(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-27
(45)【発行日】2025-04-04
(54)【発明の名称】シクロオレフィンポリマーフィルム製造工程用フィルムおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20250328BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20250328BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20250328BHJP
C08J 7/043 20200101ALI20250328BHJP
【FI】
B32B27/32 101
B32B27/36
B32B27/00 A
C08J7/043 Z CFD
(21)【出願番号】P 2023051763
(22)【出願日】2023-03-28
【審査請求日】2024-07-16
(31)【優先権主張番号】P 2022051829
(32)【優先日】2022-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 涼子
(72)【発明者】
【氏名】安野 実恵
(72)【発明者】
【氏名】森本 亮平
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 直央
(72)【発明者】
【氏名】芦原 公美
(72)【発明者】
【氏名】奥村 暢康
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/065812(WO,A1)
【文献】特開2016-168691(JP,A)
【文献】特開2010-084068(JP,A)
【文献】特開2020-069664(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0327510(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/00
B32B 27/32
B32B 27/36
C08J 7/043
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に樹脂層を有するフィルムであって、
樹脂層は、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体および架橋剤を含有し、
酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体におけるα-オレフィン成分の炭素数が5以上であり、
樹脂層表面の算術平均粗さ(Sa)が15nm以下である、
熱可塑性シクロオレフィンポリマーフィルム製造工程用フィルム。
【請求項2】
熱可塑性シクロオレフィンポリマーフィルムとの剥離強度が0.05N/cm以上0.50N/cm以下である請求項1に記載の
熱可塑性シクロオレフィンポリマー製造工程用フィルム。
【請求項3】
酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体における酸変性成分の含有量が1~10質量%である請求項1または2に記載の
熱可塑性シクロオレフィンポリマー製造工程用フィルム。
【請求項4】
樹脂層に濡れ剤を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の
熱可塑性シクロオレフィンポリマー製造工程用フィルム。
【請求項5】
請求項1または2に記載の熱可塑性シクロオレフィンポリマー製造工程用フィルムを製造するための方法であって、
α-オレフィン成分の炭素数が5以上である酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体および架橋剤を含有する樹脂層形成用液状物をポリエステルフィルムの少なくとも一方の面上に塗工する工程と、
乾燥して樹脂層を形成する工程と、
を有する
熱可塑性シクロオレフィンポリマーフィルム製造工程用フィルムの製造方法。
【請求項6】
α-オレフィン成分の炭素数が5以上である酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体および架橋剤を含有する樹脂層形成用液状物を、未延伸または一軸延伸ポリエステルフィルムの、少なくとも一方の面上に塗工、乾燥する工程と、
ポリエステルフィルムとともに配向延伸及び熱処理する工程と、
を有する
請求項5に記載の熱可塑性シクロオレフィンポリマーフィルム製造工程用フィルムの製造方法。
【請求項7】
請求項1または2に記載のフィルムの樹脂層面上に
熱可塑性シクロオレフィンポリマーフィルムを積層した積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロオレフィンポリマーフィルムの製造に好適に用いることができる工程用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
シクロオレフィンポリマー(以下、COP)は、低吸湿性、低複屈折性、高透明性、高耐熱性、高成形加工性、低誘電率、低誘電正接という優れた特性を併せ持つことから、光学フィルムとして近年注目されている材料である。
【0003】
COPフィルムを製造する方法として、押出成形法、溶液キャスト法などが知られている。溶液キャスト法は、COPを溶媒に溶解もしくは分散し、不溶物や溶存気体などを除去したCOP塗工液を工程用フィルム上に流延または塗布し、その後乾燥したものを工程用フィルムから剥離してCOPフィルムを製造する方法である。
【0004】
高性能なCOPフィルムを溶液キャスト法で得るためには、優れた表面平滑性、COPフィルムと適度な密着性、乾燥後のCOPフィルムに対する優れた離型性、といった3つの性能が工程フィルムに求められている。
【0005】
COPフィルム製造用の工程フィルムとしては、表面平滑性に優れた特許文献1や特許文献2が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-017435号公報
【文献】特開2014-208465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の光学フィルム製造用キャリアフィルムは、COPフィルムとの離型性が不十分であり、製品を安定的に改善の余地があった。特許文献2の積層フィルムは、COPフィルムとの密着性が不十分なため、積層フィルムにCOPフィルムを積層した状態で次工程へと搬送する際、搬送に伴う激しい振動や張力が加わることで、COPフィルムが積層フィルムから脱落するなど操業性の悪化を招き、歩留まりを低下させる場合があった。
【0008】
上記課題に鑑み、工程フィルムにCOPフィルムが積層された状態で搬送された場合であっても、COPフィルムから脱落することを抑制できる程度にCOPフィルムとの適度な密着性を有し、一方で、乾燥後のCOPフィルムからスムーズに剥離できるという相反する効果を併せ持ち、さらに表面平滑性に優れたCOP工程用フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の組成を有する樹脂層をポリエステルフィルムに形成する工程用フィルムを用いることによって、上記課題が解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は下記(1)~(7)である。
(1)ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に樹脂層を有するフィルムであって、樹脂層は、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体および架橋剤を含有し、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体におけるα-オレフィン成分の炭素数が5以上であり、樹脂層表面の算術平均粗さ(Sa)が15nm以下である、熱可塑性シクロオレフィンポリマーフィルム製造工程用フィルム。
(2)熱可塑性シクロオレフィンポリマーフィルムとの剥離強度が0.05N/cm以上0.50N/cm以下である(1)に記載の熱可塑性シクロオレフィンポリマー製造工程用フィルム。
(3)酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体における酸変性成分の含有量が1~10質量%である(1)または(2)に記載の熱可塑性シクロオレフィンポリマー製造工程用フィルム。
(4)樹脂層に濡れ剤を含有することを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の熱可塑性シクロオレフィンポリマー製造工程用フィルム。
(5)上記(1)~(4)のいずれかに記載の熱可塑性シクロオレフィンポリマー製造工程用フィルムを製造するための方法であって、α-オレフィン成分の炭素数が5以上である酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体および架橋剤を含有する樹脂層形成用液状物をポリエステルフィルムの少なくとも一方の面上に塗工する工程と、乾燥して樹脂層を形成する工程と、を有する熱可塑性シクロオレフィンポリマーフィルム製造工程用フィルムの製造方法。
(6)α-オレフィン成分の炭素数が5以上である酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体および架橋剤を含有する樹脂層形成用液状物を、未延伸または一軸延伸ポリエステルフィルムの、少なくとも一方の面上に塗工、乾燥する工程と、ポリエステルフィルムとともに配向延伸及び熱処理する工程と、を有する(5)に記載の熱可塑性シクロオレフィンポリマーフィルム製造工程用フィルムの製造方法。
(7)上記(1)~(4)のいずれかに記載のフィルムの樹脂層面上に熱可塑性シクロオレフィンポリマーフィルムを積層した積層体。
【発明の効果】
【0011】
本発明の工程用フィルムは、搬送時の振動による揺れが生じてもCOPフィルムが脱落しない程度の適度な密着性を有し、工程終了後の剥離時にも優れた離型性を示すものである。本発明の工程用フィルムを剥離して得られたCOPフィルムは、表面平滑性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の工程用フィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に樹脂層を有するものであり、樹脂層は、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体と架橋剤を含有することが必要である。
【0013】
酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレン-α-オレフィン共重合体が酸変性されたものである。エチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレン成分と一種以上のα-オレフィン成分を含有するものである。驚異なことに、樹脂層が、α-オレフィン成分の炭素数が5以上の酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体と架橋剤とを含有することで、COPフィルムとの密着性および離型性という相反する効果を両立する工程用フィルムを得ることができる。さらに、COPフィルムとの離型性を向上する観点で、α-オレフィン成分の炭素数は、6以上であることが好ましく、8以上であることが最も好ましい。その原因は未だ明らかにされていないが、出願人の事後推測によると、COPフィルムとの密着性はエチレンと架橋剤の反応により向上し、炭素数が5以上のα-オレフィン成分を含有することで、エチレン-α-オレフィン共重合体の柔軟性が高くなり、COPフィルムとの離型性が向上すると考える。炭素数が5以上のα-オレフィン成分としては、例えば、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセンなどが挙げられる。これらの中でも、離型性向上の観点から、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテンが好ましい。
【0014】
エチレン-α-オレフィン共重合体におけるエチレン成分とα-オレフィン成分の質量比(エチレン/α-オレフィン)は、60/40~99/1であることが好ましい。エチレン-α-オレフィン共重合体におけるエチレン成分とα-オレフィン成分の質量比を前記範囲とすることで、得られた樹脂層のCOPフィルムとの密着性および離型性を両立することができる。また、上記範囲にすることによって、酸変性成分を、後述する含有量に調整することができ、得られた酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体を水性分散化しやすくなる。
COPフィルムとの離型性向上の観点で、エチレン-α-オレフィン共重合体におけるα-オレフィン成分含有量を1~40質量%が好ましい。
【0015】
酸変性前のエチレン-α-オレフィン共重合体は、重量平均分子量が15,000~200,000であることが好ましく、15,000~150,000であることがより好ましく、20,000~100,000であることがさらに好ましい。重量平均分子量を前記範囲のエチレン-α-オレフィン共重合体を使用することで、酸変性成分の含有量を後述する範囲にすることができ、酸変性後の分子量を後述する範囲に調整することができ、望ましい工程用フィルムを得ることが可能となる。
【0016】
エチレン-α-オレフィン共重合体は、メタロセン系触媒を使用して製造されることが好ましい。この方法により製造されたエチレン-α-オレフィン共重合体は、分子量分布が狭く、低分子量成分の量が少なく、共重合が均一となる。
【0017】
本発明において、エチレン-α-オレフィン共重合体が酸変性されていることで、架橋剤と反応し、樹脂層とポリエステルフィルムとの密着性が向上し、耐熱性が向上したり、剥離時に樹脂成分の移行を抑制したりすることができる。エチレン-α-オレフィン共重合体の酸変性は、例えば、エチレン-α-オレフィン共重合体に不飽和カルボン酸成分を導入することによって行うことができる。
【0018】
エチレン-α-オレフィン共重合体に導入される不飽和カルボン酸成分の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、メサコン酸、アリルコハク酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等のように、分子内(モノマー単位内)に少なくとも1個のカルボキシル基または酸無水物基を有する化合物が挙げられる。中でもエチレン-α-オレフィン共重合体への導入のし易さの点から、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。不飽和カルボン酸成分は、エチレン-α-オレフィン共重合体中に共重合されていればよく、その形態は限定されるものではなく、例えばランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等が挙げられる。
【0019】
本発明において、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体を構成する酸変性成分の含有量は、1~10質量%であることが好ましく、1~5質量%であることがより好ましく、1.5~4.5質量%であることがさらに好ましく、2~4.5質量%であることが最も好ましい。酸変性成分の含有量を1質量%以上とすることで、架橋剤と反応しやすくなり、ポリエステルフィルムとの密着性が向上するだけでなく、COPフィルムとの離型性や耐熱性が向上する。酸変性成分の含有量を10質量%以下とすることで、COPフィルムとの十分な離型性が得られる。
【0020】
不飽和カルボン酸単位をエチレン-α-オレフィン共重合体へ導入する方法は、特に限定されない。例えば、ラジカル発生剤存在下、エチレン-α-オレフィン共重合体と不飽和カルボン酸とを、エチレン-α-オレフィン共重合体の融点以上に加熱溶融して反応させる方法や、エチレン-α-オレフィン共重合体と不飽和カルボン酸とを有機溶剤に溶解させた後、ラジカル発生剤の存在下で加熱、攪拌して反応させる方法等により、エチレン-α-オレフィン共重合体に不飽和カルボン酸をグラフト共重合する方法が挙げられる。操作が簡便である点から前者の方法が好ましい。
グラフト共重合に使用するラジカル発生剤としては、例えば、ジ-tert-ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、tert-ブチルヒドロパーオキシド、tert-ブチルクミルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジラウリルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、メチルエチルケトンパーオキシド、ジ-tert-ブチルジパーフタレート等の有機過酸化物類や、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾニトリル類が挙げられる。これらは反応温度によって適宜、選択して使用すればよい。
【0021】
本発明において、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体は、ポリエステルフィルムとの密着性を向上させるなどの観点から、他のモノマーが、本発明の効果を損ねない範囲で、少量共重合されていてもよい。他のモノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸エステル、α-オレフィン以外のオレフィン類、ジエン類、(メタ)アクリロニトリル、ハロゲン化ビニル類、ハロゲン化ビリニデン類、一酸化炭素、二硫化硫黄などが挙げられる。一方離型性の観点からは、他のモノマーは含まない方が望ましい。他のモノマー成分の含有量は、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体の質量に対して、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、含まないことがさらに好ましい。
【0022】
本発明において、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体の重量平均分子量は、樹脂層形成用液状物への液状化のしやすさ、COPフィルムとの離型性、耐汚染性の観点で、20,000~300,000であることが好ましく、20,000~200,000であることがより好ましく、30,000~100,000であることが最も好ましい。酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体は、重量平均分子量が前記範囲であることで、均一で分散状態が良好な溶液や水性分散体を製造しやすい。
【0023】
本発明において、酸変性するためのエチレン-α-オレフィン共重合体として、市販のエチレン-α-オレフィン共重合体を用いることができる。市販のエチレン-α-オレフィン共重合体として、住友化学社製エスプレンシリーズ、三井化学社製タフマーシリーズ、ダウ・ケミカル社製エンゲージシリーズ、アフィニティシリーズなどが挙げられる。このような市販のエチレン-α-オレフィン共重合体を用いて、上記の方法で酸変性を行って、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体を得ることができる。
【0024】
本発明において、架橋剤としては、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物が用いられ、反応性の観点から、オキサゾリン化合物またはカルボジイミド化合物が好ましく、オキサゾリン化合物が最も好ましい。オキサゾリン化合物やカルボジイミド化合物の架橋剤を用いると、架橋反応が十分に行え、得られる樹脂層は耐熱性を有し、熱処理後の離型性が低下しない。
【0025】
オキサゾリン化合物は、分子中にオキサゾリン基を2つ以上有しているものであれば、特に限定されるものではない。例えば、2,2′-ビス(2-オキサゾリン)、2,2′-エチレン-ビス(4,4′-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2′-p-フェニレン-ビス(2-オキサゾリン)、ビス(2-オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィドなどのオキサゾリン基を有する化合物や、オキサゾリン基含有ポリマーが挙げられる。これらの1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、取り扱いやすさからオキサゾリン基含有ポリマーが好ましい。
オキサゾリン基含有ポリマーは、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン等の付加重合性オキサゾリンを重合させることにより得られる。必要に応じて他の単量体が共重合されていてもよい。オキサゾリン基含有ポリマーの重合方法は、特に限定されず、公知の種々の重合方法を採用することができる。
オキサゾリン基含有ポリマーの市販品としては、日本触媒社製のエポクロスシリーズが挙げられ、具体的には、水溶性タイプの「WS-300」、「WS-500」、「WS-700」、固形タイプの「RPS-1005」などが挙げられる。
【0026】
本発明において、架橋剤の含有量は、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体100質量部に対して、5~80質量部であることが好ましい。5~50質量部であることがより好ましく、5~25質量部であることがさらに好ましい。酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体100質量部に対して、架橋剤の含有量が5質量部未満では、添加効果が乏しく、COPフィルムとの離型性に劣ったり、耐ブロッキング性が悪化する場合がある。一方、架橋剤の含有量が酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体100質量部に対して80質量部を超えると、液安定性が悪化したり、経時的に離型性が低下したり、樹脂層表面の算術平均粗さ(Sa)が高くなる場合がある。
なお、架橋剤は、2種類以上の化合物を同時に用いることもできる。同時に用いた場合、架橋剤の合計量が上記の架橋剤の含有量の範囲を満たしていればよい。架橋反応の促進、架橋速度を速めるといった観点から、触媒を含有してもよい。
【0027】
本発明において、樹脂層形成用液状物のレオロジー特性を変化させ、レベリング剤として塗工性を向上させるといった観点から、濡れ剤を含有させてもよい。濡れ剤としては、表面張力が低く、塗工性効果が高い方が望ましい。塗工性向上および樹脂層表面平滑性の観点から、濡れ剤の含有量は、樹脂層形成用液状物全配合量における濡れ剤の含有量は、1.5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下が最も好ましい。通常、濡れ剤は、全配合量に対し0.02質量%程度含有することで上記効果を発揮する。なお、濡れ剤は、2種類以上を同時に用いることもでき、2種類以上の濡れ剤を同時に用いた場合は、濡れ剤の合計含有量が上記の範囲を満たしていればよい。
【0028】
濡れ剤は、市販品を用いることができ、例えば、日信化学工業社製の「サーフィノールPSA-336」、「サーフィノール420」、「オルフィンEXP.4200」、「オルフィンE1010」、共栄社化学社製の「ポリフローKL-900」などが挙げられる。
【0029】
本発明において、樹脂層形成用塗工液の液安定性向上、濡れ性向上の観点から、その他の樹脂として親水性高分子を含有してもよい。親水性高分子としては、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸アミド、アクリルアミド/アクリレート共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、それらの共重合体等が挙げられる。中でもビニル系の親水性高分子である、ポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドンおよび/またはその共重合体が好ましい。
【0030】
ポリビニルアルコールとして市販のものを使用することができる。例えば、日本酢ビ・ポバール社製の「J-ポバール」の「JP-15」や「JT-05」、「JF-05」、「JL-05E」、「JM-17」「VC-10」、「JF-10」、「JC-10」、クラレ社製の「クラレポバール」の「PVA-CST」、「PVA-624」、「PVA-203」、「PVA-220」、「PVA-405」などが挙げられる。
【0031】
ポリビニルピロリドンとして市販のものを使用することができる。例えば、第一工業製薬株式会社社製「ピッツコール」の「K-30L」や「K-60L」、「K-90L」、「V-7154」、株式会社日本触媒社製「ポリビニルピロリドン」の「K-30」、「K-85」、「K-90」などが挙げられる。
【0032】
親水性高分子の含有量は、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体100質量部に対して、600質量部以下であることが好ましく、10~600質量部であることがより好ましい。また、親水性高分子は2種類以上を同時に用いることもでき、2種類以上の親水性高分子を同時に用いた場合は、親水性高分子の合計含有量が上記の範囲を満たしていればよい。
【0033】
また、本発明において、塗工時の消泡性を向上させる観点で、消泡剤を含有させてもよい。消泡剤は市販品を用いることができ、例えば、日信化学工業社製の「サーフィノール
DF110D」、「サーフィノールAD001」、「サーフィノールMD-20」などが挙げられる。サンノプコ社製「SN デフォーマー 154」などが挙げられる。
【0034】
本発明においては、COPフィルムとの密着性の向上の観点から、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体とは異なる酸変性ポリオレフィン樹脂をさらに含有させてもよい。酸変性ポリオレフィン樹脂としては、オレフィン成分を主成分とし、酸成分により変性された樹脂であり、オレフィン成分としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、2-ブテン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン等の炭素数2~6のアルケン等が挙げられ、これらの混合物であってもよい。
【0035】
酸変性ポリオレフィン樹脂の含有量は、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体100質量部に対して、600質量部以下であることが好ましく、1~600質量部であることがより好ましい。
【0036】
酸変性ポリオレフィン樹脂を構成する酸変性成分としては、不飽和カルボン酸成分が挙げられ、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等が挙げられる。中でも、後述する樹脂の水性分散化において、樹脂を安定的に分散するために、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸が特に好ましい。これらの酸変性成分は酸変性ポリオレフィン樹脂中に2種類以上含まれていてもよい。
酸変性ポリオレフィン樹脂における酸変性成分の割合は、特に限定されないが、1~10質量%であることが好ましい。
【0037】
酸変性ポリオレフィン樹脂は、側鎖に酸素原子を含むエチレン性不飽和成分を含有してもよい。
側鎖に酸素原子を含むエチレン性不飽和成分としては、(メタ)アクリル酸と炭素数1~30のアルコールとのエステル化物が挙げられ、中でも入手のし易さの点から、(メタ)アクリル酸と炭素数1~20のアルコールとのエステル化物が好ましい。そのような化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらの混合物を用いてもよい。この中で、ポリエステルフィルムとの接着性の点から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチルがより好ましく、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルがさらに好ましく、アクリル酸エチルが特に好ましい。「(メタ)アクリル酸~」とは、「アクリル酸~またはメタクリル酸~」を意味する。
酸変性ポリオレフィン樹脂中における、側鎖に酸素原子を含むエチレン性不飽和成分の割合は、特に限定されないが、1~40質量%であることが好ましい。
【0038】
本発明の工程用フィルムの樹脂層には、COPフィルムとの密着性を向上させる目的でジエン系ゴム、タッキファイヤー等を含有してもよく、取り扱い性の観点から、水系エマルション化されたものを用いることが好ましい。
【0039】
ジエン系ゴムとしては、特に限定されるものではなく、天然ゴム(NR)およびポリイソプレンゴム(IR)を含むイソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR);これらのゴムの酸変性物、水素添加物等が挙げられる。
【0040】
タッキファイヤーとしては、特に限定されるものではなく、石油樹脂系タッキファイヤー:ロジン、ロジン誘導体等のロジン系タッキファイヤー;テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂等のテルペン系タッキファイヤー等が挙げられる。
【0041】
本発明フィルムとCOPフィルムとの密着性と離型性を両立する観点で、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体100質量部に対して、300質量部以下が好ましく、0.1~300質量部であることがより好ましい。
【0042】
本発明の工程用フィルムは、必要に応じて樹脂層に消泡剤、ワキ防止剤、帯電防止剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤等の各種薬剤や、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック等の顔料あるいは染料を含有してもよい。また、後述する樹脂層を形成するための液状物の安定性を損なわない範囲で、上記以外の有機もしくは無機の化合物を液状物に添加して、樹脂層に含有させることもできる。
【0043】
本発明において、樹脂層の厚みは、0.01~5.0μmであることが好ましく、0.03~3.0μmであることがより好ましく、0.05~1.0μmであることがさらに好ましい。樹脂層の厚みが0.01μm未満であると、十分な離型性が得られない場合があり、一方、厚みが5.0μmを超えると、コストアップとなるため好ましくない。
【0044】
本発明において、樹脂層を形成する手法として、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体および架橋剤を含有する樹脂層形成用液状物をポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に塗布し、乾燥することでポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に樹脂層を形成することができる。
【0045】
酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体と架橋剤とを含む樹脂層形成用液状物は、樹脂および架橋剤とを、有機溶剤に溶解させても、水性媒体または溶剤に分散させて使用してもよいが、水性媒体としても用いることが、液状物の取り扱いの観点、作業環境の安全衛生性の観点から望ましい。水性分散体とは、上記の酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体が水性媒体中に分散されたものであり、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体は、水性媒体中に分散もしくは一%溶解している。本発明において、水性媒体とは、水を主成分とする液体であり、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体の水性化促進のため、後述する塩基性化合物や有機溶剤を含有していてもよい。
【0046】
本発明において、樹脂層形成用液状物を構成する液状媒体は、水性媒体であることが好ましい。水性媒体とは、水と両親媒性有機溶剤とを含み、水の含有量が2質量%以上である溶媒を意味し、水のみでもよい。
両親媒性有機溶剤とは、20℃における有機溶剤に対する水の溶解性が5質量%以上である有機溶剤をいう(20℃における有機溶剤に対する水の溶解性については、例えば「溶剤ハンドブック」(講談社サイエンティフィク、1990年第10版)等の文献に記載されている)。
【0047】
樹脂層形成用液状物には、その性能が損なわれない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、着色剤、消泡剤などを添加することができる。
【0048】
樹脂層形成用液状物としては、ポリオレフィン樹脂水性分散体が好ましい。ポリオレフィン樹脂水性分散体において、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体中の酸変性成分は、塩基性化合物によって中和されていることが好ましい。酸変性成分の中和によって生成したアニオン間の電気反発力により、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体の微粒子間の凝集が防がれ、水性分散体に安定性が付与される。水性化の際に用いる塩基性化合物は酸変性成分を中和できるものであればよい。
塩基性化合物は、塗膜形成時に揮発するアンモニアまたは有機アミン化合物が塗膜の耐水性の面から好ましく、中でも沸点が30~250℃、さらには50~200℃の有機アミン化合物が好ましい。沸点が30℃未満の場合は、後述する樹脂の水性化時に揮発する割合が多くなり、水性化が完全に進行しない場合がある。沸点が250℃を超えると樹脂塗膜から乾燥によって有機アミン化合物を飛散させることが困難になり、塗膜の耐水性が低下する場合がある。
【0049】
酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体の水性化を促進し、分散粒子径を小さくするために、水性化の際に親水性有機溶剤を配合することが好ましい。親水性有機溶剤の含有量としては、水性媒体全体に対し50質量%以下が好ましく、1~45質量%であることがより好ましく、2~40質量%がさらに好ましく、3~35質量%が特に好ましい。親水性有機溶剤の含有量が50質量%を超える場合には、実質的に水性媒体と見なせなくなり、本発明の目的の一つ(作業環境改善)を逸脱するだけでなく、使用する親水性有機溶剤によっては水性分散体の安定性が低下することがある。
【0050】
樹脂層形成用液状物の一つであるポリオレフィン樹脂水性分散体を製造する方法について説明する。
ポリオレフィン樹脂水性分散体を製造する方法としては、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体が水性媒体中に均一に混合・分散される方法であれば、限定されない。例えば、密閉可能な容器に、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体、上記親水性有機溶剤、上記塩基性化合物、水などの原料を投入し、槽内の温度を40~150℃程度の温度に保ちつつ撹拌を行うことにより、水性分散体とする方法などが挙げられる。
【0051】
ポリオレフィン樹脂水性分散体における、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体の含有率は、成膜条件、目的とする樹脂層の厚さや性能等により適宜調整され、特に限定されるものではないが、水性分散体の粘性を適度に保ち、かつ良好な塗膜、樹脂層を得るために、固形分濃度が1~50質量%であることが好ましく、5~40質量%であることがより好ましい。
【0052】
また、ポリエステルフィルム上に樹脂層を形成した後、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体と架橋剤との反応を促進させるために、一定の温度にコントロールされた環境下でエージング処理をおこなってもよい。エージング温度は、基材へのダメージを軽減させる観点からは、比較的低いことが好ましいが、反応を十分かつ速やかに進行させるという観点からは、高温で処理することが好ましい。エージング処理は20~100℃でおこなうことが好ましく、30~70℃でおこなうことがより好ましく、40~60℃でおこなうことがさらに好ましい。
【0053】
本発明の工程用フィルムを構成するポリエステルフィルムは、機械的強度や寸法安定性を有することが好ましい。ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂としては、公知のポリエステル樹脂を用いることができ、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリ乳酸(PLA)などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0054】
本発明においてポリエステルフィルムは、公知の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、可塑剤、滑剤、酸化防止剤などを含んでもよい。これらの添加剤は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0055】
ポリエステルフィルムは、その他の材料と積層する場合、密着性を向上する観点で、表面に前処理としてコロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、薬品処理、溶剤処理等を施してもよい。
【0056】
また、シリカ、アルミナ等が蒸着されていてもよく、バリア層や易接着層、帯電防止層、紫外線吸収層などの他の層が積層されていてもよい。
【0057】
本発明において、ポリエステルフィルムは1種の層からなる単層のフィルムであっても、2種以上の層を積層してなる多層構造であってもよく、ポリエステルフィルムのそれぞれの面の表面粗さを独立に制御することができるという観点から多層構造の方が好ましい。
【0058】
ポリエステルフィルムとして多層フィルムを使用する場合、樹脂層が設けられる層は、上記粗面化物質を含有しないことが好ましい。樹脂層が設けられる層に粗面化物質を含有しないことにより、樹脂層との界面および樹脂層表面へ粗面化物質がブリードアウトすることがなく、樹脂層とポリエステルフィルムとの密着性低下や、剥離時の被着体汚染を防ぐことができる。
【0059】
多層構造を有するフィルムは、それぞれの層を構成するポリエステルを別々に溶融して、複層ダイスを用いて押出し、固化前に積層融着させた後、二軸延伸、熱固定する方法や、2種以上のポリエステルを別々に溶融、押出してそれぞれフィルム化し、未延伸状態で又は延伸後に、それらを積層融着させる方法などによって製造することができる。プロセスの簡便性から、複層ダイスを用い、固化前に積層融着させることが好ましい。
【0060】
本発明の工程用フィルムを構成するポリエステルフィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、通常は12~200μmであることが好ましく、12~50μmであることがより好ましい。
【0061】
次に本発明の工程用フィルムの製造方法の一例を説明する。
十分に乾燥したポリエステル樹脂を、押出機に供給し、十分に可塑化され、流動性を示す温度以上で溶融し、必要に応じて、選ばれたフィルターを通過させ、その後Tダイを通じてシート状に押出す。このシートを、ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)以下に温度調節した冷却ドラム上に密着させて、未延伸フィルムを得る。
得られた未延伸フィルムの少なくとも一方の面上に酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体および架橋剤を含有する樹脂層形成用液状物を塗布し、乾燥する。樹脂層が形成されたポリエステルフィルムを延伸、熱処理する工程を含むことが好ましい。
延伸方法としては、特に限定はされないが、逐次二軸延伸法や同時二軸延伸法を用いることで本発明の工程用フィルムを製造できる。
【0062】
樹脂層は、表面粗度が平滑であるポリエステルフィルム面に設けることが好ましい。また、樹脂層は両面に設けてもよい。
【0063】
本発明の工程用フィルムの160℃、15分間の熱処理における熱収縮率は、MD方向およびTD方向で2.0%以下が好ましく、より低い方がさらに好ましい。熱収縮率が低いと、COPフィルムを塗工して乾燥させても、COPフィルムに不良が発生しにくい。
【0064】
本発明の工程用フィルムを構成する樹脂層表面の表面粗さSaは、剥離して得られたCOPフィルムの表面平滑性を向上させる観点で、15nm以下である必要があり、10nm以下であることが好ましく、5nm以下であることが最も好ましい。樹脂層の表面粗さSaが15nm以下であれば、COPフィルム製造工程において、工程用フィルムの表面状態がCOPフィルムに転写されても不良が発生しにくい。
【0065】
粗面化物質を含有しないポリエステルフィルム面に、上記した酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体を含有する樹脂層形成用塗工液を塗工し、樹脂層を形成することによって、樹脂層表面の表面粗さSaを15nm以下にすることができる。
【0066】
本発明の工程用フィルムを構成する樹脂層表面の表面最大高さSzは、COPフィルムへの樹脂層表面の転写抑制の観点で、1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましく、0.2μm以下であることが最も好ましい。
【0067】
本発明において、ポリエステルフィルム面の表面粗さSaは、2nm以上であることが好ましい。2nm以上であると、滑り性が良好な為、フィルム巻取り時にシワが入ったり、ロール保管時に擦り傷が入ったり、ブロッキングして繰り出しの際にフィルム表面が荒れたりする問題を防ぐことができる。
【0068】
また、逐次二軸延伸法では、未延伸フィルムをロール、赤外線等で加熱し、長手方向に延伸して縦延伸フィルムを得る。延伸は2個以上のロール周速差を利用し、ポリエステルのTg~Tgより40℃高い温度の範囲で2.5~4.0倍とするのが好ましい。縦延伸フィルムは続いて連続的に、巾方向に横延伸、熱固定、熱弛緩の処理を順次施して二軸配向フィルムとする。横延伸はポリエステルのTg~Tgより40℃高い温度で開始し、最高温度はポリエステルの融点(Tm)より(100~40)℃低い温度であることが好ましい。横延伸の倍率は最終的なフィルムの要求物性に依存し調整されるが、3.5倍以上、さらには3.8倍以上とするのが好ましく、4.0倍以上とするのがより好ましい。長手方向と巾方向に延伸後、さらに、長手方向および/または巾方向に再延伸することにより、フィルムの弾性率を高めたり寸法安定性を高めたりすることもできる。
上記逐次二軸延伸法で工程用フィルムを製造する場合には、未延伸フィルムに液状物を塗布してから縦延伸、横延伸する方法と、縦延伸フィルムに液状物を塗布し、横延伸する方法とがある。簡便さや操業上の理由から、後者の方法が好ましい。
【0069】
延伸に続き、ポリエステルのTmより(50~10)℃低い温度で数秒間の熱固定処理を行い、熱固定処理と同時にフィルム幅方向に2~10%の弛緩をすることが好ましい。熱固定処理後、フィルムのTg以下に冷却して、樹脂層が設けられた二軸延伸フィルムを得る。
【0070】
本発明の工程用フィルムは、COPフィルム材料に対して適度な密着性を有していることから、樹脂層上にCOPフィルム材料を積層することで、積層体とすることができる。
【0071】
本発明の積層体は、COPフィルムを工程用フィルムの樹脂層面上に設けたものである。
【0072】
本発明の工程用フィルムは、工程終了後のCOPフィルムとの剥離性に優れるものである。工程用フィルムとCOPフィルムとの剥離強度が0.05N/cm以上、0.50N/cm以下であることが好ましい。
剥離強度が0.05N/cm以上、0.50N/cm以下の範囲内であれば、積層体の搬送中にCOPフィルムが脱落せず、剥離する際には工程用フィルムをCOPフィルムからスムーズに剥離することが可能である。より好ましくは、剥離強度が0.05N/cm以上、0.25N/cm以下である。最も好ましくは、剥離強度が0.05N/cmを以上、0.20N/cm以下である。
【0073】
本発明の工程用フィルムをロール状に巻き取った場合、工程用フィルムの樹脂層の成分が、背面(ポリエステルフィルムの樹脂層が形成されていない面側)に移行しないことが望ましい。
【0074】
シクロオレフィンポリマーとしては、たとえば、特開平10-120768号公報、特開平11-43566号公報、特開2004-51949号公報、特開2004-156048号公報などに記載された、主鎖に環状のオレフィン骨格を有する熱可塑性オレフィン系樹脂が挙げられる。シクロオレフィンポリマーの市販品としては、JSR社製の「ARTON」、日本ゼオン社製の「ZEONOR」、「ZEONEX」、ポリプラスチックス社製の「TOPAS」、三井化学社製の「APEL」 などが挙げられる。
【実施例】
【0075】
以下、本発明の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
なお、各種の特性は、以下の方法により測定または評価した。
【0076】
1.測定方法
本発明では、下記方法にて各種評価を行った。
(1)酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体の不飽和カルボン酸成分含有量
フーリエ変換赤外分光光度計(PerkinElmer社製、System-2000型、分解能4cm-1)を用い、赤外吸収スペクトル分析を行い、不飽和カルボン酸成分の含有量を求めた。
【0077】
(2)不飽和カルボン酸成分以外の酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体の構成
オルトジクロロベンゼン(d4)中、120℃にて、1H-NMR、13C-NMR分析(バリアン社製、300MHz)を行い、求めた。13C-NMR分析では定量性を考慮したゲート付きデカップリング法を用いて測定した。
【0078】
(3)重量平均分子量
重量平均分子量は、GPC分析(島津製作所社製、LC-10AD型、カラムはSHODEX社製KF-804L2本、KF805L1本を連結して用いた。)を用い、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、流速1ml/min、40℃の条件で測定した。約10mgの共重合体をテトラヒドロフラン5.5mLに溶解し、PTFEメンブランフィルターでろ過したものを測定用試料とした。ポリスチレン標準試料で作成した検量線から重量平均分子量を求めた。
【0079】
(4)固形分濃度
水性分散化した酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体を適量秤量し、これを150℃で残存物(固形分)の質量が恒量に達するまで加熱し、固形分濃度を求めた。
【0080】
(5)COPフィルムに対する密着性
得られた工程用フィルムの樹脂層面上に、キシレン溶媒にCOP(JSR社製「ARTON(R)」)の固形分濃度が35質量部となるように溶解させた液状物を、乾燥後の塗布量が約30g/m2になるようにメイヤーバーを用いて塗布し、110℃で20分間乾燥して、COPフィルムが工程用フィルムに積層した積層体を得た。
その後、COPフィルム/工程用フィルム間の密着性を確認するために、JIS K5600-5-6に準拠し、クロスカット法によって、密着性を確認した。詳しくは、切込みを入れて100区画の格子パターンをつくったCOPフィルム表面に粘着テープ(ニチバン社製CT-18)を貼り、勢いよくテープを剥離した。なお、「100/100」が、100区画に全く剥がれがなく、最も密着している状態であり、「0/100」が、100区画全てが剥がれ、全く密着していない状態を示す。工程用フィルムと用いるためには、COPフィルムとの密着性が「100/100~90/100」であることが求められ、「100/100~95/100」であることが好ましく、「100/100~98/100」であることがより好ましく、「100/100」であることが最も好ましい。
【0081】
(6)工程用フィルムの樹脂層表面平滑性Sa(算術平均高さ)、Sz(最大高さ)
日立ハイテク社製ナノ3D光干渉計測システムVS1800を使用し、フィルムの樹脂層表面について、表面粗さパラメーターSa(算術平均高さ、nm)およびSz(最大高さ、μm)を10箇所測定し、平均値を測定結果とした。
【0082】
(7)剥離後のCOPフィルムの表面平滑性Sa(算術平均高さ)、Sz(最大高さ)
得られた工程用フィルムの樹脂層面上に、キシレン溶媒にCOP(JSR社製「ARTON(R)」)の固形分濃度が35質量%となるように溶解させた液状物を、乾燥後の塗布量が約30g/m2になるようにメイヤーバーを用いて塗布し、110℃で20分間乾燥して、COPフィルムが工程用フィルムに積層した積層体を得た。
その後、COPフィルム/工程用フィルム間で剥離し、COPフィルムの樹脂層面側について、日立ハイテク社製ナノ3D光干渉計測システムVS1800を使用し、表面粗さパラメーターSa(算術平均高さ、nm)およびSz(最大高さ、μm)を10箇所測定し、平均値を測定結果とした。
なお、剥離後のCOPフィルムの樹脂層面側の表面粗さSaは、15nm以下であることが求められ、10nm以下であることがより好ましく、5nm以下であることが最も好ましく、表面最大高さSzは、1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましく、0.2μm以下であることが最も好ましい。
【0083】
(8)COPフィルムとの離型性
得られた工程用フィルムの樹脂層面上に、キシレン溶媒にCOP(JSR社製「ARTON(R)」)の固形分濃度が35質量%となるように溶解させた液状物を、乾燥後の塗布量が約30g/m2になるようにメイヤーバーを用いて塗布し、110℃で20分間乾燥して、COPフィルムが工程用フィルムに積層した積層体を得た。(dry10μm相当)
その後、COPフィルム/工程用フィルム間の剥離強度の測定を行った。
110℃で20分間乾燥した後、85℃で5分間再乾燥した積層体についても同様にCOPフィルム/工程用フィルム間の剥離強度を測定した。
なお、剥離強度の測定は、23℃の恒温室で、引張試験機(インテスコ社製、精密万能材料試験機2020型)を用い、剥離角度180度、剥離速度300mm/分の条件で行った。
工程用フィルムとして用いるためには、実用的に0.05N/cm以上、0.50N/cm以下が求められる。
【0084】
(9)塗工性(コートスジ状欠点の発生抑制)
上記方法で得られた離型フィルムの樹脂層側表面に対して5~45°の角度から、蛍光灯の白色光線(100ルーメン)を当てて、スジ状の干渉を示す%分の有無を目視で確認した。下記10地点の全幅におけるスジ状欠点の発生によって、下記に記載の基準で塗工性を評価した。
○:どの地点においてもスジ状欠点が全く確認できないもの
△:1地点以上3地点以内において確認できるもの
×:スジ状欠点が3地点より多い箇所で確認できるもの
評価する地点は、離型フィルムの長手方向の片端縁から1mの地点と、他端縁から1mの地点と、前記2地点の間を9等分した地点の合計10地点とし、各地点のフィルムの幅方向(TD)に黒色油性ペンで直線を引き、直線上を交差するスジ状欠点をフィルム全幅に対して観察した。
【0085】
(10)耐ブロッキング性試験
10センチ角に切った離型フィルムを10枚重ね、恒温槽中60℃で、24時間、荷重10kgで加圧処理後、ピンセットで剥がし、ブロッキングの程度により、次の3段階で評価した。
〇:ブロッキングがなく、剥がす時に引っかかりがない。
△:剥がす時に、少し引っかかるか又は少し音が聞こえる。
×:剥がす時に、引っかかりが強く、皮膜表面で損傷が見られる。
【0086】
2.材料
樹脂層を構成する樹脂として、下記合成例で作製した樹脂を用いた。なお、得られた樹
脂の組成と重量平均分子量は、後述する製造例(表1)でまとめて示す。
【0087】
合成例1
エチレン-オクテン共重合体(質量比:エチレン/オクテン=71/29、重量平均分子量=68,000)80gを、4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下でキシレン350gに加熱溶解させた後、系内温度を140℃に保って撹拌下、不飽和カルボン酸として無水マレイン酸30gとラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド5gをそれぞれ2時間かけて加え、その後6時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させた。この樹脂をさらにアセトンで数回洗浄し、未反応の無水マレイン酸を除去した後、減圧乾燥し、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体P-1を得た。
【0088】
合成例2
合成例1において、質量比(エチレン/オクテン)が95/5であるエチレン-オクテン共重合体(重量平均分子量=22,000)を用いた以外は、同様の操作を行って、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体P-2を得た。
【0089】
合成例3
合成例1において、エチレン-オクテン共重合体に代えて、質量比(エチレン/ヘプテン)が76/24であるエチレン-ヘプテン共重合体(重量平均分子量=69,000)を用い、無水マレイン酸の量を20g、ジクミルパーオキサイドの量を10gに変更した以外は、同様の操作を行って、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体P-3を得た。
【0090】
合成例4
合成例1において、エチレン-オクテン共重合体に代えて、質量比(エチレン/ヘキセン)が75/25であるエチレン-ヘキセン共重合体(重量平均分子量=75,000)を用い、無水マレイン酸の量を30g、ジクミルパーオキサイドの量を10gに変更した以外は、同様の操作を行って、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体P-4を得た。
【0091】
合成例5
合成例4において、エチレン-へキセン共重合体に代えて、質量比(エチレン/ペンテン)が73/27であるエチレン-ペンテン共重合体(重量平均分子量=72,000)を用いた以外は、同様の操作を行って、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体P-5を得た。
【0092】
合成例6
合成例3において、エチレン-ヘプテン共重合体に代えて、質量比(エチレン/ブテン)が70/30であるエチレン-ブテン共重合体(重量平均分子量=50,000)を用いた以外は、同様の操作を行って、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体P-6を得た。
【0093】
合成例7
合成例3において、エチレン-ヘプテン共重合体に代えて、質量比(エチレン/プロピレン)が75/25であるエチレン-プロピレン共重合体(重量平均分子量=58,000)を用いた以外は、同様の操作を行って、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体P-7を得た。
【0094】
合成例8
合成例7において、質量比(エチレン/プロピレン)が99/1であるエチレン-プロピレン共重合体(重量平均分子量=56,000)を用いた以外は、同様の操作を行って、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体P-8を得た。
【0095】
酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体P-1~P-8については、表1に示す。
【0096】
【0097】
製造例1
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、30gの酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体P-1、100gのテトラヒドロフラン、18gのトリエチルアミンおよび252gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌した。この状態を保ちつつ、ヒーターの電源を入れ加熱し、系内温度を120℃に保って60分間撹拌した。その後、水浴につけて撹拌しつつ室温(約25℃)まで冷却し、64.5gの蒸留水を追加した。得られた分散体を1Lナスフラスコに入れ、60℃に加熱した湯浴につけながらエバポレーターを用いて減圧し、176gの水性媒体を留去した。冷却後、フラスコ内の液状成分を300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一な酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体の水性分散体を得た。
上記酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体の水性分散体(固形分濃度:10.5質量%)と、オキサゾリン化合物の水溶液(日本触媒社製、エポクロス「WS-300」、固形分濃度:10質量%)とを、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体100質量部に対して、オキサゾリン化合物の固形分が20質量部となるように混合し、濡れ剤(共栄社化学社製、「ポリフローKL-900」)を全配合量に対して0.2質量%となるように混合した液状物を樹脂層形成用液状物E-1とした。
【0098】
製造例2~28
製造例1において、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体の種類、架橋剤の種類と含有量、親水性高分子の種類と含有量、酸変性ポリオレフィン樹脂の種類と含有量、濡れ剤の種類と含有量、粘着付与樹脂の種類と含有量を表1、表2に記載のように変更した以外は、製造例1と同様の操作を行って樹脂層形成用液状物E-2~E-6、E-8~E-28を得た。
なお、樹脂層形成用液状物E-7は、100質量部の酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体P-1に対して酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体P-8を20質量部混合した以外は製造例1と同様の操作を行って作製した。
【0099】
樹脂層形成用液状物E-1~E-28については、表2に示す。
【0100】
【0101】
3.工程用フィルムの製造
実施例1
ポリエチレンテレフタレートA(重合触媒:三酸化アンチモン、固有粘度:0.62、ガラス転移温度:78℃、融点:255℃)にシリカ粒子(粒子径2.3μm)を0.07質量%含有したポリエチレンテレフタレートBを押出機I(スクリュー径:50mm)に、また、ポリエチレンテレフタレートAを押出機II(スクリュー径:65mm)にそれぞれ投入して280℃で溶融後、それぞれの溶融体をTダイの出口に至る前で層状に合流積層させた。層の厚み比(I/II)が4/6となり、総厚みが600μmとなるよう調整してTダイ出口より押出し、急冷固化して未延伸ポリエステルフィルムを得た。
この未延伸ポリエステルフィルムをロール式縦延伸機で85℃の条件下、3.5倍に延伸して縦延伸フィルムを得た。次いで、樹脂層形成用液状物E-1を、縦延伸フィルムの押出機II側(ポリエチレンテレフタレートA側)のポリエステルフィルム面上に、120メッシュのグラビアロールで5g/m2となるように塗布した。その後、連続的に縦延伸フィルムの端%をフラット式延伸機のクリップに把持させ、100℃の条件下、横4.5倍に延伸を施し、その後、横方向の弛緩率を3%として、243℃で3秒間の熱処理を施して、2種2層のポリエステルフィルムからなる基材フィルムの片面に厚さ0.1μmの樹脂層が設けられた厚さ38μmの工程用フィルムを得た。
【0102】
実施例2~11、13~24、比較例1~4
実施例1において、樹脂層形成用液状物の種類を表3に記載のように変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、工程用フィルムを得た。
【0103】
実施例12
ポリエチレンテレフタレートA(重合触媒:三酸化アンチモン、固有粘度:0.62、ガラス転移温度:78℃、融点:255℃)にシリカ粒子(粒子径2.3μm)を0.03質量%含有したポリエチレンテレフタレートCを押出機I(スクリュー径:50mm)に、また、ポリエチレンテレフタレートAを押出機II(スクリュー径:65mm)にそれぞれ投入して280℃で溶融後、それぞれの溶融体をTダイの出口に至る前で層状に合流積層させた。層の厚み比(I/II)が4/6となり、総厚みが600μmとなるよう調整してTダイ出口より押出し、急冷固化して未延伸ポリエステルフィルムを得た。
この未延伸ポリエステルフィルムをロール式縦延伸機で85℃の条件下、3.5倍に延伸して縦延伸フィルムを得た。次いで、樹脂層形成用液状物E-1を、縦延伸フィルムの押出機II側(ポリエチレンテレフタレートA側)のポリエステルフィルム面上に、120メッシュのグラビアロールで5g/m2となるように塗布した。その後、連続的に縦延伸フィルムの端%をフラット式延伸機のクリップに把持させ、100℃の条件下、横4.5倍に延伸を施し、その後、横方向の弛緩率を3%として、243℃で3秒間の熱処理を施して、2種2層のポリエステルフィルムからなる基材フィルムの片面に厚さ0.1μmの樹脂層が設けられた厚さ38μmの工程用フィルムを得た。
【0104】
実施例25
ポリエチレンテレフタレートA(重合触媒:三酸化アンチモン、固有粘度:0.62、ガラス転移温度:78℃、融点:255℃)にシリカ粒子(粒子径2.3μm)を4質量%添加したポリエチレンテレフタレートCを押出機I(スクリュー径:50mm)に、また、ポリエチレンテレフタレートAを押出機II(スクリュー径:65mm)にそれぞれ投入して280℃で溶融後、それぞれの溶融体をTダイの出口に至る前で層状に合流積層させた。層の厚み比(I/II/I)が1/8/1となり、総厚みが600μmとなるよう調整してTダイ出口より押出し、急冷固化して未延伸ポリエステルフィルムを得た。
この未延伸ポリエステルフィルムをロール式縦延伸機で85℃の条件下、3.5倍に延伸して縦延伸フィルムを得た。次いで、樹脂層形成用液状物E-1を、縦延伸フィルムの押出機I側(ポリエチレンテレフタレートC側)のポリエステルフィルム面上に、120メッシュのグラビアロールで5g/m2となるように塗布した後、連続的に縦延伸フィルムの端%をフラット式延伸機のクリップに把持させ、100℃の条件下、横4.5倍に延伸を施し、その後、横方向の弛緩率を3%として、243℃で3秒間の熱処理を施して、2種3層のポリエステルフィルムからなる基材フィルムの片面に厚さ0.1μmの樹脂層が設けられた厚さ38μmの工程用フィルムを得た。
【0105】
実施例26
ポリエチレンテレフタレートA(重合触媒:三酸化アンチモン、固有粘度:0.62、ガラス転移温度:78℃、融点:255℃)にシリカ粒子(粒子径2.3μm)を4質量%添加したポリエチレンテレフタレートCを押出機I(スクリュー径:50mm)に、また、ポリエチレンテレフタレートAを押出機II(スクリュー径:65mm)にそれぞれ投入して280℃で溶融後、それぞれの溶融体をTダイの出口に至る前で層状に合流積層させた。層の厚み比(I/II/I)が1/8/1となり、総厚みが600μmとなるよう調整してTダイ出口より押出し、急冷固化して未延伸ポリエステルフィルムを得た。
この未延伸ポリエステルフィルムをロール式縦延伸機で85℃の条件下、3.5倍に延伸し、連続的に縦延伸フィルムの端%をフラット式延伸機のクリップに把持させ、100℃の条件下、横4.5倍に延伸を施し、その後、横方向の弛緩率を3%として、243℃で3秒間の熱処理を施した後、冷却して巻き取った厚さ38μmの2種3層の二軸延伸ポリエステルフィルム(厚さ38μm)を得た。
得られた二軸延伸ポリエステルフィルムに、樹脂層形成用液状物E-1をマイヤーバーで塗工した後、120℃で20秒間乾燥して、厚さ0.1μmの樹脂層が設けられた厚さ38μmの工程用フィルムを得た。
【0106】
実施例27
実施例26において、樹脂層形成用液状物の種類をE-1からE-10に変更した以外は同様の操作を行って、工程用フィルムを得た。
【0107】
比較例5
二軸延伸ポリエステル樹脂フィルム(ユニチカ社製「エンブレットPET-38」、厚み38μm)のコロナ処理面に、マイヤーバーを用いて樹脂層形成用液状物E-1をコートした後、120℃で20秒間乾燥して、厚さ0.1μmの樹脂層が設けられた厚さ38μmの工程用フィルムを得た。
【0108】
得られた工程用フィルムについて、各種評価を行った、その結果を表3に示す。
【0109】
【0110】
実施例1~27で得られた工程用フィルムは、COPフィルムとの密着性が良好であり、乾燥後のCOPフィルムとの離型性にも優れるものであった。また、工程用フィルムの樹脂層表面が平滑であるため、剥離後のCOPフィルムの表面も平滑なフィルムが得られた。
なかでも、インラインコート法で樹脂層を形成した実施例1~25の工程用フィルムの樹脂層表面が特に平滑であったため、COPフィルムへの転写が抑制され表面平滑性に優れたCOPフィルムが得られた。
【0111】
比較例1~3では、炭素数5以上のオレフィン成分を含む酸変性エチレン-α-オレフィンを樹脂層に含有していないため、COPフィルムとの密着性および乾燥後のCOPフィルムとの離型性に劣っていた。
【0112】
比較例4では、樹脂層に架橋剤を含有していなかったため、COPフィルムとの離型性に劣っていた。
【0113】
比較例5では、樹脂層表面の算術平均粗さ(Sa)が15nmを超えていたため、COPフィルムへ凹凸が転写し、剥離後のCOPフィルムの表面平滑性が劣っていた。