(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-26
(45)【発行日】2025-04-03
(54)【発明の名称】劣化抑制米飯およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/10 20160101AFI20250327BHJP
【FI】
A23L7/10 E
A23L7/10 B
(21)【出願番号】P 2024089277
(22)【出願日】2024-05-31
【審査請求日】2024-08-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500101243
【氏名又は名称】株式会社ファーマフーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】道下 僚
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】金 英一
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-295380(JP,A)
【文献】特開2001-352918(JP,A)
【文献】特開2002-010743(JP,A)
【文献】特開2005-013058(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112006222(CN,A)
【文献】特開2001-128627(JP,A)
【文献】農業機械学会誌,2012年,Vol.74, No.3,p. 226-233
【文献】美味技術研究会誌,2008年,No.11,p.47-51
【文献】炊飯油の効果的利用,食品と科学,Vol.36, No.9,1994年,p.87-91
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
γ-アミノ酪酸(GABA)
、塩分
、および植物性油脂を含む
米飯を含む、米飯
製品であって、
該米飯は、該米飯100gあたり、5mg~250mgのGABAを含み、
該塩分の濃度が、0.01%~4.75%であり、
該植物性油脂の濃度が、0.05%~0.9%である、米飯製品。
【請求項2】
前記米飯製品が少なくとも12時間保存されたものであることを特徴とする、請求項1に記載の米飯製品。
【請求項3】
前記保存後に、前記GABA、前記塩分、および前記植物性油脂を含まないこと以外は同一の条件で炊飯された米飯と比較して、前記米飯製品における前記米飯の品質劣化が抑制されており、該品質劣化が、前記炊飯後の米飯の経時的な硬化および/または劣化臭を含む、請求項2に記載の米飯製品。
【請求項4】
前記米
飯100gあたり
、28mg
~200mgのGABAを含む、請求項1に記載の米飯
製品。
【請求項5】
前記塩分の濃度
が0.1%
~3%である、請求項1に記載の米飯
製品。
【請求項6】
前記塩分の濃度
が0.4%
~3%である、請求項1に記載の米飯
製品。
【請求項7】
前記米
飯100gあたり
、28mg
~200mgのGABAを含み、かつ前記塩分の濃度
が0.1%
~3%である、請求項1に記載の米飯
製品。
【請求項8】
前記植物性油脂の濃度が、0.1%~0.8%である、請求項1に記載の米飯製品。
【請求項9】
前記米飯が白米を含む、請求項1に記載の米飯
製品。
【請求項10】
米飯製品を製造する方法であって、
生米を炊飯する工程と、
該炊飯後の米飯を包装容器に包装する工程と
を含み、該炊飯後の米飯が、
該米
飯100gあたり
、5mg
~250mgのγ-アミノ酪酸(GABA)
、0.01%
~4.75%の塩分
、および0.05%~0.9%の植物性油脂を含
み、該方法が、
該米飯製品の保存後に、該GABA、該塩分、および該植物性油脂を含まないこと以外は同一の条件で炊飯された米飯と比較して、該米飯製品における該米飯の品質劣化が抑制されており、該品質劣化が、該炊飯後の米飯の経時的な硬化および/または劣化臭を含む、方法。
【請求項11】
前記米飯製品を少なくとも
12時間保存する工程をさらに包含する、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
米飯の品質劣化を抑制するための、γ-アミノ酪酸(GABA)を含む米飯用保存剤であって、該米飯が、塩分および植物性油脂を含み、
該米飯100gあたり、該GABAが5mg~250mgとなるように該米飯に適用されることを特徴とし、
前記塩分の濃度が、0.01%~4.75%であり、
前記植物性油脂の濃度が、0.05%~0.9%である、保存剤。
【請求項13】
米飯の品質劣化を抑制するための、γ-アミノ酪酸(GABA)の使用であって、
該米飯は、塩分、および植物性油脂を含み、
該米飯は、該米飯100gあたり、5mg~250mgのGABAを含み、
該塩分の濃度が、0.01%~4.75%であり、
該植物性油脂の濃度が、0.05%~0.9%である、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯後の米飯の保存に伴う劣化を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スーパーマーケットやコンビニエンスストアで購入した米飯製品の持ち帰りに限らず、レストランで調理された米飯製品を購入して宅配してもらい、家庭内で食べる食習慣が定着している。このような、いわゆる「中食」習慣においては、従来に比べて、米飯製品が製造されてから長時間経過した後に食される場合が多く、衛生面の観点から、チルド温度帯で流通・保存されることが一般的である。
【0003】
ところで、生米は炊飯することにより澱粉がα化(糊化)し、消化されやすく、ヒトが喫食するのに適した形態となるが、炊飯後の米飯を保存しようとすると、時間経過により澱粉がβ化(老化)し、食感、食味、臭いなどの品質が劣化してしまう。米飯は常温に静置しても経時的に品質が劣化し、パサつきが生じ、硬くもろくなるが、冷蔵保存ではその傾向が早まり、より硬くボソついた食感となる。そのため、保存用の米飯製品においては米飯の老化を抑制する技術が求められている。
【0004】
食品業界においては、米飯の表面の乾きや老化を防止するため、炊飯時の加水を増加させることが行われており、この方法では、時間が経過しても米飯の表面の乾きや老化による食感の変化に対して一定の効果が認められる。しかし、炊飯時の加水を増やすことで、炊飯直後の米飯がべたつくという問題があり、またこのべたつきにより、おにぎりやお寿司といった保存用の米飯製品の成型が困難になるという問題も生じる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、米飯にGABAおよび塩を配合することで、炊飯後の米飯の保存による品質劣化を抑制し得ることを見出した。
【0006】
具体的に、本発明者らは、炊飯後一定時間保存された米飯の品質劣化に影響する成分について検討を行った結果、一定範囲の量のGABAおよび一定範囲の量の塩の相互作用によって、炊飯後の米飯の保存による品質の劣化が抑制されることを見出した。米飯製品において塩分を配合させることは多くあることから、塩分と組み合わせることで米飯の品質劣化を抑制し得る成分を種々探索したところ、所定量のγ-アミノ酪酸と組み合わせることで優れた効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
したがって、本発明の主要な観点によれば、以下の発明が提供される。
(項目1)
γ-アミノ酪酸(GABA)および塩分を含む、米飯。
(項目2)
植物性油脂をさらに含む、上記項目のいずれか一項に記載の米飯。
(項目3)
前記米飯約100gあたり、約5mg~約250mgのGABAを含む、上記項目のいずれか一項に記載の米飯。
(項目4)
前記米飯約100gあたり、約28mg~約200mgのGABAを含む、上記項目のいずれか一項に記載の米飯。
(項目5)
前記塩分の濃度が約0.01%~約4.75%である、上記項目のいずれか一項に記載の米飯。
(項目6)
前記塩分の濃度が約0.1%~約3%である、上記項目のいずれか一項に記載の米飯。
(項目7)
前記塩分の濃度が約0.4%~約3%である、上記項目のいずれか一項に記載の米飯。
(項目8)
前記米飯約100gあたり、約5mg~約250mgのGABAを含み、かつ前記塩分の濃度が約0.01%~約4.75%である、上記項目のいずれか一項に記載の米飯。
(項目9)
前記米飯約100gあたり、約28mg~約200mgのGABAを含み、かつ前記塩分の濃度が約0.1%~約3%である、上記項目のいずれか一項に記載の米飯。
(項目10)
前記米飯が白米を含む、上記項目のいずれか一項に記載の米飯。
(項目11)
米飯製品を製造する方法であって、
生米を炊飯する工程と、
該炊飯後の米飯を包装容器に包装する工程と
を含み、該炊飯後の米飯が、米飯約100gあたり、約5mg~約250mgのγ-アミノ酪酸(GABA)、および約0.01%~約4.75%の塩分を含む、方法。
(項目12)
前記米飯製品を少なくとも約24時間保存する工程をさらに包含する、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記保存後に、前記GABAおよび前記塩分を含まないこと以外は同一の条件で炊飯された米飯と比較して、前記米飯製品における前記米飯の品質劣化が抑制されており、該品質劣化が、前記炊飯後の米飯の経時的な硬化および/または劣化臭を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
【0008】
本開示において、上記の1つまたは複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供され得ることが意図される。なお、本開示のさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。
【0009】
なお、上記した以外の本開示の特徴及び顕著な作用・効果は、以下の発明の実施形態の項及び図面を参照することで、当業者にとって明確となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、米飯の老化および/または品質劣化を抑制することができるため、米飯食品の製造に際して利用価値が高い。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本開示の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0012】
以下に本明細書において特に使用される用語の定義および/または基本的技術内容を適宜説明する。
【0013】
本明細書において、「約」とは、後に続く数値の±10%を意味する。
【0014】
本明細書において、「米飯」とは、生米を炊飯して得られる食品を表す。米飯は、生米以外に由来する食品成分を含んでいてもよい(他の穀類、具材、調味料など)。米飯の例としては、例えば、白飯、玄米飯、赤飯、麦ごはん、もち麦ごはん、雑穀ご飯、炊込みご飯、混ぜご飯、炒飯、おこわ、雑炊、お粥、お茶漬け、おにぎり、寿司など、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0015】
本明細書において、「米飯製品」とは、米飯を含有する食品ないし製品であって、保存ないし流通のために包装されたものをいう。米飯製品は、生米のみから製造されるものであってもよく、生米と他の原料から製造されるものであってもよい。米飯製品は、例えば、冷凍品、チルド品、無菌包装品、レトルト品、乾燥品、缶詰品等の任意の形態で提供されてもよい。
【0016】
本明細書において、「生米」とは、一般的にコメに分類される穀物であって、炊飯調理される前の穀物を表す。生米の例としては、精白米、玄米、発芽玄米、胚芽米、うるち米、もち米などが挙げられる。加えて、低糖質米や低タンパク米のように、コメに対して処理を加えたり、他の成分を加えたりした製品も含まれる。生米の品種、産地、精米の程度、保存期間等の生米を特定する要素は適宜選択することができる。生米は、例えば、新米、古米、または古々米であってもよく、生米としては、1種の生米を用いてもよく、2種またはそれ以上の生米を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
(好ましい実施形態)
以下に本開示の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本開示のよりよい理解のために提供されるものであり、本開示の範囲は以下の記載に限定されるべきでない。したがって、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本開示の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。また、本開示の以下の実施形態は単独でも使用されあるいはそれらを組み合わせて使用することができる。
【0018】
本発明の一局面において、γ-アミノ酪酸(GABA)および塩分を含む、米飯が提供される。
【0019】
(γ-アミノ酪酸)
γ-アミノ酪酸(GABA、4-アミノ酪酸)は野菜や穀物など、自然界に広く分布するアミノ酸であり、食品に添加してもその味を損ねることがないアミノ酸として注目されている。GABAは哺乳類の中枢神経系に多く存在する抑制性の神経伝達物質であり、興奮性神経伝達物質の過剰な分泌を抑制して神経の興奮を鎮め、リラックス効果や抗ストレス作用を発揮することが知られている。また、血圧降下作用やコレステロール低下作用、及び免疫力の低下抑制などの多岐にわたる生理活性を有することが知られている。このGABAは野菜や穀物、ヒト体内にも含まれているため、食品に添加しやすく、GABA含有チョコレートや、数多くのサプリメントが販売されている。
【0020】
γ-アミノ酪酸(GABA)は野菜類、果物類、穀類、発酵食品など、自然界に広く分布するアミノ酸であるため、本発明の一実施形態においては、GABAは飲食品に使用可能なものであれば特に由来等は制限されるものではない。例えば、GABAを含有する例えば野菜類、果物類、穀類などの抽出物または精製物等を用いてもよく、またはグルタミン酸を含有する原料にグルタミン酸脱炭酸酵素または乳酸菌等の当該酵素を有する微生物等を添加して得られる発酵物から調製することもできる。GABA含有製品や市販品のGABAについても、本発明の米飯による効果を損なわない範囲において本発明の米飯に用いることができる。
【0021】
本発明の一実施形態に係る米飯に用いるGABAとしては、GABAを約80%以上、好ましくは約85%以上、より好ましくは約90%以上含有するGABAの精製品を使用することが好ましい。精製品の形態としては、固体、水溶液、スラリー状など種々のものを用いることができる。なお、本明細書において、単位%は、特に断りがない限り、質量基準(wt%)である。
【0022】
本発明の一実施形態において、本発明の米飯におけるGABAの含有量は、本発明の米飯の効果が得られるような濃度または重量であれば特に限定されるものではない。本発明の米飯におけるGABAの含有量の下限としては、例えば米飯約100gあたり、約5mg以上、約10mg以上、約12mg以上、約14mg以上、約16mg以上、約18mg以上、約20mg以上、約22mg以上、約24mg以上、約26mg以上、約28mg以上、約30mg以上、約40mg以上、約50mg以上、約60mg以上、約70mg以上、約80mg以上、約90mg以上、約100mg以上、約110mg以上、約120mg以上、約130mg以上、約140mg以上、約150mg以上、約160mg以上、約170mg以上、約180mg以上、約190mg以上、約200mg以上、または約230mg以上とすることができ、含有量の上限としては、例えば米飯約100gあたり、約250mg以下、約230mg以下、約200mg以下、約190mg以下、約180mg以下、約170mg以下、約160mg以下、約150mg以下、約140mg以下、約130mg以下、約120mg以下、約110mg以下、約100mg以下、約90mg以下、約80mg以下、約70mg以下、約60mg以下、約50mg以下、約40mg以下、約30mg以下、約20mg以下、または約10mg以下のGABAを含むことができ、含有量は任意のこれらの下限と上限との間の数値の範囲であり得る。本発明の一実施形態において、米飯約100gあたり、約5mg~約250mg、好ましくは約10mg~約230mg、より好ましくは約28mg~約200mgのGABAを含むことができる。GABAの含有量は、アミノ酸分析装置などを用いて周知の測定技術によって測定することができる。
【0023】
GABAの添加方法は、特に制限されない。炊飯後の米飯に対して所定量のGABAを添加してもよいし、炊飯時に水に対して予め所定量のGABAを添加しておいてもよい。
【0024】
(塩分)
塩分とは、米飯中に含まれる食塩の含有量をいう。本発明の米飯における食塩の含有量は、本発明の米飯の効果が得られるような濃度または重量であれば特に限定されるものではない。一実施形態において、本発明の米飯における食塩の含有量の下限としては、例えば、米飯重量に対して、約0.01質量%以上、約0.05質量%以上、約0.1質量%以上、約0.15質量%以上、約0.2質量%以上、約0.25質量%以上、約0.3質量%以上、約0.35質量%以上、約0.4質量%以上、約0.45質量%以上、約0.5質量%以上、約0.6質量%以上、約0.7質量%以上、約0.8質量%以上、約0.9質量%以上、約1.0質量%以上、約1.5質量%以上、約2.0質量%以上、約2.5質量%以上、約3.0質量%以上、約3.5質量%以上、約4.0質量%以上、約4.5質量%以上とすることができ、含有量の上限としては、例えば、米飯重量に対して、5.0質量%以下、約4.75質量%以下、約4.5質量%以下、約4.25質量%以下、約4.0質量%以下、約3.75質量%以下、約3.5質量%以下、約3.25質量%以下、約3.0質量%以下、約2.75質量%以下、約2.5質量%以下、約2.25質量%以下、約2.0質量%以下、約1.5質量%以下、約1.0質量%以下、約0.5質量%以下、約0.4質量%以下、約0.3質量%以下、約0.2質量%以下、約0.1質量%以下とすることもでき、含有量は任意のこれらの下限と上限との間の数値の範囲であり得る。本発明の一実施形態において、本発明の米飯における食塩の含有量は、米飯重量に対して、約0.01質量%~約4.75質量%とすることが好ましく、より好ましくは約0.1質量%~約3.0質量%である。米飯中の食塩の含有量は、公知の手法により測定できる。
【0025】
(植物性油脂)
植物性油脂とは、植物に由来する油脂であり、そのような油脂としては、例えば、コメ油、大豆油、ナタネ油、コーン油、サラダ油、キャノーラ油、オリーブ油、ゴマ油、ヤシ油、亜麻仁油、ヒマワリ油、落花生油、パーム油(パーム核油、パームオレイン、パームステアリン等の分別油を含む。)、紅花油、サフラワー油、綿実油などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの油脂を水素添加またはエステル交換等により修飾したもの、並びにこれらの油脂の1またはそれ以上を混合したものであってもよい。本発明において、植物性油脂としては、好ましくは、コメ油、大豆油、ナタネ油、コーン油、またはサラダ油を使用することができる。
【0026】
一実施形態において、本発明の米飯における植物性油脂の含有量は、本発明の米飯の効果が得られるような濃度または重量であれば特に限定されるものではない。一実施形態において、本発明の米飯における植物性油脂の含有量の下限としては、例えば、米飯重量に対して、米飯重量に対して、約0.01質量%以上、約0.05質量%以上、約0.1質量%以上、約0.15質量%以上、約0.2質量%以上、約0.25質量%以上、約0.3質量%以上、約0.35質量%以上、約0.4質量%以上、約0.45質量%以上、約0.5質量%以上、約0.55質量%以上、約0.6質量%以上、約0.65質量%以上、約0.75質量%以上、約0.8質量%以上、約0.85質量%以上、約0.9質量%以上とすることができ、含有量の上限としては、例えば、米飯重量に対して、1質量%以下、0.95質量%以下、0.9質量%以下、0.85質量%以下、0.8質量%以下、0.75質量%以下、0.7質量%以下、0.65質量%以下、0.6質量%以下、0.55質量%以下、0.5質量%以下、0.45質量%以下、0.4質量%以下、0.35質量%以下、0.3質量%以下、0.25質量%以下、0.2質量%以下、0.15質量%以下、0.1質量%以下とすることもでき、含有量は任意のこれらの下限と上限との間の数値の範囲であり得る。本発明の一実施形態において、本発明の米飯における植物性油脂の含有量は、米飯重量に対して、約0.05質量%~約0.9質量%とすることが好ましく、より好ましくは約0.3質量%~約0.5質量%である。
【0027】
米飯中の植物性油脂の含有量は、公知の手法により測定できる。使用する植物性油脂の種類により脂肪酸組成比率が異なるため、例えば、脂肪酸分析を行うことにより植物性油脂中に含まれる一種または複数種の特徴的な脂肪酸成分の含有割合を測定し、かかる含有割合から植物性油脂全体の脂質量を逆算することにより、植物性油脂量として算出できる。
【0028】
(その他成分)
その他、本発明の米飯または米飯製品には、本発明の目的を逸脱しない範囲であれば、上記成分に加え、必要に応じて各種添加剤や体内に摂取可能な米飯に使用可能な任意の成分が配合されていてもよい。各種添加剤や任意の成分としては、例えば、ビタミンEやビタミンC等を含むビタミン類、アミノ酸類、短鎖脂肪酸、ポリフェノール類、ミネラル類、栄養成分、香料などの生理活性成分、保存料、防腐剤、安定化剤、抗酸化剤、着色剤、エキス類、調味料(アミノ酸類)、乳酸菌類、pH調整剤、増粘多糖類、酒精、酸味料、グリシン、調味酢などを単独で又は併用することができる。
【0029】
各種添加剤や任意の成分の添加量や添加量比は、炊飯後の米飯の保存による品質劣化の抑制効果が得られる限り、特に制限されない。各種添加剤や任意の成分の添加量や添加量比は、生米やその他原料の種類や米飯または米飯製品の種類等の諸条件に応じて適宜設定できる。
【0030】
各成分(すなわち、塩分、植物性油脂、およびその他成分)は、すべて同時に生米に添加してもよく、またはそれぞれ別個に、あるいは任意の組み合わせで別個に、生米に添加してもよい。各成分を生米に添加する順序は、特に制限されない。
【0031】
(製造方法)
本願発明の他の局面において、米飯製品を製造する方法であって、生米を炊飯する工程と、該炊飯後の米飯を包装容器に包装する工程とを含み、該炊飯後の米飯が、米飯約100gあたり、約5mg~約250mgのγ-アミノ酪酸(GABA)、および約0.01%~約4.75%の塩分を含む、方法が提供される。
【0032】
炊飯後の米飯の品質劣化抑制、または米飯製品ないし米飯食品の製造は、本願発明の有効成分(GABAおよび塩分)を利用すること以外は、通常の米飯の炊飯方法ないし米飯製品の製造と同様に実施することができる。また米飯製品の原料や製造条件は、米飯製品の種類などに応じて適宜選択することができる。米飯製品の原料とは、米飯製品を製造するための食品素材を意味し、本発明の目的を逸脱しない範囲で適宜選択することができる。米飯製品の原料としては、少なくとも生米が用いられる。生米以外の、米飯製品の製造に通常用いられ得る原料としては、例えば、肉、野菜、卵等の具材;糖、無機塩、有機酸、アミノ酸等の調味料;および油脂などが挙げられる。他の原料としては、1種の原料を用いてもよく、2種またはそれ以上の原料を組み合わせて用いてもよい。食塩や植物性油脂を含む他の原料は、例えば、予め生米と混合されていてもよく、米飯製品の製造中(例えば、炊飯中)に生米に添加されてもよく、製造された米飯(例えば、炊飯後の米飯)に添加されてもよい。
【0033】
他の原料の配合量は、所望の米飯を炊飯できる限り、または所望の米飯製品を製造できる限り、特に制限されない。他の原料の配合量は、例えば、生米または米飯の種類や米飯製品の種類等の諸条件に応じて適宜設定できる。
【0034】
本発明の米飯製品を製造する方法においては、炊飯工程によって得られる米飯が、米飯約100gあたり、約5mg~約250mgのγ-アミノ酪酸(GABA)、および約0.01%~約4.75%の塩分を含むように製造されるものであれば、GABAおよび食塩は生米の炊飯時に併せて添加されていても良いし、または炊飯後に別々に、あるいは一緒に添加されてもよい。例えば、約100gの米飯が目的量のGABAを含むように生米を炊飯するためには、目的量のGABAの約1倍~約3倍量または約1倍~約2倍量のGABAと共に生米を炊飯することで達成し得る。あるいは、約100gの炊飯後の米飯が目的量のGABAを含むようにするためには、炊飯後の米飯に対して、目的量のGABAの約1倍~約3倍量または約1倍~約2倍量のGABAを混合することで達成し得る。生米または炊飯後の米飯に混合するGABAの量は、最終的な目的量や他の成分の量、混合条件などに応じて適宜調整することができる。また約100gの米飯が目的量の塩分を含むように生米を炊飯するためには、目的量の塩分の約1倍~約1.5倍量の塩分と共に生米を炊飯することで達成し得る。あるいは、約100gの炊飯後の米飯が目的量の塩分を含むようにするためには、炊飯後の米飯に対して、目的量の塩分の約1倍~約1.5倍量の塩分を混合することで達成し得る。生米または炊飯後の米飯に混合する塩分の量は、最終的な目的量や他の成分の量、混合条件などに応じて適宜調整することができる。
【0035】
米飯は、例えば、生米を水分の存在下で加熱することにより製造できる。生米を水分の存在下で加熱することを「炊飯」ともいう。炊飯工程に際して、生米に加えて、他の原料を一緒に炊飯してもよい。炊飯は、生米が喫食可能な程度にα化するように実施することができる。また米飯製品は、このようにして炊飯した米飯を包装容器に包装することによって製造することができる。
【0036】
生米の炊飯方法は、所望の米飯または米飯製品を製造できる限り、特に制限されない。炊飯方法は、例えば、生米または米飯の種類や米飯製品の種類等の諸条件に応じて適宜設定できる。炊飯方法としては、生米および/または他の原料を水中で加熱する(または煮る)方法や、生米および/または他の原料を水蒸気で加熱する(または蒸す)方法が挙げられる。炊飯工程は、例えば、煮る工程または蒸し工程の前に、さらに、生米および/または他の原料を炒める工程を含んでいてもよい。また水分が多い段階では煮る工程を行い、水分が少なくなった段階では蒸し工程を行うこともできる。なお、「生米」とは、炊飯工程の実施中においては、炊飯工程の進行に応じて加熱された米も意味し得る。
【0037】
加水量は、所望の米飯を炊飯できる限り、または所望の米飯製品を製造できる限り、特に制限されない。加水量は、例えば、炊飯方法、生米または米飯の種類、米飯製品の種類等の諸条件に応じて適宜設定できる。
【0038】
「加水」とは、水自体が添加される場合に限られず、水分を含有する原料が添加される場合も包含される。すなわち、水分を含有する原料が添加される場合には、同原料中の水分量に応じて、水自体の添加量を減らすことができる。例えば、水分を含有する原料の添加により水分が十分に生米に供給される場合は、水自体を別途添加しなくてもよい。また、添加される水は、有効成分等の成分を含有していてもよい。
【0039】
加水は、例えば、炊飯工程の開始前、開始時、または開始後に実施することができる。炊飯工程の開始前に生米および/または他の原料を水に浸漬することにより、炊飯工程の開始前に加水を実施することができる。生米および/または他の原料を浸漬する水には、有効成分等を含有していてもよい。また浸漬工程における浸漬温度、浸漬時間などの諸条件は、所望の米飯または米飯製品を製造できる限り、特に限定されない。また、例えば、煮る工程の開始時に生米および/または他の原料に水を添加することにより、炊飯工程の開始時または開始後に加水を実施することもできる。
【0040】
加熱条件は、所望の米飯または米飯製品を製造できる限り、特に限定されない。加熱条件は、例えば、炊飯方法、生米および/または他の原料の種類、米飯または米飯製品の種類等の諸条件に応じて適宜設定できる。
【0041】
(品質劣化抑制米飯)
米飯または米飯製品の品質劣化を、米飯の老化ともいう。米飯または米飯製品の品質劣化としては、米飯または米飯製品の製造後(例えば、炊飯後)、すなわち保存の際の米飯または米飯製品の品質劣化が挙げられる。「保存」および「保存期間」とは、米飯または米飯製品を所定の場所において保管すること、およびその期間に加えて、米飯または米飯製品を輸送すること、およびその期間も含む。米飯または米飯製品の保存の際の米飯または米飯製品の品質劣化としては、米飯または米飯製品の保存の際の時間経過に伴う米飯または米飯製品の品質劣化が挙げられる。したがって、本願発明の一実施形態において、本願発明の方法は、上記のようにして得られた米飯製品を保存する工程を含むことができる。米飯または米飯製品の保存の際の温度は、特に制限されず、例えば、冷凍、冷蔵、常温、保温、加熱、またはそれらの組み合わせに相当する温度であってよい。米飯または米飯製品の保存の際の温度は、例えば、約-20℃以上、約-10℃以上、約0℃以上、約5℃以上、約10℃以上、約20℃以上であってもよく、また約40℃以下、約30℃以下、約20℃以下、約10℃以下、約0℃以下、または約-10℃以下であってもよい。米飯または米飯製品の保存の際の時間経過の長さは、例えば、約1分以上、約5分以上、約10分以上、約15分以上、約20分以上、約25分以上、約30分以上、約1時間以上、約2時間以上、約3時間以上、約6時間以上、約12時間以上、約18時間以上、約24時間以上、または約36時間以上であってもよく、また約7日間以下、約6日間以下、約5日間以下、約4日間以下、約3日間以下、約60時間以下、約48時間以下、約36時間以下、約24時間以下、約18時間以下、約12時間以下、約6時間以下、約3時間以下、約2時間以下、約1時間以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。米飯または米飯製品の品質劣化としては、具体的には、米飯の経時的な硬化の増加、柔らかさの低下、劣化臭または米飯臭の増加、米飯の粘りの低下などが挙げられる。米飯または米飯製品の品質劣化が抑制されたことは、例えば、有効成分(GABAおよび塩分)を利用して製造された米飯または米飯製品を、有効成分(GABAおよび塩分)を利用しないこと以外は同一の条件で製造された米飯または米飯製品と比較して、老化ないし品質劣化の程度を評価することによって確認することができる。米飯または米飯製品の老化ないし品質劣化の程度を測定する方法は、例えば、測定するパラメータの種類等の諸条件に応じて適宜選択でき、例えば、専門パネルによる官能評価により測定してもよい。
【0042】
米飯または米飯製品の品質劣化抑制は、具体的には、米飯の老化抑制によるものであってもよい。よって、米飯または米飯製品の「品質劣化抑制」とは、一定期間保存後における米飯または米飯製品の老化を低減することを表すことができる。米飯または米飯製品の老化を低減できているかどうかは、一定期間保存後における米飯の硬さや臭いの増加が低減できているか、および/または米飯の粘りの低下が抑制できているかどうかなどによって判断することができる。
【0043】
本明細書において「または」は、文章中に列挙されている事項の「少なくとも1つ以上」を採用できるときに使用される。「もしくは」も同様である。本明細書において「2つの値」の「範囲内」と明記した場合、その範囲には2つの値自体も含む。
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0044】
以上、本開示を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本開示を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本開示を限定する目的で提供したのではない。従って、本開示の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0045】
(実施例1:保存した炊飯米の品質評価)
[評価内容]
GABA、塩、および植物性油脂を未配合の炊飯米(以下、「成分未配合炊飯米」)を比較群とし、3日間保存後のGABA配合炊飯米の品質を評価した。評価項目は以下のとおりとした。
・官能評価(柔らかさ(指で触ったとき)、におい)
【0046】
[評価方法]
(1)炊飯時配合
水230gに生米150gを加え、またGABA、塩、および植物性油脂(サラダ油)を所定濃度となるように配合し、炊飯した。炊飯後30分蒸らした後、1時間粗熱を除去した。100mmディッシュに炊飯米30gを秤量、密閉し、室温または4℃で3日間保存した。保存による変化を観察、評価した。
(2)炊飯後配合
水230gに生米150gを加えて炊飯した。炊飯後30分蒸らした後、GABAおよび塩を溶解した水溶液、並びに植物性油脂を、それぞれ所定濃度となるように炊飯米に混合し、1時間粗熱を除去した。100mmディッシュに炊飯米30gを秤量、密閉し、室温または4℃で3日間保存した。保存による変化を観察、評価した。
【0047】
得られた炊飯米の評価は、同一の4名のパネラーによって行った。GABA配合炊飯米と、成分未配合炊飯米とを比較して、以下の表1に記載の評価項目について、以下のスコア基準に基づき1~5の範囲で評価し、4名のパネラーのスコアの平均値を算出した。柔らかさは炊飯米を指で触ったときの感覚、においは劣化臭(米臭さ)であることをパネラーへ説明した。
【表1】
成分未配合炊飯米と比較して、1:(左側文言に)とてもそう思う、2:(左側文言に)そう思う、3: 成分未配合炊飯米と変わらない、4:(右側文言に)そう思う、5:(右側文言に)とてもそう思う
【0048】
[総合評価]
・「+++」:検証した各表の官能評価項目の合計スコアが8.5以上である。
・「++」:「+++」および「+」に該当しない。
・「+」:検証した各表の官能評価項目の合計スコアが7.25以下である。
【0049】
[結果]
(1)炊飯時配合
<塩濃度の影響>
米飯100gあたり100mgのGABAを含み、かつ植物性油脂濃度が0.4%であり、塩濃度が0~5%の範囲となるように炊飯したGABA配合炊飯米の官能評価試験結果を表2に示した。
【表2】
【0050】
表2の結果から、塩濃度が0.01%~4.5%のGABA配合炊飯米は、成分未配合炊飯米と比較して、保存後においても柔らかいと評価された。また塩濃度が0.01%~4.75%のGABA配合炊飯米は、成分未配合炊飯米と比較して、保存後においても劣化臭を感じにくいと評価された。
【0051】
<GABA配合量の影響>
米飯100gあたり0~300mgのGABAを含み、かつ植物性油脂濃度が0.4%であり、塩濃度が1%となるように炊飯したGABA配合炊飯米の官能評価試験結果を表3に示した。
【表3】
【0052】
表3の結果から、GABA配合量が5mg~300mgのGABA配合炊飯米は、成分未配合炊飯米と比較して、保存後においても柔らかいと評価された。またGABA配合量が10mg~250mgのGABA配合炊飯米は、成分未配合炊飯米と比較して、保存後においても劣化臭を感じにくいと評価された。
【0053】
<植物性油脂濃度の影響>
米飯100gあたり100mgのGABAを含み、かつ植物性油脂濃度が0.01%~1%の範囲であり、塩濃度が1%となるように炊飯したGABA配合炊飯米の官能評価試験結果を表4に示した。
【表4】
【0054】
表4の結果から、植物性油脂濃度が0.05%~0.8%のGABA配合炊飯米は、成分未配合炊飯米と比較して、保存後においても柔らかいと評価された。また植物性油脂濃度が0.05%~0.9%のGABA配合炊飯米は、成分未配合炊飯米と比較して、保存後においても劣化臭を感じにくいと評価された。
【0055】
(2)炊飯後配合
<塩濃度の影響>
成分未配合炊飯米に対して、米飯100gあたり100mgのGABAを含み、かつ植物性油脂濃度が0.4%であり、塩濃度が0~5%の範囲となるように各成分を混合して得られたGABA配合炊飯米の官能評価試験結果を表5に示した。
【表5】
【0056】
表5の結果から、塩濃度が0.05%~4.5%のGABA配合炊飯米は、成分未配合炊飯米と比較して、保存後においても柔らかいと評価された。また塩濃度が0.01%~4.75%のGABA配合炊飯米は、成分未配合炊飯米と比較して、保存後においても劣化臭を感じにくいと評価された。
【0057】
<GABA配合量の影響>
成分未配合炊飯米に対して、米飯100gあたり0~300mgのGABAを含み、かつ植物性油脂濃度が0.4%であり、塩濃度が1%となるように各成分を混合して得られたGABA配合炊飯米の官能評価試験結果を表6に示した。
【表6】
【0058】
表6の結果から、GABA配合量が5mg~230mgのGABA配合炊飯米は、成分未配合炊飯米と比較して、保存後においても柔らかいと評価された。またGABA配合量が10mg~250mgのGABA配合炊飯米は、成分未配合炊飯米と比較して、保存後においても劣化臭を感じにくいと評価された。
【0059】
<植物性油脂濃度の影響>
成分未配合炊飯米に対して、米飯100gあたり100mgのGABAを含み、かつ植物性油脂濃度が0.01%~1%の範囲であり、塩濃度が1%となるように各成分を混合して得られたGABA配合炊飯米の官能評価試験結果を表7に示した。
【表7】
【0060】
表7の結果から、植物性油脂濃度が0.1%~0.8%のGABA配合炊飯米は、成分未配合炊飯米と比較して、保存後においても柔らかいと評価された。また植物性油脂濃度が0.05%~0.9%のGABA配合炊飯米は、成分未配合炊飯米と比較して、保存後においても劣化臭を感じにくいと評価された。
【0061】
(注記)
以上のように、本開示の好ましい実施形態を用いて本開示を例示してきたが、本開示は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願及び他の文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明により、炊飯米に一定範囲の量のGABAおよび一定範囲の量の塩を配合することで、炊飯後の米飯の保存による品質劣化を抑制することができるため、食品分野において有用である。
【要約】
【課題】 炊飯後の米飯の保存による品質の劣化を抑制すること。
【解決手段】 本発明によれば、γ-アミノ酪酸(GABA)および塩分を含む、米飯が提供される。本発明の米飯は、一定範囲の量のGABAおよび一定範囲の量の塩を含むことで、保存による品質劣化を抑制することができる。
【選択図】なし