(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-26
(45)【発行日】2025-04-03
(54)【発明の名称】感光性組成物、その硬化物、有機エレクトロルミネッセンス表示装置および感光性組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10K 50/844 20230101AFI20250327BHJP
C08F 220/10 20060101ALI20250327BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20250327BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20250327BHJP
C08F 2/46 20060101ALI20250327BHJP
C08G 59/00 20060101ALI20250327BHJP
【FI】
H10K50/844
C08F220/10
H10K59/10
G09F9/30 309
G09F9/30 365
C08F2/46
C08G59/00
(21)【出願番号】P 2022526983
(86)(22)【出願日】2021-05-21
(86)【国際出願番号】 JP2021019353
(87)【国際公開番号】W WO2021241437
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2020094004
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 麻希子
(72)【発明者】
【氏名】石田 泰則
(72)【発明者】
【氏名】栗村 啓之
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/017524(WO,A1)
【文献】特開2000-302749(JP,A)
【文献】国際公開第2018/225676(WO,A1)
【文献】特開平09-068795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00 - 2/60
C08F 220/00 - 220/70
C08G 59/00 - 59/72
H10K 50/844
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性化合物と光重合開始剤とを含む感光性組成物であって、
前記重合性化合物は、(メタ)アクリレート化合物を含み、
炭素数12以上16以下
であって、前記(メタ)アクリレート化合物の(メタ)アクリロイルオキシ基の一部または全部が、ヒドロキシ基となったヒドロキシ化合物の濃度が0.01ppm以上7000ppm以下であ
り、
前記重合性化合物は、多官能(メタ)アクリレート化合物を含み、
前記多官能(メタ)アクリレート化合物は、2官能(メタ)アクリレートを含み、
前記2官能(メタ)アクリレートは、一般式(A)で表される化合物、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレートからなる群の1種以上である、感光性組成物。
【化1】
(一般式(A)において、R
1
およびR
1
’は水素原子またはメチル基を示す。R
1
とR
1
’は同一でもよく、異なっていてもよい。
R
2
およびR
2
’はアルキレン基を示す。アルキレン基は水酸基を有していてもよい。R
2
とR
2
’は同一でもよく、異なっていてもよい。
R
3
およびR
3
’は水素原子または炭素数1~4個のアルキル基を示す。R
3
とR
3
’は同一でもよく、異なっていてもよい。
pおよびqは1~20の数を示す。pとqは同一でもよく、異なっていてもよい。)
【請求項2】
請求項1に記載の感光性組成物であって、
前記(メタ)アクリレート化合物の(メタ)アクリロイルオキシ基の一部または全部が、ヒドロキシ基となったポリヒドロキシ化合物の濃度が0.01ppm以上12000ppm以下である、感光性組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の感光性組成物であって、
前記重合性化合物は
、エポキシ化合物を含む、感光性組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の感光性組成物であって、
溶存酸素濃度が0.1mg/L以上5mg/L以下である、感光性組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の感光性組成物であって、
水分濃度が1ppm以上50ppm以下である、感光性組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の感光性組成物であって、
粘度が3mPa・s以上50mPa・s以下である、感光性組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の感光性組成物であって、
有機エレクトロルミネッセンス素子封止用である、感光性組成物。
【請求項8】
重合性化合物と光重合開始剤とを含む感光性組成物であって、
前記重合性化合物は、(メタ)アクリレート化合物を含み、
炭素数12以上16以下
であって、前記(メタ)アクリレート化合物の(メタ)アクリロイルオキシ基の一部または全部が、ヒドロキシ基となったヒドロキシ化合物の濃度が0.01ppm以上7000ppm以下であ
り、
溶存酸素濃度が0.1mg/L以上5mg/L以下である、感光性組成物。
【請求項9】
重合性化合物と光重合開始剤とを含む感光性組成物であって、
前記重合性化合物は、(メタ)アクリレート化合物を含み、
炭素数12以上16以下
であって、前記(メタ)アクリレート化合物の(メタ)アクリロイルオキシ基の一部または全部が、ヒドロキシ基となったヒドロキシ化合物の濃度が0.01ppm以上7000ppm以下であ
り、
水分濃度が1ppm以上50ppm以下である、感光性組成物。
【請求項10】
重合性化合物と光重合開始剤とを含む感光性組成物であって、
前記重合性化合物は、(メタ)アクリレート化合物を含み、
炭素数12以上16以下
であって、前記(メタ)アクリレート化合物の(メタ)アクリロイルオキシ基の一部または全部が、ヒドロキシ基となったヒドロキシ化合物の濃度が0.01ppm以上7000ppm以下であ
り、
粘度が3mPa・s以上50mPa・s以下である、感光性組成物。
【請求項11】
重合性化合物と光重合開始剤とを含む感光性組成物であって、
前記重合性化合物は、(メタ)アクリレート化合物を含み、
炭素数12以上16以下
であって、前記(メタ)アクリレート化合物の(メタ)アクリロイルオキシ基の一部または全部が、ヒドロキシ基となったヒドロキシ化合物の濃度が0.01ppm以上7000ppm以下であ
り、
有機エレクトロルミネッセンス素子封止用である、感光性組成物。
【請求項12】
請求項1から
11のいずれか1項に記載の感光性組成物の硬化物。
【請求項13】
重合性化合物と光重合開始剤とを含む感光性組成物であって、
前記重合性化合物は、(メタ)アクリレート化合物を含み、
炭素数12以上16以下
であって、前記(メタ)アクリレート化合物の(メタ)アクリロイルオキシ基の一部または全部が、ヒドロキシ基となったヒドロキシ化合物の濃度が0.01ppm以上7000ppm以下である、感光性組成物
の硬化物。
【請求項14】
請求項
12または13に記載の硬化物で有機エレクトロルミネッセンス素子が封止された、有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項15】
請求項1から
11のいずれか1項に記載の感光性組成物の製造方法であって、
原料の重合性化合物を、以下(i)から(iii)の少なくともいずれかの方法で前処理する前処理工程と、その前処理工程で処理された重合性化合物と光重合開始剤とを混合する混合工程と、を含む感光性組成物の製造方法。
(i)原料の重合性化合物を、10℃以上100℃以下、1000Pa以下の環境下で10分以上脱揮処理する。
(ii)原料の重合性化合物を蒸留する。
(iii)原料の重合性化合物を、酸クロライドで処理する。
【請求項16】
重合性化合物と光重合開始剤とを含む感光性組成物
の製造方法であって、
前記重合性化合物は、(メタ)アクリレート化合物を含み、
炭素数12以上16以下
であって、前記(メタ)アクリレート化合物の(メタ)アクリロイルオキシ基の一部または全部が、ヒドロキシ基となったヒドロキシ化合物の濃度が0.01ppm以上7000ppm以下であ
り、
原料の重合性化合物を、以下(i)から(iii)の少なくともいずれかの方法で前処理する前処理工程と、その前処理工程で処理された重合性化合物と光重合開始剤とを混合する混合工程と、を含む感光性組成物の製造方法。
(i)原料の重合性化合物を、10℃以上100℃以下、1000Pa以下の環境下で10分以上脱揮処理する。
(ii)原料の重合性化合物を蒸留する。
(iii)原料の重合性化合物を、酸クロライドで処理する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性組成物、その硬化物、有機エレクトロルミネッセンス表示装置および感光性組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス表示装置(以下、有機EL表示装置とも記載)は、高い輝度の発光が可能であるため、注目を集めている。しかしながら、有機EL表示装置中の有機EL素子は、酸素や水分により劣化しやすく、劣化により発光特性が低下してしまうという課題があった。これを解決するために、有機EL素子を封止し、劣化を防止する技術が検討されている。
【0003】
特許文献1には、重合性化合物と重合開始剤とを含有し、25℃における粘度が5から50mPa・sであり、25℃における表面張力が15から35mN/mであり、かつ、25℃、50%RHの環境下に24時間静置した後の25℃における含水率が1000ppm以下である有機EL素子用封止剤が記載されている。
【0004】
特許文献2には、有機EL素子の封止材に適した樹脂組成物として、芳香族炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物(A)、環状(メタ)アクリレート化合物(B)及び重合開始剤(C)を含有する樹脂組成物が記載されている。ここで、環状(メタ)アクリレート化合物(B)は、化合物(A)とは異なる(メタ)アクリレート化合物である芳香族炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物、脂環式炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物、ヘテロ環骨格を有する(メタ)アクリレート化合物からなる群から選択される少なくとも1種類の(メタ)アクリレート化合物である。
【0005】
特許文献3には、(A)炭素数4以上20以下のアルカンジオールジ(メタ)アクリレートと、(B)光重合開始剤を含有し、(メタ)アクリレートあたりの親水性官能基量が4.80から7.60mmol/gの範囲にある有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-040872号公報
【文献】特開2014-193970号公報
【文献】国際公開第2019/203071号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、これまで、有機EL素子の封止を目的とする組成物が様々に提案されている。しかし、技術は早い速度で進歩しており、有機EL素子の封止を目的とする組成物には、さらなる改善が求められていた。例えば、組成物の改良による、有機EL表示装置の信頼性向上(長寿命化)が求められていた。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものである。本発明の目的の1つは、有機EL表示装置の信頼性を向上させることができる組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、以下に提供される発明を完成させ、上記課題を解決した。
【0010】
本発明によれば、
重合性化合物と光重合開始剤とを含む感光性組成物であって、
炭素数2以上40以下のヒドロキシ化合物の濃度が0.01ppm以上12000ppm以下である、感光性組成物
が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、
上記の感光性組成物の硬化物
が提供される。
【0012】
また、本発明によれば、
上記の硬化物で有機エレクトロルミネッセンス素子が封止された、有機エレクトロルミネッセンス表示装置
が提供される。
【0013】
また、本発明によれば、
上記の感光性組成物の製造方法であって、
原料の重合性化合物を、以下(i)から(iii)の少なくともいずれかの方法で前処理する前処理工程と、その前処理工程で処理された重合性化合物と光重合開始剤とを混合する混合工程と、を含む感光性組成物の製造方法
が提供される。
【0014】
(i)原料の重合性化合物を、10℃以上100℃以下、1000Pa以下の環境下で10分以上脱揮処理する。
(ii)原料の重合性化合物を蒸留する。
(iii)原料の重合性化合物を、酸クロライドで処理する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、有機EL素子の信頼性を向上できる組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0017】
本明細書における基(原子団)の表記において、置換か無置換かを記していない表記は、置換基を有しないものと置換基を有するものの両方を包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書における「(メタ)アクリル」との表記は、アクリルとメタクリルの両方を包含する概念を表す。「(メタ)アクリレート」等の類似の表記についても同様である。
本明細書において「ヒドロキシ化合物」とは、ヒドロキシ基を有する化合物の総称であり、アルコール化合物やフェノール化合物を包含する。
また、特に断りのない限り、「ヒドロキシ化合物」は、モノオール等のモノヒドロキシ化合物とポリオール等のポリヒドロキシ化合物の両方を包含する。
【0018】
<感光性組成物>
本実施形態の感光性組成物は、重合性化合物と光重合開始剤とを含む。
本実施形態の感光性組成物の、炭素数2以上40以下のヒドロキシ化合物の濃度は、0.01ppm以上12000ppm以下である。
本実施形態の感光性組成物は、好ましくは、有機エレクトロルミネッセンス素子封止用である。つまり、本実施形態の感光性組成物は、好ましくは、有機EL素子を封止して有機EL表示装置を製造するために用いられる。
【0019】
本発明者らは、従来、どのような原因により、有機EL素子の信頼性が損なわれていたかを、有機EL素子の封止を目的とする組成物の観点から検討した。
検討の結果、本発明者らは、組成物中に含まれ、かつ、有機EL素子の封止後にも少量残存しうるヒドロキシ化合物(アルコール化合物やフェノール化合物など)が、有機EL素子を蝕むらしいことを知見した。また、そのヒドロキシ化合物は、組成物の原料の1つである重合性化合物に由来する、炭素数が比較的大きいヒドロキシ化合物であるらしいことも知見した。
この知見に基づき、本発明者らは、例えば、原料の重合性化合物中のヒドロキシ化合物の含有量を低減させることにより、組成物全体としてもヒドロキシ化合物の量が少ない組成物を新たに調製した。そして、この組成物を用いて有機EL素子を封止することで、有機EL素子の信頼性を高めることができた。
【0020】
本実施形態の感光性組成物は、適切な原材料を選択し、適切な製造工程を経ることにより製造される。
「適切な原材料」については、例えば、不純物としてのヒドロキシ化合物の含有量が少ない原材料を用いる、ヒドロキシ化合物を含みやすい溶剤をできるだけ用いずに実質的に無溶剤で感光性組成物を調製すること、などが挙げられる。
【0021】
「適切な製造工程」については、例えば、(i)原料の重合性化合物((メタ)アクリレート化合物など)を脱揮処理する、(ii)原料の重合性化合物を蒸留する、および、(iii)原料の重合性化合物を、酸クロライドと反応させる、のうち少なくともいずれかの原料前処理を行うことなどが挙げられる。
これらの詳細については、以下で順次説明する。
【0022】
(重合性化合物)
重合性化合物は、後述の光重合開始剤から発生する活性種により重合可能な化合物である限り、特に限定されない。
本実施形態においては、重合性化合物は、(メタ)アクリレート化合物および/またはエポキシ化合物を含むことが好ましく、(メタ)アクリレート化合物がより好ましい。以下、それぞれについて説明する。
【0023】
・(メタ)アクリレート化合物
重合性化合物は、多官能(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。多官能(メタ)アクリレート化合物を用いることで、光硬化性がより良好となる傾向がある。
多官能(メタ)アクリレート化合物は、例えば2から6官能の、好ましくは2から4官能の(メタ)アクリレート化合物を含むことができる。諸性能のバランスなどの点で、多官能(メタ)アクリレート化合物は、2官能(メタ)アクリレート化合物、すなわち、ジ(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。
【0024】
重合性化合物は、多官能(メタ)アクリレートと単官能(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種以上を含むことが好ましく、多官能(メタ)アクリレートと単官能(メタ)アクリレートとを含むことがより好ましい。多官能(メタ)アクリレートと単官能(メタ)アクリレートを併用することにより、重合性の調整、硬化膜の物性の調整などが可能となる。
諸性能のバランスなどの観点で、多官能(メタ)アクリレートと単官能(メタ)アクリレートとを併用する場合、好ましくは重合性化合物全体の40質量%以上、より好ましくは重合性化合物全体の50質量%以上が多官能(メタ)アクリレートである。好ましくは重合性化合物全体の70質量%以上、より好ましくは重合性化合物全体の80質量%以上、最も好ましくは重合性化合物全体の90質量%以上が多官能(メタ)アクリレートである。好ましくは重合性化合物全体の100質量%以下、より好ましくは重合性化合物全体の98質量%以下、最も好ましくは重合性化合物全体の95質量%以下が多官能(メタ)アクリレートである。重合性化合物全体とは、多官能(メタ)アクリレートと単官能(メタ)アクリレートの合計100質量部であることが好ましい。
念のため述べておくと、性能良好な限りにおいて、重合性化合物は、単官能(メタ)アクリレートのみを含んでいてもよい。
【0025】
多官能(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、例えば、2官能(メタ)アクリレート、3官能(メタ)アクリレート及び4官能以上の(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0026】
2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば以下が挙げられる。
ビス(1-(メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピル)フタレート、ビス(2-(メタ)アクリロキシエチル)ホスフェート、ビス((メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)ジエチレングリコール、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ-(3-(メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピル)エーテル、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールビス((メタ)アクリロキシプロピオネート)、1,4-ブタンジオールビス((メタ)アクリロキシプロピオネート)、2-ブテン-1,4-ジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールエーテルジ(メタ)アクリレート、ジフェノール酸ジ-(3-(メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピル)エーテル、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、7,7,9-トリメチル-3,13-ジオキソ-3,14-ジオキサ-5,12-ジアザヘキサデカン-1,16-ジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-エタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-エタンジオールビス((メタ)アクリロキシプロピオネート)、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-フェニレンジ(メタ)アクリレート、1-フェニル-1,2-エタンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチル-2,2-ジ(p-ヒドロキシフェニル)プロパンジ(メタ)アクリレート、1,2-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール構造を有する2官能(メタ)アクリレート。
【0027】
ビスフェノール構造を有する2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば以下が挙げられる。
エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ-(3-(メタ)アクリロキシエチル)エーテル、ビスフェノールAジ-(3-(メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピル)エーテル、プロポキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジ-(3-(メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピル)エーテル、テトラクロロビスフェノールAジ-(3-(メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピル)エーテル。
ビスフェノール構造を有する2官能(メタ)アクリレートとしては、ビスフェノール骨格の末端にオキシアルキレン構造を介し、(メタ)アクリル基を2個有するジ(メタ)アクリレートが好ましい。オキシアルキレン構造は水酸基を有しても良い。ビスフェノール構造を有する2官能(メタ)アクリレートの中では、以下一般式(A)で表される化合物が好ましい。
【0028】
【0029】
一般式(A)において、各基の定義は以下のとおりである。
R1およびR1'は水素原子またはメチル基を示す。R1とR1'は同一でもよく、異なっていてもよい。
R2およびR2'はアルキレン基を示す。アルキレン基は水酸基を有していてもよい。R2とR2'は同一でもよく、異なっていてもよい。
R3およびR3'は水素原子または炭素数1~4個のアルキル基を示す。R3とR3'は同一でもよく、異なっていてもよい。
pおよびqは1~20の数を示す。pとqは同一でもよく、異なっていてもよい。
【0030】
一般式(A)においては、R2およびR2'は、水酸基を有しないアルキレン基であることが好ましい。
R1とR1'はメチル基が好ましい。R2とR2'は炭素数1~12のアルキレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。アルキレン基は水酸基を有しないことが好ましい。R3およびR3'はメチル基が好ましい。p+qは15以下が好ましく、10がより好ましい。p+qは1~8が好ましく、4がより好ましい。
【0031】
3官能(メタ)アクリレートとしては、例えば以下が挙げられる。
1,2,4-ブタントリオールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、シリコーントリ(メタ)アクリレート、1,3,5-トリ(メタ)アクリロイルヘキサヒドロ-s-トリアジン、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,2,3-トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリメチロールプロパントリス((メタ)アクリロキシプロピオネート)、1,2,3-トリメチロールプロパントリス((メタ)アクリロキシプロピオネート)、トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート。
【0032】
4官能以上の(メタ)アクリレートとしては、例えば以下が挙げられる。
ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラキス((メタ)アクリロキシプロピオネート)。
多官能(メタ)アクリレート化合物の中では、2官能(メタ)アクリレートが好ましい。
2官能(メタ)アクリレートの中では、ビスフェノール構造を有する2官能(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレートからなる群の1種以上が好ましい。
【0033】
単官能(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、例えば以下が挙げられる。
【0034】
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシ化-o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート。
単官能(メタ)アクリレートの中では、エトキシ化-o-フェニルフェノール(メタ)アクリレートが好ましい。
【0035】
ちなみに、重合性化合物として(メタ)アクリレート化合物を用いた場合、通常、用いた(メタ)アクリレート化合物に対応するヒドロキシ化合物が、感光性組成物中に微量含まれることとなる。
具体的には、重合性化合物として(メタ)アクリレート化合物を用いた場合、その(メタ)アクリレート化合物の(メタ)アクリロイルオキシ基(H2C=CH-C(=O)-O-、または、H2C=C(CH3)-C(=O)-O-)の一部または全部が、ヒドロキシ基(HO-)となったヒドロキシ化合物が、感光性組成物中に微量含まれうる。重合性化合物として多官能(メタ)アクリレート化合物を用いた場合、ポリヒドロキシ化合物が感光性組成物中に微量含まれうる。
その他、(メタ)アクリレート化合物を合成する際の出発原料や、(メタ)アクリレート化合物の構造に応じて、種々のヒドロキシ化合物(モノオール、ポリオール、フェノール化合物など)が、感光性組成物中に含まれうる。
【0036】
前述のとおり、「ヒドロキシ化合物」とは、ヒドロキシ基を有する化合物の総称であり、アルコール化合物やフェノール化合物を包含する。また、特に断りのない限り、「ヒドロキシ化合物」は、モノヒドロキシ化合物とポリヒドロキシ化合物の両方を包含する。
「ヒドロキシ化合物」については、炭素数2以上40以下のヒドロキシ化合物の濃度、特に炭素数2以上40以下のポリヒドロキシ化合物の濃度を0.01ppm以上12000ppm以下にすることが好ましい。
「ヒドロキシ化合物」については、重合性化合物由来と考えられるヒドロキシ化合物の濃度、特に重合性化合物由来のポリヒドロキシ化合物の濃度を0.01ppm以上12000ppm以下にすることが好ましい。
【0037】
ガスクロマトグラフにより測定され、かつ、重合性化合物由来と考えられるヒドロキシ化合物としては、例えば、以下が挙げられる。
1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート由来と考えられるヒドロキシ化合物としては、例えば、1,12-ドデカンジオール(炭素数12)、1,12-ドデカンジオールモノ(メタ)アクリレート(アクリレートは炭素数15、メタクリレートは炭素数16)が挙げられる。
ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート由来と考えられるヒドロキシ化合物としては、例えば、フェニルフェノール(炭素数12)、ビフェニリルオキシエタノール(炭素数14)が挙げられる。
モノヒドロキシ化合物としては、例えば、1,12-ドデカンジオールモノ(メタ)アクリレート、フェニルフェノール、ビフェニリルオキシエタノールからなる群の1種以上が挙げられる。
ポリヒドロキシ化合物としては、例えば、1,12-ドデカンジオールが挙げられる。
「ヒドロキシ化合物」は、炭素数5以上30以下であることが好ましく、炭素数8以上25以下であることがより好ましく、炭素数10以上20以下であることが最も好ましく、炭素数12以上16以下であることがなおさら好ましい。
ヒドロキシ化合物の濃度、特に炭素数2以上40以下のポリヒドロキシ化合物の濃度を0.01ppm以上12000ppm以下にすることが好ましい。
【0038】
・エポキシ化合物
重合性化合物は、エポキシ化合物を含んでもよい。
エポキシ化合物は、単官能でも多官能でもよい。また、単官能エポキシ化合物と多官能エポキシ化合物とが併用されてもよい。
【0039】
単官能エポキシ化合物としては、例えば、4-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、m,p-クレジルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテルなどが挙げられる。もちろん、単官能エポキシ化合物はこれらのみに限定されない。
【0040】
多官能エポキシ化合物としては、例えば、エポキシ樹脂として公知の化合物の中から、1分子中にエポキシ基を2個以上有するものを挙げることができる。具体的には、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ナフタレン骨格型エポキシ樹脂、ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールSジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、芳香族多官能エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂肪族多官能エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、多官能脂環式エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0041】
エポキシ化合物についても、エポキシ化合物を合成する際の出発原料や、エポキシ化合物の構造に応じて、種々のヒドロキシ化合物(モノオール、ポリオール、フェノール化合物など)が、感光性組成物中に含まれうる。
【0042】
後述する脱揮処理で、ヒドロキシ化合物を揮発させ、一方では重合性化合物を残す(揮発させない)観点から、重合性化合物は、揮発しにくいものを含むことが好ましい。具体的には、重合性化合物は、分子量210以上2000以下のものを含むことが好ましく、分子量300以上2000以下のものを含むのがより好ましく、分子量300以上1000以下のものを含むのがさらに好ましく、分子量300以上600以下のものを含むのが特に好ましい。すなわち、本実施形態の感光性組成物は、上掲の(メタ)アクリレート化合物(特に多官能(メタ)アクリレート)やエポキシ化合物の中から、上記分子量に当てはまるものを含むことが好ましい。より具体的には、本実施形態の感光性組成物は、上記分子量に当てはまる重合性化合物を、全重合性化合物中の50質量%以上含むことが好ましい。
念のため述べておくと、上記分子量に当てはまらない重合性化合物であっても、本実施形態において使用が排除されることはない。
【0043】
(光重合開始剤)
光重合開始剤は、上述の重合性化合物を重合させることが可能なものである限り、特に限定されない。
一例として、光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤を含むことが好ましい。光ラジカル重合開始剤は、好ましくは上記(メタ)アクリレート化合物と組み合わせて用いられる。
【0044】
光ラジカル重合開始剤としては、ベンゾフェノン及びその誘導体、ベンジル及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン誘導体、ジエトキシアセトフェノン、4-tert-ブチルトリクロロアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体、2-ジメチルアミノエチルベンゾエート、p-ジメチルアミノエチルベンゾエート、ジフェニルジスルフィド、チオキサントン及びその誘導体、カンファーキノン、7,7-ジメチル-2,3-ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-カルボン酸、7,7-ジメチル-2,3-ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-カルボキシ-2-ブロモエチルエステル、7,7-ジメチル-2,3-ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-カルボキシ-2-メチルエステル、7,7-ジメチル-2,3-ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-カルボン酸クロライド等のカンファーキノン誘導体、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1等のα-アミノアルキルフェノン誘導体、ベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジメトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジエトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド誘導体、フェニル-グリオキシリックアシッド-メチルエステル、オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステル及びオキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステル等が挙げられる。
【0045】
別の例として、光重合開始剤は、光カチオン重合開始剤を含むことが好ましい。光カチオン重合開始剤は、好ましくは上記エポキシ化合物と組み合わせて用いられる。
【0046】
光カチオン重合開始剤としては、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリス(4-t-ブチルフェニル)スルホニウム-トリフルオロメタンスルホネートなどのスルホニウム塩類;p-ニトロフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェートなどのジアゾニウム塩類;アンモニウム塩類;ホスホニウム塩類;ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、(トリクミル)ヨードニウム-テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのヨードニウム塩類;キノンジアジド類、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタンなどのジアゾメタン類;1-フェニル-1-(4-メチルフェニル)スルホニルオキシ-1-ベンゾイルメタン、N-ヒドロキシナフタルイミド-トリフルオロメタンスルホネートなどのスルホン酸エステル類;ジフェニルジスルホンなどのジスルホン類;トリス(2,4,6-トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジンなどのトリアジン類が挙げられる。もちろん、光カチオン重合開始剤はこれらのみに限定されない。
【0047】
光重合開始剤は1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤が好ましい。光ラジカル重合開始剤としては、硬化させる時に390nm以上の可視光線のみを用いて硬化させることができ、有機EL素子にダメージを与えないで硬化させることができる点で、アシルホスフィンオキサイド誘導体が好ましい。アシルホスフィンオキサイド誘導体の中では、有機EL表示装置としたときに可視光線での透過性が低下せずに、395nm以上の光のみを用いて硬化させることができる点で、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイドが最も好ましい。2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイドとしては、IGM Resins社製「Omnirad TPO」等が挙げられる。
【0048】
光重合開始剤の含有量は、重合性化合物100質量部に対して、0.05質量部以上10質量部以下が好ましく、0.5質量部以上8質量部以下がより好ましく、1質量部以上5質量部以下がさらに好ましく、2質量部以上5質量部以下が特に好ましい。適量の光重合開始剤を用いることで、十分な感度/硬化スピードを得つつ、封止材の透明度を十分に確保しやすい。
【0049】
(その他任意成分)
本実施形態の感光性組成物は、重合性化合物と光重合開始剤のほか、性能調整のために他の成分を含んでもよいし、含まなくてもよい。
他の成分としては、酸化防止剤、界面活性剤、増感剤などが挙げられる。
【0050】
本実施形態の感光性組成物が有機溶剤を含むことは排除されない。しかし、ヒドロキシ化合物の濃度を適切な値とする観点などから、本実施形態の感光性組成物は、有機溶剤を実質上含まないか、または含むとしても少量であることが好ましい。具体的には、有機溶剤の量は、感光性組成物全体中、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下である。理想的には、本実施形態の感光性組成物は、有機溶剤を実質的に含まない。
工業的に利用しやすい有機溶剤には、しばしば、ヒドロキシ化合物が不純物として含まれる。よって、有機溶剤を実質上用いずに感光性組成物を調製することで、ヒドロキシ化合物の濃度が適切な感光性組成物を調製しやすい。
【0051】
(各種数値に関する追加・補足説明)
前述のように、炭素数2以上40以下のヒドロキシ化合物の濃度は0.01ppm以上12000ppm以下であればよい。この濃度は、好ましくは1ppm以上11000ppm以下、より好ましくは10ppm以上11000ppm以下、さらに好ましくは100ppm以上11000ppm以下、特に好ましくは1000ppm以上11000ppm以下である。基本的には炭素数2以上40以下のヒドロキシ化合物の濃度は小さいほどよい。ただし、製造コストを考慮し、ヒドロキシ化合物の濃度は通常0.01ppm以上である。
【0052】
前述のように、組成物中のヒドロキシ化合物は、原料の重合性化合物に由来しうる。例えば重合性化合物が多官能(メタ)アクリレート化合物などの多官能化合物である場合、ヒドロキシ化合物は、典型的にはポリヒドロキシ化合物を含みうる。
この点で、本実施形態の感光性組成物のポリヒドロキシ化合物の濃度は、有機EL素子の信頼性を向上できる点で、好ましくは0.01ppm以上12000ppm以下である。この濃度は、より好ましくは1ppm以上11000ppm以下、さらに好ましくは10ppm以上1000ppm以下、特に好ましくは15ppm以上500ppm以下、とりわけ好ましくは40ppm以上100ppm以下である。
本実施形態の感光性組成物のモノヒドロキシ化合物の濃度は、有機EL素子の信頼性を向上できる点で、好ましくは0.01ppm以上12000ppm以下である。この濃度は、より好ましくは1ppm以上11000ppm以下、さらに好ましくは10ppm以上11000ppm以下、特に好ましくは100ppm以上11000ppm以下、とりわけ好ましくは1000ppm以上11000ppm以下である。
【0053】
別観点として、組成物中のヒドロキシ化合物は原料の重合性化合物に由来しうることを考慮すると、組成物は、炭素数2か、それよりも炭素数がある程度大きなヒドロキシ化合物(例えば炭素数3以上40以下のヒドロキシ化合物、具体的には炭素数4以上35以下のヒドロキシ化合物)を含みうる。そして、そのようなヒドロキシ化合物の濃度を上記数値範囲程度に低減することで、有機EL素子の信頼性を一層向上させうる。
【0054】
本実施形態の感光性組成物の溶存酸素濃度は、好ましくは0.1mg/L以上5mg/L以下、より好ましくは0.5mg/L以上3mg/L以下、さらに好ましくは0.7mg/L以上2mg/L以下である。
本実施形態の感光性組成物の水分濃度は、好ましくは1ppm以上50ppm以下、より好ましくは3ppm以上40ppm以下、さらに好ましくは5ppm以上30ppm以下である。
感光性組成物の溶存酸素濃度や水分濃度を十分に低減することによって、有機EL表示装置の信頼性を一層高めることができる。
【0055】
本実施形態の感光性組成物の粘度は、好ましくは3mPa・s以上50mPa・s以下、より好ましくは5mPa・s以上30mPa・s以下である。この程度の粘度であることにより、インクジェット法を適用する際の吐出しやすさ、膜形成のしやすさ、などが高まる。
粘度は、例えば、コーンプレート型粘度計(英弘精機社製、品番:HB DV3Tなど)を用いて、25℃、200から250rpm(好ましくは250rpm)の条件で測定することができる。
【0056】
<感光性組成物の製造方法>
本実施形態の感光性組成物は、上述の成分を用いて、適切な製造方法を採用することにより製造可能である。一例として、本実施形態の感光性組成物は、以下(1)から(5)の各工程を経ることで製造可能である。
(1)原料の重合性化合物を前処理する前処理工程(以下、単に「前処理工程」とも記載)
(2)(1)の前処理工程で処理された重合性化合物と光重合開始剤とを混合する混合工程(以下、単に「混合工程」とも記載)
(3)脱水工程
(4)脱酸素工程
(5)濾過工程
【0057】
ここで、上記(1)の前処理工程は、以下(i)から(iii)の少なくともいずれかの方法であることができる。
(i)原料の重合性化合物を、10℃以上100℃以下、1000Pa以下の環境下で10分以上脱揮処理する。
(ii)原料の重合性化合物を蒸留する。
(iii)原料の重合性化合物を、酸クロライドで処理する。
【0058】
以下、上記各工程について説明する。
【0059】
(1)前処理工程
前処理工程は、原料の重合性化合物中に含まれる、炭素数2以上40以下のヒドロキシ化合物の濃度を低減させることを意図して行われる。前処理工程を適切に行うことで、炭素数2以上40以下のヒドロキシ化合物の濃度が0.01ppm以上12000ppm以下である感光性組成物を製造しやすい。
【0060】
前処理工程の一例として、(i)原料の重合性化合物を、10℃以上100℃以下、1000Pa以下の環境下で10分以上脱揮処理する工程を挙げることができる。このような脱揮処理により、重合性化合物中に含まれるヒドロキシ化合物(通常、重合性化合物そのものよりは低分子量である)が揮発し、重合性化合物中のヒドロキシ化合物の量を低減できる。
【0061】
脱揮の際の温度は、好ましくは10℃以上100℃以下、より好ましくは30℃以上80℃以下程度である。
脱揮の時間は、好ましくは10分以上、より好ましくは10分以上60分以下である。
脱揮の際の圧力は、好ましくは1000Pa以下、より好ましくは1Pa以上1000Pa以下とすることができる。
【0062】
脱揮処理は、ラボスケールでは、例えばフラスコに撹拌子を入れ、真空ポンプと真空度計をつないで減圧することにより行うことができる。加温して揮発分をより積極的に揮発させようとする場合はオイルバスを使用することが好ましい。大きいスケールで脱揮処理を行う場合は、例えば撹拌機つきのステンレス製加圧容器で行うことができる。
ちなみに、適当な真空度を保つため、エアーによるバブリング(液への吹き込み)を行ってもよい。これは、重合活性種を失活させる酸素の濃度が低下しすぎると、重合性化合物が重合してしまうことがあるためである。
【0063】
前処理工程の別の例として、(ii)原料の重合性化合物を蒸留する工程を挙げることができる。すなわち、重合性化合物そのもの(具体的には(メタ)アクリレート化合物および/またはエポキシ化合物)と、ヒドロキシ化合物との、沸点/蒸気圧の差を利用して、重合性化合物中に含まれるヒドロキシ化合物の量を低減できる。
蒸留の方法は特に限定されない。一般的な蒸留技術を適宜利用して、原料の重合性化合物中のヒドロキシ化合物を低減すればよい。
【0064】
前処理工程のさらに別の例として、(iii)原料の重合性化合物を、酸クロライドで処理する工程を挙げることができる。すなわち、原料の重合性化合物中のヒドロキシ化合物と酸クロライドとを反応させて、ヒドロキシ化合物のヒドロキシ基を酸クロライドで「キャップ」することにより、ヒドロキシ化合物の濃度を低減できる。
【0065】
ヒドロキシ基を酸クロライドでキャップするだけであれば酸クロライドの種類は特に問わないが、酸クロライドとしては、(メタ)アクリル酸クロライドが好ましい。なぜならば、ヒドロキシ化合物を重合性化合物((メタ)アクリレート化合物)「変換」できるためである。
【0066】
酸クロライドでの処理にあたっては、有機合成化学の分野で知られている種々の技術を適用できる。例えば、酸クロライドでの処理の際、塩基性触媒を用いてもよい。また、酸クロライドでの処理後のモノマーの回収や、過剰な酸クロライドや触媒の除去は、例えば適切な分液操作により行うことができる。
【0067】
ヒドロキシ化合物の濃度の低減のしやすさの観点では、(ii)または(iii)の処理が好ましく、(iii)の処理がより好ましい。一方、工業的な大容量の処理のしやすさの観点では、(i)の処理が好ましい。また、ヒドロキシ化合物以外の不純物(例えばトルエンなどの炭化水素)の低減も考慮すると、(i)または(ii)の処理が好ましい。
前処理工程においては、上記(i)から(iii)のうち1のみの処理を行ってもよいし、2以上の処理を行ってもよい。例えば、(ii)または(iii)の処理を行った後、(i)の処理を行うことで、ヒドロキシ化合物の濃度を低減し、かつ、ヒドロキシ化合物以外の不純物の濃度も低減することができる。
【0068】
(2)混合工程
混合工程においては、上記(1)の前処理工程で処理された重合性化合物と光重合開始剤とを、適量ずつ混合して、混合物を得る。混合方法は特に限定されず、公知の撹拌機を用いて撹拌することができる。
【0069】
(3)脱水工程
上記(2)で得た混合物から、できるだけ水分を除くことが好ましい。脱水工程を行うことにより、感光性組成物の水分濃度を1ppm以上50ppm以下としやすい。水分の低減方法は特に限定されないが、例えば以下の方法が挙げられる。
(i)乾燥剤を用いる。乾燥剤は、水分を除去した後、デカンテーション又はろ過により分離される。乾燥剤は、組成物に影響がなければ特に限定されない。乾燥剤としては、高分子吸着剤(モレキュラーシーブ、合成ゼオライト、アルミナ、シリカゲル等)、無機塩(塩化カルシウム、無水硫酸マグネシウム、生石灰、無水硫酸ナトリウム、無水硫酸カルシウム等)、固体アルカリ類(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)等が挙げられる。
(ii)減圧条件下で加熱する。
(iii)減圧条件下で蒸留精製する。
(iv)乾燥窒素や乾燥アルゴンガス等の不活性ガスを各成分に吹き込む。
(v)凍結乾燥処理する。
【0070】
水分の低減方法としては、簡便性や、成分の劣化を抑える観点などから、(i)乾燥剤を用いる方法が好ましい。乾燥剤としては、高分子吸着剤が好ましい。高分子吸着剤としては、モレキュラーシーブが好ましい。
【0071】
(4)脱酸素工程
脱酸素工程を行うことにより、混合物中の溶存酸素量を低減できる。そして、感光性組成物の溶存酸素濃度を0.1mg/L以上5mg/L以下としやすい。溶存酸素の低減方法は特に限定されず、例えば以下の方法が挙げられる。
(i)減圧条件下に混合物を暴露する。
(ii)乾燥窒素や乾燥アルゴンガス等の不活性ガスを混合物に吹き込む。
(iii)低酸素濃度下に暴露する。
【0072】
ちなみに、上記のうち2以上を組み合わせたような方法で溶存酸素を低減してもよい。例えば、(i)と(ii)を組み合わせた方法、つまり、減圧条件下において、乾燥窒素や乾燥アルゴンガス等の不活性ガスを混合物に吹き込むことで混合物中の溶存酸素量を低減してもよい。
【0073】
(5)濾過工程
上記(1)から(4)の工程を経て得られた混合物を、適当なフィルターを用いて濾過する。これにより本実施形態の感光性組成物を得ることができる。使用可能なフィルターは特に限定されないが、有機EL素子の封止用途で求められるスペックの感光性組成物を得るためには、ポアサイズ1μm以下のフィルターを用いることが好ましい。
【0074】
<硬化物、有機EL表示装置>
【0075】
本実施形態の感光性組成物に光を照射することで、硬化物を得ることができる。また、本実施形態の感光性組成物により有機EL素子を封止することで、有機EL表示装置を製造できる。
【0076】
感光性組成物を硬化させるための光源は特に限定されない。ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ(インジウム等を含有する)、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、キセノンエキシマランプ、キセノンフラッシュランプ、LED等が挙げられる。
【0077】
光の照射量は、100mJ/cm2以上8000mJ/cm2以下であることが好ましく、300mJ/cm2以上2000mJ/cm2であることがより好ましい。照射量を100mJ/cm2以上とすることで、組成物が十分に硬化し、十分な封止性を得やすい。また、照射量を8000mJ/cm2以下とすることで、有機EL素子へのダメージを与えることを抑えることができる
【0078】
有機EL表示装置を製造する方法としては、例えば、(i)有機EL素子が設けられた基板の、その有機EL素子が設けられた面の上に、本実施形態の感光性組成物による膜(未硬化膜)を形成し、(ii)その膜に光を照射する方法が挙げられる。こうすることで、有機EL素子を、本実施形態の感光性組成物の硬化物で封止できる。前述のように、有機EL素子を、本実施形態の感光性組成物の硬化物により封止することで、最終的に得られる有機EL表示装置の信頼性を高めることができる。
ちなみに、上記(ii)の後に、硬化物の表面に、SiNなどの無機保護膜をさらに設けてもよい。
【0079】
上記(i)の膜形成には、インクジェット方式を採用することが好ましい。有機EL表示装置の製造においては、複数の有機EL素子が設けられた大面積の基板上に、均一に膜形成を行う必要上、インクジェット方式による膜形成が好ましい。
上記(i)の膜形成において、膜厚は、例えば1μm以上15μm以下、好ましくは3μm以上10μm以下である。1μm以上の膜を形成しそして硬化させることで、封止材として十分な封止能を得やすい。また、膜厚が15μm以下であることにより、有機EL表示装置の小型化、製造コストの削減などにつながる。
【0080】
以下、本実施形態の感光性組成物を封止剤形成用材料として用いて製造される有機EL表示装置の一態様について、トップエミッション型の有機EL表示装置を例に説明する。念のため述べておくと、本実施形態の感光性組成物を適用する有機EL表示装置は、トップエミッション型に限定されない。有機EL表示装置は、有機EL層で生じる光を基板側から照射するボトムエミッション型の有機EL表示装置であってもよい。
【0081】
トップエミッション型の有機EL表示装置は、有機EL素子と、有機EL素子を封止する封止層と、封止層上に設けられる封止基板と、を備えている。
【0082】
有機EL素子は、例えば、基板上に、陽極と、発光層を含む有機EL層と、陰極とが順に積層された構造を有している。
【0083】
有機EL素子の基板としては、例えば、ガラス基板、シリコン基板、プラスチック基板等が挙げられる。これらのうち、ガラス基板及びプラスチック基板からなる群の1種以上が好ましく、ガラス基板がより好ましい。
【0084】
陽極としては、比較的仕事関数の大きな(4.0eVより大きな仕事関数を持つものが好適である)、導電性の金属酸化物膜や半透明の金属薄膜等が一般的に用いられる。陽極の材料としては例えば、インジウムスズ酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)、酸化スズ等の金属酸化物、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、銅(Cu)等の金属又はこれらのうちの少なくとも1個を含有する合金、ポリアニリン又はその誘導体、ポリチオフェン又はその誘導体等の有機の透明導電膜等が挙げられる。
陽極は、必要があれば2層以上の層構成により形成できる。陽極の膜厚は、電気伝導度を(ボトムエミッション型の場合には、光の透過性も)考慮して、適宜選択できる。陽極の膜厚は、10nmから10μmが好ましく、20nmから1μmがより好ましく、50nmから500nmが最も好ましい。陽極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。トップエミッション型の場合には、基板側に照射される光を反射させるための反射膜を陽極の下に設けてもよい。
【0085】
有機EL層は、少なくとも有機物からなる発光層を含んでいる。この発光層は、発光性材料を含有する。発光性材料としては、蛍光又は燐光を発光する有機物(低分子化合物又は高分子化合物)等が挙げられる。発光層は、更に、ドーパント材料を含有してもよい。
有機物としては、色素系材料、金属錯体系材料、高分子材料等が挙げられる。ドーパント材料は、有機物の発光効率の向上や発光波長を変化させる等の目的で、有機物中にドープされるものである。これらの有機物と必要に応じてドープされるドーパントからなる発光層の厚さは、通常、2nm以上200nm以下である。
【0086】
色素系材料としては、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体化合物、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ピロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー等が挙げられる。
【0087】
金属錯体系材料としては、イリジウム錯体、白金錯体等の三重項励起状態からの発光を有する金属錯体、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾリル亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体等といった、金属錯体等が挙げられる。金属錯体としては、中心金属に、テルビウム(Tb)、ユウロピウム(Eu)、ジスプロシウム(Dy)等の希土類金属、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、ベリリウム(Be)等を有し、配位子に、オキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を有する金属錯体等が挙げられる。これらの中では、中心金属にアルミニウム(Al)を有し、配位子にキノリン構造等を有する金属錯体、中心金属にイリジウム(Ir)を有し、配位子にピリジン環化合物等を有する金属錯体が好ましい。中心金属にアルミニウム(Al)を有し、配位子にキノリン構造等を有する金属錯体の中では、トリス(8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウムが好ましい。中心金属にイリジウム(Ir)を有し、配位子にピリジン環化合物等を有する金属錯体の中では、4,4'-N,N'-ジカルバゾール-ビフェニル(CBP)中にトリス(2-フェニルピリジン)(Ir(ppy)3)をドープした化合物(Ir(ppy)3+CBP)が好ましい。
【0088】
高分子材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、上記色素体や金属錯体系発光材料を高分子化したものなどが挙げられる。
【0089】
上記発光性材料のうち、青色に発光する材料としては、ジスチリルアリーレン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、これらの重合体等が挙げられる。これらの中では、高分子材料が好ましい。高分子材料の中では、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体からなる群のうちの1種以上が好ましい。
【0090】
緑色に発光する材料としては、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、これらの重合体等が挙げられる。これらの中では、高分子材料が好ましい。高分子材料の中では、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体からなる群のうちの1種以上が好ましい。
【0091】
赤色に発光する材料としては、クマリン誘導体、チオフェン環化合物、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体、これらの重合体等が挙げられる。これらの中では、高分子材料が好ましい。高分子材料の中では、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体からなる群のうちの1種以上が好ましい。
【0092】
ドーパント材料としては、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾロン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン、ピリジン環化合物等が挙げられる。
【0093】
有機EL層は、発光層以外に、発光層と陽極との間に設けられる層と、発光層と陰極との間に設けられる層と、を適宜設けることができる。まず、発光層と陽極との間に設けられる層としては、陽極からの正孔注入効率を改善する正孔注入層や、陽極又は正孔注入層から注入された正孔を発光層へ輸送する正孔輸送層等が挙げられる。発光層と陰極との間に設けられる層としては、陰極からの電子注入効率を改善する電子注入層や、陰極又は電子注入層から注入された電子を発光層へ輸送する電子輸送層等が挙げられる。
【0094】
正孔注入層を形成する材料としては、4,4',4''-トリス{2-ナフチル(フェニル)アミノ}トリフェニルアミン等のフェニルアミン系、スターバースト型アミン系、フタロシアニン系、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム等の酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、ポリチオフェン誘導体等が挙げられる。
【0095】
正孔輸送層を構成する材料としては、N,N'-ジフェニル-N,N'-ジナフチルベンジジン等のベンジジン誘導体、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリアリールアミン若しくはその誘導体、ポリピロール若しくはその誘導体、ポリ(p-フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、ポリ(2,5-チエニレンビニレン)若しくはその誘導体等が挙げられる。
【0096】
これらの正孔注入層又は正孔輸送層が、電子の輸送を堰き止める機能を有する場合には、電子ブロック層ということもある。
【0097】
電子輸送層を構成する材料としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン若しくはその誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、ナフトキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン若しくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン若しくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8-ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体等が挙げられる。誘導体としては、金属錯体等が挙げられる。これらの中では、8-ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体が好ましい。8-ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の中では、発光層中に含有する、蛍光又は燐光を発光する有機物としても使用できる点で、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(p-フェニルフェノラト)アルミニウム及びトリス(8-ヒドロキシキノリノラト)アルミニウムがからなる群の1種以上が好ましい。
【0098】
電子注入層としては、発光層の種類に応じて、カルシウム(Ca)層の単層構造からなる電子注入層、又は、周期律表IA族とIIA族の金属であり、且つ、仕事関数が1.5eVから3.0eVの金属及びその金属の酸化物、ハロゲン化物及び炭酸化物からなる群のうちの1種以上で形成された層の単層構造、又は、周期律表IA族とIIA族の金属であり、且つ、仕事関数が1.5eVから3.0eVの金属及びその金属の酸化物、ハロゲン化物及び炭酸化物からなる群のうちの1種以上で形成された層とCa層との積層構造からなる電子注入層等が挙げられる。仕事関数が1.5eVから3.0eVの、周期律表IA族の金属又はその酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物としては、リチウム(Li)、フッ化リチウム、酸化ナトリウム、酸化リチウム、炭酸リチウム等が挙げられる。仕事関数が1.5eVから3.0eVの、周期律表IIA族の金属又はその酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物としては、ストロンチウム(Sr)、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム、酸化ストロンチウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。
【0099】
これらの電子輸送層又は電子注入層が、正孔の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの電子輸送層や電子注入層を正孔ブロック層(Hole Blocking層)ということもある。
【0100】
陰極としては、仕事関数が比較的小さく(4.0eVより小さな仕事関数を持つものが好適である)、発光層への電子注入が容易な透明又は半透明の材料が好ましい。陰極の材料としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、アルミニウム(Al)、スカンジウム(Sc)、バナジウム(V)、亜鉛(Zn)、イットリウム(Y)、インジウム(In)、セリウム(Ce)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、イッテルビウム(Yb)等の金属、又は上記金属のうち二種以上からなる合金、若しくはそれらのうち1種以上と、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、銅(Cu)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、スズ(Sn)のうち1種以上とからなる合金、又は、グラファイト若しくはグラファイト層間化合物、又は、ITO、IZO(Indium Zinc Oxide)、酸化スズ等の金属酸化物等が挙げられる。
【0101】
陰極を2層以上の積層構造としてもよい。2層以上の積層構造としては、上記の金属、金属酸化物、フッ化物、これらの合金と、Al、Ag、Cr等の金属との積層構造等が挙げられる。陰極の膜厚は、電気伝導度や耐久性を考慮して、適宜選択できる。陰極の膜厚は、10nm以上10μm以下が好ましく、15nm以上1μm以下がより好ましく、20nm以上500nm以下が最も好ましい。陰極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、金属薄膜を熱圧着するラミネート法等が挙げられる。
【0102】
これらの発光層と陽極との間と、発光層と陰極との間に設けられる層は、製造する有機EL表示装置に求められる性能に応じて、適宜選択可能である。例えば、有機EL素子は、下記の(i)から(xv)の層構成のいずれかを有することができる。
(i)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(ii)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(iii)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
(v)陽極/発光層/電子注入層/陰極
(vi)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
(vii)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
(viii)陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
(ix)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
(x)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極
(xi)陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(xii)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(xiii)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(xiv)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(xv)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(「/」は、各層が隣接して積層されていることを示す。以下同じ。)
【0103】
封止層は、水蒸気や酸素等の気体が有機EL素子に接触することを防ぐために設けられる。封止層は、無機膜と有機膜とが下から交互に形成される。無機/有機積層体は2回以上繰り返して形成されてもよい。
【0104】
無機/有機積層体の無機膜は、有機EL表示装置が置かれる環境に存在する水蒸気や酸素等の気体に有機EL素子が曝されることを防止するために設けられる膜である。この無機膜は、ピンホール等の欠陥が少ない連続的な緻密な膜であることが好ましい。無機膜としては、SiN膜、SiO膜、SiON膜、Al2O3膜、AlN膜等の単体膜やこれらの積層膜等が挙げられる。
【0105】
無機/有機積層体の有機膜は、無機膜上に形成されたピンホール等の欠陥を被覆するために、また、表面に平坦性を付与するために、設けられる。有機膜は、好ましくは、無機膜が形成される領域よりも狭い領域に形成される。これは、有機膜を無機膜の形成領域と同じか又はそれよりも広く形成すると、有機膜が露出する領域で劣化してしまうからである。但し、封止層全体の最上層に形成される最上位有機膜は、無機膜の形成領域とほぼ同じ領域に形成される。そして、封止層の上面が平坦化されるように形成される。
有機膜は、上述の本実施形態の感光性組成物を用いて形成される膜(すなわち、本実施形態の感光性組成物の硬化物を含む膜)であることができる。
【0106】
本実施形態の感光性組成物は、上述のとおり、インクジェット塗布に好適である。インクジェット法を用いれば、高速かつ均一に有機膜を形成できる。
【0107】
封止層は、無機/有機積層体を1セットとして数えると、1から5セットであることが好ましい。無機/有機積層体が6セット以上の場合には、有機EL素子に対する封止効果が5セットの場合とほぼ同じとなるからである。無機/有機積層体の無機膜の厚さは、50nm以上1μm以下が好ましい。無機/有機積層体の有機膜の厚さは1μm以上15μm以下が好ましく、3μm以上10μm以下がより好ましい。有機膜の厚みが1μm以上であることにより、素子形成時に発生するパーティクルを完全に被覆でき、無機膜上に平坦性良く塗布できる。有機膜の厚みが15μm以下であることにより、有機膜の側面より水分が侵入せず、有機EL表示装置の信頼性が一層向上する。
【0108】
封止基板は、封止層の最上位有機膜の上面全体を覆うように密着して形成される。この封止基板としては、前述の基板が挙げられる。これらの中では、可視光線に対して透明な基板が好ましい。可視光線に対して透明な基板(透明封止基板)の中では、ガラス基板、プラスチック基板からなる群のうちの1種以上が好ましく、ガラス基板がより好ましい。
【0109】
透明封止基板の厚さは、1μm以上1mm以下が好ましく、10μm以上800μm以下がより好ましく、50μm以上700μm以下が最も好ましい。透明封止基板を封止層の更に上層に設けることによって、最上位有機膜の表面が気体に触れると進行する劣化を抑えることができる。そして、有機EL表示装置のバリア性を一層高めることができる。
【0110】
次に、上記のような構成を有する有機EL表示装置の製造方法について説明する。まず、第1の基板上に、公知の方法によって所定の形状にパターニングした陽極、発光層を含む有機EL層、及び陰極を順に形成して、有機EL素子を形成する。例えば、有機EL表示装置をドットマトリックス表示装置として使用する場合、発光領域をマトリックス状に区切るためにバンクが形成され、このバンクで囲まれる領域に発光層を含む有機EL層が形成される。
【0111】
次いで、有機EL素子が形成された基板上に、スパッタ法等のPVD(Physical Vapor Deposition)法やプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法等のCVD法等の成膜方法によって、所定の厚さを有する第1の無機膜を形成する。
その後、溶液塗布法やスプレー塗布法等の塗膜形成方法やフラッシュ蒸着法、インクジェット法等を用いて、第1の無機膜上に本実施形態の感光性組成物(封止剤)を付着させる(生産性の点でインクジェット法が好ましい)。さらにその後、紫外線、可視光線等のエネルギー線の照射によって、感光性組成物(封止剤)を硬化させ、第1の有機膜が形成される。以上の工程によって、1セットの無機/有機積層体が形成される。
【0112】
以上に示される無機/有機積層体の形成工程が、所定の回数だけ繰り返される。但し、最後のセット、即ち、最上層の無機/有機積層体に関しては、上面が平坦化するように封止剤を、塗布法やフラッシュ蒸着法、インクジェット法等によって、無機膜の上面に付着させてもよい。
【0113】
次いで、基板上の封止剤を付着させた面に、透明封止基板を貼り合わせる。貼り合わせの際、位置合わせを行う。その後、透明封止基板側から、エネルギー線を照射することによって、最上層の無機膜と透明封止基板との間に存在する、本実施形態の感光性組成物(封止剤)を硬化させる。これによって、感光性組成物(封止剤)が硬化し、最上位有機膜が形成されると共に、最上位有機膜と透明封止基板とが接着される。以上によって、有機EL表示装置の製造方法が終了する。
【0114】
無機膜上に感光性組成物(封止剤)を付着させた後、感光性組成物(封止剤)に部分的にエネルギー線を照射して重合させてもよい。このようにすることで、透明封止基板を載置したときに、最上位有機膜の形状の崩れを防止しやすい。無機膜と有機膜の厚さは、各無機/有機積層体で同じにしてもよいし、各無機/有機積層体で異なっていてもよい。
【0115】
本実施形態において、有機EL表示装置は、例えば、面状光源、セグメント表示装置、ドットマトリックス表示装置として使用できる。
【0116】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用できる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例】
【0117】
本発明の実施態様を、実施例および比較例に基づき詳細に説明する。念のため述べておくと、本発明は実施例のみに限定されない。
【0118】
<感光性組成物の製造>
(実施例1から5)
後掲の表に記載の重合性化合物と光重合開始剤を用いて、実施例1から5の感光性組成物を製造した。具体的な手順は以下のとおりである。
【0119】
(1)前処理工程
以下のいずれかの方法により、原料の重合性化合物の一部を前処理した。
(i)脱揮処理:重合性化合物を、23℃以上、15分以上、1000Pa以下の条件で脱揮処理した。
(ii)蒸留処理:重合性化合物を、回転式蒸留装置(東京理化器械株式会社製、「ロータリーエバポレーター N-1000S」)を用いて、65℃に調整した温浴中、0.05MPaの圧力で、回転数50r/minで3時間、蒸留した。
(iii)反応処理:モノマーにトリエチルアミン(6eq.)を添加・撹拌し、その後メタクリル酸クロライド(5eq.)を撹拌しながら滴下した(無溶媒)。メタクリル酸クロライドの滴下を終えてからさらに1時間撹拌した。その後、系中に純水100gを添加し、10分撹拌して反応を停止させた。反応停止後、10質量%酢酸水溶液(3回)、10質量%炭酸水素ナトリウム水溶液(3回)、純水(3回)の順番で分液した。そして、モノマー(不純物であるヒドロキシ化合物のヒドロキシ基が、メタクリル酸クロライドによりキャップされた化合物を含む)を回収した。
【0120】
(2)混合工程
重合性化合物と光重合開始剤を、表に記載の量(単位:質量部)量り取り、撹拌機(スリーワンモーター)を用いて、200rpm、23℃、3時間撹拌した。これにより混合物を得た。
後掲の表には、用いた重合性化合物が、上記(1)において、いずれの方法で処理されたものであるか(または、処理されなかったものであるか)を記載した。
【0121】
(3)脱水工程
上記(2)で得た混合物に、脱水剤(モレキュラーシーブ5A)を10質量%入れ、23℃で16時間静置した。
【0122】
(4)脱酸素工程
上記(3)の脱水工程を経た混合物を、1000Pa以下の条件で、30分以上、乾燥窒素ガスでバブリングした。
【0123】
(5)濾過工程
上記(4)の脱酸素工程を経た混合物を、ポアサイズ1μm以下のフィルターでろ過し、異物を除去した。
以上により、感光性組成物を製造した。
【0124】
(比較例1)
重合性化合物の前処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして感光性組成物を製造した。
【0125】
(比較例2)
重合性化合物の前処理を行わなかった以外は、実施例4と同様にして感光性組成物を製造した。
【0126】
使用した重合性化合物および光重合開始剤は以下の通りである。
・SR262(1,12-ドデカンジオールジメタクリレート):アルケマ社
・BPE200(エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、前述の一般式(A)において、R1、R1'はメチル基であり、R2、R2'はエチレン基であり、R3、R3'はメチル基であり、p+q=4である化合物):新中村化学工業社
・A-LEN-10(エトキシ化-o-フェニルフェノールアクリレート):新中村化学工業社
・ADCP(ジメチロール-トリシクロデカンジメタクリレート):新中村化学工業社
・TPO(2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド):IGM Resins社
【0127】
<各種測定/評価>
(ヒドロキシ化合物(ポリヒドロキシ化合物を含む)の濃度)
感光性組成物を20mLメスフラスコに0.200g量り、アセトンを目標とする標線まで加えた。その後良く振り混ぜて測定用試料を作製した。その後、その測定用試料をガスクロマトグラフにかけて、得られたチャートのピーク位置およびピーク面積から、重合性化合物由来と考えられるヒドロキシ化合物の濃度を定量した。ガスクロマトグラフの詳細は以下のとおりである。
・装置:Agilent 7890B
・Col.:HP-5MS 60m×φ0.25mm×膜厚0.25μm
・Col.Temp.:40℃で1min、その後20℃/minの昇温速度で180℃まで昇温、さらにその後10℃/minの昇温速度で300℃まで昇温、そして50min保持
・Inj.Temp.:300℃
・Det.Temp.:300℃
・Flow:1mL/min×22min、その後0.1mL/min、さらにその後2mL/min、split 1/20
・Inj:1μL
【0128】
(溶存酸素濃度)
飯島電子工業社製の溶存酸素計、DOメーターB-506S(隔膜型ガルバニ電池式)を用いて、23℃、撹拌ありの条件で、感光性組成物中の溶存酸素濃度を測定した。
【0129】
(水分濃度(含水率))
カールフィッシャー溶液としてアクアミクロンAX(三菱ケミカル社製)を用い、微量水分測定装置CA-06(三菱化学社製)により測定した。
【0130】
(粘度)
コーンプレート型粘度計(英弘精機社製、HB DV3T、コーンプレート:CPA-40Z)を用い、25℃、250rpmの条件で、感光性組成物の粘度を測定した。
【0131】
(有機EL表示装置の信頼性評価(有機EL信頼性))
・評価用の有機EL表示素子の作製
30mm角のITO電極付きガラス基板(厚さ700μm)を、アセトン、イソプロパノールそれぞれを用いて洗浄した。その後、真空蒸着法にて以下の化合物を薄膜となるように順次蒸着し、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/Hole Blocking層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる2mm角の有機EL素子を有する基板を得た。各層の構成は以下の通りである。
陽極(ITO):150nm/高分子
正孔注入層(4,4',4"-トリス{2-ナフチル(フェニル)アミノ}トリフェニルアミン(2-TNATA)):60nm
正孔輸送層(N,N'-ジフェニル-N,N'-ジナフチルベンジジン(α-NPD)):30nm
発光層(Ir(ppy)3+CBP[6%]):30nm
Hole Blocking層(ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(p-フェニルフェノラト)アルミニウム(BAlq)):10nm
電子輸送層(トリス(8-ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム(Alq3)):30nm
電子注入層(フッ化リチウム(LiF)):0.8nm
陰極(MgAg/IZO):10nm/100nm
【0132】
次に、感光性組成物を、窒素雰囲気下にて、富士フイルム社製のインクジェット装置(品番:DMP2850)を用いて、2mm×2mmの有機EL素子を覆うように打滴し、厚み10μmの感光性樹脂膜を得た。その後、N2環境下で、波長395nmの光を発光するLEDランプ(HOYA社製UV-LED LIGHT SOURCE H-4MLH200-V1)により、感光性樹脂膜に、395nmの波長の積算光量1,500mJ/cm2の条件で光を照射した。これにより硬化膜を得た。
得られた硬化膜の全体を覆うように、10mm×10mmの開口部を有するマスク(覆い)を設置し、そして、プラズマCVD法にてSiN膜を形成した。形成されたSiN(無機膜)の厚さは1μmであった。このようにして有機EL素子を得た。
【0133】
得られた有機EL素子を、30mm×30mm×25μmtの透明な基材レス両面テープを用いて、30mm×30mm×0.7mmtの無アルカリガラス(Corning社製 Eagle XG)と貼り合わせた。このようにして評価用の有機EL表示装置を作製した。
【0134】
・信頼性試験
上記のようにして得られた評価用の有機EL表示装置を、85℃、85%RHの高温高湿環境下に500時間静置して処理した。この高温高湿処理の前後で、評価用の有機EL表示装置に電流を流し、発光面を撮影した。撮影された画像(高温高湿処理の前および後)を、イノテック社の画像解析ソフト「Quick Grain」で解析し、発光面積を求めた。そして、高温高湿処理の前後での発光面積減少率(%)を算出した。
【0135】
実施例および比較例に関する情報をまとめて下表に示す。下表において、重合性化合物および光重合開始剤の量の単位は質量部である。
【0136】
【0137】
上表に示されるとおり、炭素数2以上40以下のヒドロキシ化合物の濃度が0.01ppm以上12000ppm以下である実施例1から5の感光性組成物を用いて作製した有機EL表示装置の信頼性は、比較例のものに比べて良好であった。
【0138】
この出願は、2020年5月29日に出願された日本出願特願2020-094004号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。