(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-26
(45)【発行日】2025-04-03
(54)【発明の名称】冷媒漏洩検知システム、方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
F25B 49/02 20060101AFI20250327BHJP
F24F 11/36 20180101ALI20250327BHJP
【FI】
F25B49/02 520A
F25B49/02 520M
F24F11/36
(21)【出願番号】P 2021060420
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2024-03-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】吉見 学
(72)【発明者】
【氏名】笠原 伸一
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-139226(JP,A)
【文献】特開2005-207644(JP,A)
【文献】特開2019-100569(JP,A)
【文献】特開2019-027775(JP,A)
【文献】特開2005-098642(JP,A)
【文献】特開平11-230648(JP,A)
【文献】国際公開第2017/068686(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 49/02
F24F 11/00 ~ 11/89
G01M 3/00 ~ 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍空調機器と、サーバと、を含む、冷媒漏洩検知システムであって、
前記冷凍空調機器の制御部、または、前記冷凍空調機器の外部コントローラの制御部は、
前記冷凍空調機器の運転データを取得し、
前記運転データから、急速漏洩を判定し、
前記サーバの制御部は、
前記冷凍空調機器の運転データを取得し、
前記運転データから、スローリークを判定し、
前記急速漏洩を判定するためのデータは、短い間隔で取得された運転データであり、
前記スローリークを判定するためのデータは、長期間に取得された運転データで
あり、
前記サーバの制御部は、前記短い間隔で取得された運転データを取得せず、前記急速漏洩の判定ロジックは、前記スローリークの判定ロジックよりも容易である、
冷媒漏洩検知システム。
【請求項2】
前記短い間隔は5分以下であり、前記長期間は1週間以上である、請求項
1に記載の冷媒漏洩検知システム。
【請求項3】
前記スローリークを判定するためのデータは、前記長期間に取得された運転データと前記長期間に取得された運転データが加工されたデータである、請求項
1または2に記載の冷媒漏洩検知システム。
【請求項4】
前記急速漏洩を判定する制御部は、前記急速漏洩を検知したときに、前記冷凍空調機器または前記冷凍空調機器と連動する外部機器の運転状態を変更し、
前記スローリークを判定する制御部は、前記スローリークを検知したときに、前記冷凍空調機器または前記外部機器の運転状態を変更しない、請求項1から
3のいずれか一項に記載の冷媒漏洩検知システム。
【請求項5】
前記急速漏洩は、冷媒の漏洩速度が閾値以上であり、前記スローリークは、冷媒の漏洩速度が前記閾値未満である、請求項1から
4のいずれか一項に記載の冷媒漏洩検知システム。
【請求項6】
前記急速漏洩を判定する制御部が用いる運転データおよび検知対象となる物理現象、判定ロジック、判定の閾値と、前記スローリークを判定する制御部が用いる運転データおよび検知対象となる物理現象、判定ロジック、判定の閾値とは、異なる、請求項1から
5のいずれか一項に記載の冷媒漏洩検知システム。
【請求項7】
前記急速漏洩を判定する制御部は、前記冷凍空調機器の温度および圧力に関する運転データの変化量または変化率、および、漏洩ガスの検知センサーデータ、を用いる、請求項
6に記載の冷媒漏洩検知システム。
【請求項8】
前記急速漏洩を判定する制御部は、前記運転データを加工し、前記運転データが加工されたデータを前記スローリークを判定する制御部へ送信する、請求項1から
7のいずれか一項に記載の冷媒漏洩検知システム。
【請求項9】
前記加工は、前記運転データを間引くことである、請求項
8に記載の冷媒漏洩検知システム。
【請求項10】
前記加工は、前記運転データを演算して新たなデータを作成することである、請求項
8に記載の冷媒漏洩検知システム。
【請求項11】
前記急速漏洩の判定の結果および前記スローリークの判定の結果を記憶装置に記憶させる、請求項1から
10のいずれか一項に記載の冷媒漏洩検知システム。
【請求項12】
冷凍空調機器と、サーバと、を含む、冷媒漏洩検知システムが実行する方法であって、
前記冷凍空調機器の制御部、または、前記冷凍空調機器の外部コントローラの制御部が、
前記冷凍空調機器の運転データを取得するステップと、
前記運転データから、急速漏洩を判定するステップと、
前記サーバの制御部が、
前記冷凍空調機器の運転データを取得するステップと、
前記運転データから、スローリークを判定するステップと、を含み、
前記急速漏洩を判定するためのデータは、短い間隔で取得された運転データであり、
前記スローリークを判定するためのデータは、長期間に取得された運転データで
あり、
前記サーバの制御部は、前記短い間隔で取得された運転データを取得せず、前記急速漏洩の判定ロジックは、前記スローリークの判定ロジックよりも容易である、
方法。
【請求項13】
冷凍空調機器の制御部、または、前記冷凍空調機器の外部コントローラの制御部に、
前記冷凍空調機器の運転データを取得する手順と、
前記運転データから、急速漏洩を判定する手順と、を実行させ、
サーバの制御部に、
前記冷凍空調機器の運転データを取得する手順と、
前記運転データから、スローリークを判定する手順と、を実行させ、
前記急速漏洩を判定するためのデータは、短い間隔で取得された運転データであり、
前記スローリークを判定するためのデータは、長期間に取得された運転データで
あり、
前記サーバの制御部は、前記短い間隔で取得された運転データを取得せず、前記急速漏洩の判定ロジックは、前記スローリークの判定ロジックよりも容易である、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷媒漏洩検知システム、方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空調機器の冷媒の漏洩を検知する技術が知られている(特許文献1)。昨今では、遠隔監視機能により空調機器の運転データを取得し、取得した運転データおよび運転データを用いた演算データから冷媒の保有量の低下を検知する冷媒漏洩検知システムが普及している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、冷媒漏洩検知システムは、短時間に大量の冷媒が漏れて酸欠や可燃性冷媒の発火の原因となる急速漏洩の検知だけでなく、長期的に徐々に冷媒が漏れて機能の低下に至るスローリークの検知にも対応しなければならない。
【0005】
本開示では、2種類の冷媒漏洩を判定することを目的とする。
【0006】
本開示の第1の態様による冷媒漏洩検知システムは、
制御部を備えた冷媒漏洩検知システムであって、
前記制御部は、
冷凍空調機器の運転データを取得し、
前記運転データから、第1の冷媒漏洩を判定し、
前記運転データから、第2の冷媒漏洩を判定し、
前記第1の冷媒漏洩を判定するためのデータは、第1の閾値以下の間隔で取得された運転データであり、
前記第2の冷媒漏洩を判定するためのデータは、第2の閾値以上分の運転データである。
【0007】
本開示の第1の態様によれば、2種類の冷媒漏洩を判定することができる。具体的には、第1の冷媒漏洩は、短い間隔で取得された運転データの方が判定しやすい急速漏洩であり、第2の冷媒漏洩は、長期間に取得された運転データの方が判定しやすいスローリークであり、性質が異なる2種類の冷媒漏洩を検知することができる。
【0008】
本開示の第2の態様による冷媒漏洩検知システムは、第1の態様に記載の冷媒漏洩検知システムであって、
前記第1の閾値は5分であり、前記第2の閾値は1週間である。
【0009】
本開示の第2の態様によれば、5分以下の間隔で取得された運転データを判定に用いることで、急速漏洩が発生しても即座に検知し、酸欠や発火事故を防止できる。また、1週間分以上の長期間の運転データのトレンドの変化を判定に用いることで、短期間の運転データだけでは漏洩による変化を検知しにくいスローリークも確実に検知することができる。
【0010】
本開示の第3の態様による冷媒漏洩検知システムは、第1の態様または第2の態様に記載の冷媒漏洩検知システムであって、
前記第2の冷媒漏洩を判定するためのデータは、前記第2の閾値以上分の運転データと前記第2の閾値以上分の運転データが加工されたデータである。
【0011】
本開示の第3の態様によれば、運転データだけでなく、運転データが加工されたデータからも第2の冷媒漏洩を判定することができる。具体的には、例えば、長期間の運転データと、運転データ中の特定データ同士を演算して得られる加工データと、を検知に用いることで、よりスローリークが検知しやすくなる。このような加工データの例として、凝縮温度と凝縮器出口温度の差であり、冷媒漏洩量と相関の高いサブクール(SC)が挙げられる。
【0012】
本開示の第4の態様による冷媒漏洩検知システムは、第1の態様から第3の態様のいずれかに記載の冷媒漏洩検知システムであって、
前記制御部は、
前記第1の冷媒漏洩を検知したときに、前記冷凍空調機器または前記冷凍空調機器と連動する外部機器の運転状態を変更し、
前記第2の冷媒漏洩を検知したときに、前記冷凍空調機器または前記外部機器の運転状態を変更しない。
【0013】
本開示の第4の態様によれば、短い間隔で取得された運転データから判定される冷媒漏洩の場合、急速漏洩による酸欠、発火事故や冷凍空調機器の故障の発生リスクが高く、緊急性が高い。そのため、冷凍空調機器または外部機器の運転状態を変更し、機器の運転停止や閉空間に大量に漏洩した冷媒を室外に排気するために換気等処置を行い、事故の発生を防止する。長期間に取得された運転データから判定される冷媒漏洩の場合、緊急性が低いため、冷凍空調機器または外部機器の運転状態を変更しない。
【0014】
本開示の第5の態様による冷媒漏洩検知システムは、第1の態様から第4の態様のいずれかに記載の冷媒漏洩検知システムであって、
前記第1の冷媒漏洩は、冷媒の漏洩速度が第3の閾値以上であり、前記第2の冷媒漏洩は、冷媒の漏洩速度が前記第3の閾値未満である。
【0015】
本開示の第5の態様によれば、漏洩速度に関する第3の閾値を設定することで、冷凍空調機器の特性に応じた第1の閾値と第2の閾値の設定が可能になり、冷媒の急速漏洩とスローリークとを確実に判定することができる。
【0016】
本開示の第6の態様による冷媒漏洩検知システムは、第1の態様から第5の態様のいずれかに記載の冷媒漏洩検知システムであって、
前記第1の冷媒漏洩を判定する制御部が用いる運転データおよび検知対象となる物理現象、判定ロジック、判定の閾値と、前記第2の冷媒漏洩を判定する制御部が用いる運転データおよび検知対象となる物理現象、判定ロジック、判定の閾値とは、異なる。
【0017】
本開示の第6の態様によれば、急速漏洩とスローリークの特徴に応じてそれぞれの漏洩検知に適した判定方法を実現できるため、2つの異なる性質の冷媒漏洩を判定して検知することができる。
【0018】
本開示の第7の態様による冷媒漏洩検知システムは、第6の態様に記載の冷媒漏洩検知システムであって、
前記第1の冷媒漏洩を判定する制御部は、前記冷凍空調機器の温度および圧力に関する運転データの変化量または変化率、および、漏洩ガスの検知センサーデータ、を用いる。
【0019】
本開示の第7の態様によれば、急速漏洩に伴い急激に変化する冷凍空調機器の温度および圧力に関する運転データ、および、漏洩ガスの検知センサーデータから、第1の冷媒漏洩を判定することができる。
【0020】
本開示の第8の態様による冷媒漏洩検知システムは、第1の態様から第7の態様のいずれかに記載の冷媒漏洩検知システムであって、
前記冷媒漏洩検知システムは、前記冷凍空調機器と、サーバと、を含み、
前記制御部は、前記冷凍空調機器と、前記冷凍空調機器の外部コントローラと、前記サーバと、のいずれかに設置される。
【0021】
本開示の第8の態様によれば、冷凍空調機器の設置状況に応じて、第1の冷媒漏洩を判定する制御部と第2の冷媒漏洩を判定する制御部を設置する場所を任意に選択することができる。
【0022】
本開示の第9の態様による冷媒漏洩検知システムは、第1の態様から第7の態様のいずれかに記載の冷媒漏洩検知システムであって、
前記冷媒漏洩検知システムは、前記冷凍空調機器と、サーバと、を含み、
前記第1の冷媒漏洩を判定する制御部と前記第2の冷媒漏洩を判定する制御部は、前記冷凍空調機器と、前記冷凍空調機器の外部コントローラと、前記サーバと、に分散して設置される。
【0023】
本開示の第9の態様によれば、第1の冷媒漏洩を判定するために適した場所、および、第2の冷媒漏洩を判定するために適した場所に制御部を設置することができる。
【0024】
本開示の第10の態様による冷媒漏洩検知システムは、第9の態様に記載の冷媒漏洩検知システムであって、
前記第1の冷媒漏洩を判定する制御部は、前記冷凍空調機器または前記冷凍空調機器の外部コントローラに設置され、
前記第2の冷媒漏洩を判定する制御部は、前記サーバに設置される。
【0025】
本開示の第10の態様によれば、短い間隔で取得された運転データを冷凍空調機器または外部コントローラで処理するため、大量のデータをサーバに送信する必要がなく、サーバは、長期間に取得された運転データの処理に専念することができるので、機器コストと通信コストを抑えることができる。
【0026】
本開示の第11の態様による冷媒漏洩検知システムは、第9の態様に記載の冷媒漏洩検知システムであって、
前記第1の冷媒漏洩を判定する制御部は、前記冷凍空調機器の外部コントローラに設置され、
前記第2の冷媒漏洩を判定する制御部は、前記サーバに設置され、
前記外部コントローラは、前記運転データを加工し、前記運転データが加工されたデータを前記サーバへ送信する。
【0027】
本開示の第11の態様によれば、短い間隔で取得された運転データを外部コントローラで処理することでサーバに送信する必要がなく、サーバは、長期間に取得された運転データを処理することができる。さらに、外部コントローラは、運転データを加工したうえでサーバへ送信するので、通信データ量を削減したり、サーバでのデータ加工が不要になりサーバでの演算量を削減したりできるので、システムの運用コストを抑えることができる。
【0028】
本開示の第12の態様による冷媒漏洩検知システムは、第11の態様に記載の冷媒漏洩検知システムであって、
前記加工は、前記運転データを間引くことである。
【0029】
本開示の第12の態様によれば、第2の冷媒漏洩判定に使用するためにサーバに送信するデータ量を抑えることができる。
【0030】
本開示の第13の態様による冷媒漏洩検知システムは、第11の態様に記載の冷媒漏洩検知システムであって、
前記加工は、前記運転データを演算して新たなデータを作成することである。
【0031】
本開示の第13の態様によれば、予め外部コントローラで運転データからサブクール(SC)のような加工データを作成することで、サーバへのデータ送信量やサーバでの演算量を削減することができる。
【0032】
本開示の第14の態様による冷媒漏洩検知システムは、第1の態様から第13の態様のいずれかに記載の冷媒漏洩検知システムであって、
前記第1の冷媒漏洩の判定の結果および前記第2の冷媒漏洩の判定の結果を記憶装置に記憶させる。
【0033】
本開示の第14の態様によれば、第1の冷媒漏洩が検知されたか否かの情報および第2の冷媒漏洩が検知されたか否かの情報を残しておくことができる。
【0034】
本開示の第15の態様による方法は、
冷媒漏洩検知システムの制御部が実行する方法であって、
冷凍空調機器の運転データを取得するステップと、
前記運転データから、第1の冷媒漏洩を判定するステップと、
前記運転データから、第2の冷媒漏洩を判定するステップと、を含み、
前記第1の冷媒漏洩を判定するためのデータは、第1の閾値以下の間隔で取得された運転データであり、
前記第2の冷媒漏洩を判定するためのデータは、第2の閾値以上分の運転データである。
【0035】
本開示の第16の態様によるプログラムは、
冷媒漏洩検知システムに、
冷凍空調機器の運転データを取得する手順と、
前記運転データから、第1の冷媒漏洩を判定する手順と、
前記運転データから、第2の冷媒漏洩を判定する手順と、を実行させ、
前記第1の冷媒漏洩を判定するためのデータは、第1の閾値以下の間隔で取得された運転データであり、
前記第2の冷媒漏洩を判定するためのデータは、第2の閾値以上分の運転データである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図2】本開示の全体の構成例(<実施例1><実施例2>)である。
【
図3】本開示の全体の構成例(<実施例3><実施例4><実施例5>)である。
【
図4】本開示の一実施形態に係る空気調和システム(冷房運転の場合)のハードウェア構成図である。
【
図5】本開示の一実施形態に係る空気調和システム(暖房運転の場合)のハードウェア構成図である。
【
図6】本開示の一実施形態に係る空気調和システム(冷暖同時運転の場合)のハードウェア構成図である。
【
図7】本開示の一実施形態に係るエコノマイザ回路を有する場合、熱源側と利用側との少なくとも一方が水冷式の場合の一例である。
【
図8】本開示の一実施形態に係る中間インジェクション回路を有する場合の一例である。
【
図9】本開示の一実施形態に係る外部コントローラ、サーバのハードウェア構成図である。
【
図10】本開示の一実施形態に係る制御部の機能ブロック図である。
【
図11】本開示の一実施形態に係る冷媒漏洩検知処理のフローチャートである。
【
図12】本開示の一実施形態に係る平均的な冷媒充填量(20kg)を持つビル用マルチエアコンで急速漏洩が発生した際の冷媒漏洩速度と全充填量漏洩時間の関係を示す図である。
【
図13】本開示の一実施形態に係るスローリークが発生したビル用マルチエアコンの1年間の日々のSC(代表値)と、その年の他の運転データから予測される正常時の日々の予測SC(代表値)を示す図である。
【
図14】本開示の一実施形態に係るスSCと予測SCの差として定義された冷媒量指標値ΔSC、ΔSCの7日間の移動平均と14日間の移動平均を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面に基づいて本開示の実施の形態を説明する。
【0038】
<全体の構成>
図1は、本開示の全体の構成図である。冷媒漏洩検知システム1は、冷凍空調機器20と、外部コントローラ30と、サーバ40と、外部機器50と、記憶装置60と、を含むことができる。以下、それぞれについて説明する。
【0039】
冷凍空調機器20は、冷蔵、冷凍分野で使われる冷蔵庫や製氷機、スーパーマーケット等に設置されるショーケース、冷凍倉庫、冷凍コンテナ等である。
【0040】
外部コントローラ30は、冷凍空調機器20と同一の建物等内に設置され、1台もしくは複数台の冷凍空調機器の運転状態や運転スケジュールを管理する制御装置である。
【0041】
サーバ40は、冷凍空調機器20および外部コントローラ30から離れた場所に設置されたサーバ(例えば、クラウド上のサーバ)である。
【0042】
外部機器50は、冷凍空調機器20と連動して動作する機器である。例えば、外部機器50は、換気扇、冷媒配管遮断弁、サイレン、警報装置等である。
【0043】
記憶装置60は、冷凍空調機器20および外部コントローラ30から離れた場所に設置された記憶装置(例えば、クラウド上の記憶装置)である。
【0044】
制御部(プロセッサ)10は、第1の冷媒漏洩および第2の冷媒漏洩を判定する。
【0045】
制御部10は、冷凍空調機器20の運転データから、第1の冷媒漏洩を判定する。第1の冷媒漏洩を判定するためのデータは、第1の閾値以下の間隔で取得された運転データである。例えば、第1の閾値は、5分である。制御部10は、冷凍空調機器20の温度および圧力に関する運転データの変化量または変化率、および、漏洩ガスの検知センサーデータ、を用いて、第1の冷媒漏洩を判定することができる。
【0046】
制御部10は、冷凍空調機器20の運転データから、第2の冷媒漏洩を判定する。第2の冷媒漏洩を判定するためのデータは、第2の閾値以上分の運転データである。例えば、第2の閾値は、1週間である。第2の冷媒漏洩を判定するためのデータは、取得の間隔の長短を問わない。なお、第2の冷媒漏洩を判定するためのデータは、第2の閾値以上分の運転データと第2の閾値以上分の運転データが加工されたデータであってもよい。
【0047】
制御部10は、第1の冷媒漏洩を検知したときに、冷凍空調機器20または冷凍空調機器20と連動する外部機器50の運転状態を変更する。例えば、制御部10は、第1の冷媒漏洩を検知したときに、冷凍空調機器20の運転を停止させる。また、例えば、制御部10は、第1の冷媒漏洩を検知したときに、機器の冷媒配管を遮断する閉鎖弁や換気扇、サイレン、警報装置等の外部機器50の動作を開始させる(例えば、換気扇により換気をする、サイレンや警報装置の発報により冷凍空調機器20の使用者に警告する)。
【0048】
制御部10は、第2の冷媒漏洩を検知したときに、冷凍空調機器20または冷凍空調機器20と連動する外部機器50の運転状態を変更しない。
【0049】
<第1の冷媒漏洩と第2の冷媒漏洩>
ここで、第1の冷媒判定および第2の冷媒判定について説明する。例えば、第1の冷媒漏洩は、冷媒の漏洩速度が所定の閾値(例えば、1kg/h)以上であり、第2の冷媒漏洩は、冷媒の漏洩速度が該所定の閾値(例えば、1kg/h)未満である。つまり、制御部10は、急速漏洩である第1の冷媒漏洩およびスローリークである第2の冷媒漏洩を判定することができる。例えば、急速漏洩は、放置すると酸欠や可燃性冷媒が着火濃度に到達する可能性が生じる冷媒漏洩であり、スローリークは、放置しても酸欠や着火濃度に到達する可能性がないが、将来的に冷凍空調機器の性能低下を引き起こす。
【0050】
第1の冷媒漏洩を判定する制御部が用いる運転データおよび検知対象となる物理現象、判定ロジック、判定の閾値と、第2の冷媒漏洩を判定する制御部が用いる運転データおよび検知対象となる物理現象、判定ロジック、判定の閾値とは、異なる。
【0051】
具体的には、急速漏洩に対応するためには、検知ロジックは簡単でよいが、秒や分のオーダーでデータを取得しなければならない。逆に、スローリークに対応するためには、データの取得間隔は時や日のオーダーでよいが、運転データから軽微な冷媒量の低下を推定するために機械学習モデル等の複雑な検知ロジックと過去のトレンドを判定するために運転データや演算データを蓄積するデータベースが必要である。
【0052】
なお、両者の物理現象の違いは、例えば、漏洩による温度、圧力の変化を利用する場合、急速漏洩では、液冷媒が外部へ噴出して気化することで生じる過渡的、非定常な値の変化を検知するのに対し、スローリークでは、微量な冷媒の漏れでなので過渡的な変化は生じず、長期間経過して判明する定常状態での温度、圧力値の変化を検知する。また別の例では、急速漏洩では、冷凍空調機器周辺に漏れ出した冷媒ガス濃度を検知するのに対し、スローリークでは、紫外線照射により漏洩箇所ににじみ出て来る冷凍機油に混ぜられた蛍光剤を検知する等、検知に利用する物理現象が異なる。
【0053】
図2および
図3を参照しながら詳細に説明するように、第1の冷媒漏洩を判定するための制御部(プロセッサ)および第2の冷媒を漏洩するための制御部(プロセッサ)は、冷凍空調機器20、外部コントローラ30、サーバ40に設置されうる。
【0054】
<構成例>
図2および
図3は、本開示の全体の構成例である。
図2は、<実施例1>、<実施例2>を示す。
図3は、<実施例3>、<実施例4>、<実施例5>を示す。
【0055】
図2の<実施例1>、<実施例2>に示されるように、冷媒漏洩検知システム1は、冷凍空調機器20と、サーバ40と、を含み、第1の冷媒漏洩を判定する制御部と第2の冷媒漏洩を判定する制御部は、冷凍空調機器20と、冷凍空調機器20の外部コントローラ30と、サーバ40と、に分散して設置されうる。
【0056】
例えば、<実施例1>に示されるように、第1の冷媒漏洩を判定する制御部は、冷凍空調機器20の外部コントローラ30に設置され、第2の冷媒漏洩を判定する制御部は、サーバ40に設置される。外部コントローラ30は、運転データを加工し、運転データが加工されたデータをサーバ40へ送信することができる。
【0057】
例えば、<実施例2>に示されるように、第1の冷媒漏洩を判定する制御部は、冷凍空調機器20(室内機でも室外機でもよい)に設置され、第2の冷媒漏洩を判定する制御部は、サーバ40に設置される。
【0058】
このように、<実施例1>、<実施例2>では、冷凍空調機器20(例えば、室外機)や現地に設置される外部コントローラ30が、短いサンプリング周期の運転データと簡単なロジックで急速漏洩を検知して、検知結果のみをサーバ40に送信することができる。また、冷凍空調機器20(例えば、室外機)や現地に設置される外部コントローラ30が、スローリークの検知が可能な程度の長期のサンプリング周期で運転データをサーバ40に送信し、サーバ40は送信されたデータを貯蔵し、貯蔵された長期間のデータを使用してスローリークを検知することができる。
【0059】
そのため、冷凍空調機器20や外部コントローラ30が短い間隔で取得されたデータをサーバ40に送信してサーバ40が急速漏洩とスローリークの両方の漏洩形態に対応するのに比べて、データ通信コストを抑えられる。また、冷凍空調機器20や外部コントローラ30が運転データをサーバ40に送信せず、急速漏洩とスローリークの両方の漏洩形態に対応する(つまり、冷凍空調機器20の制御基板や外部コントローラ30に高度な演算機能とデータベース機能が必要となる)のに比べて、機器コストを抑えることができる。
【0060】
図3の<実施例3>、<実施例4>、<実施例5>に示されるように、冷媒漏洩検知システム1は、冷凍空調機器20と、サーバ40と、を含み、制御部10は、冷凍空調機器20と、冷凍空調機器20の外部コントローラ30と、サーバ40と、のいずれかに設置されうる。
【0061】
例えば、<実施例3>に示されるように、冷凍空調機器20(室内機でも室外機でもよい)に、制御部(第1の冷媒漏洩を判定するための制御部および第2の冷媒漏洩を判定するための制御部)10が設置される。
【0062】
例えば、<実施例4>に示されるように、外部コントローラ30に、制御部(第1の冷媒漏洩を判定するための制御部および第2の冷媒漏洩を判定するための制御部)10が設置される。
【0063】
例えば、<実施例5>に示されるように、サーバ40に、制御部(第1の冷媒漏洩を判定するための制御部および第2の冷媒漏洩を判定するための制御部)10が設置される。
【0064】
図4~
図8を参照しながら、空気調和システム100のハードウェア構成を説明する。なお、空気調和システム100は、ビル用マルチエアコン等のマルチエアコン、チラーを熱源とするセントラル空調システム、店舗・オフィス用エアコン、ルームエアコン等の任意の空気調和システムであってもよいし、冷暖房用途のみならず冷蔵・冷凍システムであってもよい。空気調和システム100は、複数の室内機300を有することができる。複数の室内機300は、異なる性能の室内機を含んでいてもよいし、同一の性能の室内機を含んでいてもよいし、停止中の室内機を含んでいてもよい。
【0065】
<空気調和システムのハードウェア構成(冷房運転の場合)>
図4は、本開示の一実施形態に係る空気調和システム(冷房運転の場合)100のハードウェア構成図である。空気調和システム100は、室外機200および1または複数の室内機300を有する。
【0066】
図4の例では、室外熱交換器201と、室外機主膨張弁205と、過冷却熱交換器203と、室内熱交換器膨張弁302と、室内熱交換器301と、四路切替弁206と、圧縮機202とが、冷媒配管で接続され主冷媒回路を構成している。四路切替弁206は、圧縮機202の吐出ガスを室外熱交換器201に供給するように流路が設定される。
図4の例では、さらに、室外熱交換器201と過冷却熱交換器203との間の配管から圧縮機202の吸入側の配管に接続されたバイパス配管に、過冷却熱交換器膨張弁204が設けられている。過冷却熱交換器203は、室外熱交換器201と過冷却熱交換器203との間から圧縮機202の吸入側の配管に接続されたバイパス配管に設けられた過冷却熱交換器膨張弁204を通過した冷媒と主冷媒回路内の冷媒とを熱交換させる熱交換器である。なお、
図4のバイパス例は一例である。
【0067】
<<室外機>>
室外機200側では、室外熱交換器201と、圧縮機202と、過冷却熱交換器203と、過冷却熱交換器膨張弁(バイパス回路)204と、室外機主膨張弁(主冷媒回路)205とが配管に接続されている。室外機200は、各種センサ(温度センサ(例えば、サーミスタ)(1)、(3)、(4)、(6)、(7)および圧力センサ(2)、(5)など)を有する。
【0068】
<<室内機>>
室内機300側では、室内熱交換器301と、室内熱交換器膨張弁302とが配管に接続されている。室内機300は、各種センサ(温度センサ(例えば、サーミスタ)(8)、(9)など)を有する。
【0069】
<空気調和システムのハードウェア構成(暖房運転の場合)>
図5は、本開示の一実施形態に係る空気調和システム(暖房運転の場合)100のハードウェア構成図である。空気調和システム100は、室外機200および1または複数の室内機300を有する。
【0070】
図5の例では、室外熱交換器201と、圧縮機202と、四路切替弁206と、室内熱交換器301と、室内熱交換器膨張弁302と、過冷却熱交換器203と、室外機主膨張弁205とが、冷媒配管で接続され主冷媒回路を構成している。四路切替弁206は、圧縮機202の吐出ガスを室内熱交換器301に供給するように流路が設定される。
【0071】
<<室外機>>
室外機200側では、室外熱交換器201と、圧縮機202と、過冷却熱交換器203と、過冷却熱交換器膨張弁(バイパス回路)204と、室外機主膨張弁(主冷媒回路)205とが配管に接続されている。室外機200は、各種センサ(温度センサ(例えば、サーミスタ)(1)、(3)、(4)、(6)、(7)および圧力センサ(2)、(5)など)を有する。
【0072】
<<室内機>>
室内機300側では、室内熱交換器301と、室内熱交換器膨張弁302とが配管に接続されている。室内機300は、各種センサ(温度センサ(例えば、サーミスタ)(8)、(9)など)を有する。
【0073】
<空気調和システムのハードウェア構成(冷暖同時運転の場合)>
本開示は、冷房運転、暖房運転に限らず、冷暖同時運転にも適用することができる。以下、
図6を参照しながら、冷暖同時運転について説明する。
【0074】
図6は、本開示の一実施形態に係る空気調和システム(冷暖同時運転の場合)100のハードウェア構成図である。空気調和システム100は、2分割構造の室外熱交換器201-1と室外熱交換器201-2と、複数の室内機と、が3本の連絡配管で接続されており、冷暖同時運転が可能である。
図6では、冷房主体運転の例を示しており、室内機300-1が暖房モード、室内機300-2が冷房モードで運転されている。この時、室外熱交換器201-1は凝縮器、室外熱交換器201-2は蒸発器として機能している。
【0075】
図7は、本開示の一実施形態に係るエコノマイザ回路を有する場合、熱源側と利用側との少なくとも一方が水冷式の場合の一例である。本開示の一実施形態に係る冷凍空調機器20は、エコノマイザ回路を有する。
【0076】
図8は、本開示の一実施形態に係る中間インジェクション回路を有する場合の一例である。本開示の一実施形態に係る冷凍空調機器20は、中間インジェクション回路を有する。
【0077】
<外部コントローラ、サーバのハードウェア構成>
図9は、本開示の一実施形態に係る外部コントローラ30、サーバ40のハードウェア構成図である。
【0078】
外部コントローラ30、サーバ40は、CPU(Central Processing Unit)1001、ROM(Read Only Memory)1002、RAM(Random Access Memory)1003を有する。CPU1001、ROM1002、RAM1003は、いわゆるコンピュータを形成する。
【0079】
また、外部コントローラ30、サーバ40は、補助記憶装置1004、表示装置1005、操作装置1006、I/F(Interface)装置1007を有することができる。なお、外部コントローラ30、サーバ40の各ハードウェアは、バス1008を介して相互に接続されている。
【0080】
CPU1001は、補助記憶装置1004にインストールされている各種プログラムを実行する演算デバイスである。
【0081】
ROM1002は、不揮発性メモリである。ROM1002は、補助記憶装置1004にインストールされている各種プログラムをCPU1001が実行するために必要な各種プログラム、データ等を格納する主記憶デバイスとして機能する。具体的には、ROM1002はBIOS(Basic Input/Output System)やEFI(Extensible Firmware Interface)等のブートプログラム等を格納する、主記憶デバイスとして機能する。
【0082】
RAM1003は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)等の揮発性メモリである。RAM1003は、補助記憶装置1004にインストールされている各種プログラムがCPU1001によって実行される際に展開される作業領域を提供する、主記憶デバイスとして機能する。
【0083】
補助記憶装置1004は、各種プログラムや、各種プログラムが実行される際に用いられる情報を格納する補助記憶デバイスである。
【0084】
表示装置1005は、外部コントローラ30、サーバ40の内部状態等を表示する表示デバイスである。
【0085】
操作装置1006は、外部コントローラ30、サーバ40の管理者が外部コントローラ30、サーバ40に対して各種指示を入力する入力デバイスである。
【0086】
I/F装置1007は、各種センサやネットワークに接続し、他の端末と通信を行うための通信デバイスである。
【0087】
<機能ブロック>
図10は、本開示の一実施形態に係る制御部10の機能ブロック図である。
図10に示されるように、制御部10は、運転データ取得部101と、第1判定部103と、外部機器変更部104と、運転データ加工部105と、第2判定部106と、を備える。また、制御部10は、プログラムを実行することによって、運転データ取得部101、第1判定部103、外部機器変更部104、運転データ加工部105、第2判定部106、として機能する。以下、それぞれについて説明する。
【0088】
運転データ取得部101は、冷凍空調機器20の運転データを取得する。運転データは、冷凍空調機器20の運転中に取得されうるデータである。具体的には、冷凍空調機器20に搭載されている温度、圧力、電流、ガス濃度等を計測するセンサの出力値と、圧縮機、ファンモータ、電動弁等への指令値等を含む。運転データ取得部101は、取得した運転データを第1判定部103、運転データ加工部105、第2判定部106に供給する。運転データ格納部102は、運転データ取得部101で取得された運転データと運転データ加工部105で加工された加工データを格納する。なお、格納するデータは運転データもしくは加工データのいずれか一つでもよい。
【0089】
<運転データの例>
ここで、冷凍空調機器20の運転データの例を説明する。
【0090】
<<運転データ(例1)>>
例えば、運転データは、
・冷凍空調機器20周辺の冷媒ガス濃度
・外気温
・圧縮機202の回転数
・過冷却熱交換器の膨張弁204の開度
・圧縮機202の電流値
のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0091】
<<運転データ(例2)>>
例えば、運転データは、上記の運転データ(例1)に加えて、あるいは、上記の運転データ(例1)に代えて、
・室内機膨張弁302の開度
・室外機主膨張弁205の開度
・運転中もしくは運転待機中の室内機定格能力の合計値
・室内機運転台数
・室内機能力(冷房または暖房)
・室内機吹き出し温度
・室温
・凝縮温度
・蒸発温度
・室外機液閉鎖弁接続配管冷媒温度(
図4および
図5のサーミスタ(4)が検知する連絡配管液温)
・液連絡配管冷媒温度(室外機200の外に取り付けられた外付けセンサが検知する室外機200の外側の連絡配管での計測温度)
・室外機ファン風量
・室内機ファン風量
・室外機ファン回転数(ステップ、タップ)
・室内機ファン回転数(ステップ、タップ)
・室外機ファン電流値
・室内機ファン電流値
・冷媒循環量
・圧縮機202の吐出温度
・圧縮機202の吸入温度
・圧縮機202の吐出過熱度
・圧縮機202の吸入過熱度
・過冷却熱交換器203の出口過冷却度(過冷却熱交換器回路を有する場合)
・過冷却熱交換器203の出口過熱度(ガス管側)(過冷却熱交換器回路を有する場合)
・エコノマイザ出口過冷却度(エコノマイザ回路を有する場合)
・エコノマイザ用膨張弁の開度(エコノマイザ回路を有する場合)
・エコノマイザバイパス側出口圧力(エコノマイザ回路を有する場合)
・中間インジェクション用膨張弁の開度(中間インジェクション回路を有する場合)
・中間インジェクション温度(中間インジェクション回路を有する場合)
・中間インジェクション圧力(中間インジェクション回路を有する場合)
・蒸発器入口水温(熱源側と利用側との少なくとも一方が水冷式の場合)
・蒸発器出口水温(熱源側と利用側との少なくとも一方が水冷式の場合)
・凝縮器入口水温(熱源側と利用側との少なくとも一方が水冷式の場合)
・凝縮器出口水温(熱源側と利用側との少なくとも一方が水冷式の場合)
のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0092】
<<運転データ(例3)>>
例えば、運転データは、上記の運転データ(例1および例2)に加えて、あるいは、上記の運転データ(例1および例2)に代えて、
・デフロスト回数と、デフロスト時間と、のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0093】
【0094】
第1判定部103は、運転データ取得部101が取得した運転データから、第1の冷媒漏洩を判定する。第1の冷媒漏洩を判定するためのデータは、第1の閾値(例えば、5分)以下の間隔で取得された運転データである。例えば、第1判定部103は、冷凍空調機器20の温度および圧力に関する運転データの変化量または変化率、および、漏洩ガスの検知センサーデータ、を用いて、第1の冷媒漏洩を判定することができる。
【0095】
第2判定部106は、運転データ取得部101が取得した運転データから、第2の冷媒を判定する。第2の冷媒漏洩を判定するためのデータは、第2の閾値(例えば、1週間)以上分の運転データである。なお、第2の冷媒漏洩を判定するためのデータは、第2の閾値以上分の運転データと第2の閾値以上分の運転データが加工されたデータであってもよい。例えば、第2判定部106は、機械学習された学習済みモデルを用いて、運転データあるいは演算データから第2の冷媒漏洩を推定することができる。
【0096】
外部機器変更部104は、第1判定部103が第1の冷媒漏洩を検知したときに、冷凍空調機器20または外部機器50の運転状態を変更する。例えば、外部機器変更部104は、第1の冷媒漏洩が検知されたときに、冷凍空調機器20の運転を停止させる。また、例えば、外部機器変更部104は、第1の冷媒漏洩が検知されたときに、換気扇、冷媒配管遮断弁、サイレン、警報装置等の外部機器50の動作を開始させる(例えば、換気扇により換気をする、冷媒配管遮断弁により漏れ箇所への冷媒供給を遮断する、サイレンや警報装置の発報により冷凍空調機器20の使用者に警告する)。
【0097】
運転データ加工部105は、運転データ取得部101が取得した運転データを加工する。例えば、運転データ加工部105は、運転データを間引く(例えば、一定間隔でデータを抽出する、あるいは一定間隔内の平均値、中央値、最頻値等を算出し、その値を区間の代表値として用いる)ことができる。また、例えば、運転データ加工部105は、運転データを演算して新たなデータ(例えば、SC(サブクール)、SH(スーパーヒート)、冷媒量指標値)を作成することができる。
【0098】
SC(サブクール)は、冷媒の過冷却度のことをいう。
【0099】
SH(スーパーヒート)は、冷媒の過熱度のことをいう。
【0100】
冷媒量指標値は、例えば、以下のとおりである。
【0101】
<<冷媒量指標(例1(冷房運転の場合))>>
例えば、冷媒量指標値は、
・凝縮温度-室外熱交換器201の出口温度(以下、室外熱交換器出口過冷却度ともいう。なお、過冷却度は、SC、サブクールとも呼ばれる)
・圧縮機の吸入過熱度(なお、過熱度は、SH、スーパーヒートとも呼ばれる)
・圧縮機の吐出過熱度
・室外熱交換器出口過冷却度または圧縮機の吸入過熱度または圧縮機の吐出過熱度に基づく値
のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0102】
例えば、室外熱交換器出口過冷却度に基づく値は、室外熱交換器出口過冷却度を利用した演算値である。例えば、室外熱交換器出口過冷却度を利用した演算値は、
・室外熱交換器出口過冷却度を利用した演算値=室外熱交換器出口過冷却度/(凝縮温度-外気温)
である。
【0103】
例えば、室外熱交換器出口過冷却度に基づく値は、冷媒物性、冷凍サイクル線図(T-S、P-h線図)から定義した値である。
【0104】
<<冷媒量指標(例2(冷房運転の場合))>>
例えば、冷媒量指標値は、上記の冷媒量指標値(例1)に加えて、あるいは、上記の冷媒量指標値(例1)の室外熱交換器出口過冷却度に代えて、
・過冷却熱交換器出口過冷却度
・過冷却熱交換器出口過冷却度に基づく値
のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0105】
<<冷媒量指標(例3(暖房運転の場合))>>
暖房運転の場合、冷媒量指標値は、上記の冷媒量指標値(例1および例2)に代えて、
・室内熱交換器出口過冷却度と、室内熱交換器出口過冷却度に基づく値と、のうちの少なくとも1つを含むことができる。室内熱交換器出口過冷却度は、複数の室内熱交換器301の過冷却度のうちの少なくとも1つと、複数の室内熱交換器301の過冷却度の平均と、複数の室内熱交換器301の室内側合流点または室外側合流点での過冷却度とのうちのいずれかである。
【0106】
<<冷媒量指標(例4(冷暖同時運転の場合))>>
冷暖同時運転の場合、冷媒量指標値は、上記の冷媒量指標値に加えて、
・室内熱交換器(
図6の暖房室内機300-1の室内熱交換器301)出口過冷却度と室外熱交換器(
図6の室外熱交換器(凝縮器)201-1)出口過冷却度との組み合わせである。
【0107】
<方法>
図11は、本開示の一実施形態に係る冷媒漏洩検知処理のフローチャートである。
【0108】
ステップ1(S1)において、制御部10は、冷凍空調機器20の運転データを取得する。
【0109】
ステップ2(S2)において、制御部10は、S1で取得された運転データから、第1の冷媒漏洩を判定する。また、制御部10は、S1で取得された運転データから、第2の冷媒漏洩を判定する。第1の冷媒漏洩を判定するためのデータは、第1の閾値(例えば、5分)以下の間隔で取得された運転データである。また、第2の冷媒漏洩を判定するためのデータは、第2の閾値(例えば、1週間)以上分の運転データである。なお、第2の冷媒漏洩を判定するためのデータは、第2の閾値(例えば、1週間)以上分の運転データと第2の閾値(例えば、1週間)以上分の運転データが加工されたデータであってもよい。
【0110】
図12は、平均的な冷媒充填量(20kg)を持つビル用マルチエアコンで急速漏洩が発生した際の冷媒漏洩速度と全充填量漏洩時間の関係を示す。図中に日本冷凍空調工業会のガイドライン「特定不活性ガスを使用した冷媒設備の冷媒ガスが漏えいしたときの燃焼を防止するための適切な措置(JRA GL-20)」で定義されている急速漏れと噴出漏れに対応する点を記載している。急速漏れ(10kg/h)は、室内機に発生しうる最大漏洩速度であり、噴出漏れ(75kg/h)は、室外機で発生しうる最大漏洩速度である。平均的な冷媒量20kgの場合、急速漏れが発生すると120分、噴出漏れが発生すると16分で全冷媒が大気に放出される。前記第1閾値を5分以下に設定することにより、このような急速の冷媒漏洩が発生しても、制御部10で確実に検知して外部機器50の運転状態を変更し、酸欠や発火事故を防止する。
【0111】
図13は、スローリークが発生したビル用マルチエアコンの1年間の日々のSCと、その年の他の運転データから予測される正常時の日々の予測SCを示す。ここで、SCは運転データ加工部105で計算された1日毎のSC代表値であり、予測SCは、第2判定部106に組み込まれた正常SC予測モデルで計算された1日毎のSC代表値の予測値である。
【0112】
図14は、該SCと該予測SCの差として定義された冷媒量指標値ΔSC、ΔSCの7日間の移動平均と14日間の移動平均である。ΔSCの現在値だけで判定しようとすると、冷媒量変化以外の要因による変動が大きいため、3月後半から発生したと推測される漏洩の発生直後の判定が困難である。それに対して、第2の閾値として7日間(1週間)分の運転データを加工したΔSCの移動平均データでは、変動が平滑化されるため、3月後半からの漏洩による低下傾向が確認できる。さらに閾値を14日間(2週間)分に変更すると、より明確に漏洩の傾向が判定できる。例えば、運転データの膨張弁開度と運転加工データのΔSCを併用して判定することで判定精度の向上が期待できる。
【0113】
なお、本開示の一実施形態では、制御部10は、S2の第1の冷媒漏洩および第2の冷媒漏洩の判定後、冷凍空調機器20と外部機器50の運転状態を制御することができる。制御部10は、S2の冷媒漏洩の判定後、第1の冷媒漏洩を検知したときに、冷凍空調機器20または冷凍空調機器20と連動する外部機器50の運転状態を変更する。また、制御部10は、S2の冷媒漏洩の判定後、第2の冷媒漏洩を検知したときに、冷凍空調機器20または冷凍空調機器20と連動する外部機器50の運転状態を変更しない。
【0114】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0115】
1 冷媒漏洩検知システム
10 制御部
20 冷凍空調機器
30 外部コントローラ
40 サーバ
50 外部機器
60 記憶装置
100 空気調和システム
200 室外機
201 室外熱交換器
201-1 室外熱交換器(凝縮器)
201-2 室外熱交換器(蒸発器)
202 圧縮機
203 過冷却熱交換器
204 過冷却熱交換器膨張弁
205 室外機主膨張弁
206 四路切替弁
207 エコノマイザ
208 エコノマイザ用膨張弁
209 主膨張弁
210 凝縮器
211 蒸発器
212 中間インジェクション用膨張弁
213 凝縮器
214 蒸発器
300 室内機
300-1 暖房室内機
300-2 冷房室内機
301 室内熱交換器
302 室内熱交換器膨張弁
101 運転データ取得部
102 運転データ格納部
103 第1判定部
104 外部機器変更部
105 運転データ加工部
106 第2判定部
1001 CPU
1002 ROM
1003 RAM
1004 補助記憶装置
1005 表示装置
1006 操作装置
1007 I/F装置
1008 バス