IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リンテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-粘着シート 図1
  • 特許-粘着シート 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-26
(45)【発行日】2025-04-03
(54)【発明の名称】粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20250327BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20250327BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20250327BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20250327BHJP
【FI】
C09J7/38
B32B27/00 M
C09J133/04
G02B5/02 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021033611
(22)【出願日】2021-03-03
(65)【公開番号】P2022134474
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】福島 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 洋一
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-104602(JP,A)
【文献】特開2017-043678(JP,A)
【文献】特開2004-177781(JP,A)
【文献】特開2000-221308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 27/00
G02B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光拡散微粒子を含有する光拡散粘着剤層と、光拡散微粒子を含有しない透明粘着剤層とを備えた複合型粘着剤層を有する粘着シートであって、
前記透明粘着剤層側の表面にて測定したダイナミック硬さ(DHT115-1)が、0.007以上であり、
前記複合型粘着剤層のヘイズ値が、70%以上、99%以下であり、
前記透明粘着剤層を構成する粘着剤が、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)とを含有する粘着性組成物を架橋してなり、
前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として、分子内に脂環式構造を有するモノマーを含有する
ことを特徴とする粘着シート。
【請求項2】
前記光拡散粘着剤層側の表面にて測定したダイナミック硬さ(DHT115-1)が、0.007以上であることを特徴とする請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記透明粘着剤層側の面のソーダライムガラスに対する粘着力が、1N/25mm以上、80N/25mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記光拡散粘着剤層側の面のソーダライムガラスに対する粘着力が、1N/25mm以上、80N/25mm以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記複合型粘着剤層の厚さが、70μm以上、3000μm以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項6】
2枚の剥離シートを備えており、
前記複合型粘着剤層が、前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持されている
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項7】
2枚の硬質板を貼合するのに用いられることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散性を有する粘着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイの一種として、映像を立体的に表示する立体画像表示装置が提案されており、その中でも、2枚の液晶セルを重ねた構造の液晶表示装置が知られている(特許文献1等)。かかる液晶表示装置では、各液晶セルにおける画像の輝度を操作したり、両目にそれぞれ異なる光の情報を送ることにより、映像を立体的に表示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-114371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような液晶表示装置においては、表示画像の高精細化に伴い、液晶セル同士の干渉に伴ってモアレが発生し易く、表示画像が見難くなるという問題が生じる。また、液晶表示装置等の表示装置においては、表示画像にムラがないことが要求されるとともに、特に車載用途等で使用される場合には、高温高湿環境下において高い耐久性が要求される。
【0005】
本発明は、上記のような実状に鑑みてなされたものであり、例えば2枚の液晶セルを貼合した場合にモアレおよび画像の表示ムラが発生し難く、耐久性にも優れる粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、光拡散微粒子を含有する光拡散粘着剤層と、光拡散微粒子を含有しない透明粘着剤層とを備えた複合型粘着剤層を有する粘着シートであって、前記透明粘着剤層側の表面にて測定したダイナミック硬さ(DHT115-1)が、0.007以上であり、前記複合型粘着剤層のヘイズ値が、70%以上、99%以下であることを特徴とする粘着シートを提供する(発明1)。
【0007】
上記発明(発明1)に係る粘着シートによれば、上記の構成および物性を有することにより、例えば2枚の液晶セルを貼合した場合に、モアレおよび画像の表示ムラが発生し難く、耐久性にも優れる。
【0008】
上記発明(発明1)においては、前記光拡散粘着剤層側の表面にて測定したダイナミック硬さ(DHT115-1)が、0.007以上であることが好ましい(発明2)。
【0009】
上記発明(発明1,2)においては、前記透明粘着剤層側の面のソーダライムガラスに対する粘着力が、1N/25mm以上、80N/25mm以下であることが好ましい(発明3)。
【0010】
上記発明(発明1~3)においては、前記光拡散粘着剤層側の面のソーダライムガラスに対する粘着力が、1N/25mm以上、80N/25mm以下であることが好ましい(発明4)。
【0011】
上記発明(発明1~4)においては、前記複合型粘着剤層の厚さが、70μm以上、3000μm以下であることが好ましい(発明5)。
【0012】
上記発明(発明1~5)においては、2枚の剥離シートを備えており、前記複合型粘着剤層が、前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持されていることが好ましい(発明6)。
【0013】
上記発明(発明1~6)においては、2枚の硬質板を貼合するのに用いられることが好ましい(発明7)。
【0014】
第2に本発明は、光拡散微粒子を含有する光拡散粘着剤層と、光拡散微粒子を含有しない透明粘着剤層とを備えた複合型粘着剤層を有する粘着シートであって、前記透明粘着剤層の貯蔵せん断弾性率G’が、0.07MPa以上、10MPa以下であり、前記複合型粘着剤層のヘイズ値が、70%以上、99%以下であることを特徴とする粘着シートを提供する(発明8)。
【0015】
上記発明(発明8)においては、前記光拡散粘着剤層の貯蔵せん断弾性率G’が、0.07MPa以上、10MPa以下であることが好ましい(発明9)。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る粘着シートによれば、例えば2枚の液晶セルを貼合した場合に、モアレおよび画像の表示ムラが発生し難く、耐久性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る粘着シートの断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る液晶表示部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔粘着シート〕
本発明の一実施形態に係る粘着シートは、光拡散微粒子を含有する光拡散粘着剤層と、光拡散微粒子を含有しない透明粘着剤層とを備えた複合型粘着剤層を有する。なお、本明細書における「光拡散微粒子を含有しない」とは、「光拡散微粒子を実質的に含有しない」の意味であり、光拡散微粒子を全く含有しない他、本実施形態における効果を損なわない量で光拡散微粒子を含有する場合も含まれる。その量は、0.1質量%以下であることが好ましく、特に0.01質量%以下であることが好ましく、さらには0.001質量%以下であることが好ましく、0質量%であることが最も好ましい。
【0019】
本実施形態に係る粘着シートにおいては、上記透明粘着剤層側の表面にて測定したダイナミック硬さ(DHT115-1;以下省略する場合がある)が、0.007以上であることが好ましく、また、上記複合型粘着剤層のヘイズ値が、70%以上、99%以下であることが好ましい。なお、本明細書におけるダイナミック硬さ(DHT115-1)の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。本明細書におけるヘイズ値は、JIS K7136:2000に準じて測定した値とする。
【0020】
本実施形態に係る粘着シートにおいては、上記ダイナミック硬さが0.007以上であることにより、高温高湿条件下において耐久性に優れたものとなる。例えば、本実施形態に係る粘着シートの複合型粘着剤層を介して2枚の液晶セル(試験としてはガラス板)を貼合して得られる積層体においては、高温高湿条件下、例えば、60℃、95%RH条件下に1000時間置いた場合でも、複合型粘着剤層と液晶セル(ガラス板)との界面に気泡や剥がれが発生することが抑制される。
【0021】
ここで、硬質体である液晶セル同士を粘着剤層により貼合する場合、いずれも柔軟性がないため、粘着剤層が層厚方向に圧縮され、粘着剤層内に当該圧縮の応力が蓄えられることとなる。この残留応力が反発力となって、2枚の液晶セルに作用することになる。粘着剤層が光拡散粘着剤層からなる場合、当該反発力は、当該光拡散粘着剤層の液晶セルと接する表面積当たりの光拡散微粒子の存在密度(濃淡)により強弱(ムラ)が生じるものと推定される。このようにして生じる液晶セルに対する粘着剤層の反発力のムラが、液晶セルの配向を乱し、表示画像にムラを発生させるものと推定される。本実施形態に係る粘着シートでは、粘着剤層表面から当該粘着剤層の厚さ方向にかけての局所的な弾性挙動を表すダイナミック硬さで粘着剤層の物性を規定することにより、上記の表示画像のムラを抑制することができる。
【0022】
また、本実施形態に係る粘着シートの複合型粘着剤層のように、光拡散粘着剤層とは別に光拡散微粒子を有しない透明粘着剤層が存在すると、2枚の硬質板である液晶セルの圧縮に対する光拡散粘着剤層の光拡散微粒子の存在密度による応力ムラを、上記透明粘着剤層で緩和させることができるものと推定される。これにより、表示画像にムラが発生することをより効果的に抑制することができる。すなわち、光拡散粘着剤層以外に、上記のように透明粘着剤層を有することにより、液晶セル同士の貼合による画像表示ムラの防止性が向上する。
【0023】
また、本実施形態に係る粘着シートにおいては、複合型粘着剤層のヘイズ値が、70%以上であることにより、当該複合型粘着剤層を使用して2枚の液晶セルを貼合したときに、モアレが発生し難くなり、画像表示ムラもさらに発生し難くなる。上記複合型粘着剤層のヘイズ値が99%以下であることにより、液晶セルによる表示画像の視認性が確保される。
【0024】
上記透明粘着剤層側の表面にて測定したダイナミック硬さは、上述した耐久性の観点から、0.007以上であることが好ましく、0.009以上であることがより好ましく、特に0.011以上であることが好ましく、さらには0.012以上であることが好ましい。また、上記ダイナミック硬さは、表示ムラ防止の観点から、10以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましく、特に0.1以下であることが好ましく、さらには0.05以下であることが好ましい。
【0025】
複合型粘着剤層のヘイズ値は、モアレの発生抑制の観点から、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、特に84%以上であることがより好ましく、さらには87%以上であることが好ましく、90%以上であることが最も好ましい。また、複合型粘着剤層のヘイズ値は、表示画像の視認性の観点から、99%以下であることが好ましく、98%以下であることがより好ましく、特に97%以下であることが好ましい。
【0026】
光拡散粘着剤層側の表面にて測定したダイナミック硬さは、0.007以上であることが好ましく、0.009以上であることがより好ましく、特に0.010以上であることが好ましく、さらには0.011以上であることが好ましい。これにより、前述した積層体における耐久性がより優れたものとなる。一方、上記ダイナミック硬さは、表示ムラ防止の観点から、10以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましく、特に0.1以下であることが好ましく、さらには0.05以下であることが好ましい。
【0027】
上記透明粘着剤層の貯蔵せん断弾性率G’および上記光拡散粘着剤層の貯蔵せん断弾性率G’は、それぞれ後述する実施形態で規定する範囲にあることが好ましい。これにより、上記ダイナミック硬さが上述した範囲に入り易くなる。なお、本明細書における貯蔵せん断弾性率G’の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0028】
上記透明粘着剤層を構成する粘着剤のゲル分率は、30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、特に50%以上であることが好ましく、さらには55%以上であることが好ましい。また、当該ゲル分率は、90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、特に70%以下であることが好ましく、さらには60%以下であることが好ましい。上記ゲル分率が上記の範囲にあることにより、透明粘着剤層の上記ダイナミック硬さおよび貯蔵せん断弾性率G’が好ましい範囲となり易い。なお、本明細書における粘着剤のゲル分率の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0029】
上記光拡散粘着剤層を構成する粘着剤のゲル分率は、30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、特に50%以上であることが好ましく、さらには55%以上であることが好ましい。また、当該ゲル分率は、90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、特に70%以下であることが好ましく、さらには65%以下であることが好ましい。上記ゲル分率が上記の範囲にあることにより、光拡散粘着剤層の上記ダイナミック硬さおよび貯蔵せん断弾性率G’が好ましい範囲となり易い。
【0030】
本実施形態において、複合型粘着剤層は、光拡散粘着剤層および透明粘着剤層の2層からなってもよいし、透明粘着剤層、光拡散粘着剤層および透明粘着剤層をその順に積層してなる3層からなってもよい。本実施形態における複合型粘着剤層の好ましい一例は、光拡散粘着剤層および透明粘着剤層の2層からなるものであり、以下、図面を参照して説明する。
【0031】
図1に示すように、本実施形態に係る粘着シート1は、2枚の剥離シート3a,3bと、それら2枚の剥離シート3a,3bの剥離面と接するように当該2枚の剥離シート3a,3bに挟持された複合型粘着剤層2とから構成される。ただし、粘着シート1において剥離シート3a,3bは必須の構成要素ではなく、粘着シート1の使用時に剥離・除去されるものである。なお、本明細書における剥離シートの剥離面とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面をいい、剥離処理を施した面および剥離処理を施さなくても剥離性を示す面のいずれをも含むものである。
【0032】
本実施形態における複合型粘着剤層2は、剥離シート3aに接する光拡散粘着剤層21と、剥離シート3bに接する透明粘着剤層22との2層からなる。
【0033】
1.各要素
1-1.複合型粘着剤層
本実施形態における複合型粘着剤層2の光拡散粘着剤層21および透明粘着剤層22を構成する粘着剤の種類は、所望の物性が得られる限り、特に限定されない。例えば、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等のいずれであってもよい。また、当該粘着剤は、エマルション型、溶剤型または無溶剤型のいずれでもよく、架橋タイプまたは非架橋タイプのいずれであってもよい。それらの中でも、粘着物性、光学特性等に優れるアクリル系粘着剤が好ましい。アクリル系粘着剤としては、架橋タイプのものが好ましく、さらには熱架橋タイプのものが好ましい。
【0034】
光拡散粘着剤層21を構成する粘着剤および透明粘着剤層22を構成する粘着剤は、互いに同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよいが、いずれもアクリル系粘着剤、特に活性エネルギー線非硬化性のアクリル系粘着剤であることが好ましい。これにより、前述した物性(ダイナミック硬さおよび貯蔵せん断弾性率G’)が満たされ易くなる。その場合、光拡散微粒子以外の組成は同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、主ポリマーのモノマー組成は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0035】
以下、光拡散粘着剤層21を構成する粘着剤および透明粘着剤層22を構成する粘着剤が、いずれも活性エネルギー線非硬化性のアクリル系粘着剤である場合について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0036】
光拡散粘着剤層21を構成する粘着剤および透明粘着剤層22を構成する粘着剤は、ポリマー同士の凝集力をより強くする観点から、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)とを含有する粘着性組成物(以下「粘着性組成物P」という場合がある。)を架橋してなるものであることが好ましい。光拡散粘着剤層21の場合には、粘着性組成物Pは、さらに光拡散微粒子(C)を含有する。
【0037】
かかる粘着性組成物Pから得られる粘着剤は、前述した物性(ダイナミック硬さ,貯蔵せん断弾性率G’)を満たし易く、また、所望の光学特性、粘着力等を発揮し得る。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語も同様である。また、「重合体」には「共重合体」の概念も含まれるものとする。
【0038】
(1)粘着性組成物の成分
(1-1)(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)
本実施形態における(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、架橋剤(B)と反応する反応性基を分子内に有する反応性基含有モノマーを含むことが好ましい。この反応性基含有モノマー由来の反応性基が架橋剤(B)と反応して、架橋構造(三次元網目構造)が形成され、所望の凝集力を有する粘着剤が得られる。
【0039】
上記反応性基含有モノマーとしては、分子内に水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)、分子内にカルボキシ基を有するモノマー(カルボキシ基含有モノマー)、分子内にアミノ基を有するモノマー(アミノ基含有モノマー)などが好ましく挙げられる。これらの中でも、架橋剤(B)との反応性に優れる水酸基含有モノマーまたはカルボキシ基含有モノマーが好ましい。
【0040】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)における水酸基の架橋剤(B)との反応性および他の単量体との共重合性の点から、炭素数が1~4のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが好ましい。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が好ましく挙げらる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)におけるカルボキシ基の架橋剤(B)との反応性および他の単量体との共重合性の点からアクリル酸が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸n-ブチルアミノエチル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、このアミノ基含有モノマーからは、後述の窒素原子含有モノマーは除かれる。
【0043】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、反応性基含有モノマーを、下限値として1質量%以上含有することが好ましく、7質量%以上含有することがより好ましく、特に13質量%以上含有することが好ましく、さらには22質量%以上含有することが好ましく、26質量%以上含有することが最も好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、反応性基含有モノマーを、上限値として45質量%以下含有することが好ましく、40質量%以下含有することがより好ましく、特に35質量%以下含有することが好ましく、さらには30質量%以下含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)がモノマー単位として上記の量で反応性基含有モノマーを含有すると、得られる粘着剤において良好な架橋構造が形成され、ダイナミック硬さや貯蔵せん断弾性率G’を好ましい範囲に設定し易くなる。また、光拡散微粒子(C)を含有する場合、得られる粘着剤中における光拡散微粒子(C)の分散性が良好になる傾向がある。
【0044】
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、カルボキシ基含有モノマーを含まないことも好ましい。カルボキシ基は酸成分であるため、カルボキシ基含有モノマーを含有しないことにより、粘着剤の貼付対象に、酸により不具合が生じるもの、例えばスズドープ酸化インジウム(ITO)等の透明導電膜や金属膜などが存在する場合にも、酸によるそれらの不具合(腐食、抵抗値変化等)を抑制することができる。ただし、かかる不具合が生じない程度に、カルボキシ基含有モノマーを所定量含有することは許容される。具体的には、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中に、モノマー単位として、カルボキシ基含有モノマーを0.1質量%以下、好ましくは0.01質量%以下、さらに好ましくは0.001質量%以下の量で含有することが許容される。
【0045】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することが好ましい。これにより、良好な粘着性を発現することができる。アルキル基は、直鎖状または分岐鎖状であってもよい。
【0046】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、粘着性の観点から、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。中でも、粘着性をより向上させる観点から、アルキル基の炭素数が4~8の(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、または(メタ)アクリル酸イソオクチルが特に好ましい。なお、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを20質量%以上含有することが好ましく、30質量%以上含有することがより好ましく、特に40質量%以上含有することが好ましく、さらには45質量%以上含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量の下限値が上記であると、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は好適な粘着性を発揮することができる。また、光拡散微粒子(C)を含有する場合、光拡散微粒子(C)の粘着剤中への分散性を良好にできる傾向があり、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が所望の粘着性を損なうことが抑制される。一方、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを90質量%以下含有することが好ましく、80質量%以下含有することがより好ましく、特に70質量%以下含有することが好ましく、さらには60質量%以下含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量の上限値が上記であると、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中に反応性官能基含有モノマー等の他のモノマー成分を好適な量導入することができる。
【0048】
上記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、分子内に脂環式構造を有するモノマー(脂環式構造含有モノマー)を含有することも好ましい。脂環式構造含有モノマーは、重合体のガラス転移温度を上昇させ、得られる粘着剤のダイナミック硬さおよび貯蔵せん断弾性率G’を増加させる。また、脂環式構造含有モノマーは嵩高いため、これを重合体中に存在させることにより、重合体同士の間隔を広げるものと推定され、塗工液粘度を低減し、粘着剤層の厚膜化が容易となる。
【0049】
脂環式構造含有モノマーにおける脂環式構造の炭素環は、飽和構造のものであってもよいし、不飽和結合を一部に有するものであってもよい。また、脂環式構造は、単環の脂環式構造であってもよいし、多環の脂環式構造であってもよい。上記の観点から、多環の脂環式構造(多環構造)であることが好ましく、二環から四環の多環構造であることが特に好ましい。また、上記の観点から、脂環式構造の炭素数(環を形成している部分の全ての炭素数をいい、複数の環が独立して存在する場合には、その合計の炭素数をいう)は、5~15であることが好ましく、7~10であることが特に好ましい。
【0050】
上記脂環式構造含有モノマーとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル等が挙げられ、中でも、より優れた耐久性を発揮する、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル(脂環式構造の炭素数:10)、(メタ)アクリル酸アダマンチル(脂環式構造の炭素数:10)または(メタ)アクリル酸イソボルニル(脂環式構造の炭素数:7)が好ましく、特に(メタ)アクリル酸イソボルニルが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として脂環式構造含有モノマーを含有する場合、当該脂環式構造含有モノマーを1質量%以上含有することが好ましく、特に5質量%以上含有することが好ましく、さらには7質量%以上含有することが好ましい。また、脂環式構造含有モノマーの含有量を20質量%以下とすることが好ましく、特に15質量%以下とすることが好ましく、さらには10質量%以下とすることが好ましい。脂環式構造含有モノマーの含有量が上記の範囲にあることにより、ダイナミック硬さおよび貯蔵せん断弾性率G’を好ましい範囲に調節し易くなる。
【0052】
上記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、窒素原子含有モノマーを含有することも好ましい。窒素原子含有モノマーを構成単位として重合体中に存在させることにより、粘着剤に所定の極性を付与し、ガラスのようなある程度の極性を有する被着体に対しても、親和性に優れたものとすることができる。上記窒素原子含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)に適度な剛性を持たせる観点から、窒素含有複素環を有するモノマーが好ましい。また、構成される粘着剤の高次構造中で上記窒素原子含有モノマー由来部分の自由度を高める観点から、当該窒素原子含有モノマーは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を形成するための重合に使用される1つの重合性基以外に反応性不飽和二重結合基を含有しないことが好ましい。
【0053】
窒素含有複素環を有するモノマーとしては、例えば、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-(メタ)アクリロイルアジリジン、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、2-ビニルピラジン、1-ビニルイミダゾール、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルフタルイミド等が挙げられ、中でも、より優れた粘着力を発揮するN-(メタ)アクリロイルモルホリンが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として窒素原子含有モノマーを含有する場合、当該窒素原子含有モノマーを1質量%以上含有することが好ましく、特に3質量%以上含有することが好ましく、さらには5質量%以上含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、窒素原子含有モノマーを20質量%以下含有することが好ましく、特に15質量%以下含有することが好ましく、さらには10質量%以下含有することが好ましい。窒素原子含有モノマーの含有量が上記の範囲内にあると、得られる粘着剤が、ガラスに対する優れた粘着力を十分に発揮することができる。
【0055】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、所望により、当該重合体を構成するモノマー単位として、他のモノマーを含有してもよい。他のモノマーとしては、反応性官能基含有モノマーの前述した作用を阻害しないためにも、反応性官能基を含有しないモノマーが好ましい。かかるモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、直鎖状のポリマーであることが好ましい。直鎖状のポリマーであることにより、分子鎖の絡み合いが起こりやすくなり、凝集力の向上が期待できるため、高温高湿条件下での耐久性に優れた粘着剤が得られ易い。
【0057】
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、溶液重合法によって得られた溶液重合物であることが好ましい。溶液重合物であることにより、高分子量のポリマーが得られやすくなり、凝集力の向上が期待できるため、高温高湿条件下での耐久性に優れた粘着剤が得られ易い。
【0058】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0059】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量は、20万以上であることが好ましく、30万以上であることがより好ましく、40万以上であることが特に好ましく、50万以上であることがさらに好ましい。これにより、得られる粘着剤のダイナミック硬さおよび貯蔵せん断弾性率G’を高めることができる。
【0060】
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量は、上限値として150万以下であることが好ましく、120万以下であることがより好ましく、特に100万以下であることが好ましく、さらには80万以下であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量の上限値が上記であると、得られる粘着剤のダイナミック硬さおよび貯蔵せん断弾性率G’の値を低下できるとともに、粘着剤層の厚膜化が容易となる。本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0061】
なお、粘着性組成物Pにおいて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
(1-2)架橋剤(B)
架橋剤(B)としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する反応性基と反応するものであればよく、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤等が挙げられる。上記の中でも、水酸基およびカルボキシ基との反応性に優れたイソシアネート系架橋剤、あるいはカルボキシ基との反応性に優れたエポキシ系架橋剤を使用することが好ましい。なお、架橋剤(B)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0063】
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。中でも水酸基との反応性の観点から、トリメチロールプロパン変性の芳香族ポリイソシアネート、特にトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートおよびトリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネートが好ましい。
【0064】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等が挙げられる。中でもカルボキシ基との反応性の観点から、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンが好ましい。
【0065】
粘着性組成物P中における架橋剤(B)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.05質量部以上であることが好ましく、さらには0.1質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、特に1質量部以下であることが好ましく、さらには0.4質量部以下であることが好ましい。架橋剤(B)の含有量が上記範囲にあることで、得られる粘着剤の前述した物性や粘着力等が好適なものとなり易い。
【0066】
(1-3)光拡散微粒子(C)
光拡散微粒子(C)は、得られる光拡散粘着剤層21を有する複合型粘着剤層2が前述したヘイズ値を満たすことができるものであればよい。
【0067】
上記光拡散微粒子としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、クレー、タルク、二酸化チタン等の無機系微粒子;アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂等の有機系の透光性微粒子;シリコーン樹脂のような無機と有機の中間的な構造を有するケイ素含有化合物からなる微粒子(例えばモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製のトスパールシリーズ)などが挙げられる。中でも、アクリル樹脂微粒子、および無機と有機の中間的な構造を有するケイ素含有化合物からなる微粒子は、粘着剤層の高精細化対応の観点から好ましい。また、無機と有機の中間的な構造を有するケイ素含有化合物からなる微粒子は、少量の添加でもその効果を発揮し、粘着性が良好に維持されるため、特に好ましい。以上の光拡散微粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
上記アクリル樹脂微粒子としては、例えば、メタクリル酸メチルの単独重合体や、メタクリル酸メチルと酢酸ビニル、スチレン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等の単量体との共重合体などからなるものが挙げられる。
【0069】
光拡散微粒子の形状としては、光拡散が均一な球状の微粒子が好ましい。光拡散微粒子の遠心沈降光透過法による平均粒径は、下限値として1.0μm以上であることが好ましく、2.0μm以上であることがより好ましく、特に3.0μm以上であることが好ましく、さらには4.0μm以上であることが好ましい。一方、上限値として10.0μm以下であることが好ましく、特に7.0μm以下であることが好ましく、さらには5.0μm以下であることが好ましい。上記平均粒径の範囲内にあることで、得られる粘着剤が、高い全光線透過率を満たしながら、前述の範囲のヘイズ値を得やすくなる。
【0070】
なお、上記遠心沈降光透過法による平均粒径は、微粒子1.2gとイソプロピルアルコール98.8gとを十分に撹拌したものを測定用試料とし、遠心式自動粒度分布測定装置(堀場製作所社製,CAPA-700)を使用して測定したものである。
【0071】
粘着性組成物P中における光拡散微粒子の含有量は、上記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、下限値として、1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、特に8質量部以上であることが好ましく、さらには12質量部以上であることが好ましい。また、光拡散微粒子の含有量は、上記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、上限値として、50質量部以下であることが好ましく、特に40質量部以下であることが好ましく、さらには30質量部以下であることが好ましい。光拡散微粒子の含有量が上記範囲にあることにより、得られる光拡散粘着剤層21を有する複合型粘着剤層2が前述したヘイズ値を満たし易くなり、また、前述したダイナミック硬さおよび貯蔵せん断弾性率G’も満たし易くなる。
【0072】
(1-4)各種添加剤
粘着性組成物Pには、所望により、アクリル系粘着剤に通常使用されている各種添加剤、例えばシランカップリング剤、防錆剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、粘着付与剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、屈折率調整剤などを添加することができる。なお、後述の重合溶媒や希釈溶媒は、粘着性組成物Pを構成する添加剤に含まれないものとする。
【0073】
粘着性組成物Pは、上記の中でもシランカップリング剤を含有することが好ましい。これにより、被着体がプラスチック板であっても、ガラス部材であっても、当該被着体との密着性が向上し、前述した耐久性がより優れたものとなる。
【0074】
シランカップリング剤としては、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であって、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)との相溶性がよく、光透過性を有するものが好ましい。
【0075】
かかるシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等のメルカプト基含有ケイ素化合物、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、あるいはこれらの少なくとも1つと、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル基含有ケイ素化合物との縮合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
粘着性組成物P中におけるシランカップリング剤の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.05質量部以上であることが好ましく、さらには0.1質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、1.2質量部以下であることが好ましく、特に0.8質量部以下であることが好ましく、さらには0.4質量部以下であることが好ましい。
【0077】
(2)粘着性組成物の調製
粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を製造し、得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)とを混合するとともに、所望により添加剤等を加えることで製造することができる。光拡散粘着剤層21の場合には、さらに光拡散微粒子(C)を配合する。
【0078】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、重合体を構成するモノマーの混合物を通常のラジカル重合法で重合することにより製造することができる。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法により行うことが好ましい。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、無溶剤にて重合してもよい。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
【0079】
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。アゾ系化合物としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4'-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2'-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等が挙げられる。
【0080】
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0081】
なお、上記重合工程において、2-メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体の重量平均分子量を調節することができる。
【0082】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が得られたら、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の溶液に、架橋剤(B)、ならびに所望により希釈溶剤、光拡散微粒子(C)、添加剤等を添加し、十分に混合することにより、溶剤で希釈された粘着性組成物P(塗布溶液)を得る。なお、上記各成分のいずれかにおいて、固体状のものを用いる場合、あるいは、希釈されていない状態で他の成分と混合した際に析出を生じる場合には、その成分を単独で予め希釈溶媒に溶解もしくは希釈してから、その他の成分と混合してもよい。
【0083】
上記希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤などが用いられる。
【0084】
このようにして調製された塗布溶液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、粘着性組成物Pの濃度が10~60質量%となるように希釈する。なお、塗布溶液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着性組成物Pがコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。この場合、粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合溶媒をそのまま希釈溶剤とする塗布溶液となる。
【0085】
(3)粘着剤層の形成
本実施形態における光拡散粘着剤層21および透明粘着剤層22は、それぞれ、粘着性組成物P(の塗布層)を架橋した粘着剤からなることが好ましい。粘着性組成物Pの架橋は、通常は加熱処理により行うことができる。なお、この加熱処理は、所望の対象物に塗布した粘着性組成物Pの塗布層から希釈溶剤等を揮発させる際の乾燥処理で兼ねることもできる。
【0086】
加熱処理の加熱温度は、50~150℃であることが好ましく、特に70~120℃であることが好ましい。また、加熱時間は、10秒~10分であることが好ましく、特に50秒~2分であることが好ましい。
【0087】
加熱処理後、必要に応じて、常温(例えば、23℃、50%RH)で1~2週間程度の養生期間を設けてもよい。この養生期間が必要な場合は、養生期間経過後、養生期間が不要な場合には、加熱処理終了後、粘着剤が形成される。
【0088】
上記の加熱処理(及び養生)により、架橋剤(B)を介して(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が十分に架橋される。
【0089】
本実施形態における複合型粘着剤層2は、光拡散粘着剤層21および透明粘着剤層22を積層することにより得ることができる。積層のタイミングは、各粘着剤層を養生する前であってもよいし、養生した後であってもよい。ただし、光拡散粘着剤層21および透明粘着剤層22の密着性をより高くするためには、各粘着剤層を養生する前に積層することが好ましい。
【0090】
(4)粘着剤層の厚さ
複合型粘着剤層2の総厚、本実施形態では、光拡散粘着剤層21および透明粘着剤層22の合計厚さは、下限値として、70μm以上であることが好ましく、特に110μm以上であることが好ましく、さらには140μm以上であることが好ましい。複合型粘着剤層2の総厚の下限値が上記であることにより、前述したヘイズ値を満たし易くなるとともに、2枚の硬質板である液晶セルの圧縮に対する粘着剤層の応力を緩和させ易くなり、画像表示ムラの防止性がより向上する。一方、複合型粘着剤層2の総厚は、上限値として、3000μm以下であることが好ましく、特に1000μm以下であることが好ましく、さらには500μm以下であることが好ましく、420μm以下であることが最も好ましい。複合型粘着剤層2の総厚の上限値が上記であることにより、画像のボケや全光線透過率の低下を防止することができる。
【0091】
光拡散粘着剤層21の厚さは、下限値として、10μm以上であることが好ましく、特に20μm以上であることが好ましく、さらには40μm以上であることが好ましい。光拡散粘着剤層21の厚さの下限値が上記であることにより、前述したヘイズ値を満たし易くなる。一方、光拡散粘着剤層21の厚さは、上限値として、300μm以下であることが好ましく、特に100μm以下であることが好ましく、さらには80μm以下であることが好ましい。光拡散粘着剤層21の厚さの上限値が上記であることにより、画像のボケや全光線透過率の低下を防止することができる。
【0092】
また、透明粘着剤層22の厚さは、下限値として、20μm以上であることが好ましく、特に40μm以上であることが好ましく、さらには80μm以上であることが好ましい。透明粘着剤層22の厚さの下限値が上記であることにより、2枚の硬質板である液晶セルの圧縮に対する粘着剤層の応力を緩和させ易くなり、画像表示ムラの防止性がより向上する。一方、透明粘着剤層22の厚さは、上限値として、2700μm以下であることが好ましく、特に900μm以下であることが好ましく、さらには420μm以下であることが好ましく、340μm以下であることが最も好ましい。透明粘着剤層22の厚さの上限値が上記であることにより、画像のボケや全光線透過率の低下を防止することができる。
【0093】
1-2.剥離シート
剥離シート3a,3bは、粘着シート1の使用時まで複合型粘着剤層2を保護するものであり、粘着シート1(複合型粘着剤層2)を使用するときに剥離される。本実施形態に係る粘着シート1において、剥離シート3a,3bの一方または両方は必ずしも必要なものではない。
【0094】
剥離シート3a,3bとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
【0095】
上記剥離シート3a,3bの剥離面(特に複合型粘着剤層2と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。
【0096】
上記剥離シート3a,3bのうち、一方の剥離シートが剥離力の大きい重剥離型剥離シート、他方の剥離シートが剥離力の小さい軽剥離型剥離シートであることが好ましい。例えば、光拡散粘着剤層21に接触する側の剥離シート3aが軽剥離型剥離シート、透明粘着剤層22に接触する側の剥離シート3bが重剥離型剥離シートであってもよいし、光拡散粘着剤層21に接触する側の剥離シート3aが重剥離型剥離シート、透明粘着剤層22に接触する側の剥離シート3bが軽剥離型剥離シートであってもよい。
【0097】
剥離シート3a,3bの厚さについては特に制限はないが、通常20~150μm程度である。
【0098】
2.粘着シートの製造
粘着シート1の一製造例としては、一方の剥離シート3aの剥離面に、透明粘着剤層22を形成するための粘着性組成物Pの塗布溶液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを熱架橋し、塗布層を形成して、塗布層付きの剥離シート3aを得る。また、他方の剥離シート3bの剥離面に、光拡散粘着剤層21を形成するための粘着性組成物Pの塗布溶液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを熱架橋し、塗布層を形成して、塗布層付きの剥離シート3bを得る。そして、塗布層付きの剥離シート3aと塗布層付きの剥離シート3bとを、両塗布層が互いに接触するように貼り合わせる。ここで、塗布層付きの剥離シートを複数作製し、その塗布層を所望の数、所望の積層順で貼合してもよい。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記の積層された塗布層が複合型粘着剤層2となる。これにより、光拡散粘着剤層21と透明粘着剤層22との積層体である複合型粘着剤層2を有する上記粘着シート1が得られる。加熱処理および養生の条件については、前述した通りである。
【0099】
なお、透明粘着剤層22を形成するための塗布層および光拡散粘着剤層21を形成するための塗布層は、それぞれ2枚の剥離シートによって挟持されてもよく、透明粘着剤層22を形成するための塗布層と光拡散粘着剤層21を形成するための塗布層とを貼合するときに、それぞれの片方の剥離シートを剥離してもよい。
【0100】
上記粘着性組成物Pの塗布溶液を塗布する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用することができる。
【0101】
3.物性
(1)粘着力
本実施形態に係る粘着シート1における透明粘着剤層22側の面のソーダライムガラスに対する粘着力は、耐久性の観点から、1N/25mm以上であることが好ましく、10N/25mm以上であることがより好ましく、特に30N/25mm以上であることが好ましく、さらには40N/25mm以上であることが好ましい。また、上記粘着力は、80N/25mm以下であることが好ましく、70N/25mm以下であることがより好ましく、特に60N/25mm以下であることが好ましく、さらには50N/25mm以下であることが好ましい。これにより、良好なリワーク性が得られ、貼合ミスが生じた場合でも被着体の再利用が可能となる。
【0102】
本実施形態に係る粘着シート1における光拡散粘着剤層21側の面のソーダライムガラスに対する粘着力は、耐久性の観点から、1N/25mm以上であることが好ましく、10N/25mm以上であることがより好ましく、特に20N/25mm以上であることが好ましく、さらには30N/25mm以上であることが好ましい。また、上記粘着力は、80N/25mm以下であることが好ましく、60N/25mm以下であることがより好ましく、特に50N/25mm以下であることが好ましく、さらには40N/25mm以下であることが好ましい。これにより、良好なリワーク性が得られ、貼合ミスが生じた場合でも被着体の再利用が可能となる。
【0103】
ここで、本明細書における粘着力は、基本的にはJIS Z0237:2009に準じた180度引き剥がし法により測定した粘着力をいうが、測定サンプルは25mm幅、100mm長とし、当該測定サンプルを被着体に貼付し、0.5MPa、50℃で20分加圧した後、常圧、23℃、50%RHの条件下で24時間放置してから、剥離速度300mm/minにて測定するものとする。
【0104】
(2)全光線透過率
本実施形態に係る粘着シート1における複合型粘着剤層2の全光線透過率は、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、特に90%以上であることが好ましい。全光線透過率が上記範囲であると、透明性が非常に高く、光学用途(表示体用)として特に好適である。なお、全光線透過率の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0105】
4.その他の実施形態
本実施形態に係る粘着シートは、光拡散微粒子を含有する光拡散粘着剤層と、光拡散微粒子を含有しない透明粘着剤層とを備えた複合型粘着剤層を有し、上記透明粘着剤層の貯蔵せん断弾性率G’が、0.07MPa以上、10MPa以下であり、複合型粘着剤層のヘイズ値が、70%以上、99%以下であるものである。かかる粘着シートを使用して、例えば2枚の液晶セルを貼合した場合、上述した実施形態と同様に、モアレおよび画像の表示ムラが発生し難い。また、特に上記貯蔵せん断弾性率G’の作用により、高温高湿条件下での耐久性に優れる。
【0106】
前述した実施形態に係る粘着シートは、粘着剤層表面から当該粘着剤層の厚さ方向にかけての局所的な弾性挙動を表すダイナミック硬さにより粘着剤層の物性を規定するものである。これに対し、本実施形態に係る粘着シートは、光拡散粘着剤層、透明粘着剤層それぞれの層における、全体の弾性挙動を表す貯蔵せん断弾性率G’により上記各粘着剤層の物性を規定するものである。これによっても、前述した実施形態に係る粘着シートと同様、優れた耐久性が得られるとともに、液晶セル同士の貼合における表示画像のムラを抑制することができる。
【0107】
上記透明粘着剤層の貯蔵せん断弾性率G’は、耐久性の観点から、0.10MPa以上であることが好ましく、0.13MPa以上であることがより好ましく、特に0.17MPa以上であることが好ましく、さらには0.20MPa以上であることが好ましい。また、上記透明粘着剤層の貯蔵せん断弾性率G’は、表示ムラ防止の観点から、5MPa以下であることが好ましく、1MPa以下であることがより好ましく、特に0.7MPa以下であることが好ましく、さらには0.4MPa以下であることが好ましい。
【0108】
上記光拡散粘着剤層の貯蔵せん断弾性率G’は、0.07MPa以上であることが好ましく、0.08MPa以上であることがより好ましく、特に0.09MPa以上であることが好ましく、さらには0.10MPa以上であることが好ましい。これにより、前述した耐久性がより優れたものとなる。また、光拡散粘着剤層の貯蔵せん断弾性率G’は、表示ムラ防止性の観点から、10MPa以下であることが好ましく、5MPa以下であることがより好ましく、特に0.7MPa以下であることが好ましく、さらには0.4MPa以下であることが好ましい。
【0109】
各層および複合型粘着剤層の厚さや、ダイナミック硬さ以外の物性は、前述した実施形態と同様である。上記の物性を有する透明粘着剤層および光拡散粘着剤層は、前述した実施形態にて説明した粘着剤(粘着性組成物P)により好ましく形成することができる。
【0110】
〔積層体の製造方法〕
本発明の一実施形態においては、前述した実施形態に係る粘着シートを使用して、2枚の硬質板を粘着剤層によって貼合してなる積層体を製造することができる。本発明の一実施形態に係る積層体の製造方法は、上記粘着シート1における複合型粘着剤層2の光拡散粘着剤層21と一方の硬質板とを貼合し、次いで、複合型粘着剤層2の透明粘着剤層22と他方の硬質板とを貼合する。
【0111】
2枚の硬質板を粘着剤層によって貼合する場合、一般的には、第1の硬質板と粘着剤層の一方の面とを貼合し、次いで、第2の硬質板と粘着剤層の他方の面とを貼合する。このとき、後で貼合する第2の硬質板は、粘着剤層との界面に空気を噛まないように、当該粘着剤層に対して強く押し付けられる。そうすると、粘着剤層における第2の硬質板との接触部分、特に最初に接触する接触部分は変形し易く、当該接触部分に光拡散粘着剤層が存在すると、光拡散微粒子の分散状態が乱れ易くなり、光拡散の均一性が低下することがある。しかしながら、上記のように、先に光拡散粘着剤層と一方の(第1の)硬質板とを貼合し、次いで、透明粘着剤層と他方の(第2の)硬質板とを貼合すると、光拡散粘着剤層の変形を抑制し、光拡散の均一性を良好に維持することができる。その結果、例えば硬質板として2枚の液晶セルを貼合したときに、モアレの発生を均一に抑制することができるとともに、表示画像にムラが発生することをより効果的に抑制することができる。
【0112】
なお、本明細書における「硬質板」とは、殆どしならない硬さを有する板状部材をいうものとする。かかる硬質板としては、ガラス板、プラスチック板、それらに各種の機能層(透明導電膜、金属層、シリカ層、ハードコート層、防眩層等)が設けられているもの、あるいは、液晶(LCD)モジュール(液晶セル)、発光ダイオード(LED)モジュール、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)モジュール等の表示体モジュールや、表示体モジュールの一部としての光学部材、または表示体モジュールを含む積層体などが挙げられる。
【0113】
〔液晶表示部材〕
本発明の一実施形態に係る液晶表示部材は、第1の液晶セルと、第2の液晶セルと、それらを互いに貼合する粘着剤層とを備えて構成される。この粘着剤層は、前述した実施形態に係る粘着シートの複合型粘着剤層である。かかる液晶表示部材は、当該複合型粘着剤層の作用によって、モアレおよび画像の表示ムラが発生し難く、高温高湿条件下での耐久性にも優れる。
【0114】
本実施形態における粘着剤層の好ましい一例は、光拡散粘着剤層および透明粘着剤層の2層からなる複合型粘着剤層であり、以下、図面を参照して説明する。
【0115】
図2に示すように、本実施形態に係る液晶表示部材4は、第1の液晶セル5aと、第2の液晶セル5bと、それらを互いに貼合する複合型粘着剤層2とを備えて構成される。本実施形態における複合型粘着剤層2は、第1の液晶セル5aに接する光拡散粘着剤層21と、第2の液晶セル5bに接する透明粘着剤層22との2層からなる。
【0116】
光拡散粘着剤層21および透明粘着剤層22は、前述した粘着シート1における光拡散粘着剤層21および透明粘着剤層22であり、その構成の詳細は前述した通りである。
【0117】
第1の液晶セル5aおよび第2の液晶セル5bは、液晶(LCD)ディスプレイ、特に立体画像を表示する液晶ディスプレイにおいて通常使用されるものであり、特に限定されるものではない。なお、「液晶セル」は、「液晶パネル」、「液晶モジュール」、「液晶表示素子」等と称されることもある。
【0118】
第1の液晶セル5aおよび第2の液晶セル5bは、通常は硬質板であり、その厚さは、通常、0.5~5.0mm程度であり、好ましくは1.0~3.0mm程度である。
【0119】
上記液晶表示部材4の好ましい製造方法について説明する。ただし、本発明は、これに限定されるものではない。最初に、粘着シート1から剥離シート3a(好ましくは軽剥離型剥離シート)を剥離し、光拡散粘着剤層21を露出させ、その露出した光拡散粘着剤層21を第1の液晶セル5aの一方の面に貼付する。このとき、粘着シート1において、液晶セル5aに接する面と反対側の面は、柔軟性を有する剥離シート3bが貼付された状態を維持している。したがって、液晶セル5aへの貼付時に発生した光拡散粘着剤層21の応力ムラは直ぐに解消されることとなる。また、液晶セル5aへの貼付時には透明粘着剤層22がクッション材の役割を果たし、液晶セル5aに過剰な圧力がかかるのを抑制することができる。これらの作用により、本段階における、液晶表示部材4形成時の画像表示ムラの原因となる液晶セル5aの配向の乱れを防止することができる。
【0120】
次に、第1の液晶セル5aに貼付した粘着シート1(複合型粘着剤層2)から剥離シート3b(好ましくは重剥離型剥離シート)を剥離し、透明粘着剤層22を露出させ、その露出した透明粘着剤層22に第2の液晶セル5bを貼合する。ここで、液晶セル5bとの貼合により、複合型粘着剤層2には応力が発生する。しかしながら、複合型粘着剤層2が透明粘着剤層22を有することから、光拡散粘着剤層21への応力は緩和され、光拡散微粒子の存在密度による応力ムラの発生が防止される。このようにして得られる液晶表示部材4では、複合型粘着剤層2における光拡散粘着剤層21による応力ムラにより液晶セル5a,5bの配向が乱れることが防止され、もって表示画像のムラの発生が抑制されて、良好に表示画像が表示される。
【0121】
なお、粘着シート1から先に剥離シート3b(好ましくは軽剥離型剥離シート)を剥離し、透明粘着剤層22と第2の液晶セル5bとを貼合した後、剥離シート3a(好ましくは重剥離型剥離シート)を剥離し、光拡散粘着剤層21と第1の液晶セル5aとを貼合してもよい。
【0122】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0123】
例えば、粘着シート1における複合型粘着剤層2は、3層以上の構造を有するものであってもよい。また、粘着シート1における剥離シート3a,3bのいずれか一方は省略されてもよい。
【実施例
【0124】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0125】
〔製造例1〕(光拡散粘着剤層用の剥離シート付き塗布層の作製)
1.(メタ)アクリル酸エステル重合体の調製
アクリル酸n-ブチル25質量部、アクリル酸2-エチルヘキシル25質量部、アクリル酸イソボルニル10質量部、N-アクリロイルモルホリン10質量部、およびアクリル酸2-ヒドロキシエチル30質量部を溶液重合法により共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)50万であった。
【0126】
2.粘着性組成物の調製
上記工程1で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、架橋剤(B)としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(トーヨーケム社製,製品名「BHS8515」)0.2質量部と、光拡散微粒子(C)としてのシリコーン樹脂(無機と有機の中間的な構造を有するケイ素含有化合物)からなる微粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製,製品名「トスパール145」,平均粒径:4.5μm)15質量部と、シランカップリング剤としての3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.3質量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、粘着性組成物の塗布溶液を得た。
【0127】
ここで、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を100質量部(固形分換算値)とした場合の粘着性組成物の各配合(固形分換算値)を表1に示す。なお、表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
[(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)]
BA:アクリル酸n-ブチル
2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
IBXA:アクリル酸イソボルニル
ACMO:N-アクリロイルモルホリン
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
AA:アクリル酸
[架橋剤(B)]
TDI:トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(トーヨーケム社製,製品名「BHS8515」)
XDI:トリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネート(綜研化学社製,製品名「TD-75」)
エポキシ:1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学社製,製品名「TETRAD-C」)
[光拡散微粒子(C)]
D1:平均粒径4.5μmのシリコーン樹脂(無機と有機の中間的な構造を有するケイ素含有化合物)からなる微粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製,製品名「トスパール145」,屈折率:1.43)
D2:平均粒径5.0μmの真球状ポリメタクリル酸メチル-ポリスチレン共重合体微粒子(積水化成品工業社製,製品名「XX-23LA」,屈折率:1.525)
【0128】
3.塗布層の形成
上記工程2で得られた粘着性組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した軽剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET381031」)の剥離処理面に、ナイフコーターで塗布したのち、90℃で1分間加熱処理して塗布層(厚さ:50μm)を形成した。これにより、軽剥離型剥離シート/光拡散粘着剤層の塗布層(厚さ:50μm)の構成からなる剥離シート付き塗布層を得た。また、試験例用に、当該剥離シート付き塗布層を23℃、50%RHの条件下で7日間養生し、剥離シート付き光拡散粘着剤層を得た。
【0129】
なお、上記塗布層の厚さは、JIS K7130に準拠し、定圧厚さ測定器(テクロック社製,製品名「PG-02」)を使用して測定した値である(以下同じ)。
【0130】
〔製造例2~7〕(光拡散粘着剤層用の剥離シート付き塗布層の作製)
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を構成する各モノマーの種類および割合、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量(Mw)、架橋剤(B)の種類および配合量、光拡散微粒子(C)の種類および配合量、ならびにシランカップリング剤の配合量を表1に示すように変更する以外、製造例1と同様にして光拡散粘着剤層用の剥離シート付き塗布層および剥離シート付き光拡散粘着剤層を作製した。
【0131】
〔製造例8〕(光拡散粘着剤層用の剥離シート付き塗布層の作製)
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を構成する各モノマーの種類および割合を表1に示すように変更するとともに、活性エネルギー線硬化性成分としてのε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート(新中村化学社製,製品名「NKエステル A-9300-1CL」)5.5質量部、および光重合開始剤としての2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド0.5質量部をさらに添加する以外、製造例1と同様にして光拡散粘着剤層用の剥離シート付き塗布層および剥離シート付き光拡散粘着剤層を作製した。なお、当該光拡散粘着剤層は、活性エネルギー線硬化性の粘着剤からなるものであった。
【0132】
〔製造例9~10〕(透明粘着剤層用の剥離シート付き塗布層の作製)
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を構成する各モノマーの種類および割合、ならびに光拡散微粒子(C)の配合量(配合無し)を表1に示すように変更し、軽剥離型剥離シートに替えて重剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET752150」)の剥離処理面上に塗布する以外、製造例1と同様にして、重剥離型剥離シート/透明粘着剤層の塗布層(厚さ:50μm)の構成からなる剥離シート付き塗布層および剥離シート付き透明粘着剤層を作製した。
【0133】
前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・GPC測定装置:東ソー社製,HLC-8020
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK guard column HXL-H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0134】
〔実施例1〕
製造例1で作製した光拡散粘着剤層用の塗布層と、製造例9で作製した透明粘着剤層用の塗布層とを貼合し、その後、23℃、50%RHの条件下で7日間養生した。このようにして、軽剥離型剥離シート/光拡散粘着剤層(50μm)/透明粘着剤層(50μm)/重剥離型剥離シートからなる粘着シート(光拡散粘着剤層+透明粘着剤層=複合型粘着剤層)を製造した。
【0135】
〔実施例2~8,比較例1~3〕
光拡散粘着剤層の種類(製造例1~8)および透明粘着剤層の種類(製造例9~10)、ならびに透明粘着剤層の厚さおよび総厚を表2に示すように変更する以外、実施例1と同様にして、粘着シートを製造した。なお、透明粘着剤層の厚さは、各製造例で作製した透明粘着シートの透明粘着剤層の塗布層(50μm)を所望の層数積層することにより変更した。
【0136】
〔試験例1〕(ゲル分率の測定)
各製造例(製造例8以外)で作製した剥離シート付き光拡散粘着剤層および剥離シート付き透明粘着剤層を、80mm×80mmのサイズに裁断した。各粘着剤層をポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ200)に包み、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM1とする。
【0137】
次に、上記ポリエステル製メッシュに包まれた粘着剤を、室温下(23℃)で酢酸エチルに24時間浸漬させた。その後粘着剤を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、24時間風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM2とする。ゲル分率(%)は、(M2/M1)×100で表される。これにより、粘着剤のゲル分率を導出した。結果を表2に示す。
【0138】
また、製造例8で作製した光拡散粘着剤層に対して、下記の条件で活性エネルギー線(紫外線;UV)を照射し、光拡散粘着剤層を硬化させて硬化後粘着剤層とした。この硬化後粘着剤層の粘着剤について、上記と同様にしてゲル分率(UV後)を導出した。結果を表2に示す。
【0139】
<活性エネルギー線照射条件>
・高圧水銀ランプ使用
・照度200mW/cm,光量1000mJ/cm
・UV照度・光量計はアイグラフィックス社製「UVPF-A1」を使用
【0140】
〔試験例2〕(ダイナミック硬さの測定)
実施例および比較例(比較例3以外)で製造した粘着シートから重剥離型剥離シートを剥離し、露出した透明粘着剤層をガラス板に貼付し固定した。次いで、軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した光拡散粘着剤層に対して、ダイナミック超微小硬度計(島津製作所社製,製品名「島津ダイナミック超微小硬度計DUH-W201S」)を使用し、23℃の環境下、陵間角115°のダイヤモンド製三角錐圧子を、負荷速度0.0142mN/秒で、深さが4μmまたは試験力が1mNに達するまで押し込み、15秒間保持したのち、押し込み深さD(μm)および試験力P(mN)を読み取り、下記計算式によりダイナミック硬さ(DHT115-1)を求めた。
ダイナミック硬さ(DHT115-1)=3.8584×P/D
(ただし、3.8584は圧子の形状による定数である。)
【0141】
また、実施例および比較例(比較例3以外)で製造した粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した光拡散粘着剤層をガラス板に貼付し固定した。次いで、重剥離型剥離シートを剥離し、露出した透明粘着剤層に対して上記と同様にして試験を行い、ダイナミック硬さ(DHT115-1)を求めた。
【0142】
一方、比較例3で製造した粘着シートから重剥離型剥離シートを剥離し、露出した透明粘着剤層をガラス板に貼付し固定した。次いで、軽剥離型剥離シート越しに、試験例1と同じ条件で活性エネルギー線(紫外線;UV)を照射し、複合型粘着剤層を硬化させた。そして、軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した活性エネルギー線硬化後の光拡散粘着剤層に対して、上記と同様にして試験を行い、ダイナミック硬さ(DHT115-1;UV後)を求めた。また、活性エネルギー線硬化後の透明粘着剤層についても、上記と同様にして試験を行い、ダイナミック硬さ(DHT115-1;UV後)を求めた。それぞれの結果を表2に示す。
【0143】
〔試験例3〕(貯蔵せん断弾性率G’の測定)
各製造例(製造例8以外)で作製した光拡散粘着剤層および透明粘着剤層を、それぞれ複数層積層し、厚さ800μmの積層体とした。得られた粘着剤層の積層体から、直径8mmの円柱体(高さ800μm)を打ち抜き、これをサンプルとした。
【0144】
上記サンプルについて、JIS K7244-1に準拠し、粘弾性測定装置(Anton paar社製,製品名「MCR301」)を用いてねじりせん断法により、以下の条件で貯蔵せん断弾性率G’(MPa)を測定した。結果を表2に示す。
測定周波数:1Hz
測定温度:23℃
【0145】
また、製造例8で作製した光拡散粘着剤層についても、上記と同様にして円柱体を得た。この円柱体に対し、試験例1と同様の条件で活性エネルギー線(紫外線;UV)を照射して、活性エネルギー線硬化性の粘着剤を硬化させることにより、活性エネルギー線硬化後のサンプルを得た。得られた活性エネルギー線硬化後のサンプルについて、上記と同様にして、23℃における貯蔵せん断弾性率G’(MPa;UV後)を測定した。結果を表2に示す。
【0146】
〔試験例4〕(ヘイズ値の測定)
実施例および比較例で製造した粘着シートの複合型粘着剤層をソーダライムガラスに貼合して、これを測定用サンプルとした。ソーダライムガラスでバックグラウンド測定を行った上で、上記測定用サンプルについて、JIS K7136:2000に準じて、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「NDH5000」)を用いてヘイズ値(%)を測定した。結果を表2に示す。
【0147】
〔試験例5〕(全光線透過率の測定)
実施例および比較例で製造した粘着シートの複合型粘着剤層をソーダライムガラスに貼合して、これを測定用サンプルとした。ソーダライムガラスでバックグラウンド測定を行った上で、上記測定用サンプルについて、JIS K7361-1:1997に準じて、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「NDH5000」)を用いて全光線透過率(%)を測定した。結果を表2に示す。
【0148】
〔試験例6〕(粘着力の測定)
実施例および比較例で製造した粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した光拡散粘着剤層を、易接着層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製,製品名「PET A4300」,厚さ:100μm)の易接着層に貼合し、重剥離型剥離シート/複合型粘着剤層/PETフィルムの積層体を得た。得られた積層体を25mm幅、100mm長に裁断した。
【0149】
23℃、50%RHの環境下にて、上記積層体から重剥離型剥離シートを剥離し、露出した透明粘着剤層をソーダライムガラス(日本板硝子社製)に貼付したのち、栗原製作所社製オートクレーブにて0.5MPa、50℃で、20分加圧した。その後、23℃、50%RHの条件下で24時間放置して、これをサンプルとした。そして、引張試験機(オリエンテック社製,製品名「テンシロン」)を用い、剥離速度300mm/min、剥離角度180度の条件で粘着力(透明粘着剤層;N/25mm)を測定した(比較例3以外)。ここに記載した以外の条件はJIS Z0237:2009に準拠して、測定を行った。
【0150】
比較例3の粘着シートについては、上記サンプルに対し、PETフィルム越しに、試験例1と同様の条件で活性エネルギー線(紫外線;UV)を照射し、複合型粘着剤層を硬化させて硬化後複合型粘着剤層とした。その硬化後複合型粘着剤層について、上記と同様にして粘着力(N/25mm;UV後)を測定した。結果を表2に示す。
【0151】
また、全ての粘着シートについて、上記と同様にして、光拡散粘着剤層側の粘着力(N/25mm)を測定した(比較例3はUV硬化後の粘着力)。結果を表2に示す。
【0152】
〔試験例7〕(モアレ抑制性の評価)
実施例および比較例で製造した粘着シートにおける軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した光拡散粘着剤層を、タブレット端末(アップル社製,製品名「iPad(登録商標)」,解像度:264ppi)の表示画面の表面に貼付した。次いで、上記粘着シートにおける重剥離型剥離シートを剥離し、露出した透明粘着剤層に対し、20ppi~180ppi(20ppi刻み)の格子を有する液晶マスクを貼合し、液晶表示体を得た。
【0153】
上記タブレット端末の画面を全面緑色表示(RGB値(R,G,B)=0,255,0)にして、上記液晶表示体について、液晶マスク側における画面の法線から60度の方向より目視で見たモアレの程度に基づき、以下の基準でモアレ抑制性を評価した。結果を表2に示す。
◎:全ての液晶マスクに係る液晶表示体でモアレが発生しなかった。
〇:殆どの液晶マスクに係る液晶表示体でモアレが発生しなかった。
×:全ての液晶マスクに係る液晶表示体でモアレが発生した。
【0154】
〔試験例8〕(画像表示ムラ防止性の評価)
第1および第2の液晶セルを用意し、第1の液晶セルを吸着装置で吸着させた。次いで、実施例および比較例で製造した粘着シートにおける軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した光拡散粘着剤層を、上記第1の液晶セルの片面に貼付した。次いで、上記粘着シートにおける重剥離型剥離シートを剥離し、露出した透明粘着剤層に対し、大気圧下貼合機(サンテック社製,製品名「TMS-SA」)を使用して、貼付速度30mm/sec、ローラー圧0.3MPaにて、第2の液晶セルを貼合した。具体的には、第2の液晶セルの一方の端部をガラス押さえによって支持しながら、第2の液晶セルの他方の端部側から、ローラーにて第2の液晶セルを透明粘着剤層に対して押圧し、当該ローラーを第2の液晶セルの一方の端部まで回転移動させ、最後にガラス押さえを外した。
【0155】
その後、第1および第2の液晶セルを貼合した状態で、白色光をバックライト光として画像を表示させ、目視により第1の液晶セル側から表示画像を見て、以下の基準で画像表示ムラの防止性を評価した。結果を表2に示す。
◎…全くムラなく画像が表示された。
〇…表示画像にわずかにムラが発生したが、実用上問題ないレベルであった。
×…表示画像にムラが発生した。
【0156】
〔試験例9〕(耐久性の評価)
実施例および比較例で製造した粘着シートの複合型粘着剤層を、2枚のソーダライムガラス板(日本板硝子社製,厚さ:0.7mm)で挟持した。そして、50℃、0.5MPaの条件下で30分間オートクレーブ処理し、常圧、23℃、50%RHにて24時間放置した。
【0157】
得られた積層体(比較例3以外)を、60℃、95%RHの高温高湿条件下にて1000時間保管した。そして、複合型粘着剤層と被着体(ソーダライムガラス板)との界面における状態を目視により確認し、以下の基準により耐久性を評価した。結果を表2に示す。
◎…気泡の発生が全くなかった。
〇…わずかに気泡が発生したが、実用上問題ないレベルであった。
×…気泡が多数発生した。
【0158】
比較例3の粘着シートについては、上記の積層体に対して、一方のソーダライムガラス板越しに、試験例1と同様の条件で活性エネルギー線を照射し、複合型粘着剤層を硬化させた。その後、上記と同様にして高温高湿条件下に保管し、耐久性を評価した。結果を表2に示す。
【0159】
【表1】
【0160】
【表2】
【0161】
表2から分かるように、実施例で製造した粘着シートによれば、モアレおよび画像表示ムラが発生し難く、また、優れた耐久性が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0162】
本発明に係る粘着シートは、立体画像表示装置に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0163】
1…粘着シート
2…複合型粘着剤層
21…光拡散粘着剤層
22…透明粘着剤層
3a,3b…剥離シート
4…液晶表示部材
5a…第1の液晶セル
5b…第2の液晶セル
図1
図2