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特許7655923カフェイン含有飲料、カフェイン含有飲料の製造方法及びカフェイン含有飲料の苦味を低減する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-25
(45)【発行日】2025-04-02
(54)【発明の名称】カフェイン含有飲料、カフェイン含有飲料の製造方法及びカフェイン含有飲料の苦味を低減する方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20250326BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20250326BHJP
   A23F 5/24 20060101ALI20250326BHJP
   A23F 3/16 20060101ALI20250326BHJP
【FI】
A23L2/00 B
A23L2/52
A23F5/24
A23F3/16
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022544566
(86)(22)【出願日】2021-08-23
(86)【国際出願番号】 JP2021030704
(87)【国際公開番号】W WO2022045032
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2020140929
(32)【優先日】2020-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】吉井 孝彰
(72)【発明者】
【氏名】植村 真秀
(72)【発明者】
【氏名】中原 光一
(72)【発明者】
【氏名】秦 悠斗
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-185169(JP,A)
【文献】特開平07-250644(JP,A)
【文献】特開2018-191555(JP,A)
【文献】特開平08-140641(JP,A)
【文献】日本酒を牛乳で割る!?日本酒好きが選んだ美味しい割り方ベスト20,酒の雫 [オンライン],2020年05月12日,[検索日 2021.10.11], インターネット: <URL: https://sakenoshizuku.com/sake-cocktail>
【文献】香川芳子 監修,七訂 食品成分表 2016 本表編,2016年,pp. 210-213
【文献】岡智, 佐藤信,清酒の風味構成に対するエチルα-D-グルコシドの寄与,日本農芸化学会誌,1976年,Vol. 50, No. 10,pp. 455-461,https://doi.org/10.1271/nogeikagaku1924.50.10_455
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00
A23F 5/00
A23F 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カフェインとエチルグリコシドを含み、
カフェインに対するエチルグリコシドの重量割合(エチルグリコシド/カフェイン)が0.05~50であり、
カフェインの濃度が80~1500ppmであり、
エチルグリコシドの濃度が50~20000ppmであるカフェイン含有飲料(但し、アルコール分1%以上の飲料を除く)
【請求項2】
カフェインの濃度が200~1000ppmである請求項1に記載のカフェイン含有飲料。
【請求項3】
エチルグリコシドの濃度が50~10000ppmである請求項1又は2に記載のカフェイン含有飲料。
【請求項4】
エチルグリコシドがエチルグルコシドである請求項1~3のいずれか一項に記載のカフェイン含有飲料。
【請求項5】
茶飲料又はコーヒー飲料である請求項1~4のいずれか一項に記載のカフェイン含有飲料。
【請求項6】
カフェインとエチルグリコシドを含み、カフェインの濃度が80~1500ppmであるカフェイン含有飲料(但し、アルコール分1%以上の飲料を除く)の製造方法であって、カフェイン含有飲料中のエチルグリコシドの濃度が50~20000ppm、かつ、カフェインに対するエチルグリコシドの重量割合(エチルグリコシド/カフェイン)が0.05~50となるようにエチルグリコシドを配合する工程を含む、カフェイン含有飲料の製造方法。
【請求項7】
カフェインの濃度が80~1500ppmであるカフェイン含有飲料(但し、アルコール分1%以上の飲料を除く)の苦味を低減する方法であって、カフェイン含有飲料中のカフェインに対するエチルグリコシドの重量割合(エチルグリコシド/カフェイン)が0.05~50であり、かつエチルグリコシドの濃度が50~20000ppmとなるようにエチルグリコシドを配合する工程を含む、カフェイン含有飲料の苦味を低減する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カフェイン含有飲料及びその製造方法に関する。また、本発明はカフェイン含有飲料の苦味を低減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カフェインを比較的多く含む飲料においては、カフェインに起因する苦味が顕在化し、飲料の飲みやすさが損なわれることがある。そこで、カフェインの苦味を低減する方法が種々提案されている。例えば、特許文献1には、ガティガム、プルラン、アラビアガム及び大豆多糖類からなる群の少なくとも1種を配合することによりカフェインの苦味を抑制することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-78363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術を、カフェインを含む飲料として代表的な飲料である茶飲料やコーヒー飲料の苦味を抑制するために使用することが考えられるが、特許文献1に記載されたガティガム等の材料は増粘剤として使用することのできる材料である。
そのため、ガティガム等を使用してカフェインの苦味を低減させた飲料を作製すると、飲料の粘度が高くなり、飲用した際に違和感を感じることがあった。
【0005】
本発明は、苦味が低減されたカフェイン含有飲料及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、カフェイン含有飲料の苦味を低減する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、カフェインを含む飲料において、エチルグリコシドを所定の濃度以上で、かつカフェインに対して所定の割合で含有させることによって、苦味を低減させることができることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の飲料等に関する。
〔1〕カフェインとエチルグリコシドを含み、カフェインに対するエチルグリコシドの重量割合(エチルグリコシド/カフェイン)が0.05~50であり、カフェインの濃度が80~1500ppmであり、エチルグリコシドの濃度が50~20000ppmであるカフェイン含有飲料。
〔2〕カフェインの濃度が200~1000ppmである上記〔1〕に記載のカフェイン含有飲料。
〔3〕エチルグリコシドの濃度が50~10000ppmである上記〔1〕又は〔2〕に記載のカフェイン含有飲料。
〔4〕エチルグリコシドがエチルグルコシドである上記〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載のカフェイン含有飲料。
〔5〕茶飲料又はコーヒー飲料である上記〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載のカフェイン含有飲料。
〔6〕カフェインとエチルグリコシドを含み、カフェインの濃度が80~1500ppmであるカフェイン含有飲料の製造方法であって、カフェイン含有飲料中のエチルグリコシドの濃度が50~20000ppm、かつ、カフェインに対するエチルグリコシドの重量割合(エチルグリコシド/カフェイン)が0.05~50となるようにエチルグリコシドを配合する工程を含む、カフェイン含有飲料の製造方法。
〔7〕カフェインの濃度が80~1500ppmであるカフェイン含有飲料の苦味を低減する方法であって、カフェイン含有飲料中のカフェインに対するエチルグリコシドの重量割合(エチルグリコシド/カフェイン)が0.05~50であり、かつエチルグリコシドの濃度が50~20000ppmとなるようにエチルグリコシドを配合する工程を含む、カフェイン含有飲料の苦味を低減する方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、苦味が低減されたカフェイン含有飲料及びその製造方法を提供することができる。また、カフェイン含有飲料の苦味を低減する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<カフェイン含有飲料>
本発明のカフェイン含有飲料は、カフェインとエチルグリコシドを含む。
本発明に用いられるカフェインは、特に制限されないが、市販の試薬、純品(カフェイン含量98%以上の精製品)、粗精製品(カフェイン含量50~98%)の他、カフェインを含有する植物(コーヒー豆、茶葉、コーラの実等)の抽出物又はその濃縮物の形態でもよい。
【0010】
カフェインを植物の抽出物又はその濃縮物の形態で用いる場合、抽出する原料としては、緑茶、紅茶、烏龍茶、プーアル茶などのカメリア・シネンシス(Camellia sinensis)に属する茶葉類;アカネ科コフィア属に属するコーヒー豆類を用いることができる。本明細書中、茶葉抽出物を主成分として含有する飲料を茶飲料、コーヒー豆の抽出物を主成分として含有する飲料をコーヒー飲料とする。
【0011】
カフェイン含有飲料の例としては、コーヒー飲料、コーラ、茶飲料(緑茶、紅茶、プーアル茶、ウーロン茶等)、ココア、栄養ドリンク、エナジードリンク等が挙げられる。
また、これらの飲料の濃縮液(ポーション)であってもよい。
また、水又は湯で希釈することによりこれらの飲料となる粉末であってもよい。
本発明のカフェイン含有飲料は、これらの飲料の中では、茶飲料及びコーヒー飲料であることが好ましい。
【0012】
エチルグリコシドは、還元糖の1位の炭素のヒドロキシ基がエトキシ基で置換された構造の化合物である。エチルグリコシドを構成する還元糖としては単糖が好ましく、例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、キシロース等が挙げられる。還元糖は、D体、L体及びDL体のいずれであってもよい。好ましくはD体である。
エチルグリコシドとして、例えば、エチルグルコシド、エチルフルクトシド、エチルガラクトシド、エチルマンノシド、エチルキシロシドが挙げられる。エチルグリコシドは、これらの1種であってもよく、2種以上の混合物であってもよい。中でも、エチルグリコシドとして、エチルグルコシドが好ましい。エチルグルコシドとしては、エチル-α-グルコシド、エチル-β-グルコシドのいずれであってもよく、エチル-α-グルコシド及びエチル-β-グルコシドの混合物であってもよい。一態様において、エチルグリコシドとして、エチル-α-グルコシドが好ましく、エチル-α-D-グルコシドがより好ましい。
【0013】
エチルグリコシドの製造方法は特に限定されない。例えば、還元糖と、エタノールとを反応させることによりエチルグリコシドを得ることができる。例えば、エチルグルコシドは、グルコースとエタノールとを反応させることにより得ることができる。
【0014】
本発明のカフェイン含有飲料における、カフェインに対するエチルグリコシドの重量割合(エチルグリコシド/カフェイン)は0.05~50である。
カフェインに対するエチルグリコシドの重量割合が上記範囲であると、カフェインに起因する苦味をエチルグリコシドの添加によって充分に低減させることができる。好ましくは、上記重量割合は1~40である。
【0015】
本発明のカフェイン含有飲料中のカフェインの濃度は、80~1500ppmである。
カフェインの濃度が80ppm以上である飲料は苦味を有するため、エチルグリコシドの添加による苦味低減が有効である。上記カフェイン濃度は、好ましくは200~1000ppmである。
本明細書中、ppmは、重量/容量(w/v)のppmを意味する。
【0016】
本発明のカフェイン含有飲料におけるエチルグリコシドの濃度は、50~20000ppmである。エチルグリコシドを50ppm以上添加することがカフェインに起因する苦味の低減に有効である。また、エチルグリコシドは増粘作用を有さないので、エチルグリコシドを添加したとしても飲用した際に違和感を感じることはない。
エチルグリコシドの濃度が高くなるとエチルグルコシドの添加による雑味が生じることがあるので、本発明のカフェイン含有飲料におけるエチルグリコシドの濃度は、20000ppm以下である。上記エチルグリコシドの濃度は、50~10000ppmが好ましい。より好ましくは、50~5000ppmである。
カフェイン含有飲料におけるカフェイン及びエチルグリコシドの濃度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定することができる。
【0017】
一態様において、カフェイン濃度とエチルグリコシドの濃度の好ましい範囲として以下の範囲が挙げられる。
カフェイン濃度80ppm以上、100ppm未満の場合に、エチルグリコシド濃度50~100ppm
カフェイン濃度100ppm以上、200ppm未満の場合に、エチルグリコシド濃度50~5000ppm(好ましくは100~5000ppm)
カフェイン濃度200ppm以上、500ppm未満の場合に、エチルグリコシド濃度50~10000ppm
カフェイン濃度500ppm以上(好ましくは500~1000ppm)の場合に、エチルグリコシド濃度50~20000ppm(好ましくは500~10000ppm)
上記のような範囲であると、エチルグリコシドを含まない場合に比べてエチルグリコシドを添加することによる苦味低減の効果が特に大きいため好ましい。
【0018】
ここまで説明した本発明のカフェイン含有飲料は、本発明の効果を妨げない限り、香料、ビタミン、色素類、酸化防止剤、酸味料、乳化剤、保存料、調味料、エキス類、pH調整剤、品質安定剤等の添加剤を1種又は2種以上を含んでいてもよい。
【0019】
ここまで説明した本発明のカフェイン含有飲料は、容器詰めとすることができる。一態様において、本発明のカフェイン含有飲料は、好ましくは容器詰め飲料である。容器の形態は特に限定されず、ビン、缶、ペットボトル、紙パック、アルミパウチ、ビニールパウチ等の密封容器が挙げられる。これらの密封容器に本発明のカフェイン含有飲料を充填して、容器詰め飲料等とすることができる。
【0020】
<カフェイン含有飲料の製造方法>
本発明のカフェイン含有飲料の製造方法は、カフェインとエチルグリコシドを含み、カフェインの濃度が80~1500ppmであるカフェイン含有飲料の製造方法であって、カフェイン含有飲料中のエチルグリコシドの濃度が50~20000ppm、かつ、カフェインに対するエチルグリコシドの重量割合(エチルグリコシド/カフェイン)が0.05~50となるようにエチルグリコシドを配合する工程を含む。
【0021】
エチルグリコシドを配合する方法や順序は特に限定されず、カフェインの濃度が80~1500ppmであるカフェイン含有飲料に、エチルグリコシドの濃度が50~20000ppmとなり、かつ、カフェイン含有飲料中のカフェインに対するエチルグリコシドの重量割合(エチルグリコシド/カフェイン)が0.05~50となるようにエチルグリコシドを配合すればよい。また、本発明のカフェイン含有飲料が、カフェインを含有する植物の抽出物又はその濃縮物の形態ではない栄養ドリンク、エナジードリンク等の場合は、カフェインを配合した後エチルグリコシドを配合してもよいし、カフェインとエチルグリコシドを同時に配合してもよく、エチルグリコシドを配合した後カフェインを配合してもよい。
エチルグリコシド、カフェイン、これらの含有量及びその好ましい態様は、上記のカフェイン含有飲料と同じである。
【0022】
<カフェイン含有飲料の苦味を低減する方法>
本発明のカフェイン含有飲料の苦味を低減する方法は、カフェインの濃度が80~1500ppmであるカフェイン含有飲料の苦味を低減する方法であって、カフェイン含有飲料中のカフェインに対するエチルグリコシドの重量割合(エチルグリコシド/カフェイン)が0.05~50であり、かつエチルグリコシドの濃度が50~20000ppmとなるようにエチルグリコシドを配合する工程を含む。
カフェイン含有飲料において、エチルグリコシドの濃度、及び、カフェインに対するエチルグリコシドの重量割合(エチルグリコシド/カフェイン)が所定の範囲となるようにエチルグリコシドを配合することによって、カフェインに起因する苦味を充分に低減させることができる。
エチルグリコシド、カフェイン、これらの含有量及びその好ましい態様は、上記のカフェイン含有飲料と同じである。
【実施例
【0023】
以下、本発明をより具体的に説明する実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0024】
実施例では、エチルグリコシドとしてエチル-α-D-グルコシド(以下EGと表示)を用いた。
【0025】
(実施例1)
カフェインの濃度を80ppm、100ppm、200ppm、500ppm、1000ppmの5段階で変化させ、EGの濃度を0ppm、50ppm、100ppm、500ppm、1000ppm、5000ppm、10000ppm、20000ppmの8段階で変化させた試料を作製した。試料はカフェイン(食添グレード、白鳥製薬社製)を市販のミネラルウォーター(軟水:硬度0~100mg/L)に溶解し、次いでEGを配合して作製した。
各試料の苦味について、官能評価に熟練したパネラー2名(パネラー1及び2)が官能評価を行った。官能評価では、試料10mLを口に含み5秒間味わった後、吐き出し、苦味強度を評価した。異なる試料を評価する際には、口の中の味がなくなるまで口を水でゆすいだ。官能評価を実施するにあたり、事前にパネラーの間で討議を行い、苦味強度についてすり合わせを行った。各パネラーが評価基準を下記とすることの共通認識を持ったうえで官能評価を実施した。
EGを含まない試料の苦味の強度で苦味の基準点を設定した。カフェイン及びEGを含まないミネラルウォーターの苦味強度を評点「1」、カフェイン80ppmでEG0ppm(EGを添加していない)の試料の苦味強度を評点「2」、カフェイン200ppmでEG0ppmの試料の苦味強度を評点「3」、カフェイン500ppm、EG0ppmの試料の苦味強度を評点「5」、カフェイン1000ppm、EG0ppmの試料の苦味の強度を評点「6」と設定した。具体的には、各パネラーが各試料について下記の評価基準1~6点で、6段階で苦味強度を評価し、その後パネラーの評点の平均値を求めた。
【0026】
1:苦味を全く感じない
2:苦味を弱く感じる
3:苦味をやや弱く感じる
4:苦味を感じる
5:苦味をやや強く感じる
6:苦味を強く感じる
【0027】
表1には各試料中のカフェインに対するエチルグリコシド(EG)の重量割合(EG/カフェイン)を示した。
表2には、各試料のパネラー1の官能評価の結果(苦味強度の評点)を示した。
表3には、各試料のパネラー2の官能評価の結果(苦味強度の評点)を示した。
表4には、各試料のパネラー官能評価の結果(苦味強度の評点)の平均を示した。
表5に、表4に示す結果から算出したEG添加による苦味低減度を示した。表5に示す苦味低減度は、表4に示すカフェイン濃度が同じでEGを含まない試料の評点(X)から、カフェイン濃度が同じでEGを含む試料の評点(Y)を引いた値(X-Y)である。苦味低減度が0.5以上の場合、EGを含まない試料と比べて苦味が低減されている。苦味低減度が0.0の場合、EGを含まない試料と比べて苦味に違いがない。苦味低減度が-0.5以下の場合、EGを含まない試料と比べて苦味が増している。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
【0031】
【表4】
【0032】
【表5】
【0033】
上記の結果から、飲料中のエチルグリコシドの濃度が50~20000ppmで、カフェインに対するエチルグリコシドの重量割合(エチルグリコシド/カフェイン)が0.05~50であると、カフェインの苦味を低減することができることが分かる。
【0034】
(比較例1)
EGの濃度を10ppmとする以外は実施例1と同様に試料を作製し、官能評価を行った。表6には各試料中のカフェインに対するエチルグリコシド(EG)の重量割合(EG/カフェイン)を示した。
表7には、各試料の官能評価の結果(苦味強度の評点)の平均を示した。
【0035】
【表6】
【0036】
【表7】
【0037】
上記の結果から、飲料中のエチルグリコシドの濃度が10ppmでは、飲料のカフェインの苦味を低減する効果が乏しいことが分かる。
【0038】
(実施例2)
カフェインを400ppm含む市販のコーヒー飲料にEGを濃度5000ppmとなるように添加した試料を作製した。カフェインに対するエチルグリコシド(EG)の重量割合(EG/カフェイン)は12.5である。
また、カフェインを400ppm含む市販のコーヒー飲料にさらにカフェインを加えてカフェイン濃度が900ppmとなるようにしたコーヒー飲料を調製し、これにEGを濃度5000ppmとなるように添加した試料を作製した。カフェインに対するエチルグリコシド(EG)の重量割合(EG/カフェイン)は5.6である。
実施例1と同様に各試料について苦味強度を評価した。
表8にはその苦味強度の評点の平均を示した。
【表8】
【0039】
上記の結果から、カフェインの濃度が80ppm以上の市販のコーヒー飲料についても、飲料中のエチルグリコシドの濃度が50~20000ppmで、かつカフェインに対するエチルグリコシドの重量割合(エチルグリコシド/カフェイン)が0.05~50となるようにエチルグリコシドを添加することによって、コーヒー飲料に含まれるカフェインの苦味を低減することができることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、カフェインに起因する苦味を低減した飲料を提供することができる。