(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-26
(45)【発行日】2025-04-03
(54)【発明の名称】サブリール
(51)【国際特許分類】
B66D 1/54 20060101AFI20250327BHJP
B66D 3/18 20060101ALI20250327BHJP
B66D 5/32 20060101ALI20250327BHJP
【FI】
B66D1/54 Z
B66D3/18 D
B66D5/32
(21)【出願番号】P 2021164381
(22)【出願日】2021-10-06
【審査請求日】2024-08-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515025402
【氏名又は名称】株式会社あかつき
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(72)【発明者】
【氏名】前田 和彦
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-004135(JP,A)
【文献】特開2011-024853(JP,A)
【文献】特開2012-096857(JP,A)
【文献】特開2008-125533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 1/00-5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウインチとともに使用されるサブリールであって、
線状部材または帯状部材が巻かれるドラムと、
前記線状部材または帯状部材を巻き取る方向に前記ドラムを回転させる第1の付勢部材
を備えた巻取部と、
繰り出し方向への前記ドラムの回転を抑制するロック部と、
前記ロック部のロック状態と解除状態とを切り替える切替部と、
を備え、
前記ロック部は前記ドラムと同期して回転し、
前記ロック部と前記ドラムの回転中心が対応することを特徴とするサブリール。
【請求項4】
前記ドラムは、
前記線状部材または帯状部材が巻かれる円筒部と、
前記円筒部の一端と他端を挟むように設けられ、前記線状部材または帯状部材を
前記円筒部の周面に収めておくための第1プレートと第2プレートを含んで構成され
、
前記第1プレート
は前記切替部側に配置されていることを特徴とする請求項1~
3のいずれかに記載のサブリール。
【請求項7】
前記切替部は、前記ピンを前記ギアから離した状態で保持するための解除状態保持部を備えることを特徴とする請求項
6に記載のサブリール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ウインチとともに使用されるサブリールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウインチは自動車等の重量物の引き揚げに利用されてきた。例えば事故や故障で自走が困難ないし自走できなくなった自動車をレッカー車に引き上げて積載する際に、このウインチが使用される。また水没、高所から落下した自動車、重機、船を引き上げる際にも使用される。
【0003】
このようなウインチにおいて、ベルトの引出長を検知する引出長検知部と、ベルトのドラムからの引出性を変更するブレーキ部を設け、引出長が短い状態においては、ベルトをドラムから引き出しやすくなるようにブレーキ部を緩くする技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ウインチのワイヤー、ロープは時間の経過にしたがい、その品質が低下するおそれがある。例えば、日光、雪、雨水、水蒸気等、または摩耗によって耐久性が低下する場合がある。このような耐久性の低下はワイヤーまたはロープ等の切断につながる場合がある。
【0006】
ウインチによって重量物を引き揚げているときにロープ等が切断すれば、その重量物が引き揚げ方向と概ね逆方向に移動する。ウインチによりレッカー車に故障車を引き揚げているときにロープ等が切断されると、自動車は引き揚げ方向と反対側に滑り落ちる。その結果、自動車が何らかの構造物に当たり破損するおそれがある。さらに引き揚げている自動車等、重量物の後方に作業員が点検、待機している場合、作業員の安全確保に支障をきたすおそれがある。さらには道路で故障車を引き揚げている場合にその故障車が滑り落ちていくと、後続車との接触、反対車線への移動のおそれもある。
【0007】
この発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ウインチにおいてワイヤー等の切断があった場合の事故を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係るサブリールは、ウインチとともに使用されるサブリールであって、線状部材または帯状部材が巻かれるドラムと、前記線状部材または帯
状部材を巻き取る方向に前記ドラムを回転させる第1の付勢部材を備えた巻取部と、繰り出し方向への前記ドラムの回転を抑制するロック部と、前記ロック部のロック状態と解除状態とを切り替える切替部と、を備え、前記ロック部は前記ドラムと同期して回転し、前
記ロック部と前記ドラムの回転中心が対応することを特徴とする。
本発明に係るサブリールは、前記ロック部は、前記ドラムと係合するシャフトと、該シャフトの一部分に設けられたギアとを有し、前記切替部は、前記ギアに接離可能に移動する移動部を有し、該移動部の少なくとも一部が前記ギアに当接することにより前記ロック状態に遷移し、前記移動部が前記ギアから離れ、該ギアと当接しない状態により前記解除状態となることを特徴とする。
本発明に係るサブリールは、前記シャフトには長手方向に伸びる第1凹部が形成され、前記ドラムの内周面には前記第1凹部と対になるように形成された第2凹部が形成され、前記第1凹部と面した前記第2凹部の間に差し込まれる係合部を備えることを特徴とする。
本発明に係るサブリールは、前記ドラムは、前記線状部材または帯状部材が巻かれる円筒部と、前記円筒部の一端と他端を挟むように設けられ、前記線状部材または帯状部材を前記円筒部の周面に収めておくための第1プレートと第2プレートを含んで構成され、前記第1プレートは前記切替部側に配置されていることを特徴とする。
本発明に係るサブリールは、前記第2プレートには前記第1の付勢部材が設けられることを特徴とする。
本発明に係るサブリールは、前記移動部は前記ギアに近接移動して前記ギアに当接可能なピンであり、前記ピンを前記ギアに近接させる方向に付勢する第2の付勢部材を備えることを特徴とする。
本発明に係るサブリールは、前記切替部は、前記ピンを前記ギアから離した状態で保持するための解除状態保持部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
実施形態によれば、ウインチにおいて切断があった場合の事故を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】実施形態のサブリールを示す概略分解斜視図。
【
図5】実施形態ドラム部材を示す概略図および断面図。
【
図6】実施形態のギアおよびシャフトを示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1~
図6を参照して、第1実施形態~第5実施形態にかかるサブリールについて説明する。
【0012】
[第1実施形態]
第1実施形態にかかるサブリール1の構成について
図1~
図4を参照して説明する。なお、
図1におけるサブリールは一例であり、その他の構成を含むことを除外するものではなく、様々な形態で実施することが可能である。
【0013】
(ドラム)
図1~6に示すように、サブリール1は、線状部材または帯状部材W(以下、「帯状部材等W」とする。)が巻かれたドラムを有する。ドラムはドラム部材D1とドラム部材D2とが組み合わされて構成される。ドラム部材D1は、円盤状の第1プレートと、その第1プレートより小径の円筒部材とを一体に形成したものである(
図5参照)。ドラム部材D1のプレートの中心には、円筒部材に通じる貫通孔が設けられている。ドラム部材D2は、ドラム部材D1の第1プレートと円筒部材を挟むように対向配置されたプレート(第2プレート)である。
【0014】
(第1フレーム・第2凹部)
第1フレーム110aの当該固定位置は、ドラム部材D1の円筒部材の突出方向に対して概ね反対側である。また第1フレーム110aには、後述のシャフト122を通すための貫通孔が設けられている。第1フレーム110aの貫通孔は、ドラム部材D1のプレート部の中心位置に対応する位置に形成される。また、ドラム部材D1の中心に設けられた貫通孔の概形は円筒形であるが、さらにその貫通孔の内周面の一部には、さらにプレート部の外縁側に穿たれた溝部が設けられている。この溝部については、以下「第2凹部X2」と説明する。
【0015】
(シャフト・ギア・第1凹部)
図4に示すようにドラム部材D1の貫通孔にはシャフト122が通される。シャフト122には、ドラム部材D1側と反対の位置にギア121が設けられている。ギア121は後述するロック状態に遷移したときに帯状部材等Wの繰り出し方向への回転を制止するような歯の向きになっている(
図4参照)。シャフト122は、ドラム部材D1より外側(カバー部材C1側)に配置された第1フレーム110aを通される。
図4および
図6に示すようにシャフト122には長手方向に伸びる第1凹部X1が形成されている。この第1凹部X1は第2凹部X2と概ね同様の形状に形成される。
【0016】
(係合部)
第1凹部X1と、これに向かい合う第2凹部X2との間には、その隙間を埋めるように形成された係合部(図示せず)が差し込まれるように配置される。例えば第1凹部X1と、これに向かい合う第2凹部X2とによって、直方体状の空間が形成される場合、係合部は当該直方体状の空間を埋めるような同様の直方体状に形成される。これによって、ドラムの回転運動が係合部を介して、シャフト122に伝達される。そして同じくシャフト122の一端に設けられたギア121が回転される。つまり、シャフト122にギア121、シャフト122、およびドラムが一体となって回転動作する。
【0017】
(第2フレーム・巻取り部)
ドラム部材D2すなわち第2プレートには第2フレーム110bが固定されている。第2フレーム110bの当該固定位置は、第2プレートにおける第1プレート側と反対側である。言い換えると、ドラム部材D1の円筒部材の突出方向側である。また第2フレーム110bには、巻取部123が取り付けられている。つまり第2プレート(ドラム部材D2)と、巻取部123で第2フレーム110bを挟むように構成される。
【0018】
また第2フレーム110bには、シャフト122の先端を通すための貫通孔が設けられている。第2フレーム110bの貫通孔は、ドラム部材D2(第2プレート)の中心位置に対応する位置に形成される。
【0019】
巻取部123は、帯状部材等Wを巻取る方向にドラム全体を回転させる。詳細は次の通りである。
巻取部123の中心側には貫通孔が設けられている。この貫通孔にはシャフト122の先端が通される。また、シャフト122の先端側は巻取部123と接続される。巻取部123は、ケース体の内部に第1の付勢部材である第2付勢部材と回転体が設けられている(共に図示せず)。この第2付勢部材は例えば渦巻バネである。つまり、回転体は第2付勢部材により、帯状部材等Wを巻取る方向に付勢されている。
【0020】
この第2付勢部材が回転体を巻き取り方向に付勢していることにより、回転体と接続されたシャフト122も同方向に付勢されている。シャフト122がこの方向に回転するように付勢されると、係合部を介してドラムもその方向に付勢される。したがって、サブリール1においては内部の巻取部123により、帯状部材等Wがドラムに巻き取られるように構成されている。
【0021】
図1および
図2に示すように、第1フレーム110aには、ギア121を含むロック部のロック状態と解除状態とを切り替える切替部が設けられている。切替部は、ロックピン126、ロックピン126のスライド移動をガイドし、保持するガイド保持部125と、ロックピン126を引き上げ操作するための操作部124を含んで構成される。
【0022】
ガイド保持部125は第1フレーム110aに取り付けられる。ガイド保持部125は、ロックピン126を通す貫通孔が設けられている。このロックピン126はガイド保持部125の貫通孔を通されることにより、移動方向を規制されている。つまり、ガイド保持部125が、ロックピン126先端のギア121へ近接移動をガイドしている。ロックピンの上方(
図1における上方)にはロックピン126を引き上げる操作をするための操作部124が設けられている。
【0023】
図1のようにロックピン126がギア121に当接した状態、またはギア121の歯と当接可能な状態では、帯状部材等Wが繰り出される方向への回転が制止される。つまり、帯状部材等Wが繰り出されようとしても、ロックピン126がギア121に当接し、ロックピン126がギア121の回転を止める。ギア121は上述の係合部を介してドラム部材D1と一体に回転するため、ギア121の回転が止まればドラムも回転しない。したがって、ロックピン126の位置によって帯状部材等Wの繰り出しが制限される。この状態がサブリール1のロック状態である。
【0024】
なお、ロック状態において繰り出し方向への回転(
図6における反時計回りの回転)は制止されるが、巻取り方向への回転(同図の時計回りの回転)は可能である。ロックピン126の先端側がギア121の歯の斜面を滑るように移動していくためである。
【0025】
これに対しユーザーが操作部124を引き上げると、ロックピン126がギア121に当接しない状態になる。これがサブリール1の解除状態である。
【0026】
図1等に示すように、ガイド保持部125には第1フレーム110aに固定するためのネジ等を差し込む窓部が設けられている。ユーザーは窓部を見てガイド保持部125が第1フレーム110aへ確実に固定されているかを視認可能である。ガイド保持部125が第1フレーム110aへ確実に固定されていることがロック状態の確実性に影響するためである。
【0027】
ガイド保持部125の貫通孔内部には、ロックピン126をギア121側に付勢する第
2の付勢部材である第1付勢部材(図示せず)が設けられている。第1付勢部材は例えばコイルバネである。この構成により、ユーザーが操作部124を介してロックピン126を引き上げた状態を保持しない限り、ロック状態が形成されることになる。
【0028】
カバーC1は、ユーザーが操作部124を触れていなくてもロック状態を保持できるような構造であってもよい。例えば操作部124を所定角度(90°等)回転させるとカバーC1のいずれかの部分に掛かり、解除状態(ロックピン126を引き上げた状態)を保持できるように構成されていてもよい。
【0029】
(帯状部材等)
サブリール1の帯状部材等Wは、ドラムに巻かれ、第1プレートおよび第2プレートに挟まれてその間に収容される。帯状部材等Wとしては、ワイヤー等の線状部材またはベルトスリングのような帯状部材のいずれかが用いられる。帯状部材が用いられる場合、乱巻きが防止される。線状部材が用いられる場合でも柔軟性かつ強度が確保できる材料によって構成すれば、キンクした場合であっても揉むことで解消できる。
【0030】
(取付部)
サブリール1において帯状部材等Wが繰り出される開口と反対側にサブリール1をレッカー車の荷台等、固定された構造物に係合させる取付部127が設けられる。
【0031】
[効果]
本実施形態はウインチとともに用いられるサブリールである。本実施形態によれば、ロックピン126とギア121が当接するロック状態が形成される。ロック状態では、ギア121と一体に回転するドラムの回転が制止される。つまり、サブリール1は帯状部材等Wが巻き取られ、または繰り出されると、ドラムの回転にしたがってギア121およびシャフト122も回転される構成である。この状態でギア121と切替部の移動部(例えばロックピン)の協働によりロック状態に遷移すると、帯状部材等Wの繰り出し方向にドラムの回転が制止される。
【0032】
サブリール1の帯状部材等Wをウインチのワイヤー等と同様に引き揚げ対象物に取り付けることで、ウインチにおいてワイヤー等の切断があった場合の事故を防止することが可能である。
【0033】
また、ドラム部材D1において円筒部材と第1プレートが一体となっているのは、ドラム部材D2と比較してこちら側に、より負荷がかかるためである。すなわちドラム部材D1側は、ギア121が設けられている側であるため、ロック状態において帯状部材等Wが繰り出される方向にドラムが回転すると、ドラム部材D1側に負荷がかかる。ドラムの円筒部材の両端に2枚のプレートを挟んでそれぞれネジ等で固定する構成の場合は、ギア側のプレートと、ネジの接点に応力が集中し、その接点の変形や破損を招くおそれがある。本実施形態では、、ドラム部材D1において円筒部材と第1プレートが一体であるため、そのおそれを解消可能である。
【0034】
[第2実施形態]
第2実施形態にかかるサブリールについて説明する。第2実施形態のサブリールは、カバーC1におけるロックピン126の往復経路に操作部124の引き上げ状態の固定をするための突起部を有する。突起部はドラム部材D1の第1プレートおよび第2プレートが向かい合う方向に沿って一対設けられる。ユーザーは操作部124を引き上げてロックピン126の軸回りに回転させこの突起部に掛けておくことが可能である。これにより、ユーザーが操作部124を引き上げたまま保持しなくても解除状態を保持することが可能である。
【0035】
(変形例)
第1実施形態では、スライド移動するロックピン126と、ドラムと一体に回転するシャフト122とギア121により、ロック状態とする構成であった。しかしながら、他の形
態であってもよい。
【0036】
また、第1実施形態では、スライド移動するロックピン126が用いられていた。しかしながらこれに限らず、ロック部材の移動軌跡は直線状でなくてもよく、曲線状であってもよい。
【0037】
また、上記実施形態は独立したサブリールであった。しかしながら、サブリールとウインチを一体的に構成してもよい。この場合、線状、または帯状部材が巻かれるドラムは、第1のドラム領域と、第2のドラム領域が仕切りを介して分割される。第1のドラム領域には、引き上げ用の線状部材または帯状部材が巻かれる。第2のドラム領域には落下防止用の線状部材または帯状部材が巻かれる。このウインチにはドラムに対し、巻取り方向への回転力を与えるための回転駆動部と、繰り出し方向へのドラムの回転を抑制するロック部が設けられる。ロック状態については、上記と同様である。
【0038】
この発明の実施形態を説明したが、上記の実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0039】
1 サブリール
110a 第1フレーム
110b 第2フレーム
121 ギア
122 シャフト
123 巻取部
124 操作部
125 ガイド保持部
126 ロックピン
127 取付部
D1 ドラム部材
D2 ドラム部材
W 帯状部材等