(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-26
(45)【発行日】2025-04-03
(54)【発明の名称】バチルス属(BACILLUS)細胞における強化されたタンパク質産生のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C12P 21/00 20060101AFI20250327BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20250327BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20250327BHJP
【FI】
C12P21/00 C ZNA
C12N1/21
C12N15/09 Z
(21)【出願番号】P 2022526380
(86)(22)【出願日】2020-11-10
(86)【国際出願番号】 US2020059830
(87)【国際公開番号】W WO2021096857
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2023-11-07
(32)【優先日】2019-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509240479
【氏名又は名称】ダニスコ・ユーエス・インク
(74)【代理人】
【識別番号】110003579
【氏名又は名称】弁理士法人山崎国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【氏名又は名称】朴 志恩
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【氏名又は名称】今井 千裕
(72)【発明者】
【氏名】ボンジョルニ、クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】マ、ジアン
(72)【発明者】
【氏名】キンメネード、アニータ ヴァン
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】PLoS Genet,2019年10月17日,Vol.15, No.10,e1008232 (pp.1-29),https://doi.org/10.1371/journal.pgen.1008232
【文献】Microbial Cell Factories,2014年,Vol.13,129 (pp.1-11),http://www.microbialcellfactories.com/content/13/1/129
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 21/00
C12N 1/21
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞内で増加した量の関心対象のタンパク質(POI)を産生するための方法であって、
(a)POIを産生する親バチルス種(Bacillus sp.)細胞を入手すること、
(b)前記yitMOPオペロンを破壊又は欠失させることによって前記親バチルス種(Bacillus sp.)細胞を遺伝子改変すること、及び
(c)前記POIを産生するために好適な条件下で前記改変細胞を発酵させること
を含み、
前記改変細胞は、前記同一条件下で培養した場合の前記親細胞に比較して、増加した量の前記POIを産生する方法。
【請求項2】
改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞内で増加した量の関心対象のタンパク質(POI)を産生するための方法であって、
(a)POIを産生する親バチルス種(Bacillus sp.)細胞を入手すること、
(b)前記yitMOPオペロンの調節領域を破壊又は欠失させることによって前記親バチルス種(Bacillus sp.)細胞を遺伝子改変し、それにより前記改変細胞を機能的YitM、YitO及び/又はYitPタンパク質の前記産生において欠損性にさせること、及び
(c)前記POIを産生するために好適な条件下で前記改変細胞を発酵させることを含み、
前記改変細胞は、前記同一条件下で発酵させた場合の前記親細胞に比較して、増加した量の前記POIを産生する方法。
【請求項3】
改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞内で増加した量の関心対象のタンパク質(POI)を産生するための方法であって、
(a)POIを産生する親バチルス種(Bacillus sp.)細胞を入手すること、
(b)前記yitM遺伝子を破壊又は欠失させることによって前記親細胞を遺伝子改変すること、及び
(c)前記POIを産生するために好適な条件下で前記改変細胞を発酵させることを含み、
前記改変細胞は、前記同一条件下で発酵させた場合の前記親細胞に比較して、増加した量の前記POIを産生する方法。
【請求項4】
前記バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、前記sdpABCオペロンの破壊又は欠失をさらに含む、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、B.サブチリス(B.subtilis)、B.リケニフォルミス(B.licheniformis)、B.レンツス(B.lentus)、B.ブレビス(B.brevis)、B.ステアロサーモフィルス(B.stearothermophilus)、B.アルカロフィルス(B.alkalophilus)、B.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)、B.クラウシイ(B.clausii)、B.ハロデュランス(B.halodurans)、B.メガテリウム(B.megaterium)、B.コアグランス(B.coagulans)、B.サークランス(B.circulans)、B.ラウツス(B.lautus)及びB.チューリンギエンシス(B.thuringiensis)から成る群から選択される、請求項1~4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記POIは、酵素である、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記酵素は、アセチルエステラーゼ、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、アラビナーゼ、アラビノフラノシダーゼ、炭酸脱水酵素、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、キチナーゼ、キモシン、クチナーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エピメラーゼ、エステラーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、α-グルカナーゼ、グルカンリアーゼ(glucanlysases)、エンド-β-グルカナーゼ、グルコアミラーゼ、グルコースオキシダーゼ、α-グルコシダーゼ、β-グルコシダーゼ、グルクロニダーゼ、グリコシルヒドロラーゼ、ヘミセルラーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、ヒドロラーゼ、インベルターゼ、イソメラーゼ、ラッカーゼ、リガーゼ、リパーゼ、リアーゼ、マンノシダーゼ、オキシダーゼ、酸化還元酵素、ペクチン酸リアーゼ、ペクチンアセチルエステラーゼ、ペクチンデポリメラーゼ、ペクチンメチルエステラーゼ、ペクチン分解酵素、ペルヒドロラーゼ、ポリオールオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、フィターゼ、ポリガラクツロナーゼ、プロテアーゼ、ペプチダーゼ、ラムノ-ガラクツロナーゼ、リボヌクレアーゼ、トランスフェラーゼ、輸送タンパク質、トランスグルタミナーゼ、キシラナーゼ、ヘキソースオキシダーゼ及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、細菌学、微生物学、遺伝学、分子生物学、酵素学、工業用タンパク質産生等の分野に関する。より特別には、本開示は、増加したタンパク質産生能力を有するバチルス種(Bacillus sp.)細胞を得るための組成物及び方法に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に援用される、2019年11月11日に出願された米国仮特許出願第62/933,536号に対する利益を主張するものである。
【0003】
配列表の参照
「NB41375-WO-PCT_SequenceListing.txt」との名称が付けられた配列表のテキストファイルの電子的提出の内容は、2020年10月23日に作成されたものであり、サイズは36KBであり、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)及びバチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)等のグラム陽性菌は、それらの優れた発酵特性と高い収率(例えば、培養物1L当たり最大25グラム;Van Dijl and Hecker,2013)から、工業用関連タンパク質を生産するための微生物工場として頻繁に使用されている。例えば、B.サブチリス(B.subtilis)は、食品、繊維、洗濯、医療機器の洗浄、薬品工業等のために必要なα-アミラーゼ(Jensen et al.,2000;Raul et al.,2014)及びプロテアーゼ(Brode et al.,1996)を生産することでよく知られている(Westers et al.,2004)。これらの非病原性グラム陽性菌は、有害な副生成物を全く含まないタンパク質(例えば、リポ多糖類;内毒素としても公知であるLPS)を産生するので、欧州食品安全機関(European Food Safety Authority)の「安全性適格推定(Qualified Presumption of Safety)」(QPS)の評価を得ており、それらの生成物の多くは、アメリカ食品医薬品局(US Food and Drug Administration)から「安全食品認定(Generally Recognized As Safe)」(GRAS)ステータスの評価を獲得している(Olempska-Beer et al.,2006;Earl et al.,2008;Caspers et al.,2010)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、微生物宿主細胞内でのタンパク質(例えば、酵素、抗体、受容体等)の産生は、バイオテクノロジー分野において特に関心が高い。同様に、1種以上の関心対象のタンパク質を産生及び分泌させるためのバチルス種(Bacillus sp.)宿主細胞の最適化は、特に工業バイオテクノロジーの状況においては高度に重要であり、タンパク質が工業的に大量生産される場合は、タンパク質収量の小さな改善が極めて重要な意味を有する。従って、強化したタンパク質産生のためにバチルス種(Bacillus sp.)宿主細胞を改変及び操作する能力は、当該技術分野において高度に望ましい。以下で記載するように、本開示は、当該技術分野におけるそのようなニーズに対応する。より特別には、本明細書に提示、記載及び例示したように、本開示の所定の実施形態は、増加した量の関心対象のタンパク質を産生できるバチルス種(Bacillus sp.)宿主細胞を構築するための方法及び組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、概して、強化したタンパク質産生表現型を有するバチルス種(Bacillus sp.)細胞を構築するための組成物及び方法に関する。本開示の所定の実施形態は、親バチルス種(Bacillus sp.)細胞(例えば、関心対象のタンパク質を発現/産生する親バチルス(Bacillus)細胞)に由来する遺伝子改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞に関する。例えば、所定の実施形態では、本開示の改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、内因性の関心対象のタンパク質を発現/産生する親バチルス種(Bacillus sp.)細胞又は関心対象の異種タンパク質に由来するが、ここで改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、yitMOPオペロンの遺伝子改変を含み、それが由来する(即ち、同一条件下で増殖/培養/発酵された場合)親細胞に比較して、増加した量のPOIを産生する。所定の他の実施形態では、本開示の改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、内因性の関心対象のタンパク質を発現/産生する親バチルス種(Bacillus sp.)細胞又は関心対象の異種タンパク質に由来する(それから得られる)が、ここで改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、yitMOPオペロン及びsdpABCオペロンの組み合わせ遺伝子改変を含み、ここで改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、親細胞(即ち、同一条件下で増殖/培養/発酵された場合)に比較して、増加した量のPOIを産生する。他の実施形態では、本開示の改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、内因性の関心対象のタンパク質を発現/産生する親バチルス種(Bacillus sp.)細胞又は関心対象の異種タンパク質に由来するが、ここで改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、yitM遺伝子の遺伝子改変を含み、ここで改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、親細胞(即ち、同一条件下で増殖/培養/発酵された場合)に比較して、増加した量のPOIを産生する。さらに他の実施形態では、本開示の改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、内因性の関心対象のタンパク質を発現/産生する親バチルス種(Bacillus sp.)細胞又は関心対象の異種タンパク質に由来するが、ここで改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、yitM遺伝子及びsdpABCオペロンの組み合わせ遺伝子改変を含み、ここで改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、親細胞(即ち、同一条件下で増殖/培養/発酵された場合)に比較して、増加した量のPOIを産生する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】天然B.バチルス(B.subtilis)yitMOPオペロンの核酸配列及びコードされたアミノ酸配列を示している。より詳細には、
図1Aは、yitMポリペプチド(配列番号2)をコードするyitMオープンリーディングフレーム(ORF;配列番号1)、及びyitOポリペプチド(配列番号4)をコードするyitOオープンリーディングフレーム(ORF;配列番号3)の核酸配列を提示し、
図1Bは、yitPポリペプチド(配列番号6)をコードするyitPオープンリーディングフレーム(ORF;配列番号5)の核酸配列を提示する。
【0008】
【
図2】yitMOP及びsdpABCカニバリズムオペロンの組み合わせ欠失(ΔyitMOP+ΔsdpABC)を含む改変B.サブチリス(B.subtilis)株(JL77)の大規模発酵中のタンパク質産生に及ぼす有益な作用を示している。より特別には、
図2に提示したように、JL77株及びCB24-12株の細胞を同一標準条件下の発酵槽内で試験したが、ここでJL77株についての発酵終了時のV42プロテアーゼ産生における平均増加は、発酵終了時にCB24-12株によって産生したV42プロテアーゼの量に比較して、およそ10%の増加であった。
【発明を実施するための形態】
【0009】
生物学的配列の簡単な説明
配列番号1は、配列番号2の天然YitMポリペプチドをコードするB.サブチリス(B.subtilis)オープンリーディングフレーム(ORF)の核酸配列である。
【0010】
配列番号2は、配列番号1によってコードされたB.サブチリス(B.subtilis)YitMポリペプチドのアミノ酸配列である。
【0011】
配列番号3は、配列番号4の天然YitOポリペプチドをコードするB.サブチリス(B.subtilis)のORF配列である。
【0012】
配列番号4は、配列番号3によってコードされたB.サブチリス(B.subtilis)YitOポリペプチドのアミノ酸配列である。
【0013】
配列番号5は、配列番号6の天然YitPポリペプチドをコードするB.サブチリス(B.subtilis)のORF配列である。
【0014】
配列番号6は、配列番号5によってコードされたB.サブチリス(B.subtilis)YitPポリペプチドのアミノ酸配列である。
【0015】
配列番号7は、プライマーoJKL228の核酸配列である。
【0016】
配列番号8は、プライマーoJKL229の核酸配列である。
【0017】
配列番号9は、プライマーoJKL232の核酸配列である。
【0018】
配列番号10は、プライマーoJKL223の核酸配列である。
【0019】
配列番号11は、プライマーoJKL230の核酸配列である。
【0020】
配列番号12は、プライマーoJKL231の核酸配列である。
【0021】
配列番号13は、プライマーoJKL226の核酸配列である。
【0022】
配列番号14は、プライマーoJKL227の核酸配列である。
【0023】
配列番号15は、プライマーM13Fの核酸配列である。
【0024】
配列番号16は、プライマーM13Rの核酸配列である。
【0025】
配列番号17は、プライマーoJKL246の核酸配列である。
【0026】
配列番号18は、プライマー5’spec outの核酸配列である。
【0027】
配列番号19は、プライマーoJKL247の核酸配列である。
【0028】
配列番号20は、プライマー3’spec outの核酸配列である。
【0029】
配列番号21は、プライマーoJKL220の核酸配列である。
【0030】
配列番号22は、プライマーoJKL221の核酸配列である。
【0031】
配列番号23は、プライマーoJKL224の核酸配列である。
【0032】
配列番号24は、プライマーoJKL225の核酸配列である。
【0033】
配列番号25は、プライマーoJKL222の核酸配列である。
【0034】
配列番号26は、プライマーoJKL223の核酸配列である。
【0035】
配列番号27は、プライマーoJKL218の核酸配列である。
【0036】
配列番号28は、プライマーoJKL2195の核酸配列である。
【0037】
配列番号29は、プライマーoJKL238の核酸配列である。
【0038】
配列番号30は、プライマーtet3’outの核酸配列である。
【0039】
配列番号31は、プライマーoJKL229の核酸配列である。
【0040】
配列番号32は、プライマーtet5’outの核酸配列である。
【0041】
配列番号33は、配列番号34の天然YitPポリペプチドをコードするバチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)オープンリーディングフレーム(ORF)の核酸配列である。
【0042】
配列番号34は、配列番号33によってコードされたB.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)YitPポリペプチドのアミノ酸配列である。
【0043】
配列番号35は、配列番号36の天然YitOポリペプチドをコードするB.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)のORF配列である。
【0044】
配列番号36は、配列番号35によってコードされたB.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)YitOポリペプチドのアミノ酸配列である。
【0045】
配列番号37は、配列番号38の天然YitMポリペプチドをコードするB.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)のORF配列である。
【0046】
配列番号38は、配列番号37によってコードされたB.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)YitMポリペプチドのアミノ酸配列である。
【0047】
配列番号39は、B.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)yitMOPオペロンのプロモーター領域のDNA配列である。
【0048】
配列番号40は、B.サブチリス(B.subtilis)yitMOPオペロンのプロモーター領域のDNA配列である。
【0049】
配列番号41は、B.サブチリス(B.subtilis)sdpABCオペロンのプロモーター領域のDNA配列である。
【0050】
配列番号42は、配列番号43の天然SdpAポリペプチドをコードするB.サブチリス(B.subtilis)オープンリーディングフレーム(ORF)の核酸配列である。
【0051】
配列番号43は、配列番号42によってコードされたB.サブチリス(B.subtilis)SdpAポリペプチドのアミノ酸配列である。
【0052】
配列番号44は、配列番号45の天然SdpBポリペプチドをコードするB.サブチリス(B.subtilis)オープンリーディングフレーム(ORF)の核酸配列である。
【0053】
配列番号45は、配列番号44によってコードされたるB.サブチリス(B.subtilis)SdpBポリペプチドのアミノ酸配列である。
【0054】
配列番号46は、配列番号47の天然SdpCポリペプチドをコードするB.サブチリス(B.subtilis)オープンリーディングフレーム(ORF)の核酸配列である。
【0055】
配列番号47は、配列番号46によってコードされたB.サブチリス(B.subtilis)SdpCポリペプチドのアミノ酸配列である。
【0056】
本開示は、概して、強化したタンパク質産生表現型を有するバチルス種(Bacillus sp.)細胞を構築且つ得るための組成物及び方法に関する。従って、本開示の所定の実施形態は、親バチルス種(Bacillus sp.)細胞(例えば、関心対象のタンパク質を発現/産生する親バチルス(Bacillus)細胞)に由来する遺伝子改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞に関する。所定の実施形態では、親バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、関心対象のタンパク質(POI)をコードする内因性遺伝子を含む。所定の実施形態では、内因性遺伝子は、プロテアーゼ又はアミラーゼをコードする。所定の他の実施形態では、親バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、異種の関心対象のタンパク質(POI)をコードする発現カセットを含む。例えば、所定の実施形態では、本開示の改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、内因性の関心対象のタンパク質を発現/産生する親バチルス種(Bacillus sp.)細胞又は関心対象の異種タンパク質に由来するが、ここで改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、yitMOPオペロンの遺伝子改変を含み、親細胞(即ち、同一条件下で増殖/培養/発酵された場合)に比較して、増加した量のPOIを産生する。所定の他の実施形態では、本開示の改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、内因性の関心対象のタンパク質又は関心対象の異種タンパク質を発現/産生する親バチルス種(Bacillus sp.)細胞に由来するが、ここで改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、yitMOPオペロン及びsdpABCオペロンの組み合わせ遺伝子改変を含み、改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、親細胞(即ち、同一条件下で増殖/培養/発酵された場合)に比較して、増加した量のPOIを産生する。さらに他の実施形態では、本開示の改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、内因性の関心対象のタンパク質又は関心対象の異種タンパク質を発現/産生する親バチルス種(Bacillus sp.)細胞に由来するが、ここで改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、yitMOP遺伝子の遺伝子改変を含み、及び親細胞(即ち、同一条件下で増殖/培養/発酵された場合)に比較して、増加した量のPOIを産生する。他の実施形態では、本開示の改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、内因性の関心対象のタンパク質又は関心対象の異種タンパク質を発現/産生する親バチルス種(Bacillus sp.)細胞に由来するが、ここで改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、yitMOPオペロン(又はyitM遺伝子)及びsdpABCオペロンの組み合わせ遺伝子改変を含み、改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、親細胞(即ち、同一条件下で増殖/培養/発酵された場合)に比較して、増加した量のPOIを産生する。
【0057】
定義
本開示の改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞及び本明細書に記載したそれらの方法を考慮して、以下の用語及び語句を定義する。本明細書で定義されていない用語には、当該技術分野で通常使用されている意味が与えられるべきである。
【0058】
他に定義されていない限り、本明細書で使用する技術用語及び科学用語は全て、本発明の組成物及び方法が属する分野の当業者が一般に理解する意味と同一の意味を有する。本明細書に記載のものに類似又は同等の任意の方法及び材料は、本発明の組成物及び方法を実施又は試験するためにも使用できるが、以下では例示的な方法及び材料について記載する。
【0059】
本明細書で引用した刊行物及び特許は全て、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0060】
特許請求の範囲が任意選択的な要素を排除するように記載され得ることにもさらに留意されたい。従って、この記述は、特許請求項の構成要素の列挙に関連して「唯一(solely)」、「ただ~のみ(only)」、「~を除いて(excluding)」、「~を含まない(not including)」等の排他的な用語の使用、又はその「否定的な」限定若しくは条件の使用のための先行文として機能することを意図している。
【0061】
本開示を読めば当業者には明らかなように、本明細書に記載及び例示する個々の実施形態のそれぞれは、本明細書に記載する本組成物及び方法の範囲又は精神から逸脱することなく、他の幾つかの実施形態の何れかの特徴から容易に分離する、又は組み合わせることができる別個の構成要素及び特徴を有する。記載した方法は何れも、記載した事象の順序で、又は論理的に可能な他の任意の順序で実施することができる。
【0062】
本明細書で使用する語句「宿主細胞」は、新たに導入されるDNA配列のための宿主又は発現ビヒクルとして作用する能力を有する細胞を指す。従って、本開示の所定の実施形態では、宿主細胞は、例えば、バチルス種(Bacillus sp.)細胞又はE.コリ(E.coli)細胞である。
【0063】
本明細書で使用する用語「野生型」及び「天然」は、互換的に使用され、天然において見出される遺伝子、プロモーター、タンパク質、タンパク質ミックス、細胞又は株を指す。
【0064】
本明細書で使用する「バチルス属(Bacillus)」又は「バチルス種(Bacillus sp.)」細胞には、当業者に知られているように、「バチルス属(Bacillus)」内の全ての種、例えば、以下に限定されないが、B.サブチリス(B.subtilis)、B.リケニフォルミス(B.licheniformis)、B.レンツス(B.lentus)、B.ブレビス(B.brevis)、B.ステアロサーモフィルス(B.stearothermophilus)、B.アルカロフィルス(B.alkalophilus)、B.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)、B.クラウシイ(B.clausii)、B.ハロデュランス(B.halodurans)、B.メガテリウム(B.megaterium)、B.コアグランス(B.coagulans)、B.サークランス(B.circulans)、B.ラウツス(B.lautus)及びB.チューリンギエンシス(B.thuringiensis)が含まれる。バチルス属(Bacillus)が分類学的再編成を受け続けていることは認識されている。従って、この属は、再分類された種、例えば、「ゲオバチルス・ステアロテルモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)」と現在称されている「B.ステアロテルモフィルス(B.stearothermophilus)」等の生物を含むがそれらに限定されないことが意図されている。
【0065】
本明細書で使用する「改変細胞」は、改変細胞がそれに由来する「親」宿主細胞内に存在しない少なくとも1つの遺伝子改変を含む組み換え(宿主)細胞を指す。例えば、所定の実施形態では、「親」細胞は、その「改変」(娘)細胞を生成するために(例えば、親細胞に導入された1つ以上の遺伝子改変によって)変化させられる。所定の実施形態では、親細胞は、特に、「改変」バチルス種(Bacillus sp.)(娘)細胞と比較される場合、又はそれに対して、「対照細胞」と称し得る。
【0066】
本明細書で使用するように、「未改変」(親)細胞における関心対象のタンパク質(POI)の発現及び/又は産生が、「改変」(娘)細胞における同一POIの発現及び/又は産生と比較される場合、「改変」及び「未改変」細胞は、同一条件(例えば、培地、温度、pH等の同一条件)下で増殖/培養/発酵されることは理解されるであろう。
【0067】
本明細書で使用する野生型バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)「yitMOPオペロン」は、「YitMポリペプチド」、「YitOポリペプチド」及び「YitPポリペプチド」をコードする。
【0068】
本明細書で使用する野生型B.サブチリス(B.subtilis)「yitM」核酸配列は、配列番号2を含む野生型B.サブチリス(B.subtilis)「YitM」ポリペプチドをコードする。
【0069】
本明細書で使用する野生型B.サブチリス(B.subtilis)「yitO」核酸配列は、配列番号4を含む野生型B.サブチリス(B.subtilis)「YitO」ポリペプチドをコードする。
【0070】
本明細書で使用する野生型B.サブチリス(B.subtilis)「yitP」核酸配列は、配列番号6を含む野生型B.サブチリス(B.subtilis)「YitP」ポリペプチドをコードする。
【0071】
本明細書で使用する野生型バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)「yitMOPオペロン」は、「YitMポリペプチド」、「YitOポリペプチド」及び「YitPポリペプチド」をコードする。
【0072】
本明細書で使用する野生型B.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)「yitM」核酸配列は、配列番号38を含む野生型バチルス・アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)「YitM」ポリペプチドをコードする。
【0073】
本明細書で使用する野生型B.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)「yitO」核酸配列は、配列番号36を含む野生型B.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)「YitO」ポリペプチドをコードする。
【0074】
本明細書で使用する野生型B.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)「yitP」核酸配列は、配列番号34を含む野生型B.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)「YitP」ポリペプチドをコードする。
【0075】
本明細書で使用する野生型B.サブチリス(B.subtilis)「sdpA」核酸配列(配列番号42)は、配列番号43を含む野生型B.サブチリス(B.subtilis)「sdpA」ポリペプチドをコードする。
【0076】
本明細書で使用する野生型B.サブチリス(B.subtilis)「sdpB」核酸配列(配列番号44)は、配列番号45を含む野生型B.サブチリス(B.subtilis)「SdpB」ポリペプチドをコードする。
【0077】
本明細書で使用する野生型B.サブチリス(B.subtilis)「sdpC」核酸配列(配列番号46)は、配列番号47を含む野生型B.サブチリス(B.subtilis)「SdpC」ポリペプチドをコードする。
【0078】
本明細書で使用する例えば「機能的YitMタンパク質の産生の欠損」、「機能的YitOタンパク質の産生の欠損」、「機能的YitPタンパク質の産生の欠損」等の語句は、検出可能な量の機能的YitMタンパク質、YitOタンパク質及び/又はYitMタンパク質を(即ち、同一条件下で増殖/培養/発酵した場合の親細胞に比較して)産生しない、又はその代わりに(即ち、同一条件下で培養/発酵した場合の親細胞に比較して)少なくとも約5%未満~約99%未満の1種以上の機能的YitM、YitO及び/又はYitPタンパク質を産生する改変(突然変異)バチルス種(Bacillus sp.)細胞を含む。例えば、所定の実施形態では、本開示の改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、yitMOPオペロンの調節領域を欠失させる、破壊する、不活化する等の遺伝子改変を含み、それにより改変細胞を機能的遺伝子産物(即ち、YitM、YitO及び/又はYitPタンパク質)の産生において欠損性にさせる。従って、所定の実施形態では、B.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)のプロモーター領域配列であるyitMOPオペロンは、配列番号39に説明したヌクレオチド配列を含み、B.サブチリス(B.subtilis)のプロモーター領域配列であるyitMOPオペロンは、配列番号40に説明したヌクレオチド配列を含み、及びB.サブチリス(B.subtilis)のプロモーター領域配列であるsdpABCオペロンは、配列番号41に説明したヌクレオチド配列を含む。
【0079】
所定の他の実施形態では、改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、yitM遺伝子の調節領域(例えば、プロモーター領域配列;配列番号39、配列番号40)を欠失させる、破壊する、不活化する、若しくは干渉する遺伝子改変を含み、それにより改変細胞を機能的YitMタンパク質の産生において欠損性にさせる。
【0080】
本明細書で使用する「pUCyitMOP:spec」と称されるプラスミドは、loxP部位によって隣接されるスペクチノマイシン耐性(specR)マーカー遺伝子を含む。より特別には、プラスミドpUCyitMOP:specは、B.サブチリス(B.subtilis)内の全yitMOPオペロンをスペクチノマイシン耐性(specR)マーカーで置換するために構築した。
【0081】
本明細書で使用する「Topo-specRベクター」は、その天然プロモーター及びターミネーター要素を備えるスペクチノマイシンアデニルトランスフェラーゼ遺伝子(specR)を含む。
【0082】
本明細書で使用する「pUCsdp::tet」と称されるプラスミドは、B.サブチリス(B.subtilis)内の全sdpABCオペロンをloxP部位(本明細書では「loxP-tetR-loxPカセット」)によって隣接されるテトラサイクリン(tetR)マーカーで置換するための上流(5’)及び下流(3’)DNA配列マーカーを含むが、ここでテトラサイクリンマーカーの除去は、sdpABCオペロンの欠失を生じさせる。
【0083】
本明細書で使用する「loxP-tetR-loxPカセット」は、後のテトラサイクリン耐性カセットのループアウトを促進するloxP組み換え配列を含み(Sauer,1987,Sauer and Henderson 1988)、その後に染色体統合を選択するために使用されてきた。
【0084】
本明細書で使用する「pUCLlacA-ganAB::tet」と称されるプラスミドは、B.サブチリス(B.subtilis)のganAB遺伝子を欠失させるために使用されるが、このプラスミドは、ganAB及びloxP-tetR-loxPカセットの上流(5’)及び下流(3’)のホモロジー領域を含む。
【0085】
本明細書で使用する「ME-3プロテアーゼ」は、サーモビフィダ・セルロシリティカ(Thermobifida cellulosilytica)由来の熱安定性セリンプロテアーゼである。例えば、T.セルロシリティカ(T.cellulosilytica)ME-3プロテアーゼ及びその変異体は、全体として参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2018/118815号パンフレットに記載されている。
【0086】
本明細書で使用する、「ZM207」と称されるB.サブチリス(B.subtilis)株は、欠失アラニン・ラセマーゼ遺伝子(ΔalrA)及びME-3プロテアーゼをコードする導入された発現カセットを含む。より特別には、導入された発現カセットは、上流(5’)にあってアラニン・ラセマーゼ(alrA)をコードするORFに機能的に連結している、上流(5’)に位置してME-3プロテアーゼをコードするオープンリーディングフレーム(ORF)に機能的に連結しているプロモーター配列(「P」)を含むが、ここでカセットは、B.サブチリス(B.subtilis)aprE遺伝子座(aprE::P-ME-3-alrA)内に組み込まれている。
【0087】
本明細書で使用する「ZM336」と称される遺伝子改変B.サブチリス(B.subtilis)株は、導入されたME-3プロテアーゼ発現カセット及び欠失yitMOPオペロン(ΔyitMOP)を含むが、ここで欠失yitMOPオペロンは、スペクチノマイシン耐性(specR)マーカー遺伝子(即ち、ΔyitMOP)で置換された。従って、ZM336株は、欠失yitMOPオペロン(ΔyitMOP)を親ZM207株に導入することによって構築された。
【0088】
本明細書で使用する「ZM268」と称される遺伝子改変B.サブチリス(B.subtilis)株は、yitMOPオペロンの欠失(ΔyitMOP)及びsdpABCオペロンの欠失(ΔsdpABC)を含む。アラニン・ラセマーゼ欠失株(ΔalrA)内においてyitMOPオペロン及びsdpABCオペロンを欠失させた後、ZM268株を入手するためにME-3プロテアーゼをコードする発現カセット(aprE::P-ME-3-alrA)を導入した。
【0089】
本明細書で使用する「ZM334」と称される遺伝子改変B.サブチリス(B.subtilis)株は、sdpABCオペロンの欠失(ΔsdpABC)を含むが、ここで欠失sdpABCオペロンは、テトラサイクリン耐性(tetR)マーカー遺伝子で置換された(即ち、ΔsdpABC)。従って、ZM334株は、欠失sdpABCオペロン(ΔsdpABC)を親ZM207株に導入することによって構築された。
【0090】
本明細書で使用する「ZM434」と称される遺伝子改変B.サブチリス(B.subtilis)株は、ΔyitM遺伝子の欠失(ΔyitM)を含むが、ここで欠失yitMオペロンは、エリスロマイシン耐性(ermC)マーカー遺伝子で置換された(即ち、ΔyitM)。従って、ZM434株は、欠失yitM(ΔyitM)を親ZM207株に導入することによって構築された。
【0091】
本明細書で使用する「V42プロテアーゼ」は、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)サブチリシンプロテアーゼBPN’に由来するセリンプロテアーゼである。例えば、V42プロテアーゼ及びその変異体は、(全体として参照により本明細書に組み込まれる)国際公開第2011/072099号パンフレットに記載されている。
【0092】
本明細書で使用する「CB24-12」と称されるB.サブチリス(B.subtilis)株は、欠失アラニン・ラセマーゼ遺伝子(ΔalrA)及びV42プロテアーゼをコードする導入された発現カセットを含む。より特別には、導入された発現カセットは、上流(5’)にあってアラニン・ラセマーゼ(alrA)をコードするORFに機能的に連結している、上流(5’)に位置してV42プロテアーゼをコードするオープンリーディングフレーム(ORF)に機能的に連結しているプロモーター配列(「P4」)を含むが、ここでカセットは、B.サブチリス(B.subtilis)aprE遺伝子座(aprE::P4-V42-alrA)内に組み込まれている。
【0093】
本明細書で使用する「JL77」と称される遺伝子改変B.サブチリス(B.subtilis)株(即ち、CB24-12親株に由来する)は、V42プロテアーゼ、欠失yitMOPオペロン(ΔyitMOP)及び欠失sdpABCオペロン(ΔsdpABC)をコードする同一の発現カセットを含む。例えば、JL77株のyitMOPオペロン及びsdpABCオペロンは、抗生物質耐性マーカーを含有するカセットを用いた相同組み換えによって欠失させられた。yitMOPオペロンは、loxP配列によって隣接されたスペクチノマイシンカセットで置換された。spdABCオペロンは、loxP配列によって隣接されたテトラサイクリンカセットで置換された。Creリコンビナーゼを発現させるためのカセットを含有するプラスミドを用いた形質転換は、抗生物質耐性マーカーは、1つのloxP配列を残してゲノムから切除される。
【0094】
本明細書で使用する用語「等価位置」は、特定のポリペプチド配列と整列させた後のアミノ酸残基位置、又は特定のポリヌクレオチド配列と整列させた後のヌクレオチド位置を意味する。
【0095】
用語「改変」及び「遺伝子改変」は互換的に使用され、以下を含む:(a)遺伝子(若しくはそのORF)における1つ以上のヌクレオチドの導入、置換、若しくは除去、又は遺伝子若しくはそのORFの転写若しくは翻訳に必要な調節要素における1つ以上のヌクレオチドの導入、置換、若しくは除去、(b)遺伝子破壊、(c)遺伝子変換、(d)遺伝子欠失、(e)遺伝子のダウンレギュレーション、(f)特異的変異誘発、及び/又は(g)本明細書に開示される任意の1つ以上の遺伝子のランダム変異誘発。
【0096】
本明細書で使用する「遺伝子の破壊」、「遺伝子破壊」、「遺伝子の不活化」及び「遺伝子不活化」は、互換的に使用され、宿主細胞は、機能的遺伝子産物(例えば、YitMタンパク質、YitOタンパク質、YitPタンパク質など)を産生することを実質的に妨げる任意の遺伝子改変を広く指す。例示的な遺伝子破壊方法には、ポリペプチドコード配列、プロモーター、エンハンサー又はまた別の調節要素を含む遺伝子の任意の部分の完全若しくは部分的な消失又は同一物の突然変異誘発が含まれるが、ここで突然変異誘発は、標的遺伝子を破壊/不活化し、機能的遺伝子産物(即ち、タンパク質)の産生を実質的に低減若しくは防止する、置換、挿入、欠失、逆位並びにそれらの任意の組み合わせ及び変形形態を包含する。
【0097】
本明細書で使用する、例えば語句「改変細胞は親細胞と比較して関心対象のタンパク質の増加した量を発現/産生する」において使用する複合用語「発現/産生する」は、本開示の宿主細胞内の関心対象のタンパク質の発現及び産生に関与する任意の工程を含むことが意図されている。
【0098】
本明細書で使用する「タンパク質産生を強化する」又は「タンパク質産生を増加させる」等の語句は、本開示の宿主細胞によって産生した増加した量の内因性タンパク質若しくは異種タンパク質に関する。所定の実施形態では、関心対象のタンパク質は、宿主細胞の内部で産生される、培養培地中へ分泌(又は、輸送)される。所定の実施形態では、関心対象のタンパク質は、培養培地中へ産生(分泌)される。タンパク質産生の増加は、例えば、親宿主細胞と比較して、より高い最大レベルのタンパク質若しくは酵素活性(例えば、プロテアーゼ活性、アミラーゼ活性、セルラーゼ活性、ヘミセルラーゼ活性等)として、又は産生される総細胞外タンパク質として検出され得る。
【0099】
本明細書で使用する「核酸」は、ヌクレオチド若しくはポリヌクレオチド配列及びそれらの断片若しくは部分並びにセンス鎖又はアンチセンス鎖の何れを表していても、二本鎖であっても又は一本鎖であってもよい、ゲノム又は合成起源のDNA、cDNA及びRNAを指す。遺伝子コードの縮重の結果として、多くのヌクレオチド配列が所与のタンパク質をコードし得ることは理解されよう。
【0100】
本明細書に記載したポリヌクレオチド(若しくは核酸分子)には、「遺伝子」、「ベクター」及び「プラスミド」が含まれることは理解されている。
【0101】
従って、用語「遺伝子」は、タンパク質のコード配列の全部又は一部を含む、アミノ酸の特定配列をコードするポリヌクレオチドを指し、例えば、遺伝子が発現する条件を決定する、プロモーター配列等の調節(非転写)DNA配列を含み得る。遺伝子の転写領域は、イントロン、5’-非翻訳領域(UTR)及び3’-UTRを含む非翻訳領域(UTR)並びにコード配列を含み得る。
【0102】
本明細書で使用する用語「コード配列」は、その(コードする)タンパク質産物のアミノ酸配列を直接特定するヌクレオチド配列を指す。コード配列の境界は、一般に、オープンリーディングフレーム(以下では、「ORF」)によって決定され、通常はATG開始コドンで始まる。コード配列には、典型的には、DNA、cDNA及び組み換えヌクレオチド配列が含まれる。
【0103】
本明細書で使用する用語「プロモーター」は、コード配列又は機能的RNAの発現を制御できる核酸配列を指す。一般に、コード配列は、プロモーター配列の3’(下流)に位置する。プロモーターは、それらの全体が天然遺伝子に由来してもよい、又は天然に存在する種々のプロモーターに由来する種々の要素から構成されていてもよい、又は合成核酸セグメントを含んでいてさえよい。種々のプロモーターが、種々の細胞型で、又は種々の生育段階で、又は種々の環境若しくは生理的条件に応答して、遺伝子の発現を指示し得ることは、当業者には理解されている。殆どの細胞型で遺伝子の発現を最も多く引き起こすプロモーターは、一般に、「構成的プロモーター」と呼ばれている。さらに、殆どの場合に調節配列の正確な境界は完全には明らかになっていないため、種々の長さのDNA断片が同じプロモーター活性を有し得ることは確認されている。
【0104】
本明細書で使用する「作動可能に連結される」という用語は、一方の機能が他方により影響されるような、単一の核酸断片上の核酸配列の結合を指す。例えば、プロモーターは、それがそのコード配列の発現に影響を及ぼすことができる場合(即ち、そのコード配列がプロモーターの転写制御下にある場合)、コード配列(例えば、ORF)に作動可能に連結している。コード配列は、センス又はアンチセンス配向で調節配列に作動可能に連結され得る。
【0105】
核酸は、それが他の核酸配列と機能的関係に置かれている場合、「作動可能に連結」している。例えば、分泌リーダー(即ち、シグナルペプチド)をコードするDNAは、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現している場合は、ポリペプチドのためのDNAに作動可能に連結している;プロモーター若しくはエンハンサーは、それがコード配列の転写に影響を及ぼす場合、そのコード配列に作動可能に連結している;又はリボソーム結合部位は、翻訳を促進するように配置されている場合、コード配列に作動可能に連結している。一般に、「作動可能に連結した」は、連結されるDNA配列が隣接している、及び分泌リーダーの場合には、隣接してリーディング期にあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは、隣接している必要はない。連結は、便宜的な制限部位でのライゲーションによって行われる。そのような部位が存在しない場合は、従来の手法に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーが使用される。
【0106】
本明細書で使用する「関心対象のタンパク質コード配列の遺伝子に連結した関心対象の遺伝子の発現を制御する機能的プロモーター配列(又はそれらのオープンリーディングフレーム)」は、バチルス属(Bacillus)におけるコード配列の転写及び翻訳を制御するプロモーター配列を指す。例えば、所定の実施形態では、本開示は、5’プロモーター(又は、5’プロモーター領域若しくはタンデム5’プロモーター等)を含むポリヌクレオチドであって、そのプロモーター領域が関心対象のタンパク質をコードする核酸配列に作動可能に連結しているポリヌクレオチドに向けられる。従って、所定の実施形態では、機能的プロモーター配列は、本明細書に開示したタンパク質をコードする遺伝子の発現を制御する。他の実施形態では、機能的プロモーター配列は、バチルス種(Bacillus sp.)細胞内の関心対象のタンパク質をコードする異種遺伝子(若しくは内因性遺伝子)の発現を制御する。
【0107】
本明細書で規定した「好適な調節配列」は、コード配列の上流(5’非コード配列)、コード配列内又はコード配列の下流(3’非コード配列)に位置しており、関連するコード配列の転写、RNAプロセシング若しくは安定性又は翻訳に影響を及ぼすヌクレオチド配列を指す。調節配列には、プロモーター、翻訳リーダー配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位及びステムループ構造が含まれ得る。
【0108】
本明細書で定義した、例えば「細菌細胞内に導入すること」又は「バチルス種(Bacillus sp.)細胞内に少なくとも1つのポリヌクレオチドオープンリーディングフレーム(ORF)、又はその遺伝子、又はそのベクターを導入すること」等の語句に使用される用語「導入すること」は、プロトプラスト融合法、天然若しくは人工形質転換(例えば、塩化カルシウム、エレクトロポレーション)法、形質導入法、トランスフェクション法、共役法等を含むがそれらに限定されない、ポリヌクレオチドを細胞内に導入するための当技術分野で公知の方法を含む(例えば、Ferrari et al.,1989を参照されたい)。
【0109】
本明細書で使用する「形質転換された」又は「形質転換」は、細胞が組み換えDNA技術の使用によって形質転換されていることを指す。形質転換は、典型的には、1つ以上のヌクレオチド配列(例えば、1つのポリヌクレオチド、ORF若しくは遺伝子)を細胞内に挿入することによって発生する。挿入されたヌクレオチド配列は、異種ヌクレオチド配列(即ち、形質転換対象の細胞には天然に存在しない配列)であってもよい。例えば、本開示の所定の実施形態では、親バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、親細胞に、関心対象のタンパク質をコードする核酸配列に作動可能に連結したプロモーターを含むポリヌクレオチド構築物を導入することによって改変(例えば、形質転換)され、それによって結果として、親細胞に由来する改変バチルス種(Bacillus sp.)(娘)宿主細胞が生じる。
【0110】
本明細書で使用する「形質転換」は、DNAが、染色体組込体又は自己複製染色体外ベクターとして維持されるように、外来DNAを宿主細胞内に導入することを指す。本明細書で使用する「形質転換DNA」、「形質転換配列」及び「DNA構築物」は、配列を宿主細胞又は生物に導入するために使用されるDNAを指す。形質転換DNAは、配列を宿主細胞又は生物に導入するために使用されるDNAである。このDNAは、インビトロでPCR又は任意の他の好適な技術によって生成され得る。幾つかの実施形態では、形質転換DNAは、入来配列を含むが、他の実施形態では、形質転換DNAは、ホモロジーボックスに隣接された入来配列をさらに含む。さらに別の実施形態では、形質転換DNAは、末端に付加された、他の非相同配列(即ち、スタッファー配列又はフランキング配列)を含む。末端は、例えば、ベクターへの挿入等のように、形質転換DNAが閉環を形成するように閉じることができる。
【0111】
核酸配列を細胞内に導入する状況において本明細書で使用する用語「導入(された)」は、核酸配列を細胞内に移すために好適な任意の方法を指す。導入のためのこのような方法には、プロトプラスト融合法、トランスフェクション法、形質転換法、エレクトロポレーション法、接合法及び形質導入法が含まれるが、これらに限定されない(例えば、Ferrari et al.,1989を参照されたい)。
【0112】
本明細書で使用する「入来配列」は、バチルス属(Bacillus)染色体内に導入されるDNA配列を指す。幾つかの実施形態では、入来配列は、DNA構築物の一部である。他の実施形態では、入来配列は、1種以上の関心対象のタンパク質をコードする。幾つかの実施形態では、入来配列は、形質転換対象の細胞のゲノム内に既に存在していても存在していなくてもよい(即ち、相同配列であっても非相同配列であってもよい)配列を含む。幾つかの実施形態では、入来配列は、1種以上の関心対象のタンパク質、遺伝子及び/又は突然変異若しくは改変遺伝子をコードする。代替の実施形態では、入来配列は、機能的な野生型遺伝子若しくはオペロン、機能的な変異遺伝子若しくはオペロン又は非機能的な遺伝子若しくはオペロンをコードする。幾つかの実施形態では、非機能的配列は、遺伝子の機能を破壊するために遺伝子に挿入され得る。別の実施形態では、入来配列は、選択マーカーを含む。さらに別の実施形態では、入来配列は、2つのホモロジーボックスを含む。
【0113】
本明細書で使用する「ホモロジーボックス」は、バチルス属(Bacillus)染色体内の配列と相同である核酸配列を指す。より詳細には、ホモロジーボックスは、本発明に従って、欠失する、破壊される、不活化される、ダウンレギュレートされる等の遺伝子又は遺伝子の幾つかの直接隣接するコード領域と約80~100%の配列同一性、約90~100%の配列同一性又は約95~100%の配列同一性を有する上流又は下流領域である。これらの配列は、バチルス属(Bacillus)染色体内にDNA構築物が組み込まれる場所を指示し、バチルス属(Bacillus)染色体のどの部分を入来配列で置換するかを指示する。本開示を限定することを意図するものではないが、ホモロジーボックスには、約1塩基対(bp)~200キロ塩基(kb)が含まれ得る。好ましくは、ホモロジーボックスは、約1bp~10.0kb;1bp~5.0kb;1bp~2.5kb;1bp~1.0kb、及び0.25kb~2.5kbを含む。ホモロジーボックスは又、約10.0kb、5.0kb、2.5kb、2.0kb、1.5kb、1.0kb、0.5kb、0.25kb及び0.1kbを含み得る。幾つかの実施形態では、選択マーカーの5’及び3’末端は、ホモロジーボックスによって隣接されるが、ここでホモロジーボックスは、遺伝子のコード領域に直接隣接する核酸配列を含む。
【0114】
本明細書で使用する語句「選択可能マーカー遺伝子」又は「選択可能マーカーをコードするヌクレオチド配列」は、宿主細胞内で発現可能であり、選択可能マーカーの発現が発現された遺伝子を含む細胞に、対応する選択剤の存在下又は必須栄養素の欠如下で増殖する能力を付与するヌクレオチド配列を指す。そのような選択可能マーカーの例としては、抗微生物剤が挙げられるが、それらに限定されない。従って、選択可能マーカーは、宿主細胞が目的入来DNAを取り込めたか、又は何らかの他の反応が発生したことの兆候を提供する遺伝子を指す。典型的には、選択可能マーカーは、形質転換中に外因性配列を受け入れていない細胞から外来DNAを含有する細胞を区別することを可能にする抗微生物剤耐性又は代謝有利性を宿主細胞に付与する遺伝子である。
【0115】
「存在する選択可能マーカー」は、形質転換対象の微生物の染色体上に所在するマーカーである。存在する選択可能マーカーは、形質転換DNA構築物上の選択可能マーカーとは異なる遺伝子をコードする。選択マーカーは、当業者にはよく知られている。上記で示したように、マーカーは、抗微生物耐性マーカー(例えば、ampR、phleoR、specR、kanR、eryR、tetR、cmpR及びneoR(例えば、Guerot-Fleury,1995;Palmeros et al.,2000;及びTrieu-Cuot et al.,1983を参照されたい)であり得る。幾つかの実施形態では、本発明は、クロラムフェニコール耐性遺伝子(例えば、pC194上に存在する遺伝子、並びにバチルス種(Bacillus sp.)のゲノム内に存在する耐性遺伝子)を提供する。この耐性遺伝子は、本発明において、並びに染色体に組み込まれたカセット及び統合的プラスミドの染色体増幅を包含する実施形態において、特に有用である(例えば、Albertini and Galizzi,1985;Stahl and Ferrari,1984を参照されたい)。本発明により有用な他のマーカーとしては、セリン、リシン、トリプトファン等の栄養要求性マーカー及びβ-ガラクトシダーゼ若しくは蛍光タンパク質等の検出マーカーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0116】
本明細書で規定した宿主細胞「ゲノム」、細菌細胞「ゲノム」又はバチルス種(Bacillus sp.)「ゲノム」は、染色体遺伝子及び染色体外遺伝子を含む。
【0117】
本明細書で使用する用語「プラスミド」、「ベクター」及び「カセット」は、細胞の中央代謝には典型的には関与しない遺伝子を運ぶことが多い、通常は環状の二本鎖DNA分子の形態にある染色体外要素を指す。そのような要素は、多数のヌクレオチド配列が、選択された遺伝子産物のためのプロモーター断片及びDNA配列を適切な3’-非翻訳配列と共に細胞内に導入できる固有の構成に接合又は再結合されている任意の起源に由来する、線状若しくは環状の、一本鎖若しくは二本鎖のDNA若しくはRNAの自己複製配列、ゲノム組み込み配列、ファージ又はヌクレオチド配列であってよい。
【0118】
本明細書で使用する「形質転換カセット」は、遺伝子(又は、そのORF)を含み、外来遺伝子に加えて、特定の宿主細胞の形質転換を促進する要素を有する特異的ベクターを指す。
【0119】
本明細書で使用する用語「ベクター」は、細胞内で複製(増殖)することができ、新たな遺伝子又はDNAセグメントを細胞内に運ぶことができる任意の核酸を指す。従って、この用語は、様々な宿主細胞間を輸送するために設計された核酸構築物を指す。ベクターとしては、「エピソーム」(即ち、自律的に複製するか、又は宿主生物の染色体に組み込むことができる)である、ウイルス、バクテリオファージ、プロウイルス、プラスミド、ファージミド、トランスポゾン、並びにYAC(酵母人工染色体)、BAC(細菌人工染色体)、PLAC(植物人工染色体)等の人工染色体が挙げられる。
【0120】
「発現ベクター」は、細胞内で異種DNAを組み込んで発現させる能力を有するベクターを指す。多数の原核生物及び真核生物の発現ベクターが市販されており、当業者には知られている。適切な発現ベクターの選択は、当業者の知識の範囲内である。
【0121】
本明細書で使用する用語「発現カセット」は、標的細胞内の特定の核酸の転写を許容する一連の特定の核酸要素を用いて、組み換え又は合成的に生成される核酸構築物(即ち、これらは、上述したベクター若しくはベクター要素である)を指す。組み換え発現カセットは、プラスミド、染色体、ミトコンドリアDNA、プラスチドDNA、ウイルス又は核酸断片内に組み込むことができる。典型的には、発現ベクターの組み換え発現カセット部分には、他の配列の中でも、転写対象の核酸配列及びプロモーターが含まれる。幾つかの実施形態では、DNA構築物には、標的細胞内の特定の核酸の転写を許容する一連の特定の核酸要素も含まれる。所定の実施形態では、本開示のDNA構築物は、本明細書で定義する選択マーカー及び不活化染色体セグメント又は遺伝子セグメント又はDNAセグメントを含む。
【0122】
本明細書で使用する「ターゲティングベクター」は、その中にターゲティングベクターが形質転換される宿主細胞の染色体内の領域に相同なポリヌクレオチド配列を含み、その領域で相同組み換えを駆動できるベクターである。例えば、ターゲティングベクターは、相同組み換えによって宿主細胞の染色体に変異を導入する際に使用される。幾つかの実施形態では、ターゲティングベクターは、例えば末端に付加された他の非相同配列(即ち、スタッファー配列又はフランキング配列)を含む。幾つかの実施形態では、ターゲティングベクターには、RNA誘導エンドヌクレアーゼ、DNA誘導エンドヌクレアーゼ及びリコンビナーゼを含むがそれらに限定されない相同組み換えを増加させるための要素が含まれる。末端は、例えば、ベクターへの挿入等のように、ターゲティングベクターが閉環を形成するように閉じることができる。
【0123】
本明細書で使用する用語「プラスミド」は、クローニングベクターとして使用され、且つ多くの細菌及び幾つかの真核生物において染色体外の自己複製遺伝要素を形成する、環状の二本鎖(ds)DNA構築物を指す。幾つかの実施形態では、プラスミドは宿主細胞のゲノムに組み込まれる。
【0124】
本明細書で使用する用語「関心対象のタンパク質」(略称「POI」)は、バチルス種(Bacillus sp.)宿主細胞内で発現するのが望ましい関心対象のタンパク質を指す。従って、本明細書で使用するPOIは、酵素、基質結合タンパク質、界面活性タンパク質、構造タンパク質、受容体タンパク質等であり得る。所定の実施形態では、本開示の改変細胞は、親細胞に比較して、増加した量の異種POI若しくは増加した量の内因性POIを産生する。特定の実施形態では、本開示の改変細胞によって産生したPOIの増加した量は、親細胞と比較して、少なくとも0.5%の増加、少なくとも1.0%の増加、少なくとも5.0%の増加又は5.0%超の増加である。
【0125】
同様に、本明細書で定義した「関心対象の遺伝子」(略称「GOI」)は、POIをコードする核酸配列(例えば、ポリヌクレオチド、遺伝子又はORF)を指す。「関心対象のタンパク質」をコードする「関心対象の遺伝子」は、天然型遺伝子、突然変異遺伝子又は合成遺伝子であってよい。
【0126】
本明細書で使用する用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、互換的に使用され、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸残基を含む任意の長さのポリマーを指す。本明細書では、アミノ酸残基に対し、従来の1文字コード又は3文字コードを使用する。ポリペプチドは、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、改変アミノ酸を含んでもよく、及び非アミノ酸によって分断されていてもよい。ポリポチペプチドという用語は又、自然に、或いは介入;例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化又は標識化成分との結合等の任意の他の操作若しくは改変によって改変されているアミノ酸ポリマーを包含する。されに、この定義の範囲には、例えば、アミノ酸の1つ以上のアナログ(例えば、非天然アミノ酸等を含む)を含有するポリペプチド、及び当該技術分野において知られる他の改変も含まれる。
【0127】
所定の実施形態では、本開示の遺伝子は、酵素(例えば、アセチルエステラーゼ、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、アラビナーゼ、アラビノフラノシダーゼ、炭酸脱水酵素、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、キチナーゼ、キモシン、クチナーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エピメラーゼ、エステラーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、α-グルカナーゼ、グルカンリアーゼ(glucan lysase)、エンド-β-グルカナーゼ、グルコアミラーゼ、グルコースオキシダーゼ、α-グルコシダーゼ、β-グルコシダーゼ、グルクロニダーゼ、グリコシルヒドロラーゼ、ヘミセルラーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、ヒドロラーゼ、インベルターゼ、イソメラーゼ、ラッカーゼ、リパーゼ、リアーゼ、マンノシダーゼ、オキシダーゼ、酸化還元酵素、ペクチン酸リアーゼ、ペクチンアセチルエステラーゼ、ペクチンデポリメラーゼ、ペクチンメチルエステラーゼ、ペクチン分解酵素、ペルヒドロラーゼ、ポリオールオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、フィターゼ、ポリガラクツロナーゼ、プロテアーゼ、ペプチダーゼ、ラムノ-ガラクツロナーゼ、リボヌクレアーゼ、トランスフェラーゼ、輸送タンパク質、トランスグルタミナーゼ、キシラナーゼ、ヘキソースオキシダーゼ及びこれらの組み合わせ)等の商業的に関連する工業用の関心対象のタンパク質をコードする。
【0128】
本明細書で使用する「変異」ポリペプチドは、一般的には組み換えDNA技術による、1個以上のアミノ酸の置換、付加又は欠失による親(若しくは参照)ポリペプチドに由来するポリペプチドを指す。変異ポリペプチドは、少数のアミノ酸残基によって親ポリペプチドとは異なる可能性があり、親(参照)ポリペプチドとの一次アミノ酸配列の相同性/同一性のレベルによって定義され得る。
【0129】
好ましくは、変異ポリペプチドは、親(参照)ポリペプチド配列と、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%さえのアミノ酸配列同一性を有する。本明細書で使用する「変異」ポリヌクレオチドは、変異ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを指し、この「変異ポリヌクレオチド」は、親ポリヌクレオチドと特定の程度の配列相同性/同一性を有するか、又はストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で親ポリヌクレオチド(又は、その相補体)とハイブリダイズする。好ましくは、変異ヌクレオチドは、親(参照)ポリヌクレオチド配列と、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%さえのヌクレオチド配列同一性を有する。
【0130】
本明細書で使用する「突然変異」は、核酸配列内の任意の変更又は変化を指す。点突然変異、欠失突然変異、サイレント突然変異、フレームシフト突然変異、スプライシング突然変異等を含む数種のタイプの突然変異が存在する。突然変異は、特異的に(例えば、部位特異的変異誘発によって)又はランダムに(例えば、化学薬品、修復マイナス細菌株を通しての継代によって)行われ得る。
【0131】
本明細書で使用するポリペプチド若しくはその配列に関連して、用語「置換」は、1つのアミノ酸とまた別のアミノ酸との取り換え(即ち、置換)を意味する。
【0132】
本明細書で規定した「内因性遺伝子」は、生物のゲノム中の天然の位置に存在する遺伝子を指す。
【0133】
本明細書で規定した「異種」遺伝子、「非内因性」遺伝子又は「外来」遺伝子は、通常は宿主生物中では見出されないが、遺伝子導入によって宿主生物に導入された遺伝子(若しくはORF)を指す。本明細書で使用する用語「外来」遺伝子は、非天然生物中に挿入された天然遺伝子(若しくはORF)及び/又は天然若しくは非天然生物中に挿入されたキメラ遺伝子を含む。
【0134】
本明細書で定義する「異種」核酸構築物又は「異種」核酸配列は、その中でそれが発現する細胞に対して天然ではない配列の部分を有する。
【0135】
本明細書で定義する「異種制御配列」は、天然では関心対象の遺伝子の発現を調節(制御)するために機能しない遺伝子発現制御配列(例えば、プロモーター又はエンハンサー)を指す。一般に、異種核酸配列は、その中にそれらが存在する細胞又はゲノムの一部に対して内因性(天然)ではなく、感染、トランスフェクション、形質転換、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション等によって細胞に加えられている。「異種」核酸構築物は、天然宿主細胞内で見出される制御配列/DNAコード配列の組み合わせと同一又は異なる制御配列/DNAコード(ORF)配列の組み合わせを含有し得る。
【0136】
本明細書で使用する用語「シグナル配列」及び「シグナルペプチド」は、成熟タンパク質又はタンパク質の前駆体形の分泌又は直接輸送に関与する可能性があるアミノ酸残基の配列を指す。シグナル配列は、典型的には、前駆体又は成熟タンパク質配列のN末端に位置する。シグナル配列は、内因性であっても外来性であってもよい。シグナル配列は、通常、成熟タンパク質には存在しない。シグナル配列は、典型的には、タンパク質が輸送された後にシグナルペプチダーゼによってタンパク質から切断される。
【0137】
用語「由来する」には、用語「~から生じた」、「~から得られた」、「~から入手可能な」及び「~から作成された」が含まれ、一般には、1つの特定の材料若しくは組成物が別の材料若しくは組成物にその起源が見出されるか、又は他の特定の材料若しくは組成物を参照して記載できる特徴を有することを示す。
【0138】
本明細書で使用する用語「相同性」は、相同ポリヌクレオチド又は相同ポリペプチドに関する。2つ以上のポリヌクレオチド又は2つ以上のポリペプチドが相同である場合、これは、それらの相同のポリヌクレオチド又はポリペプチドが、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より一層好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、及び最も好ましくは少なくとも98%の「同一性度」を有することを意味している。2つのポリヌクレオチド配列又はポリペプチド配列が、本明細書で定義するように相同であるほどの十分に高い同一性度を有するか否かは、当該技術分野で知られるコンピュータープログラム、例えば、GCGプログラムパッケージで提供される「GAP」(Program Manual for the Wisconsin Package、Version 8,August 1994、Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,Wisconsin,USA 53711)を使用して2つの配列を整列させることにより好適に調べることができる(Needleman and Wunsch,(1970)。DNA配列比較のために以下の設定でGAPを使用:GAP作成ペナルティ(creation penalty)5.0及びGAP伸長ペナルティ(extension penalty)0.3。
【0139】
本明細書で使用する用語「同一性パーセント(%)」は、配列アラインメントプログラムを使用して整列させた場合の、ポリペプチドをコードする核酸配列間又はポリペプチドのアミノ酸配列間の核酸又はアミノ酸配列の同一性のレベルを指す。
【0140】
本明細書で使用する用語「比生産性」は、所定の期間に渡って、細胞1個当たり、単位時間当たりに産生するタンパク質の総量を指す。
【0141】
本明細書で定義する用語「精製(された)」、「単離(された)」又は「濃縮(された)」は、生体分子(例えば、ポリペプチド又はポリヌクレオチド)が、それが本来結合している、天然型の一部若しくは全部の構成要素から分離することによって、その天然状態から改変されることを指す。そのような単離若しくは精製は、最終組成物中の望ましくない全細胞、細胞残屑、不純物、外来タンパク質又は酵素を除くための、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、疎水性分離、透析、プロテアーゼ処理、硫酸アンモニウム沈澱若しくは他のタンパク質塩析、遠心分離、サイズ排除クロマトグラフィー、濾過、精密濾過、ゲル電気泳動又は勾配による分離等の当該技術分野で知られる分離技術によって実施することができる。精製又は単離した生体分子組成物には、その後さらに、追加の便益を付与する構成要素、例えば、活性化剤、抗阻害剤、望ましいイオン、pH調節化合物又は他の酵素若しくは化学物質を添加することができる。
【0142】
本明細書で使用する「相同遺伝子」は、異なるが通常は関連する種に由来する、相互に対応し、且つ相互に同一又は極めて類似する1対の遺伝子を指す。この用語は、種分化(即ち、新規な種の発生)によって分離された遺伝子(例えば、オルソロガス遺伝子)、及び遺伝子重複によって分離されてきた遺伝子(例えば、パラロガス遺伝子)を包含する。
【0143】
本明細書で使用する「オルソログ」及び「オルソロガス遺伝子」は、種分化によって共通の先祖遺伝子(即ち、相同遺伝子)から生じた異なる種の遺伝子を指す。典型的には、オルソログは、進化の過程中に同じ機能を保持している。オルソログの同定は、新しく配列が決定されたゲノムにおける遺伝子機能の信頼性の高い予測に使用される。
【0144】
本明細書で使用する「パラログ」及び「パラロガス遺伝子」は、ゲノム内での重複に関係する遺伝子を指す。オルソログは進化の過程を通して同じ機能を保持し、一方、パラログは幾つかの機能は多くは元の機能に関連するものの新しい機能を生じる。パラロガス遺伝子の例としては、トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ及びトロンビン(これらは何れも、セリンプロテイナーゼであり、同じ種において同時に発生する)をコードする遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0145】
本明細書で使用する「相同性」は、配列類似性又は同一性を指すが、同一性が好ましい。この相同性は、当該技術分野で知られる標準技術を使用して決定される(例えば、Smith and Waterman,1981;Needleman and Wunsch,1970;Pearson and Lipman,1988;Wisconsin Genetics Software Package(Genetics Computer Group,Madison,WI)のGAP、BESTFIT、FASTA及びTFASTA等のプログラム;並びにDevereux et al.,1984を参照されたい)。
【0146】
本明細書で使用する用語「ハイブリダイゼーション」は、当該技術分野で知られているように、核酸鎖がその相補鎖と塩基対を形成することによって結合するプロセスを指す。核酸配列は、2つの配列が中~高ストリンジェンシーなハイブリダイゼーション条件下及び洗浄条件下で互いに特異的にハイブリダイズする場合、参照核酸配列に「選択的にハイブリダイズ可能」であると考えられる。ハイブリダイゼーション条件は、核酸結合複合体又はプローブの融解温度(Tm)に基づいている。例えば、「最大ストリンジェンシー」は、通常、Tm
-5℃(プローブのTmを5℃下回る)程度で、「高ストリンジェンシー」はTmを約5~10℃下回って、「中間ストリンジェンシー」はプローブのTmを約10~20℃下回って、及び「低ストリンジェンシー」はTmを約20~25℃下回って、起こる。
【0147】
機能上、最大ストリンジェンシー条件はハイブリダイゼーションプローブと厳密な同一性、又はほぼ厳密な同一性を有する配列を同定するために用いることができ、一方、中間又は低ストリンジェンシーハイブリダイゼーションは、ポリヌクレオチド配列ホモログを同定又は検出するために用いることができる。中~高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は当該技術分野でよく知られている。高ストリンジェンシー条件の例としては、50%のホルムアミド、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%のSDS及び100pg/mLの変性キャリアDNA中における約42℃でのハイブリダイゼーション、その後の2×SSC及び0.5%のSDS中における室温(RT)での2回の洗浄、並びに0.1×SSC及び0.5%のSDS中における42℃でのさらなる2回の洗浄が挙げられる。中程度のストリンジェント条件の例としては、20%のホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10%の硫酸デキストラン及び20mg/mLの変性断片処理済みサケ精子DNAを含む溶液中、37℃で一晩インキュベートし、続いて1×SSC中、約37~50℃でフィルターを洗浄することが挙げられる。当業者は、プローブ長等の因子を適合させるために必要な温度、イオン強度等を調整する方法を知っている。
【0148】
本明細書で使用する場合、「組み換え」は、異種核酸配列の導入によって改変されている、又は細胞がそのように改変された細胞に由来する細胞又はベクターへの言及が含まれる。従って、例えば、組み換え細胞は、細胞の天然(非組み換え)形態内の同一形態においては見出されない遺伝子を発現する、又はヒトが意図的に介入した結果として、さもなければ異常に発現する、過少発現する、若しくは全く発現しない天然遺伝子を発現する。「組み換え」、「組み換える(こと)」又は「組み換え」核酸を生成することは、一般に、2つ以上の核酸断片の組み立てであり、この組み立ては、キメラ遺伝子を発生させる。
【0149】
本明細書で使用する場合、「フランキング配列」は、考察対象の配列の上流(5’)又は下流(3’)にある任意の配列を指す(例えば、遺伝子A-B-Cでは、遺伝子BがA及びCの遺伝子配列にフランキングされている)。所定の実施形態では、入来配列は、両側でホモロジーボックスにフランキングされている。また別の実施形態においては、入来配列及びホモロジーボックスは、両側でスタッファー配列によってフランキングされている単位を含む。幾つかの実施形態では、フランキング配列は、一方の側(3’又は5’)にのみ存在するが、好ましい実施形態では、フランキングされている配列の両側に存在する。各ホモロジーボックスの配列は、バチルス属(Bacillus)染色体内の配列と相同である。これらの配列は、バチルス属(Bacillus)染色体のどこに新規な構築物が組み込まれ、バチルス属(Bacillus)染色体のどの部分が入来配列により置換されるかを指示する。他の実施形態では、選択マーカーの5’及び3’末端は、不活化染色体セグメントの一部を含むポリヌクレオチド配列によってフランキングされている。幾つかの実施形態では、フランキング配列は、一方の側(3’又は5’)にのみ存在するが、他の実施形態では、フランキングされている配列の両側に存在する。幾つかの実施形態では、ホモロジーボックスは、構築物がゲノム内で再結合すると、遺伝子Eは、ゲノムから取り除かれるであろうように、直接的に相互にフランキングする又は介入配列(例えば、遺伝子D-E-Fに対して構築物D~F)を欠如する。
【0150】
II.共食い細胞のストレス反応
それらの天然環境において、微生物は、常に栄養素を得るために争わなければならない。侵入してくる種から彼らの生息環境を防御するために、多数の細菌は、それらの細胞外被の完全性及び/又は生合成を妨害する抗微生物ペプチド(AMP)を産生且つ分泌する(例えば、AMPの作用は細胞増殖の停止をもたらして細胞溶解をもたらすことが多い(Silver,2003;Silver,2006))。従って、そのような抗微生物ペプチド(AMP)攻撃から防御するために、多数の細菌は、複雑な細胞外被ストレス反応を誘導する。例えば、炭素源の限界に直面すると、B.サブチリス(B.subtilis)は、胞子形成と呼ばれる生存戦略を開始し、B.サブチリス(B.subtilis)が長期間に渡る飢餓を生き残ることを許容する、高度に耐性の内生胞子の形成をもたらす。このエネルギーを必要とする不可逆性のプロセスへの深い関与を回避するために、B.サブチリス(B.subtilis)は、できる限り長い間胞子形成を遅延させるために「共食い」と呼ばれる別の戦略を使用する(Gonzalez-Pastor et al.,2003)。B.サブチリス(B.subtilis)における共食いは、一般に2種の公知の共食い毒素(AMP)である胞子形成遅延タンパク質(SDP)及び胞子形成殺滅因子(SKF)の産生及び分泌を包含し、それらの共食い毒素タンパク質は、感受性の同胞種を溶解することができる。従って、溶解した同胞種細胞は、次に共食いが緩徐化されるための栄養素を提供する、又はそれらが侵入する胞子形成を防止さえすると考えられる。
【0151】
例えば、概してGonzalez-Pastor et al.(2003)によって記載されたように、B.サブチリス(B.subtilis)skfオペロンは、8個の遺伝子(即ち、skfABCDEFGH)を含むが、ここでskfA遺伝子は、AMP毒素SKFをコードする;及びB.サブチリス(B.subtilis)sdpオペロンは、3個の遺伝子(即ち、sdpABC)を含むが、ここでsdpC遺伝子は、AMP毒素SPDをコードする。Perez Morales et al.(2013)によるspdABCオペロンに関するより最近の研究は、コードされたSdpA及びSdpBタンパク質が未成熟SpdCタンパク質の細胞外で選択される成熟及び活性SDP毒素タンパク質への翻訳後プロセシングのために必須であることを示唆している。Wang et al.(2014)は、B.サブチリス(B.subtilis)における所定の細胞溶解遺伝子(即ち、skfA、sdpC、xpf若しくはlytC)の単一及び組み合わせ欠失の作用について研究したが、ここで最大数の無傷細胞は、四重突然変異体(ΔlytCΔsdpCΔxpfΔskfA)の培養中で検出された。Wang et al.(2014)によって結論付けられたように、細胞内及び分泌された組み換えタンパク質(各々、ナットウキナーゼ及びβ-ガラクトシダーゼ)の産生は、主要PGヒドロラーゼ、プロファージコード化xpf並びに共食い因子skfA及びsdpCをコードするlytCの欠失によって四重突然変異体LM2531(ΔlytCΔsdpCΔxpfΔskfA)の培養中において有意に上昇した。
【0152】
本明細書に記載し、下記の実施例の部に提示したように、本出願人は、yitMOPと称される、B.サブチリス(B.subtilis)において新規な共食いオペロンを同定したが、そのオペロンは、YitMタンパク質(配列番号2)、YitOタンパク質(配列番号4)及びYitPタンパク質(配列番号6)をコードする。より詳細には、本出願人は、新規なyitMOPオペロンを、FNAプロテアーゼを発現するB.サブチリス(B.subtilis)株のトランスクリプトーム分析における高度に発現した転写産物であると同定した。
【0153】
従って、下記の実施例3にさらに記載するように、本出願人は、導入されたプロテアーゼ(ME-3)発現カセットを含むZM207と称される親B.サブチリス(B.subtilis)細胞(株)並びにZM334、ZM336及びZM434と称されるその改変B.サブチリス(B.subtilis)細胞(株)を構築した;ここでZM334細胞は、同一プロテアーゼ(ME-3)発現カセット及び欠失sdpABCオペロン(ΔsdpABC)を含み、ZM336細胞は、ME-3プロテアーゼ発現カセット及び欠失yitMOPオペロン(ΔyitMOP)を含み、並びにZM434細胞は、ME-3プロテアーゼ発現カセット及びyitM遺伝子の欠失(ΔyitM)を含む。ZM268細胞は、ME-3プロテアーゼ発現カセット、欠失yitMOPオペロン(ΔyitMOP)及び欠失sdpABCオペロン(ΔsdpABC)を含み、yitMOPオペロンの欠失(ΔyitMOP)、欠失sdpABCオペロン(ΔsdpABC)及びアラニン・ラセマーゼ遺伝子の欠失(ΔalrA)プロテアーゼ(ME-3)を伴う宿主内にプロテアーゼ(ME-3)発現カセットを導入することによって構築した。
【0154】
実施例3に提示したように、親(ZM207;対照)及び改変B.サブチリス(B.subtilis)細胞(ZM334、ZM336、ZM268及びZM434)は、42℃でGrant’s II培地内の同一条件下の振とうフラスコ内で40時間に渡り発酵させた。続いて、発酵上清を取り出し、ME-3プロテアーゼ活性(表15)を測定した。例えば、表15に示したように、ZM334(ΔsdpABC)株及びZM336(ΔyitMOP)株は、ZM207(対照)株と比較して、増加した量のME-3プロテアーゼを産生した。同様に、yitMOP及びsdpABCオペロンの組み合わせ欠失(即ち、ΔyitMOP+ΔsdpABC)を含むZM268株(表15)は、ZM207親株、ZM334株(ΔsdpABC)及びZM336株(ΔyitMOP)と比較して、増加した量のプロテアーゼを産生する。さらに、驚くべきことに、yitM ORF単独の破壊又は欠失は、ZM434(ΔyitM)株がZM336(ΔyitMOP)株よりわずかに多量のME-3プロテアーゼを産生したので、増加したタンパク質産生の有益な表現型を引き出すために十分であることが観察された(表15)。
【0155】
同様に、下記の実施例4に提示及び記載したように、本出願人はさらに、導入されたプロテアーゼ(V42)発現カセットを含むCB24-12と称される親B.サブチリス(B.subtilis)(株)及び同一のV42プロテアーゼ発現カセット並びにyitMOPオペロン及びsdpABCオペロンの組み合わせ欠失(ΔyitMOP+ΔsdpABC)を含むJL77と称される改変B.サブチリス(B.subtilis)娘細胞プロテアーゼ発現カセットを構築した。実施例4に記載したように、B.サブチリス(B.subtilis)CB24-12及びJL77株を大規模発酵条件下でV42プロテアーゼ産生について評価した。例えば、
図2に提示したように、CB24-12及びL77株は、同一の標準条件下の発酵槽内で試験し、各株を2回ずつランし、発酵の終了時のV42プロテアーゼ産生の平均改善率を示した。従って、
図2に提示したように、JL77株についての発酵の終了時のV42プロテアーゼ産生における平均増加率は、発酵の終了時にCB24-12株によって産生したV42プロテアーゼの量に比較して、およそ10%の増加であった。
【0156】
これらの観察所見は、バチルス種(Bacillus sp.)細胞におけるyitMOPオペロンの遺伝子改変が、親バチルス種(Bacillus sp.)細胞と比較して、強化されたタンパク質産生性表現型(即ち、天然yitMOPオペロンを含む)を生じさせることを証明している。さらに、これらの観察所見は、バチルス種(Bacillus sp.)細胞におけるyitMOPオペロン及びsdpABCオペロンの組み合わせ遺伝子改変が、さらにyitMOPオペロン単独の遺伝子改変を含む改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞に比較して観察されたタンパク質産生性表現型を強化することも証明している(例えば、実施例3、表15及び実施例4、
図2を参照されたい)。
【0157】
同様に、驚くべきことに、本明細書ではyitM遺伝子単独の遺伝子改変を含むバチルス種(Bacillus sp.)細胞が、yitMOPオペロン及びsdpABCオペロンの組み合わせ遺伝子改変を含むバチルス種(Bacillus sp.)細胞と比較して、強化されたタンパク質産生性表現型を証明したことが観察された(ΔyitMOP+ΔsdpABC;実施例3、表15)。
【0158】
III.分子生物学
上記で説明したように、本開示の所定の実施形態は、天然yitMOPオペロンを含む親バチルス種(Bacillus sp.)細胞に由来する改変親バチルス種(Bacillus sp.)細胞に関する。特定の実施形態では、改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、改変yitMOPオペロンを含む。所定の他の実施形態では、改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、破壊又は欠失yitM遺伝子を含む。所定の他の実施形態では、本開示の改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、さらに欠失spdABCオペロンを含む。所定の実施形態は、それから改変B.リケニフォルミス(B.licheniformis)(娘)細胞を生成するために親バチルス種(Bacillus sp.)細胞を遺伝子改変するための組成物及び方法に関する。
【0159】
従って、本開示の所定の実施形態は、バチルス種(Bacillus sp.)細胞を遺伝子改変するための方法であって、その改変が、(a)遺伝子(若しくはそのORF)内での1つ以上のヌクレオチドの導入、置換若しくは除去又は遺伝子若しくはそのORFの転写若しくは翻訳のために必要とされる調節要素内の1つ以上のヌクレオチドの導入、置換若しくは除去、(b)遺伝子の破壊、(c)遺伝子の変換、(d)遺伝子の欠失、(e)遺伝子の下方制御、(f)部位特異的変異誘発及び/又は(g)ランダム突然変異誘発を含むがそれらに限定されない方法に向けられる。例えば、本明細書で使用する遺伝子改変は、バチルス種(Bacillus sp.)細胞からの1つ以上の遺伝子の改変(例えば、yitMOPオペロン及び/又はspdABCオペロンの1つ以上の遺伝子)を含むがそれには限定されない。
【0160】
従って、所定の実施形態では、本開示の改変バチルス属(Bacillus)細胞は、当該技術分野において周知である方法、例えば、挿入、破壊、置換又は欠失を使用して、遺伝子の発現を低減させるか又は排除することによって構築される。改変又は不活化対象の遺伝子の部分は、例えば、コード領域、又はコード領域を発現させるために必要とされる調節要素であってよい。
【0161】
そのような調節配列又は制御配列の例は、プロモーター配列又はその機能的部分(即ち、核酸配列の発現に十分に影響を及ぼす部分)であり得る。改変のための他の制御配列としては、リーダー配列、プロペプチド配列、シグナル配列、転写ターミネーター、転写活性化因子等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0162】
所定の他の実施形態では、改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、本開示の上記の遺伝子の少なくとも1つの発現を排除若しくは低減させるための遺伝子欠失によって構築される。遺伝子欠失技術は、遺伝子の部分的又は完全な除去を可能にし、それによりそれらの発現を排除する、又は非機能的(若しくは活性が低減した)タンパク質産物を発現させる。そのような方法では、遺伝子の欠失は、遺伝子にフランキングする5’及び3’領域を隣接して含有するように構築されているプラスミドを用い、相同組み換えによって遂行され得る。隣接する5’及び3’領域は、例えば、プラスミドが細胞内で樹立されることを可能にする許容温度で第2の選択可能マーカーと会合しているpE194等の感温性プラスミドでバチルス属(Bacillus)細胞内に導入され得る。細胞はその後、相同フランキング領域の1つで染色体内に組み込まれたプラスミドを有する細胞を選択するために非許容温度へシフトされる。プラスミドを組み込むための選択は、第2の選択可能マーカーの選択によって実施される。組み込み後、第2の相同フランキング領域での組み換え事象が、選択せずに細胞を数世代にわたり許容温度へシフトすることによって刺激される。細胞をプレーティングして単一コロニーを得、このコロニーを両方の選択可能マーカーの消失について試験する(例えば、Perego,1993を参照されたい)。従って、当業者であれば(例えば、yitM、yitO、及びyitP(核酸)配列及びそのコードされたyitM、yitO、及びyitPタンパク質配列を参照することによって)、完全又は部分的欠失に好適な遺伝子のコード配列及び/又は遺伝子の非コード配列中のヌクレオチド領域を容易に同定することができる。
【0163】
他の実施形態では、本開示の改変バチルス属(Bacillus)細胞は、それらの転写又は翻訳のために必要とされる遺伝子又は調節要素内の1つ以上のヌクレオチドを導入するか、置換するか、又は除去することによって構築される。例えば、終止コドンの導入、開始コドンの除去、又はオープンリーディングフレームのフレームシフトを生じさせるように、ヌクレオチドを挿入又は除去し得る。そのような改変は、当該技術分野で知られる方法に従って、部位特異的変異誘発又はPCR生成変異誘発によって行われ得る(例えば、Botstein and Shortle,1985;Lo et al.,1985;Higuchi et al.,1988;Shimada,1996;Ho et al.,1989;Horton et al.,1989及びSarkar and Sommer,1990を参照されたい)。従って、所定の実施形態では、本開示の遺伝子は、完全又は部分的欠失によって不活化される。
【0164】
別の実施形態では、改変バチルス属(Bacillus)細胞は、遺伝子変換のプロセスによって構築される(例えば、Iglesias and Trautner,1983を参照されたい)。例えば、遺伝子変換法では、遺伝子に対応する核酸配列は、インビトロで変異させられて欠陥のある核酸配列を産生し、これは、その後親バチルス属(Bacillus)細胞に形質転換されて欠陥のある遺伝子を産生する。相同組み換えによって、欠陥のある核酸配列は、内因性遺伝子に取って代わる。欠陥のある遺伝子又は遺伝子断片は又、欠陥のある遺伝子を含む形質転換体の選択に使用することができるマーカーをコードすることが望ましい場合がある。例えば、欠陥のある遺伝子は、選択可能マーカーと会合して、非複製又は温度感受性プラスミドに導入され得る。プラスミドを組み込むための選択は、プラスミドを複製させない条件下でのマーカー選択によって達成される。遺伝子置換をもたらす第2の組み換え事象の選択は、選択可能マーカーの欠損及び変異遺伝子の獲得についてコロニーを調べることによって達成される(Perego,1993)。或いは、欠陥のある核酸配列は、以下に記載する通り、遺伝子の1つ以上のヌクレオチドの挿入、置換又は欠失を含有し得る。
【0165】
他の実施形態では、改変バチルス属(Bacillus)細胞は、遺伝子の核酸配列と相補的であるヌクレオチド配列を使用する確立されたアンチセンス技術によって構築される(Parish and Stoker,1997)。より詳細には、バチルス属(Bacillus)細胞による遺伝子の発現は、この遺伝子の核酸配列に相補的なヌクレオチド配列を導入することにより低減(下方制御)又は排除することができ、それは細胞内で転写され得、細胞内で産生されるmRNAにハイブリダイズすることができる。相補的アンチセンスヌクレオチド配列がmRNAにハイブリダイズすることをできる条件下では、従って、翻訳されるタンパク質の量は低減又は排除される。このようなアンチセンス法としては、以下に限定されないが、RNA干渉(RNAi)、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド等が挙げられ、これらの全てが当業者によく知られている。
【0166】
他の実施形態では、改変バチルス属(Bacillus)細胞は、CRISPR-Cas9編集によって作製/構築される。例えば、yitMタンパク質をコードする遺伝子は、DNA上の標的配列にエンドヌクレアーゼを動員するガイドRNA(例えば、Cas9)及びCpfl又はガイドDNA(例えば、NgAgo)の何れかに結合することによってそれらの標的DNAを見出す核酸誘導型エンドヌクレアーゼによって破壊(又は欠失若しくは下方制御)されてもよく、ここで、エンドヌクレアーゼは、DNAにおいて一本鎖又は二本鎖切断を生成することができる。この標的化DNA切断は、DNA修復のための基質となり、遺伝子を破壊又は欠失させるために提供された編集鋳型と再結合し得る。例えば、核酸誘導型エンドヌクレアーゼをコードする遺伝子(この目的のためには、S.ピオゲネス(S.pyogenes)由来のCas9)又はCas9ヌクレアーゼをコードするコドン最適化遺伝子は、バチルス属(Bacillus)細胞内で活性なプロモーター及びバチルス属(Bacillus)細胞内で活性なターミネーターに作動可能に連結されており、これによりバチルス属(Bacillus)Cas9発現カセットを生成する。同様に、関心対象の遺伝子に固有の1つ以上の標的部位は、当業者であれば容易に同定できる。例えば、関心対象の遺伝子内の標的部位に向けられたgRNAをコードするDNA構築物をストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)Cas9を用いて構築するためには、可変標的化ドメイン(VT)は、そのヌクレオチドが、S.ピオゲネス(S.pyogenes)Cas9に対するCas9エンドヌクレアーゼ認識ドメイン(CER)をコードするDNAに融合している、(PAM)プロトスペーサー隣接モチーフ(NGG)の5’である標的部位のヌクレオチドを含むであろう。VTドメインをコードするDNAとCERドメインをコードするDNAとの組み合わせは、それによりgRNAをコードするDNAを生成する。従って、gRNAのためのバチルス属(Bacillus)発現カセットは、バチルス属(Bacillus)細胞内で活性なプロモーター及びバチルス属(Bacillus)細胞内で活性なターミネーターにgRNAをコードするDNAを作動可能に連結させることによって作製される。
【0167】
所定の実施形態では、エンドヌクレアーゼによって誘導されたDNA切断は、入来配列を用いて修復/置換される。例えば、上述したCas9発現カセット及びgRNA発現カセットによって生成されたDNA切断を精密に修復するためには、細胞のDNA修復機構が編集鋳型を利用できるように、ヌクレオチド編集鋳型が提供される。例えば、標的化遺伝子の約500bpの5’は、編集テンプレートを生成するために標的化遺伝子の約500bpの3’に融合させることができ、そのテンプレートは、RGENによって生成されたDNA切断を修復するためにバチルス属(Bacillus)宿主の機構によって使用される。
【0168】
Cas9発現カセット、gRNA発現カセット及び編集鋳型は、多数の様々な方法を使用して細胞に同時に送達され得る。形質転換細胞は、遺伝子座をフォワードプライマー及びリバースプライマーを用いて増幅させることにより、標的遺伝子座をPCR増幅させることによってスクリーニングされる。これらのプライマーは、野生型遺伝子座又はRGENによって編集されている改変遺伝子座を増幅させることができる。これらの断片は、次に編集されたコロニーを同定するためにシーケンシングプライマーを使用してシーケンシングされる。
【0169】
さらに他の実施形態では、改変バチルス属(Bacillus)細胞は、化学的突然変異誘発(例えば、Hopwood,1970を参照されたい)及び転座(例えば、Youngman et al.,1983を参照されたい)を含むがそれらに限定されない当該技術分野においてよく知られる方法を使用して、ランダム突然変異誘発又は特異的変異誘発によって構築される。遺伝子の改変は、親細胞に突然変異誘発を受けさせること、及びその中で遺伝子の発現が低減若しくは排除されている突然変異細胞についてスクリーニングすることによって実施され得る。特異的であってもランダムであってもよい突然変異誘発は、例えば、好適な物理的若しくは化学的突然変異誘発剤の使用によって、好適なオリゴヌクレオチドの使用によって、又はDNA配列をPCR生成突然変異誘発(PCR-generated mutagenesis)にかけることによって実施され得る。さらに、この突然変異誘発は、これらの突然変異誘発法の任意の組み合わせの使用により実施され得る。
【0170】
本発明のために好適な物理的若しくは化学的突然変異誘発剤の例としては、紫外線(UV)照射、ヒドロキシルアミン、N-メチル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(MNNG)、N-メチル-N’-ニトロソグアニジン(NTG)、O-メチルヒドロキシルアミン、亜硝酸、メタンスルホン酸エチル(EMS)、亜硫酸水素ナトリウム、蟻酸及びヌクレオチドアナログが挙げられる。そのような薬剤を使用する場合、突然変異誘発は、典型的には、好適な条件下で最適な突然変異誘発剤の存在下で突然変異誘発対象の親細胞をインキュベートする工程、及び遺伝子の低減した発現を示す、又は発現を示さない突然変異細胞を選択する工程によって実施される。
【0171】
国際公開第2003/083125号パンフレットは、E.コリ(E.coli)を迂回するためにPCR融合を使用する、例えばバチルス属(Bacillus)欠失株及びDNA構築物の作成等の、バチルス属(Bacillus)細胞を改変するための方法を開示している。国際公開第2002/14490号パンフレットは、(1)統合的プラスミド(pComK)の構築及び形質転換、(2)コード配列、シグナル配列及びプロペプチド配列のランダム突然変異誘発、(3)相同組み換え、(4)形質転換DNAに非相同フランクを付加することにより形質転換効率を増加させること、(5)二重交差組み込みを最適化すること、(6)部位特異的突然変異誘発、及び(7)マーカーレス欠失を含むバチルス属(Bacillus)細胞を改変するための方法を開示している。
【0172】
当業者は、細菌細胞(例えば、E.コリ(E.coli)及びバチルス属(Bacillus)種)にポリヌクレオチド配列を導入するための好適な方法をよく知っている(例えば、Ferrari et al.,1989;Saunders et al.,1984;Hoch et al.,1967;Mann et al.,1986;Holubova,1985;Chang et al.,1979;Vorobjeva et al.,1980;Smith et al.,1986;Fisher et.al.,1981及びMcDonald,1984を参照されたい)。実際に、プロトプラスト形質転換及び会合、形質導入、並びにプロトプラスト融合を含む形質転換等の方法が知られており、本開示における使用に適している。形質転換法は、本開示のDNA構築物を宿主細胞に導入するのに特に好ましい。
【0173】
一般に使用される方法に加えて、幾つかの実施形態では、宿主細胞は、直接的に形質転換させられる(即ち、宿主細胞内に導入する前にDNA構築物を増幅させるために、又はさもなければプロセシングするために、中間細胞が使用されない)。DNA構築物の宿主細胞内への導入には、プラスミド又はベクター内へ挿入することなく、DNAを宿主細胞内に導入するために当該技術分野において知られるそれらの物理的及び化学的方法が含まれる。このような方法としては、以下に限定されないが、塩化カルシウム沈降法、エレクトロポレーション法、裸のDNA法、リポソーム法等が挙げられる。追加の実施形態では、DNA構築物は、プラスミドに挿入することなく、プラスミドと共に同時形質転換される。さらなる実施形態では、選択マーカーは、当該技術分野において知られる方法によって改変バチルス属(Bacillus)株から欠失、又は実質的に切除される(例えば、Stahl et al.,1984;Palmeros et al.,2000)。幾つかの実施形態では、宿主染色体由来のベクターの分解は、染色体内のフランキング領域を残すが、一方、固有の染色体領域を除去する。
【0174】
バチルス属(Bacillus)細胞内での遺伝子の発現において使用するためのプロモーター及びプロモーター配列、それらのオープンリーディングフレーム(ORF)及び/又はそれらの変異配列は、一般に当業者に知られている。本開示のプロモーター配列は、一般に、それらがバチルス属(Bacillus)細胞内で機能的であるように選択される。所定の例示的なバチルス属(Bacillus)プロモーター配列としては、B.サブチリス(B.subtilis)アルカリプロテアーゼ(aprE)プロモーター、B.サブチリス(B.subtilis)のα-アミラーゼプロモーター、B.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)のα-アミラーゼプロモーター、B.サブチリス(B.subtilis)由来の中性プロテアーゼ(nprE)プロモーター、突然変異aprEプロモーター(例えば国際公開第2001/51643号パンフレット)又はB.リケニフォルミス(B.licheniformis)若しくは他の関連するバチルス属(Bacilli)由来の任意の他のプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。バチルス属(Bacillus)細胞において広範囲の活性(プロモーター強度)を有するプロモーターライブラリーをスクリーニング及び作製する方法は、国際公開第2003/089604号パンフレットに記載されている。
【0175】
IV.関心対象のタンパク質を産生するための改変細胞の培養
概して上記で記載したように、所定の他の実施形態は、増加したタンパク質産生表現型を有するバチルス属(Bacillus)細胞を構築且つ得るための組成物及び方法に関する。従って、所定の実施形態は、好適な培地中で細胞を発酵することによってバチルス属(Bacillus)細胞内での関心対象のタンパク質を産生する方法に関する。本開示の親及び改変(娘)バチルス属(Bacillus)細胞を発酵させるためには、当該技術分野でよく知られた発酵方法を適用することができる。
【0176】
幾つかの実施形態では、細胞は、バッチ又は連続発酵条件下で培養する。古典的なバッチ発酵は、閉鎖系であり、培地の組成は発酵の開始時に設定し、発酵中には変更しない。発酵の開始時に、培地に所望の生物を接種する。この方法では、系にいかなる成分も添加することなく発酵を行わせる。典型的には、バッチ発酵は、炭素源の添加に関して「バッチ」であると見なされ、pH及び酸素濃度等の因子を制御することが頻繁に行われる。バッチ系の代謝産物及びバイオマス組成物は、発酵が停止される時点まで絶えず変化する。典型的なバッチ培養では、細胞は静的誘導期を経由して高増殖対数期へ進行し、最終的には増殖率が低減又は停止する静止期に進み得る。処理されなければ、静止期にある細胞は最終的には死滅する。一般に、対数期にある細胞は、産生物の大量産生に寄与する。
【0177】
標準バッチ系に対する好適な変形形態は、「フェドバッチ発酵」系である。典型的なバッチ系のこの変形形態では、発酵の進行に伴い基質が徐々に加えられる。フェドバッチ系は、カタボライト抑制が細胞の代謝を阻害する可能性が高い場合、及び培地中の基質量が限られた量であることが望ましい場合に有用である。フェドバッチ系では、実際の基質濃度の測定は困難であり、従って、pH、溶存酸素、及びCO2等の廃ガスの分圧等の測定可能な因子の変化に基づいて推定される。バッチ及びフェドバッチ発酵は、当該技術分野において一般的であり、知られている。
【0178】
連続発酵は、規定の発酵培地がバイオリアクターに連続的に加えられ、処理のために等量の馴化培地が同時に除去される開放系である。連続発酵は、一般に、細胞が主として対数増殖期にある一定の高密度で培養を維持する。連続発酵は、細胞の増殖及び/又は産生物の濃度に影響する1つ以上の因子の調節を可能にする。例えば、一実施形態では、炭素源又は窒素源等の制限栄養素は一定比率で維持されるが、他の全てのパラメータは調節することができる。他の系では、培地の濁度によって測定される細胞濃度を一定に保ちながら、増殖に影響を及ぼす多数の因子は連続的に変化させることができる。連続系は、定常状態の増殖条件を維持しようとする。従って、培地を取り出すことによる細胞損失は、発酵中の細胞増殖速度に対して平衡が保たれなければならない。連続発酵プロセスで栄養素及び増殖因子を調節する方法、並びに産生物形成速度を最大化するための手法は、工業微生物学の技術分野においてはよく知られている。
【0179】
所定の実施形態では、本開示のバチルス属(Bacillus)細胞によって発現/産生した関心対象のタンパク質は、遠心若しくは濾過によって培地から宿主細胞を分離する、又は必要であれば、細胞を破壊し、上清を細胞分画及び細胞破片から取り除くことによって、培養培地から回収することができる。典型的には、清浄化後、上清若しくは濾液のタンパク質成分は、塩、例えば、硫酸アンモニウムによって沈澱させられる。その後、沈澱したタンパク質は可溶化され、様々なクロマトグラフ法、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過によって精製され得る。
【0180】
幾つかの実施形態では、細胞は、バッチ又は連続発酵条件下で培養する。古典的なバッチ発酵は、閉鎖系であり、培地の組成は発酵の開始時に設定し、発酵中には変更しない。発酵の開始時に、培地に所望の生物を接種する。この方法では、系にいかなる成分も添加することなく醗酵を行わせる。典型的には、バッチ発酵は、炭素源の添加に関して「バッチ」であると見なされ、pH及び酸素濃度等の因子を制御することが頻繁に行われる。バッチ系の代謝産物及びバイオマス組成物は、発酵が停止される時点まで絶えず変化する。典型的なバッチ培養では、細胞は静的誘導期を経由して高増殖対数期へ進行し、最終的には増殖率が低減又は停止する静止期に進み得る。処理されなければ、静止期にある細胞は最終的には死滅する。一般に、対数期にある細胞は、産生物の大量産生に寄与する。
【0181】
標準バッチ系に対する好適な変形形態は、「フェドバッチ醗酵」系である。典型的なバッチ系のこの変形形態では、発酵の進行に伴い基質が徐々に加えられる。フェドバッチ系は、カタボライト抑制が細胞の代謝を阻害する可能性が高い場合、及び培地中の基質量が限られた量であることが望ましい場合に有用である。フェドバッチ系では、実際の基質濃度の測定は困難であり、従って、pH、溶存酸素、及びCO2等の廃ガスの分圧等の測定可能な因子の変化に基づいて推定される。バッチ及びフェドバッチ発酵は、当該技術分野において一般的であり、知られている。
【0182】
連続発酵は、規定の発酵培地がバイオリアクターに連続的に加えられ、処理のために等量の馴化培地が同時に除去される開放系である。連続発酵は、一般に、細胞が主として対数増殖期にある一定の高密度で培養を維持する。連続発酵は、細胞の増殖及び/又は産生物の濃度に影響する1つ以上の因子の調節を可能にする。例えば、一実施形態では、炭素源又は窒素源等の制限栄養素は一定比率で維持されるが、他の全てのパラメータは調節することができる。他の系では、培地の濁度によって測定される細胞濃度を一定に保ちながら、増殖に影響を及ぼす多数の因子は連続的に変化させることができる。連続系は、定常状態の増殖条件を維持しようとする。従って、培地を取り出すことによる細胞損失は、発酵中の細胞増殖速度に対して平衡が保たれなければならない。連続発酵プロセスで栄養素及び増殖因子を調節する方法、並びに産生物形成速度を最大化するための手法は、工業微生物学の技術分野においてはよく知られている。
【0183】
所定の実施形態では、本開示のバチルス属(Bacillus)細胞によって発現/産生した関心対象のタンパク質は、遠心若しくは濾過によって培地から宿主細胞を分離する、又は必要であれば、細胞を破壊し、上清を細胞分画及び細胞破片から取り除くことによって、培養培地から回収することができる。典型的には、清浄化後、上清若しくは濾液のタンパク質成分は、塩、例えば、硫酸アンモニウムによって沈澱させられる。その後、沈澱したタンパク質は可溶化され、様々なクロマトグラフ法、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過によって精製され得る。
【0184】
V.関心対象のタンパク質
本開示の関心対象のタンパク質(POI)は、任意の内因性又は異種タンパク質であってよく、そのようなPOIの変異体であってもよい。タンパク質は、1つ以上のジスルフィド架橋を含有し得る、又はその機能的形態が単量体若しくは多量体であるタンパク質である、即ち、タンパク質は、四次構造を有し、複数の同一(相同)若しくは非同一(異種)サブユニットから構成されるが、ここで、POI若しくはその変異POIは、好ましくは関心対象の特性を備えるタンパク質である。
【0185】
例えば、所定の実施形態では、本開示の改変バチルス属(Bacillus)細胞は、その未改変(親)細胞と比較して、少なくとも約0.5%超、少なくとも約1%超、少なくとも約5%超、少なくとも約6%超、少なくとも約7%超、少なくとも約8%超、少なくとも約9%超又は少なくとも約10%以上のPOIを産生する。
【0186】
所定の実施形態では、本開示の改変バチルス属(Bacillus)細胞は、(非改変)親バチルス属(Bacillus)細胞と比較して、POIの増加した比生産性(Qp)を示す。例えば、比生産性(Qp)の検出は、タンパク質の産生を評価するために好適な方法である。比生産性(Qp)は、下記の方程式:
「Qp=gP/gDCW・hr」
(式中、「gP」は、タンク中に産生されるタンパク質のグラムであり、「gDCW」は、タンク中の乾燥細胞重量(DCW)のグラムであり、「hr」は、接種時点からの発酵時間(時間)であり、これは、産生時間及び増殖時間を含む)
を使用して決定することができる。
【0187】
従って、所定の他の実施形態では、本開示の改変バチルス属(Bacillus)細胞は、未改変(親)細胞と比較して、少なくとも約0.1%、少なくとも約1%、少なくとも約5%、少なくとも約6%、少なくとも約7%、少なくとも約8%、少なくとも約9%又は少なくとも約10%以上の比生産性(Qp)の増加を含む。
【0188】
所定の実施形態では、POI若しくはその変異POIは、アセチルエステラーゼ、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、アラビナーゼ、アラビノフラノシダーゼ、炭酸脱水酵素、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、キチナーゼ、キモシン、クチナーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エピメラーゼ、エステラーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、α-グルカナーゼ、グルカンリアーゼ(glucan lysases)、エンド-β-グルカナーゼ、グルコアミラーゼ、グルコースオキシダーゼ、α-グルコシダーゼ、β-グルコシダーゼ、グルクロニダーゼ、グリコシルヒドロラーゼ、ヘミセルラーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、ヒドロラーゼ、インベルターゼ、イソメラーゼ、ラッカーゼ、リガーゼ、リパーゼ、リアーゼ、マンノシダーゼ、オキシダーゼ、酸化還元酵素、ペクチン酸リアーゼ、ペクチンアセチルエステラーゼ、ペクチンデポリメラーゼ、ペクチンメチルエステラーゼ、ペクチン分解酵素、ペルヒドロラーゼ、ポリオールオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、フィターゼ、ポリガラクツロナーゼ、プロテアーゼ、ペプチダーゼ、ラムノ-ガラクツロナーゼ、リボヌクレアーゼ、トランスフェラーゼ、輸送タンパク質、トランスグルタミナーゼ、キシラナーゼ、ヘキソースオキシダーゼ及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0189】
従って、所定の実施形態では、POI若しくはその変異POIは、酵素番号(EC)のEC1、EC2、EC3、EC4、EC5若しくはEC6から選択される酵素である。
【0190】
所定の他の実施形態では、本開示の改変バチルス属(Bacillus)細胞は、アミラーゼをコードする発現構築物を含む。多種多様なアミラーゼ酵素及びその変異体が、当業者に知られている。例えば、国際公開第2006/037484号パンフレット及び同第2006/037483号パンフレットは、溶媒安定性が改善された変異α-アミラーゼを記載しており、国際公開第1994/18314号パンフレットは、酸化的に安定なα-アミラーゼ変異体を開示しており、国際公開第1999/19467号パンフレット、同第2000/29560号パンフレット及び同第2000/60059号パンフレットは、Termamyl様α-アミラーゼ変異体を開示しており、国際公開第2008/112459号パンフレットは、バチルス種(Bacillus sp.)707番に由来するα-アミラーゼ変異体を開示しており、国際公開第1999/43794号パンフレットは、マルトジェニックα-アミラーゼ変異体を開示しており、国際公開第1990/11352号パンフレットは、超耐熱性α-アミラーゼ変異体を開示しており、国際公開第2006/089107号パンフレットは、粒状デンプン加水分解活性を有するα-アミラーゼ変異体を開示している。
【0191】
細胞内及び細胞外で発現されたタンパク質の活性を検出及び測定するためには、当業者に知られる様々なアッセイがある。
【0192】
国際公開第2014/164777号パンフレットは、本明細書に記載したアミラーゼ活性の検出のために有用なCeralpha α-アミラーゼ活性アッセイを開示している。
【0193】
V.例示的な実施形態
本開示の非限定的実施形態としては、以下が含まれるがそれらに限定されない。
【0194】
1.改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞内で増加した量の内因性の関心対象のタンパク質(POI)を産生するための方法であって、(a)内因性POIを産生する親バチルス種(Bacillus sp.)細胞を入手する工程、(b)yitMOPオペロンを欠失又は破壊することによって親バチルス種(Bacillus sp.)細胞を遺伝子改変する工程、及び(c)POIを産生するために好適な条件下で改変細胞を発酵させる工程を含み、ここで改変細胞は、同一条件下で発酵させた場合の親細胞に比較して、増加した量の内因性POIを産生する方法。
【0195】
2.改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞内で増加した量の内因性の関心対象のタンパク質(POI)を産生するための方法であって、(a)内因性POIを産生する親バチルス種(Bacillus sp.)細胞を入手する工程、(b)yitMOPオペロン及びsdpABCオペロンを欠失又は破壊することによって親バチルス種(Bacillus sp.)細胞を遺伝子改変する工程、及び(c)POIを産生するために好適な条件下で改変細胞を発酵させる工程を含み、ここで改変細胞は、同一条件下で発酵させた場合の親細胞に比較して、増加した量の内因性POIを産生する方法。
【0196】
3.改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞内で増加した量の内因性の関心対象のタンパク質(POI)を産生するための方法であって、(a)内因性POIを産生する親バチルス種(Bacillus sp.)細胞を入手する工程、(b)yitMOPオペロンの調節領域を欠失又は破壊することによって親バチルス種(Bacillus sp.)細胞を遺伝子改変し、それにより改変細胞を機能的YitM、YitO及び/又はYitPタンパク質の産生において欠損性にさせる工程、及び(c)POIを産生するために好適な条件下で改変細胞を発酵させる工程を含み、ここで改変細胞は、同一条件下で発酵させた場合の親細胞に比較して、増加した量の内因性POIを産生する方法。
【0197】
4.改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞内で増加した量の内因性の関心対象のタンパク質(POI)を産生するための方法であって、(a)内因性POIを産生する親バチルス種(Bacillus sp.)細胞を入手する工程、(b)yitM遺伝子を破壊又は欠失させることによって親細胞を遺伝子改変する工程、及び(c)POIを産生するために好適な条件下で改変細胞を発酵させる工程を含み、ここで改変細胞は、同一条件下で発酵させた場合の親細胞に比較して、増加した量の内因性POIを産生する方法。
【0198】
5.改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞内で増加した量の内因性の関心対象のタンパク質(POI)を産生するための方法であって、(a)内因性POIを産生する親バチルス種(Bacillus sp.)細胞を入手する工程、(b)yitM遺伝子の調節領域を欠失又は破壊することによって親バチルス種(Bacillus sp.)細胞を遺伝子改変し、それにより改変細胞を機能的YitMタンパク質の産生において欠損性にさせる工程、及び(c)POIを産生するために好適な条件下で改変細胞を発酵させる工程を含み、ここで改変細胞は、同一条件下で発酵させた場合の親細胞に比較して、増加した量の内因性POIを産生する方法。
【0199】
6.バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、B.サブチリス(B.subtilis)、B.リケニフォルミス(B.licheniformis)、B.レンツス(B.lentus)、B.ブレビス(B.brevis)、B.ステアロサーモフィルス(B.stearothermophilus)、B.アルカロフィルス(B.alkalophilus)、B.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)、B.クラウシイ(B.clausii)、B.ハロデュランス(B.halodurans)、B.メガテリウム(B.megaterium)、B.コアグランス(B.coagulans)、B.サークランス(B.circulans)、B.ラウツス(B.lautus)及びB.チューリンギエンシス(B.thuringiensis)から成る群から選択される、実施形態1~5の何れか1つの方法。
【0200】
7.バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、B.サブチリス(B.subtilis)である、実施形態6の方法。
【0201】
8.バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、B.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)である、実施形態6の方法。
【0202】
9.POIは、酵素である、実施形態1~5の何れか1つの方法。
【0203】
10.酵素は、プロテアーゼ又はアミラーゼである、実施形態7の方法。
【0204】
11.yitMOPオペロンは、配列番号2又は配列番号38との少なくとも60%~約99%の配列同一性を含むYitMポリペプチド、配列番号4又は配列番号36との少なくとも60%~約99%の配列同一性を含むYitOポリペプチド及び配列番号6又は配列番号34との少なくとも60%~約99%の配列同一性を含むYitPポリペプチドをコードする、実施形態1~3の何れか1つの方法。
【0205】
12.yitM遺伝子は、配列番号1又は配列番号37のyitM遺伝子との少なくとも60%~約99%の配列同一性を含む、実施形態4又は実施形態5の方法。
【0206】
13.yitM遺伝子は、配列番号2又は配列番号38のyitMポリペプチドとの少なくとも60%~約99%の配列同一性を含むyitMポリペプチドをコードする、実施形態4又は実施形態5の方法。
【0207】
14.改変細胞は、sdpABCオペロンの欠失又は破壊をさらに含む、実施形態3~5の何れか1つの方法。
【0208】
15.改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞内で増加した量の異種の関心対象のタンパク質(POI)を産生するための方法であって、(a)異種POIをコードする導入された発現カセットを含む親バチルス種(Bacillus sp.)細胞を構築する工程、(b)yitMOPオペロンを欠失又は破壊することによって親細胞を遺伝子改変する工程、及び(c)POIを産生するために好適な条件下で改変細胞を発酵させる工程を含み、ここで改変細胞は、同一条件下で発酵させた場合の親細胞に比較して、増加した量の異種POIを産生する方法。
【0209】
16.改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞内で増加した量の異種の関心対象のタンパク質(POI)を産生するための方法であって、(a)異種POIをコードする導入された発現カセットを含む親バチルス種(Bacillus sp.)細胞を構築する工程、(b)yitMOPオペロン及びsdpABCオペロンを欠失又は破壊することによって親バチルス種(Bacillus sp.)細胞を遺伝子改変する工程、及び(c)POIを産生するために好適な条件下で改変細胞を発酵させる工程を含み、ここで改変細胞は、同一条件下で発酵させた場合の親細胞に比較して、増加した量の異種POIを産生する方法。
【0210】
17.改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞内で増加した量の異種の関心対象のタンパク質(POI)を産生するための方法であって、(a)異種POIをコードする導入された発現カセットを含む親バチルス種(Bacillus sp.)細胞を構築する工程、(b)yitMOPオペロンの調節領域を欠失又は破壊することによって親バチルス種(Bacillus sp.)細胞を遺伝子改変し、それにより改変細胞を機能的YitM、YitO及び/又はYitPタンパク質の産生において欠損性にさせる工程、及び(c)POIを産生するために好適な条件下で改変細胞を発酵させる工程を含み、ここで改変細胞は、同一条件下で発酵させた場合の親細胞に比較して、増加した量の異種POIを産生する方法。
【0211】
18.改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞内で増加した量の異種の関心対象のタンパク質(POI)を産生するための方法であって、(a)異種POIをコードする導入された発現カセットを含む親バチルス種(Bacillus sp.)細胞を構築する工程、(b)yitM遺伝子を破壊又は欠失させることによって親細胞を遺伝子改変する工程、及び(c)POIを産生するために好適な条件下で改変細胞を発酵させる工程を含み、ここで改変細胞は、同一条件下で発酵させた場合の親細胞に比較して、増加した量の異種POIを産生する方法。
【0212】
19.改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞内で増加した量の異種の関心対象のタンパク質(POI)を産生するための方法であって、(a)異種POIをコードする導入された発現カセットを含む親バチルス種(Bacillus sp.)細胞を構築する工程、(b)yitM遺伝子の調節領域を欠失又は破壊することによって親バチルス種(Bacillus sp.)細胞を遺伝子改変し、それにより改変細胞を機能的YitMタンパク質の産生において欠損性にさせる工程、及び(c)POIを産生するために好適な条件下で改変細胞を発酵させる工程を含み、ここで改変細胞は、同一条件下で発酵させた場合の親細胞に比較して、増加した量の異種POIを産生する方法。
【0213】
20.工程(a)及び(b)は、同時に実施される、実施形態15~19の何れか1つの方法。
【0214】
21.バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、B.サブチリス(B.subtilis)、B.リケニフォルミス(B.licheniformis)、B.レンツス(B.lentus)、B.ブレビス(B.brevis)、B.ステアロサーモフィルス(B.stearothermophilus)、B.アルカロフィルス(B.alkalophilus)、B.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)、B.クラウシイ(B.clausii)、B.ハロデュランス(B.halodurans)、B.メガテリウム(B.megaterium)、B.コアグランス(B.coagulans)、B.サークランス(B.circulans)、B.ラウツス(B.lautus)及びB.チューリンギエンシス(B.thuringiensis)から成る群から選択される、実施形態15~19の何れか1つの方法。
【0215】
22.バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、B.サブチリス(B.subtilis)である、実施形態21の方法。
【0216】
23.バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、B.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)である、実施形態21の方法。
【0217】
24.異種POIは、酵素である、実施形態15~19の何れか1つの方法。
【0218】
25.酵素は、アセチルエステラーゼ、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、アラビナーゼ、アラビノフラノシダーゼ、炭酸脱水酵素、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、キチナーゼ、キモシン、クチナーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エピメラーゼ、エステラーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、α-グルカナーゼ、グルカンリアーゼ(glucan lysases)、エンド-β-グルカナーゼ、グルコアミラーゼ、グルコースオキシダーゼ、α-グルコシダーゼ、β-グルコシダーゼ、グルクロニダーゼ、グリコシルヒドロラーゼ、ヘミセルラーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、ヒドロラーゼ、インベルターゼ、イソメラーゼ、ラッカーゼ、リガーゼ、リパーゼ、リアーゼ、マンノシダーゼ、オキシダーゼ、酸化還元酵素、ペクチン酸リアーゼ、ペクチンアセチルエステラーゼ、ペクチンデポリメラーゼ、ペクチンメチルエステラーゼ、ペクチン分解酵素、ペルヒドロラーゼ、ポリオールオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、フィターゼ、ポリガラクツロナーゼ、プロテアーゼ、ペプチダーゼ、ラムノ-ガラクツロナーゼ、リボヌクレアーゼ、トランスフェラーゼ、輸送タンパク質、トランスグルタミナーゼ、キシラナーゼ、ヘキソースオキシダーゼ及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、実施形態24の方法。
【0219】
26.yitMOPオペロンは、配列番号2又は配列番号38との少なくとも80%の配列同一性を含むYitMポリペプチド、配列番号4又は配列番号36との少なくとも約80%の配列同一性を含むYitOポリペプチド、及び配列番号6又は配列番号34との少なくとも約80%の配列同一性を含むYitPポリペプチドをコードする、実施形態15~17の何れか1つの方法。
【0220】
27.yitM遺伝子は、配列番号1又は配列番号37のyitM遺伝子との少なくとも60%~約99%の配列同一性を含む、実施形態18又は実施形態19の方法。
【0221】
28.yitM遺伝子は、配列番号2又は配列番号38のYitMポリペプチドとの少なくとも60%~約99%の配列同一性を含むYitMポリペプチドをコードする、実施形態18又は実施形態19の方法。
【0222】
29.改変細胞は、sdpABCオペロンの欠失又は破壊をさらに含む、実施形態17~19の何れか1つの方法。
【0223】
30.実施形態1~5の何れか1つの方法によって産生した遺伝子改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞又は実施形態15~19の何れか1つの方法によって産生した遺伝子改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞。
【0224】
31.内因性の関心対象のタンパク質(POI)を産生する親バチルス種(Bacillus sp.)細胞由来の遺伝子改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞であって、ここで改変細胞は、欠失又は破壊されたyitMOPオペロンを含み、ここで改変細胞は、POIを産生するための同一条件下で発酵させた場合の親細胞と比較して、増加した量の内因性POIを産生する遺伝子改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞。
【0225】
32.内因性の関心対象のタンパク質(POI)を産生する親バチルス種(Bacillus sp.)細胞由来の遺伝子改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞であって、ここで改変細胞は、欠失又は破壊されたyitMOPオペロン及び欠失又は破壊されたsdpABCオペロンを含み、ここで改変細胞は、POIを産生するための同一条件下で発酵させた場合の親細胞と比較して、増加した量の内因性POIを産生する遺伝子改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞。
【0226】
33.内因性の関心対象のタンパク質(POI)を産生する親バチルス種(Bacillus sp.)細胞由来の遺伝子改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞であって、ここで改変細胞は、機能的YitM、YitO及び/又はYitPタンパク質の産生においてその改変細胞を欠損性にさせるyitMOPオペロンの欠失又は破壊された調節領域を含み、ここで改変細胞は、POIを産生するための同一条件下で発酵させた場合の親細胞と比較して、増加した量の内因性POIを産生する遺伝子改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞。
【0227】
34.内因性の関心対象のタンパク質(POI)を産生する親バチルス種(Bacillus sp.)細胞由来の遺伝子改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞であって、ここで改変細胞は、欠失又は破壊されたyitM遺伝子を含み、ここで改変細胞は、同一条件下で発酵させた場合の親細胞と比較して、増加した量の内因性POIを産生する遺伝子改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞。
【0228】
35.内因性の関心対象のタンパク質(POI)を産生する親バチルス種(Bacillus sp.)細胞由来の遺伝子改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞であって、ここで改変細胞は、機能的YitMタンパク質の産生において改変細胞を欠損性にさせるyitM遺伝子の欠失又は破壊された調節領域を含み、ここで改変細胞は、同一条件下で発酵させた場合の親細胞と比較して、増加した量の内因性POIを産生する遺伝子改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞。
【0229】
36.バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、B.サブチリス(B.subtilis)、B.リケニフォルミス(B.licheniformis)、B.レンツス(B.lentus)、B.ブレビス(B.brevis)、B.ステアロサーモフィルス(B.stearothermophilus)、B.アルカロフィルス(B.alkalophilus)、B.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)、B.クラウシイ(B.clausii)、B.ハロデュランス(B.halodurans)、B.メガテリウム(B.megaterium)、B.コアグランス(B.coagulans)、B.サークランス(B.circulans)、B.ラウツス(B.lautus)及びB.チューリンギエンシス(B.thuringiensis)から成る群から選択される、実施形態31~35の何れか1つの改変細胞。
【0230】
37.バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、B.サブチリス(B.subtilis)である、実施形態36の改変細胞。
【0231】
38.バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、B.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)である、実施形態36の改変細胞。
【0232】
39.POIは、酵素である、実施形態29~33の何れか1つの改変細胞。
【0233】
40.酵素は、プロテアーゼ又はアミラーゼである、実施形態39の改変細胞。
【0234】
41.yitMOPオペロンは、配列番号2又は配列番号38との少なくとも60%~約99%の配列同一性を含むYitMポリペプチド、配列番号4又は配列番号36との少なくとも60%~約99%の配列同一性を含むYitOポリペプチド及び配列番号6又は配列番号34との少なくとも60%~約99%の配列同一性を含むYitPポリペプチドをコードする、実施形態31~33の何れか1つの改変細胞。
【0235】
42.yitM遺伝子は、配列番号1又は配列番号37のyitM遺伝子との少なくとも60%~約99%の配列同一性を含む、実施形態34又は実施形態35の改変細胞。
【0236】
43.yitM遺伝子は、配列番号2又は配列番号38のYitMポリペプチドとの少なくとも60%~約99%の配列同一性を含むYitMポリペプチドをコードする、実施形態34又は実施形態35の改変細胞。
【0237】
44.改変細胞は、sdpABCオペロンの欠失又は破壊をさらに含む、実施形態33~35の何れか1つの改変細胞。
【0238】
45.異種の関心対象のタンパク質(POI)をコードする導入された発現カセットを含む親バチルス種(Bacillus sp.)細胞由来の遺伝子改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞であって、ここで改変細胞は、欠失又は破壊されたyitMOPオペロンを含み、ここで改変細胞は、POIを産生するための同一条件下で発酵させた場合の親細胞と比較して、増加した量の異種POIを産生する遺伝子改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞。
【0239】
46.異種の関心対象のタンパク質(POI)をコードする導入された発現カセットを含む親バチルス種(Bacillus sp.)細胞由来の遺伝子改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞であって、ここで改変細胞は、欠失又は破壊されたyitMOPオペロン及び欠失又は破壊されたsdpABCオペロンを含み、ここで改変細胞は、POIを産生するための同一条件下で発酵させた場合の親細胞と比較して、増加した量の内因性POIを産生する遺伝子改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞。
【0240】
47.異種の関心対象のタンパク質(POI)をコードする導入された発現カセットを含む親バチルス種(Bacillus sp.)細胞由来の遺伝子改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞であって、ここで改変細胞は、機能的YitM、YitO及び/又はYitPタンパク質の産生においてその改変細胞を欠損性にさせる欠失又は破壊されたyitMOPオペロンの調節領域を含み、ここで改変細胞は、POIを産生するための同一条件下で発酵させた場合の親細胞と比較して、増加した量の内因性POIを産生する遺伝子改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞。
【0241】
48.異種の関心対象のタンパク質(POI)をコードする導入された発現カセットを含む親バチルス種(Bacillus sp.)細胞由来の遺伝子改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞であって、ここで改変細胞は、欠失又は破壊されたyitM遺伝子を含み、ここで改変細胞は、同一条件下で発酵させた場合の親細胞と比較して、増加した量の内因性POIを産生する遺伝子改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞。
【0242】
49.異種の関心対象のタンパク質(POI)をコードする導入された発現カセットを含む親バチルス種(Bacillus sp.)細胞由来の遺伝子改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞であって、ここで改変細胞は、機能的YitMタンパク質の産生においてその改変細胞を欠損性にさせる欠失又は破壊されたyitM遺伝子の調節領域を含み、ここで改変細胞は、同一条件下で発酵させた場合の親細胞と比較して、増加した量の内因性POIを産生する遺伝子改変バチルス種(Bacillus sp.)細胞。
【0243】
50.バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、B.サブチリス(B.subtilis)、B.リケニフォルミス(B.licheniformis)、B.レンツス(B.lentus)、B.ブレビス(B.brevis)、B.ステアロサーモフィルス(B.stearothermophilus)、B.アルカロフィルス(B.alkalophilus)、B.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)、B.クラウシイ(B.clausii)、B.ハロデュランス(B.halodurans)、B.メガテリウム(B.megaterium)、B.コアグランス(B.coagulans)、B.サークランス(B.circulans)、B.ラウツス(B.lautus)及びB.チューリンギエンシス(B.thuringiensis)から成る群から選択される、実施形態45~49の何れか1つの改変細胞。
【0244】
51.バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、B.サブチリス(B.subtilis)である、実施形態50の改変細胞。
【0245】
52.バチルス種(Bacillus sp.)細胞は、B.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)である、実施形態50の改変細胞。
【0246】
53.POIは、酵素である、実施形態45~49の何れか1つの改変細胞。
【0247】
54.酵素は、アセチルエステラーゼ、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、アラビナーゼ、アラビノフラノシダーゼ、炭酸脱水酵素、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、キチナーゼ、キモシン、クチナーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エピメラーゼ、エステラーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、α-グルカナーゼ、グルカンリアーゼ(glucan lysases)、エンド-β-グルカナーゼ、グルコアミラーゼ、グルコースオキシダーゼ、α-グルコシダーゼ、β-グルコシダーゼ、グルクロニダーゼ、グリコシルヒドロラーゼ、ヘミセルラーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、ヒドロラーゼ、インベルターゼ、イソメラーゼ、ラッカーゼ、リガーゼ、リパーゼ、リアーゼ、マンノシダーゼ、オキシダーゼ、酸化還元酵素、ペクチン酸リアーゼ、ペクチンアセチルエステラーゼ、ペクチンデポリメラーゼ、ペクチンメチルエステラーゼ、ペクチン分解酵素、ペルヒドロラーゼ、ポリオールオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、フィターゼ、ポリガラクツロナーゼ、プロテアーゼ、ペプチダーゼ、ラムノ-ガラクツロナーゼ、リボヌクレアーゼ、トランスフェラーゼ、輸送タンパク質、トランスグルタミナーゼ、キシラナーゼ、ヘキソースオキシダーゼ及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、実施形態53の方法。
【0248】
55.yitMOPオペロンは、配列番号2又は配列番号38との少なくとも60%~約99%の配列同一性を含むYitMポリペプチド、配列番号4又は配列番号36との少なくとも60%~約99%の配列同一性を含むYitOポリペプチド及び配列番号6又は配列番号34との少なくとも60%~約99%の配列同一性を含むYitPポリペプチドをコードする、実施形態45~47の何れか1つの改変細胞。
【0249】
56.yitM遺伝子は、配列番号1又は配列番号37のyitM遺伝子と少なくとも80%の配列同一性を含む、実施形態48又は実施形態49の改変細胞。
【0250】
57.yitM遺伝子は、配列番号2又は配列番号38のYitMポリペプチドと少なくとも80%の配列同一性を含むYitMポリペプチドをコードする、実施形態48又は実施形態49の改変細胞。
【0251】
58.改変細胞は、sdpABCオペロンの欠失又は破壊をさらに含む、実施形態47~49の何れか1つの改変細胞。
【0252】
59.欠失又は破壊した調節領域は、プロモーター配列である、実施形態3、5、17又は19の何れか1つの方法。
【0253】
60.プロモーター配列は、配列番号39、配列番号39及び配列番号40から選択されるヌクレオチド配列との少なくとも60%~約99%の配列同一性を含む、実施形態59の方法。
【0254】
61.欠失又は破壊した調節領域は、プロモーター配列である、実施形態33、35、47又は49の何れか1つの改変細胞。
【0255】
62.プロモーター配列は、配列番号39、配列番号39及び配列番号40から選択されるヌクレオチド配列との少なくとも60%~約99%の配列同一性を含む、実施形態61の改変細胞。
【実施例】
【0256】
本開示の特定の態様は、以下の実施例に照らしてさらに理解することができるが、それらの実施例は限定するものと解釈すべきでない。材料及び方法の変更は、当業者には明白であろう。
【0257】
実施例1
バチルス(BACILLUS)細胞におけるyitMOPオペロンの欠失
上記で概して規定及び記載したように、yitMOPと称される新規なB.サブチリス(B.subtilis)共食いオペロンは、FNAプロテアーゼを発現するB.サブチリス(B.subtilis)株のトランスクリプトーム分析によって、高度に発現した転写産物であると同定された。より特別には、
図1A及び
図1Bに提示したように、B.サブチリス(B.subtilis)yitMOPオペロンは、YitMタンパク質(配列番号2)、YitOタンパク質(配列番号4)及びYitPタンパク質(配列番号6)をコードする。本実施例は、親B.サブチリス(B.subtilis)細胞内でのyitMOPオペロンの欠失について記載する。例えば、改変B.サブチリス(B.subtilis)(娘)細胞を生成するために、B.サブチリス(B.subtilis)内のyitMOPオペロンを欠失させるために、「pUCyitMOP:spec」と称されるプラスミドを構築した。例えば、pUCyitMOP:specプラスミドは、B.サブチリス(B.subtilis)内の全yitMOPオペロンをloxP部位(本明細書では「loxP-specR-loxPカセット」)によって隣接されたスペクチノマイシン耐性(specR)マーカー遺伝子と置換するために構築した。従って、上流(5’)配列は、下記の表1に示したoJKL228(配列番号7)及びoJKL229(配列番号8)プライマーを使用してB.サブチリス(B.subtilis)(株168)ゲノムDNA(gDNA)から増幅させた。
【表1】
【0258】
下流(3’)ホモロジー配列は、下記の表2に示したoJKL232(配列番号9)及びoJKL233(配列番号10)プライマーを使用してB.サブチリス(B.subtilis)(株168)gDNAから増幅させた。
【表2】
【0259】
loxP-specR-loxPカセットは、下記の表3に示したoJKL230(配列番号11)及びoJKL231(配列番号12)を使用して、Topo-specRベクターから増幅させた。Topo-specRベクターは、天然プロモーター要素及びターミネーター要素を備えるスペクチノマイシンアデニルトランスフェラーゼ遺伝子(specR)を含み、その遺伝子をInvitrogen Topoベクターblunt内にクローン化し、E.コリ(E.coli)TOP10細胞を形質転換させるために使用した。
【表3】
【0260】
pUCベクターの骨格は、製造業者の使用説明書に従って、以下の表4に示したoJKL226(配列番号13)プライマー及びoJKL227(配列番号14)プライマーを用いて、GeneArt Seamlessクローニングキットから得たpUCL断片から増幅させた。
【表4】
【0261】
ベクター断片は、Gibsonクローニングキットを用いて組み立て、E.コリ(E.coli)を形質転換させるために使用した。ベクターの上流(5’)及び下流(3’)ホモロジー区間は、以下の表5に示したフォワード(M13F;配列番号15)プライマー及びリバース(M13R;配列番号16)プライマーを用いて配列を検証した。
【表5】
【0262】
配列が確証されたベクターを単離し、AatIIを用いて線形化したが、ここで線形化ベクターを次に使用してB.サブチリス(B.subtilis)細胞を形質転換させた。次に欠失は、PCRを使用して検証したが、ここで上流(5’)統合接合部は、以下の表6に示したoJKL246(配列番号17)プライマー及び5’spec out(配列番号18)プライマーを使用して確証した。
【表6】
【0263】
下流統合接合部は、以下の表7に示したoJKL247(配列番号19)プライマー及び3’spec out(配列番号20)プライマーを使用して確証した。
【表7】
【0264】
実施例2
sdpABCオペロンの欠失
本実施例では、「pUCsdp::tet」と称されるプラスミドの構築及びB.サブチリス(B.subtilis)細胞内へのその導入について記載している。より詳細には、上流(5’)及び下流(3’)DNA配列を含むpUCsdp::tetプラスミドは、B.サブチリス(B.subtilis)内の全sdpABCオペロンをloxP部位(本明細書では「loxP-tetR-loxPカセット」)によって隣接されるテトラサイクリン(tetR)マーカーで置換するために構築したが、ここでテトラサイクリンマーカーの除去は、sdpABCオペロンの欠失を生じさせる。
【0265】
従って上流(5’)sdpABC配列は、下記の表8に示したoJKL220(配列番号21)及びoJKL221(配列番号22)プライマーを使用して、B.サブチリス(B.subtilis)gDNAから増幅させた。
【表8】
【0266】
下流(3’)配列は、下記の表9に示したoJKL224(配列番号23)及びoJKL225(配列番号24)プライマーを使用して、B.サブチリス(B.subtilis)gDNAから増幅させた。
【表9】
【0267】
loxP-tetR-loxPカセットは、下記の表10に示したoJKL222(配列番号25)プライマー及びoJKL223(配列番号26)プライマーを使用してプラスミドpUCLlacA-ganAB::tetから増幅させた。
【表10】
【0268】
pUC19ベクターの骨格は、製造業者の使用説明書に従って、以下の表11に示したoJKL218(配列番号27)プライマー及びoJKL219(配列番号28)プライマーを用いて、Life TechnologiesからのGeneArt Linear pUC19Lベクターから増幅させた。
【表11】
【0269】
上流、下流、loxP-tetR-loxP及びpUC19アンプリコンは、製造業者の使用説明書に従って、NEB Gibsonキットを使用して一緒に融合させた。配列が検証されたプラスミドは、次にAatIIを用いて線形化し、B.サブチリス(B.subtilis)細胞を形質転換させるために使用した。ゲノムsdpオペロンの欠失(Δsdp:loxP-tetR-loxP)は、cPCRを用いて確証したが、ここで上流統合部位は、以下の表12に示したoJKL238(配列番号29)プライマー及びtet3’out(配列番号30)プライマーを用いて確認した。
【表12】
【0270】
下流部位は、以下の表13に示したoJKL239(配列番号31)プライマー及びtet5’out(配列番号32)プライマーを使用して確認した。
【表13】
【0271】
以下の表14に示し、さらに以下の実施例3に記載したのは、本明細書で構築したB.サブチリス(B.subtilis)細胞(株)の株名及び短い説明である。
【表14】
【0272】
実施例3
改変B.サブチリス(B.SUBTILIS)細胞における異種プロテアーゼの産生
本実施例では、B.サブチリス(B.subtilis)細胞における異種の関心対象のタンパク質(POI)の産生について記載する。より特別には、親(ZM207)及び改変B.サブチリス(B.subtilis)株は、40時間に渡り42℃でGrant’s II培地中の同一条件下の振とうフラスコ内で発酵させた、上記の実施例1及び2(例えば、表14を参照されたい)に記載したように構築した。ZM434(ΔyitM)と称されるB.サブチリス(B.subtilis)娘株は、バチルス(Bacillus)遺伝学ストックセンターから得たBKE11040株(trpC2 yitM::erm)のゲノムDNAを親株(ZM207)内に形質転換させることによって構築した。
【0273】
続いて、発酵上清を取り出し、ME-3プロテアーゼ活性は、AAPF-アッセイ(例えば、その全体として参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2018/118815号パンフレットを参照されたい)を用いて決定し、405nmでの吸光度の変化によって監視した。吸光度(mOD/分)の変化の勾配は、ME-3プロテアーゼ活性を反映しており、本明細書では比較のために報告した。より特別には、以下の表15は、複数回(n≧3)の生物学的反復の平均ME-3力価及び標準誤差を提示している。
【表15】
【0274】
例えば、表15に示したように、ZM334(ΔsdpABC)娘株及びZM336(ΔyitMOP)娘株はどちらも、ZM207親株と比較して、増加した量のプロテアーゼを産生した。同様に、yitMOPオペロン及びsdpABCオペロンの組み合わせ欠失(即ち、ΔyitMOP+ΔsdpABC)を含む改変ZM268株(表15)は、ZM207(対照)株、ZM334株(ΔsdpABC)及びZM336株(ΔyitMOP)と比較して、増加した量のME-3プロテアーゼを産生する。
【0275】
さらに、驚くべきことに、yitM ORF単独の破壊又は欠失は、ZM434(ΔyitM)娘株がZM336(ΔyitMOP)娘株よりわずかに多量のME-3プロテアーゼを産生したので、増加したタンパク質産生の有益な表現型を引き出すために十分であることが観察された(表15)。
【0276】
実施例4
改変B.サブチリス(B.SUBTILIS)細胞における異種プロテアーゼの産生
本実施例では、大規模発酵条件下で親及び改変B.サブチリス(B.subtilis)細胞における異種プロテアーゼ(V42)の産生について記載する。より特別には、本明細書で記載するように、CB24-12と称されるB.サブチリス(B.subtilis)株は、上流(5’)にあってアラニン・ラセマーゼ(alrA)をコードするORFに機能的に連結している、上流(5’)に位置してV42プロテアーゼをコードするオープンリーディングフレーム(ORF)に機能的に連結しているプロモーター配列(「P4」)を含む導入された発現カセットを含み、ここでカセットは、B.サブチリス(B.subtilis)aprE遺伝子座(aprE::P4-V42-alrA)内に組み込まれている。同様に、「JL77」と称されるB.サブチリス(B.subtilis)株は、V42プロテアーゼ(aprE::P4-V42-alrA)並びにyitMOPオペロン及びsdpABCオペロン(ΔyitMOP+ΔsdpABC)の組み合わせ欠失をコードする導入された発現カセットを含む。
【0277】
従って、
図2に示したように、JL77株及びCB24-12株の細胞を標準条件下の大規模発酵槽内で試験したが、各株を2回ずつランし、発酵の終了時(EOF)のV42プロテアーゼ産生の平均改善率を示した。例えば、
図2に提示したように、JL77株についての発酵の終了時のV42プロテアーゼ産生における平均増加率は、発酵の終了時にCB24-12株によって産生したV42プロテアーゼの量に比較して、およそ10%であった。
参考文献
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