(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-26
(45)【発行日】2025-04-03
(54)【発明の名称】冷却用装置およびシステム
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20250327BHJP
F28D 15/06 20060101ALI20250327BHJP
【FI】
F28D15/02 A
F28D15/06 Z
(21)【出願番号】P 2023552382
(86)(22)【出願日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 EP2021079970
(87)【国際公開番号】W WO2022101024
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-07-11
(32)【優先日】2020-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】522448702
【氏名又は名称】アクセルシウス エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】ACCELSIUS,LLC
【住所又は居所原語表記】7800 Shoal Creek Blvd. Suite 120W Austin,TX78757,US
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ラファエレ・ルカ・アマルフィ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・キム
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-534885(JP,A)
【文献】特開2019-203652(JP,A)
【文献】特開平06-159958(JP,A)
【文献】特開2019-139569(JP,A)
【文献】特開平10-170179(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0320081(US,A1)
【文献】特開2008-008573(JP,A)
【文献】欧州特許第2171375(EP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/02
F28D 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却システムの少なくとも一部の物理的なパラメータを含む複数の入力値を得ることと、
得られた前記入力値を用いて、冷却システムの少なくとも一部の熱伝達および冷却システムの少なくとも一部の圧力損失のうち少なくとも1つの指標を提供する無次元比を推定
し、前記無次元比は、単位長さ当たりの摩擦圧力損失である摩擦圧力勾配から導出されることと、
前記無次元比を用いて、冷却システムの少なくとも一部の少なくとも1つの性能指標を決定することと、
少なくとも1つの決定された前記性能指標を用いて、冷却システムの少なくとも一部の1つ以上の物理的なパラメータを制御することと、に用いられる手段を含む、装置。
【請求項2】
前記冷却システムは、二相冷却システムを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記冷却システムの全体、または前記冷却システムの一部に対して、前記物理的なパラメータが制御される、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記無次元比は、機械学習を用いて推定される、
請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記無次元比は、非線形回帰アルゴリズムを用いて推定される、
請求項4に記載の装置。
【請求項6】
少なくとも1つの決定された前記性能指標は、使用中の前記冷却システムの1つ以上の物理的なパラメータを制御するために用いられる、
請求項1~5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
少なくとも1つの決定された前記性能指標は、前記冷却システム内の流路
の流量、受動的な二相冷却システムの下降管内の液面
の位置、および能動的な二相冷却システム内のポンプ
の回転数の少なくとも1つを制御するために用いられる、
請求項1~6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記複数の入力値は、前記冷却システム内の1つ以上のセンサから得られた情報を含む、
請求項1~7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
少なくとも1つの決定された前記性能指標は、前記冷却システムの少なくとも一部の設計中に1つ以上の物理的なパラメータを修正するために用いられる、
請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記冷却システムの前記物理的なパラメータは、前記冷却システムの幾何学的な形状、前記冷却システム内の作動流体、前記冷却システム内の熱力学的な条件、前記冷却システム内の流れ条件に関するパラメータのうち1つ以上を含む、
請求項1~9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
用いられた前記無次元比は、前記冷却システムの物理的な測定値から推定される、
請求項1~10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
用いられた前記無次元比は、前記冷却システムの幾何学的な形状および前記冷却システムの動作条件の少なくとも1つに基づいて選択される、
請求項1~11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
冷却システムの少なくとも一部の物理的なパラメータを含む複数の入力値を得ることと、
得られた前記入力値を用いて、前記冷却システムの熱伝達および前記冷却システムの圧力損失のうち少なくとも1つの指標を提供する無次元比を推定
し、前記無次元比は、単位長さ当たりの摩擦圧力損失である摩擦圧力勾配から導出されることと、
前記無次元比を用いて、前記冷却システムの少なくとも一部の少なくとも1つの性能指標を決定することと、
および少なくとも1つの決定された前記性能指標を用いて、前記冷却システムの少なくとも一部の1つ以上の物理的なパラメータを制御することと、を含む、方法。
【請求項14】
処理回路によって実行される場合、
冷却システムの少なくとも一部の物理的なパラメータを含む複数の入力値を得ることと、
得られた前記入力値を用いて、前記冷却システムの少なくとも一部の熱伝達および前記冷却システムの少なくとも一部の圧力損失のうち少なくとも1つの指標を提供する無次元比を推定
し、前記無次元比は、単位長さ当たりの摩擦圧力損失である摩擦圧力勾配から導出されることと、
前記無次元比を用いて、前記冷却システムの少なくとも一部の少なくとも1つの性能指標を決定することと、
少なくとも1つの決定された前記性能指標を用いて、前記冷却システムの少なくとも一部の1つ以上の物理的なパラメータを制御することと、
を実施するコンピュータプログラム命令、を含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の実施例は、冷却用装置およびシステムに関する。一部の実施例は、二相冷却システムを制御するための装置およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
冷却システムは、電子機器等の使用中に不要な熱を発生する機器の機能を有効にするために用いられる。これらの冷却システムの効率を上げることで、より多くの熱を伝達させ、機器の機能を向上させたり、機器の形状を小さくすることができる。
【発明の概要】
【0003】
本願の様々な実施例(必ずしも全てではない)によれば、冷却システムの少なくとも一部の物理的なパラメータを含む複数の入力値を得ることと、得られた前記入力値を用いて、冷却システムの少なくとも一部の熱伝達および冷却システムの少なくとも一部の圧力損失のうち少なくとも1つの指標を提供する無次元比を推定することと、前記無次元比を用いて、冷却システムの少なくとも一部の少なくとも1つの性能指標を決定することと、および少なくとも1つの決定された性能指標を用いて、冷却システムの少なくとも一部の1つ以上の物理的なパラメータを制御することと、に用いられる手段を含む装置が提供される。
【0004】
前記冷却システムは、単相または二相冷却システムを含んでもよい。
【0005】
前記冷却システムの全体、または前記冷却システムの一部に対して、前記物理的なパラメータが制御されてもよい。
【0006】
前記冷却システム内の前記熱伝達の指標は、ヌセルト数を含んでもよく、前記冷却システム内の前記圧力損失の指標は、摩擦圧力勾配、ファニング摩擦係数、圧力降下のうち1つ以上を含んでもよい。
【0007】
前記無次元比は、機械学習を用いて推定されてもよい。
【0008】
前記無次元比は、非線形回帰アルゴリズムを用いて推定されてもよい。
【0009】
少なくとも1つの決定された前記性能指標は、使用中の前記冷却システムの1つ以上の物理的なパラメータを制御するために用いられてもよい。
【0010】
少なくとも1つの決定された前記性能指標は、冷却システム内の流路を制御するために用いられてもよい。
【0011】
少なくとも1つの決定された前記性能指標は、受動的な二相冷却システムの下降管内の液面を制御するために用いられてもよい。
【0012】
少なくとも1つの決定された前記性能指標は、能動的な二相冷却システム内のポンプを制御するために用いられてもよい。
【0013】
前記複数の入力値は、前記冷却システム内の1つ以上のセンサから得られた情報を含んでもよい。
【0014】
少なくとも1つの決定された前記性能指標は、前記冷却システムの少なくとも一部の設計中に1つ以上の物理的なパラメータを修正するために用いられてもよい。
【0015】
前記冷却システムの前記物理的なパラメータは、前記冷却システムの幾何学的な形状、前記冷却システム内の作動流体、前記冷却システム内の熱力学的な条件、前記冷却システム内の流れ条件に関するパラメータのうち1つ以上を含んでもよい。
【0016】
用いられた前記無次元比は、前記冷却システムの物理的な測定値から推定されてもよい。
【0017】
用いられた前記無次元比は、前記冷却システムの幾何学的な形状および前記冷却システムの動作条件の少なくとも1つに基づいて選択されてもよい。
【0018】
1つ以上の決定された性能指標は、推定された無次元比を用いて、質量、運動量、エネルギーのうち1つ以上の保存を解決することによって決定されてもよい。
【0019】
本願の様々な実施例(必ずしも全てではない)によれば、冷却システムの少なくとも一部の物理的なパラメータを含む複数の入力値を得ることと、得られた前記入力値を用いて、前記冷却システムの熱伝達および前記冷却システムの圧力損失のうち少なくとも1つの指標を提供する無次元比を推定することと、前記無次元比を用いて、前記冷却システムの少なくとも一部の少なくとも1つの性能指標を決定することと、および少なくとも1つの決定された前記性能指標を用いて、前記冷却システムの少なくとも一部の1つ以上の物理的なパラメータを制御することと、を含む方法が提供される。
【0020】
本願の様々な実施例(必ずしも全てではない)によれば、処理回路によって実行される場合、冷却システムの少なくとも一部の物理的なパラメータを含む複数の入力値を得ることと、得られた前記入力値を用いて、前記冷却システムの少なくとも一部の熱伝達および前記冷却システムの少なくとも一部の圧力損失のうち少なくとも1つの指標を提供する無次元比を推定することと、前記無次元比を用いて、前記冷却システムの少なくとも一部の少なくとも1つの性能指標を決定することと、および少なくとも1つの決定された前記性能指標を用いて、前記冷却システムの少なくとも一部の1つ以上の物理的なパラメータを制御することと、を実施するコンピュータプログラム命令を含むコンピュータプログラムが提供される。
【0021】
以下、一部の実施例を添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施例に係る二相冷却システムを示す模式図である。
【
図2】他の実施例に係る二相冷却システムを示す模式図である。
【
図7】他の実施例に係る二相冷却システムを示す模式図である。
【
図8A】他の実施例に係る方法を示す模式図である。
【
図8B】他の実施例に係る方法を示す模式図である。
【
図9A】本願の実施例によって得られた結果を示す模式図である。
【
図9B】本願の実施例によって得られた結果を示す模式図である。
【
図10A】本願の実施例によって得られた結果を示す模式図である。
【
図10B】本願の実施例によって得られた結果を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本願の実施例は、冷却システムを制御するための、または冷却システムの設計を制御するための、装置および方法に関する。本願の実施例は、機械学習等の方法を用いて、二相冷却システムまたは単相冷却システム等の冷却システムの1つ以上の物理的なパラメータを制御する。前記物理的なパラメータは、前記冷却システムの管理を可能にするように、前記冷却システムまたは前記冷却システムの一部の使用中に制御可能なパラメータであってもよい。一部の実施例において、より効率的な冷却システムの設計および製造を可能にするように、前記パラメータは前記冷却システムの設計中に制御されることができる。
【0024】
図1は、二相冷却システム101を模式的に示される。
図1の実施例において、前記二相冷却システム101は、ポンプではなく重力によって駆動される受動的な二相冷却システムを含む。
図1の実施例において、受動的な二相冷却システム101は、熱サイフォンループを含む。他のタイプの二相冷却システムは、本願の他の実施例において用いられることができる。
【0025】
図1に示される熱サイフォンループは、蒸発器103、凝縮器105、下降管107および上昇管109を含む。熱サイフォンループ内には、作動流体113が設けられる。熱サイフォンループが使用中に、作動流体113は、熱サイフォンループの構成要素を通して循環する。
【0026】
前記蒸発器103は、前記作動流体が矢印115で示すように重力の力によって前記下降管107を流れて前記蒸発器103に入るように、前記熱サイフォンループの底部に設けられる。前記下降管107の高さと内径とは、下降管107内の流体の静的な端部が流体を蒸発器103、上昇管109および凝縮器105を通って流れるように、選択可能である。作動流体113は、下降管107内にある時、液相117である。
【0027】
前記蒸発器103は、熱源111からの熱を前記作動流体113に伝達するための任意の手段を含む。前記蒸発器103は、前記熱源111に熱的に結合される。前記蒸発器103が前記熱源111に熱的に結合されることを可能にするために、熱界面材料が用いられてもよい。前記熱源111は、使用中に不要な熱を発生する電子機器を含んでもよい。前記電子機器は、サーバ、ルータ、ネットワークスイッチ、記憶機器、または任意の他の適切なタイプの機器であってもよい。一部の実施例において、これらの熱源は、データセンタ、通信機器室、またはネットワーク、通信室、コンピュータ室、ネットワーク室、または他の任意の適切な配置を提供し得る複数の電子機器を含むことができる。
【0028】
矢印119で示すように、熱は前記熱源111から前記蒸発器103内の前記作動流体113に伝達される。この熱伝達により、前記蒸発器103内で前記作動流体113の一部の蒸発が起こり、前記作動流体113が液相117から液相と蒸気相との混合物に変換される。特に、前記蒸発器103は、前記作動流体113の一部を蒸気相121に変換させる一方、一部を液相117に残留させて、蒸発器103の出口から排出される流体を二相混合物とする。前記二相混合物は、熱サイフォンループの設計、熱負荷、充填率、および他の適切なパラメータに応じて、液体または他の流動状態内に巻き込まれた蒸気の液滴を含むことができる。
【0029】
前記二相冷却システム内の前記作動流体113の蒸气干度は、相変化過程における生成された蒸気の量であり、蒸気の質量を流体(液体および蒸気)の総質量で割った比として計算される。前記蒸発器103の出口から排出される流体の蒸气干度は、前記二相冷却装置101の機能にとって重要である。前記蒸発器103の出口から排出される流体の蒸气干度が高すぎる場合、前記二相冷却システム101は、熱性能が低下した摩擦中心の状態で動作することになる。従って、十分な熱性能を維持するために、蒸气干度が閾値以下に維持されるようにすることが有益である。前記閾値は、約0.6または任意の他の適切な値であってもよい。
【0030】
前記蒸発器103は、蒸発器103から排出された作動流体が蒸発器103から上昇管109に流入するように上昇管109に連結される。この作動流体は、蒸気相121が液相117よりも密度が低い二相混合物を含む。矢印123で示すように、前記熱サイフォンループ内の前記作動流体113は、浮力(蒸発器103から出た二相混合物に関連する)と重力(凝縮器105から出た作動流体113に関連する)との間のバランスの結果として、上昇管109を通って上昇する。
【0031】
前記蒸発器103は、前記蒸発器103から前記作動流体113への効率的な熱伝達を可能にする構造を含むことができる。例えば、前記蒸発器103は、ウィック構造、微小流路、フィンのアレイ、マクロ/マイクロ流路の蛇行配置、またはこれらの特徴の任意の適切な組み合わせを含んでもよい。
【0032】
前記凝縮器105は、前記熱サイフォンループの頂部に設けられる。前記凝縮器105は、前記作動流体113が前記蒸発器103から前記凝縮器105に上向きに流れるように、前記蒸発器103の上に配置される。
【0033】
前記凝縮器105は、前記二相混合物(蒸気相121および液相117)中の前記作動流体113が上昇管109から凝縮器105に流入するように上昇管109に結合される。前記凝縮器105は、前記作動流体113を冷却するための任意の手段を含むことができる。例えば、前記凝縮器105は、空冷式または液冷式であってもよい。液冷式凝縮器105は、チューブ・イン・チューブ構成、シェル・アンド・チューブ構成、プレート熱交換器、または他の任意の適切な構成または配置を含んでもよい。空冷式凝縮器は105、ルーバーフィン扁平管構成、チューブ・アンド・フィン熱交換器、または任意の他の適切なタイプの構成または配置を含んでもよい。
【0034】
前記凝縮器105は、冷却剤125に熱的に結合される。前記凝縮器105が冷却剤125に熱的に結合されることを可能にするために、熱界面材料が用いられてもよい。他の実施例において、前記冷却剤125は、作動流体113の流れを前記冷却剤125の流れから分離する壁界面を有する前記凝縮器105に直接統合されることができる。前記壁界面は、銅、アルミニウム、真鍮、または任意の他の適切な金属等の高導電性金属または金属合金を含むことができる。一部の実施例において、前記壁界面は、窒化アルミニウム(AlN)等の高導電性セラミック、または充填ポリマー複合体等のポリマーを含むことができる。前記凝縮器105は、液冷凝縮器または任意の他の適切なタイプの凝縮器であってもよい。前記凝縮器105は、前記作動流体から熱を効率的に除去することを可能にする任意の適切な形状を含んでもよい。
【0035】
矢印127で示すように、前記凝縮器105は、前記作動流体113から前記冷却剤125への熱伝達を可能にする。この熱伝達により、前記作動流体113は少なくとも部分的に凝縮し、前記液相117に戻る。前記凝縮器105の出口における前記作動流体113は、前記液相117である。
【0036】
前記凝縮器105は、前記液相117である前記作動流体113が重力によって前記下降管107を流れ落ち、前記蒸発器103の前記入口に戻されるように、前記下降管107に結合される。
【0037】
図2は、本願の実施例における制御されてもよい1つ以上のパラメータを含む他の実施例の二相冷却システム101を示す。この実施例において、前記二相冷却システム101は、データセンタまたは任意の他の適切な環境における複数の電子機器203の冷却を可能にするように構成されることができる他の熱サイフォンループを含む。他のタイプのデバイスおよび装置を冷却するために使用することができる他の二相冷却システム101は、本願の他の実施例において用いられてもよい。
【0038】
前記熱サイフォンループは、複数のセンサ223を含む。前記複数のセンサ223は、前記熱サイフォンループの物理的なパラメータを含む複数の入力値が得られたことを可能にするように、前記熱サイフォンループ全体に分散配置される。これらの入力値は、その後、前記二相冷却システム101の形状や熱源からの熱負荷等の追加パラメータと共に、ヌセルト数や摩擦圧力勾配等の無次元比を推定するために用いられることができる。
【0039】
図2の実施例において、前記熱サイフォンループは、前記複数の蒸発器103を含み、いずれの蒸発器103が電子機器203に熱的に結合される。前記電子機器203は、サーバ、ルータ、スイッチ、または他の光電子機器であってもよい。前記蒸発器103は、前記電子機器203からの熱が前記蒸発器103内の前記作動流体113を蒸発させることを可能にするように、前記電子機器203に結合される。
図2の前記熱サイフォンループには、6つの前記電子機器203および対応する前記蒸発器103が示されるが、本願の他の実施例において、他の数の前記電子機器203および前記蒸発器103が用いられてもよいことを理解されるべきである。
【0040】
図2に示される実施例において、前記蒸発器103は、最初の蒸発器103から排出された前記作動流体113が、シリーズ内の次の前記蒸発器103の入口に供給されるように、前記熱サイフォンループ内で直列に配置される。この直列配置では、前記作動流体113は、いずれの前記蒸発器103を順次に通過する。前記作動流体113が前記蒸発器103を通過すると、蒸発過程におけるより多くの熱が吸収されるため、前記蒸気相121である前記作動流体113の量は増加する。
【0041】
図2の熱サイフォンループの一例は、前記下降管107内にアキュムレータ205を含む。前記アキュムレータ205は、液体アキュムレータまたは受器であってもよい。前記アキュムレータ205は、前記液相117である前記作動流体113を貯留できる任意の手段を含むことができる。前記アキュムレータ205は、前記液相117である前記作動流体113を貯留する。前記アキュムレータ205の内部の前記作動流体113は、液体の一部を含むことができ、残りの体積は、飽和状態の二相混合物となる。前記アキュムレータ205は、前記下降管107に対して前記アキュムレータ205の断面積が大きいため、前記液相117である前記作動流体113が前記凝縮器105に入るのを防止するのに有利である。これにより、前記熱サイフォンループの熱性能の低下による前記凝縮器105の溢れを回避することができる。
【0042】
この実施例において、前記凝縮器105は、コンパクト熱交換器を含む。他のタイプの凝縮器105は、本願の他の実施例において用いられてもよい。用いられた凝縮器105のタイプは、熱サイフォンループから除去される予定の熱の予想量に基づいて選択されてもよい。これは、熱サイフォンループによって冷却されることになる電子機器203の数に基づくことができる。一部の実施例において、前記二相冷却システム101がサーバのラックまたは他の同様の配置を冷却するために用いられる場合、受動的な重力駆動の二相冷却システムに十分な駆動力を提供するように、前記凝縮器105がラックの真上(オーバーヘッド凝縮器105)に配置されることができる。
【0043】
図2に示される実施例において、熱を前記熱サイフォンループとデータセンタ環境から伝達させることを可能にするように、二次冷却システム201は前記凝縮器105に結合される。この実施例において、矢印211で示すように、水は前記冷却剤であり、入口207に供給される。前記凝縮器105は、その後、熱が前記熱サイフォンループの前記作動流体113から前記二次冷却システム201の水に伝達されるように構成される。矢印215で示すように、加熱された水は、出口213から排出される。他の実施例において、前記二次冷却システム201は、異なる作動流体を用いてもよい。例えば、これは、熱伝達過程における沸騰している誘電体流体であってもよく、且つ前記熱交換器が凝縮-蒸発モードで動作することになる。
【0044】
図2に示される実施例において、前記凝縮器105は、前記作動流体113と前記水とのための入口が前記凝縮器105の反対側に配置される逆流配置を有する。他の実施例において、前記凝縮器105は、平行流配置、交差流配置、または任意の他の適切なタイプの配置を有するように構成されてもよい。
【0045】
図2に示される実施例において、前記二次冷却システム201の一部のみが示される。前記二次冷却システム201は、ポンプによって駆動される能動的な冷却システム、または任意の他の適切なタイプの冷却システムであってもよい。
【0046】
前記熱サイフォンループは複数のセンサ223をさらに含む。前記センサ223は、前記熱サイフォンループ内に配置され、前記熱サイフォンループの1つ以上のパラメータの測定を可能にするように構成される。監視された前記パラメータは、前記熱サイフォンループの効率と、前記熱サイフォンループによって伝達された熱の量と、に関連することができる。前記センサ223によって得られた測定値は、入力を処理して前記熱サイフォンループの少なくとも1つの性能指標を決定することができる制御システムへの入力として用いられることができる。この決定された性能指標は、その後、前記熱サイフォンループの1つ以上のパラメータを制御するために用いられることができる。
図3~
図6は、前記センサ223からの測定値を入力値として用いて、前記熱サイフォンループまたは他の二相冷却システム101の少なくとも1つの性能指標を決定することができる方法の実施例を示す。
【0047】
前記センサ223は、前記性能指標を決定するために用いられる適切な入力値を提供するために用いられる任意の適切なパラメータを測定するために用いられることができる。例えば、前記センサ223は、温度センサ、圧力センサ、質量流量センサ、または任意の他の適切なタイプのセンサ223を含んでもよい。前記センサ223は、前記熱サイフォンループ内の異なる位置で様々なパラメータを測定できるように、前記熱サイフォンループ内の複数の異なる位置に配置されることができる。
【0048】
図1および
図2に示される実施例において、前記二相冷却システム101は、受動的な熱サイフォンループを含む。本願の他の実施例において、他のタイプの二相冷却システム101が用いられてもよいことを理解されるべきである。例えば、一部の実施例において、前記二相冷却システム101は、前記作動流体をシステム中にポンプするように構成された1つ以上のポンプを含む能動的な二相冷却システム101を含んでもよい。
【0049】
図3は、
図1および
図2に示される前記二相冷却システム101のような冷却システムの制御を可能にするために用いられることができる方法の実施例を示す。本願の一部の実施例において、この方法の変形が用いられてもよいことを理解されるべきである。例えば、ブロック303が省略されてもよく、ブロック301で得られた入力値は、冷却システム(ブロック305)の少なくとも1つの性能指標を決定するための入力として直接に用いられることができる。
【0050】
前記方法は、ブロック301において、冷却システムの物理的なパラメータを含む複数の入力値を得ることを含む。前記入力値は、前記冷却システムの1つ以上の物理的なパラメータの測定値を与える任意の値を含むことができる。
【0051】
一部の実施例において、前記複数の入力値は、前記冷却システム内の1つ以上の前記センサ223によって得られた測定値を含むことができる。そのような実施例において、得られた入力値は、前記冷却システム内の1つ以上のセンサから得られた情報を含むことができる。例えば、
図2に示されるセンサ223は、前記冷却システムの使用中に、温度、圧力、質量流量、または他の任意の適切なパラメータの測定値を得るために用いられることができる。
【0052】
一部の実施例において、前記複数の入力値は、前記冷却システムの使用中に変化しない物理的なパラメータの既知の値を含むことができる。例えば、流路の幅や下降管の高さ等の前記冷却システムの形状に関するパラメータは、使用中に変化しないように固定されることができる。このような実施例では、これらのパラメータが測定される必要はなく、必要に応じて保存され、検索されることができる。
【0053】
一部の実施例において、前記複数の入力値は、熱負荷分布に関する値を含むことができる。前記熱負荷分布は、前記冷却システムの使用中に測定されることができる。
【0054】
一部の実施例において、前記複数の入力値は、提案値を含むことができる。例えば、前記方法が冷却システムの設計を可能にするために用いられる場合、前記冷却システムの提案形状に関する一部の初期入力パラメータが用いられてもよい。これらの初期パラメータは、その後、設計過程の一部として調整されてもよい。
【0055】
前記ブロック303において、前記方法は、得られた入力値を用いて、無次元比を推定することを含む。前記無次元比は、前記冷却システムの性能指標を提供することができる。
【0056】
一部の実施例において、前記無次元比は、前記冷却システムの物理的な測定値から導出されることができる。例えば、前記無次元比は、前記冷却システム内の1つ以上のセンサから得られた入力値から導出されることができる。一部の実施例において、前記無次元比は、前記冷却システムに関連する保存値から導出されることができる。一部の実施例において、前記無次元比は、物理的な測定値と保存値との組み合わせから導出されることができる。
【0057】
一部の実施例において、前記無次元比は、前記冷却システム内の熱伝達の指標を提供することができる。そのような実施例では、前記無次元比は、ヌセルト数、またはヌセルト数に関連する値またはヌセルト数から導出された値を含んでもよい。前記ヌセルト数は、境界を介した対流熱伝達と伝導熱伝達との比率を表す。ヌセルト数が1であれば、純粋な伝導による熱伝達を表す。前記ヌセルト数が大きいほど、対流熱伝達がより効果的であることを表す。従って、前記ヌセルト数は、流体層を通過した伝導に対する対流による前記流体層を通過した熱伝達の増強を表す。
【0058】
非円形の断面積を有するパイプのヌセルト数Nuは、以下の式で算出される。
【数1】
【0059】
ここで、hは熱伝導率を表し、dhは水力直径を表し、kfluidは流体熱伝導率を表し、qeffは有効熱流束を表し、Twallは壁温度を表し、Tfluidは流体温度を表す。配管とは異なる他のシステムには、熱伝達率に所定のシステムの特性長を乗じることで前記ヌセルト数が得られることができる。
【0060】
また、壁から流体への温度差が蒸発過程を表し、流体から壁への温度差が凝縮過程の熱伝達係数を計算するために用いられることを理解されるべきである。
【0061】
一部の実施例において、前記無次元比は、前記二相冷却システム101内の圧力損失の指標を提供することができる。これは、前記作動流体が蒸発する際の圧力変化の指標を提供することができる。一部の実施例において、前記圧力損失は、作動流体と前記二相冷却システム101の構成要素との間の相互作用に起因する可能性がある。そのような実施例において、前記無次元比は、単位長さ当たりの摩擦圧力損失である摩擦圧力勾配から導出されてもよい。
【0062】
前記圧力損失勾配は、以下の式で算出される。
【数2】
【0063】
ここで,Δpfri,は摩擦圧損を表し、Lportは全長を表し、fはファニング摩擦係数を表し、Gは質量流束を表し、dhは水力直径を表し、ρfluidは流体密度を表す。配管とは異なる他のシステムには、前記水力直径が所定のシステムの特性長に置き換えられることができる。
【0064】
本願の他の実施例において、前記圧力損失の指標を提供する他の無次元比は、例えば、ファニング摩擦係数、圧力損失または他の比が用いられてもよい。二相冷却システムの場合、全圧力損失は、静的、運動量、摩擦による寄与の合計である。前記圧力損失の寄与を特徴付けるために、他のパラメータおよび無次元比が生成されてもよい。
【0065】
本願の他の実施例において、他の無次元比が用いられてもよいことを理解されるべきである。例えば、前記無次元比は、ボンド数、ウェーバ数を含んでもよい。沸騰数、レイノルズ数、またはこれらの比に関連する任意の他の適切な比または値である。
【0066】
前記無次元比は、機械学習を用いて推定されることができる。一部の実施例において、前記無次元比率は、非線形回帰アルゴリズムを用いて推定されることができる。本願の他の実施例において、他のタイプのアルゴリズムは、例えば、サポートベクターマシン(SVM)、確率的勾配降下法(SGD)、近傍法(NNR)、ガウス過程回帰(GPR)、ガウシアンナイーブベイズ、決定木分析ランダムフォレストまたはニューラルネットワークが用いられてもよい。
【0067】
一部の実施例において、前記機械学習アルゴリズムは、最適な出力または実質的に最適な出力を提供するためにどの無次元比を用いることができるかを選択するように構成されることができる。利用可能な複数の異なる無次元比がある場合、前記方法を実施するために使用され得る前記無次元比の複数の異なる組み合わせも存在することになる。前記機械学習アルゴリズムは、用いられる無次元比の種類および/または数を選択してもよい。用いられる無次元比の種類および/または数は、前記冷却システムの幾何学的な形状、前記冷却システムの規模動作条件、前記冷却システムの規模、前記冷却システムのタイプ、または他の任意の適切な係数等の係数に基づいて選択されることができる。
【0068】
ブロック305において、前記方法は、前記無次元比を用いて、前記冷却システムの少なくとも1つの性能指標を決定することを含む。前記性能指標は、前記推定された無次元比を用いて、前記冷却システムの1つ以上の質量、運動量、またはエネルギー、または任意の他の適切なパラメータの保存を解決することによって決定される。
【0069】
一部の実施例において、前記性能指標は、機械学習、または任意の他の適切な過程を用いて、1つ以上の保存式を解くによって決定されることができる。前記式は、前記冷却システムの一部または前記冷却システムの全体に対して解かれることができる。他の実施例において、前記式を解く代わりに、機械学習または他の適切な過程を用いて、推定された無次元比を出力値に直接に関連できる。この直接な関連によって、計算量を減らすことができる。このような実施例において、ブロック301で得られた前記入力値は、任意の無次元比(ブロック305)を直接に計算することなく前記性能指標を決定するために用いられてもよい。
【0070】
一部の実施例において、数値的な方法は、前記冷却システム内の有限個の点での温度を経時的に決定するために用いられることができる。他の実施例において、前記冷却システムの要素は、温度の計算に関して、単一のエンティティとして扱われることができる。例えば、プレート熱交換器は、一連の有限個の点ではなく、単一のエンティティとして扱われることができる。
【0071】
ブロック307において、前記方法は、少なくとも1つの決定された性能指標を用いて、冷却システムの1つ以上の物理的なパラメータを制御することを含む。
【0072】
一部の実施例において、少なくとも1つの決定された性能指標は、使用中の前記冷却システムの1つ以上の物理的なパラメータを制御するために用いられることができる。例えば、前記決定された性能指標は、前記二相冷却システム101内の流路を制御するため、または受動的な二相冷却システム101の下降管の液面を制御するために用いられてもよい。これは、1つ以上の弁または他の適切な手段を制御することによって制御されてもよい。冷却システムが能動的な二相冷却システム101を含む実施例において、前記決定された性能指標は、ポンプを制御するために用いられてもよい。これは、冷却システムの高速且つ高精度の制御を提供することができる。
【0073】
一部の実施例において、前記冷却システムの使用中に制御された物理的なパラメータは、前記冷却システムを通過した作動流体の流れ循環、または前記冷却システムの1つ以上の構成要素を通過した作動流体の流れ循環を含むことができる。一部の実施例において、前記物理的なパラメータは、作動流体の流れ循環を最適化するように制御されることができる。流量を制御するために用いられる前記方法は、用いられた前記冷却システムのタイプによって決定されることができる。例えば、前記冷却システムが受動的な二相冷却システム101である場合、前記二相冷却システム101内の1つ以上の弁を制御することにより、前記流量循環が制御されることができる。前記冷却システムが能動的なシステムである場合、前記流れ循環は、ポンプ速度、電圧、または他の任意の適切な係数を制御することによって制御されてもよい。
【0074】
前記作動流体の制御は、前記冷却システムの異なる部分、または前記冷却システムの全体に適用されることができる。例えば、
図2に示される熱サイフォンループが二次冷却システム201に結合されることができる。このような冷却システムは、データセンタまたは他のタイプの電子機器を冷却するために用いられることができる。本願の実施例において、前記作動流体の循環は、前記熱サイフォンループ、前記二次冷却システム201、またはこれらの両方に制御されてもよい。
【0075】
一部の実施例において、少なくとも1つの決定された性能指標は、前記冷却システムの設計中に1つ以上の物理的なパラメータを修正するために用いられることができる。例えば、前記冷却システムのシミュレーションが生成されてもよく、シミュレートされたシステムの物理的なパラメータが、決定された性能指標に基づいて調整されてもよい。前記冷却システムの前記物理的なパラメータは、前記冷却システムの幾何学的な形状、前記冷却システム内の作動流体、前記冷却システム内の熱力学的な条件、前記冷却システム内の流れ条件、および他の任意の関連パラメータに関するパラメータのうちの1つ以上を含んでもよい。
【0076】
一部の実施例において、前記決定された性能指標は、前記冷却システム内の特徴を修正するために用いられることができる。例えば、前記冷却システムは、前記冷却システムを通過した作動流体の流れを可能にするウィック構造および/またはマイクロ流路を含むことができる。これらの構造に関するパラメータ(直径または長さ等)は、設計過程において調整されることができる。一部の実施例において、前記熱交換器は、熱伝達を改善するためのフィンまたは他の構造を含んでもよく、これらの構造はまた、前記決定された性能指標に基づいて設計過程において調整されてもよい。
【0077】
図3に示される方法は、前記冷却システムの一部または前記冷却システムの全体を制御するために用いられることができることを理解されるべきである。例えば、一部の実施例において、前記冷却システムは複数の冷却ループを含んでもよく、前記制御はそれぞれの個別に、または前記システムの全体に適用されてもよい。
【0078】
図4は、本願の実施例に係る他の方法の実施例を示す。前記方法の実施例は、単相(蒸気相および液相)冷却システムだけでなく、機械的なドライバを含む能動的な冷却システムおよび
図1に示されるシステムのような受動的な二相冷却システム101にも用いられることができる。前記方法は、前記冷却システム内の部分または構成要素にも用いられてもよい。例えば、一部の実施例において、前記方法は、蒸発器103または凝縮器105を設計するために用いられてもよい。
【0079】
前記方法では、システム幾何学入力値401と物理条件入力値403とが得られる。前記システム幾何学入力値は、前記冷却システムの完全なシステム幾何学を提供してもよく、または一部のシステム幾何学を提供してもよい。前記完全なシステム幾何学入力値401は、システムの全体の幾何学が既知になるように、前記冷却システムが使用中の実施例において用いられることができる。前記一部のシステム幾何学入力値は、前記冷却システムが設計中の実施例において用いられてもよい。
【0080】
前記システム幾何学値401は、前記冷却システムの1つ以上の構成要素の高さおよび幅等の寸法に関連されてもよい。前記システム幾何学値401は、前記冷却システムの使用中に変化しない固定値であってもよい。一部の実施例において、前記システム幾何学値401は、使用中に変更可能な1つ以上の値を含んでもよい。例えば、1つ以上の弁を用いて冷却システム内の流路を変更することで、前記冷却システムの一部の有効長および/または直径を変更するために用いられてもよい。前記システム幾何学値401は、データベースまたは他のレジスタから得られる既知の値であってもよく、または必要に応じて測定されてもよい。
【0081】
前記物理条件入力値403は、前記冷却システム内の1つ以上の流体特性または熱力学的な流れ条件に関連する入力値を含んでもよい。前記冷却システムの使用中に制御される実施例において、前記物理条件入力値403の少なくとも一部は、前記冷却システム内の1つ以上のセンサ223から得られてもよい。前記冷却システムを設計するためにシミュレーションが用いられる実施例において、前記物理条件入力値403の少なくとも一部は、実験値から、または他の任意の適切な過程を用いて推定されてもよい。
【0082】
前記物理条件入力値403は、前記作動流体に関連してもよく、例えば、前記作動流体内の温度および/または圧力に関連してもよく、熱容量または用いられた作動流体のタイプ等の前記作動流体の他のパラメータに関連してもよい。
【0083】
一部の実施例において、前記物理条件入力値403は、前記冷却システム内の1つ以上の熱力学的な条件に関連する入力値を含んでもよい。これらの条件は、前記冷却システム内の1つ以上の位置における温度および/または圧力であってもよい。
【0084】
一部の実施例において、前記物理条件入力値403は、質量流量等の流量条件、または前記冷却システム内の前記作動流体の流れに関連する他の任意の適切なパラメータを含んでもよい。そのような値は、1つ以上のセンサ223によって測定されてもよく、または実験データから推定されてもよい。
【0085】
図4に示される実施例において、前記システムは、1つ以上の無次元比405をさらに得る。この実施例において、前記無次元比405は、ヌセルト数および摩擦圧力勾配を含む。本願の他の実施例において、他の無次元比405が用いられてもよいことを理解されるべきである。前記無次元比405は、機械学習を用いて推定されることができる。機械学習、または任意の他の適切な過程は、利用可能な無次元比405のうちのどれが、熱負荷および圧力損失を計算するために用いられ、その後、性能指標を決定するために用いられることができるかを選択するために用いられることができる。
【0086】
ブロック407において、質量、運動量およびエネルギーの保存を支配する式が解かれる。これらの式は、前記冷却システムの局所的な領域について解かれることができる。例えば、前記冷却システムが一部に分割されることができ、前記冷却システムの特定の一部について前記式が解かれることができる。
【0087】
上記のように、一部の実施例において、前記冷却システムの性能指標が計算されるように前記式が解かれることができる。他の実施例において、機械学習や他の適切な過程は、前記式を実際に解いたことがなく、前記入力値401および前記入力値403を出力の性能指標に直接変換するために用いられることができる。
【0088】
前記式が解かれると、1つ以上の性能指標409、性能指標411が出力として提供される。この実施例において、熱交換の性能指標409と圧力降下の性能指標411とが提供される。前記熱交換の性能指標409は、前記冷却システムによって、または分析される前記冷却システムの特定の一部によって交換される全熱の指標を提供することができる。前記圧力降下の性能指標411は、前記冷却システムの全体または分析される前記冷却システムの特定の一部に通じる全圧力降下の指標を提供することができる。本願の他の実施例において、他の性能指標が用いられてもよいことを理解されるべきである。
【0089】
前記性能指標409、前記性能指標411が得られたと、それらは、前記冷却システムの1つ以上の物理的なパラメータを制御するために用いられることができる。例えば、前記冷却システムの使用中に、前記作動流体の前記流路は、弁の開閉によって制御されてもよい。これにより、前記冷却システム内の圧力が制御されることができ、前記作動流体に伝達される熱量を制御できる。能動的な冷却システムには、前記作動流体の前記流れは、ポンプ速度、電圧、または他の適切なパラメータを制御することによって制御されてもよい。
【0090】
前記方法が冷却システムを設計するために用いられる実施例において、前記性能指標は、1つ以上のシステム幾何学値401を調整するために用いられてもよい。例えば、前記冷却システムの一部の長さや幅等の物理的なパラメータを調整するために使用することができる。前記調整されたシステム幾何学値401が、その後、用いられてもよく、十分な出力の性能指標が達成されるまで、過程が繰り返されてもよい。前記十分な出力の性能指標は、熱交換の性能指標409および/または圧力降下の性能指標411についての最適値、または実質的に最適値であってもよく、または閾値を超える前記熱交換の性能指標409および/または前記圧力降下の性能指標411についての得られた値であってもよい。
【0091】
図5は、無次元比を推定するために用いられることができる方法の実施例を示す。
【0092】
ブロック501において、前記冷却システムの物理的なパラメータを含む複数の入力値が得られる。前記入力値は、前記冷却システム内で測定を行うことによって、または実験データから、あるいは他の適切なソースから得られることができる。
【0093】
ブロック503において、前記複数の入力値が無次元パラメータに変換される。任意の適切な次元削減過程は、入力値を無次元比に変換するために用いられることができる。前記無次元比は、レイノルズ数、ボンド数、密度比、または他の任意の適切な無次元パラメータを含んでもよい。
【0094】
ブロック505において、機械学習が無次元比に対して実行され、特定の無次元比についての推定値を得る。入力値を無次元パラメータに変換することで、機械学習アルゴリズムの特徴ベクトルの次元を減少させる。これにより、機械学習アルゴリズムの複雑性を縮減させる。
【0095】
図5に示される実施例において、用いられる機械学習アルゴリズムは、ランダムフォレスト回帰分析(random forest regression)を含む。他のタイプの機械学習アルゴリズムは、本願の他の実施例において用いられることができる。
【0096】
ブロック507において、冷却システム内の熱伝達の指標および前記冷却システム内の圧力損失の指標を提供する無次元比が提供される。これらの無次元比は、ブロック505において用いられる機械学習アルゴリズムの前記出力であってもよい。
【0097】
図5の実施例において、前記提供される無次元比は、ヌセルト数および摩擦圧力勾配を含む。本願の他の実施例において、他の無次元比が用いられてもよいことを理解されるべきである。
【0098】
図5に示される方法によって得られた無次元比は、その後、
図6に示されるように、前記冷却システム内の質量、運動量およびエネルギーの保存に関する式を解くための入力として用いられることができる。
【0099】
図6は、本願の一部の実施例において用いられることができる方法および式の実施例を示す。
【0100】
ブロック601において、前記冷却システムの物理的なパラメータを含む複数の入力値が提供される。
【0101】
これらの入力値は、システム幾何学に関連する1つ以上の値を含むことができる。これらの値は、前記冷却システム内の1つ以上の部分または構成要素の幾何学に関連できる。これらは、既存の冷却システムの測定値または既知値であってもよく、またはシミュレーションされた冷却システムについての選択値であってもよい。
【0102】
これらの入力値は、前記システム要件に関連する値も含むことができる。一部の実施例において、前記システム要件に関する値は、用いられる作動流体に関連することができる。一部の実施例において、前記システム要件に関する値は、熱力学的な条件および流量条件に関連でき、例えば、それらは、前記冷却システム内の温度または前記作動流体の流量または任意の他の適切なパラメータに関連できる。
【0103】
ブロック603において、前記入力値は、前記冷却システム内の熱伝達および前記冷却システム内の圧力損失の指標を提供する無次元比を推定するために用いられる。
図6の実施例において、前記無次元比は、ヌセルト数および摩擦圧力勾配を含む。これらの無次元比は、ブロック601で得られた入力値を用いて、蒸発流および凝縮流の式を解くことによって算出されることができる。機械学習は、ヌセルト数およびファニング摩擦係数を得るために用いられることができ、その後、前記ヌセルト数および前記ファニング摩擦係数が以下の式を解くために用いられることができる。
【0104】
蒸発流の場合、ヌセルト数は、以下で得られることができる。
【数3】
【0105】
凝縮流の場合、ヌセルト数は、以下で得られることができる。
【数4】
【0106】
蒸発流と凝縮流の圧力勾配は、以下で得られることができる。
【数5】
【0107】
ブロック605において、ブロック603で得られた出力は、質量、運動量およびエネルギーの保存を支配する式を解くために用いられる。前記無次元比は、熱伝導を支配する式を解くためにさらに用いられることができる。
【0108】
質量保存を支配する式は、以下で与えられる。
【数6】
【0109】
運動量保存を支配する式は、以下で与えられる。
【数7】
【0110】
エネルギー保存を支配する式は、以下で与えられる。
【数8】
【0111】
熱伝導を支配する式は、以下で与えられる。
【数9】
【0112】
ここで、uは速度を表し、θは水平方向と定められた角度を表し、Hはエンタルピーを表し、αは熱拡散率を表す。
【0113】
ここで提供されるこれらの流体流動の式は、1次元である。これらの式において、zは流れ方向に沿う次元である。本願の実施例において、3次元をカバーする式が用いられてもよいことを理解されるべきである。
【0114】
ここで提供される熱伝導を支配する式は、3次元についての式である。他の実施例において、それは、2次元または1次元で、または定常状態で解かれてもよい。
【0115】
ブロック605に示される式は、定常状態または過渡モードで解かれることができる。一部の実施例において、流れの不均衡分布、流れの不安定性、低温始動、不均衡な熱負荷条件、および冷却システムに影響できる他の物理的な条件を考慮に入れた追加の式が用いられてもよい。
【0116】
ブロック607において、式の出力が得られる。これらの出力は、前記冷却システムの物理的なパラメータに関連する性能指標を含む。
図6の実施例において、これらの出力は、交換された総熱量および前記冷却システムにわたる総圧力損失を含む。これらの指標は、前記冷却システム内の部分または構成要素について、あるいは前記冷却システムの全体について得ることができる。
【0117】
ブロック609において、全体の性能指標が決定される。この実施例において、前記全体の性能指標は、交換された熱と総圧力損失との比によって与えられる。他の性能指標は、本願の他の実施例において用いられることができる。
【0118】
前記全体の性能指標は、その後、前記冷却システムの1つ以上の物理的なパラメータの制御のために用いられることができる。例えば、前記冷却システムが使用中である場合、前記性能指標は、前記冷却システムを通過した作動流体の流れを制御するために用いられることができる。前記冷却システムが設計目的で分析されたシミュレーションシステムである場合、その後、システム形状に関する値等の入力値のいずれかを調整することで前記冷却システムが制御されることができる。この過程は、シミュレートされた冷却システムが十分な全体の性能指標を提供するまで繰り返すことができる。前記十分な全体の性能指標は、予め定義された閾値範囲内にある熱交換された熱と総圧力損失との比の値であってもよい。
【0119】
図7は、本願の一部の実施例で用いられることができる他の二相冷却システム101の実施例を示す。前記蒸発器103および電子機器203は、分かりやすくするために
図7に示されていない。複数の蒸発器103は、直列または並列またはその両方の組合せで設けられてもよい。
図2に示されるように、前記二相冷却システム101は、前記二相冷却システム101の物理的なパラメータを測定するための1つ以上のセンサ223をさらに含んでもよい。
【0120】
図7の二相冷却システム101の実施例において、前記下降管107は、複数の分岐701A、701Bを含む。各分岐701A、701Bは、凝縮器105と1つ以上の蒸発器103との間に管路または導管を提供する。各分岐701A、701Bは、液相117である作動流体113のための流路を提供するように構成される。
【0121】
図7に示される実施例において、2つの分岐701A、701Bが設けられており、ここで、第1分岐は第2分岐よりも大きな直径を有する。異なる直径を有する他の数の分岐701A、701Bが、本願の他の実施例において提供されてもよいことを理解されるべきである。
【0122】
前記二相冷却システム101は、前記二相冷却システム101内の作動流体113の流れを制御できるように構成された複数の弁703A、703B、703C、703Dをさらに含む。前記複数の弁703A、703B、703C、703Dは、任意の適切なタイプの弁であってもよい。一部の実施例において、前記弁703A、703B、703C、703Dは、印加される電気信号を用いて開閉可能なばね定数弁を含んでもよい。前記弁703A、703B、703C、703Dを制御するために用いられる電気信号は、前記二相冷却システム101の決定された性能指標に基づくことができる。他のタイプの703A、703B、703C、703Dは、本願の他の実施例において用いられてもよい。
【0123】
図7に示される実施例において、前記蒸発器103への入口は、上昇管109よりも小さい直径を有す。これは、前記熱サイフォンループ内に圧力の力を提供するように構成される。これは、前記熱サイフォンループ内の一方向の流れを提供することで、前記蒸発器103の入口における気泡形成を防止する。
【0124】
第1弁703Aは第1分岐701Aに設けられる。前記第1弁703Aは、第1分岐701Aを通過した作動流体の流れを制御するために用いられることができる。第2弁703Bは、第2分岐701Bを通過した作動流体の流れを制御するために、第2分岐701Bに設けられる。一部の実施例において、前記弁703A、前記弁703Bは、前記作動流体113が第1分岐701Aまたは第2分岐701Bのいずれかを通過して流れるように制御されることができる。前記分岐701A、前記分岐701Bのいずれを用いて作動流体113を前記蒸発器103に供給するかを制御することにより、前記下降管107内の液面の調整が可能になり、これにより、前記熱サイフォンループを通過した作動流体113の流れを制御できる。
【0125】
一部の実施例において、前記二相冷却システム101は、前記作動流体113が前記分岐701A、前記分岐701Bの両方を通って同時に流れることができるように構成されてもよい。これは、前記二相冷却システム101の3つの異なる構成が使用されることを可能にする。第1構成では第1分岐701Aだけが用いられ、第2構成では第2分岐701Bだけが用いられ、第3構成では第1分岐701Aおよび第2分岐701Bの両方が用いられる。
【0126】
前記弁703A、前記弁703Bは、計算された性能指標に基づいて操作されることができる。制御信号は、性能指標に基づいて前記弁703A、前記弁703Bを開閉するために前記弁703A、前記弁703Bに提供されることができる。これは、前記蒸発器103を通過した作動流体の流れを増加または減少させるために使用されることができる。
【0127】
前記二相冷却システム101は、前記下降管107に設けられた第3弁703Cをさらに含む。前記第3弁703Cは、アキュムレータ205と、前記下降管107が2つ以上の分岐701に分岐する分岐点と、の間に配置される。前記第3弁703Cは、前記下降管107の分岐に流入する作動流体113の量を制御するために用いられることができる。この弁703Cは、計算された性能指標に基づいて操作されてもよい。
【0128】
図7に示される実施例において、前記二相冷却システム101は、リザーバ705をさらに含む。リザーバ705は、作動流体113を貯留するように構成されることができる任意の手段を含むことができる。前記リザーバ705は、液相117である前記作動流体113を貯留するように構成されてもよい。
【0129】
前記リザーバ705は、前記作動流体113が前記リザーバ705からアキュムレータ205に流れることができるように、下降管107内のアキュムレータ205に結合される。第4弁703Dは、前記リザーバ705から前記アキュムレータ205への流れを制御できるように、前記リザーバ705と前記アキュムレータ205との間に設けられる。
【0130】
前記第4弁703Dは、前記二相冷却システム101の決定された性能指標に基づいて制御されることもできる。前記性能指標は、前記二相冷却システム101内で追加の作動流体が必要であるか否かの指示を与えることができる。前記第4弁703Dは、前記熱サイフォンループ内で追加の作動流体113が必要とされない場合に閉じられることができ、前記熱サイフォンループ内で追加の作動流体113が必要とされる場合に開けられることができる。
【0131】
前記二相冷却システム101の異なる変形例は、異なる分岐701の異なる構成を有してもよいことを理解されるべきである。例えば、一部の実施例において、2つ以上の分岐701が提供されてもよい。また、前記分岐701は、異なる直径を有することができる。そのような実施例において、作動流体113の流れは、前記作動流体113が1つの分岐701を通って流れるように、または異なる分岐701の組み合わせを通って流れるように制御されてもよい。
【0132】
上記のように、前記弁703は、前記二相冷却システム101の決定された性能指標に基づいて操作されることができる。例えば、前記作動流体113に伝達された熱負荷が閾値を上回ると判断された場合、前記第1弁703Aおよび前記第3弁703Cは、作動流体113がより大きな直径を有する前記第1分岐701Aを通って流れるように、開けられることができる。これは、前記凝縮器105を浸水させる可能性のある下降管107内の高い静圧を回避するためである。
【0133】
前記二相冷却システム101内の熱負荷が低いと判断された場合、前記第2弁703Bおよび前記第3弁703Cは、前記作動流体113が、より細い直径を有する第2分岐701Bを流れるように、開けられることができる。細い直径を有する前記第2分岐701Bは、低熱負荷の場合に十分な静圧を提供する。
【0134】
図8Aおよび
図8Bは、本願の実施例を実施するために使用することができる他の方法の実施例を示す。
【0135】
図8Aは、冷却システムを設計するために使用することができる方法の一例を示す。ブロック801において、複数の入力値が取得される。これらの入力値は、シミュレートされた冷却システムの幾何学的な形状に関連するいくつかの初期設計の選択肢を含むことができる。これらの入力値は、選ばれた形状を有する冷却システムの期待される性能に関する実験から推定された1つ以上の値をさらに含んでもよい。
【0136】
ブロック803において、機械学習モデルが用いられる。前記機械学習は、
図3から
図6に示されるような方法、または他の任意の適切な方法を含むことができる。ブロック805において、前記機械学習は、出力としての、シミュレートされた冷却システムの性能指標を提供する。
図8Aに示される実施例において、前記性能指標は、前記冷却システムの熱性能の指示を与える。前記性能指標は、交換された熱、圧力降下、または任意の他の適切な性能指標を含んでもよい。
【0137】
ブロック807において、冷却システムの形状のために選ばれた初期入力値は、性能指標を改善するように調整される。前記入力値を調整するために、任意の適切な方法が使用されることができる。
図8Aに示される実施例において、機械学習の勾配降下法が用いられる。本願の他の実施例において、他のタイプの過程が使用されることができる。
【0138】
調整された入力値は、調整された入力値が新しい性能指標を推定するために用いられることができるように、機械学習モデルへの入力としてフィードバックされる。ブロック803から807の方法は、所望の範囲内の性能指標が得られるまで繰り返されることができる。所望の範囲内の性能指標は、冷却システムの最適な性能指標、または実質的に最適な性能指標であってもよい。
【0139】
この方法は、熱伝達のための高い効率を有する冷却システムを設計するための高速且つ高精度の方法を提供する。使用するパラメータを推定するために機械学習を使用することで、従来の方法よりも高精度の設計シミュレーションを提供することができる。
【0140】
図8Bは、使用中の冷却システムを制御するために使用することができる方法の一例を示す。
【0141】
ブロック811において、1つ以上のセンサ223からデータストリームが取得される。前記センサ223は、
図2に示されるように冷却システムの全体に、または任意の他の適切な配置で分布されることができる。前記センサ223は、温度、圧力、質量流量、または前記冷却システムの性能指標を決定するために用いられることができる任意の他のパラメータを感知するように構成されることができる。センサ223からのデータは、前記冷却システムの物理的なパラメータを含む入力値を提供することができる。
【0142】
ブロック813において、前記センサ223から得られたデータは、前記冷却システムの性能指標を計算するために用いられる。前記性能指標は、前記センサ223からのデータを用いて無次元比を推定し、その後、前記無次元比を用いて前記冷却システムの性能指標を計算することによって計算されてもよい。前記無次元比は、機械学習または任意の他の適切な過程を用いて推定されることができる。
【0143】
図8Bの実施例において、計算された性能指標は、前記冷却システムまたは前記冷却システムの一部についての電力使用効果(PUE)を含む。本願の他の実施例において、他の性能指標が用いられてもよい。
【0144】
前記性能指標が閾値範囲外である場合、ブロック815において、性能指標は、機械学習モデルの入力として提供される。ブロック811でセンサ223から得られたデータは、機械学習モデルへの入力として提供されることもできる。前記機械学習モデルは、性能指標が閾値範囲内にあるために、前記冷却システムのパラメータがどのように調整されるべきかを決定するように構成されることができる。用いられた機械学習モデルは、非線形回帰アルゴリズムまたは任意の他の適切なタイプのアルゴリズムであってもよい。
【0145】
制御されたシステムのパラメータは、前記冷却システムを通過した作動流体の流量、前記冷却システムの一部の直径、前記冷却システム内の作動流体の高さ、または他の任意の適切なパラメータであってもよい。これらのパラメータは、
図7に示されるように弁を開閉することによって、または能動的なシステム内のポンプを制御することによって、または他の任意の適切な手段によって調整されてもよい。
【0146】
ブロック817において、システムのパラメータは、機械学習アルゴリズムの出力に従って調整される。例えば、必要に応じて弁の開閉を制御するために、1つ以上の制御信号が1つ以上の弁に提供されることができる。同様に、能動的な冷却システムにおいて、前記制御信号は、ポンプまたは他の任意の適切な構成要素に提供されてもよい。
【0147】
その後、前記冷却システムの調整されたパラメータは、前記冷却システムの新しい性能指標を計算することができる。この方法は、前記冷却システムの調整されたパラメータと、前記冷却システムの新しい性能指標を決定するためにセンサから得られたさらなるデータを用いて、必要に応じて繰り返されることができる。
【0148】
図8Bの方法の一例は、冷却システムのための制御システムを提供する。機械学習の使用により、前記システムは高速且つ高精度で、高い応答性を有する。これにより、前記冷却システムを高効率の方式で動作させることができる。
【0149】
図9Aおよび
図9Bは、本願の実施例によって得られた結果を示す。
【0150】
図9Aは、文献から既存の最良の方法によって得られた、二相冷却システム101のヌセルト数および摩擦圧力勾配の推定値を示す。これらは、ヌセルト数について24.4%の平均絶対割合誤差(MAPE)を示し、摩擦圧力勾配について21.5%の平均絶対割合誤差(MAPE)を示す。
【0151】
対照的に、
図9Bは、本願の方法によって得られた、二相冷却システム101のヌセルト数および摩擦圧力勾配の推定値を示す。この実施例において、ヌセルト数および摩擦圧力勾配は、機械学習を用いて推定された。これらは、ヌセルト数について10.1%のMAPEを示し、摩擦圧力勾配について4.5%のMAPEを示す。従って、新しいヌセルト数および摩擦圧勾配の推定方法は、既存の方法よりも大幅に改善されることが明らかである。
【0152】
図10Aおよび
図10Bは、既存の方法で得られた結果を、本願の実施例によって得られた結果と比較した誤差ヒストグラムを示す。
【0153】
図10Aは、ヌセルト数の推定値に関する誤差ヒストグラムを示す。プロット1001は、本願の実施例によって得られた結果を表し、プロット1003は、文献からの最良の既存の方法によって得られた結果を表す。このヒストグラムは、既存の方法では、ヌセルト数の推定値の30%のみが10%未満の誤差を有するが、本願の方法では、76%が10%未満の誤差を有することを示す。
【0154】
図10Bは、圧力勾配の推定値に関する誤差ヒストグラムを示す。プロット1005は、本願の実施例によって得られた結果を表し、プロット1007は、文献からの既存の最良の方法によって得られた結果を表す。このヒストグラムは、既存の方法では、圧力勾配の推定値の32%のみが10%未満の誤差を有するが、本願の方法では、92%が10%未満の誤差を有することを示す。
【0155】
これらのヒストグラムは、本願が文献からの現在最良の既存の方法よりも高精度の無次元比の推定値を提供することが明らかに示される。この精度の向上は、計算された性能指標の精度、および冷却システムを制御または設計するために調整されたパラメータの精度を向上させる。
【0156】
図11は、本願の実施例を実施するために使用されることができる装置1101の一例を示す。
【0157】
前記装置1101は、コントローラ1103を含む。前記コントローラ1103の実装は、コントローラ回路であってもよい。コントローラ1103は、ハードウェアのみで実装されてもよく、ファームウェアのみを含むソフトウェアで特定の部分を有してもよく、またはハードウェアとソフトウェア(ファームウェアを有する)との組み合わせであってもよい。
【0158】
図11に示されるように、前記コントローラ1103は、ハードウェア機能を可能にする指示を用いて、例えば、プロセッサ1105によって実行されるように、コンピュータ可読記憶媒体(ディスク、メモリ等)に格納されてもよい、汎用または特殊用途のプロセッサ1105におけるコンピュータプログラム1109の実行可能命令を用いて実装されることができる。
【0159】
前記プロセッサ1105は、メモリ1107から読み出し、メモリ1107に書き込むように構成される。前記プロセッサ1105は、データおよび/またはコマンドが前記プロセッサ1105によって出力される出力インターフェースと、データおよび/またはコマンドが前記プロセッサ1105に入力される入力インターフェースと、をさらに含むことができる。
【0160】
前記メモリ1107は、前記プロセッサ1105にロードされたときに、前記装置1101の動作を制御するコンピュータプログラム命令(コンピュータプログラムコード1111)を含むコンピュータプログラム1109を記憶する。前記コンピュータプログラム1109のコンピュータプログラム命令は、装置1101が
図3~
図6、
図8Aおよび
図8Bに示される方法を実行することを可能にする論理およびルーチンを提供する。前記プロセッサ1105は、前記メモリ1107を読み取ることで、前記コンピュータプログラム1109をロードして実行することができる。
【0161】
従って、前記装置1101は、
少なくとも1つのプロセッサ1105と、コンピュータプログラムコード1111を有する少なくとも1つのメモリ1107と、を含み、
前記少なくとも1つのメモリ1107および前記コンピュータプログラムコード1111は、前記少なくとも1つのプロセッサ1105とともに、前記装置1101に少なくとも下記のことを実行させ、すなわち、冷却システムの少なくとも一部の物理的なパラメータを含む複数の入力値を受信すること301と、
得られた入力値を用いて、冷却システムの少なくとも一部内の熱伝達、冷却システムの少なくとも一部内の圧力損失のうち少なくとも1つの指標を提供する無次元比を推定すること303と、
前記無次元比を用いて、冷却システムの少なくとも一部の少なくとも1つの性能指標を決定すること305と、
冷却システムの少なくとも一部の1つ以上の物理的なパラメータを制御するために、少なくとも1つの決定された性能指標を使用すること307と、を実行させる。
【0162】
図11に示されるように、前記コンピュータプログラム1109は、任意の適切な配信メカニズム1113を介して前記装置1101に達することができる。前記配信メカニズム1113は、例えば、機械可読媒体、コンピュータ可読媒体、非一過性のコンピュータ可読記憶媒体、コンピュータプログラム製品、メモリ機器、コンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD-ROM)やデジタル多用途ディスク(DVD)等の記憶媒体、または固体メモリや前記コンピュータプログラム1109を含むまたは具体化する製造品であってもよい。配信メカニズムは、前記コンピュータプログラム1109を確実に配信するように構成された信号であってもよい。前記装置1101は、前記コンピュータプログラム1109をコンピュータデータ信号として伝達または伝送することができる。
【0163】
従って、前記コンピュータプログラム1109は、装置1101に少なくとも以下のことを実行させるためのプログラム命令、または少なくとも以下のことを実行させるためのプログラム命令を含み、すなわち、
冷却システムの少なくとも一部の物理的なパラメータを含む複数の入力値を受信すること301と、
得られた入力値を用いて、冷却システムの少なくとも一部内の熱伝達、冷却システムの少なくとも一部内の圧力損失のうち少なくとも1つの指標を提供する無次元比を推定すること303と、
前記無次元比を用いて、冷却システムの少なくとも一部の少なくとも1つの性能指標を決定すること305と、
冷却システムの少なくとも一部の1つ以上の物理的なパラメータを制御するために、少なくとも1つの決定された性能指標を使用すること307と、を実行させる。
【0164】
コンピュータプログラム命令は、コンピュータプログラム1109、非一過性のコンピュータ可読媒体、コンピュータプログラム製品、機械可読媒体に含まれることができる。一部の実施例(必ずしも全ての実施例ではない)において、前記コンピュータプログラム命令は、複数のコンピュータプログラムに分散されることができる。
【0165】
前記メモリ1107は単一の構成要素/回路として図示されるが、その一部または全部が統合/取り外し可能な1つ以上の別個の構成要素/回路として実装されることができ、および/または永久/半永久/動的/キャッシュ記憶域を提供してもよい。
【0166】
前記プロセッサ1105は単一の構成要素/回路として図示されるが、その一部または全部を統合/取り外し可能な1つ以上の別個の構成要素/回路として実装されることができる。前記プロセッサ1105は、シングルコアまたはマルチコアプロセッサであってもよい。
【0167】
本願で言及された「コンピュータ読み取り可能な記憶媒体」、「コンピュータプログラム製品」、「実現可能なコンピュータプログラム」等、または「コントローラ」、「コンピュータ」、「プロセッサ」等は、シングル/マルチプロセッサアーキテクチャ、フォンノイマン(Von Neumann)/並列アーキテクチャ等の異なるアーキテクチャを有するコンピュータのみならず、フィールドプログラム可能なゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、信号処理装置および他の処理回路等の特殊回路も含むことを理解されるべきである。言及された「コンピュータプログラム」、「命令」、「コード」等は、プログラマブルプロセッサのためのソフトウェア、またはファームウェア、例えば、プロセッサのための命令、または固定機能機器、ゲートアレイ、プログラマブルロジックデバイスの構成設定等のハードウェア機器のプログラマブルコンテンツ等を含むことを理解されるべきである。
【0168】
本願で使用された場合、「回路」という用語は、
(a)ハードウェアのみの回路実装(アナログ回路および/またはデジタル回路のみでの実装等)、
(b)ハードウェア回路とソフトウェアとの組み合わせ、例えば(該当する場合)、(i)アナログおよび/またはデジタルハードウェア回路とソフトウェア/ファームウェアとの組合せ、および(ii)携帯電話やサーバ等の機器に様々な機能を実行させるために協働し、ソフトウェア(デジタル信号プロセッサを含む)を有するハードウェアプロセッサ(複数可)、ソフトウェア、メモリ(複数可)のあらゆる部分、および
(c)マイクロプロセッサ(複数可)またはマイクロプロセッサ(複数可)の一部等の、動作のためにソフトウェア(ファームウェア等)を必要とし、動作に必要ないときはソフトウェアが存在しないハードウェア回路(複数可)および/またはプロセッサ(複数可)、のうち1つ以上または全てを表すことができる。
【0169】
回路のこの定義は、任意の請求項を含む本願におけるこの用語の全ての使用に適用される。他の実施例として、本願で使用された場合、前記回路という用語は、単にハードウェア回路またはプロセッサと、その(またはそれらの)付随するソフトウェアおよび/またはファームウェアの実装も対象とする。前記回路という用語は、例えば、また特定の請求項要素に適用可能であれば、モバイル機器用のベースバンド集積回路、またはサーバ、セルラーネットワーク機器、または他のコンピューティングやネットワーク機器内の同様の集積回路も対象とする。
【0170】
図3~
図6および
図8A~
図8Bに示されるブロックは、方法におけるステップおよび/またはコンピュータプログラム1109におけるコードの一部を表すことができる。ブロックに特定の順序を図示することは、必ずしもブロックに必要なまたは好ましい順序があることを意味するものではなく、ブロックの順序および配置を変化させることができる。なお、一部のブロックが省略されてもよい。
【0171】
上述のように、システム、装置、方法およびコンピュータプログラムは、統計的学習を含むことができる機械学習を使用することができる。機械学習は、コンピュータサイエンスの一分野であり、コンピュータに明示的にプログラムされることなく学習する能力を与えるものである。コンピュータは、あるクラスのタスクTに関する経験Eと、Pによって測定されるTのタスクでのパフォーマンスが経験Eによって向上する場合のパフォーマンス測定Pから学習する。機械学習には、全体的または部分的に教師ありの学習と全体的または部分的に教師なしの学習とがある。前記機械学習は、離散的な出力(例えば、分類、クラスタリング)および連続的な出力(例えば、回帰)を可能にすることができる。機械学習は、例えば、コスト関数最小化(cost function minimization)、人工ニューラルネットワーク(artificial neural networks)、サポートベクターマシン(support vector machines)、ベイズネットワーク(Bayesian networks)等の異なる方法を用いて実施されてもよい。コスト関数最小化は、例えば、線形回帰(linear regression)、多項式回帰(polynomial regression)、K-meansクラスタリング(K-means clustering)で使用されることができる。人工ニューラルネットワークは、例えば1つ以上の隠れ層を持ち、入力ベクトルと出力ベクトルとの間の複雑な関係をモデル化する。サポートベクターマシンは、教師あり学習で使用されることができる。ベイジアンネットワークは、多数の確率変数の条件付き独立性を表現する有向非循環グラフである。
【0172】
本願に言及された「含む」とは、排他的な意味ではなく包括的な意味を持つことである。つまり、XにYを含む全ての参照は、Xが1つまたは複数のYを含むことを意味する。排他的な意味を持つ「含む」を使用しようとする場合、「1つだけを含む…」を参照することにより明確にされ、または「からなる」を使用することで文脈上明示する。
【0173】
本明細書によれば、様々な実施例を参照することができる。実施例に関する特徴または機能の説明は、その実施例にそれらの特徴または機能があることを示す。本願に言及された「実施例」、「例えば」、「…てもよい」、または「…可能」とは、明示的に記載されているか否かにかかわらず、そのような特徴や機能は、例として記載されているか否かにかかわらず、少なくとも記載されている例に存在し、他の例の一部又は全ての例に存在し得るが、必ずしも存在する必要はないことを示す。従って、本願に言及された「実施例」、「例えば」、「…てもよい」、または「…可能」は、例のクラスにおける特定の例を示す。例のプロパティは、該例にのみ属するプロパティ、該クラスのプロパティ、または該クラスのサブクラス(該クラスの一部を含むが、全ての例ではない)のプロパティであってもよい。従って、ある実施例を参照して説明され、他の実施例を参照して説明されない特徴は、可能な限り、作業上の組み合わせの一部としてその他の実施例で使用されることができるが、必ずしもその他の実施例で使用される必要はないことを暗黙的に示される。
【0174】
上記の段落のように、本願の実施形態について詳細に説明したが、本願は上記の実施形態に限られない。本願の思想と原則下でなされた修正、均等な代替、改良等はいずれも本願の保護範囲に含まれることを理解すべきである。
【0175】
上記の説明で説明された特徴は、上記で明示的に説明された組み合わせ以外の組み合わせで使用されてもよい。
【0176】
特定の機能を参照して機能を説明したが、それらの機能は、説明されているか否かにかかわらず、他の機能によって実行可能であってもよい。
【0177】
特定の実施例を参照して特徴を説明したが、それらの特徴は、説明されているか否かにかかわらず、他の実施例にもあってもよい。
【0178】
本願に言及された「a」または「The」とは、排他的な意味ではなく包含的な意味を持つことである。つまり、本願に言及された「XがY/前記Yを含む」は、文脈が明確に反対のことを示さない限り、Xが1つのYのみを備えてもよいし、2つ以上のYを備えてもよいことを示す。排他的な意味を持つ「a」または「the」を使用しようとする場合、文脈上明示する必要がある。場合によっては、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を使用して包含的な意味を強調することができるが、これらの用語の欠落を排他的な意味を推定するものと見なすべきではない。
【0179】
請求項における特徴(または特徴の組み合わせ)は、その特徴または(特徴の組み合わせ)自体、および実質的に同じ技術効果を実現できる特徴(等価特徴)である。等価特徴は、例えば、実質的に同じ結果を実質的に同じ方法で実現する変形特徴を含む。等価特徴は、例えば、実質的に同じ結果を実現するために実質的に同じ方法で実質的に同じ機能を実行する特徴を含む。
【0180】
本願の明細書では、実施例の特徴を説明するために形容詞または形容詞的なフレーズを使用して、様々な実施例が参照されることができる。実施例に関するその特性の記載は、その特性が、ある実施例では明確に記載されるとおりにあるし、他の実施例では記載されるとおりに実質的にあることを示す。
【0181】
上記の明細書では、重要な特徴と考えられるものに注意を払うよう努力しているが、出願人は、強調されているかどうかにかかわらず、上記の図面および/または図面に示される任意の特許可能な特徴または特徴の組み合わせを保護するために、特許請求の範囲を通じて保護を求めることができることを理解すべきである。