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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-26
(45)【発行日】2025-04-03
(54)【発明の名称】制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/516 20130101AFI20250327BHJP
   G02F 1/01 20060101ALI20250327BHJP
【FI】
H04B10/516
G02F1/01 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020019439
(22)【出願日】2020-02-07
(65)【公開番号】P2021125835
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【弁理士】
【氏名又は名称】林 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】山端 徹次
(72)【発明者】
【氏名】森下 剛
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-175753(JP,A)
【文献】特開2001-159749(JP,A)
【文献】特開2004-117729(JP,A)
【文献】KIM, M. H. et al.,A Mach-Zehnder Modulator Bias Controller Based on OMA and Average Power Monitoring,Photonics Technology Letters,米国,IEEE,2017年12月,VOL. 29, NO. 23,pages 2043-2046
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00-10/90
H04J 14/00-14/08
G02F 1/00-1/125
G02F 1/21-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部分および前記第1部分とは異なる第2部分を含む領域からの出力が、前記第1部分の状態および前記第2部分の状態に応じて変化する装置を制御する制御装置(ただし、レーザダイオードの変調電流を制御する装置を除く)であって、
前記出力に応じて変化するモニタ信号が入力され、入力された前記モニタ信号の強度に応じて第1出力を変化させた後、変化させた前記第1出力を保持する第1サンプル・ホールド処理を行う第1保持部と、
前記第1保持部とは異なる保持部であって前記モニタ信号が入力され、入力された前記モニタ信号の強度に応じて第2出力を変化させた後、変化させた前記第2出力を保持する第2サンプル・ホールド処理を行う第2保持部と、
前記第1部分の状態を一定に保ちながら前記第1保持部に前記第1サンプル・ホールド処理を行わせた後に前記第1部分の状態を変更し、変更させた前記第1部分の状態を保ちながら前記第2保持部に前記第2サンプル・ホールド処理を行わせ更に、前記第1保持部が保持する前記第1出力の強度と前記第2保持部が保持する前記第2出力の強度との差分に基づいて、前記第1部分の状態および前記第2部分の状態の制御(ただし、変調された光を出力する前記領域で行われる処理であって、前記光がされた変調は除く)を行う制御部とを有し、
前記変更は、前記第1部分の状態が変更される前後の前記出力の変化が促進されるように、前記第1部分の状態と共に前記第2部分の状態を変更する処理である
御装置。
【請求項2】
第1部分を含む領域からの出力が、前記第1部分の状態に応じて変化する装置を制御する制御装置であって、
前記出力に応じて変化するモニタ信号が入力され、入力された前記モニタ信号の強度に応じて第1出力を変化させた後、変化させた前記第1出力を保持する第1サンプル・ホールド処理を行う第1保持部と、
前記第1保持部とは異なる保持部であって前記モニタ信号が入力され、入力された前記モニタ信号の強度に応じて第2出力を変化させた後、変化させた前記第2出力を保持する第2サンプル・ホールド処理を行う第2保持部と、
前記第1部分の状態を一定に保ちながら前記第1保持部に前記第1サンプル・ホールド処理を行わせた後に前記第1部分の状態を変更し、変更させた前記第1部分の状態を保ちながら前記第2保持部に前記第2サンプル・ホールド処理を行わせ更に、前記第1保持部が保持する前記第1出力の強度と前記第2保持部が保持する前記第2出力の強度との差分が略ゼロとなるように、前記第1部分の状態を制御する制御部とを有する
制御装置。
【請求項3】
前記変更前の前記出力の強度と前記変更後の前記出力の強度の平均値が、前記出力の強度の目標値に近づくように、前記制御部の処理が繰り返されることを
特徴とする請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
第1部分および前記第1部分とは異なる第2部分を含む領域からの出力が、前記第1部分の状態および前記第2部分の状態に応じて変化する装置の制御方法(ただし、レーザダイオードの変調電流を制御する制御方法を除く)であって、
前記第1部分の状態を一定に保ちながら前記出力の強度に応じて変化する第1信号を生成し生成した前記第1信号を保持した後に前記第1部分の状態を変更し、変更された前記第1部分の状態を一定に保ちながら、前記出力の強度に応じて変化する第2信号を生成し生成した前記第2信号を保持し更に、保持された前記第1信号の強度と保持された前記第2信号の強度の差分に基づいて、前記第1部分の状態および前記第2部分の状態の制御(ただし、変調された光を出力する前記領域で行われる処理であって、前記光がされた変調は除く)を行い、
前記変更は、前記第1部分の状態が変更される前後の前記出力の変化が促進されるように、前記第1部分の状態と共に前記第2部分の状態を変更する処理である
御方法。
【請求項5】
第1部分を含む領域からの出力が、前記第1部分の状態に応じて変化する装置の制御方法であって、
前記第1部分の状態を一定に保ちながら前記出力の強度に応じて変化する第1信号を生成し生成した前記第1信号を保持した後に前記第1部分の状態を変更し、変更された前記第1部分の状態を一定に保ちながら、前記出力の強度に応じて変化する第2信号を生成し生成した前記第2信号を保持し更に、保持された前記第1信号の強度と保持された前記第2信号の強度の差分が略ゼロとなるように、前記第1部分の状態を制御する
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイアスにより出力が変化するデバイス(例えば、マッハツェンダ型変調器)は、バイアスが制御された状態で使用される。バイアスの制御は、周波数が入力信号より低く且つ振幅が入力信号より小さい正弦波(所謂、ディザ信号)が重畳されたバイアスへのデバイスの応答に基づいて行われる。この技術では、ディザ信号と同じ周波数で振動する信号(以下、ディザ成分と呼ばれる)をデバイスの出力から抽出して、抽出したディザ成分に基づいてバイアスを制御する。ディザ成分の抽出には、バンドパスフィルタが用いられる。
【0003】
バイアス制御のための回路を小型化するため、正弦波の代わりに矩形波が重畳されたバイアスへの応答に基づいて、バイアスを制御する技術が提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。この技術では、矩形波と同じ周波数で振動する信号をデバイスの出力から抽出し、抽出した信号に基づいてバイアスを制御する。矩形波と同じ周波数で振動する信号の抽出には、アナログ・デジタル変換回路、デジタル・アナログ変換回路およびスイッチ回路等の回路が多用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-111398号公報
【文献】米国特許第9686017号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バンドパスフィルタに含まれるキャパシタは、小型化が困難なデバイスである。このため、ディザ成分の抽出に用いられるバンドパスフィルタも小型化が困難である。一方、バイアスが制御されるデバイス(例えば、マッハツェンダ型変調器)は、技術革新(例えば、シリコンフォトニクス)により小型化している。
【0006】
このため、ディザ信号を用いるバイアス制御装置は、制御対象のデバイスに比べ相対的に大型化している。付言するならば、シリコンフォトニクスにより製造されるデバイスはバイアス変化への応答が遅いため、このデバイスからディザ信号を抽出するバンドパスフィルタのキャパシタは大型化している。
【0007】
特許文献1および2では、バイアス制御回路を小型化する技術が提案されている。しかし特許文献1および2の技術は、アナログ・デジタル変換回路等を多用するので、バイアス制御回路を十分に小型化することはできない。
【0008】
そこで本発明は、このような問題を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一つの実施の形態では、制御装置は、第1部分を含む領域からの出力が前記第1部分の状態に応じて変化する装置を制御する制御装置であって、前記出力に応じて変化するモニタ信号が入力され、入力された前記モニタ信号の強度に応じて第1出力を変化させた後、変化させた前記第1出力を保持する第1サンプル・ホールド処理を行う第1保持部と、前記第1保持部とは異なる保持部であって前記モニタ信号が入力され、入力された前記モニタ信号の強度に応じて第2出力を変化させた後、変化させた前記第2出力を保持する第2サンプル・ホールド処理を行う第2保持部と、前記第1部分の状態を一定に保ちながら前記第1保持部に前記第1サンプル・ホールド処理を行わせた後に前記第1部分の状態を変更し、変更させた前記第1部分の状態を保ちながら前記第2保持部に前記第2サンプル・ホールド処理を行わせ更に、前記第1保持部が保持する前記第1出力の強度と前記第2保持部が保持する前記第2出力の強度との差分に基づいて、前記第1部分の状態を制御する制御部とを有する。
【発明の効果】
【0010】
一つの側面では、本発明によれば、マッハツェンダ型変調器等のバイアスを制御する制御装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施の形態1の制御装置2の機能ブロック図の一例である。
図2図2は、制御装置2の動作を説明する図である。
図3図3は、制御部10による制御の一例を示す図である。
図4図4は、制御部10による制御の一例を示す図である。
図5図5は、正弦波36が重畳されたバイアス38を用いる制御を説明する図である。
図6図6は、正弦波36が重畳されたバイアス38を用いる制御を説明する図である。
図7図7は、実施の形態1の制御方法の一例を示す図である。
図8図8は、実施の形態2の制御装置202の機能ブロック図の一例である。
図9図9は、制御装置202のハードウエア構成の一例を示す図である。
図10図10は、制御装置202の各ハードウエアの動作を説明する図である。
図11図11は、制御装置202が制御する装置212の一例を示す図である。
図12図12は、制御装置202の動作を説明する図である。
図13図13は、制御部210が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図14図14は、第1バイアス226aおよび第2バイアス226bとマッハツェンダ型変調器312の出力216の関係を示す図である。
図15図15は、実施の形態3の制御装置502のハードウエア構成の一例を示す図である。
図16図16は、制御回路508の一例を示す図である。
図17図17は、制御装置502の動作を説明する図である。
図18図18は、制御部210の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。図面が異なっても同じ構造を有する部分等には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0013】
(実施の形態1)
(1)構造
図1は、実施の形態1の制御装置2の機能ブロック図の一例である。
【0014】
図1に示されるように、実施の形態1の制御装置2は、第1保持部6a、第2保持部6b、差動部8、および制御部10を有する。第1保持部6aおよび第2保持部6bは、例えばサンプル・ホールド回路により実現される。制御部10は例えば、集積回路等により実現される。
【0015】
図1には、制御装置2が制御する装置12も示されている。装置12は例えば、マッハツェンダ型変調器(Mach-Zehnder Modulator)が形成された領域14(以下、制御領域と呼ばれる)を有する。装置12は更に、モニタ部4を有する。モニタ部4は例えば、フォトダイオードと抵抗により実現される。
【0016】
(2)動作
図2は、制御装置2の動作を説明する図である。
【0017】
装置12の制御領域14は、第1部分18aを含む。制御領域14からの出力16の強度(以下、制御量と呼ばれる)は、第1部分18aの状態に応じて変化する。第1部分18aは例えば、マッハツェンダ型変調器の光導波路(所謂、アーム)の近傍に配置されたヒータ(例えば薄膜ヒータ)である。第1部分18aの状態とは例えば、第1部分18aの物理量(例えば、温度、キャリア密度、電界、位置、サイズ等)により定量化可能な状態のことである。実施の形態2で説明する第2部分の状態についても、同様である。
【0018】
例えば第1部分18aがヒータの場合、「第1部分の状態」とは、100℃に加熱されたヒータの状態や120℃に加熱されたヒータの状態のことである。
【0019】
装置12は、制御領域14の出力16をそのまま出力してもよい。或いは、装置12は、制御領域14の出力16を一旦処理(例えば、変調、合波、分岐等)してから出力してもよい。
【0020】
モニタ部4は、制御領域14の出力16の強度(すなわち、制御量)に応じて変化するモニタ信号17を生成する。モニタ部4は例えば、制御領域14の出力16から分岐される分岐光20からモニタ信号17を生成する。モニタ信号17は、第1保持部6aおよび第2保持部6bに入力される。
【0021】
モニタ信号17は、モニタ部4以外の回路により生成されてもよい。例えば制御装置2内の回路(例えば、電流-電圧変換回路)が、分岐光20が入力された光検出器の出力(すなわち、光電流)からモニタ信号17を生成してもよい。
【0022】
第1保持部6aは、入力されたモニタ信号17の強度に応じてその出力22a(以下、第1出力と呼ばれる)を変化させた後、変化させた第1出力22aの強度を保持する処理(以下、第1サンプル・ホールド処理と呼ばれる)を行う。第2保持部6bは、モニタ信号17の強度に応じてその出力22b(以下、第2出力と呼ばれる)を変化させた後、変化させた第2出力22bの強度を保持する処理(以下、第2サンプル・ホールド処理と呼ばれる)を行う。
【0023】
差動部8は、第1保持部6aが保持する第1出力22aの強度と第2保持部6bが保持する第2出力22bの強度との差分に応じてその出力24を変化させる。すなわち、差動部8の出力24(以下、差動出力と呼ばれる)は、第1出力22aの強度と第2出力22bの強度との差分に応じて変化する。
【0024】
制御部10は、第1部分18aの状態を一定(例えば、温度T1の状態)に保ちながら第1保持部6aに第1サンプル・ホールド処理を行わせその後、第1部分18aの状態を別の状態(例えば、温度T2(≠T1)の状態)に変更する。制御部10はその後、第1部分18aの状態を上記別の状態に保ちながら第2保持部6bに上記第2サンプル・ホールド処理を行わせる。
【0025】
制御部10はその後、差動部の8の差動出力24に基づいて、第1部分18aの状態(例えば、温度)を制御する。例えば、差動出力24の絶対値が許容値より大きい場合には、差動出力24の符号に応じて第1部分18aの温度を増加または減少させる。
【0026】
制御部10は、制御領域14の出力16の強度の平均値が出力16の目標値に近づくように、上記一連の処理を繰り返す。
【0027】
第1部分18aが上記ヒータの場合、マッハツェンダ型変調器のアームはヒータにより加熱されるので、ヒータの温度に応じてアームの屈折率が変化する。従って、マッハツェンダ型変調器の出力(すなわち、制御領域14の出力16)は、ヒータの温度(すなわち、第1部分18aの状態)に応じて変化する。ヒータの温度は例えば、ヒータに供給される電力により調整される。
【0028】
制御部10は出力26(以下、バイアスと呼ばれる)により、装置12の第1部分18aの状態を制御する。制御部10は例えば、第1部分18aに印加されるバイアス26の電気量(例えば、電力、電流、電圧等)を調整して、第1部分18aの状態を示す物理量(例えば、温度、キャリア密度、電界、位置、サイズ等)を制御する。後述する第2部分18bに印加されるバイアス226bについても同様である。
【0029】
制御領域14の出力16の目標値は例えば、ヌル点における出力16(すなわち、出力16の極小値)の強度である。しかし目標値は、ヌル点における出力16の強度には限られない。目標点は例えば、ピーク点やクワッド(Quadrature)点における出力16の強度であってもよい。
【0030】
モニタ信号17は例えば、アナログ信号(例えば、電圧または電流)である。第1出力22a、第2出力22b、および差動出力24についても、同様である。
【0031】
図3~4は、制御部10による制御の一例を示す図である。縦軸は、制御領域14の出力16の強度(すなわち、制御量)である。横軸は、バイアス26の強度である。図5~6の縦軸および横軸についても、同様である。図3~4には、出力16がマッハツェンダ型変調器の出力である場合が示されている。この場合、出力16は周期的に変化するが、図3~4にはヌル点32の近傍のみが示されている。
【0032】
図3の下部には、バイアス26の時間変化TC26(以下、バイアス時間変化と呼ばれる)が示されている。縦方向の位置は、時刻を示している。上側の位置は、下側の位置より遅い時刻を示している。横方向の位置は、バイアス26の強度を示している。図4~6の下部に示される時間経過についても、同様である。
【0033】
図3の右部には、制御領域14の出力16の時間変化TC16が示されている。横方向の位置は、時刻を示している。右側の位置は、左側の位置より遅い時刻を示している。図4~6の右部に示される時間経過についても、同様である。
【0034】
図3には、バイアス時間変化TC26の矩形波部分27の中心34とヌル点32のバイアス値132が略一致する場合が示されている。制御部10は先ず、バイアス26の強度を一定値PIに保ちながら、第1保持部6aに第1サンプル・ホールド処理を行わせる。すると、第1保持部6aの第1出力22aの強度は一定値I1に変化し、そのまま一定値I1に保持される。
【0035】
制御部10はその後バイアス26の強度をPIとは異なるPIに変更し、バイアス26の強度をPIに保ちながら、第2保持部6bに第2サンプル・ホールド処理を行わせる。すると、第2保持部6bの第2出力22bの強度は一定値I2に変化し、そのまま一定値I2に保持される。
【0036】
図3に示すように、バイアス時間変化TC26の矩形波部分27の中心34とヌル点32のバイアス値132が略一致する場合、バイアス26が変更される前の出力16の強度Ia(ここでは、I1)と変更後の強度Ib(ここでは、I2)は略一致する。従って、差動部8の差動出力24は略ゼロになる。
【0037】
図4には、バイアス時間変化TC26の矩形波部分27の中心34とヌル点32におけるバイアス値132が一致しない場合が示されている。制御部10はバイアス26を一定値PIIに保ちながら、第1保持部6aに第1サンプル・ホールド処理を行わせる。すると、第1保持部6aの第1出力22aの強度は一定値I3に変化し、そのまま一定値I3に保持される。
【0038】
制御部10はその後バイアス26の強度をPIIとは異なるPIIに変更し、バイアス26の強度をそのままPIIに保ちながら、第2保持部6bに第2サンプル・ホールド処理を行わせる。すると、第2保持部6bの第2出力22bの強度は一定値I4に変化し、そのまま一定値I4に保持される。
【0039】
図4に示すように、バイアス時間変化TC26の矩形波部分の中心34とヌル点32におけるバイアス値132が一致しない場合、バイアス26が変更される前の制御領域14の出力16の強度Iaと変更後の強度Ibは一致しない。このため、差動出力24の絶対値は、図3を参照した場合より大きくなる。
【0040】
このような場合、制御部10は差動出力24の絶対値が小さくなるように、バイアス時間変化TC26の中心34(すなわち、バイアス26の平均値)を変更する。例えば図4に示す例では制御部10は、バイアス時間変化TC26の中心34が減少するように、バイアス26を制御する。
【0041】
制御部10による上記処理が繰り返されることで、最終的には差動出力24は略ゼロになり、バイアス時間変化TC26の中心34は、ヌル点32におけるバイアス値132に略一致する(図3参照)。
【0042】
換言するならば、制御領域14の出力16の平均値(=(Ia+Ib)/2)が、出力16の極小値Imin(すなわち、出力16の目標値)に近づくように、制御部10の処理が繰り返される。その結果、制御領域14の出力16の平均値IAVが最終的には、出力16の極小値Iminに略一致する。
【0043】
(3)バンドパスフィルタを用いる制御
図5~6は、正弦波36が重畳されたバイアス38を用いる制御を説明する図である。ここでは、正弦波36(以下、正弦波ディザと呼ばれる)によるマッハツェンダ型変調器のバイアス制御について考える。
【0044】
図3~4に示された例と同様、バイアス38はマッハツェンダ型変調器の光導波路近傍に設けられたヒータに入力される。
【0045】
マッハツェンダ型変調器のバイアス38への応答40(以下、ディザ応答と呼ばれる)は、バンドパスフィルタ(図示せず)に入力される。ディザ応答40が入力されたバンドパスフィルタは、正弦波ディザ36と同じ周波数fで振動する信号(以下、ディザ成分と呼ばれる)を通過させ、正弦波ディザの2倍の周波数2fで振動する信号は遮断する。バイアス38は、バンドパスフィルタを通過したディサ成分に基づいて制御される。
【0046】
図5には、正弦波ディザ36の中心44とヌル点32のバイアス値132とが略一致している場合が示されている。この場合、ディザ応答40は、正弦波ディザ36の周波数fの2倍の周波数2fで振動する。従ってディザ応答40には、ディザ成分(すなわち、正弦波ディザ36と同じ周波数fで振動する信号)は含まれない。
【0047】
図6には、正弦波ディザ36の中心44とヌル点のバイアス値132が一致しない場合が示されている。この場合、ディザ応答140は、正弦波ディザ36と同じ周波数fで振動する。従って、ディザ応答140は、周波数fで振動するディザ成分を含む。
【0048】
ディザ成分はバンドパスフィルタにより抽出され、バイアス38は抽出されたディザ成分の振幅が減少するように制御される。
【0049】
この制御は、ディザ成分の振幅が略ゼロになるまで繰り返される。その結果、最終的には正弦波ディザ36の中心44は、ヌル点32のバイアス値132に略一致する。この時、制御領域14の出力16の平均値IAVは、出力16の極小値Iminに略一致する。
【0050】
ところで、バンドパスフィルタに含まれるキャパシタは、小型化が困難なデバイスである。このため、ディザ成分の抽出に用いられるバンドパスフィルタも小型化が困難である。一方、マッハツェンダ型変調器等の光デバイスは、技術革新(例えば、シリコンフォトニクス)により小型化している。
【0051】
このため、正弦波ディザ信号を用いる制御装置は、制御対象のデバイスに比べ相対的に大きくなっている。一方、図1~4を参照して説明した実施の形態1の制御装置2は、バンドパスフィルタを用いないので、容易に小型化できる。すなわち、実施の形態1によれば、マッハツェンダ型変調器等のバイアスを制御する装置(すなわち、バイアス制御装置)を小型化できる。
【0052】
ところで、ディザ成分の抽出に用いられるバンドパスフィルタは、正弦波ディザ36の周波数fの倍周波数2fで振動する信号(すなわち、ディザ成分の高調波)を除去するだけでなく、ディザ応答40、140(図5~6参照)に含まれる雑音も除去する。
【0053】
図1~4を参照して説明した制御装置2では、バイアス26の矩形波部分27の周波数(以下、バイアス周波数と呼ばれる)より周波数が低い低周波雑音は、差動部8における差動処理により除去される。一方、周波数がバイアス周波数より高い高周波雑音は、差動部8を通過する。このような高周波雑音は、制御部10におけるデジタル信号処理により容易に除去できる。
【0054】
図1~2に例示された制御装置2は、差動部8を含んでいる。しかし、差動部8は省略されてもよい。この場合、制御装置2は例えば、制御部10におけるデジタル信号処理により第1出力22aと第2出力22bとの差分を算出し、算出した差分に基づいてバイアス26を制御することができる。
【0055】
(4)制御方法
図7は、実施の形態1の制御方法の一例を示す図である。
【0056】
先ず、第1部分18a(図2参照)の状態を一定に保ちながら出力16の強度に応じて変化する第1信号(すなわち、第1出力22a)を生成し、生成した第1信号を保持する(ステップS2)。
【0057】
ステップS2の後、第1部分18aの状態を変更する(ステップS4)。
【0058】
ステップS4の後、変更された第1部分18aの状態を一定に保ちながら出力16の強度に応じて変化する第2信号(すなわち、第2出力22b)を生成して、生成した第2信号を保持する(ステップS6)。
【0059】
ステップS6の後、保持された第1信号の強度と保持された第2信号の強度の差分に基づいて、第1部分18aの状態を制御する(ステップS8)。
【0060】
ステップS2~ステップS8は好ましくは、変更前の出力16の強度と変更後の出力16の強度の平均値が、出力16の目標値に近づくように繰り返される。
【0061】
図1~4を参照して説明したように、実施の形態1では、制御領域14の出力16の強度(すなわち、制御量)に応じて変化する、第1~2保持部6a、6bの第1~2出力22a,22bの差分に基づいてバイアス26が制御される。このため、バンドパスフィルタを用いないバイアス制御が可能になるので、実施の形態1によれば、マッハツェンダ型変調器等のバイアス制御装置を容易に小型化できる。
【0062】
(実施の形態2)
実施の形態2は、実施の形態1に類似している。従って、実施の形態1と同じ構成等については、説明を省略または簡単にする。
【0063】
(1)構造
(1-1)機能ブロック
図8は、実施の形態2の制御装置202の機能ブロック図の一例である。図8に示すように、制御装置202は、実施の形態1の制御装置2に類似している。
【0064】
ただし実施の形態2では、制御装置202が有する制御領域214は、第1部分18aに加え第1部分18aとは異なる第2部分18bを含む。制御領域214は、実施の形態1の制御領域14(図1参照)の一例である。制御領域214の出力(すなわち、制御量)は、第1部分18aの状態および第2部分18bの状態に応じて変化する。制御装置202の制御部210は、差動部8の差動出力に基づいて、第1部分18aの状態および第2部分18bの状態を制御する。制御装置202は更に、モニタ信号生成部301を有する。
【0065】
(1-2)ハードウエア構成
図9は、制御装置202(図8参照)のハードウエア構成の一例を示す図である。図9には、制御装置202が制御する装置212のハードウエア構成も示されている。
【0066】
制御装置202は、トランスインピーダンス・アンプ302、第1サンプル・ホールド回路304a、第2サンプル・ホールド回路304b、および差動増幅器306を有する。制御装置202は更に、デジタルコヒーレント通信用の集積回路308およびデジタル・アナログ変換器310を有する。
【0067】
図9に示す例では、集積回路308は、アナログ信号をデジタル信号に変換する機能を有する。集積回路308が上記機能を有さない場合には、制御装置202は、差動増幅器306の出力をデジタル信号に変換するアナログ・デジタル変換器を有してもよい。
【0068】
モニタ信号生成部301(図8参照)は例えば、トランスインピーダンス・アンプ302により実現される。モニタ信号生成部301は、制御領域214の出力216(後述する図10参照)に応じて変化するモニタ信号217(図10参照)を生成する。モニタ信号生成部301は、制御装置202(図8参照)の外部(例えば、装置212の内部や装置212と制御装置202の間)に設けられてもよい。換言するならば、トランスインピーダンス・アンプ302は、制御装置202の外部に設けられてもよい。
【0069】
第1保持部6a(図8参照)は、第1サンプル・ホールド回路304aにより実現される。第2保持部6bは、第2サンプル・ホールド回路304bにより実現される。差動部8は、差動増幅器306により実現される。制御部210は、集積回路308およびデジタル・アナログ変換器310により実現される。
【0070】
制御部210は、差動増幅器306に接続されたアナログ・デジタル変換器、メモリ、メモリに結合されたCPU(Central Processing Unit),およびデジタル・アナログ変換器310により実現されてもよい(実施の形態3参照)。或いは、制御部210は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)およびデジタル・アナログ変換器310により実現されてもよい。
【0071】
装置212は、制御領域214に形成されたマッハツェンダ型変調器312および光検出器314を有する。マッハツェンダ型変調器312は例えば、シリコンフォトニクスを用いて形成された変調器である。光検出器314は例えば、フォトダイオードである。光検出器314は例えば、マッハツェンダ型変調器312の合波器320にY分岐器319を介して光学的に接続されている。
【0072】
マッハツェンダ型変調器312は、分岐器316、第1光導波路318a、第2光導波路318b、および合波器320を有する。マッハツェンダ型変調器312は更に、第1光導波路318aのコアに接続された第1電極322a、および第2光導波路318bのコアに接続された第2電極322bを有する。第1光導波路318aおよび第2光導波路318bのコアは例えば、pn接合を有するシリコンである。
【0073】
マッハツェンダ型変調器312は更に、第1光導波路318aに沿って設けられた第1ヒータ324a、および第2光導波路318bに沿って設けられた第2ヒータ324bを有する。第1ヒータ324aおよび第2ヒータ324bは例えば、薄膜ヒータである。第1ヒータ324aは、第1光導波路318aの第1ヒータ324aの隣接する部分を加熱する。第2ヒータ324aは、第2光導波路318bの第2ヒータ324bの隣接する部分を加熱する。
【0074】
図9に示された例では、第1部分18a(図8参照)は、第1ヒータ324aにより実現される。第2部分18b(図8参照)は、第2ヒータ324bにより実現される。モニタ部204(図8参照)は、光検出器314により実現される。
【0075】
図10は、制御装置202の各ハードウエアの動作を説明する図である。制御領域214に入力される光326(例えば、連続光)は、分岐器316により第1分岐光321aと第2分岐光321bとに分割される。
【0076】
第1分岐光321aは、第1光導波路318aに入力される。第1光導波路318aは、第1電極322aに入力される第1電気信号328aにより第1分岐光321aを変調する。第2分岐光321bは、第2光導波路318bに入力される。第2光導波路318bは、第2電極322bに入力される第2電気信号328bにより第2分岐光321bを変調する。
【0077】
合波器320は、第1光導波路318aにより変調された第1分岐光321aと第2光導波路318bにより変調された第2分岐光321bとを合波して出力216を生成し、生成した出力216を制御領域214から出力する。
【0078】
第1ヒータ324aに電力が供給されて第1ヒータ324aの温度が上昇すると、第1光導波路318aのうち第1ヒータ324aに近接した部分の温度も上昇する。すると、この部分の屈折率が増加し、第1分岐光321aの位相が変化する。すなわち、第1分岐光321aの位相は、第1ヒータ324a(すなわち、第1部分18a)の状態(ここでは、温度)に応じて変化する。同様に、第2分岐光321bの位相は、第2ヒータ324b(すなわち、第2部分18b)の状態(ここでは、温度)に応じて変化する。
【0079】
第1電気信号328aによる第1分岐光321aの変調(以下、第1変調と呼ばれる)は、第1ヒータ324aへの電力供給(すなわち、第1部分の状態の制御)とは異なる処理である。同様に、第2電気信号328bによる第2分岐光321bの変調(以下、第2変調と呼ばれる)は、第2ヒータ324bへの電力供給(すなわち、第2部分の状態の制御)とは異なる処理である。
【0080】
Y分岐器319は、制御領域214の出力216を分割し、分割された出力216の一方(以下、モニタ光と呼ばれる)を光検出器314に入力する。光検出器314は、入力されたモニタ光を光電変換して、光電流315を生成する。
【0081】
トランスインピーダンス・アンプ302は例えば、オペアンプ330と抵抗332とを有する電流-電圧変換回路である。オペアンプ330の反転入端子に接続された抵抗332には、光電流315が入力される。オペアンプ330の非反転入端子には、参照電位Vrが入力される。トランスインピーダンス・アンプ302は、光電流315をモニタ信号217に変換する。モニタ信号217は、光電流315の強度に応じて変化する。
【0082】
第1~2サンプル・ホールド回路304a、304bはそれぞれ、スイッチ回路336、コンデンサ338、ボルテージ・フォロア340を有する。
【0083】
スイッチ回路336は、第1信号342a(以下、クローズ信号と呼ばれる)により閉じられる。すると、トランスインピーダンス・アンプ302とボルテージ・フォロア340とが接続される。スイッチ回路336は、クローズ信号342aとは異なる第2信号342b(以下、オープン信号と呼ばれる)により開かれる。すると、トランスインピーダンス・アンプ302はボルテージ・フォロア340から切り離される。
【0084】
トランスインピーダンス・アンプ302とボルテージ・フォロア340が、スイッチ回路336により接続されると、ボルテージ・フォロア340の出力344の電圧は、モニタ信号217と略同じ電圧になる。その後、トランスインピーダンス・アンプ302とボルテージ・フォロア340とがスイッチ回路336により切り離されると、ボルテージ・フォロア340の出力344の電圧は、切り離し前の電圧に固定される。
【0085】
第1サンプル・ホールド回路304aの第1出力222aは、第1サンプル・ホールド回路304aのボルテージ・フォロア340aの出力344aである。第2サンプル・ホールド回路304bの第2出力222bは、第2サンプル・ホールド回路304bのボルテージ・フォロア340bの出力344bである。
【0086】
従って、第1サンプル・ホールド回路304aの第1出力222aは、スイッチ回路336aが閉じられると、モニタ信号217の強度に応じて変化する。スイッチ回路336aが開かれると、第1出力222aの強度は、スイッチ回路336aが開かれる直前の強度に保たれる。すなわち、第1出力222aは保持される。
【0087】
同様に、第2サンプル・ホールド回路304bの第2出力222b(すなわち、ボルテージ・フォロア340bの出力344b)は、スイッチ回路336bが閉じられると、モニタ信号217の強度に応じて変化する。スイッチ回路336aが開かれると、第2出力222bの強度は、スイッチ回路336bが開かれる前の強度に固定される。すなわち、第2出力222bは保持される。
【0088】
第1出力222aおよび第2出力222bは、差動増幅器306に入力される。差動増幅器306の出力224は、第1出力222aの電圧と第2出力222bの電圧との差分に応じて変化する。
【0089】
集積回路308は、スイッチ回路336の開閉を制御する。集積回路308は更に、差動増幅器306の差動出力224に基づいて、第1~2ヒータ324a、324bに印加する電圧の値(以下、電圧値と呼ばれる)を算出する。集積回路308は先ず、第1~2ヒータ324a、324bに供給する電力を算出し、算出した電力を上記電圧値に変換する。
【0090】
算出された電圧値は、デジタル・アナログ変換器310に入力される。デジタル・アナログ変換器310は入力された電圧値を電圧に変換し、第1~2ヒータ324a、324bに供給する。
【0091】
以上の例では、第1部分18aは、第1ヒータ324aである。しかし第1部分18aは、ヒータには限られない。第1部分18aは例えば、pn接合が設けられた、第1光導波路318aのコアであってもよい。この場合、デジタル・アナログ変換器310が出力する電圧に応じて、コアのキャリア濃度が変化する。その結果、第1分岐光321aの位相が変化する。
【0092】
以上の例では、光電流315は、トランスインピーダンス・アンプ302により、モニタ信号217に変換される。しかし、光電流315をモニタ信号217に変換する装置は、トランスインピーダンス・アンプ302には限られない。例えば光電流315は、抵抗によりモニタ信号217に変換されてもよい(実施の形態3参照)。
【0093】
図11は、制御装置202(図8参照)が制御する装置212の一例を示す図である。図11に例示された装置212は、DQPSK(Differential Quadrature Phase-Shift Keying)変調器である。DQPSKは、2つの子マッハツェンダ型変調器342と親マッハツェンダ型変調器345とを有する。図9に示されたマッハツェンダ型変調器312は例えば、子マッハツェンダ型変調器342の一方である。集積回路308(すなわち、制御部210)は、子マッハツェンダ型変調器342の一方と共に他方も制御してもよい。集積回路308(すなわち、制御部210)は更に、親マッハツェンダ型変調器345のヒータ324を制御してもよい。
【0094】
(2)動作
図12は、制御装置202の動作を説明する図である。第1保持部6aおよび第2保持部6bの動作は、実施の形態1で説明した。モニタ部4および差動部8の動作についても、実施の形態1で説明した。制御部210は、第1バイアス226aを第1部分18aに入力しながら、第2バイアス226bを第2部分18bに入力する。制御部210は、差動部8の差動出力224に基づいて、第1バイアス226aおよび第2バイアス226bを制御する。
【0095】
図13は、制御部210が実行する処理の一例を示すフローチャートである。以下の説明では、制御装置202は、トランスインピーダンス・アンプ302の代わりに抵抗(後述する図15参照)を有する場合を考える。その他のハードウエア構成は、図9~10を参照して説明した制御装置202(図12参照)のハードウエア構成と同じである。
【0096】
―ステップS102―
制御部210(図12参照)は先ず、変数Pに初期値Pを代入する。制御部210は更に、変数Pに初期値Pを代入する。
【0097】
―ステップS104―
ステップS102の後、制御部210は変数PからΔP(>0)を減算して、第1ヒータ324aに供給する電力(すなわち、第1バイアス226a)の値を算出する。制御部210は算出した電力(=P-ΔP)を、第1ヒータ324a(図10参照)に供給する。この際、制御部210は算出した電力を電圧値に変換し、算出した電圧値をデジタル・アナログ変換器310により電圧に変換する。以後のステップにおいても、同様である。ΔPは例えば、P以下の定数である。
【0098】
制御部210は更に変数PにΔPを加算して、第2ヒータ324bに供給する電力(すなわち、第2バイアス226b)の値を算出する。制御部210(図12参照)は算出した電力(=P+ΔP)を、第2ヒータ324b(図10参照)に供給する。
【0099】
ステップS104により、第1ヒータ324aおよび第2ヒータ324bの温度が変化する。その結果、マッハツェンダ型変調器312の出力216も変化する。
【0100】
―ステップS106―
ステップS104の後、制御部210(図12参照)は、第1スイッチ回路336a(図10参照)にクローズ信号342aを送信する。第1スイッチ回路336aは、クローズ信号342aに応答して閉じる。
【0101】
―ステップS108―
ステップS106の後、制御部210(図12参照)は、第1スイッチ回路336a(図10参照)にオープン信号342bを送信する。第1スイッチ回路336aは、オープン信号342bに応答して開く。
【0102】
ステップS106が終了しステップS108が開始するまでの合間に、第1保持部6a(図12参照)はモニタ信号217の強度に応じて第1出力222aの強度を変化させる。ステップS108により第1スイッチ回路336a(図10参照)が開くと、第1保持部6a(図12参照)は、変化させた第1出力222aの強度を保持する。
【0103】
―ステップS110―
ステップS108の後、制御部210は変数PにΔPを加算して、第1ヒータ324a(図10参照)に供給する電力(すなわち、第1バイアス226a)の値を算出する。制御部210(図12参照)は算出した電力(=P+ΔP)を、第1ヒータ324aに供給する。
【0104】
制御部210は更に変数PからΔPを減算して、第2ヒータ324bに供給する電力(すなわち、第2バイアス226b)の値を算出する。制御部210は算出した電力(=P-ΔP)を、第2ヒータ324bに供給する。
【0105】
ステップS110により、第1ヒータ324aおよび第2ヒータ324bの温度が変更される。その結果、マッハツェンダ型変調器312(図10参照)の出力216も変更される。
【0106】
―ステップS112―
ステップS110の後、制御部210(図12参照)は、第2スイッチ回路336b(図10参照)にクローズ信号342a送信する。第2スイッチ回路336bは、クローズ信号342aに応答して閉じる。
【0107】
―ステップS114―
ステップS112の後、制御部210(図12参照)は、第2スイッチ回路336b(図10参照)にオープン信号342b送信する。第2スイッチ回路336bは、オープン信号342bに応答して開く。
【0108】
ステップS112が終了しステップS114が開始するまでの合間に、第2保持部6b(図12参照)はモニタ信号217の強度に応じて第2出力222bの強度を変化させる。ステップS114により第2スイッチ回路336b(図10参照)が開かれると、第2保持部6b(図12参照)は、変化させた第2出力222bの強度を保持する。
【0109】
―ステップS116―
制御部210は、差動部8の差動出力224をアナログ・デジタル変換して、差動出力224の値Δ(以下、差分値と呼ばれる)を算出する。
【0110】
―ステップS118―
ステップS116の後、制御部210は、ステップS116で算出した差分値Δの絶対値が許容値εより大きいか否か判定する。差分値Δの絶対値が許容値ε以下の場合、制御部210は制御を終了する。
【0111】
差分値Δの絶対値が許容値εより大きい場合、制御部210はステップS120に進む。
【0112】
―ステップS120―
制御部210は、差分値Δに利得G(>0)を乗じた値を変数Pから減算して、新たなP(=P-G×ΔP)を算出する。
【0113】
制御部210は更に、差分値Δに利得G(>0)を乗じた値を変数Pに加算して、新たなP(=P+G×ΔP)を算出する。
【0114】
ステップS120の後、制御部210はステップS104~S120を再開する。再開後のステップS104およびステップS110により、第1ヒータ324aおよび第2ヒータ324bの温度は更新される。この更新により、ステップS116により算出される差分値Δの絶対値は更新前の絶対値より減少し、マッハツェンダ型変調器312の出力216の平均値は、目標値(実施の形態2では、出力216の極小値)に近づく。例えば、後述する図14に示されたように差分値Δが負の値の場合には、Pは増加しPは減少する。その結果、出力216の平均値は極小値に近づく。
【0115】
図14は、第1バイアス226aおよび第2バイアス226bとマッハツェンダ型変調器312の出力216の関係を示す図である。図14の上部に示された図面(以下、上図と呼ばれる)には、第1分岐光321a(図10参照)と第2分岐光321bの位相差Δφとマッハツェンダ型変調器312の出力216の関係346が示されている。縦軸は、マッハツェンダ型変調器312の出力216である。横軸は、位相差Δφである。
【0116】
図14の下部に示された図面(以下、下図と呼ばれる)には、第1バイアス226aの強度(すなわわち、電力)と位相差Δφの関係Aが示されている。下図には更に、第2バイアス226bの強度(すなわわち、電力)と位相差Δφの関係Bが示されている。
【0117】
縦軸は、第1バイアス226aおよび第2バイアス226bの強度である。横軸は、位相差Δφである。
【0118】
上図と下図の間には、位相差Δφの時間変化348が示されている。縦方向の位置は、時刻を示している。上側の位置は、下側の位置より遅い時刻を示している。後述する図18についても、同様である。横方向の位置は、位相差Δφを示している。
【0119】
上図の左側のグラフは、マッハツェンダ型変調器312の出力216の時間変化TC216を示している。横方向の位置は、時刻を示している。右側の位置は、左側の位置より遅い時刻を示している。後述する図18についても、同様である。縦向の位置は、マッハツェンダ型変調器312の出力216の強度を示している。
【0120】
出力216の時間変化TC216が示すように、ステップ110により第1~2バイアス226a、226bが変更されると、出力216は、実施の形態1の装置12の出力16と同様に矩形状に変化する(図4の時間変化TC16参照)。但し、実施の形態2の出力216の変化量は、実施の形態1の出力16の変化量より大きい。
【0121】
ステップS110では、第1バイアス226aの強度は、P-ΔPからP+ΔPに2×ΔP変化する。一方、第2バイアス226bの強度は、P+ΔPからP-ΔPに-2×ΔP変化する。
【0122】
その結果、第1分岐光321aと第2分岐光321bの位相差Δφは、第1バイアス226aだけを変化される実施の形態1の位相差の2倍になる。このため、マッハツェンダ型変調器312の出力216の変化量も2倍になる。その結果、モニタ信号217の変化も2倍になる。
【0123】
すなわち、実施の形態2の制御装置202は、第1ヒータ324a(第1部分18a)の温度(状態)が変更される前と後とのモニタ信号217の変化(差異)が促進されるように、第2ヒータ324b(第2部分18b)の温度(状態)を変更する。
【0124】
このため、モニタ信号217の信号対雑音比が高くなり、バイアス制御の精度が向上する。
【0125】
以上のように実施の形態2によれば、モニタ信号217の信号対雑音比が高くなるので、バイアス制御の精度が向上する。
【0126】
(実施の形態3)
実施の形態3は、実施の形態1および2に類似している。従って、実施の形態1または2と同じ構成等については、説明を省略または簡単にする。
【0127】
(1)構造
図15は、実施の形態3の制御装置502のハードウエア構成の一例を示す図である。図15には、制御装置502が制御する装置512も示されている。
【0128】
実施の形態3の制御装置502は、抵抗601、第1サンプル・ホールド回路304a、第2サンプル・ホールド回路304b、および差動増幅器306を有する。制御装置502は更に、アナログ・デジタル変換器307およぶ制御回路508を有する。抵抗601は、制御装置502の外部に設けられてもよい。例えば抵抗601は、制御装置502が制御する装置512に設けられてもよい。
【0129】
第1サンプル・ホールド回路304aは、実施の形態2で説明した回路である。従って、第1サンプル・ホールド回路304aの説明は省略する。第2サンプル・ホールド回路304bおよび差動増幅器306についても同様である。
【0130】
抵抗601の一端は、第1サンプル・ホールド回路304aおよび第2サンプル・ホールド回路304bの入力ポートに接続される。抵抗601の他端は、基準電位(すなわち、グラウンド)に接続される。
【0131】
実施の形態3の制御装置502の機能ブロック図は、実施の形態2の機能ブロック図(図8参照)と略同じである。
【0132】
実施の形態3のモニタ信号生成部301は、抵抗601(図15参照)により実現される。第1保持部6aは、第1サンプル・ホールド回路304aにより実現される。第2保持部6bは、第2サンプル・ホールド回路304bにより実現される。差動部8は、差動増幅器306により実現される。制御部210は、制御回路508およびアナログ・デジタル変換器307により実現される。
【0133】
実施の形態3の制御装置502が制御する装置512の機能ブロック図は、実施の形態1の装置12(図1参照)と同じである。従って、実施の形態3の制御部210が制御する部分は、第1部分である。
【0134】
図16は、制御回路508の一例を示す図である。制御回路508は、CPU(Central Processing Unit)602、メモリ604、および不揮発性メモリ606を有する。メモリ604は例えば、RAM(Random Access Memory)である。不揮発性メモリ606は例えば、フラッシュメモリである。制御回路508は更にバス610を有する。CPU602、メモリ604、および不揮発性メモリ606は、バス610を介して互いに接続される。
【0135】
制御回路508は更に、第1スイッチ回路336aをバス610に接続する第1インターフェース608aおよび第2スイッチ回路336bをバス610に接続する第2インターフェース608bを有する。制御回路508は更に、アナログ・デジタル変換器307をバス610に接続する第3インターフェース608cを有する。制御回路508は更に、後述するTOFドライバ制御回路510をバス610に接続する第4インターフェース608dを有する。
【0136】
CPU602はバス610を介してメモリ604に結合され、例えば不揮発性メモリ606に記録されたプログラムを実行するように構成されている。
【0137】
(2)動作
図17は、制御装置502の動作を説明する図である。装置512(制御装置502により制御される装置)は、チューナブル波長フィルタ(Tunable Optical Filter:以下、TOFと呼ばれる)612およびTOFドライバ制御回路510を有する。装置512は更に、光検出器314を有する。
【0138】
光検出器314は、TOF612の出力516から分岐された光を光電変換して、光電流315を生成する。光電流315は抵抗601に入力され、モニタ信号217を生成する。モニタ信号217は、光電流315により抵抗601に発生する電圧である。
【0139】
TOF612は例えば、TOF612に入力する光525(以下、入力光と呼ばれる)を分光する回折格子と、スリット板とを有する。回折格子により分光された入力光525はスリット板に照射され、分光された入力光525の一部がスリット板に設けられたスリットを通過する。入力光525のうちスリットを通過した部分が、TOF612から出力される。
【0140】
TOF612から出力される光の中心波長(例えば、3dB帯域の中心)は、スリット板の位置により決まる。スリット板の位置は、TOFドライバ制御回路510から出力される制御電圧(すなわち、バイアス)526に応じて変化する。
【0141】
TOF612の入力光525の波長が一定の場合、TOF612を含む領域514からの出力516の強度は、スリット板の位置に応じて変化する。スリット板はTOF612の一部であり、図1を参照して説明した第1部分18aである。スリット板の状態は、スリット板の位置(例えば、基準位置からの距離)により定量化される状態である。
【0142】
図18は、制御部210(図8参照)の動作を説明する図である。
【0143】
図18の上部に示された図(以下、上図と呼ばれる)には、TOF612の出力516と中心波長との関係614が示されている。縦軸は、TOF612の出力516の強度である。横軸は、出力516の中心波長である。
【0144】
図18の下部に示された図面(以下、下図と呼ばれる)は、TOFドライバ制御回路510が出力する制御電圧526と出力516の中心波長との関係Cを示す図である。縦軸は、制御電圧526である。横軸は、出力516の中心波長である。下図には更に、制御電圧526の時間変化TC526が示されている。上図と下図の間には、中心波長の時間変化TCλが示されている。上図には、TOC612の出力516の時間変化TC516が示されている。
【0145】
上図の関係614が示すように、TOF612の出力516は、中心波長と共に増加して極大値に達しその後減少する。制御回路508は、TOF612の出力516が極大値532になるように、TOFドライバ制御回路510を介して、TOF612の回折格子の位置を制御する。すなわち、出力516の目標値は、極大値である。
【0146】
具体的には、制御回路508は先ず、TOFドライバ制御回路510にコマンド616を送信する。TOFドライバ制御回路510はコマンド616に応答して、矩形波が重畳された制御電圧526(時間変化TC526参照)を生成し、TOF612に印加する。
【0147】
TOF612の出力516は、制御電圧526に応答して変化する。制御回路508は、出力516の変化(時間変化TC516参照)によって生じる差動増幅器306の出力524の絶対値が減少するようTOFドライバ制御回路510を制御する。この制御により、TOF612の出力516の平均値(=(I7+I8)/2)は、出力516の極大値(すなわち、目標値)に近づく。上記制御が繰り返されることで、TOF612の出力516の強度は最終的には、極大値533に略到達する。
【0148】
実施の形態3によれば、制御対象の領域514の出力を極大化することができる。
【0149】
以上、本発明の実施形態について説明したが、実施の形態1~3は、例示であって制限的なものではない。例えば、実施の形態1~2のマッハツェンダ型変調器のコアはシリコンにより形成される。しかし、実施の形態1~2のマッハツェンダ型変調器のコアは、シリコン以外の材料により形成されてもよい。例えば、実施の形態1~2のマッハツェンダ型変調器のコアはInPまたは強誘電体により形成されてもよい。
【0150】
以上の実施の形態1~3に関し、更に以下の付記を開示する。
【0151】
(付記1)
第1部分を含む領域からの出力が、前記第1部分の状態に応じて変化する装置を制御する制御装置であって、
前記出力に応じて変化するモニタ信号が入力され、入力された前記モニタ信号の強度に応じて第1出力を変化させた後、変化させた前記第1出力を保持する第1サンプル・ホールド処理を行う第1保持部と、
前記第1保持部とは異なる保持部であって前記モニタ信号が入力され、入力された前記モニタ信号の強度に応じて第2出力を変化させた後、変化させた前記第2出力を保持する第2サンプル・ホールド処理を行う第2保持部と、
前記第1部分の状態を一定に保ちながら前記第1保持部に前記第1サンプル・ホールド処理を行わせた後に前記第1部分の状態を変更し、変更させた前記第1部分の状態を保ちながら前記第2保持部に前記第2サンプル・ホールド処理を行わせ更に、前記第1保持部が保持する前記第1出力の強度と前記第2保持部が保持する前記第2出力の強度との差分に基づいて、前記第1部分の状態を制御する制御部とを有する
制御装置。
【0152】
(付記2)
前記変更前の前記出力の強度と前記変更後の前記出力の強度の平均値が、前記出力の強度の目標値に近づくように、前記制御部の処理が繰り返されることを
特徴とする付記1に記載の制御装置。
【0153】
(付記3)
前記領域は、前記第1部分とは異なる第2部分を含み、
前記領域の前記出力は更に、前記第2部分の状態に応じて変化し、
前記変更は、前記第1部分の状態が変更させる前後の前記出力の変化が促進されるように、前記第1部分の状態と共に前記第2部分の状態を変更する処理であり、
前記制御部は、前記差分に基づいて、前記第1部分の状態および前記第2部分の状態を制御することを
特徴とする付記1または2に記載の制御装置。
【0154】
(付記4)
前記装置の前記領域は、入力された光を第1分岐光と第2分岐光とに分岐する分岐器と、前記第1分岐光の位相を変調する第1光導波路と、前記第2分岐光の位相を変調する第2光導波路と、変調された前記第1分岐光と変調された前記第2分岐光とを合波して前記領域から出力する合波器とを有し、
前記第1部分は、第1光導波路を加熱するヒータを有し、
前記第2部分は、第2光導波路を加熱するヒータを有することを
特徴とする付記3に記載の制御装置。
【0155】
(付記5)
第1部分を含む領域からの出力が、前記第1部分の状態に応じて変化する装置の制御方法であって、
前記第1部分の状態を一定に保ちながら前記出力の強度に応じて変化する第1信号を生成し生成した前記第1信号を保持した後に前記第1部分の状態を変更し、変更された前記第1部分の状態を一定に保ちながら、前記出力の強度に応じて変化する第2信号を生成し生成した前記第2信号を保持し更に、保持された前記第1信号の強度と保持された前記第2信号の強度の差分に基づいて、前記第1部分の状態を制御する
制御方法。
【符号の説明】
【0156】
2 :制御装置
6a :第1保持部
6b :第2保持部
10 :制御部
14 :領域
16 :出力
17 :モニタ信号
18a :第1部分
18b :第2部分
22a :第1出力
22b :第2出力
24 :差動出力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18