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特許7656773エンドルミナルデバイスシステム、制御装置および制御装置の作動方法
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  • 特許-エンドルミナルデバイスシステム、制御装置および制御装置の作動方法 図17
  • 特許-エンドルミナルデバイスシステム、制御装置および制御装置の作動方法 図18
  • 特許-エンドルミナルデバイスシステム、制御装置および制御装置の作動方法 図19
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-26
(45)【発行日】2025-04-03
(54)【発明の名称】エンドルミナルデバイスシステム、制御装置および制御装置の作動方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/005 20060101AFI20250327BHJP
【FI】
A61B1/005 523
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2024502315
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 JP2022007493
(87)【国際公開番号】W WO2023162066
(87)【国際公開日】2023-08-31
【審査請求日】2024-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】304050923
【氏名又は名称】オリンパスメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】山中 紀明
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-163413(JP,A)
【文献】特開2009-131374(JP,A)
【文献】特開2009-261568(JP,A)
【文献】特開2015-024032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
A61B 13/00-18/18
A61F 2/01
A61N 7/00-7/02
B25J 1/00-21/02
G02B 23/24-23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺かつ可撓性のエンドルミナルデバイスと、
該エンドルミナルデバイス内に該エンドルミナルデバイスの長手方向に配置される可撓性の第1ワイヤと、
該第1ワイヤの張力を検出する第1センサと、
前記第1ワイヤを牽引可能な駆動装置と、
少なくとも1つのプロセッサと、
前記第1ワイヤの変位を検出する第2センサとを備え、
前記少なくとも1つのプロセッサが、
牽引されている前記第1ワイヤを弛緩させる弛緩動作を前記駆動装置に実行させ、
前記第1センサによって検出された前記弛緩動作中の前記第1ワイヤの張力を取得し、
前記第2センサによって検出された前記弛緩動作中の前記第1ワイヤの変位を取得し、
前記弛緩動作中の前記変位に対する前記張力の変化率に基づいて前記エンドルミナルデバイスの制御パラメータを調整する、エンドルミナルデバイスシステム。
【請求項2】
前記エンドルミナルデバイスが、長尺かつ可撓性の軟性部と、該軟性部の先端に接続された可動部とを備え、
前記第1ワイヤが、前記可動部に連結され、
前記第1ワイヤの牽引および弛緩によって前記可動部が動く、請求項1に記載のエンドルミナルデバイスシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記可動部の動きを伴わない前記弛緩動作を前記駆動装置に実行させる、請求項2に記載のエンドルミナルデバイスシステム。
【請求項4】
複数の前記第1ワイヤを備え、
前記可動部が湾曲部であり、前記複数の前記第1ワイヤが前記湾曲部に連結され、
前記少なくとも1つのプロセッサが、
前記弛緩動作の実行の前に、前記複数の第1ワイヤのうち前記湾曲部の湾曲のために牽引されている駆動中の第1ワイヤを認識し、
前記駆動中の前記第1ワイヤと、該駆動中の第1ワイヤと対抗する前記第1ワイヤとを同時に弛緩させることによって前記可動部の動きを伴わない前記弛緩動作を前記駆動装置に実行させる、請求項3に記載のエンドルミナルデバイスシステム。
【請求項5】
複数の前記第1ワイヤを備え、
前記可動部が湾曲部であり、前記複数の前記第1ワイヤが前記湾曲部に連結され、
前記少なくとも1つのプロセッサが、
前記弛緩動作の実行の前に、前記複数の第1ワイヤのうち前記湾曲部の湾曲のために牽引されている駆動中の第1ワイヤを認識し、
前記駆動中の第1ワイヤ以外のいずれかの前記第1ワイヤを弛緩させることによって前記可動部の動きを伴わない前記弛緩動作を前記駆動装置に実行させる、請求項3に記載のエンドルミナルデバイスシステム。
【請求項6】
前記エンドルミナルデバイスが、長尺かつ可撓性の軟性部と、該軟性部の先端に接続された可動部と、前記軟性部内に該軟性部の長手方向に配置された第2ワイヤとを備え、
前記第1ワイヤが、前記可動部に連結されておらず、
前記第2ワイヤが、前記可動部に連結されている、請求項1に記載のエンドルミナルデバイスシステム。
【請求項7】
前記第1ワイヤが挿入された第1シースと、
前記第2ワイヤが挿入された第2シースと、をさらに備え、
前記第1ワイヤと前記第1シースとの間の摩擦係数が、前記第2ワイヤと前記第2シースと間の摩擦係数よりも大きい、請求項6に記載のエンドルミナルデバイスシステム。
【請求項8】
前記第1ワイヤのばね定数が、前記第2ワイヤのばね定数よりも小さい、請求項6に記載のエンドルミナルデバイスシステム。
【請求項9】
前記制御パラメータが、前記第1ワイヤの先端まで張力が伝達されるための前記第1ワイヤの牽引量および弛緩量である、請求項1に記載のエンドルミナルデバイスシステム。
【請求項10】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記変化率に基づいて前記エンドルミナルデバイスの形状を推定する、請求項1に記載のエンドルミナルデバイスシステム。
【請求項11】
エンドルミナルデバイスシステムの制御装置であって、前記エンドルミナルデバイスシステムが、長尺かつ可撓性のエンドルミナルデバイスと、該エンドルミナルデバイス内に該エンドルミナルデバイスの長手方向に配置される可撓性の第1ワイヤと、該第1ワイヤの張力を検出する第1センサと、前記第1ワイヤを牽引可能な駆動装置と、前記第1ワイヤの変位を検出する第2センサとを備え、
少なくとも1つのプロセッサを備え、
該少なくとも1つのプロセッサが、
牽引されている前記第1ワイヤを弛緩させる弛緩動作を前記駆動装置に実行させ、
前記第1センサによって検出された前記弛緩動作中の前記第1ワイヤの張力を取得し、
前記第2センサによって検出された前記弛緩動作中の前記第1ワイヤの変位を取得し、
前記弛緩動作中の前記変位に対する前記張力の変化率に基づいて前記エンドルミナルデバイスの制御パラメータを調整する、制御装置。
【請求項12】
前記エンドルミナルデバイスが、可動部を備え、
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記可動部の動きを伴わない前記弛緩動作を前記駆動装置に実行させる、請求項11に記載の制御装置。
【請求項13】
前記エンドルミナルデバイスシステムが複数の前記第1ワイヤを備え、前記可動部が湾曲部であり、前記複数の第1ワイヤが前記湾曲部に連結され、
前記少なくとも1つのプロセッサが、
前記弛緩動作の実行の前に、前記複数の第1ワイヤのうち前記湾曲部の湾曲のために牽引されている駆動中の第1ワイヤを認識し、
前記弛緩動作において、前記駆動中の前記第1ワイヤと、該駆動中の第1ワイヤと対抗する前記第1ワイヤとを同時に弛緩させる、請求項12に記載の制御装置。
【請求項14】
エンドルミナルデバイスを制御する制御装置の作動方法であって、前記エンドルミナルデバイス内に該エンドルミナルデバイスの長手方向に可撓性の第1ワイヤが配置され、
前記制御装置は、牽引されている前記第1ワイヤを弛緩させる弛緩動作を実行し、
前記制御装置は、前記弛緩動作中の前記第1ワイヤの張力を取得し、
前記制御装置は、前記弛緩動作中の前記第1ワイヤの変位を取得し、
前記制御装置は、前記弛緩動作中の前記変位に対する前記張力の変化率に基づいて前記エンドルミナルデバイスの制御パラメータを調整する、制御装置の作動方法。
【請求項15】
前記エンドルミナルデバイスが、可動部を備え、
前記制御装置は、前記可動部の動きを伴わない前記弛緩動作を実行する、請求項1に記載の制御装置の作動方法。
【請求項16】
前記エンドルミナルデバイスが複数の前記第1ワイヤを備え、前記可動部が湾曲部であり、前記複数の第1ワイヤが前記湾曲部に連結され、
前記制御装置は、前記弛緩動作の実行の前に、前記複数の第1ワイヤのうち前記湾曲部の湾曲のために牽引されている駆動中の第1ワイヤを認識し、
前記制御装置は、前記駆動中の前記第1ワイヤと、該駆動中の第1ワイヤと対抗する前記第1ワイヤとを同時に弛緩させることによって前記可動部の動きを伴わない前記弛緩動作を実行する、請求項1に記載の制御装置の作動方法。
【請求項17】
前記エンドルミナルデバイスが、複数の前記第1ワイヤを備え、前記可動部が湾曲部であり、前記複数の前記第1ワイヤが前記湾曲部に連結され、
前記制御装置は、前記弛緩動作の実行の前に、前記複数の第1ワイヤのうち前記湾曲部の湾曲のために牽引されている駆動中の第1ワイヤを認識し、
前記制御装置は、前記駆動中の第1ワイヤ以外のいずれかの前記第1ワイヤを弛緩させることによって前記可動部の動きを伴わない前記弛緩動作を実行する、請求項1に記載の制御装置の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンドルミナルデバイスシステム、制御装置および制御装置の作動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、口または肛門等から管腔内に挿入され管腔内において観察または処置等を行う、マニピュレータまたは内視鏡のようなエンドルミナルデバイスが知られている(例えば、特許文献1から3参照。)。エンドルミナルデバイスは、長尺の軟性部と、軟性部の先端に接続された可動部と、可動部を駆動するためのワイヤのような動力伝達部材とを有する。このようなエンドルミナルデバイスにおいて、軟性部の形状に応じて動力伝達部材の動力の伝達特性が変化し、それにより可動部の動作特性が変化するという不都合がある。特許文献1から3では、この不都合を解決するための手段が提案されている。
【0003】
具体的には、特許文献1,2において、センサを使用して軟性部の形状が検出され、検出された形状に基づいて可動部が制御される。特許文献1では、エンドルミナルデバイスの外部に配置される磁気センサ(UPD)が使用され、特許文献2では、エンドルミナルデバイスの内部に挿入される形状センサが使用される。
【0004】
特許文献3において、軟性部の様々な形状パターンにおいて可動部を複数の動作パターンで事前に動作させ、そのときの動力伝達部材の張力情報と関連付けて制御パラメータが設定される。張力情報は、張力の時間積分値、変化率または予め決められた閾値である。そして、術中のキャリブレーション動作において張力情報が取得され、取得された張力情報に基づく制御パラメータが取得される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-154814号公報
【文献】特許第6701232号公報
【文献】特許第6278747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の場合、UPDを含む装置の追加が必要であり、システム全体が大掛かりなものになる。また、UPDは、センシングエリア内においてのみ軟性部の形状を検出することができるので、適用することができる軟性部の長さに制限がある。例えば、センシングエリアからはみ出す長い軟性部の場合、軟性部全体の形状を検出することができず、その結果、可動部を精度良く制御することが難しい。
特許文献2の場合、形状センサを軟性部内に挿入および抜去する操作が必要となり、形状センサのストロークの分だけシステムが大きくなる。また、形状のデータの取得に時間を要する。
【0007】
特許文献3の場合、時間積分値、変化率または予め決められた閾値のような張力情報および制御パラメータに対応する軟性部の形状は、一意ではない。したがって、術中の軟性部の形状が事前に設定された形状パターンとは異なる場合、張力情報に基づいて適切な制御パラメータを得られない可能性がある。特に、体外に配置される軟性部の体外部分が長い場合等、軟性部の形状の自由度が高い場合、上記のような張力情報に基づいて適切な制御パラメータを決定することが難しい。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、軟性部の形状に応じた適切な制御パラメータを簡易な構成で設定することができるエンドルミナルデバイスシステム、制御装置および制御装置の作動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、長尺かつ可撓性のエンドルミナルデバイスと、該エンドルミナルデバイス内に該エンドルミナルデバイスの長手方向に配置される可撓性の第1ワイヤと、該第1ワイヤの張力を検出する第1センサと、前記第1ワイヤを牽引可能な駆動装置と、少なくとも1つのプロセッサと、前記第1ワイヤの変位を検出する第2センサとを備え、前記少なくとも1つのプロセッサが、牽引されている前記第1ワイヤを弛緩させる弛緩動作を前記駆動装置に実行させ、前記第1センサによって検出された前記弛緩動作中の前記第1ワイヤの張力を取得し、前記第2センサによって検出された前記弛緩動作中の前記第1ワイヤの変位を取得し、前記弛緩動作中の前記変位に対する前記張力の変化率に基づいて前記エンドルミナルデバイスの制御パラメータを調整する、エンドルミナルデバイスシステムである。
【0010】
本発明の他の態様は、エンドルミナルデバイスシステムの制御装置であって、前記エンドルミナルデバイスシステムが、長尺かつ可撓性のエンドルミナルデバイスと、該エンドルミナルデバイス内に該エンドルミナルデバイスの長手方向に配置される可撓性の第1ワイヤと、該第1ワイヤの張力を検出する第1センサと、前記第1ワイヤを牽引可能な駆動装置と、前記第1ワイヤの変位を検出する第2センサとを備え、少なくとも1つのプロセッサを備え、該少なくとも1つのプロセッサが、牽引されている前記第1ワイヤを弛緩させる弛緩動作を前記駆動装置に実行させ、前記第1センサによって検出された前記弛緩動作中の前記第1ワイヤの張力を取得し、前記第2センサによって検出された前記弛緩動作中の前記第1ワイヤの変位を取得し、前記弛緩動作中の前記変位に対する前記張力の変化率に基づいて前記エンドルミナルデバイスの制御パラメータを調整する、制御装置である。
【0011】
本発明の他の態様は、エンドルミナルデバイスを制御する制御装置の作動方法であって、前記エンドルミナルデバイス内に該エンドルミナルデバイスの長手方向に可撓性の第1ワイヤが配置され、前記制御装置は、牽引されている前記第1ワイヤを弛緩させる弛緩動作を実行し、前記制御装置は、前記弛緩動作中の前記第1ワイヤの張力を取得し、前記制御装置は、前記弛緩動作の前記第1ワイヤの変位を取得し、前記制御装置は、前記弛緩動作中の前記変位に対する前記張力の変化率に基づいて前記エンドルミナルデバイスの制御パラメータを調整する、制御装置の作動方法である。
また、本発明の参考例は、エンドルミナルデバイスの制御方法であって、該エンドルミナルデバイス内に該エンドルミナルデバイスの長手方向に第1ワイヤが配置され、牽引されている前記第1ワイヤを弛緩させる弛緩動作を実行し、前記弛緩動作中の前記第1ワイヤの張力を取得し、前記弛緩動作中の前記張力に基づいて前記エンドルミナルデバイスの制御パラメータを調整する、制御方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、軟性部の形状に応じた適切な制御パラメータを簡易な構成で設定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係るエンドルミナルデバイスシステムの全体構成を示す外観図である。
図2】第1実施形態に係るエンドルミナルデバイスシステムの概略構成図である。
図3】第1実施形態に係る制御方法のフローチャートである。
図4】先端部(上段)、中央部(中段)および基端部(下段)にループが形成されたワイヤの形状を示す図である。
図5図4の各形状のワイヤの基端および先端における、弛緩動作中の張力の時間変化を示すグラフである。
図6A】ワイヤの基端から先端までの張力の分布の例を示す図である。
図6B】ワイヤの基端から先端までの張力の分布の他の例を示す図である。
図7】ワイヤの形状の一例を示す図である。
図8】弛緩動作におけるワイヤの変位と張力との関係を示すグラフである。
図9図3の制御方法の変形例のフローチャートである。
図10図2のエンドルミナルデバイスシステムの他の変形例の概略構成図である。
図11図3の制御方法の他の変形例のフローチャートである。
図12】軟性部の形状を推定する方法を説明する図である。
図13】軟性部の形状を推定する手順を示すフローチャートである。
図14】第2実施形態に係るエンドルミナルデバイスシステムの概略構成図である。
図15】第2実施形態に係るエンドルミナルデバイスシステムの他の概略構成図である。
図16図14のエンドルミナルデバイスシステムの他の変形例の概略構成図である。
図17】計測ワイヤのばね特性の一例を示すグラフである。
図18】第3実施形態に係るエンドルミナルデバイスシステムの概略構成図である。
図19】他の実施形態に係るエンドルミナルデバイスシステムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係るエンドルミナルデバイスシステム、制御装置および制御方法について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るエンドルミナルデバイスシステム100の一構成例の外観図を示している。エンドルミナルデバイスシステム100において、操作装置6に入力された操作に基づいて制御装置5が駆動装置2を制御することによって、エンドルミナルデバイス1の可動部11が電動駆動される。
【0015】
エンドルミナルデバイス1は、口または肛門等の開口部から体腔内に挿入され体腔内において観察または処置等を行う長尺かつ可撓性のデバイスであり、例えば、内視鏡またはマニピュレータである。図1には、一例として、エンドルミナルデバイス1が内視鏡であるシステム100が示されている。符号7は、内視鏡1によって取得された内視鏡映像を処理する映像プロセッサを示し、符号8は、内視鏡映像を表示する表示装置を示している。
【0016】
モータ等を内蔵する駆動装置2は、一例として手術台9の脇に載置される。したがって、電動駆動式のエンドルミナルデバイス1の軟性部13は、体内に挿入される長尺の体内部分13aに加えて、体外に配置され体内部分13aの基端と駆動装置2とを接続する長尺の体外部分13bを有する。このような可撓性を有する軟性部13は、様々な湾曲形状を取り得る。特に、体外部分13bの形状は駆動装置2と手術台9の配置によって決まるものであるから、形状の変化の幅が大きい。軟性部13の形状に応じてエンドルミナルデバイス1内のワイヤ12の動力伝達特性が変化し、それにより操作装置6に入力された操作に対する可動部11の応答性も変化し得る。後述するように、エンドルミナルデバイスシステム100は、軟性部13の形状に応じて駆動装置2を制御することによって、可動部11の応答性が一定となるようにエンドルミナルデバイス1を制御する機能を有する。
【0017】
図2は、エンドルミナルデバイスの概略構成を示している。図2に示されるように、エンドルミナルデバイスシステム100は、可動部11を有するエンドルミナルデバイス1と、エンドルミナルデバイス1に設けられた1以上の可撓性のワイヤ(第1ワイヤ)12と、ワイヤ12を牽引および弛緩させることによって可動部11を駆動する駆動装置2と、各ワイヤ12の張力を検出する1以上の張力センサ(第1センサ)3と、各ワイヤ12の変位を検出する1以上の変位センサ(第2センサ)4と、駆動装置2を制御する制御装置5と、を備える。
【0018】
エンドルミナルデバイス1は、長尺かつ可撓性の軟性部13を有する。軟性部13の基端は駆動装置2に接続されている。
可動部11は、軟性部13の先端に接続されている。本実施形態において、可動部11は、軟性部13の長手方向に交差する方向に湾曲可能である湾曲部である。
【0019】
ワイヤ12は、駆動装置2から与えられた動力を基端から先端へ伝達し可動部11を動作させる機能を有し、かつ、軟性部13の形状情報を取得する機能を有する。以降、駆動装置2から与えられた動力を基端から先端へ伝達し可動部11を動作させる機能を有するワイヤを駆動ワイヤ、軟性部13の形状情報を取得する機能を有するワイヤを計測ワイヤと呼ぶ。例えば、湾曲部11を上、下、左、右にそれぞれ湾曲させるための4本のワイヤ12が設けられている。本実施形態においては、これらの4本のワイヤ12がそれぞれ駆動ワイヤとしての機能と、計測ワイヤとしての機能の両方を備えている。
【0020】
ワイヤ12は、軟性部13内に軟性部13の長手方向に沿って配置され、ワイヤ12の先端は湾曲部11の先端に固定され、ワイヤ12の基端は駆動装置2に接続されている。このように軟性部13の全長にわたって延びる可撓性のワイヤ12は、軟性部13の湾曲に伴って、軟性部13と同一の形状に湾曲する。
【0021】
駆動装置2は、ワイヤ12の基端部をワイヤ12の長手方向に後退および前進させることによってワイヤ12を駆動する1以上のアクチュエータ2aを有する。アクチュエータ2aは、ワイヤ12の基端部を後退させることによってワイヤ12を牽引し、ワイヤ12の基端部を前進させることによってワイヤ12を弛緩させる。駆動装置2は、制御装置5からの制御信号(後述)に従ってアクチュエータ2aを作動させることによって湾曲部11を湾曲させる。
【0022】
張力センサ3は、ワイヤ12の基端部に設けられ、ワイヤ12の基端部の張力を検出する。
変位センサ4は、ワイヤ12の長手方向におけるワイヤ12の基端部の変位を検出する。例えば、変位センサ4は、アクチュエータ2aに設けられ、ワイヤ12の変位としてアクチュエータ2aのモータの回転角度を検出する角度センサである。ワイヤ12の張力がゼロである状態でのワイヤ12の基端部の位置が原点であり、変位センサ4によって検出されるワイヤ12の基端部の変位は、原点に対するワイヤ12の基端部の位置である。したがって、変位は、ワイヤ12の牽引によって増加し、ワイヤ12の弛緩によって減少する。
【0023】
制御装置5は、中央演算処理装置のような少なくとも1つのプロセッサ5aと、記憶部5bとを備える。
プロセッサ5aは、入力された操作に基づく操作信号を操作装置6から受信し、操作信号に基づいて制御信号を生成し、制御信号を駆動装置2に送信する。これにより、プロセッサ5aは、駆動装置2を制御し、それによりエンドルミナルデバイス1の湾曲部11を制御する。
【0024】
記憶部5bは、RAMのようなメモリと、ROMまたはHDDのような不揮発性の記録媒体とを含む。記録媒体は、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体である。記録媒体には、軟性部13の形状に応じてエンドルミナルデバイス1を制御する制御方法をプロセッサ5aに実行させるための制御プログラムが記憶されている。
【0025】
次に、制御装置5が実行するエンドルミナルデバイス1の制御方法について図3を参照して説明する。
図3に示されるように、制御方法は、トリガを受け付けるステップS1と、牽引されているワイヤ12を弛緩させる弛緩動作を実行するステップS2と、センサ3,4によって検出された弛緩動作中のワイヤ12の張力および変位を取得するステップS3と、弛緩動作中の張力および変位に基づいてエンドルミナルデバイス1の制御パラメータを調整するステップS4と、ワイヤ12を初期状態に復元するステップS5と、を含む。
【0026】
トリガは、例えば入力装置(図示略)を使用して、操作者によって制御装置5に入力される。操作者は、制御パラメータの調整を実行したい任意のタイミングでトリガを制御装置5に入力することができる。例えば、軟性部13を体腔内に挿入した後、操作者は、湾曲部11の精緻な動作が要求される処置等の作業の直前に、トリガを入力する。
プロセッサ5aは、入力されたトリガを受け付けたことに応答して(ステップS1のYES)、ステップS2からS5を実行する。
【0027】
ステップS2の前、ワイヤ12および湾曲部11は、所定の初期状態に配置される。初期状態は、例えば、全てのワイヤ12に所定の初期張力がかかり湾曲部11が直線状に配置される状態である。
ステップS2において、プロセッサ5aは、ワイヤ12を牽引する牽引動作を駆動装置2に実行させ、続いて、牽引されているワイヤ12を弛緩させる弛緩動作を駆動装置2に実行させる。牽引および弛緩されるワイヤ12は、任意の1本のワイヤ12である。
【0028】
牽引動作において、プロセッサ5aは、例えば駆動装置2にワイヤ12を所定量だけ牽引させ、ワイヤ12を所定の目標張力がかかった状態にする。所定の目標張力は、体腔の形状に沿う軟性部13の湾曲を妨げない範囲内であり、したがって、牽引動作後のワイヤ12は、体腔の形状に沿う軟性部13の湾曲を許容する程度に弛緩した状態である。
【0029】
弛緩動作中、ワイヤ12の基端部の変位が時間と共に減少し、ワイヤ12の基端部の張力は時間と共に低下する(例えば、図5参照。)。弛緩動作中、変化するワイヤ12の張力および変位が、例えば所定のサンプリング周期で、センサ3,4によって連続的に検出される。
【0030】
ここで、ワイヤ12の基端部の変位が減少するにつれて、張力の低下する領域がワイヤ12の基端部から先端側へ広がる。すなわち、弛緩動作中、張力変化(張力の低下)は、ワイヤ12の基端部から先端部へ順に伝達される。プロセッサ5aは、少なくとも張力変化がワイヤ12の先端部に伝達されるまで、駆動装置2に弛緩動作を実行させる。
【0031】
例えば、プロセッサ5aは、弛緩動作中に現在の張力または変位をセンサ3,4から逐次取得し、現在の張力または変位に基づいてワイヤ12の全体の弛緩が完了したと判断し、弛緩が完了したときに弛緩動作を終了させてもよい。現在の張力が所定値以下となったとき、または、現在の変位が所定値以下となったときに、弛緩が完了したと判断される。
張力変化がワイヤ12の先端に到達したとき、張力変化率が変化する変化点が現れることがある。プロセッサ5aは、張力の変化点が検出されたときに弛緩動作を終了させてもよい。
【0032】
ステップS3において、プロセッサ5aは、センサ3,4によって検出された弛緩動作中の張力および変位を時系列で記憶部5bに記憶させる。これにより、プロセッサ5aは、弛緩動作中の張力および変位の各々のデータを取得する。
図5は、図4に示されるようにループが先端部、中央部および基端部にそれぞれ形成されている軟性部13の3つの形状のパターン1,2,3において、弛緩動作中のワイヤ12の先端および基端の張力の時間変化を示している。図5に示されるように、張力変化がワイヤ12の先端に到達するまでの期間I,II,IIIにおける張力の変化は、軟性部13の形状に応じて異なる。すなわち、弛緩動作中の張力の変化は、軟性部13の形状情報を含む。
【0033】
次に、ステップS4において、プロセッサ5aは、ステップS3において取得された張力および変位のデータを使用して弛緩動作中の変位に対する張力の変化率を算出し、変化率に基づいて制御パラメータを調整する。張力の変化率とは、弛緩動作開始時の最大張力からの各変位での張力の変化率である。
【0034】
制御パラメータは、ワイヤ12の先端まで張力変化が伝達されるためのワイヤ12の牽引量および弛緩量である。より具体的には、制御パラメータは、図5に示される期間I,II,IIIにおけるワイヤ12の基端部の変位量である。言い換えると、制御パラメータは、図6Aに示されるように、ワイヤ12の先端まで張力変化が伝達されるために必要な基端部の張力変化ΔTに相当するワイヤ12の基端部の変位量である。
【0035】
図7および図8は、ワイヤ12の形状と、弛緩動作中のワイヤ12の変位および張力の関係とを説明している。ワイヤ12の基端部の張力変化は、ワイヤ12の基端部から先端部に向かって順番に伝達されることから、ワイヤ12の基端部の各変位Δxi(i=1,2,…)における張力の変化は、ワイヤ12の対応する部分Piの形状情報を含む。
【0036】
例えば、ワイヤ12の基端部の変位がΔx1だけ減少したとき、張力変化はワイヤ12の部分P1まで伝達される。したがって、変位Δx1における張力変化は、部分P1の形状情報を含む。ワイヤ12の基端部の変位がさらにΔx2だけ減少したとき、張力変化はワイヤ12の部分P2まで伝達される。したがって、変位Δx2における張力変化は、部分P1および部分P2の形状情報を含む。
したがって、ワイヤ12の基端側から順に、変位xiに対する張力の変化率Ti/Tpから部分Pi形状を推定することができ、このような変化率Ti/Tpに基づいて軟性部13の全体の形状に応じた制御パラメータを決定することができる。
【0037】
なお、弛緩動作中の張力の変化から軟性部13の形状を正確に推定するためには、図6Aに示されるように、軟性部13に沿って配置されたワイヤ12の張力が基端から先端まで単調減少または単調増加することが好ましい。したがって、プロセッサ5aは、弛緩動作中、張力変化が先端に伝達されるまで、ワイヤ12の基端部を前進させ続けることによって基端部の張力を漸次低下させ続ける。
例えば張力変化が先端に到達する前にワイヤ12の弛緩を終了して再度牽引した場合、図6Bに示されるように、ワイヤ12の張力が基端から先端まで単調減少しなくなる。この場合、最大変位が更新される際の変位と張力の関係を抽出する。
【0038】
弛緩動作の終了後、ステップS5において、プロセッサ5aは、ワイヤ12の張力を初期張力に戻すイニシャライズ動作を駆動装置2に実行させる。これにより、ワイヤ12および湾曲部11は、初期状態に復帰する。
ステップS5の後、プロセッサ5aは、操作装置6からの操作信号とステップS4において調整された制御パラメータとに基づいて制御信号を生成し、制御信号を駆動装置2に送信する。これにより、軟性部13の形状に関わらず、湾曲部11を良好な応答性で制御することができる。
【0039】
このように、本実施形態によれば、弛緩動作中のワイヤ12の張力の変化は、軟性部13の湾曲形状に応じて異なり、ワイヤ12の張力の変化に対応する軟性部13の形状は、一意である。したがって、ワイヤ12の張力の変化に基づいて、軟性部13の形状に応じた適切な制御パラメータを設定することができる。
また、ワイヤ12およびセンサ3,4を使用した簡易な構成によって、必要なデータの取得と制御パラメータの設定とを行うことができる。
【0040】
また、ワイヤ12が駆動ワイヤとしての機能と、計測ワイヤとしての機能とを有する。このことによって、形状情報の取得のための別途の計測ワイヤを搭載する必要や、計測のための新たな部品を軟性部13に追加する必要がない。したがって、軟性部13を細径化することができる。
また、張力および変位のデータの取得は、軟性部13が体腔内に挿入され湾曲した湾曲部11が直線状に戻る動作において行われてもよい。この場合、データを取得するための操作は不要であり、制御パラメータの調整に必要なデータを、操作者の手間を増やすことなく取得することができる。
【0041】
また、湾曲部11の精緻な動作が要求される作業の直前にデータの取得および制御パラメータの調整を行うことによって、軟性部13のその時点での形状に応じた最適な制御パラメータを確実に設定することができ、操作装置6に入力された操作に従って湾曲部11を正確に動かすことができる。
【0042】
本実施形態において、プロセッサ5aは、牽引および弛緩させるワイヤ12を選択することによって、湾曲部11の動きを伴わない牽引動作および弛緩動作を駆動装置2に実行させてもよい。
具体的には、図9に示されるように、プロセッサ5aは、ステップS2の牽引動作および弛緩動作の実行の前に、複数のワイヤ12のうち、湾曲部11の湾曲のために牽引されている駆動中のワイヤ12を操作装置6からの操作信号に基づいて認識する(ステップS6)。駆動中のワイヤ12の認識は、例えば、制御装置5から駆動装置2に送信される制御信号または張力センサ3によって検出された張力に基づいて行ってもよい。
【0043】
図9の制御方法の第1の例のステップS2において、プロセッサ5aは、駆動中のワイヤ12と、該駆動中のワイヤ12と対抗するもう1本のワイヤ12とを選択する。対抗するワイヤ12とは、駆動中のワイヤ12による湾曲部11の湾曲方向とは逆方向に湾曲部11を湾曲させるためのワイヤ12である。例えば、駆動中のワイヤ12が上向きの湾曲用ワイヤである場合、対抗するワイヤ12は下向きの湾曲用ワイヤである。
【0044】
次に、プロセッサ5aは、駆動装置2を制御し、牽引動作および弛緩動作において、選択された2本のワイヤ12を同時に牽引および弛緩させる。このときの弛緩動作は、駆動中のワイヤ12の張力が牽引動作前の張力に戻るまで実行される。プロセッサ5aは、弛緩動作中の2本のワイヤ12のうち少なくとも一方の張力および変位のデータを取得し、取得されたデータに基づいて制御パラメータを調整する。
この構成によれば、牽引動作中および弛緩動作中、湾曲部11に加わるモーメントが釣り合うので、湾曲部11の湾曲方向および湾曲角度が一定に維持される。したがって、湾曲部11の動作を生じさせることなく、張力および変位のデータを取得することができる。
【0045】
図9の制御方法の第2の例において、プロセッサ5aは、駆動中のワイヤ12以外のいずれか1本のワイヤ12を選択する、すなわち、駆動中でないワイヤ12の中から1本を選択する。例えば、駆動中のワイヤ12とこれに対抗するワイヤ12とを除いた他のワイヤ12の中から1本が選択される。具体的には、駆動中のワイヤ12が上向きまたは下向きの湾曲用である場合、左向きまたは右向きの湾曲用のワイヤ12が選択される。駆動中のワイヤ12が左向きまたは右向きの湾曲用である場合、上向きまたは下向きの湾曲用のワイヤ12が選択される。
次に、プロセッサ5aは、駆動装置2を制御し、牽引動作および弛緩動作において、選択された1本のワイヤ12を牽引および弛緩させる。
この構成によっても、牽引動作中および弛緩動作中に湾曲部11の動作を生じさせることなく、張力および変位のデータを取得することができる。
【0046】
本実施形態において、可動部11が湾曲部であることとしたが、可動部11はこれに限定されるものではなく、他の形態であってもよい。例えば、可動部11は、関節であってもよく、把持等の機能を有するエンドエフェクタであってもよい。
図10は、可動部11としてエンドエフェクタを備えるエンドルミナルデバイス1を示している。この例において、エンドエフェクタ11は、相互に開閉する一対のジョーを有し、ワイヤ12の駆動によって一対のジョーが開閉する。
【0047】
本実施形態において、プロセッサ5aが、操作者によって入力されるトリガに応答して制御方法を実行することとしたが、これに代えて、自動的に制御方法を実行してもよい。
例えば、プロセッサ5aは、所定の時間間隔でステップS2からS5を繰り返し実行してもよい。この場合、操作者によるトリガの入力を必要とすることなく、データの取得および制御パラメータの調整が繰り返し自動的に実行される。
例えば、軟性部13を体腔内に挿入する過程において、軟性部13の形状は変化し続ける。このような場面において、軟性部13の形状の変化に応じて制御パラメータが逐次更新されることによって、可動部11の良好な応答性を維持することができる。
【0048】
本実施形態において、図11に示されるように、プロセッサ5aは、張力および変位のデータに基づいて軟性部13の形状を推定してもよい(ステップS7)。この場合、ステップS4において、プロセッサ5aは、上述したように張力の変化率に基づいて制御パラメータを調整してもよく、または、軟性部13の形状に基づいて制御パラメータを調整してもよい。
図12は、ワイヤ12の張力および変位から軟性部13の形状を推定する方法を説明するものであり、ワイヤ12の基端から先端までの張力の分布を示している。この方法によって、軟性部13の主軸に沿う曲げ半径、湾曲角度および長さといった形状情報を算出することができる。
【0049】
図12に示されるように、ワイヤ12は、基端から先端まで順にn個の要素i(i=1,2,…,n)から構成されると考える。要素1は、ワイヤ12の基端を含み、要素nは、ワイヤ12の先端を含む。
t=t0の初期状態において、ワイヤ12の張力は、ワイヤ12に作用する摩擦の影響によって、基端から先端に向かって指数関数的に減少する。前述したように、ワイヤ12の基端部の変位(前進)によってワイヤ12が弛緩する過程において、張力変化(張力の低下)は、基端から先端に向かって順に伝達される。
【0050】
t=ti-1において、基端の張力が初期の最大張力Tpから張力Tr_(i-1)まで低下し、張力変化が要素i-1まで伝達される。すなわち、動作領域[1:i-1]において、張力が低下し、動作領域[1:i-1]の範囲の要素1,2,…,i-1の伸びが変化(減少)する。
同様に、t=tiにおいて、基端の張力が最大張力Tpから張力Tr_iまで低下し、張力変化が要素iまで伝達される。
【0051】
図13は、ワイヤ12の形状(すなわち軟性部13の形状)の計算の手順を示している。図13に示されるように、iをインクリメントしながら(ステップS11,S17)ステップS12からS16を繰り返すことによって、基端側から順に、要素iの湾曲角度θi、長さLiおよび湾曲半径Riを計算する。算出された湾曲角度θi、長さLiおよび湾曲半径Riは、記憶部5bに蓄積され、次の要素i+1の湾曲角度θi+1、長さLi+1および湾曲半径Ri+1の計算に使用される。長さLiの和がワイヤ12の全長に達するまでステップS12からS16は繰り返され、それにより全ての要素iの形状θi,Li,Riが得られる。
【0052】
ステップS12において、ワイヤ12の基端部の変位がdxiだけ減少することによって基端の張力がTr_(i-1)からTr_iまで低下し、ワイヤ12が要素iまで弛緩する、すなわち動作領域が要素iへ進展する。
【0053】
次に、ステップS13において、要素iの張力Tiを計算する。
基端の最大張力Tpは、オイラーのベルトの式により、各要素iの張力Tiを用いて次式(1)で表される。μは、摩擦係数であり、θiは、要素iの湾曲角度である。
【数1】

要素iの張力Tiは、張力センサ3によって検出されたワイヤ12の基端部の張力Tr_iを用いて、下式(2)から計算することができる。張力の変化率は、初期の最大張力Tpに対する、各変位xiのときに張力センサ3が取得した張力Tr_iの比として計算される。
【数2】
【0054】
次に、ステップS14において、要素iの湾曲角度θiを計算する。湾曲角度θiは、次式(3)から求められる。
【数3】
【0055】
次に、ステップS15において、動作領域[1,i-1]の範囲の各要素kの伸びの変化量dlkを計算する。要素kの伸びの変化量dlkは、下式(4)の通り、要素kの牽引時と弛緩時との間の張力の差dTkを用いてフックの法則から計算できる。EAは、ワイヤ12の剛性である。
dlk = Lk/EA × dTk (4)
ステップS15より、要素1から要素i-1までの伸びの変化量dl1,dl2,…,dl(i-1)の総和が得られる。
【0056】
次に、ステップS16において、要素iの長さLiおよび湾曲半径Riを計算する。
ワイヤ12の駆動変位dxiは、張力が伝達された動作範囲[1:i]の伸びの変化量dl1,dl2,…,dliの総和である。したがって、下式(5)の通り、要素iの変化量dliは、変位dxiと、要素1から要素i-1までの伸びの変化量dl1,dl2,…,dli-1の総和と、の差分として算出される。
【数4】
【0057】
以上から、要素iの長さLiおよび湾曲半径(曲率半径)Riは、次式(6)および(7)によってそれぞれ得られる。
【数5】
【0058】
軟性部13の形状の推定において、張力の複数のデータに重み付けしてもよい。複数のデータは、1本のワイヤ12に対して牽引動作および弛緩動作を複数回実行することによって取得されるか、または、複数本のワイヤ12に対して牽引動作および弛緩動作を実行することによって取得される。
【0059】
複数のデータの内、信頼性の高いデータに対してより大きな重みが付される。信頼性の高いデータは、例えば、ばね定数の線形性の高いワイヤ12を用いて取得されたデータ、張力が大きいデータ、または、弛緩動作におけるワイヤ12の駆動速度が遅いデータである。張力が大きい程、弛緩動作における張力の変化量が大きくなるので、データの信頼性が高くなる。また、駆動速度が遅い程、データの密度が大きくなるので、データの信頼性が高くなる。
【0060】
このように、信頼性に基づき重み付けされた複数のデータを使用して軟性部13の形状を推定することによって、軟性部13の形状の推定誤差を抑制し、軟性部13の形状をより高精度に推定することができる。
【0061】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るエンドルミナルデバイスシステム、制御装置および制御方法について図面を参照して説明する。
図14に示されるように、本実施形態に係るエンドルミナルデバイスシステム200は、駆動ワイヤ17とは別の計測ワイヤ14が設けられている点において、第1実施形態と相違する。本実施形態において、第1実施形態と相違する構成について説明し、第1実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0062】
エンドルミナルデバイスシステム200は、可動部11および1以上の駆動ワイヤ(第2ワイヤ)17を有するエンドルミナルデバイス10と、エンドルミナルデバイス10に設けられた計測ワイヤ(第1ワイヤ)14と、駆動装置2と、ワイヤ14,17の張力を検出する張力センサ(第1センサ)3と、計測ワイヤ14の変位を検出する変位センサ(第2センサ)4と、制御装置5と、を備える。
図14において、可動部11は湾曲部である。図16に示されるように、可動部11は、エンドエフェクタであってもよく、または、関節であってもよい。
【0063】
可撓性の駆動ワイヤ17は、第1実施形態のワイヤ12と同一の構成であるが、機能が異なる。すなわち、本実施形態の駆動ワイヤ17は、軟性部13内に軟性部13の長手方向に沿って配置され、駆動ワイヤ17の先端は湾曲部11の先端に固定され、駆動ワイヤ17の基端は駆動装置2に接続されている。このように軟性部13の全長にわたって延びる可撓性の駆動ワイヤ17は、軟性部13の湾曲に伴って、軟性部13と同一の形状に湾曲する。
【0064】
第1実施形態のワイヤ12とは異なり、本実施形態の駆動ワイヤ17は、駆動装置2から与えられた動力を基端から先端へ伝達し可動部11を動作させる機能を有し、軟性部13の形状情報を取得する機能を有しない。例えば、湾曲部11を上、下、左、右にそれぞれ湾曲させるための4本のワイヤ17が設けられている。本実施形態においては、これらの4本のワイヤ17がそれぞれ駆動ワイヤとしての機能を実行可能に構成されているが、計測ワイヤとしての機能は実行しない。
【0065】
可撓性の計測ワイヤ14は、軟性部13内に軟性部13の長手方向に配置され、計測ワイヤ14の先端は、可動部11には連結されず、軟性部13の先端に固定され、計測ワイヤ14の基端は駆動装置2に接続されている。計測ワイヤ14は、軟性部13の形状情報を取得する機能を有するが、駆動装置2から与えられた動力を基端から先端へ伝達し可動部11を動作させる機能を有しない。
【0066】
駆動装置2は、各ワイヤ14,17の基端部を各ワイヤ14,17の長手方向に後退および前進させるアクチュエータ2aを有する。
張力センサ3は、各ワイヤ14,17の基端部に設けられ、各ワイヤ14,17の基端部の張力を検出する。
変位センサ4は、計測ワイヤ14の長手方向における計測ワイヤ14の基端部の変位を検出する。
【0067】
計測ワイヤ14の経路の摩擦係数は、駆動ワイヤ17の経路の摩擦係数よりも大きい。
例えば、図15に示されるように、エンドルミナルデバイスシステム200は、計測ワイヤ14が挿入された管状の第1シース15と、駆動ワイヤ17が挿入された管状の第2シース16とを備える。各ワイヤ14,17は、シース15,16内において長手方向に移動可能である。計測ワイヤ14と第1シース15と間の摩擦係数は、駆動ワイヤ17と第2シース16と間の摩擦係数よりも大きい。
【0068】
ワイヤ14,17の経路の摩擦係数を異ならせる他の手段として、潤滑剤、撚線/単線または表面処理が採用されてもよい。
すなわち、計測ワイヤ14の経路の摩擦係数が駆動ワイヤ17の経路の摩擦係数よりも大きくなるように、ワイヤ14,17に塗布される潤滑剤の種類が選択されてもよい。または、駆動ワイヤ17として単線が使用され、計測ワイヤ14として撚線が使用されてもよい。または、摩擦係数を高める表面処理、例えば凹凸構造を形成する粗面処理が、計測ワイヤ14の外面に施されていてもよい。
【0069】
本実施形態の制御方法において、プロセッサ5aは、牽引動作および弛緩動作において計測ワイヤ14を牽引および弛緩させ(ステップS2)、弛緩動作中の計測ワイヤ14の張力および変位のデータを取得し(ステップS3)、データに基づいて駆動ワイヤ17用の制御パラメータを調整する(ステップS4)。
【0070】
このように、本実施形態によれば、駆動ワイヤ17とは別の計測ワイヤ14が使用され、計測ワイヤ14に作用する摩擦が、駆動ワイヤ17に作用する摩擦よりも大きい。駆動ワイヤ17に作用する摩擦が小さい程、駆動ワイヤ17の基端から先端への動力の伝達効率が高くなる。一方、計測ワイヤ14に作用する摩擦が大きい程、弛緩動作中の計測ワイヤ14の基端部の張力の変化が大きくなる。したがって、可動部11の応答性を高めることができるとともに、軟性部13の形状に対する張力の感度を高め、軟性部13の形状の推定精度および制御パラメータの調整精度を向上することができる。
【0071】
本実施形態において、計測ワイヤ14の経路の摩擦係数が駆動ワイヤ17の経路の摩擦係数よりも大きいこととしたが、これに代えて、またはこれに加えて、計測ワイヤ14のばね定数が、駆動ワイヤ17のばね定数よりも小さくてもよい。
駆動ワイヤ17のばね定数が大きい程、駆動ワイヤ17の基端から先端への動力の伝達が速くなる。一方、計測ワイヤ14のばね定数が小さい程、張力の変化に対する変位の変化量が大きくなり、牽引動作および弛緩動作において必要とされる計測ワイヤ14の変位量が大きくなる。
【0072】
したがって、計測ワイヤ14のばね定数を駆動ワイヤ17のばね定数よりも小さくすることによって、可動部11の応答性を高めることができるとともに、軟性部13の形状に対する変位の感度を高め、軟性部13の形状の推定精度および制御パラメータの調整精度を向上することができる。
【0073】
本実施形態において、計測ワイヤ14のばね特性の線形領域において、計測ワイヤ14を牽引および弛緩させてもよい。
図17は、計測ワイヤ14のばね特性の一例を示し、横軸は計測ワイヤ14の変位を表し、縦軸は計測ワイヤ14の張力を表している。撚線からなる計測ワイヤ14の場合、ばね特性は、張力が線形に変化する領域(破線の楕円によって囲まれた領域)と、張力が非線形に変化する領域と、を含むことがある。
【0074】
本変形例によれば、計測ワイヤ14の線形領域を使用することによって、軟性部13の形状の算出および制御パラメータの調整のための演算を簡単化することができる。また、軟性部13の形状の算出および制御パラメータの調整をより正確に行うことができる。
単線からなる計測ワイヤ14の場合、計測ワイヤ14は、変位の略全域において張力が線形に変化するばね特性を有する。したがって、計測ワイヤ14として単線を使用する場合には、任意の線形領域において計測ワイヤ14を牽引および弛緩させてもよい。
【0075】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係るエンドルミナルデバイスシステム、制御装置および制御方法について図面を参照して説明する。
図18に示されるように、本実施形態に係るエンドルミナルデバイスシステム300は、エンドルミナルデバイス20が複数の可動部11A,11Bを有する点において、第1および第2実施形態と相違する。本実施形態において、第1および第2実施形態と相違する構成について説明し、第1および第2実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0076】
エンドルミナルデバイスシステム300は、2つの可動部11A,11Bおよび2以上のワイヤ(第1ワイヤ)12A,12Bを有するエンドルミナルデバイス20と、ワイヤ12A,12Bを牽引および弛緩させることによって可動部11A,11Bを駆動する駆動装置2と、各ワイヤ12A,12Bの張力を検出する張力センサ(第1センサ)3と、各ワイヤ12A,12Bの変位を検出する変位センサ(第2センサ)4と、制御装置5と、を備える。
【0077】
可動部11A,11Bは、例えば、湾曲部、関節およびエンドエフェクタのいずれかである。図18の例において、可動部11Aはエンドエフェクタであり、可動部11Bは、エンドエフェクタ11Aと軟性部13の先端との間に配置された関節である。
【0078】
ワイヤ12A,12Bは、第1実施形態のワイヤ12と同様に、対応する可動部11A,11Bを動作させるための駆動ワイヤであり、かつ、計測ワイヤでもある。各ワイヤ12A,12Bの先端は対応する可動部11A,11Bにそれぞれ固定され、各ワイヤ12A,12Bの基端は駆動装置2に接続されている。
【0079】
駆動装置2は、各ワイヤ12A,12Bの基端部をワイヤ12A,12Bの長手方向に後退および前進させる2以上のアクチュエータ2aを有する。
張力センサ3は、各ワイヤ12A,12Bの基端部に設けられ、各ワイヤ12A,12Bの基端部の張力を検出する。
変位センサ4は、各ワイヤ12A,12Bの長手方向におけるワイヤ12A,12Bの基端部の変位を検出する。
【0080】
本実施形態において、プロセッサ5aは、可動部11A,11Bのいずれか1つを動作させるときに、制御方法を実行し可動部11A,11Bの制御パラメータを調整する。例えば、プロセッサ5aは、可動部11Bの動作に伴うワイヤ12Bの弛緩動作中にワイヤ12Bの張力および変位のデータを取得し、取得されたデータに基づいて、可動部11A,11Bの両方の制御パラメータを調整する。
このように、本実施形態によれば、可動部11A,11Bのいずれかが処置等の作業に必要な動作をしたときに、他の可動部11A,11B用の制御パラメータも調整することができる。
【0081】
本実施形態において、プロセッサ5aは、第1実施形態と同様に、トリガに応答して制御方法を実行してもよく、または、所定の時間間隔で繰り返し制御方法を実行してもよい。この場合、プロセッサ5aは、所定の複数のワイヤ12A,12Bの中から任意の1本のワイヤを選択し、選択されたワイヤを牽引動作および弛緩動作において牽引および弛緩させてもよい。
【0082】
本実施形態において、プロセッサ5aは、張力の複数のデータに基づいて、軟性部13の形状の算出および制御パラメータの調整を行ってもよい。複数のデータは、1つの計測ワイヤ12について牽引動作および弛緩動作を複数回実行することによって、または、複数の計測ワイヤ12について牽引動作および弛緩動作を実行することによって、取得される。この構成によれば、軟性部13の形状の算出よび制御パラメータの調整の精度を向上することができる。
上述した第1および第2実施形態においても、プロセッサ5aは、張力の複数のデータに基づいて、軟性部13の形状の算出および制御パラメータの調整を行ってもよい。
【0083】
上述した第1から第3の実施形態において、エンドルミナルデバイス1,10,20が可動部11,11A,11Bを有することとしたが、図19に示されるように、エンドルミナルデバイス30は、可動部を有していなくてもよい。計測ワイヤ14の先端は、軟性部13の先端に固定される。この場合、プロセッサ5aは、計測ワイヤ14の張力および変位のデータを取得した後、軟性部13の形状の算出を行い、制御パラメータの調整を省略してもよい。
【符号の説明】
【0084】
1,10,20 エンドルミナルデバイス
2 駆動装置
3 張力センサ(第1センサ)
4 変位センサ(第2センサ)
5 制御装置
5a プロセッサ
11 湾曲部、可動部
11A,11B 可動部
12 ワイヤ(第1ワイヤ)
12A,12B (第1ワイヤ)
13 軟性部
14 計測ワイヤ(第1ワイヤ)
15 第1シース
16 第2シース
17 駆動ワイヤ(第2ワイヤ)
100,200,300 エンドルミナルデバイスシステム
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
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図10
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図19