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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-27
(45)【発行日】2025-04-04
(54)【発明の名称】薬剤放出器具
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20250328BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250328BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20250328BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20250328BHJP
   A61P 19/06 20060101ALI20250328BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20250328BHJP
   A61P 5/24 20060101ALI20250328BHJP
   A61P 5/00 20060101ALI20250328BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20250328BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20250328BHJP
   A61P 9/06 20060101ALI20250328BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20250328BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20250328BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20250328BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20250328BHJP
   A61K 47/16 20060101ALI20250328BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20250328BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20250328BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20250328BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20250328BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20250328BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20250328BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20250328BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20250328BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20250328BHJP
   A61P 23/02 20060101ALI20250328BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20250328BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20250328BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20250328BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250328BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20250328BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20250328BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20250328BHJP
   A61P 1/08 20060101ALI20250328BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20250328BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20250328BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20250328BHJP
   A61M 31/00 20060101ALI20250328BHJP
【FI】
A61M37/00
A61K45/00
A61P37/06
A61P29/00 101
A61P19/06
A61P3/10
A61P5/24
A61P5/00
A61P19/00
A61P9/04
A61P9/06
A61P31/04
A61P29/00
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/10
A61K47/16
A61K47/06
A61K47/18
A61K47/22
A61K47/12
A61K47/14
A61K9/70
A61P37/08
A61P25/00
A61P9/12
A61P23/02
A61P25/04
A61P21/02
A61P31/10
A61P35/00
A61P13/10
A61P25/08
A61P25/16
A61P1/08
A61P25/18
A61P25/28
A61P37/02
A61M31/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021112466
(22)【出願日】2021-07-07
(65)【公開番号】P2023009319
(43)【公開日】2023-01-20
【審査請求日】2024-03-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)令和3年5月26日領布 大阪商工会議所発行 第1回例会次世代医療システム産業化フォーラム2021 (2)令和3年5月28日オンライン開催 第1回例会次世代医療システム産業化フォーラム2021
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(72)【発明者】
【氏名】後藤 真宏
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 道子
【審査官】星名 真幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-516848(JP,A)
【文献】特開平05-212122(JP,A)
【文献】特開2006-325700(JP,A)
【文献】特開2000-070380(JP,A)
【文献】米国特許第05999847(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
A61M 31/00
A61K 45/00
A61P 37/06
A61P 29/00
A61P 19/06
A61P 3/10
A61P 5/24
A61P 5/00
A61P 19/00
A61P 9/04
A61P 9/06
A61P 31/04
A61K 9/08
A61K 47/02
A61K 47/10
A61K 47/16
A61K 47/06
A61K 47/18
A61K 47/22
A61K 47/12
A61K 47/14
A61K 9/70
A61P 37/08
A61P 25/00
A61P 9/12
A61P 23/02
A61P 25/04
A61P 21/02
A61P 31/10
A61P 35/00
A61P 13/10
A61P 25/08
A61P 25/16
A61P 1/08
A61P 25/18
A61P 25/28
A61P 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源部と、
前記光源部からの光が照射される薬剤を備える薬剤供給部と
を備え、
前記薬剤供給部は、前記薬剤を含有する薬剤シート、および、前記光を透過する材料からなる透過シートをさらに備え、
前記薬剤シートは、前記透過シートに積層されており、
前記薬剤供給部は、前記光源部からの前記光によって前記薬剤を放出または射出する、薬剤放出器具。
【請求項2】
前記光源部は、レーザまたは発光ダイオードである、請求項1に記載の薬剤放出器具。
【請求項3】
前記レーザまたは発光ダイオードは、波長可変レーザである、請求項2に記載の薬剤放出器具。
【請求項4】
前記光を透過する材料は、前記光が可視光領域の波長を有する場合には、ガラス、石英およびサファイアからなる群から選択される材料であり、前記光が赤外領域の波長を有する場合には、ゲルマニウム(Ge)、シリコン(Si)、シリコンカーバイド(SiC)、フッ化カルシウム(CaF)、フッ化バリウム(BaF)、フッ化マグネシウム(MgF)、タリウムハライド混晶、フッ化リチウム(LiF)、二酸化ケイ素(SiO)、および、セレン化亜鉛(ZnSe)からなる群から選択される材料である、請求項1~3のいずれかに記載の薬剤放出器具。
【請求項5】
前記薬剤シートは、ステロイド系抗炎症剤、非ステロイド系抗炎症剤、抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤、中枢神経作用剤、ホルモン剤、抗高血圧症剤、強心剤、抗不整脈剤、冠血管拡張剤、局所麻酔剤、鎮痛剤、筋弛緩剤、抗真菌剤、抗悪性腫瘍剤、尿失禁症剤、抗てんかん剤、抗パーキンソン剤、制吐剤、頻尿治療剤、Ca拮抗剤、向精神薬、抗めまい剤、心臓・血管系薬剤、鎮咳去痰剤、脳循環改善剤、脳血管性痴呆剤、アルツハイマー治療剤、ポリペプチド系ホルモン剤、免疫調節剤、利胆剤、利尿剤、糖尿病用剤、痛風治療剤、禁煙補助剤、ビタミン類、プロスタグランジン類、興奮覚醒剤、催眠鎮静剤、自律神経用剤、および、末梢血管拡張剤からなる群から選択される薬効成分を含有する、請求項1~4のいずれかに記載の薬剤放出器具。
【請求項6】
前記光源部は、前記薬効成分を励起するフォトンエネルギーを有する光を発する、請求項5に記載の薬剤放出器具。
【請求項7】
前記光源部からの光の照射を制御する制御部を備える、請求項1~6のいずれかに記載の薬剤放出器具。
【請求項8】
前記制御部は、前記光の照射時間、前記光の照射タイミング、および、前記光の波長からなる群から少なくとも1つ選択される光照射を制御する、請求項7に記載の薬剤放出器具。
【請求項9】
前記薬剤供給部は、前記光源部に対して取り外し可能に設けられている、請求項1~8のいずれかに記載の薬剤放出器具。
【請求項10】
前記薬剤シートは、前記薬効成分に加えて、保湿成分、水、水溶性高分子、架橋剤のうち少なくともいずれか一つをさらに含む、請求項5または6に記載の薬剤放出器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤放出器具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、針を使用しない無針注射器が開発され、穿孔痛の軽減が報告されている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1は、容器に収容される薬液を当該容器の先端側に設けられた噴射口から噴射して皮膚より注入するための噴射式の無針注射器であって、熱を吸収する吸熱部、および熱を放出する放熱部を備えるサーモモジュールと、噴射口の近傍で前記サーモモジュールの吸熱部側に設けられ、皮膚の注射部位を冷却するための冷却部と、サーモモジュールの放熱部側に設けられ、容器内の薬液を暖めるための加温部とを有する無針注射器を開示する。特許文献1によれば、噴射口の近傍でサーモモジュールの吸熱部側に設けられた冷却部が皮膚に接触させられて、注射部位の皮膚がすみやかに冷却されるため、真皮層に集中する神経を麻痺させ、薬液の注入時の痛みを簡易な構成で軽減することができることを報告する。しかしながら、特許文献1の無針注射器を用いても、皮下組織層あるいは筋肉組織層に薬液を投与できるに過ぎず、深層部への投与はできない。
【0003】
一方、レーザ分子注入法を用いた治療方法が報告されている(例えば、特許文献2を参照)。特許文献2によれば、光ファイバーの中空部に存在する溶液中に分散もしくは溶解された有機分子を、生体組織中に注入出来るので、ガン組織周辺のみ光増感分子を注入し、それと組み合わせたレーザー光により生ずる一重項酸素によりガン組織を破壊することが可能である。しかしながら、特許文献2の技術を用いても、内臓ガン組織近傍に光ファイバーにてアプローチはできるものの、臓器深層部に薬剤を均質に注入することは困難であった。
【0004】
また、別のレーザ分子注入法を用いた技術が報告されている(例えば、特許文献3を参照)。特許文献3によれば、分子を含む分子注入源に対して集光された光を照射することで、少なくとも光の進行方向に設置された基板に上記分子を注入する方法であって、上記分子注入源に含まれる分子を、上記分子注入源と上記基板との間に挿入される液体を介して、上記基板に注入する。このような技術を用いれば、50nm以下の微小な領域への分子の注入や固定のみならず、材料の加工も可能である。このような技術のさらなる産業応用が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-80832号公報
【文献】特許第3621283号公報
【文献】特許第5205669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上から、本発明の課題は、光を用いた薬剤放出器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による薬剤放出器具は、光源部と、前記光源部からの光が照射される薬剤を備える薬剤供給部とを備え、前記薬剤供給部は、前記光源部からの前記光によって前記薬剤を放出または射出し、これにより上記課題を解決する。
前記光源部は、レーザまたは発光ダイオードであってよい。
前記レーザまたは発光ダイオードは、波長可変レーザであってよい。
前記薬剤供給部は、前記光を透過する材料からなり、前記薬剤が充填される容器をさらに備え、前記容器の前記薬剤が放出または射出される面は、多孔質材料、高分子材料、繊維集合体、浸透膜、および、逆浸透膜からなる群から選択される材料からなってもよい。
前記光を透過する材料は、前記光が可視光領域の波長を有する場合には、ガラス、石英およびサファイアからなる群から選択される材料であり、前記光が赤外領域の波長を有する場合には、ゲルマニウム(Ge)、シリコン(Si)、シリコンカーバイド(SiC)、フッ化カルシウム(CaF)、フッ化バリウム(BaF)、フッ化マグネシウム(MgF)、タリウムハライド混晶、フッ化リチウム(LiF)、二酸化ケイ素(SiO)、および、セレン化亜鉛(ZnSe)からなる群から選択されてもよい。
前記薬剤供給部は、薬剤を供給するリザーバタンクと、前記リザーバタンクから供給される前記薬剤を保持する多孔質体とを備えてもよい。
前記薬剤は、免疫抑制剤、抗リウマチ薬、痛風治療薬、糖尿病治療薬、性ホルモン剤、ホルモン剤、骨代謝改善薬、強心薬、抗不整脈薬、抗菌剤、抗がん剤、抗炎症薬、がん治療用ウイルス、および、光増感剤からなる群から選択される薬効成分を含有してもよい。
前記薬剤は、前記薬効成分に加えて、前記薬効成分を分散する溶媒を含有してもよい。
前記溶媒は、水、生理食塩水、エタノール、アセトニトリル、クロロベンゼン、クロロホルム、シクロヘキサン、1,2-ジクロロエテン、ジクロロメタン、1,2-ジメトキシエタン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N‐ジメチルホルムアミド、1,4-ジオキサン、2-エトキシエタノール、エチレングリコール、ホルムアミド、ヘキサン、メタノール、2-メトキシエタノール、メチルブチルケトン、メチルシクロヘキサン、N-メチルピロリドン、ニトロメタン、ピリジン、スルホラン、テトラリン、トルエン、1,1,2-トリクロロエテン、キシレン、酢酸、アセトン、アニソール、ブタノール、酢酸ブチル、ブチルメチルエーテル、クメン、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ギ酸エチル、ギ酸、へプタン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、3-メチル-1-ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-メチル-1-プロパノール、ペンタン、1-ペンタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、酢酸プロピル、テトラヒドロフラン、1,1‐ジエトキシプロパン、1,1-ジメトキシメタン、2,2-ジメトキシプロパン、イソオクタン、イソプロピルエーテル、メチルイソプロピルケトン、メチルテトラヒドロフラン、石油エーテル、トリクロロ酢酸、および、トリフルオロ酢酸からなる群から少なくとも1つ選択されてもよい。
前記光源部は、前記薬効成分を励起するフォトンエネルギーを有する光を発してもよい。
前記薬剤供給部は、前記薬剤を含有する薬剤シートを備えてもよい。
前記薬剤シートは、ステロイド系抗炎症剤、非ステロイド系抗炎症剤、抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤、中枢神経作用剤、ホルモン剤、抗高血圧症剤、強心剤、抗不整脈剤、冠血管拡張剤、局所麻酔剤、鎮痛剤、筋弛緩剤、抗真菌剤、抗悪性腫瘍剤、尿失禁症剤、抗てんかん剤、抗パーキンソン剤、制吐剤、頻尿治療剤、Ca拮抗剤、向精神薬、抗めまい剤、心臓・血管系薬剤、鎮咳去痰剤、脳循環改善剤、脳血管性痴呆剤、アルツハイマー治療剤、ポリペプチド系ホルモン剤、免疫調節剤、利胆剤、利尿剤、糖尿病用剤、痛風治療剤、禁煙補助剤、ビタミン類、プロスタグランジン類、興奮覚醒剤、催眠鎮静剤、自律神経用剤、および、末梢血管拡張剤からなる群から選択される薬効成分を含有してもよい。
前記薬剤供給部は、前記光を透過する材料からなる透過シートをさらに備え、前記薬剤シートは、前記透過シートに積層されていてもよい。
前記光源部からの光の照射を制御する制御部を備えてもよい。
前記制御部は、前記光の照射時間、前記光の照射タイミング、および、前記光の波長からなる群から少なくとも1つ選択される光照射を制御してもよい。
前記薬剤供給部は、前記光源部に対して取り外し可能に設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明による薬剤放出器具は、光源部と、光源部からの光が照射される薬剤を備える薬剤供給部とを備え、薬剤供給部では、薬剤中の薬効成分が光を吸収し、その光によって薬剤を放出または射出するので、無針とすることができ、患者の負担軽減を可能にする。光により誘起される衝撃波、キャビテーションバブル、分子振動を用いるので、薬効成分はほぼ未分解のまま、皮下組織層あるいは筋肉組織層のみならず、深層部への投与も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明による薬剤放出器具を示す模式図
図2】本発明による薬剤放出器具を用いた治療の様子を示す模式図
図3】本発明による別の薬剤供給部を示す模式図
図4】本発明によるさらに別の薬剤放出器具を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の薬剤放出器具は、光源部と、光源部からの光が照射される薬剤を備える薬剤供給部とを備え、薬剤供給部が、光源部からの光によって薬剤を放出または射出する。以下、図面を参照しながら本発明の薬剤放出器具を具体的に説明する。なお、同様の要素には同様の番号を付し、その説明を省略する。
【0011】
(実施の形態1)
実施の形態1では、分子ジェットを用いた薬剤放出器具およびそれを用いた治療法について説明する。
図1は、本発明による薬剤放出器具を示す模式図である。
図2は、本発明による薬剤放出器具を用いた治療の様子を示す模式図である。
【0012】
本発明による薬剤放出器具100は、光源部110と、光源部110からの光が照射される薬剤130を備える薬剤供給部120とを備える。薬剤供給部120は、光を透過する材料からなり、薬剤130が充填される容器121をさらに備え、容器121の薬剤130が放出または射出される面は、多孔質材料、高分子材料、繊維集合体、浸透膜および逆浸透膜からなる群から選択される材料からなる薬剤透過面122である。
【0013】
各構成要素について説明する。
光源部110は、薬剤130中の薬効成分(薬剤分子とも呼ぶ)を励起させるに十分なフォトンエネルギーを有する波長の光を発するものであれば特に制限はないが、360nm以上8μm以下の範囲の波長を発するものがよい。光源部110は、例示的には、レーザまたは発光ダイオードであってよい。これらは各種波長のレーザを発することができ、入手が容易である。レーザは、気体レーザ、固体レーザ、半導体レーザなどを採用できる。
【0014】
レーザまたは発光ダイオードと複数の光ファイバーとを光学的に結合させ、バンドル状にしてもよい。これにより、複数の点光源が形成され、均一に照射できる。
【0015】
レーザまたは発光ダイオードとコリメータレンズ、フライアイレンズ等の光学系を適宜組み合わせてもよい。例えば、フライアイレンズと組み合わせることにより、これにより、複数の点光源が形成され、均一に照射できる。
【0016】
レーザ光は、連続波(CW)であってもよいし、パルス状であってもよいが、薬剤分子の分解抑制や注入量の制御の観点から好ましくはパルスレーザである。
【0017】
光源部110は、複数のレーザまたは発光ダイオードを備える、あるいは、波長可変レーザを備えてもよい。これにより、薬剤130が複数であっても、薬剤130の励起に必要な光を適宜選択できる。
【0018】
容器121は、光源部110からの光を透過するものであれば特に制限はないが、例示的には、光が可視光領域(360nm以上830nm以下の範囲)の波長を有する場合には、ガラス、石英およびサファイアからなる群から選択される材料であり、光が赤外領域(830nmより大きく8μm以下の範囲)の波長を有する場合には、ゲルマニウム(Ge)、シリコン(Si)、シリコンカーバイド(SiC)、フッ化カルシウム(CaF)、フッ化バリウム(BaF)、フッ化マグネシウム(MgF)、タリウムハライド混晶、フッ化リチウム(LiF)、二酸化ケイ素(SiO)、および、セレン化亜鉛(ZnSe)からなる群から選択される。
【0019】
容器121に充填される薬剤130は、体内に注入して使用される薬効成分を含有するものであれば特に制限はないが、例示的には、免疫抑制剤、抗リウマチ薬、痛風治療薬、糖尿病治療薬、性ホルモン剤、ホルモン剤、骨代謝改善薬、強心薬、抗不整脈薬、抗菌剤、抗がん剤、抗炎症薬、がん治療用ウイルス、および、光増感剤からなる群から選択される。これらの薬効成分の一例を表1に示す。表1に示す薬効成分は単なる例示であってこれらに限定されないことに留意されたい。なお、薬効成分(薬剤分子)を励起させるに必要な光波長(フォトンエネルギー)は、例えば、分光光度計によって吸収スペクトルを測定すれば、容易に判定できる。
【0020】
【表1】
【0021】
薬剤130は、薬効成分に加えてそれを分散する溶媒を含有してもよい。このような溶媒は、光源部110からの光を透過し、吸収しないものがよい。溶媒の透過・吸収スペクトルを測定すれば、透過波長範囲については容易に判断できる。
【0022】
溶媒には、例示的には、水、生理食塩水、エタノール、アセトニトリル、クロロベンゼン、クロロホルム、シクロヘキサン、1,2-ジクロロエテン、ジクロロメタン、1,2-ジメトキシエタン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N‐ジメチルホルムアミド、1,4-ジオキサン、2-エトキシエタノール、エチレングリコール、ホルムアミド、ヘキサン、メタノール、2-メトキシエタノール、メチルブチルケトン、メチルシクロヘキサン、N-メチルピロリドン、ニトロメタン、ピリジン、スルホラン、テトラリン、トルエン、1,1,2-トリクロロエテン、キシレン、酢酸、アセトン、アニソール、ブタノール、酢酸ブチル、ブチルメチルエーテル、クメン、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ギ酸エチル、ギ酸、へプタン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、3-メチル-1-ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-メチル-1-プロパノール、ペンタン、1-ペンタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、酢酸プロピル、テトラヒドロフラン、1,1‐ジエトキシプロパン、1,1-ジメトキシメタン、2,2-ジメトキシプロパン、イソオクタン、イソプロピルエーテル、メチルイソプロピルケトン、メチルテトラヒドロフラン、石油エーテル、トリクロロ酢酸、および、トリフルオロ酢酸からなる群から少なくとも1つ選択される溶媒がある。これらの溶媒は、薬効成分を分散可能であり、体内に入っても禁忌でなく、自然に分解・排出される。
【0023】
当業者であれば、薬効成分(薬剤分子)の励起波長に応じて、光源部110の光の波長および溶媒の種類を適宜選択できる。
【0024】
容器121の薬剤透過面122は、後述する分子ジェット250(図2)が通過できる細孔を有するものであれば特に制限はないが、数十nm~数十μmの細孔径を有するものがこのましい。
【0025】
薬剤透過面122を構成する多孔質材料としては、例えば、ポーラスアルミナなどのポーラスセラミックス、ロータス金属、メソポーラスシリカ、ゼオライト等がある。
【0026】
高分子材料としては、ポリエチレングリコールを主成分とするポーラスポリマー、ポリプロピレンポーラスポリマー、ポリスチレンポーラスポリマー等がある。
【0027】
繊維集合体としては、ポリエステル、ナイロン、木綿、レーヨン、ダウン、塩化ビリニデン、セルロース、ポリプロピレン、炭化ケイ素、クモの糸繊維等がある。
【0028】
浸透膜としては、セロハン、コロジオン、膀胱膜、アセチルセルロース、ポリアクリロニトリル、テフロン(登録商標)、ポリエステル系ポリマーアロイ、ポリスルホン等がある。逆浸透膜としては、酢酸セルロース膜、芳香族ポリアミド等がある。これらを用途に応じて適宜選択してよい。
【0029】
次に、図2を参照し、図1の薬剤放出器具を用いた薬剤放出のメカニズムを説明する。
【0030】
図1の薬剤放出器具100を体表面210に当て、光源部110からの光220を発射する((a))。これにより、光220は、容器121中の薬剤130に照射され、薬剤130中の薬効成分のみが光220を吸収し、光励起される。その結果、励起状態の薬効成分が溶媒にエネルギーを与え、衝撃波230が発生する((b))。
【0031】
続いて、キャビテーションバブル240が発生し、大きく成長する。最大に成長すると、キャビテーションバブル240は急速に収縮する((c))。収縮したキャビテーションバブル240の中央部から集束された薬剤が分子ジェット250となって噴出し、薬剤放出器具100の薬剤透過面122の細孔を介して体表面210へと注入される((d))。
【0032】
光源部110からの光220の波長、強度、時間等により、分子ジェット250の体表面210への深さを調製可能であり、用途に応じて、皮下組織層あるいは筋肉組織層、さらに深層部への注入を無針にて行うことができる。このとき、分子ジェット250の径は、数十nm~数十μmの大きさにとどまるため、傷も残らない。また、このようにして光220が照射された薬剤は、未分解のまま注入される。
【0033】
再度、図1に戻る。本発明の薬剤放出器具100は、光源部110からの光の照射を制御する制御部(図示せず)をさらに備えてもよい。制御部が、光源部110からの光の照射時間、照射タイミング(照射回数)、および、光の波長からなる群から少なくとも1つ選択される光照射を制御してもよい。これにより、注入深さの制御や、投与時間などを制御できる。
【0034】
また、薬剤供給部120は、光源部110に対して取り外し可能に設けられてよい。これにより、薬剤130を容易に交換し、繰り返し使用可能できる。
【0035】
図3は、本発明による別の薬剤供給部を示す模式図である。
【0036】
本発明による薬剤放出器具300は、光源部110と、光源部110からの光が照射される薬剤130を備える薬剤供給部120とを備える。薬剤供給部120は、薬剤130が充填され、供給されるリザーバタンク310と、リザーバタンク310から薬剤130を供給し、保持する多孔質体320とをさらに備える。なお、光源部110、薬剤130については、上述したとおりであるため説明を省略する。
【0037】
リザーバタンク310は、上述した薬剤130および薬剤130が分散した溶媒を保持し、多孔質体320へ供給するよう接続されたものであれば、素材、形状等特に制限はない。
【0038】
多孔質体320は、薬剤130を保持できるものであれば特に制限はないが、例示的には、ポリウレタン、ポリエチレン、ナイロン、メラミン等の合成樹脂の連続気泡フォーム、ハニカム状、メッシュ状、網状等の層からなる3次元骨格組織を有する織布、不織布、金属繊維集合体等をあげることができる。
【0039】
図1の薬剤放出器具100と同様に、薬剤放出器具300を体表面に当て、光源部110からの光を発射すると、多孔質体320に含侵された薬剤130中の薬効成分が光を吸収し、励起される。励起状態の薬効成分が溶媒にエネルギーを与え、多孔質体320内に衝撃波が発生する。
【0040】
続いて、キャビテーションバブルが発生し、大きく成長すると、急速に収縮し、収縮したキャビテーションバブルの中央部から集束された薬剤が分子ジェットとなって噴出し、薬剤放出器具300の多孔質体320の細孔を介して体表面へと注入される。
【0041】
薬剤放出器具100と異なり、薬剤放出器具300を用いれば、リザーバタンク310に薬剤130が充填されているため、長時間投与が可能となる。
【0042】
薬剤放出器具300においても、薬剤放出器具100と同様に、光源部110の光照射を制御する制御部を備えてよい。また、薬剤供給部120は取り外し可能であってよい。
【0043】
なお、薬効成分(薬剤分子)が、光源部110からの光吸収によって分解、あるいは、変質する虞がある場合には、薬効成分の光吸収波長を避け、溶媒を直接光励起すること(溶媒を複数混合し、光吸収を担うものと、そうでないものを分けてもよい。分ける場合には、光吸収を担う溶媒の濃度により、注入現象の大きさを制御することが可能となる。)、もしくは、溶媒中に主目的ではない薬剤分子、または、光増感分子を補助分子として混ぜ、主目的とする薬剤分子の代わりに、それらを光励起させ、衝撃波、および、キャビテーションバブルを生成することにより、前述と同様の手法にて、これら補助分子と共に、主目的の薬剤成分を注入することも可能である。
【0044】
(実施の形態2)
実施の形態2では、分子拡散を利用した薬剤放出器具およびそれを用いた治療法について説明する。
図4は、本発明によるさらに別の薬剤放出器具を示す模式図である。
【0045】
本発明による薬剤放出器具400は、光源部110と、光源部110からの光が照射される薬剤供給部120とを備える。薬剤供給部120は、薬効成分を含有する薬剤シート410を備える。図4では、薬剤供給部120が、薬剤シート410に積層され、光源部110からの光を透過する透過シート420をさらに備えているが、透過シート420を省略してもよい。なお、光源部110については、上述したとおりであるため説明を省略する。
【0046】
薬剤シート410は、経皮吸収可能な薬効成分を含むものであれば特に制限はないが、例示的には、ステロイド系抗炎症剤、非ステロイド系抗炎症剤、抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤、中枢神経作用剤、ホルモン剤、抗高血圧症剤、強心剤、抗不整脈剤、冠血管拡張剤、局所麻酔剤、鎮痛剤、筋弛緩剤、抗真菌剤、抗悪性腫瘍剤、尿失禁症剤、抗てんかん剤、抗パーキンソン剤、制吐剤、頻尿治療剤、Ca拮抗剤、向精神薬、抗めまい剤、心臓・血管系薬剤、鎮咳去痰剤、脳循環改善剤、脳血管性痴呆剤、アルツハイマー治療剤、ポリペプチド系ホルモン剤、免疫調節剤、利胆剤、利尿剤、糖尿病用剤、痛風治療剤、禁煙補助剤、ビタミン類、プロスタグランジン類、興奮覚醒剤、催眠鎮静剤、自律神経用剤、および、末梢血管拡張剤からなる群から選択される薬効成分を含有する。これらの薬効成分の一例を表2に示す。表2に示す薬効成分は単なる例示であってこれらに限定されないことに留意されたい。
【0047】
【表2】
【0048】
薬剤シート410は、薬効成分に加えて、保湿成分、水、水溶性高分子、架橋剤等を含んでよい。これにより皮膚に貼り付け可能な粘着性を有し得る。
【0049】
保湿成分としては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、平均分子量425を超えるポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリセリルエーテル、メチルグルコシド、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、トレハロース等の多価アルコール類、糖アルコール類、糖類、アミノ酸、蛋白質などがある。
【0050】
水は、薬効成分、水用紙高分子、保湿成分、架橋剤の分散剤として機能し、精製水、天然水、滅菌水などを使用できる。
【0051】
水溶性高分子としては、例えば、ゼラチン、ポリアクリル酸またはその塩、あるいは、部分中和物であってよい。
【0052】
架橋剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムゲル、含水ケイ酸アルミニウム、合成ケイ酸アルミニウム、カオリン、酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム等の水難溶性アルミニウム化合物、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル等の多官能エポキシ化合物であってよい。
【0053】
薬剤シート410は、さらに、公知の美肌成分、防腐剤、酸化防止剤、粘着付与剤、溶解剤、色素、香料、界面活性剤、紫外線吸収剤、PH調整剤、油分等をさらに含有してもよい。
【0054】
美肌成分は、例えば、セラミド類、ビタミン類(ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、及びその誘導体など)、ヒアルロン酸及びその塩、コンドロイチン硫酸及びその塩、チューベロース多糖体、アミノ酸及びその誘導体や蛋白分解物、ヒドロキシ酸等の有機酸類、ラクトフェリン等の糖蛋白質、ユビデカレノン(コエンザイムQ10)、αリポ酸(チオクト酸)、動植物抽出液、尿素などがある。
【0055】
防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸及びその塩、ソルビン酸及びその塩、デヒドロ酢酸塩、フェノール、イソプロピルメチルフェノール、ヒノキチオール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化クロルヘキシジンなどがある。
【0056】
酸化防止剤としては、例えば、アスコルビン酸及びその塩、アスコルビン酸エステル、カロチン、アスタキサンチン、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエンなどがある。
【0057】
粘着付与剤としては、例えば、カゼイン、プルラン、寒天、デキストラン、アルギン酸ソーダ、可溶性デンプン、カルボキシデンプン、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルエーテル、ポリマレイン酸共重合体、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体、イソブチレン無水マレイン酸共重合体、ポリエチレンイミンなどがある。
【0058】
溶解剤としては、例えば、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等の低級アルコールなどがある。
【0059】
色素としては、例えば、赤色102号(ニューコクション)、赤色104号-(1)(フロキシンB)、赤色105号-(1)(ローズベンガル)、赤色106号(アッシドレッド)、赤色2号(アマランス)、赤色3号(エリスロシン)、黄色4号(タートラジン)、黄色5号(サンセットエローFCF)、緑色3号(ファストグリーンFCF)、青色1号(ブリリアントブルーFCF)、青色2号(インジゴカルミン)などがある。
【0060】
香料としては、医薬品、医薬部外品、化粧品、衛生材料、雑貨等の分野で使用可能な香料を採用できる。
【0061】
界面活性剤としては、例えば、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、アルキルアルフェート塩等の陰イオン界面活性剤、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノステアレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンオクタデシルアミン等の非イオン界面活性剤、ステアリルベタイン、ラウリルジメテルアミンオキサイド等の両性界面活性剤などがある。
【0062】
紫外線吸収剤としては、例えば、パラアミノ安息香酸及びそのエステル類、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、オキシベンゾン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸、シノキサートなどがある。
【0063】
PH調整剤としては、例えば、酒石酸、コハク酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酢酸、グリコール酸、塩酸、シュウ酸、リン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、モノメタノールアミン、ジメタノールアミン、トリメタノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、クエン酸塩、リン酸塩、炭酸塩などがある。
【0064】
油分としては、ホホバ油、オリーブ油、アボガド油、ハッカ油、ツバキオイル、グレープシードオイル等の植物油、ミンク油、ラノリン等の動物油、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン等の炭化水素類、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、セチルアルコール等の高級アルコール類、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸オレイル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール等のエステル油類、エチレングリコールジオクチルエーテル等のエーテル油類、ジメチルシリコーンオイル、アルコール変性シリコーン油、アルキル変性シリコーン油、アミノ変性シリコーン油等のシリコーン油類、パーフルオロポリエーテル等のフッ素油などがある。
【0065】
薬剤シート410は、光を透過する材料からなる透過シート420をさらに備えていてもよい。透過シート420を用いることにより、光源部110と薬剤シート410とが直接接触しないので、光源部110が薬剤シート410によって汚れることを防ぐことができる。このような光を透過する材料としては、図1の容器121に用いた材料を採用できる。
【0066】
図1および図3を参照して説明した薬剤放出器具と同様に、光源部110からの光の照射を制御する制御部(図示せず)をさらに備えてもよい。制御部が、光源部110からの光の照射時間、照射タイミング(照射回数)、および、光の波長からなる群から少なくとも1つ選択される光照射を制御してもよい。これにより、注入深さの制御や、投与時間などを制御できる。
【0067】
また、薬剤供給部120は、光源部110に対して取り外し可能に設けられていてよい。これにより、薬剤シート410を交換できる。
【0068】
次に、このような薬剤放出器具400を用いた薬剤放出のメカニズムを説明する。
図4の薬剤放出器具400を体表面に当て、光源部110からの光を発射する。これにより、光は、薬剤シート410中の薬効成分に照射され、薬効成分が光を吸収し、分子振動により温められる。温められた薬効成分は、体表面から体内へと拡散する。これにより、通常のハップ剤に比べて、薬効成分の浸透効果を高めることができる。
【0069】
体内に拡散し、振動エネルギーが失われると薬効成分の拡散は停止するが、光源部110から光をさらに照射し続けることにより、薬剤シート410中の薬効成分が次々と温められ、その拡散エネルギーが体内に拡散した薬効成分まで伝搬されることにより、表皮から真皮へと薬効成分を浸透させることも可能である。
【0070】
また、体内に拡散した薬効成分をさらに拡散させるために光源部110からの光の波長を、皮膚を透過する近赤外領域の波長に変更してもよい。これにより、体内に拡散した薬効成分が近赤外領域の波長を吸収する場合には、さらに体内へと浸透させることができる。
【0071】
また、薬剤シート410の薬効成分以外の成分(保湿成分、水、水溶性高分子、架橋剤等)に光源部110からの光を照射し、吸収させ、分子振動により温めてもよい。薬効成分の周りが温められるため、薬効成分の拡散が補助され、薬効成分の体表面から体内への拡散が促進され得る。
【0072】
なお、光源部110からの光の照射時間や強度によっても、拡散エネルギーの大きさを変えることができ、体内への浸透深さや浸透面積を制御できる。また、光源部110からの光の照射時間、波長の変更、薬効成分以外への照射などを適宜組み合わせてもよい。
【0073】
なお、上述してきた薬剤(薬効成分、および、それ以外の成分)の透過・吸収スペクトルを測定すれば、それらの吸収領域、ならびに、吸収を避ける透過領域については容易に判断できる。また、これらを適宜組み合わせることにより、光源部からの光が薬効成分に吸収され、薬効成分を加熱し、薬効成分を体内へと浸透できる。また、当業者であれば、薬効成分あるいはそれ以外の成分の誘導体を調整することによっても吸収領域あるいは吸収を避ける窓波長領域を制御できることも理解する。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の薬剤放出器具は、患者の負担が軽減されるので、糖尿病患者や小児患者の治療に適用できる。また、光によって体内の深層部への薬剤投与を可能とするため、難治癌の治療にも有効である。加えて、光によってごく限られた領域にのみ投与可能とするため、正常組織のダメージを最小化できる。さらに、光の照射時間、あるいは、照射回数の制御により、薬剤の投与時間、投与量を自動で制御・管理することができる。
【符号の説明】
【0075】
100 :薬剤放出器具
110 :光源部
120 :薬剤供給部
121 :容器
122 :薬剤透過面
130 :薬剤
210 :体表面
220 :光
230 :衝撃波
240 :キャビテーションバブル
250 :分子ジェット
300 :薬剤放出器具
310 :リザーバタンク
320 :多孔質体
400 :薬剤放出器具
410 :薬剤シート
420 :透過シート
図1
図2
図3
図4