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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-27
(45)【発行日】2025-04-04
(54)【発明の名称】ヘルメット
(51)【国際特許分類】
   A42B 3/14 20060101AFI20250328BHJP
【FI】
A42B3/14
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020199161
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086889
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-11-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000149930
【氏名又は名称】株式会社谷沢製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】緑川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】大月 信一
(72)【発明者】
【氏名】崔 成根
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-135930(JP,U)
【文献】特開2020-066835(JP,A)
【文献】特開2002-105736(JP,A)
【文献】特開2000-303244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人頭を覆う殻体と、該殻体と人頭との間に設けられる内装体とを備え、前記内装体は、その頭頂部側から下方に延びる複数の脚部を備え、各脚部は、その下端部に前記殻体の係止部に係止することにより前記殻体に連結する連結部を備え、前記連結部は、前記殻体の下方に向かって移動させることにより前記係止部への係止が解除されるヘルメットにおいて、
前記脚部は、該連結部を前記殻体の下方に向かって移動させる際に指掛け可能となる指掛け部を備えており、
前記指掛け部は、長軸及び短軸を有する筒状をなしており、その短軸側の外周部分が前記脚部の延出方向に沿った両側縁部に一致するように前記脚部から立設されており、
前記指掛け部は、前記脚部の延びる方向に対して交差する方向に並列して複数配置されていることを特徴とするヘルメット。
【請求項2】
前記指掛け部は、前記脚部から前記殻体の内面に向かって突出する形状に形成されていることを特徴とする請求項1記載のヘルメット。
【請求項3】
前記指掛け部は、前記係止部への係止が解除されるときに移動する前記連結部の移動軌跡の延長線上に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のヘルメット。
【請求項4】
前記指掛け部に対応する位置に、前記連結突起との係合を解除するときの前記連結部の移動方向を視覚的に案内する表示部が設けられていることを特徴とする請求項1~3の何れか1項記載のヘルメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘルメットは殻体と内装体とで構成される。内装体は、人頭に装着するために頭頂部から下方に延びる複数の脚部を備えている。内装体は、脚部の下端部を、殻体の下縁側の内面に連結することによって殻体に固定される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
殻体の下縁側の内面には、殻体の周方向に所定間隔を存して複数の鋲状部が設けられている。鋲状部は、殻体から突出する鋲軸と、鋲軸の頂部で円盤状に拡径された鋲頭とを備える形状とされている。
【0004】
一方、脚部の下端部には、鋲状部に掛止するための掛止孔が形成されている。脚部の掛止孔は、鋲頭が挿通自在となる大径開口部と、鋲軸の外径に略対応する小径開口部とが連続して隣り合う所謂ダルマ孔となっている。
【0005】
脚部を殻体に連結するときには、掛止孔の大径開口部に鋲状部の鋲頭を通し、次いで、掛止孔を殻体内面に沿って殻体の頭頂方向に向かってスライドさせ、鋲軸を小径開口部に嵌め込む。このとき、掛止孔の大径開口部と小径開口部との連続部分の幅寸法が鋲軸の直径寸法よりも小さいことにより、掛止孔の小径開口部に嵌め込まれた鋲軸は、大径開口部側に移動することはなく、鋲状部への掛止孔の掛止状態が維持される。
【0006】
また、内装体の交換等に際して、脚部を殻体から取り外すときには、脚部を殻体に連結するときと反対に、掛止孔を殻体内面に沿って殻体の下方に向かってスライドさせ、鋲軸を大径開口部から小径開口部に移動させる。これにより、掛止孔の大径開口部から鋲頭が外れ、殻体から脚部が外れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実開昭50-040420(第1図、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、ヘルメットを着用している状態で、殻体から内装体が不用意に外れないようにする必要があるために、鋲状部への掛止孔の掛止状態は強固に維持される。
【0009】
このため、脚部を殻体から取り外すときには、掛止孔を鋲状部から外すために、大きな力が必要となり、円滑な取り外しが行えない不都合あった。
【0010】
上記の点に鑑み、本発明は、殻体と脚部との連結状態が強固に維持されていても、殻体からの脚部の取り外し作業を円滑に行うことができるヘルメットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するために、本発明は、人頭を覆う殻体と、該殻体と人頭との間に設けられる内装体とを備え、前記内装体は、その頭頂部側から下方に延びる複数の脚部を備え、各脚部は、その下端部に前記殻体の係止部に係止することにより前記殻体に連結する連結部を備え、前記連結部は、前記殻体の下方に向かって移動させることにより前記係止部への係止が解除されるヘルメットにおいて、前記脚部は、該連結部を前記殻体の下方に向かって移動させる際に指掛け可能となる指掛け部を備えており、前記指掛け部は、長軸及び短軸を有する筒状をなしており、その短軸側の外周部分が前記脚部の延出方向に沿った両側縁部に一致するように前記脚部から立設されており、前記指掛け部は、前記脚部の延びる方向に対して交差する方向に並列して複数配置されていることを特徴とする。
【0012】
上記構成により、脚部を殻体から取り外すときには、指掛け部に指を掛けて脚部の連結部を殻体の下方に向かって移動させる。これにより、連結部に対して殻体の係止部からの外し方向への力を効率よく集中させることができる。よって、殻体と脚部との連結状態が強固に維持されていても、殻体からの脚部の取り外し作業を円滑に行うことができる。
【0013】
また、本発明において、前記指掛け部は、前記脚部から前記殻体の内面に向かって突出する形状に形成されていることを特徴とする。
【0014】
これによれば、殻体と脚部との間に、指を差し込むための隙間を形成することができ、指掛け部に容易に指を掛けることができるので、殻体からの脚部の取り外し作業を一層円滑に行うことができる。
【0015】
また、本発明において、前記指掛け部は、前記係止部への係止が解除されるときに移動する前記連結部の移動軌跡の延長線上に設けられていることを特徴とする。
【0016】
これによれば、指掛け部に付与された力が連結部に効率よく伝達され、連結部が係止部に強固に係止されていても、連結部の係止部への係止を円滑に解除することができる。
【0017】
また、本発明においては、前記指掛け部に対応する位置に、前記連結突起との係合を解除するときの前記連結部の移動方向を視覚的に案内する表示部が設けられていることが好ましい。
【0018】
表示部の案内により、取り外す際の移動方向を容易に確認することがきるだけでなく、表示部の位置により指掛け部の存在も作業者に容易に認識させることができるので、殻体からの脚部の取り外し作業を一層円滑に行うことができる。
また、本発明においては、前記指掛け部は、前記脚部の延びる方向に対して平面視で交差する方向に並列して複数配置されている
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態であるヘルメットの説明図。
図2】ハンモックを展開して示す斜視図。
図3】脚部の説明的側面図。
図4】殻体に連結した連結部の説明的断面図。
図5】連結部の説明的平面図。
図6】規制部を示す説明的斜視図。
図7】規制部の作用を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、本実施形態のヘルメットは、硬質材料によりドーム状に形成された殻体1を備えている。殻体1の内部には、ハンモック2が設けられている。ハンモック2は、内装体を構成している。内装体は、ハンモック2以外にも、ヘッドバンド3や図示しない顎ひも等を備えている。
【0021】
ハンモック2は、合成樹脂(例えば低密度ポリエチレン等)を材料として射出成型により形成されている。ハンモック2は、図2に示すように、頭頂環状部4と、複数(本実施形態においては4本)の脚部5と、頭頂環状部4に連設された規制部6と、互いに隣り合う脚部5の間に設けられた衝撃吸収部7とを備えている。
【0022】
また、脚部5の一方側縁(前側縁)にはヘッドバンド3を連結するヘッドバンド連結片8が設けられ、脚部5の他方側縁(後側縁)には図示しない顎ひもを連結する顎ひも連結片9が設けられている。
【0023】
頭頂環状部4は、前後方向に長い略楕円形状に形成されている。頭頂環状部4の内側には、張出部10が設けられている。張出部10は、頭頂環状部4の人頭への接触範囲を拡大して、装着感を向上させる。なお、本実施形態においては、軽量化のために、張出部10の形状に沿って抜き孔11が形成されている。
【0024】
各脚部5は、帯状に形成され、その上端が頭頂環状部4に連結されている。各脚部5の下端(先端)には連結部12が設けられている。
【0025】
また、各脚部5には、夫々、複数の(本実施形態では2つの)凸部13,14が形成されている。脚部5においては、凸部13,14が厚肉部とされ、凸部13,14と連結部12とを除く他の部分が薄肉部15とされている。
【0026】
薄肉部15は柔軟性が高く、凸部13,14は柔軟性が低い。このため、脚部5が人頭に沿って湾曲したときに、図3に示すように、部分的に曲率が異なり、人頭に接する部分と接しない部分(或いは、人頭に強く当たる部分と弱く当たる部分)が生じる。
【0027】
脚部5が人頭に接するとき、脚部5の幅は広いよりも狭い方がハンモック2を軽量とすることができるが、その反面、人頭に対して幅の狭い脚部5が当接すると、殻体1の荷重が連続する線状に人頭に付与されて(例えば皮膚に食い込むような感触が生じて)、装着感が低下する。
【0028】
このとき、脚部5に柔軟性が高い薄肉部15及び柔軟性が低い凸部13,14が形成されていることにより、脚部5が人頭に対して断続的に当接し、殻体1の荷重が連続する線状に人頭に付与される場合に比べて、皮膚に食い込むような感触等が軽減されるので、装着感の低下が抑制される。
【0029】
また、ハンモック2は合成樹脂材料を用いて射出成形により形成されている。この射出成形においては、金型の脚部5に対応する部分が比較的狭く長い。このような狭く長い金型内部を溶融樹脂が流れるときには、流動抵抗等に起因する成型不良が生じやすいが、金型の凸部13,14(厚肉部)に対応する部分が溶融樹脂溜まりとなる。よって、金型の脚部5に対応する比較的狭い部分の距離が実質的に短くなり、成型不良の発生を防止することができる。
【0030】
更に、脚部5の凸部13,14は、脚部5と殻体1との間に空隙を形成する。そして、複数の凸部13,14のうち、最も連結部12に近い位置に形成されている凸部13は、指掛け部として機能する。
【0031】
殻体1の内面には、脚部5を連結する際に連結部12を係止するための鋲状部16(係止部)が設けられている。鋲状部16は、図4に示すように、殻体1の内面に突出する鋲軸16aと、鋲軸16aの頂部で拡径する円盤状の鋲頭16bとを備えている。
【0032】
連結部12には、図2及び図5に示すように、鋲状部16が貫通自在となる大きさの大径開口部12aと、鋲状部16が貫通不能であり鋲軸16aの外径に略対応する大きさの小径開口部12bとが隣接且つ連続して形成されている。小径開口部12bは大径開口部12aに対して下方位置(脚部5の先端側)に形成されている。本実施形態における連結部12の構造は、一般にダルマ孔式といわれている。
【0033】
脚部5を殻体1に連結するときには、連結部12の大径開口部12aに鋲状部16の鋲頭16bを貫通させ、次いで、連結部12を殻体1の内面に沿って殻体1の頭頂方向に向かってスライドさせ、鋲軸16aを小径開口部12bに嵌め込む。
【0034】
殻体1から脚部5を外すときには、連結部12を殻体1の内面に沿って殻体1の下縁に向かってスライドさせ、相対的に、鋲状部16の鋲軸16aを小径開口部12bから大径開口部12aに移動させる。
【0035】
このとき、図3に示した脚部5の凸部13(指掛け部)に指を掛けることにより、連結部12のスライド操作を確実に行うことができる。
【0036】
しかも、指掛け部として機能する脚部5の凸部13は、鋲状部16の鋲軸16aが連結部12の小径開口部12bから大径開口部12aへ移動するときの移動軌跡の延長線(図示せず)上に設けられている。これにより、凸部13に付与された力が連結部12に効率よく伝達され、鋲軸16aが小径開口部12bに強固に嵌まり込んでいても、鋲軸16aと小径開口部12bとの係合を円滑に解除することができる。
【0037】
そして、大径開口部12aに移動した鋲状部16の鋲頭16bを大径開口部12aから抜き取ることにより、殻体1から脚部5を外すことができる。
【0038】
なお、図5に示すように、取り外し時のスライド方向を示す案内マーク17(表示部)を凸部13(指掛け部)に設けておくことにより、取り外し時のスライド操作方向を容易に視認することができるだけでなく、指を掛ける凸部13(指掛け部)の位置も判別し易くなる。
【0039】
また、本実施形態においては、図2に示すように、脚部5の両側にヘッドバンド連結片8と顎ひも連結片9とが設けられていることにより、これらを指掛け片として利用することも可能である。即ち、ヘッドバンド連結片8と顎ひも連結片9とに指を掛けて、連結部12を殻体1の内面に沿って殻体1の下縁に向かってスライドさせることで、殻体1から脚部5を容易に外すことができる。
【0040】
また、本実施形態においては、ハンモック2の脚部5と殻体1との連結構造として、殻体1の鋲状部16と所謂ダルマ孔式の連結部12とによるものを挙げたが、これ以外に、本発明の指掛け部は、図示しないが、所謂ブラケット式の連結構造のもの(例えば特許第6348464号公報参照)に適用しても同様の効果を得ることができる。
【0041】
次に、衝撃吸収部7について説明する。衝撃吸収部7は、前方、後方、左右の4か所に設けられている。このうち、左右の衝撃吸収部7は、規制部6に連設されている。
【0042】
規制部6は、図2に示すように、頭頂より僅かに前側寄りで且つ頭頂から左右にずれた位置に一対設けられ、図6に示すように、規制部本体61と、規制部本体61を支持する規制部支持部62とを備えている。規制部支持部62は、頭頂環状部4に一体に設けられている。規制部支持部62は、延出部63を介して左右の衝撃吸収部7を支持している。
【0043】
規制部本体61は、複数の六角筒状の筒状体61aを複数集合させたハニカム形状に形成されている。筒状体61aが六角筒状であることにより、隣接する筒状体61a同士で周壁を共有するハニカム形状の規制部本体61を構成することができる。
【0044】
規制部本体61は、複数の筒状体61aを有する構造であることにより、規制部本体61の周壁側から内方側にかけて、段階的に座屈強度が増加する構造とすることができる。
【0045】
即ち、図7に説明の便宜上誇張して示すように、殻体1の頭頂部に衝撃荷重を受けると、殻体1の頂部が凹入変形し、殻体1内面と人頭との距離が小さくなる。これに伴い、殻体1が圧接した規制部本体61は、その上端部の周縁角部の一部に座屈変形が生じる。一方、規制部本体61の他部には座屈変形が殆ど生じることなく殻体1の人頭への接近を規制するので、殻体1の人頭への接触が防止される。
【0046】
このように、規制部本体61によって、殻体1の人頭への接触を防止する作用が得られるので、ハンモック2の脚部5への負担を極めて小さくすることができる。従って、脚部5を比較的薄く或いは比較的細くすることが可能となるので、合成樹脂材料を少なくすることによるコストの低減や、ハンモック2の軽量化が可能となる。
【0047】
また、図6に示すように、規制部支持部62は板状に形成されて規制部本体61の底部を閉塞しており、例えば、規制部本体61の筒状体61aが直接人頭に接しないようにして、装着感の低下を防止している。
【0048】
上記構成によって、規制部6は、規制部本体61を構成する各筒状体61aの周壁の壁厚、筒状体61aの数(本発明における規制部の筒状体は1つでもよいし、複数でもよい)、筒状体61aの高さ、筒状部61aの径を、適宜設定することにより、殻体1から受ける圧接に伴う潰れ速度や潰れ形状等を容易に調整することができる。
【符号の説明】
【0049】
1…殻体、2…ハンモック(内装体)、3…ヘッドバンド(内装体)、4…頭頂環状部、5…脚部、6…規制部、7…衝撃吸収部、8…ヘッドバンド連結片、9…顎ひも連結片、10…張出部、11…抜き孔、12…連結部、13,14…凸部(厚肉部)、15…薄肉部、13…凸部(指掛け部)、16…鋲状部(係止部)、16a…鋲軸、16b…鋲頭、12a…大径開口部、12b…小径開口部、17…案内マーク(表示部)、61…規制部本体、62…規制部支持部、63…延出部、61a…筒状体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7