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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-25
(45)【発行日】2025-04-02
(54)【発明の名称】印刷用塗工紙
(51)【国際特許分類】
   D21H 19/38 20060101AFI20250326BHJP
   D21H 19/42 20060101ALI20250326BHJP
   D21H 19/82 20060101ALI20250326BHJP
【FI】
D21H19/38
D21H19/42
D21H19/82
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022024412
(22)【出願日】2022-02-21
(65)【公開番号】P2023121212
(43)【公開日】2023-08-31
【審査請求日】2024-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】伊賀 巨訓
(72)【発明者】
【氏名】鳥山 香奈子
(72)【発明者】
【氏名】中村 淳
(72)【発明者】
【氏名】浦崎 淳
【審査官】竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-113873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 19/38
D21H 19/42
D21H 19/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材パルプ及び填料を含有する基紙と、前記基紙の少なくとも片面に対して白色顔料及びバインダを含有する第一塗工層と、基紙を基準に前記第一塗工層の外側に対して白色顔料及びバインダを含有する第二塗工層とを有し、前記第一塗工層の白色顔料が重質炭酸カルシウム及びカオリンを含み、前記第二塗工層の白色顔料が軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン及び有機顔料を含み、CIEが定義するL表色系で示されるLが92.0以上、aが0.00以上1.70以下及びbが-2.00以上0.00以下である印刷用塗工紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多色オフセット輪転印刷に好適な印刷用塗工紙に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷機メーカー各社がデジタル印刷機を発表する中、印刷業においては、依然としてオフセット印刷機を、雑誌、書籍、画集、写真集、アート集、美術書、MOOK本、冊子、カタログ、チラシ及びパンフレットなどの商業印刷物の生産に活用する。商業印刷物を大量に生産する場合は、オフセット輪転印刷機を使用する。商業印刷物に使う用紙は、光沢紙及びマット紙だけに限らない。近年の用紙は、光沢感及び艶消し感、平滑の程度、色合い、手触り感などにおいて様々な品質が存在する。従来、カタログ、画集、写真集、アート集、美術書及びMOOK本では、白色度及び光沢感が良好な印刷用塗工紙を使用する。しかしながら、光沢感が高い印刷用塗工紙では文字の視認性が劣る。近時の傾向、特にカタログ及びMOOK本では、ダル調若しくはセミグロス調であって印刷部光沢感が良好な印刷用塗工紙を使用する。このような印刷用塗工紙は、写真及び絵柄の印刷画質が冴えつつ文字の視認性が良いからである。
【0003】
例えば、原紙上に顔料および接着剤を含有する下塗り層と上塗り層の塗工層を設け、原紙がパルプの繊維間結合を阻害する作用を持つ有機化合物を含有し、下塗り層が、顔料として、体積分布平均粒子径3.5~20μmであるデラミネーテッドクレーを顔料100重量部当たり50重量部以上含有し、上塗り塗工層が体積分布平均粒子径0.80μm以下であるカオリンを顔料100重量部あたり70重量部以上含有し、塗工紙密度が1.00g/cm以下であることを特徴とするダル調塗工紙が公知である(例えば、特許文献1参照)。このようなダル調塗工紙では、嵩高で、ラフな手触りを有しながら、印刷部光沢感が高く画線部の微小な光沢ムラが少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-133278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
オフセット印刷機には、枚葉印刷機と輪転印刷機とがある。輪転印刷機はロール状の印刷用紙を用いた高速大量印刷に特徴を有する。オフセット輪転印刷機では、印刷後に用紙を巻き取るまでに又は印刷後に裁断及び折加工するまでにインキを乾燥する必要があるため、乾燥機を備える。オフセット輪転印刷特有の問題として、印刷用紙内部の水分及び/又は印刷用紙内部に浸透したインキ成分中の溶媒成分が乾燥機で気化した気体が逃げ切れず、結果として印刷用紙に膨れを生じる現象、すなわちブリスターがある。ブリスターは、用紙が印刷用塗工紙である場合に及び/又は重色画像及び色濃度が高い画像の印刷を実施する場合に、発生し易い。
【0006】
オフセット輪転印刷機では一度巻取紙を印刷機に装着し搬送を開始すると二度とやり直しができないために、印刷用紙は、オフセット輪転印刷機に対する印刷能を有する必要がある。塗工層を設ける印刷用塗工紙は、印刷用非塗工紙よりも塗工層によって平滑性及びインキ受理性などが良化して印刷能が向上する。一方、オフセット輪転印刷機は、柔らかいゴムブランケットでインキを印刷用紙に転写して印刷用紙の厚み方向に対して十分着肉させるために、印刷用塗工紙と印刷用非塗工紙との間で平滑性の影響を受け難い。むしろ、オフセット輪転印刷機で印刷用塗工紙への印刷では、過剰な発色により印刷部分の明暗ないし色の差がぼやけてコントラストが弱くなる場合がある。
【0007】
商業印刷物において目立たせる箇所によく使われる色に「金赤」がある。金赤は、特色インキを用いる場合が多く、色相では、主にマゼンタ90%~100%とイエロー100%との混色で表現される。金赤の特色印刷では、DICのカラー番号DIC159又はDIC565として印刷業者へ指示する場合がある。印刷は、印刷用塗工紙に印刷された金赤が、要求する金赤となるように色相及び発色が重要になる。
【0008】
上記を鑑み、本発明の目的は、印刷部光沢感を有し、良好な耐ブリスター性、耐弱コントラスト性及び金赤再現性を有する印刷用塗工紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明の目的は、以下によって達成される。
木材パルプ及び填料を含有する基紙と、前記基紙の少なくとも片面に対して白色顔料及びバインダを含有する第一塗工層と、基紙を基準に前記第一塗工層の外側に対して白色顔料及びバインダを含有する第二塗工層とを有し、前記第一塗工層の白色顔料が重質炭酸カルシウム及びカオリンを含み、前記第二塗工層の白色顔料が軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン及び有機顔料を含み、CIEが定義するL表色系で示されるLが92.0以上、aが0.00以上1.70以下及びbが-2.00以上0.00以下である印刷用塗工紙。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、印刷用塗工紙は、良好な印刷部光沢感を有し、耐ブリスター性、耐弱コントラスト性及び金赤再現性を有することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明を詳細に説明する。
印刷用塗工紙は、木材パルプ及び填料を含有する基紙と、前記基紙の少なくとも片面に対して第一塗工層と、基紙を基準に前記第一塗工層の外側に対して第二塗工層とを有する。すなわち、印刷用塗工紙は、基紙、第一塗工層及び第二塗工層の順に有する。本発明の効果を発現する印刷用塗工紙の印刷面は、前記第一塗工層及び第二塗工層を有する面となる。印刷用塗工紙は、前記第一塗工層及び/又は第二塗工層を基紙の反対側の面に有することができる。通常、商業印刷物は両面である場合が多いために、少なくとも一つの実施態様において、印刷用塗工紙は、基紙の両面に対して第一塗工層及び基紙を基準に前記第一塗工層の外側に対してそれぞれ第二塗工層を有する。
第一塗工層及び第二塗工層が基紙の片面に対してのみ有する場合は、第一塗工層及び第二塗工層を有しない基紙の反対側の面に対して従来公知のバックコート層を設けることができる。例えば、バックコート層は、印刷用塗工紙のカール防止のために設ける。
【0012】
いくつかの実施態様において、印刷用塗工紙は、印刷適性及び層間強度を向上するなどの目的で必要に応じて、基紙と第一塗工層との間及び/又は第一塗工層と第二塗工層との間に、白色顔料及びバインダを含有する又は樹脂を含有する中間層を有する。少なくとも一つの実施態様において、中間層を有しない。この理由は、製造コストに優れるからである。
【0013】
上記木材パルプは、製紙分野で従来公知のパルプである。木材パルプは、例えば、LBKP(Leaf Bleached Kraft Pulp)及びNBKP(Needle Bleached Kraft Pulp)などの化学パルプ、GP(Groundwood Pulp)、PGW(Pressure GroundWood pulp)、RMP(Refiner Mechanical Pulp)、TMP(ThermoMechanical Pulp)、CTMP(ChemiThermoMechanical Pulp)及びCMP(ChemiMechanical Pulp)などの機械パルプ、CGP(ChemiGroundwood Pulp)などのセミケミカルパルプ、DIP(DeInked Pulp)などの古紙パルプ(Waste Paper Pulp)、並びに製紙工場で発生する損紙(Spoilage)を離解して成るパルプなどを挙げることができる。
いくつかの実施態様において、基紙は、上記木材パルプ以外に製紙分野で従来公知の非木材パルプを含有する。この理由は、植物資源の有効利用になるからである。非木材パルプの原料は、例えば、コウゾ、ミツマタ及びガンピ等の木本靭皮、亜麻、大麻及びケナフ等の草本靭皮、マニラ麻、アバカ及びサイザル麻等の葉繊維、イネわら、ムギわら、サトウキビバカス、タケ及びエスパルト等の禾本科植物、並びにワタ及びリンター等の種毛を挙げることができる。
いくつかの実施態様において、基紙は、基紙のパルプに対して木材パルプが90質量%以上である。少なくとも一つの実施態様において、基紙は、非木材パルプを含有しない。これらの理由は、製造コストに優れるからである。
【0014】
木材パルプの濾水度は特に限定しない。濾水度は、ISO5627-2:2001「Pulps-Determination of drainability-Part 2 Canadian Standard freeness method」に準じて求められるCSF濾水度である。いくつかの実施態様において、木材パルプの濾水度は380ml以上530ml以下である。この理由は、得られる基紙の強度及び平滑性と寸法安定性とが上手く両立できるからである。
【0015】
上記填料は、製紙分野で従来公知の白色顔料である。填料の例としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、活性白土、珪藻土、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムなどの無機顔料を、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、オレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、尿素系樹脂及びメラミン系樹脂などの各種樹脂からなる中密、中空、お椀型及び金平糖型などの各種形状の有機顔料を挙げることができる。また、有機顔料としてはマイクロカプセルなどを挙げることができる。填料は、これらから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
【0016】
いくつかの実施態様において、基紙は、填料としてタルク及び軽質炭酸カルシウムを含有する。少なくとも一つの実施態様において、基紙は、填料としてタルク及び軽質炭酸カルシウムを含有し、なおかつ基紙中の填料に対してタルク及び軽質炭酸カルシウムの合計含有量が80質量%以上である。これらの理由は、印刷用塗工紙の耐ブリスター性が良化する傾向を示すからである。
【0017】
タルクは、製紙分野で従来公知のものである。
タルクは、天然由来物と合成物とが存在し、基本構造としてSi-O四面体が二次元に連続した四面体シートとMg-(OH)八面体が二次元に連続した八面体シートがサンドイッチ状に2:1で重なった、化学式MgSi10(OH)で表される層状の粘土鉱物である。また、タルクは、2:1サンドイッチ状の層単位間結合が弱いためにへき開性、並びに柔らかさ(モース硬度1)及び滑り性という特徴を有する。また、タルクを含め粘土鉱物は、一般に、八面体シートのMg2+が一部価数の違う別の金属イオンに置換することで電荷を帯びる。タルクでは、四面体シートでSi4+がAl3+に又は八面体シートでMg2+がFe3+、Fe2+若しくはAl3+に置換できる。しかしながら、タルクでは、置換が極めて少量であるために電気的に中性に近く、その結果、疎水的挙動を有する。
【0018】
軽質炭酸カルシウムは、製紙分野で従来公知のものである。
軽質炭酸カルシウムは、石灰石を原料に化学的に製造された合成炭酸カルシウムで、形状が比較的均一で粒度分布も比較的広がりが小さい。また、軽質炭酸カルシウムは、結晶構造を有して特定の屈折率を有する。また、軽質炭酸カルシウムは、下記する重質炭酸カルシウムに比べて見かけ比重及び比表面積が大きい。
【0019】
いくつかの実施態様において、基紙は、基紙中のパルプ1000質量部に対して填料の含有量が100質量部以上200質量部以下である。また、いくつかの実施態様において、基紙は、基紙中のタルクと軽質炭酸カルシウムとの含有質量比が、タルク:軽質炭酸カルシウム=6:4~4:6である。これらの理由は、印刷用塗工紙の耐ブリスター性が良化する傾向を示すからである。
【0020】
基紙は、パルプ及び填料以外に更に必要に応じて、サイズ剤、定着剤、歩留り剤、カチオン化剤、バインダ、紙力剤、嵩高剤、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤、並びに乾燥紙力増強剤などの各種添加剤を含有することができる。
【0021】
基紙は、パルプ、填料及び必要に応じて各種添加剤を配合した紙料を、従来公知の抄紙機を用いて抄造して得ることができる。抄紙機の例としては、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、コンビネーション抄紙機、円網抄紙機及びヤンキー抄紙機などを挙げることができる。
【0022】
基紙は、表面サイズ剤を含むサイズ液によりサイズプレス処理を受けることができる。
表面サイズ剤は、製紙分野で従来公知のものである。表面サイズ剤の例としては、各種澱粉及びポリビニルアルコールなどを挙げることができる。
サイズプレス処理は、製紙分野で従来公知のサイズプレスによって達成できる。サイズプレスは、例えば、インクラインドサイズプレス、ホリゾンタルサイズプレス、フィルムトランスファー方式としてロッドメタリングサイズプレス、ロールメタリングサイズプレス及びブレードメタリングサイズプレスを、ロッドメタリングサイズプレスではシムサイザー、オプティサイザー、スピードサイザー及びフィルムプレスを、ロールメタリングサイズプレスではゲートロールコーターを挙げることができる。その他にも、ビルブレードコーター、ツインブレードコーター、ベルバパコーター、タブサイズプレス、カレンダーサイズプレスなどを挙げることができる。
【0023】
基紙は、カレンダー処理を受けることができる。
カレンダー処理とは、ロール間に紙を通すことによって平滑性や厚みを平均化する処理である。カレンダー処理に用いる装置は、製紙分野で従来公知の装置であって、例えば、マシンカレンダー、ソフトニップカレンダー、スーパーカレンダー、多段カレンダー及びマルチニップカレンダーなどを挙げることができる。
【0024】
基紙に対して第一塗工層及び第二塗工層並びにバックコート層など塗工層を設ける方法は、特に限定しない。方法は、例えば、それぞれの塗工層塗工液を塗工紙分野で従来公知の塗工装置及び乾燥装置を用いて塗工及び乾燥する方法を挙げることができる。塗工装置は、例えば、コンマコーター(登録商標)、フィルムプレスコーター、ロッドコーター、エアナイフコーター、ロッドブレードコーター、バーコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、Eバーコーター、及びサイズプレスなどを挙げることができる。乾燥装置は、例えば、直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤーなどの熱風乾燥機、赤外線加熱ドライヤー、及びマイクロ波などを利用した乾燥機などを挙げることができる。
【0025】
基紙に対して第一塗工層及び/又は第一塗工層に対して第二塗工層を設けた各段階で、印刷用塗工紙は、カレンダー処理を受けることができる。カレンダー処理に用いる装置は上記と同じである。
【0026】
いくつかの実施態様において、印刷用塗工紙は、第一塗工層の塗工量が乾燥固形分で5g/m以上10g/m以下である。また、いくつかの実施態様において、印刷用塗工紙は、第二塗工層の塗工量が乾燥固形分で4g/m以上9g/m以下である。少なくとも一つの実施態様において、印刷用塗工紙は、第一塗工層の塗工量は乾燥固形分で5g/m以上10g/m以下及び第二塗工層の塗工量は乾燥固形分で4g/m以上9g/m以下であり、第二塗工層の塗工量が第一塗工層の塗工量よりも少ない。
これらの理由は、印刷用塗工紙の耐ブリスター性、耐弱コントラスト性及び/又は金赤再現性が良化するからである。
【0027】
第一塗工層及び第二塗工層は、白色顔料及びバインダを含有する。
白色顔料は、塗工紙分野で従来公知のものである。白色顔料の例としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、活性白土、珪藻土、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、炭酸マグネシウム及び水酸化マグネシウムなどの無機顔料、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、オレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、尿素系樹脂及びメラミン系樹脂などの各種樹脂からなる中密、中空、お椀型及び金平糖型などの各種形状の有機顔料を挙げることができる。また、有機顔料としてはマイクロカプセルなどを挙げることができる。
【0028】
第一塗工層中の白色顔料は、重質炭酸カルシウム及びカオリンを含む。また、第二塗工層中の白色顔料は、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン及び有機顔料を含む。印刷用塗工紙は、第一塗工層が白色顔料として重質炭酸カルシウム及びカオリンを含み、並びに第二塗工層が白色顔料として軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン及び有機顔料を含むという構成によって、耐ブリスター性、耐弱コントラスト性及び金赤再現性を得ることができる。また、印刷用塗工紙は、第一塗工層及び第二塗工層の白色顔料を前記構成にすることによって印刷部光沢感を有することができる。この理由は不明であるものの、本発明者らは、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン及び有機顔料の有する属性による相乗効果であると推察する。
いくつかの実施態様において、第一塗工層は、第一塗工層中の白色顔料に対して重質炭酸カルシウム及びカオリンの合計含有量が90質量%以上であり、第二塗工層は、第二塗工層中の白色顔料に対して軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン及び有機顔料の合計含有量が90質量%以上である。これらの理由は、印刷用塗工紙の耐ブリスター性、耐弱コントラスト性及び/又は金赤再現性が良化するからである。
【0029】
軽質炭酸カルシウムは、上記填料で説明したものと同じであって、ここでは説明を割愛する。
重質炭酸カルシウムは、製紙分野で従来公知のものである。重質炭酸カルシウムは、主成分である石灰石を直接粉砕した天然由来の炭酸カルシウムで、形状が不均一で通常であれば粒度分布範囲も比較的広がりが大きい。また、重質炭酸カルシウムは、軽質炭酸カルシウムに比べて見かけ比重及び比表面積が小さい。
【0030】
カオリンは、製紙分野で従来公知のものである。
カオリンは、ケイ素-酸素の層とアルミニウム-ヒドロキシルの層が交互に重なった構造を有する、一般的にAl・2SiO・2HOを主成分とする粘土鉱物である。また、カオリンは、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト、加水ハロイサイト等の天然に産出されたカオリン原鉱を工業的に精製及び加工したものであって、例えば、粉砕、洗浄、除鉄及び分級等の工程を経て製造されるものである。また、カオリンには、アスペクト比を向上させるためにせん断力をかけて薄板状としたデラミネーティッドカオリン、粒度分布がシャープになるよう調整したエンジニアードカオリン、凝集性を高めた焼成カオリンのような加工性の高いものも含まれる。また、カオリンは、平板状の粒子であって、通常、粒子の平面部分がマイナスにエッジ部分がプラスに帯電する。
【0031】
有機顔料は、塗工紙分野で従来公知のものである。
有機顔料は、有機化合物の樹脂から構成される白色顔料で各種形状がある。いくつかの実施態様において、有機顔料は、中空有機顔料である。この理由は、印刷用塗工紙の耐弱コントラスト性及び/又は金赤再現性が良化するからである。中空有機顔料は、粒子内部に1個または複数個の空隙(中空)部を有する有機顔料である。
【0032】
いくつかの実施態様において、第一塗工層は、第一塗工層中の重質炭酸カルシウムとカオリンとの含有質量比が、重質炭酸カルシウム:カオリン=65:35~85:15である。いくつかの実施態様において、第二塗工層は、第二塗工層中の軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン及び有機顔料の含有量が、第二塗工層中の白色顔料100質量部に対して軽質炭酸カルシウム35質量部以上55質量部以下、重質炭酸カルシウム18質量部以上38質量部以下、カオリン10質量部以上30質量部以下、及び有機顔料4質量部以上16質量部以下である。これらの理由は、印刷用塗工紙の耐ブリスター性、耐弱コントラスト性及び/又は金赤再現性が良化するからである。
少なくとも一つの実施態様において、第一塗工層は、第一塗工層中の重質炭酸カルシウムとカオリンとの含有質量比が重質炭酸カルシウム:カオリン=65:35~85:15であり、なおかつ第二塗工層は、第二塗工層中の軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン及び有機顔料の含有質量比が軽質炭酸カルシウム35質量部以上55質量部以下、重質炭酸カルシウム18質量部以上38質量部以下、カオリン10質量部以上30質量部以下、及び有機顔料4質量部以上16質量部以下である。
【0033】
バインダは、塗工紙分野で従来公知の水分散性バインダ又は水溶性バインダである。水分散性バインダの例としては、スチレンブタジエン系共重合樹脂などのスチレン系樹脂、(メタ)アクリロニトリルブタジエン系共重合樹脂などの共役ジエン系共重合樹脂、(メタ)アクリル酸エステルブタジエン系共重合樹脂、(メタ)アクリル酸エステルスチレン系共重合樹脂及び(メタ)アクリル酸エステル系重合樹脂などのアクリル系樹脂、エチレン酢酸ビニル系共重合樹脂及び塩化ビニル酢酸ビニル系共重合樹脂などのビニル系共重合樹脂、ポリウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、並びにこれらの各種単量体を用いた変性樹脂、さらに尿素系樹脂及びメラミン系樹脂などの熱硬化合成樹脂を挙げることができる。水溶性バインダの例としては、澱粉類、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルアルコール(未変性のポリビニルアルコール又はシラノール変性ポリビニルアルコールなどの変性ポリビニルアルコールを含む総称を指す。)、カゼインやゼラチン又はそれらの変性物、大豆蛋白、プルラン、アラビアゴム、カラヤゴム、アルブミンなどの天然高分子樹脂又はこれらの誘導体、アルギン酸ソーダ、マレイン酸系樹脂などを挙げることができる。
【0034】
いくつかの実施態様において、第一塗工層のバインダは、澱粉類とスチレンブタジエン系共重合樹脂との併用である。また、いくつかの実施態様において、第二塗工層のバインダは、ポリビニルアルコールとスチレンブタジエン系共重合樹脂との併用である。これらの理由は、バインダの属性による相乗効果により印刷用塗工紙の耐ブリスター性が良化する傾向を示すからである。属性は、例えば、スチレンブタジエン系共重合樹脂は白色顔料に対する結合性に優れ、澱粉類はゲル化性及びこわさ付与性に優れ、並びにポリビニルアルコールは結晶化性及び被膜性に優れる、である。
少なくとも一つの実施態様において、第一塗工層のバインダが澱粉類から成る群から選ばれる一種又は二種以上及びスチレンブタジエン系共重合樹脂であり、なおかつ第二塗工層のバインダがポリビニルアルコールから成る群から選ばれる一種又は二種以上及びスチレンブタジエン系共重合樹脂である。
【0035】
いくつかの実施態様において、第一塗工層中のバインダの含有量は、第一塗工層中の白色顔料100質量部に対して5質量部以上15質量部以下である。また、いくつかの実施態様において、第二塗工層中のバインダの含有量は、第二塗工層中の白色顔料100質量部に対して8質量部以上28質量部以下である。これらの理由は、耐ブリスター性が良化する傾向を示すからである。
少なくとも一つの実施態様において、第一塗工層中のバインダの含有量が第一塗工層中の白色顔料100質量部に対して5質量部以上15質量部以下であり、並びに第二塗工層中のバインダの含有量が第二塗工層中の白色顔料100質量部に対して8質量部以上28質量部以下である。
【0036】
第一塗工層は白色顔料及びバインダ以外に並びに第二塗工層は白色顔料及びバインダ以外に必要に応じて塗工紙分野で従来公知の各種添加剤を含有することができる。添加剤の例としては、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、発泡剤、滑剤、浸透剤、着色剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、印刷適性向上剤などを挙げることができる。
【0037】
いくつかの実施態様において、第二塗工層は、蛍光増白剤を含有する。この理由は、耐弱コントラスト性が良化するからである。蛍光増白剤は、塗工紙分野で従来公知のものである。蛍光増白剤は、例えば、フルオレセイン系化合物、チオフラビン系化合物、エオシン系化合物、ローダミン系化合物、クマリン系化合物、イミダゾール系化合物、オキサゾール系化合物、トリアゾール系化合物、カルバゾール系化合物、ピリジン系化合物、イミダゾロン系化合物及びナフタル酸系化合物、並びにスチルベンジスルホン酸誘導体、スチルベンテトラスルホン酸誘導体及びスチルベンヘキサスルホン酸誘導体のスチルベン系化合物などを挙げることができる。いくつかの実施態様において、蛍光増白剤は、製紙分野で従来公知のスチルベン系化合物である。
蛍光増白剤は、目に見えない紫外線を吸収して目に見える青白い光(蛍光)に変える化合物で、見かけ上の紙の白さを増すための添加剤である。蛍光増白剤を含有する塗工層では、蛍光増白剤による蛍光によって見かけ上の紙の白さを増す。本発明者らは、試行錯誤の結果、第二塗工層に蛍光増白剤を含有することによって、印刷用塗工紙の耐弱コントラスト性が得られることを見出した。すなわち、第二塗工層に蛍光増白剤を含有する印刷用塗工紙は、見かけ上の白さを増すだけでなく、耐弱コントラスト性を得ることができる。
【0038】
いくつかの実施態様において、基紙、第一塗工層及び/又は第二塗工層は、着色顔料及び着色染料から成る群から選ばれる着色剤を含有する。着色剤は、特に限定されず、後記の色相にするべく選択する。木材パルプ及びカオリンなどの白色顔料は、厳密に白色ではなくて僅かに色付くため、木材パルプ及び白色顔料に合わせて調整する。そして、印刷用塗工紙は、基紙、第一塗工層及び/又は第二塗工層が着色剤を含有することにより基紙の木材パルプ、第一塗工層の白色顔料及び/又は第二塗工層の白色顔料と相まって、CIEが定義するL表色系で示されるLが92.0以上、aが0.00以上1.70以下及びbが-2.00以上0.00以下にすることができる。
CIEが定義するL表色系において、Lは輝度を示し、プラスのaは赤色側の色度を示しマイナスのaは緑色側の色度を示し及びプラスのbは黄色側の色度を示しマイナスのbは青色側の色度を示す。Lが上記範囲である印刷用塗工紙は輝度が高く及び淡いグレー系の色である。そして、Lが上記範囲である印刷用塗工紙は耐弱コントラスト性及び耐金赤再現性を得ることができる。
【0039】
いくつかの実施態様において、印刷用塗工紙は、ISO8254-1:1999「Paper and board-Measurement of specular gloss-Part 1:75 degree gloss with a converging beam,TAPPI method」に基づく75度鏡面光沢度が35%以上75%以下である。75度鏡面光沢度が前記範囲であると印刷用塗工紙はセミグロス調になる。
印刷用塗工紙の光沢度は、塗工紙分野で従来公知の方法で調整することができる。印刷用塗工紙の光沢度は、例えば、基紙のカレンダー処理条件、第一塗工層及び第二塗工層が有する白色顔料の種類及び含有量、並びに各塗工層のカレンダー処理条件によって調整できる。一般に、印刷用塗工紙の平滑性を増す処理が光沢感を増す傾向を示す。また、白色顔料では、通常、カオリンの含有量が増すと光沢感が上がり、重質炭酸カルシウムの含有量が増すと光沢感が下がる。
【0040】
いくつかの実施態様において、印刷用塗工紙は、木材パルプ及び填料を含有する基紙と、前記基紙の少なくとも片面に対して白色顔料及びバインダを含有する第一塗工層と、基紙を基準に前記第一塗工層の外側に対して白色顔料及びバインダを含有する第二塗工層とを有し、前記第一塗工層の白色顔料が重質炭酸カルシウム及びカオリンを含み、前記第二塗工層の白色顔料が軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン及び有機顔料を含み、CIEが定義するL表色系で示されるLが92.0以上、aが0.00以上1.70以下及びbが-2.00以上0.00以下であり、前記第二塗工層が更に蛍光増白剤を含有する。
【0041】
また、いくつかの実施態様において、印刷用塗工紙は、木材パルプ及び填料を含有する基紙と、前記基紙の少なくとも片面に対して白色顔料及びバインダを含有する第一塗工層と、基紙を基準に前記第一塗工層の外側に対して白色顔料及びバインダを含有する第二塗工層とを有し、前記第一塗工層の白色顔料が重質炭酸カルシウム及びカオリンを含み、第一塗工層中の重質炭酸カルシウムとカオリンとの含有質量比が重質炭酸カルシウム:カオリン=65:35~85:15であり、前記第二塗工層の白色顔料が軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン及び有機顔料を含み、第二塗工層中の軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン及び有機顔料の含有量が、第二塗工層中の白色顔料100質量部に対して軽質炭酸カルシウム35質量部以上55質量部以下、重質炭酸カルシウム18質量部以上38質量部以下、カオリン10質量部以上30質量部以下、及び有機顔料4質量部以上16質量部以下であり、CIEが定義するL表色系で示されるLが92.0以上、aが0.00以上1.70以下及びbが-2.00以上0.00以下である。
【0042】
少なくとも一つの実施態様において、印刷用塗工紙は、木材パルプ及び填料を含有する基紙と、前記基紙の少なくとも片面に対して白色顔料及びバインダを含有する第一塗工層と、基紙を基準に前記第一塗工層の外側に対して白色顔料及びバインダを含有する第二塗工層とを有し、前記第一塗工層の白色顔料が重質炭酸カルシウム及びカオリンを含み、第一塗工層中の重質炭酸カルシウムとカオリンとの含有質量比が重質炭酸カルシウム:カオリン=65:35~85:15であり、前記第二塗工層の白色顔料が軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン及び有機顔料を含み、第二塗工層中の軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン及び有機顔料の含有量が、第二塗工層中の白色顔料100質量部に対して軽質炭酸カルシウム35質量部以上55質量部以下、重質炭酸カルシウム18質量部以上38質量部以下、カオリン10質量部以上30質量部以下、及び有機顔料4質量部以上16質量部以下であり、CIEが定義するL表色系で示されるLが92.0以上、aが0.00以上1.70以下及びbが-2.00以上0.00以下であり、前記第二塗工層が更に蛍光増白剤を含有する。
【実施例
【0043】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されない。ここで「質量部」及び「質量%」は、乾燥固形分量あるいは実質成分量の各々「質量部」及び「質量%」を表す。塗工量は乾燥固形分量を示す。
【0044】
実施例及び比較例の印刷用塗工紙を、以下の手順によって作製した。
【0045】
<基紙>
紙料は下記の内容により調製した。
LBKP(濾水度430mlcsf) 750質量部
NBKP(濾水度480mlcsf) 250質量部
タルク 70質量部
軽質炭酸カルシウム 70質量部
硫酸アルミニウム 10質量部
アルキルケテンダイマーサイズ剤 0.7質量部
カチオン化澱粉 9質量部
ポリアクリルアミド系歩留り剤 0.1質量部
着色剤 適宜
【0046】
上記紙料を長網抄紙機で抄造し、表面サイズ剤に澱粉を用いてサイズプレスにより両面に塗工した。塗工量は1g/mに成るように調整した。サイズプレスに続いて、カレンダー処理を施して坪量55g/mの基紙を得た。
【0047】
<第一塗工層の塗工層塗工液>
塗工層塗工液は下記の内容により調製した。
白色顔料 種類及び部数は表1~3に記載
澱粉 3質量部
SBR 7質量部
滑剤(ステアリン酸カルシウム) 0.4質量部
ポリアミド系印刷適性向上剤 0.5質量部
着色剤 適宜
上記の内容で配合し、水で混合分散して、濃度60質量%に調整した。
【0048】
<第二塗工層の塗工層塗工液>
塗工層塗工液は下記の内容により調製した。
白色顔料 種類及び部数は表1~3に記載
PVA 2質量部
SBR 18質量部
蛍光増白剤 0質量部/0.3質量部
滑剤(ステアリン酸カルシウム) 0.4質量部
ポリアミド系印刷適性向上剤 0.5質量部
着色剤 適宜
上記の内容で配合し、水で混合分散して、濃度46質量%に調整した。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
用いた材料は下記の通りである。
タルクには兵庫クレー社タルクを用いた。軽質炭酸カルシウムには奥多摩工業社タマパール(登録商標)TP-123を用いた。重質炭酸カルシウムには兵庫クレー社WH90を用いた。カオリンには日成共益社ハイドラファイン90を用いた。シリカには水澤化学工業社ミズカシル(登録商標)P-73を用いた。有機顔料1には中空型白色有機顔料のJSR社AE850を用いた。有機顔料2には中密有機顔料の旭化成社L8801を用いた。PVA(ポリビニルアルコール)には日本酢ビ・ポバール社JF-04を用いた。澱粉には王子コーンスターチ社P140を用いた。SBR(スチレンブタジエン系共重合樹脂)には旭化成社E1585を用いた。蛍光増白剤にはクラリアント社スチルベン系化合物であるLeucophor(登録商標) U liqを用いた。
【0053】
<印刷用塗工紙>
基紙の両面に対して、第一塗工層の塗工層塗工液を塗工装置にブレードコーターを用いて塗工及び熱風乾燥機を用いて乾燥した。続けて第一塗工層の両面に対して、第二塗工層の塗工層塗工液を塗工装置にエアナイフコーターを用いて塗工及び熱風乾燥機を用いて乾燥し、印刷用塗工紙を得た。第一塗工層の塗工量は8g/mと成るように及び第二塗工層の塗工量は7g/mと成るように塗工条件を調整した。
【0054】
得られた印刷用塗工紙について、下記の項目を評価した。
【0055】
<耐ブリスター性>
オフセット輪転印刷機(三菱重工業社、リソピア(登録商標)BT-2-600型)を用い、オフセット輪転用印刷インキ(大日本インキ化学工業社、ウェブワールドテラスN)を使用して4色(CMYK)印刷を印刷用塗工紙の片面に行った。また、印刷は、印刷速度300m/分及び乾燥機出口の紙面温度120℃とし、観察は、印刷が安定したところの印刷用塗工紙1000mを対象とした。印刷には、CMYK及び赤、青、緑の各色ベタ画像並びに金赤ベタ画像、人物写真画像、風景写真画像、並びに文字画像をランダムに配置した評価用画像を用いた。耐ブリスター性は、得られた印刷物におけるブリスターの発生状況を目視で観察し、下記の基準で官能的に評価した。本発明において、印刷用塗工紙はA又はBの評価であれば良好な耐ブリスター性を有するものとする。
A:ブリスターが概ね認められない。
B:ブリスターではないものの、僅かに膨らみ感の存在が認められる。
C:上記Bより劣り、ブリスターの存在が僅かに認められる。
D:上記Cより劣り、ブリスターの存在が認められる。
【0056】
<耐弱コントラスト性>
オフセット輪転印刷機(三菱重工業社、リソピアBT-2-600型)を用い、オフセット輪転用印刷インキ(大日本インキ化学工業社、ウェブワールドテラスN)を使用して4色(CMYK)印刷を印刷用塗工紙の片面に行った。また、印刷は、印刷速度300m/分及び乾燥機出口の紙面温度120℃とし、観察は、印刷が安定したところの印刷用塗工紙1000mを対象とした。印刷には、CMYK及び赤、青、緑の各色ベタ画像並びに金赤ベタ画像、人物写真画像、風景写真画像、並びに文字画像をランダムに配置した評価用画像を用いた。耐弱コントラスト性は、得られた印刷物における画像の明暗及び鮮やかさの差を目視で観察して、下記の基準で官能的に評価した。本発明において、印刷用塗工紙はA又はBの評価であれば良好な耐弱コントラスト性を有するものとする。
A:画像の明暗及び鮮やかさの差が極めてはっきりし、良好である。
B:上記Aより劣るものの、
画像の明暗及び鮮やかさの差がはっきりし、概ね良好である。
C:上記Bより劣るものの、
画像の明暗及び鮮やかさの差が概ねはっきりし、実用的品質を有する。
D:上記Cより劣り、画像の明暗及び鮮やかさの差が不足又は不足気味である。
【0057】
<金赤再現性>
オフセット輪転印刷機(三菱重工業社、リソピアBT-2-600型)を用い、オフセット輪転用印刷インキ(大日本インキ化学工業社、ウェブワールドテラスN)を使用して4色(CMYK)印刷を印刷用塗工紙の片面に行った。また、印刷は、印刷速度300m/分及び乾燥機出口の紙面温度120℃とし、観察は、印刷が安定したところの印刷用塗工紙1000mを対象とした。印刷には、CMYK及び赤、青、緑の各色ベタ画像並びに金赤ベタ画像、人物写真画像、風景写真画像、並びに文字画像をランダムに配置した評価用画像を用いた。
印刷物を10人の被験者に渡し、被験者は、金赤ベタ画像の色について、DICのカラー番号DIC159又はDIC565に対比して色相及び発色の観点から下記の基準で評価した。最終的な点数は、10人の評価結果を平均して小数点以下を四捨五入した。本発明において、印刷用塗工紙は3又は4の評価であれば良好な金赤再現性を有するものとする。
4:色相及び発色に問題なし。
3:上記4よりも劣るものの、色相及び発色に概ね問題なし。
2:上記3より劣るものの、色相及び発色として実用的品質を有する。
1:上記2より劣り、色相及び発色として実用的品質に未達である。
【0058】
評価結果を表1~3に示す。
【0059】
各実施例及び各比較例はセミグロス調であった。また、印刷部光沢感を目視で観察した結果、本発明に該当する実施例1~30及び比較例1~5及び10では十分な印刷部光沢感を有する印刷用塗工紙であって、比較例6~9及び比較例11~14では十分な印刷部光沢感を有する印刷用塗工紙でなかった。
【0060】
表1~3から、本発明に該当する実施例1~30は、印刷部光沢感を有し、良好な耐ブリスター性、耐弱コントラスト性及び金赤再現性を有する印刷用塗工紙であると分かる。一方、本発明の構成を満足しない比較例1~14は、印刷部光沢感、耐ブリスター性、耐弱コントラスト性及び金赤再現性のいずれかを良好に満足できない印刷用塗工紙と分かる。