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特許7655860ビオチン部分に結合した生理活性物質、及びその生理活性物質を含む経口投与用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-25
(45)【発行日】2025-04-02
(54)【発明の名称】ビオチン部分に結合した生理活性物質、及びその生理活性物質を含む経口投与用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/64 20170101AFI20250326BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20250326BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20250326BHJP
   A61K 38/26 20060101ALI20250326BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20250326BHJP
   A61K 38/22 20060101ALI20250326BHJP
   A61K 38/37 20060101ALI20250326BHJP
   A61K 38/36 20060101ALI20250326BHJP
   A61K 38/28 20060101ALI20250326BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250326BHJP
   A61K 31/4045 20060101ALI20250326BHJP
【FI】
A61K47/64
A61K47/54
A61K38/17
A61K38/26
A61P3/10
A61K38/22
A61K38/37
A61K38/36
A61K38/28
A61K39/395 D
A61K31/4045
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2021568005
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(86)【国際出願番号】 KR2020007053
(87)【国際公開番号】W WO2020242268
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-05-26
(31)【優先権主張番号】10-2019-0064370
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0065484
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】318012089
【氏名又は名称】ディーアンドディー ファーマテック インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】シン, ジェヒ
(72)【発明者】
【氏名】チョン, オク-チョル
(72)【発明者】
【氏名】パク, ウン ジ
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-527801(JP,A)
【文献】国際公開第2009/107900(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0011246(US,A1)
【文献】Meltem CETIN et al.,“Preparation and Characterization of Salmon Calcitonin-biotin Conjugates”,AAPS PharmSciTech,2008年12月,Vol. 9, No. 4,p.1191-1197,DOI: 10.1208/s12249-008-9165-2
【文献】Su Young CHAE et al.,“Preparation, Characterization, and Application of Biotinylated and Biotin-PEGylated Glucagon-Like Peptide-1 Analogues for Enhanced Oral Delivery”,Bioconjugate Chemistry,2007年12月14日,Vol. 19, No. 1,p.334-341,DOI: 10.1021/bc700292v
【文献】E.J. VERSPOHL,“Novel therapeutics for type 2 diabetes: Incretin hormone mimetics (glucagon-like peptide-1 receptor agonists) and dipeptidyl peptidase-4 inhibitors”,Pharmacology &amp; Therapeutics,2009年10月,Vol. 124, No. 1,p.113-138,DOI: 10.1016/j.pharmthera.2009.06.002
【文献】Y YOUN,“Improved peroral delivery of glucagon-like peptide-1 by site-specific biotin modification: Design, preparation, and biological evaluation”,European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics,2008年03月,Vol. 68, No. 3,p.667-675,DOI: 10.1016/j.ejpb.2007.07.009
【文献】Cheng-Hao JIN et al.,“A new orally available glucagon-like peptide-1 receptor agonist, biotinylated exendin-4, displays improved hypoglycemic effects in db/db mice”,Journal of Controlled Release,2009年02月,Vol. 133, No. 3,p.172-177,DOI: 10.1016/j.jconrel.2008.09.091
【文献】Kathleen Corey FLANDERS et al.,“Semisynthetic derivatives of glucagon: (Des-His1)N.epsilon.-acetimidoglucagon and N.alpha.-biotinyl-N.epsilon.-acetimidoglucagon”,Biochemistry,1982年08月01日,Vol. 21, No. 18,p.4244-4251,DOI: 10.1021/bi00261a010
【文献】Serena SINGH et al.,“Self-Assembly of a Functional Triple Protein: Hemoglobin-Avidin-Hemoglobin via Biotin-Avidin Interactions”,Biochemistry,2016年05月05日,Vol. 55, No. 20,p.2875-2882,DOI: 10.1021/acs.biochem.6b00215
【文献】FRIESEN,H.J. et al,Novel maleimido-biotins for the selective biotinylation of sulfhydryls,Protides of the Biological Fluids,1986年,Vol.34,pp.43-46
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00- 47/69
A61K 38/17
A61K 38/26
A61P 3/10
A61K 38/22
A61K 38/37
A61K 38/36
A61K 38/28
A61K 39/395
A61K 31/4045
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビオチン部分に結合した生理活性物質であって、前記ビオチン部分が、前記生理活性物質の不活性領域に結合しており、かつ、前記生理活性物質の生物学的活性を阻害せず、
前記生理活性物質が、露出した-SH基、露出した-NH 基または-NH基を含むポリペプチド、タンパク質、サイロキシン、糖脂質または非ペプチドポリマーを含み、
前記ビオチン部分が、下記の一般式Aによって表され、
[一般式A]
【化19】
Xが、マレイミド、スクシンイミド、N-ヒドロキシスクシンイミド、コハク酸スクシンイミジル、グルタミン酸スクシンイミジル、スクシンイミジルメチルエステル、スクシンイミジルペンチルエステル、炭酸スクシンイミジル、p-ニトロフェニルカーボネート、アルデヒド、アミン、チオール、オキシアミン、ヨードアセトアミド、アミノキシル、ヒドラジド、ヒドロキシ、プロピオネート、ピリジル、ハロゲン化アルキル、ビニルスルホン、カルボキシル、ヒドラジド、ハロゲンアセトアミド、C2-5アルキニル、C6-20アリールジスルフィド、C5-20ヘテロアリールジスルフィド、イソシアネート、チオエステル、イミノエステルからなる群から選択される、前記生理活性物質に結合できる官能基であり、
Yが、存在しないか、置換もしくは非置換の直鎖もしくは分岐鎖C1-50アルキレン、置換もしくは非置換の直鎖もしくは分岐鎖C1-50ヘテロアルキレンであり、置換されている場合には、=O、-C(O)NH、-OH、-COOH、-SH、=NH及び-NHからなる群から選択した少なくとも1つを含む、
Zが、下記から独立して選択されるいずれか1つであり、
(i)Yが存在しない場合にXと一体になって、またはXとは別に、リシン、アルギニン、ヒスチジン、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン、アスパラギン酸、トレオニン、システインもしくはセリンを形成する、または
(ii)
【化22】
を含み、式中、
【化23】
が、結合部位を表し、1つ以上の
【化24】
が、前記結合部位に結合しており、式中、uが、1~20の整数である、
Bが、下記の化学式A-1によって表され、
[化学式A-1]
【化20】
前記Zが、前記化学式A-1の
【化21】
に連結しており、
Tが、アミン、C1-8アルキル、C1-8アルケニル、ハロ、ヒドロキシ、チオール、スルホン酸、カルボキシル、フェニル、ベンジル、アルデヒド、アジド、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、ニトリル及びホスホン酸からなる群から選択される末端基であり、
mが、~10の整数であり、
nが、1~10の整数であり
が、0~1の整数である、前記生理活性物質。
【請求項2】
前記ビオチン部分が、ポリペプチドに結合している、請求項1に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
【請求項3】
前記生理活性物質が、露出した-SH基を含むポリペプチド、タンパク質または非ペプチドポリマーであり、前記ビオチン部分が、前記-SH基に結合している、請求項1に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
【請求項4】
前記生理活性物質が、露出した-NH 基または-NH基を含むポリペプチド、タンパク質または非ペプチドポリマーであり、前記ビオチン部分が、前記-NH 基または前記-NH基に結合している、請求項1に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
【請求項5】
前記生理活性物質が、N末端における露出した-NH基を含むポリペプチドまたはタンパク質であり、前記ビオチン部分が、前記N末端に結合している、請求項1に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
【請求項6】
前記生理活性物質が、グルカゴン、GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)、GLP-2(グルカゴン様ペプチド-2)、GIP(グルコース依存性インスリン分泌ポリペプチド)、エキセンジン-4、インスリン、副甲状腺ホルモン、インターフェロン、エリスロポエチン、カルシトニン、セロトニン、リツキシマブ、トラスツズマブ、ウリカーゼ、組織プラスミノーゲンアクチベーター、サイモグロブリン、ワクチン、ヘパリン、アンチトロンビンIII、フィルグラスチム、酢酸プラムリンチド、エキセナチド、エプチフィバチド、抗蛇毒素、IgG、IgM、HGH、サイロキシン、凝固第VII因子、凝固第VIII因子、モノクローナル抗体、及び糖脂質からなる群から選択されている、請求項1に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
【請求項7】
前記生理活性物質が、配列番号1~配列番号7によって表されるアミノ酸配列からなる群から選択したポリペプチドである、請求項1に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
【請求項8】
前記生理活性物質が、それぞれ配列番号15及び配列番号16によって表される2つのアミノ酸鎖から構成されるタンパク質である、請求項1に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
【請求項9】
前記生理活性物質が、それぞれ配列番号15及び配列番号16によって表され、配列番号15の6位のシステインと11位のシステインの間、配列番号15の7位のシステインと配列番号16の7位のシステインの間、及び配列番号15の20位のシステインと配列番号16の19位のシステインの間のジスルフィド結合を介して結合している、2つのアミノ酸鎖から構成されたタンパク質である、請求項1に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
【請求項10】
前記生理活性物質が、それぞれ配列番号17及び配列番号16によって表される2つのアミノ酸鎖から構成されるタンパク質である、請求項1に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
【請求項11】
前記生理活性物質が、それぞれ配列番号17及び配列番号16によって表され、配列番号17の6位のシステインと11位のシステインの間、配列番号17の7位のシステインと配列番号16の7位のシステインの間、及び配列番号17の20位のシステインと配列番号16の19位のシステインの間のジスルフィド結合を介して結合している、2つのアミノ酸鎖から構成されたタンパク質である、請求項1に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
【請求項12】
前記ビオチン部分が、前記ポリペプチドまたはタンパク質のリシンアミノ酸の-NH 基、-NH基に結合している、請求項4または請求項5に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
【請求項13】
前記生理活性物質が、ポリペプチドであり、前記ポリペプチドにおいて、配列番号1~7によって表されるアミノ酸配列からなる群から選択したポリペプチドの不活性領域のアミノ酸のうちのいずれかの少なくとも1つが、システインアミノ酸によって置換されているか、またはシステインアミノ酸が、前記少なくとも1つの位置に挿入されており、前記ビオチン部分が、前記システインアミノ酸の-SH基に結合している、請求項1に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
【請求項14】
前記生理活性物質が、配列番号8~14によって表されるアミノ酸配列からなる群から選択したポリペプチドである、請求項1に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
【請求項15】
前記Xが、マレイミド、N-ヒドロキシスクシンイミド、アルデヒドまたはアミンである、請求項1に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
【請求項16】
前記Zが、-NH-を介してBに連結している、請求項1に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
【請求項17】
前記Zが、少なくとも1つのグリセロール及び少なくとも1つのポリエチレングリコールを含む、請求項1に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
【請求項18】
-(CHNH-が、前記
【化25】

にさらに結合している、請求項1に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
【請求項19】
前記Tが、アミンである、請求項1に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
【請求項20】
前記ビオチン部分が、
【化26-13】

【化26-2】
【化26-3】
【化26-4】
【化26-5】
【化26-6】
【化26-7】
【化26-8】
【化26-9】
【化26-10】
【化26-11】
【化26-12】
からなる群から選択されている、請求項1に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
【請求項21】
前記ビオチン部分が、
【化35】
であり、前記生理活性物質が、配列番号12のアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、
前記ビオチン部分が、配列番号12の40位で、システインアミノ酸のチオール基またはN末端に結合している、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
【請求項22】
前記ビオチン部分が、
【化36】
であり、前記生理活性物質が、配列番号12のアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、
前記ビオチン部分が、配列番号12の40位で、システインアミノ酸のチオール基またはN末端に結合している、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
【請求項23】
前記ビオチン部分が、
【化37】
であり、前記生理活性物質が、配列番号12のアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、
前記ビオチン部分が、配列番号12の40位で、システインアミノ酸のチオール基またはN末端に結合している、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
【請求項24】
前記ビオチン部分が、
【化38】
であり、前記生理活性物質が、配列番号12のアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、
前記ビオチン部分が、配列番号12の40位で、システインアミノ酸のチオール基またはN末端に結合している、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
【請求項25】
哺乳動物において経口投与可能な組成物であって、請求項1~24のいずれか1項に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質と、1つ以上の賦形剤とを含む前記組成物。
【請求項26】
a)請求項1~24のいずれか1項に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質と、
b)前記生理活性物質をヒトに投与するための説明と、
を含むキット。
【請求項27】
ヒトにおける疾患を治療するための、請求項1~24のいずれか1項に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質を含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビオチン部分に結合した生理活性物質、及びその生理活性物質を含む経口投与用組成物に関するものである。より具体的には、本発明は、ビオチン部分に結合した生理活性物質であって、経口服用時の体内吸収性に優れる生理活性物質、及びその生理活性物質を含む経口投与用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近では、経済成長、及び科学技術の加速度的な進歩により、食事が西洋化してきており、高カロリーで高脂肪な食品の消費が増加している。そのため、様々な代謝性疾患により、糖尿病及び肥満などを患う人が急速に増えている。
【0003】
糖尿病は、様々な合併症を伴う疾患であり、その管理には、患者のクオリティオブライフを大幅に低下させる食事制限が必要となる。糖尿病の治療及び管理に対する意識は高まっており、糖尿病を改善または治療するための治療剤の開発は急務である。
【0004】
糖尿病は、インスリンを産生できないことを原因とする「I型」糖尿病、またはインスリン産生は正常であるが、インスリン抵抗性により、代謝調節能が低下した「II型」糖尿病として分類される。II型糖尿病及び肥満は、それぞれ互いのリスクファクターである。II型糖尿病及び肥満は、代謝性疾患の原因であり、糖尿病患者の主な死亡原因であるアテローム性動脈硬化症のリスクを上昇させるため、いずれも、危険度の非常に高い疾患となっている。
【0005】
最近は、グルカゴン誘導体が注目されている。グルカゴンは、薬物療法、疾患、ホルモンまたは酵素欠損のような原因により、血中グルコースレベルが低下し始めると、膵臓によって産生される。グルカゴンは、肝臓にシグナルを送って、グリコーゲンを分解させて、グルコースを放出させ、血中グルコースを正常なレベルまで上昇させる。グルカゴンは、その血糖上昇作用に加えて、食欲を抑制し、脂肪細胞のホルモン感受性リパーゼを活性化して、脂肪の分解を促し、抗肥満作用を示すことが報告されている。グルカゴン誘導体の1つであるグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)は、糖尿病患者において高血糖を抑制する治療剤として開発中の物質であり、その機能としては、インスリンの合成及び分泌の促進、グルカゴンの分泌の抑制、胃排出の抑制、グルコースの使用の促進、及び摂食の抑制が挙げられる。
【0006】
トカゲ毒から作られたエキセンジン-4は、GLP-1とのアミノ酸相同性がおよそ50%であるが、エキセンジン-4も、GLP-1受容体を活性化して、糖尿病患者の高血糖を抑制することが報告されている。
【0007】
しかしながら、経口投与した場合のペプチド薬及びタンパク質薬における問題は、酵素の攻撃により分解されてしまうこと、及び腸膜透過性が低いことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ビオチン部分に結合した生理活性物質であって、経口服用時の体内吸収性に優れる生理活性物質、及びその生理活性物質を含む経口投与用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様では、ビオチン部分に結合した生理活性物質、及びその調製方法を提供する。
【0010】
本発明の別の態様では、ビオチン部分に結合した生理活性物質を含む経口投与用組成物を提供する。
【0011】
本発明のさらに別の態様では、ビオチン部分に結合した生理活性物質を含む医薬組成物を提供する。
【0012】
本発明のさらに別の態様では、糖尿病を予防または治療するための医薬組成物であって、ビオチン部分に結合した生理活性物質を含む組成物を提供する。
【0013】
本発明のさらに別の態様では、肥満を予防または治療するための医薬組成物であって、ビオチン部分に結合した生理活性物質を含む組成物を提供する。
【0014】
本発明のさらに別の態様では、骨粗しょう症を予防または治療するための医薬組成物であって、ビオチン部分に結合した生理活性物質を含む組成物を提供する。
【0015】
本発明のさらに別の態様では、脂肪肝を予防または治療するための医薬組成物であって、ビオチン部分に結合した生理活性物質を含む組成物を提供する。
【0016】
本発明のさらに別の態様では、過敏性腸症候群を予防または治療するための医薬組成物であって、ビオチン部分に結合した生理活性物質を含む組成物を提供する。
【0017】
本発明のさらに別の態様では、神経変性疾患を予防または治療するための医薬組成物であって、ビオチン部分に結合した生理活性物質を含む組成物を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一実施形態による、ビオチン部分に結合した生理活性物質は、経口服用時の体内吸収性に優れるように、水溶性ビオチンに結合していてよい。
【0019】
本発明の一実施形態による、ビオチン部分に結合した生理活性物質は、酵素により、ペプチド及びその他の生理活性物質が分離されるのを防ぎ、最終的には、生理活性物質の腸膜透過と、腸内吸収を促し得る。
【0020】
本発明の一実施形態による、ビオチン部分に結合した生理活性物質は、ビオチン(水溶性ビタミンの一種であるビタミンB7)に結合していることによって、ナトリウム依存性マルチビタミントランスポーターを介して、能動輸送によって吸収されることができる。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、ビオチン部分は、生理活性物質の非活性領域に結合していてよく、それによって、生理活性物質の活性が阻害されない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態3の精製時のクロマトグラムである。
図2】本発明の実施形態1~実施形態3の最終物質のクロマトグラムである。
図3】本発明の実施形態1~実施形態3のMALDI-TOF質量スペクトルである。
図4】ラットに経口投与した後の実施形態1~実施形態3の、時間に対する血中濃度を示したグラフである。
図5】各検体にグルコースを投与した後の血中グルコースの変化を示したグラフである。
図6】グルコースを各検体に投与した後の血中グルコースの変化を示したグラフである。
図7】グルコースを各検体に投与した後の血中グルコースの変化を示したグラフである。
図8】グルコースを各検体に投与した後の血中グルコースの変化を示したグラフである。
図9】本発明の実施形態10の精製時のクロマトグラムである。
図10】本発明の実施形態10の精製後のクロマトグラムである。
図11】本発明の実施形態11の逆相クロマトグラムである。
図12】本発明の実施形態10及び実施形態11のMALDI-TOF質量スペクトルである。
図13】本発明の実施形態12及び実施形態13の精製時のクロマトグラムである。
図14】本発明の実施形態12の精製後のクロマトグラムである。
図15】本発明の実施形態13の精製後のクロマトグラムである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
当業者が本発明を容易に実施できるように、以下では、本発明の実施例及び実施形態について詳細に説明していく。
【0024】
しかしながら、本発明は、様々な異なる形態で実施してもよく、本明細書に記載されている実施例及び実施形態に限定されない。本発明の明細書全体を通じて、ある特定の部分が、ある特定の要素を「含む」と言うときには、特に反対の記載がない限り、他の要素を除外しないが、他の要素をさらに含んでよいことを意味する。
【0025】
本明細書全体を通じて、程度について述べる用語として用いられる「約」及び「実質的に」などの用語は、いずれかの特有の製造公差もしくは材料公差、またはその公差に近似する数値を述べる目的で使用するとともに、本発明の理解を助ける目的で示されている厳密な数値または絶対的な数値について言及している開示内容の、侵害者による不正使用を防ぐ目的で使用する。本発明の全体を通じて用いられる「~する工程」または「~の工程」という用語は、「~するための工程」を意味しない。
【0026】
本発明の明細書全体を通じて、マーカッシュクレームで用いられる「それらの組み合わせ」という用語は、マーカッシュクレームの表現内で示された要素からなる群のうちの少なくとも1つの混合物または組み合わせであって、これらの要素からなる群から選択した少なくとも1つを含む混合物または組み合わせを指す。本発明の明細書全体を通じて、「及び/またはB」とは、「及びB、またはAもしくはB」を意味する。
【0027】
本発明の一態様では、ビオチン部分に結合した生理活性物質、及びその調製方法を提供する。本発明の一態様による、ビオチン部分に結合した生理活性物質は、経口服用時の体内吸収性に優れ得る。
【0028】
概して、ペプチド薬及びタンパク質薬は、水溶性が高く、BCS(Biopharmaceutical Classification System)のクラス3に当たり、その腸内吸収は限られる。ペプチド薬及びタンパク質薬は、親水性が高く、分子量が大きいこと、pHの低い胃酸によって分解され得ること、及びトリプシンのような酵素から攻撃されて、腸内吸収性が低くなることを特徴とする。ペプチド薬及びタンパク質薬は概して、経口バイオアベイラビリティ(BA)が0.1%前後であることから、医薬組成物として使用するのが困難となっている。この問題を解決するために、腸溶性被覆カプセルを用いて、[このような薬物]が胃を通過するようにされているが、この技術には、ペプチド及びタンパク質の吸収を根本的には改善できないという問題がある。
【0029】
これに対して、本発明の一実施形態による、ビオチン部分に結合した製薬学的活性物質は、腸膜透過性が改善されており、腸内吸収性が改善されているとみられる。
【0030】
より具体的には、本発明の一実施形態による、ビオチン部分に結合した生理活性物質は、ビオチン(水溶性ビタミンの一種であるビタミンB7)に結合していることによって、ナトリウム依存性マルチビタミントランスポーターを介して、能動輸送によって吸収されることができる。
【0031】
本発明では、「非置換または置換の」とは、置換されていなくても、置換されていてもよい[こと]を意味する。「置換された」とは、置換基を1つ以上有することを意味し、置換基とは、アルキレンまたはヘテロアルキレンのように、元の基における任意の原子に共有結合または縮合した化学部分を指す。
【0032】
本発明では、「ハロ」とは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素などを意味する。
【0033】
本発明では、「アルキル」とは、脂肪族または脂環族の飽和または不飽和炭化水素化合物の炭素原子から水素原子を取り除くことによって得られる1価の部分を意味し、その例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル及びネオペンチルが挙げられる。
【0034】
本発明では、「ヘテロアルキル」は、ヘテロ原子を少なくとも1つ含むアルキルであり、ヘテロ原子とは、ヘテロ原子が、アルキルにおける任意の炭素原子の位置にあるアルキルを意味し、C、CH、CHまたはCHを置換したものである。
【0035】
本発明では、「アルキレン」とは、脂肪族または脂環族の飽和または不飽和炭化水素化合物の炭素原子から水素原子を取り除くことによって得られる2価の部分を指す。
【0036】
本発明では、「ヘテロアルキレン」とは、ヘテロ原子を少なくとも1つ含むアルキレンを指す。
【0037】
本発明では、「アリール」とは、環原子を有する芳香族化合物の芳香族環原子から水素原子を取り除くことによって得られる1価の部分を指す。例えば、「C5-10アリール」では、炭素は、5~10個の環原子を有し、このアリールは、芳香族化合物の芳香族環原子から水素原子を取り除くことによって得られる1価の部分である。アリールの例としては、ベンゼン、アセナフテン、フルオレン、フェナレン、アセフェナントレン、及びアセアントレンから誘導される基が挙げられる。
【0038】
本発明では、「ヘテロアリール」は、ヘテロ原子を少なくとも1つ含むアリールであり、例えば、ピリジン、ピリミジン、ベンゾチオフェン、フリル、ジオキサラニル、ピロリル、オキサゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、イソベンゾフラン、インドール、イソインドール、インドリジン、インドリン、イソインドリン、プリン、ベンゾジオキサン、キノリン、イソキノリン、キノリジン、ベンゾオキサジン、ベンゾチアジン、ピリドピリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、ナフチリジン、プテリジン、ペリミジン、ピリドインドール、オキサントレン、フェノキサチイン、フェナジン及びフェノキサジンなどである。
【0039】
本発明では、「アリーレン」とは、環原子を有する芳香族化合物の芳香族環原子から水素原子を取り除くことによって得られる2価の部分を指す。
【0040】
本発明では、「ヘテロアリーレン」とは、ヘテロ原子を少なくとも1つ含むアリーレンを指す。
【0041】
本発明では、「アルケニル」とは、炭素-炭素二重結合を少なくとも1つ有するアルキルを指し、その例としては、ビニル(-CH=CH)、1-プロペニル(-CH=CHCH)、イソプロペニル、ブテニル、ペンテニル及びヘキセニルが挙げられる。
【0042】
本発明では、「アルキニル」とは、炭素-炭素三重結合を少なくとも1つ有するアルキル基を指し、その例としては、エチニル及び2-プロピニルが挙げられる。
【0043】
本発明の一実施形態によれば、ビオチン部分は、下記の一般式Aによって表すことができる。
[一般式A]
【化1】
【0044】
一般式Aでは、
Xは、生理活性物質に結合できる官能基であり、
Yは、スペーサーであり、
Zは、結合ユニットであり、
Bは、下記の化学式A-1によって表すことができ、
[化学式A-1]
【化2】
Zは、化学式A-1の
【化3】
に連結しており、
Tは、末端基であり、
mは、1~10の整数であり、
nは、0または1~10の整数であり、n=0のときには、Yは、BまたはTに直接結合しており、
pは、0~1の整数である。
【0045】
本発明の一実施形態では、一般式Aにおいて、Xは、生理活性物質と結合できる官能基である。以下に限らないが、その官能基としては、チオール基、カルボキシル基及び/またはアミン基と反応できる官能基、例えば、マレイミド基、スクシンイミド基、N-ヒドロキシスクシンイミド基、アルデヒド基またはカルボキシル基を挙げてよい。
【0046】
本発明の一実施形態では、官能基Xは、生理活性物質に結合するときに、その構造を維持しても、切断されても、修飾されてもよい。
【0047】
Yは、スペーサーであり、in vivoで切断可能である構造を有してよい。例えば、以下に限らないが、Yは、直接結合に相当してもよく、あるいはその構造内に、置換もしくは非置換のC1-50直鎖アルキレン、置換もしくは非置換のC1-50非直鎖アルキレン、置換もしくは非置換のC1-50直鎖ヘテロアルキレン、置換もしくは非置換のC1-50非直鎖ヘテロアルキレン、置換もしくは非置換のC1-50アリーレン、置換もしくは非置換のC1-50ヘテロアリーレン、-O-、-C(O)、-C(O)NR-、-C(O)O-、-S-、-NR-または-NOR-からなる群のうちの少なくとも1つを含んでもよく、式中、Rは、水素、置換もしくは非置換のC1-50アルキル、置換もしくは非置換のC1-50アリール、またはエチレングリコール繰り返し単位(-(CHCHO)-(式中、nは、1以上、20以下の整数である)であってよい。
【0048】
Zは、Bに結合できる結合ユニットであり、Zとしては、例えば、以下に限らないが、アミノ酸、ポリペプチド、アルキレン、アミンまたはポリアミドアミン構造を挙げてよい。
【0049】
以下に限らないが、アミノ酸としては、リシン、5-ヒドロキシリシン、4-オキサリシン、4-チアリシン、4-セレナリシン、4-チアホモリシン、5,5-ジメチルリシン、5,5-ジフルオロリシン、トランス-4-ジヒドロリシン、2,6-ジアミノ-4-ヘキセン酸、シス-4-ジヒドロリシン、6-N-メチリシン、ジアミノピメリン酸、オルニチン、3-メチルオルニチン、α-メチルオルニチン、シトルリン、ホモシトルリン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、オルニチン、プロリン、セリンまたはトレオニンを挙げてよい。
【0050】
nが0である場合、BまたはTは、Y(スペーサー)と直接結合してよい。
【0051】
Tは、末端基であり、以下に限らないが、例えば、水素またはNHであってよい。
【0052】
pが0である場合、Bが末端であってよい。
【0053】
本発明の一態様によれば、下記の一般式Aにおいて、mは、1~10の整数であってよく、具体的には、1~8、1~5及び1~4の整数であってよい。
【0054】
本発明の一態様では、Xは、マレイミド、スクシンイミド、N-ヒドロキシスクシンイミド、コハク酸スクシンイミジル、グルタミン酸スクシンイミジル、スクシンイミジルメチルエステル、スクシンイミジルペンチルエステル、炭酸スクシンイミジル、p-ニトロフェニルカーボネート、アルデヒド、アミン、チオール、オキシアミン、ヨードアセトアミド、アミノキシル、ヒドラジド、ヒドロキシ、プロピオン酸塩、ピリジル、ハロゲン化アルキル、ビニルスルホン、カルボキシル、ヒドラジド、ハロゲンアセトアミド、C2-5アルキニル、C6-20アリールジスルフィド、C5-20ヘテロアリールジスルフィド、イソシアネート、チオエステル、イミノエステル及びこれらの誘導体からなる群から選択されていてよい。
【0055】
本発明の具体的態様の1つでは、Xは、マレイミド、N-ヒドロキシスクシンイミド、アルデヒドまたはアミンである。
【0056】
本発明の一態様では、Yは、存在しないか、置換もしくは非置換の直鎖もしくは分岐鎖C1-50アルキレン、置換もしくは非置換の直鎖もしくは分岐鎖C1-50ヘテロアルキレン、置換もしくは非置換のC6-50アリーレン、または置換もしくは非置換のC6-50ヘテロアリーレンであり、置換されている場合には、=O、-C(O)NH、-OH、-COOH、-SH、=NH及び-NHからなる群から選択した少なくとも1つを含む
【0057】
本発明の一態様では、Yは、置換された直鎖または分岐鎖C1-50ヘテロアルキレンであり、-C(O)-を少なくとも1つ含む。
【0058】
本発明の一態様では、Yは、-(C(O))-(CH-(C(O)NH-(CH-(OCHCH-(C(O))-であり、式中、q、r、s及びtは、独立して選択されており、q及びSは、0または1であり、rは、1~20の整数であり、tは、0~20の整数である。
【0059】
本発明の一態様では、Yは、-(CHC(O)NHNH-であり、式中、rは、1~20の整数である。
【0060】
本発明の一態様では、Yは、-C(O)-を含む。
【0061】
本発明の一態様では、Yは、-C(O)NH-を含む。
【0062】
本発明の一態様では、Zは、下記のうちのいずれか1つであり、それぞれ、独立して選択されていてよい。
A)Xと一体になって、もしくはXとは別に、アミノ酸もしくはその誘導体を形成するか、または
B)置換もしくは非置換の直鎖または非直鎖C1-50ヘテロアルキレンであり、
置換されている場合には、=O、-C(O)NH、-OH、-COOH、-SH、=NH及び-NHからなる群から選択した少なくとも1つを含む。
【0063】
本発明の一態様では、Zは、B及び-NH-を介して連結されている。
【0064】
本発明の一態様では、Zは、親水性アミノ酸またはその誘導体である。
【0065】
具体的には、本発明の一態様では、Zは、リシン、アルギニン、ヒスチジン、グルタミン、アスパラギン、トレオニン、システイン、セリン及びこれらの誘導体からなる群から選択されていてよい。
【0066】
本発明の一態様では、Zは、少なくとも1つのグリセロール及び少なくとも1つのポリエチレングリコール、またはその結合を含む。
【0067】
本発明の一態様では、Zは、
【化4】
を含み、
【化5】
は、結合部位を表し、少なくとも1つの
【化6】
が、その結合部位に結合しており、式中、uは、1~20の整数である。
【0068】
本発明の一態様では、Zは、
【化7】
を含み、-(CHNH-が、
【化8】
にさらに結合している。
【0069】
本発明の一態様では、Tは、アミン、C1-8アルキル、C1-8 アルケニル、ハロ、ヒドロキシ、チオール、スルホン酸、カルボキシル、フェニル、ベンジル、アルデヒド、アジド、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、ニトリル及びホスホン酸からなる群から選択されていてよい。
【0070】
本発明の具体的な態様では、Tは、アミンである。
【0071】
本発明の一態様では、ビオチン部分は、
【化9-1】
【化9-2】
【化9-3】
【化9-4】
【化9-5】
【化9-6】
【化9-7】
【化9-8】
【化9-9】
【化9-10】
【化9-11】
【化9-12】
からなる群から選択されている。
【0072】
本発明の一実施形態によれば、ビオチン部分と生理活性物質は、様々な結合によって結合されていてよい。その結合は、生理活性物質の官能基に結合しているビオチン部分の官能基によって形成されていてよく、以下に限らないが、その結合は例えば、チオール-エーテル結合またはアミド結合であってよい。
【0073】
一例では、ビオチン部分と生理活性物質との結合は、下記の反応式1の方法によって形成してよい。下記の反応式1では、
【化10】
は、チオール基を含む生理活性物質を表し、反応式1は、本発明の一実施形態に従って、マレイミド基を含むビオチン部分と、生理活性物質に存在するシステイン残基のチオール基(-SH)との反応を表している。
【化11】
[反応式1]
【0074】
一例では、ビオチン部分と生理活性物質との結合は、下記の反応式2の方法によって形成してよい。反応式2では、
【化12】
は、アミン基を含む生理活性物質を表し、反応式2は、本発明の一実施形態に従って、N-ヒドロキシスクシンイミドを含むビオチン部分と、生理活性物質に存在するアミン基(-NH)との反応を表す。
【化13】
[反応式2]
【0075】
本発明の一実施形態によれば、生理活性物質には、特段の制限がなくてもよい。
【0076】
本発明では、生理活性物質とは、所定の目的で体内に投与し得るポリマー物質を意味する。
【0077】
本発明の一実施形態によれば、生理活性物質は、医薬組成物で用いる物質であってよい。以下に限らないが、[その物質]は例えば、糖尿病の予防もしくは治療、肥満の予防もしくは治療、骨粗しょう症の予防もしくは治療、脂肪肝の予防もしくは治療、過敏性腸症候群の予防もしくは治療、または神経変性疾患の予防もしくは治療に用いる物質であってよい。
【0078】
本発明の一実施形態によれば、生理活性物質は例えば、ポリペプチド、タンパク質、多糖またはそれらの誘導体であってよいが、これらに限らない。生理活性物質は例えば、グルカゴン、GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)、GLP-2(グルカゴン様ペプチド-2)、GIP(グルコース依存性インスリン分泌ポリペプチド)、エキセンジンg-4、インスリン、副甲状腺ホルモン、インターフェロン、エリスロポエチン、カルシトニン、セロトニン、リツキシマブ、トラスツズマブ、ウリカーゼ、組織プラスミノーゲンアクチベーター、サイモグロビン、ワクチン、ヘパリンまたはヘパリン類似物質、アンチトロンビンIII、フィルグラスチム、酢酸プラムリンチド、エキセナチド、エプチフィバチド、抗蛇毒素、IgG、IgM、HGH、サイロキシン、凝固第VII因子、凝固第VIII因子、モノクローナル抗体、治療剤として作用する糖脂質、及びこれらの誘導体であってよいが、これらに限らない。
【0079】
本発明の一実施形態によれば、ビオチン部分は、生理活性物質の不活性領域に結合していてよい。
【0080】
ビオチン部分は、生理活性物質の生物学的活性を阻害しないように、すなわち、生理活性物質の生物学的活性と同じか、または生理活性物質の生物学的活性を上回る生物学的活性を示すように、生理活性物質の不活性領域に結合していてよい。
【0081】
以下に限らないが、PSAは例えば、不活性領域に、その露出した-SH基を含んでよく、ビオチン部分は、その-SH基に結合していてよい。さらに、PSAは、不活性領域に、露出した-NH 基または-NH基を含んでよく、ビオチン部分は、その露出した-NH 基または-NH基に結合していてよい。さらに、PSAは、不活性領域に、露出した-N末端を含んでよく、ビオチン部分は、その露出したN末端に結合していてよい。PSAは、ポリペプチドの場合には、そのポリペプチドの活性が阻害されないように、その不活性領域のリシンアミノ酸の-NH+基、-NH基によって結合していてもよく、または、そのポリペプチドのN末端が不活性領域である場合には、N末端によって結合していてもよい。
【0082】
すなわち、本発明の一実施形態によれば、ビオチン部分がPSAに結合する位置は、その結合が、活性を示す部位を回避するように調節してよい。
【0083】
本発明の一実施形態によれば、PSAは、下記の配列番号1~7のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその誘導体であってよい。
配列番号1:H(Aib)QGTFTSDYSKYLDEQAAKEFVQWLMNT
配列番号2:HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGR
配列番号3:HADGSFSDEMNTILDNLAARDFINWLIQTKITD
配列番号4:YAEGTFISDYSIAMDKIHQQDFVNWLLAQKGKKNDWKHNITQ
配列番号5:HGEGTFTSDLSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGPSSGAPPS
配列番号6:SVSEIQLMHNLGKHLNSMERVEWLRKKLQDVHNF
配列番号7:HSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLMN
【0084】
さらに、PSAは、下記の配列番号15及び16のアミノ酸配列を有するタンパク質、または配列番号17及び16のアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよく、そのタンパク質は、配列番号15または17の6位のシステインと11位のシステインの間、配列番号15または17の7位のシステインと、配列番号16の7位のシステインの間、及び配列番号15または17の20位のシステインと、配列番号16の19位のシステインの間のジスルフィド結合を介して結合している。
配列番号15:GIVEQCCTSICSLEQLENYCN
配列番号16:FVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFTPKT
配列番号17:GIVEQCCTSICSLYQLENYCN
【0085】
本発明の一実施形態によれば、ビオチン部分との結合部位を調節するために、システインが、そのポリペプチドに置換または挿入されていてもよい。
【0086】
非限定的な例として、上記の配列番号1~7によって表されるアミノ酸配列からなる群から選択したポリペプチドの不活性領域のアミノ酸のうちのいずれかの少なくとも1つが、システインアミノ酸によって置換されていてもよく、またはシステインアミノ酸が、その位置に挿入されていてもよい。この場合には、ビオチン部分は、そのシステインアミノ酸の-SH基に結合している。さらに、システインアミノ酸が挿入されているポリペプチドは、配列番号8~14のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドであってよい。
配列番号8:H(Aib)QGTFTSDYSKYLDEQAAKEFVQWLMNTC
配列番号9:HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRC
配列番号10:HADGSFSDEMNTILDNLAARDFINWLIQTKITDC
配列番号11:YAEGTFISDYSIAMDKIHQQDFVNWLLAQKGKKNDWKHNITQC
配列番号12:HGEGTFTSDLSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGPSSGAPPPSC
配列番号13:SVSEIQLMHNLGKHLNSMERVEWLRKKLQDVHNFC
配列番号14:HSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLMNTC
【0087】
本発明の一実施形態によれば、ビオチン部分を有するPSAは、ペプチド及び非ペプチドポリマー、脂肪酸、コレステロール、抗体、抗体断片、アルブミン及びその断片、ヌクレオチド、フィブロネクチン、トランスフェリン、FcRn結合物質、サッカリド、エラスチン、ヘパリン、ならびにこれらの誘導体からなる群から選択した少なくとも1つと共有結合しているか、その群から選択した少なくとも1つとマイクロスフェアを形成していてもよい。
【0088】
この非ペプチドポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールとのコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール(PVA)、多糖、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、PLA(ポリ乳酸)、PLGA(ポリ乳酸-co-グリコール酸)、脂質ポリマー、キチン、ヒアルロン酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されていてよい。
【0089】
本発明の別の態様は、ビオチン部分に結合したPSAの調整方法であって、ビオチン部分を得ること、そのビオチン部分とPSAを反応させること、及びその反応の終了後、ビオチン部分と結合したPSAを単離する工程からなる方法を提供する。
【0090】
本発明の一実施形態によれば、ビオチン部分を得ることにおいて、そのビオチン部分は、上記の一般式Aによって表すことができる。
【0091】
本発明の一実施形態によれば、上記の混合物を反応させることにおいて、ビオチン部分のPSAに対する反応モル比は、0.5以上であってよい。具体的には、ビオチン部分のPSAに対するモル比は、0.5~5であってよい。適切な反応モル比は、ビオチン部分の分子構造、分子量、溶解性、反応溶液のpH、反応温度及び反応時間などに基づいて選択してよい。
【0092】
本発明の一実施形態によれば、上記反応は、緩衝液または有機溶媒を用いて行ってもよい。その緩衝液または有機溶媒には、特段の制限はなく、ビオチン部分の構造に応じて、当該技術分野において一般的に用いられている緩衝液を適宜選択してよい。
【0093】
本発明の一実施形態では、反応工程の温度及び持続期間は、使用するビオチン部分及びPSAの特徴に応じて、適宜調節してよい。以下に限らないが、[その反応]は、例えば、4℃で少なくとも3時間、またはそれよりも短い持続期間で、室温で行ってよい。この反応は、使用するビオチン部分の反応性の程度と対応付けてよい。適切な反応時間が経過後、反応溶液のpHを低下させることによって、反応を停止させてよい。
【0094】
本発明の一実施形態によれば、上記の反応工程の後に、未反応の材料を除去する工程を行ってもよい。未反応の材料の除去方法は、当該技術分野において一般的に用いられている方法であってよい。その方法は、以下に限らないが、例えば、適切な緩衝液、例えばPBS(リン酸緩衝生理食塩水)を用いる透析によって、[未反応の材料]を除去してもよい。
【0095】
本発明の一実施形態によれば、[その方法]は、単離工程の後に、精製工程を含んでもよい。単離及び精製の工程は、サイズ排除クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーまたはイオン交換クロマトグラフィーを用いて行ってよいが、これらに限らない。
【0096】
本発明の別の態様は、経口組成物のための組成物であって、上記の、ビオチン部分に結合したPSAを含む組成物を提供する。
【0097】
本発明の一実施形態による、ビオチン部分に結合した生理活性物質は、ビオチン(水溶性ビタミンの一種であるビタミンB7)に結合していることによって、ナトリウム依存性マルチビタミントランスポーターを介して、能動輸送によって吸収されることができ、腸膜透過性及び腸内吸収が促進される。
【0098】
本発明のさらに別の態様は、上記の、ビオチン部分に結合したPSAを含む医薬組成物を提供する。この医薬組成物の使用は、PSAの種類に応じて判断し得る。さらに、この医薬組成物は、経口投与用組成物であってもよい。
【0099】
本発明の一実施形態によれば、糖尿病を予防または治療するための医薬組成物であって、ビオチン部分に結合したPSAを含む組成物を提供してもよい。
【0100】
そのPSAは、糖尿病を予防または治療するために用いるものであってよい。以下に限らないが、例えば、そのPSAは、配列番号1~14のアミノ酸配列を有するポリペプチド、配列番号15及び16のアミノ酸配列を有するタンパク質、配列番号17及び16のアミノ酸配列を有するタンパク質、またはこれらの誘導体であってもよい。
【0101】
さらに、そのタンパク質は、配列番号15または17の6位のシステインと11位のシステインの間、配列番号15または17の7位のシステインと、配列番号16の7位のシステインの間、及び配列番号15または17の20位のシステインと、配列番号16の19位のシステインの間のジスルフィド結合を介して結合している。
【0102】
本発明の一実施形態によれば、肥満を予防または治療するための医薬組成物であって、ビオチン部分に結合したPSAを含む組成物を提供してもよい。
【0103】
そのPSAは、肥満を予防または治療するために用いるものであってよい。以下に限らないが、例えば、そのPSAは、配列番号1~14のアミノ酸配列を有するポリペプチド、配列番号15及び16のアミノ酸配列を有するタンパク質、配列番号17及び16のアミノ酸配列を有するタンパク質、またはこれらの誘導体であってもよい。
【0104】
さらに、そのタンパク質は、配列番号15または17の6位のシステインと11位のシステインの間、配列番号15または17の7位のシステインと、配列番号16の7位のシステインの間、及び配列番号15または17の20位のシステインと、配列番号16の19位のシステインの間のジスルフィド結合を介して結合している。
【0105】
本発明の一実施形態によれば、脂肪肝を予防または治療するための医薬組成物であって、ビオチン部分に結合したPSAを含む組成物を提供してもよい。
【0106】
そのPSAは、脂肪肝を予防または治療するために用いるものであってよい。以下に限らないが、例えば、そのPSAは、配列番号1~14のアミノ酸配列を有するポリペプチド、配列番号15及び16のアミノ酸配列を有するタンパク質、配列番号17及び16のアミノ酸配列を有するタンパク質、またはこれらの誘導体であってもよい。
【0107】
さらに、そのタンパク質は、配列番号15または17の6位のシステインと11位のシステインの間、配列番号15または17の7位のシステインと、配列番号16の7位のシステインの間、及び配列番号15または17の20位のシステインと、配列番号16の19位のシステインの間のジスルフィド結合を介して結合している。
【0108】
本発明の一実施形態によれば、過敏性腸症候群を予防または治療するための医薬組成物であって、ビオチン部分に結合したPSAを含む組成物を提供してもよい。
【0109】
そのPSAは、過敏性腸症候群を予防または治療するために用いるものであってよい。以下に限らないが、例えば、そのPSAは、配列番号1~14のアミノ酸配列を有するポリペプチド、配列番号15及び16のアミノ酸配列を有するタンパク質、配列番号17及び16のアミノ酸配列を有するタンパク質、またはこれらの誘導体であってもよい。
【0110】
さらに、そのタンパク質は、配列番号15または17の6位のシステインと11位のシステインの間、配列番号15または17の7位のシステインと、配列番号16の7位のシステインの間、及び配列番号15または17の20位のシステインと、配列番号16の19位のシステインの間のジスルフィド結合を介して結合している。
【0111】
本発明の一実施形態によれば、神経変性疾患を予防または治療するための医薬組成物であって、ビオチン部分に結合したPSAを含む組成物を提供してもよい。
【0112】
そのPSAは、神経変性疾患を予防または治療するために用いるものであってよい。以下に限らないが、例えば、そのPSAは、配列番号1~14のアミノ酸配列を有するポリペプチド、配列番号15及び16のアミノ酸配列を有するタンパク質、配列番号17及び16のアミノ酸配列を有するタンパク質、またはこれらの誘導体であってもよい。
【0113】
さらに、そのタンパク質は、配列番号15または17の6位のシステインと11位のシステインの間、配列番号15または17の7位のシステインと、配列番号16の7位のシステインの間、及び配列番号15または17の20位のシステインと、配列番号16の19位のシステインの間のジスルフィド結合を介して結合している。
【0114】
本発明の一実施形態によれば、ビオチン部分に結合した生理活性物質を活性成分として含む医薬組成物は、様々な経口用及び非経口用の剤形で調合及び投与してよいが、これらに限らない。
【0115】
調合するときには、一般的に用いられている充填剤、可溶化剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤、ならびにその他の希釈剤及び賦形剤を調合の際に用いてよい。
【0116】
経口投与用の固形製剤としては、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤及びカプセル剤が挙げられ、このような固形製剤は、少なくとも1つの賦形剤、例えばデンプン、炭酸カルシウム、スクロースまたはラクトースをその化合物に混合することによって調合し得る。
【0117】
さらに、単純な賦形剤に加えて、ステアリン酸マグネシウムまたはタルクのような滑沢剤を使用する。経口投与用の液体製剤としては、懸濁剤、経口用液剤、乳剤及びシロップ剤が挙げられ、この製剤は、一般的に用いられている希釈剤である水及び液体パラフィンに加えて、様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、香味剤、甘味剤及び保存剤を含んでよい。非経口投与用の製剤は、滅菌水溶液、非水性溶媒、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥薬及び坐剤を含む。非水性溶媒または懸濁剤として、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)、オリーブ油のような植物ベースの油、及びオレイン酸エチルのような注射可能なエステルを用いてよい。
【0118】
さらに、増殖性疾患または自己免疫疾患に対する治療剤としての有効性を向上させるために、カルシウムまたはビタミンD3を加えてもよい。
【0119】
本発明の一実施形態による医薬組成物の投与用量の範囲は、体重、年齢、性別、健康状態、食事、投与間隔、投与方法、排泄率及び疾患の重症度に応じて様々であってよいが、概して、1日に1回、または1日当たりの有効用量の範囲内で複数回、投与してよい。さらに、その有効用量は、1週間または2週間おきに複数回、投与してもよい。
【0120】
以下では、実施形態及び実験例を通じて、本発明について詳細に説明していく。ただし、下記の実施形態及び実験例は、本発明を例示するためのものとして意図されているに過ぎず、本発明の範囲は、下記の実施形態及び実験例によって限定されないものとする。
【実施例
【0121】
<実施形態:ビオチン部分の調製>
略語リスト
HBTU:3-[ビス(ジメチルアミノ)メチリウミル]-3H-ベンゾトリアゾール-1-オキシドヘキサフルオロホスフェート
DIEA:エチルジイソプロピルアミン
HATU:1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート
DIC:ジイソプロピルカルボジイミド
HOBt:1-ヒドロキシベンゾトリアゾール
MBHA:4-メチルベンズヒドリルアミンヒドロクロリド)
Fmoc:9-フルオレニルメトキシカルボニル
DMF:ジメチルホルムアミド
SPPS:固相ペプチド合成
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
LCMS:液体クロマトグラフィー質量分析
【0122】
一般的なSPPS方法
場合によっては、ペプチドの固相合成は、酸性条件下で切断し得る基の利用によって改善できる(例えば、2-Fmoc-オキシ-4-メトキシベンジル、または2,4,6-トリメトキシベンジルを有するd-ペプチドアミド結合において保護されたd-ペプチド)。使用したFmoc保護アミノ酸誘導体は、推奨される標準的な物質、例えば、Anaspect、Bachem、Iris BiotechまたはNovabiochemから供給されているFmoc-Ala-OH、Fmoc-Arg(Pbf)-OH、Fmoc-Asn(Trt)-OH、Fmoc-Asp(OtBu)-OH、Fmoc-Cys(Trt)-OH、Fmoc-Gln(Trt)-OH、Fmoc-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Gly-OH、Fmoc-His(Trt)-OH、Fmoc-Ile-OH、Fmoc-Leu-OH、Fmoc-Lys(Boc)-OH、Fmoc-Met-OH、Fmoc-Phe-OH、Fmoc-Pro-OH、Fmoc-Ser(tBu)-OH、Fmoc-Thr(tBu)-OH、Fmoc-Trp(Boc)-OH、Fmoc-Tyr(tBu)-OHまたはFmoc-Val-OHなどであった。N末端のアミノ酸は、αアミノ基においては、保護されたBocであった。例えば、Anaspec、Bachem、Iris BiotechまたはNovabiochemから供給されているFmoc-8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸、Fmoc-トラネキサム酸、Fmoc-イソニペコチン酸、Fmoc-Glu-OtBu、Fmoc-Lys(Fmoc)-OHを使用した。
【0123】
SPPSを用いたペプチド合成
ペプチドは、リンクアミドMBHA樹脂において、通常のFmoc化学法を用いて、HBTU/DIEA、HATU/DIEAまたはDIC/HOBtをカップリング試薬として使用して合成してよい。合成の際に用いる反応物質及びカップリング試薬には、下記の組み合わせが含まれる。
【表1】
【0124】
SPSSを用いたペプチド合成プロセスの例示的なプロトコールとしては、下記のものが挙げられる。
1)リンクアミドMBHA樹脂の入った反応容器にDMFを加え、2時間膨張させる(sub:0.68mmol/g、1.0mmol、1.47gまたは5mmol、7.35g、sub:0.68mmol/g)。2)20%ピペリジン/DMFを加えてから、30分混合する。3)1)~2)の溶媒を除去してから、DMFで洗浄する(30秒×5回)。4)反応物質(番号1~番号5の反応物質のうちの1つ)を加えてから、30秒混合した後、カップリング試薬(番号1~番号5のカップリング試薬のうちの1つ)を加え、窒素で1時間バブリングする。5)20%ピペリジン/DMFを加えてから、30分混合する。
【0125】
上記の例示的なプロトコール1)~5)では、番号1~番号5の反応物質とカップリング試薬の組み合わせを少なくとも1回用いて、合成を繰り返し行ってもよい。Fmocを除去するために、[上記混合物]を20%ピペリジン/DMF溶液で30分処理した。
【0126】
ペプチドの精製及び解析の一般的なプロセス
未精製のペプチドを水、TFA及びACNの適切な混合物に溶解し、分取HPLCを用いて精製し、乾燥し、定量した。分取HPLCを用いる精製の条件としては、下記の表2に示した条件が挙げられる。
【表2】
【0127】
分取HPLCを用いた精製後、分析用HPLCまたはLMSを使用して、最終生成物の特徴を分析した。
【0128】
分析により、下記の表3のビオチン部分が得られたことが示された。
【表3】
B1:
【化14】
B2:
【化15】
B3:
【化16】
B4:
【化17】
B5:
【化18】
【0129】
さらに、SPSSを用いたペプチド合成プロトコール1)~5)、精製及び分析を通じて、下記のビオチン部分が得られた。表4では、X、Y、Z及びBは、本明細書の一般式Aの定義に含まれるものである。
【表4-1】
【表4-2】
【0130】
<実施形態:ビオチン部分に結合した生理活性物質の調製>
<実施形態1~3>
1)調製実施例
0.3%トリエチルアミン(TEA、Sigma)を反応溶媒とした加えたDMSO溶媒を用いて、下記の表5に示したポリペプチド-ビオチン部分(モル比=1:2)の混合物であって、配列番号12のポリペプチドと、上記の表3に示されているビオチン部分との混合物(B1、B2及びB3をそれぞれ用いた。配列番号12のポリペプチド:B1、B2またはB3)を調製した。その混合物を少なくとも30分、室温で反応させ、混合物の体積と同じ体積の1%トリフルオロ酢酸を加えることによって、反応を停止させた。
【表5】
【0131】
2)単離、精製及び確認
逆相高速液体クロマトグラフィー(以下「HPLC」という)を用いて、上記の実施形態1~3の反応生成物を単離及び精製した。
【0132】
SUPERSIL ODS-1カラム(10×250mm、5μm、LB Science,South Korea)をカラムとして使用した。その移動相条件は、4.7m/分の流速を保ち、30→50%の溶媒B(0.1%TFAを含むアセトニトリル)及び溶媒A(0.1%TFAを含む蒸留水)を用いて、線形に変化させた。UV吸光光度計で280nmにおいてモニタリングして、12~14分の間に検出されたピーク液を回収した。回収したピーク液から、有機溶媒及びTFAを真空下で蒸発させた後、分子量カットオフが適切である超遠心フィルターを用いて、濃縮及び精製した。HPLC分析を用いて、精製した物質の純度を確認した。Gemini C18カラム(4.6×250mm、5μm、Phenomenex,CA,USA)を用いて、室温前後の一定温度で分析を行った。グラジエント溶出法を用いて、流速1mL/分で、トリフルオロ酢酸試験溶液:アセトニトリル混合物からなる移動相(混合率を70:30から、20分で50:50に変化させた)を使用して分析を行った。UVの吸光を280nmで観察した。
【0133】
図1は、実施形態3の精製時のクロマトグラムである。
【0134】
図2は、実施形態1~実施形態3の最終物質のクロマトグラムである。
【0135】
UV検出器を用いた分析では、ビオチン部分に結合したポリペプチド以外のピークは観察されず、実施形態1~3の純度は、各クロマトグラムにおいて、ピーク面積をパーセンテージとして表したところ、99%以上であることが確認された。
【0136】
分子量の確認
実施形態1~実施形態3で得られた最終物質の分子量を測定した。
【0137】
分子量は、MALDI-TOF質量分析法を用いて測定した。マトリックス溶液としては、CHCA(α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸)で飽和させた0.1%TFAを含む50%アセトニトリル溶液を使用した。質量スペクトルをリニアモード及びリフレクトロンモードで調べ、0.1mg/mLの最終物質濃度で、分子量を確認した。
【0138】
図3は、実施形態1~実施形態3のMALDI-TOF質量スペクトルである。図3を参照したところ、MALDI-TOF質量分析による、単離物質の分子量が、理論分子量と一致したことが確認された。
【0139】
<実施形態4~9>
実施形態1~3と方法と同じ方法を用いて、下記の表6に示されているような配列番号8及び13のポリペプチドにビオチン部分を結合させることによって、ポリペプチド-ビオチン部分を調製した。
【表6】
【0140】
[評価]
反応率及び収率
反応率は、最初の混合物を得る工程で加えたポリペプチドの量に基づき、ビオチン部分を有する混合物のHPLC分析で、実施形態1~3のHLPCピーク面積を比較することによって得た。
【0141】
本発明の収率は、最初の混合物を得る工程で加えたポリペプチドの量に基づき、最終精製物質の量を定めることによって得た。結果は、下記の表7に示されている。
【表7】
【0142】
実施形態1~3の経口吸収速度の測定
経口吸収速度を確認するために、薬物挙動を比較した。
【0143】
体重約200gの実験ラット(SDラット)に、試験薬を100μg/kgの量で静脈内投与したとともに、500μg/kgの量で経口投与してから、血清を採取し、酵素結合免疫吸着法を行って、血中薬物濃度の経時的変化を測定した。血液試料は、頚静脈から採取した。結果から平均を算出し、配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコントロールとして使用した。実験結果では、経口吸収速度が、コントロールよりも、実施形態1では約257倍、実施形態2では270倍、実施形態3では約557倍上昇していたことがわかった。
【0144】
図4は、ラットに経口投与した後の実施形態1~実施形態3の、時間に対する血中濃度を示したグラフである。図4に示されているように、実施形態1~3は、コントロールと比べて、経口吸収に優れることが確認された。
【0145】
実施形態1~3の血中グルコース調節能の測定
グルコース耐性を確認するために、GLP-1アゴニストの経口剤形である実施形態1~3をマウスに経口投与し、腹腔内グルコース耐性試験(IPGTT)によって、血中グルコースを調節する有効性を測定した。
【0146】
動物モデルにおいて、腹膜のグルコース耐性を測定するために、試験薬100μl(1μg/マウス、配列番号1)を9週齢の雄マウス(C57BL/6)に、-60分の時点に経口投与してから、グルコース200μl(2g/kg)を腹腔内注射し、-60分、0分、20分、40分、60分、90分及び120分の時点に尾静脈から採取した血液で、血中グルコースの変化を観察した。コントロール1では、配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチドを皮下投与し、コントロール2では、これと同じポリペプチドを経口投与した。
【0147】
図5は、各検体にグルコースを投与した後の血中グルコースの変化を示したグラフである。図5に示されているように、実施形態1~3には、グルコース調節能があることが確認された。
【0148】
実施形態5及び実施形態6の血中グルコース調節能の測定
グルコース耐性を確認するために、実施形態5及び6をマウスに経口投与し、腹腔内グルコース耐性試験によって、血中グルコースを調節する有効性を測定した。
【0149】
動物モデルにおいて、腹膜のグルコース耐性を測定するために、試験薬100μl(500μg/kg、配列番号2)を9週齢の雄マウス(C57BL/6)に、-20分の時点に経口投与してから、グルコース200μl(2g/kg)を腹腔内注射し、-20分、0分、20分、40分、60分、90分及び120分の時点に尾静脈から採取した血液で、血中グルコースの変化を観察した。
【0150】
図6は、グルコースを各検体に投与した後の血中グルコースの変化を示したグラフである。図6に示されているように、実施形態5及び6には、グルコース調節能があることが確認された。
【0151】
実施形態8及び実施形態9の経口吸収速度の測定
実施形態8及び9の経口吸収速度を測定した。試験薬を皮下注射及び経口によって、20μg/kgの量で、体重約200gの実験ラット(SDラット)に投与した後、血清を単離し、酵素結合免疫吸着法を行って、血中薬物濃度の経時的変化を測定した。血液試料は、頚静脈から採取した。測定結果は、下記の表8に示されているとおりである。配列番号6のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコントロールとして使用した。
【表8】
【0152】
上に示されているように、本発明の一実施形態による、ビオチン部分に結合したポリペプチドは、腸内吸収速度が高いことが確認された。
【0153】
<実施形態10>
下記の表9における、表3のビオチン部分B4、及び配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチドを用いて、ビオチン部分に結合したポリペプチドを調製した。
【表9】
【0154】
1)調製実施例
反応溶媒として0.3%トリエチルアミン(TEA、Sigma)を加えたDMSO溶媒を用いて、配列番号5のポリペプチドと、上記の表3のB4の混合物(モル比は1:4)を調製した。その混合物を2時間、室温で反応させ、混合物の体積と同じ体積の1%トリフルオロ酢酸を加えることによって、反応を停止させた。
【0155】
2)単離、精製及び確認
逆相HPLCを用いて、実施形態10の反応生成物を単離及び精製した。
【0156】
SUPERSIL ODS-1カラム(10×250mm、5μm、LB Science,South Korea)をカラムとして使用した。その移動相条件は、4.7m/分の流速を保ち、30→50%の溶媒B(0.1%TFAを含むアセトニトリル)及び溶媒A(0.1%TFAを含む蒸留水)を用いて、線形に変化させた。UV吸光光度計で280nmにおいてモニタリングして、12.7分に検出されたピーク液を回収した。回収したピーク液から、有機溶媒及びTFAを真空下で蒸発させた後、分子量カットオフが適切である超遠心フィルターを用いて、濃縮及び精製した。HPLC分析を用いて、精製した物質の純度を確認した。Gemini C18カラム(4.6×250mm、5μm、Phenomenex,CA,USA)を用いて、室温前後の一定温度で分析を行った。流速1mL/分で、トリフルオロ酢酸試験溶液:アセトニトリル混合物からなる移動相(混合率を70:30から、20分で50:50に変化させた)を使用して分析を行った。UVの吸光を280nmで観察した。
【0157】
図9は、本発明の実施形態10の精製時のクロマトグラムである。配列番号1の未反応のポリペプチドが11.7分で検出され、ビオチン部分に結合した実施形態10の物質が12.7分で検出された。
【0158】
図10は、本発明の実施形態10の精製後のクロマトグラムである。ビオチン部分に結合したポリペプチドのピークが1つ確認され、他のピークは観察されなかった。クロマトグラムにおいて、ピーク面積をパーセンテージとして表したところ、純度が95%以上であることが確認された。
【0159】
3)分子量の確認
実施形態10で得られた最終物質の分子量を測定した。
【0160】
分子量は、MALDI-TOF質量分析法を用いて測定した。マトリックス溶液としては、CHCA(α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸)で飽和させた0.1%TFAを含む50%アセトニトリル溶液を使用した。質量スペクトルは、リニアモード及びリフレクトロンモードで調べた。
【0161】
<実施形態11>
下記の表10における、表3のビオチン部分B5、及び配列番号12のアミノ酸配列を有するポリペプチドを用いて、ビオチン部分に結合したポリペプチドを調製した。
【表10】
【0162】
1)調製実施例
反応溶媒として0.3%トリエチルアミン(TEA、Sigma)を加えたDMSO溶媒を用いて、配列番号12のポリペプチドと、上記の表3のB5の混合物(モル比は1:2)を調製した。その混合物を30分、室温で反応させ、混合物の体積と同じ体積の1%トリフルオロ酢酸を加えることによって、反応を停止させた。
【0163】
2)単離、精製及び確認
逆相HPLCを用いて、実施形態10の反応生成物を単離及び精製した。
【0164】
SUPERSIL ODS-1カラム(10×250mm、5μm、LB Science,South Korea)をカラムとして使用した。その移動相条件は、4.7m/分の流速を保ち、30→50%の溶媒B(0.1%TFAを含むアセトニトリル)及び溶媒A(0.1%TFAを含む蒸留水)を用いて、線形に変化させた。UV吸光光度計で280nmにおいてモニタリングして、11分~13分に検出されたピーク液を回収した。回収したピーク液から、有機溶媒及びTFAを真空下で蒸発させた後、分子量カットオフが適切である超遠心フィルターを用いて、濃縮及び精製した。HPLC分析を用いて、精製した物質の純度を確認した。Gemini C18カラム(4.6×250mm、5μm、Phenomenex,CA,USA)を用いて、室温前後の一定温度で分析を行った。流速1mL/分で、トリフルオロ酢酸試験溶液:アセトニトリル混合物からなる移動相(混合率を70:30から、20分で50:50に変化させた)を使用して分析を行った。UVの吸光を280nmで観察した。
【0165】
図11は、本発明の実施形態11の逆相クロマトグラムである。ビオチン部分に結合したポリペプチドのピークが1つ確認され、他のピークは観察されなかった。クロマトグラムにおいて、ピーク面積をパーセンテージとして表したところ、純度が90%以上であることが確認された。
【0166】
3)分子量の確認
実施形態11で得られた最終物質の分子量を測定した。
【0167】
分子量は、MALDI-TOF質量分析法を用いて測定した。マトリックス溶液としては、CHCA(α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸)で飽和させた0.1%TFAを含む50%アセトニトリル溶液を使用した。質量スペクトルは、リニアモード及びリフレクトロンモードで調べた。
【0168】
図12は、本発明の実施形態10及び実施形態11のMALDI-TOF質量スペクトルである。図12を参照したところ、MALDI-TOF質量分析により、単離物質の分子量が、その理論分子量と一致したことが確認された。
【0169】
<実施形態12及び13>
下記の表11における、表3のビオチン部分B4、及び配列番号15及び16のアミノ酸配列を有するポリペプチドを用いて、ビオチン部分に結合したポリペプチドを調製した。
【表11】
【0170】
1)調製実施例
反応溶媒として0.3%トリエチルアミン(TEA、Sigma)を加えたDMSO溶媒を用いて、配列番号15及び16のポリペプチドと、上記の表3のB4の混合物(モル比は1:16)を調製した。その混合物を2時間、室温で反応させ、混合物の体積と同じ体積の1%トリフルオロ酢酸を含む30%アセトニトリル/蒸留水溶液を加えることによって、反応を停止させた。
【0171】
2)単離、精製及び確認
逆相HPLCを用いて、実施形態12及び13の反応生成物を単離及び精製した。
【0172】
SUPERSIL ODS-1カラム(10×250mm、5μm、LB Science,South Korea)をカラムとして使用した。その移動相条件は、4.7m/分の流速を保ち、30→40%の溶媒B(0.1%TFAを含むアセトニトリル)及び溶媒A(0.1%TFAを含む蒸留水)を用いて、線形に変化させた。UV吸光光度計で280nmにおいてモニタリングして、12.7分に検出されたピーク液を回収した。回収したピーク液から、有機溶媒及びTFAを真空下で蒸発させた後、分子量カットオフが適切である超遠心フィルターを用いて、濃縮及び精製した。HPLC分析を用いて、精製した物質の純度を確認した。Gemini C18カラム(4.6×250mm、5μm、Phenomenex,CA,USA)を用いて、室温前後の一定温度で分析を行った。流速1mL/分で、トリフルオロ酢酸試験溶液:アセトニトリル混合物からなる移動相(混合率を70:30から、20分で50:50に変化させた)を使用して分析を行った。UVの吸光を280nmで観察した。
【0173】
図13は、本発明の実施形態12及び実施形態13の精製時のクロマトグラムである。配列番号7の未反応のポリペプチドが、12.1分に検出され、ビオチン部分に結合した実施形態12の物質が、12.3分に検出され、実施形態13の物質が、12.5分に検出された。
【0174】
図14は、本発明の実施形態12の精製後のクロマトグラムである。ビオチン部分に結合したポリペプチドのピークが1つ確認され、他のピークは観察されなかった。クロマトグラムにおいて、ピーク面積をパーセンテージとして表したところ、純度が95%以上であることが確認された。
【0175】
図15は、本発明の実施形態13の精製後のクロマトグラムである。ビオチン部分に結合したポリペプチドのピークが1つ確認され、他のピークは観察されなかった。クロマトグラムにおいて、ピーク面積をパーセンテージとして表したところ、純度が95%以上であることが確認された。
【0176】
3)分子量の確認
実施形態12及び13で得られた最終物質の分子量を測定した。
【0177】
分子量は、MALDI-TOF質量分析法を用いて測定した。マトリックス溶液としては、CHCA(α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸)で飽和させた0.1%TFAを含む50%アセトニトリル溶液を使用した。質量スペクトルは、リニアモード及びリフレクトロンモードで調べた。
【0178】
[評価]
実施形態10及び11の血中グルコース調節能の測定
グルコース耐性を確認するために、GLP-1アゴニストの経口剤形である実施形態10及び11をマウスに経口投与し、腹腔内グルコース耐性試験(IPGTT)によって、血中グルコースを調節する有効性を測定した。
【0179】
動物モデルにおいて、腹膜のグルコース耐性を測定するために、実施形態10及び11で調製したビオチン部分に結合したポリペプチド100μl(10μg/マウス、配列番号1)を9週齢の雄マウス(C57BL/6)に、-20分の時点に経口投与してから、グルコース200μl(2g/kg)を腹腔内注射し、-20.0分、0分、20分、40分、60分、90分及び120分の時点に尾静脈から採取した血液で、血中グルコースの変化を観察した。コントロールでは、配列番号5によって表されるアミノ酸配列からなるエキセンジン-4を経口投与した。
【0180】
図7は、グルコースを各検体に投与した後の血中グルコースの変化を示したグラフである。図7に示されているように、実施形態10~11には、血中グルコース調節能があることが確認された。
【0181】
実施形態12及び13の生物学的活性の測定
ビオチン部分を結合する前と、結合した後のポリペプチドの生物学的活性を比較した。さらに、ビオチン部分の結合位置による生物学的活性を比較した。
【0182】
具体的には、PathHunter(登録商標)Insulin Bioassay Kit(DiscoverX、#93-0466Y3-00007)を用いて、生物学的活性を測定した。
【0183】
PathHunter U2OS INSRb Bioassay細胞を96ウェルプレートに播種してから、AssayComplete(商標)Cell Plating Reagent5(CP5)において、24時間培養した。続いて、それぞれの薬物を20μl、300、60、20、6.67、2.22、0.74、0.25、0.05及び0.01の濃度で加えた。3時間の培養後、検出試薬1を10μl加え、15分反応させた後、検出試薬2を40μl加え、60分反応させた。その後、96ウェルマイクロプレートリーダーを用いて、発光を測定した。配列番号15のアミノ酸配列を有する鎖A、及び配列番号16のアミノ酸配列を有する鎖Bからなるタンパク質をコントロールとして使用した。コントロールでは、そのタンパク質は、鎖AのC6と鎖AのC11の間、鎖AのC7と鎖BのC7の間、及び鎖AのC20と鎖BのC19の間に、ジスルフィド結合を有する。
【表12】
【0184】
実施形態12及び13の血中グルコース調節能の測定
グルコース耐性を確認するために、タンパク質の経口剤形である実施形態12及び13をマウスに経口投与し、腹腔内グルコース耐性試験によって、血中グルコースを調節する有効性を測定した。
【0185】
動物モデルにおいて、腹膜のグルコース耐性を測定するために、実施形態12及び13で調製した、ビオチン部分に結合したポリペプチド100μl(10μg/マウス)を9週齢の雄マウス(C57BL/6)に、-20分の時点に経口投与してから、グルコース200μl(2g/kg)を腹腔内注射し、-20分、0分、20分、40分、60分、90分及び120分の時点に尾静脈から採取した血液で、血中グルコースの変化を観察した。その一方で、配列番号15のアミノ酸配列を有する鎖A、及び配列番号16のアミノ酸配列を有する鎖Bからなるタンパク質をコントロールとして使用した。
【0186】
図8は、グルコースを各検体に投与した後の血中グルコースの変化を示したグラフである。図8に示されているように、実施形態12~13には、グルコース調節能があることが確認された。
【0187】
当業者は、常法の実験を通じて、本明細書に示されている本発明の具体例の均等物を数多く認識または確認し得る。このような均等物は、添付の請求項に含まれるものとして意図されている。本発明の上記の説明は、例示的なものと意図されており、本発明の技術的趣旨またはその本質的特徴を変化させずに、本発明が他の具体的な形態に容易に修正されることを、本発明の属する技術分野の当業者は理解できるであろう。すなわち、上記の実施形態は、いかなる状況でも、例示的かつ非限定的なものであることを理解されたい。例えば、組み合わせたものとして記載されているそれぞれの構成要素は、別々に実施してもよく、同様に、別々のものとして記載されている構成要素は、組み合わせた形で実施してもよい。添付の請求項の趣旨及び範囲、ならびにそれらの均等概念から推察し得る修正形態または変形形態はいずれも、本発明の範囲に含まれるものとして解釈し得る。
【0188】
産業上の利用可能性
本発明は、ビオチン部分に結合した生理活性物質であって、経口服用時の体内吸収性に優れる生理活性物質、その生理活性物質を含む経口投与用組成物であり、ビオチン部分に結合した生理活性物質は、SPSSのような方法を用いてビオチン部分を調製し、そのビオチン部分を生理活性物質と混合することによって調製できる。さらに、本発明には、ビオチン部分の結合により、生理活性物質の分解を防ぎ、最終的には、生理活性物質の腸膜透過と、腸内吸収を促すことができるという利点がある。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
ビオチン部分に結合した生理活性物質であって、前記ビオチン部分が、前記生理活性物質の不活性領域に結合している、前記生理活性物質。
(項目2)
前記ビオチン部分が、下記の一般式Aによって表され、
[一般式A]
【化19】

前記一般式Aにおいて、
Xが、前記生理活性物質に結合できる官能基であり、
Yが、スペーサーであり、
Zが、結合ユニットであり、
Bが、下記の化学式A-1によって表すことができ、
[化学式A-1]
【化20】

前記Zが、前記化学式A-1の
【化21】

に連結しており、
Tが、末端基であり、
mが、1~10の整数であり、
nが、0または1~10の整数であり、n=0のときには、前記Yが、前記Bまたは前記Tに直接結合しており、
pが、0~1の整数である、項目1に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
(項目3)
前記ビオチン部分が、ポリペプチド、タンパク質及び多糖からなる群から選択した前記生理活性物質に結合している、項目1に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
(項目4)
前記生理活性物質が、露出した-SH基を含み、前記ビオチン部分が、前記-SH基に結合している、項目1に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
(項目5)
前記生理活性物質が、露出した-NH 基または-NH 基を含み、前記ビオチン部分が、前記-NH 基または前記-NH 基に結合している、項目1に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
(項目6)
前記生理活性物質が、N末端を含み、前記ビオチン部分が、前記N末端に結合している、項目1に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
(項目7)
前記生理活性物質が、グルカゴン、GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)、GLP-2(グルカゴン様ペプチド-2)、GIP(グルコース依存性インスリン分泌ポリペプチド)、エキセンジンg-4、インスリン、副甲状腺ホルモン、インターフェロン、エリスロポエチン、カルシトニン、セロトニン、リツキシマブ、トラスツズマブ、ウリカーゼ、組織プラスミノーゲンアクチベーター、サイモグロブリン、ワクチン、ヘパリンまたはヘパリン類似物質、アンチトロンビンIII、フィルグラスチム、酢酸プラムリンチド、エキセナチド、エプチフィバチド、抗蛇毒素、IgG、IgM、HGH、サイロキシン、凝固第VII因子、凝固第VIII因子、モノクローナル抗体、治療剤として作用する糖脂質、及びこれらの誘導体からなる群から選択されている、項目1に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
(項目8)
前記生理活性物質が、配列番号1~配列番号7によって表されるアミノ酸配列からなる群から選択したポリペプチド、配列番号15及び配列番号16によって表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、または配列番号17及び配列番号16によって表されるアミノ酸配列からなるタンパク質である、項目1に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
(項目9)
前記配列番号15及び前記配列番号16、または前記配列番号17及び前記配列番号16のアミノ酸配列を有する前記タンパク質が、前記配列番号15または前記配列番号17の6位のシステインと11位のシステインの間、前記配列番号15または前記配列番号17の7位のシステインと、前記配列番号16の7位のシステインの間、及び前記配列番号15または前記配列番号17の20位のシステインと、前記配列番号16の19位のシステインの間のジスルフィド結合を介して結合しているタンパク質である、項目8に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
(項目10)
前記ビオチン部分が、ポリペプチドのリシンアミノ酸の-NH 基、-NH 基またはN末端に結合している、項目5または項目6に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
(項目11)
前記生理活性物質が、ポリペプチドであり、前記ポリペプチドにおいて、配列番号1~7によって表されるアミノ酸配列からなる群から選択したポリペプチドの不活性領域のアミノ酸配列のうちのいずれかの少なくとも1つが、システインアミノ酸によって置換されているか、またはシステインアミノ酸が、前記少なくとも1つの位置に挿入されており、前記ビオチン部分が、前記システインアミノ酸の-SH基に結合している、項目1に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
(項目12)
前記生理活性物質が、配列番号8~14によって表されるアミノ酸配列からなる群から選択したポリペプチドである、項目10に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
(項目13)
前記Xが、マレイミド、スクシンイミド、N-ヒドロキシスクシンイミド、コハク酸スクシンイミジル、グルタミン酸スクシンイミジル、スクシンイミジルメチルエステル、スクシンイミジルペンチルエステル、炭酸スクシンイミジル、p-ニトロフェニルカーボネート、アルデヒド、アミン、チオール、オキシアミン、ヨードアセトアミド、アミノキシル、ヒドラジド、ヒドロキシ、プロピオネート、ピリジル、ハロゲン化アルキル、ビニルスルホン、カルボキシル、ヒドラジド、ハロゲンアセトアミド、C 2-5 アルキニル、C 6-20 アリールジスルフィド、C 5-20 ヘテロアリールジスルフィド、イソシアネート、チオエステル、イミノエステル及びこれらの誘導体からなる群から選択されている、項目2に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
(項目14)
前記Xが、マレイミド、N-ヒドロキシスクシンイミド、アルデヒドまたはアミンである、項目2に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
(項目15)
前記Yが、存在しないか、置換もしくは非置換の直鎖もしくは分岐鎖C 1-50 アルキレン、置換もしくは非置換の直鎖もしくは分岐鎖C 1-50 ヘテロアルキレン、置換もしく非置換のC 6-50 アリーレン、または置換もしくは非置換のC 6-50 ヘテロアリーレンであり、
置換されている場合には、=O、-C(O)NH 、-OH、-COOH、-SH、=NH及び-NH からなる群から選択した少なくとも1つを含む、項目2に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
(項目16)
前記Yが、置換された直鎖または分岐鎖C 1-50 ヘテロアルキレンであり、-C(O)-を少なくとも1つ含む、項目2に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
(項目17)
前記Yが、-(C(O)) -(CH -(C(O)NH -(CH -(OCH CH -(C(O)) -であり、
前記式中、q、r、s及びtが、独立して選択されており、
前記q及び前記Sが、0または1であり、
前記rが、1~20の整数であり、
前記tが、0~20の整数である、項目2に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
(項目18)
前記Yが、-(CH C(O)NHNH-であり、前記rが、1~20の整数である、項目2に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
(項目19)
前記Yが、-C(O)-を含む、項目2に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
(項目20)
前記Yが、-C(O)NH-を含む、項目2に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
(項目21)
前記Zが、下記のうちのいずれか1つであり、それぞれ、独立して選択されていてよい、項目2に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
A)Xと一体になって、もしくはXとは別に、アミノ酸もしくは誘導体を形成するか、または
B)置換もしくは非置換の直鎖もしくは非直鎖C 1-50 ヘテロアルキレンであり、置換されている場合には、=O、-C(O)NH 、-OH、-COOH、-SH、=NH及び-NH からなる群から選択した少なくとも1つを含む。
(項目22)
前記Zが、前記B及び-NH-を介して連結している、項目2に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
(項目23)
前記Zが、親水性アミノ酸またはその誘導体である、項目2に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
(項目24)
前記Zが、リシン、アルギニン、ヒスチジン、グルタミン、アスパラギン、トレオニン、システイン、セリン及びこれらの誘導体からなる群から選択されている、項目2に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
(項目25)
前記Zが、少なくとも1つのグリセロール及び少なくとも1つのポリエチレングリコール、またはその結合を含む、項目2に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
(項目26)
前記Zが、
【化22】

を含み、
【化23】

が、結合部位を表し、
少なくとも1つの
【化24】

が、前記結合部位に結合しており、
前記式中、uが、1~20の整数である、項目2に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
(項目27)
-(CH NH-が、前記
【化25】

にさらに結合している、項目26に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
(項目28)
前記Tが、アミン、C 1-8 アルキル、C 1-8 アルケニル、ハロ、ヒドロキシ、チオール、スルホン酸、カルボキシル、フェニル、ベンジル、アルデヒド、アジド、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、ニトリル及びホスホン酸からなる群から選択されている、項目2に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
(項目29)
前記Tが、アミンである、項目2に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
(項目30)
前記ビオチン部分が、
【化26-1】

【化26-2】

【化26-3】

【化26-4】

【化26-5】

【化26-6】

【化26-7】

【化26-8】

【化26-9】

【化26-10】

【化26-11】

【化26-12】

からなる群から選択されている、項目1に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質。
(項目31)
哺乳動物において経口投与可能な組成物であって、項目1~30のいずれか1項に記載の生理活性物質を含む前記組成物。
(項目32)
a.項目1~30のいずれか1項に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質と、
b.前記生理活性物質をヒトに投与するための説明データと、
を含むキット。
(項目33)
ヒトにおける疾患の治療方法であって、項目1~30のいずれか1項に記載の、ビオチン部分に結合した生理活性物質を前記ヒトに投与することを含む前記方法。
(項目34)
下記の一般式Aによって表されるビオチン部分であって、
[一般式A]
【化27】

前記一般式Aにおいて、
Xが、生理活性物質に結合できる官能基であり、
Yが、スペーサーであり、
Zが、結合ユニットであり、
Bが、下記の化学式A-1によって表すことができ、
[化学式A-1]
【化28】

前記Zが、前記化学式A-1の
【化29】

に連結しており、
Tが、末端基であり、
mが、1~10の整数であり、
nが、0または1~10の整数であり、n=0のときには、前記Yが、前記Bまたは前記Tに直接結合しており、
pが、0~1の整数である、前記ビオチン部分。
(項目35)
前記Xが、マレイミド、スクシンイミド、N-ヒドロキシスクシンイミド、コハク酸スクシンイミジル、グルタミン酸スクシンイミジル、スクシンイミジルメチルエステル、スクシンイミジルペンチルエステル、炭酸スクシンイミジル、p-ニトロフェニルカーボネート、アルデヒド、アミン、チオール、オキシアミン、ヨードアセトアミド、アミノキシル、ヒドラジド、ヒドロキシ、プロピオン酸塩、ピリジル、ハロゲン化アルキル、ビニルスルホン、カルボキシル、ヒドラジド、ハロゲンアセトアミド、C 2-5 アルキニル、C 6-20 アリールジスルフィド、C 5-20 ヘテロアリールジスルフィド、イソシアネート、チオエステル、イミノエステル及びこれらの誘導体からなる群から選択されている、項目34に記載のビオチン部分。
(項目36)
前記Xが、マレイミド、N-ヒドロキシスクシンイミド、アルデヒドまたはアミンである、項目34に記載のビオチン部分。
(項目37)
前記Yが、存在しないか、置換もしくは非置換の直鎖もしくは分岐鎖C 1-50 アルキレン、置換もしくは非置換の直鎖もしくは分岐鎖C 1-50 ヘテロアルキレン、置換もしく非置換のC 6-50 アリーレン、または置換もしくは非置換のC 6-50 ヘテロアリーレンであり、
置換されている場合には、=O、-C(O)NH 、-OH、-COOH、-SH、=NH及び-NH からなる群から選択した少なくとも1つを含む、項目34に記載のビオチン部分。
(項目38)
前記Yが、置換された直鎖または分岐鎖C 1-50 ヘテロアルキレンであり、-C(O)-を少なくとも1つ含む、項目34に記載のビオチン部分。
(項目39)
前記Yが、-(C(O)) -(CH -(C(O)NH -(CH -(OCH CH -(C(O)) -であり、
前記式中、q、r、s及びtが、独立して選択されており、
前記q及び前記Sが、0または1であり、
前記rが、1~20の整数であり、
前記tが、0~20の整数である、
項目34に記載のビオチン部分。
(項目40)
前記Yが、-(CH C(O)NHNH-であり、前記rが、1~20の整数である、項目34に記載のビオチン部分。
(項目41)
前記Yが、-C(O)-を含む、項目34に記載のビオチン部分。
(項目42)
前記Yが、-C(O)NH-を含む、項目34に記載のビオチン部分。
(項目43)
前記Zが、下記のうちのいずれか1つであり、それぞれ、独立して選択されていてよい、項目34に記載のビオチン部分。
A)Xと一体になって、もしくはXとは別に、アミノ酸もしくは誘導体を形成するか、または
B)置換もしくは非置換の直鎖または非直鎖C 1-50 ヘテロアルキレンであり、置換されている場合には、=O、-C(O)NH 、-OH、-COOH、-SH、=NH及び-NH からなる群から選択した少なくとも1つを含む。
(項目44)
前記Zが、前記B及び-NH-を介して連結している、項目34に記載のビオチン部分。
(項目45)
前記Zが、親水性アミノ酸またはその誘導体である、項目34に記載のビオチン部分。
(項目46)
前記Zが、リシン、アルギニン、ヒスチジン、グルタミン、アスパラギン、トレオニン、システイン、セリン及びこれらの誘導体からなる群から選択されている、項目34に記載のビオチン部分。
(項目47)
前記Zが、少なくとも1つのグリセロール及び少なくとも1つのポリエチレングリコール、またはその結合を含む、項目34に記載のビオチン部分。
(項目48)
前記Zが、
【化30】

を含み、
【化31】

が、結合部位を表し、
少なくとも1つの
【化32】

が、前記結合部位に結合しており、
前記式中、uが、1~20の整数である、項目34に記載のビオチン部分。
(項目49)
-(CH NH-が、前記
【化33】

にさらに結合している、項目34に記載のビオチン部分。
(項目50)
前記Tが、アミン、C 1-8 アルキル、C 1-8 アルケニル、ハロ、ヒドロキシ、チオール、スルホン酸、カルボキシル、フェニル、ベンジル、アルデヒド、アジド、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、ニトリル及びホスホン酸からなる群から選択されている、項目34に記載のビオチン部分。
(項目51)
前記Tが、アミンである、項目34に記載のビオチン部分。
(項目52)
下記の化学式からなる群から選択されている、項目34に記載のビオチン部分。
【化34-1】

【化34-2】

【化34-3】

【化34-4】

【化34-5】

【化34-6】

【化34-7】

【化34-8】

【化34-9】

【化34-10】

【化34-11】

【化34-12】

(項目53)
哺乳動物において経口投与可能な組成物であって、項目34~52のいずれか1項に記載のビオチン部分を含む前記組成物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【配列表】
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