(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-25
(45)【発行日】2025-04-02
(54)【発明の名称】インデノカルバゾール環を有する化合物からなる有機薄膜を備える光電変換素子
(51)【国際特許分類】
H10K 30/60 20230101AFI20250326BHJP
H10K 39/32 20230101ALI20250326BHJP
H10K 30/86 20230101ALI20250326BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20250326BHJP
C07D 209/86 20060101ALN20250326BHJP
C07D 209/70 20060101ALN20250326BHJP
C07D 209/96 20060101ALN20250326BHJP
【FI】
H10K30/60
H10K39/32
H10K30/86
H10K85/60
C07D209/86
C07D209/70
C07D209/96
(21)【出願番号】P 2021516113
(86)(22)【出願日】2020-04-20
(86)【国際出願番号】 JP2020017107
(87)【国際公開番号】W WO2020218264
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2019081340
(32)【優先日】2019-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樺澤 直朗
(72)【発明者】
【氏名】島 大和
(72)【発明者】
【氏名】北原 秀良
(72)【発明者】
【氏名】篠田 美香
(72)【発明者】
【氏名】泉田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】三枝 優太
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0033296(US,A1)
【文献】特表2015-517212(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03316335(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0222160(US,A1)
【文献】特開2005-250351(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0002156(KR,A)
【文献】国際公開第2017/081831(WO,A1)
【文献】特開2017-174954(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0181527(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 30/00-99/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、第1バッファ層と光電変換層と第2電極とがこの順で積層され、該第1バッファ層が、下記一般式(2)又は(3)で表されるインデノカルバゾール環構造を有する化合物を含む有機薄膜
であり、光電変換層がp型有機半導体及びn型有機半導体の混合膜である光電変換素子
を備える撮像素子。
【化1】
(式中、Ar
1及びAr
4は、相互に同一でも異なってもよく、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族複素環基又は置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。
R
1~R
9、R
12~R
18は、水素原子を表す。
R
10及びR
11は、相互に同一でも異なってもよく、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し、単結合を介して互いに結合して環を形成してもよい。)
【化2】
(式中、Ar
1は、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族複素環基又は置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。
R
1~R
9、R
19~R
26は、水素原子を表す。
R
10及びR
11は、相互に同一でも異なってもよく、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し、単結合を介して互いに結合して環を形成してもよい。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の光電変換素子に適した有機薄膜に関するものであり、詳しくはインデノカルバゾール環構造を有する化合物からなる有機薄膜を備える光電変換素子、特に撮像素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子は、例えば太陽電池や光センサー等に広く利用されている。その中でも撮像素子であるイメージセンサーは、テレビカメラやスマートフォン搭載のカメラだけでなく、運転支援システム用途にも用いられ始めるなど、用途、市場共に広がりをみせている。
【0003】
これまでの撮像素子には、Si膜やSe膜といった無機材料が使用されており、その撮像方法としては、プリズムを用いて光を三原色に分ける3板式と、カラーフィルターを用いる単板式の2つが主流であった。しかし、3板式は、光の利用率は高いもののプリズムを使用するため小型化が難しく、単坂式は、プリズムを使用しないため小型化は比較的容易であるが、代わりにカラーフィルターを使用するため解像度が悪く、光の利用率も低かった(非特許文献2)。
【0004】
有機物は、無機物と比較して特定波長の光をよく吸収するため、それぞれの波長に合わせた材料を組み合わせることで、プリズムを使用せずとも三原色をそれぞれ効率よく利用できる撮像素子を構築することができる。そのため光の利用効率が高く、小型の撮像素子を作ることが可能となる。また、無機物では達成することのできないフレキシブル性や、作成プロセスにおいての塗布による大面積化といった価値を付加できる可能性がある(非特許文献1)。
【0005】
このようなことから、有機物を用いた光電変換素子は、次世代の撮像素子への展開が期待されており、いくつかのグループから報告がなされている。例えば、キナクドリン、キナゾリン誘導体を光電変換素子に用いた例(特許文献3)、ベンゾチエベンゾチオフェン誘導体を光電変換素子に用いた例(特許文献4)、インドロカルバゾールを光電変換素子に用いた例(特許文献5)などがある。一般的に有機撮像素子は、高コントラスト化、省電力化を目的としており、暗電流の低減を目指すことによって性能が向上すると考えられている。そこで、暗時の変換部からのリーク電流を減らすため、光電変換部と電極部間に正孔ブロック層又は電子ブロック層を挿入する手法が用いられることもある。
【0006】
正孔ブロック層及び電子ブロック層を設けることは、有機エレクトロニクス分野で一般的に使用される手法である。これらの層は、それぞれデバイスの構成膜中において、電極又は導電性を有する膜と、それ以外の膜との界面に配置され、正孔又は電子の逆移動を制御しながら、必要な電荷は速やかに移動できるようにするためのものである。
【0007】
またそれに加え、Tgが140℃以上であるブロッキング材料を含有することを特徴とした光電変換素子が提案されているように(特許文献1)、有機ELといった他の有機エレクトロニクスデバイスと異なり、光電変換素子用途では高い熱安定性が求められているが、これまで十分な性能を有しているとはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】US9085537
【文献】US9196837
【文献】特開2007-234651号公報
【文献】特開2018-170487号公報
【文献】US20190288040
【文献】US20190081251
【非特許文献】
【0009】
【文献】Adv.Mater.28,4766(2016)
【文献】映像情報学会メディア協会誌、60,3,291(2006)
【発明の概要】
【0010】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、優れた耐熱性、電荷輸送性を持つ化合物を利用した光電変換素子、及びこれを使用した撮像素子を提供することを主目的とする。
【0011】
そこで本発明者らは、上記の目的を達成するために、カルバゾール骨格が高い電荷輸送性を持ち、さらに耐熱性に優れているということに着目し、さらなる耐熱性の向上を目指して鋭意検討を行った結果、インデノカルバゾール環構造を有する特定の化合物を含む有機薄膜が前記課題を解決するものであることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、以下の各項に係るものである。
1) 下記一般式(1)で表されるインデノカルバゾール環構造を有する化合物を含む有機薄膜を備える光電変換素子。
【0013】
【化1】
(式中、Aは単結合、2価の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、2価の置換若しくは無置換の芳香族複素環基又は2価の置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基を表し、Ar
1、Ar
2及びAr
3は、相互に同一でも異なってもよく、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族複素環基又は置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。
AとAr
2又はAr
2とAr
3は、単結合、置換若しくは無置換のメチレン基、酸素原子又は硫黄原子を介して、互いに結合して環を形成してもよい。
R
1~R
9は、相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族複素環基、置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基又は置換若しくは無置換のアリールオキシ基を表し、単結合、置換若しくは無置換のメチレン基、酸素原子又は硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。
R
10及びR
11は、相互に同一でも異なってもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族複素環基、置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基又は置換若しくは無置換のアリールオキシ基を表し、単結合、置換若しくは無置換のメチレン基、酸素原子又は硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。)
【0014】
2) 前記インデノカルバゾール環構造を有する化合物が、下記一般式(2)で表される化合物である、1)に記載の光電変換素子。
【0015】
【化2】
(式中、Ar
1及びAr
4は、相互に同一でも異なってもよく、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族複素環基又は置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。
R
1~R
9、R
12~R
18は、相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族複素環基、置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基又は置換若しくは無置換のアリールオキシ基を表し、単結合、置換若しくは無置換のメチレン基、酸素原子又は硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。
R
10及びR
11は、相互に同一でも異なってもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族複素環基、置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基又は置換若しくは無置換のアリールオキシ基を表し、単結合、置換若しくは無置換のメチレン基、酸素原子又は硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。)
【0016】
3) 前記インデノカルバゾール環構造を有する化合物が、下記一般式(3)で表される化合物である、1)に記載の光電変換素子。
【0017】
【化3】
(式中、Ar
1は、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族複素環基又は置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。
R
1~R
9、R
19~R
26は、相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族複素環基、置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基又は置換若しくは無置換のアリールオキシ基を表し、単結合、置換若しくは無置換のメチレン基、酸素原子又は硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。
R
10及びR
11は、相互に同一でも異なってもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族複素環基、置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基又は置換若しくは無置換のアリールオキシ基を表し、単結合、置換若しくは無置換のメチレン基、酸素原子又は硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。)
【0018】
4) 第1電極と、第1バッファ層と光電変換層と第2電極とがこの順で積層され、該第1バッファ層が、前記インデノカルバゾール環構造を有する化合物を含む有機薄膜である、1)~3)のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【0019】
5) 1)~4)のいずれか1項に記載の光電変換素子を備える撮像素子。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】実施例16及び比較例1の(logJ-V)グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、上記一般式(1)で表されるインデノカルバゾール環構造を有する化合物を含む有機薄膜を使用することを特徴とする光電変換素子である。
【0022】
上記一般式(1)中の「2価の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基」、「2価の置換若しくは無置換の芳香族複素環基」、又は「2価の置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基」における「2価の芳香族炭化水素基」、「2価の芳香族複素環基」又は「2価の縮合多環芳香族基」としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、チエニレン基、フラニレン基及びフェナントレニレン基などを挙げることができる。さらに、炭素数6ないし30のアリーレン基及び炭素数2ないし30のヘテロアリーレン基から選択することもできる。
【0023】
上記一般式(1)中の「置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換若しくは無置換の芳香族複素環基」、又は「置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」又は「縮合多環芳香族基」としては、具体的に、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、スピロビフルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、フリル基、ピロリル基、チエニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、アクリジニル基及びカルボリニル基などを挙げることができる。さらに、炭素数6ないし30のアリール基及び炭素数2ないし30のヘテロアリール基から選択することもできる。
【0024】
上記一般式(1)中の「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」又は「置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基」における「炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基」、「炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」、又は「炭素原子数2ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基」としては、具体的に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基及び2-ブテニル基などを挙げることができる。
【0025】
上記一般式(1)中の「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキルオキシ基」又は「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基」における「炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキルオキシ基」又は「炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基」としては、具体的に、メチルオキシ基、エチルオキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、1-アダマンチルオキシ基及び2-アダマンチルオキシ基などを挙げることができる。
【0026】
上記一般式(1)中の「置換若しくは無置換のアリールオキシ基」における「アリールオキシ基」としては、具体的に、フェニルオキシ基、ビフェニリルオキシ基、ターフェニリルオキシ基、ナフチオキシル基、アントラセニルオキシ基及びフェナントレニルオキシ基などの炭素数6ないし30のアリールオキシ基を挙げることができる。
【0027】
上記一般式(1)中の「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」、「置換縮合多環芳香族基」、「置換メチレン基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキルオキシ基」、又は「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基」における「置換基」としては、具体的に、重水素原子、シアノ基、ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などのシリル基;メチル基、エチル基、プロピル基などの炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基;メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基などの炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキルオキシ基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニルオキシ基、トリルオキシ基などのアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基などのアリールアルキルオキシ基;フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、スピロビフルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基などの芳香族炭化水素基若しくは縮合多環芳香族基;ピリジル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボリニル基などの芳香族複素環基のような基を挙げることができ、これらの置換基は、さらに前記例示した置換基で置換されていてもよい。
【0028】
本発明においては、合成が容易であることから、上記一般式(1)中のR1~R9が水素原子であることが好ましい。
また、耐熱性及び電荷移動度の観点から、Ar1、Ar2及びAr3が置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基であることが好ましく、R10及びR11が置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基であることが好ましい。なお、R10及びR11は、単結合、置換若しくは無置換のメチレン基、酸素原子又は硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。
【0029】
耐熱性及び電荷移動度の観点から、本発明における好ましい実施形態の一つとして、Aが置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基である化合物が挙げられる。この場合、Ar2は、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基であり、AとAr2が、単結合、置換若しくは無置換のメチレン基、酸素原子又は硫黄原子を介して、互いに結合して環を形成していることが好ましい。
【0030】
上記一般式(1)中のAが置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基である化合物として、具体的には、上記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0031】
上記一般式(2)中の「置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換若しくは無置換の芳香族複素環基」、又は「置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」又は「縮合多環芳香族基」としては、上記一般式(1)の説明で例示した基が挙げられる。
【0032】
上記一般式(2)中の「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」又は「置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基」における「炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基」、「炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」、又は「炭素原子数2ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基」としては、上記一般式(1)の説明で例示した基が挙げられる。
【0033】
上記一般式(2)中の「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキルオキシ基」又は「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基」における「炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキルオキシ基」又は「炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基」としては、上記一般式(1)の説明で例示した基が挙げられる。
【0034】
上記一般式(2)中の「置換若しくは無置換のアリールオキシ基」における「アリールオキシ基」としては、上記一般式(1)の説明で例示した基が挙げられる。
【0035】
上記一般式(2)中の「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」、「置換縮合多環芳香族基」、「置換メチレン基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキルオキシ基」、又は「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基」における「置換基」としては、上記一般式(1)の説明で例示した基が挙げられる。
【0036】
本発明においては、耐熱性及び電荷移動度の観点から、上記一般式(2)中のAr1及びAr4が置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基であることが好ましく、炭素数6ないし30のアリール基であることがより好ましく、特に炭素数6ないし18のアリール基であることが好ましい。
同様の観点から、上記一般式(2)中のR10及びR11が置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基であることが好ましく、炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は無置換の芳香族炭化水素基であることがより好ましい。なお、R10及びR11は、単結合、置換若しくは無置換のメチレン基、酸素原子又は硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。
【0037】
また、合成が容易であることから、上記一般式(1)中のR1~R9及びR12~R18が水素原子であることが好ましい。
【0038】
耐熱性及び電荷移動度の観点から、本発明における好ましい実施形態の一つとして、上記一般式(1)中のAが単結合である化合物が挙げられる。この場合、Ar2とAr3は、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基であり、単結合、置換若しくは無置換のメチレン基、酸素原子又は硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していることが好ましく、Ar2とAr3が、無置換の芳香族炭化水素基であり、単結合を介して互いに結合して環を形成していることがより好ましい。
【0039】
上記一般式(1)中のAが単結合である化合物として、具体的には、上記一般式(3)で表される化合物が挙げられる。
【0040】
上記一般式(3)中の「置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換若しくは無置換の芳香族複素環基」、又は「置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」又は「縮合多環芳香族基」としては、上記一般式(1)の説明で例示した基が挙げられる。
【0041】
上記一般式(3)中の「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」又は「置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基」における「炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基」、「炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」、又は「炭素原子数2ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基」としては、上記一般式(1)の説明で例示した基が挙げられる。
【0042】
上記一般式(3)中の「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキルオキシ基」又は「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基」における「炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキルオキシ基」又は「炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基」としては、上記一般式(1)の説明で例示した基が挙げられる。
【0043】
上記一般式(3)中の「置換若しくは無置換のアリールオキシ基」における「アリールオキシ基」としては、上記一般式(1)の説明で例示した基が挙げられる。
【0044】
上記一般式(3)中の「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」、「置換縮合多環芳香族基」、「置換メチレン基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキルオキシ基」、又は「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基」における「置換基」としては、上記一般式(1)の説明で例示した基が挙げられる。
【0045】
本発明においては、耐熱性及び電荷移動度の観点から、上記一般式(3)中のAr1が置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基であることが好ましく、炭素数6ないし30のアリール基であることがより好ましく、特に炭素数6ないし18のアリール基であることが好ましい。
同様の観点から、上記一般式(3)中のR10及びR11が置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基であることが好ましく、炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は無置換の芳香族炭化水素基であることがより好ましい。なお、R10及びR11は、単結合、置換若しくは無置換のメチレン基、酸素原子又は硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。
【0046】
また、合成が容易であることから、上記一般式(1)中のR1~R9及びR19~R26が水素原子であることが好ましい。
【0047】
上記一般式(1)で表されるインデノカルバゾール環構造を有する化合物の中で、好ましい化合物の具体例を以下に示すが、本発明は、これらの化合物に限定されるものではない。
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
上述したインデノカルバゾール環構造を有する化合物は、それ自体公知の方法に準じて合成することができる(例えば特許文献2)。
【0054】
これらの化合物の精製は、カラムクロマトグラフによる精製、シリカゲル、活性炭、活性白土などによる吸着精製、溶媒による再結晶や晶析法などによって行うことができる。化合物の同定は、NMR分析によって行うことができる。物性値として、ガラス転移点(Tg)と仕事関数の測定を行うことが好ましい。ガラス転移点(Tg)は薄膜状態の安定性の指標となるものであり、仕事関数は正孔輸送性の指標となるものである。
【0055】
ガラス転移点(Tg)は、粉体を用いて高感度示差走査熱量計(ブルカー・エイエックスエス製、DSC3100S)によって測定することができる。
【0056】
仕事関数は、例えば、ITO基板の上に100nmの薄膜を作製して、イオン化ポテンシャル測定装置(住友重機械工業株式会社製、PYS-202)によって測定することができる。
【0057】
上記一般式(1)で表されるインデノカルバゾール環構造を有する化合物は、蒸着法、スピンコート法及びインクジェット法などの公知の方法によって有機薄膜を形成することができる。また、上記一般式(1)で表されるインデノカルバゾール環構造を有する化合物は、単独で成膜してもよいが、複数種を混合して成膜することもできる。さらに本発明の効果を損なわない範囲で、他の化合物と混合して成膜することもできる。
【0058】
上記一般式(1)で表されるインデノカルバゾール環構造を有する化合物を含む有機薄膜は、光電変換素子、特に撮像素子への使用に適している。光電変換素子の構成としては、例えば、順に第1電極(陽極)、第1バッファ層、光電変換層、第2電極(陰極)を有し、第1バッファ層が上記一般式(1)で表されるインデノカルバゾール環構造を有する化合物を含む有機薄膜である構成が挙げられる。このような多層構造においては層を追加することが可能であり、例えば、順に第1電極、第1バッファ層、光電変換層、第2バッファ層、第2電極を有する構成とすることもできる。
また、上記一般式(1)で表されるインデノカルバゾール環構造を有する化合物を含む有機薄膜は、光電変換層に使用することもできる。
【0059】
本発明の光電変換素子における光電変換層は、有機材料でも無機物でもよく、受光した光量に応じた信号電荷を発生することができればよい。光電変換層が有機材料の場合、その有機半導体膜は、一層であっても複数の層であってもよく、一層の場合はp型有機半導体膜、n型有機半導体膜、又はp型有機半導体及びn型有機半導体の混合膜(バルクヘテロ構造)が用いられる。また、複数の層である場合は、p型有機半導体膜、n型有機半導体膜、又はp型有機半導体及びn型有機半導体の混合膜のいずれか2つ以上を積層した構造であり、層間にバッファ層を挿入することも可能である。
【0060】
本発明の光電変換素子は、素子に含まれる第1バッファ層に上記一般式(1)で表されるインデノカルバゾール環構造を有する化合物を含む有機薄膜を用いることで、熱の負荷に対する安定性を得ることができる。
【0061】
図1及び
図2に、本発明の光電変換素子の構成例を示す。
図1及び
図2の光電変換素子において、光が照射されると光電変換層3が光励起され、正孔と電子がキャリア分離される。その後、正孔が取り出される第1電極が陽極1であり、電子が取り出される第2電極が陰極5である。
図1及び
図2は、光電変換層3と陽極1の間に第1バッファ層2を有し、光電変換層3と陰極5の間に第2バッファ層4を有する構成を示したものである。
また、図には示していないが、光電変換層3と第1バッファ層2との間に、さらに異なる層を挿入することもできる。
【0062】
p型有機半導体はドナー性の有機半導体であり、主に正孔輸送性の有機化合物に代表され、電子を供与しやすい性質がある化合物である。
p型有機半導体としては、特に限定されないが、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、テトラセン誘導体、ペンタセン誘導体、キナクリドン誘導体、クリセン誘導体、フルオランテン誘導体、フタロシアニン誘導体、サブフタロシアニン誘導体、複素環化合物を配位子とする金属錯体、ベンゾチオフェン湯胴体、ジナフトチエノチオフェン誘導体、ジアントラセノチエノチオフェン誘導体、ベンゾビスベンゾチオフェン誘導体、チエノビスベンゾチオフェン、ジベンゾチエノビスベンゾチオフェン誘導体、ジチエノベンゾジチオフェン誘導体、ジベンゾチエノジチオフェン誘導体、ベンゾジチオフェン誘導体、ナフトジチオフェン誘導体、アントラセノジチオフェン誘導体、テトラセノジチオフェン誘導体、ペンタセノジチオフェン誘導体に代表される知恵のアセン系材料やトリアリールアミン化合物、カルバゾール化合物といったアミン系誘導体、インデノカルバゾール誘導体などを挙げることができる。
【0063】
n型有機半導体は、アクセプター性有機半導体であり、主に電子輸送性有機化合物に代表され、電子を受容しやすい性質がある有機化合物である。さらに詳しくは、2種類の有機化合物を接触させたときに、より電子親和力の大きい方の有機化合物をいう。したがって、アクセプター性有機化合物は、電子受容性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン、アントラセン、フラーレン、フェナントレン、テトラセン、ピレン、ペリレン、フルオランテン、又はこれらの誘導体)、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含有する5ないし7員のヘテロ環化合物(例えばピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、イソキノリン、プテリジン、アクリジン、フェナジン、フェナントロリン、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、トリアゾロピリダジン、トリアゾロピリミジン、テトラザインデン、オキサジアゾール、イミダゾピリジン、ピラリジン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、ジベンズアゼピン、トリベンズアゼピン等)、ポリアリーレン化合物、フルオレン化合物、シクロペンタジエン化合物、シリル化合物、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体などが挙げられる。
なお、これに限らず、上記したように、ドナー性有機化合物として用いた有機化合物よりも電子親和力の大きな有機化合物であればアクセプター性有機半導体として用いることができる。
【0064】
陽極及び陰極としては、一般に電極として用いられている導電材料であれば特に制限はなく、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属硼化物、有機導電性化合物、及びこれらの混合物等が挙げられる。具体例としては、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化インジウムタングステン(IWO)、酸化チタン等の導電性金属酸化物、酸化窒化チタン(TiNxOx)、窒化チタン(TiN)等の金属窒化物、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機導電性化合物、これらとITOとの積層物、などが挙げられる。
【0065】
第2バッファ層が第2電極(陰極)と光電変換層との間に挿入されてもよいが、これに用いられる材料としては第1バッファ層に用いられる材料の仕事関数よりも深い材料が好ましい。
例えば、ピリジン、キノリン、アクリジン、インドール、イミダゾールベンズイミダゾール、フェナントロリンのような含窒素複素環を含む有機分子及び有機金属錯体で、さらに可視光領域の吸収が少ない材料が好ましい。また、5nmから20nm程度の薄膜で形成する場合には可視光領域に吸収を有するフラーレン及びその誘導体などを用いることもできる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明の実施の形態について、実施例により具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0067】
(実施例1)
<12,12-ジメチル-10-フェニル-7-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール;化合物(1-1)の合成>
窒素置換した反応容器に、N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-2-ブロモアニリン18.5g、酢酸カリウム6.98g、DMF95mlを加え、1時間窒素ガスを通気した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム1.18gを加えて加熱し、100℃で11時間攪拌した。反応液を室温まで冷却して、水300mlに注加した後、トルエン300mlで抽出した。有機層を水200mlで2回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、減圧下で濃縮することによって粗製物を得た。粗製物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:トルエン/n-ヘキサン)によって精製し、12,12-ジメチル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾールの淡黄色粉体7.9g(収率55.2%)を得た。
【0068】
得られた12,12-ジメチル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール7.8gと、ヨードベンゼン3.7ml、亜硫酸水素ナトリウム0.43g、銅粉0.17g、3,5-ジ(tert-ブチル)サリチル酸0.69g、炭酸カリウム5.71g、ドデシルベンゼン10mlを、窒素置換した反応容器に加えて加熱し、170℃で10時間攪拌した。100℃まで冷却し、トルエン100mlを加えて抽出した後、減圧下で濃縮し、さらにn-ヘキサン30mlを用いた結晶化によって、12,12-ジメチル-10-フェニル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾールの淡黄色粉体8.73g(収率88.3%)を得た。
【0069】
得られた12,12-ジメチル-10-フェニル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール7.5gと、DMF53mlを反応容器に加えた。氷冷下、N-ブロモコハク酸イミド3.72gを加えて9時間攪拌した後、さらに一晩放置した。水260mlを加え、ろ過を行うことによって、7-ブロモ-12,12-ジメチル-10-フェニル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾールの褐白色粉体8.67g(収率94.6%)を得た。
【0070】
得られた7-ブロモ-12,12-ジメチル-10-フェニル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール2.0gと、9-フェニル-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-9H-カルバゾール1.68g、トルエン/エタノール(4/1、v/v)の混合溶媒15ml、2M炭酸カリウム水溶液3.4mlを窒素置換した反応容器に加え、超音波を照射しながら30分間窒素ガスを通気した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.26gを加えて加熱し、73℃で5時間攪拌した。室温まで冷却した後、トルエン30ml、水20mlを加えて分液し、有機層を採取した。有機層を飽和食塩水により洗浄し、無水硫酸マグネシウムによる脱水を行ってから、減圧下で濃縮することによって粗製物を得た。粗製物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:トルエン/n-ヘキサン)によって精製し、12,12-ジメチル-10-フェニル-7-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾールの白色粉体1.5g(収率54.7%)を得た。
【0071】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(THF-d8)で以下の32個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.66(1H)、8.64(1H)、8.59(1H)、8.23-8.29(1H)、7.88-7.90(1H)、7.83-7.85(1H)、7.78-7.80(1H)、7.66-7.71(8H)、7.42-7.53(7H)、7.37-7.40(1H)、7.31-7.33(1H)、7.26-7.29(1H)、7.21-7.24(1H)、1.51(6H)
【0072】
(実施例2)
<7-[4-{(ビフェニル-4-イル)-フェニルアミノ}-フェニル]-12,12-ジメチル-10-フェニル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール;化合物(1-3)の合成>
窒素置換した反応容器に、実施例1で合成した7-ブロモ-12,12-ジメチル-10-フェニル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール3.0g、(ビフェニル-4-イル)-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボラン-2-イル)フェニル]-フェニルアミン3.7g、トルエン/エタノール(4/1、v/v)の混合溶媒50ml、2M炭酸カリウム水溶液10mlを加え、超音波を照射しながら30分間窒素ガスを通気した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.4gを加えて加熱し、73℃で8時間攪拌した。室温まで冷却し、析出する粗製物をろ過によって採取した。粗製物に1,2-ジクロロベンゼン140mlを加え、加熱しながら溶解し、不溶物をろ過によって除いた後、ろ液を減圧下、濃縮した。1,2-ジクロロベンゼン100mlを用いた再結晶による精製を行うことによって7-[4-{(ビフェニル-4-イル)-フェニルアミノ}-フェニル]-12,12-ジメチル-10-フェニル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾールの白色粉体2.7g(収率57.8%)を得た。
【0073】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(THF-d8)で以下の38個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.60(1H)、8.50(1H)、7.85(1H)、7.72-7.65(7H)、7.61(2H)、7.55(2H)、7.52(1H)、7.47(1H)、7.43-7.37(4H)、7.31-7.16(11H)、7.03(1H)、1.49(6H)
【0074】
(実施例3)
<7-[4-{ビス(ビフェニル-4-イル)アミノ}-フェニル]-12,12-ジメチル-10-フェニル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール;化合物(1-4)の合成>
窒素置換した反応容器に、実施例1で合成した7-ブロモ-12,12-ジメチル-10-フェニル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール3.0g、ビス(ビフェニル-4-イル)-[4-(4,4,5,5-テトラメチル[1,3,2]ジオキサボラン-2-イル)フェニル]アミン4.3g、トルエン/エタノール(4/1、v/v)の混合溶媒50ml、2M炭酸カリウム水溶液10mlを加え、超音波を照射しながら30分間窒素ガスを通気した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.4gを加えて加熱し、73℃で8時間攪拌した。室温まで冷却し、析出する粗製物をろ過によって採取した。粗製物に1,2-ジクロロベンゼン140mlを加え、加熱しながら溶解し、不溶物をろ過によって除いた後、ろ液を減圧下、濃縮した。1,2-ジクロロベンゼン100mlを用いた再結晶による精製を行うことによって7-[4-{ビス(ビフェニル-4-イル)アミノ}-フェニル]-12,12-ジメチル-10-フェニル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾールの白色粉体3.7g(収率71.6%)を得た。
【0075】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(THF-d8)で以下の42個の水素シグナルを検出した。δ(ppm)=8.60(1H)、8.52(1H)、7.85(1H)、7.75-7.57(15H)、7.53(1H)、7.47(1H)、7.43-7.38(6H)、7.32-7.22(10H)、1.49(6H)
【0076】
(実施例4)
<10-(ビフェニル-4-イル)-12,12-ジメチル-7-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール;化合物(1-5)の合成>
窒素置換した反応容器に、実施例1で合成した12,12-ジメチル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール35.5g、4-ブロモビフェニル35.0g、亜硫酸水素ナトリウム6.0g、銅粉2.4g、3,5-ジ(tert-ブチル)サリチル酸9.4g、炭酸カリウム31.2g、ドデシルベンゼン52mlを加えて加熱し、190℃で26時間攪拌した。120℃まで冷却し、トルエン35mlを加えて攪拌し、粗製物をろ過によって採取した。粗製物にトルエン1.6Lを加えて加熱し、110℃で抽出した後、室温まで冷却し、減圧下で濃縮した。メタノール120mlを用いた結晶化によって、10-(ビフェニル-4-イル)-12,12-ジメチル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾールの白色粉体48.5g(収率88.1%)を得た。
【0077】
得られた10-(ビフェニル-4-イル)-12,12-ジメチル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール42.5g、DMF2.5Lを反応容器に加え、70℃まで加熱して溶解した後、室温まで冷却し、N-ブロモコハク酸イミド17.4gを加えて7時間攪拌した。水2.5Lを加え、ろ過を行うことによって10-(ビフェニル-4-イル)-7-ブロモ-12,12-ジメチル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾールの白色粉体34.9g(収率69.5%)を得た。
【0078】
得られた10-(ビフェニル-4-イル)-7-ブロモ-12,12-ジメチル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール16.5g、9-フェニル-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-9H-カルバゾール14.2g、トルエン/エタノール(4/1、v/v)の混合溶媒250ml、2M炭酸カリウム水溶液48mlを窒素置換した反応容器に加え、超音波を照射しながら30分間窒素ガスを通気した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム1.9gを加えて加熱し、73℃で5時間攪拌した。室温まで冷却し、析出する粗製物をろ過によって採取した。粗製物に1,2-ジクロロベンゼン450mlを加え、加熱しながら溶解し、不溶物をろ過によって除いた後、ろ液を減圧下、濃縮した。1,2-ジクロロベンゼン150mlとn-ヘキサン300mlを用いた結晶化を行うことによって精製し、10-(ビフェニル-4-イル)-12,12-ジメチル-7-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾールの白色粉体9.8g(収率45.2%)を得た。
【0079】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(THF-d8)で以下の36個の水素シグナルを検出した。δ(ppm)=8.69(1H)、8.64(1H)、8.59(1H)、8.28(1H)、7.99(2H)、7.89(1H)、7.85-7.78(6H)、7.66(4H)、7.56-7.49(6H)、7.44-7.37(4H)、7.32(1H)、7.27(1H)、7.23(1H)、1.52(6H)
【0080】
(実施例5)
<10-(ビフェニル-4-イル)-7-[4-ビス(ビフェニル-4-イル)アミノフェニル]-12,12-ジメチル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール;化合物(1-6)の合成>
窒素置換した反応容器に、実施例6で合成した10-(ビフェニル-4-イル)-7-ブロモ-12,12-ジメチル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール13.0g、ビス(ビフェニル-4-イル)-[4-(4,4,5,5-テトラメチル[1,3,2]ジオキサボラン-2-イル)フェニル]アミン15.9g、トルエン/エタノール(4/1、v/v)の混合溶媒250ml、2M炭酸カリウム水溶液51mlを加え、超音波を照射しながら30分間窒素ガスを通気した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム2.1gを加えて加熱し、73℃で10時間攪拌した。室温まで冷却し、析出する粗製物をろ過によって採取した。粗製物に1,2-ジクロロベンゼン1.7Lを加え、加熱しながら溶解し、不溶物をろ過によって除いた後、室温まで冷却した。析出する固体をろ過によって採取し、1,2-ジクロロベンゼン1.7Lを用いた再結晶による精製を行うことによって10-(ビフェニル-4-イル)-7-[4-ビス(ビフェニル-4-イル)アミノフェニル]-12,12-ジメチル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾールの白色粉体13.4g(収率63.8%)を得た。
【0081】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(THF-d8)で以下の46個の水素シグナルを検出した。δ(ppm)=8.62(1H)、8.54(1H)、7.98(2H)、7.86(1H)、7.78(4H)、7.75(2H)、7.70(1H)、7.63(4H)、7.58(4H)、7.55(1H)、7.50(3H)、7.43(1H)、7.40(4H)、7.33-7.21(11H)、1.51(6H)
【0082】
(実施例6)
<5,7-ジヒドロ-5,7,7-トリフェニル-2-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)インデノ[2,1-b]カルバゾール;化合物(1-20)の合成>
窒素置換した反応容器に、5,7-ジヒドロ-5,7-ジフェニルインデノ[2,1-b]カルバゾール31.3g、ヨードベンゼン23.5g、炭酸カリウム15.9g、亜硫酸水素ナトリウム1.2g、3,5-ジ-t-ブチルサリチル酸1.9g、銅粉0.5g、ドデシルベンゼン31mLを加えて加熱し、190℃で17時間撹拌した。トルエンで希釈し、ろ過により不溶物を除去した。ろ液を濃縮し、ヘプタンを加えることによって析出する固体をろ過によって採取し、5,7-ジヒドロ-5,7,7-トリフェニルインデノ[2,1-b]カルバゾールの黄色粉体35.3g(収率94%)を得た。
【0083】
得られた5,7-ジヒドロ-5,7,7-トリフェニルインデノ[2,1-b]カルバゾール35.0g、ジクロロメタン350mLを窒素置換した反応容器に加え、氷浴にて冷却した。N-ブロモスクシンイミド12.9gをゆっくり加え、40℃まで加熱し、24時間撹拌した。メタノールを加えることによって析出する固体をろ過により採取し、得られた固体をメタノールで洗浄することによって、2-ブロモ-5,7-ジヒドロ-5,7,7-トリフェニルインデノ[2,1-b]カルバゾールの白色粉体39.5g(収率97%)を得た。
【0084】
得られた2-ブロモ-5,7-ジヒドロ-5,7,7-トリフェニルインデノ[2,1-b]カルバゾール39.5g、トルエン320mL、エタノール50mL、9-フェニルカルバゾール-3-ボロン酸24.2g、続いて、あらかじめ炭酸カリウム14.6gを水52mLに溶解した水溶液を窒素置換した反応容器に加え、30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム1.6gを加えて加熱し、72℃で18時間撹拌した。室温まで冷却し、分液操作によって有機層を採取した。水を用いた洗浄、飽和食塩水を用いた洗浄を順次行った後、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、濃縮することによって粗製物を得た。粗製物をトルエン360mLに溶解し、シリカゲルを用いた吸着精製、続いて、活性白土を用いた吸着精製を行った。ろ液を濃縮し、アセトンを加えることによって析出する固体をろ過により採取した。得られた固体をトルエン、アセトンで再結晶することにより、5,7-ジヒドロ-5,7,7-トリフェニル-2-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)インデノ[2,1-b]カルバゾールの白色粉体32.3g(収率64%)を得た。
【0085】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の36個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=7.63(1H)、8.56(2H)、8.30(1H)、7.80-7.95(3H)、7.22-7.77(29H)
【0086】
(実施例7)
<12,12’-スピロビ[9H-フルオレン]-10-フェニル-7-(9’-フェニル-9’H-カルバゾール-3’-イル)-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール;化合物(1-37)の合成>
窒素置換した反応容器に、N-(9,9’-スピロビ-9H-フルオレン-2-イル)-2-ブロモアニリン22.8g、酢酸カリウム9.19g、DMF200ml、水20mlを加え、30分間窒素ガスを通気した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム1.08gを加えて加熱し、8.5時間還流した。室温まで冷却して、反応液に水150mlを加え、析出した固体をろ取した。得られた固体をトルエン300mlに溶解させ、シリカゲル11gを加え、100℃で1時間撹拌した。熱時ろ過を行い、得られたろ液を乾固し、ヘキサンで洗浄した。ろ過後、得られた固体を50℃で15時間乾燥させ、12,12’-スピロビ[9H-フルオレン]-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾールの白色粉末を13.5g(収率71%)で得た。
【0087】
得られた12,12’-スピロビ[9H-フルオレン]-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール22.5gと、ヨードベンゼン11.5g、亜硫酸水素ナトリウム1.17g、銅粉0.36g、3,5-ジ-t-ブチルサリチル酸1.41g、炭酸カリウム11.66g、ドデシルベンゼン21mlを、窒素置換した反応容器に加えて加熱し、190℃で6.5時間攪拌した。室温まで冷却し、トルエン200mlを加え、80℃で0.5時間撹拌した。熱時ろ過を行い、得られたろ液を乾固させた。ろ液を乾固させたものをヘキサンで洗浄した。洗浄後、得られた固体を50℃、15時間乾燥させ、白色粉末として12,12’-スピロビ[9H-フルオレン]-10-フェニル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾールを21.2g(収率78%)を得た。
【0088】
得られた12,12’-スピロビ[9H-フルオレン]-10-フェニル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール14.0gと、クロロホルム130mlを反応容器に加えた。N-ブロモコハク酸イミド5.12gを加えて、室温で3時間攪拌した後、N-ブロモコハク酸イミド92mgを加えた。30℃で3時間撹拌した後、メタノール200mlを加えた。析出した固体をろ取し、メタノールで洗浄した。得られた固体を50℃、15時間乾燥させ、白色粉末として7-ブロモ-12,12’-スピロビ[9H-フルオレン]-10-フェニル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール16.1g(収率99%)を得た。
【0089】
得られた7-ブロモ-12,12’-スピロビ[9H-フルオレン]-10-フェニル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール22.4gと、9-フェニルカルバゾール-3-ボロン酸7.99g、炭酸カリウム4.81g、トルエン100ml、エタノール7.5ml、水9mlを窒素置換した反応容器に加え、30分間窒素ガスを通気した。[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウムジクロリドジクロロメタン付加物0.38gを加えて加熱し、80℃で8時間攪拌した。室温まで冷却し、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウムジクロリドジクロロメタン付加物0.38g、9-フェニルカルバゾール-3-ボロン酸7.99g、炭酸カリウム2.40gを加え、80℃でさらに10時間攪拌した。その後、室温まで冷却し、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウムジクロリドジクロロメタン付加物0.38g、炭酸カリウム2.40gを加え、80℃でさらに8時間攪拌した。トルエン200mlを加えて、100℃で1時間撹拌した。ろ過を行い、得られたろ液を乾固させた。得られた固体に対してクロロホルム/ヘキサン=1:2(v/v)を展開溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行った。4つ目のフラクションを集め、50℃で5時間減圧乾燥させ、白色固体として12,12’-スピロビ[9H-フルオレン]-10-フェニル-7-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール10.5g(収率57%)を得た。
【0090】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の34個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.68(1H)、8.53(2H)、8.27(1H)、7.99(1H)、7.83-7.65(8H)、7.55-7.33(14H)、7.19-7.03(3H)、6.80-6.78(3H)、6.64(1H)
【0091】
(実施例8)
<12,12’-スピロビ[9H-フルオレン]-10-フェニル-7-(9-フェニル-9H-カルバゾール-4’-イル)-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール;化合物(1-40)の合成>
7-ブロモ-12,12’-スピロビ[9H-フルオレン]-10-フェニル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール22.4gと、9-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール5.54g、炭酸カリウム5.98g、トルエン50ml、エタノール4.0ml、水4.5mlを窒素置換した反応容器に加え、30分間窒素ガスを通気した。[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウムジクロリドジクロロメタン付加物0.20gを加えて加熱し、80℃で7時間攪拌した。室温まで冷却し、トルエン200mlを加えて、100℃で1時間撹拌した。ろ過を行い、得られたろ液に対してシリカゲル40gを加え、室温で1時間撹拌した。ろ過でシリカゲルを除き、ろ液を乾固させた。トルエン50mlを用い、熱再結晶を2回行い、白色固体を得た。得られた固体を50℃で5時間減圧乾燥させ、白色粉末として12,12’-スピロビ[9H-フルオレン]-10-フェニル-7-(9-フェニル-9H-カルバゾール-4’-イル)-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール8.00g(収率48%)を得た。
【0092】
得られた白色粉末についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の34個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.66(1H)、8.56(1H)、8.18(2H)、7.98-7.97(3H)、7.82(2H)、7.70-7.68(3H)、7.52-7.03(18H)、6.79-6.78(3H)、6.65(1H)
【0093】
(実施例9)
<5,7-ジヒドロ-5,7,7-トリフェニル-2-(6’,9’-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-イル)インデノ[2,1-b]カルバゾール;化合物(1-69)の合成>
2-ブロモ-5,7-ジヒドロ-5,7,7-トリフェニルインデノ[2,1-b]カルバゾール19.0g、6,9-ジフェニルカルバゾール-3-ボロン酸18.1g、炭酸カリウム7.00g、トルエン150ml、エタノール24ml、水25mlを窒素置換した反応容器に加え、30分間窒素ガスを通気した。テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム0.78gを加えて加熱し、80℃で7時間撹拌した。室温まで冷却し、炭酸カリウム3.5g、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム78mgを加え、80℃で8時間撹拌した。室温に冷却後6,9-ジフェニルカルバゾール-3-ボロン酸300mgを加え、80℃で3時間撹拌した。室温に冷却後、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム78mgを加え、80℃で8時間撹拌した。トルエン200mlを加え、60℃で30分間撹拌した。ろ過を行い、ろ液にシリカゲル25g、活性白土25gを加え、80℃で1時間撹拌した。ろ過を行い、得られたろ液を濃縮し、白色固体を得た。白色固体はTHF/トルエン=1:3(v/v)の条件で再結晶を行った。得られた白色固体をo-ジクロロベンゼンに溶解させ、シリカゲル25gを加え、160℃で1時間撹拌し、ろ過を行った。ろ液を室温に放冷後、得られたろ液にメタノール90mL加え、析出した白色固体をろ取した。60℃で22時間減圧乾燥を行うことで、目的の5,7-ジヒドロ-5,7,7-トリフェニル-2-(6’,9’-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-イル)インデノ[2,1-b]カルバゾール15.2g(収率56%)を白色粉末として得た。
【0094】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の40個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.59(1H)、8.54(2H)、8.48(1H)、7.92(1H)、7.81(1H)、7.78-7.76(3H)、7.71-7.64(5H)、7.59-7.34(16H)、7.25-7.18(10H)
【0095】
(実施例10)
<5,7-ジヒドロ-5,7,7-トリフェニル-2-(9’-ビフェニル-9’H-カルバゾール-3’-イル)インデノ[2,1-b]カルバゾール;化合物(1-70)の合成>
2-ブロモ-5,7-ジヒドロ-5,7,7-トリフェニルインデノ[2,1-b]カルバゾール19.0g、9-ビフェニルカルバゾール-3-ボロン酸18.1g、炭酸カリウム7.00g、トルエン150ml、エタノール24ml、水25mlを窒素置換した反応容器に加え、30分間窒素ガスを通気した。テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム0.78gを加えて加熱し、80℃で6時間撹拌した。室温まで冷却し、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム78mgを加え、80℃で6時間撹拌した。ろ過を行い、ろ液を水で2回、飽和食塩水で1回洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥後の有機層にシリカゲル25gを加え、60℃で1時間撹拌した。ろ過を行い、得られたろ液を濃縮し、白色固体を得た。得られた白色固体をo-ジクロロベンゼンに溶解させ、シリカゲル25gを加え、160℃で1時間撹拌し、ろ過を行った。室温に放冷後、得られたろ液にメタノール30mL加え、析出した白色固体をろ取した。得られた固体をトルエン60mlに溶解させ、熱再結晶を行い、白色粉末を得た。得られた白色粉末に対して60℃で22時間減圧乾燥を行うことで、目的の5,7-ジヒドロ-5,7,7-トリフェニル-2-(9’-ビフェニル-9H-カルバゾール-3’-イル)インデノ[2,1-b]カルバゾール15.9g(収率59%)を白色粉末として得た。
【0096】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の40個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.58(1H)、8.51(2H)、8.26(1H)、7.91(1H)、7.85-7.80(3H)、7.77-7.68(5H)、7.59-7.32(17H)、7.25-7.18(10H)
【0097】
(実施例11)
<12,12’-スピロビ[9H-フルオレン]-10-フェニル-7-(6’,9’-ジフェニル-9’H-カルバゾール-3’-イル)-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール;化合物(1-71)の合成>
7-ブロモ-12,12’-スピロビ[9H-フルオレン]-10-フェニル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール5.00g、6,9-フェニルカルバゾール-3-ボロン酸4.77g、炭酸カリウム1.85g、トルエン40ml、エタノール6ml、水7mlを窒素置換した反応容器に加え、30分間窒素ガスを通気した。テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム0.21gを加え、80℃で10時間撹拌した。室温まで冷却し、炭酸カリウム1.9g、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム210mgを加え、80℃で7時間撹拌した。トルエン100mlを加え、100℃で1時間撹拌した。ろ過を行い、ろ液にシリカゲル35gを加え、室温で1時間撹拌した。ろ過を行い、得られたろ液を濃縮し、白色固体を得た。白色固体に対してTHF/メタノール=1:3(v/v)の条件で再結晶を行い、さらにトルエンを用いて再結晶を行った。得られた白色固体を60℃で22時間減圧乾燥することで、目的の12,12’-スピロビ[9H-フルオレン]-10-フェニル-7-(6’,9’-ジフェニル-9’H-カルバゾール-3’-イル)-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール2.16g(収率30%)を白色粉末として得た。
【0098】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の38個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.68(1H)、8.55(2H)、8.48(1H)、7.97(1H)、7.83-7.67(6H)、7.63(4H)、7.55-7.33(15H)、7.25(1H)、7.15(1H)、7.08(1H)、7.03(1H)、6.80-6.78(3H)、6.64(1H)
【0099】
(実施例12)
<12,12’-スピロビ[9H-フルオレン]-10-フェニル-7-(9’-ビフェニル-9’H-カルバゾール-3’-イル)-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール;化合物(1-72)の合成>
7-ブロモ-12,12’-スピロビ[9H-フルオレン]-10-フェニル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール5.00g、9-ビフェニルカルバゾール-3-ボロン酸4.77g、炭酸カリウム1.9g、トルエン40ml、エタノール6ml、水7mlを窒素置換した反応容器に加え、30分間窒素ガスを通気した。テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム0.21gを加えて加熱し、80℃で8時間撹拌した。室温まで冷却し、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム0.21g、炭酸カリウム1.9gを加え、80℃で9時間撹拌した。室温まで冷却し、メタノール100mlを加え、析出した固体をろ取した。得られた固体6.8g、9-ビフェニルカルバゾール-3-ボロン酸2.5g、炭酸カリウム1.9g、トルエン40ml、エタノール6ml、水7mlを窒素置換した反応容器に加え、30分間窒素ガスを通気した。テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム0.21gを加えて加熱し、80℃で6時間撹拌した。トルエン100mlを加え、100℃で1時間撹拌した。ろ過を行い、得られたろ液を濃縮した。ろ液に対してシリカゲル14gを加え、80℃で1時間撹拌した。ろ過を行い、ろ液を乾固させた。得られた固体をヘキサン100ml、メタノール100mlで洗浄した。洗浄後の固体をトルエン/ヘキサン=1:3(v/v)を展開溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行った。5つ目のフラクションを集め、回収した白色固体をヘキサンで洗浄した。得られた白色粉末に対して50℃で5時間減圧乾燥を行うことで、目的の12,12’-スピロビ[9H-フルオレン]-10-フェニル-7-(9’-ビフェニル-9’H-カルバゾール-3’-イル)-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール3.6g(収率50%)を白色粉末として得た。
【0100】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の38個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.68(1H)、8.56(1H)、8.28(1H)、7.98(1H)、7.91-7.81(6H)、7.73-7.70(5H)、7.60(1H)、7.55-7.33(15H)、7.10(2H)、7.05(1H)、6.81-6.78(3H)、6.64(1H)
【0101】
(実施例13)
<12,12’-スピロビ[9H-フルオレン]-10-ビフェニル-4-イル-7-(9’H-カルバゾール-9’-イル)-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール;化合物(1-73)の合成>
7-ブロモ-12,12’-スピロビ[9H-フルオレン]-10-ビフェニル-4-イル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール7.00g、カルバゾール2.21g、炭酸セシウム5.4g、トルエン150mlを窒素置換した反応容器に加え、30分間窒素ガスを通気した。酢酸パラジウム0.12g、トリ-t-ブチルホスフィンの50wt%トルエン溶液0.44gを加えて加熱し、6時間還流した。その後、室温まで冷却し、酢酸パラジウム0.12g、トリ-t-ブチルホスフィンの50wt%トルエン溶液0.44g、炭酸セシウム5.4gを加え、9時間還流した。室温まで冷却し、酢酸パラジウム0.12g、トリ-t-ブチルホスフィンの50wt%トルエン溶液0.44g、炭酸セシウム5.4g、カルバゾール2.21gを加え、8時間還流した。トルエン200mlを加え、100℃で1時間撹拌した。ろ過を行い、得られたろ液を濃縮した。得られた固体をクロロホルム/ヘキサン=1:3(v/v)を展開溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行った。5つ目のフラクションを集め、白色固体を回収した。得られた固体はクロロホルム/メタノール=1:3(v/v)、テトラヒドロフラン/メタノール=1:3(v/v)、トルエンの条件で3回再結晶を行った。得られた白色粉末に対して50℃で5時間減圧乾燥を行うことで、目的の<12,12’-スピロビ[9H-フルオレン]-10-フェニル-7-(9’H-カルバゾール-9’-イル)-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール0.8g(収率10%)を白色粉末として得た。
【0102】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の34個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.55(1H)、8.37(1H)、8.20(2H)、7.90(1H)、7.81(2H)、7.67(2H)、7.60(2H)、7.56-7.41(10H)、7.37-7.15(7H)、7.10(1H)、7.03(1H)、6.86(1H)、6.78(2H)、6.64(1H)
【0103】
(実施例14)
実施例1~13で合成したインデノカルバゾール環構造を有する化合物について、高感度示差走査熱量計(ブルカー・エイエックスエス製、DSC3100SA)によってガラス転移点を測定した。結果を表1に示す。
【0104】
【0105】
実施例1~13で合成した化合物は100℃以上のガラス転移点を有しており、薄膜状態が安定であることを示すものである。
【0106】
(実施例15)
実施例1~13で合成した化合物を用いてITO基板の上に膜厚100nmの蒸着膜を作製し、イオン化ポテンシャル測定装置(住友重機械工業株式会社、PYS-202)によって仕事関数を測定した。結果を表2に示す。
【0107】
【0108】
実施例1~13で合成した化合物は、好適な材料な材料とされているインドロカルバゾールなどの正孔輸送材料が持つ仕事関数5.3~6.0eVと比較して、好適なエネルギー準位を示しており、良好な正孔輸送能力を有していることが分かる。
【0109】
(実施例16)
<移動度の測定>
透明陽極としてITO電極をあらかじめ形成したガラス基板上に、正孔注入層としてPEDOT/PSS膜を50nmの厚みになるよう塗布法で形成し、続いて実施例6の化合物(1-20)、実施例7の化合物(1-37)、実施例9の化合物(1-69)及び実施例13の化合物(1-73)を50nmの厚みになるよう蒸着し、さらに陰極としてAlを100nmの厚みになるよう蒸着することで積層成膜し、素子を作成した。
ホットプレートにて180℃で3時間アニールした移動度測定用素子及びアニールしない移動度測定用素子を調製し、それぞれの移動度測定用素子に-6Vから15Vの電圧を印加し、正バイアスで電流が流れた電流-電圧曲線にSCLC(空間電荷制限電流)の式をフィッティングさせ、移動度を測定した。
【0110】
(比較例1)
比較のため、実施例6の化合物(1-20)、実施例7の化合物(1-37)、実施例9の化合物(1-69)及び実施例13の化合物(1-73)の代わりにTris-PCzを用いて素子を作成し、同様にして移動度を測定した。結果を表3に示す。
【0111】
【0112】
【0113】
実施例6の化合物(1-20)、実施例7の化合物(1-37)、実施例9の化合物(1-69)及び実施例13の化合物(1-73)を用いた素子は、180℃で3時間加熱しても場合においても安定であり、移動度も測定できたが、有機半導体として汎用されているTris-PCzを用いた素子には
図3に示すようにリークが観測され、移動度を算出することができない状態となった。
【0114】
以上の結果から明らかなように、本発明で用いる上記一般式(1)で表されるインデノカルバゾール環構造を有する化合物は、光電変換素子のブロッキング層に必要なHOMO値、高い耐熱性、十分な高移動度を有していることが分かる。
【0115】
(実施例17)
<光電変換素子における電気特性の測定>
光電変換素子は、
図1に示すように、陽極1としてITO電極をあらかじめ形成したガラス基板上に、第1バッファ層2、光電変換層3、第2電極を陰極5の順に蒸着して作製した。
【0116】
具体的には、陽極1であるITO電極が成膜されたガラス基板をイソプロピルアルコール中にて超音波洗浄を20分間行った後、100℃に加熱したクリーンオーブンにて一晩乾燥を行った。その後、UVオゾン処理を5分間行った後、このITO電極付きガラス基板を真空蒸着機内に取付け、0.001Pa以下まで減圧した。続いて、陽極1上に第1バッファ層2として実施例6の化合物(1-20)を膜厚15nmとなるように蒸着した。この第1バッファ層2の上に、下記構造のSubPCとC60とを、蒸着速度比がSubPC:C60=1:1となる蒸着速度で共蒸着し、膜厚が100nmとなるように光電変換層3を形成した。この光電変換層3の上に、陰極5として金を膜厚100nmとなるように形成した。作製した光電変換素子の電気特性(明電流、暗電流)を評価した。測定結果を表4にまとめて示した。
【0117】
【0118】
(実施例18~20)
実施例17において、第1バッファ層2の材料として実施例6の化合物(1-20)の代わりに実施例7、実施例9、及び実施例13の各化合物を用いた以外は同様にして光電変換素子を作製した。測定結果を表4にまとめて示した。
【0119】
(比較例2)
比較として、陽極1上にSubPCとC60とを、蒸着速度比がSubPC:C60=1:1となる蒸着速度で共蒸着し、膜厚が100nmとなるように光電変換層3を形成した。それ以外は同様にして光電変換素子を作製し、電気特性を評価した。測定結果を表4にまとめて示した。
【0120】
(比較例3)
比較として、実施例17において、第1バッファ層2の材料として実施例6で得られた化合物(1-20)の代わりに、下記構造式のHTM-1(例えば、特許文献6参照)を用いた以外は同様にして光電変換素子を作製し、電気特性を評価した。測定結果を表4にまとめて示した。
【0121】
【0122】
実施例17~20及び比較例2~3で作製した光電変換素子を用いて、電気特性(明電流、暗電流)をソースメータ(Keithley製、2635B)にて測定を行った。測定結果を表4にまとめて示した。明電流については、具体的には、緑色フィルター(HOYA製 G533)を介したLED光源から光電変換素子に光を照射し、電極間に印加した逆バイアス電圧(-1~-5V)における電流値を測定した。暗電流については、具体的には、光電変換素子への照射光量をゼロにして、電極間に印加した逆バイアス電圧(-1~-5V)における電流値を測定した。
【0123】
【0124】
表4に示すように、印加した各バイアスにおける暗電流は、比較例2~3の素子に対し、実施例17~20の素子は大幅に低い値である。また-3Vのバイアスを印加したときの明暗比においても、比較例2~3の素子に対し、実施例17~20の素子は大幅に向上している。このことは、インデノカルバゾール環構造を有する化合物の高い電子ブロッキング性と良好なホール輸送性により、光電変換素子の暗電流特性を大幅に改善できることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明により、耐熱性が高く、電荷移動度の良好な有機薄膜を有する光電変換素子、特に撮像素子を提供できる。