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  • 特許-基板の処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-25
(45)【発行日】2025-04-02
(54)【発明の名称】基板の処理方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/42 20060101AFI20250326BHJP
【FI】
G03F7/42
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024188438
(22)【出願日】2024-10-25
【審査請求日】2024-12-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】山田 晃平
(72)【発明者】
【氏名】小受 敦志
(72)【発明者】
【氏名】西 勲
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-100555(JP,A)
【文献】特開平07-235487(JP,A)
【文献】特開2002-131932(JP,A)
【文献】特開2003-122029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程1、工程2及び工程3を含む、基板の処理方法。
工程1:脂肪族第4級アンモニウム水酸化物及びアルカノールアミンを含む水溶液(A液)を使用して得られた処理液を用いて、樹脂マスクを有する基板を処理する工程
工程2:工程1で使用した後の処理液(C液)中の炭酸イオンの濃度(炭酸濃度)を決定する工程
工程3:工程2で決定した処理液(C液)中の炭酸濃度から、C液中で前記炭酸の中和に消費されている脂肪族第4級アンモニウム水酸化物と同量の脂肪族第4級アンモニウム水酸化物を含有するA液に含まれるアルカノールアミンの量を算出する工程
【請求項2】
さらに、工程4:工程3で算出したアルカノールアミン量に基づいて前記C液に前記A液を混合し、再利用処理液を調製する工程を含む、請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
工程4は、工程3で算出したアルカノールアミン量に基づいて前記C液に有機溶剤及びアルカノールアミンを含む水溶液(B液)を混合する工程を含む、請求項2に記載の処理方法。
【請求項4】
下記工程1、工程2及び工程3を含む、基板の処理方法。
工程1:脂肪族第4級アンモニウム水酸化物及びアルカノールアミンを含む水溶液(A液)と、有機溶剤及びアルカノールアミンを含む水溶液(B液)とを混合して得られた処理液を用いて、樹脂マスクを有する基板を処理する工程
工程2:工程1で使用した後の処理液(C液)中の炭酸イオンの濃度(炭酸濃度)を決定する工程
工程3:工程2で決定した処理液(C液)中の炭酸濃度から、C液中で前記炭酸の中和に消費されている脂肪族第4級アンモニウム水酸化物と同量の脂肪族第4級アンモニウム水酸化物を含有するA液に含まれるアルカノールアミンの量を算出する工程
【請求項5】
さらに、工程4:工程3で算出したアルカノールアミン量に基づいて前記C液に前記A液を混合し、再利用処理液を調製する工程を含む、請求項4に記載の処理方法。
【請求項6】
工程4は、工程3で算出したアルカノールアミン量に基づいて前記C液に前記B液を混合する工程を含む、請求項5に記載の処理方法。
【請求項7】
工程3は、下記式(I)を用いて前記アルカノールアミンの量を算出することを含む、請求項1又は4に記載の基板の処理方法。
アルカノールアミンの量(質量%)=[C液中の炭酸濃度(mol/L)×C×脂肪族第4級アンモニウム水酸化物のモル質量(g/mol)]÷A液中の脂肪族4級アンモニウム水酸化物量(質量%)×A液中のアルカノールアミン量(質量%) (I)
ただし、上記式(I)中、係数Cは中和度、中和付加数及び単位換算係数に基づいて決定される係数であり、0.01~1の範囲の値である。
【請求項8】
前記C液における炭酸イオンに対する脂肪族第4級アンモニウム水酸化物のモル比が0.01以上100以下である、請求項1又は4に記載の基板の処理方法。
【請求項9】
請求項1又は4に記載の基板の処理方法を用いて、樹脂マスクを有する基板から樹脂マスクを剥離することを含む、樹脂マスクの剥離方法。
【請求項10】
請求項1又は4に記載の基板の処理方法を含む、電子部品基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータや各種電子デバイスにおいては、低消費電力化、処理速度の高速化、小型化が進み、これらに搭載されるパッケージ基板などの配線は年々微細化が進んでいる。このような微細配線並びにピラーやバンプといった接続端子形成にはこれまでメタルマスク法が主に用いられてきたが、汎用性が低いことや配線等の微細化への対応が困難になってきたことから、他の新たな方法へと変わりつつある。
【0003】
新たな方法の一つとして、ドライフィルムレジストをメタルマスクに代えて厚膜樹脂マスクとして使用する方法が知られている。この樹脂マスクは最終的に剥離・除去されるが、その際にアルカリ性の剥離剤組成物(剥離用洗浄剤)が使用される。
【0004】
アルカリ性の剥離剤組成物としては、アルカリ、有機溶剤などの混合溶液が用いられている。このような剥離剤組成物は、レジストの溶解や、空気中の炭酸ガスとの反応等によって劣化が進行し、剥離性能(樹脂マスク除去性)が低下することが報告されている。そのため、剥離剤組成物の劣化を抑制して長寿命化する方法が各種検討されている。
例えば、特許文献1では、レジスト剥離液に吸収される炭酸ガスがレジスト剥離性を低下させる主要因であることを見出し、レジスト剥離液中の炭酸ガス濃度を3重量%以下に維持するレジスト剥離液の管理方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-122029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プリント基板等に微細配線を形成する上で、樹脂マスクの残存はもちろんのこと、微細配線やバンプ形成に用いられるはんだやめっき液等に含まれる助剤等の残存を低減するため、剥離剤組成物(処理液)には高い剥離性能(樹脂マスク除去性、洗浄性)が要求される。
また、剥離剤組成物を循環使用する場合、剥離剤組成物中のアルカリ成分や剥離剤組成物に存在する炭酸濃度が変化していくため、濃度分析結果に応じて剥離剤組成物を補充したり交換したりする必要がある。補充する成分の量や混合割合は、剥離剤組成物の組成が適切に維持し、樹脂マスク除去性(剥離性)が低下しないように管理することが求められる。
例えば、処理液の成分の1つとしてTMAH等の脂肪族第4級アンモニウム水酸化物が使用される場合、剥離剤組成物に溶解した炭酸イオンを中和するために脂肪族第4級アンモニウム水酸化物が消費される。
また、脂肪族第4級アンモニウム水酸化物の供給原料液にアルカノールアミン等の他の剥離剤成分の一部が含まれるものが使用される場合もある。
炭酸を含む使用後処理液に上述のような供給原料液を添加して再利用処理液を調製する場合、再利用処理液の機能性の低下を抑制するために、調製に用いる新たな指標が必要であると考えられる。
【0007】
そこで、本開示は、再利用処理液の調製のための新たな指標を算出する工程を含む、樹脂マスク除去性(剥離性)に優れる基板処理方法及び樹脂マスクの剥離方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、一態様において、下記工程1、工程2及び工程3を含む、基板の処理方法に関する。
工程1:脂肪族第4級アンモニウム水酸化物及びアルカノールアミンを含む水溶液(A液)を使用して得られた処理液を用いて、樹脂マスクを有する基板を処理する工程
工程2:工程1で使用した後の処理液(C液)中の炭酸イオンの濃度(炭酸濃度)を決定する工程
工程3:工程2で決定した処理液(C液)中の炭酸濃度から、C液中で前記炭酸の中和に消費されている脂肪族第4級アンモニウム水酸化物と同量の脂肪族第4級アンモニウム水酸化物を含有するA液に含まれるアルカノールアミンの量を算出する工程
【0009】
本開示は、一態様において、下記工程1、工程2及び工程3を含む、基板の処理方法に関する。
工程1:脂肪族第4級アンモニウム水酸化物及びアルカノールアミンを含む水溶液(A液)と、有機溶剤及びアルカノールアミンを含む水溶液(B液)とを混合して得られた処理液を用いて、樹脂マスクを有する基板を処理する工程
工程2:工程1で使用した後の処理液(C液)中の炭酸イオンの濃度(炭酸濃度)を決定する工程
工程3:工程2で決定した処理液(C液)中の炭酸濃度から、C液中で前記炭酸の中和に消費されている脂肪族第4級アンモニウム水酸化物と同量の脂肪族第4級アンモニウム水酸化物を含有するA液に含まれるアルカノールアミンの量を算出する工程
【0010】
本開示は、一態様において、本開示の基板の処理方法を用いて、樹脂マスクを有する基板から樹脂マスクを剥離することを含む、樹脂マスクの剥離方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、再利用処理液の調製のための新たな指標を算出する工程を含む、樹脂マスク除去性(剥離性)に優れる基板処理方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、被洗浄基板の基板表面の外観の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
剥離剤組成物を循環使用する場合、上述したとおり、剥離剤組成物中のアルカリ成分や剥離剤組成物に存在する炭酸濃度が変化していくため、濃度分析結果に応じて剥離剤組成物を補充したり交換したりする必要がある。
剥離剤組成物中の炭酸は、強アルカリである脂肪族第4級アンモニウム水酸化物を用いて中和できる。そのため、炭酸を含む剥離剤組成物に脂肪族第4級アンモニウム水酸化物の水溶液を補充する場合、脂肪族第4級アンモニウム水酸化物の水溶液の補充量には、樹脂マスク剥離処理に必要な量だけでなく、炭酸の中和に必要となる量を含めることになる。
補充する脂肪族第4級アンモニウム水酸化物の水溶液にアルカノールアミンが含まれていることがある。
本発明者らが鋭意検討した結果、補充する脂肪族第4級アンモニウム水酸化物の水溶液に含まれるアルカノールアミンの量を考慮して補充しないと、剥離剤組成物の組成が適切に維持されず、樹脂マスク除去性(剥離性)が低下することがあることがわかった。
そこで、本開示は、一又は複数の実施形態において、炭酸イオンを含有するアルカリ性の剥離剤組成物(使用後の処理液)(C液)に、脂肪族第4級アンモニウム水酸化物及びアルカノールアミンを含む水溶液(A液)を補充する場合、基板処理に使用後の処理液中の炭酸濃度から、炭酸の中和に消費された脂肪族第4級アンモニウム水酸化物量を算出し、該脂肪族第4級アンモニウム水酸化物量に相当するA液に含まれるアルカノールアミン量という新たな指標を考慮して再利用処理液を調製することで、樹脂マスク剥離性(除去性)を向上できるという知見に基づく。
【0014】
すなわち、本開示は、一態様において、下記工程1、工程2及び工程3を含む、基板の処理方法(以下、「本開示の基板処理方法」ともいう)に関する。
工程1:脂肪族第4級アンモニウム水酸化物及びアルカノールアミンを含む水溶液(A液)を使用して得られた処理液を用いて、樹脂マスクを有する基板を処理する工程
工程2:工程1で使用した後の処理液(C液)中の炭酸イオンの濃度(炭酸濃度)を決定する工程
工程3:工程2で決定した処理液(C液)中の炭酸濃度から、C液中で前記炭酸の中和に消費されている脂肪族第4級アンモニウム水酸化物と同量の脂肪族第4級アンモニウム水酸化物を含有するA液に含まれるアルカノールアミンの量を算出する工程
本開示は、その他の態様において、下記工程1、工程2及び工程3を含む、基板の処理方法(以下、「本開示の基板処理方法」ともいう)に関する。
工程1:脂肪族第4級アンモニウム水酸化物及びアルカノールアミンを含む水溶液(A液)と、有機溶剤及びアルカノールアミンを含む水溶液(B液)とを混合して得られた処理液を用いて、樹脂マスクを有する基板を処理する工程
工程2:工程1で使用した後の処理液(C液)中の炭酸イオンの濃度(炭酸濃度)を決定する工程
工程3:工程2で決定した処理液(C液)中の炭酸濃度から、C液中で前記炭酸の中和に消費されている脂肪族第4級アンモニウム水酸化物と同量の脂肪族第4級アンモニウム水酸化物を含有するA液に含まれるアルカノールアミンの量を算出する工程
【0015】
本開示によれば、再利用処理液の調製のための新たな指標を算出する工程を含む、樹脂マスク剥離性(除去性)に優れる基板処理方法を提供できる。そして、本開示の基板処理方法を用いることで、高い収率で高品質の電子部品を得ることができる。
【0016】
本開示において樹脂マスクとは、エッチング、めっき、加熱等の処理から物質表面を保護するためのマスク、すなわち、保護膜として機能するマスクである。
樹脂マスクとしては、一又は複数の実施形態において、露光及び現像工程後のレジスト層、露光及び現像の少なくとも一方の処理が施された(以下、「露光及び/又は現像処理された」ともいう)レジスト層、あるいは、硬化したレジスト層が挙げられる。
また、樹脂マスクは、一又は複数の実施形態において、光や電子線等によって現像液に対する溶解性等の物性が変化するレジストを用いて形成されるものである。レジストは、光や電子線との反応方法から、ネガ型とポジ型に大きく分けられている。ネガ型レジストは、露光されると現像液に対する溶解性が低下する特性を有し、ネガ型レジストを含む層(以下、「ネガ型レジスト層」ともいう)は、露光及び現像処理後に露光部が樹脂マスクとして使用される。ポジ型レジストは、露光されると現像液に対する溶解性が増大する特性を有し、ポジ型レジストを含む層(以下、「ポジ型レジスト層」ともいう)は、露光及び現像処理後に露光部が除去され、未露光部が樹脂マスクとして使用される。このような特性を有する樹脂マスクを使用することで、金属配線、金属ピラーやハンダバンプといった回路基板の微細な接続部を形成することができる。
樹脂マスクを形成する樹脂材料としては、一又は複数の実施形態において、フィルム状の感光性樹脂、レジストフィルム、又はフォトレジストが挙げられる。レジストフィルムは汎用のものを使用できる。
【0017】
[工程1]
本開示の基板処理方法における工程1は、一又は複数の実施形態において、脂肪族第4級アンモニウム水酸化物及びアルカノールアミンを含む水溶液(A液)を使用して得られた処理液を用いて、樹脂マスクを有する基板を処理する工程である。
工程1は、その他の一又は複数の実施形態において、脂肪族第4級アンモニウム水酸化物及びアルカノールアミンを含む水溶液(A液)と、有機溶剤及びアルカノールアミンを含む水溶液(B液)とを混合して得られた処理液を用いて、樹脂マスクを有する基板を処理する工程である。
【0018】
<A液>
A液は、脂肪族第4級アンモニウム水酸化物及びアルカノールアミンを含む水溶液であり、一又は複数の実施形態において、必要に応じて任意成分(後述するその他の成分)を含有する。
A液は、一又は複数の実施形態において、脂肪族第4級アンモニウム水酸化物、アルカノールアミン、水及び必要に応じて任意成分(後述するその他の成分)を公知の方法で配合することにより得ることができる。ここで「配合する」とは、脂肪族第4級アンモニウム水酸化物、アルカノールアミン、水及び必要に応じて任意成分(後述するその他の成分)を同時に又は任意の順に混合することを含む。
A液を準備する方法としては、脂肪族第4級アンモニウム水酸化物及びアルカノールアミンを含む水溶液を入手してもよいし、脂肪族第4級アンモニウム水酸化物及びアルカノールアミンを含む水溶液を自ら調製してもよい。
A液は、一又は複数の実施形態において、使用により少なくなった処理液(C液)の剥離剤組成物成分を補充するための補充液である。
【0019】
(A液中の脂肪族第4級アンモニウム水酸化物)
A液が含有する脂肪族第4級アンモニウム水酸化物としては、例えば、下記式(II)で表される第4級アンモニウム水酸化物が挙げられる。脂肪族第4級アンモニウム水酸化物は、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
【化1】
上記式(II)において、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基及びヒドロキシプロピル基から選ばれる少なくとも1種である。
式(II)で表される第4級アンモニウム水酸化物は、第4級アンモニウムカチオンとヒドロキシドとからなる塩であり、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(コリン)、2-ヒドロキシエチルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシエチルトリプロピルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシプロピルトリプロピルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、ジエチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、ジプロピルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムヒドロキシド、トリス(2-ヒドロキシエチル)エチルアンモニウムヒドロキシド、トリス(2-ヒドロキシエチル)プロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラキス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、及びテトラキス(2-ヒドロキシプロピル)アンモニウムヒドロキシドから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらの中でも、樹脂マスク剥離性(除去性)向上の観点から、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)が好ましい。
A液中の脂肪族第4級アンモニウム水酸化物の含有量は、樹脂マスク剥離性(除去性)向上の観点から、2質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。より具体的には、A液中の脂肪族第4級アンモニウム水酸化物の含有量は、2質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましく、20質量%以上30質量%以下が更に好ましい。脂肪族第4級アンモニウム水酸化物が2種以上の組合せである場合、A液中の脂肪族第4級アンモニウム水酸化物の含有量はそれらの合計含有量である。
【0020】
(A液中のアルカノールアミン)
A液が含有するアルカノールアミン(アミノアルコール)としては、例えば、下記式(I)で表される化合物が挙げられる。アルカノールアミンは、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
【化2】
上記式(I)において、R1は、水素原子、メチル基、エチル基又はアミノエチル基を示し、R2は、水素原子、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、メチル基又はエチル基を示し、R3は、ヒドロキシエチル基又はヒドロキシプロピル基を示す。
成分Aとしては、例えば、モノエタノールアミン(MEA)、モノイソプロパノールアミン、N-メチルモノエタノールアミン、N-メチルイソプロパノールアミン、N-エチルモノエタノールアミン、N-エチルイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N-ジメチルモノエタノールアミン、N-ジメチルモノイソプロパノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-メチルジイソプロパノールアミン、N-ジエチルモノエタノールアミン、N-ジエチルモノイソプロパノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-エチルジイソプロパノールアミン、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン、N-(β-アミノエチル)イソプロパノールアミン、N-(β-アミノエチル)ジエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)ジイソプロパノールアミンから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらの中でも、樹脂マスク剥離性(除去性)向上の観点から、モノエタノールアミン(MEA)が好ましい。
A液がアルカノールアミンを含有する場合、A液中のアルカノールアミンの含有量は、樹脂マスク剥離性(除去性)向上の観点から、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上が更に好ましく、そして、樹脂マスク剥離性(除去性)向上、基板ダメージの観点から、80質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。より具体的には、A液中のアルカノールアミンの含有量は、1質量%以上80質量%以下が好ましく、3質量%以上75質量%以下がより好ましく、5質量%以上50質量%以下がより更に好ましい。アルカノールアミンが2種以上の組合せである場合、A液中のアルカノールアミンの含有量はそれらの合計含有量である。
【0021】
(A液中の水)
A液中の水の含有量は、樹脂マスク剥離性(除去性)向上の観点から、10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、95質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましい。より具体的には、A液中の水の含有量は、10質量%以上95質量%以下が好ましく、30質量%以上85質量%以下がより好ましく、50質量%以上80質量%以下が更に好ましい。
【0022】
(A液中のその他の成分)
A液は、一又は複数の実施形態において、その他の成分をさらに含有するものであってもよい。その他の成分としては、通常の洗浄剤に用いられうる成分を挙げることができ、例えば、上述したアルカノールアミン及び脂肪族第4級アンモニウム水酸化物以外のアルカリ剤、上述したアルカノールアミン以外のアミン、有機溶剤、界面活性剤、キレート剤、増粘剤、分散剤、防錆剤、高分子化合物、可溶化剤、酸化防止剤、防腐剤、消泡剤、抗菌剤等が挙げられる。
A液は、一又は複数の実施形態において、インヒビターを含有しない。
【0023】
<B液>
B液は、一又は複数の実施形態において、有機溶媒及びアルカノールアミンを含む水溶液であり、必要に応じて後述する任意成分(インヒビター、アルカリ金属水酸化物、その他の成分)をさらに含有することができる。
B液は、一又は複数の実施形態において、有機溶媒、アルカノールアミン、水及び必要に応じて後述する任意成分(インヒビター、アルカリ金属水酸化物、その他の成分)を公知の方法で配合することにより得ることができる。ここで、「配合する」とは、有機溶媒、アルカノールアミン、水及び必要に応じて後述する任意成分(インヒビター、アルカリ金属水酸化物、その他の成分)を同時に又は任意の順に混合することを含む。
B液を準備する方法としては、有機溶媒及びアルカノールアミンを含む水溶液を入手してもよいし、有機溶媒及びアルカノールアミンを含む水溶液を自ら調製してもよい。
B液は、一又は複数の実施形態において、使用により少なくなった処理液(C液)の剥離剤組成物成分を補充するための補充液である。
【0024】
(B液中の有機溶媒)
B液が含有する有機溶媒としては、樹脂マスク剥離性(除去性)向上の観点から、好ましくはケトン又はアルコール化合物、より好ましくはグリコールエーテル、更に好ましくはブチルジグリコール(BDG)が挙げられる。有機溶媒は、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
B液が有機溶媒を含有する場合、B液中の有機溶媒の含有量は、安定性及び混合性の観点から、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、60質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。より具体的には、B液中の有機溶媒の含有量は、10質量%以上60質量%以下が好ましく、15質量%以上55質量%以下がより好ましく、20質量%以上50質量%以下が更に好ましい。有機溶媒が2種以上の組合せである場合、B液中の有機溶媒の含有量はそれらの合計含有量をいう。
【0025】
(B液中のアルカノールアミン)
B液が含有するアルカノールアミンとしては、上述したA液が含有するアルカノールアミンが挙げられる。
B液中のアルカノールアミンの含有量は、安定性及び混合性の観点から、15質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、35質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、60質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。より具体的には、B液中のアルカノールアミンの含有量は、15質量%以上60質量%以下が好ましく、25質量%以上55質量%以下がより好ましく、35質量%以上50質量%以下が更に好ましい。アルカノールアミンが2種以上の組合せである場合、B液中のアルカノールアミンの含有量はそれらの合計含有量である。
【0026】
(B液中の水)
B液が含有する水としては、例えば、イオン交換水、RO水、蒸留水、純水、超純水等が挙げられる。
B液中の水の含有量は、安定性及び混合性の観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、70質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。より具体的には、B液中の水の含有量は、5質量%以上70質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましく、15質量%以上20質量%以下が更に好ましい。
【0027】
(B液中のインヒビター)
B液は、一又は複数の実施形態において、インヒビターをさらに含有するものであってもよい。B液が含有するインヒビターとしては、インヒビターとしては、ヘテロ原子を含む化合物が挙げられ、具体的には、窒素原子、硫黄原子、酸素原子化合物が挙げられる。より具体的には、アゾール類が挙げられ、よりさらに具体的には、ピラゾール、メチルピラゾール、チアゾール、オキサゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジメチルベンゾトリアゾール、テトラゾール、トリアジン、テトラジン、ペンタゾール、イミダゾール、メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール、ジメチルベンゾイミダゾールから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらの中でも、樹脂マスク剥離性(除去性)向上の観点から、インヒビターは、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジメチルベンゾトリアゾール、イミダゾール、ジメチルベンゾイミダゾールから選ばれる少なくとも1種が好ましく、ベンゾトリアゾール、イミダゾール、ジメチルベンゾイミダゾールから選ばれる少なくとも1種がより好ましい。インヒビターは1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
B液中のインヒビターの含有量は、エッチング抑制の観点から、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、6質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1.5質量%以下が更に好ましい。より具体的には、B液中のインヒビターの含有量は、0.05質量%以上6質量%以下が好ましく、0.1質量%以上3質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上1.5質量%以下がより更に好ましい。インヒビターが2種以上の組合せである場合、B液中のインヒビターの含有量はそれらの合計含有量である。
【0028】
(B液中のアルカリ金属水酸化物)
B液は、一又は複数の実施形態において、アルカリ金属水酸化物をさらに含有するものであってもよい。B液が含有するアルカリ金属水酸化物としては、樹脂マスク剥離性(除去性)向上の観点から、好ましくは水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの少なくとも一方であり、更に好ましくは水酸化カリウムである。アルカリ金属水酸化物は、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
B液がアルカリ金属水酸化物を含有する場合、B液中のアルカリ金属水酸化物の含有量は、安定性及び混合性の観点から、0.3質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましい。より具体的には、B液中のアルカリ金属水酸化物の含有量は、0.3質量%以上10質量%以下が好ましく、1質量%以上8質量%以下がより好ましく、2質量%以上5質量%以下が更に好ましい。アルカリ金属水酸化物が2種以上の組合せである場合、B液中のアルカリ金属水酸化物の含有量はそれらの合計含有量をいう。
【0029】
(B液中のその他の成分)
B液は、一又は複数の実施形態において、その他の成分をさらに含有するものであってもよい。その他の成分としては、通常の洗浄剤に用いられうる成分を挙げることができ、例えば、上述したアルカノールアミン及びアルカリ金属水酸化物以外のアルカリ剤、上述したアルカノールアミン以外のアミン、上述した有機溶媒以外の有機溶媒、界面活性剤、キレート剤、増粘剤、分散剤、防錆剤、高分子化合物、可溶化剤、酸化防止剤、防腐剤、消泡剤、抗菌剤等が挙げられる。
【0030】
<処理液>
処理液は、一又は複数の実施形態において、A液を使用して得ることができ、例えば、脂肪族第4級アンモニウム、アルカノールアミン、水及び必要に応じて後述する任意成分(インヒビター、アルカリ金属水酸化物、有機溶媒、その他の成分)を含む。
処理液は、その他の一又は複数の実施形態において、A液とB液とを混合して得られる混合液であり、例えば、脂肪族第4級アンモニウム、アルカノールアミン、有機溶媒、水及び必要に応じて後述する任意成分(インヒビター、アルカリ金属水酸化物、その他の成分)を含む。
処理液は、一又は複数の実施形態において、脂肪族第4級アンモニウム、アルカノールアミン、水及び必要に応じて後述する任意成分(インヒビター、アルカリ金属水酸化物、有機溶媒、その他の成分)を公知の方法で配合することにより得ることができる。ここで、「配合する」とは、アルカノールアミン、水及び必要に応じて後述する任意成分(インヒビター、アルカリ金属水酸化物、有機溶媒、その他の成分)を同時に又は任意の順に混合することを含む。
混合方法は、公知の方法を用いることができ、混合条件は、適宜設定すればよい。
【0031】
前記処理液は、一又は複数の実施形態において、樹脂マスクを有する基板の処理に用いるための処理液、樹脂マスクを有する基板を洗浄するための樹脂マスク剥離用洗浄剤組成物、又は、樹脂マスクを有する基板から樹脂マスクを剥離するための剥離剤組成物である。
【0032】
(処理液中の脂肪族第4級アンモニウム水酸化物)
前記処理液が含有する脂肪族第4級アンモニウム水酸化物としては、上述したA液が含有する脂肪族第4級アンモニウム水酸化物が挙げられる。
前記処理液中の脂肪族第4級アンモニウム水酸化物の含有量は、樹脂マスク剥離性(除去性)向上の観点から、0.5質量%以上が好ましく、1.5質量%以上がより好ましく、3質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、7質量%以下が更に好ましい。より具体的には、前記処理液中の脂肪族第4級アンモニウム水酸化物の含有量は、0.5質量%以上15質量%以下が好ましく、1.5質量%以上10質量%以下がより好ましく、3質量%以上7質量%以下が更に好ましい。脂肪族第4級アンモニウム水酸化物が2種以上の組合せである場合、処理液中の脂肪族第4級アンモニウム水酸化物の含有量はそれらの合計含有量をいう。
【0033】
(処理液中のアルカノールアミン)
前記処理液が含有するアルカノールアミンとしては、上述したA液が含有する脂肪族アルカノールアミンが挙げられる。
前記処理液中のアルカノールアミンの含有量は、樹脂マスク剥離性(除去性)向上の観点から、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、8質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、18質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、12質量%以下が更に好ましい。より具体的には、前記処理液中のアルカノールアミンの含有量は、3質量%以上18質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下が好ましく、8質量%以上12質量%以下がより好ましい。アルカノールアミンが2種以上の組合せである場合、処理液中のアルカノールアミンの含有量はそれらの合計含有量である。
【0034】
(処理液中の水)
前記処理液中の水の含有量は、処理液全体から上述した成分(脂肪族第4級アンモニウム塩、アルカノールアミン、有機溶媒、インヒビター、アルカリ金属水酸化物、その他の成分)を除いた残余とすることができる。具体的には、前記処理液中の水の含有量は、樹脂マスク剥離性(除去性)向上の観点から、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、95質量%以下が好ましく、90質量%以下より好ましく、85質量%以下が更に好ましい。
【0035】
(処理液中の有機溶媒)
前記処理液が含有する有機溶媒としては、上述したB液が含有する有機溶媒が挙げられる。
前記処理液が有機溶媒を含む場合、前記処理液中の有機溶媒の含有量は、樹脂マスク剥離性(除去性)向上の観点から、2質量%以上が好ましく、4質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましい。より具体的には、前記処理液中の有機溶媒の含有量は、2質量%以上25質量%以下が好ましく、4質量%以上20質量%以下がより好ましく、10質量%以上15質量%以下がより好ましい。有機溶媒が2種以上の組合せである場合、処理液中の有機溶媒の含有量はそれらの合計含有量をいう。
【0036】
(処理液中のインヒビター)
前記処理液が含有するインヒビターとしては、上述したB液が含有するインヒビターが挙げられる。
前記処理液がインヒビターを含む場合、前記処理液中のインヒビターの含有量は、エッチング抑制の観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.02質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が更に好ましい。より具体的には、前記処理液中のインヒビターの含有量は、0.01質量%以上3質量%以下が好ましく、0.02質量%以上1質量%以下がより好ましく、0.05質量%以上0.5質量%以下がより更に好ましい。インヒビターが2種以上の組合せである場合、処理液中のインヒビターの含有量はそれらの合計含有量である。
【0037】
(処理液中のアルカリ金属水酸化物)
前記処理液が含有するアルカリ金属水酸化物としては、上述したB液が含有するアルカリ金属水酸化物が挙げられる。
前記処理液がアルカリ金属水酸化物を含む場合、前記処理液中のアルカリ金属水酸化物の含有量は、樹脂マスク剥離性(除去性)向上の観点から、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1.5質量%以下が更に好ましい。より具体的には、前記処理液中のアルカリ金属水酸化物の含有量は、0.1質量%以上3質量%以下が好ましく、0.2質量%以上2質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上1.5質量%以下が更に好ましい。アルカリ金属水酸化物が2種以上の組合せである場合、処理液中のアルカリ金属水酸化物の含有量はそれらの合計含有量をいう。
【0038】
(処理液中のその他の成分)
前記処理液は、一又は複数の実施形態において、その他の成分をさらに含有するものであってもよい。その他の成分としては、通常の洗浄剤(剥離剤)に用いられうる成分を挙げることができ、例えば、上述したアルカノールアミン及びアルカリ金属水酸化物以外のアルカリ剤、上述したアルカノールアミン以外のアミン、上述した有機溶媒以外の有機溶媒、界面活性剤、キレート剤、増粘剤、分散剤、防錆剤、高分子化合物、可溶化剤、酸化防止剤、防腐剤、消泡剤、抗菌剤等が挙げられる。
【0039】
本開示において「処理液中の各成分の含有量」とは、使用時、すなわち、処理液の基板処理(樹脂マスク剥離処理)への使用を開始する時点での各成分の含有量をいう。本開示において、処理液中の各成分の含有量は、一又は複数の実施形態において、処理液中の各成分の配合量とみなすことができる。
【0040】
(処理液のpH)
前記処理液のpHは、樹脂マスク剥離性(除去性)向上の観点から、好ましくは10以上、より好ましくは11以上、更に好ましくは12以上であり、そして、基板樹脂のダメージ抑制の観点から、好ましくは15以下、より好ましくは14.7以下、更に好ましくは14.5以下である。本開示において、処理液のpHは、25℃における値であり、pHメータを用いて測定でき、具体的には、実施例に記載の方法で測定できる。
【0041】
<被処理物>
被処理物は、一又は複数の実施形態において、樹脂マスクを有する基板である。
前記基板としては、例えば、プリント基板、ウエハ、銅板、アルミニウム板等が挙げられる。
前記樹脂マスクとしては、例えば、ネガ型樹脂マスクでもよいし、ポジ型樹脂マスクでもよく、本開示の効果が発揮されやすい点からは、ネガ型樹脂マスクが好ましい。ネガ型樹脂マスクとしては、例えば、露光及び/又は現像処理されたネガ型ドライフィルムレジストが挙げられる。
本開示においてネガ型樹脂マスクとは、ネガ型レジストを用いて形成されるものであり、例えば、露光及び/又は現像処理されたネガ型レジスト層が挙げられる。
本開示においてポジ型樹脂マスクとは、ポジ型レジストを用いて形成されるものであり、例えば、露光及び/又は現像処理されたポジ型レジスト層が挙げられる。
前記樹脂マスクの厚さとしては、例えば、5μm~35μm以下が挙げられる。
【0042】
前記樹脂マスクを有する基板(被洗浄物)としては、一又は複数の実施形態において、表面に金属層及び樹脂マスクを有する基板が挙げられる。
前記金属層は、一又は複数の実施形態において、銅めっき層である。銅めっき層は、例えば、電解銅めっき法により形成することができる。
前記金属層の厚さとしては、例えば、3μm以上30μm以下が挙げられる。
前記金属層は、一又は複数の実施形態において、金属配線や配線接続部として用いられる。
前記樹脂マスクとしては、一又は複数の実施形態において、金属層にパーフォレーション状に存在する樹脂マスク(樹脂マスク層)が挙げられる(図1参照)。前記樹脂マスクは、一又は複数の実施形態において、側面が金属層に囲まれている。前記樹脂マスク層の形状としては、一又は複数の実施形態において、多角(四角、六角、八角など)柱状、円柱状、略円柱状等が挙げられる。前記樹脂マスク層の直径(多角形の場合その外接円の直径)としては、例えば、20μm以上200μm以下が挙げられる。前記樹脂マスク層の厚さとしては、例えば、5μm以上50μm以下が挙げられる。
パーフォレーション状に存在する樹脂マスクの界面比率(μm-)(=樹脂マスクと金属層との界面線長(μm)/樹脂マスクの面積(μm2))としては、0.01以上0.5以下、又は、0.02以上0.2以下が挙げられる。ここで、樹脂マスクと金属層との界面線長とは、例えば、樹脂マスクが上面から見て円の場合、その円周の長さとなる。
このような構造の樹脂マスクを有する被洗浄物の樹脂マスクは、従来の剥離剤では剥離性が低下するという新たな問題が見出された。工程1で使用する処理液及び後述する再利用処理液は、一又は複数の実施形態において、このような構造の樹脂マスクを好適に剥離することができる。
本開示における被洗浄物としては、一又は複数の実施形態において、上述のような、金属層にパーフォレーション状に存在する樹脂マスクが少なくとも1つ付着した被洗浄物が挙げられる。
【0043】
前記樹脂マスクを有する基板(被処理物)としては、一又は複数の実施形態において、表面に金属層及び樹脂マスクを有する基板が挙げられる。
前記金属層は、一又は複数の実施形態において、銅めっき層である。銅めっき層は、例えば、電解銅めっき法により形成することができる。
前記金属層の厚さとしては、例えば、3μm以上30μm以下が挙げられる。
前記金属層は、一又は複数の実施形態において、金属配線や配線接続部として用いられる。
【0044】
前記樹脂マスクを有する基板(被処理物)としては、その他の一又は複数の実施形態において、例えば、表面に金属層及び樹脂マスクを有する電子部品及びその製造中間物が挙げられる。電子部品としては、例えば、プリント基板、ウエハ、銅板及びアルミニウム板等の金属板から選ばれる少なくとも1つの部品が挙げられる。前記製造中間物は、電子部品の製造工程における中間製造物であって、樹脂マスク処理後の中間製造物を含む。
被処理物の具体例としては、例えば、樹脂マスクを使用したはんだ付け及びめっき処理(銅めっき、アルミニウムめっき、ニッケルめっき、錫めっき等)の少なくとも一方の処理を行う工程を経ることにより、配線や接続端子等が基板表面に形成された電子部品等が挙げられる。本開示において、はんだ付けとは、基板上の樹脂マスク非存在部にはんだを存在させ、加熱によりはんだバンプ形成することをいう。本開示において、めっき処理とは、基板上の樹脂マスク非存在部に銅めっき、アルミニウムめっき、ニッケルめっき及び錫めっきから選ばれる少なくとも一種のめっき処理を行うことをいう。樹脂マスク非存在部とは、基板にラミネートされた樹脂マスクを現象処理することにより形成されたレジストパターン(パターン形状の樹脂マスク)において、現象処理により樹脂マスクが除去された部分のことである。
【0045】
前記樹脂マスクを有する基板(被処理物)としては、その他の一又は複数の実施形態において、微細な隙間にある樹脂マスクを有する基板が挙げられる。微細な隙間にある樹脂マスクを有する基板としては、例えば、基板表面に非硬化樹脂マスクを露光及び現像の少なくとも一方の硬化処理を行い、非硬化樹脂マスクを除去した後、めっき処理で回路パターンが形成された基板が挙げられる。形成された回路パターンの非めっき部分には硬化した樹脂マスクが存在している。
本開示において、隙間とは、一又は複数の実施形態において、回路パターン(細線部)間の距離(隣り合う細線部同士の間隔)をいい、スペース(S)ともよばれる。細線部の厚さ(めっき厚)としては、例えば、3μm以上30μm以下が挙げられる。細線部の幅は、ライン(L)ともよばれる。微細な隙間にある樹脂マスクとは、一又は複数の実施形態において、スペース幅(S)が10μm以下のスペースに存在する樹脂マスクをいう。前記樹脂マスクの厚さとしては、例えば、5μm以上35μm以下が挙げられる。微細な隙間にある樹脂マスクとしては、例えば、スペース幅(S)が4~7μmのスペースに存在する樹脂マスクが挙げられる。
【0046】
<処理>
前記工程1は、一又は複数の実施形態において、処理液を用いて樹脂マスクを有する基板(被処理物)を処理する工程(処理工程)を含む。
前記処理は、一又は複数の実施形態において、樹脂マスクを有する基板を洗浄すること、樹脂マスクを有する基板から樹脂マスクを剥離すること、及び樹脂マスクを有する基板から樹脂マスクを除去することを含む。
前記処理工程は、一又は複数の実施形態において、処理液を被処理物に接触させることを含む。
【0047】
本開示において、処理液を用いて被処理物から樹脂マスクを剥離する方法、又は、処理液を被処理物に接触させる方法としては、例えば、処理液を入れた洗浄浴槽内へ浸漬することで接触させる方法、処理液をスプレー状に射出して接触させる方法(シャワー方式)、処理液への浸漬中に超音波照射する超音波洗浄方法等が挙げられる。
本開示における処理液は、希釈することなくそのまま洗浄に使用できる。
被処理物としては、上述した被処理物を挙げることができる。
例えば、処理工程は、一又は複数の実施形態において、混合工程で得られた処理液を、樹脂マスクを有する基板(被処理物)に対してスプレー塗布することを含む。
処理液を被処理物に接触又は浸漬させる時間(接触時間又は浸漬時間)としては、例えば、1分以上10分以下、更には2分以上6分以下が挙げられる。
処理液をスプレー状に射出して接触させる場合、スプレー時間としては、例えば、1分以上10分以下、更には2分以上6分以下が挙げられる。
【0048】
前記処理工程において、処理液の剥離洗浄力(樹脂マスク剥離性、樹脂マスク除去性)が発揮されやすい点から、処理液と被処理物との接触時に超音波を照射することが好ましく、その超音波は比較的高周波数であることがより好ましい。前記超音波の照射条件は、同様の観点から、例えば、26~72kHz、80~1500Wが好ましく、36~72kHz、80~1500Wがより好ましい。
【0049】
前記処理工程において、処理液の剥離洗浄力(樹脂マスク剥離性、樹脂マスク除去性)が発揮されやすい点から、処理液の使用時の温度(処理温度)は40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、そして、基板に対する影響低減の観点から、70℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましい。
【0050】
前記処理工程は、一又は複数の実施形態において、混合工程で得た処理液に被処理物を接触させた後、水でリンスし、乾燥することをさらに含むことができる。リンス方法としては、例えば、流水リンスが挙げられる。乾燥方法としては、例えば、エアブロー乾燥が挙げられる。
前記処理工程は、一又は複数の実施形態において、混合工程で得た処理液に被処理物を接触させた後、水ですすぐことをさらに含むことができる。
【0051】
[工程2:炭酸濃度]
本開示の基板処理方法における工程2は、工程1で使用した後の処理液(C液)中の炭酸イオンの濃度(炭酸濃度)を決定する工程である。
炭酸濃度を決定する方法としては、一又は複数の実施形態において、使用後の処理液中の炭酸濃度を測定する方法、処理した基板の枚数から算出する方法等が挙げられる。処理した基板の枚数から算出するとは、例えば、処理した基板の枚数、基板1枚の処理に要する時間と単位時間あたりの炭酸濃度の増加量により算出することができる。
【0052】
(C液中の炭酸)
本開示におけるC液は、一又は複数の実施形態において、炭酸ガスが処理工程中あるいは循環中に処理液に溶け込み炭酸(炭酸イオン)を含有することとなった処理液(剥離剤組成物)である。
工程1で使用した後の処理液(C液)に含有する炭酸(炭酸イオン)は、一又は複数の実施形態において、空気中の炭酸ガス等に由来するものである。
C液中の炭酸濃度(含有量)は、一般に、樹脂マスク剥離性(除去性)向上の観点から、より少ないことが好ましい。例えば、前記処理液中の炭酸濃度(含有量)は、樹脂マスク剥離性(除去性)向上の観点から、好ましくは10mоl/L以下、より好ましくは5mоl/L以下、更に好ましくは1mоl/L以下であり、そして、0.1mоl/L以上である。本開示において、処理液中の炭酸濃度は、電位差滴定を用いて測定できる。
【0053】
前記C液中における炭酸イオンに対する脂肪族第4級アンモニウム水酸化物のモル比(脂肪族第4級アンモニウム水酸化物/炭酸イオン)は、樹脂マスク剥離性(除去性)向上の観点から、0.01以上が好ましく、0.1以上がより好ましく、1以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、100以下が好ましく、30以下がより好ましく、10以下が更に好ましい。より具体的には、前記C液中のモル比(脂肪族第4級アンモニウム水酸化物/炭酸イオン)は、0.01以上100以下が好ましく、0.1以上30以下がより好ましく、1以上10以下が更に好ましい。
【0054】
[工程3:アルカノールアミンの量の算出]
本開示の基板処理方法における工程3は、工程2で決定した処理液(C液)中の炭酸濃度から、C液中で前記炭酸の中和に消費されている脂肪族第4級アンモニウム水酸化物と同量の脂肪族第4級アンモニウム水酸化物を含有するA液に含まれるアルカノールアミンの量を算出する工程である。このアルカノールアミン量は、一又は複数の実施形態において、C液中の炭酸を中和するためにA液から持ち込まれるアルカノールアミンの量ということもできる。このアルカノールアミン量の単位は、濃度であっても、質量であってもよい。後述するように、このアルカノールアミン量は、使用後のC液から再利用処理液を調製する際に利用可能である。
【0055】
工程3は、一又は複数の実施形態において、下記式(I)を用いて前記アルカノールアミンの量を算出することを含む。
アルカノールアミンの量(質量%)=[C液中の炭酸濃度(mol/L)×C×脂肪族第4級アンモニウム水酸化物のモル質量(g/mol)]÷A液中の脂肪族4級アンモニウム水酸化物量(質量%)×A液中のアルカノールアミン量(質量%) (I)
ただし、上記式(I)中、係数Cは中和度、中和付加数及び単位換算係数に基づき決定される係数であり、0.01~1の範囲の値である。
係数Cは、一又は複数の実施形態において、中和度×中和付加数×単位換算係数で定義される。係数Cは、一又は複数の実施形態において、炭酸イオンに対する脂肪族第4級アンモニウムイオンの付加数であり、炭酸と脂肪族第4級アンモニウム水酸化物の価数により決定することができる。
中和度は、一又は複数の実施形態において、0~1であって、通常は1とすることができる。
中和付加数とは、酸の価数÷脂肪族第4級アンモニウム水酸化物のアルカリの価数であり、一又は複数の実施形態において、0~5であって、通常は2とすることができる。
単位換算係数は、例えば、g/Lを質量%に換算する場合は0.1となる。
例えば、脂肪族第4級アンモニウム水酸化物がTMAHの場合、中和度は1、中和付加数は2、単位換算係数(g/Lを質量%に換算する場合)は0.1とし、係数C=0.2として式(I)に用いることができる。
【0056】
[工程4:再利用処理液の調製]
本開示の基板処理方法は、一又は複数の実施形態において、工程4:工程3で算出したアルカノールアミン量に基づいて前記C液に前記A液を混合し、再利用処理液を調製する工程を含む。前記工程4は、一又は複数の実施形態において、さらに、工程3で算出したアルカノールアミン量に基づいて前記C液に前記B液を混合する工程を含む。前記工程4は、一又は複数の実施形態において、再利用処理液を用いて樹脂マスクを有する基板を処理する工程を含む。
【0057】
<再利用処理液>
再利用処理液は、一又は複数の実施形態において、A液とC液とを混合して得られる混合液、その他の一又は複数の実施形態において、A液とB液とC液とを混合して得られる混合液である。
再利用処理液に含まれる成分としては、上述した処理液と同様のものが挙げられる。
再利用処理液に含まれる各成分の好ましい含有量は、上述した処理液に含まれる各成分の好ましい含有量と同じ量が挙げられる。
再利用処理液が含有する炭酸イオン(炭酸)は、一又は複数の実施形態において、空気中の炭酸ガス等に由来するものである。
再利用処理液中の炭酸濃度(含有量)は、一般に、樹脂マスク剥離性(除去性)向上の観点から、より少ないことが好ましい。例えば、再利用処理液中の炭酸濃度(含有量)は、樹脂マスク剥離性(除去性)向上の観点から、好ましくは10mоl/L以下、より好ましくは5mоl/L以下、更に好ましくは1.1mol/L以下であり、より更に好ましくは1mоl/L以下であり、そして、0.1mоl/L以上である。
【0058】
<混合条件>
工程4において、C液にA液を混合する方法、C液にB液を混合する方法、A液とB液とC液とを混合する方法は、公知の方法を用いることができる。
混合条件(C液とA液との混合割合、C液とB液との混合割合、A液とB液とC液との混合割合)は、一又は複数の実施形態において、工程3で算出したアルカノールアミンの量に基づき設定できる。本開示において、混合は、一又は複数の実施形態において、一方を他方に添加することを含む。
例えば、混合後のアルカノールアミンのアミン、脂肪族第四級アンモニウムヒドロキシド、有機溶剤の濃度の狙いの値に対する差異の総和が最も小さくなるように設定する。
工程4では、一又は複数の実施形態において、工程3で算出したアルカノールアミンの量に基づき、C液とA液との混合割合、C液とB液との混合割合、又は、A液とB液とC液との混合割合を決定することができ、A液の補充量又はB液の補充量を管理することができる。
ここで、「工程3で算出したアルカノールアミン量に基づいて前記C液に前記A液を混合する」とは、一又は複数の実施形態において、工程1で使用した後の処理液(C液)のアルカノールアミンの量と工程3で算出したアルカノールアミンの量の差、比率及び補正のための係数によって決定されるC液とA液の比率で、C液にA液を混合する方法が挙げられる。
また、「工程3で算出したアルカノールアミン量に基づいて前記C液に前記B液を混合する」とは、一又は複数の実施形態において、アルカノールアミンの狙いの濃度と工程1で使用した後の処理液(C液)の濃度の差異から、工程3で算出したアルカノールアミンの量を差し引いた量のモノエタノールアミンを含む量のB液をC液に混合する方法が挙げられる。
【0059】
工程4は、一又は複数の実施形態において、工程3で算出したアルカノールアミンの量に基づいて、処理液を被処理物に接触又は浸漬させる時間、及び、処理液の使用時の温度から選ばれる少なくとも1つを変更することをさらに含むことができる。
【0060】
[工程5:回収]
本開示の基板処理方法は、一又は複数の実施形態において、工程5(回収工程)をさらに含むものであってもよい。本開示の基板処理方法における工程5は、工程1で使用した後の処理液を回収する工程である。
工程で回収した処理液の少なくとも一部は、一又は複数の実施形態において、工程2~4を経た後、再利用処理液として利用することができる。よって、本開示の基板処方法では、一又は複数の実施形態において、工程5で回収した処理液を循環使用することができる。
【0061】
[剥離方法]
本開示は、一態様において、本開示の基板処理方法を用いて、樹脂マスクを有する基板(被処理物)から樹脂マスクを剥離することを含む、樹脂マスクの剥離方法(以下、「本開示の剥離方法」ともいう)に関する。本開示の剥離方法における被処理物としては、上述した被洗浄物が挙げられる。本開示の剥離方法によれば、再利用処理液の調製のための新たな指標を算出する工程を含む、樹脂マスク除去性(剥離性)に優れる樹脂マスク剥離方法を提供できる。
【0062】
[処理液(剥離剤組成物)の管理方法]
本開示は、一態様において、脂肪族第4級アンモニウム水酸化物及びアルカノールアミンを含む水溶液(A液)を使用して得られた処理液を用いて、樹脂マスクを有する基板を処理する樹脂マスクを有する基板(被処理物)を処理する工程に用いる処理液(剥離剤組成物)の管理方法(以下、「本開示の管理方法」ともいう)に関する。
本開示の管理方法は、一又は複数の実施形態において、被処理物の処理に使用した処理液(C液)中の炭酸濃度を決定する工程a(上述した本開示の基板処理方法における工程2)と、該工程aで決定した処理液(C液)中の炭酸濃度から、C液中で前記炭酸の中和に消費されている脂肪族第4級アンモニウム水酸化物と同量の脂肪族第4級アンモニウム水酸化物を含有するA液に含まれるアルカノールアミンの量を算出する工程b(上述した基板処理方法における工程3)と、を含む。
本開示の管理方法は、一又は複数の実施形態において、工程bで算出したアルカノールアミン量に基づいて前記C液に前記A液を混合し、再利用処理液を調製する工程c(上述した基板処理方法における工程4)を含む。工程cは、一又は複数の実施形態において、さらに、工程bで算出したアルカノールアミン量に基づいて前記C液に有機溶剤及びアルカノールアミンを含む水溶液(B液)を混合する工程を含む。
本開示の管理方法によれば、炭酸イオンを含有するアルカリ性の剥離剤組成物(使用後の処理液)(C液)に、脂肪族第4級アンモニウム水酸化物及びアルカノールアミンを含む水溶液(A液)を補充する場合、基板処理に使用後の処理液中の炭酸濃度から、炭酸の中和に消費された脂肪族第4級アンモニウム水酸化物量を算出し、該脂肪族第4級アンモニウム水酸化物量に相当するA液に含まれるアルカノールアミン量という新たな指標を考慮して再利用処理液の調製を管理することでき、樹脂マスク剥離性(除去性)に優れた再利用処理液を得ることができる。
【0063】
[電子部品の製造方法]
本開示は、一態様において、本開示の基板処理方法を含む、電子部品基板の製造方法に関する。
本開示の電子部品の製造方法によれば、基板に付着した樹脂マスクを効果的に除去できるため、信頼性の高い電子部品の製造が可能になる。更に、本開示の基板処理方法を用いることにより、基板に付着した樹脂マスクの剥離が容易であることから、剥離時間(処理時間)を短縮化でき、電子部品の製造効率を向上できる。
【実施例
【0064】
以下に、実施例により本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0065】
試験1(実施例1、参考例1)
1-1.使用後の処理液(C液)の調製
アルカノールアミン(MEA)、炭酸源(炭酸アンモニウム)、及び水を混合して表1に示すD液を得た。D液中の炭酸源である炭酸アンモニウムは、水溶液中で炭酸イオンを生じる。表1に示すD液中の炭酸は、炭酸アンモニウムから生じた炭酸イオンを示す。
脂肪族第4級アンモニウム水酸化物(TMAH)、アルカノールアミン(MEA)、及び水を混合し、表1に示すA液を得た。
表1に記載の混合割合でD液とA液とを1時間かけて混合し、表1に示すC液(使用後の処理液)(pH:11.9)を得た。C液中、TMAHの一部と炭酸(イオン)とが反応して中和塩が形成される。この中和塩を含むC液は、工程1で使用した後の処理液を想定したものである。
なお、混合前のD液及びA液中の各成分の濃度(配合量)(質量%又はmol/L、有効分)は表1に示すとおりである。表1に記載の濃度は、配合量から算出した有効成分濃度(質量%又はmol/L)である。
【0066】
D液及びA液の調製には、下記のものを使用した。
MEA:モノエタノールアミン[株式会社日本触媒]
炭酸アンモニウム[富士フィルム和光純薬](炭酸源)
TMAH:テトラメチルアンモニウムヒドロキシド[株式会社レゾナック、25%水溶液]
水[オルガノ社製純水製造装置G-10DSTSETで製造した1μS/cm以下の純水]
【0067】
[処理液のpH]
処理液の25℃におけるpHは、pHメータ(東亜電波工業株式会社、HM-30G)を用いて測定した値であり、pHメータの電極を処理液に浸漬して3分後の数値である。
【0068】
1-2.アルカノールアミンの量
(実施例1:式(I)を用いたアルカノールアミンの量の算出(工程2~3))
C液中の炭酸濃度から、C液中で前記炭酸の中和に消費されている脂肪族第4級アンモニウム水酸化物と同量の脂肪族第4級アンモニウム水酸化物を含有するA液に含まれるアルカノールアミンの量を下記のようにして算出した。
まず、C液中の炭酸濃度を、下記式を用いて算出する。
C液中の炭酸濃度(mol/L)=C液の炭酸濃度(mol/L)×C液の混合比(%)÷100
次に、A液中の脂肪族第4級アンモニウム水酸化物とアルカノールアミンとの質量比を用いて、炭酸の中和に消費されている脂肪族第4級アンモニウム水酸化物と同量の脂肪族第4級アンモニウム水酸化物を含有するA液に含まれるアルカノールアミンの量を、下記式(I)から求める。
アルカノールアミンの量(質量%)=[C液中の炭酸濃度(mol/L)×C×脂肪族第4級アンモニウム水酸化物のモル質量(g/mol)]÷A液中の脂肪族4級アンモニウム水酸化物量(質量%)×A液中のアルカノールアミン量(質量%) (I)
上記式(I)中、係数Cは中和度、中和付加数及び単位換算係数に基づき決定される係数であり、中和度(0~1、通常は1)×中和付加数(0~2、通常は2)×単位換算係数(g/Lを質量%に換算する場合は0.1)で定義される。ここでは、中和度1、中和付加数2、単位換算係数0.1とし、係数C=0.2として式(I)に用いた。
【0069】
(参考例1:滴定によるアルカノールアミンの量の算出)
調製した処理液(C液)について、電位差自動滴定装置(京都電子工業社製、AT-710)を用いて、サンプリング量を5gとして、水(45g)を希釈溶媒(希釈倍率:10倍)に用いて滴定を行う。滴定による酸の滴下量とpHとの関係を示す滴定曲線を求め、pH10以下で出現するアミン由来の3つの変曲点を検出する。3つの変曲点は、pHの1階微分が極小となる点として検出し、出現順に第1、第2、第3変曲点とした。そして、以下に記載の計算式を用いて、処理液(C液)中のアルカノールアミンの濃度を算出した。
アルカノールアミン濃度(質量%)=((A-D×β)+(B-D×β))/2/α×M×100
上記式中、Aは前記第1変曲点までの前記処理液(C液)1g当たりの酸消費モル数(mol/g)を示し、Bは前記第2変曲点までの前記処理液(C液)1g当たりの酸消費モル数(mol/g)を示し、Dは前記処理液(C液)中の前記アルカノールアミン以外のアルカリの濃度(mol/g)を示し、αはアルカノールアミンの価数を示し、βは前記アルカノールアミン以外のアルカリの価数を示し、Mはアルカノールアミンのモル質量(g/mol)を示す。
【0070】
【表1】
【0071】
表1に示すとおり、実施例1では、式(I)を用いることで、C液中で前記炭酸の中和に消費されている脂肪族第4級アンモニウム水酸化物と同量の脂肪族第4級アンモニウム水酸化物を含有するA液に含まれるアルカノールアミンの量を算出できた。一方、参考例1の滴定法では算出できなかった。
【0072】
試験2(実施例2)
2-1.使用後の処理液(C液)の調製
アルカノールアミン(MEA)、有機溶媒(BDG)、炭酸源(炭酸アンモニウム)、及び水を混合して表2に示すD液を得た。D液中の炭酸源である炭酸アンモニウムは、水溶液中で炭酸イオンを生じる。表2に示すD液中の炭酸は、炭酸アンモニウムから生じた炭酸イオンを示す。
脂肪族第4級アンモニウム水酸化物(TMAH)、アルカノールアミン(MEA)、及び水を混合し、表2に示すA液を得た。
表2に記載の混合割合でD液とA液とを1時間かけて混合し、表2に示すC液(使用後の処理液)(pH:11.9)を得た。処理液のpHは、上記試験1と同様の方法で測定した。C液中、TMAHの一部と炭酸(イオン)とが反応して中和塩が形成される。この中和塩を含むC液は、工程1で使用した後の処理液を想定したものである。
なお、混合前のD液及びA液中の各成分の濃度(配合量)(質量%又はmol/L、有効分)は表2に示すとおりである。表2に記載の濃度は、配合量から算出した有効成分濃度(質量%又はmol/L)である。
【0073】
D液及びA液の調製には、下記のものを使用した。
MEA:モノエタノールアミン[株式会社日本触媒]
BDG:ブチルジグリコール[日本乳化剤]
炭酸アンモニウム[富士フィルム和光純薬](炭酸源)
TMAH:テトラメチルアンモニウムヒドロキシド[株式会社レゾナック、25%水溶液]
水[オルガノ社製純水製造装置G-10DSTSETで製造した1μS/cm以下の純水]
【0074】
2-2.式(I)を用いたアルカノールアミンの量の算出(工程2~3)
実施例1と同様の方法で、C液中の炭酸濃度から、C液中で前記炭酸の中和に消費されている脂肪族第4級アンモニウム水酸化物と同量の脂肪族第4級アンモニウム水酸化物を含有するA液に含まれるアルカノールアミンの量を算出した。算出結果を表2に示した。表2中のアルカノールアミンの量は、質量%に換算した値である。
【0075】
2-3.再利用処理液の調製(工程4)
上記1-2で式(I)を用いて算出したアルカノールアミンの量を元に、以下の式を用いてC液とA液とB液との混合割合を求めた。求めた混合割合に基づいてC液とA液とB液とを混合し、再利用処理液を調製した。
再利用処理液の調製に用いるC液の混合割合(質量%)=[C液中のアルカノールアミンの量(質量%)-式(I)を用いて算出したアルカノールアミンの量(質量%)÷2.5]÷C液中のアルカノールアミンの量(質量%)×100
再利用処理液の調製に用いるA液の混合割合(質量%)=式(I)を用いて算出したアルカノールアミンの量(質量%)÷A液中のアルカノールアミンの量(質量%)÷3.5×100
再利用処理液の調製に用いる水の混合割合(質量%)=100-再利用処理液の調製に用いるA液の混合割合(質量%)-再利用処理液の調製に用いるC液の混合割合(質量%)
上記式中、2.5及び3.5は、混合後のアルカノールアミンのアミン、脂肪族第四級アンモニウムヒドロキシド、有機溶剤の濃度の狙いの値に対する差異の総和が小さくなるように設定した係数である。
【0076】
2-4.処理液の評価
調製した実施例2の再利用処理液を用いて樹脂マスク除去性(剥離性)の評価を下記のようにして行った。
【0077】
[剥離性評価用テストピース]
剥離性評価用テストピースは、50mm×50mmのサイズで、図1に示すように、銅薄膜を有するガラスエポキシ多層基板の表面に銅めっきで形成した厚さ15μmの金属層2と、金属層2にパーフォレーション状に存在する直径300μmの円形部に厚さ25μmのネガ型ドライフィルムレジストである樹脂マスク層1とを有し、樹脂マスクの厚さ25μmの内15μmは金属層に埋まった構造である。そして、パーフォレーションは3000個存在する。
[樹脂マスク除去性(剥離性)]
剥離剤組成物3kgを5Lステンレスビーカーに添加した。これを50℃に加温し、1流体ノズル(充円錐形)J020(株式会社いけうち)をスプレーノズルとして取り付けたボックス型スプレー洗浄機にて循環しながら、テストピースを2.5分間スプレーした(圧力:0.05MPa、スプレー距離:8cm)。そして、水を30秒間かけ流してリンスを行った後、窒素ブローにて乾燥した。デジタルマイクロスコープ(VHX-6000、株式会社キーエンス)を用いて、前記のスプレー処理を行った後のテストピースを300倍に拡大して目視観察し、樹脂マスク残渣の発生率(残渣率)を測定した。数値が低いほど、樹脂マスク除去性(剥離性)に優れていると判断できる。結果を表2に示す。
【0078】
【表2】
【0079】
表2に示すとおり、実施例2で調製した再利用処理液は良好な樹脂マスク剥離性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本開示によれば、樹脂マスク除去性(剥離性)に優れる基板処理方法を提供できる。そして、本開示の基板処理方法を用いることで、製造される電子部品の性能・信頼性の向上が可能となり、半導体装置の生産性を向上できる。
【符号の説明】
【0081】
1 樹脂マスク層(ドライフィルムレジスト)
2 金属層(金属めっき層)
【要約】
【課題】一態様において、再利用処理液の調製のための新たな指標を算出する工程を含む、樹脂マスク除去性(剥離性)に優れる基板処理方法を提供する。
【解決手段】本開示は、一態様において、下記工程1、工程2及び工程3を含む、基板の処理方法に関する。
工程1:脂肪族第4級アンモニウム水酸化物及びアルカノールアミンを含む水溶液(A液)を使用して得られた処理液を用いて、樹脂マスクを有する基板を処理する工程
工程2:工程1で使用した後の処理液(C液)中の炭酸イオンの濃度(炭酸濃度)を決定する工程
工程3:工程2で決定した処理液(C液)中の炭酸濃度から、C液中で前記炭酸の中和に消費されている脂肪族第4級アンモニウム水酸化物と同量の脂肪族第4級アンモニウム水酸化物を含有するA液に含まれるアルカノールアミンの量を算出する工程
【選択図】なし
図1