(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-26
(45)【発行日】2025-04-03
(54)【発明の名称】ヘテロポリマーを含むフローセル
(51)【国際特許分類】
C08F 220/56 20060101AFI20250327BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20250327BHJP
C08B 37/08 20060101ALI20250327BHJP
C12M 1/00 20060101ALN20250327BHJP
【FI】
C08F220/56
C12Q1/6869 Z
C08B37/08 Z
C12M1/00 A
(21)【出願番号】P 2020572677
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 US2019067555
(87)【国際公開番号】W WO2020149982
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2022-12-09
(32)【優先日】2019-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500358711
【氏名又は名称】イルミナ インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】502279294
【氏名又は名称】イルミナ ケンブリッジ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156122
【氏名又は名称】佐藤 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100145104
【氏名又は名称】膝舘 祥治
(72)【発明者】
【氏名】ウェイン・エヌ・ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】ルドビック・ビンセント
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・エイ・ブラウン
(72)【発明者】
【氏名】マチュー・ルサール-ヴィジェ
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-201634(JP,A)
【文献】特表2006-519979(JP,A)
【文献】特表2017-536444(JP,A)
【文献】国際公開第2018/213627(WO,A1)
【文献】特表2007-513260(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103483498(CN,A)
【文献】ACS Applied Materials & Interfaces,2012年,4,p.1747-1751
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C12M1-3
C12Q1-3
C08B1-37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プライマーに結合した官能基と反応する結合基を含むアクリルアミドモノマー、および
刺激応答性官能基を含むモノマーを含むヘテロポリマーであっ
て、
前記アクリルアミドモノマーの前記結合基はアジド基を含み、前記アクリルアミドモノマーはアジドアセタミドペンチルアクリルアミドモノマーであり、
ここで刺激応答性官能基を含むモノマーは、
温度応答性N-置換アクリルアミド、ここで前記温度応答性N-置換アクリルアミドは、N-イソプロピルアクリルアミドであり;
末端糖応答性官能基を含むアクリルアミド、アクリレート、またはビニルモノマー、ここで前記末端糖応答性官能基は、ボロン酸基を含み;および
末端求核剤応答性官能基を含むアクリルアミド、アクリレート、またはビニルモノマー、ここで前記末端求核剤応答性官能基は、以下の構造を有し、
【化1】
ここで、(a)YがSO
2であってY’がCH
2であるか、または(b)YおよびY’がともにC(O)である;からなる群から選択される、ヘテロポリマー。
【請求項2】
前記刺激応答性官能基を含むモノマーは、所定の刺激に暴露されたときに修飾を受け、ここで前記修飾はヘテロポリマーの極性および/またはコンフォメーションを変化させる請求項1に記載のヘテロポリマー。
【請求項3】
前記結合基にグラフトされたプライマーをさらに含む請求項1または2に記載のヘテロポリマー。
【請求項4】
前記結合基は、アジド基、アルケニル基、アルキニル基、アルデヒド基、ヒドラゾン基、ヒドラジン基、テトラゾール基、テトラジン基、およびチオール基からなる群から選択される請求項1から3のいずれか1項に記載のヘテロポリマー。
【請求項5】
第2のアクリルアミドモノマーをさらに含む請求項
1に記載のヘテロポリマー。
【請求項6】
前記刺激応答性官能基を含むモノマーは、3-(アクリルアミド)フェニルボロン酸である請求項1に記載のヘテロポリマー。
【請求項7】
温度応答性N-置換アクリルアミド、ここで前記温度応答性N-置換アクリルアミドは、N-イソプロピルアクリルアミドであり;
末端糖応答性官能基を含むアクリルアミド、アクリレート、またはビニルモノマー、ここで前記末端糖応答性官能基は、ボロン酸基を含み;および
末端求核剤応答性官能基を含むアクリルアミド、アクリレート、またはビニルモノマー、ここで前記末端求核剤応答性官能基は、以下の構造を有し、
【化2】
ここで、(a)YがSO
2であってY’がCH
2であるか、または(b)YおよびY’がともにC(O)である;からなる群から刺激応答性官能基を含むモノマーを選択することと、
前記刺激応答性官能基を含むモノマーをプライマーに結合した官能基と反応する結合基を含むアクリルアミドモノマーと共重合させることと、を含
み、
前記結合基を含むアクリルアミドモノマーは、アジドアセタミドペンチルアクリルアミドモノマーである、切り替え可能なヘテロポリマーの製造方法。
【請求項8】
前記刺激応答性官能基を含むモノマーおよび前記結合基を含むアクリルアミドモノマーを第2のアクリルアミドモノマーと共重合させることをさらに含む請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
支持体、および
前記支持体上に結合した請求項1から
6のいずれか1項に記載のヘテロポリマーを含むフローセル。
【請求項10】
請求項1、2または4から
6のいずれか1項に記載のヘテロポリマーをフローセル支持体の少なくとも一部と接触させ、それによってフローセル支持体に前記ヘテロポリマーを結合させることを含むフローセルの製造方法。
【請求項11】
前記支持体に結合したヘテロポリマーの前記結合基にプライマーをグラフトさせることをさらに含む請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記フローセル支持体に結合したヘテロポリマーを所定の刺激に暴露することをさらに含む請求項
10または11に記載の方法。
【請求項13】
暴露後に、フローセル上で配列決定操作を実行することをさらに含む請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
フローセル支持体上の請求項1から
6のいずれか1項に記載の切り替え可能なヘテロポリマーにプライマーをグラフトさせること、
フローセル支持体上の切り替え可能なヘテロポリマーを所定の刺激に暴露し、それによって切り替え可能なヘテロポリマーの極性および/またはコンフォメーションに変化を引き起こすこと、
核酸テンプレートをフローセル支持体上のプライマーにハイブリダイズすること、
フローセル支持体上の核酸テンプレートを増幅して増幅されたテンプレートを生成すること、および
標識ヌクレオチドが増幅されたテンプレートの相補的ヌクレオチドと結合するときにシグナルを検出すること
を含む配列決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2019年1月14日に出願された米国仮出願番号第62/793,250号の利益を主張し、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
生物学的アレイは、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)を含む、分子を検出および分析するために使用される広範囲のツールの中にある。これらの適用において、アレイは、ヒトおよび他の生物の遺伝子に存在するヌクレオチド配列のためのプローブを含むように操作される。特定の適用において、例えば、個々のDNAプローブおよびRNAプローブは、アレイ支持体上の幾何学的格子の位置に(またはランダムに)付着され得る。例えば、ヒトまたは組織由来の試験試料は、相補的フラグメントがアレイ中の個々の部位でプローブにハイブリダイズするように、グリッドに曝露され得る。次いで、そのアレイは、部位にわたる特異的な周波数の光をスキャンすることで試験され得て、フラグメントがハイブリダイズした部位の蛍光によって、どのフラグメントが試料中に存在するかを同定される。
【0003】
生物学的アレイは、遺伝子配列決定のために使用され得る。一般に、遺伝子配列決定は、DNAまたはRNAの断片などの遺伝物質の長さにおけるヌクレオチドまたは核酸の順序を決定することを含む。塩基対のより長い配列がますます分析されており、得られた配列情報は、フラグメントが由来する遺伝物質の広範な長さの配列を確実に決定するために、フラグメントを一緒に論理的に適合させるために、種々のバイオインフォマティクス手法において使用され得る。特性フラグメントの自動化されたコンピュータベースの検査が開発され、そしてゲノムマッピング、遺伝子およびそれらの機能の同定、特定の状態および疾患状態のリスクの評価などにおいて使用されてきた。これらの適用を超えて、生物学的アレイは、広範囲の分子、分子のファミリー、遺伝子発現量、一塩基多型、および遺伝子型の検出および評価のために使用され得る。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に開示される第1の態様は、刺激応答性官能基を含む複数のモノマーを含み、刺激応答性官能基は、pH応答性官能基、温度応答性官能基、糖応答性官能基、求核剤応答性官能基および塩応答性官能基からなる群から選択される切り替え可能なヘテロポリマーである。
【0005】
刺激応答性官能基は、所定の刺激に暴露されたときに修飾を受けることができ、その修飾は切り替え可能なヘテロポリマーの極性および/またはコンフォメーションを変化させる
【0006】
いくつかの態様において、切り替え可能なヘテロポリマーは、それにグラフトされたプライマーをさらに含む。
【0007】
いくつかの態様において、刺激応答性官能基はアジド基ではない。
【0008】
いくつかの態様において、切り替え可能なヘテロポリマーは、同じまたは異なる刺激に応答する2つ以上の異なる刺激応答性モノマーを含む。
【0009】
いくつかの態様において、切り替え可能なヘテロポリマーは、場合によりアジド基を含む複数のアクリルアミドモノマーを含む共重合体である。これらの態様の1つにおいて、アクリルアミドモノマーは、アジドアセタミドペンチルアクリルアミドモノマー、またはアジドアセタミドペンチルアクリルアミドモノマーおよび第2のアクリルアミドモノマーの組み合わせである。
【0010】
いくつかの態様において、切り替え可能ヘテロポリマーは、場合によりアジド基を含む糖モノマーを含む。
【0011】
いくつかの態様において、pH応答性官能基は、ヒドロキシル、1,2、-ジオール、アセタール、ヘミアセタールまたはケタールとして保護されている1,3-ジオール、tert-ブチルオキシカルボニルアミノ基、9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ基、アミノ基、カルボキシレート基、カルボン酸基、スルホネート基およびスルホン酸基からなる群から選択される。
【0012】
他の態様において、糖応答性官能基は、ボロン酸基を含む。
【0013】
さらに他の態様において、求核剤応答性官能基は、以下の構造を有する。
【化1】
ここで、(a)YがSO
2であってY’がCH
2であるか、または(b)YおよびY’がともにC(O)である。
さらに別の態様において、塩応答性官能基は、抗高分子電解質挙動を示す双性イオン官能基である。
【0014】
いくつかの態様において、温度応答性基は、熱感受性ヒドロキシルまたはアミノ保護基を含む。
【0015】
本明細書に開示される切り替え可能なヘテロポリマーの任意の特徴は、任意の望ましい方法および/または構成で一緒に組み合わせることができると理解されるべきである。
【0016】
本明細書に開示されるその他の態様は、切り替え可能なヘテロポリマーの製造方法であり、刺激応答性官能基を含む複数のモノマーを複数の第2のモノマーと共重合させることを含む。
【0017】
いくつかの態様において、第2のモノマーはアジド基を含む糖モノマーまたはアクリルアミドモノマーである。いくつかの態様において、アクリルアミドモノマーはアジド基を含む。いくつかの態様において、アクリルアミドモノマーはアジドアセタミドペンチルアクリルアミド、またはアジドアセタミドペンチルアクリルアミドと第2のアクリルアミドモノマーとの組み合わせである。
【0018】
この方法の任意の特徴は、任意の望ましい方法で共に組み合わされてもよいと理解されるべきである。その上、方法および/または切り替え可能ヘテロポリマーの特徴の任意の組み合わせは、共に用いられてもよく、および/または本明細書に開示される任意の実施例と組み合わされてもよいと理解されるべきである。
【0019】
本明細書に開示されるその他の態様は、フローセルであり、支持体と支持体上に結合された切り替え可能ヘテロポリマーとを含む。本明細書に開示される任意の切り替え可能ヘテロポリマーが用いられてもよい。いくつかの態様において、フローセルは切り替え可能ヘテロポリマーにグラフトされたプライマーをさらに含む。
【0020】
このフローセルの任意の特徴は、任意の望ましい方法で共に組み合わされてもよいと理解されるべきである。その上、フローセルおよび/または方法および/または切り替え可能ヘテロポリマーの特徴の任意の組み合わせは、共に用いられてもよく、および/または本明細書に開示される任意の実施例と組み合わされてもよいと理解されるべきである。
【0021】
本明細書に開示されるさらに別の態様は、フローセルの製造方法であり、切り替え可能ヘテロポリマーをフローセル支持体の少なくとも一部と接触させて、それによって切り替え可能ヘテロポリマーをフローセル支持体に結合させることを含む。
【0022】
いくつかの態様において、方法は、支持体上に結合された切り替え可能ヘテロポリマーにプライマーをグラフトさせることを含む。
【0023】
他の態様において、方法はフローセル支持体上に結合された切り替え可能ヘテロポリマーを所定の刺激に暴露することを含む。
【0024】
この方法の任意の特徴は、任意の望ましい方法で共に組み合わされてもよいと理解されるべきである。その上、フローセルおよび/または方法および/または切り替え可能ヘテロポリマーの特徴の任意の組み合わせは、共に用いられてもよく、および/または本明細書に開示される任意の実施例と組み合わされてもよいと理解されるべきである。
【0025】
さらに別の態様は、配列決定方法であり、フローセル支持体上の切り替え可能ヘテロポリマーにプライマーをグラフトさせること、フローセル支持体上の切り替え可能ヘテロポリマーを所定の刺激に暴露させて、それによって切り替え可能なヘテロポリマーの極性および/またはコンフォメーションに変化を引き起こすこと、核酸テンプレートをフローセル支持体上のプライマーにハイブリダイズさせること、フローセル支持体上の核酸テンプレートを増幅させて増幅されたテンプレートを生成すること、および標識ヌクレオチドが増幅されたテンプレートの相補的ヌクレオチドと結合するときにシグナルを検出することを含む。
【0026】
この方法の任意の特徴は、任意の望ましい方法で共に組み合わされてもよいと理解されるべきである。その上、フローセルおよび/または方法および/または切り替え可能ヘテロポリマーの特徴の任意の組み合わせは、共に用いられてもよく、および/または本明細書に開示される任意の実施例と組み合わされてもよいと理解されるべきである。
【0027】
本明細書に開示されるさらに別の態様はヘテロポリマーであり、プライマーに結合された官能基と反応する結合基を含むモノマーと刺激応答性官能基を含むモノマーとを含み、刺激応答性官能基を含むモノマーは、末端pH応答性官能基を含むアクリルアミドモノマー;酸に不安定な保護基を有するヒドロキシル、塩基に不安定な保護基を有するヒドロキシル、酸に不安定な保護基を有するアミノ、塩基に不安定な保護基を有すアミノ、スルホネート基およびスルホン酸基からなる群から選択される末端pH応答性官能基を含むビニルまたはアクリレートモノマー;温度応答性N-置換アクリルアミド;末端糖応答性官能基を含むアクリルアミド、アクリレート、またはビニルモノマー;末端求核剤応答性官能基を含むアクリルアミド、アクリレート、またはビニルモノマー;および末端塩応答性官能基を含むアクリルアミド、アクリレート、またはビニルモノマーからなる群から選択される。
【0028】
いくつかの態様において、刺激応答性官能基を含むモノマーは、所定の刺激に暴露されたときに修飾を受け、ここで修飾は切り替え可能ヘテロポリマーの極性および/またはコンフォメーションを変化させる。
【0029】
このヘテロポリマーのいくつかの態様は、結合基にグラフトされたプライマーをさらに含む。
【0030】
いくつかの態様において、結合基は、アジド基、アルケニル基、アルキニル基、アルデヒド基、ヒドラゾン基、ヒドラジン基、テトラゾール基、テトラジン基、およびチオール基からなる群から選択される。
【0031】
他の態様において、アクリルアミドモノマーの結合基は、アジド基を含む。いくつかの実施例において、アクリルアミドモノマーはアジドアセタミドペンチルアクリルアミドモノマーである。いくつかの実施例において、ヘテロポリマーは、第2のアクリルアミドモノマーをさらに含む。
【0032】
いくつかの態様において、刺激応答性官能基を含むモノマーは、末端pH応答性官能基を含むアクリルアミドモノマーであり、末端pH応答性官能基は、ヒドロキシル、1,2、-ジオール、アセタール、ヘミアセタールまたはケタールとして保護されている1,3-ジオール、tert-ブチルオキシカルボニルアミノ基、9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ基、アミノ基、カルボキシレート基、カルボン酸基、スルホネート基およびスルホン酸基からなる群から選択される。
【0033】
他の態様において、刺激応答性官能基を含むモノマーは、末端の糖応答性官能基を含むアクリルアミド、アクリレート、またはビニルモノマーであり、末端の糖応答性官能基は、ボロン酸基を含む。1つの実施例において、刺激応答性官能基を含むモノマーは、3-(アクリルアミド)フェニルボロン酸である。
【0034】
いくつかの態様において、刺激応答性官能基を含むモノマーは、末端求核剤応答性官能基を含むアクリルアミド、アクリレート、またはビニルモノマーであり、末端求核剤応答性官能基は、以下の構造を有する。
【化2】
ここで、(a)YがSO
2であってY’がCH
2であるか、または(b)YおよびY’がともにC(O)である
【0035】
他の態様において、刺激応答性官能基を含むモノマーは、末端塩応答性官能基を含むアクリルアミド、アクリレート、またはビニルモノマーであり、末端塩応答性官能基は、抗高分子電解質挙動を示す双性イオン官能基である。1つの実施例において、刺激応答性官能基を含むモノマーは、以下の構造の1つを有する。
【化3】
ここで、AはOもしくはNHであり、R
zはHもしくはC
1-4アルキルであり、または
【化4】
ここで、R
zはHもしくはC
1-4アルキルである。
【0036】
いくつかの態様において、刺激応答性官能基を含むモノマーは、温度応答性N-置換アクリルアミドであり、温度応答性置換アクリルアミドは、熱感受性ヒドロキシルまたはアミノ保護基を含む。
【0037】
いくつかの態様において、刺激応答性官能基を含むモノマーは、温度応答性N-置換アクリルアミドであり、温度応答性N-置換アクリルアミドは、N-イソプロピルアクリルアミドである。
【0038】
このヘテロポリマーの任意の特徴は、任意の望ましい方法で共に組み合わされてもよいと理解されるべきである。その上、ヘテロポリマーおよび/またはフローセルおよび/または任意の方法の特徴の任意の組み合わせは、任意の望ましい方法で共に用いられてもよく、および/または本明細書に開示される任意の実施例と組み合わされてもよいと理解されるべきである。
【0039】
本明細書に開示される別の態様は、以下の構造を有するヘテロポリマーである。
【化5】
ここで、nの範囲は19から500である。
【0040】
このヘテロポリマーの任意の特徴は、任意の望ましい方法で共に組み合わされてもよいと理解されるべきである。その上、ヘテロポリマーおよび/またはフローセルおよび/または任意の方法の特徴の任意の組み合わせは、任意の望ましい方法で共に用いられてもよく、および/または本明細書に開示される任意の実施例と組み合わされてもよいと理解されるべきである。
【0041】
本明細書に開示されるさらに別の態様は、ヘテロポリマーの製造方法であり、末端pH応答性官能基を含むアクリルアミドモノマー;酸に不安定な保護基を有するヒドロキシル、塩基に不安定な保護基を有するヒドロキシル、酸に不安定な保護基を有するアミノ、塩基に不安定な保護基を有すアミノ、スルホネート基およびスルホン酸基からなる群から選択される末端pH応答性官能基を含むビニルまたはアクリレートモノマー;温度応答性N-置換アクリルアミド;末端糖応答性官能基を含むアクリルアミド、アクリレート、またはビニルモノマー;末端求核剤応答性官能基を含むアクリルアミド、アクリレート、またはビニルモノマー;並びに末端塩応答性官能基を含むアクリルアミド、アクリレート、またはビニルモノマーからなる群から刺激応答性官能基を含むモノマーを選択することと、刺激応答性官能基を含むモノマーをプライマーに結合した官能基と反応する結合基を含むアクリルアミドモノマーと共重合させることと、を含む。
【0042】
いくつかの態様において、結合基を有するアクリルアミドモノマーは、アジドアセタミドペンチルアクリルアミドモノマーである。
【0043】
この方法のいくつかの態様は、刺激応答性官能基を有するモノマーと結合基を含むモノマーとを第2のアクリルアミドモノマーと共重合させることを含む。
【0044】
この方法および/またはフローセルおよび/または方法および/または任意のヘテロポリマーの特徴の任意の組み合わせは、共に用いられてもよく、および/または本明細書に開示される任意の実施例と組み合わされてもよいと理解されるべきである。
【0045】
本開示の例の特徴は、以下の詳細な説明および図面を参照することによって明らかになり、図面において、同様の符号は、おそらく同一ではないが、同様の構成要素に対応する。簡潔にするために、先に説明した機能を有する符号または特徴は、それらが現れる他の図面と関連して説明されてもよいし、説明されなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】
図1Aから1Dは、
図1Eおよび1Fと共に、または
図1Gおよび1Hと共に本明細書に開示される方法のそれぞれの例を示す概略断面図である。
【
図2】
図2Aから2Dは、明細書に開示される方法の別の例を示す概略断面図である。
【
図3】
図3Aおよび3Bは、本明細書に開示される比較例ポリマーおよび実施例ポリマーで形成されたフローセルのエラー率パーセンテージ(
図3A)および品質メトリックパーセンテージ(
図3B)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数の指示対象を含む。
【0048】
用語である含む(comprising)、備える(including)、包含する(containing)およびこれらの用語の様々な形態は、互いに同義であり、等しく広いことを意味する。
【0049】
用語「上」、「下」、「下側」、「上側」、「上」などの用語は、本明細書では、フローセルおよび/またはフローセルの様々な構成要素を説明するために使用される。これらの方向を示す用語は、特定の方向性を意味するものではなく、構成要素間の相対的な芳香性を示すために使用されることを理解されたい。方向を示す用語の使用は、本明細書に開示される実施例を任意の特定の方向性に限定すると解釈されるべきではない。
【0050】
本明細書に使用される場合、「アセタール基」は、次の接続性を有する官能基を指す。R2C(OR’)2、ここでR基およびR’基はそれぞれ有機フラグメントである。汗アセタール基には、アセタール、ケタール、ヘミアセタールおよびヘミケタールが含まれる。アセタールにおいては、1つのR基はHである。いくつかの態様において、R’はC1-4アルキル、または2つのR’が一緒になってC2-4アルキレンを形成する。アセタール保護基は、ヒドロキシル、1,2-ジオールまたは1,3-ジオール基の保護に用いられ得る。
【0051】
「アクリレート基」には、塩、エステル、およびアクリル酸の共役塩基ならびにその誘導体(例えば、メタクリル酸)が含まれる。アクリレートイオンは分子式CH2=CHCOO-を有する。
【0052】
「アクリルアミドモノマー」は、構造
【化6】
またはその置換類縁構造(例えば、メタクリルアミドまたはN-イソプロピルアクリルアミド)を有するモノマーである。アクリルアミド基およびアジド基を含むモノマーの例は、アジドアセタミドペンチルアクリルアミド:
【化7】
である。
【0053】
本明細書に使用される場合、「アルキル」は、直線状または分岐状の完全飽和(すなわち、二重結合または三重結合を含まない)の炭化水素鎖を指す。アルキル基は、1から20の炭素原子を有していてよい。アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ターシャリブチル、ペンチル、ヘキシルなどが含まれる。例として、標記「C1-4アルキル」はアルキル鎖中に1から4の炭素原子があること、すなわち、アルキル鎖はメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、およびt-ブチルからなる群から選択されることを意味する。
【0054】
本明細書に使用される場合、「アルケニル」は直線状または分岐状の1以上の二重結合を含む炭化水素鎖を指す。アルケニル基は、2から20の炭素原子を有していてよい。アルケニル基には、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニルなどが含まれる。
【0055】
本明細書に使用される場合、「アルキン」または「アルキニル」は直線状または分岐状の1以上の三重結合を含む炭化水素鎖を指す。アルキニル基は、2から20の炭素原子を有していてよい。
【0056】
本明細書に使用される場合、「アリール」は、環骨格に1つの炭素原子を含む芳香環または環系(すなわち、2つの隣接する炭素原子を共有する2以上の縮合環)を指す。アリールが環系の場合、系に含まれるすべての環は芳香族である。アリール基は6から18の炭素原子を有していてよい。アリール基の例にはフェニル、ナフチル、アズレニルおよびアントラセニルが含まれる。
【0057】
本明細書に使用される場合、用語「結合する」は、共有結合または非共有結合(例えば、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力、親水性相互作用および疎水性相互作用による)のいずれかで、互いに連結、固定、接着、接続、または結合されている2つのものの状態を指す。例えば、核酸は、共有結合または非共有結合によって官能化ポリマーに結合することができる。
【0058】
「アジド(azide)」または「アジド(azido)」官能基は-N3を指す。
【0059】
本明細書に使用される場合、「結合領域」は、別の材料に結合される基板上の領域を指し、これは、例として、スペーサー層、蓋、別の基板など、またはそれらの組み合わせ(例えば、スペーサー層と蓋)であり得る。結合領域で形成される結合は、化学結合(上記のように)または機械的結合であり得る。
【0060】
「tert-ブチルオキシカルボニル基」(Boc)は、
【化8】
を指す。「ブチルオキシカルボニルオキシ基」は-OCO
2tBuを指す。
【0061】
本明細書に使用される場合、「カルボシクリル」は、非芳香族環状環または環系骨格に炭素原子のみを含む環系を指す。カルボシクリルが環系である場合、2つ以上の環が縮合、架橋、またはスピロ結合で一緒に結合され得る。環系の少なくとも1つの環が芳香族でない限り、カルボシクリルは任意の程度の飽和を有し得る。したがって、カルボシクリルには、シクロアルキル、シクロアルケニル、およびシクロアルキニルが含まれる。カルボシクリル基は3から20の炭素原子を有し得る。カルボシクリル環の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、2,3-ジヒドロ-インデン、ビシクロ[2.2.2]オクタニル、アダマンチル、およびスピロ[4.4]ノナニルが含まれる。
【0062】
本明細書に使用される場合、用語「カルボン酸」または「カルボキシル」は、-COOHを指す。
【0063】
本明細書に使用される場合、「シクロアルキレン」は、完全に飽和したカルボシクリル環または2つの結合点を介して分子の残りの部分に結合された環系を意味する。
【0064】
本明細書に使用される場合、「シクロアルケニル」または「シクロアルケン」は、少なくとも1つの二重結合を有するカルボシクリル環または環系を意味し、環系の中には芳香族環は存在しない。例には、シクロヘキセニルまたはシクロヘキサンと、ノルボルネニルまたはノルボルネンが含まれる。さらに本明細書に使用される場合、「ヘテロシクロアルケニル」また「ヘテロシクロアルケン」は、環骨格に少なくとも1つのヘテロ原子を含み、少なくとも1つの二重結合を有するカルボシクリル環または環系を意味し、環系の中には芳香族環は存在しない。
【0065】
本明細書に使用される場合、「シクロアルキニル」または「シクロアルキン」は、少なくとも1つの三重結合を有するカルボシクリル環または環系を意味し、環系の中には芳香族環は存在しない。例は、シクロオクチンである。別の例はビシクロノニンである。さらに本明細書に使用される場合、「ヘテロシクロアルキニル」また「ヘテロシクロアルキン」は、環骨格に少なくとも1つのヘテロ原子を含み、少なくとも1つの二重結合を有するカルボシクリル環または環系を意味し、環系の中には芳香族環は存在しない。
【0066】
本明細書で使用される用語「配置(depositing)」は、手動または自動であり得、表面特性の改変をもたらす、任意の適切な適用技術を指す。一般に、配置は、蒸着技術、コーティング技術、グラフト技術などを使用して実施され得る。いくつかの具体例には、化学蒸気堆積(CVD)、スプレーコーティング(例えば、超音波スプレーコーティング)、スピンコーティング、ダンクまたはディップコーティング、ドクターブレードコーティング、パドルディスペンシング、フロースルーコーティング、エアゾール印刷、スクリーン印刷、マイクロコンタクト印刷、インクジェット印刷などが含まれる。
【0067】
本明細書に使用される場合、用語「くぼみ」は、パターン化された支持体表面の格子間領域(interstitial region)によって完全に囲まれた表面開口部を有するパターン化された支持体における分画された凹状の特徴を指す。くぼみは、例として、円形、楕円形、正方形、多角形、星形(任意の数の頂点を持つ)など、表面の開口部にさまざまな形状をとることができる。表面と直交するように取られたくぼみの断面は、湾曲、正方形、多角形、双曲線、円錐、角などであ得る。例として、くぼみはウェルであり得る。さらに本明細書で使用される場合、「官能化されたくぼみ」は、本明細書に開示されるポリマーおよびプライマーが結合している分画された凹状の特徴を指す。
【0068】
用語「それぞれ」は、もの(item)の集合体に関連して使用される場合、集合体内の個々のものを識別することを目的としているが、必ずしも集合体内のすべてのものを指すわけではない。明示的な開示または文脈が明らかにそうでないことを指示する場合、例外が発生し得る。
【0069】
本明細書で使用される場合、用語「フローセル」は、反応を実施することができるチャンバー(すなわち、フローチャネル)、チャンバーに試薬を送達するための入口、およびチャンバーから試薬を除去するための出口を有する容器を意味することが意図されている。いくつかの例において、チャンバーは、チャンバー内で発生する反応またはシグナルの検出を可能にする。例えば、チャンバーは、チャンバー内におけるアレイ、光学的に標識された分子などの光学的検出を可能にする1つ以上の透明な表面を含むことができる。
【0070】
本明細書に使用される場合、「フローチャネル」または「フローチャネル領域」は、2つの結合された構成要素の間に設けられた領域であり得、液体サンプルを選択的に受け取ることができる。いくつかの例において、フローチャネルは、パターン化された支持体と蓋との間に設けられることができ、これにより、パターン化された支持体において設けられた1つ以上のくぼみと流体連結し得る。他の例では、フローチャネルは、パターン化されていない支持体と蓋との間に定義され得る。
【0071】
「フルオレニルメチルオキシカルボニル」基(Fmoc)は、塩基に不安定な保護基であり、次の構造を有する。
【化9】
【0072】
本明細書に使用される場合、「ヘテロアリール」は、芳香族環または環系(例えば、隣接する2つの原子を共有する2以上の縮合環)を指し、1以上のヘテロ原子、すなわち、限定されるわけではないが窒素、酸素、硫黄を含む炭素以外の元素を、環骨格に含む。ヘテロアリールが環系の場合、系中のすべての環は芳香族である。ヘテロアリール基は5から18の環員を有していてよい。
【0073】
本明細書に使用される場合、「ヘテロシクリル」は、少なくとも1つのヘテロ原子を環骨格に含む非芳香族環または環系を指す。ヘテロシクリルは、縮合、架橋、またはスピロ結合の方法で一緒に結合していてよい。ヘテロシクリルは、環系の少なくとも1つの環が芳香族でない限り、任意の程度の飽和を有していてよい。環系において、ヘテロ原子は非芳香族または芳香族環のいずれに存在させられてもよい。ヘテロシクリル基は3から20の環員(すなわち、環骨格を形成する原子数であって、炭素原子とヘテロ原子を含む)を有していてよい。いくつかの例において、ヘテロ原子はO、NまたはSである。
【0074】
本明細書で使用される用語「ヒドラジン」または「ヒドラジル」は、場合により置換された-NHNH2基である。
【0075】
本明細書で使用される場合、用語「ヒドラゾン」または「ヒドラゾニル」は、
【化10】
基を指し、RaおよびRbはそれぞれ独立に、本明細書に定義された水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5-10員のヘテロアリールおよび5-10員のヘテロシクリルから選択される。
【0076】
本明細書に使用される場合、「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」は、-OH基を指す。
【0077】
本明細書に使用される場合、用語「格子間領域(interstitial region)」は、くぼみを分画する支持体または表面上の領域を指す。1以上のヘテロ原子、すなわち、限定されるわけではないが窒素、酸素、硫黄を含む炭素以外の元素を、環骨格に含む。ヘテロアリールが環系の場合、系中のすべての環は芳香族である。例えば、格子間領域は、アレイの1つの機能をアレイの別の機能から分離できる。互いに分離されている2つの機能は、別々であり得、すなわち、互いに物理的接触を欠くことができる。別の例では、格子間領域は、特徴の第1の部分を特徴の第2の部分から分離することができる。多くの例では、格子間領域は連続的であるが、特徴は別々であり、例えば、そうでなければ連続的な表面に設けられた複数のウェルの場合のようである。格子間領域によって提供される分離は、部分的または完全な分離であり得る。格子間領域は、表面に設けられた特徴の表面材料とは異なる表面材料を有していてよい。例えば、アレイの特徴は、格子間領域に存在する量または濃度を超えるコーティング層およびプライマーの量または濃度を有することができる。いくつかの例では、コーティング層およびプライマーは、格子間領域に存在しない場合がある。
【0078】
本明細書に使用される場合、「ヌクレオチド」は、含窒素ヘテロ環塩基、糖、1以上のリン酸基を含む。ヌクレオチドは核酸塩基配列の単量体単位である。RNAでは糖はリボースであり、DNAでは糖はデオキシリボース、すなわち、リボースの2’位に存在するヒドロキシル基を欠いた糖である。含窒素ヘテロ環塩基は(すなわち、核酸塩基)はプリン塩基またはピリミジン塩基であり得る。プリン塩基には、アデニン(A)およびグアニン(G)ならびにそれらの修飾された誘導体または類縁体が含まれる。ピリミジン塩基には、シトシン(C)、チミン(T)およびウラシル(U)ならびにそれらの修飾された誘導体または類縁体が含まれる。デオキシリボースのC-1原子は、ピリミジンのN-1またはプリンのN-9に結合させられる。
【0079】
本明細書に使用される場合、「プラズマアッシング」とは、酸素プラズマによって支持体から有機物を除去するプロセスを指す。プラズマアッシングから生じる生成物は、真空ポンプ/システムで除去されてよい。プラズマアッシングは、反応性ヒドロキシル基を導入することによって支持体を活性化し得る。
【0080】
本明細書において言及される「ヘテロポリマー」または「ヘテロポリマーコーティング層」は、少なくとも2つの異なる繰り返しサブユニット(モノマー)の大きな分子を意味することを意図し、繰り返しサブユニット(モノマー)の1つは、刺激応答性官能基を含む。
【0081】
本明細書に使用される場合、「プライマー」は、DNAまたはRNA合成の開始点として機能する一本鎖核酸配列(例えば、一本鎖DNAまたは一本鎖RNA)として定義される。プライマーの5’末端は、官能化ポリマー層とのカップリング反応を可能にするように修飾されていてよい。プライマーの長さは、任意の数の塩基長にすることができ、さまざまな非天然ヌクレオチドを含めることができる。1つの例では、プライマーは、20から40塩基の範囲の短い鎖である。
【0082】
本明細書に使用される場合、用語「シラン」および「シラン誘導体」は、1以上のケイ素原子を含む有機または無機化合物を指す。無機シラン化合物の例は、SiH4、または水素原子が1以上のハロゲン原子によって置換されたハロゲン化SiH4である。有機シラン化合物の例は、X-RB-Si(ORC)3であり、R-Siは有機連結基、Xはアミノ、ビニル、メタクリレート、エポキシ、硫黄、アルキル、アルケニルまたはアルキニルなどの官能基であり;RBはスペーサーであり、例えば-(CH2)n-、ここでnは0から1000;RCは、本明細書に定義された水素、場合により置換されたアルキル、場合により置換されたアルケニル、場合により置換されたアルキニル、場合により置換されたカルボシクリル、場合により置換されたアリール、場合により置換された5-10員のヘテロアリールおよび場合により置換された5-10員のヘテロシクリルから選択される。本明細書に使用される場合、用語「シラン」およ「シラン誘導体」は異なるシランおよび/またはシラン誘導体化合物の混合物を含むことができる。
【0083】
本明細書に使用される「スペーサー層」は、2つの要素にともに結合する材料を指す。いくつかの例において、スペーサー層は、結合を助ける放射線吸収材料、または結合を助ける放射線吸収材料と接触させることができる放射線吸収材料を指す。
【0084】
本明細書において使用される「刺激応答性官能基」は、刺激に応答してその状態を変化させることができる、ポリマー内の原子および/または結合の部分を指す。刺激応答性官能基は、pH応答性、温度応答性、糖応答性、求核剤応答性、または塩応答性であってよい。各刺激応答性官能基の具体例は以下にさらに説明される。
【0085】
用語フローセル「支持体」または「基質」は、表面化学物質を加えることができる支持体または基質を指す。用語「パターン化された基板」は、くぼみが定義されている、またはその上に定義されている支持体を指す。用語「パターン化されていない基板」は、実質的に平面の支持体を指す。基板は、本明細書では、「支持体」、「パターン化された支持体」、または「パターン化されていない支持体」と呼ばれることもある。支持体は、ウェーハ、パネル、長方形のシート、ダイ、または他の任意の適切な構成であり得る。支持体は一般に固く、水性液体に不溶性である。支持体は、くぼみを修飾するために使用される化学物質に対して不活性であってよい。例えば、支持体は、ポリマーコーティング層を形成するために、プライマーをポリマーコーティング層に結合させるために使用される化学物質に対して不活性であり得る。適切な支持体の例は、エポキシシロキサン、ガラスおよび修飾または官能化ガラス、多面体オリゴマーシルセキオキサン(POSS)およびそれらの誘導体、プラスチック(アクリル、ポリスチレンおよびスチレンおよび他の材料の共重合体、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(Chemours社のTEFLON(R)など)、環状オレフィン/環状レフィンポリマー(COP)(Zeon社のZEONOR(R)など)、ポリイミドなどを含む)、ナイロン、セラミック/セラミック酸化物、シリカ、溶融シリカ、またはシリカベースの材料、ケイ酸アルミニウム、シリコンおよび変性シリコン(例えば、ホウ素ドープp+シリコン)、窒化シリコン(Si3N4)、酸化シリコン(SiO2)、五酸化タンタル(TaO5)または他の酸化タンタル(TaOx)、酸化ハフニウム(HaO2)、炭素、金属、無機ガラスなどを含む。支持体はまた、ガラスもしくはシリコン、またはPOSS材料などのシリコンベースのポリマーであり得、場合により、表面に酸化タンタルまたは別のセラミック酸化物のコーティング層を有する。
【0086】
本明細書において使用される用語「表面化学物質」は、フローセルのチャネルに組み込まれる化学的および/または生物学的に活性な成分を指す。本明細書に開示される表面化学物質の例は、支持体の表面の少なくとも一部に結合したポリマーコーティング層、およびポリマーコーティング層の少なくとも一部に結合したプライマーを含む。
【0087】
「チオール」官能基は、-SHを指す。
【0088】
本明細書において使用される場合、用語「テトラジン」および「テトラジニル」は、4つの窒素原子を含む6員のヘテロアリール基を指す。テトラジンは場合により置換され得る。
【0089】
本明細書において使用される「テトラゾール」は、4つの窒素原子を含む5員のヘテロアリール基を指す。テトラゾールは場合により置換され得る。
【0090】
本明細書に開示されるフローセルの例は、支持体、支持体に付着したポリマー、およびポリマーにグラフトされたプライマーが含む。フローセルの例は、
図1F、1H、および3Dに示され、本明細書でさらに説明されるであろう。次に、フローセル支持体に結合するポリマーの様々な例を説明されるであろう。
【0091】
「1つの例」、「別の例」、「例」などへの本明細書全体における言及は、その例に関連して説明される特定の要素(例えば、特徴、構造、および/または特性)を意味し、本明細書に記載される少なくとも1つの例に含まれ、他の例に存在する場合も存在しない場合もある。さらに、文脈が明らかに他のことを指示しない限り、任意の例について説明された要素は、様々な例において任意の適切な方法で組み合わせることができると理解されるべきである。
【0092】
本明細書で提供される範囲は、あたかもその範囲および値または部分的な範囲が本明細書で明示的に記載されているかのように、記載された範囲および記載された範囲内の任意の値または部分的な範囲を含むと理解されるべきである。例えば、約400nmから約1μm(1000nm)の範囲は、約400nmから約1μmの明示的に記載された限界を含むだけでなく、約708nm、約945.5nmなどなどの個々の値、および約425nmから約825nm、約550nmから約940nmなどの部分的な範囲も含むと解釈されるべきである。さらに、「約」および/または「実質的に」は、値を説明するために使用され、記載された値からのわずかな変動(最大+/-10%)を含むことを意味する。
【0093】
本明細書に記載されるヘテロポリマーは、所定の刺激に暴露されたときに修飾を受けることができる刺激応答性官能基を含み、修飾は、ヘテロポリマーの極性および/またはコンフォメーションを変化させる。したがって、本明細書に開示されるヘテロポリマーの例は、切り替え可能であり得る。切り替え可能なヘテロポリマーは、特定の刺激にさらされると、初期状態から第2の切り替えられた状態に移行することができる。切り替えの例は、疎水性から親水性、親水性の増加、親水性から疎水性、疎水性の増加、中性から荷電、荷電から中性、陰イオンから中性、陽イオンから中性、中性から陰イオン、中性から陽イオン、および中性から親水性が増加した中性などの極性の変化を含む。切り替えの例は、膨潤、折り畳み状態から伸長状態、伸長状態から折り畳み状態(例えば、抗高分子電解質挙動を伴う)、およびコイル-小球形成などのコンフォメーション変化も含む。所与の刺激応答基は、複数の切り替え効果を与えてもよい。いくつかの態様において、切り替えは不可逆的であり、他の例において、切り替えは異なる化学的または熱的条件下で可逆的である。
【0094】
刺激応答性官能基は、切り替え可能なヘテロポリマーがフローセル支持体に適用されるときに初期状態を示す。いくつかの態様において、初期状態は、フローセル支持体の疎水性の性質と適合性があり、この適合性はフローセルの製造および取り扱いを容易にする。例えば、初期状態(例えば、疎水性)は、疎水性フローセル支持体へのヘテロポリマーの接着およびコーティング均一性を改善し得、一方、切り替え状態は、配列決定操作などのフローセル使用により適合性があり得る。
【0095】
したがって、いくつかの態様において、切り替えられた状態は、配列決定操作を含むいくつかの応用において改善された性能を提供する解決策コンフォメーションであり得る。配列決定操作の前に、本明細書に開示される刺激応答性ポリマーは、所定の刺激に曝露され得る。刺激に暴露されると、切り替え可能なヘテロポリマーは、刺激応答性官能基に対する所定の刺激の効果により、極性および/またはコンフォメーションを変化させる。切り替え状態のヘテロポリマーは、タンパク質の非特異的吸着を低減し、シーケンスメトリック(たとえば、塩基または第1サイクルの強度、品質スコア、エラー率など)を改善する可能性のある低ファウリング表面を提供できる。
【0096】
当業者は、本明細書に記載されるヘテロポリマーのいずれかが、任意の順序または構成で2つ以上の繰り返し単量体単位を含むランダム、ブロック、線状、および/または分岐コポリマーであり得、線状、架橋もしくは分岐、またはそれらの組み合わせであり得ることを認識するであろう。
【0097】
いくつかの例では、刺激応答性官能基は、pH応答性官能基である。そのような態様では、切り替え可能なヘテロポリマーは、pH応答性官能基を含む複数のモノマーを含む共重合体である。複数のモノマーはそれぞれ、同じpH条件に応答する同じpH応答性官能基または異なるpH応答性官能基を有してよい。いくつかの態様において、ヘテロポリマーは、複数のアクリルアミドモノマーの共重合体である。単一のタイプのアクリルアミドモノマーを使用することができ、または2つ以上の異なるアクリルアミドモノマーを使用することができる。
【0098】
いくつかの態様において、pH応答性官能基は、酸性または塩基性pH条件への曝露時に、増加または減少された極性(例えば、増加された親水性または増加された疎水性)を有する置換基に変換される。いくつかの態様において、pH応答性官能基は中性であり、刺激への曝露時に帯電する。いくつかの態様において、pH応答性官能基は帯電しており、刺激への暴露時に中性になる。いくつかの態様において、pH応答性官能基は中性であり、刺激への曝露時に中性であるがより極性のある異なる基に変換される。
【0099】
いくつかの態様において、pH応答性官能基は、酸に不安定な保護基を有するヒドロキシル(酸性/低pH条件にさらされると、より親水性の遊離ヒドロキシルに切り替わる)、塩基に不安定な保護基を持つヒドロキシル(塩基性/高pH条件にさらされると、より親水性の遊離ヒドロキシルに切り替わる)、酸に不安定な保護基を持つアミノ(酸性/低pH条件にさらされるとより親水性の遊離アミノ基に切り替わる)、塩基に不安定な保護基を持つアミノ(塩基性/高pH条件にさらされると、より親水性の遊離アミノ基に切り替わる)、アミノ基(酸性/低pH条件にさらされると、アンモニウムイオンに切り替わる)、カルボキシレート(-CO2
-)基(酸性/低pH条件にさらされると、中性カルボン酸に切り替わる、カルボン酸基(塩基性/高pH条件にさらされると、帯電したより親水性のカルボキシレートに切り替わる)、スルホネート(-SO3
-)基(酸性/低pH条件にさらされると、中性スルホン酸に切り替わる)、またはスルホン酸基(塩基性/高pH条件にさらされると、帯電したより親水性のスルホネートに切り替わる)である。
【0100】
例示的な切り替え可能なヘテロポリマーは、以下の構造のモノマーを含む:
【化11】
ここで、
Xは、-O-PG、-NH-PG、-NR
aR
b、-SO
3H、-SO
3
-、-CO
2H、および-CO
2
-からなる群から選択されるpH応答性官能基である。
PGは、酸または塩基に不安定な保護基(例えば、Boc、Fmoc、またはアセタール)である。
R
aとR
bはそれぞれ独立してHまたはC1-4アルキルである。
いくつかの態様において、Xは、-O-Boc、-NHBoc、-NHFmoc、-NH
2、-NHCH
3、または-N(CH
3)
2である。いくつかの態様において、Xは、SO
3H、-SO
3
-、-CO
2H、または-CO
2
-である。いくつかの態様において、R
aおよびR
bは両方ともメチルである。いくつかの態様において、R
zはHまたはメチルである。いくつかの態様において、モノマーは以下の構造を有する:
【化12】
【0101】
したがって、いくつかの態様において、pH応答性官能基は、ヒドロキシル、アセタール、ヘミアセタール、またはケタールとして保護された1,2-ジオール、または1,3-ジオールである(酸性/低pH条件にさらされると、より極性/親水性のジオールに切り替わる)、tert-ブチルオキシカルボニルアミノ基、9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ基、アミノ基、カルボキシレート(-CO2
-)基、カルボン酸基、スルホネート(-SO3
-)基、またはスルホン酸基である。
【0102】
tert-ブトキシカルボニルアミノ基は、疎水性(またはより親水性が低い)状態にあってよく、そして低(酸性)pH(例えば、7未満のpHを有する)に曝露されると、親水性状態(例えば、アミノ基)に移行してよい。tert-ブトキシカルボニルアミノ基は、アクリルアミドモノマーまたはアクリレートモノマーに結合されてよい。tert-ブトキシカルボニルアミノ基含有モノマーの例は、N-(tert-ブトキシカルボニル-アミノエチル)メタクリルアミド、N-(tert-ブトキシカルボニル-アミノプロピル)メタクリルアミド、および(2-tert-ブトキシカルボニル-アミノ)エチルメタクリレートを含む。
【0103】
9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ基は、疎水性(またはより親水性の低い)状態にあってよく、そして低い(酸性)pH(例えば、7未満のpHを有する)に曝露されると、親水性状態(例えば、アミノ基)に移行してよい。9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ基は、アクリルアミドモノマー、またはアクリレートモノマー、またはビニルモノマーに結合されてよい。9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル基含有モノマー例は、以下を含む:
【化13】
【0104】
アミノ基は中性状態にあってよく、そして低(酸性)pH(例えば、7未満のpHを有する)に曝露されると、荷電(およびより親水性)状態(カチオン性)に移行してよい。例えば、合成されたポリマーのアミノ基はプロトン化されてよく、ポリマー骨格の周りにカチオン電荷をもたらす。合成されたポリマーにおいて、アミノ基は、アクリルアミドモノマーもしくはアクリレートモノマー、またはビニルモノマーに結合されてよい。アミノ基含有モノマーの例は、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、2-(N、N-ジメチルアミノ)エチルアクリレート、N-[3-(N、N-ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド、N-[2-(N、N-ジメチルアミノ)エチル]メタクリルアミド、およびN-[3-(N、N-ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミドを含む。
【0105】
アセタール基は、低い(酸性)pH(例えば、7未満のpH)に曝露されると、その初期状態よりも親水性の状態に移行し得る(ヒドロキシルまたはジオール)。アセタール基は、アジド官能化ヒアルロン酸(HA-N3)に結合されていてもよい。HA-N3は有機溶媒への溶解性が限られているため、アセタール化反応の前に酸性イオン交換樹脂を使用してテトラブチルアンモニウム塩に変換されてもよい。アセタール化反応は、室温で、2-メトキシプロペンおよびピリジニウムp-トルエンスルホン酸塩を、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解されたHA-N3塩と反応させることによって実施されてよい。
【0106】
いくつかの態様において、切り替え可能ヘテロポリマーは、アジド含有アクリルアミドモノマーをさらに含む。いくつかの態様において、切り替え可能ヘテロポリマーは、
【化14】
を含み、場合により
【化15】
を含む。いくつかの態様において、切り替え可能ヘテロポリマーは、構造
【化16】
を含み、ここでR
zはそれぞれ独立して、HまたはC
1-4アルキルである。いくつかの例において、Xは-O-Boc、-NHBoc、-NHFmoc、-NH
2、-NHCH
3、または-N(CH
3)
2である。いくつかの例において、Xは-NHBocである。いくつかの態様において、XはSO
3H、-SO
3
-、-CO
2H、または-CO
2
-である。いくつかの態様においてR
aおよびR
bはともにメチル基である。いくつかの態様において、R
zはそれぞれ独立してHまたはメチルである。
【0107】
いくつかの例において、切り替え可能なヘテロポリマーは、2つのpH応答性アセタール官能基(1つのケタール基と1つのヘミケタール基など)とカルボン酸基を含む。例示的なヘテロポリマーは、以下の構造を有する。
【化17】
ここでnは10から500の範囲である。酸に不安定なアセタール基は、アジド修飾ヒアルロン酸(HA-N
3)の極性デキストラン骨格上の複数のアルコールを保護し、ヘテロポリマーの特性を親水性から疎水性に変化させる。より疎水性の初期状態にあるヘテロポリマーは、取り扱いおよび処理がより容易であり、ヘテロポリマーを、本明細書に開示される疎水性支持体(例えば、ノルボルネン官能化ガラスまたはPOSS基板)により効果的にコートし、または結合させることを可能にし得る。
【0108】
いくつかの例において、刺激応答性官能基は温度応答性官能基である。このような態様では、切り替え可能なヘテロポリマーは、温度応答性官能基を含む複数のモノマーを含む共重合体である。複数のモノマーはそれぞれ、同じ温度条件に応答する、同じ温度応答性官能基または異なる温度応答性官能基を有していてよい。いくつかの態様において、ヘテロポリマーは、複数のアクリルアミドモノマーとの共重合体である。単一種のアクリルアミドモノマーが使用されてよく、または2つ以上の異なるアクリルアミドモノマーが使用されてよい。
【0109】
温度応答性官能基は、より高極性またはより低極性の極性官能基に変換され得るか、または温度変化によりポリマーにコンフォメーション変化を引き起こすことができるものである。例えば、温度応答性基は、ヘテロポリマーが熱に暴露されると除去される(中性の初期状態から親水性が増加した中性に切り替わる)、熱に敏感なヒドロキシルまたはアミノ保護基(BocまたはFmoc基など)を含む。アクリルモノマーを含む様々なBocおよびFmoc保護モノマーが使用されてよい。別の例では、温度応答性官能基は、ポリマーを、室温で、中性で比較的親水性である伸長初期状態で存在させ、次に、ヘテロポリマーを、高温(32℃以上など)で、中性で比較的疎水性である折り畳み状態に切り替えることができる。この他の例はコイル-球切り替えであり、これは、例えば、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)によって示され得る。この切り替え可能なヘテロポリマーにグラフトされたプライマーは、この挙動をわずかに変える可能性があることが理解されるべきである。いくつかの態様において、このポリマー材料は、熱的にコイルから小球への転移を受ける。いくつかの態様において、温度応答性官能基は、イオン化可能で感熱性のゲルであるポリマーの一部である。いくつかの態様において、温度応答性官能基を含むモノマーは、H2C=C(Hまたはメチル)-C(O)NRcRdなどのN-置換アクリルアミドであり、ここでRcはHであり、Rdは分岐C3-6アルキルである。いくつかの態様において、温度応答性官能基を含むモノマーは、N-イソプロピルアクリルアミドであり、場合により、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)のブロック状態である。
【0110】
1つの例では、ヘテロポリマーは、温度応答性官能基モノマーおよびアクリルアミドモノマーを含む。いくつかの例において、アクリルアミドモノマーは、上記のように、アジドアセトアミドペンチルアクリルアミドモノマー、およびアクリルアミドモノマーとアジドアセトアミドペンチルアクリルアミドモノマーの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの態様において、切り替え可能なヘテロポリマーは、アジド含有アクリルアミドモノマーをさらに含む。いくつかの態様において、切り替え可能なヘテロポリマーは、以下を含む:
【化18】
いくつかの態様において、切り替え可能ヘテロポリマーは、以下の構造を含む:
【化19】
ここで、R
zはそれぞれ独立してHまたはC
1-4アルキルである。
【0111】
別の態様において、刺激応答性官能基は、糖応答性官能基であり、これは、ジオール試薬と反応してアニオン性官能基を形成する親水性置換基である。いくつかの態様において、ジオールは、有機ジオール、または糖、またはグルコースである。いくつかの態様において、糖応答性官能基は、アルキルボロン酸またはアリールボロン酸などのボロン酸を含む。ボロン酸官能基は、電荷中性の初期状態にあってよく(また、比較的疎水性であってよい)、糖溶液に暴露されると、負に帯電した(陰イオン)状態(これは、電荷中性状態よりも親水性であってよい)に遷移してよい。ボロン酸は、糖類と反応してボロン酸エステルを形成する能力があり、水の流入によって可逆的に膨潤する。これは、配列決定操作中に望ましい場合がある。
【0112】
ボロン酸官能基は、アクリルアミドモノマー、またはアクリレートモノマー、またはビニルモノマーに結合してよい。1つの例では、糖応答性官能基を含むモノマーは、以下の構造を有する。
【化20】
ボロン酸基含有モノマーの例には、3-(アクリルアミド)フェニルボロン酸が含まれる。いくつかの態様において、切り替え可能なヘテロポリマーは、アクリルアミドモノマーをさらに含む。いくつかの態様において、アクリルアミドモノマーは、アジド含有アクリルアミドモノマーである。いくつかの態様において、切り替え可能なヘテロポリマーは、以下を含む:
【化21】
いくつかの態様において、ヘテロポリマーは、以下の構造を有する。
【化22】
ここでR
zはそれぞれ独立して、HまたはC
1-4アルキルである。
【0113】
いくつかの例において、刺激応答性官能基は、求核剤応答性官能基である。求核剤応答性官能基は、求核剤による攻撃を受けやすく、本明細書に記載の極性および/またはコンフォメーションの変化を与える構造変化をもたらす基である。いくつかの態様において、切り替え可能なヘテロポリマーは、求核剤応答性官能基を含む複数のモノマーを含む共重合体である。複数のモノマーはそれぞれ、同じ求核剤に応答する同じ求核剤応答性官能基または異なる求核剤応答性官能基を有してよい。いくつかの態様において、ヘテロポリマーは、求核剤応答性官能基を含むモノマーと1つ以上のアクリルアミドモノマーとの共重合体である。単一種のアクリルアミドモノマーが使用されよく、または2つ以上の異なるアクリルアミドモノマーが使用されてよい。いくつかの例において、求核剤応答性官能基は、求核剤への曝露時に、場合によりpH9以上などの塩基性(高pH)条件で、開環反応を進行できる環状スルホン酸エステル(スルトン環など)または環状無水物(無水コハク酸など)である。
【0114】
いくつかの態様において、求核剤応答性官能基は、以下の構造を有する。
【化23】
ここで、(a)YはSO
2、Y’はCH
2であるか、または(b)YおよびY’は共にC(O)である。他の態様において、求核剤応答性官能基は、
【化24】
である。適切な求核剤には、第一級アルキルアミンおよびアルキルアルコールが含まれる。スルトン開環基とその開環反応の例は次のとおりです。
【化25】
ここで、MはHまたは一価陽イオン(ナトリウムまたはカリウム陽イオン)である。スルトン開環基は、疎水性(または親水性が低い)状態にあってよく、高い(塩基性)pHに暴露されると、開環反応が進行して(より)親水性状態に遷移してよい。開環反応後の官能基もアニオン性であってよく、したがって荷電状態にあってよい。
【0115】
いくつかの態様において、求核剤応答性官能基を含むモノマーは以下である:
【化26】
特定の例において、モノマーは以下である。
【化27】
【0116】
いくつかの態様において、求核剤応答性官能基は、アクリルアミドモノマー、またはアクリレートモノマー、またはビニルモノマーに結合され得る。いくつかの態様において、切り替え可能なヘテロポリマーは、アクリルアミドモノマーをさらに含む。いくつかの例において、アクリルアミドモノマーは、アジド含有アクリルアミドモノマーである。いくつかの態様において、切り替え可能なヘテロポリマーは、以下を含む:
【化28】
【0117】
いくつかの態様において、ヘテロポリマーは、以下の構造を有する:
【化29】
ここで、R
zはそれぞれ独立してHまたはC
1-4アルキルである。
【0118】
いくつかの態様において、刺激応答性官能基は、塩応答性官能基である。いくつかの例では、塩応答性官能基は、抗高分子電解質挙動を示す双性イオン官能基であり、双性イオン官能基は、塩に曝されると、折り畳み状態から伸長状態に切り替わる。塩応答性官能基は、抗高分子電解質挙動を有する双性イオン性官能基である。本明細書で使用される「抗高分子電解質挙動」は、双性イオン官能基を含むモノマーが、塩に暴露されると折り畳み状態から伸長状態に切り替わる(すなわち、モノマーは純水よりも塩水への溶解度が高い)ことを意味する。したがって、塩応答性官能基は、折り畳み状態(例えば、ポリマー鎖が球状の状態)にあってよく、塩溶液に曝露されると、伸長状態(すなわち、ポリマー鎖が伸長された状態)に移行し得る。局所的な塩対イオンの影響が、塩応答性官能基を含むポリマー鎖のコンフォメーションを変化させる。1つの例において、双性イオン性官能基を含むモノマーは、N-(2-メタクリロイルオキシ)エチル-N、N-ジメチルアンモニオプロパンスルホネートおよびN-(3-メタクリロイルイミノ)プロピル-N、N-ジメチルアンモニオプロパンスルホネートからなる群から選択される。
【0119】
いくつかの例において、塩応答性官能基は、-NMe
3
+などの第4級アンモニウム基である。例示的なモノマーは以下である:
【化30】
ここでR
zはそれぞれ独立してHまたはC
1-4アルキルである。
陰イオン性対応物(塩溶液中に存在する)と組み合わせると、これらの帯電した材料は、抗高分子電解質挙動を示してよい。適切な陰イオン性対応物の例には、カルボン酸塩、スルホン酸塩、クエン酸塩、リン酸塩などが含まれる。
【0120】
塩応答性官能基は、アクリルアミドモノマー、またはアクリレートモノマー、またはビニルモノマーに結合してよい。いくつかの態様において、切り替え可能なヘテロポリマーは、アクリルアミドモノマーをさらに含む。いくつかの例において、アクリルアミドモノマーは、アジド含有アクリルアミドモノマーである。いくつかの態様において、切り替え可能なヘテロポリマーは、以下を含む:
【化31】
いくつかの態様において、ヘテロポリマーは、以下の構造を有する。
【化32】
ここでR
zはそれぞれ独立してHまたはC
1-4アルキルである。
【0121】
1つの例では、フローセルは、支持体および支持体に結合した切り替え可能なヘテロポリマーを含み、刺激応答性官能基は、pH応答性官能基、温度応答性官能基、糖応答性官能基、求核剤応答性官能基、および塩応答性官能基からなる群から選択される。刺激応答性官能基は、所定の刺激にさらされたときに修飾を受けることができ、修飾は、切り替え可能なヘテロポリマーの極性および/またはコンフォメーションを変化させる。
【0122】
いくつかの態様において、フローセル支持体は、格子間領域によって分画されたくぼみを含むパターン化された基板であり、ヘテロポリマーは、くぼみ内に存在する。他の態様では、支持体は、フローチャネル領域および結合領域を有するパターン化されていない基板であり、ヘテロポリマーはフローチャネル領域に結合されている。
【0123】
いくつかの態様において、フローセルは、切り替え可能なヘテロポリマーにグラフトされたプライマーをさらに含む。
【0124】
フローセルのこの態様の例では、支持体の表面は、シランまたはシラン誘導体で官能化され、ヘテロポリマーは、シランまたはシラン誘導体に結合している。いくつかの例では、シランまたはシラン誘導体は、官能化ポリマー層の官能基と反応することができる不飽和部分を含む。本明細書で使用される場合、「不飽和部分」という用語は、シクロアルケン、シクロアルキン、ヘテロシクロアルケン、ヘテロシクロアルキン、または場合により置換されてよい、少なくとも1つの二重結合または1つの三重結合を含む変異体を含む化学基を指す。不飽和部分は一価または二価であり得る。不飽和部分が一価である場合、シクロアルケン、シクロアルキン、ヘテロシクロアルケン、およびヘテロシクロアルキンは、それぞれ、シクロアルケニル、シクロアルキニル、ヘテロシクロアルケニル、およびヘテロシクロアルキニルと交換可能に使用される。不飽和部分が二価である場合、シクロアルケン、シクロアルキン、ヘテロシクロアルケン、およびヘテロシクロアルキンは、それぞれ、シクロアルケニレン、シクロアルキニレン、ヘテロシクロアルケニレン、およびヘテロシクロアルキニレンと交換可能に使用される。
【0125】
不飽和部分は、シランまたはシラン誘導体のケイ素原子に直接結合するか、またはリンカーを介して間接的に結合することができる。適切なリンカーの例には、場合により置換されてよいアルキレン(例えば、二重結合を開くことによってアルケンから、または異なる炭素原子から2つの水素原子を除去することによってアルカンから誘導されると見なされる二価飽和脂肪族ラジカル(エチレンなど))、置換ポリエチレングリコールなどが含まれる。
【0126】
本明細書に開示されるヘテロポリマーは、少なくとも2つの異なるモノマーから構成される。モノマーの1つは、刺激応答性官能基を含む。いくつかの態様において、他のモノマーは、フローセル支持体、および/またはヘテロポリマーが結合されたプライマーと反応させられる結合基を含む。この他の結合基はまた、支持体に結合することができてもよく、または他のモノマーが、支持体に結合することができる第2の(異なる)結合基を含んでいてよい。本明細書に開示されるポリマーはまた、刺激応答性官能基および結合基のそれぞれの機能を妨害しない1以上の他のモノマーを含み得ることが理解されるべきである。
【0127】
本明細書に開示されるポリマーの任意の例において、結合基は、アジド、アミノ、アルケニル(シクロアルケニルまたはヘテロシクロアルケニル基を含む)、アルキニル(シクロアルキニルまたはヘテロシクロアルキニル基を含む)、アルデヒド、ヒドラゾン、ヒドラジン、カルボキシル、ヒドロキシ、テトラゾール、テトラジン、およびチオールからなる群から選択される。
【0128】
結合基は、プライマーの5’末端に結合した官能基と反応することができ得る。例えば、ビシクロ[6.1.0]ノン-4-イン(BCN)末端プライマーは、ひずみ促進された無触媒クリック化学反応を介してポリマーのアジド結合基によって捕捉され得る。別の例として、アルキン末端プライマーは、銅触媒クリック化学反応を介してポリマーのアジド結合基によって捕捉され得る。さらに別の例として、ノルボルネン末端プライマーは、ポリマーのテトラジン結合基との無触媒の環ひずみ促進されたクリック反応を進行させてもよい。例えば、スタウディンガーライゲーション、ひずみ促進反応、および光クリック環状付加を含む、他のカップリング化学反応が使用されて、プライマーを結合基に結合させることができることが理解されるべきである。
【0129】
使用することができる末端プライマーの他の例には、テトラジン末端プライマー、アジド末端プライマー、アミノ末端プライマー、エポキシまたはグリシジル末端プライマー、チオリン酸末端プライマー、チオール末端プライマー、アルデヒド末端プライマー、ヒドラジン末端プライマー、およびトリアゾリンジオン末端プライマーが含まれる。
【0130】
1つの例では、結合基は、アクリルアミドモノマーに結合している。結合基を含むモノマーの1つの例は、アジドアセトアミドペンチルアクリルアミドである。
【0131】
方法の1つの例では、ポリマーコーティング層をフローセルに付与することは、フロースルー堆積、化学蒸気堆積、ディップコーティング、ダンクコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、パドルディスペンシング、超音波スプレーコーティング、ドクターブレードコーティング、エアゾール印刷、スクリーン印刷、マイクロコンタクト印刷、またはインクジェット印刷を含む。
【0132】
方法の1つの例では、フローセル支持体は、格子間領域によって分画されたくぼみを含むパターン化されたフローセル支持体であり、この方法は、ポリマーコーティング層を付与する前に、シランまたはシラン誘導体をパターン化されたフローセル支持体の表面に結合させ、それによってシラン化されくぼみおよびシラン化された格子間領域を形成することと、シラン化されたくぼみおよびシラン化された格子間領域にポリマーコーティング層を適用する付与することと、そして、シラン化された格子間領域からポリマーコーティング層を除去する(例えば、研磨する)ことをさらに含む。
【0133】
方法の1つの例では、ポリマーコーティング層を所定の刺激に曝露することは、ポリマーコーティング層を所定のpHの溶液に曝露すること、ポリマーコーティング層を求核剤に曝露すること、ポリマーコーティング層を糖を含む溶液に曝露すること、またはポリマーコーティング層を塩溶液に暴露することの1つを含む。
【0134】
さらに別の態様では、方法は、フローセル支持体の少なくとも一部の上のポリマーコーティング層を所定の刺激に曝露することを含み、それにより、ポリマーコーティング層の刺激応答性官能基を、i)現在の状態から現在の状態よりも親水性の状態へ、またはii)中性状態から荷電状態へ、またはiii)折り畳み状態から伸長状態へ、と切り替え、そして、ポリマーコーティング層がより親水性の状態、帯電状態、または伸長状態にあるときに、フローセル支持体を使用して配列決定操作を実行する。
【0135】
いくつかの態様において、方法はフローセルを作製する方法である。この方法は、切り替え可能なヘテロポリマーをフローセル支持体の少なくとも一部に付与することを含む。
【0136】
パターン化された基板へのポリマー(ポリマーコーティング層)およびプライマー(すなわち、表面化学物質)の添加は、
図1Aから1Fを参照して説明され、
図1Gおよび1Hを
図1Aから
図1Dと組み合わせて説明され、そして、パターン化されていない基板への表面化学物質の添加は、
図2Aから2Dを参照して説明される。
【0137】
図1Aは、パターン化された支持体12の一例の断面図である。パターン化された支持体12は、パターン化されたウェーハ、またはパターン化されたダイまたは任意の他のパターン化された支持体(例えば、パネル、長方形シートなど)であってよい。本明細書に記載の支持体12の任意の例を使用することができる。パターン化されたウェーハは、いくつかのフローセルを形成するために使用されてよく、パターン化されたダイは、単一のフローセルを形成するために使用されてよい。1つの例では、支持体は、約2mmから約300mmの範囲の直径を有していてよく、または約10フィート(~3メートル)までの最大寸法を有する長方形のシートまたはパネルを有していてよい。1つの例では、支持体ウェーハは、約200mmから約300mmの範囲の直径を有する。別の例では、支持ダイは、約0.1mmから約10mmの範囲の幅を有する。例示的な寸法が提供されているが、任意の適切な寸法の支持体/基板を使用できることが理解されるべきでる。別の例として、300mmの円形ウェーハよりも大きな表面積を有する長方形の支持体であるパネルが使用されてよい。
【0138】
パターン化された支持体12は、支持体12の露出層または表面の上またはその中に定義されたくぼみ14と、隣接するくぼみ14を分離する格子間領域16とを含む。本明細書に開示される例では、くぼみ14は表面化学物質(例えば、20、22)によって機能化され、一方、格子間領域16は結合に使用することができるが、その上にプライマー(
図1E、1Fおよび1Hに示される)が存在しないであろう。
【0139】
くぼみ14は、例えば、フォトリソグラフィ、ナノインプリントリソグラフィ、スタンピング技術、エンボス技術、成形技術、マイクロエッチング技術、印刷技術などを含む様々な技術を使用して、支持体12内または支持体12上に製造されてよい。当業者に理解されるように、使用される技術は、支持体12の組成および形状に依存するであろう。
【0140】
くぼみ14の多くの異なるレイアウトが、規則的、繰り返し、および非規則的パターンを含めて想定されてよい。1つの例では、くぼみ14は、密なパッキングおよび改善された密度のために六角形のグリッドに配置される。他のレイアウトは、例えば、直線(すなわち、長方形)レイアウト、三角形レイアウトなどを含んでよい。いくつかの例では、レイアウトまたはパターンは、行および列である、くぼみ14のx-yフォーマットであり得る。他のいくつかの例では、レイアウトまたはパターンは、くぼみ14および/または格子間領域16の繰り返し配置であり得る。さらに他の例では、レイアウトまたはパターンは、くぼみ14および/または格子間領域16のランダムな配置であり得る。パターンは、スポット、パッド、ウェル、ポスト、ストライプ、渦巻き、線、三角形、長方形、円、円弧、チェック、格子縞、対角線、矢印、正方形、および/またはクロスハッチを含んでいてよい。
【0141】
レイアウトまたはパターンは、定義された領域内のくぼみ14の密度(すなわち、くぼみ14の数)に関連して特徴付けられてよい。例えば、くぼみ14は、1mm2あたり約200万の密度で存在してよい。密度は、例えば、少なくとも1mm2あたり約100、1mm2あたり約1,000、1mm2あたり約10万、1mm2あたり約100万、1mm2あたり約200万、1mm2あたり約500万、1mm2あたり約1,000万、1mm2あたり約5,000万またはそれ以上に調整されてよい。代替的または追加的に、密度は、1mm2あたり約5000万、1mm2あたり約1000万、1mm2あたり約500万、1mm2あたり約200万、1mm2あたり約100万、1mm2あたり約10万、1mm2あたり約1,000、1mm2あたり約100、またはそれ以下に調整されてよい。支持体12上のくぼみ14の密度は、上記の範囲から選択された低い値の1つと高い値の1つとの間であり得ることがさらに理解されるべきである。例として、高密度アレイは、約100nm未満で分離されたくぼみ14を有するものとして特徴付けられてよく、中密度アレイは、約400nmから約1μmで分離されたくぼみ14を有するものとして特徴付けられてよく、そして低密度アレイは、約1μm超えで分離されたくぼみ14を有するものとして特徴付けられてよい。密度の例が提供されているが、任意の適切な密度の基板を使用できることが理解されるべきである。
【0142】
レイアウトまたはパターンはまた、または代替的に、平均ピッチ、すなわち、くぼみ14の中心から隣接する格子間領域16の中心までの間隔(中心間間隔)に関連して特徴付けられてよい。パターンは、平均ピッチの変動係数が小さくなるように規則的であることができ、またはパターンは不規則であることもでき、その場合、変動係数は比較的大きくなる可能性がある。いずれの場合も、平均ピッチは、例えば、少なくとも約10nm、約0.1μm、約0.5μm、約1μm、約5μm、約10μm、約100μm、またはそれ以上であり得る。代替的または追加的に、平均ピッチは、例えば、最大で約100μm、約10μm、約5μm、約1μm、約0.5μm、約0.1μm、またはそれ以下であり得る。サイト16の特定のパターンの平均ピッチは、上記の範囲から選択された低い値の1つと高い値の1つとの間であり得る。1つの例では、くぼみ14は、約1.5μmのピッチ(中心間の間隔)を有する。平均ピッチ値の例が提供されているが、他の平均ピッチ値が使用され得ることが理解されるべきである。
【0143】
図
図1Aから1Hに示される例では、くぼみ14はウェル14’であり、したがって、パターン化された支持体12は、その表面にウェル14’のアレイを含む。ウェル14’は、マイクロウェルまたはナノウェルであってよい。各ウェル14’のサイズは、その体積、ウェル開口面積、深さ、および/または直径によって特徴付けられてよい。
【0144】
各ウェル14’は、液体を留めることができる任意の容量を有することができる。最小または最大の容量は、例えば、フローセルの下流での使用に期待されるスループット(例えば、多重度)、分解能、分析物の組成、または分析物の反応性に対応するように選択されることができる。例えば、容量は、少なくとも約1×10-3μm3、約1×10-2μm3、約0.1μm3、約1μm3、約10μm3、約100μm3、またはそれ以上であり得る。代替的または追加的に、容量は、最大で約1×104μm3、約1×103μm3、約100μm3、約10μm3、約1μm3、約0.1μm3、またはそれ以下であり得る。機能化されたコーティング層は、ウェル14’の容量の全部または一部を満たすことができることが理解されるべきである。個々のウェル14’内のコーティング層の体積は、上記で特定された値よりも大きい、小さい、またはその間にある可能性がある。
【0145】
表面上の各ウェル開口部が占める面積は、ウェル容量について上に述べたものと同様の基準に基づいて選択することができる。例えば、表面上の各ウェル開口部の面積は、少なくとも約1×10-3μm2、約1×10-2μm2、約0.1μm2、約1μm2、約10μm2、約100μm2、またはそれ以上であり得る。代替的または追加的に、面積は、最大で約1×103μm2、約100μm2、約10μm2、約1μm2、約0.1μm2、約1×10-2μm2、またはそれ以下であり得る。各ウェル開口部が占める面積は、上記で特定された値よりも大きい、小さい、またはその間にある可能性がある。
【0146】
各ウェル14’の深さは、少なくとも約0.1μm、約1μm、約10μm、約100μm、またはそれ以上であり得る。代替的または追加的に、深さは、最大で約1×103μm、約100μm、約10μm、約1μm、約0.1μm、またはそれ以下であり得る。各ウェル14’の深さは、上記で特定された値よりも大きい、小さい、またはその間にある可能性がある。
【0147】
場合によっては、各ウェル14’の直径は、少なくとも約50nm、約0.1μm、約0.5μm、約1μm、約10μm、約100μm、またはそれ以上であり得る。代替的または追加的に、直径は、最大で約1×103μm、約100μm、約10μm、約1μm、約0.5μm、約0.1μm、またはそれ以下(例えば、約50nm)であり得る。
各ウェル14’の直径は、上記で特定された値よりも大きい、小さい、またはその間にある可能性がある。
【0148】
パターン化された支持体12は、くぼみ14に表面化学物質20、22を追加するために、一連のプロセスにさらされ得る。
【0149】
示されていないが、パターン化された支持体12は、表面を洗浄および活性化するためにプラズマアッシングに曝され得ることが理解されるべきである。例えば、プラズマアッシングプロセスは、有機物質を除去し、表面ヒドロキシル基を導入してよい。支持体12の種類に部分的に依存して、他の適切な洗浄プロセスを使用して支持体12を洗浄することができる。例えば、化学洗浄は、酸化剤または苛性溶液を用いて実施することができる。
【0150】
次に、パターン化された支持体12(
図1Aに示される)は、ポリマーコーティング層20(
図1C)を形成するために、本明細書に開示される刺激応答性ポリマーの配置のための表面を準備するプロセスに曝され得る。1つの例では、パターン化された支持体12は、シラン化に曝されてよく、これは、シランまたはシラン誘導体18(
図1B)をパターン化された支持体表面に結合させる。シラン化は、くぼみ14、14'(例えば、底面および側壁に沿って)および格子間領域16を含む表面全体にシランまたはシラン誘導体18を導入する。いくつかの態様において、シランまたはシラン誘導体は、パターン化された基板のくぼみ、またはパターン化されていない基板のマイクロロケーション(これらは互いに分離されている)にのみ選択的に導入される。
【0151】
シラン化は、任意のシランまたはシラン誘導体18を使用して達成することができる。シランまたはシラン誘導体18の選択は、シランまたはシラン誘導体18とポリマーコーティング層20との間に共有結合を形成することが望ましい場合があるため、ポリマーコーティング層20(
図1Cに示される)を形成するために使用されるポリマーに部分的に依存してよい。シランまたはシラン誘導体18を支持体12に結合させるために使用される方法は、使用されるシランまたはシラン誘導体18に依存して異なっていてよい。本明細書にはいくつかの例が示されている。
【0152】
1つの例では、シランまたはシラン誘導体18は、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)または(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS)(すなわち、X-RB-Si(ORC)3、ここでXはアミノであり、RBは-(CH2)3-、RCはエチルまたはメチルである)である。この例では、支持体12の表面は、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)または(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS)で前処理され、シリコンを表面上の1つまたは複数の酸素原子に共有結合させることができる(メカニズムによって支持されることを意図せずに、各シリコンは1つ、2つ、または3つの酸素原子に結合してよい)。この化学的に処理された表面は、焼成されてアミン基単層を形成する。次に、アミン基はSulfo-HSABと反応させられて、アジド誘導体を形成する。1J/cm2から30J/cm2のエネルギーで21°CでUV活性化すると、活性ナイトレン種が生成され、これは、本明細書に開示されているポリマーとのさまざまな挿入反応を容易に進行させることができる。
【0153】
他のシラン化方法もまた使用されてよい。適切なシラン化方法の例には、蒸着法、YES法、スピンコーティング、または他の堆積法が含まれる。支持体12をシラン化するために使用され得る方法および材料のいくつかの例が本明細書に記載されているが、他の方法および材料が使用され得ることが理解されるべきである。
【0154】
YES CVDオーブンを利用する例では、パターン化された支持体12がCVDオーブンに配置される。チャンバーを排気してから、シラン化サイクルが開始されてよい。サイクリング中、シランまたはシラン誘導体容器は適切な温度(例えば、ノルボルネンシランの場合は約120℃)に維持されてよく、シランまたはシラン誘導体蒸気ラインは、適切な温度(例えば、ノルボルネンの場合、約125℃)に維持されてよく、真空ラインは適切な温度(例えば、約145℃)に維持されてよい。
【0155】
別の例では、シランまたはシラン誘導体18(例えば、液体ノルボルネンシラン)をガラスバイアル内に堆積させ、パターン化された支持体12と共にガラス真空デシケーター内に配置されてよい。次に、デシケーターは、約15mTorrから約30mTorrの範囲の圧力まで排気されることができ、約60°Cから約125°Cの範囲の温度のオーブン内に配置されることができる。シラン化を進行させた後、デシケーターをオーブンから取り出し、冷却して空気中に排出される。
【0156】
蒸着、YES法および/または真空デシケーターは、本明細書に開示される不飽和部分の例を含むそれらのシランまたはシラン誘導体18などの様々なシランまたはシラン誘導体18と共に使用され得る。例として、これらの方法は、シランまたはシラン誘導体18が、ノルボルネン、ノルボルネン誘導体(例えば、炭素原子の1つの代わりに酸素または窒素を含む(ヘテロ)ノルボルネン)、トランスシクロオクテン、トランスシクロオクテン誘導体、トランスシクロペンテン、トランスシクロヘプテン、トランスシクロノネン、ビシクロ[3.3.1]ノン-1-エン、ビシクロ[4.3.1]デシ-1(9)-エン、ビシクロ[4.2.1]ノン-1(8)-エン、およびビシクロ[4.2.1]ノン-1-エンなどのシクロアルケン不飽和部分を含む場合に使用されてよい。これらのシクロアルケンのいずれも、例えば、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリシクリル、アラルキル、または(ヘテロアリシクリル)アルキルなどのR基で置換することができる。ノルボルネン誘導体の例には、[(5-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エニル)エチル]トリメトキシシランが含まれる。他の例として、これらの方法は、シランまたはシラン誘導体18が、シクロオクチン、シクロオクチン誘導体、またはビシクロノニン(例えば、ビシクロ[6.1.0]ノン-4-インまたは誘導体、ビシクロ[6.1.0]ノン-2-イン、またはビシクロ[6.1.0]ノン-3-イン)などのアルキンまたはシクロアルキン不飽和部分を含む場合に使用されてよい。これらのシクロアルキンは、本明細書に記載のR基のいずれかで置換することができる。
【0157】
図1Bに示されるように、シランまたはシラン誘導体18の結合は、シラン化されたくぼみおよびシラン化された格子間領域(これらは処理されたくぼみおよび処理された格子間領域の一例である)を含むシラン化されパターン化された支持体を形成する。
【0158】
次に、シラン化されたパターン化された支持体は、シラン化されたくぼみおよびシラン化された格子間領域上にポリマーコーティング層20を形成するプロセスに曝されてよい。
【0159】
ポリマーコーティング層20を付与する前に、方法のいくつかの例は、配置されてポリマーコーティング層20を形成するヘテロポリマーを合成することを含んでいてよい。合成は、刺激応答性官能基含有モノマーを、ジドアセトアミドペンチルアクリルアミドモノマー、ならびにアクリルアミドモノマーおよびアジドアセトアミドペンチルアクリルアミドモノマーの組み合わせからなる群から選択されるモノマーと共重合することを含んでいてよい。本明細書に記載のpH応答性、温度応答性、糖応答性、求核剤応答性、または塩応答性のモノマーのいずれかが使用されて、ヘテロポリマーを形成してよい。本明細書に開示されるポリマー材料を作製するために、いくつかのアプローチが使用され得る。いくつかの例として、使用される重合方法は、フリーラジカル重合、制御ラジカル重合、非ラジカル法、または別の適切な方法であってよい。
【0160】
本明細書に記載されるように、ポリマーコーティング層20の例は、刺激応答性官能基の任意の例および結合基の任意の例を含む、本明細書に開示される刺激応答性ポリマーのいずれかを含む。刺激応答性ポリマーは、混合物中に存在するか、または混合物に組み込まれてよい。1つの例では、混合物は、エタノールと水の混合物中に刺激応答性ポリマーを含む。ポリマーコーティング層20は、任意の適切な技術を使用して、シラン処理されたパターン化された支持体12の表面上に(すなわち、シラン処理されたくぼみおよびシラン処理された格子間領域上に)形成されてよい。刺激応答性ポリマーは、化学蒸着(CVD)、またはディッピングまたはディップコーティング、ダンクコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティングまたは超音波スプレーコーティング、パドルディスペンシング、ドクターブレードコーティング、エアロゾル印刷、スクリーン印刷、マイクロコンタクト印刷、またはインクジェット印刷、または他の適切な技術を使用して、パターン化された支持体12の表面に配置され得る。。ポリマーコーティング層20が
図1Cに示されている。
【0161】
ダンクコーティングは、パターン化およびシラン化された支持体を一連の温度制御された浴に沈めることを含んでいてよい。浴はまた、流量制御され、および/または窒素ブランケットで覆われてよい。様々な浴を通して、刺激応答性ポリマーが結合して、シラン化されたくぼみおよび格子間領域にポリマーコーティング層20を形成する。1つの例では、パターン化およびシラン化された支持体は、ポリマーを結合させるための反応が起こるポリマー混合物を含む第1の浴に導入され、次いで、パターン化され、シラン化され、ポリマー被覆された支持体は、洗浄のために追加の浴に移される。パターン化された支持体は、ロボットアームを使用して、または手動で浴から浴に移動されてよい。ダンクコーティングには乾燥システムが使用されてよい。
【0162】
スプレーコーティングは、ポリマー混合物をパターン化およびシラン化された支持体に直接スプレーすることによって達成することができる。スプレーコーティングされた支持体は、ポリマーを結合させるのに十分な時間インキュベートされてよい。インキュベーション後、結合していないポリマー混合物は希釈され、例えば、スピンコーターを使用して、または本明細書に記載の浴またはダンクタンク内で超音波処理することによって除去することができる。
【0163】
パドルディスペンシングは、プールおよびスピンオフ法に従って実施することができ、したがって、スピンコーターを使用して達成することができる。ポリマー混合物は、パターン化およびシラン化された支持体に(手動でまたは自動化されたプロセスを介して)付与されてよい。付与されたポリマー混合物は、パターン化およびシラン処理された支持体の表面全体に付与または拡散され得る。ポリマー被覆されたパターン化された支持体は、ポリマーを結合させるのに十分な時間インキュベートされてよい。インキュベーション後、結合していないポリマー混合物は希釈され、例えば、スピンコーターを使用して、または本明細書に記載の浴またはダンクタンク内で超音波処理することによって除去することができる。
【0164】
シラン化されたくぼみおよびシラン化された格子間領域(すなわち、18)へのポリマーコーティング層20の結合は、共有結合を介してよい。ポリマーコーティング層20のシラン化されたくぼみへの共有結合は、様々な使用中に、最終的に形成されるフローセルの耐用期間を通じて、ポリマーコーティング層20をくぼみ14、14’中に維持するのに役立つ。以下は、シランまたはシラン誘導体18とポリマーコーティング層20との間で起こり得る反応のいくつかの例である。
【0165】
シランまたはシラン誘導体18が不飽和部分としてノルボルネンまたはノルボルネン誘導体を含む場合、ノルボルネンまたはノルボルネン誘導体は、i)刺激応答性ポリマーのアジド/アジド基との1,3-双極子付加環化反応を進行させること;ii)刺激応答性ポリマーに結合したテトラジン基とのカップリング反応を進行させること;iii)刺激応答性ポリマーに結合したヒドラゾン基との付加環化反応を進行させること;iv)刺激応答性ポリマーに結合したテトラゾール基とのフォトクリック反応を進行させること;またはv)刺激応答性ポリマーに結合したニトリルオキシド基との付加環化を進行させることができる。
【0166】
シランまたはシラン誘導体18が不飽和部分としてシクロオクチンまたはシクロオクチン誘導体を含む場合、シクロオクチンまたはシクロオクチン誘導体は、i)刺激応答性ポリマーのアジド/アジド基とのひずみ促進アジド-アルキン1,3-付加環化(SPAAC)反応を進行させること、またはii)刺激応答性ポリマーに結合したニトリルオキシド基とのひずみ促進アルキン-ニトリルオキシド付加環化反応を進行させることができる。
【0167】
シランまたはシラン誘導体18が不飽和部分としてビシクロノニンを含む場合、ビシクロノニンは、二環系のひずみのために、刺激応答性ポリマーに結合したアジドまたはニトリルオキシドと同様のSPAACアルキン環化付加を進行させることができる。
【0168】
示されていないが、方法のいくつかの例では、パターン化された支持体12がシラン化に曝されない場合があることが理解されるべきである。むしろ、パターン化された支持体12は、プラズマアッシングに曝されてよく、次いで、ポリマーコーティング層20は、プラズマアッシングされたパターン化された支持体12上に直接スピンコーティング(またはそうでなければ堆積)されてよい。この例では、プラズマアッシングは、ポリマーコーティング層20をパターン化された支持体12に接着することができる表面活性化剤(例えば、ヒドロキシルまたはカルボキシルとしての-OH基)を生成してよい。これらの例では、ポリマーコーティング層20の他の官能基は、プラズマアッシングによって生成された表面基と反応するように選択されてよい。例えば、ポリマーコーティング層20の他の官能基は、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHSエステル)であってよい。
【0169】
コーティングされた後、刺激応答性ポリマーはまた、硬化プロセスに曝されてもよく、パターン化された基板全体にわたって(すなわち、くぼみ14および格子間領域16上に)ポリマーコーティング層20を形成する。1つの例では、刺激応答性ポリマーの硬化は、室温(例えば、約25℃)から約60℃の範囲の温度で、約5分から約2時間の範囲の時間で起こってよい。
【0170】
シラン化およびコーティングされたパターン化された基板(
図1Cに示される)は、洗浄プロセスに曝されてよい。このプロセスでは、水浴と超音波処理を利用してよい。水浴は、約22℃から約45℃の範囲の比較的低温に維持されてよい。別の例では、水浴の温度は約25℃から約30℃の範囲である。
【0171】
次に、シラン化およびコーティングされたパターン化された支持体は、必要に応じて研磨に曝されてよく、シラン化された格子間領域からポリマーコーティング層20の一部を除去する。シラン化、コーティング、および研磨されたパターン化された基板を
図1Dに示す。格子間領域16に隣接するシランまたはシラン誘導体18の部分は、研磨の結果として、除去されても、されなくてもよい。このように、
図1Dから1Hでは、格子間領域16に隣接するシランまたはシラン誘導体18の部分は、研磨後に少なくとも部分的に残るか、または研磨後に除去されてよいので、ファントムで示されている。これらのシラン化された部分が完全に除去されると、下にある支持体12が露出することが理解されるべきである。
【0172】
研磨プロセスは、薄いポリマーコーティング層20を除去することができる穏やかな化学スラリー(例えば、研磨剤、緩衝液、キレート剤、界面活性剤、および/または分散剤を含む)を用いて実施されてよく、薄いポリマーコーティング層は、いくつかの例では、少なくとも一部のシランまたはシラン誘導体18は、それらの領域で下にある支持体12に悪影響を与えることなく、格子間領域16からのものである。あるいは、研磨粒子を含まない溶液を用いて研磨が行われてもよい。
【0173】
化学スラリーは、化学機械研磨システムで使用されて、
図1Cに示されるシラン化およびコーティングされたパターン化された支持体の表面を研磨してよい。研磨ヘッド/パッドまたは他の研磨ツールは、ポリマーコーティング層20をくぼみ14、14'に残し、下地となる支持体12を、少なくとも実質的に無傷で残して、格子間領域16からポリマーコーティング層20を研磨することができる。1つの例として、研磨ヘッドは、ストラスボーViPRRII研磨ヘッドであってよい。
【0174】
上記のように、研磨は、研磨パッドおよび研磨剤を含まない溶液を用いて実施されてよい。例えば、研磨パッドは、研磨粒子を含まない溶液(すなわち、研磨粒子を含まない溶液)と共に利用されてよい。
【0175】
研磨は、格子間領域16からポリマーコーティング層20の一部(およびいくつかの例では、シランまたはシラン誘導体18の少なくとも一部)を除去し、
図1Dに示すように、ポリマーコーティング層20の一部をシラン処理されたくぼみに残す。また、上記のように、格子間領域16は、研磨が完了した後もシラン化されたままであってよい。換言すれば、シラン化された格子間領域は、研磨後も無傷のままであってよい。あるいは(18のファントム部分によって示されるように)、シランまたはシラン誘導体18は、研磨の結果として、格子間領域16から除去されてもよい。
【0176】
示されていないが、シラン化、コーティング、および研磨されたパターン化された支持体(
図1Dに示される)は、洗浄プロセスに曝されてもよいことが理解されるべきである。このプロセスは、ウォーターバスと超音波処理を利用してよい。水浴は、約22℃から約30℃の範囲の比較的低温に維持されてよい。シラン化、コーティング、および研磨されたパターン化された基板は、スピン乾燥されてよく、別の適切な技術を介して乾燥されてもよい。
【0177】
次に、
図1Dに示されるシラン化、コーティング、および研磨されたパターン化された支持体は、
図1Eおよび1Fに示されるフローセル10を生成するプロセスに曝されてよく、または
図1Gおよび1Hに示されるフローセル10’を生成するプロセスに曝されてよい。
図1Eおよび1Fにおいて、プライマー22は、蓋26がパターン化されたフローセル支持体12に結合される前にグラフトされる。
図1Gおよび1Hでは、プライマー22がグラフトされる前に、蓋26がパターン化されたフローセル支持体12に結合されている。
【0178】
図1Eでは、プライマー22をくぼみ14、14’のポリマーコーティング層20にグラフトするために、グラフト化処理が実行される。プライマー22は、アルキン官能基を含む任意のフォワード増幅プライマーまたはリバース増幅プライマーであってよい。適切なプライマーの特定の例には、P5および/またはP7プライマーが含まれ、それらはHISEQ
TM、HISEQX
TM、MISEQ
TM、MISEQDX
TM、MINISEQ
TM、NEXTSEQ
TM、NEXTSEQDX
TM、NOVASEQ
TM、GENOME ANALYZER
TM、ISEQ
TMおよびその他の機器プラットフォームでの配列決定のためにイルミナが販売する市販のフローセルの表面で使用される。
【0179】
この例では、グラフト化は、フロースルー堆積(例えば、一時的に結合された蓋を使用する)、ダンクコーティング、スプレーコーティング、パドルディスペンシングによって、またはプライマー22を少なくともいくつかのくぼみ14、14’における官能化ポリマー層20に付着させる別の適切な方法によって達成されてよい。これらの例示的な技術のそれぞれは、プライマー、水、緩衝液、および触媒を含み得るプライマー溶液または混合物を利用することができ、本明細書に記載されるように実施されてよい。
【0180】
ダンクコーティングは、パターン化された支持体(そのくぼみ14内にポリマーコーティング層20を有する)を一連の温度制御された浴に沈めることを含んでいてよい。浴はまた、流量制御され、および/または窒素ブランケットで覆われてよい。浴は、プライマー溶液または混合物を含んでいてよい。様々な浴を通して、プライマー22は、少なくともいくつかのくぼみ14において、ポリマーコーティング層20の結合基に結合する。一例では、コーティングおよび研磨されたパターン化された支持体は、プライマー溶液または混合物を含む第1の浴に導入され、そこで反応が起こり、プライマーを結合させ、次に、パターン化された基板は、洗浄のために追加の浴に移される。パターン化された基板は、ロボットアームを使用して、または手動で浴から浴に移動されてよい。ダンクコーティングには乾燥システムを使用されてよい。
【0181】
スプレーコーティングは、プライマー溶液または混合物を、コーティングおよび研磨されたパターン化された支持体に直接スプレーすることによって達成されてよい。スプレーコーティングされたウェーハは、約0℃から約70℃の範囲の温度で、約4分から約60分の範囲の時間インキュベートされてよい。インキュベーション後、プライマー溶液または混合物は、例えば、スピンコーターを使用して希釈および除去されてよい。
【0182】
パドルディスペンシングは、プールおよびスピンオフ法に従って実施されてよく、したがって、スピンコーターを使用して達成されてよい。プライマー溶液または混合物は、コーティングおよび研磨されたパターン化された支持体に(手動でまたは自動化されたプロセスを介して)付与されてよい。付与されたプライマー溶液または混合物は、コーティングおよび研磨されたパターン化された支持体の表面全体に付与され、または広げられてよい。プライマーでコーティングされたパターン化された基板は、約0℃から約80℃の範囲の温度で、約2分から約60分の範囲の時間インキュベートされてよい。インキュベーション後、プライマー溶液または混合物は、例えば、スピンコーターを使用して希釈および除去されてよい。
【0183】
次に、
図1Fに示されるように、蓋26は、支持体12の結合領域25に結合されてよい。パターン化されたフローセル支持体12がウェーハである場合、蓋26の異なる領域はそれぞれウェーハを使用して形成されているフローチャネル30を少なくとも部分的に規定してよい。パターン化されたフローセル支持体12がダイである場合、蓋26は、形成されている/形成されている1つまたは複数のフローチャネル30を規定することができる。
【0184】
蓋26は、くぼみ14内の表面化学物質20、22に向けられる励起光に対して透明である任意の材料であってよい。例として、蓋26は、ガラス(例えば、ホウケイ酸塩、溶融シリカ等)、プラスチック等であってよい。適切なホウケイ酸ガラスの市販の例は、Schott North America、Inc.から入手可能なD263(R)である。適切なプラスチック材料、すなわちシクロオレフィンポリマーの市販の例は、Zeon ChemicalsL.P.から入手可能なZEONOR(R)製品である。
【0185】
いくつかの例では、蓋26は、結合領域25の形状に対応し、結合領域25に結合される側壁29と一体的に形成され得る。例えば、くぼみは、透明なブロックにエッチングされて、実質的に平面の(例えば、上部)部分27および実質的に平面の部分27から延びる側壁29を形成することができる。エッチングされたブロックがパターン化された基板12の結合領域に取り付けられると、凹部は流路30になることができる。
【0186】
他の例では、側壁29および蓋26は、互いに結合された別個の構成要素であってよい。例えば、蓋26は、少なくとも実質的に平面の外面と、流路30(パターン化された支持体12に一度結合されると)の一部(例えば、上部)を規定する少なくとも実質的に平面の内面とを有する実質的に長方形のブロックであってよい。ブロックは、パターン化されたフローセル基板12の結合領域25に結合され、フローチャネル30の側壁を形成する側壁29に取り付けられて(例えば、結合されて)よい。この例では、側壁29は、スペーサー層(以下に記載される)について本明細書に記載される材料のいずれかを含んでいてよい。
【0187】
蓋26は、レーザー結合、拡散結合、陽極結合、共晶結合、プラズマ活性化結合、ガラスフリット結合、または当技術分野で知られている方法のような任意の適切な技術を使用して、パターン化されたフローセル支持体12の結合領域25に結合されてよい。1つの例では、スペーサー層28が使用されて、蓋26を結合領域25に結合することができる。スペーサー層28は、パターン化された基板12の少なくともいくつかの格子間領域16(例えば、結合領域25)と蓋26を一緒にシールする任意の材料であってよい。
【0188】
1つ例では、スペーサー層28は、蓋26および/またはパターン化された支持体12によって透過される波長の放射線を吸収する放射線吸収材料であり得る。吸収されたエネルギーは、次に、スペーサー層28と蓋26、およびスペーサー層28とパターン化された基板12との間の結合を形成する。この放射線吸収材料の例は、約1064nmで吸収するデュポン(米国)の黒色KAPTON(登録商標)(カーボンブラックを含むポリアミド)である。波長を天然のポリイミド材料(例えば、480nm)によって著しく吸収される波長に変更しなければならないことを除いて、カーボンブラックを添加せずにポリイミドが使用され得ることを理解すべきである。別の例として、ポリイミドCEN JPは、532nmの光で照射されると結合され得る。スペーサー層28が放射線吸収材料である場合、スペーサー層28は、スペーサー層28が所望の結合領域25に接触するように、蓋26とパターン化された支持体12との間の界面に配置され得る。適切な波長のレーザーエネルギーが界面に付与される(すなわち、放射線吸収材料が照射される)間、圧迫(例えば、約100PSIの圧力)が付与されてよい。適切な結合を達成するために、レーザーエネルギーが上からも下からも界面に付与されてよい。
【0189】
別の例では、スペーサー層28は、それと接触している放射線吸収材料を含んでいてよい。放射線吸収材料は、スペーサー層28と蓋26との間の界面、ならびにスペーサー層28とパターン化されたフローセル支持体12との間の界面に付与されてよい。1つの例として、スペーサー層28は、ポリイミドであってよく、別個の放射線吸収材料はカーボンブラックであってよい。この例では、別個の放射線吸収材料が、スペーサー層28と蓋26との間、およびスペーサー層28とパターン化された支持体12との間の結合を形成するレーザーエネルギーを吸収する。この例では、適切な波長のレーザーエネルギーが界面に適用されている間(すなわち、放射線吸収材料が照射されている間)、圧迫がそれぞれの界面に付与されてよい。
【0190】
パターン化されたフローサポート12がウェーハである場合、スペーサー層28および(蓋26のまたはそれに接続された)側壁29は、1つのフローチャネル30を隣接するフローチャネル30から物理的に分離されてよく、ウェーハの周辺に配置されてよい。パターン化された支持体12がダイであり、形成されているフローセル10が単一のフローチャネル30またはレーンを含む場合、スペーサー層28および(蓋26のまたはそれに接続された)側壁29は、フローチャネル30を規定し、フローセル10をシールするために、ダイの周辺に配置されてよい。パターン化された支持体12がダイであり、形成されているフローセル10が、複数の隔離されたフローチャネル30(例えば、8つまたは4つのフローチャネル/レーン)を含む場合、スペーサー層28および(蓋26のまたはそれに接続された)側壁29は、1つのフローチャネル/レーン30を隣接するフローチャネル/レーン30から物理的に分離することができ、ダイの周辺に配置されてよい。しかしながら、スペーサー層28および側壁29は、実装に応じて、任意の所望の領域に配置され得ることが理解されるべきである。
【0191】
パターン化された支持体12がダイである場合、フローセル10の組み立ては、蓋26の結合を含んでいてよい。パターン化された支持体12がウェーハである場合、フローセル10の組み立ては、蓋26が結合された後にダイシングなどの追加の処理を含んでいてよい。1つの例において、蓋26は、パターン化されたウェーハに結合されてよく、ダイシングは、個々のフローセル10を形成する。本明細書で述べたように、ウェーハ上で、側壁29は、1つのフローチャネル30を隣接するフローチャネル30から物理的に分離してよく、したがって、ダイシングは、側壁29の少なくともいくつかを通して実施してよく、その結果、それぞれの個々のフローセル10は、望ましい数のフローチャネル30を含み、各フローチャネル30は、その周囲を取り囲む元の側壁29の一部を有する。別の例では、パターン化されたウェーハをさいの目に切って、蓋のないダイを形成することができ、これは、それぞれの蓋26をそれに結合して、個々のフローセル10を形成することができる。
【0192】
図1Fに示される例示的なフローセル10では、蓋26は、側壁29と一体的に形成された上部27を含む。側壁29は、スペーサー層28を通してパターン化された基板12の結合領域25に結合される。
【0193】
一緒に、蓋26およびパターン化されたフローセル基板12は、くぼみ14、14’と選択的に流体連絡しているフローチャネル30を規定する。流路30は、例えば、反応成分または反応物を表面化学物質20、22に選択的に導入して、くぼみ14、14’内で/くぼみ14、14’で指定された反応を開始するように機能し得る。
【0194】
配列決定操作を実行する前に、フローセル10は、ポリマーコーティング層20を現在の状態からより親水性の状態に(例えば、疎水性状態から親水性状態に)、中性状態から荷電状態へ、および/または折り畳み状態から伸長状態へ、遷移させるために、ポリマーコーティング層20の所定の刺激に暴露されてよい。使用される所定の刺激は、ポリマーコーティング層20およびそれが含む刺激応答性官能基に依存するであろう。ポリマーコーティング層20を所定の刺激に暴露することは、ポリマーコーティング層20を加熱すること;ポリマーコーティング層20を所定のpHの溶液に曝露すること;ポリマーコーティング層20を糖を含む溶液に曝露すること、ポリマーコーティング層20を求核剤に曝露すること;または、ポリマーコーティング層20を塩溶液に曝露することを含んでいてよい。蓋26が取り付けられている場合、ポリマーコーティング層20を任意の溶液に曝露することは、フロースループロセスによって達成されてよい。例えば、塩基性または酸性溶液、糖溶液(例えば、グルコース)、または塩溶液は、入力ポートを介してフローセルチャネル30に導入され、所望の特性変化を起こすのに十分な時間インキュベートされてよく、その後、出力ポートを介してチャネル30から除去されてよい。1つの例では、インキュベーション時間は数秒から数分であってよい。刺激応答性官能基が熱応答性である場合、フローセル10全体を加熱することができ、またはフロースループロセスを使用して、加熱された溶液がポリマーコーティング層20に曝露されてよい。
【0195】
所定の刺激は、ポリマーコーティング層20を、その後に実行される配列決定操作の条件により適合性にするであろう。
【0196】
所定のpHの溶液の例は、0.1M NaOH、TRIS-HCL緩衝液、または炭酸塩緩衝液などの塩基性溶液、またはクエン酸緩衝液(pH6)または2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)バッファーなどの酸性溶液を含んでいてよい。糖類溶液の例は、約1mMから約100mMの範囲の濃度を有するグルコース溶液を含む。塩溶液の例は、生理食塩水-クエン酸ナトリウム緩衝液およびリン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝液を含む。
【0197】
ここで、
図1Gおよび1Hにおいて、方法の別の例は、プライマー22がグラフトされる前に、蓋26をパターン化されたフローセル支持体12に結合することを含む。
【0198】
図1Gに示されるように、ポリマーコーティング層20は、
図1Dに記載されるように付与(例えば、堆積そして研磨)された。研磨された格子間領域16の少なくともいくつかは、結合領域25を規定してよく、蓋26は、結合領域25に結合されてよい。蓋26は、任意の材料であってよく、本明細書に記載の任意の構成を有していてよい。蓋26は、本明細書に記載の技術のいずれかを介して結合領域25に結合されてよい。
【0199】
図1Gに示される例では、蓋26は、側壁29と一体的に形成された上部27を含む。側壁29は、スペーサーを介してパターン化された基板12の結合領域25に結合される。蓋26が結合された後、流路30は、蓋26とパターン化された基板12との間に形成される。流路30は、様々な流体をフローセル10’(
図1H)に選択的に導入するように機能してよい。
【0200】
次に、この例では、プライマー22は、
図1Hに示されるように、くぼみ14内のポリマーコーティング層20にグラフトされる。本明細書に記載のプライマー22のいずれかが使用されてよい。フロースループロセスにおいて、本明細書に記載のプライマー溶液または混合物は、それぞれの入力ポート(図示せず)を介してフローチャネル30に導入されてよく、プライマー22が1つまたは複数のくぼみ14内のポリマーコーティング層20に付着するのに十分の間(すなわち、インキュベーション期間)フローチャネル30内に維持されてよく、次いで、それぞれの出力ポート(図示せず)から除去され得る。プライマー22の結合後、追加の流体がフローチャネル30を通して向けられてよく、現在機能化されているくぼみおよびフローチャネル30を洗浄する。
【0201】
配列決定操作を実行する前に、フローセル10’は、ポリマーコーティング層20を現在(例えば、より疎水性)の状態から現在の状態よりもより親水性の状態へ、中性状態から帯電状態へ、および/または折り畳み状態から伸長状態へ移行させるために、ポリマーコーティング層20の所定の刺激に曝されてよい。使用される所定の刺激は、ポリマーコーティング層20およびそれが含む刺激応答性官能基に依存するであろう。ポリマーコーティング層20を所定の刺激に曝すことは、ポリマーコーティング層20を加熱すること、ポリマーコーティング層20を所定のpHの溶液に曝露すること、ポリマーコーティング層20を糖を含む溶液に曝露すること、ポリマーコーティング層20を求核剤に曝露すること、または、ポリマーコーティング層20を塩溶液に曝露することを含んでいてよい。蓋26が取り付けられている場合、ポリマーコーティング層20を任意の溶液に曝露することは、本明細書で前述したようなフロースループロセスによって達成されてよい。刺激応答性官能基が熱応答性である場合、フローセル10’全体を加熱することができ、またはフロースループロセスを使用して、加熱された溶液がポリマーコーティング層20に曝露されてよい。
【0202】
所定の刺激は、ポリマーコーティング層20を、その後に実行される配列決定操作の条件により適合性にするであろう。
【0203】
他の例では、ポリマーコーティング層20を所定の刺激に曝露することは、プライマー22のグラフト化の前に行われ得る。
図1Eでプライマー22のグラフト化の前に所定の刺激曝露が行われる例では、ディップまたはダンクコーティングなどのフロースループロセス以外の技術を使用することができる。例えば、
図1Dに示されるシラン化、コーティング、および研磨されたパターン化された支持体は、塩基性または酸性溶液、糖溶液(例えば、グルコース)、または塩溶液に、所望の特性変化に十分な時間浸漬されてよい。別の例として、
図1Dに示されるシラン化、コーティング、および研磨されたパターン化された支持体は、状態遷移を開始するために所望の温度に加熱され得てよい。
図1Hでプライマー22のグラフト化の前に所定の刺激曝露が行われる例では、フロースループロセスをそのような曝露に使用することができる。別の例として、
図1Gに示されるように、蓋26が取り付けられたシラン化、コーティング、および研磨されたパターン化支持体は、状態遷移を開始するために所望の温度に加熱され得る。加熱は、水または緩衝液の存在下で行われてよい。
【0204】
上記のように、表面化学物質20、22はまた、パターン化されていない支持体に加えられてもよく、そしてこの例は、
図2Aから2Dを参照して説明される。パターン化されていない支持体12’の場合、連続表面は、
図1E、1Fおよび1Hのくぼみ14’に見られるのと同じ表面化学物質20、22を含むであろう。パターン化されていない基板12’がくぼみ14または格子間領域16を含まないことを除いて、本明細書に開示される支持体のいずれもパターン化されていない基板12’として使用されてよい。この例示的な方法では、蓋26(
図2Bに示される)は、最初にパターン化されていない基板12’に結合されて、流路30を形成する。蓋26は、本明細書に記載の任意の材料および任意の構成であってよい。蓋26はまた、本明細書に記載の技術のいずれかを介して、パターン化されていない基板12’に結合されてよい。
【0205】
図2Bに示される例では、蓋26は、側壁29と一体的に形成された上部27を含む。側壁29は、パターン化されていない基板12’の結合領域25にスペーサー層28を介して結合される。結合領域25は、パターン化されていない基板12’の周辺、または流路30の境界を形成することが望ましい任意の領域にあってもよい。他の例では、スペーサー層28は、側壁を形成してよく、少なくとも実質的に平面の蓋26に取り付けられてよい。
【0206】
蓋26(側壁29を含む)およびパターン化されていない基板12’は一緒になって、流路30を規定する。流路30は、例えば、表面化学物質20、22を形成するために、流体を選択的に導入してよく、ポリマーコーティング層20の状態遷移を開始するため、および/またはフローチャネル30内の他の指定された反応を開始するために、反応成分または反応物を表面化学物質20、22に選択的に導入してよい。
【0207】
ポリマーコーティング層20(
図2Cに示される)を形成する前に、この方法は、パターン化されていない基板12’を(フロースループロセスを介して)洗浄プロセス、および/または、刺激応答性ポリマーのその後の堆積のために、パターン化されていない基板12’の露出表面を準備する別のプロセス(例えば、シラン化)に暴露することを含んでいてもよい。
【0208】
パターン化されていない基板12’のシラン化は、
図2Bに示されている。この例では、シラン化は、シランまたはシラン誘導体18を、流路30に存在するパターン化されていないウェーハ表面12’の露出部分に付着させる。
【0209】
シラン化は、任意のシランまたはシラン誘導体18を使用して達成されてよい。シランまたはシラン誘導体18とポリマーコーティング層20との間に共有結合を形成することが望ましい場合があるため、シランまたはシラン誘導体18の選択は、ポリマーコーティング層20(
図2Cに示される)を形成するために使用される刺激応答性ポリマーに部分的に依存してよい。シランまたはシラン誘導体18を基板12’に付着させるために使用される方法は、フロースループロセスであってよい。
【0210】
図2Cに示されるように、この例では、フローチャネル30内において、ポリマーコーティング層20は、次に、シランまたはシラン誘導体18上に、またはパターン化されていな基板12’の露出表面を準備するために堆積された他の化学物質上に形成される。
【0211】
本明細書に記載の刺激応答性ポリマーのいずれかが使用されてよく、刺激応答性ポリマーの組み合わせが一緒に使用されてよい。1つの例では、ポリマーコーティング層の形成は、フロースループロセスによって達成されてよい。フロースループロセスにおいて、刺激応答性ポリマーは、それぞれの入力ポートを介してフローチャネル30に導入されてよく、そして硬化されてもよく、または硬化されなくてもよい。ポリマーコーティング層20は、パターン化されていない基板12’の露出面上に形成され、研磨は行われない。
【0212】
図2Dに示されるように、プライマー22は、フローチャネル30内のポリマーコーティング層20にグラフトされる。この例では、グラフトは、フロースループロセスによって達成されてよい。フロースループロセスにおいて、プライマー溶液または混合物は、それぞれの入力ポートを介してフローチャネル30に導入され得、プライマー22がポリマーコーティング層20の結合基に結合するための十分な時間(すなわち、インキュベーション期間)にわたってフローチャネル内に維持されてよい。次に、残りのプライマー溶液または混合物はそれぞれの出力ポートから除去されてよい。プライマーの結合後、追加の流体がフローチャネルを通して向けられてよく、現在機能化されたフローチャネル30を洗浄する。この例で得られたフローセル10’’を
図2Dに示す。
【0213】
配列決定操作を実行する前に、フローセル10’’は、ポリマーコーティング層20を現在の状態からより親水性の状態へ(例えば、疎水性状態から親水性状態へ、親水性状態からより親水性状態へ)、中性状態から帯電状態へ、および/または崩壊状態から拡張状態へ遷移させるために、ポリマーコーティング層20の所定の刺激に曝されてよい。使用される所定の刺激は、ポリマーコーティング層20およびそれが含む刺激応答性官能基に依存するであろう。ポリマーコーティング層20を所定の刺激に曝すことは、ポリマーコーティング層20を加熱すること;ポリマーコーティング層20を所定のpHの溶液に曝露すること;ポリマーコーティング層20を糖を含む溶液に曝露すること;ポリマーコーティング層20を求核剤に曝露すること;またはポリマーコーティング層20を塩溶液に曝露すること含んでいてよい。蓋26が取り付けられているので、ポリマーコーティング層20を任意の溶液に曝露することは、本明細書で前述したようなフロースループロセスによって達成することができる。刺激応答性官能基が熱応答性である場合、フローセル10’’全体を加熱することができ、またはフロースループロセスを使用して、加熱された溶液がポリマーコーティング層20に曝露されてよい。
【0214】
所定の刺激は、ポリマーコーティング層20を、その後に実行される配列決定操作の条件により適合性にするであろう。配列決定操作は、DNAまたはRNAのサンプル中のヌクレオチドの順序を決定するプロセスである。1つの例では、配列決定操作は、合成による配列決定であり、ヌクレオチドがテンプレート鎖に付加されるときに蛍光標識された可逆的ターミネーターを画像化することと、次に、次の塩基の組み込みを可能にするために蛍光標識された可逆的ターミネーターを切断することとを含む。
【0215】
フローセル10’’を使用する他の例では、ポリマーコーティング層20を所定の刺激に曝露することは、プライマー22のグラフト化の前に行われ得る。この場合も、ポリマーコーティング層20を塗布する前に蓋26が取り付けられているので、フロースループロセスが所定の刺激の曝露に使用されてよい。別の例として、
図2Cに示されるように、シラン化およびコーティングされたパターン化されていない支持体は、状態遷移を開始するために所望の温度に加熱されてよい。加熱は、水性環境(例えば、水または緩衝液)で達成され得る。
【0216】
図示されていないが、パターン化支持体12またはパターン化されていない支持体12’は、それぞれのフローチャネル(例えば、試薬カートリッジまたは他の流体貯蔵システムから)に、およびフローチャネルから(例えば、廃棄物除去システムへ)、流体を向けるための他のポート(図示せず)と流体的に係合する入口および出口ポートを含み得ることが理解されるべきである。
【0217】
また、図示されていないが、機能化された支持体(その上に表面化学物質20、22を有する)は、蓋26に結合される代わりに、その上に表面化学物質20、22を有する別の機能化された基板に結合されてもよいことが理解されるべきである。2つの機能化された表面は互いに向き合うことができ、それらの間に定義された流路を有することができる。スペーサー層および適切な結合方法が使用されて、2つの機能化された基板を一緒に結合することができる。
【0218】
本明細書に開示されるフローセル10、10’、10’’は、合成による配列決定(SBS)、サイクリックアレイ配列決定、ライゲーションによる配列決定、パイロシーケンスなどと、しばしば呼ばれる技術を含む、様々な配列決定アプローチまたは技術で使用されてよい。これらの技術のいずれかで、およびパターン化された支持体12を使用する例では、ポリマーコーティング層20および付着したプライマー22は、機能化されたくぼみ(すなわち、表面化学物質20、22を有する14、14’)に存在し、格子間領域16には存在しないことから、増幅は機能化されたくぼみに限定される。配列決定は、一般に、核酸テンプレートをフローセルにハイブリダイズすること、核酸テンプレートを増幅すること、およびヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドが増幅された核酸テンプレートと結合するときのシグナルを検出することを含む。
【0219】
1つの例として、合成による配列決定(SBS)反応は、イルミナ(カリフォルニア州サンディエゴ)の、HISEQ(TM)、HISEQX(TM)、MISEQ(TM)、MISEQDX(TM)、MINISEQ(TM)、NOVASEQ(TM)、NEXTSEQX(TM)、またはNEXTSEQ(TM)シーケンサーシステムなどのシステムで実行されてよい。
【0220】
SBS配列決定操作は、一般に、核酸ライブラリーテンプレートをフローセル支持体12に導入すること、それにより核酸ライブラリーテンプレートはポリマーコーティング層20に結合したプライマー22にハイブリダイズする;ハイブリダイズした核酸ライブラリーテンプレートから核酸テンプレート鎖を生成すること;核酸テンプレート鎖のアダプターに相補的な配列決定プライマーを導入すること;蛍光標識ヌクレオチドおよびポリメラーゼをフローセル支持体12に導入すること、それにより蛍光標識ヌクレオチドの1つが組み込まれて、核酸テンプレート鎖に沿って配列決定プライマーを伸長する;および組み込まれた蛍光標識ヌクレオチドの1つからの蛍光シグナルを検出することを含む。
【0221】
SBSでは、複数の核酸ライブラリーテンプレートがフローセル10、10’、10’’に導入されてよい。複数の核酸ライブラリーテンプレートは、例えば、フローセル10、10’、10’’に固定化された2種類のプライマー22のうちの1つにハイブリダイズする。クラスター生成の1つの例では、核酸ライブラリーテンプレートは、高忠実度のDNAポリメラーゼを使用して、ハイブリダイズしたプライマー22から3’伸長によってコピーされる。元の核酸ライブラリーテンプレートは変性され、プライマー22が位置する場所にコピーが固定化されたままになる。固定化されたコピーを増幅するために等温ブリッジ増幅が使用されてよい。例えば、コピーされたテンプレートはループオーバー(loop over)して隣接する相補的プライマー22にハイブリダイズし、ポリメラーゼはコピーされたテンプレートをコピーして二本鎖ブリッジを形成し、これは変性して2つの一本鎖を形成する。これらの2本の鎖はループオーバーして隣接する相補的プライマー22にハイブリダイズし、再び伸長して2本の新しい二本鎖ループを形成する。このプロセスは、等温変性と増幅のサイクルによって各テンプレートコピーで繰り返され、高密度のクローンクラスターを作成する。1つの例では、リバース鎖は特定の塩基切断によって除去され、フォワードテンプレート鎖が残る。
【0222】
テンプレートの3’末端および任意のプライマー22は、望ましくないプライミングを防ぐためにブロックすることができる。シーケンシングプライマーは、フローセル10、10’、10’’に導入され得る。シーケンシングプライマーは、核酸テンプレート鎖のアダプターに相補的であるため、アダプター(例えば、テンプレートのリード1シーケンシングプライマー)にハイブリダイズする。
【0223】
核酸テンプレート(例えば、フォワードテンプレートポリヌクレオチド鎖)に沿った核酸プライマー(例えば、配列決定プライマー)の伸長はモニターされ、テンプレート中のヌクレオチドの配列を決定する。基礎となる化学的プロセスは、ポリメリゼーション(例えば、ポリメラーゼ酵素によって触媒される)またはライゲーション(例えば、リガーゼ酵素によって触媒される)であり得る。特定のポリメラーゼベースのSBSプロセスでは、蛍光標識されたヌクレオチドがテンプレートに依存する方法でテンプレートに追加され(これにより、シーケンスプライマーを伸長する)、シーケンスプライマーに追加されたヌクレオチドの順序と種類の検出がテンプレートの配列の決定に使用され得る。例えば、第1のSBSサイクルを開始するために、1つ以上の標識ヌクレオチド、DNAポリメラーゼなどが、それに結合したテンプレート鎖を有するプライマー22のアレイを収容するフローチャネル30など、の中に/を介して送達され得る。プライマー伸長のシーケンシングは、標識ヌクレオチドを組み込ませて、この取り込みはイメージングイベントを通じて検出され得る。イメージングイベント中に、照明システム(図示せず)は、フローセル10、10’、10’’に励起光を提供することができる。
【0224】
いくつかの例において、ヌクレオチドは、ヌクレオチドが添加されると、さらなる配列決定プライマー伸長を終結させる可逆的終端特性をさらに含むことができる。例えば、可逆的ターミネーター部分を有するヌクレオチド類縁体を、テンプレート鎖に沿って配列決定プライマーに加えることができ、その結果、非ブロック剤が送達されてその部分を除去するまで、その後の伸長は起こり得ない。したがって、可逆的終端を使用する例の場合、非ブロック試薬をフローチャネル30などに送達することができる(検出が行われる前または後に)。
【0225】
洗浄は、様々な流体送達ステップの間に行われてよい。次に、SBSサイクルはn回繰り返されて、シーケンシングプライマーをnヌクレオチド延長し、それによって長さnの配列を検出することができる。
【0226】
SBSが詳細に記載されているが、本明細書に記載のフローセル10、10’、10’’は、遺伝子型決定のための、または他の化学的および/または生物学的用途におけるフローセルに基づくライブラリー調製などの他の配列決定プロトコルと共に利用されてもよいことが理解されるべきである。
【0227】
本開示をさらに説明するために、例および先見的な例が本明細書に与えられる。これらの例は、例示の目的で提供されており、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことが理解されるべきである。
非限定的な実例と予言的な例
実施例1.糖応答性の切り替え可能なヘテロポリマー(ボロン酸)の合成。
【化33】
【0228】
BrAPA(N-(5-ブロモアセトアミジルペンチル)アクリルアミド)、アジ化ナトリウム、およびジメチルホルムアミド(DMF)の混合物をDrySyn浴に入れ、溶液を窒素雰囲気下、20℃で3時間撹拌しながら加熱し、AzAPA(N-(5-アジドアセトアミジルペンチル)アクリルアミド)を生成した。アクリルアミドと3-(アクリルアミド)フェニルボロン酸を脱イオン水に溶解した。次に、調製したAzAPA溶液をアクリルアミド/3-(アクリルアミド)フェニルボロン酸溶液に加え、完全に混合してから、0.2μmフィルターでろ過した。次に、濾過した溶液を、スターラーバーを備えた500mLの丸底フラスコに移し、窒素を混合物に30分間バブリングした。アクリルアミド/AzAPAプレミックスを脱気しながら、脱イオン水中の過硫酸カリウムの必要量を調製し、モノマーの混合物に移した。次に、混合物を共開始剤TEMED(テトラメチルエチレンジアミン)で処理した。溶液を窒素下、35℃で1.5時間撹拌した。重合の終わりに、窒素ガスラインを取り外して、反応フラスコを空気にさらした。次に、粗混合物をゆっくりと2-プロパノールに加えた。次に、粗ポリマーを濾過により単離した。