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特許7655867タイプIVの適合性圧力容器のためのライナ崩壊軽減
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-25
(45)【発行日】2025-04-02
(54)【発明の名称】タイプIVの適合性圧力容器のためのライナ崩壊軽減
(51)【国際特許分類】
   F17C 1/06 20060101AFI20250326BHJP
   F16J 12/00 20060101ALI20250326BHJP
【FI】
F17C1/06
F16J12/00 C
F16J12/00 D
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021577426
(86)(22)【出願日】2020-06-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-20
(86)【国際出願番号】 US2020070211
(87)【国際公開番号】W WO2020264583
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-05-30
(31)【優先権主張番号】62/868,269
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518392026
【氏名又は名称】リナマー・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】ウェクスラー,ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】サンチェス,ジョーダン
(72)【発明者】
【氏名】コバレフスキー,ウラジーミル
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0111475(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0341235(US,A1)
【文献】国際公開第2016/189664(WO,A1)
【文献】特開2013-238319(JP,A)
【文献】国際公開第94/012396(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102016220992(DE,A1)
【文献】特開2008-261414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/06
F16J 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力下にある液体及び/又はガスを収容するための圧力容器であって、前記圧力容器は、
高分子ライナであって、前記高分子ライナの第1の終端部と第2の終端部との間に延在する外面を有する細長い円筒壁によって画定された中空体を含む、高分子ライナと、
前記円筒壁の前記外面を囲んで前記高分子ライナの前記第1の終端部と前記第2の終端部との間に延在するブリーザ層であって、前記ブリーザ層は、ガス透過性及び液体に不透過性であり、前記ブリーザ層は、前記ブリーザ層によって収集される、前記円筒壁を通って透過するガスに流路を提供する、ブリーザ層と、
樹脂及び第1の繊維型の繊維を含む外側複合シェルであって、前記外側複合シェルは、前記ブリーザ層の外周を囲んで前記高分子ライナの前記第1の終端部と前記第2の終端部との間に延在する、外側複合シェルと
を備え、
前記ブリーザ層によって収集される、前記円筒壁を通って透過する前記ガスは、前記圧力容器上の所定の出口位置まで誘導され、
前記高分子ライナは、前記高分子ライナの前記第1の終端部近傍に入口開口部を含み、
前記圧力容器は、ステム、及びフェルールを含み、
前記ステムは、前記高分子ライナの前記入口開口部に挿入されるように構成され、
前記ステムは、長手方向に延在する円筒ボスを有し、前記高分子ライナの前記入口開口部に挿入されるように構成され、前記ステムは、前記円筒ボスから突出して前記ステムの外周の周りに円周方向に延在する取付けリッジを含み、
前記ステムは前記高分子ライナの前記入口開口部に挿入されることにより、前記高分子ライナの前記入口開口部が前記取付けリッジに隣接する前記円筒ボスを円周方向に囲み、
前記フェルールは、前記外側複合シェルに前記ステムの前記取付けリッジを固定的に結合し、
前記取付けリッジは、前記ステムが前記高分子ライナと組み立てられると、前記高分子ライナの方に向いたライナ取付け面、及び前記高分子ライナから離れる方に向いた反対側の取付け面を含み、
前記取付けリッジは、前記ライナ取付け面と前記反対側の取付け面との間に延在する通気スロットを含み、
前記通気スロットは、外部大気に前記ブリーザ層を流体的に結合させることにより、前記ブリーザ層内に透過するガスが、前記ブリーザ層を通って前記通気スロット内に流れ、前記通気スロットを通って流れ、前記外部大気内に分散する、圧力容器。
【請求項2】
前記第1の繊維型は、炭素繊維、ガラス繊維、バサルト繊維、ホウ素繊維、アラミド繊維、高密度ポリエチレン繊維(HDPE)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、Zylon(商標)ポリ(p-フェニレン-2,6-ベンゾビスオキサゾール)繊維(PBO)、アラミド繊維、Kevlar(登録商標)ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維(PET)、ナイロン繊維(PA)、ポリエステル繊維(PL)、ポリプロピレン繊維(PP)及び/又はポリエチレン繊維(PE)のうちの1つ又は複数を含み、
前記高分子ライナは、ナイロン(PA)、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレンビニルアルコール(EYOH)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリウレタン(PU)及び/又はポリ塩化ビニル(PYC)のうちの1つ又は複数を含み、
前記樹脂は、エポキシ樹脂、熱可塑性樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリエステル樹脂及び/又はウレタンのうちの1つ又は複数を含む、請求項1に記載の圧力容器。
【請求項3】
前記ブリーザ層は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリシロキサン、ポリウレタン(PU)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ナイロン、合成ゴム、シリコーン、エチレンプロピレンジエンターポリマ(EPDM)、ポリエチレン(DPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリロニトリルブタジエンゴム(ニトリル)及び/又はポリエチレンテレフタレート(PET)のうちの1つ又は複数を含む、請求項2に記載の圧力容器。
【請求項4】
前記ブリーザ層は、テープ、フィルム、シート、ラップ及び/又は成型ゴムのうちの1つ又は複数である、請求項3に記載の圧力容器。
【請求項5】
前記ブリーザ層は、第2の繊維型の1つ又は複数の積層編組繊維層を含み、
前記第2の繊維型は、炭素繊維、ガラス繊維、バサルト繊維、ホウ素繊維、アラミド繊維、高密度ポリエチレン繊維(HDPE)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、Zylon(商標)ポリ(p-フェニレン-2,6-ベンゾビスオキサゾール)繊維(PBO)、アラミド繊維、Kevlar(登録商標)ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維(PET)、ナイロン繊維(PA)、ポリエステル繊維(PL)、ポリプロピレン繊維(PP)及び/又はポリエチレン繊維(PE)のうちの1つ又は複数を含み、
前記第2の繊維型は、材料組成及び/又は繊維外径のうちの1つ又は複数において前記第1の繊維型と異なる、請求項2に記載の圧力容器。
【請求項6】
前記第2の繊維型の前記繊維は、前記第1の繊維型の前記繊維の外径よりも大きい外径を有する、請求項5に記載の圧力容器。
【請求項7】
前記ブリーザ層は、前記円筒壁の前記外周の周りに巻き付けられたガラス繊維織布及び/又はガラス繊維不織布のうちの1つ又は複数を含む、請求項4に記載の圧力容器。
【請求項8】
前記圧力容器は、前記円筒壁の前記外周を囲んで前記円筒壁の少なくとも一部分に沿って長手方向に延在する少なくとも1つの非構造金属フィルム層を含み、
前記少なくとも1つの非構造金属フィルム層は、前記円筒壁、前記ブリーザ層及び/又は前記外側複合シェルのうちの1つ又は複数と直接接触しており、
前記少なくとも1つの非構造金属フィルム層は、金属化フィルム及び/又は金属箔のうちの1つ又は複数を含む、請求項2に記載の圧力容器。
【請求項9】
前記外側複合シェルは、前記外側複合シェルを通って延在する少なくとも1つの通気孔を含み、
前記少なくとも1つの通気孔は、外部大気に前記ブリーザ層を流体的に接続することにより、前記ブリーザ層内に透過するガスは、前記ブリーザ層を通って前記少なくとも1つの通気孔内に流入し、前記少なくとも1つの通気孔を通って流れ、前記外部大気内に分散する、請求項2に記載の圧力容器。
【請求項10】
前記ステムの前記取付けリッジに前記フェルールを圧着すると、前記通気スロットを通る軸方向孔を形成し、
前記通気スロットを通って流れる前記ガスは、前記軸方向孔を通って通過する、請求項1に記載の圧力容器
【請求項11】
少なくとも1つの通気孔が、前記フェルール、及び前記外側複合シェルを通って延在し、
前記少なくとも1つの通気孔は、外部大気に前記ブリーザ層を流体的に接続させることにより、前記ブリーザ層内に透過するガスが、前記ブリーザ層を通って前記少なくとも1つの通気孔内に流れ、前記少なくとも1つの通気孔を通って流れ、前記外部大気内に分散する、請求項1に記載の圧力容器
【請求項12】
圧力下にある液体及び/又はガスを収容するための圧力容器であって、前記圧力容器は、
高分子ライナであって、前記高分子ライナの第1の終端部と第2の終端部との間に延在する外面を有する細長い円筒壁によって画定された中空体を含む、高分子ライナと、
前記円筒壁の前記外面を囲んで前記高分子ライナの前記第1の終端部と前記第2の終端部との間に延在するブリーザ層であって、前記ブリーザ層は、前記円筒壁の周りに第1の繊維型の繊維を編組することによって形成され、前記ブリーザ層は、前記ブリーザ層によって収集される、前記円筒壁を通って透過するガスに流路を提供し、前記ブリーザ層は、樹脂を欠いている、ブリーザ層と、
樹脂及び第2の繊維型の繊維を含む外側複合シェルであって、前記外側複合シェルは、前記ブリーザ層の外周を囲んで前記高分子ライナの前記第1の終端部と前記第2の終端部との間に延在する、外側複合シェルと
を備え、
前記第1の繊維型は、材料組成及び/又は繊維外径のうちの1つ又は複数において前記第2の繊維型とは異なり、
前記ブリーザ層によって収集される、前記円筒壁を通って透過する前記ガスは、前記圧力容器上の所定の出口位置まで誘導され、
前記高分子ライナは、前記高分子ライナの前記第1の終端部近傍に入口開口部を含み、
前記圧力容器は、ステム、及びフェルールを含み、
前記ステムは、前記高分子ライナの前記入口開口部に挿入されるように構成され、
前記フェルールは、前記外側複合シェルに前記ステムを固定的に結合し、
前記第1の繊維型は、第1の外径を有する繊維を有し、前記第2の繊維型は、第2の外径を有する繊維を有し、前記第1の外径は、前記第2の外径よりも大きい、圧力容器
【請求項13】
前記第1の繊維型及び前記第2の繊維型のそれぞれは、炭素繊維、ガラス繊維、バサルト繊維、ホウ素繊維、アラミド繊維、高密度ポリエチレン繊維(HDPE)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、Zylon(商標)ポリ(p-フェニレン-2,6-ベンゾビスオキサゾール)繊維(PBO)、アラミド繊維、Kevlar(登録商標)ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維(PET)、ナイロン繊維(PA)、ポリエステル繊維(PL)、ポリプロピレン繊維(PP)及び/又はポリエチレン繊維(PE)のうちの1つ又は複数を含み、
前記高分子ライナは、ナイロン(PA)、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリウレタン(PU)及び/又はポリ塩化ビニル(PVC)のうちの1つ又は複数を含み、
前記樹脂は、エポキシ樹脂、熱可塑性樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリエステル樹脂及び/又はウレタンのうちの1つ又は複数を含む、請求項12に記載の圧力容器
【請求項14】
前記圧力容器は、前記円筒壁の前記外面の外周を囲む樹脂バリア層、及び/又は前記ブリーザ層の外面を含み、
前記樹脂バリア層は、ガス透過性及び液体不透過性であり、
前記樹脂バリア層は、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリシロキサン、ポリウレタン(PU)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ナイロン、合成ゴム、シリコーン、エチレンプロピレンジエンター高分子(EPDM)、ポリエチレン(DPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリロニトリルブタジエンゴム(ニトリル)、エチレンビニルアルコール(EVOH)及び/又はポリエチレンテレフタレート(PET)のうちの1つ又は複数を含む、請求項13に記載の圧力容器
【請求項15】
前記樹脂バリア層は、テープ、フィルム、シート、ラップ及び/又は成形ゴムのうちの1つ又は複数である、請求項14に記載の圧力容器
【請求項16】
前記圧力容器は、前記円筒壁の前記外周を囲んで前記円筒壁の少なくとも一部分に沿って長手方向に延在する少なくとも1つの非構造金属フィルム層を含み、
前記少なくとも1つの非構造金属フィルム層は、前記円筒壁の前記外面、前記ブリーザ層及び/又は前記外側複合シェルの内面のうちの1つ又は複数と直接接触しており、
前記少なくとも1つの非構造金属フィルム層は、金属化フィルム及び/又は金属箔のうちの1つ又は複数を含む、請求項13に記載の圧力容器
【請求項17】
前記外側複合シェルは、前記外側複合シェルを通って延在する少なくとも1つの通気孔を含み、
前記少なくとも1つの通気孔は、外部大気に前記ブリーザ層を流体的に接続させることにより、前記ブリーザ層内に透過するガスが、前記ブリーザ層を通って前記少なくとも1つの通気孔内に流れ、前記少なくとも1つの通気孔を通って流れ、前記外部大気内に分散する、請求項13に記載の圧力容器
【請求項18】
前記ステムは、長手方向に延在し、前記高分子ライナの前記入口開口部内に挿入されるように構成された円筒ボスを有し、前記ステムは、前記円筒ボスから突出して、前記ステムの周りに周方向に延在する取付けリッジを含み、
前記ステムは、前記高分子ライナの前記入口開口部内に挿入されることにより、前記高分子ライナの前記入口開口部は、前記取付けリッジに隣接する前記円筒ボスを周方向に囲み、
前記フェルールは、前記外側複合シェルに前記取付けリッジを固定的に結合させる、請求項13に記載の圧力容器
【請求項19】
前記取付けリッジは、前記ステムが前記高分子ライナと組み立てられると、前記高分子ライナの方に向いたライナ取付け面、及び前記高分子ライナから離れる方に向いた反対側の取付け面を含み、
前記取付けリッジは、前記ライナ取付け面と前記反対側の取付け面との間に延在する通気スロットを含み、
前記通気スロットは、外部大気に前記ブリーザ層を流体的に結合させることにより、前記ブリーザ層内に透過するガスが、前記ブリーザ層を通って前記通気スロット内に流れ、前記通気スロットを通って流れ、前記外部大気内に分散する、請求項18に記載の圧力容器
【請求項20】
少なくとも1つの通気孔が、前記フェルール及び前記外側複合シェルを通って延在し、
前記少なくとも1つの通気孔は、外部大気に前記ブリーザ層を流体的に接続させることにより、前記ブリーザ層内に透過するガスが、前記ブリーザ層を通って前記少なくとも1つの通気孔内に流れ、前記少なくとも1つの通気孔を通って流れ、前記外部大気内に分散する、請求項18に記載の圧力容器
【請求項21】
少なくとも1つの通気孔が、前記外側複合シェルを通って延在し、
前記少なくとも1つの通気孔は、外部大気に前記ブリーザ層を流体的に接続させることにより、前記ブリーザ層内に透過するガスが、前記ブリーザ層を通って前記少なくとも1つの通気孔内に流れ、前記少なくとも1つの通気孔を通って流れ、前記外部大気内に分散する、請求項18に記載の圧力容器
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[001]本出願は、2019年6月28日に出願された米国仮特許出願第62/868,269号の優先権を主張する。
【0002】
[002]本発明は、タイプIVの圧力容器に関する。より詳細には、本発明は、天然ガス、酸素、窒素、水素、プロパン等の、圧力下にある流体及び/又はガスを貯蔵する圧力容器に関する。タイプIVの圧力容器又はタンクは、熱可塑性高分子ライナ上に巻かれた及び/又は編組された炭素繊維或いは複合体を含む無金属構造を有する。
【背景技術】
【0003】
[003]高分子ライナ、及び繊維強化複合シェル構造を含む、圧縮ガス貯蔵用のタイプIVの圧力容器が、高信頼性で高効率の容器として用いられてきた。これらの容器は、重量効率、耐食性、及び疲労性能に基づいて別の容器設計よりも利点を有する。高分子は、金属製タンク/ライナよりもガスの透過をより受けやすい。透過のために、ガスは、高圧領域から低圧領域へと材料を通って移動する。この移動は、高分子ライナと複合シェル構造との間の間隙内にガスを蓄積させることがある。この領域内のガスの蓄積は、(1)ライナと複合シェルとの間の圧力が、圧力容器が減圧されたときの圧力容器の内圧を超える際に、ライナ内側に誘発座屈するという現象、及び(2)圧力容器が再加圧された際に、高分子ライナと複合シェルとの間の捕捉されたガスが、圧力容器構造体の適切な充填を妨げ得るか、又はしばしば「動的ガス放出」と呼ばれる、圧力容器構造体から押し出され得るという現象のうちの少なくとも1つをもたらし得る。
【0004】
[004]圧力容器からのガスの透過を管理する第1の公知方法が、米国特許第10,168,002号に開示されており、圧力容器が、高分子ライナの周りに内側複合構造を巻き付けることによって形成され、内側高分子層が、内側複合構造の周りに適用され、多孔質層が、内側高分子層の周りに巻き付けられ、外側高分子層が、多孔質層の周りに適用され、外側複合シェルが、外側高分子層の周りに巻き付けられる。内側複合構造、多孔質層、内側高分子層、外側高分子層、及び外側複合シェルのそれぞれは、重複螺旋状パターンを形成する単一組の連続巻付け繊維によって形成される。
【0005】
[005]しかしながら、第1の公知方法は、圧力容器が細長い適合性圧力容器である場合には、あまり望ましくない。細長い適合性圧力容器の第1の例が、米国特許出願公開第2016/363265号に開示されている。この例示的な細長い適合性圧力容器は、可撓性コネクタ部分によって流体的に結合されたそれぞれの対の剛性管部分を有する複数の細長い剛性管部分を有する細長い高分子ライナを含む。それぞれの可撓性コネクタ部分は、任意選択で波形部分を含む。それに加えて、細長い剛性管部分は、一般に、可撓性コネクタ部分の最大外径よりも大きい最小外径を有する。米国特許第9、217、538号に開示されている第2の型の適合性圧力容器は、螺旋状に巻き付けられて螺旋状タンクを形成する細長い管を含む。適合性圧力容器の特定の寸法及び構成は変化してもよいが、適合性圧力容器は、一般に、ライナの特定の直径に対する円筒非適合性圧力容器の典型的な長さよりも大きいライナ側壁長さを有する細長いライナを有する。更に、適合性圧力容器は、典型的には、樹脂を硬化させる前に所定の空間に巻き付けられる及び/又は折り重ねられる。このように、ライナの側壁の長さは、一般に、製造された圧力容器の所定の空間の外形寸法よりも長い。製造された圧力容器についての予め画定された空間の全体寸法と比べて、適合性圧力容器用のライナの側壁長さが増加すると、ガス透過を管理する際に課題を提示する。
【0006】
[006]第1の公知方法は、少なくとも、多孔質層、内側高分子層、外側高分子層、及び重複螺旋状パターンを形成する単一組の連続巻付け繊維によって形成されている複合シェルのそれぞれを必要とする。特定の圧力容器、特に細長い適合性圧力容器について、単一組の連続巻付け繊維を重複螺旋状パターンに巻き付けることによって複数の層のそれぞれを形成することは、ライナの周りに複数の繊維ストランドを編組することよりも望ましくない。米国特許出願公開第2016/363265号に開示されているような、ライナの周りに複数の繊維を編組することは、繊維を重複螺旋状パターンに巻き付けることよりも好ましく、その理由は、繊維の編組が、ライナの様々な直径及びテーパ状部分を特定の適合性圧力容器に対して適合させ得るからである。
【0007】
[007]更に、第1の公知方法は、ライナの外面と直接接触する内側複合構造を必要とする。内側複合構造をライナとの直接接触状態に適用することが、特にライナが波形の可撓性コネクタ部分を含む場合に、ライナ外面に沿って気泡を捉え得る。特定の圧力容器、特に波形コネクタ部分を有する細長い適合性圧力容器については、圧力容器ライナ上に内側複合構造を直接配設することが望ましくなく、その理由は、樹脂が可撓性コネクタ部分の波形空間を部分的に不均一に充填することがあるからである。このように、透過ガスを管理する代替的な方法が、多孔質層、内側高分子層、外側高分子層、並びに多孔質層、内側高分子層、外側高分子層、及び単一組の重複螺旋状パターンの連続巻付け繊維から形成された複合シェルのそれぞれを有する複合シェルを含むことを必要としない細長い適合性圧力容器に望まれる。更に、高分子ライナ上に直接適用された内側複合構造を必要としない、透過ガスを管理する代替方法が望まれる。
【0008】
[008]圧力容器からのガスの透過を管理する第2の公知方法は、米国特許第10,415,753号に開示されており、圧力容器は、一般にガス通気層(すなわち「ブリーザ層」)及び外側複合シェル構造で被覆された高分子ライナを含む。圧力容器は、ガスをライナ内に流入又はライナ外に流出させるように構成されたステムを含む。ガス排出口が、圧力容器のステムと外側複合シェルとの間に形成されることにより、ライナから外側層まで透過されたガスがガス排出口を通して大気中に排出される。ガス排出口は、ステムの外径と外側複合シェル内の開口部の内径との間の隙間によって形成される。
【0009】
[009]更に、第2の公知方法は、ライナに樹脂を含浸していない繊維材料を第1の巻き密度で巻くことによって形成されているブリーザ層を開示する。外側複合シェルは、ブリーザ層の外周上に第2の巻き密度で巻かれた樹脂含侵繊維材料で形成されている。第2の方法は、巻き密度を、巻き対象領域の単位表面積あたりの巻かれた繊維材料の巻き数として定義し、第1の巻き密度を第2の巻き密度よりも小さくする必要がある。それに加えて、第2の公知方法は、単一型の繊維材料で形成されているブリーザ層と外側複合シェルの両方を必要とする。
【0010】
[010]しかし、特定の圧力容器、特に細長い適合性圧力容器については、繊維のストランドを螺旋状パターンでライナの周りに巻く代わりに、ライナの周りに複数の繊維のストランドを編組することが望ましく、その理由は、繊維の編組ストランドが、特定の適合性圧力容器に対してライナの様々な直径に、より容易に適合するからである。繊維の編組ストランドは、繊維がライナの周りに螺旋状パターンで巻かれていないので、それ自体は巻付け密度を有しない。これは、様々な外径を含むライナによって更に複雑化される。ライナの周りに編組されている所与の数の繊維のストランドに対して、ライナ表面積の単位あたりの繊維密度は、それぞれのストランド内の繊維の数、編組パターン内のストランドの数、及びライナの外径に依存している。このように、ライナの外径が増加するにつれて、単位表面積あたりの繊維密度は、特定の数の繊維のストランドに対して減少する。
【0011】
[011]また、第2の公知方法が必要とするような、同じ繊維材料をブリーザ層と外側複合シェルの両方において使用することは、ブリーザ層と外側複合構造のそれぞれに異なる繊維材料を使用することよりも、特定の圧力容器に対して望ましくない。一例としての炭素繊維等のいくつかの型の繊維が、外側複合シェルの一部として一般的に用いられている。別の型の繊維が、炭素繊維よりも低いコスト及び/又は軽い重量を有することがある。更に、繊維特性、繊維外径、繊維のガス透過性、編組繊維層の気孔率及び/又は所望の性能特性に基づいて、特定の用途用の外側複合シェルとは異なるブリーザ層用の繊維材料を任意選択で選ぶことが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
[012]そのため、外側複合シェルに用いられるのと同じ繊維の螺旋状に巻き付けられた乾燥繊維層の気孔率以上にブリーザ層の気孔率を向上させることによって、タイプIVの細長い適合性圧力容器からのガス透過を管理する方法を提供することが望ましい。更に、より小さい外径部によって間隔を空けられた、より大きい外径部を有する適合性圧力容器についてのガス透過を管理する方法を提供することが望ましい。また、製造工程中に液体樹脂がブリーザ層に侵入するのを防ぐことも望ましい。最後に、ガス透過性で液体不透過性であるブリーザ層を組み込むことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
[013]内部高分子ライナ、ライナ上に配設されたブリーザ層、及びブリーザ層上に配設された外側複合シェル構造を備えるタイプIVの適合性圧力容器が提供される。ブリーザ層は、ガス透過性で、液体に不透過性であり、且つ、ブリーザ層によって収集された、ライナ壁を通って透過するガスに流路を提供する。外側複合シェルは、第1の繊維型の繊維及び樹脂の1つ又は複数の層によって形成される。ライナの内部空間から透過するガスが、ブリーザ層によって受け取られ、圧力容器上の所定の出口位置まで誘導される。
【0014】
[014]本発明の利点は、それが、添付図面と関連して考慮されると、以下の詳細な説明を参照することによって、よりよく理解されるように容易に認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】[015]本発明の一実施形態に従う、通気スロット付きステムを有する圧力容器の一部分についての斜視図である。
図2】[016]図1の圧力容器の一実施形態についての断面図であって、内側ライナと外側複合シェルとの間にあるブリーザ層を示す図である。
図3A】[017]螺旋状パターンでライナの周りに樹脂含浸繊維のストランドを巻き付ける公知方法を示す図である。
図3B】[018]本発明の一実施形態に従う、螺旋状パターンでライナの周りに乾燥繊維のストランドを巻き付ける方法を示す図である。
図4】[019]大外径部分、テーパ状径部分及び小外径部分を有するライナの周りに複数の繊維のストランドを編組する方法を示す図である。
図5】[020]図1のステムについての斜視図であって、ステムの取付けリッジを通って延在する通気スロットを示す図である。
図6】[021]図2の圧力容器の一部分についての破断図であって、ライナを通り、ブリーザ層内へ、ブリーザ層を通り、所定の出口位置を通って大気に排出されるガス流れを示す図である。
図7】[022]図7Aは、大径繊維についての繊維層内での気孔率を示す図である。図7Bは、小径繊維についての繊維層内での気孔率を示す図である。
図8】[023]図1の圧力容器の別の実施形態についての拡大断面図であって、内側ライナと、第1の繊維型のブリーザ層と、樹脂及び第2の型の繊維で形成された外側複合シェルとを示す図である。
図9】[024]図1の圧力容器の別の一実施形態についての断面図であって、ブリーザ層と外側複合シェルとの間にある樹脂バリア層を示す図である。
図10】[025]乾燥繊維の編組ストランドの層内に被覆されたライナの周りにバリアフィルムを巻き付ける方法を示す図である。
図11】[026]図9の圧力容器の一部分についての拡大破断図であって、ライナを通り、ブリーザ層及び樹脂バリア層内へ、ブリーザ層及び樹脂バリア層を通り、所定の出口位置を通って大気に排出されるガス流れを示す図である。
図12A】[027]図9の圧力容器の別の一実施形態についての拡大断面図であって、内側ライナと、乾燥繊維を含むブリーザ層と、樹脂バリア層と、外側複合シェルとの間にある1つ又は複数の非構造金属層を示す図である。
図12B】[028]図9の圧力容器の別の一実施形態の拡大断面図であり、内側ライナと、ガラス繊維織物を含むブリーザ層と、樹脂バリア層と、外側複合シェルとの間にある1つ又は複数の非構造金属層を示す図である。
図13】[029]図1の圧力容器の別の一実施形態の拡大断面図であって、ライナに適用された高分子フィルムと、ブリーザ層に適用された外側複合構造とを含むブリーザ層を示す図である。
図14】[030]ブリーザ層を形成するライナの外面の周りに高分子フィルムを巻き付ける方法を示す図である。
図15】[031]図2の圧力容器の拡大断面図であって、ブリーザ層に沿う、ステム内の通気スロットを通る、外部大気に排出されるガス流れを示す図である。
図16】[032]図9の圧力容器の拡大断面図であって、ブリーザ層に沿った、樹脂バリア層に沿った、ステム内の通気スロットを通る、外部大気に排出されるガス流れを示す図である。
図17】[033]本発明の別の一実施形態に従う、高分子ライナと外側複合シェルとの間にあるブリーザ層と、ライナ内の開口部内に挿入されたステムと、ステムを外側複合シェルに固定的に結合するフェルールとを有する圧力容器の一部分についての断面図である。
図18】[034]図17の圧力容器の拡大断面図であって、ブリーザ層に沿った、ステムとフェルールとの間の圧着ジョイントを通る、外部大気に排出されるガス流れを示す図である。
図19】[035]図17の圧力容器の別の一実施形態についての断面図であって、ブリーザ層と外側複合シェルとの間にある樹脂バリア層を示す図である。
図20】[036]図19の圧力容器の拡大断面図であって、ブリーザ層及び樹脂バリア層に沿った、ステムとフェルールとの間にある圧着ジョイントを通る、外部大気に排出されるガスの流れを示す図である。
図21】[037]図17の圧力容器の別の一実施形態の断面図であって、ブリーザ層を外部大気に流体的に結合する、外側複合シェルを通る通気孔を示す図である。
図22】[038]図21の圧力容器の一部分の拡大断面図であって、ブリーザ層及び樹脂バリア層に沿った、外側複合シェル内の通気孔を通る、外部大気に排出されるガス流れを示す図である。
図23】[039]図21の圧力容器の一部分の拡大断面図であって、ブリーザ層及び樹脂バリア層に沿った、外側複合シェル及びフェルールを通って延在する通気孔を通る、外部大気に排出されるガス流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[040]図面を参照すると、類似の数字が、いくつかの図にわたって類似の又は対応する部分を示し、本発明の一実施形態に従う、圧力下にある液体及び/又はガス12を収容し、透過ガス14の管理が改善されているIY型圧力容器10が、図1及び図2に示されている。圧力容器10は、細長い円筒壁26によって画定された内部中空体又は空間18を含む高分子ライナ16を含む。円筒壁26の外面28が、図2に示すように、少なくともブリーザ層30及び外側複合シェル構造34によって被覆されている。ライナ16は、ライナ16の第1の終端部38に少なくとも1つの入口開口部36を含み、上記入口開口部を通してステム44が挿入されて、ライナ16の内部中空体18にガス12を追加するか、又はそれを除去する。それに加えて、フェルール48が、外側複合シェル34をステム44に固定的に結合させる。
【0017】
[041]圧力容器10は、窒素、水素、天然ガス、ヘリウム、ジメチルエーテル、液化石油ガス、キセノン等の圧縮液体及び/又はガス12の貯蔵に適している。自動車用途用の水素の貯蔵のための圧力容器10が、典型的には、公称作動圧力の約34,480kPa(5,000PSI)~約68,950kPa(10,000PSI)に対して設計される。それと比較して、圧縮天然ガスの貯蔵のための圧力容器10は、典型的に、通常使用中の内圧の約20,690kPa(3,000PSI)に対して設計される。
【0018】
[042]図2を参照すると、ブリーザ層30は、ライナ16の円筒壁26を透過するガス14に漏出経路52を提供する。ブリーザ層30は、ライナ16と外側複合シェル34との間に設置された多孔性材料30を含み、上記多孔性材料は、ライナ16と外側複合シェル34との間の間隙54から、圧力容器10の長さに沿って、圧力容器10の1つの端部68に位置するステム44近傍の開口部64を通して外部大気60までガス14を排出するために用いられ得る。これが、定常状態でより低い間隙54の圧力をもたらし、外側複合シェル34及びライナ16内に吸収されるガス14の量を大幅に低減する。
【0019】
[043]図2を参照すると、適合性圧力容器10は、典型的な非適合性圧力容器10よりも長いライナ外径16Aの単位当たりのライナ16の全長を有する傾向がある。ライナ16の全長は、ライナ16の第1の終端部38からライナ16の反対側の終端部38’まで円筒壁26の外面28に沿って測定される。典型的な圧力容器10についてのライナ16の全長は、圧力容器10の1つの端部68と反対側の端部68’との間の直線距離とほぼ同じである。しかし、適合性圧力容器10は、適合性圧力容器10の1つの端部68と反対側の端部68’との間の直線距離の何倍かの大きさの全体ライナ長を有するライナ16を有し得る。適合性圧力容器10の製造中、ライナ16は、少なくとも外側複合シェル34によって覆われ、そして外側複合シェル34内の樹脂72を硬化させる前に、所定の空間を塞ぐように折り重ねられ、及び/又は螺旋状に巻き付けられる。したがって、適合性圧力容器10の全体外形寸法は、概して、圧力容器10の外形寸法を画定する所定の空間の長さ、幅及び/又は高さよりも大きいライナ16の全長を有する所定の空間によって決定される。適合性圧力容器10のためのライナ16の全長は、ライナ16が適合性圧力容器10の全体外形寸法よりもかなり長いので、透過ガス14を大気60に通気するためのガス流れ52についての課題である。
【0020】
[044]改良された透過ガス14管理を有するブリーザ層30、並びにブリーザ層30を外部大気60に通気する改良についての様々な実施形態が、図1、2及び図5~23に示されている。開示された実施形態のそれぞれは、図2に示すように、高分子ライナ16と、ブリーザ層30と、繊維及び樹脂の外側複合シェル34と、ステム44と、フェルール48とを少なくとも含む。
【0021】
[045]図2に示す高分子ライナ16は、ナイロン(PA)、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリウレタン(PU)及び/又はポリ塩化ビニル(PVC)等の1つ又は複数の高分子材料から一般に形成されている。高分子ライナ16は、高分子材料の単一層で形成されてもよく、又は2つ以上の高分子層の多層構造を含んでもよく、更に、特定の用途に望まれるような、1つ若しくは複数の非構造金属フィルム層及び/又は非構造金属箔を含んでもよい。
【0022】
[046]図2に示す、圧力容器10の外側複合シェル34は、図3A及び図4に示すように、樹脂含浸繊維70をライナ16上に配設することによって概して形成される。複数の繊維フィラメント70が、繊維70のストランド70’を形成するようにグループ化される。繊維ストランド70’は、図3Aに示すように、重複螺旋状パターンで、ライナ16の周りに繊維70の1つ又は複数のストランド70’を連続的に巻き付け、1つ又は複数の巻き付けられた繊維70Aの層を形成することによって、ライナ16に適用され得る。繊維ストランド70’は、図3Aに示すように、ライナ16上に巻き付けられる前に、液状樹脂72で被覆され得る。その代替として、繊維ストランド70’は、ライナ16に巻き付けられた後に液状樹脂72で被覆され得、及び/又は繊維70は、樹脂72で事前含浸され得る。その代替として、複数の繊維ストランド70’が、図4に示すように、ライナ16の周りに編組されることにより、繊維70の編組層70Bを形成し得る。更に、繊維ストランド70’は、ライナ16の周りに繊維ストランド70’を編組する前及び/又はその後に、液状樹脂72で含浸され得る。
【0023】
[047]図2に示す外側複合シェル34は、樹脂72内に被覆された繊維70の1つ又は複数の層70A、70Bを含む。外側複合シェル34に好適な繊維70は、炭素繊維、ガラス繊維、バサルト繊維、ホウ素繊維、アラミド繊維、高密度ポリエチレン繊維(HDPE)、Zylon(商標)ポリ(p-フェニレン-2,6-ベンゾビスオキサゾール繊維(PBO)、アラミド繊維、Kevlar(登録商標)ポリ-パラフェニレンテレフタルアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維(PET)、ナイロン繊維(PA)ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエステル繊維(PL)、ポリプロピレン繊維(PP)、ポリエチレン繊維(PE)等のうちの1つ又は複数を含む。複数の繊維フィラメント70は、ライナ16上に配設される前に、繊維70のストランド70’を形成するようにグループ化される。繊維フィラメント70は、少なくとも材料組成及び繊維外径によって定義される。好適な樹脂72は、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、熱可塑性樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン等の1つ又は複数を含む。ライナ16の材料及び寸法、並びに外側複合シェル34を形成する樹脂72及び繊維70の型及び量の選択は、圧力容器10の所望の動作条件に部分的に基づいて選択される。
【0024】
[048]図5は、ライナ16との組立て前のステム44の一実施形態を示す。ステム44は、円筒ボス80を通って長手方向に延在する通路82を有する円筒ボス80を備え、上記円筒ボスを通してガス12が挿入され、ライナ16の内部空間18から除去される。円筒ボス80は、図2に示すように、ライナ16の入口開口部36内に挿入されるように構成されている。
【0025】
[049]図5を参照すると、ステム44は、円筒ボス80から半径方向に離れる方に突出し、ステム44の外周面80’の周りに周方向に延在する取付けリッジ92を含む。取付けリッジ92は、図2に示すように、反対側の略垂直な取付け面92Bから離間した略垂直なライナ取付け面92Aを含み、外周面92Cが、ライナ取付け面92Aの遠位端部94Aと反対側の取付け面92Bの遠位端部94Bとの間に延在する。
【0026】
[050]溝100が、図2及び図5に示すように、取付けリッジ92の外周面92Cの周りに周方向に延在する。溝100は、図2に示すように、フェルール48の内面120Bの周りに周方向に延在するリップ106と篏合的に係合するように構成される。
【0027】
[051]円筒ボス80の外面80’は、図5に示すように、外面80’から離れる方に半径方向に突出する角度が付いた歯又はリブ110等の保持特徴110を任意選択で含む。
[052]複数の離間した通気スロット112は、図5の実施形態に示すように、ライナ取付け面92Aと反対側の取付け面92Bとの間の取付けリッジ92を通って延在する。通気スロット112は、離間した対向する側壁112A、112Bを備える。軸方向孔を含む通気スロット112のいずれかの数及び構成は、特定の用途に所望されるようにステム44に含まれてもよい。
【0028】
[053]図2を参照すると、フェルール48は、外側複合シェル34をステム44に固定的に結合する。フェルール48は、長手方向に延在する、外面120A及び反対側の内面120Bを有する略円筒の中空管120を備えている。フェルール48の一実施形態は、図2に示すように、圧力容器10の外側複合シェル34と摩擦係合するように構成されたフェルール48の内面120Bから離れる方に半径方向に延在する歯状突起126を含む。また、図2に示すように、フェルール48は、フェルール48の内面120Bから半径方向内向きに突出し、ステム44の取付けリッジ92内の溝100と篏合的に係合するように構成されたリップ106を含む。その代替として、フェルール48のリップ106及び/又は歯状突起126は、フェルール48を外側複合シェル34及びステム44に機械的に締結する圧着工程中に形成される。
【0029】
[054]ブリーザ層30は、図2に示すように、円筒壁26の外周28を取り囲み、ライナ16の第1の終端部38と第2の終端部38’との間に延在する。図6は、ライナ16を通ってブリーザ層30内に透過するガス14を示す図2の圧力容器10の破断図である。ブリーザ層30は、ガス透過性であり、ライナ16を通って透過するガス14に経路52を提供する。ブリーザ層30によって収集されたガス14は、圧力容器10上の所定の出口位置64に向かって誘導される。図6に示す実施形態では、ブリーザ層30は、また、矢印Aが表すように、液体不透過性である。したがって、外側複合シェル34の繊維70に適用された液状樹脂72は、ブリーザ層30によって吸収されない。ブリーザ層30内部の樹脂72の吸収を防止すること、特にブリーザ層30とライナ16との間の樹脂72侵入を防止することが、ブリーザ層30のガス透過性を維持する。
【0030】
[055]ブリーザ層30の一実施形態は、図6に示すように、外側複合シェル34を形成する繊維70にわたって増加した気孔率を有する乾燥繊維70Cを含む。乾燥繊維70Cは、樹脂72が含浸されていない繊維70Cである。ブリーザ層30は、円筒壁26の周りに乾燥繊維ストランド70C’の1つ又は複数の層70Dを重複螺旋状パターンで巻き付けることによって形成され得る。ライナ16の周りに繊維ストランド70C’を巻き付ける例示的な方法が、図3Bに示されている。好ましくは、複数の乾燥繊維ストランド70C’が、細長いライナ16のために円筒壁26の周りに編組されて、編組乾燥繊維層70Eを形成する。ライナ16の周りに繊維ストランド70’、70C’を編組する例示的なプロセスが図4に示されている。図4に示すように、ライナ16の周りに複数の乾燥繊維ストランド70C’を編組することが、ライナ16が、大外径部136Aと、小外径部136Bと、大外径部136Aと小外径部136Bとの間のテーパ部136Cを含む場合であっても、ブリーザ層30が円筒壁26の外面28に密着することを可能にする。ブリーザ層30は、乾燥繊維70Cの1つ又は複数の層70Eを含み得る。
【0031】
[056]ブリーザ層30の気孔率は、図7A及び図7Bに示すように、乾燥繊維70Cの外径138、138’に関連している。図7A及び図7Bは、ファイバ型70Cの大外径138を有する繊維140、140’、及び小外径138’を有する繊維144、144’のグループの断面図をそれぞれ示している。隣接する大径繊維140、140’の間の空の空間148は、図7Aにおいて、図7Bの隣接する小径繊維144、144’の間の空の空間148’よりも大きい。ブリーザ層30の気孔率は、空の空間148、148’がブリーザ層30を通る空気溝52を形成するので、隣接する繊維140、140’、144、144’の間の空の空間148、148’の量に直接関係する。したがって、ブリーザ層30の気孔率は、外側複合シェル34に組み込まれる繊維70の外径よりも大きい外径138を有する繊維70Cを選択することによって増加され得る。
【0032】
[057]例えば、ガラス繊維を用いてブリーザ層30を形成することは、ガラス繊維の外径138が炭素繊維の外径よりも大きいならば、ブリーザ層30の気孔率を炭素繊維以上に改善させることになる。ガラス繊維は、典型的には、約3μm~約20μmの範囲内で入手可能である。それに比べて、炭素繊維は、典型的には、約5pm~約10pmの範囲内で入手可能である。したがって、約18pmの直径を有するガラス繊維は、非限定的な例として、約7pmの直径を有する炭素繊維がブリーザ層30を形成するために用いられる場合よりも大きい、ブリーザ層30内の空の空間148、148’をもたらすことになる。
【0033】
[058]それに加えて、非円形断面を有する繊維70Cを選択することは、円形断面を有する繊維70Cを含むブリーザ層30以上にブリーザ層30内の空の空間148、148’を増加させ得る。円形及び非円形繊維70Cがブリーザ層30内での使用に適しているが、非円形繊維70Cは、円形繊維70Cよりも高い気孔率が達成され得るので、好ましい。任意選択で、ストランド70C’内で元々整列した繊維70Cが、編組工程の直前に、エアノズルによって混合されることにより、繊維ストランド70C’内部の気孔率を増加させ得る。
【0034】
[059]ブリーザ層30は、特定の用途に所望されるような複数層の編組された及び/又は巻き付けられた乾燥繊維ストランド70C’を含み得る。ブリーザ層30に好適な繊維70Cは、炭素繊維、ガラス繊維、バサルト繊維、ホウ素繊維、アラミド繊維、高密度ポリエチレン繊維(HDPE)、Zylon(商標)ポリ(p-フェニレン-2,6-ベンゾビスオキサゾール繊維(PBO)、アラミド繊維、Kevlar(登録商標)ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ナイロン繊維(PA)、ポリエステル繊維(PL)、ポリプロピレン繊維(PP)、ポリエチレン繊維(PE)等のうちの1つ又は複数を含む。これらの繊維70Cは、繊維径、繊維形状、横圧縮強度、様々な材料組成、コスト、重量の範囲内で入手可能である。ブリーザ層30についての繊維型70Cの選択は、圧力容器10についてのガス管理要件、材料コスト、材料特性、繊維層の厚さ等に部分的に基づく。好ましくは、ブリーザ層30の選択された繊維70Cは、繊維70Cの材料組成、断面形状及び/又は外径138のうちの1つ又は複数において、外側複合シェル34について選択された繊維70とは異なる。外側複合シェル34について選択された繊維70よりも大きい直径を有する、ブリーザ層30についての繊維70Cを選択することは、ブリーザ層30と外側複合シェル34の両方について同じ繊維70を用いること以上にブリーザ層30の気孔率を向上させることになる。
【0035】
[060]図8は、ライナ16と外側複合シェル34との間に、乾燥繊維70Cから形成されたブリーザ層30を有する圧力容器10の断面図を示す。ブリーザ層30の半径方向厚さ160の少なくとも一部分は、ライナ16の外面28に沿って樹脂72を含まないことにより、ガス14がブリーザ層30を通って流れることを確実にする。
【0036】
[061]図8を参照すると、ブリーザ層30内への液状樹脂72の侵入が、ブリーザ層30がライナ16に適用された乾燥繊維70Cの1つ又は複数の層を含む場合に、制御されなければならない。ブリーザ層30内への液状樹脂72の侵入を制限する一方法は、繊維70及び樹脂72によって形成された外側複合体34をライナ16に適用する前に、ブリーザ層30の1つ又は複数の犠牲層160’を含むことである。1つ又は複数の犠牲層160’は、外側複合シェル34からの過剰液状樹脂72を吸収して、ライナ16に隣接する内部繊維層160内に液状樹脂72が侵入するのを防止する。ブリーザ層30の繊維70Cが複合体34の繊維70よりも低いコスト及び/又は軽い重量のものである場合には、犠牲層160’を形成するためにブリーザ繊維70Cの追加の層を含むことが好ましい。
【0037】
[062]その代替として、ブリーザ層30は、図9に示す圧力容器10の一実施形態に示すように、樹脂バリア層170によって被覆されることにより、ブリーザ層30内への液状樹脂72の侵入を防止し得る。
【0038】
[063]好ましくは、樹脂バリア層170は、液体不透過性である樹脂バリア材料170’を含む。好適な樹脂バリア材料170’は、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリシロキサン、ポリウレタン(PU)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ナイロン、合成ゴム、シリコーン、エチレンプロピレンジエンター高分子(EPDM)、ポリエチレン(DPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリロニトリルブタジエンゴム(ニトリル)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のうちの1つ又は複数を含む。樹脂バリア材料170’は、非限定的な例として、テープ、フィルム、シート、ラップ及び/又は成型ゴムであり得る。樹脂バリア材料170’の好ましい一実施形態は、図10に示すように、ブリーザ層30の外周30’の周りに巻き付けられた高分子フィルム170’である。ブリーザ層30の外周30’の周りに、ポリエチレンストレッチラップ等の保護フィルム170’を巻き付けることは、樹脂72の硬化過程中に、液状樹脂72がブリーザ層30に詰まるのを防止することになる。
【0039】
[064]図11は、円筒壁26を通る、ブリーザ層30及び樹脂バリア層170内へのガス14透過を示す図9の圧力容器10の切断図を示す。ブリーザ層30は、ガス透過性であり、円筒壁26を透過するガス14に流路52を提供する。ブリーザ層30によって収集されたガス14は、圧力容器10上の所定の出口位置64に向かって誘導される。図9及び図11に示す実施形態では、樹脂バリア層170は、矢印Aで示すように液体不透過性であるだけでなく、ガス透過性である。したがって、外側複合シェル34を形成する繊維70に適用された液状樹脂72は、樹脂バリア層170が液体不透過性であるので、ブリーザ層30によって吸収されない。ブリーザ層30内での液状樹脂72の吸収を防止すること、特に、ブリーザ層30と円筒壁26との間への液状樹脂72侵入を防止することは、ブリーザ層30のガス透過性及び気孔率を維持する。
【0040】
[065]その代替として、樹脂バリア層170及びブリーザ層30に加えて、金属箔及び/又は金属化フィルム等の非構造金属層180が用いられ得る。図12Aに示すように、金属層180が、ライナ16とブリーザ層30との間、ブリーザ層30と樹脂バリア層170との間、及び/又は樹脂バリア層170と外側複合シェル34との間に挿入され得る。更に、圧力容器10が樹脂バリア層170を欠いている場合、非構造金属層180が含まれ得る。金属は、高分子と比較すると、低い透過性を有する。アルミナ化マイラ(PET)等の金属化フィルムの1つ又は複数の層が、ライナ16の周りにブリーザ層30の繊維ストランド70Cを編組する前に、ライナ16の一定外径(OD)部分の周りに設置され得る。これにより、被覆領域内の外側複合シェル34によって、水素等のガス14の吸収を著しく遅延させる。これにより、外側複合シェル34に吸収されるガス14の全体量が減少させられ、そのためライナ16の崩壊を軽減する。任意選択で、繊維ストランド70C及び/又は炭素繊維列70’とほぼ等しい幅の金属化マイラ(PET)ストリップが、ライナ16の周りに編組されることにより、特定のライナ16部分にのみ不連続に適用されたシートと比べて、より高いライナ16被覆率及び工程連続性の利点を提供し得る。
【0041】
[066]ブリーザ層30の別の一実施形態が、図12Bに示されており、ブリーザ層30は、乾燥繊維70C層の代わりに、巻き付けられたガラス繊維布190の1つ又は複数の層で形成される。ガラス繊維布190は、織布又は不織布であってもよい。ポリエチレンストレッチラップ等の保護フィルム170’の樹脂バリア層170が、ブリーザ層30の外周30’の周りに巻き付けられて、樹脂72の硬化工程中に、液状樹脂72がブリーザ層30に詰まるのを防止する。更に、金属箔及び/又は金属化フィルム等の1つ又は複数の非構造金属層180が、図12Bに示すように、ライナ16とブリーザ層30との間、ブリーザ層30と樹脂バリア層170との間、及び/又は樹脂バリア層170と外側複合シェル34との間に挿入され得る。
【0042】
[067]図13は、図1の圧力容器10の別の一実施形態の断面図であり、ブリーザ層30は、高分子フィルム200を含む。好ましくは、高分子フィルム200は、ガス透過性であるだけでなく、液体不透過性である。したがって、ブリーザ層30は、ライナ16を通って透過するガス14を収集して、圧力容器10上の所定の出口位置64に向かってガス14を誘導し得る。好ましい一実施形態は、図14に示すような、ライナ16の外周28の周りに巻き付けられた高分子フィルム200である。高分子フィルム200は、適合性圧力容器10のためのライナ16の一定外径部136A、136B、及びテーパ部136Cの周りに巻き付けられ得る。
【0043】
[068]ブリーザ層30に好適な高分子フィルム200は、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリシロキサン、ポリウレタン(PU)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ナイロン、合成ゴム、シリコーン、エチレンプロピレンジエンターポリマ(EPDM)、ポリエチレン(DPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリロニトリルブタジエンゴム(ニトリル)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のうちの1つ又は複数を含む。高分子フィルム200は、非限定的な例として、テープ、フィルム、シート、ラップ及び/又は成型ゴムであり得る。
【0044】
[069]ブリーザ層30によって収集された透過ガス14は、図15に示すような、所定の出口位置64を通って大気60まで通気される。図15は、図2の圧力容器10の部分17の拡大断面図である。ステム44は、図3及び図15に示すように、取付けリッジ92のライナ取付け面92Aと反対側の取付け面92Bとの間に延在する1つ又は複数の通気スロット112を含む。フェルール48が外側複合シェル34及びステム44の取付けリッジ92に圧着されると、軸方向孔220がそれぞれの通気スロット112内に形成される。ブリーザ層30によって収集された透過ガス14は、ブリーザ層30から、フェルール48と取付けリッジ92との間の軸方向孔220を通って流れて、大気60に排出される。ブリーザ層30が乾燥繊維70Cを含む場合、及びブリーザ層30が高分子フィルム200を含む場合に、透過ガス14が、ブリーザ層30から軸方向孔220内に流れる。軸方向孔220を通って通過するガス14の量は、ブリーザ層30のガス透過性及び気孔率だけでなくライナ16全長に少なくとも依存する。
【0045】
[070]図16は、ライナ16がブリーザ層30及び樹脂バリア層170によって被覆されたときの、軸方向孔220を通る透過ガス14の流れを示す。ブリーザ層30と樹脂バリア層170の両方がガス透過性であるので、ガス14が、ブリーザ層30と樹脂バリア層170の両方から、取付けリッジ92を通って軸方向孔220内へと流れて、大気60に排出される。
【0046】
[071]ブリーザ層30を大気60に通気する第2の実施形態が、図17及び図18に示されており、透過ガス14は、フェルール48とステム44との間の圧着ジョイント240を通って通過する。図17は、ライナ16と外側複合体34との間にブリーザ層30を有する圧力容器10を示す。図17の圧力容器10は、ライナ16内の開口部36内に挿入されたステム44と、外側複合シェル34をステム44に固定的に結合するフェルール48とを備える。しかし、図17のステム44は、図2に示す取付けリッジ92内に通気スロット112を欠いている。フェルール48の圧着ジョイント240は、ガス14を、フェルール48下で、外の大気60へと搬送するように構成されている。透過ガス14は、図18に示すように、ブリーザ層30から、フェルール48とステム44との間の圧着ジョイント240を通り、大気60に流出する。
【0047】
[072]図19は、ブリーザ層30、及びライナ16と外側複合シェル34との間の樹脂バリア層170だけでなく、図17に示すステム44及びフェルール48を有する圧力容器10の実施形態を示す。ブリーザ層30及び樹脂バリア層170に沿って流れる透過ガス14は、図20に示すように、フェルール48とステム44との間の圧着ジョイント240を通って通過し、大気60に流出する。
【0048】
[073]ライナ16と外側複合シェル34との間の間隙54内でのガス圧力の増加を軽減し、それによりライナ16のそれに続く崩壊を防止する別の方法は、図21に示すように、外側複合シェル34を通る通気孔250、260を提供することである。1つ又は複数の通気孔250、260は、外側複合シェル34を通ってブリーザ層30を大気60に流体的に接続する。
【0049】
[074]圧力容器10は、圧力容器10の終端部68近傍の外側複合シェル34内に1つ又は複数の通気孔250、260を含み得る。任意選択で、圧力容器10は、圧力容器10の全体に沿って、及び/又は圧力容器10の選択された長手方向部分に沿って分布した通気孔250のアレイを含み得る。外側複合シェル34内の通気孔250のアレイは、編組後だが樹脂72の硬化前に、外側複合シェル34内に針を挿入することによって作成され得る。針は、樹脂72が硬化した後に、外側複合シェル34から除去される。通気孔250、260の直径、数及び位置は、ライナ16と外側複合シェル34との間の間隙54内のガス圧力を軽減するために必要な通気量に基づいて選択される。
【0050】
[075]図22は、ライナ16の内部空間18から、ライナ壁26を通って、ブリーザ層30内へ、外側複合シェル34内の通気孔250を通って、大気60に排気されるガス14の流れを示している。透過ガス14は、また、樹脂バリア層170がガス透過性であれば、任意選択の樹脂バリア層170に沿って通気孔250に流れる。外側複合シェル34内の通気孔250のアレイは、ブリーザ層30が必要とされないように、ライナ16と外側複合シェル34との間の間隙54内のガス圧力を十分に軽減してもよい。この場合、通気孔250のアレイは、ライナ16と外側複合シェル34との間の間隙54からガス14を排出する。外側複合シェル34を通る通気孔250、260の直径、間隔及び数は、大気60に通気されるべきであるガス14の量に部分的に基づいて選択される。
【0051】
[076]ガス14は、図21及び図23に示すように、通気孔260が外側複合シェル34とフェルール48の両方を通って通過すると、同様に大気60に排出される。図21及び図23を参照すると、1つ又は複数の通気孔260は、フェルール48を通り、外側複合シェル34を通って、ブリーザ層30まで延在してもよい。圧着されたフェルール48の密封及び機械的把持特徴126との干渉を防止するために、1つ又は複数の穿孔された通気孔260は、圧力容器10の終端部68近傍のこれらの特徴126を越えたところに配置されることになる。このようにして、ガス14を収容し、外側複合シェル34をステム44に固定するフェルール48の能力は、フェルール48を通る1つ又は複数の通気孔260によって影響を受けない。それに加えて、フェルール48は、1つ又は複数の通気孔260の存在がその構造的一体性を許容できない程度にまで低下しないように設計される。ブリーザ層30は、圧着されたフェルール48の圧力の下で期待されるように作動し続けなければならない、すなわち、ガス14を搬送するためのブリーザ層30内の空気溝52、148が開いたままでなければならない。圧着圧力下において気孔率を維持するためのブリーザ層30の能力が懸念される場合には、追加の多孔性材料(焼結金属インサート、より多くの繊維、ガラスビーズ等)が、ライナ16と外側複合シェル34との間に設置されて、ガス14流れを確実にする。
【0052】
[077]外側複合シェル34に用いられるのと同じ繊維の、螺旋状に巻き付けられた乾燥繊維層の気孔率以上にブリーザ層30の気孔率が改善された圧力容器10の1つの利点は、改善された透過ガス14管理である。第2の利点は、特定の適合性圧力容器10におけるような、小径部分136Bによって離間された大外径部分136Aを有するライナ16上に配設され得るブリーザ層30である。第3の利点は、ブリーザ層30内への液状樹脂72の侵入を防止すること、及びブリーザ層30とライナ16との間の液状樹脂72の侵入を防止ことによるブリーザ層30の気孔率の保持である。第4の利点は、ブリーザ層30がガス透過性と液体不透過性の両方であることであって、それにより、ブリーザ層30は、ブリーザ層30とライナ16との間への樹脂72の侵入を防止しながら、ガス14がブリーザ層30に沿って、圧力容器10上の所定の出口位置64まで透過することを可能にすることである。
【0053】
本発明が例示的な方式で説明されてきたが、使用された用語は、限定ではなく説明であるという言葉の性質を帯びているように意図されていることを理解されたい。本発明についての多くの修正及び変更が、上記の教示に照らして可能である。そのため、添付の特許請求の範囲内で、本発明は、具体的に説明されたこと以外で実施されてもよいことを理解されたい。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23