(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-25
(45)【発行日】2025-04-02
(54)【発明の名称】炭素含有ガスの直接回収のための装置、システム、及び方法
(51)【国際特許分類】
C25B 9/00 20210101AFI20250326BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20250326BHJP
C25B 1/135 20210101ALI20250326BHJP
C25B 9/09 20210101ALI20250326BHJP
C25B 9/19 20210101ALI20250326BHJP
C25B 9/67 20210101ALI20250326BHJP
C25B 13/02 20060101ALI20250326BHJP
C25B 13/04 20210101ALI20250326BHJP
C25B 15/08 20060101ALI20250326BHJP
【FI】
C25B9/00 Z
B01D53/62 ZAB
C25B1/135
C25B9/09
C25B9/19
C25B9/67
C25B13/02 301
C25B13/04 301
C25B15/08 302
(21)【出願番号】P 2023565176
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(86)【国際出願番号】 US2022026365
(87)【国際公開番号】W WO2022232155
(87)【国際公開日】2022-11-03
【審査請求日】2023-12-12
(32)【優先日】2021-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523192048
【氏名又は名称】ダイレクト エア キャプチャー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】リヒト,スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】リヒト,ガド
【審査官】黒木 花菜子
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-509747(JP,A)
【文献】特開2009-045617(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0202874(US,A1)
【文献】特表2020-514542(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0016535(US,A1)
【文献】米国特許第03661753(US,A)
【文献】Huayi Yin et al.,“Capture and electrochemical conversion of CO2 to value-added carbon and oxygen by molten salt electrolysis”,Energy & Environmental Science,2013年,Vol. 6, No. 5,p.1538-1545
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 9/00
C25B 1/135
C25B 13/04
C25B 9/19
C25B 15/08
C25B 13/02
B01D 53/62
C25B 9/09
C25B 9/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力混合ガスから炭素含有ガスを選択的に移動するためのシステムであって、前記システムが、
(a)第1の温度において前記入力混合ガスからの前記炭素含有ガスの正味の通過を可能にする断熱材と、
(b)プレナムと、
(c)前記プレナム内に配置されたアノード及びカソードと、
(d)前記プレナム内の前記アノードと前記カソードとの間に収容された、前記第1の温度より高い第2の温度の溶融電解質媒体と、を備え、
前記溶融電解質媒体が、前記断熱材から受け取った前記炭素含有ガス内の炭素に対する第1の親和性を有し、前記溶融電解質媒体がカーボンシンクとして機能し、前記溶融電解質媒体が第1の表面積を有する表面を画定し、前記表面が前記入力混合ガスの供給源と流体連通し、前記断熱材が、前記炭素含有ガスの前記溶融電解質媒体の前記表面への前記正味の通過を助け、前記システムが、異なる化学物質を生成するために前記炭素含有ガスを選択的に加熱し、電解で分解するように構成され、前記断熱材が、前記入力混合ガスの前記供給源と前記プレナムとの間に配置される、システム。
【請求項2】
炭素に対する前記第1の親和性が、前記溶融電解質媒体が、前記断熱材から受け取った前記炭素含有ガスと化学的に反応すること、前記断熱材から受け取った前記炭素含有ガスと電気化学的に反応すること、前記断熱材から受け取った前記炭素含有ガスを吸収すること、前記断熱材から受け取った前記炭素含有ガスと結合すること、又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
炭素に対する前記第1の親和性が、前記溶融電解質媒体が、前記断熱材から受け取った前記炭素含有ガスを用いて異なる化学物質を生成することを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
炭素に対する前記第1の親和性が、前記溶融電解質媒体が、前記断熱材から受け取った前記炭素含有ガスを用いて異なる化学物質を生成することを含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記炭素含有ガスが二酸化炭素(CO2)である、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記入力混合ガスが、空気、人為的CO2含有ガス、産業排ガス流、隔離されたCO2の貯留層からのガス、工業プラントからの排出ガス、化学反応器からの排出ガス、発電プラントからの排出ガス、蒸気発生設備からの排出ガス、熱分解反応器からの排出ガス、化石燃料の燃焼によるCO2含有ガス生成物、化石燃料の変換によるCO2含有ガス生成物、加熱によるCO2含有ガス生成物、輸送によるCO2含有ガス生成物、ポリマーの製造によるCO2含有ガス生成物、プラスチックの製造によるCO2含有ガス生成物、又はこれらの組み合わせである、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記断熱材が透過性である、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記断熱材が多孔質である、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記断熱材が多孔質である、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記断熱材が、ファイバガラス、セルロース、綿、織物、ミネラルウール、セメント、炭酸塩、カルシウムアルミネート、カルシウムシリケート、アルミニウムシリケート、これらの化学的誘導体、又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記溶融電解質媒体が、前記入力混合ガスの他のガス構成成分に対する第2の親和性を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記第1の親和性が前記第2の親和性より大きい、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記第1の温度が
、-90℃
~75℃である、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1の温度が
、50℃
~400℃である、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記第2の温度が
、400℃
~850℃である、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記炭素含有ガスがCO2を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
炭素に対する前記第1の親和性が、前記溶融電解質媒体が、前記断熱材から受け取った前記炭素含有ガスと化学的に反応すること、前記断熱材から受け取った前記炭素含有ガスと電気化学的に反応すること、前記断熱材から受け取った前記炭素含有ガスを吸収すること、又は前記断熱材から受け取った前記炭素含有ガスと結合することを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記異なる化学物質が元素状炭素である、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記異なる化学物質がナノカーボンである、請求項16に記載のシステム。
【請求項20】
前記異なる化学物質がグラファイト状ナノカーボンである、請求項16に記載のシステム。
【請求項21】
前記断熱材が、前記溶融電解質媒体の前記第1の表面積
より大きい表面積を画定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
前記断熱材が、前記入力混合ガスの前記供給源に隣接する第1の面を備え、前記第1の面が、前記溶融電解質媒体に隣接する反対の第2の面より大きな表面積を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項23】
前記第1の面が複数のディンプルを画定する、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記システムが、前記断熱材と前記入力混合ガスの前記供給源との間に配置されたハウジングを更に備え、前記ハウジング及び前記断熱材が、前記断熱材の第1の面に沿って前記入力混合ガスを通過させるための流路を画定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項25】
前記ハウジング、前記断熱材、又はこれらの両方が、前記流路の長さを増やすために1つ以上の山、1つ以上の谷、又はこれらの両方を画定する、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
オフガス生成物の排気流の供給源と前記システムの外部との間を流体連通させる導管を更に備える、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[1] 本出願は、2021年4月26日に出願された米国仮特許出願第63/179,778号、2022年2月1日に出願された米国仮特許出願第63/305,544号、及び2022年3月11日に出願された米国仮特許出願第63/318,944号の優先権及び利益を主張するものであり、これらの仮特許出願のそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[2] 本開示は、入力混合ガスから炭素含有ガスを選択的に回収することに関する。特に、本開示は、断熱材と炭素含有ガスに対する親和性を有する媒体とを使用することにより、入力混合ガスから炭素含有ガスを選択的に回収するための装置、システム、及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[3] 大気中の二酸化炭素(CO2)濃度は、1850年頃までの約40万年間、約235±50ppmで周期変動していた。現在、大気中のCO2濃度は約420ppmであり、急速な年率で上昇している。大気中のCO2の濃度上昇は、地球規模の気候崩壊、生息地の損失、及び様々な他の脅威を地球に引き起こしている。CO2は、これを非温室効果ガスに変換することが今のところ重要な課題を伴うような安定な分子であると考えられている。
【0004】
[4] CO2の大気濃度レベルの上昇は、空気からのCO2の除去により、及び/又は大気中へのCO2の排出速度の低下により軽減され得ることが知られている。研究されてきた、空気からCO2を除去しようとする既知の技術は、コストがかかり、水及びエネルギーを大量に消費し、除去されたCO2の長期貯留についてのインセンティブがほとんど示されていない。例えば、空気回収膜技術により生成された濃縮CO2は、セルツァー水を作製するために使用されることが知られているが、セルツァー水は消費されるとCO2を再放出する。
【0005】
[5] 別の既知の例として、沈殿/焼成法により生成された濃縮CO2は、現在、化石燃料を放出させるために圧入されるが、これによる貯留容量が限られるため、再び空気に浸出し、化石燃料が消費されたときに空気にCO2を放出する。
【0006】
[6] CO2の大気濃度レベルの上昇を軽減するための更なる既知の例としては、CO2の炭素への変換及び溶融炭酸塩電解質が挙げられる。このプロセスにより生成される有用な生成物としては、カーボンナノマテリアルが挙げられる。グラファイト状カーボンナノマテリアルを含むカーボンナノマテリアルは、材料資源として大きな可能性を有し、それらの用途は、その特徴である優れた強度、電気伝導性、熱伝導性、柔軟性、及び耐久性に起因して、強化複合材料、コンデンサ、リチウムイオン電池、織物、ナノエレクトロニクス、及び触媒から、軽量の高強度建築材料の主成分まで及ぶ。しかしながら、大気中のCO2濃度レベル及び関連する地球への悪影響を実質的に減少させるのに十分な量のCO2を回収するためには、技術的な課題が残る。
【発明の概要】
【0007】
[7] 本開示のいくつかの実施形態は、入力混合ガスから炭素含有ガスを選択的に移動するためのシステムに関する。本システムは、第1の温度において入力混合ガスからの炭素含有ガスの正味の選択的通過を可能にする任意選択の透過性断熱材と、第1の温度より高い第2の温度において媒体を収容するためのプレナムとを備え得る。媒体が、任意選択の断熱材から受け取った炭素含有ガス内の炭素に対する第1の親和性を有し、媒体がカーボンシンクとして機能する。任意選択の断熱材は、使用されるとき、入力混合ガスの供給源とプレナムとの間に配置され得る。
【0008】
[8] 本開示のいくつかの実施形態は、入力混合ガスの炭素含有ガスを削減するための方法に関する。本方法は、入力混合ガスの供給源と流体連通する媒体を提供するステップであって、媒体が入力混合ガスの炭素含有ガスと反応する親和性を有する、ステップと、媒体が入力混合ガスより高い温度を有するように温度差を確立するステップと、媒体が入力混合ガスの炭素含有ガス含有量を削減するためのカーボンシンクとして機能するように、媒体と炭素含有ガスとを一緒に反応させるステップとを含む。
【0009】
[9] 本開示のいくつかの実施形態は、入力混合ガスから二酸化炭素(CO2)を回収するための装置に関する。本装置は、電解セル内に配置されたアノード及びカソードと、アノードとカソードとの間に配置された溶融電解質媒体であって、溶融電解質媒体が第1の表面積を有する上面を画定し、上面が入力混合ガスを収容するプレナムと流体連通する、溶融電解質媒体と、入力混合ガスを収容するプレナムと上面との間に配置された断熱材であって、断熱材が断熱材を通る上面へのCO2の正味の選択的通過を助けるように構成される、断熱材とを備える。本装置は、回収されたCO2を選択的に加熱し、電解で分解するように構成される。
【0010】
[10] 本装置のいくつかの実施形態では、入力混合ガスが空気であり、入力混合ガスの供給源が地球の大気である。
【0011】
[11] 本装置のいくつかの実施形態では、入力混合ガスが、人為的CO2含有ガス、産業排ガス流、隔離されたCO2の貯留層からのガス、工業プラントからの排出ガス、化学反応器からの排出ガス、発電プラントからの排出ガス、蒸気発生設備からの排出ガス、熱分解反応器からの排出ガス、化石燃料の燃焼によるCO2含有ガス生成物、化石燃料の変換によるCO2含有ガス生成物、加熱によるCO2含有ガス生成物、輸送によるCO2含有ガス生成物、ポリマーの製造によるCO2含有ガス生成物、プラスチックの製造によるCO2含有ガス生成物、又はこれらの組み合わせである。
【0012】
[12] 本装置のいくつかの実施形態では、断熱材が、電解セル内の溶融電解質媒体の上面の第1の表面積より2~100倍大きい表面積を有する。
【0013】
[13] 本装置のいくつかの実施形態では、本装置が、入力混合ガスを収容するプレナムと断熱材との間に配置されたハウジングを更に備える。
【0014】
[14] 本装置のいくつかの実施形態では、断熱材及びハウジングが、第1の端部及び第2の端部を有する断熱材間プレナムを画定し、セルがその間に配置され、断熱材間プレナムが第1の端部において入力混合ガスを受け入れる。
【0015】
[15] 本装置のいくつかの実施形態では、電解セルが、アノードとして機能する少なくとも1つの金属壁を備える。
【0016】
[16] 本装置のいくつかの実施形態では、アノード及びカソードが、CNM生成物内の構成カーボンナノ構造の相対量を選択するように構成される。
【0017】
[17] 本装置のいくつかの実施形態では、電解の電流及び電圧が、CNM生成物内の構成カーボンナノ構造の相対量を選択するように構成される。
【0018】
[18] 本装置のいくつかの実施形態では、CNM生成物内の構成カーボンナノ構造の相対量を選択するために、金属塩、金属、又は他の添加物が電解質に添加される。
【0019】
[19] 本装置のいくつかの実施形態では、電解質が、CNM生成物内の構成カーボンナノ構造の相対量を選択するために、1種以上の炭酸塩を含む。
【0020】
[20] 本装置のいくつかの実施形態では、電解質が、入力混合ガスからのCO2の選択的回収を強化する強化された熱特性のために構成される。
【0021】
[21] 本装置のいくつかの実施形態では、電解質が過剰な熱エネルギーを貯蔵し得る。
【0022】
[22] 本装置のいくつかの実施形態では、入力混合ガスが、風レンズ又は風フォーカスを使用して本装置を通して方向転換される。
【0023】
[23] 本装置のいくつかの実施形態では、熱が、ヒートエンジンを駆動するため、又は入力混合ガスの動きを駆動するために入力される。
【0024】
[24] 本開示のいくつかの実施形態は、入力混合ガスから二酸化炭素(CO2)を回収するためのシステムに関する。本システムは少なくとも2つの装置を備え、各装置が、電解セル内に配置されたアノード及びカソードと、アノードとカソードとの間に配置された溶融電解質媒体であって、溶融電解質媒体が第1の表面積を有する上面を画定し、上面が入力混合ガスを収容するプレナムと流体連通する、溶融電解質媒体と、入力混合ガスを収容するプレナムと上面との間に配置された多孔質断熱材であって、多孔質断熱材が多孔質断熱材を通る上面へのCO2の正味の選択的通過を助けるように構成される、断熱材とを備える。本システムの各装置は、電解プロセスによって回収されたCO2を選択的に加熱し、電解で分解するように構成される。
【0025】
[25] 本システムのいくつかの実施形態では、少なくとも2つの装置が、本システムの物理的フットプリント面積を小さくするために、垂直方向に積み重ねて配置される。
【0026】
[26] 本システムのいくつかの実施形態では、本システムが、各装置に動作可能に結合された熱の供給源及び電流の供給源を更に備える。
【0027】
[27] 本システムのいくつかの実施形態では、本システムが、少なくとも2つの装置に動作可能に結合された熱の供給源及び電流の供給源を更に備える。
【0028】
[28] 本開示のいくつかの実施形態は、プレナム内のCO2を含む入力混合ガスからの二酸化炭素(CO2)の直接回収のための方法に関する。本方法は、入力混合ガスと多孔質断熱材の外面との間に流体連通を確立するステップと、断熱材を通して第2のプレナム内にCO2を通すことによって入力混合ガスからCO2を選択的に回収するステップと、多孔質断熱材の内面と第2のプレナム内の電解質媒体との間に流体連通を確立するステップであって、電解質媒体がCO2の回収を増強するように構成される、ステップと、第2のプレナム内の電極から、回収されたCO2から生成されたカーボンナノマテリアル生成物を回収するステップとを含む。
【0029】
[29] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、入力混合ガスが、少なくとも1種の炭素含有ガスを含む。
【0030】
[30] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、入力混合ガスが、空気、人為的CO2含有ガス、産業排ガス流、隔離されたCO2の貯留層からのガス、工業プラントからの排出ガス、化学反応器からの排出ガス、発電プラントからの排出ガス、蒸気発生設備からの排出ガス、熱分解反応器からの排出ガス、化石燃料の燃焼によるCO2含有ガス生成物、化石燃料の変換によるCO2含有ガス生成物、加熱によるCO2含有ガス生成物、輸送によるCO2含有ガス生成物、ポリマーの製造によるCO2含有ガス生成物、プラスチックの製造によるCO2含有ガス生成物、又はこれらの組み合わせである。
【0031】
[31] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、入力混合ガスの入力速度、又は入力混合ガスの流出速度が、ダイヤフラムポンプの使用により多孔質断熱材の第1の面と第2の面との間で圧力を変えることによって加速される。
【0032】
[32] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、入力混合ガスの入力速度、又は入力混合ガスの流出速度が、ブロワ又はファンの使用により多孔質断熱材の第1の面と第2の面との間で圧力を変えることによって加速される。
【0033】
[33] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、入力混合ガスを周囲圧力より高い圧力まで圧縮するための圧縮機機構を更に備える。
【0034】
[34] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、入力混合ガスが加圧される。
【0035】
[35] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、第2のプレナムにおいて生成されるオフガスが入力混合ガスより高温である。
【0036】
[36] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、第2のプレナムにおいて生成されるオフガスが酸素(O2)である。
【0037】
[37] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、オフガス生成物が、入力混合ガスの入力速度及び/又は内部の第2の媒体におけるCO2回収を補償又は強化する。
【0038】
[38] 本方法のいくつかの実施形態では、本方法は、オフガス生成物から入力混合ガスに熱エネルギーを伝達するステップを更に含む。
【0039】
[39] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、多孔質断熱材が、実質的に完全に多孔質であり、入力混合ガスに対して開放される。
【0040】
[40] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、多孔質断熱材が、第2のプレナムと入力混合ガスとの間の熱伝達を抑制する開放流路断熱材である。
【0041】
[41] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、多孔質断熱材が、多孔質断熱材を通るガス流量及び熱伝達を調整するように調整可能である。
【0042】
[42] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、多孔質断熱材が、内部の第2の媒体の表面積より1~100倍大きい表面積を有する。本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、多孔質断熱材が、内部の第2の媒体の表面積より2~20倍大きい表面積を有する。
【0043】
[43] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、電解質媒体の電解質表面の表面積に対する多孔質断熱材の表面積の比率が調整可能である。
【0044】
[44] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、多孔質断熱材の内面が電解質媒体に直接接触する。
【0045】
[45] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、多孔質断熱材の内面が、間にガス空間を配置した状態で電解質媒体の近位にある。
【0046】
[46] 本方法のいくつかの実施形態では、本方法が、流路とも呼ばれる、第1の端部及び第2の端部を有する断熱材間プレナムを画定するために、非多孔質ハウジングを多孔質断熱材の周囲に配置する第3のステップを更に含み、断熱材間プレナムが、第1の端部において入力混合ガスを受け入れるように構成される。
【0047】
[47] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、非多孔質ハウジングが断熱材である。
【0048】
[48] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、本方法によって発生された過剰な熱が、外部デバイスの加熱又は電力供給に使用される。
【0049】
[49] 本装置、システム及び/又は方法のいくつかの実施形態では、ヒートポンプ又はヒートエンジンが、入力混合ガス、内部の第2の媒体、又はこれらの組み合わせを加熱するために使用される。
【0050】
[50] 本装置、システム及び/又は方法のいくつかの実施形態では、ジュール熱、産業廃熱、太陽熱、地熱、排熱、又はこれらの組み合わせが、入力混合ガス、内部の第2の媒体、又はこれらの組み合わせを加熱するために使用される。
【0051】
[51] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、入力混合ガス内の炭素含有ガスの濃度を上昇させるため、入力混合ガスの流量を増加させるため、又はこれらの組み合わせのために、渦管、ヒートポンプ、ヒートエンジン、及びこれらの組み合わせを更に備える。
【0052】
[52] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、断熱材が、溶融電解質媒体からのオフガス生成物の排気流を強化するように、炭素含有ガスが断熱材を通過する速度を上昇させるように、又はこれらの組み合わせを行うように構成される。
【0053】
[53] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、断熱材が、断熱材を通して、入力混合ガスの構成成分である他の非炭素含有ガスより多量の炭素含有ガスを選択的に通過させるように構成される。
【0054】
[54] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、システムが、流路内でガスの流れを第1の方向又は第2の方向に導くように自らの位置をシフトするためにシフトする1つ以上のシフト可能な部材であって、第1の方向が入力開口部に向かい、第2の方向が反対向きであり、出力開口部に向かう、1つ以上のシフト可能な部材を更に備える。
【0055】
[55] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態は、回収されたCO2へのアクセスを調整するように構成されたカバーを配置することを更に含む。
【0056】
[56] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、選択的に回収されたCO2の1種以上の成分が、機械的混合、撹拌(agitation)、撹拌(stirring)、対流、通気、又はこれらの組み合わせを介して電解質媒体において混合される。
【0057】
[57] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、入力混合ガスがCO2以外の炭素含有ガスを含み、CO2以外の炭素含有ガスに対しても電解質媒体が親和性を有する。
【0058】
[58] 本方法のいくつかの実施形態では、電解質媒体が溶融電解質媒体である。
【0059】
[59] 本方法のいくつかの実施形態では、本方法が、追加的に、電解質を加熱して溶融電解質媒体を得るステップと、溶融電解質媒体を電解セル内のアノードとカソードとの間に配置するステップと、入力混合ガス内のCO2を少なくとも溶融電解質媒体で選択的に加熱するステップと、選択的に加熱されたCO2を電解で分解する(電解プロセスによって分解する)ためにセル内のカソード及びアノードに電流を印加するステップと、セルのカソードからカーボンナノマテリアル生成物を回収するステップとを更に含む。
【0060】
[60] 本方法のいくつかの実施形態では、本方法が、溶融電解質媒体内で酸素(O2)生成物を生成するステップを更に含む。
【0061】
[61] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、O2生成物が、溶融電解質媒体を混合するために溶融電解質媒体内の対流を強化する。
【0062】
[62] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、カーボンナノマテリアル生成物が、限定されるものではないが、カーボンナノチューブ、カーボンナノオニオン、プレートレット、ナノスキャフォールド、ナノヘリックス、ナノフラワー、ナノツリー、ナノベルト、グラフェン、ドープカーボンナノマテリアル、磁性カーボンナノマテリアル、アモルファスカーボン、又はこれらの組み合わせなどのグラファイト状ナノカーボンの1種以上の形態を含む。
【0063】
[63] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、カーボンナノマテリアル生成物の形態が、電解質媒体の温度、CO2速度、電流、電圧、カソードの組成、アノードの組成、又は電解質媒体の組成を変えることによって調整され得る。
【0064】
[64] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、溶融電解質媒体が炭酸塩を含む。
【0065】
[65] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、電流が、限定されるものではないが、太陽光、風力、水力、地熱、潮力、波力、原子力、又はこれらの組み合わせを含む非化石エネルギー供給源によって供給される。
【0066】
[66] 本方法のいくつかの実施形態では、本方法が、電解質媒体を活性化させるステップを更に含む。
【0067】
[67] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、電解質媒体が添加された酸化物を含む。
【0068】
[68] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、電解質媒体が、溶融され、再利用されて、異なる化学物質へのCO2変換度を強化する。
【0069】
[69] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、電解質媒体が、溶融され、時間平衡化されて、CO2変換度を強化する。
【0070】
[70] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、電解質媒体の上面が、CO2変換度を強化するために内部の第2の媒体の下面近くに配置される。
【0071】
[71] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、電流がCO2変換度を強化するために少ない。
【0072】
[72] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、電解セルがCO2変換度を強化する金属である。
【0073】
[73] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、複数のCO2回収装置が垂直に積み重ねられて、処理される入力混合ガスの単位当たりの本方法の水平方向のフットプリント面積を削減する。
【0074】
[74] 本方法のいくつかの実施形態では、本方法が、ステップa、b、c、及びdを連続的に繰り返すことを更に含む。
【0075】
[75] 本方法のいくつかの実施形態では、本方法が、ステップa、b、c、及びdを繰り返すことと、内部媒体を置き換えるステップとを更に含む。
【0076】
[76] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、入力混合ガスが風を用いて加速される。本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、入力混合ガスが風レンズ又は風フォーカスを用いて方向転換される。
【0077】
[77] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、入力混合ガスの供給源と断熱材の第1の面との間に配置された第2の断熱層であって、第2の断熱層が、実質的に無孔である、及び/又は入力混合ガスに対して不透過性である、第2の断熱層を更に備える。
【0078】
[78] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、電解セルが、アノードとして機能する少なくとも1つの金属壁を備える。
【0079】
[79] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、電解セルアノード及びカソードが、異なるカーボンナノマテリアルを形成するように、又はカーボンナノマテリアル生成物内の所望のカーボンナノマテリアル形態の量を増加させるようにそれぞれ調整される。
【0080】
[80] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、電解セルアノード及びカソードが、異なるカーボンナノマテリアルを形成するように、又はカーボンナノマテリアル生成物内の所望のカーボンナノマテリアル形態の量を増加させるようにそれぞれ調整される。
【0081】
[81] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、金属塩、金属、又は他の添加物が、異なるカーボンナノマテリアルを形成するように、又はカーボンナノマテリアル生成物内の所望のカーボンナノマテリアル形態の量を増加させるように電解質に添加される。
【0082】
[82] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、電解質媒体が、異なるカーボンナノマテリアルを形成するように、又はカーボンナノマテリアル生成物内の所望のカーボンナノマテリアル形態の量を増加させるように1種以上の炭酸塩を含む。
【0083】
[83] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、電解質が熱特性を強化するために調整される
【0084】
[84] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、電解質が、入力混合ガスからの様々なガスの吸収率を変えるために調整される。
【0085】
[85] 本装置、システム、及び/又は方法のいくつかの実施形態では、電解質が過剰な熱エネルギーを貯蔵するために使用され得る。
【0086】
[86] いかなる特定の理論にも縛られるものではないが、本開示の実施形態は、入力混合ガスと炭素含有ガスと反応する親和性を有する媒体との間に温度差を作ることによって、入力混合ガスから炭素含有ガスを選択的に回収するための経済的且つスケーラブルでロバストな手法を提供する。いくつかの実施形態では、入力混合ガスの供給源が、CO2などの炭素含有ガスの1つ以上の人為的供給源であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0087】
図面の簡単な説明
【
図1A】[87]
図1は、本開示の実施形態によるシステムの3つの概略図である。
図1Aは第1のシステムを示す。
【
図1B】[87]
図1は、本開示の実施形態によるシステムの3つの概略図である。
図1Bは第2のシステムを示す。
【
図1C】[87]
図1は、本開示の実施形態によるシステムの3つの概略図である。
図1Cは第3のシステムを示す。
【
図1D】[87]
図1は、本開示の実施形態によるシステムの3つの概略図である。
図1Dは第3のシステムを示す。
【
図2A】[88]
図2は、概略図及び実験データである。
図2Aは、電解プロセスにおけるCO
2の電解による分解の概略図を示す。
【
図2B】[88]
図2は、概略図及び実験データである。
図2Bは、空気中の二酸化炭素の拡散係数(D
CO2)及び速度(V
CO2)を温度の関数として表すデータの折れ線グラフを示す。
【
図3A】[89]
図3は、データ及び概略図である。
図3Aは、3つの異なる流量のLi
2CO
3中lmのLi
2O(mol/kg)における770℃での電解反応中のCO
2吸収の実験速度を表すデータの折れ線グラフを示す。
【
図3B】[89]
図3は、データ及び概略図である。
図3Bは、本開示の実施形態による構成の概略図を示す。
【
図4A】[90]
図4は、本開示の実施形態による2つの構成を示す図である。
図4Aは密閉構成を示す。
【
図4B】[90]
図4は、本開示の実施形態による2つの構成を示す図である。
図4Bは非密閉構成を示す。
【
図5A】[91]
図5は、本開示の実施形態による装置の3つの概略図である。
図5Aは第1の装置を示す。
【
図5B】[91]
図5は、本開示の実施形態による装置の3つの概略図である。
図5Bは第2の装置を示す。
【
図5C】[91]
図5は、本開示の実施形態による装置の3つの概略図である。
図5Cは第3の装置を示す。
【
図6A】[92]
図6は、本開示の実施形態によるシステムの2つの概略図である。
図6Aは第1のシステムの上面図を示す。
【
図6B】[92]
図6は、本開示の実施形態によるシステムの2つの概略図である。
図6Bは第2のシステムの側面立面図を示す。
【
図7A】[93]
図7は、本開示の実施形態による方法をそれぞれ表す2つの概略図である。
図7Aは第1の方法のステップを示す。
【
図7B】[93]
図7は、本開示の実施形態による方法をそれぞれ表す2つの概略図である。
図7Bは第2の方法のステップを示す。
【
図8】[94]
図8は、本開示の実施形態による断熱材として使用するための第1の材料の走査型電子顕微鏡(SEM)像である。パネルAは300μmのスケールバーを有し、パネルBは100μmのスケールバーを有し、パネルCは100μmのスケールバーを有し、パネルDは10μmのスケールバーを有し、パネルEは10μmのスケールバーを有し、パネルFは10μmのスケールバーを有する。
【
図9】[95]
図9は、本開示の実施形態による断熱材として使用するための第2の材料のSEM像である。パネルAは500μmのスケールバーを有し、パネルBは100μmのスケールバーを有し、パネルCは20μmのスケールバーを有し、パネルDは5μmのスケールバーを有し、パネルEは1μmのスケールバーを有し、パネルFは500nmのスケールバーを有する。
【
図10A】[96]
図10は、本開示の実施形態による装置構成の概略図及びそこから得られた実験データである。
図10Aは、2つの装置構成を示す。
【
図10B】[96]
図10は、本開示の実施形態による装置構成の概略図及びそこから得られた実験データである。
図10Bは、上段パネルと下段パネルとを有し、それぞれが、装置構成及びパーセントCO
2(CO
2%)の経時変化を示す折れ線グラフを示す。
【
図10C】[96]
図10は、本開示の実施形態による装置構成の概略図及びそこから得られた実験データである。
図10Cは上段パネル、中段パネル、及び下段パネルを有し、それぞれが、装置構成及びCO
2含有量(CO
2百万分率(ppm))の経時変化を示す。
【
図11】[97]
図11は、断熱材を通るCO
2の正味の選択的通過を促進する表面積の強化を示す。
【
図12A】[98]
図12は、本開示の実施形態による、入力ガスと断熱材との相互作用経路長を増加させる装置構成の概略図である。
図12Aは、断熱材及び/又はハウジングによって画定される1つ以上の山及び/又は谷によって更に延長され得る延長された長さを有する流路を示す。
【
図12B】[98]
図12は、本開示の実施形態による、入力ガスと断熱材との相互作用経路長を増加させる装置構成の概略図である。
図12Bは、高温オフガス生成物の流れを回収して分離するための導管を示す。
【発明を実施するための形態】
【0088】
[99] 本開示の実施形態は、入力ガスから二酸化炭素(CO2)を選択的に回収するのに有用な1つ以上の装置、1つ以上のシステム、及び1つ以上の方法に関する。入力ガスは、実質的に純粋なガス、純粋なガス、又は異なるガスの組み合わせであってもよく、したがって、「入力ガス」及び「入力混合ガス」という用語は、本明細書において同義で使用され得る。本開示の実施形態によれば、回収されたCO2は、CO2内の炭素からカーボンナノマテリアル(CNM)生成物を生成するために、本明細書では電気合成プロセスとも呼ばれる電解プロセスを受け得る。本明細書では、「カーボンナノマテリアル生成物」及び「CNM生成物」という用語は、ナノスケールカーボンとも呼ばれ得る、1つ以上の形態のナノカーボンの集合体を指すために使用される。本明細書では、「ナノカーボン」という用語は、ナノスケール内でグラファイト状ナノカーボン構造などの特定の構造に配置された炭素を指すために使用される。特に、入力混合ガスから選択的に回収されるCO2は、溶融電解質媒体及び様々な電解プロセス構成を使用して、炭素と酸素とに分解され得る。電解プロセスは、気相から溶融電解質媒体、固体CNM生成物、又はこれらの両方への炭素の物質移動を引き起こし得る。CNM生成物は、カーボンナノチューブ(CNT)を含む実質的に純粋な、又は純粋なカーボンナノマテリアル(CNM)であり得る。CNM生成物は、カーボンナノチューブ、カーボンナノオニオン、ナノフラワー、ナノツリー、ナノベルト、プレートレット、ナノスキャフォールド、ヘリカルカーボンナノマテリアル、グラフェン、ドープカーボンナノマテリアル、アモルファスカーボン、又はこれらの組み合わせなどのCNM構造の1つ以上の形態を含み得る。任意選択で、CNM生成物内の所与の形態の相対量を変更するために、電解プロセスの1つ以上のパラメータが調整され得る。
【0089】
[100]
図1は、本開示の実施形態によるシステムの実装形態を示している。
図1Aは、入力ガス1006内の炭素含有ガスに対する親和性を有する媒体1004を収容する容器1002を備えるシステム1000を示している。容器1002はまた、より一般的には「プレナム」と呼ばれることもあり、この用語は、本明細書では、液体、気体、固体、又はこれらの組み合わせのいずれであるかを問わない物質で満たされ得るあらゆる空間を指すために使用される。プレナムは、開放されても、閉鎖されても、流体の流入又は流出を制限するために実質的に密閉されても、流体の流入又は流出を阻止するために流体密封されてもよい。本明細書では、「親和性」という用語は、媒体が入力ガス1006内の炭素含有ガスを吸収、炭素含有ガスと反応、化学的に結合(bond)、又は結合(bind)する傾向を指すために使用される。そのため、多くの場合、媒体1004は、いかなる制限又は理論にも縛られるものではないが、例えば、炭素含有ガスとの1つ以上の化学的反応、炭素含有ガスとの1つ以上の電気化学的反応、炭素含有ガスを優先的に吸収すること、炭素含有ガスと結合すること、又はこれらの組み合わせに関与することによって、炭素含有ガスを吸収し、炭素含有ガスと反応し、炭素含有ガスと化学的に結合(bond)し、又は結合(bind)する。本開示のいくつかの実施形態では、媒体1004の炭素含有ガスと反応する親和性により、異なる化学物質が結果として生成される。本明細書では、「異なる化学物質」という用語は、炭素含有化合物と反応する親和性を有する媒体がなければ本来生成されない化学物質を指すために使用される。
【0090】
[101]
図1Aに示す容器1002は、入力ガス1006の供給源と流体連通するように開放される。媒体1004は、入力ガス1006より高い温度を有する。媒体はまた、入力ガス内の炭素含有ガスと反応する親和性を有する。
図1Aでは、入力ガスは、このシナリオではCO
2である炭素含有ガスで富化される。高温の媒体1004の炭素含有ガスに対する親和性により、炭素含有の少なくとも一部、実質的に全部、又は全部が、入力ガス1006を出て、容器1002内の媒体1004に入る。媒体1004はまた、入力ガス1006内の他のガスと反応する親和性も有するが、炭素含有ガスと反応する親和性は、炭素を含有しない気体と反応する親和性より高い。このようにして、媒体1004は、炭素含有ガスが媒体1004に入り、媒体1004と反応するにつれて、入力ガス1006中の炭素の量が減少する、実質的に枯渇する、又は完全に枯渇する一方、入力ガス1006中の炭素を含有しないガスの量はほとんど変化しないか、又は全く変化しないようなカーボンシンクとして機能し得る。
【0091】
[102]
図1Bは、容器1002と、媒体1004と、媒体1004の上面と入力ガス1006の供給源との間に配置される断熱材1008とを備えるシステム1000Aを示している。媒体1004は、入力ガス1006より高温である。断熱材1008は、多孔質であり、炭素含有ガスを通過させることができる。本開示のいくつかの実施形態では、断熱材1008は、炭素含有ガスに対して、及び炭素を含まない入力ガス1006の他の構成ガスに対して透過性であり得る。本開示のいくつかの実施形態では、断熱材1008は、入力ガス1006中の炭素を含まないガスと比較して、炭素含有ガスに対してより大きな透過性を有し得、これは、同じ又は実質的に同様の熱力学的パラメータの下では、炭素を含まないガスより多くの正味量の炭素含有ガスが断熱材を通過することを意味する。本開示のいくつかの実施形態では、断熱材1008は、入力ガス1006中の炭素を含まないガスに対して不透過性である、又は透過性が低いものであり得る。
【0092】
[103] 本開示のいくつかの実施形態では、媒体の炭素含有ガスと反応する親和性及び断熱材1008の透過性特性は、入力ガス1006の炭素含有ガス含有量を枯渇させ、媒体1004の炭素含有量を増加させるように協働し得る。
図1Aと同様に、
図1Bの媒体1004はカーボンシンクとして機能し得る。
【0093】
[104]
図1Cは、(
図1Bに示す)システム1000Aと同じ特徴の多くを有すると共に、特定の入力ガスが空気であり、断熱材1008の内面/下面と媒体1004Aの上面との間に画定される空間もまた入力ガス1006より高温であり、同様に入力ガス1006より高温である空気を収容して囲み得るという更なる特徴を有するシステム1000Bを示している。システム1000Bでは、同様に、媒体1004Aが入力ガス1006より高温である。例えば、媒体1004Aは、任意選択で酸化物が補充される溶融炭酸塩電解質であってもよく、その結果、媒体1004Aの上面が気液界面を形成する。システム1000Bでは、媒体1004Aは、入力ガス1006中の炭素含有ガスと反応する親和性が高く、入力ガス1006中の炭素を含まない他の構成ガス、例えば、窒素、酸素、及び水と反応する親和性が比較的低い。本開示のいくつかの実施形態では、断熱材1008及び媒体10004Aは、媒体1004AとCO
2などの炭素含有ガスとの間の反応を助けることによって、入力ガス1006の炭素含有量を削減し得る。このようにして、システム1000Bは、入力ガス1006の炭素含有量を選択的に削減することにより、カーボンシンクとして機能する。
【0094】
[105]
図1Dは、システム1000Bと同じ特徴の多くを有すると共に、(約750℃の温度で)溶融炭酸塩電解質媒体1004A内に浸漬された電極1010A及び1010Bという追加的な特徴を有するシステム1000Cを示している。電極間に電流が印加されると、炭素含有ガス、本例ではCO
2が移動し(電解で分解され)、新しい炭素物質が生成され、酸素が生成される。媒体1004Aと炭素含有ガスとの間のこれらの電気化学的反応の詳細については、本明細書において後で詳述する。
【0095】
[106]
図7Aは、入力混合ガスの炭素含有ガス含有量を削減するための方法2000のステップの概略図を示している。方法2000は、入力混合ガスの供給源と流体連通する媒体を提供するステップ2002であって、媒体が入力混合ガスの炭素含有ガスと反応する親和性を有する、ステップと、媒体が入力混合ガスより高い温度を有するように温度差を確立するステップ2004と、媒体が入力混合ガスの炭素含有ガス含有量を削減するためのカーボンシンクとして機能するように、媒体と炭素含有ガスとを一緒に反応させるステップ2006とを含む。
【0096】
[107] CO2は、溶融電解質媒体との発熱反応によって、溶融塩中の酸化物と反応することにより、空気から急速に吸収され、自然に濃縮される。これにより、いかなる特定の理論にも縛られるものではないが、次式1、2、及び3で表されるように、溶融炭酸塩電解質媒体が継続的に再生される。
【0097】
[108] CO2(gas)+O2
- fi CO3
2- (式1)
【0098】
[109] 電解反応は次式(2)にしたがう。
【0099】
[110] CO3
2- fi C+O2+O2- (式2)
【0100】
[111] このプロセスでは、CO2が溶融電解によって分解されて、CNM炭素生成物及び高温酸素が生成され、炭素はCNM生成物として式(3)によって表される。
【0101】
[112] CO2 fi CNM生成物+O2 (式3)
【0102】
[113]
図3Aに示すように、溶融Li
2CO
3電解質はガス状CO
2を急速に吸収し、ガス状CO
2と反応するが、主要な大気ガスであるN
2、O
2、及びH
2Oに対しては難溶性である。実験で得られた、770℃における1kgのLi
2CO
3当たり1モルのLi
2OにおけるCO
2吸収速度は、高速であり、電解によるCO
2の分解を維持するのに必要な速度より著しく速い。
【0103】
[114]
図2Aは、溶融炭酸塩媒体1004AにおけるCO
2の電解による分解の概略図を示している。溶融Li
2CO
3電解質媒体1004Aは、炭素に対する親和性を有し、ガス状CO
2を急速に吸収し、これと反応するが、大気中の空気の主成分ガスであるN
2、O
2、及びH
2Oに対して難溶性であることに少なくとも部分的に起因して、親和性が低い。媒体内に延びる灰色の矢印は、媒体1004A内への炭素の正味の物質移動を示すものであり、赤色のXの付いた黄色の矢印は、
図2Aの入力混合ガスであった炭素で富化された大気中の空気における他の構成ガスの物質移動がないことを示す。
【0104】
[115] 実験で得られた1モーラルの酸化リチウムを含む770℃の溶融炭酸リチウム媒体における急速なCO
2吸収速度を
図3Aに示す。
図2Aは、入力混合ガスからのCO
2が媒体1004Aと反応する結果となる電解プロセスの1つの物理化学的特徴を表す概略図を示している。CO
2は、式4a及び4bで特徴付けられる発熱反応を介して電解質媒体に容易に吸収され、空気からのN
2、O
2、及びH
2Oは、溶融Li
2CO
3に難溶性である。CO
2反応性吸収の急速な速度は、酸化物がLi
2CO
3と化学的に混合された後に測定されたものであり、これは、電気化学的な環境ではなく化学的な環境におけるものであることに留意されたい。その代わりに、電解中、カソードにおいて酸化物が形成されるだけはでなく、アノードにおいてO
2が発生され(
図2A及び式3)、表面に浮き上がる。
CO
3
2- fi C
ナノマテリアル+O
2_+O
2 (式4a)
CO
2+O
2- fi CO
3
2-;CO
2+Li
2O fi Li
2CO
3 △H(770℃)=-158,000J/mol (式4b)
【0105】
[116] 式4aに関連して、CO2の高い吸収率は、電解質媒体中の化学種のうちの1種とのCO2の発熱化学反応に起因する。いかなる理論にも縛られるものではないが、CO2との高速反応を駆動する酸化物は、化学平衡によって、またCNM生成物の形成における炭酸塩の電解によって形成される。
【0106】
[117] 式4bに関連して、いかなる理論にも縛られるものではないが、酸化物はCO2と発熱反応して、Li2CO3などの電解質媒体中の炭酸塩を連続的に再生し、反応エンタルピーは、NIST Webbook及びNIST-JANAF Thermochemical Tablesを通じて入手可能な熱力学データを用いて、個々の反応種の反応エンタルピーから計算される。
【0107】
[118] 発生するO2生成物は電解質を通って浮き上がり、電解質媒体内の対流を強化し、入ったCO2の混合を助け、反応速度を高める。空気のCO2から電解質への反応速度は非常に高速であるが、排ガスなどの高レベルのCO2を含む混合ガスと比較すると低速である。或いは、電解の有無にかかわらず、電解質の機械的撹拌(stirring)若しくは流動、又は電極の回転、撹拌(agitation)、電解質内への高温ガスの通気などの対流促進により、溶融炭酸塩電解質媒体におけるCO2の酸化物との反応性吸収速度を更に上昇させることができる。
【0108】
[119]
図3Aは、実験で得られた770℃における1kgのLi
2CO
3当たり1モルのLi
2OにおけるCO
2吸収速度は、高速であり、電解によるCO
2の分解を維持するのに必要な速度より著しく速いことを示している。いかなる特定の理論にも縛られるものではないが、CO
2の結合、捕捉、反応、又は消費のための選択的なCO
2シンクと、空気中の主成分ガスによる溶解性の欠如とを組み合わせて、空気中のCO
2の拡散係数(D
CO2)、空気中のD
CO2は、入力混合ガスの他の構成成分からCO
2を分離することを助け、Li
2CO
3(融点=723℃)などの溶融電解質媒体、又は二元系若しくは三元系炭酸塩の他の電解質媒体の混合物内で生じる電解反応の所望の速度を維持し得る。
【0109】
[120] 入力混合ガス内のCO
2部分が周囲空気の他の構成成分から独立して選択的に加熱されることを可能にする更なる物理化学的特徴は、CO
2が電解中に消費される速度と比較して、空気中のCO
2拡散の従来の速度が高速であることである。
図2Bは、空気における既知のCO
2拡散を、0℃から400℃の範囲を超えて、CO
2電解に関連する高温領域まで外挿したものを青線で示している。外挿は、フィックの拡散の法則のT(K)
3/2拡散係数指数変化を、20~400℃までのR
2適合>0.9996で使用している。
【0110】
[121] 拡散は、従来、フィックの法則によって説明される。特定の理論に縛られるものではないが、基本的には均等であるが、より単純な出発点は、平均二乗変位と拡散との関係を記述するアインシュタイン-スモルコフスキーの式である。時間tにおける、拡散による化学種iのブラウン運動による平均二乗変位<x2>は、1次元、2次元、又は3次元で式5によって与えられる。
<x2>=qDit (式5)
【0111】
[122] 上式で、qは次元係数(dimensionality factor)(1次元、2次元、又は3次元の拡散においてq=2、4、又は6)であり、Diは拡散係数であり、tは時間である。界面における分子運動は、この理想的な場合とは異なり得ることに留意されたい。
【0112】
[123] この並進変位は、温度の関数としてCO2の平均拡散速度<x2>/tに変換される(式6参照):
nCO2=<x2>0.5/t=(qxDCO2(T))0.5/tu (式6)
上式で、Tは温度であり、tuは拡散係数と矛盾しない単位時間である。
【0113】
[124]
図3Aは、D
CO2及び式6を用いて温度の関数として計算された、空気におけるCO
2の並進変位、すなわち速度を含む。空気におけるCO
2の拡散係数(D
CO2)及びCO
2の速度の並進変位(n
CO2)は温度に依存する。
図2Bでは、D
CO2値は濃青色の点線であり)、CO
2の1次元、2次元、又は3次元の速度はそれぞれ赤色、黄色、及び水色(一番上)の線で示されている。
図2Aに示すように、電解において、電解質媒体から出るガスの総モル数は、式1のO
2生成物から構成される。同様に、これは式2の反応物CO
2として電解質媒体に入る同じ総モル数のガスである。したがって、ガス体積が理想的なモル体積と一致する限りにおいて、電解質媒体の上方から入るCO
2の体積は、電解質媒体から出るO
2の体積と置き換えられ、電解質媒体の上方のガス体積に正味の変化はない。変位する体積は同じであるが、軽い分子であるO
2の方が気相ではCO
2より速く移動することに留意されたい。
【0114】
[125] いかなる特定の理論にも縛られるものではないが、オフガス生成物とも呼ばれ得る電解プロセスによって生成された高温のO2は、それ自体、限定されるものではないが、様々な工業プロセス及び酸素燃料プロセスなどのための殺菌剤を含む様々な用途のための酸化剤を生成するために使用され得る。加えて、高温のO2は、そのエネルギーの一部を吸収されるCO2に戻すために使用することもできるし、ヒートエンジンプロセスのように、より多くの反応物をシステムに引き込むために使用することもできる。本開示のいくつかの実施形態は、例えば、電解セル内の炭酸塩電解質媒体の気液界面の上方にあるガス空間と流体連通する導管によって、電解セルからO2オフガス生成物を隔離することに関する。
【0115】
[126] 電解セルを囲む多孔質断熱材を加えることにより、電解質媒体内の熱が保たれ得る。また、電解質媒体の上面の上方にある電解セルのガス空間内の空気、及び多孔質断熱材内の空気中に含まれる酸素は、電解プロセスが進むにつれて濃度が高まることに留意されたい。
【0116】
[127] 溶融炭酸塩電解質媒体の上方に多孔質断熱材カバーを加えることにより、気相CO2が入力混合ガスから溶融炭酸リチウム電解質媒体内に拡散することができ、このことは入力混合ガスのCO2部分が選択的に加熱され得る更なる物理化学的特徴である。いかなる理論にも縛られるものではないが、対流がない場合、電解の反応物として到着するCO2の最大速度は、CO2が電解セルを収容するキルンの内部に向かって移動する際に、断熱材表面に直交する方向におけるCO2の最大一次元速度によって制限される。いかなる理論にも縛られるものではないが、1秒当たりの1次元平均変位、及び20℃の周囲空気側に最も近い断熱材に捕捉された空気中のCO2の速度は、nCO2-断熱材=nCO2(20℃)=0.56cmCO2s-1である。
【0117】
[128] 入力混合ガスが大気から供給される空気である場合、CO2は周囲空気に由来し、反応物として到着し、電解分解のために多孔質断熱材内へと通過する。周囲空気(20*C)のCO2のモル体積濃度VM(空気中のCO2)は、その0.04%モル濃度及びガスのモル体積から、VM(空気中のCO2)=VM(20℃)/0.04%CO2=6.0×107cm3の空気当たり1モルのCO2と求められる。多孔質断熱材の外面を通る1cm2当たりのCO2のモル流束は、f(CO2)断熱材として与えられる。
【0118】
[129] 地球の空気の平均風速(風速)はn空気-平均=330cm/s(=11.9kph=7.4mph)であり、2010年以降、年率0.8%で上昇している。実施例では、本開示の実施形態に関してCO2を維持するには人工ブロワではなく自然風で十分であることを実証するために、この風速領域(1、33、又は330cm/s)の0.33%、10%、又は100%を検討した。いかなる理論にも縛られるものではないが、一次近似まで、断熱材の1cm2四方の領域に直角に当たる空気の空気速度における風が、拡散平均平方変位によって枯渇したCO2をZ=n空気(cm/s)/nCO2の比例した率で補充する。原理的には、空気速度は、より多くの空気がより小さな面積を通るように押しやる、又は空気を加圧するダイヤフラムによって上げることができる。風速が増加すると、その領域に当たるCO2のモル濃度がZ×VM(空気中のCO2)まで増加する。CO2流束は、断熱材の外面における濃度と電解質媒体の表面における濃度との間の濃度勾配によって駆動される。電解中の電解質媒体によるCO2の取り込みは急速であり、反応速度は速く、電解質媒体内への炭素の物質移動が促進される。
【0119】
[130] 熱(-Qin)は、電解中に発生され、また、いかなる理論にも縛られるものではないが、(i)CO2が電解質媒体を改質する際のLi2Oとの反応熱△H=-158,000J/mol(式4)、及び(ii)電解過電位による抵抗加熱によって発生される。放出される反応熱は、消費されたCO2のモル数にしたがう、CO2と電解Li2Oとの発熱反応、-△H(式4)である。電解過電位hと電解電流との積による抵抗加熱。溶融炭酸塩電解質におけるCO2の電解分解の残留電位は約0.8Vであり、電解質媒体組成及び電解電極によって変化する。一定の電流密度Iを駆動するための追加の過電位は、電解質媒体の組成、電極の組成、及びテクスチャリングによって変化し、平面電極について測定されている。システムからの熱損失Poutは、熱伝導率、熱接触の表面積A、断熱材の両側間の温度差ΔT、及び断熱材の厚さ によって与えられる。熱伝導率kはメートル単位(W/(mK))で表されることが多く、熱抵抗値Rは英単位(ft2 hr °F/Btu)で表されることが多く、インチ単位の断熱材の厚さを含む。
Pout=kA△T/ =A△T/R (式7)
【0120】
[131] CO2がキルンに入り、電解チャンバ内で熱を保持することを可能にするという材料の二重の特性が、多孔質断熱材により実現可能である。このような材料は、(i)(閉鎖気孔又は粒とは反対の)開放気孔を有し、(ii)高い断熱係数を有し、(iii)適切な温度領域における電解条件の温度に耐えることができる。高温耐熱材料に関する熱伝導率の気孔率依存性が研究されている。高温(>1150℃)に耐えることができる多孔質断熱材は、アルミナシリケート及びアルミナカルシウムシリケートのブランケットである。例には、「炉用セラミックファイバ断熱材」、「アルミナシリカセラミックファイバ」、「Durablanket(登録商標)」、又は「Cerablanket(登録商標)」を含む様々な製品がある。関連するサーマル商用製品は、多くの場合、メートル単位ではなく英単位に戻っており、類似の利用可能な組成(例えば、46%Al2O3及び54%Si2O)、厚さ(0.5、1、又は2インチ厚)、及び密度の範囲(4、6、又は8lb/ft3=pcf)を有する。
【0121】
[132] これらのアルミナシリカファイバのブランケットのうちの最も密度の高いものでも、高い気孔率のために軽量である。例として、8pcf(=0.128g/cm3)の密度のCerablanket(登録商標)の気孔率は、固体(無気孔)平均d固体=3.2g/cm3の密度を用いて、4.0g/cm3の密度のアルミナの46%及び2.6g/cm3の密度のSi2Oの54%から推定され得る。気孔率は、開放空間から(d空気=0.001225g/cm3を用いて))次のように推定される。
p=100%×(d固体-dcerablanket)/(d固体-d空気)(ただし、d空気=0.001225g/cm3)
p(8pcfのアルミナシリケート例)=96% (式8)
【0122】
[133] 容易に入手可能なアルミナシリカファイバは、2インチ厚で8pcfのサーマルファイバブランケットであり、0℃(外挿)、200℃、400℃、600℃、及び800℃におけるk及び(R)の定格断熱値がそれぞれ0.028(10)、0.05(5.7)、0.08(3.6)、0.19(2.2)、NS 0.20(1.4)を有し、T電解からT空気までの温度範囲の平均熱係数はk=0.52W/(mK)(及びR=3.8ft2 hr F°Btu-1)である。熱抵抗値の「R」表現の数学的な便利さは、断熱層との近似的加法性である。したがって、この断熱材の厚さを2インチではなく8インチにすると、R値は約15.2ft2 hr F°Btu-1となる。
【0123】
[134] 断熱材の外層には、より低温に適合する(より安価で、より高いR値を持つ)多孔質断熱材、例えば剥き出しのガラスファイバ断熱材が利用され得る。このような断熱材は、様々な商業製造業者から入手可能である。ここで使用される例は、R=16.7で、織り込まれたガラスファイバから構成される1.5pcf、すなわち0.024g/cm3の密度の4インチ厚の打ちっ放しのコーニング710ファイバ断熱材である。2.5gcm-3の密度の固体ガラスファイバから、この断熱材の気孔率はp(4インチのC701)=99%である。組み合わせると、キルンの内部から外側を向く8インチの8pcfのアルミナシリケート、及び周囲空気に延びる4インチのC701打ちっ放しファイバガラス断熱材の断熱性能は、近似的に加法的であり、つまり、これらは近似的に結合されたR=(15.2+16.7)=31.9ft2 hr F°Btu-1となる。
【0124】
[135] 本開示のいくつかの実施形態は、炭素含有入力混合ガスからCO2を選択的に回収し、回収されたCO2からCNM生成物を生成するための装置に関する。本装置は、一対の電極、すなわちカソードとアノードとを備え、一対の電極が電解空間とも呼ばれ得る電極間空間を画定し、電解空間が電解質媒体を受け入れ収容し得る。本装置はまた、入力混合ガスの供給源と電解質媒体との間に配置された断熱材を備える。断熱材は、多孔質であり、入力混合ガスからCO2を選択的に回収するのを助けるように構成される。本装置は、電流の供給源と、熱源と、電極及び電解質媒体を収容し、炭素含有入力混合ガスの供給源と流体連通するケースとを更に備え得る。
【0125】
[136]
図5Aは、本開示の実施形態による装置10Aの一例を示している。装置10Aは、カソード18を収容するための、電解チャンバ又は電解セルとも呼ばれ得るケース12を備え、アノード16は、ケース12の壁の内面の少なくとも一部を形成し得る。2つの電極が一緒に、それらの間に電解空間Bを画定する。当業者には理解されるように、任意選択で、アノード16はケース12の壁とは分離されてもよい。ケース12は、電解質媒体21(
図5Aでは溶融状態で示されており、上面が21Aと示されている)を収容するように構成される。上面21Aを含む電解空間Bは、CO
2を含む入力混合ガスを収容するプレナムDと流体連通し得る。ケース12は、断熱プレナムAを画定するキルンなどの断熱ハウジング20内のベース14上に支持され得る。装置10は、電解空間Bと入力混合ガスを収容するプレナムDとの間に配置された断熱材22を更に備える。本開示のいくつかの実施形態では、断熱プレナムAはまた、入力混合ガスを収容するプレナムDと流体連通し得る。
【0126】
[137] 入力混合ガスを収容するプレナムDは、地球の大気(CO2含有量が約420ppm CO2)とすることもできるし、産業排ガス流などの濃縮された人為的CO2含有ガス収容するプレナム又は隔離したCO2の貯留槽とすることもできる。例えば、プレナムDは入力混合ガスを収容する、又は入力混合ガスの供給源であり、入力混合ガスはCO2及び任意選択で他の炭素含有ガスを含む任意のガスであり得る。例えば、入力混合ガスの供給源は、限定されるものではないが、セメント製造プラント、鉄精錬プラント、鉄鋼製造プラント、アンモニア、エタノール、マグネシウム、水素、ポリマー、プラスチック、ガラスのうち1つ以上を製造又は使用するプラント、廃水処理プラント、食品加工プラントを含む、様々な産業プラントであり得る。入力混合ガスの供給源はまた、内燃機関及び暖房又は調理のための炭素質物質の燃焼を含む化学反応器であり得る。発電プラント、蒸気発生設備、又は熱分解反応器からの排出ガスもまた、入力混合ガスの供給源であり得る。これらの供給源から排出されたCO2含有ガス、又は高カーボンフットプリント物質の製造に伴って排出されたCO2含有ガスもまた、入力混合ガスに寄与し得る、又は入力混合ガスを構成し得る。加えて、燃焼のCO2含有ガス生成物、又は暖房、輸送、ポリマー若しくはプラスチックなどの炭素製品のための化石燃料の変換のCO2含有ガス生成物もまた、入力混合ガスに寄与し得る、又は入力混合ガスを構成し得る。入力混合ガスの温度は、約-90℃~約400℃の範囲にあり得る。例えば、入力混合ガスの供給源が大気である場合、温度の範囲は、約-90℃から約75℃の範囲であり得る。入力混合ガスの供給源が人為的なものである場合、温度の範囲は、約50℃から約400℃の範囲であり得る。ケース12は、入力混合ガスを電極間空間B内に受け入れるために、プレナムDと流体連通するように構成される。
【0127】
[138] 本開示のいくつかの実施形態では、アノード16は、平面構造、ワイヤ構造、スクリーン、多孔質構造、導電板、平坦若しくは折り畳みシム、コイル巻き構造として形成される、又はアノードは、ケース12の内側壁の少なくとも一部を形成し得る。アノード16は、アノード16が酸素発生してもしなくてもよいように、様々な導電性材料から形成され得る。このようなアノード形成材料としては、限定されるものではないが、安定な層を有する、又は本開示の実施形態にしたがって実行される電解反応において酸素生成を助ける高度に安定な酸化物外層を確立する任意の導電性材料、Ni、Ni合金、亜鉛めっき(亜鉛コーティング)された鋼、チタン、グラファイト、鉄、及び酸素生成を助ける高度に安定な酸化物外層を確立する多種多様な金属が挙げられる。アノード16を形成するための適切な材料の更なる例としては、ニッケル合金36(クロムを有さないが鉄を有するニッケル)、SS304又はSS316などのステンレス鋼を含むニクロム(ニッケルクロムベースの合金)、並びにインコネル600、625、及び718などのインコネル合金、合金C-264、又はクロムA、Bなどのニクロムが挙げられ、又はそれというのも、合金成分の同時核形成が、高品質のCNTを生成することが知られているためである。限定されるものではないが、Ni、Cr、Sn、In、Fe、及びMoを含む二元系及び三元系遷移金属核形成剤も有用であり得、CNM生成物成長に影響し得る。
【0128】
[139] 本開示のいくつかの実施形態では、遷移金属がアノード16上に添加され得、遷移金属はアノード16から溶解して電解質媒体21を通してカソード18上に移動し得る。添加された遷移金属は核形成剤として機能し得、ニッケル、鉄、コバルト、銅、チタン、クロム、マンガン、ジルコニウム、モリブデン、銀、カドミウム、スズ、ルテニウム、亜鉛、アンチモン、バナジウム、タングステン、インジウム、ガリウム、又はゲルマニウム若しくはケイ素などの非遷移金属、或いはこれらの混合物から選択され得る。遷移金属はまた、溶解遷移金属塩として電解質媒体21内に直接導入されて、カソード18上に移動され得る。遷移金属核形成剤をカソード18上に直接添加することも可能である。
【0129】
[140] 本開示のいくつかの実施形態では、カソード18は、平面構造、ワイヤ構造、スクリーン、多孔質構造、導電板、平坦若しくは折り畳みシム、シート、コイル巻き構造として形成される、又はカソードは、ケース12の内側壁の少なくとも一部を形成し得る。カソード18は、核形成点及びカソード18上で形成するCNM生成物のバリエーションに対する必要性を反映する様々な導電性材料から形成され得る。このようなカソード形成材料としては、限定されるものではないが、任意の導電性材料、亜鉛めっき(亜鉛コーティング)された鋼、チタン、グラファイト、鉄、銅及び亜鉛を含む合金、モネル(Ni400、Ni/Cu合金)、インコネル、ステンレス鋼、鉄、ニクロム、純粋なCuが挙げられ、真鍮合金もカソード18を作るための材料として適切であり得る。
【0130】
[141] アノード16及びカソード18は、ステンレス鋼ケース又は実質的に純粋な若しくは純粋なアルミナ製のケースなどのケース12内で互いに実質的に平行に並べられ得る。ケース12は、溶融電解質媒体21を収容するために、また装置10Aにより達成される温度を維持するために適切な任意の材料から作製され得る。電極は、限定されるものではないが、実質的に水平に又は実質的に垂直になど、任意の向きであるが、それらの間に電解空間Bを画定するように互いに間隔を空けて配置され得る。本開示のいくつかの実施形態では、電解空間Bは、約0.1cm~約10cmである。本開示のいくつかの実施形態では、電解空間Bは、約1cmである。当業者には認識されるように、電解空間Bの寸法は、各電極のサイズ、ケース内で画定されるプレナム、印加される電流の量、及びこれらの組み合わせなど、装置10Aのスケールにより定められる。
【0131】
[142] アノード16及びカソード18は電流源(図示せず)に動作可能に接続され、電流源は、約0.001A/cm2~10A/cm2の電流密度を提供する、定電流又は非定電流のいずれかの任意の交流電流源又は直流電流源であり得る。本開示のいくつかの実施形態では、電極間で提供される電流密度は、少なくとも0.02A/cm2、0.05A/cm2、0.1A/cm2、0.2A/cm2、0.3A/cm2、0.4A/cm2、0.5A/cm2、0.6A/cm2、0.7A/cm2、0.8A/cm2、0.9A/cm2、1.0A/cm2以上である。電流源のための電力は、電力源、太陽光発電源などを含む、任意の電源又は電源の組み合わせであり得る。
【0132】
[143] 熱源(図示せず)は、ケース12内の温度を、電解質媒体21を溶融相に転移させる温度に上昇させる任意の熱源であり得る。例えば、熱源は、約500℃~約850℃以上のケース12内の温度を達成し得る。本開示のいくつかの実施形態では、加熱は、約700℃~約800℃、約720℃~約790℃、又は約750℃~約780℃の温度を達成する。本開示のいくつかの実施形態では、加熱は、749~750℃、751~752℃、753~754℃、755~756℃、757~758℃、759~760℃、761~762℃、763~764℃、765~766℃、767~768℃、769~770℃、771~772℃、773~774℃、775~776℃、777~778℃、又は779~780℃の温度を達成する。本開示のいくつかの実施形態では、ケース12内の温度は、約800℃以上に上昇され得る。本開示のいくつかの実施形態では、熱源は、CO2吸収の発熱反応及び炭酸塩への変換(気相から固相CNM生成物への質量移動)、又は印加される電解電流の過電圧により提供され、又はそれにより補充される。
【0133】
[144] 本開示のいくつかの実施形態では、電解質媒体が、熱源により溶融相に転移するまで加熱され得る炭酸塩を含み得る。例えば、炭酸塩は、炭酸リチウム又はリチウム炭酸塩であり得る。723℃の融点を有する炭酸リチウム(Li2CO3)などの溶融炭酸塩、又は620℃の融点を有するLiBaCaCO3などのより低い融点の炭酸リチウムは、含有する酸化物が、溶融時に発生する、又は電解若しくはLi2O、Na2O、及びBaOなどの高度に可溶性の酸化物との混合の結果である自然酸化物形成を含む場合、溶融電解質媒体の上方の空間からのCO2の急速な吸収を持続する。適切な炭酸塩としては、アルカリ炭酸塩及びアルカリ土類炭酸塩が挙げられる。アルカリ炭酸塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、若しくはフランシウム炭酸塩、又はこれらの混合物が挙げられる。アルカリ土類炭酸塩としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、若しくはラジウム炭酸塩、又はこれらの混合物が挙げられる。本開示のいくつかの実施形態では、電解質は、混合組成物であり得、例えば、アルカリ炭酸塩及びアルカリ土類炭酸塩と、酸化物、ホウ酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩化物、塩素酸塩、又はリン酸塩のうちの1つ以上との混合物であり得る。
【0134】
[145] 本開示の実施形態は、入力混合ガスを収容するプレナムDと溶融電解質媒体21を収容するケース12の内部との間に断熱材22を設けることに関する。断熱材22は、断熱材22を通り第1の面22Cから第2の面22Dに出るCO2の正味の選択的通過を助けるように構成される。他のガスは、より高温の媒体では、その消費に親和性のないシンクが存在するため、断熱材を通る正味の選択的通過を有することが抑制される。本開示のいくつかの実施形態では、断熱材22は、断熱材22を通るCO2の流れを促進し、断熱ハウジング20内の温度を維持することに寄与する材料から作られる。本開示のいくつかの実施形態では、断熱材22材料は、(i)開気孔構造を有し、(ii)高い断熱係数を有し、(iii)可能な場合には、ケース22及び断熱ハウジング20内で達成される高温に耐え得る。断熱材22に適切な材料の非限定的な例としては、アルミナシリケート及びアルミナカルシウムシリケートのブランケットなど、高温(>1150℃)に耐えることができるものが挙げられる。断熱材22として使用するための容易に入手可能な材料の例としては、限定されるものではないが、ファイバ状又は粒状の透過性バット、マット、又はブランケット、可撓性又は硬質のボード又はパネル、及びガスの通過を可能にする透過性硬質ブロック又はレンガが挙げられる。建築に使用されるいくつかの断熱製品もまた、断熱材22としての使用に適切であり得、限定されるものではないが、ファイバガラス、セルロース、綿、又は織布などの低中温断熱材(外壁に使用)、ミネラルウールなどの中温断熱材(外壁又は中壁に使用)、及びアルミネート(炭酸塩を含む)、シリケート(カルシウムアルミナシリケートを含む)、これらの誘導体、及びこれらの組み合わせなどの高温断熱材(外壁、中壁、又は内壁に使用)セメント及びセラミックが挙げられる。様々な容易に入手可能且つ適切な高温用セラミック製品の例としては、限定されるものではないが、「炉用セラミックファイバ断熱材」、「アルミナシリカセラミックファイバ」、「Durablanket(登録商標)」、「Cerablanket(登録商標)」、又は「Superwool(登録商標)」が挙げられる。適切な断熱製品は、同様の組成(例えば、約46%のAl2O3及び約54%のSi2O)、厚さ(0.5インチ、1インチ、又は2インチ厚)、及び密度の範囲(4lb/ft3=pcf、6pcf、又は8pcf)を有し得る。
【0135】
[146] アルミナシリカファイバ材料のうちの最も密度の高いものでも、高い気孔率のために軽量であり得る。例として、8pcf(=0.128g/cm
3)の密度のCerablanket(登録商標)の気孔率は、固体(無気孔)平均d
固体=3.2g/cm
3の密度を用いて、4.0g/cm
3の密度のアルミナの46%及び2.6g/cm
3の密度のSi
2Oの54%から推定され得る。気孔率は、開放空間から(d
空気=0.001225g/cm
3を用いて))次のように推定される。p=100%×(d
固体-d
cerablanket)/(d
固体-d
空気) (ただし、d
空気=0.001225g/cm
3)。(8pcfのアルミナシリケート例)=96%(開放空間)。容易に入手可能なアルミナシリカファイバは、2インチ厚で8pcfのサーマルファイバブランケットであり、0℃(外挿)、200℃、400℃、600℃、及び800℃におけるk及び(R)の定格断熱値がそれぞれ0.028(10)、0.05(5.7)、0.08(3.6)、0.19(2.2)、NS 0.20(1.4)を有し、T
電解からT
空気までの温度範囲の平均熱係数はk=0.52W/(mK)(及びR=3.8ft
2 hr F°Btu
-1)である。熱抵抗値の「R」表現の数学的な便利さは、断熱層との近似的加法性である。したがって、この断熱材の厚さを2インチではなく8インチにすると、R値は約15.2 ft
2 hr F°Btu
-1となる。気孔率及び断熱繊維間の間隔は、第1の材料であるDurablanket(登録商標)及び第2の材料であるSuperwool(登録商標)の走査型電子顕微鏡像において明らかであり、それぞれ
図8及び
図9に示す。
図8は、第1の材料が約5.8μm(パネルD)、4.4μm(パネルE)、及び3.3μm(パネルE)の直径を有する繊維を有することを示している。
図9は、第2の材料が約2.5μm(パネルD)、0.49μm(パネルE)、及び0.24μm(パネルF)の直径を有する繊維を有することを示している。
【0136】
[147] 本開示のいくつかの実施形態では、断熱材22の表面積が、溶融電解質媒体21の上面21Aの表面積の1~100倍大きい。本開示のいくつかの実施形態では、断熱材22の表面積が、溶融電解質媒体21の上面21Aの表面積の2~20倍大きい。本開示のいくつかの実施形態では、正味の内側へのCO2拡散を最大化し、外側への熱の流れを最小化するために、断熱材22の表面積は、入力混合ガスに面する外側(第1の表面22C)において、より高温の媒体に曝される内側(第2の表面22D)より大きい。
【0137】
[148] 本開示のいくつかの実施形態では、断熱材の密度及び/又は厚さは、本開示の実施形態と共に使用するための改質プロセスを受け得る。例えば、断熱材は、未改質の断熱材と比較して、断熱材を通る炭素含有ガスの正味の通過を変更、増加、又は減少させるために、他の単純な機械的、化学的、又は構造的手段によって、圧縮又は改質され得る。
【0138】
[149]
図5Bは、本開示の実施形態による装置10Bを示している。装置10Bは、上記の装置10と多くの同様又は同じ特徴を有する。2つの装置10、10B間の主な違いは、装置10Bが、断熱プレナムCを画定する、断熱材22で作られた1つ以上の壁と天井とを有するフレーム22Aを有し、断熱プレナムCがフレーム22Aの外側のプレナムD内において入力混合ガスから回収されたCO
2を収容することである。フレーム22Aのこれらの壁及び天井は、入力ガスと多孔質断熱材との間の相互作用の表面積を増加させ、これにより、内側への正味のCO
2拡散速度(第1の表面22Cから第2の表面22Dへの断熱材の通過)を上昇させることができる。プレナムAは、
図5Bに示すように、断熱プレナムCと流体連通していても、いなくてもよい。フレーム22Aの各壁及び天井を、断熱材22の20cm×20cmの2インチ厚のセクションで作製した。断熱材22の第2の表面22Dは、フレーム22Aのサイズ及びセル12内の溶融電解質媒体21の体積に基づいて、溶融電解質媒体21の上面21Aから所定の距離だけ間隔を開けて配置される。このように、フレーム22Aのサイズを変えることで、セル12内の溶融電解質媒体21の体積を増加又は減少させ得るように、所定の距離を増加又は減少させ得る。断熱プレナムC内のCO
2の濃度は、プレナムD内の入手混合ガスにおけるCO
2濃度より高くなり得る。更に、断熱プレナムC内のCO
2含有ガスはまた、プレナムD内の入力混合ガスより高温になり得る。
【0139】
[150]
図5Cは、本開示の実施形態による装置10Cを示している。装置10Cは、上記の装置10Bと多くの同様又は同じ特徴を有する。2つの装置10B、10C間の主な違いは、装置10Cが、フレーム22Bが配置されるプレナムDを画定するハウジング24を更に備えることである。ハウジング24は、実質的にガスに対して不透過性であり、熱伝導性の低い材料(例えば、耐火レンガ)で構成され得る。換言すれば、ハウジング24は断熱材の特性を有する材料で作られ得る。ハウジング24は、2つの開口部、すなわち、第1の端部にある入力開口部26Aと第2の端部にある出力開口部26Bとを画定して、プレナムD内のガスの流れが入力開口部26Aからハウジング24内に移動し、出力開口部26Bを介してハウジング24から出るようにし得る。プレナムDのガス含有量は、ハウジング24の内部において外部と実質的に同じであり得る。装置10Bと同様に、断熱材22に起因して、プレナムDのガス含有量及び特性は、正味ベースで、プレナムDから断熱材22を通ってプレナムC内に、そして選択的に界面21Aを通って媒体21内に移動する炭素含有ガスに起因して、断熱プレナムC内のガス含有量及び特性とは異なる。プレナムCは、プレナムDより高い温度を有し得る。任意選択で、ハウジング24はまた、風の進行方向が変わるときなど、入力混合ガスがハウジングに入力開口部26Aを介して進入するか出力開口部26Bを介して進入するかに応じて自らの位置をシフトし得る1つ以上のシフト可能な部材を備え得る。シフト可能な部材は、引き戸、ポート、バッフル、又は入力混合ガスがハウジング24を通って移動する方向を変えるために自らの位置をシフトするように構成された任意の他の機構であり得る。シフト可能な部材はまた、入力混合ガスがハウジング24を通って移動する方向を変えるために自らの位置をシフトするように構成され得る。追加的又は代替的に、シフト可能な部材は、本明細書で説明される任意の装置内で生じるホットスポットに基づいて、入力混合ガスがホットスポットに向かうように、又はホットスポットから離れるようにシフトし得る。図示のように、プレナムCは、セル12内の電解質媒体21の上面21Aと流体連通する。本開示のいくつかの実施形態では、本装置は、入力混合ガスと断熱材22との接触経路長、ひいては接触時間を増加させるために、第1の表面22Cと第2の表面22Dとの間に回旋状流路を備え得る。
【0140】
[151]
図5Cに示すフレーム22Bは、断熱層22で作られた1つ以上の壁、例えば、断熱材22の20cm×20cmの4インチ厚のセクションと、フレーム22Aと同じ天井とを有し得る。
【0141】
[152] 装置10Aはまた、上面21Aの上方の電解空間BとプレナムDとの間にガス圧力差を確立するように構成され得る。セル12内のガス圧力は、確立されたガス圧力差が、断熱材22を通ってセル12内への炭素含有ガスの流量を増強し得るように、プレナムD内より低くされ得る。圧力差は、プレナムDに比べてセル12内の相対的なガス圧を低下させるダイヤフラムポンプなどの様々な機構によって引き起こされ得る。代替的又は追加的に、プレナム内Dのガス圧を高めるために、ブロワ又はファンもまた使用され得る。
【0142】
[153] 本開示のいくつかの実施形態では、装置10B及び10Cは、断熱材22を通ってプレナムC内への炭素含有ガスの移動を増強するために、プレナムDとプレナムCとの間にガス圧力差を確立するように構成される。例えば、プレナム内のガスは、プレナムC内のガス圧力より高いレベルまで加圧され得る。ダイヤフラムポンプ、ブロワ、又はファンが使用されて、プレナムDとプレナムCとの間にガス圧力差を確立することを助け得る。
【0143】
[154] 本開示のいくつかの実施形態では、セル12は、断熱材22の内面22Cと溶融電解質媒体21の上面21Aとの間に存在するガスの混合を引き起こすように構成され得る。例えば、セル12は、上面21A及び電解質媒体21の上方の気体の混合を助けるために、機械的混合、撹拌(agitation)、撹拌(stirring)、対流、通気、又はこれらの組み合わせのための1つ以上の機構を備え得る。
【0144】
[155] 本開示のいくつかの実施形態では、装置10A、10B、及び10Cは、入力混合ガスを濃縮するための機構を更に備え得る。例えば、装置10A、10B、及び10Cは、入力混合ガス内の炭素含有ガスの濃度を上昇させるために、渦管、ヒートポンプ、又はヒートエンジンを更に備え得る。
【0145】
[156] 本開示のいくつかの実施形態は、入力混合ガスから炭素含有ガスを選択的に回収し、そして回収されたガスからCNM生成物を生成するように構成された1つ以上のシステムに関する。
図6は、本開示の実施形態によるシステムの2つの例を示している。
図6Aは、少なくとも2つの装置10D及びコンポーネント10Eを備えるシステム200Aの非限定的な例を示している。装置10Dは、装置10A、10B、10C、及びこれらの組み合わせを含む、入力混合ガスからCO
2を選択的に回収し、回収されたCO
2から電解プロセスを用いてCNM生成物を生成するように構成された任意の装置を表す。コンポーネント10Eは、熱源及び装置10Dに電流を提供するための電力源を表す。
図6Aは3つの装置10Dを示しているが、システム200Aを構成する個別の装置10Dがより多数又はより少数存在してもよいことを理解されたい。このような装置10Dは個別のコンポーネント10Eを共有してもよいし、システム200Aに2つ以上のコンポーネント10Eが存在してもよい。
【0146】
[157]
図6Bは、1つの装置10Dが別の装置10Dの上に垂直に配置されて、少なくとも2つの装置10Dから構成された積層体10Fを形成した状態で少なくとも2つの装置10Dを備えるシステム200Bの非限定的な例を示している。少なくとも2つの装置10Dはコンポーネント10Eに動作可能に結合されてもよいし、システム200Bに2つ以上のコンポーネント10Eが存在してもよい。
図6Bは1つの積層体10Fを示しているが、システム200Bが2つ以上の積層体10Eを備えてもよいことを理解されたい。1つ以上の積層体10Fが所定のコンポーネント10Eに動作可能に結合されてもよいし、1つ以上の積層体10Fのそれぞれが専用のコンポーネント10Eに動作可能に結合されてもよい。
【0147】
[158] 本開示のいくつかの実施形態は、入力混合ガスから炭素含有ガスを選択的に回収し、回収されたガスからCNM生成物を生成するための1つ以上の方法に関する。本開示のいくつかの実施形態では、本明細書で説明される方法は、本明細書で説明される装置及びシステムを使用して動作され得るが、本方法の様々な実施形態は、そのような装置及びシステムに限定されない。
【0148】
[159]
図7は、プレナム内の入力混合ガスからCO
2を選択的に回収するための方法300を表す概略図を示している。方法300は、入力混合ガスと多孔質断熱材の外面との間に流体連通を確立するステップ302と、断熱材を通して第2のプレナム内にCO
2を通過させることにより、入力混合ガスからCO
2を選択的に回収するステップ304とを含む。方法300は、多孔質断熱材の内面と第2のプレナム内の電解質媒体との間に流体連通を確立するステップ306であって、電解質媒体がCO
2の回収を増強するように構成される、ステップ306を更に含む。方法300は、回収されたCO
2から生成されたカーボンナノマテリアル生成物を第2のプレナム内の電極から回収するステップ308を更に含む。方法300は、CO
2回収中に生成されるオフガス生成物を除去する任意選択のステップを更に含み得る。本開示のいくつかの実施形態では、方法300は、CO
2の回収において発生される又は必要とされる熱のバランスをとるために、熱を選択的に除去又は追加するステップを更に含む。
【0149】
[160] 本開示のいくつかの実施形態によれば、方法300は、入力混合ガスのガス圧が第2のプレナム内の回収されたガスより高くなるように、断熱材の両側間のガス圧差を確立するステップを更に含み得る。ガス圧力差は、ダイヤフラムポンプ、ブロワ、又はファンを使用して確立され得る。追加的又は代替的に、入力混合ガスが、ガス圧力差を確立するために加圧され得る。本開示のいくつかの実施形態では、第2のプレナムにおいた発生したオフガスが、入力混合ガスの温度より高温であり得る。本方法のいくつかの実施形態では、オフガス生成物がO2である。本開示のいくつかの実施形態では、オフガス生成物が、入力混合ガスの入力速度及び/又は第2のプレナム内へのCO2の選択的回収及び移動を補償又は強化する。方法300のいくつかの実施形態は、オフガス生成物から入力混合ガスに熱エネルギーを伝達するステップを含む。方法300のいくつかの実施形態では、多孔質断熱材の気孔率は、CO2が断熱材を通って移動することによって選択的に回収される速度、及び熱が断熱材を通って移動し得る速度を変更するように調整可能である。
【0150】
[161] 方法300のいくつかの実施形態では、多孔質断熱材の内面が電解質媒体に直接接触し得る。方法300の他の実施形態では、方法300は、多孔質断熱材の内面を電解質媒体の上面から所定の距離だけ離して配置することを更に含む。
【0151】
[162] 本開示のいくつかの実施形態は、第1の端部及び第2の端部を有する断熱材間プレナムを画定するために、非多孔質外壁媒体を多孔質断熱材の周囲に配置する方法ステップを含み、断熱材間プレナムが、第1の端部において入力混合ガスを受け入れるように構成される。任意選択で、非多孔質外壁媒体はまた、断熱材である。
【0152】
[163] 本開示のいくつかの実施形態では、方法300は、ヒートポンプ又はヒートエンジンが入力混合ガス、電解質媒体、又はこれらの組み合わせを加熱するために使用されるなど、外部デバイスを加熱する又は、これに電力供給するために第2のプレナムにおいて発生された熱を使用するステップを更に含む。追加的又は代替的に、ジュール熱、産業廃熱、太陽熱、地熱、排熱、又はこれらの組み合わせが、入力混合ガス、電解質媒体、又はこれらの組み合わせを加熱するために使用され得る。
【0153】
[164] 本開示のいくつかの実施形態では、方法300が、機械的混合、撹拌(agitation)、撹拌(stirring)、対流、通気、又はこれらの組み合わせを介して電解質媒体と共に、第2のプレナムのガス内容物を混合するステップを更に含む。
【0154】
[165] 本開示のいくつかの実施形態では、本方法300が、電解質を加熱して溶融電解質媒体を得るステップと、第2のプレナム内の電解セルのアノードとカソードとの間に溶融電解質媒体を配置するステップと、入力混合ガス内のCO2を少なくとも溶融電解質媒体により選択的に加熱するステップと、選択的に加熱されたCO2を電解で分解するためにセル内のカソード及びアノードに電流を印加するステップと、セルのカソードからカーボンナノマテリアル生成物を回収するステップとを更に含む。
【0155】
[166] 本開示のいくつかの実施形態では、本方法300が、溶融電解質媒体内でO2生成物を生成するステップを更に含む。O2生成物が、溶融電解質媒体を混合するための溶融電解質媒体内の対流を強化し得る。
【0156】
[167] 本開示のいくつかの実施形態では、方法300のCNM生成物が、カーボンナノチューブ、カーボンナノオニオン、ナノフラワー、ナノツリー、ナノベルト、プレートレット、ナノスキャフォールド、ヘリックス、グラフェン、ドープカーボンナノマテリアル、磁性カーボンナノマテリアル、アモルファスカーボン、又はこれらの組み合わせを含む。本開示のいくつかの実施形態では、方法300が、電解質媒体の温度、CO2速度、電流、電圧、カソードの組成、アノードの組成、又は電解質媒体の組成を変えることによって、CNM生成物内の構成炭素ナノ構造の相対量を選択するステップを更に含む。
【0157】
[168] 本明細書で使用される場合、「CNM生成物中の構成炭素ナノ構造の相対量を選択すること」とは、電気合成CNM生成物の形態を制御することに寄与する任意のステップを指す。本開示のいくつかの実施形態では、CNMの選択される形態としては、以下のCNM形態、すなわち、カーボンナノオニオン、カーボンナノスキャフォールド、カーボンナノスフェア、カーボンナノヘリックス、カーボンナノプレートレット、グラフェン、又はこれらの組み合わせが挙げられる。本開示のいくつかの実施形態では、ナノマテリアル形態を選択するステップは、部分的に、大部分が、実質的にすべて、又はすべてが単一のCNM形態である電気合成CNM生成物をもたらし得る。例えば、ナノマテリアル形態を選択するステップは、部分的に、大部分が、実質的にすべて、又はすべてがカーボンナノオニオン、カーボンナノスキャフォールド、カーボンナノスフェア、カーボンナノヘリックス、カーボンナノプレートレット、又はグラフェンである電気合成CNM生成物を生成し得る。
【0158】
[169] 本開示のいくつかの実施形態では、ナノマテリアル形態を選択するステップは、カソード及びアノードに電流を交流電流(AC)として印加することを含む。例えば、AC電解電流は、ナノオニオン形態を有するCNM生成物を選択し得る。
【0159】
[170] 別の実施形態では、ナノマテリアル形態を選択するステップは、溶融炭酸塩電解質にZnOを添加することと、グラフェンプレートレット形態を有するCNM生成物のために選択し得るAC電解電流を印加することとを含む。
【0160】
[171] 別の実施形態では、ナノマテリアル形態を選択するステップは、溶融炭酸塩電解質にMgOを添加することと、中空カーボンナノスフェア生成物のための電流を選択することとを含む。
【0161】
[172] ニッケル粉末の添加などの遷移金属核形成成長は、明確に観測可能なCNT壁をもたらし得る。しかしながら、これらの核生成添加剤が合成において意図的に除外される場合、カーボンナノオニオン及びグラフェンの高収率合成が達成される。電気合成プロセスのパラメータにおけるこれらの違いは、電気合成CNM生成物がどのように選択され得るかのほんの一例に過ぎない。
【0162】
[173] 本開示のいくつかの実施形態では、方法300は、限定されるものではないが、太陽光、風力、水力、地熱、潮力、波力、原子力、又はこれらの組み合わせを含む非化石エネルギー供給源によって電流をセルに供給するステップを更に含む。
【0163】
[174] 本開示のいくつかの実施形態では、方法300は、電解質媒体を予熱することによって、溶融電解質媒体を活性化させるステップと、電解質媒体に酸化物を添加するステップと、複数の電解プロセスに電解質媒体を再使用するステップと、溶融電解質媒体を時間平衡化するステップとのうちの1つ以上のステップを更に含む。
【実施例】
【0164】
実施例
[175] 以下に説明される実施例及び実験は、多孔質断熱材を通るCO2の正味の選択的通過による入力混合ガスからのCO2の直接回収と、回収されたCO2からのCNM生成物の生成に関する。いかなる特定の理論にも縛られるものではないが、CO2の正味の選択的通過は、少なくとも部分的には、媒体の炭素に対する親和性が、入力混合ガスの他の構成ガスに対する媒体の親和性より高くなり得ることに起因する。これらの実施例は、本開示の実施形態を説明するために提供されたものであり、いかなる仕方によっても本開示の範囲を限定するものとして解釈されるものではない。
【0165】
[176]実施例1-断熱材を通るCO
2の通過
[177]
図10は、装置構成の概略図と、本開示の断熱材を通ってCO
2が容易に流れることを実証した実験において得られたデータとを示している。
図10Aは、下部多孔質開放流路断熱材122Bによって上部チャンバ100Aと下部チャンバ100Bとに分離した、直径約4インチ(1インチは約2.54cmに等しい)の流体密閉容器100を示している。任意選択で、上部チャンバ100Aには、容器100の外部の空気と流体連通する上部断熱材122Aも設けた。別段の記載のない限り、断熱材122A及び122Bは、それぞれ2インチ厚の1立方フィート当たり8lbポンドの密度のDurablanket(登録商標)である多孔質断熱セパレータである。上部チャンバ100Aは、ガス供給ライン102を介して入力混合ガスを受け入れた。下部チャンバ100Bには、下部チャンバ100B内のCO
2レベルを測定及び報告するためのCO
2センサ104(CO2meter.comから市販されているタイプなど)を収容した。下部チャンバ100Bには、最初、純粋なN
2のみが収容され、CO
2はなかった。
【0166】
[178]
図10Bは、2つの実験セットアップを示しており、上段パネルに示されたセットアップは、供給ライン102を介して上部チャンバ100A内に100%のCO
2を受け入れた。
図10Bの上段パネルでは、上部チャンバ100Aは上部断熱材122Aを備えていたが、下段パネルでは、上部チャンバ100Aは上部断熱材122Aを備えていない。
図10Bの実験セットアップにおいて使用されたセンサ104は、0~100%の感度のCO
2センサであった。
図10Bの下段パネルでは、上部チャンバ100Aには、最初、100%のCO
2を充填した。
図10Bの上段パネル及び下段パネルのそれぞれはまた、下部チャンバ100Bにおいて経時的に測定された実験で得られたCO
2レベルを示す折れ線グラフをそれぞれ含む。
【0167】
[179] 上段パネル
図10Bに示すように、純粋なCO
2の入力混合ガスが1L/分の流量で上部チャンバ100Aに導入されると、下部チャンバ100BにおけるCO
2濃度は約15分で0から100%まで上昇し、流れを停止させるとCO
2濃度は徐々に低下した。
図10Bの下段パネルに示すように、上部チャンバに100%のCO
2を充填したとき、下部チャンバのCO
2濃度は、約24分で0から約62%まで上昇した。CO
2はN
2より密度が高く、このことは、上部チャンバ100Aと比べて、下部チャンバ100Bにおける濃度上昇を促進し得る。1モルのCO
2に対するN
2の相対ガス密度は、これらの式量の比によって与えられ、28/44=63.6%である。
【0168】
[180]
図10Cは、3つの実験セットアップを示しており、そのうちの2つが、供給ライン102を介して様々な流量で圧縮空気(約418ppmのCO
2レベルのもの)を受け入れ、0~1%の感度のCO
2センサを使用した。
図10Cの上段パネルは、下部チャンバ100B、下部断熱材122Bのみを示しており、断熱材102の上に6.2L/分の速度(330cm/sの風速に相当)で圧縮空気を送達した。
図10Cの上段パネルに示すように、チャンバ内のCO
2の濃度は、約29分で0(純粋なN
2)から約410ppmまで上昇した。
【0169】
[181]
図10Cの中段パネルにおいて、実験セットアップは、上部断熱材122Aと、下部断熱材122Bによって下部チャンバ100Bから分離された上部チャンバ100Aとを備えた。
図10Cの中段パネルの上の折れ線グラフは、0.624L/分の速度(33cm/sの風速に相当)で空気を導入したときに下部チャンバ100Aにおいて経時的に検出されたCO
2レベルを示している。下部チャンバのCO
2濃度は、約45分で0から約395ppmまで上昇した。
図10Cの中段パネルの下の折れ線グラフは、6.2L/分の速度で空気を導入したときに下部チャンバ100Aにおいて経時的に検出されたCO
2レベルを示している。下部チャンバのCO
2濃度は、約10分で0から約395ppmまで上昇した。
【0170】
[182] いかなる特定の理論にも縛られるものではないが、より厚い多孔質の断熱層は、CO2濃度の上昇速度を遅らせ得る。興味深いことに、その逆の現象の発生が観測された。同じ試験チャンバにおいて、2インチの断熱材を8インチ(2インチの層を4枚重ねたもの)の断熱材に置き換えて、上部チャンバと下部チャンバとを分離した(図示せず)。上部区画の空気からのCO2は、0.624又は6.2L空気/分の流量で、それぞれ約20分又は2.5分で395ppmレベルに達した。いかなる特定の理論にも縛られるものではないが、より厚い断熱材が使用された場合に、より短時間で下部チャンバ100B中のCO2濃度において観察された上昇は、下部チャンバ100Bの高さが実質的に減少し、これにより下部チャンバ100Bの体積が減少し、元のN2のより迅速な交換が可能になったことに関連し得る。
【0171】
[183]
図10Cの下段パネルは更なる実験セットアップを示しており、このセットアップでは、密閉された上部チャンバ100Aを100%の空気で充填した後、下部チャンバ100BにおけるCO
2濃度は約18分間で0から約240ppmまで上昇した。
【0172】
[184] いかなる特定の理論にも縛られるものではないが、
図10に示すすべての実験セットアップが、空気又は純粋なCO
2に由来するCO
2の多孔質開放流路断熱材の通過を実証している。
【0173】
[185] この後に説明される各電解プロセスのそれぞれについて、電解の前後における理論的な質量の変化は、以下を用いて計算される。
Q=アンペア時(Ah)の単位による、測定された印加電解電荷、
n=4。式2の電解において移動した電子、
F=ファラデー定数=電子1モル当たり96485C=電子1モル当たり26.801Ah、
FW(C)、FW(O2)、及びFW(CO2)=式量炭素、O2、又はCO2、すなわち、それぞれ、12.01、32.00、又は44.01g/mol。
【0174】
[186]実施例2-CO
2の非存在下及び存在下での炭酸塩電解
[187] 本実験実証は、2つの電解構成から構成される。
図4Aに示すように、第1の構成400では、溶融炭酸塩電解質媒体404と電解電極406とを収容する電解チャンバ402をシール部材408によって密閉した。固体断熱材で作られたハウジング405に電解チャンバ402を収容した。電解中、空気はチャンバに入ることはできず、電解プロセス中、炭酸塩電解質媒体404を再生するための追加のCO
2は利用できなかった。圧力開放弁により、シール部材408の下方及びハウジング405の上方に延びるパイプ410を通して、電解プロセス中にO
2を放出可能とした。追加のCO
2がないため、式2にしたがって、炭酸電解質媒体のレベルは、電解プロセス中、電解セル402内で低下した。電極406と電解質媒体404との合計測定質量を、電解電荷の通過前後に測定した。CO
2がない場合、合計質量は、酸素が発生するにつれて減少することが認められた。
【0175】
[188] 具体的には、CO
2なしの実験を実施した。(
図4Aに示すように)以下の動作パラメータを用いて構成400を実行した。
・ケース:4インチ×6インチのステンレス鋼304のるつぼ。内壁がアノードとして機能する。
・アノード/電極:ニクロムC 約6cm×6cm
・カソード/電極:真鍮 約6cm×6cm
・電解質媒体:Li
2CO
3
・温度:750℃
・電流:8.4アンペア(電流密度=0.2A/cm
2)
・電解時間:20時間
【0176】
[189] 8.4アンペア×20時間=168Ahの電解電荷の通過前後でセル、電解質、及び電極を合わせた質量を測定した。168Ahは、式2にしたがって質量=Q/nFをn=4及びF=9.6485×104Asを用いて計算すると、1.567モルの炭酸塩を還元できる。構成400の密閉セルでは、CO2の交換がなければ、密閉セルは、式2にしたがって、1.567mol×32g(1モル当たりのO2)として、O2の損失に起因して約50gの質量を失うはずである。密閉セルにおける電解の後、測定されたセル質量損失は約48gであり、理論損失である50gの96%であった。
【0177】
[190] いかなる理論にも縛られるものではないが、式3にしたがって酸化物が増加すると、最後に残ったわずかなO2を発生させるのが難しくなり得る。例えば、O2+酸化物又は炭酸塩と組み合わされた競合平衡が生じて、O2の継続的な放出を抑制する化学種が発生し得る。
【0178】
[191] (
図4Bに示す)第2の構成400Aでは、多孔質断熱材412を通して空気に由来するCO
2を電解チャンバ402に流入させた。具体的には、電解チャンバ402の上部を密閉せず、電解質媒体404の10倍の表面積を有する多孔質断熱材412を電解チャンバ402内に上面として露出させた。(
図5Bに示すような)非密閉構成400Aを用いて、同じタイプの電極、及び同じ750℃のLi
2CO
3電解質媒体をセル402としてステンレス鋼304ケースに有して、同様に0.2A/cm2の電流密度で、多孔質を上に載せた実験を同様に実施した。カバーは、空気から電解セル402内へのCO
2の通過を可能にする、2インチ厚の多孔質Durablanket(登録商標)から構成される。
【0179】
[192] 多孔質断熱材412を有する非密閉構成400Aを用いると、式1と式2との和である式2と一致し、電解セル402、電極406、及び炭酸塩電解質媒体404の測定される質量は、CO2が吸収され、電解質媒体404を再生するために反応するにつれて増加した。入力CO2からは、O2だけがシステムから出て行く。電解で分解されたCO2は、カソード上に固体CNM生成物として残り、アノードからは酸素として発生される。この電解プロセスの間、多孔質断熱材の外側は、周囲空気温度付近である冷たさを保つことが観測され、構成400を用いて行われた電解プロセス後の48gのセル質量の損失が阻止された。
【0180】
[193]実施例3-CO2の回収及びCNM生成物の生成
[194] 空気からCO2を回収し、CO2を電解により分解することによってCNM生成物を生成することを調べる更なる実験を以下の動作パラメータで行った。
・ケース:1.2インチ×4インチ×6インチのステンレス鋼304のるつぼ。内壁がアノードとして機能する。
・カソード/電極:真鍮 5cm×6cm(2つの面が活性)
・電解質媒体:Li2CO3、電極浸漬の前に、電解質を24時間加熱した。
・温度:750℃
・電流:2アンペア(電流密度=0.04A/cm2)
・電解時間:9時間
【0181】
[195] これらの実験は、電解の前後でセルの質量を測定することから構成される。セルの質量には、セル、電解質、及び電極の質量を含めた。
【0182】
[196] 周囲空気温度は21℃から23℃まで変動した。0.01gの分解能のRadwag R Series Precision balanceを用いて質量を測定した。セルの質量は、断熱材によって天秤プラットフォームから高くされていたが、天秤は、熱に弱く、実験での質量変化における数パーセントの誤差の主要因であった。
【0183】
[197] CNM生成物に起因する理論的な質量増加は、式2及び3にしたがって、nF×FW(C)である。これは、式1にしたがって、消費された炭酸塩をすべて再生するのに十分なCO2が存在するという条件下でのみ、電極及び電解質を含む完全なセルの理論的なセル質量増加と同じである。式2にしたがうO2に起因する理論的質量損失は、nF×FW(O2)である。これは、式1にしたがって、消費された炭酸塩を再生するのにCO2が存在しないという条件下でのみ、理論的なセル質量損失と同じである。
【0184】
[198]実施例3A
[199]
図5Aは、上記の回収及びCNM生成実験に使用される装置10Aの構成を示している。装置10Aは、セル12と、セル12の内壁面の少なくとも一部を形成するアノード16と、カソード18とを備えた。アノード16及びカソード18は、電解質媒体21を溶融状態で収容し、これにより電解質媒体21の上面21Aを画定した電解空間Bを画定した。セル質量を測定するために、0.01gの分解能のRadwag R Series Precision balanceなどの秤の上にある断熱材のベース14の上にセル12を支持した。断熱ハウジング20の断熱プレナムA内にセル12を収容した。断熱材22は、8pcfの密度を有する2インチ厚の一片のDurablanket(登録商標)であった。上面21Aが断熱材22の一部を通してプレナムDと流体連通するように、周囲空気のプレナムDに装置10Aを配置した。
【0185】
[200] 炭酸塩の分解(式2)だけでなく、CO2の進入及び分解(式1及び式2の正味収支からの式3の反応)に起因する相対的な反応を測定する電解実験が、吸収されたすべてのCO2(式3)と比較して、又はブロックされたすべてのCO2として分析され得る。後者は、O2発生の質量損失をもたらす(式2)。これは、電解前後のセル質量の変化Dmセルとして測定される。
【0186】
[201] 炭酸塩の分解と比較したCO2の分解の優勢の程度がここでは2つの異なる仕方で表現される。式9a及び式9bで表される、第1番目は、炭素(CO2吸収)又は酸素発生(炭酸塩分解)から予想される負の質量に変換された、測定された電解電荷に対するDmセルである。式10の第2番目は、電解に必要なCO2と比べて、吸収されたCO2のパーセントを測定する。これは、炭素に酸素を加えたもの(CO2)に変換された電解電荷と比較して、起こり得る最大のO2損失と結合したDmセルで与えられる。式4a、4b、及び5を以下に示す。
DC=100×Dmセル/(nF×FW(C) (式9a)
DO2=-100×Dmセル/(nF×FW(O2) (式9b)
DCO2=100×(Dmセル+(nF×FW(O2))/(nF×FW(CO2) (式10)
【0187】
[202] 装置10Aの開放構成では、予想される結果は、正味の電解であり、十分なCO2の入力がない場合の不十分なCO2に応じたセル質量の損失であった(式11参照):
Li2CO3→CNM生成物(y)+Li2O(y)+O2↑、
y=セルに留まるもの、↑=セルを離れるガス (式11)
【0188】
[203] 装置10Aの構成では、CO2がセルに入るための最小限の入り口がある場合、つまり、O2の電解オフガス生成物がセルから出ることを可能にすることが主な機能である多孔性断熱材の小さなセクションを通るだけである場合、観測された結果は、2262.50gの電解前のセル質量及び2257.50gの電解後のセル質量であった。電解後の質量損失は、電解前のセル質量より約5g低かった。
【0189】
[204] CO2の入力を最小限に抑えた状態での、O2としての理論的な質量損失は次のとおりである:
O21モル当たり32.00g×2A×9h/4F=5.37gの損失(O2の発生による)
【0190】
[205] 酸素の変化DO2は約93%であった(酸素の発生を示す)。
【0191】
[206] CO2としての理論的な質量は次のとおりである:
CO21モル当たり44.01g×2A×9h/4F=7.38g
【0192】
[207] CO2の変化DCO462は約5%であった(CO2のわずかな46吸収を示す)。いかなる特定の理論にも縛られるものではないが、CNM生成物はn(e-)=4でカソード上に残ったが、アノードはセル12から発生したO2を生成した。
【0193】
[208]実施例3B
[209]
図5Bは、上記の回収及びCNM生成実験に同様に使用された第2の装置10Bを示している。使用した断熱材22は、ここでも、8pcfの密度の2インチ厚の一片のDurablanket(登録商標)であったが、今度は、電解質媒体21へのCO
2のアクセス及び吸収を高めるために、入力混合ガスの供給源と電解質表面21Aとの間に配置された壁及び天井から構成されたより大きな表面積を有した。フレーム22Aを備えた
図5Bに示す装置10Bでは、予想される結果は正味の電解であり、CO
2が断熱材を通って拡散することにより、式12、13、及び14にしたがって、電解質媒体21内の炭素の少なくとも部分的な再生に起因してセル質量を増加させる。
Li
2CO
3→C
CNT(y)+Li
2O(y)+O
2↑(ガス放出)、y=セルに留まるもの (式12)
CO
2(空気)+Li
2O(y)→Li
2CO
3 (式13)
正味:CO
2(空気)→C
CNT(y)+O
2↑ (式14)
【0194】
[210] フレーム22Aを有する装置10Bの開放構成では、観測された結果は、2137.67gの電解前のセル質量及び2138.81gの電解後のセル質量であった。実施例3Aにおいて生じた測定された質量損失とは対照的に、本実施例では質量増加が測定され、電解後の質量は電解前のセル質量より約1.14g多かった。Cとしての理論的な質量増加は次のとおりである:
C1モル当たり12.01g×2A×9h/4F=2.01gの増加(CNM生成物として)
理論値と比較して、炭素の変化DCは約57%であった。
【0195】
[211] 更に、実施例3Aで計算したCO2の理論質量と比較して、CO2の変化DCO2は約88%であった。いかなる特定の理論にも縛られるものではないが、電解質媒体21内のLi2CO3は、セル12に残ったCO2からの炭素を用いて再生される。CNM生成物は、n(e-)=4によりカソード18上に残って、セル質量の増加の主要因となる。
【0196】
[212]実施例3C
[213]
図5Cは、上記の回収及びCNM生成実験に使用した第3の装置10Cを示している。断熱材22は、2インチ厚の一片の8pcfの密度のDurablanket(登録商標)であり、表面が拡張されて、今度は、空気の流路を形成している状態のものであった。固体断熱材壁及び内側の多孔質断熱材壁によって形成された流路を通して空気を流すことによって、多孔質断熱材と空気及びそのCO
2の正味の接触を改善し得る。ハウジング24及びフレーム22Bを備えた装置10Cでは、予想される結果は、実施例2Bと同様の正味の電解であった。
【0197】
[214] 装置10Cの開放構成では、観測された結果は、2241.13gの電解前のセル質量及び2243.16gの電解後のセル質量であった。電解後の質量は、電解前のセル質量より約2.03g多かった。炭素の変化の変化DCは約101%であり、CO2の変化DCO2は約100%であった。いかなる理論にも縛られるものではないが、断熱材を通るCO2の拡散速度は、断熱材の厚さが減少すると略直線的に増加し、断熱材の密度が低下すると略直線的に増加する。したがって、同等の断熱材であるが、8pcfではなく4pcfであり、2インチではなく0.5インチの厚さを使用することにより、DCO2が高い場合の持続可能電流を、2アンペアではなく約16アンペアに増加させ得る。
【0198】
[215] いかなる特定の理論にも縛られるものではないがでは、増加したセル質量は、電解質媒体21内のLi2CO3がセル12内に引き込まれたCO2によって少なくとも部分的に再生され、そのCO2からの炭素がCNM生成物を生成するためにセル12に残っているために生じた可能性がある。増加したセル質量は、プレナムD、プレナムC、そして最終的には電解空間B内のCO2に由来する増加したCNM生成物に起因する。
【0199】
[216]実施例4-媒体の活性化
[217] 電解質媒体は、入力混合ガスから回収されたCO2の消費を開始するために活性化を必要とし得る。750℃において、平衡に達すると、純粋なLi2CO3は、Li2CO3中において約0.3モーラルのLi2O濃度で平衡化し、0.33モーラルのLi2Oと混合した純粋なLi2CO3の質量変化は4時間にわたって測定されなかった。したがって、いかなる理論にも縛られるものではないが、平衡は式15にしたがって維持される:
【0200】
【0201】
[219] この消費は、例えば式1及び電解消費によって、CO2が気相から溶融炭酸リチウム電解質媒体に移動することによって駆動され得る。いかなる理論にも縛られるものではないが、CO2が消費されなければ、式2にしたがって、電解質媒体は消費され、CO2によって再生されない。電解質媒体は、(式1及び式2の正味収支にしたがうのではなく)式2にしたがって酸素が発生するにつれて電解分解し、重量が減少し得る。
【0202】
[220] 電解質の活性化を伴わない例では、高純度アルミナ(Al2O3)るつぼに収容した溶融Li2CO3が、溶融電解質中での電解においてCO2の吸収に対して不活性に作用した。具体的には、新しい溶融Li2CO3は、空気中の入る気相のCO2の溶融電解質への連続的な電解消費を開始するために活性化される必要性を呈した。一例では、高純度アルミナ(Al2O3)るつぼ内の高温空気に開放された溶融炭酸リチウムは、溶融電解質中に金属(12.5%鋳鉄)を含むか否かにかかわらず、電解中のCO2吸収に対して不活性である。具体的には、新しい電解質は、NiCrCアノードとムンツ(Muntz)真鍮カソードとの間で750°、0.2A/cm2で4時間電解した後、式2から予想されるように、カソード上に良好な炭素析出を示したが、電解の前後で測定されたセルの総質量は、十分なCO2吸収で予想されるように増加するのではなく、むしろ減少した。CO2の変化は、式1に示すように、酸素吸収がないことによるものであった、又は炭酸塩電解質当たりのCO2の再生によるものであった。
【0203】
[221] 同じ電解質を再使用しながら(これは、平衡活性化の第1の段階にあると考えられ得る)、セルで4時間の電解を繰り返すと、CO2がわずかに吸収された(DCO2により測定したところ、3%上昇した)。この3%は、電解中に炭酸塩を再生する、不完全な電解質のCO2連続活性化の開始を示した。しかしながら、純粋なLi2CO3電解質は、電極浸漬及び電解前に電解質を750℃で24時間(平衡化時間)加熱すると、実質的に活性化された。この活性化ステップによって、CO2の変化は約81%に増加した。同様に、Li2CO3と十分なLi2O(5wt%)をアルミナではなくステンレス鋼304るつぼにおいて、電解時間後の平衡化を待つことなく混合すると、新しい溶融電解質中のCO2の変化は約99%に増加し、略完全にCO2が吸収されたことを示す。純粋なLi2CO3での時間平衡活性化なしの電解と同様に、10wt%のNa2CO3と混合した新しいLi2CO3、又は3wt%及び1.3wt%のCaOと混合した新しいLi2CO3は、4時間の電解中にCO2吸収の質量ベースの証拠を示さなかった。電解質は、CO2吸収速度及びCNM生成物の両方に影響を与えるために金属塩、金属、他の添加物によって改質され得る
【0204】
[222] CO2の電解質活性化による吸収の他の2つの例をここで述べる。電解質の再使用により、電解質平衡化の時間が長くなり得、推定されるように、CO2吸収における観測される増加がもたらされ、具体的には、1wt%のLi2Oを含む750℃のLi2CO3での電解後、電解質の再使用によりCO2の変化は38%から91%に増加した。第2に、セルの上部に対する、またCO2の内向流に近接する電解質の上面は、観測されたCO2の測定された変化に直接関係する。気相が低位の電解質(セル上部より下方)に浸された電解電極と相互作用した場合、非常に低い値のCO2の変化が観測され、溶融電解質媒体の上面のすぐ上方にCO2が枯渇した「デッドゾーン」があることを示唆している。いかなる理論にも縛られるものではないが、このデッドゾーンは、電解中に気相CO2にアクセスすることなく電解中に離れるガスの流れ(表面から上昇)に関連し得る。あるケースでは、この枯渇は、電解質の分解が式2の電解に起因するものを超え明らかに発生し、非常に大きいことが観察され、CO2濃度が、いかなる理論にも縛られるものではないが、炭酸塩は式11にしたがって更に分解され得るほど電解質媒体の表面の上方で非常に低くなった。この更なる炭酸塩の分解は、電解質がCNM生成物を生成するためにCO2を使用するのではなく、更なる質量損失及びCO2の流出につながり得る。るつぼ中の電解質が低く置かれた電解の場合、CO2の変化は-39%と測定された。
【0205】
[223]実施例5-入力ガスの流れの変更
[224] 電解質媒体から分離された多孔質断熱材の上に、(例えば、風を導く、更なるファン、ブロワ、風レンズ、風フォーカスを追加する、又は対流を駆動することによって)入力ガスの流れを誘導又は強化することもまた、電解プロセスによる空気中のCO
2などの炭素含有入力ガスの消費に影響を与え得る。したがって、関連する例として、ステンレス鋼304るつぼ中で24時間平衡化された1wt%のLi
2Oを含む750℃のLi
2CO
3を含んだ電解質媒体を用いて
図5Cのような構成を使用した。その後、電解プロセスが、0m/s、1.5m/s、又は2.5m/sのいずれかの空気速度で行われ、CO
2の変化はそれぞれ38%、89%、及び100%であった。より大きな風速の場合では、実質的に完全なCO
2の吸収を示した。
【0206】
[225] 別の実施例において、(i)空気の吹き込み、(ii)金属るつぼ、及び(iii)低レベルの添加Li2O(3 1/3wt%)を組み合わせて存在させたが、電解質には時間平衡化したものではなく新しいものを使用した結果では、CO2の吸収量は依然として約8%と比較的低い結果であったことに留意されたい。
【0207】
[226]実施例6-電流密度の変更
[227] 電解の電流密度であるJ電解もまた、CO2の変化の大きさに影響を与え得る。Jが高いほど、CO2の流入速度が大きくなる。したがって、先の条件下では、入る空気速度が2.5m/sの場合、J電解が0.042A/cm2ではCO2吸収率は約100%であったが、同じ空気速度でJ電解が0.15A/cm2ではCO2吸収率は55%と測定された。
【0208】
[228]実施例7-断熱材表面積の増加
[229] 断熱材22の第1の面22Cの表面積を増加させることによって、例えば第1の面22Cの輪郭形成によって、断熱材22を通るCO2の正味の通過及び媒体21内へのCO2の吸収率を増加させることができる。断熱材22の実質的に平坦な第2の面22Dを維持することは、プレナムCから外部への熱流を最小限に抑えるという付加的な利点を有し得る。第1の面22Cの表面積を増加させることは、限定されるものではないが、巨視的(幾何学的)、微視的(表面粗面化)、及び第1の面22Cへの分子集合体の結合などのナノスコピック技法/方法などの、多種多様な公知の輪郭形成技法によって実現され得る。例えば、断熱材22の第1の面22Cの活性表面積は、「ルースフィル」、吹き込まれたファイバガラス、ホウ酸塩でコーティングされたセルロース又はセラミック断熱材の層を追加することによって増加され得る。この層は、第1の面22C上におおまかに分配され、その後、第1の面22Cの表面積を最大にするために、平坦又は形状成形されたスクリーンによって閉じ込められ得る。
【0209】
[230] 第1の面22Cを輪郭形成する別の例は、巨視的な「ディンプル」表面強化である。
図11に示すように、第1の面22Cは、複数のディンプル間流路502を画定する複数のディンプル500を形成する様々な方法によって輪郭形成され得る。
図11に示すディンプル500は凸状であり、第2の面22Dから離れて延びることを意味し、また凹状であって、第2の面22Cに向かって延びる、又はこれらの組み合わせであってもよい。複数のディンプル間流路502は一緒に、入力混合ガスが流れ得る入り組んだディンプル間流路506を画定する。複数のディンプル502はまた、透過性断熱材に接触してディンプル間流路502内を流れるのとは代替的又は追加的に、入力混合ガスが凸状若しくは凹状のディンプル上を流れることができるディンプル上流路508を画定する。
【0210】
[231] 2次元の第1の面22Cの表面積はまた、巨視的方法、微視的方法、又はナノスコピックな方法で増強され得る。微視的表面積強化のための方法の非限定的な例としては、機械的、物理的、光学的、電気的、電気化学的、又は熱的方法によって第1の面22Cを粗面化することが挙げられる。表面積の微視的増加及びナノスコピックな増加はまた、第1の面22C上への化学蒸着、化学反応、化学的又は電気化学的エッチングなどの第1の面22Cの化学処理によって実現され得る。
【0211】
[232] いかなる特定の理論にも縛られるものではないが、巨視的方法、微視的方法、又はこれらの組み合わせによって第1の面22Cの表面積を増加させることにより、CO2が断熱材22に入るための化学的親和性、物理的親和性、又はこれらの両方を提供することによって、第1の面22Cから第2の面22Dへ、そして媒体21内へのCO2の正味の選択的通過を増加させ得る。そして、断熱材22を通るCO2の正味の通過が増加したことにより、CO2が媒体21に吸収される量及び/又は速度が増加し得る。
【0212】
[233]実施例8-断熱材とハウジングとの間における流路の変更
[234]
図12Aは、(
図5Cに示す)装置10Cと同じ特徴の多くを有する装置10Dを示しており、装置Dは、ハウジング24の内面24Bと断熱材24の第1の面22Cとの間に画定された流路26Cの延長された/より長い経路長を画定する。ハウジング24は、本明細書で説明される1つ以上のシステムに装置を統合するのを助けるために、様々な異なる形状を取り得る外面24Aを有する。流路26Cは入力開口部26Aにおいて開始し、出力開口部26Bにおいて終わる。
図12Aに示すように、内面24Bは、外面24Aから離れ、且つ第1の面22Cに向かって延びる1つ以上の山24Cを画定し得る。内面24Bはまた、第1の面22Cから離れ、且つ外面24Aに向かって延びる1つ以上の谷24Dを画定し得る。
【0213】
[235] 追加的又は代替的に、断熱材22の第1の面22Cは、内面24Bに向かって延び、且つ第2の面22Dから離れる1つ以上の山22Eを画定し得る。第1の面22Cはまた、内面24Bから離れ、且つ第2の面22Dに向かって延びる1つ以上の谷22Fを画定し得る。
【0214】
[236] 流路26C内でハウジング24の内面24B、断熱材22の第1の面22C、又はこれらの両方によって画定される山及び/又は谷の存在は、入力混合ガスが第1の面22Cに沿って流れる距離を増やすことによって、断熱材22を通って媒体21内へのCO
2の正味の選択的な通過を強化し得る。流路26Cが回り道であることにより、流路26C内の入力混合ガスの流れは、この流れが入力開口部26A(ここでは、入力混合ガスが、供給源における入力混合ガスと実質的に同じ構成ガスを有し得る)から断熱材22の第1の面22C上を通過して出力開口部26B(ここでは、流路26C内のガスが、CO
2などの炭素含有ガスが枯渇し、任意選択で、高温のO
2などのセル12内で生成されたオフガスで補充される)により出るように移動する際に1回以上方向転換され得る。回り道の流路26Cによって与えられる方向の変化は、入力混合ガス内の乱流を誘発し得る、及び/又は流路長を延長し得る。第1の面22C及び内面24Bが実質的に平坦又は平滑である場合と比較して、乱流及び延長された流路長のそれぞれが、入力混合ガスと断熱材22の第1の面22Cとの相互作用を強化することができ、また炭素含有ガスが流路26Aを出てプレナムCに入り、最終的に媒体21に入るための正味の選択的通過を強化することができる。本明細書では、この相互作用を最大化する様々な流路又は経路が企図され、
図12Aに示す流路26Cは限定するものではない。当業者には明らかなように、透過性断熱材を横切るガス入力流路の経路長は、様々な機械的及び幾何学的構成で増加すなわち延長され得る。更なる実施形態では、入力混合ガスは、より高温媒体へのCO
2の内向流を促進するために、周囲圧力より高い圧力で第1の面22Cを横切って流れるように、圧縮機によって圧縮され得る。
【0215】
[237]
図12Aは、電解プロセスのO
2オフガス生成物が、断熱材22の第2の面22Dから第1の面22Cを通過して、出力開口部26Bに向かうCO
2枯渇入力ガスと混合する排気流(
図12Aの矢印X参照)を形成する様子を示している。媒体21の表面21Aの上方では、アノード16に近接した領域でO
2電解オフガス生成物の発生が起こり、このオフガス生成物の局所的な回収が促進され得る。O
2電解オフガス生成物を回収し、これを入力混合ガスから分離するための様々な手法が当業者によって想定され得、限定するものではないが、オフガス生成物を回収し、分離するための1つの手法を
図12Bに示す。
【0216】
[238]
図12Bは、O
2オフガス生成物の排気流が排気導管30内に回収され、排気開口部26Cによって装置10Dから出るCO
2枯渇入力ガスから分離される様子を示している。排気導管30は、プレナムCとプレナムDとの間を流体連通させる。或いは、排気導管30は、プレナムCと酸素オフガス生成物の更なる使用を助けるシステムとの間を流体連通させるために、輸送及び/又は貯留システム(図示せず)に結合され得る。排気導管Xは、排気流X内の高温のオフガス生成物を含むプレナムC内の化学的環境及び温度環境に耐える様々な材料で作られ得る。本開示のいくつかの実施形態では、排気導管30は、排気導管30内の酸素オフガス生成物から熱エネルギーの一部、大部分、実質的に全部、又は全部を取り出し得る任意選択の熱交換器32を通して、高温の酸素オフガス生成物の排気流Xを導くことができる。熱交換器32は、回収された熱エネルギーをプレナムB、プレナムC、又はこれらの両方に伝達し得る。高温のO
2オフガス生成物の回収及び分離の利点は、(i)熱交換器32を介して熱の一部又は全部を装置に戻すことができること、並びに(ii)高純度のO
2生成物を様々な有用な工業プロセス及び/又は酸素燃料プロセスに導くことができることである。排気導管30及び任意選択の熱交換器32の使用は、装置10Dでの使用に限定されないことを当業者には理解されよう。高温の排気流を回収及び分離することは、本明細書で説明される様々な装置に採用され得、これらの装置は、本明細書で説明される様々なシステム及び方法に使用され得る。
【0217】
[239] 本開示のいくつかの実施形態では、断熱材22は、入力混合ガスの他の構成ガスより大きな流量の炭素含有ガスを優先的又は選択的に可能にするために変更されてもよい。例えば、透過性断熱材の分子構造が化学的に変更されて、断熱材22がそのように変更されていないときと比較して、他の非炭素含有構成ガス又はこれらの組み合わせの通過の容易さと比較して、炭素含有ガスがより容易に断熱材22を通過することを選択的に可能にするようにしてもよい。例えば、断熱材22が変更されて、ある非炭素含有ガスが断熱材に吸収又は吸着され得るように、したがって、これらの非炭素含有ガスが、媒体21に吸収されるためにプレナムCに入らないようにされてもよい。本開示のいくつかの実施形態では、断熱材は、入力混合ガスの構成成分であるどのガスが他の構成ガスより容易に断熱材を通過し得るかを選択する分子ふるいを組み込むように変更されてもよい。
【0218】
[240] いかなる特定の理論にも縛られるものではないが、上記の実施例は、入力混合ガスからCO2を選択的に回収すること、及び回収したものの内の炭素をCNM生成物の生成のために使用することを実証している。電解前のセル質量と電解後のセル質量との測定を含み、最初から最後まで実験を観測した。実験と計算を比較した。結果を検証した。実験では、入力混合ガスをすべて加熱する必要なく、セルが速度にロバストにアクセスできることが示された。高いCO2親和性の高温媒体を有する多孔質断熱材により、CO2の正味の選択的通過/拡散を可能にし、これは入力混合ガスからのCO2の選択的回収が起こった少なくとも1つのメカニズムである。表面吸着及び孔径の両方が、多孔質断熱材を横切るCO2/N2混合物のCO2拡散に影響を与えた。断熱材の多孔質構造は、回収されたCO2ガスと電解質媒体との相互作用を促進した。CO2に対する溶融電解質の高い親和性により、電解質媒体の上方の気相から電解質媒体内への正味の選択的移動が行われた。本明細書で説明された実験及び実施例は、CO2がセル内で吸収される程度に異なる構成が影響し得ることを実証している。実験により、CO2が枯渇するような構成及び動作条件、並びにセルの所定の動作条件に対して空気から十分なCO2が供給されるような構成及び動作条件が実証された。
【0219】
[241] 本明細書において先に提示された式によって支持されるように、CO2は、電解質媒体の溶融塩中の酸化物との反応を通じて、電解質媒体との発熱反応によって入力混合ガスから急速に吸収され、自然に濃縮され得る。CO2と電解質媒体との反応は、式1で表されるように、炭酸塩電解質媒体を連続的に再生し得る。実験結果は、(セクション2で説明した)式にしたがって、予想される質量の増加又は損失と一致している。全体的な正味の式(式3)によって表されるように、カソード上にCNM生成物の形態で蓄積された炭素に起因して、セルの質量増加が起こることが観測される。電解で生成された高温のO2も使用され得る。溶融炭酸塩電解におけるカソード関連CNM生成物へのCO2変換の程度を高め得るシステムの特徴としては、限定されるものではないが、空気又は風速の増加、より低い電流密度の使用、多孔質断熱材の変更、断熱材と電解質媒体の上面との間の間隔の調整、平衡時間の増加による電解質の活性化、電解質の再使用、酸化物濃度の増加、電解質媒体の上面を断熱材の内面に近づける配置、金属電解セルの使用、又はこれらの特徴の組み合わせが含まれる。
【図 】