(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-25
(45)【発行日】2025-04-02
(54)【発明の名称】搬送ロボット及び部品実装システム
(51)【国際特許分類】
H05K 13/02 20060101AFI20250326BHJP
B65G 1/00 20060101ALI20250326BHJP
【FI】
H05K13/02 A
B65G1/00 501C
(21)【出願番号】P 2023566065
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(86)【国際出願番号】 JP2021045670
(87)【国際公開番号】W WO2023105794
(87)【国際公開日】2023-06-15
【審査請求日】2024-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004303
【氏名又は名称】弁理士法人三協国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 尚也
(72)【発明者】
【氏名】柳田 勉
(72)【発明者】
【氏名】岡本 義徳
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-029499(JP,A)
【文献】特開2009-001131(JP,A)
【文献】特開2019-156596(JP,A)
【文献】特開2019-189463(JP,A)
【文献】特開2013-003855(JP,A)
【文献】特開平05-058403(JP,A)
【文献】特開昭53-077655(JP,A)
【文献】国際公開第2021/144866(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00 - 13/08
B65G 1/00 - 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のトレイが収納されたラックを有する部品供給部を備え、前記トレイに収容された部品を取り出して基板に実装する部品実装装置の前記部品供給部に対して、前記ラックの受け渡しを行うことが可能な自走式の搬送ロボットであって、
前記部品供給部は、前記ラックを水平方向に出し入れ可能に支持するラック支持部を備えており、
当該搬送ロボットは、
床面に沿って走行する、走行輪を備えた走行部と、
前記ラックを支持することが可能なように前記走行部に設けられ、かつ前記ラックを水平方向に移動させることにより、前記ラック支持部との間で前記ラックの受け渡しを行う受け渡し部と
、
前記受け渡し部を支持し、かつ前記走行部に対して旋回可能なテーブル部と、
前記部品供給部に対して当該搬送ロボットを位置決めする位置決め部とを備え、
前記受け渡し部は、各々が前記ラック支持部との間で前記ラックの受け渡しが可能な第1受け渡し部及び第2受け渡し部を含み、
前記第1受け渡し部及び前記第2受け渡し部は、前記ラックを移動させる方向と同方向に、互いに背中合わせに一列に並んだ状態で前記テーブル部上に配置されており、
前記位置決め部は、前記部品供給部に対して前記走行部を位置決めし、
前記テーブル部は、前記走行部が前記位置決め部により前記部品供給部に位置決めされた状態で旋回可能に構成されている、ことを特徴とする搬送ロボット。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送ロボットにおいて、
前記受け渡し部は、前記ラックの受け渡しの際に当該ラックに推力を付与することが可能な少なくとも一つの駆動ローラを含む、複数のローラを備えたローラコンベアからなる、ことを特徴とする搬送ロボット。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の搬送ロボットにおいて、
前記受け渡し部は、前記ラックの受け渡しの際に、当該ラックを案内するガイド部を備えている、ことを特徴とする搬送ロボット。
【請求項4】
請求項1乃至
3の何れか一項に記載の搬送ロボットにおいて、前記走行輪は、メカナムホイール及び/又はオムニホイールからなる、ことを特徴とする搬送ロボット。
【請求項5】
請求項
1に記載の搬送ロボットにおいて、
前記走行輪を駆動するモータであって電磁ブレーキを備えた走行モータと、
前記走行モータを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記位置決め部による前記走行部の位置決め中は、前記電磁ブレーキを作動させる、ことを特徴とする搬送ロボット。
【請求項6】
請求項
1又は5に記載の搬送ロボットにおいて、
前記位置決め部をロボット側位置決め部と定義したときに、前記部品供給部に、前記ロボット側位置決め部が位置決めされる部品供給部側位置決め部が設けられており、
前記ロボット側位置決め部及び前記部品供給部側位置決め部のうち、一方側は、平面視V字型の溝型の当接面を備え、他方側は、前記当接面に対応する平面視三角形の山型の当接面を備えており、
前記走行輪は、メカナムホイール及び/又はオムニホイールからなる、ことを特徴とする搬送ロボット。
【請求項7】
複数のトレイが収納されたラックを有する部品供給部を備え、前記トレイに収容された部品を取り出して基板に実装する部品実装装置と、
前記部品供給部に対して、前記ラックの受け渡しを行うことが可能な自走式の搬送ロボットであって、請求項1
~6の何れか一項に記載の搬送ロボットを備えている、ことを特徴とする部品実装システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板等の基板に部品が実装(搭載)された部品実装基板の製造ラインにおいて用いられる搬送ロボット、及びこの搬送ロボットを備えた部品実装システムに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板等の基板に部品が実装(搭載)された部品実装基板を製造する製造ラインが周知である。製造ラインは、隣接して一列に配列された複数の部品実装装置を含む。基板は、製造ラインに沿って搬送され、当該基板に対して部品を実装する処理が各部品実装装置で実行される。部品実装装置には、実装ヘッドと、テープフィーダ等の部品供給装置が備えられており、部品供給装置が供給する部品を実装ヘッドが吸着保持して基板上に実装する。
【0003】
この種の製造ラインでは、部品実装装置で消費される部品の補給や、生産基板の品種切替えに伴う部品供給装置の交換が必要となる。この作業は、従来、作業者が行っていたが、近年は無人の搬送ロボットが担うケースが増えている。例えば、特許文献1には、テープフィーダが搭載された自走式の台車(搬送ロボット)を用いて、品種切替え前後のテープフィーダの交換を一括して自動で行うことが可能な部品実装システムが開示されている。
【0004】
ところで、部品実装装置には、例えば特許文献2に開示されるように、部品をトレイ上に並べた状態で供給するトレイフィーダが備えられる場合がある。トレイフィーダは、部品が載置された複数のトレイが上下複数段に収納されたラック(マガジン)と、ラックを昇降させる昇降機構と、ラックに対してトレイを出し入れする引き出し機構とを含む。このトレイフィーダでは、昇降機構により所定高さ位置にラックが配置され、引き出し機構によってトレイがラックから引き出される。そして、引き出されたトレイ上の部品が実装ヘッドにより吸着保持される。
【0005】
トレイフィーダは比較的大型の部品供給装置であり、特許文献1のように自走式の台車に搭載して交換することは困難である。そのため、トレイフィーダで消費される部品の補給や、生産基板の品種切替えに伴う部品の交換は、作業者が手作業で行っているのが現状である。そのため、トレイフィーダに対して部品補給作業や部品交換作業を自動化できる搬送ロボットが望まれるが、特許文献1、2には、そのような技術の開示は見られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-50002号公報
【文献】特開2017-199816号公報
【発明の概要】
【0007】
本発明は、部品をトレイ上に並べた状態で供給するタイプの部品供給装置(トレイフィーダ)を備えた部品実装装置の前記部品供給装置に対する部品補給作業や部品交換作業の自動化に寄与する搬送ロボット、及びこの搬送ロボットを備えた部品実装システムを提供することを目的とする。
【0008】
本発明の一局面に係る搬送ロボットは、複数のトレイが収納されたラックを有する部品供給部を備え、前記トレイに収容された部品を取り出して基板に実装する部品実装装置の前記部品供給部に対して、前記ラックの受け渡しを行うことが可能な自走式の搬送ロボットであって、前記部品供給部は、前記ラックを水平方向に出し入れ可能に支持するラック支持部を備えており、当該搬送ロボットは、床面に沿って走行する、走行輪を備えた走行部と、前記ラックを支持することが可能なように前記走行部に設けられ、かつ前記ラックを水平方向に移動させることにより、前記ラック支持部との間で前記ラックの受け渡しを行う受け渡し部とを備えている、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の部品実装システムを示すブロック図である。
【
図2】
図2は、前記部品実装システムに備えられる部品実装装置の平面図である。
【
図4】
図4は、ラック出し入れ領域を示すトレイ収納部(筐体)の側面図である。
【
図5】
図5は、前記部品実装システムに備えられる搬送ロボット(第1実施形態)の平面図である。
【
図8】
図8は、前記搬送ロボットの制御系を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、前記搬送ロボットによるラック搬送動作を模式的に示した説明図である。
【
図10】
図10は、ラック受け渡し時のトレイフィーダ及び搬送ロボットを示す側面図(一部断面図)である。
【
図11】
図11は、搬送ロボットの位置決め時の動作説明図(平面図)である。
【
図12】
図12は、第2実施形態に係る搬送ロボットの平面図である。
【
図14】
図14は、前記搬送ロボットによるラック搬送動作の一部を模式的に示した説明図である。
【
図15】
図15は、第3実施形態に係る搬送ロボットの平面図である。
【
図16】
図16は、前記搬送ロボットによるラック搬送動作の一部を模式的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について詳述する。
【0011】
[部品実装システムの構成]
図1は、本発明に係る部品実装システム100を示すブロック図である。部品実装システム100は、プリント配線基板等の基板P上に電子部品(以下、「部品」と称する)が搭載された部品実装基板を生産するシステムである。部品実装システム100は、生産ラインPLと、保管装置6と、搬送ロボット7と、管理装置8とを備える。
【0012】
生産ラインPLは、生産エリアA1に配置されており、保管装置6は、準備エリアA2に配置されている。生産エリアA1は、部品実装基板の生産が行われるエリアであり、準備エリアA2は、部品実装基板の生産に使用される部品等の消耗品や、生産品種の変更に伴い交換される機器を作業者が準備するエリアである。
【0013】
生産ラインPLは、印刷装置1と、印刷検査装置2と、部品実装装置3と、外観検査装置4と、リフロー装置5とを含み、これらの装置1~5がX方向にその順番で一列に連結されて構成されている。当例では、印刷検査装置2と外観検査装置4との間に、複数台の部品実装装置3が連続して配置されている。
【0014】
印刷装置1は、基板P上の部品搭載箇所にクリーム半田を印刷する処理を実行し、印刷検査装置2は、基板P上に印刷されたクリーム半田の印刷状態を検査する処理を実行する。部品実装装置3は、クリーム半田が印刷された基板Pの所定の実装位置に部品を実装(搭載)する処理を実行し、外観検査装置4は、基板P上に実装された部品の実装状態を検査する処理を実行する。また、リフロー装置5は、基板Pを加熱することにより半田を溶融させて部品を基板Pに接合する処理を実行する。この生産ラインPLでは、基板PがX方向に搬送されながら、印刷装置1、印刷検査装置2、部品実装装置3、外観検査装置4及びリフロー装置5において既述の各処理が実行されることにより部品実装基板が生産される。
【0015】
保管装置6は、作業者が準備した補給用の部品や機器を待機させる第1保管装置6Aと、生産ラインPLから回収された使用済みの機器等が返却される第2保管装置とを含む。
【0016】
搬送ロボット7は、部品実装装置3と保管装置6との間を生産ラインPLに沿って移動するAGV(Automatic Guides Vehicle)又はAMR(Autonomous Mobile Robot)等の自走式の搬送ロボットである。搬送ロボット7は、
図1中に矢印で示すルートに沿って移動しながら、補給用の部品や交換用の機器を第1保管装置6Aから部品実装装置3に搬送(供給)するとともに、使用済みの機器等を部品実装装置3から第2保管装置6Bに搬送する。なお、部品実装システム100には、複数台の搬送ロボット7が備えられているが、
図1では、便宜上、1台の搬送ロボット7のみ図示している。
【0017】
管理装置8は、生産ラインPLの各装置1~5、保管装置6及び搬送ロボット7と通信可能に接続された例えばパーソナルコンピュータによって構成されている。管理装置8は、生産計画に基づいて、生産ラインPLの各装置1~5、保管装置6及び搬送ロボット7を制御することにより、部品実装システム100における部品実装基板の生産を統括的に管理する。
【0018】
[部品実装装置3の構成]
図2及び
図3は、部品実装システム100に備えられる部品実装装置3を示している。
図2は平面視の模式図で、
図3は側面視の模式図で各々部品実装装置3を示している。部品実装システム100に備えられる複数の部品実装装置3の基本的な構成は同じである。
【0019】
部品実装装置3は、基台31と、コンベア32と、部品供給エリア33と、ヘッドユニット36と、撮像部38とを含む。基台31は、部品実装装置3が備える各種機器の搭載ベースである。コンベア32は、基台31上にX方向に延びるように設置された、基板Pの搬送ラインであり、一対のベルト式コンベアで構成されている。コンベア32は、機外から所定の作業位置に基板Pを搬入し、実装作業後に基板Pを作業位置から機外へ搬出する。
図2中に示す基板Pの位置が作業位置である。
【0020】
部品供給エリア33は、実装部品を供給するための部品供給装置が配置されるエリアであり、Y方向においてコンベア32の両側に各々設けられている。Y2側の部品供給エリア33には、複数のテープフィーダ34Fがコンベア32に沿って設置されている。テープフィーダ34Fは、一定間隔で部品(小型の表面実装部品)が収納されたテープを繰り出しながら部品を供給するタイプの部品供給装置である。
【0021】
Y1側の部品供給エリア33には、複数のテープフィーダ34Fと、トレイフィーダ35Fとがコンベア32に沿って横並びに配置されている。複数のテープフィーダ34FはX1側に、トレイフィーダ35FはX2側に各々配置されている。トレイフィーダ35Fは、QFP(Quad Flat Package)やBGA(Ball Grid array)等のパッケージ部品をトレイ52上に載置した状態で供給するタイプの部品供給装置である。トレイ52とは、上向きに開口した平面視長方形の皿形容器である。トレイフィーダ35Fの構成については後述する。
【0022】
ヘッドユニット36は、ヘッドユニット駆動機構37により一定の領域内でX方向及びY方向に移動可能に設けられている。ヘッドユニット36は複数の実装ヘッド36aを備えている。各実装ヘッド36aに対して部品吸着用の負圧の供給及びその遮断が行われることにより、部品の吸着保持及びその解除が実装ヘッド36a毎に行われる。
【0023】
撮像部38は、部品の吸着保持状態を認識するためにヘッドユニット36の各実装ヘッド36aに吸着保持された部品をその下側から撮像する。撮像部38は、カメラ及び照明装置を備える。撮像部38は、基台31上であってコンベア32のY方向両側に各々配置されている。
【0024】
既述の部品実装装置3では、ヘッドユニット36が部品供給エリア33と作業位置に配置された基板Pとの間を移動しながら、実装ヘッド36aによりテープフィーダ34F又はトレイフィーダ35Fから部品を吸着して取り出す部品吸着処理と、当該部品を基板P上に搬送して実装(搭載)する部品実装処理とが実行される。これらの処理が繰り返されることにより、基板P上に所定数の部品が実装される。なお、部品吸着処理後、部品実装処理前には、撮像部38が取得した画像に基づき実装ヘッド36aによる部品の吸着保持状態が画像認識され、その結果に応じてヘッドユニット36等の位置補正が行われる。これにより、基板Pに対する部品の実装精度が確保される。
【0025】
[トレイフィーダ35Fの構成]
トレイフィーダ35Fは、既述の通り、QFP等のパッケージ部品をトレイ52上に載置した状態で供給するタイプの部品供給装置である。
【0026】
図2及び
図3に示すように、トレイフィーダ35Fは、複数のトレイ52が収納されるトレイ収納部40Aと、トレイ収納部40Aに対してトレイ52を出し入れするトレイ移載機構部40Bと、トレイ52を所定の部品供給位置に引き出すトレイ引出機構部40Cとを備えている。これらトレイ収納部40A、トレイ移載機構部40B及びトレイ引出機構部40Cは、Y方向に沿ってY1側からこの順番で配列されている。
【0027】
トレイ収納部40A及びトレイ移載機構部40Bは、これらに共通する上下方向に細長い直方体形状の筐体42を有している。筐体42内のY1側がトレイ収納部40Aとされ、トレイ収納部40AのY2側に隣接してトレイ移載機構部40Bが設けれている。
【0028】
トレイ収納部40Aは、その上部がトレイ保管領域42Aであり、下部がトレイ収納部40Aに対してラック50を外部から出し入れするラック出し入れ領域42Bである。ラック50とは、複数のトレイ52をまとめて搬送するための箱形容器である。トレイ52は、このラック50に収容された状態で搬送ロボット7により第1保管装置6Aから搬送され、後述するように、ラック出し入れ領域42Bにおいて搬送ロボット7からトレイ収納部40Aに受け渡される。
【0029】
トレイ52は、それよりも大きい平面視長方形の皿形部材であるパレット51上に保持され、当該パレット51を介してラック50内に収容されている。詳しくは、
図4に示すように、ラック50は、水平方向(Y方向)に貫通する中空かつ直方体形状の箱形容器である。ラック50内部の互いに対向する内側面には、各々、Z方向に並ぶ複数の溝部501が形成されている。パレット51の両端が各々溝部501に挿入されることにより、複数のトレイ52が、互いに平行にZ方向に並んだ状態で、かつパレット51と共に溝部501に沿って出し入れ可能にラック50に収容されている。なお、
図4は、ラック出し入れ領域42Bの部分を示すトレイ収納部40A(筐体42)の側面視の模式図(Y1側から視た模式図)である。
【0030】
トレイ保管領域42Aには、ラック50と同等の構造を有するトレイ保管ユニット43が配置されている。ラック出し入れ領域42Bにおいてトレイ収納部40Aに受け渡されたラック50内のトレイ52は、トレイ移載機構部40Bにより、ラック50から引き出されてトレイ保管ユニット43に移載され、ここで保管される。
【0031】
トレイ移載機構部40Bは、トレイ52をパレット51と共に水平方向(Y方向)にスライドさせるスライド機構を備えたトレイ移載ユニット44と、このトレイ移載ユニット44をZ方向に移動させる図外の駆動機構とを備えている。トレイ移載機構部40Bは、トレイ保管領域42Aに対応する位置とラック出し入れ領域42Bに対応する位置とに亘ってトレイ移載ユニット44をZ方向に移動させる。そして、ラック出し入れ領域42Bに配置されたラック50からトレイ52を引出し、当該トレイ52をトレイ保管領域42Aに搬送して、トレイ保管ユニット43内に収容する。また、トレイ移載機構部40Bは、トレイ保管ユニット43内に保管されている空のトレイ52を引出してラック出し入れ領域42Bまで搬送し、当該トレイ52をラック50に収容する。つまり、トレイ移載機構部40Bは、トレイ保管ユニット43と、ラック出し入れ領域42Bに配置されたラック50との間でトレイ52の入れ替えを行う機能を有する。また、トレイ移載機構部40Bは、トレイ保管ユニット43から引き出したトレイ52を、トレイ引出機構部40Cに対する所定のトレイ引出位置に配置する。
【0032】
トレイ引出機構部40Cは、
図2及び
図3に示すように、基台31上に設置されたY方向に延びる一対のガイドレール47、47と、それらの間に配置される図外の引出ヘッドとを含む。引出しヘッドは、Y方向に移動可能でかつ前記パレット51を係止可能に構成されている。この引出しヘッドが、トレイ移載ユニット44により前記トレイ引出位置に配置されたパレット51を係止してY2方向に移動することにより、トレイ52がパレット51と共にトレイ移載ユニット44から部品供給位置(
図2に示す位置)に引出される。逆に、引出ヘッドがY1方向に移動し、その後、パレット51の係止状態を解除することにより、部品供給位置からトレイ移載ユニット44にトレイ52が戻される。
【0033】
図4、
図10及び
図11(a)に示すように、筐体42のY1側の側壁であってラック出し入れ領域42Bに対応する位置には、ラック出入口421が設けられている。ラック出入口421は、図外のアクチュエータにより駆動されるスライド式の扉体422により開閉可能となっており、ラック50の入れ替え時以外は、この扉体422により閉じられている。
【0034】
ラック出し入れ領域42Bには、ローラコンベア45(本発明の「ラック支持部」に相当する)が配置されている。ローラコンベア45は、ラック50を支持しつつY方向へ水平搬送可能な直動タイプのコンベアである。ローラコンベア45は、X方向に所定間隔を隔てて配置された一対のフレーム452、452と、それらの間に配置される複数のローラ451とを備える。複数のローラ451のうち、一乃至複数のローラ451は、図外のモータにより駆動される駆動ローラであり、駆動ローラ以外のローラ451は、従動ローラ(フリーローラ)である。つまり、このローラコンベア45と搬送ロボット7との間でラック50の受け渡しが行われ、ローラコンベア45上に支持されたラック50に対して前記トレイ移載ユニット44によるトレイ52の出し入れが行われる。
【0035】
[搬送ロボット7(第1実施形態)の構成]
搬送ロボット7は、既述の通り、補給用の部品や交換用の機器を第1保管装置6Aから部品実装装置3に搬送するとともに、使用済みの機器等を部品実装装置3から第2保管装置6Bに搬送する。当例では、搬送ロボット7は、補給部品が収納された前記ラック50を第1保管装置6Aから部品実装装置3に搬送してトレイフィーダ35Fに供給するとともに、使用済みのラック50、つまり空のトレイ52が収容されたラック50をトレイフィーダ35Fから回収して第2保管装置6Bに搬送する。そのため、搬送ロボット7は、トレイフィーダ35Fとの間でラック50の受け渡しを行える構成を備えている。
【0036】
図5~
図7は、搬送ロボット7を示しており、
図5は平面図で、
図6は側面図で、
図7は正面図で各々搬送ロボット7を示している。
【0037】
搬送ロボット7は、走行輪11を備えた直方体形状の車体10と、この車体10上に固定されたコンベアベース部13と、その上に配置されたローラコンベア12とを備える。搬送ロボット7は、車体10の長手方向が搬送ロボット7の前後方向であり、短辺方向が搬送ロボットの幅方向である。
【0038】
車体10は、搬送ロボット7の走行ベースである。車体10は、走行輪として、駆動輪11aと従動輪(フリーローラ)11bとを備える。駆動輪11aは車体10の前後方向中央部であってかつ幅方向両側部に備えられ、従動輪11bは、車体10の下部の四隅に各々備えられている。駆動輪11aとしては、走行モータ111(
図8に示す)により駆動される例えばメカナムホイール(登録商標)が適用され、従動輪11bとしては、例えばオムニホイール(登録商標)が適用される。
【0039】
搬送ロボット7は、駆動輪11aの駆動により床面に沿って走行する。この場合、各駆動輪11aの回転方向及び回転速度が個別に制御されることにより、搬送ロボット7は、任意の方向へ走行するとともにその場で旋回することが可能に構成となっている。
【0040】
コンベアベース部13は、車体10よりも狭幅の平面視長方形の概略プレート状の部材であり、車体10の上部に備えられている。このコンベアベース部13の上面にローラコンベア12が備えられている。ローラコンベア12(本発明の「受け渡し部」に相当する)は、各々が前記トレイフィーダ35Fとの間で前記ラック50の受け渡しが可能な、第1コンベア12A(「第1受け渡し部」)及び第2コンベア12B(「第2受け渡し部」)を含む。第1コンベア12A及び第2コンベア12Bは、ラック50を水平搬送可能な直動タイプのローラコンベアである。第1コンベア12A及び第2コンベア12Bは、ラック50を移動させる方向が共に搬送ロボット7の前後方向となるように、背中合わせに一列に並んだ状態で配置されている。なお、以下の説明では、便宜上、第1コンベア12Aが配置されている側を搬送ロボット7の前側、第2コンベア12Bが配置されている側を搬送ロボット7の後側とする。
【0041】
第1コンベア12Aは、コンベアベース部13の幅方向両端に立設された一対のフレーム14、14と、それらの間に配置される複数のローラ15とを備える。第1コンベア12Aの搬送面の高さは、トレイフィーダ35Fの前記ローラコンベア45の搬送面の高さと同じになるように設定されている(
図10参照)。
【0042】
フレーム14、14の内幅Wc(
図7)は、
図5中に仮想線で示すラック50の幅Wrよりも若干大きく設定されており、第1コンベア12Aの奥行きDcは、ラック50の奥行きDrよりも若干大きく設定されている。
【0043】
第1コンベア12Aの複数のローラ15のうち、一乃至複数のローラ15は、ローラモータ151(
図8に示す)により駆動される駆動ローラであり、駆動ローラ以外のローラ15は、従動ローラ(フリーローラ)である。
【0044】
つまり、第1コンベア12Aは、各ローラ15によりラック50を支持し、駆動ローラの回転に伴いラック50をフレーム14、14により案内しながら搬送ロボット7の前後方向に移動させるように構成されている。なお、各フレーム14、14の前端部分の対向面には、テーパ状のガイド部14a、14aが設けられている。トレイフィーダ35Fから第1コンベア12Aにラック50を受け入れる際には、これらガイド部14aによってラック50が両フレーム14、14の中央に案内される。
【0045】
また、第1コンベア12Aには、ラック50の有無を検知すするための光電センサ等のラック検知センサ18(
図8に示す)が備えられている。このラック検知センサ18によるラック50の検知に基づき、前記駆動ローラの作動が制御される。
【0046】
第2コンベア12Bは、既述の第1コンベア12Aと基本的な構成は同一で、第1コンベア12Aに対して前後対称に設けられている。つまり、既述の通り、第1コンベア12Aに対して背中合わせに設けられている。従って、テーパ状のガイド部14a、14aは、各フレーム14、14の後端部分の対向面に設けられている。
【0047】
前記車体10の前端面及び後端面には、搬送ロボット7をトレイフィーダ35Fに対して位置決めするためのロボット側位置決め部16A,16Bが設けられている。ロボット側位置決め部16A,16Bは、平面視V字型(楔型)の溝型の当接面161を備えたブロック状の部材からなる。前後のロボット側位置決め部16A、16Bは同一形状である。以下の説明では、適宜、車体10(搬送ロボット7)の前側、すなわち第1コンベア12A側に位置するロボット側位置決め部16Aを第1ロボット側位置決め部16Aと称し、後側、すなわち第2コンベア12B側に位置するロボット側位置決め部16Bを第2ロボット側位置決め部16Bと称する。
【0048】
平面視において、車体10の対角線上の角部には、各々、走行用センサ17が設けられている。走行用センサ17は、例えばLiDAR(Light Detection And Ranging)であり、搬送ロボット7は、当該走行用センサ17による目標物や障害物の検知により走行動作が制御される。
【0049】
搬送ロボット7は、既述のように、車体10に対してローラコンベア12、ロボット側位置決め部16A,16B及び走行用センサ17が配置されることにより、平面視において回転対称な構成となっている。
【0050】
図8は、搬送ロボット7の制御系を示すブロック図である。搬送ロボット7は、その動作を制御するロボット制御部20を備えている。搬送ロボット7には、管理装置8との間で無線通信が可能な通信モジュール21が搭載されており、ロボット制御部20は、管理装置8から送信される指令に基づき搬送ロボット7の動作を制御する。すなわち、ロボット制御部20には、前記走行モータ111、ローラモータ151及びセンサ17、18が電気的に接続されており、ロボット制御部20は、走行用センサ17が取得する情報に基づき走行モータ111の駆動を制御するとともに、前記ラック検知センサ18が取得する情報に基づきローラモータ151の駆動を制御する。なお、車体10には、図外のバッテリが搭載されており、前記走行モータ111及びローラモータ151等は当該バッテリからの電力供給を受けて作動する。
【0051】
[搬送ロボット7によるラック50の搬送動作]
次に、ロボット制御部20の制御に基づく搬送ロボット7によるラック50の搬送動作について
図9~
図11を参照しながら詳細に説明する。
図9は、搬送ロボット7によるラック50の搬送動作を模式的に示した説明図であり、
図10は、ラック50受け渡し時のトレイフィーダ35F及び搬送ロボット7を示す側面図(一部断面図)である。また、
図11は、搬送ロボット7の位置決めの際の動作説明図(平面図)である。なお、
図9では、搬送ロボット7やトレイフィーダ35Fの構成を簡略化している。
【0052】
搬送ロボット7は、まず、補給用の部品が収容されたラック50(以下、適宜「補給用ラック50a」と称する)を第1保管装置6Aから受け取り、生産ラインPLに沿って走行する。例えば、
図9(a)に示すように、搬送ロボット7は、ラック50を第2コンベア12Bに搭載した状態で、第1コンベア12A側を先頭にして生産ラインPLに沿って走行する。そして、部品補給の対象である部品実装装置3のトレイフィーダ35Fの位置、詳しくはトレイ収納部40Aの筐体42の位置まで走行すると停止する。
【0053】
搬送ロボット7は、次に、第1コンベア12Aが、筐体42(トレイ収納部40A)のラック出入口421に対向するようにその場で90°旋回し、その後、
図9(b)、(c)に示すように、Y2方向に前進して筐体42に位置決めされた状態で停止する。
【0054】
詳しくは、
図11(a)に示すように、筐体42のラック出入口421の下方には、ロボット側位置決め部16A、16Bに対応するフィーダ側位置決め部46が設けられている。フィーダ側位置決め部46は、ロボット側位置決め部16A、16Bの当接面161に対応する平面視三角形(楔型)の山型の当接面461を備えたブロック状の部材である。第1コンベア12Aが筐体42に対向する状態で搬送ロボット7がY2方向へ前進すると、第1ロボット側位置決め部16Aとフィーダ側位置決め部46とが互いに当接し、それらの当接面161、461同士が互いに合致するように搬送ロボット7の位置が修正される。これにより、
図10及び
図11(b)に示すように、筐体42に対して搬送ロボット7が位置決めされる。つまり、第1コンベア12Aと前記ローラコンベア45とがラック出入口421を介してY方向に並んだ状態に、搬送ロボット7が位置決めされる。
【0055】
なお、筐体42のラック出入口421のX方向両側には各々マーカー423が設けられている。搬送ロボット7の位置決めに際しては、走行用センサ17による当該マーカー423の検知に基づき搬送ロボット7の停止位置が制御される。そして、搬送ロボット7の停止中は、電磁ブレーキ(モータブレーキ)が働くように走行モータ111が制御される。これにより搬送ロボット7の位置決め状態が維持される。
【0056】
一方、トレイフィーダ35Fのローラコンベア45上には、トレイ移載ユニット44によるトレイ52の入れ替えが完了したラック50、つまり空のトレイ52が収容された使用済みのラック50(以下、適宜「使用済ラック50b」と称す)が配置されている(
図10中に二点鎖線で示す状態)。
【0057】
搬送ロボット7の位置決めが完了すると、筐体42の扉体422が作動してラック出入口421が開き、さらにトレイ収納部40Aのローラコンベア45及び搬送ロボット7の第1コンベア12Aが各々作動する。すなわち駆動ローラが回転する。これにより、
図9(c)、
図10及び
図11(c)に示すように、トレイフィーダ35F(ローラコンベア45)から搬送ロボット7(第1コンベア12A)に、使用済ラック50bが受け渡される(回収される)。この際、搬送ロボット7において、前記ラック検知センサ18がラック50を検知すると第1コンベア12Aが停止する。
【0058】
搬送ロボット7への使用済ラック50bの受け渡しが完了すると、搬送ロボット7は、
図9(d)に示すように、Y1方向に一旦後退して筐体42との位置決め状態を解除し、さらに、補給用ラック50aが搭載された第2コンベア12Bがラック出入口421に対向するようにその場で180°旋回する。その後、
図9(e)に示すように、Y2方向に前進し、筐体42に対して位置決めされた状態で停止する。この場合には、第2ロボット側位置決め部16Bがフィーダ側位置決め部46に当接することによって搬送ロボット7が筐体42に位置決めされ、当該位置決め状態が既述の電磁ブレーキ(モータブレーキ)によって維持される。
【0059】
搬送ロボット7の位置決めが完了すると、トレイ収納部40Aのローラコンベア45及び搬送ロボット7の第2コンベア12Bが作動する。これにより、
図9(e)に示すように、搬送ロボット7(第2コンベア12B)からトレイフィーダ35F(ローラコンベア45)へ補給用ラック50aが受け渡される。この場合、第1コンベア12Aからローラコンベア45に補給用ラック50aが移動し、ラック検知センサ18がラック50を検知し無くなると駆動ローラが停止される。
【0060】
既述のようにして補給用ラック50aと使用済ラック50bとの交換が完了すると、搬送ロボット7は、
図9(f)に示すように、Y1方向に後退して前記位置決め状態を解除し、さらに90°旋回する。そして、使用済ラック50bを第1コンベア12Aに搭載した状態で、第2コンベア12B側を先頭として生産ラインPLに沿って走行する。その後、搬送ロボット7は、
図1中の矢印に示すルートに沿って生産エリアA1から準備エリアA2に戻り、回収した使用済ラック50bを第2保管装置6Bに受け渡す。これにより、搬送ロボット7による一連のラック50の搬送動作が終了する。
【0061】
なお、既述の説明では、搬送ロボット7は、第2コンベア12Bに補給用ラック50aを搭載し、第1コンベア12Aに使用済ラック50bを搭載するが、勿論、逆でもよい。また、搬送ロボット7は、第1コンベア12A及び第2コンベア12Bの何れの側を先頭にして走行させてもよく、適宜変更可能である。この点は、後述する第2実施形態の搬送ロボット7Aについても同じである。
【0062】
[作用効果]
以上説明した搬送ロボット7によれば、トレイフィーダ35Fへの補給用ラック50aの供給、及びトレイフィーダ35Fからの使用済ラック50bの回収を自動で行うことが可能となる。そのため、トレイフィーダ35Fに対する部品補給作業を従来のように手作業で行う必要が無くなり、トレイフィーダ35Fに対する部品補給作業の効率化が図られる。
【0063】
特に、上記搬送ロボット7では、既述のように、補給用ラック50aと使用済ラック50bとを交換することにより部品の供給が行われる。そのため、トレイフィーダ35Fに対して、例えばトレイ単位で部品補給を行う場合に比べると部品補給の作業時間が格段に短縮される。つまり、例えば使用済のトレイ52をパレット51ごと交換する場合には、パレット51の数だけ交換作業が必要となり、パレット数が多い場合には作業時間が長期化する。しかし、上記搬送ロボット7によれば、同じ数のトレイ52(パレット)を交換する場合であっても、使用済ラック50bと補給用ラック50aとを交換するだけで済むため、短時間で部品補給が完了する。従って、上記搬送ロボット7によると、トレイフィーダ35Fに対する部品補給作業の高速化を図ることができる。
【0064】
また、このようにトレイフィーダ35Fに対する部品補給作業の高速化が図られる結果、搬送ロボット7の走行ルートを、当該作業中の搬送ロボット7が長時間塞ぐことが抑制される。従って、例えば部品補給作業中の搬送ロボット7によって後続する搬送ロボット7が長期的に待機状態に置かれること、ひいては他の部品実装装置3(トレイフィーダ35F)の部品補給が間に合わなくなるといったトラブルを抑制ないし防止することが可能になる。
【0065】
なお、実施形態のトレイフィーダ35Fでは、部品補給時には、補給用ラック50aと使用済ラック50bとの交換が必須作業となる。この点、上記搬送ロボット7は、既述の通り、第1コンベア12Aと第2コンベア12Bとを備えており、使用済ラック50bと補給用ラック50aの交換作業を1台の搬送ロボット7で連続的に行うことが可能である。そのため、この点でもトレイフィーダ35Fに対する部品補給作業の高速化を図ることが可能になるという利点がある。
【0066】
また、実施形態の搬送ロボット7において、第1コンベア12Aと第2コンベア12Bとは同一の構成であり、また、既述の通り平面視において回転対称な構成を有している。つまり、生産ラインPLに沿って走行する際の走行方向や、ラック受け渡しを行うコンベアについての制約が少ない。そのため、生産ラインPLにおける各部品実装装置(トレイフィーダ35F)の時々の状況に応じたラック50(補給用ラック50a、使用済ラック50b)の搬送に臨機応変に対応できるとう利点もある。
【0067】
また、搬送ロボット7は、走行輪としてメカナムホイールやオムニホイールを備えているため、走行方向の自由度が非常に高い。そのため、トレイフィーダ35Fに対する位置決めの際には、搬送ロボット7を前進させるだけで、フィーダ側位置決め部46の当接面461とロボット側位置決め部16A、16Bの当接面161とが合致するように、難なく搬送ロボット7を位置修正することができる。よって、トレイフィーダ35Fに対して精度良く搬送ロボット7を位置決めすること、ひいては、トレイフィーダ35Fと搬送ロボット7との間のラック50の受け渡しを安定的にかつ確実に行うことができるという利点がある。
【0068】
[搬送ロボットの第2実施形態]
次に搬送ロボットの第2実施形態について、
図12、
図13を用いて説明する。第2実施形態に係る搬送ロボット7Aの基本的な構成は、第1実施形態の搬送ロボット7と共通する。そのため、第1実施形態と共通する部分については同一符号を付して説明を省略又は簡略し、主に第1実施形態との相違について詳述する。後述する第3実施形態に係る搬送ロボット7Bについても同様である。
【0069】
図12は、第2実施形態に係る搬送ロボット7Aの平面図であり、
図13は、搬送ロボット7Aの側面図である。
図12及び
図13に示すように、第2実施形態に係る搬送ロボット7Aでは、コンベアベース部13(本発明の「テーブル部」に相当する)が、車体10に対して支軸13aを介して旋回可能に支持されており、図外の旋回モータの駆動力によってローラコンベア12と共に旋回するように構成されている。旋回モータはロボット制御部20に電気的に接続されており、車体10に対するローラコンベア12の旋回動作がロボット制御部20により制御される。
【0070】
図14は、搬送ロボット7Aによるラック50の搬送動作の一部を模式的に示した説明図である。搬送ロボット7Aによるラック50の搬送動作のうち、使用済ラック50bをトレイフィーダ35Fから回収するまでの動作は、
図9(a)、(b)に図示した、第1実施形態の搬送ロボット7による動作と同じである。すなわち、搬送ロボット7Aは、第1保管装置6Aから受け取った補給用ラック50aを第2コンベア12Bに搭載した状態で、第1コンベア12A側を先頭として生産ラインPLに沿って走行する。その後、搬送ロボット7Aは、筐体42(トレイ収納部40A)のラック出入口421に第1コンベア12Aが対向するように旋回した後、さらにY2方向に前進して、前記位置決め部16A、46により筐体42に対して位置決めされた状態で停止する。この状態で、
図14(a)に示すように、トレイフィーダ35Fから搬送ロボット7Aに、使用済ラック50bが受け渡される(回収される)。
【0071】
搬送ロボット7Aへの使用済ラック50bの受け渡しが完了すると、
図14(b)に示すように、位置決め部16A、46による位置決め状態を維持したままで、ローラコンベア12がコンベアベース部13と共に180°旋回駆動される。これにより、補給用ラック50aが搭載された第2コンベア12Bがラック出入口421に対向するように配置される。
【0072】
その後、トレイ収納部40Aのローラコンベア45及び搬送ロボット7Aの第2コンベア12Bが作動することにより、
図14(c)に示すように、搬送ロボット7A(第2コンベア12B)からからトレイフィーダ35F(ローラコンベア45)へ補給用ラック50aが受け渡される。
【0073】
このようにして補給用ラック50aと使用済ラック50bとの交換が完了すると、搬送ロボット7Aは、
図14(d)に示すようにY2方向に後退して前記位置決めを解除し、さらに90°旋回する。そして、使用済ラック50bを第1コンベア12Aに搭載した状態で、第2コンベア12B側を先頭として生産ラインPLに沿って走行する。
【0074】
以上のように、第2実施形態の搬送ロボット7Aでは、ローラコンベア12が車体10に対して旋回可能に構成されている。この搬送ロボット7Aによれば、既述の通り、トレイフィーダ35Fから使用済ラック50bを回収した後、位置決め部16A、46による位置決め状態を維持したままで、補給用ラック50aが搭載された第2コンベア12Bをラック出入口421に対向させることができる(
図14(b))。そのため、第1実施形態の搬送ロボット7における
図9(d)、(e)に示すような動作、すなわち、位置決め部16A、46による搬送ロボット7の位置決め状態を解除して搬送ロボット7を旋回させ、その後、位置決め部16B、46により搬送ロボット7を筐体42に対して再度位置決めするという動作が不要となる。従って、当該動作が不要となる分、第2実施形態の搬送ロボット7Aによれば、より一層、トレイフィーダ35Fに対する部品補給作業の効率化が図られる。
【0075】
[搬送ロボットの第3実施形態]
次に搬送ロボットの第3実施形態について
図15を用いて説明する。
図15は、第3実施形態に係る搬送ロボット7Bの平面図である。
【0076】
第1実施形態の搬送ロボット7では、第1コンベア12A及び第2コンベア12Bは、ラック50の搬送方向が共に搬送ロボット7の前後方向となるように互いに背中合わせに一列に配置されていた。これに対して、第3実施形態の搬送ロボット7Bでは、第1コンベア12A及び第2コンベア12Bは、ラック50の搬送方向が共に搬送ロボット7Bの幅方向となるように、搬送ロボット7Bの前後方向に沿って互いに横並びに配置されている。
【0077】
また、第3実施形態の搬送ロボット7Bでは、車体10の一方側の側面(
図15では上側の側面)であって、第1コンベア12Aに対応する位置に第1ロボット側位置決め部16Aが設けられるとともに、第2コンベア12Bに対応する位置に第2ロボット側位置決め部16Bが設けられている。
【0078】
第3実施形態に係る搬送ロボット7Bでは、
図16に示すようにしてラック50が搬送される。
図16は、搬送ロボット7Bによるラック50の搬送動作の一部を模式的に示した説明図である。
【0079】
搬送ロボット7Bは、まず、補給用ラック50aを第1保管装置6Aから受け取り、
図16(a)に示すように、当該ラック50を第2コンベア12Bに搭載した状態で、第1コンベア12A側を先頭として生産ラインPLに沿って走行する。そして、第1コンベア12Aが、トレイフィーダ35Fのトレイ収納部40Aに対向する位置に到達すると、詳しくは筐体42のラック出入口421に対向する位置に到達すると一旦停止し、そのままY2方向に移動する。これにより搬送ロボット7Bが筐体42に対して位置決めされる。すなわち、第1ロボット側位置決め部16Aがフィーダ側位置決め部46に当接することにより、
図16(b)に示すように、第1コンベア12Aと前記ローラコンベア45とがラック出入口421を介してY方向に並んだ状態に、搬送ロボット7Bが位置決めされる。そしてこの状態で、トレイフィーダ35F(ローラコンベア45)から搬送ロボット7B(第1コンベア12A)に使用済ラック50bが受け渡される。
【0080】
使用済ラック50bの受け渡しが完了すると、搬送ロボット7Bは、
図16(c)に示すように、Y1方向に移動して位置決め状態を解除し、その後、X2方向に移動する。そして、第2コンベア12Bが筐体42のラック出入口421に対向する位置に到達すると一旦停止し、そのままY2方向に移動する。これにより搬送ロボット7Bが筐体42に対して位置決めされる。すなわち、第2ロボット側位置決め部16Bがフィーダ側位置決め部46に当接することにより、
図16(d)に示すように、ラック出入口421を介して第2コンベア12Bとトレイ収納部40Aの前記ローラコンベア45とがY方向に並んだ状態に、搬送ロボット7Bが位置決めされる。そしてこの状態で、搬送ロボット7B(第2コンベア12B)からトレイフィーダ35F(ローラコンベア45)へ補給用ラック50aが受け渡される。
【0081】
補給用ラック50aの受け渡しが完了すると、搬送ロボット7Bは、Y1方向に移動して筐体42に対する位置決め状態を解除し、その後、X2方向に走行することにより、生産ラインPLに沿って走行する。
【0082】
以上のように、第3実施形態の搬送ロボット7Bでは、第1コンベア12A及び第2コンベア12Bが搬送ロボット7Bの前後方向に互いに横並びに配置されている。この搬送ロボット7Bによれば、X方向に走行しながら位置決め時にY方向に移動するだけで、使用済ラック50b及び補給用ラック50aの受け渡しを行うことが可能となる。つまり、第1実施形態のような、搬送ロボット7の全体を旋回させる動作が不要となる。従って、その分、第3実施液体の搬送ロボット7Bによれば、トレイフィーダ35Fに対する部品補給作業の効率化を図ることができる。
【0083】
また、この搬送ロボット7Bによれば、常にその長手方向がX方向と平行となるようにトレイフィーダ35Fに対して配置される。そのため、ラック50の受け渡し作業中、長手方向がX方向と直交するように(Y方向となるように)配置する必要がある第1、第2実施形態の搬送ロボット7、7Aと比較すると、トレイフィーダ35FのY1側に要求されるスペースが少ない。そのため、第3実施形態の搬送ロボット7Bは、複数の生産ラインPLが比較的狭い間隔で隣接して設けられるような場合に都合がよい構成と言える。
【0084】
なお、
図15に示す搬送ロボット7Bでは、車体10の一方側の側面(
図15では上側の側面)にのみ、ロボット側位置決め部16A、16Bが設けられているが、他方側の側面(
図15の下側の側面)についても、同様のロボット側位置決め部16A、16Bが設けられていてもよい。この構成によれば、搬送ロボット7Bの進行方向に対してして左右何れの側にトレイフィーダ35Fが配置されている場合であっても、既述したようなラック50の搬送動作を行うことが可能となる。
【0085】
[変形例]
以上説明した搬送ロボット7、7A,7Bや、これらを備える部品実装システム100は、本発明に係る搬送ロボット及び部品実装システムの好ましい実施形態の一例であって、これらの具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、以下のような構成も本発明に属する。
【0086】
(1)実施形態の部品実装システム100では、トレイフィーダ35Fに対する補給用ラック50aと使用済ラック50bとの交換を1台の搬送ロボット7(7A、7B)が行っているが、異なる搬送ロボット7が行う構成でもよい。すなわち、運用上、ラック回収専用の搬送ロボット7と、ラック供給専用の搬送ロボット7を設けてもよい。この場合には、例えば、ラック回収専用の搬送ロボット7は、生産ラインPLを走行しながら2台の部品実装装置3(トレイフィーダ35F)から各々第1コンベア12A及び第2コンベア12Bに使用済ラック50bを受け取る。一方、ラック供給専用の搬送ロボット7は、第1コンベア12A及び第2コンベア12Bに各々補給用ラック50aを搭載した状態で、回収専用の搬送ロボット7の後を走行し、回収専用の搬送ロボット7により使用済ラック50bが回収されたトレイフィーダ35Fに対して補給用ラック50aを供給する。
【0087】
(2)第1実施形態に係る搬送ロボット7は、2つのローラコンベア(第1コンベア12A及び第2コンベア12B)を備えているが、ローラコンベアの数は1つであってもよい。この場合には、トレイフィーダ35Fに対して、補給用ラック50aの供給と使用済ラック50bの回収とを異なる搬送ロボット7が行うようにすればよい。
【0088】
(3)実施形態では、搬送ロボット7、7A,7Bは、本発明の「受け渡し部」としてローラコンベア(12A、12B)を備えている。しかし、ラック50を水平方向に移動させることにより、トレイフィーダ35F(ローラコンベア45)との間でラック50の受け渡しを行うことが可能であれば、「受け渡し部」は、ローラコンベアには限定されない。例えば、転動可能な複数のボール(球体)を備えたボールコンベアや、回転可能なドーナッツ状の複数のホイール(回転体)を備えたホイールコンベアであってもよい。この場合、ボールやホイールを回転駆動することで、ラック50に推力を与えることができる。また、「受け渡し部」は、ローラ、ボール及びホイールを適宜組合せて構成されるコンベアであってもよい。
【0089】
(4)実施形態の第1コンベア12A及び第2コンベア12Bでは、複数のローラ15のうち、一乃至複数のローラ15が駆動ローラとされ、当該駆動ローラの回転によりラック50を移動させる。つまり、駆動ローラの回転によりラック50に推力が付与される。しかし、複数のローラ15は全て従動ローラ(フリーローラ)とされ、ラック50に推力を付与するための機構(推力付与機構)が別に設けられることによって、本発明の「受け渡し部」が構成されていてもよい。例えば、モータやエアシリンダの作動によりラック50を押圧するような推力付与機構を設けるようにしてもよい。上記ボールコンベアやホイールコンベアが適用される場合も同じである。
【0090】
(5)実施形態のトレイフィーダ35Fは、本発明の「ラック支持部」としてローラコンベア45を備えているが、ラック50を水平方向に出し入れ可能に支持できれば、「ラック支持部」は、ローラコンベア45には限定されない。既述のボールコンベアやホイールコンベアであってもよい。また、ローラ、ボール及びホイールを適宜組合せて構成されるコンベアであってもよい。
【0091】
(6)実施形態のトレイフィーダ35Fでは、ローラコンベア45の複数のローラ451のうち、一乃至複数のローラ451が駆動ローラとされ、当該駆動ローラの回転によりラック50を移動させる。しかし、複数のローラ451は全て従動ローラ(フリーローラ)とされ、ラック50に推力を付与するための別の機構が設けられていてもよい。上記ボールコンベアやホイールコンベアが適用される場合も同じである。
【0092】
以上説明した実施形態について本発明をまとめると以下の通りである。
【0093】
本発明の一局面に係る搬送ロボットは、複数のトレイが収納されたラックを有する部品供給部を備え、前記トレイに収容された部品を取り出して基板に実装する部品実装装置の前記部品供給部(トレイフィーダ)に対して、前記ラックの受け渡しを行うことが可能な自走式の搬送ロボットであって、前記部品供給部は、前記ラックを水平方向に出し入れ可能に支持するラック支持部を備えており、当該搬送ロボットは、床面に沿って走行する、走行輪を備えた走行部と、前記ラックを支持することが可能なように前記走行部に設けられ、かつ前記ラックを水平方向に移動させることにより、前記ラック支持部との間で前記ラックの受け渡しを行う受け渡し部とを備えている。
【0094】
この搬送ロボットによれば、ラックを支持して自走するとともに、部品供給部(トレイフィーダ)との間で当該ラックの受け渡しを行うことが可能となる。そのため、当該部品供給部に対する部品補給作業の自動化に寄与し得る。特に、部品供給部にて対してラック単位で部品補給を行うことが可能なため、上記部品供給部に対する部品補給作業の効率化が図られる。
【0095】
上記の搬送ロボットにおいて、前記受け渡し部は、例えば、前記ラックの受け渡しの際に当該ラックに推力を付与することが可能な少なくとも一つの駆動ローラを含む、複数のローラを備えたローラコンベアからなる。
【0096】
この搬送ロボットの構成によれば、ローラ上にラックを支持した状態で、駆動ローラの回転により円滑にラックを移動させることができる。そのため、搬送ロボットと部品供給部との間のラックの受け渡しの円滑化に寄与する。
【0097】
上記の搬送ロボットは、前記部品供給部に対して当該搬送ロボットを位置決めする位置決め部をさらに備えているのが好適である。
【0098】
この構成によれば、部品供給部に対する搬送ロボットの位置ずれが抑制ないし防止される。そのため、部品供給部と搬送ロボットとの間のラックの受け渡しの安定性や確実性が向上する。
【0099】
上記の搬送ロボットにおいて、前記受け渡し部は、前記ラックの受け渡しの際に、当該ラックを案内するガイド部を備えているのが好適である。
【0100】
この構成によれば、ラック受け渡しの際のラックの位置ずれを抑制ないし防止して、ラックの受け渡しをより円滑に行うことが可能となる。
【0101】
上記の搬送ロボットにおいて、前記受け渡し部は、各々が前記ラック支持部との間で前記ラックの受け渡しが可能な第1受け渡し部及び第2受け渡し部を含むのが好適である。
【0102】
この構成によれば、部品供給部に対する部品補給作業をより効率的に行うことが可能となる。例えば、第1受け渡し部にのみ補給用のラックを支持して走行し、まず、部品供給部から第2受け渡し部に使用済みのラックを受け取り、その後、補給用のラックを第1受け渡し部から部品供給部に受け渡すことができる。この場合には、1台の搬送ロボットで、使用済みラックの回収作業と補給用ラックの受け渡し作業を部品供給部に対して連続して行うことが可能となる。
【0103】
この場合、搬送ロボットは、前記第1受け渡し部及び前記第2受け渡し部を支持し、かつ前記走行部に対して旋回可能なテーブル部を備え、前記第1受け渡し部及び前記第2受け渡し部は、前記ラックを移動させる方向と同方向に、互いに背中合わせに一列に並んだ状態で前記テーブル上に配置されている構成でもよい。
【0104】
この構成によれば、部品供給部に対向する位置に搬送ロボットを配置した状態で、テーブルのみを旋回させることで、第1受け渡し部が部品供給部に対向する状態と、第2受け渡し部が部品供給部に対向する状態とを切り替えることが可能となる。そのため、既述のような、使用済みラックの回収作業と補給用ラックの受け渡し作業を、走行部を停止させた状態で速やかに行うことが可能となる。
【0105】
なお、前記送ロボットにおいては、前記第1受け渡し部及び前記第2受け渡し部は、前記ラックを移動させる方向と直交する方向に互いに横並びに配置されていてもよい。
【0106】
この構成によれば、前記第1受け渡し部と前記第2受け渡し部との並び方向に搬送ロボットを移動させながら、既述のような、使用済みラックの回収作業と補給用ラックの受け渡し作業を行うことが可能となる。
【0107】
上記の搬送ロボットにおいて、前記走行輪は、メカナムホイール及び/又はオムニホイールからなるのが好適である。
【0108】
この構成によれば、搬送ロボットの走行方向の自由度が高くなる。そのため、部品供給部に対する搬送ロボットの位置決め等を、必要最小限の移動で達成することが可能となる。
【0109】
一方、本発明に係る部品実装システムは、複数のトレイが収納されたラックを有する部品供給部を備え、前記トレイに収容された部品を取り出して基板に実装する部品実装装置と、前記部品供給部に対して、前記ラックの受け渡しを行うことが可能な自走式の搬送ロボットと、を含み、前記部品供給部は、前記ラックを水平方向に出し入れ可能に支持するラック支持部を備えており、前記搬送ロボットは、床面に沿って走行する、走行輪を備えた走行部と、前記ラックを支持することが可能なように前記走行部に設けられ、かつ前記ラックを水平方向に移動させることにより、前記ラック支持部との間で前記ラックの受け渡しを行う受け渡し部とを備えている。
【0110】
この部品実装ステムによれば、既述の搬送ロボットを備えているので、部品供給部に対する部品補給作業の自動化を図りながら、効率良く部品実装基板を生産することが可能となる。