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特許7656376自転車のチェーン用の液体潤滑剤注入装置
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  • 特許-自転車のチェーン用の液体潤滑剤注入装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-26
(45)【発行日】2025-04-03
(54)【発明の名称】自転車のチェーン用の液体潤滑剤注入装置
(51)【国際特許分類】
   F16N 3/06 20060101AFI20250327BHJP
   F16G 13/02 20060101ALI20250327BHJP
   B62J 31/00 20060101ALI20250327BHJP
【FI】
F16N3/06
F16G13/02 B
B62J31/00 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2024113087
(22)【出願日】2024-07-16
【審査請求日】2024-07-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】323012173
【氏名又は名称】木下 尚行
(74)【代理人】
【識別番号】110002446
【氏名又は名称】弁理士法人アイリンク国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 尚行
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-091585(JP,U)
【文献】実開昭58-189896(JP,U)
【文献】実開昭50-048088(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16N 3/00-3/12
F16G 13/02
B62J 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体潤滑剤を収容し、外力によって容量を変更可能にしたタンクと、
上記タンクの排出部と、
上記排出部の先端に設けられたスポンジ部材と
からなり、
上記スポンジ部材は、
上記排出部側の底面が、上記底面と対向する側である先端側の底面よりも大きい角錐台形状であり、
その外周面に開口する複数の連続気泡を備え、
上記連続気泡を介して上記タンクの排出部と上記スポンジ部材の外周面の開口とが連通し、
上記タンクの容量の変化によって上記排出部から排出された液体潤滑剤が上記連続気泡を介して上記スポンジ部材の外周面から排出される
自転車のチェーン用の液体潤滑剤注入装置。
【請求項2】
液体潤滑剤を収容し、外力によって容量を変更可能にしたタンクと、
上記タンクの排出部と、
上記排出部の先端に設けられたスポンジ部材と
からなり、
上記排出部の先端は、
上記スポンジ部材において上記排出部側である基端と、上記基端と対向する側である先端との中央を通る中心線より上記基端側の位置で上記スポンジ部材内に固定され、
上記スポンジ部材は、
その外周面に開口する複数の連続気泡を備え、上記連続気泡を介して上記タンクの排出部と上記スポンジ部材の外周面の開口とが連通し、上記タンクの容量の変化によって上記排出部から排出された液体潤滑剤が上記連続気泡を介して上記スポンジ部材の外周面から排出される
自転車のチェーン用の液体潤滑剤注入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自転車のチェーンの部品間に潤滑剤を注入するための、自転車のチェーン用の液体潤滑剤注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自転車のスムーズな走行を維持するため、チェーンに潤滑剤を注入することが行われている。
図5に示す自転車のチェーン1において、外プレート2と内プレート3との隙間g1、内プレート3とローラー4の端面との隙間g2、ローラー4の内周面とブッシュ5の外周面との隙間g3、ブッシュ5の内周面とピン6の外周面との隙間g4は、それぞれ約60〔μm〕であるが、これら隙間g1,g2,g3,g4に潤滑剤が供給されることが好ましい。
【0003】
高粘度のオイルやワックスを基材とする潤滑剤を用いる場合には、潤滑剤を加熱したり溶剤で希釈したりして液体化し、その中に、自転車から取り外した自転車のチェーン1を浸漬し、上記隙間に潤滑剤が行き渡るようにしていた。この方法では、自転車からチェーン1を取り外したり取り付けたりしなければならず、手間がかかってしまう。
【0004】
そこで、自転車にチェーン1を取り付けたまま、隙間g1,g2,g3,g4に注入することができる、粘度が低い液体潤滑剤を用いることも行われている。
液体潤滑剤を注入する場合には、自転車ペダルを回転させる等をしてチェーン1を移動させながら、図5の当該チェーン1のポイントp1,p2,p3,p4に、図6に示すような容器7から潤滑剤を滴下する。この容器7は、可撓性を有する容器本体8とノズル9とからなり、容器本体8の側面を軽く押すことによってノズル9の先端に開口した排出口9aから潤滑剤を滴下する。ポイントp1,p2に滴下した潤滑剤は、外プレート2と内プレート3との隙間g1,g1を介してブッシュ5の内周面とピン6の外周面との隙間g4に浸透し、ポイントp3,p4に滴下した潤滑剤は、内プレート3とローラー4の端面との隙間g2,g2からローラー4の内周面とブッシュ5の外周面との隙間g3に浸透する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-33491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記容器7を用いる場合には、1本のピン6ごとに4つのポイントp1,p2,p3,p4への滴下が必要である。しかも、潤滑剤が、各隙間に浸透するように排出口9aを各ポイントp1,p2,p3,p4に合わせる位置調整も必要である。
そのため、例えば112リンク長さのチェーンの場合には、448か所の位置決めと滴下が必要で、手間と時間がかかっていた。
【0007】
この発明の目的は、自転車に取り付けたままの状態で、チェーンの必要個所に液体潤滑剤を注入できるとともに、手間と時間を削減できる、自転車のチェーン用の液体潤滑剤注入装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、液体潤滑剤を収容し、外力によって容量を変更可能にしたタンクと、上記タンクの排出部と、上記排出部の先端に設けられたスポンジ部材とからなり、上記スポンジ部材は、上記排出部側の底面が、上記底面と対向する側である先端側の底面よりも大きい角錐台形状であり、その外周面に開口する複数の連続気泡を備え、上記連続気泡を介して上記タンクの排出部と上記スポンジ部材の外周面の開口とが連通し、上記タンクの容量の変化によって上記排出部から排出された液体潤滑剤が上記連続気泡を介して上記スポンジ部材の外周面から排出される。
【0011】
第2の発明は、液体潤滑剤を収容し、外力によって容量を変更可能にしたタンクと、上記タンクの排出部と、上記排出部の先端に設けられたスポンジ部材とからなり、上記排出部の先端が、上記スポンジ部材において上記排出部側である基端と、上記基端と対向する側である先端との中央を通る中心線よりも上記基端側の位置で上記スポンジ部材内に固定され、上記スポンジ部材は、その外周面に開口する複数の連続気泡を備え、上記連続気泡を介して上記タンクの排出部と上記スポンジ部材の外周面の開口とが連通し、上記タンクの容量の変化によって上記排出部から排出された液体潤滑剤が上記連続気泡を介して上記スポンジ部材の外周面から排出される。
【発明の効果】
【0012】
第1,2の発明によれば、スポンジ部材を自転車のチェーンの必要個所に押し付けるだけで、スポンジ部材の表面から浸みだした潤滑剤を、部品の隙間に浸透させることができる。また、排出部の正確な位置決めも不要である。そのため、注入すべき個所が多くなっても、手間と時間とを削減できる。
【0013】
また、一対の外プレート間にスポンジ部材を押し込めば、スポンジ部材の表面に接触している部品の複数の隙間に同時に潤滑剤を供給することができる。したがって、1か所ずつ潤滑剤を滴下する場合と比べて、手間と時間とを大幅に削減できる。
【0014】
特に、の発明によれば、スポンジ部材がチェーンの外プレート間に挿入しやすい。また、挿入されたスポンジ部材の大きい底面側部分が圧縮されて十分な量の潤滑剤を供給することができる。
【0015】
また、の発明によれば、スポンジ部材の先端側の内部は、タンクの排出部などが設けられていないので変形自在である。そのため、スポンジ部材の先端側が外プレート間に挿入された状態でチェーンを移動させれば、当該外プレートの移動に伴ってスポンジ部材が外プレート間から外部へ抜け出すことになる。そして、さらにチェーンが移動すれば、スポンジ部材の先端に対向する、次の外プレート間にスポンジ部材が進入することになる。
このように、一対の外プレート間へのスポンジ部材の抜き差しを完全に行わなくても、チェーンの移動に伴なってスポンジ部材が一対の外プレート間に連続的に挿入されることになる。したがって、スポンジ部材を往復させる繰り返し動作を軽減でき、潤滑剤注入のための手間と時間とをより削減できる。
また、排出部をスポンジ部材内に設けているので、排出部の先端をローラーに衝突させることによって、チェーンに対するスポンジ部材の挿入深さを確認することができる。例えば、チェーンを移動させたときに排出部の先端がローラーに衝突する位置を基準にして、スポンジ部材の挿入深さを決めて、スポンジの挿入深さに応じた潤滑剤の供給量を制御することもできる。さらには、スポンジ部材に対する排出部の先端の位置を調整することによって、スポンジ部材からチェーンに供給される潤滑剤の量を調整することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、第1実施形態の液体潤滑剤注入装置の外観図である。
図2図2は、第1実施形態の液体潤滑剤注入装置でチェーンに潤滑剤を注入する手順を説明する図である。
図3図3は、第1実施形態のスポンジ部材がチェーンに挿入された状態を示す部分断面図である。
図4図4は、第2実施形態の液体潤滑剤注入装置の分解図である。
図5図5は、一般的な自転車用チェーンの部分断面図である。
図6図6は、従来の液体潤滑剤注入容器の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
図1図3を用いて、この発明の第1実施形態を説明する。
図1は、第1実施形態の液体潤滑剤注入装置10の外観図、図2,3は潤滑剤をチェーンに注入するときの説明図である。
図1に示す液体潤滑剤注入装置10は、タンク11と排出部を構成する筒体12と、その先端側に設けられたスポンジ部材13とで構成されている。
タンク11は、ポリエチレンなど可撓性を有する樹脂の成型品であり、外部からの圧力によって容量が変化する。タンク11には、図1に示す底壁に開口11aが形成されている。例えば、タンク11を手指で挟んで、矢印A1,A2のように圧力をかければ、タンク11の容量が小さくなって、内部に収容された液体潤滑剤が開口11aから外部へ排出されるようにしている。
【0018】
また、開口11aには、タンク11内と連通する筒体12が一体成形されている。筒体12は、タンク11側の大径部12aと先端側の小径部12bとからなり、小径部12bの端部を排出口12cとして開口させている。
【0019】
さらに、筒体12の小径部12bを囲むように、当該筒体12にスポンジ部材13を備えている。言い換えれば、スポンジ部材13は、筒体12の小径部が挿入され、筒体12に固定されている。
スポンジ部材13は、連続気泡を有する樹脂製の部材で変形自在である。スポンジ部材13は、一般に流通されているスポンジ素材によって形成されている。連続気泡によって、上記排出口12cとスポンジ部材13の外周面の開口とが連通している。
【0020】
スポンジ部材13の外形は、正四角錐台であって、筒体(排出部)12側の底面S1が、先端側の底面S2よりも大きい。そして、先端側の底面S2は、上記チェーン1(図5参照)の一対の外プレート2,2及びローラー4,4で囲まれる空間に挿入可能な寸法を備えている。上記空間に挿入可能な寸法とは、底面S1が上記空間の開口面積と比べて大きすぎない寸法のことで、底面S1が上記開口面積より小さい場合はもちろん、上記開口面積より大きくても変形することで隙間に押し込まれる大きさでもよい。
【0021】
また、スポンジ部材13において、上記筒体12の先端の排出口12cは、筒体(排出部)12側の底面S1と、底面S1と対向する側である先端である底面S2との間で、上記排出部側である基端寄りの位置でスポンジ部材13内に固定されている。図1において、スポンジ部材13の四角台の高さ方向の中心線L1より上方に、排出口12cが位置しているということである。
【0022】
そのため、スポンジ部材13において、上記排出口12cより下方の先端側部分は、筒体12の影響を受けずに変形自在である。
また、上記のように排出口12cが、スポンジ部材13の底面S1側に偏った位置に設けられているため、排出口12cから先端に向かって排出された液体潤滑剤は、連続気泡を介してスポンジ部材13の全体に行き渡りやすい。
【0023】
[作用・効果等]
図1に示す液体潤滑剤注入装置10を用いて、図5のチェーン1に液体潤滑剤を注入する手順を説明する。
第1実施形態のタンク11に収容される液体潤滑剤は、チェーン1の部品間の微小隙間(約60〔μm〕)に浸透可能な、低粘度の液体である。例えば、アルコールに25〔重量%〕以下の二硫化タングステン粉末を分散させたものなどである。また、オイルを基剤として粘度が高い潤滑剤も、溶剤で希釈して十分に粘度を下げて用いることができる。
【0024】
チェーン1に潤滑剤を注入する際には、チェーン1は自転車に取り付けたままで、特定の外プレート2の上方にタンク11に液体潤滑剤が収容された液体潤滑剤注入装置10を位置させる。その後、図2の矢印B1に沿って液体潤滑剤注入装置10をチェーン1まで移動させ、二点鎖線で示した位置になるように外プレート2,2の間の隙間にスポンジ部材13を押し込む。
【0025】
スポンジ部材13は、変形自在で、チェーン1の外プレート2,2間の空間に挿入可能になっているが、チェーン1の上記空間に押し込まれると、上記空間の形状に合わせて変形する。その結果、図3に示すように、スポンジ部材13の外周面は、チェーン1を構成する外プレート2,2、内プレート3,3、ローラー4,4などの部品の形状に沿って接触する。なお、スポンジ部材13を挟んで両側にピン6,6が配置され、各ピン6,6に取り付けられた部品の配置は、スポンジ部材13を中心に対称になっている。ここでは、スポンジ部材を挟んで隣り合うピン6,6を区別するため、一方(図中右側)のピンをピン6、他方(図中左側)のピンをピン6´として区別する。
【0026】
このように、スポンジ部材13の外周面を、チェーン1の各部品に接触させたら、タンク11を手指で押してタンク11内の液体潤滑剤をタンク11から押し出すようにする。液体潤滑剤は、筒体12の排出口12cから排出されてスポンジ部材13内に浸み込み、当該スポンジ部材13内を通過して、スポンジ部材13の外周面から浸みだす。浸みだした液体潤滑剤は、一方のピン6の周囲で、ポイントp1,p2,p3,p4から、ピン6に取り付けられた部品間の隙間g1,g1,g2,g2,g3,g4に浸透する。
このとき、もう一方のピン6´側でも、液体潤滑剤が、ピン6´側のポイントp1,p2,p3,p4を介して、部品間の隙間g1,g1,g2,g2,g3,g4に浸透する。
【0027】
この第1実施形態では、スポンジ部材13をチェーン1における一対の外プレート2,2が対向して形成された一つの空間に押し込めば、2本のピン6,6´それぞれの周りに形成された隙間g1,g1,g2,g2,g3,g4と隙間g1,g1,g2,g2,g3,g4とに同時に液体潤滑剤が注入される。
スポンジ部材13の1回の挿入によって、ピン6の2本分の、注入すべきポイントp1,p2,p3,p4に、同時に液体潤滑剤を注入できる。すなわち、従来の容器7を用いた場合に、位置合わせ及び滴下が必要なポイント8個分への注入が一度にできることになる。
【0028】
チェーン1の1つの空間にスポンジ部材を押し込んで、液体潤滑剤を注入したら、スポンジ部材13をチェーン1から引き抜いて、自転車のペダルを回してチェーン1を図2の矢印C1方向へ移動させる。そして、一つ左側の外プレート2,2間に、矢印B2に沿ってスポンジ部材13を押し込み、タンク11を押圧し、スポンジ部材13を引き抜く、という作業を、チェーン1を移動させながら繰り返す。
チェーン1を1周させれば、全てのピン6に対応する部品間に液体潤滑剤が注入される。
【0029】
チェーン1を1周させる過程では、内プレート3,3が対向する空間はぬかして、外プレート2,2が対向して作る空間のみにスポンジ部材13を挿入すればよい。
したがって、チェーン1周でスポンジ部材13を挿入する回数は、ピン6の本数の2分の1で足りる。例えば、ピン112本の場合には56回である。しかも、スポンジ部材13はチェーン1の所定の空間内に押し込むようにすればよく、正確な位置合わせは必要ない。
【0030】
これに対し、従来の注入方法では、ピン6の数の4倍の数の位置合わせと滴下とが必要であった。
このように、第1実施形態の液体潤滑剤注入装置を用いれば、従来と比べて圧倒的に作業を簡略化でき、手間と時間も節約できる。
【0031】
また、第1実施形態では、スポンジ部材13において筒体12が挿入されていない部分が多く、特に先端側は自由に変形する。そのため、例えば、チェーン1の空間に挿入したスポンジ部材13を、完全に引き抜かない状態で、チェーン1を移動させたとしても、スポンジ部材13はチェーン1から自然に抜け、破損することはない。このとき、排出口12cが、スポンジ部材13内に位置するため、筒体12の先端である排出口12cをローラー4に衝突させることによって、チェーン1に対するスポンジ部材の挿入深さを確認することができる。したがって、外プレート2,2間であって、スポンジ部材13からチェーン1に液体潤滑剤を適切に供給できる位置に、スポンジ部材13の先端側を挿入できる。
【0032】
言い換えると、スポンジ部材13内における排出口12cの位置に応じて、すなわち、スポンジ部材13内への筒体12の挿入度合いに応じて、スポンジ部材13からチェーン1に供給する液体潤滑剤の量を調整できる。
さらに、スポンジ部材13の弾性力を適度に設定すれば、チェーン1から抜けたスポンジ部材13が接触した状態でチェーン1が移動し、チェーン1の空間とスポンジ部材13の先端とが対応する位置になれば、スポンジ部材13の復元力によってその先端がチェーン1の空間内に入り込むようにすることもできる。
【0033】
[第2実施形態]
図4に示す第2実施形態の液体潤滑剤注入装置14は、第1実施形態において排出部となる筒体12が2分割され、タンク11側の筒部15と、スポンジ部材13側の連結筒16とで構成される。そして、連結筒16とスポンジ部材13とからなる先端部材17を備えている。
筒部15は、開口11aと連通してタンク11と一体成型され、外側面に雄ねじ15aが形成されている。
【0034】
また、連結筒16は、基端側の内周に、上記雄ねじ15aと一致する雌ねじ16aが形成され、先端に排出口16bが開口している。この排出口16bがスポンジ部材13内に固定されている。
上記連結筒16とそれが固定されたスポンジ部材13とからなる先端部材17は、雄ねじ15aと雌ねじ16aとによってタンク11に着脱可能にされている。
その他の構成は、第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同様の構成要素には、図1と同じ符号を用いている。
【0035】
[作用・効果等]
第2実施形態では、液体潤滑剤を収容したタンク11の筒部15に、先端部材17を取り付けて使用する。
第1実施形態と同様に、スポンジ部材13をチェーン1の空間に挿入してタンク11を加圧することで、自転車に装着したままでチェーン1の隙間に、スポンジ部材13の外周面から液体潤滑剤を注入することができる点は同じである。
【0036】
また、第2実施形態では、先端部材17を個別に設けているので、チェーン1に対して抜き差しを繰り返すことによって、スポンジ部材13が破損してしまったり、気泡に異物が詰まってしまったりしたときには、先端部材17を交換して使用することができる。
さらに、先端部材17を外して、液体潤滑剤が保管されている大きい保管用の容器から、液体潤滑剤を必要量だけタンク11に移して使用することもできる。
【0037】
上記第1,2実施形態では、タンク11の全体が可撓性を有し、外壁側面を加圧することで内容量が変化するようにしているが、タンクの構成はこれに限らない。例えば、一部分のみに手指を当てて変形する部分を設けたり、タンクの端部を蛇腹状にしたりしてもよい。
スポンジ部材13の形状も、上記実施形態に限定されない。第1,2実施形態では、スポンジ部材13を正四角錐台形状にしているが、スポンジ部材13は円錐台や、他の角錐台でもよいし、円柱や角柱などでもよい。先端側を小さめに設定するだけでも、チェーン1に対して挿入しやすくすることができるが、先端側を小さくすることも必須ではない。
また、タンク11内にガラスや金属などで形成された撹拌用ボールを数個入れるようにしても良い。使用前にタンク11を振ることで、タンク内の潤滑剤を撹拌でき、媒体に対し、潤滑成分を均一分散させることができる。
【0038】
また、上記実施形態では、チェーン1の部品間の微小隙間を約60〔μm〕としているが、この値に限定されないことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
自転車のチェーンに潤滑剤を簡単に注入することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 チェーン
2 (チェーンの)外プレート
3 (チェーンの)内プレート
10,14 液体潤滑剤注入装置
11 タンク
12 (排出部)筒体
12c,16b (排出部の先端)排出口
13 スポンジ部材
S1,S2 (スポンジ部材の)底面
g1,g2,g3,g4 (部品間の)隙間
【要約】
【課題】 自転車に取り付けたままの状態で、チェーンの必要個所に液体潤滑剤を注入できるとともに、手間と時間を削減できるようにすること。
【解決手段】 液体潤滑剤を収容し、外力によって容量を変更可能にしたタンク11と、上記タンク11の排出部12と、上記排出部12の先端12aに設けられたスポンジ部材13とからなり、スポンジ部材13は、その外周面に開口する複数の連続気泡を備え、上記連続気泡を介して上記タンク11の排出部12と上記スポンジ部材の13外周面の開口とが連通し、タンク11の容量の変化によって上記排出部12から排出された液体潤滑剤が上記連続気泡を介してスポンジ部材13の外周面から排出される。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6