(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-27
(45)【発行日】2025-04-04
(54)【発明の名称】B細胞抗体受容体、及びその利用
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20250328BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20250328BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20250328BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20250328BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250328BHJP
A61K 35/17 20250101ALI20250328BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20250328BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250328BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20250328BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20250328BHJP
【FI】
C07K19/00
C12N15/12 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N5/10
A61K35/17
A61P3/00
A61P43/00
A61K47/68
A61K38/17
(21)【出願番号】P 2021553671
(86)(22)【出願日】2020-10-28
(86)【国際出願番号】 JP2020040515
(87)【国際公開番号】W WO2021085504
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2019199624
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509349141
【氏名又は名称】京都府公立大学法人
(73)【特許権者】
【識別番号】598086844
【氏名又は名称】株式会社メディネット
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五條 理志
(72)【発明者】
【氏名】上 大介
(72)【発明者】
【氏名】星野 温
(72)【発明者】
【氏名】南 喜人
(72)【発明者】
【氏名】志熊 明
【審査官】吉門 沙央里
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/140573(WO,A1)
【文献】PARVATHANENI, K. and SCOTT, D. W.,Blood Advances,2018年,Vol.2, No.18,P.2332-2340
【文献】松本雅則,III. 診断と医療 4.血栓性血小板減少性紫斑病,日本内科学会雑誌,2014年,Vol.103, No.7,P.1613-1621
【文献】Adair P. R. et al.,Front. Immunol.,2017年,Vol. 8, Article 1117,pp. 1-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 19/00
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)抗体結合ドメインとb)細胞膜貫通ドメインとc)共刺激因子の細胞内ドメインとd)活性化受容体の細胞内ドメインとが結合したB細胞抗体受容体
であって、
前記a)抗体結合ドメインがα-GALの全長タンパク質を含み、該α-GALの全長タンパク質をコードする塩基配列が配列番号1に記載の塩基配列、又は同一の機能を有する、配列番号1に記載の塩基配列と95%以上の同一の塩基配列を含む、或いは
前記a)抗体結合ドメインがα-GALの抗体認識配列領域(D1 region)を含み、該α-GALの抗体認識配列領域(D1 region)をコードする塩基配列が配列番号2に記載の塩基配列、又は同一の機能を有する、配列番号2に記載の塩基配列と95%以上の同一の塩基配列を含む、
B細胞抗体受容体。
【請求項2】
前記a)、b)、c)又はd)の結合部分にリンカーが挿入されている請求項1に記載のB細胞抗体受容体。
【請求項3】
前記a)抗体結合ドメインが、抗体が特異的に認識する抗体認識配列を含むタンパク質又はペプチドである請求項1又は2に記載のB細胞抗体受容体。
【請求項4】
前記b)膜貫通ドメインが、CD28、CD3ζ、CD4、CD8αからなる群から選択される請求項1乃至3のいずれか一項に記載のB細胞抗体受容体。
【請求項5】
前記c)共刺激因子の細胞内ドメインが、OX40、4-1BB、CD27、CD278及びCD28からなる群から選択される請求項1~4のいずれか一項に記載のB細胞抗体受容体。
【請求項6】
前記d)活性化受容体がTCR又はNKG2Dからなる群から選択される請求項1~5のいずれか一項に記載のB細胞抗体受容体。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一項に記載のB細胞抗体受容体をコードする核酸。
【請求項8】
請求項
7に記載の核酸を含むベクター。
【請求項9】
請求項
7に記載の核酸又は請求項
8に記載のベクターを用いて遺伝子導入されたB細胞抗体受容体を発現する免疫細胞。
【請求項10】
前記免疫細胞が、αβT細胞、CD8T細胞、CD4T細胞、γδT細胞又はNK細胞である請求項
9に記載の免疫細胞。
【請求項11】
請求項
9又は
10に記載の免疫細胞を有効成分とする再生医療等製品(細胞医薬品)。
【請求項12】
ライソゾーム病を治療及び/又は予防するための、請求項
11に記載の再生医療等製品(細胞医薬品)。
【請求項13】
ライソゾーム病がファブリー病である、請求項
12に記載の再生医療等製品(細胞医薬品)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の人工受容体(B細胞抗体受容体(B-cell antibody receptor;BAR)、免疫細胞及び再生医療等製品(細胞医薬品)に関する。
【背景技術】
【0002】
生物の体内には様々なタンパク質が存在し、その機能によって、生命活動を維持している。タンパク質をコードする遺伝子に変異が起こると、そのタンパク質が産生できなくなったり、活性が低下してしまったりして、疾患を発症することがある。
【0003】
血友病は、血液凝固因子の量的、質的異常による遺伝性の疾患であり、原因となる血液凝固因子の種類によって血友病A、血友病B等に分類される。血液凝固因子の活性の度合いによって症状は異なるが、重症になると関節内出血、筋肉内出血等が生じ、関節機能や運動に障害を起こすことがある。血友病の治療としては、不足している血液凝固因子を体外から補充する補充療法が行われる。
【0004】
血栓性血小板減少性紫斑病は、フォンビルブラント因子(VWF)の切断酵素であるADAMTS13の量的、質的異常による機能不全が原因の疾患で、先天性と後天性のものがあり、この機能不全は過剰な微小血栓を誘発し、血小板が血栓形成で消費され減少し、様々な末梢臓器での虚血性変化に伴う臓器不全を引き起こす。先天性の場合は当該タンパクをコードする遺伝子の変異、後天性の場合はこのタンパク質への自己抗体によると報告されている。治療法としては、先天性に対しては、2週間毎に新鮮凍結血漿10ml/kg体重を輸注し、ADAMTS13酵素を補充する事により発症を予防する。後天性に対しては血漿交換療法がおこなわれている。
【0005】
ライソゾーム病は、細胞内小器官であるライソゾーム内の酸性分解酵素の遺伝的欠損により、ライソゾーム内に大量の脂質あるいはムコ多糖などを蓄積し、肝臓、脾臓の腫大、骨変性、中枢神経障害など、種々な症状を呈する疾患群であり、現在60種の疾患が含まれる(非特許文献1)。
【0006】
ライソゾーム病に分類される疾患は、欠損する酵素の種類によって区別されており、例えば、ファブリー病、ゴーシェ病、ポンぺ病、ムコ多糖症が挙げられる。
【0007】
ライソゾーム病の1つであるファブリー病は、α-ガラクトシダーゼ(α-GAL、以下単に「GLA」ともいう)という酵素の遺伝的欠損や活性低下によりGL-3やGb3という糖たんぱく質が分解されず、分解されなかった糖たんぱく質が組織・臓器に蓄積することで発症する疾患である。症状としては、神経症状(疼痛)、角膜混濁、皮膚症状、心機能障害、腎機能障害等が認められる。治療法としては、製剤化したα-GALを点滴により補充して、糖たんぱく質を分解することにより症状の改善や進行の抑制を行う(非特許文献2)。
【0008】
血友病やライソゾーム病のように、遺伝子変異によりタンパク質の機能を発揮できないことを原因とする疾患の治療としては、補充療法(Replacement Therapy)が施行されているが、凝固因子又は責任酵素のタンパク質が欠落もしくは大きな欠損を有している変異の場合は、体外から補充する凝固因子又は責任酵素が患者体内の免疫により異物とみなされ、体外から補充した凝固因子又は責任酵素に対する中和抗体が産生されるケースが少なからず存在する。患者体内で抗体が産生されるケースでは、酵素が機能を十分に発揮できないため、治療効果が減弱してしまうことになる。例えば、ファブリー病の治療では、患者体内でα-GALに対する中和抗体が産生され、当該抗体が投与されたα-GALに結合することで治療効果が減弱するケースが確認されている(非特許文献3、4)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】難病情報センター ライソゾーム病(指定難病19)の項:http://www.nanbyou.or.jp/entry/4061
【文献】大日本住友製薬Webページ:https://healthcare.ds-pharma.jp/disease/fabry/index.html
【文献】J Am Soc Nephrol 27:256-264,2016
【文献】Thromb Haematol 2005;94:760-769
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
先に述べた通り、凝固因子や責任酵素に対する抗体が患者体内で産生されることにより疾患が発生することや治療法が十分な効果を発揮することができない状況が発生するため、それらの抗体の機能を制御する技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本件発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、原因となる中和抗体を産生するB細胞を新規のB細胞抗体受容体を発現する免疫細胞で排除することで解決できることを見出した。すなわち、本件発明は以下の通りである。
(1) a)抗体結合ドメインとb)細胞膜貫通ドメインとc)共刺激因子の細胞内ドメインとd)活性化受容体の細胞内ドメインとが結合したB細胞抗体受容体。
(2) 前記a)、b)、c)又はd)の結合部分にリンカーが挿入されている(1)に記載のB細胞抗体受容体。
(3) 前記a)抗体結合ドメインが、抗体が特異的に認識する抗体認識配列を含むタンパク質又はペプチドである(1)又は(2)に記載のB細胞抗体受容体。
(4) 前記b)膜貫通ドメインが、CD28、CD3ζ、CD4、CD8αからなる群から選択される(1)~(3)のいずれかに記載のB細胞抗体受容体。
(5) 前記c)共刺激因子の細胞内ドメインが、OX40、4-1BB、CD27、CD278及びCD28からなる群から選択される(1)~(4)のいずれかに記載のB細胞抗体受容体。
(6) 前記d)活性化受容体がTCR又はNKG2Dからなる群から選択される(1)~(5)のいずれかに記載のB細胞抗体受容体。
(7)前記a)抗体結合ドメインがα-GALの全長タンパク質を含み、該α-GALの全長タンパク質をコードする塩基配列が配列番号1に記載の塩基配列、又は同一の機能を有する、配列番号1に記載の塩基配列と95%以上の同一の塩基配列を含む、(1)~(6)のいずれかに記載のB細胞抗体受容体。
(8)前記a)抗体結合ドメインがα-GALの抗体認識配列領域(D1 region)を含み、該α-GALの抗体認識配列領域(D1 region)をコードする塩基配列が配列番号2に記載の塩基配列、又は同一の機能を有する、配列番号2に記載の塩基配列と95%以上の同一の塩基配列を含む、(1)~(6)のいずれかに記載のB細胞抗体受容体。
(9)前記a)抗体結合ドメインがADAMTS13のスペーサードメインタンパク質を含み、該ADAMTS13のスペーサードメインタンパク質をコードする塩基配列が配列番号3もしくは37に記載の塩基配列、又は同一の機能を有する、配列番号3もしくは37に記載の塩基配列と95%以上の同一の塩基配列を含む、(1)~(6)のいずれかに記載のB細胞抗体受容体。
(10)前記a)抗体結合ドメインがADAMTS13のスペーサードメイン及びシステインリッチドメインを含み、該ADAMTS13のスペーサードメインをコードする塩基配列が、配列番号3もしくは37に記載の塩基配列、又は同一の機能を有する、配列番号3もしくは37に記載の塩基配列と95%以上の同一の塩基配列を含み、及びシステインリッチドメインをコードする塩基配列が、配列番号4に記載の塩基配列、又は同一の機能を有する、配列番号4に記載の塩基配列と95%以上の同一の塩基配列を含む、(1)~(6)のいずれかに記載のB細胞抗体受容体。
(11)前記a)抗体結合ドメインが血液凝固第VIII因子もしくは血液凝固第IX因子の全長タンパク質又は抗体認識配列を含む、(1)~(6)のいずれかに記載のB細胞抗体受容体。
(12) (1)~(8)のいずれかに記載のB細胞抗体受容体をコードする核酸。
(13) (12)に記載の核酸を含むベクター。
(14) (12)に記載の核酸又は(13)に記載のベクターを用いて遺伝子導入されたB細胞抗体受容体を発現する免疫細胞。
(15) 前記免疫細胞が、αβT細胞、CD8T細胞、CD4T細胞、γδT細胞又はNK細胞である(14)に記載の免疫細胞。
(16) (14)又は(15)に記載の免疫細胞を有効成分とする再生医療等製品(細胞医薬品)。
(17) ライソゾーム病を治療及び/又は予防するための、(16)に記載の再生医療等製品(細胞医薬品)。
(18) ライソゾーム病がファブリー病である、(17)に記載の再生医療等製品(細胞医薬品)。
(19) 治療を必要とする対象に、(14)又は(15)に記載の免疫細胞、或いは(17に記載の再生医療等製品(細胞医薬品)を投与することを特徴とする、ライソゾーム病を治療及び/又は予防する方法。
(20) ライソゾーム病がファブリー病である、(19)に記載の方法。
(21) (1)~(6)、(9)又は(10)に記載のB細胞抗体受容体をコードする核酸。
(22) (21)に記載の核酸を含むベクター。
(23) (21)に記載の核酸又は(22)に記載のベクターを用いて遺伝子導入されたB細胞抗体受容体を発現する免疫細胞。
(24) 前記免疫細胞が、αβT細胞、CD8T細胞、CD4T細胞、γδT細胞又はNK細胞である(23)に記載の免疫細胞。
(25) (23)又は(24)に記載の免疫細胞を有効成分とする再生医療等製品(細胞医薬品)。
(26) 血栓性血小板減少性紫斑病を治療及び/又は予防するための、(25)に記載の再生医療等製品(細胞医薬品)。
(27) 治療を必要とする対象に、(23)又は(24)に記載の免疫細胞、或いは(26)に記載の再生医療等製品(細胞医薬品)を投与することを特徴とする、血栓性血小板減少性紫斑病を治療及び/又は予防する方法。
(28) (1)~(6)又は(11)に記載のB細胞抗体受容体をコードする核酸。
(29) (28)に記載の核酸を含むベクター。
(30) (28)に記載の核酸又は(29)に記載のベクターを用いて遺伝子導入されたB細胞抗体受容体を発現する免疫細胞。
(31) 前記免疫細胞が、αβT細胞、CD8T細胞、CD4T細胞、γδT細胞又はNK細胞である(30)に記載の免疫細胞。
(32) (30)又は(31)に記載の免疫細胞を有効成分とする再生医療等製品(細胞医薬品)。
(33) 血友病を治療及び/又は予防するための、(32)に記載の再生医療等製品(細胞医薬品)。
(34) 治療を必要とする対象に、(30)又は(31)に記載の免疫細胞、或いは(33)に記載の再生医療等製品(細胞医薬品)を投与することを特徴とする、血友病を治療及び/又は予防する方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、患者体内で産生される抗体に起因する疾患、例えばライソゾーム病の治療に有効な手段が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係るBAR-T細胞による治療概念図を示す。
【
図3】MaxCyte mRNA導入プロトコルでヒトT細胞にBAR mRNAを導入したBAR-T細胞によるBARの発現を示す。
【
図4】抗GLAモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの作製方法を示す。
【
図5】抗GLA抗体のscFvの配列の作出を示す。
【
図6】抗GLA抗体のscFvの塩基配列(配列番号9)を挿入したプラスミドベクターの1例を示す。
【
図7】In vitro細胞障害性活性試験の概要を示す。
【
図8】In vitro細胞障害性活性の結果(フローサイトメトリーの結果)を示す。
【
図9】a)抗体結合ドメインの1例であるα-GALの全長タンパク質(Full Length)のアミノ酸配列をコードする塩基配列(配列番号1)と、これを挿入したBARのレンチウイルスベクターマップが示される。
【
図10】a)抗体結合ドメインの1例であるα-GALの抗体認識配列のアミノ酸配列(D1 region)のアミノ酸配列をコードする塩基配列(配列番号2)と、これを挿入したBARのレンチウイルスベクターマップが示される。
【
図11】抗GLA抗体のscFvを強制発現させたTransfectantを対象としたGLA-mCherryの結合アッセイの結果を示す。
【
図12】GLAの全長タンパク質(FL)BARのmRNA合成用プラスミドベクターマップの1例を示す。
【
図13】a)抗体結合ドメインの1例であるADAMTS13のスペーサードメインのアミノ酸配列をコードする塩基配列(配列番号3)と、これを挿入したBARのプラスミドベクターマップの1例が示される。
【
図14】a)抗体結合ドメインの1例であるADAMTS13のスペーサードメインのアミノ酸配列をコードする塩基配列(配列番号3)及びADAMTS13のシステインリッチドメインのアミノ酸配列をコードする塩基配列(配列番号4)と、これを挿入したBARのプラスミドベクターマップの1例が示される。
【
図15】a)抗体結合ドメインの1例であるα-GALの全長タンパク質(Full Length)のアミノ酸配列をコードする塩基配列(配列番号1)と、これを挿入したBARのレトロウイルスベクターマップが示される。
【
図16】a)抗体結合ドメインの1例であるα-GALの抗体認識配列のアミノ酸配列(D1 region)のアミノ酸配列をコードする塩基配列(配列番号2)と、これを挿入したBARのレトロウイルスベクターマップが示される。
【
図17】GLAの全長タンパク質(FL)BARのmRNA合成用プラスミドベクターマップの1例を示す。
【
図18】a)抗体結合ドメインの1例であるADAMTS13のスペーサードメインのアミノ酸配列をコードする塩基配列(配列番号3)と、これを挿入したBARのプラスミドベクターマップの1例が示される。
【
図19】a)抗体結合ドメインの1例であるADAMTS13のスペーサードメインのアミノ酸配列をコードする塩基配列(配列番号3)及びADAMTS13のシステインリッチドメインのアミノ酸配列をコードする塩基配列(配列番号4)と、これを挿入したBARのプラスミドベクターマップの1例が示される。
【
図20】抗体結合ドメインの一例であるα-GALの全長タンパク質(Full Length)のアミノ酸配列をコードした塩基配列(配列番号1)と、これを挿入したBARのレトロウイルスベクターマップが示される。
【
図21】抗GLA抗体のscFvの塩基配列(配列番号36)を挿入したレトロウイルスベクターマップが示される。
【
図22】抗体結合ドメインの一例であるADAMTS13のアミノ酸配列をコードした塩基配列(配列番号37)と、これを挿入したBARのレトロウイルスベクターマップが示される。
【
図23】抗ADAMTS13抗体のscFvの塩基配列(配列番号41)を挿入したレトロウイルスベクターマップが示される。
【
図24】抗GLA抗体のscFvを発現させたNalm6を対象としたhGLA-mCherryの結合アッセイの結果を示す。
【
図25】HA TAGを用いた、hGLA BARの発現確認の結果を示す。
【
図26】抗GLA抗体を用いた、hGLA BARの発現確認の結果を示す。
【
図27】BAR T細胞(Jurkat-GLA-BAR2-EGFP:Effector)と標的細胞(NALM6-scFv-GLA-mCherry:Target)を混合比率1:0、2:1、1:1で24時間混合培養した時のCD69の検出試験の結果である。
【
図28】HA TAGを用いたADAMTS13 BARの発現確認の結果を示す。
【
図29】HA TAGを用いたADAMTS13 BARの発現確認の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、体外から補充された治療用酵素又は凝固因子或いは内在性のタンパク質に対する抗体が患者体内で産生されることにより発生する疾患を治療するためのB細胞抗体受容体-免疫細胞を提供し、該細胞を用いた免疫療法に関する。ここで、「B細胞抗体受容体-免疫細胞」(以下単に「BAR-免疫細胞」とも言う。)とは、B細胞抗体受容体(BAR)を発現させた免疫細胞を意味し、免疫細胞がT細胞である場合、「B細胞抗体受容体-T細胞」(以下単に「BAR-T細胞」とも言う)と呼ぶ。
【0015】
[1]B細胞抗体受容体(BAR)
本発明のBARは、a)抗体結合ドメインとb)細胞膜貫通ドメインとc)共刺激因子の細胞内ドメイン、d)活性化受容体の細胞内ドメインを含むことを特徴とする。a)抗体結合ドメインが結合する抗体を過剰発現する細胞に対して高い特異性と細胞障害活性を有する。
【0016】
a)抗体結合ドメインは、疾患の原因となる抗体が特異的に結合する物質であれば特に制限はされない。ライソゾーム病等の酵素補充療法の治療効果を阻害するB細胞を傷害・排除するならば、例えば、ファブリー病の場合はα-GAL、ゴーシェ病の場合はグルコセレブロシダーゼ、ポンぺ病の場合はα-グルコシダーゼ、ムコ多糖症の場合はα-L-イズロニダーゼの全長タンパク質、又は抗体認識配列を含むペプチド等が選択される。これらタンパク質のアミノ酸配列又は塩基配列は、一般に公開されており、国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information;NCBI)のデータベースからキーワード検索で取得可能である。
この抗体結合ドメインは、疾患の原因となる抗体と結合し、相互作用することにより、斯かる抗体を産生するB細胞を傷害・排除する。
【0017】
また、血友病のように血液凝固因子の投与による治療効果を阻害する抗体を産生するB細胞を傷害・排除するならば、例えば、血液凝固第VIII因子、血液凝固第IX因子、の全長タンパク質、又は抗体認識配列を含むペプチド等が選択される。
【0018】
また、血栓性血小板減少性紫斑病の場合にはADAMTS13の全長タンパク質、又は抗体認識配列を含むペプチド等が挙げられる。
【0019】
抗体結合ドメインの一態様として、α-GALの全長タンパク質(Full Length)又は抗体認識配列領域(D1 region)を含むペプチドが挙げられ、α-GALの全長タンパク質(Full Length)のアミノ酸配列及びそれをコードする塩基配列は、配列番号10、配列番号1に、その抗体認識配列領域(D1 region)のアミノ酸配列及びそれをコードする塩基配列は、配列番号11、配列番号2に示される。
なお、上記α-GALの全長タンパク質(Full Length)又は抗体認識配列領域(D1 region)をコードする塩基配列は、同一の機能を有する実質的に相同な塩基配列であってもよい。ここで、用語「実質的に相同」は、一次塩基配列レベルで互いに有意に類似した2つ以上の生物分子配列を包含する。例えば、2つ以上の核酸配列の文脈で、「実質的に相同」とは、少なくとも約75%同一、好ましくは少なくとも約80%同一、及びより好ましくは少なくとも約85%同一又は少なくとも約90%同一であり、並びにさらにより好ましくは少なくとも約95%同一、より好ましくは少なくとも97%同一である、より好ましくは少なくとも約98%同一である、より好ましくは少なくとも99%同一であることを意味する。
【0020】
抗体結合ドメインの一態様として、ADAMTS13が挙げられる。ADAMTS13は、多数のドメインが連結したタンパク質であるが、ADAMTS13に対する抗体は、その大半がスペーサードメインに結合することが報告されているため、抗体結合ドメインとしてはスペーサードメインを用いることが好ましいと考えられる。ADAMTS13のスペーサードメインのアミノ酸配列及びそれをコードする塩基配列は、配列番号12及び3に示される(
図13、
図18)。なお、上記ADAMTS13のスペーサードメインをコードする塩基配列は、同一の機能を有する実質的に相同な塩基配列であってもよい。また、スペーサードメインとそれ以外の部分を組み合わせて用いることも可能である。それ以外の部分の一態様として、システインリッチドメインが挙げられ、システインリッチドメインのアミノ酸配列及びそれをコードする塩基配列は、配列番号13及び4に示される(
図14、
図19)。
【0021】
b)膜貫通ドメインの種類は、B細胞抗体受容体の機能を阻害しない限り制限されない。例えば、T細胞等で発現するCD28、CD3、CD4、CD8α等の膜貫通ドメインを用いることができる。これら膜貫通ドメインのアミノ酸配列又は塩基配列情報は一般に公開されており、NCBIのデータベースからキーワード検索で取得可能である。これらの膜貫通ドメインは、B細胞抗体受容体の機能を阻害しない限り、適宜変異が導入されていてもよい。ここで、用語「変異」は、1個又は数個~複数個のアミノ酸の欠失、置換又は付加を含む任意の変異を意味する。
a)抗体結合ドメイン、b)細胞膜貫通ドメイン、c)共刺激因子の細胞内ドメイン、又はd)活性化受容体の細胞内ドメインの結合部分に場合によりオリゴペプチドリンカー又はポリペプチドリンカーを挿入して、互いに連結することができる。好ましくは、長さが2~10個のアミノ酸からなるリンカーを用いることができる。例えば、アミノ酸配列「GSGGG」を有するフレキシブルリンカーを使用することができる。
膜貫通ドメインの一態様として、CD3の膜貫通ドメイン(TM)のアミノ酸配列、及びそれをコードする塩基配列を、それぞれ配列番号15及び配列番号6に示す。
本発明のBARは、細胞外ドメインと膜貫通ドメインの間、又は細胞内ドメインと膜貫通ドメインの間に、スペーサー配列を配置することができる。スペーサー配列は、膜貫通ドメインと細胞外ドメイン及び/又は膜貫通ドメインと細胞内ドメインとを連結する働きをする任意のオリゴペプチド又はポリペプチドを意味する。スペーサー配列は、300個までのアミノ酸、好ましくは10~100個のアミノ酸、最も好ましくは10~50個のアミノ酸を含む。
【0022】
c)共刺激因子の細胞内ドメインの種類は、免疫細胞等が有する共刺激因子に由来する細胞内ドメインであればよく、特に限定はされない。例えば、OX40、4-1BB、CD27、CD278及びCD28等の共刺激因子からなる群から選択される1種以上の細胞内ドメインを適宜選択して使用することができる。これら共刺激因子の細胞内ドメインのアミノ酸配列又は塩基配列情報は一般に公開されており、NCBIのデータベースからキーワード検索で取得可能である。これらの共刺激因子の細胞内ドメインは、B細胞抗体受容体の機能を阻害しない限り、適宜変異が導入されていてもよい。
共刺激因子の細胞内ドメインの一態様として、4-1BBが挙げられ、そのアミノ酸配列、及びそれをコードする塩基配列を、それぞれ配列番号16及び配列番号7に示す。
【0023】
d)活性化受容体の細胞内ドメインの種類は、免疫細胞の種類によって適切なものを選択すればよく、例えば、免疫細胞としてT細胞を用いる場合には、T細胞受容体(TCR)の細胞内ドメインであるCD3ζ(TCRζ鎖とも呼ばれるCD3に由来する細胞内ドメイン)を選択することが好ましい。またNK細胞を用いる場合には、NKG2Dに由来する細胞内ドメインを選択することが好ましい。これら活性化受容体ドメインのアミノ酸配列又は塩基配列情報は一般に公開されており、NCBIのデータベースからキーワード検索で取得可能である。これらの細胞内ドメインは、B細胞抗体受容体の機能を阻害しない限り、適宜変異が導入されていてもよい。
活性化受容体の細胞内ドメインの一態様として、CD3ζが挙げられ、そのアミノ酸配列、及びそれをコードする塩基配列を、それぞれ配列番号17及び配列番号8に示す。
本明細書における用語「ドメイン」とは、ポリペプチド内の一領域である。本明細書において、「ドメイン」は、B細胞抗体受容体分子内の位置により、「抗体結合ドメイン」、「膜貫通ドメイン」、及び「細胞内ドメイン」のように使用される。
細胞内で発現したBARタンパク質の細胞膜への輸送などをサポートするためにシグナルシークエンスを付けることもできる。シグナルシークエンスとしては、CSF2RAという受容体遺伝子に由来するLeader2(配列番号5及び14)、CD8に由来するLeader1(配列番号24及び25)が挙げられる。
【0024】
[2]免疫細胞
B細胞抗体受容体を導入する免疫細胞の例として、αβT細胞、CD8T細胞、CD4T細胞、γδT細胞又はNK細胞等が用いられる。
まず、αβT細胞等の原料となる末梢血単核球(PBMCs)を準備する。PBMCsを採取する方法は、特に限定されないが、例えば、採血により得られた末梢血を密度勾配遠心法により分離することで、PBMCsを取得することができる。1回の採血量は、治療法により適宜設定することが可能であるが、例えば、24~72mLの採血を行えば、1×1^7~3×10^7のPBMCsを取得することができる。また、多量の細胞を確保する必要がある場合には、成分採血装置を用いて単核球成分を採取することが可能である。
【0025】
αβT細胞を製造する場合、採取したPBMCsを培養液(培地)に懸濁し、得られた細胞懸濁液にインターロイキン2(IL-2)、抗CD3抗体を添加して、培養を行う。
抗CD3抗体は、培地中に添加しても、培養容器の底面に固相化してもよいが、抗CD3抗体を固相化したフラスコ等の培養容器にPBMCsを播種することで、より好適に培養できることが知られている(例えば、特許3056230号)。IL-2の濃度は、培地中に1000~2000IU/mLの濃度となるように添加することが好ましい。
【0026】
前項のように調製したαβT細胞には、CD8T細胞やCD4T細胞を含んでいるため、CD8T細胞又はCD4T細胞を免疫細胞として用いる場合には、磁気ビーズ等を用いた細胞分離法で、調製したαβT細胞からCD8T細胞又はCD4T細胞をポジティブセレクション又はネガティブセレクションすることで取得することができる。
【0027】
NK細胞を製造する場合、PBMCsを抗CD16抗体等、NK細胞に発現する分子のアゴニストやIL-2等の存在下で培養する方法が一般的である(例えば、特許4275680等)。本発明に用いるNK細胞は、そのいずれの方法を用いても構わない。また、特許文献WO2009/151183等に記載された方法により調製されたCD16+及び/又はCD56+細胞をNK細胞として用いても構わない。
【0028】
γδT細胞を製造する場合、採取したPBMCsをビスホスホネート等のリン酸抗原及びIL-2の存在下で培養することにより、γδT細胞を選択的に増殖及び活性化させて、γδT細胞を高純度に含む細胞群を調製することができる(例えば、特許文献WO2006/006720等)。本発明に用いるγδT細胞は、いずれの方法を用いても構わない。
【0029】
培養は、温度を34~38℃、好ましくは37℃で、CO2濃度を2~10%、好ましくは5%の条件下で行い、培養期間は、1~20日、特に1~2週間程度が好ましい。
【0030】
使用する培地は特に限定されないが、AIM-V培地(インビトロジェン)、RPMI-1640培地(インビトロジェン)、ダルベッコ改変イーグル培地(インビトロジェン)、イスコフ培地(インビトロジェン)、KBM培地(コージンバイオ)、ALys培地(細胞科学研究所)等細胞培養に使用されている市販の培地を使用することができる。あらかじめIL-2が添加された、ヒト末梢血T細胞用培地(例えば、ALys505N;細胞科学研究所)であってもよい。また、必要に応じて5~20%の牛血清(Fetal Bovine Serum:FBS)、牛胎児血清(Fetal Calf Serum:FCS)、ヒト血清(Human Serum)、ヒト血漿(Human Plasma:HBP)等を添加することができる。
【0031】
前述のように調製した免疫細胞;αβT細胞、CD8T細胞、CD4T細胞、γδT細胞及び/又はNK細胞に、B細胞抗体受容体をコードする遺伝子を導入する。導入する遺伝子は、DNA又はRNAから選択することができる。導入方法としては、ウイルスベクターによる導入、電気穿孔法による導入、リポフェクションによる導入等、適宜選択することができる。
【0032】
このようにして調製された免疫細胞は、a)抗体結合部分により、疾患の原因となる抗体を産生するB細胞に当該抗体を介して特異的に結合することで、活性化シグナル、共刺激シグナルにより活性化し、当該B細胞を傷害、排除する。その結果、疾患の原因となる抗体産生が抑制され、疾患が治療されることとなる。
【0033】
[3]再生医療等製品(細胞医薬品)及び医薬組成物又はこれらを用いた治療及び予防方法
本発明によれば、B細胞抗体受容体(BAR)を発現する細胞は、疾患を治療及び/又は予防するために使用することができ、典型的には、再生医療等製品(細胞医薬品)及び医薬組成物が提供され得る。ここで、「治療」とは、標的疾患に特徴的な症状又は随伴症状を緩和すること(軽症化)、症状の悪化を阻止ないし遅延することなどが含まれ、治療の中には疾患の改善も含まれる。「予防」とは、疾病(障害)又はその症状の発症/発現を防止若しくは遅延すること、又は発症/発現の危険性を低下させることをいう。
一態様において、本発明の再生医療等製品(細胞医薬品)は、BARを発現する本発明の細胞を活性成分として含み、さらに、適切な賦形剤などを含んでもよい。
別の態様において、本発明の医薬組成物は、有効量の本発明の細胞を活性成分として含み、さらに、適切な医薬として許容される賦形剤などを含んでもよい。該細胞製剤及び医薬組成物に含まれる賦形剤には、種々の細胞培養培地、リン酸緩衝生理食塩水、等張食塩水などが挙げられる。
本明細書における用語「再生医療等製品」には、
1)(i)人又は動物の体の構造又は機能の再建、修復又は形成、或いは
(ii)人又は動物の疾病の治療又は予防、
に使用されることが目的とされている物のうち、人又は動物の細胞に培養その他の加工を施したもの;或いは
2)人又は動物の疾病の治療に使用されることが目的とされている物のうち、人又は動物の細胞に導入され、これらの体内で発現する遺伝子を含有させたもの
を指す。特に限定しないが、
1)ヒト細胞加工製品
ア ヒト体細胞加工製品
イ ヒト体性幹細胞加工製品
ウ ヒト胚性幹細胞加工製品
エ ヒト人工多能性幹細胞加製品
2)動物 細胞加工製品
ア 動物体細胞加工製品
イ 動物体性幹細胞加工製品
ウ 動物胚性幹細胞加工製品
エ 動物人工多能性幹細胞加製品
3)遺伝子治療用製品
ア プラスミドベクター製品
イ ウイルスベクター製品
ウ 遺伝子発現治療製品(ア・イを除く。)
が挙げられ、本願発明のB細胞抗体受容体を発現する免疫細胞を有効成分とする再生医療等製品はヒト体細胞加工製品に該当する。
【0034】
[4]本発明のB細胞抗体受容体(BAR)をコードする核酸
本発明によれば、上記[1]に記載するBARのアミノ酸配列をコードする核酸が提供される。別段の規定がない限り、「アミノ酸配列をコードする核酸(又は塩基配列)」には、相互に縮重型であり、同じアミノ酸配列をコードするすべての塩基配列が含まれる。
BARをコードする核酸は、特定された責任酵素のcDNA配列から常法により容易に作製することができる。例えば、BARを構成するa)~d)のうち、a)をコードする核酸は、例えば、体細胞から、mRNAを抽出し、そのmRNAから逆転写によりcDNAを作製し、そのcDNAをテンプレートとして、PCR法等を用いることにより増幅・取得することが出来る。b)、c)及びd)をコードする核酸は、例えば、免疫細胞からmRNAを抽出し、そのmRNAから逆転写によりcDNAを作製し、そのcDNAをテンプレートとして、PCR法等を用いることにより増幅・取得することが出来る。
BARをコードする核酸は、上記の通り取得した各ドメインをコードする核酸を連結することにより、得ることができる。各ドメインをコードする核酸の連結は、例えば、相同組換えによるクローニング、オーバーラップ伸長法等の公知の方法を用いて行うことができる。
作製したBARの核酸は、プラスミドやウイルスベクターに組み込んで用いたり、mRNAを合成して用いたりすることができる。
【0035】
[5]本発明のB細胞抗体受容体(BAR)を発現する免疫細胞の製造方法
本発明のBARを発現する免疫細胞の製造方法は、上記[4]に記載するBARをコードする核酸を免疫細胞に導入する工程を含む。該工程は、BARをコードする核酸を含むウイルスベクター又は非ウイルスベクターを利用して、免疫細胞を生体外で形質転換する方法や、エレクトロポレーション法で実施される。
例えば、本発明に係るBARをコードする核酸を含むウイルスベクター又はプラスミドベクターもしくは核酸そのものを利用して、免疫細胞を生体外で形質転換することにより製造することができる。
ベクターの種類及び用途は特に限定されないが、プラスミドベクター、又はウイルスベクター(例えば、レンチウイルス、アデノウイルス、又はレトロウイルス)であり得る。また、ベクターは、例えば、クローニング用ベクター又は発現用ベクターであり得る。発現用ベクターとしては、大腸菌、又は放線菌等の原核細胞用のベクター、或いは、酵母細胞、昆虫細胞、又は哺乳類細胞等の真核細胞用のベクターを挙げることができる。
【0036】
エレクトロポレーションに用いる機器や方法は特に限定されないが、MaxCyte GT(MaxCyte社)、Nepagene(ネッパジーン社)、Nucleofector(Lonza社)、Gene Pulser(Biorad社)などを用いることができる。
B細胞抗体受容体(BAR)を発現する免疫細胞はa)抗体結合ドメインでB細胞上の抗体を認識した後、その認識シグナルを、ζ鎖を通じてT細胞等の内部に伝達し、膜貫通ドメイン、及び共刺激因子を介して細胞内にて細胞傷害活性を惹起させるシグナルを作動させ、疾患の原因となる抗体を産生するB細胞に対して細胞障害活性を発揮する。
【0037】
[6]本発明のB細胞抗体受容体(BAR)を発現する免疫細胞
本発明のBARを発現する免疫細胞は、上記[5]の製造方法により、上記[4]のBARをコードする核酸が導入及び発現された免疫細胞である。
【0038】
本発明の再生医療等製品(細胞医薬品)は、本発明の免疫細胞を医薬品として利用可能な液体(例えば、生理食塩水)に懸濁させた注射剤(細胞懸濁液)であり、疾患を治療及び/又は予防するために使用することができる。この注射剤は、静脈内、皮内又は皮下等に注射されてもよいし、病変部に直接注入されてもよいし、点滴として全身投与されてもよい。生理学的に許容できる担体又は賦形剤を含んでもよい。
【0039】
本発明の再生医療等製品(細胞医薬品)に含まれる免疫細胞の数は、投与方法や疾患の種類、患者の症状、患者の年齢、性別、体重、疾患の重篤度等に応じて適宜設定されうる。通常は10^8~10^12個/人(好ましくは10^9個/人)となるように設定すればよい。
【0040】
本発明の再生医療等製品(細胞医薬品)の製造方法は、特に限定されない。例えば、1)本発明の免疫細胞を遠心分離等により培地から回収し;2)回収した免疫細胞を洗浄液(例えば、生理食塩水やPBS等)で洗浄し;3)洗浄した免疫細胞を遠心分離等により洗浄液から回収し;4)回収した免疫細胞を医薬品として利用可能な液体(例えば、生理食塩水)に懸濁させることで、経静脈投与が可能な点滴剤として製造されうる。
【0041】
本発明の再生医療等製品(細胞医薬品)の対象となる疾患としては、ライソゾーム病が挙げられる。ライソゾーム病は、ファブリー病、ゴーシェ病、ポンぺ病、ムコ多糖症を含む。また、血友病、血栓性血小板減少性紫斑病等の補充療法が施行される疾患が挙げられる。
【0042】
本発明の再生医療等製品(細胞医薬品)の投与対象(被験体)は、例えば、上記疾患に罹患した動物又は罹患する可能性がある動物である。動物とは、例えば、哺乳類動物であり、好ましくはヒトである。
【0043】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
【実施例】
【0044】
1.GLAの塩基配列・アミノ酸配列の同定
GLAの塩基配列・アミノ酸配列は一般に公開されており、発明者らは、国立生物工学情報センターNCBIのデータベースから配列情報を入手した(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/4NXS_A)。抗体認識配列領域であるD1 domainの塩基配列は、非特許文献(J Mol Biol.2004 Mar 19;337(2):319-35.)に従って同定した。GLA全長タンパク質をコードする塩基配列を配列番号1に、GLAの抗体認識配列領域(D1 domain)をコードする塩基配列を配列番号2に示す。GLAの配列がプラスミドに挿入されたMGC Human GLA Sequence-Verified cDNA(Clone ID:3609235)(Dharmacon社)を購入し、そのプラスミドをテンプレートにし、全長タンパク質(Full Length)の塩基配列は配列番号19及び配列番号20に示すプライマーセット、抗体認識配列領域(D1 region)の塩基配列は配列番号19及び配列番号21に示すプライマーセットを用いて単離した。
【0045】
2.2種類のBARの塩基配列の特定
BARを構成する共刺激因子(4-1BB)の細胞内ドメインと活性化因子(CD3ζ)の細胞内ドメイン、膜貫通ドメイン(TM)とスペーサー配列のアミノ酸配列は、CD19 CAR-T細胞ではすでに有効性が実証されているもの(特許文献;WO2012079000A1 配列番号8)を採用した。膜貫通ドメイン、4-1BB及びCD3ζを結合した塩基配列は、Integrated DNA Technologies社の人工遺伝子合成受託サービスにて合成し、それをテンプレートにして、配列番号22及び配列番号23に示すプライマーセットを用いて、膜貫通ドメイン、4-1BB及びCD3ζをコードする塩基配列を取得した。
上述した全長タンパク質(Full Length)又は抗体認識配列領域(D1 region)の塩基配列と、膜貫通ドメイン、4-1BB及びCD3ζを結合した塩基配列を、In-fusionクローニング法によりpMSCVプラスミドのXhoI-EcoRIに挿入して、BARの塩基配列をクローニングした。
【0046】
3.GLA BAR-T細胞の作製
上記2で特定した2種類のBARの塩基配列は、汎用プラスミドにサブクローニングされ、この配列のSpacerの5’側に複数の制限酵素サイトが導入されている。この制限酵素サイトを利用して抗原の配列を組換えた。抗体結合ドメインであるGLAの全長タンパク質又はD1 regionの塩基配列は、PCRにより増幅され、Sequencingにて配列に変異が入っていないことを確認した上で、前記のプラスミドに組換えを行った。
前述の通り組換えを行ったプラスミドを用いて、GLAの全長タンパク質(Full Length:FL) BARをコードする塩基配列とD1 regionのGLA BARをコードする塩基配列をそれぞれレトロウイルスベクター(
図15、16)もしくはレンチウイルスベクター(
図9、
図10)に挿入し、ウイルスベクターを作製した。
このベクターを用いてヒトT細胞に遺伝子導入し、FL BAR-T細胞とD1 BAR-T細胞を作製した。抗GLA抗体を用いてFACSを行なった。結果を
図2に示す。平均蛍光強度の右方偏移を認め、FL BAR-T細胞とD1 BAR-T細胞において、BARが発現され、蛍光強度が増強したと判断できる。
別の遺伝子導入方法として、mRNA Transfectionを行なった。BARを構成する塩基配列をIn vitro transcription行うためのプラスミドベクター(pmRNAex、
図12、
図17)にサブクローニングし、mMESSAGEmMACHINE T7 Ultra kit, Catalog#AM1345(Thermo Fisher Science社)を用いてBAR mRNAフラグメントを単離した。MaxCyte社のエレクトロポレーション装置によりBARをコードするmRNAを、ヒトT細胞に導入し、タンパク発現量をウエスタンブロッティングにて確認した。エレクトロポレーションから14時間後にβアクチンをハウスキーピング・プロテインとして、BARの発現量の測定を行なった。この結果からGLA BARのmRNAをエレクトロポレーション法によりヒトT細胞へ導入することで、BARが発現することが確認された。なお、D1 regionを抗体結合ドメインとしたBARはFLを抗体結合ドメインとしたBARと比較して、極めて強い発現を示した(
図3)。
【0047】
4.抗GLA抗体過剰発現細胞(anti-GLA scFv 過剰発現M1細胞)の作製
ヒトGLAのタンパク質を接種したマウスの脾臓細胞とミエローマ細胞を融合し、ハイブリドーマを取得した。この雑多なハイブリドーマ集団をHAT培地にてポジティブセレクションして抗GLAモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを取得した(
図4)。
次に、抗GLAモノクローナル抗体産生B細胞からAntibody sequencingを行い、抗GLAモノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域のアミノ酸配列を取得した。取得したアミノ酸配列を元にリンカーを間に入れて抗GLA抗体のscFvの配列を作出した(
図5)。抗GLA抗体のscFvのアミノ酸配列、及びそれをコードする塩基配列をそれぞれ配列番号18及び配列番号9に示す。
上記により特定した抗GLA抗体のscFvの塩基配列をサブクローニングしてプラスミドベクターに組換えを行った(
図6)。
得られたプラスミドベクターをサブクローニングし、レトロウイルスベクターに組換え、マウス骨髄性白血病由来の株化細胞であるM1細胞に感染させることにより抗GLA抗体のscFvを強制発現させたTransfectantを作出し、中和抗体産生B細胞のモデル細胞とした。作製したモデル細胞が抗GLA抗体を過剰発現していることが、この細胞を対象としたGLA-mCherryの結合アッセイより確認された(
図11)。
【0048】
5.CD19 CAR-T細胞の作製
非特許文献(New England Journal of Medicine 2014;371(16):1507-1517)のMaterial and Methodに従って、特許文献(WO2012079000A1 配列番号8)にあるCD19 CAR-Tをコードする塩基配列をレトロウイルスベクターもしくはレンチウイルスベクターに挿入し、レトロウイルスもしくはレンチウイルスベクターを作製後にレトロネクチンを用いてヒトT細胞に遺伝子導入を行い、CD19 CAR-T細胞を作製した。
【0049】
6.In Vitro細胞障害性試験
(方法)
2で作製した2種類のGLA BAR-T細胞と、3で作製した抗GLA抗体のscFvを強制発現させたM1細胞に対する細胞障害性試験の概略を
図7に示す。抗体結合ドメインとしてGLAの全長タンパク質を採用した「FL BAR-T細胞」、とGLAのD1領域を採用した「D1 BAR-T細胞」を検討対象とした。免疫細胞はヒトprimary T細胞で、T細胞培養方法及び細胞障害性試験のプロトコルはCD19 CAR-T細胞のValidationにおける実験と同様の方法である(非特許文献Frontiers in immunology 8,1956(2018)又は非特許文献Science 353,179-184(2016))。方法は、ヒト末梢血より比重遠心法により単核球分画を取得し、これをanti-CD3/CD28抗体を接着させたプレートに移し、T cellの選択的増殖を促した。翌日に、IL-7:20ug/mlとIL-15:10ug/mlでT細胞にエフェクター細胞への分化を抑え、Memory(Stem)細胞に維持しながら増殖刺激を与えた。このサイトカインは、CAR-T細胞の細胞障害活性を最も強く保ち、in vivoに投与した時にもその細胞障害活性が最もよく保持されていた組み合わせとして報告されている。2日目に抗CD19 CAR又はBARをコードする組換えレトロウイルスによって、刺激されたヒトT細胞に遺伝子を導入し、5日目に抗GLA抗体のscFvを発現したM1細胞、感染コントロールとしてのGFPを導入したM1細胞と共培養を開始し、0日目と4日目にFACSにて解析を行った。
BAR-T細胞とGFPを遺伝子導入したM1細胞との共培養は遺伝子導入コントロールとして、CD19 CAR-T細胞と抗GLA抗体のscFv過剰発現M1細胞との共培養は非特異的な障害の可能性を排除するために供した。
【0050】
(結果)
結果を
図8に示す。共培養開始から4日後にFACSによる解析を実施した。X軸は、APC 抗CD3抗体で共培養細胞を染色してFACSにかけている。M1細胞の生細胞率は、コントロールであるGFP導入M1細胞とBAR-T細胞との共培養(
図8下段 GFP)では72.3%を示し、抗GLA抗体のscFv過剰発現したM1細胞とCD19 CAR-T細胞との共培養(
図8下段 CD19)では66.9%を示し、非特異的反応がないことを確認した。一方、抗GLA抗体のscFv過剰発現したM1細胞とFL BAR-T細胞との共培養(
図8下段 FL)ではM1細胞は56.4%、抗GLA抗体のscFv過剰発現したM1細胞とD1 BAR-T細胞との共培養(
図8下段 D1)ではM1細胞は50.8%を示し、コントロールと比較し有意にM1細胞の細胞数を減少させることに成功した。また、この細胞障害性試験の結果、及びタンパク質発現の強度・安定性からD1 regionを細胞外ドメインとするGLA BAR-T細胞はより抗GLA抗体産生B細胞の特異的除去に有効であると判断された。
【0051】
7.標的細胞(anti-GLA scFv発現細胞)の調製
白血病のヒト前駆B細胞株であるNalm6(RCB1933)(理研セルバンクより購入)に、抗GLA抗体のscFvをコードしたレトロウイルスベクター(
図21)を導入し、BAR-T細胞の標的モデル細胞を作製した。レトロウイルスベクター導入後mCherryでソーティングを行い、ビオチン標識した抗Fab2抗体を反応させた後、蛍光標識したストレプトアビジンを反応させ、解析した結果、作成した標的モデル細胞による抗GLA抗体の発現が確認された(
図24)。
【0052】
8.GLA BAR-T細胞の調製
ヒト白血病T細胞株であるJurkatに、hGLAのアミノ酸配列(配列番号10、DNA配列は配列番号1)をコードしたレトロウイルスベクター(
図20)を導入し、BAR-T細胞を作製した。レトロウイルスベクターで遺伝子導入後、GFPでソーティングし(
図25)、抗GLA抗体を反応させた後、蛍光標識した二次抗体を反応させ、解析した結果、BARの発現を確認した(
図26)。
【0053】
9.混合培養によるBAR-T細胞の活性化確認
8で作製したBAR-T細胞(Jurkat-GLA-BAR2-EGFP:Effector)と7で作製した標的細胞(NALM6-scFv-GLA-mCherry:Target)を混合比率1:0、2:1、1:1で24時間混合培養し、CD69の検出試験を行った。Jurkatは活性化するとCD69の発現が増加することが知られており、Jurkatに導入したBAR-T細胞が、標的細胞の抗GLA抗体のscFvと結合し、活性化シグナルが入るならば、混合比に依存して、CD69の発現が増加すると考えられた。混合培養を実施した結果、標的細胞が存在していないコントロール(E:T=1:0)と比較して、標的細胞の存在下では、CD69の発現が増加しており、標的細胞が増加(E:T=2:1→1:1)するとCD69の発現はさらに増加した(
図27)。このことより、BAR-T細胞は、抗原特異的に活性化することが確認された。
【0054】
10. BAR-T細胞の調製(ADAMTS13)
ヒト白血病T細胞株であるJurkatに、ADAMTS13のアミノ酸配列をコードしたレトロウイルスベクター(
図22)を導入し、BAR-T細胞を作製した。レトロウイルスベクターで遺伝子導入後、GFPでソーティングし、HA-TAGでADAMTS13の発現を確認した(
図28、29)。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本件発明を用いることにより、特定の抗体を産生するB細胞を特異的に傷害・排除することができるため、酵素補充療法を行っているにもかかわらず、当該酵素に対する抗体が産生され、十分な治療効果を得られないライソゾーム病等の患者の改善が期待できる。また、本件発明は、抗体に起因する疾患に対する治療薬としても期待できる。
【配列表フリーテキスト】
【0056】
配列番号 1 <223> α-GAL全長タンパク質をコードするDNA
配列番号 2 <223> α-GAL D1領域タンパク質をコードするDNA
配列番号 3 <223> ADAMTS13のスペーサードメインをコードするDNA
配列番号 4 <223> ADAMTS13のシステインリッチドメインをコードするDNA
配列番号 5 <223> シグナル配列Leader2をコードするDNA
配列番号 6 <223> 膜貫通ドメインをコードするDNA
配列番号 7 <223> 4-1BBをコードするDNA
配列番号 8 <223> CD3ζをコードするDNA
配列番号 9 <223> 抗GLA抗体のscFvをコードするDNA
配列番号 10 <223> α-GAL全長タンパク質
配列番号 11 <223> α-GAL D1領域タンパク質
配列番号 12 <223> ADAMTS13のスペーサードメイン
配列番号 13 <223> ADAMTS13のシステインリッチドメイン
配列番号 14 <223> シグナル配列Leader2タンパク質
配列番号 15 <223> 膜貫通ドメインタンパク質
配列番号 16 <223> 4-1BBタンパク質
配列番号 17 <223> CD3ζタンパク質
配列番号 18 <223> 抗GLA抗体のscFvタンパク質
配列番号 19 <223> α-GALのプライマー(前)
配列番号 20 <223> α-GALのプライマー(後:全長用)
配列番号 21 <223> α-GALのプライマー(後:D1領域用)
配列番号 22 <223> TM, 4-1BB, CD3ζのプライマー(前)
配列番号 23 <223> TM, 4-1BB, CD3ζのプライマー(後)
配列番号 24 <223> シグナル配列Leader1をコードするDNA
配列番号 25 <223> シグナル配列Leader1タンパク質
配列番号 26 <223> ヒトCD8シグナルペプチドをコードするDNA
配列番号 27 <223> ヒトCD8シグナルペプチド
配列番号 28 <223> HAをコードするDNA
配列番号 29 <223> HAタンパク質
配列番号 30 <223> IgG4抗体ヒンジ領域をコードするDNA
配列番号 31 <223> IgG4抗体ヒンジ領域タンパク質
配列番号 32 <223> ヒトIgG抗GLA抗体L鎖をコードするDNA
配列番号 33 <223> ヒトIgG抗GLA抗体L鎖タンパク質
配列番号 34 <223> mCherryをコードするDNA
配列番号 35 <223> mCherryタンパク質
配列番号 36 <223> 抗GLA抗体のscFvをコードするDNA
配列番号 37 <223> ADAMTS13のスペーサードメインをコードするDNA
配列番号 38 <223> ADAMTS13のスペーサードメイン
配列番号 39 <223> ヒトIgG抗ADAMTS13抗体L鎖シグナルペプチドをコードするDNA
配列番号 40 <223> ヒトIgG抗ADAMTS13抗体L鎖シグナルペプチド
配列番号 41 <223> 抗ADAMTS13抗体のscFvをコードするDNA
配列番号 42 <223> 抗ADAMTS13抗体のscFv
配列番号 43 <223> ヒトCD8a膜貫通ドメインをコードするDNA
配列番号 44 <223> ヒトCD8a膜貫通ドメイン
【配列表】