(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-25
(45)【発行日】2025-04-02
(54)【発明の名称】固定型電気炉の操業方法
(51)【国際特許分類】
C22C 33/04 20060101AFI20250326BHJP
C21B 11/10 20060101ALI20250326BHJP
C22C 1/00 20230101ALI20250326BHJP
【FI】
C22C33/04 Z
C21B11/10
C22C33/04 B
C22C1/00 G
(21)【出願番号】P 2022526557
(86)(22)【出願日】2021-05-25
(86)【国際出願番号】 JP2021019705
(87)【国際公開番号】W WO2021241538
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2024-04-03
(31)【優先権主張番号】P 2020094637
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000200301
【氏名又は名称】JFEミネラル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【氏名又は名称】塩島 利之
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 克信
(72)【発明者】
【氏名】西村 博文
(72)【発明者】
【氏名】杉森 博一
(72)【発明者】
【氏名】森 正浩
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-105415(JP,A)
【文献】特開昭64-52013(JP,A)
【文献】特開平04-308686(JP,A)
【文献】国際公開第2020/003230(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 33/04
C21B 11/10
C22C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解した原料を湯口から出湯する固定型電気炉の操業方法において、
出湯の際、前記固定型電気炉の溶湯の湯面レベルを把握し、
出湯後の溶湯の湯面レベルを前記湯口よりも高い所定高さ以上に管理する固定型電気炉の操業方法。
【請求項2】
前記固定型電気炉の電極の先端位置に基づいて、溶湯の湯面レベルを把握することを特徴とする請求項1に記載の固定型電気炉の操業方法。
【請求項3】
前記所定高さは、一定であることを特徴とする請求項1又は2に記載の固定型電気炉の操業方法。
【請求項4】
前記湯口は、前記固定型電気炉の炉底よりも高い位置に設けられており、
前記所定高さは、前記湯口のセンターから100mm以上の高さであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の固定型電気炉の操業方法。
【請求項5】
出湯前の溶湯の湯面レベルを所定高さに管理することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の固定型電気炉の操業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低炭素フェロクロム等の製造方法に用いられる固定型電気炉の操業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低炭素フェロクロムは、Cr60質量%以上、C0.1質量%以下のFe-Cr合金であり、特殊鋼、特にステンレス鋼のCr添加材等に用いられている。低炭素フェロクロムの製造方法としては、古くからペラン法が用いられている。ペラン法は、原料としてのクロム鉱石と生石灰を電気炉で溶解し、溶湯を電気炉から出湯し、出湯した溶湯に還元剤を加えて低炭素フェロクロムを製造するものである。
【0003】
ペラン法において、電気炉には傾動しながら溶湯を出湯する傾動型電気炉が用いられる。しかし、傾動型電気炉を用いて溶湯を出湯する際、溶湯の湯面が大気に露出した状態になる。このため、湯面から大気への熱放散が大きく、熱効率が悪いという課題がある。また、傾動の邪魔になる電極を引き抜いて通電を停止する必要があるので、通電率が低下したり、停炉にともなう熱損失が大きくなったりするという課題がある。
【0004】
この課題を解決するために、出願人は、傾動型電気炉の替わりに固定型電気炉を用いることを提案している(特許文献1参照)。固定型電気炉は、炉を傾動させることなく、炉底より高い位置に設けた湯口から溶湯を出湯する。固定型電気炉を用いれば、上記の課題を解決できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の固定型電気炉の操業方法においては、出湯後の溶湯の湯面レベルが湯口の高さまで低下する。このため、十分な残湯量を確保できず、出湯後に装入された原料の溶解性が変動したり、溶湯の出湯温度が変動したりするという課題がある。また、出湯後の溶湯の湯面レベルが湯口の高さまで低下するのに伴って、電極の先端位置が湯口の高さまで低下するので、湯口が高温になり、湯口部の耐火物が浸食されるという課題がある。
【0007】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、安定操業が可能な固定型電気炉の操業方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、溶解した原料を湯口から出湯する固定型電気炉の操業方法において、出湯の際、前記固定型電気炉の溶湯の湯面レベルを把握し、出湯後の溶湯の湯面レベルを前記湯口よりも高い所定高さ以上に管理する固定型電気炉の操業方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、固定型電気炉の残湯量を確保できるので、出湯後に装入された原料の溶解性の変動、溶湯の出湯温度の変動を抑制できる。また、高温である電極の先端位置から湯口までの距離を確保できるので、湯口部の耐火物の浸食を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態の固定型電気炉の操業方法が適用される低炭素フェロクロムの製造方法の工程図である。
【
図4】固定型電気炉の縦断面図である(
図4(a)は出湯後の溶湯の湯面レベルを示し、
図4(b)は出湯前の溶湯の湯面レベルを示す)。
【
図5】出湯後の溶湯の所定高さを決定する根拠を示すグラフである。
【
図6】電極先端位置の推移を示すグラフである(
図6(a)は従来例を示し、
図6(b)は本発明例を示す)。
【
図7】従来例と本発明例とで、原料の溶解性、溶湯の出湯温度、湯口部の耐火物の温度を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態の固定型電気炉の操業方法を詳細に説明する。ただし、本発明の固定型電気炉の操業方法は種々の形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。本実施形態は、明細書の開示を十分にすることによって、当業者が発明の範囲を十分に理解できるようにする意図をもって提供されるものである。
【0012】
図1は、本実施形態の固定型電気炉の操業方法が適用される低炭素フェロクロムの製造方法の工程図である。
図1に示すように、低炭素フェロクロムの製造方法では、まず、原料としてのクロム鉱石と媒溶剤である生石灰を固定型電気炉に装入し、原料を固定型電気炉内で溶解させて溶湯を生成する。そして、溶湯を固定型電気炉の湯口から反応容器に出湯する(S1)。
【0013】
次に、溶湯を出湯した反応容器に、還元剤としてのシリコクロム、必要に応じて追装クロム鉱石を添加し、反応容器に不活性ガスを吹き込んで攪拌する(S2)。なお、攪拌は、2基の取鍋で溶湯の移し替えを行うリレードリングによって行ってもよい。
【0014】
クロム鉱石中の酸化クロムとシリコンとの還元反応は以下のように進む。
Cr2O3+3/2Si→2Cr+3/2SiO2…(1)
ここで、遊離したSiO2は、以下の(2)(3)のように生石灰と反応し、スラグが生成する。
CaO+SiO2→CaO・SiO2…(2)
2CaO+SiO2→2CaO・SiO2…(3)
(2)(3)のようにスラグが生成すると、(1)の遊離のSiO2が少なくなり、(1)の還元反応は左から右に進む。
【0015】
還元反応によって生成した低炭素フェロクロムの溶湯は、鋳型に鋳込まれて製品となる。製品の低炭素フェロクロムは、Crを60質量%以上、Siを1.0質量%以下、Cを0.1質量%以下含む。一方、還元反応によって生成したスラグは、低炭素フェロクロムの溶湯から分離される。
【0016】
なお、還元剤のシリコクロムには、還元反応によって生成したスラグから回収したシリコクロムを用いてもよいし、系外のシリコクロムを用いてもよい。また、シリコクロムの他に金属ケイ素等のシリコン系還元剤を用いてもよい。さらに、シリコン系還元剤の他にアルミ若しくはアルミ合金等のアルミニウム系還元剤、マグネシウム若しくはマグネシウム合金等のマグネシウム系還元剤、又はカルシウム若しくはカルシウム合金等のカルシウム系還元剤、これらの還元剤の混合物を用いてもよい。
【0017】
図2は、固定型電気炉1の縦断面図である。炉体3の炉底7より高い位置には、湯口2が設けられる。湯口2には、マッド材等の詰物6が充填される。炉体3には、原料シュート5より原料11としてのクロム鉱石と生石灰が装入される。炉体3には、3本の電極4a,4b,4cが挿入される。電極4a,4b,4cは、平面視で円周上に円周方向に120度の間隔を開けて配置される。電極4a,4b,4cの先端は、原料11に埋まる。10a,10b,10cは、電極4a,4b,4cを保持し、電極4a,4b,4cに電気を流すホルダである。なお、湯口2を炉底7に設けることも可能である。
【0018】
電極4a,4b,4cの通電によって、原料11が溶解し、溶湯12が生成する。溶湯12を生成した後に、湯口2に充填された詰物6をドリル等により取り除いて、湯口2から溶湯12を出湯する。原料11の装入、溶解、出湯は、電極4a,4b,4cに通電した状態で行われる。
【0019】
図2の8は鉄皮、9は耐火物、14はセルフライニング層(鉱石溶解層)である。鉄皮8の内側には、耐火物9が設けられる。9a,9bは耐火物9のレンガ、9cは耐火物9のスタンプである。耐火物9の内側には、セルフライニング層14が形成される。13a,13bは湯口部の耐火物9の温度を測定する熱電対である。
【0020】
図3は、固定型電気炉1の回路図である。21は遮断器、22は変圧器、4a,4b,4cは電極、3は炉体、23は電極4cに流れる電流(実電流)を検出する電流検出器、24は電極4cと接地された炉体3との間の電圧(実電圧)を検出する電圧検出器、25は電極を昇降させる電極昇降装置のモータ、26は電極4cの昇降を制御する電極昇降制御装置、27はモータ25に電力を供給するインバータである。なお、
図3では簡略化されており、実際には電流検出器23、電圧検出器24、モータ25、電極昇降制御装置26、インバータ27は、3本(3相)の電極4a,4b,4c毎に設けられる。3本の電極4a,4b,4cは、1本毎に昇降制御される。
【0021】
電極昇降制御装置26は、電極4a,4b,4cの実電流と実電圧を入力信号とし、実電流と実電圧の比(実電流/実電圧)が設定値(設定電流/設定電圧)になるように電極4a,4b,4cを昇降制御する。実電圧に比して実電流の割合が設定値より大きくなったとき、すなわちインピーダンスが低下したとき、電極昇降制御装置26は、電極4a,4b,4cを上昇させる速度信号をインバータ27に出力し、逆に実電圧に比して実電流の割合が設定値より小さくなったとき、すなわちインピーダンスが大きくなったとき、電極4a,4b,4cを下降させる速度信号をインバータ27に出力する。このように、インピーダンス一定制御することで、電極4a,4b,4cの先端位置は、湯面レベルhに合わせて昇降する。
【0022】
図2に示すように、溶湯12の湯面は、装入した未溶解の原料11によって覆われる。このため、目視により溶湯12の湯面レベルhを確認することができない。しかし、インピーダンス一定制御をすることで、電極4a,4b,4cの先端位置を溶湯12の湯面sと略同一にし、電極4a,4b,4cの先端位置を湯面sに合わせて昇降させることができる。したがって、電極4a,4b,4cの先端位置に基づいて、溶湯12の湯面レベルhを把握することができる。湯面レベルhの把握方法は後述する。なお、電極4a,4b,4cの先端位置から溶湯12の湯面sまでが一定距離になるようにインピーダンス一定制御をし、湯面レベルhの把握にあたって、この一定距離を加味してもよい。
【0023】
溶湯12の湯面レベルhの把握方法の一例を説明する。モニタリング可能なホルダ10a,10b,10cの下端位置の、基準高さNからの高さxを検出する。予めホルダ10a,10b,10cから電極4a,4b,4cの先端位置までの電極長さlを予め測定しておき、モニタリングしたホルダ10a,10b,10cの下端位置の高さxに電極長さlを合算する。電極4a,4b,4cの先端位置の高さと湯面sの高さは略同一であり、基準高さNからの湯口2のセンターCまでの距離pが既知なので、湯口2のセンターCからの湯面レベルhは、h=p-x-lで表すことができる。これにより、溶湯12の湯面レベルhを把握する。なお、電極長さlに電極4a,4b,4cの消耗分を加味してもよいし、電極4a,4b,4cに自焼成電極を用いた場合、電極長さlに自焼成電極の押下げ量を加味してもよい。
【0024】
図4(a)は、出湯後の溶湯12の湯面レベルhを示す。本実施形態の固定型電気炉1の操業方法においては、出湯の際、溶湯12の湯面レベルhを把握し、出湯後の溶湯12の湯面レベルhを湯口2よりも高い(正確にいえば湯口2の上端よりも高い)所定高さh1に管理する。すなわち、溶湯12の湯面レベルhが所定高さh1まで下降したとき、湯口2を閉塞し、出湯を停止する。これにより、残湯量を確保する。所定高さh1の決定方法は後述する。
【0025】
出湯後、
図2に示すように、固定型電気炉1に原料11を再装入する。原料11は、一括で装入してもよいし、分割で装入してもよい。装入する原料11の量は、目標出湯量(kg/tap)に合わせて決められる。装入した原料11を溶解すると、溶湯12の湯面レベルhが再び上昇する。
【0026】
図4(b)は、出湯前の溶湯12の湯面レベルh2を示す。出湯前の溶湯12の湯面レベルhは、所定高さh2に管理される。すなわち、溶湯12の湯面レベルhが所定高さh2まで上昇したとき、湯口2をドリル等により開口し、溶湯12を出湯する。なお、出湯の際、
図2に示すように溶湯12の湯面sを未溶解の原料11で覆っていてもよいし、
図4(b)に示すように覆っていなくてもよい。
【0027】
図4(a)に示す所定高さh1の決定方法の一例を説明する。
図5(b)は、電極先端位置の推移のグラフを示す。横軸はTap(時間)であり、縦軸は電極先端位置である。1回のtapにおいて、電極先端位置が徐々に上昇し、その後、出湯により下降する。このため、三角状の波形が形成される。
【0028】
図5(b)の破線の楕円で囲む領域に示すように、出湯後の電極先端位置(すなわち出湯後の溶湯12の湯面レベルh)が湯口2のセンターC(
図4(a)参照)から100mm未満になると、
図5(a)に示すように、湯口部の耐火物温度が上昇する。このため、出湯後の溶湯12の所定高さh1を湯口2のセンターCから100mm以上、望ましくは200mm以上高くする。この例では、出湯量を確保するために、
図5(b)に示すように、所定高さh1を200mmにした。もちろん、h1は200mmに限られることはなく、炉形状や操業条件により適宜決定すればよい。
【0029】
出湯前の溶湯12の所定高さh2は、出湯後の溶湯12の所定高さh1と目標出湯量(t/tap)に相当する電極4a,4b,4cのストローク量との和によって決定される。この例では、目標出湯量の11.5(t/Tap)に相当する電極のストローク量は600mmであった。このため、出湯前の溶湯12の所定高さh2を600mm+200mm=800mmにした。h2も、800mmに限られることはなく、炉形状や操業条件により適宜決定すればよい。
【0030】
以上に本実施形態の固定型電気炉の操業方法を説明した。ただし、本発明は上記実施形態に具現化されるのに限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で他の実施形態に具現化可能である。
【0031】
上記実施形態では、出湯後の溶湯12の所定高さh1を一定にしているが、所定高さh1をTap毎に変化させてもよい。
【0032】
また、上記実施形態では、固定型電気炉1を低炭素フェロクロムの製造方法に用いる例を説明したが、固定型電気炉1を高炭素フェロクロム、金属クロム、シリコクロム等の製造方法に用いることができる。
【実施例】
【0033】
図2に示す固定型電気炉を用い、原料としてのクロム鉱石と生石灰を溶解した。目標出湯量を11.5(t/tap)に決定し、出湯後の溶湯12の所定高さh1を湯口2のセンターCから200mmの高さに決定し、出湯前の溶湯12の所定高さh2を湯口2のセンターCから800mmの高さに決定した。
【0034】
図6(a)は、溶湯の湯面レベルを管理していない従来例の電極先端位置(すなわち溶湯の湯面レベルh)の推移を示す。
図6(b)は、溶湯12の湯面レベルを管理した本発明例の電極先端位置(すなわち溶湯の湯面レベルh)の推移を示す。横軸がTapであり、縦軸が電極先端位置(mm)である。なお、電極が3本あるので、
図6(a)(b)には、3本の電極の先端位置の推移が示される。Cが湯口2のセンターの高さであり、h1が出湯後の所定高さ(湯口2のセンターCから200mmの高さ)であり、h2が出湯前の所定高さ(湯口2のセンターCから800mmの高さ)である。
【0035】
図6(a)に示すように、従来例では、出湯後の溶湯の湯面レベルhが管理すべき基準h1を下回っていた。このため、原料溶解性の低下や未溶解原料のなだれ込みが発生し、電極のストロークがスムーズでなく、領域Bにおいて、電極のハンチングが発生し、電極のハンチングによる熱損失が発生した。
【0036】
一方、
図6(b)に示すように、本発明例では、出湯後の溶湯12の湯面レベルhをh1にし、十分な残湯量を確保した。このため、電極のストロークがスムーズになり、電極のハンチングや熱損失も発生せず、効率的な熱伝導が行われた。
【0037】
図7は、従来例と本発明例とで、原料の溶解性、溶湯の出湯温度、湯口部の耐火物の温度を比較したグラフである。
【0038】
上段は、原料の溶解性のグラフを示す。横軸は日間であり、縦軸は電力原単位(溶湯1t当たりの電力量)である。従来例においては、電力原単位は上下にばらついていたのに対して、本発明例では、電力原単位のばらつきを抑えることができた。右欄に示すように、従来例と比較して、本発明例では、電力原単位の平均値を1073(kwh/t-slag)から1058(kwh/t-slag)に低減でき、標準偏差も23から15に低減できた。
【0039】
中段は、溶湯の出湯温度のグラフを示す。横軸は日間であり、縦軸は溶湯の出湯温度である。従来例においては、溶湯の出湯温度は上下にばらついていたのに対し、本発明例では、溶湯の出湯温度のばらつきを抑えることができた。右欄に示すように、従来例と比較して、本発明例では、溶湯の出湯温度の平均値を1931℃から1954℃に上昇させることができ、標準偏差を28から17に低減できた。溶湯の出湯温度を安定させることができれば、反応容器での製錬温度を安定させることができ、製品の低炭素フェロクロムの成分を安定させることができる。
【0040】
下段は、湯口部の耐火物の温度のグラフを示す。横軸は日間であり、縦軸は湯口部の耐火物温度である。従来例においては、湯口部の耐火物温度は上下にばらついていたのに対し、本発明例では、湯口部の耐火物温度のばらつきを抑えることができた。右欄に示すように、従来例と比較して、本発明例では、湯口部の耐火物温度の平均値を367℃から300℃に低減でき、標準偏差を41から13に低減できた。湯口部の耐火物温度を抑えることで、湯口部の耐火物の浸食を防止できることがわかった。
【0041】
本明細書は、2020年5月29日出願の特願2020-094637に基づく。この内容はすべてここに含めておく。
【符号の説明】
【0042】
1…固定型電気炉
2…湯口
7…炉底
11…原料
12…溶湯
h…湯面レベル
h1…出湯後の溶湯の所定高さ
h2…出湯前の溶湯の所定高さ
C…湯口のセンター