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  • 特許-フィルタ一体型インクタンク 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-26
(45)【発行日】2025-04-03
(54)【発明の名称】フィルタ一体型インクタンク
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/19 20060101AFI20250327BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20250327BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20250327BHJP
【FI】
B41J2/19
B41J2/175 121
B41J2/175 201
B41J2/175 141
B41J2/175 307
B41J2/175 171
B41J2/18
B41J2/175 501
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022555646
(86)(22)【出願日】2021-03-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-27
(86)【国際出願番号】 EP2021055823
(87)【国際公開番号】W WO2021185621
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2024-01-31
(31)【優先権主張番号】62/990,911
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522074028
【氏名又は名称】メムジェット テクノロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】トウ,グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】マコーリフ,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ユルロ,ジェニア
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-301733(JP,A)
【文献】特開2007-237552(JP,A)
【文献】特開2010-052246(JP,A)
【文献】特開2010-234615(JP,A)
【文献】特開2003-019811(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0277303(US,A1)
【文献】特開2011-201176(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02990210(EP,A1)
【文献】中国実用新案第214606598(CN,U)
【文献】中国実用新案第212171689(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク送出システム用のインクタンクであって、
インク入口ポートおよびインク出口ポートを有するハウジングと、
前記インクタンクのヘッドスペースと連通する通気口と、
前記インク出口ポートを介して前記インクタンクから供給されるインクをろ過するために前記ハウジング内に配置されるフィルタと、
前記インク入口ポートと前記フィルタとの間の前記ハウジング内に配置されたバッフル板であって、前記インク入口ポートを介して前記インクタンクに入る気泡を前記インクタンクの前記ヘッドスペースに向けるように構成されたバッフル板と、
を含み、
前記バッフル板は、前記インクタンクの基部に向かって配置されたバッフル開口部を有し、これにより、前記インク入口ポートから前記バッフル開口部を介して前記インク出口ポートに向かってインクが流れることを可能にし、
前記インク出口ポートは前記ハウジングの基部に配置され、前記フィルタは前記インク出口ポートの上に配置されたフィルタドラムを含むことを特徴とするインクタンク。
【請求項2】
請求項1に記載のインクタンクにおいて、
前記インクタンクは上部セクション及び下部セクションを備え、前記下部セクションは前記インク入口ポート及び前記インク出口ポートを有することを特徴とするインクタンク。
【請求項3】
請求項2に記載のインクタンクにおいて、
前記上部セクションは前記下部セクションよりもボリュームがあることを特徴とするインクタンク。
【請求項4】
請求項2に記載のインクタンクにおいて、
前記上部セクションは前記下部セクションよりも断面積が大きいことを特徴とするインクタンク。
【請求項5】
請求項1に記載のインクタンクにおいて、
前記バッフル板は、前記ハウジングの前記基部から前記インクタンクのルーフに向かって延在していることを特徴とするインクタンク。
【請求項6】
請求項1に記載のインクタンクにおいて、
使用中、前記バッフル板は前記インクタンクのヘッドスペース内に延在することを特徴とするインクタンク。
【請求項7】
請求項1に記載のインクタンクにおいて、
前記インク入口ポートは、前記バッフル開口部の上に配置されることを特徴とするインクタンク。
【請求項8】
請求項1に記載のインクタンクにおいて、さらに、
インクレベルセンサを備え、前記バッフル板は、前記インクレベルセンサと前記インク入口ポートとの間に配置されることを特徴とするインクタンク。
【請求項9】
請求項に記載のインクタンクにおいて、
前記インクレベルセンサは、前記インクタンク内に延びるステムと、前記ステムに沿って移動可能な1または複数のフロートと、を有するフロートレベルセンサを備えることを特徴とするインクタンク。
【請求項10】
請求項1に記載のインクタンクにおいて、
前記通気口は、前記インクタンクのルーフに規定された迷路状のチャネルと連通していることを特徴とするインクタンク。
【請求項11】
インクジェットプリンタ用のインク送出システムであって、
請求項1に記載のインクタンクと、
インク供給ラインを介して前記インク入口ポートに接続されたインク供給リザーバと、
インク送出ラインを介して前記インク出口ポートに接続されたプリントヘッド入口ポートを有するインクジェットプリントヘッドと、
前記プリントヘッドに送出されるインクの静水圧を制御するために、前記インクタンクと連携する制御システムと、
を備えることを特徴とするインク送出システム。
【請求項12】
請求項11に記載のインク送出システムにおいて、
前記プリントヘッドは、インク戻りラインを介して前記インクタンクと流体連通するプリントヘッド出口ポートを備えることを特徴とするインク送出システム。
【請求項13】
請求項12に記載のインク送出システムにおいて、前記インク戻りラインが前記インク供給ラインに接続されていることを特徴とするインク送出システム。
【請求項14】
請求項12に記載のインク送出システムにおいて、
さらに、前記プリントヘッドをデプライミングするためのポンプおよび空気取り入れ口を備えることを特徴とするインク送出システム。
【請求項15】
請求項14に記載のインク送出システムにおいて、
プリントヘッドのデプライミングおよび/またはプリントヘッドのプライミング中に、空気が前記インク入口ポートを介して前記インクタンクに入ることを特徴とするインク送出システム。
【請求項16】
請求項11に記載のインク送出システムにおいて、前記制御システムは、前記インクタンク内のインクの高さを制御するように構成されていることを特徴とするインク送出システム。
【請求項17】
請求項16に記載のインク送出システムにおいて、
前記制御システムは、インクタンク内の1または複数のインクレベルセンサからのフィードバックに応答して、前記インク供給ライン内の供給ポンプを制御することを特徴とするインク送出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタのインク送出システム用の一体型フィルタを有するインクタンクに関する。これは主に、インク送出システム内の気泡に関連する問題を最小限に抑えるために開発された。
【背景技術】
【0002】
Memjet(登録商標)技術を採用するインクジェットプリンタは、スモールオフィスホームオフィス(「SOHO」)プリンタ、ラベルプリンタ、デジタルインクジェットプレスおよびワイドフォーマットプリンタを含む、多数の様々な印刷形式用に市販されている。Memjet(登録商標)プリンタは通常、ユーザが交換可能な1または複数の固定式インクジェットプリントヘッドを備えている。例えば、デスクトッププリンタはユーザが交換可能な単一のマルチカラーまたはモノクロプリントヘッドを含み、高速デジタル印刷機は、メディアフィード方向に沿って整列されたユーザが交換可能な複数のモノクロプリントヘッドを含み、ワイドフォーマットプリンタは、ユーザが交換可能な複数のプリントヘッドが、ワイドフォーマットのページ幅にまたがるように互い違いに重なり合うように配置されている。
【0003】
インクは、主としてインクを所定の静水圧でプリントヘッドに送出するように設計されたインク送出システムを介してインクジェットプリントヘッドに供給される。またインク送出システムは、通常、インクから粒子をろ過するためのインクフィルタを含む。
【0004】
気泡は、インクジェットプリンタで常に発生する問題となっている。インクジェットノズルに到達した気泡は、ノズルを塞ぎ、壊滅的なデプライミングイベントを引き起こす可能性がある。また気泡は、フィルタ材料の微細孔を塞ぐことにより、インク送出システム内のインクフィルタの有効性を低下させる可能性がある。気泡は、インクレベルセンサの動作にも影響を与える可能性があり、例えば、フロートセンサにくっ付くことによって浮力が増し、これにより、誤ったインクレベルの読み取りが発生する可能性がある。
【0005】
気泡に関連する問題は、密閉型インク送出システムで脱気インクを使用することによって、ある程度軽減することができる。しかしながら、そのようなインク送出システムは、脱気インクが使用されるときでさえ、気泡の問題を免れることはできない。例えば、プリントヘッドを通して空気が引き込まれるときに、プリントヘッドのデプライミング操作によって空気が意図的にインク送出システム内に導入され、インク汚れを最小限に抑えてプリントヘッドを交換することができる。この導入された空気は、インク送出システムの周りを循環し、インクフィルタを詰まらせるなどの問題を引き起こす可能性がある。インクフィルタが気泡で壊滅的に詰まると、ユーザが交換する必要があり、不便で時間がかかる。
【0006】
従来技術に記載されているいくつかのインク送出システムでは、インクフィルタは、フィルタ材料を収容するフィルタチャンバから空気を除去する脱気ポンプに接続される。脱気ポンプにより、インクフィルタに閉じ込められた気泡は、気泡の継続的な蓄積による長期的な問題を引き起こすことなく、確実に大気に逃がすことができる。しかしながら、脱気ポンプは、インク送出システムのコストと複雑さを増大させる。
【0007】
WO2019/011705は、正のインク圧力下で通気性チューブを介して受動的に脱気するインクフィルタを記載している。
【0008】
したがって、フィルタ内への気泡の進入を最小限に抑える一体型フィルタを有するインクタンクを提供することが望ましい。さらに、気泡を効率的に除去できるインクタンクを提供することが望ましい。さらに、インク中の気泡によって動作が影響を受けないインクレベルセンサを有するインクタンクを提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0009】
第一の態様では、インク送出システム用のインクタンクが提供され、このインクタンクは、
インク入口ポートおよびインク出口ポートを有するハウジングと、
前記インクタンクのヘッドスペースと連通する通気口と、
前記インク出口ポートを介して前記インクタンクから供給されるインクをろ過するために前記ハウジング内に配置されるフィルタと、
前記インク入口ポートと前記フィルタとの間の前記ハウジング内に配置されたバッフル板であって、前記インク入口ポートを介して前記インクタンクに入る気泡を前記インクタンクの前記ヘッドスペースに向けるように構成されたバッフル板と、
を含み、
前記バッフルプレートは、前記インクタンクの基部に向かって配置されたバッフル開口部を有し、これにより、前記インク入口ポートから前記バッフル開口部を介して前記インク出口ポートに向かってインクが流れることを可能にする。
【0010】
好ましくは、インクタンクは上部セクション及び下部セクションを備え、前記下部セクションは前記インク入口ポート及び前記インク出口ポートを有する。
【0011】
好ましくは、上部セクションは前記下部セクションよりもボリュームがある。
【0012】
好ましくは、上部セクションは前記下部セクションよりも断面積が大きい。
【0013】
好ましくは、インク出口ポートは前記ハウジングの基部に配置され、前記フィルタは前記インク出口ポートの上に配置されたフィルタドラムを含む。
【0014】
好ましくは、バッフル板は、前記ハウジングの前記基部から前記インクタンクのルーフに向かって延在している。
【0015】
好ましくは、使用中、前記バッフル板は前記インクタンクのヘッドスペース内に延在する。
【0016】
好ましくは、インク入口ポートは、前記バッフル開口部の上に配置される。
【0017】
好ましくは、インクタンクが、さらに、インクレベルセンサを備え、前記バッフル板は、前記インクレベルセンサと前記インク入口ポートとの間に配置される。
【0018】
好ましくは、インクレベルセンサは、前記インクタンク内に延びるステムと、前記ステムに沿って移動可能な1または複数のフロートと、を有するフロートレベルセンサを備える。
【0019】
好ましくは、通気口は、前記インクタンクのルーフに規定された迷路状のチャネルと連通している。
【0020】
第二の態様では、インク送出システムが提供され、このインク送出システムは、
上記のインクタンクと、
インク供給ラインを介して前記インク入口ポートに接続されたインク供給リザーバと、
インク送出ラインを介して前記インク出口ポートに接続されたプリントヘッド入口ポートを有するインクジェットプリントヘッドと、
前記プリントヘッドに送出されるインクの静水圧を制御するために、前記インクタンクと連携する制御システムと、
を備える。
【0021】
好ましくは、プリントヘッドは、インク戻りラインを介して前記インクタンクと流体連通するプリントヘッド出口ポートを備える。
【0022】
好ましくは、インク戻りラインが前記インク供給ラインに接続されている。
【0023】
好ましくは、インク送出システムが、さらに、プリントヘッドをデプライミングするためのポンプおよび空気取り入れ口を備える。
【0024】
好ましくは、プリントヘッドのデプライミングおよび/またはプリントヘッドのプライミング中に、空気が前記インク入口ポートを介して前記インクタンクに入る。
【0025】
好ましくは、制御システムは、前記インクタンク内のインクの高さを制御するように構成されている。
【0026】
好ましくは、制御システムは、インクタンク内の1または複数のインクレベルセンサからのフィードバックに応答して、前記インク供給ライン内の供給ポンプを制御する。
【0027】
本明細書で使用する「インク」という用語は、インクジェットプリントヘッドから印刷できる任意の印刷流体を意味するものと解釈される。インクは着色剤を含んでも含まなくてもよい。したがって、「インク」という用語は、従来の染料ベースまたは顔料ベースのインク、赤外線インク、UVインク、固定剤(例えば、プレコート、プライマ、フィニッシャなど)、3D印刷液、生物学的液体、機能性印刷液(例えば、ソーラーインク、バイオセンシングインクなど)などを含む。
【0028】
本明細書で使用する「プリンタ」という用語は、従来のデスクトッププリンタ、ラベルプリンタ、デュプリケータ、複写機、デジタルインクジェット印刷機、3Dプリンタなどの任意の印刷装置を指す。プリンタは、例えば、シート供給またはウェブ供給印刷装置である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
ここで、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して単なる例として説明する。
【0030】
図1図1は、第1の態様によるインクタンクを組み込んだプリンタのインク送出システムを概略的に示す。
図2図2は、第1の態様によるインクタンクの斜視図である。
図3図3は、図2に示すインクタンクの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
重力供給インク供給システム
第1の態様によるインクタンクの1つの例示的な使用法として、重力供給式インク送出システムを以下に説明する。しかしながら、第1の態様によるインクタンクは、インクフィルタを組み込んだ循環インク送出システムでの使用にも同様に適していることに留意されたい。
【0032】
図1を参照すると、プリントヘッド4にインクを供給するためのインク送出システムを有するプリンタ1が概略的に示されている。インク送出システムは重力供給システムであり、US2011/0279566およびUS2011/0279562に記載されているものと機能が類似しており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
インク送出システムは、第1のインク送出ライン10を介してプリントヘッド4のプリントヘッド入口ポート8に接続されたインク出口ポート106を有するインクタンク100を備える。インクタンク100のインク入口ポート108は、インク戻りライン16を介してプリントヘッド4のプリントヘッド出口14に接続される。したがって、インクタンク100、インク送出ライン10、プリントヘッド4、およびインク戻りライン16は、閉じた流体ループを一緒に形成する。典型的には、インク送出ライン10およびインク戻り16は、同じまたは異なる直径である、ある長さの可撓性チューブから構成される。いくつかの実施形態では、EP2844488BおよびUS2014/0015905に記載されているように、インク戻りライン16は、効率的な気泡除去のためにインク送出ライン10よりも小さい直径を有し、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0034】
インクタンク100はさらに、インク出口ポート106の上に配置され、プリントヘッド4に供給されるインクを濾過するための一体型フィルタ112と、インク入口ポート108とフィルタ112との間に配置されるバッフルプレート114とを含む。バッフルプレート114の機能は、以下でさらに詳しく説明する。
【0035】
プリントヘッド4は、プリントヘッド入口ポート8と第1のインクライン10とを解放可能に相互接続する第1のカップリング3、及びプリントヘッド出口ポート14と第2のインクライン16とを解放可能に相互接続する第2のカップリング5とによってユーザが交換可能である。プリントヘッド4は通常、ページ幅のプリントヘッドであり、例えば、米国特許第10399354号または米国特許第10293609号に記載されているようなプリントヘッドであり、これらの内容は参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0036】
インクタンク100に収容されたインク20は、その屋根に配置された通気孔109を介して大気に開放されている。したがって、通常の印刷中、インクは、重力下の負の静水圧(「背圧」)でプリントヘッド4に供給される。換言すれば、プリントヘッド4の下方に配置されたインクタンク100からのインクの重力供給は、インクを所定の負の静水圧でプリントヘッドに供給するための圧力調整システムを提供する。プリントヘッド4のノズルプレート19で受ける背圧の量は、インクタンク100内のインク20のレベルに対するノズルプレートの高さhによって決定される。
【0037】
インクは、インクカートリッジ24によって収容された折り畳み式インクバッグ23を備えるバルクインクリザーバからインクタンク100のインク入口ポート108に供給される。インクカートリッジ24はカートリッジベント25を介して大気に開放されているため、インクがシステムによって消費されると、折り畳み式インクバッグ23が折り畳まれる。折り畳み式インクバッグ23は、典型的には、インク戻りライン16に接続されたインク供給ライン28を介してインク入口ポート108に供給される、脱気インクを含む空気不透過性のホイルバッグである。インクカートリッジ24は、通常、ユーザが交換可能であり、適切なインク供給カップリング32を介してインク供給ライン28に接続される。インク供給ライン28は、インクタンク100に到達する前にインクを濾過するためのインラインインクフィルタ(図示せず)を備える。
【0038】
制御システムを使用して、インクタンク100内のインクのレベルを実質的に一定に維持し、したがって一定の高さhおよび対応する背圧を維持する。図1に示すように、供給ポンプ30がインク供給ライン28に配置され、カートリッジ24からインクタンク100へのインクの流れを制御する。供給ポンプ30は、第1のコントローラ107の制御下で動作し、第1のコントローラ107は、インクタンク100内に配置された「高」および「低」フロートセンサ102および104(例えば、磁気フロートセンサ)を有するインクレベルセンサ120からフィードバックを受信する。インク20のレベルが「低」センサ104を下回ると、第1のコントローラ107は供給ポンプ30にインクをインクタンク100に送り込むように信号を送り、インクのレベルが「高」センサ102に達すると、第1のコントローラは供給ポンプに送り込みを停止するように信号を送る。このようにして、インクタンク100内のインク20のレベルを比較的一定に維持することができる。
【0039】
インクタンク100、インク送出ライン10、プリントヘッド4およびインク戻りライン16を組み込んだ閉流体ループは、プライミング、デプライミングおよび他の必要な流体操作を容易にする。インク戻りライン16は、流体ループの周りにインクを循環させるための可逆蠕動ポンプ40を含む。単に慣例として、ポンプ40の「順」方向は、インク出口ポート106から戻りポート108へのインクのポンピングに対応し(すなわち、図1に示す時計回り)、ポンプの「逆」方向は、戻りポート108からインク出口ポート106へのインクのポンピングに対応する(すなわち、図1に示す反時計回り)。
【0040】
ポンプ40は、ピンチ弁装置42と協働して、様々な流体操作を調整する。ピンチ弁装置42は、第1のピンチ弁46と第2のピンチ弁48とを含み、例えば、US2011/0279566、US2011/0279562及びUS9180676に記載されているピンチ弁装置のいずれかの形態をとり、これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0041】
第1のピンチ弁46は、空気導管50を通る空気の流れを制御し、空気導管50は、インク配給ライン10から分岐している。空気導管50は、大気に開放され、閉じた流体ループの空気取り入れ口として機能するエアフィルタ52を終端とする。
【0042】
空気導管50によって、インク送出ライン10は、インク出口ポート106と空気導管50との間の第1のセクション10aと、プリントヘッド入口ポート8と空気導管50との間の第2のセクション10bとに分割される。第2のピンチ弁48は、インク送出ライン10の第1のセクション10aを通るインクの流れを制御する。
【0043】
ポンプ40、第1のピンチ弁46、および第2のピンチ弁48は、様々な流体操作を調整する第2のコントローラ44によって制御される。前述のことから、図1に示されるインク送出システムが多目的な範囲の流体操作を提供することが理解されるであろう。表1は、プリンタ1で使用される流体操作のいくつかの例について、様々なピンチバルブおよびポンプの状態を説明する。当然ながら、これらの流体操作例のさまざまな組み合わせを使用することができる。
【0044】
通常の印刷中(「PRINT」モード)、プリントヘッド4は、重力による負の背圧でインクタンク100からインクを引き出す。このモードでは、蠕動ポンプ40は、流体ループを回ってインクを前方に送り出すか、またはスイッチをオフにして遮断弁として機能するかのいずれかである。第1のピンチ弁46が閉じられ、第2のピンチ弁48が開かれて、インク出口ポート106からプリントヘッド入口ポート8へのインクの流れが可能になる。印刷中、インクはインクタンク100のインク入口ポート108に供給され、第1のコントローラ107の制御下で、インクレベル20を比較的一定に維持し、その結果、プリントヘッド4の背圧を比較的一定に維持する。
【0045】
プリントヘッドのプライミングまたはフラッシング(「PRIME」モード)中、インクは供給ポンプをオフにして、閉じた流体ループの周りを順方向(つまり、図1の時計回りの方向)に循環する。このモードでは、蠕動ポンプ40が順方向のポンピング方向に作動する一方、第1のピンチ弁46が閉じ、第2のピンチ弁48が開いて、インク出口ポート106からインク入口ポート108へプリントヘッド4を介してインクの流れを可能にする。この方法でのプライミングは、プライミングされていないプリントヘッドをインクでプライミングし、プリントヘッド4から気泡を洗い流し、および/またはインクから粒子を濾過するために使用され得る。
【0046】
「STANDBY」モードでは、ポンプ40のスイッチがオフにされ、一方、第1のピンチ弁46が閉じられ、第2のピンチ弁48が開かれる。通常、ノズルからのインクの蒸発を最小限に抑えるために、待機モードではプリントヘッドにキャッピングが施される(例えば、参照することによりその内容が本明細書に組み込まれるUS2011/0279519を参照)。
【0047】
プリントヘッド4の各ノズルがインクで完全にプライミングされることを確実にするため、および/または目詰まりしたノズルの閉塞を解除するために、「パルス」モードを使用することができる。「パルス」モードでは、第1および第2のピンチバルブ46および48が閉じられる一方、ポンプ40が逆方向に(すなわち、図1の反時計回りに)作動されて、インクがプリントヘッド4のノズルプレート19のノズルから押し出される。パルスプライミングの間、供給ポンプ30はオフであり、インクタンク100は、パルスプライミングに必要なインクのリザーバを提供する。代替的に、ノズルは、例えば、参照することにより本明細書に組み込まれる2020年2月13日に出願された米国仮出願第62/976,213号(「ドライプリントヘッドをプライミングするための方法およびシステム」)に記載されているように、ノズルプレート19で外部吸引を使用してプライミングされてもよい。
【0048】
使用済みのプリントヘッド4を交換するには、プリンタから取り外す前に、プリントヘッドのプライミングを解除する必要がある。「デプライミング」モードでは、第1のピンチ弁46が開き、第2のピンチ弁48が閉じ、第1のポンプ40が正転するよう作動して、空気導管50を介して大気から空気を引き込む。デプライミングは、プリントヘッド4内のインクを空気で置換し、インク入口ポート108を介してインクタンク100に気泡を導入する。プリントヘッド4からインクが取り除かれると、プリンタは「NULL」モードに設定され、プリントヘッドをインク供給源から隔離することで、インクのこぼれは最小限で安全に取り外すことができる。
【0049】
インクタンク 100
脱気インクを使用する循環インク送出システムでは、プリントヘッドのプライミング解除および交換のためにシステムに空気を導入することは潜在的に問題がある。溶解した空気は、プリントヘッド内でガスを放出する可能性があり、脱気インクを使用する本来の利点が失われる可能性があるため、問題がある。さらに、溶解していない気泡は微粒子と同様の挙動を示し、インク送出システムを詰まらせる可能性がある。理想的には、溶解していない気泡は、プリントヘッド4のノズルの詰まりやインクフィルタの詰まりなどの問題を引き起こす前に、システムから除去する必要がある。
【0050】
ここで図2および3を参照すると、インクタンク100は、圧力調整、インク循環、ろ過、およびインク送出システムからの気泡の除去を容易にするように設計されている。インクタンク100は、インクタンクの上部セクション202および下部セクション204を規定する、典型的には成形プラスチックで形成されるハウジング200を備える。
【0051】
下部セクション204は、円筒形フィルタドラム113の形態を取るフィルタ112を収容する切頂円筒形部分205を含む。フィルタドラム113は、ハウジング200の基部でインク出口ポート106の上に配置され、濾過されたインクをプリントヘッド4に送出する。
【0052】
インク入口ポート108は、インク入口ポートを介してインクタンク100に入るすべてのインクが、インク出口ポート106を介してインクタンクを出る前にフィルタ112によってろ過されるように、下部セクション204の側壁に配置される。(図2および3でキャップされている追加の接続ポート207は、必要に応じて複数のインクタンク100を一緒に流体的に接続するオプションのために提供される)。
【0053】
蓋206は、ハウジング200の上部に固定されて、インクタンク100の屋根を規定する。蓋206は、インクタンク100のヘッドスペースと連通する通気孔109と、通気孔に接続された迷路状のチャネル208とを画定する。大気に開放されたベントポート210は、蓋206から下方に延び、迷路状のチャネル208および通気孔109を介してインクタンク100のヘッドスペースと連通する。迷路状のチャネル208は、インクタンク100からの水の蒸発を最小限に抑えるように機能する一方、空気がそこを通って排出され得るようにする。
【0054】
バッフル板114は、インクタンク100の底部から蓋206に向かって上方に延び、インク入口ポート108とフィルタ112との間に配置される。通常、バッフル板114は、成形されたハウジング200内にスライド可能に受け入れられるインサートである。バッフル板114は、インクタンク100を、インク入口ポート108を有する第1の側209と、フィルタ112およびインク出口ポート106を有する第2の側210とに効果的に仕切る。
【0055】
バッフル板114の下部は、第1の側209のインク入口ポート108からインクタンク100の下部セクション204を介して第2の側210のフィルタ112に向かうインクの通過を可能にするバッフル開口部212を画定する。インク入口ポート108は、インク入口ポートを介してインクタンク100に入る気泡がバッフル開口部を通過してインクタンク100の第2の側210に入らないように、バッフル開口部212の上に配置される。代わりに、インク入口ポート108を介してインクタンクに送り込まれたインクに混入した気泡は、バッフル開口部212の上方でバッフル板114に衝突し、上方に浮いてインクタンクのヘッドスペースに入る傾向があり、そこで通気口109を介して大気に排出することができる。したがって、バッフル板114は、インク入口ポート108を介してインクタンク100に入る気泡からフィルタ112を保護する(最小数の気泡がフィルタ112に到達する限り、気泡は通気孔に向かって上方に浮遊することができる)。バッフル板114はさらに、以下でさらに説明するように、フロートセンサ102および104を気泡から保護する。
【0056】
インクタンクからの新しいガス抜きされたインクがインク入口ポート108を介してインクタンク100に入ると、このインクは、バッフル開口部212を通って、インクタンクの下部セクション204を介してフィルタ122に向かって流れる。バッフル板114はインクタンク100のヘッドスペース内に延在し、上部セクション202に収容されたインクがインクタンクの第1の側209から第2の側210へ通過することができないようにする。上部セクション202の通気されたインクは比較的動かず、下部セクション204のインクから(高さが)離れているため、この通気されたインクは下部セクション204に向かって非常にゆっくりとしか拡散しない。したがって、通常の印刷中、下部セクション204内の脱気インクは、インクリザーバから新たに脱気インクが補充されるとき、脱気されたままである。したがって、インクタンク100の設計は、上部セクション202と下部セクション204との間に効果的な拡散障壁を提供し、プリントヘッド4での背圧の重力制御に適する一方、脱気インクの使用を可能にする。
【0057】
インクレベルセンサ120は、蓋206に固定され、インクタンク100内に延びるステム222を有する磁気フロートセンサの形態をとる。「高」および「低」フロートセンサ102および104は、固定されたそれぞれのストッパ224の間をステム222に沿って移動可能である。各フロートセンサは、インクタンク100内のインクの「高」または「低」レベルを示すためにステム222内のそれぞれのリードスイッチ(図示せず)を作動させる磁石を含む。上述のように、供給ポンプ30は、フロートセンサ102および104のレベルおよびリードスイッチの対応する状態に応じて作動または停止される。インクレベルセンサ120は、インクタンク100の第2の側に配置され、これにより、バッフル板114によって気泡から保護される。フロートセンサ102および104を気泡から保護することにより、敏感なフロートセンサへの外乱を回避することにより、インクレベルセンサ109からの誤ったインクレベル信号を有利に最小化する。
【0058】
以上から、インクタンク100が複数の機能、すなわち、(1)気泡からのフィルタの保護、(2)インクレベルセンサを気泡から保護、(3)インク送出システムから気泡を効率的に除去、(4)脱気インクが供給されるインク送出システムにおけるインク圧力の重力制御、を達成することが理解されよう。これらおよび他の利点は、当業者には容易に明らかになるであろう。
【0059】
当然ながら、本発明は単なる例として説明されたものであり、添付の特許請求の範囲で規定される本発明の範囲内で細部の変更が可能であることに留意されたい。
図1
図2
図3