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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-26
(45)【発行日】2025-04-03
(54)【発明の名称】ラッチ錠
(51)【国際特許分類】
   E05C 1/12 20060101AFI20250327BHJP
   E05B 15/16 20060101ALI20250327BHJP
   E05B 65/06 20060101ALI20250327BHJP
【FI】
E05C1/12
E05B15/16
E05B65/06 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021044850
(22)【出願日】2021-03-18
(65)【公開番号】P2022144017
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2024-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000147442
【氏名又は名称】株式会社WEST inx
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】西 康雄
(72)【発明者】
【氏名】筒井 亮
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-114666(JP,A)
【文献】特開2009-287256(JP,A)
【文献】特開2010-065440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05C 1/12
E05B 15/16
E05B 65/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠ケースと、ラッチボルトを有し、
扉の表裏に設けられたハンドルを操作することによって前記ラッチボルトが前記錠ケースに対して進退するラッチ錠であって、
前記ラッチボルトと共に前記進退の方向に一体に移動する連動部材を有し、
前記連動部材と前記錠ケースの間には、一体物の弾性部材が設けられており、
前記ラッチボルトが前記錠ケースから突出する方向、及び前記錠ケース内に退入する方向に前記進退すると、前記弾性部材のいずれかの部位が、前記連動部材又は前記錠ケースと当接することを特徴とするラッチ錠。
【請求項2】
錠ケースと、ラッチボルトを有し、
扉の表裏に設けられたハンドルを操作することによって前記ラッチボルトが前記錠ケースに対して進退するラッチ錠であって、
前記ラッチボルトと共に移動する連動部材を有し、
前記連動部材と前記錠ケースの間には、一体物の弾性部材が設けられており、
前記ラッチボルトが前記錠ケースから突出する方向、及び前記錠ケース内に退入する方向に移動すると、前記弾性部材のいずれかの部位が、前記連動部材又は前記錠ケースと当接し、さらに、
前記弾性部材が、前記錠ケース側に固定されており、前記弾性部材における前記ラッチボルトの前記進退方向の両側が、前記連動部材と前記当接する当接部を構成していることを特徴とするラッチ錠。
【請求項3】
錠ケースと、ラッチボルトを有し、
扉の表裏に設けられたハンドルを操作することによって前記ラッチボルトが前記錠ケースに対して進退するラッチ錠であって、
前記ラッチボルトと共に移動する連動部材を有し、
前記連動部材と前記錠ケースの間には、一体物の弾性部材が設けられており、
前記ラッチボルトが前記錠ケースから突出する方向、及び前記錠ケース内に退入する方向に移動すると、前記弾性部材のいずれかの部位が、前記連動部材又は前記錠ケースと当接し、さらに、
前記弾性部材が片持ち状に前記錠ケース又は前記連動部材に取り付けられており、
前記弾性部材の自由端側の部位が、相対移動する前記連動部材又は前記錠ケースと前記当接することを特徴とするラッチ錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回動して開閉される扉に設けられるラッチ錠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラッチ錠の錠ケース内には、錠ケースから突出したり、錠ケース内に退入するラッチボルトが設けられている。また、錠ケース内には、扉の表裏に設けられたハンドルの操作によって動作する操作部が配置されている。
この操作部とラッチボルトの間には、ハンドルとラッチボルトの動作を連動させる連動部材(リンク部材)が設けられている。さらに、錠ケースには、ラッチボルトが錠ケースから突出するようにラッチボルトを付勢する押圧バネが設けられている。そして、操作部が元の位置で停止するように、連動部材に当接するストッパが設けられている。
【0003】
扉を開閉する者がハンドルを操作すると、ラッチボルトが錠ケース内に退入し、ラッチボルト(ラッチ)と構造物側の凹部(ストライク)の係合が解除され、扉が開閉動作可能になる。この状態でハンドルから手を離すと、ハンドルは押圧バネの付勢力によって元の位置に復帰し、ラッチボルトは錠ケースから突出する。そして、錠ケースから突出したラッチボルトは、構造物側の凹部(ストライク)に係合し、扉は回動不能な閉鎖状態になる。
【0004】
押圧バネによって押圧されたラッチボルトは、勢いよく動作し、連動部材もラッチボルトに追従して動作する。そして、連動部材はストッパに当接して停止し、ラッチボルトの突出動作も停止する。その際に、連動部材とストッパが衝突し、「カチッ」という衝突音が生じる。扉のハンドルが元に戻る際に生じる耳障りな音は、このようにして生じる。
【0005】
そこで、この衝突音が生じないように、従来、様々な工夫が成されている。例えば、特許文献1に開示されたラッチ錠では、ラッチボルトが錠箱から突出する際に、弾性部材の弾性力によって部材同士の衝突の衝撃を緩和し、衝突音を低減する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5133825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に開示されているような従来のラッチ錠では、往復移動する連動部材の複数箇所に弾性部材を設けなければ、衝突音の発生を抑制することができない。
【0008】
そこで本発明は、弾性部材を一箇所に設けるだけで消音効果を奏することができるラッチ錠を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための発明の第1の様相は、錠ケースと、ラッチボルトを有し、扉の表裏に設けられたハンドルを操作することによって前記ラッチボルトが前記錠ケースに対して進退するラッチ錠であって、前記ラッチボルトと共に移動する連動部材を有し、前記連動部材と前記錠ケースの間には、一体物の弾性部材が設けられており、前記ラッチボルトが前記錠ケースから突出する方向、及び前記錠ケース内に退入する方向に移動すると、前記弾性部材のいずれかの部位が、前記連動部材又は前記錠ケースと当接することを特徴とするラッチ錠である。
【0010】
本様相によると、錠ケースと、ラッチボルトを有し、扉の表裏に設けられたハンドルを操作することによってラッチボルトが錠ケースに対して進退するラッチ錠であって、ラッチボルトと共に移動する連動部材を有し、連動部材と錠ケースの間には、一体物の弾性部材が設けられている。すなわち、弾性部材を複数箇所に設置する必要がない。
ラッチボルトが錠ケースから突出する方向、及び錠ケース内に退入する方向に移動すると、弾性部材のいずれかの部位が、連動部材又は錠ケースと当接するので、ラッチボルトが進退する際に、音が生じにくい。すなわち、一体物の弾性部材によって消音効果を奏することができる。
ラッチボルトが錠ケース内に退入する際には、例えば、連動部材が一体物の弾性部材の一方側に当接し、ラッチボルトが錠ケースから突出する際には、連動部材が弾性部材における当該一方側とは離間した他方側に当接する。
これら弾性部材における「一方側の部位」と「他方側の部位」が、「弾性部材のいずれかの部位」に該当する。
また、「連動部材」とは、「連動部材」と一体構造の別部材も含んでいる。また、「錠ケース」とは、「錠ケース」に固定された別部材も含んでいる。
さらに、「一体物」とは、弾性部材が単一素材で構成されている場合のみならず、二以上の素材で構成されている場合も含んでいる。また、その複数の素材のうちに弾性を有していない素材が含まれていてもよい。
【0011】
前記弾性部材が、錠ケース側に固定されており、前記弾性部材における前記ラッチボルトの進退方向の両側が、前記連動部材と当接する当接部を構成しているのが好ましい。
【0012】
この構成によれば、錠ケース内のレイアウトを簡素化することができる。具体的には、連動部材が、一体物の弾性部材の両側の領域に配されており、移動する連動部材は、両領域の間にある弾性部材に当接して停止する。
【0013】
前記弾性部材が片持ち状に前記錠ケース又は前記連動部材に取り付けられており、前記弾性部材の自由端側の部位が、相対移動する前記連動部材又は前記錠ケースと当接するのが好ましい。
【0014】
この構成によれば、弾性部材が片持ち状に錠ケース又は連動部材に取り付けられており、弾性部材の自由端側の部位が、相対移動する連動部材又は錠ケースと当接するので、当接時に、弾性部材が変形し易い。そのため、衝突の衝撃が緩和され易い。よって、消音効果を良好に発揮することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のラッチ錠によると、1つの弾性部材で、ハンドル操作時におけるラッチボルトの移動に伴う衝突音の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】扉に取り付けられた本実施形態に係るラッチ錠の正面図であり、(a)は、施錠状態を示し、(b)は、解錠状態を示す。
図2】本実施形態に係るラッチ錠の斜視図であり、錠ケースの蓋体を取り外した状態を示す。
図3図2のラッチ錠を各部材に分解した状態を示す分解斜視図である。
図4】(a)は、ラッチボルトと連動部材を分離した状態を示す斜視図であり、(b)は、ラッチボルトと連動部材を係合させた状態を示す斜視図である。
図5】扉に取り付けられた錠ケースを示す側面図である。
図6】扉に取り付けられた図1とは別の実施形態に係るラッチ錠の正面図であり、(a)は、施錠状態を示し、(b)は、解錠状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら説明する。
図1(a)、図1(b)に示すように、ラッチ錠1は、錠ケース6、ラッチボルト7、連動部材8を有する。図1(a)、図1(b)に矢印で示す方向を、ラッチ錠1の前後方向とする。すなわち、ラッチボルト7が突出する向きは前方、退入する向きは後方である。
【0018】
錠ケース6は、図2に示すように、本体6aと蓋体6bで構成されている。本体6aは、ラッチ錠1の各部材を収容する筐体を構成している。すなわち、図2図3に示すように、本体6aには、後述のラッチボルト7を配置するラッチボルト配置領域16、連動部材8を配置する連動部材配置領域17、弾性部材9を固定する弾性部材固定部18を有する。ラッチボルト配置領域16の下方に連動部材配置領域17が設けられている。また、連動部材配置領域17の中央付近の下部(本体6aの底部)に弾性部材固定部18が設けられている。
【0019】
弾性部材固定部18は、弾性部材9を固定する部位であり、錠ケース6(本体6a)の底壁から上方へ突出するように設けられている。弾性部材固定部18は、先端部分(上端部分)が比較的大きく、錠ケース6の底壁との接続部分が小さい。すなわち、弾性部材固定部18は、括れ構造を呈している。
【0020】
弾性部材9は、合成ゴム等の弾性を有する単一の素材で構成された一体物である。ここで「一体物」とは、一つの部材を構成するものであり、単一の素材で構成されている場合のみならず、二以上の素材で構成されている場合も含んでいる。本実施形態では弾性部材9は単一の素材(弾性素材)で構成されているが、弾性部材9を複数の素材で構成し、その複数の素材のうちに弾性を有していない素材が含まれていてもよい。
【0021】
弾性部材9は、溝部21を有する。溝部21の開口部分は、比較的幅狭であり、溝部21の内部は比較的幅広である。溝部21には、弾性部材固定部18を収容することができる。すなわち、弾性部材9は、上方へ突出した弾性部材固定部18を上側から包み込むように弾性部材固定部18に外嵌されている。弾性部材固定部18に固定された弾性部材9は、錠ケース6内における連動部材配置領域17に配置されている。
【0022】
弾性部材9は、前端部9aと後端部9bを有する。前端部9aと後端部9bは、弾性部材9の前後方向の一方側(前方側)と他方側(後方側)に設けられている。前端部9a及び後端部9bは、連動部材8(後述の弾性部材当接部11a、11b)と当接する当接部を構成している。
【0023】
また、錠ケース6の端面には、化粧板15を取り付ける板状の取付板14が設けられている。化粧板15は、扉2の端面と一致する板状の部材である。取付板14と化粧板15には、それぞれ貫通孔が設けられており、これらの貫通孔が連通して出没孔13が構成されている。出没孔13は、ラッチボルト配置領域16の前方に設けられている。
【0024】
蓋体6b(図2図3)は、本体6aと一体化して本体6aを閉鎖する部材である。本体6a及び蓋体6bには、孔20a、20bが設けられている。孔20a、20bは、後述の連動部材8の貫通孔8bと連通する。化粧板15と錠ケース6は、従来周知のラッチ錠と同様に、扉2に固定されている。
【0025】
ラッチボルト7は、従来周知のものと同様の構造を有する。すなわち、ラッチボルト7はシャフト形状を呈しており、その先端(前端)にラッチ7aを有し、後端に係合部7bを有する。図3に示すように、係合部7bは、フランジ形状を呈している。
【0026】
ラッチボルト7は、錠ケース6のラッチボルト配置領域16に配置されている。ラッチボルト7は、ラッチボルト配置領域16内に収容可能であり、ラッチボルト配置領域16に沿って前後方向にのみスライド移動することができる。ラッチボルト7が前方に移動すると、先端のラッチ7aが出没孔13から外部に突出する。
【0027】
また、ラッチボルト配置領域16にはコイルばね10が設けられている。コイルばね10は、ラッチボルト7と錠ケース6(本体6a)の間に配された圧縮ばねである。ラッチボルト7は、コイルばね10の付勢力によって出没孔13側に常時付勢されている。そのため、先端のラッチ7aが出没孔13から外部に突出している(図1(a))。
【0028】
次に連動部材8(リンク部材)について説明する。
連動部材8は、上側から順にラッチボルト固定部8a、貫通孔8b、弾性部材当接部11a、11bを有する部材である。また、連動部材8は、ラッチボルト7と、後述のハンドル4a、4bの動作を連動させる機能を有する部材である。
【0029】
ラッチボルト固定部8aは、上方が開口した略T字状の溝を構成する部位である。ラッチボルト固定部8aには、ラッチボルト7の後端の係合部7bがちょうど嵌まり込んで係合する(図4(b))。図4(b)に示す状態では、ラッチボルト7と連動部材8は、前後方向に一体に移動する。すなわち、連動部材8が前後方向に移動すると、ラッチボルト7も同様に前後方向に移動する。
【0030】
貫通孔8bは、前後方向と直交する方向(水平方向)に連動部材8を貫通する孔である。貫通孔8bは、連動部材8の中央部分であって、ラッチボルト固定部8aの下方に設けられている。貫通孔8bの内面の後方側の壁面は、詳しくは後述する被押圧部12を構成している。
【0031】
連動部材8の貫通孔8bの下方には、弾性部材当接部11a、11bが設けられている。弾性部材当接部11a、11bは、前後方向(ラッチボルト7の進退方向)に離間して対向する壁面を構成する部位である。すなわち、弾性部材当接部11a、11bの間には、空間19が形成されている。
【0032】
本実施形態では、弾性部材当接部11a、11bは、下方に突出しており、連動部材8を俯瞰して見ると、連動部材8の下部は、下方が開口した略コの字形を呈している。
【0033】
ラッチ錠1は、以下のように構成されている。
すなわち、錠ケース6(本体6a)のラッチボルト配置領域16にラッチボルト7が配置されており、連動部材配置領域17に連動部材8が配置されている。
【0034】
図4(b)に示すように、ラッチボルト7と連動部材8が係合して一体化している。連動部材配置領域17に配置された連動部材8の空間19には、弾性部材9が1つ配置されている。
【0035】
弾性部材9は、下部が錠ケース6(本体6a)に固定されており、上部は固定されていない。すなわち、弾性部材9の上部は自由端であり、弾性部材9は片持ち状に錠ケース6に固定されている。
【0036】
図1(a)に示すように、本実施形態では、弾性部材固定部18の上端は、連動部材8の弾性部材当接部11a、11bの下端よりも低い。すなわち弾性部材固定部18に弾性部材9が取り付けられていなければ、連動部材8は、弾性部材固定部18に接触することなく、弾性部材固定部18の上方を移動することができる。
【0037】
本実施形態に関わらず、弾性部材固定部18の上端の高さが、連動部材8の弾性部材当接部11a、11bの下端の高さよりも高くても差し支えはない。
【0038】
ラッチボルト7は、コイルばね10によって前方へ付勢されている。そのため、ラッチボルト7は、ラッチボルト配置領域16の前方側に移動しており、ラッチ7aが出没孔13から錠ケース6の外部に突出している。
【0039】
ラッチボルト7と一体化された連動部材8も、連動部材配置領域17の前方側へ移動している。そのため、連動部材8側の弾性部材当接部11bが、錠ケース6(本体6a)側の弾性部材固定部18に取り付けられた弾性部材9の後端部9bに当接している。図1(a)に示すように、弾性部材当接部11bが弾性部材9の後端部9bに当接しているため、ラッチボルト7及び連動部材8の、それ以上の前方への移動が阻止されている。
【0040】
連動部材8の貫通孔8bには、後述のハンドル4a、4bの操作部5a、5bが配置されている。すなわち、操作部5a、5bは、錠ケース6の本体6aの孔20aや蓋体6bの孔20bを貫通し、錠ケース6内の連動部材8の貫通孔8bに至っている。
【0041】
貫通孔8bの退入側(後方側)の側壁面は、被押圧部12を構成している。被押圧部12は、後述の操作部5a、5bに押圧される部位である。
【0042】
次に、ラッチ錠1が扉2に取り付けられた状態について説明する。
図5は、本実施形態に係るラッチ錠1が、回動式の扉2に取り付けられている状態を示している。
【0043】
錠ケース6(ラッチ錠1)は、扉2の端部付近に端面が揃うように扉2に内蔵されている。すなわち、図1(a)に示すように、錠ケース6側の化粧板15が、扉2の端面と一致している。
【0044】
図5に示すように、扉2の表裏には、ハンドル4a、4bが設けられている。ハンドル4a、4bは、プッシュ・プル式のハンドルである。ハンドル4a、4bには、操作部5a、5bが設けられている。操作部5a、5bは、扉2、錠ケース6(図3に示す本体6aの孔20a、蓋体6bの孔20b)を貫通し、連動部材8の貫通孔8bに配置されている。操作部5a、5bは、ハンドル4a、4bを操作すると、図1(a)に示す後方側へ移動するように構成された周知のものである。
【0045】
ハンドル4a(又は4b)が操作されると、操作部5a(又は5b)が後方へ揺動し、連動部材8の被押圧部12が操作部5a(又は5b)に押圧される。その結果、連動部材8は、ラッチボルト7と共に後方(退入側)へ移動し、ラッチボルト7のラッチ7aが錠ケース6内(ラッチボルト配置領域16内)に退入する(図1(b))。
【0046】
そして、連動部材8の弾性部材当接部11aが、弾性部材9の前端部9aに当接すると、ラッチボルト7及び連動部材8の後方への移動が停止する(図1(b))。その際、弾性部材当接部11aが、弾性部材9の前端部9aに当接するので、衝突音の発生が抑制される。
【0047】
また、ハンドル4a(又は4b)を操作する者が、ハンドル4a(又は4b)から手を離すと、コイルばね10の付勢力によってラッチボルト7が前方へ移動し、ラッチ7aが錠ケース6(扉2)から突出する。また、連動部材8もラッチボルト7と共に前方へ移動する(図1(a))。
【0048】
そして、連動部材8の弾性部材当接部11bが、弾性部材9に対して相対移動し、弾性部材9の後端部9bに当接し、ラッチボルト7及び連動部材8の前方への移動が停止する(図1(a))。その際、弾性部材当接部11bが、弾性部材9の後端部9bに当接するので、衝突音の発生が抑制される。
【0049】
ここで、弾性部材9は、錠ケース6に片持ち状に取り付けられており、弾性部材9の上部は自由端となっている。また、弾性部材固定部18の上端の高さは、連動部材8の弾性部材当接部11a、11bの下端の高さよりも低い。そのため、連動部材8が弾性部材9の上部(自由端側)の前端部9a又は後端部9bに衝突する際、弾性部材9には剪断力が作用する。弾性部材9は変形しながら剪断力に耐える。よって、連動部材8が弾性部材9に衝突する際の衝撃が良好に緩和され、衝突音の発生が良好に抑制される。
【0050】
このように、ラッチボルト7及び連動部材8が往復移動する範囲は、連動部材8(弾性部材当接部11a、11b)と弾性部材9(前端部9a、後端部9b)が当接(衝突)することによって限定されている。すなわち、前端部9aと後端部9bは、弾性部材9におけるラッチボルト7の進退方向(前後方向)の両側の部位であり、連動部材8と当接する当接部を構成している。
【0051】
そして、弾性部材9が弾性を有する部材であるため、衝突の衝撃が緩和され、衝突音が発生しにくい。すなわち、一体物である弾性部材9によって消音効果が発揮される。換言すると、ラッチ錠1では、弾性部材9が一箇所に設けられているだけで消音効果を奏することができ、従来のラッチ錠のように、複数箇所に弾性部材を設ける必要がない。
【0052】
具体的には、連動部材8と弾性部材9は、連動部材8(ラッチボルト7)が前方へ移動して錠ケース6(扉2)からラッチ7aが突出する際、及び、連動部材8(ラッチボルト7)が後方へ移動して錠ケース6(扉2)内にラッチ7aが退入する際における、従来生じていた「カチッ」という衝突音の発生が良好に抑制される。
【0053】
また、扉2が閉状態のときに、ラッチボルト7が突出すると、ラッチボルト7の先端(ラッチ)は、固定構造物の戸当り3の凹部3a(ストライク)に係合する。そのため、扉2は開動作が不能になる。そして、コイルばね10の付勢力に抗してラッチボルト7が錠ケース6内(扉2内)に退入すると、ラッチボルト7の先端(ラッチ)と凹部3a(ストライク)の係合が外れ、扉2の開動作が可能になる。
【0054】
本実施形態では、弾性部材9を錠ケース6(本体6a)の一箇所に設けた例を示したが、図6(a)、図6(b)に示すように、弾性部材59を連動部材58側に設けることもできる。弾性部材59は、弾性部材9と同様の構造を有する緩衝部材である。
【0055】
図6(a)、図6(b)に示すラッチ錠51は、図1(a)に示すラッチ錠1と概ね同じ構造を有しているが、連動部材58と錠ケース56(本体56a)の構造が若干相違している。以下、相違する構成のみを説明し、重複する説明は省略する。
【0056】
連動部材58の下部には、弾性部材固定部68が設けられている。弾性部材固定部68は、図1(a)に示す弾性部材固定部18の向きが上下逆になり、連動部材58の下部に設けられたような構造を有する。弾性部材固定部68の下端は、弾性部材当接部61a、61bの上端よりも高い。そして、この弾性部材固定部68に、一体物である弾性部材59が取り付けられている。すなわち、弾性部材59は、連動部材58と一体化されている。
【0057】
一方、錠ケース56の底壁には、凹部61が設けられている。凹部61は、前後方向に延びており、前端及び後端には弾性部材当接部61a、61bが形成されている。連動部材58に取り付けられた弾性部材59は、凹部61に配置されている。すなわち、弾性部材当接部61a、61bの間に弾性部材59が配置されている。
【0058】
そして、コイルばね60の付勢力によって、ラッチボルト57のラッチ57aが扉52から突出する際には、図6(a)に示すように、弾性部材59の前端部59aが、弾性部材当接部61aに当接する。また、ラッチ57aが扉52から突出し、戸当り53の凹部53aに進入(係合)する。
【0059】
また、図示しないハンドルが操作されると、ハンドルと連動した操作部55a(又は55b)が連動部材58を後方へ押圧する。その結果、図6(b)に示すように、ラッチボルト57と連動部材58が後方へ移動し、ラッチ57aが扉52内に退入すると共に、弾性部材59の後端部59bが、弾性部材当接部61bに当接する。すなわち、弾性部材当接部61bが、弾性部材59に対して相対移動する。
【0060】
ここで、弾性部材59は、連動部材58に片持ち状に取り付けられており、弾性部材59の下部は自由端となっている。また、弾性部材固定部68の下端の高さは、錠ケース56の弾性部材当接部61a、61bよりも高い。
【0061】
そして、弾性部材59の自由端側である下部側の前端部59a又は後端部59bに、錠ケース56側の弾性部材当接部61a又は61bが衝突する。すなわち弾性部材59は、上部側が固定され、下部側が弾性部材当接部61a又は61bに衝突するので、弾性部材59には剪断力が作用する。弾性部材59は変形しながら剪断力に耐える。よって、衝突する際の衝撃が良好に緩和され、衝突音の発生が良好に抑制される。
【0062】
このように、図6(a)、図6(b)に示す例では、一体物の弾性部材である弾性部材59側が移動し、停止する錠ケース56の凹部61の弾性部材当接部61a、61bに当接する。このようなラッチ錠51においても、ラッチボルト57の進退時の衝突音は、良好に消音される。すなわち、ラッチ錠51では、弾性部材59が一箇所に設けられているだけで消音効果を奏することができる。
【0063】
図1(a)、図1(b)、図6(a)、図6(b)に示す例では、弾性部材9、59における前後方向の両側の部位が連動部材8(弾性部材当接部11a、11b)、錠ケース56(弾性部材当接部61a、61b)に当接する。しかし、弾性部材のいずれの部位を連動部材や錠ケースに当接させるかは、弾性部材、連動部材、及び錠ケースの形状やレイアウトを工夫することにより、任意に選定することができる。例えば、弾性部材の中央部分をくり抜いて内部空間を作り、内部空間を仕切る内壁に連動部材や錠ケースを進入させて当接させてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1、51 ラッチ錠
2、52 扉
3、53 戸当り
3a、53a 凹部
4a、4b ハンドル
5a、5b 操作部
6、56 錠ケース
7、57 ラッチボルト
8、58 連動部材
9、59 弾性部材
11a、11b、61a、61b 弾性部材当接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6