より好ましくは2.5以下である。一方、上記含有量が1.5以上であることで、(D)の立体障害による(B)の分散効果を大きくすることができる。また、この観点から、上記含有量は、より好ましくは2.0以上である。
【0057】
そして、(C)と(D)の量比としては、(C)による(B)の分散効果と(D)による(B)の分散効果が両立されやすいなどの観点から、(D)の含有量は、(C)に対し、質量比で、0.6以上1.5以下であることが好ましい。
【0058】
表層16は、粗さ形成用粒子を含んでいてもよい。粗さ形成用粒子は、表層16の表面に粗さを付与するための粒子である。つまり、表層16の表面に凹凸を付与するための粒子である。表層16の表面凹凸は、感光体と帯電ロール10との間における放電空間を増加させ、放電を促す。これにより、帯電性を向上させ、横スジやムラなどの画像不具合を抑えることができる。
【0059】
粗さ形成用粒子には、樹脂製粒子などが用いられる。粗さ形成用粒子の材料は、特に限定されるものではない。粗さ形成用粒子は、カルボニル基を有するポリマーや水酸基を有するポリマーで構成されることが好ましい。カルボニル基を有するポリマーや水酸基を有するポリマーは、比較的誘電率の高い材料であり、帯電ロール10が優れた帯電性を確保しやすいからである。カルボニル基を有するポリマーとしては、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、シリコーングラフトアクリルポリマー、アクリルグラフトシリコーンポリマー、ウレタンゴムなどを挙げることができる。水酸基を有するポリマーとしては、エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0060】
粗さ形成用粒子の大きさは、特に限定されるものではないが、均一な帯電性を確保しやすいなどの観点から、平均粒子径3.0μm以上50μm以下のものが好ましい。より好ましくは、平均粒子径5.0μm以上30μm以下のものが好ましい。粗さ形成用粒子の平均粒子径は、表層16の表面をレーザー顕微鏡にて観察し、表面観察時に見える粗さ形成用粒子の直径を粒径とし、任意の20点の平均で表す。
【0061】
粗さ形成用粒子の表層16における含有量は、特に限定されるものではないが、均一な帯電性を確保しやすいなどの観点から、表層16のバインダーポリマー(A)100質量部に対し、3質量部以上50質量部以下であることが好ましい。より好ましくは5質量部以上30質量部以下である。
【0062】
表層16の体積抵抗率は、帯電性などの観点から、半導電領域に設定するとよい。具体的には、例えば、1.0×10~1.0×1010Ω・cmの範囲内に設定するとよい。体積抵抗率は、JIS K6911に準拠して測定することができる。表層16の厚さは、特に限定されるものではなく、0.1~3.0μmの範囲などに設定するとよい。表層16の厚さは、レーザー顕微鏡(例えばキーエンス製「VK-9510」など)を用いて断面を観察することにより測定することができる。例えば任意の位置の5か所について、弾性体層14の表面から表層16の表面までの距離をそれぞれ測定し、その平均によって表すことができる。
【0063】
帯電ロール10は、軸体の外周面上に弾性体層14を形成し、弾性体層14の外周面上に表層16を形成することにより、作製することができる。
【0064】
弾性体層14は、例えば、次のようにして形成することができる。まず、軸体をロール成形金型の中空部に同軸的に設置し、未架橋の弾性体層形成用組成物を注入して、加熱・硬化(架橋)させた後、脱型するか、あるいは、軸体の表面に未架橋の弾性体層形成用組成物を押出成形するなどにより、軸体の外周に弾性体層14を形成する。
【0065】
表層16を形成するには、表層組成物を用いる。表層組成物は、上記(A)~(D)を含む。表層組成物は、(B)と(D)を混合した後に(C)を混合し、次いで(A)を混合することによって形成することができる。(B)に対し、(C)よりも先に(D)を混合することで、(B)に対し(C)と(D)を適切に吸着させることができる。(B)に対し、(D)よりも先に(C)を混合すると、(B)に対し(D)が吸着しにくくなって、(D)による(B)の分散効果が得られにくい。
【0066】
表層組成物は、粘度を調整するなどの観点から、メチルエチルケトン、トルエン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン(MIBK)、THF、DMFなどの有機溶剤や、メタノール、エタノールなどの水溶性溶剤などの溶剤を適宜含んでいても良い。
【0067】
表層16は、弾性体層14の外周面上に表層組成物を塗工するなどの方法により、形成できる。塗工方法としては、ロールコーティング法や、ディッピング法、スプレーコート法などの各種コーティング法を適用することができる。塗工された表層16には、必要に応じて、紫外線照射や熱処理を行なっても良い。
【0068】
以上の構成の帯電ロール10によれば、表層16において、(B)カーボンブラックの分散剤として2種類の分散剤(C)(D)を併用したことで、カーボンブラックが分散しにくいバインダーであるフッ素ポリマーやシリコーンポリマーにおいても、カーボンブラックが良分散できる。そして、カーボンブラックによる帯電効果とそのカーボンブラックの分散効果によって、帯電ロール10は、帯電性および均一帯電性に優れる。
【実施例
【0069】
以下、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0070】
(実施例1)
<導電性ゴム組成物の調製>
イソプレンゴム100質量部に対し、カーボンブラック30質量部、酸化亜鉛6質量部、ステアリン酸2質量部、硫黄1質量部、チアゾール系加硫促進剤0.5質量部、チラウム系加硫促進剤0.5質量部、重質炭酸カルシウム50質量部を配合し、50℃ に温度調節した密閉型ミキサーを用いて10分間混練し、導電性ゴム組成物を調製した。
【0071】
導電性ゴム組成物の材料として、以下の材料を準備した。
・イソプレンゴム(IR):JSR製「JSR IR2200」
・カーボンブラック:キャボットジャパン製「ショウブラックN762」
・酸化亜鉛:堺化学工業製「酸化亜鉛2種」
・ステアリン酸:日本油脂製「ステアリン酸さくら」
・硫黄:鶴見化学工業製「粉末硫黄」
・チアゾール系加硫促進剤:大内新興化学工業製「ノクセラーDM」
・チラウム系加硫促進剤:大内新興化学工業製「ノクセラーTRA」
・重質炭酸カルシウム:白石カルシウム製「ホワイトンB」、平均粒子径3.6μm
【0072】
<弾性体層の作製>
成形金型(パイプ状)に芯金(直径8mm)をセットし、上記組成物を注入し、180℃で30分加熱した後、冷却、脱型して、芯金の外周に、厚さ1.9mmの導電性ゴム弾性体からなる弾性体層を成形した。
【0073】
<表層の作製>
表1に記載の配合組成(質量部)にて、カーボンブラック<B-1>に対し、芳香環を有する分散剤<D-1>を混合し、次いで、カルボキシル基を有する分散剤<C-1>を混合し、次いで、バインダー<A-1>および粗さ形成用粒子<1>を混合し、メチルエチルケトン(MEK)200質量部を加え、所定の攪拌速度で混合攪拌することにより、表層組成物を調製した。次いで、攪拌を続けながら、この表層組成物を弾性体層の外周面にロールコートし、熱処理を施すことにより、弾性体層の外周に厚さ1.0μmの表層を形成した。これにより、実施例1の帯電ロールを作製した。
【0074】
(実施例2~11、比較例1~4)
表層組成物を表1に記載の配合組成とした以外は実施例1と同様にして、帯電ロールを作製した。
【0075】
表層組成物の材料として、以下の材料を準備した。
(バインダー)
・A-1:シリコーンポリマー(比誘電率2.2)、信越化学工業製「SLK」
・A-2:フッ素ポリマー(比誘電率2.5)、ダイキン製「ネオフロンPCTFE」
・X-1:フッ素ポリマー(比誘電率2.1)、ダイキン製「ネオフロンPFA」
・X-2:フッ素ポリマー(比誘電率2.6)、ダイキン製「ネオフロンETFE」
(カーボンブラック)
・B-1(DBP吸収量124ml/100g、BET比表面積43m/g、平均粒径41nm):旭カーボン製「旭♯60H(N-568)」
・B-2(DBP吸収量160ml/100g、BET比表面積75m/g、平均粒径35nm):デンカ製「デンカブラック」
・B-3(DBP吸収量115ml/100g、BET比表面積42m/g、平均粒径44nm):東海カーボン製「シーストSO」
・B-4(DBP吸収量155ml/100g、BET比表面積25m/g、平均粒径75nm):東海カーボン製「シーストGFY」
・B-5(DBP吸収量125ml/100g、BET比表面積126m/g、平均粒径25nm):東海カーボン製「シースト7HM」
・Y-1(DBP吸収量175ml/100g、BET比表面積165m/g、平均粒径20nm):三菱化学製「♯3400B」
・Y-2(DBP吸収量58ml/100g、BET比表面積180m/g、平均粒径18nm):三菱化学製「♯1000」
・Y-3(DBP吸収量360ml/100g、BET比表面積800m/g、平均粒径32nm):ケッチェンブラックインターナショナル製「ケッチェンEC300J」
(分散剤)
・C-1:カルボキシル基を有するエステル型ポリウレタン系高分子分散剤、Lubrizol製「ソルスパース75500」
・C-2:カルボキシル基を有するポリエチレンイミン系高分子分散剤、Lubrizol製「ソルスパース32500」
・D-1:側鎖にポリエステル構造を有するポリアミン系高分子分散剤、Lubrizol製「ソルスパース24000」
・D-2:側鎖にポリエステル構造を有するポリエチレンイミン系高分子分散剤、味の素ファインテクノ製「アジスパーPB821」
・Z-1:カルボキシル基を有していないエステル型ポリウレタン系高分子分散剤、Lubrizol製「ソルスパース32600」
・Z-2:側鎖にポリエステル構造を有していないポリアミン系高分子分散剤、楠本化成製「ディスパロンDA-234」
(粗さ形成用粒子)
・PMMA:綜研化学製「ケミスノーMX3000」、平均粒径30μm
・エポキシ:東レ製「トレパールEP」、平均粒径30μm
・ウレタン:根上工業製「アートパールC200」、平均粒径30μm
【0076】
作製した帯電ロールについて、下記の画像評価を行った。
【0077】
(白点:カーボンブラック分散性の評価)
作製した帯電ロールを実機(RICOH製「MP C6004」)のユニット(ブラック)に取り付け、10℃×10%RH環境下にて25%濃度ハーフトーンにて画出しを行い、50万枚耐久後の評価を行った。画像に白点がなかったものを特に良好「◎」、画像に白点は発見されたが許容範囲内であるものを良好「〇」、画像に白点が発見され、許容範囲外であるものを不良「×」とした。
【0078】
(黒点:分散剤Cの分散性の評価)
作製した帯電ロールを実機(RICOH製「MP C6004」)のユニット(ブラック)に取り付け、10℃×10%RH環境下にて25%濃度ハーフトーンにて画出しを行い、50万枚耐久後の評価を行った。画像に黒点がなかったものを特に良好「◎」、画像に黒点は発見されたが許容範囲内であるものを良好「〇」、画像に黒点が発見され、許容範囲外であるものを不良「×」とした。
【0079】
(カブリ:比誘電率 低)
作製した帯電ロールを実機(RICOH製「MP C6004」)のユニット(ブラック)に取り付け、10℃×10%RH環境下にて25%濃度ハーフトーンにて画出しを行い、50万枚耐久後の評価を行った。画像にカブリがなかったものを特に良好「◎」、画像にカブリは発見されたが許容範囲内であるものを良好「〇」、画像にカブリが発見され、許容範囲外であるものを不良「×」とした。
【0080】
(白スジ: 比誘電率 高)
作製した帯電ロールを実機(RICOH製「MP C6004」)のユニット(ブラック)に取り付け、35℃×80%RH環境下にて25%濃度ハーフトーンにて画出しを行い、50万枚耐久後の評価を行った。画像に白スジがなかったものを特に良好「◎」、画像に白スジは発見されたが許容範囲内であるものを良好「〇」、画像に白スジが発見され、許容範囲外であるものを不良「×」とした。
【0081】
【表1】
【0082】
比較例1は、表層のバインダーポリマーの比誘電率が低すぎるため、静電容量が小さくなり、帯電性が悪いため、カブリが生じている。比較例2は、表層のバインダーポリマーの比誘電率が高すぎるため、バインダーポリマーと分散剤Cの相溶性が高すぎて、カーボンブラックの分散効果が低下し、許容範囲外の白点が生じている。また、帯電性の環境依存性が高くなり、高温高湿環境下(LL環境下)において白スジが発生している。比較例3は、所定のバインダーポリマーにおいて、カーボンブラックに対し、側鎖にポリエステル構造を有するポリエチレンイミン系高分子分散剤Dは配合しているが、カルボキシル基を有する分散剤Cは配合していない。このため、カーボンブラックの分散性が悪く、許容範囲外の白点が生じている。比較例4は、所定のバインダーポリマーにおいて、カーボンブラックに対し、カルボキシル基を有する分散剤Cは配合しているが、側鎖にポリエステル構造を有するポリエチレンイミン系高分子分散剤Dは配合していない。このため、カーボンブラックの分散性が悪く、許容範囲外の白点が生じている。
【0083】
一方、実施例は、表層が、(A)比誘電率2.2以上2.5以下の、フッ素ポリマーおよびシリコーンポリマーから選択される1種以上のポリマー、(B)カーボンブラック、(C)カルボキシル基を有する、エステル型ポリウレタン系高分子分散剤およびポリエチレンイミン系高分子分散剤から選択される1種以上の高分子分散剤、(D)側鎖にポリエステル構造を有するポリアミン系高分子分散剤を含有することから、カーボンブラックの分散性に優れ、均一帯電性および帯電性に優れることがわかる。
【0084】
そして、実施例どうしの比較から(実施例1~2と実施例4~6)、カーボンブラックのDBP吸収量、比表面積、平均粒径が所定範囲内であると、画像にカブリもみられず、低抵抗で高静電容量であり、帯電性により優れることがわかる。そして、実施例どうしの比較から(実施例1~3と実施例7~8)、(B)に対する(C)の含有量が所定範囲内であると、画像に黒点もみられず、帯電性により優れることがわかる。また、画像に白点もみられず、均一帯電性により優れることもわかる。そして、実施例どうしの比較から(実施例1~3と実施例9~10)、(B)に対する(D)の含有量が所定範囲内であると、画像に白点もみられず、均一帯電性により優れることもわかる。
【0085】
以上、本発明の実施形態・実施例について説明したが、本発明は上記実施形態・実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0086】
10 帯電ロール
12 軸体
14 弾性体層
16 表層
図1