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  • 特許-簡易免震構造 図1
  • 特許-簡易免震構造 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-27
(45)【発行日】2025-04-04
(54)【発明の名称】簡易免震構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/34 20060101AFI20250328BHJP
【FI】
E02D27/34 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024003595
(22)【出願日】2024-01-12
【審査請求日】2024-10-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524017663
【氏名又は名称】小松 佳治
(74)【代理人】
【識別番号】100174805
【弁理士】
【氏名又は名称】亀山 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】小松 佳治
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-184984(JP,A)
【文献】特開2007-040075(JP,A)
【文献】登録実用新案第3134768(JP,U)
【文献】特開2013-091946(JP,A)
【文献】特開2008-121401(JP,A)
【文献】登録実用新案第3196470(JP,U)
【文献】登録実用新案第3048861(JP,U)
【文献】特開平10-338938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バラストと、
前記バラストの上に設けられた基礎と、
前記バラストの周囲を覆う崩れ防止構造と、
前記バラストを囲む枠体と、を備え、
前記崩れ防止構造は、前記バラストと前記枠体との間に充填されたものであり、
前記バラストと前記崩れ防止構造との間には、地震のエネルギーによって前記崩れ防止構造よりも優先的に破壊されやすい混合構造が形成され、
前記混合構造は、
前記バラストを構成する砂利又は砕石と、
前記砂利又は前記砕石の隙間に侵入した前記崩れ防止構造に含まれる成分と、からなり、
前記崩れ防止構造に含まれる成分は、前記バラストを構成する砂利又は砕石の隙間に侵入可能な土、砂、又は小石のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする簡易免震構造。
【請求項2】
前記崩れ防止構造の成分は、前記バラストを構成する砂利又は砕石の隙間に侵入可能な土、砂、又は小石のうち少なくとも1つからなることを特徴とする請求項1記載の簡易免震構造。
【請求項3】
前記崩れ防止構造は、錐台形状に形成されることを特徴とする請求項1記載の簡易免震構造。
【請求項4】
前記バラストと前記枠体は、地表の上、又は共通の地中面の上に設けられたことを特徴 とする請求項3記載の簡易免震構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易免震構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の免震技術としては、建物と土台の基礎との間に積層ゴム体やベアリング等を活用した免震装置を設置し、地震の揺れが直接建物に伝わるのを防止する建築工法が一般的である。
【0003】
しかし、免震装置を設置した建築工法では、地震動が直接建物に伝わり難いため、家具や什器等の転倒を減少する効果が分かっていても、免震戸建住宅に関わる初期投資(設計費や施工費)が高額と成ると共に、免新装置の機能を維持するための定期保守、及び定期的に取替え工事が必要となり、戸建住宅市場への普及が進んでいないのが現状である。
【0004】
この改善策として砕石や砂利を利用した戸建住宅、設備、装置等の軽量構造物に免震機能を付与するための簡易免震構造がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-184984
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の簡易免震工法は、比較的低コストで実施できるものの、免震性能が十分ではなかった。
【0007】
そこで本発明は、比較的低コストで、免震性能が向上する簡易免震構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の簡易免震構造は、バラストと、前記バラストの上に設けられた基礎と、 前記バラストの周囲を覆う崩れ防止構造と、前記バラストを囲む枠体と、を備え、前記崩れ防止構造は、前記バラストと前記枠体との間に充填されたものであり、前記バラストと前記崩れ防止構造との間には、地震のエネルギーによって前記崩れ防止構造よりも優先的に破壊されやすい混合構造が形成され、前記混合構造は、前記バラストを構成する砂利又は砕石と、前記砂利又は前記砕石の隙間に侵入した前記崩れ防止構造に含まれる成分と、からなり、前記崩れ防止構造に含まれる成分は、前記バラストを構成する砂利又は砕石の隙間に侵入可能な土、砂、又は小石のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0009】
前記崩れ防止構造の成分は、前記バラストを構成する砂利又は砕石の隙間に侵入可能な土、砂、又は小石のうち少なくとも1つからなることが好ましい。
【0010】
また、前記崩れ防止構造は、錐台形状に形成されることが好ましい。
【0011】
さらに、前記バラストと前記枠体は、地表の上、又は共通の地中面の上に設けられたことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、比較的低コストで、免震性能が向上する簡易免震構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】簡易免震構造の概要を示す説明図である。
図2】簡易免震工法の概要を示すフロー図である。
図3】簡易免震構造(変形例)の概要を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示すように、簡易免震構造2は、建物BLを支持するものであり、砕石又は砂利を含むバラスト10と、バラスト10の上に設けられた基礎20と、バラスト10の周囲を覆う崩れ防止構造30と、崩れ防止構造30の周囲に設けられた枠体40と、を備える。
【0015】
バラスト10は、基準となる地表面GLの上に設定された対象エリアA1に形成される。バラスト10は、錐台形状又に形成される。平面視における対象エリアA1の寸法は、目的とする建物BL、及び基礎20を支持するために必要なバラスト10の面積であればよい。
【0016】
バラスト10は、砕石又は砂利を含む。砕石又は砂利を構成する石の大きさは、本発明の趣旨に反しない限り特に限定されないが、例えば、30mm以上60mm以下である。バラスト10の厚みは、本発明の趣旨に反しない限り特に限定されないが、例えば、200mm以上500mm以下であることが好ましく、250mm以上300mm以下であることがより好ましい。
【0017】
基礎20は、ベタ基礎である。基礎20の形成材料としては、鉄筋及びコンクリ―が用いられる。基礎20の厚みは、本発明の趣旨に反しない限り特に限定されないが、例えば、100mm以上200mm以下であることが好ましく、100mm以上150mm以下であることがより好ましい。ここで、基礎20の厚みとは、水平方向に延びる部分については垂直方向の厚みをいい、垂直方向に延びる部分については水平方向の厚みをいう。
【0018】
崩れ防止構造30は、バラスト10の周囲に設けられる。崩れ防止構造30には土や小石や砂が含まれる。この土は、バラスト10を構成する砕石又は砂利の隙間に侵入可能なものであることが好ましい。また、崩れ防止構造30は、バラスト10の法面10NMを覆うことが好ましい。なお、崩れ防止構造30は、バラスト10の法面10NMのみならず上面10UMを覆うことがより好ましい。
【0019】
枠体40は、基準となる地表面GLの上において、バラスト10の周囲に設けられる。枠体40の形成材料として、コンクリートであることが好ましい。枠体40のサイズは、本願発明の趣旨に反さない限り特に限定されないが、例えば、平面視におけるバラスト10の寸法を基準に120%以上140%以下であることが好ましい。
【0020】
次に、簡易免震工法について説明する。
【0021】
簡易免震工法100は、図2に示すように、枠体形成工程110と、バラスト形成工程120と、崩れ防止構造形成工程130と、基礎形成工程140と、を備える。
【0022】
枠体形成工程110では、基準となる地表面GLに設定された対象エリアA1の周りに、枠体40を設ける。枠体形成工程110を行う際、基準となる地表面GLは、平坦となっていることが好ましい。
【0023】
バラスト形成工程120では、バラスト10を対象エリアA1に設ける。バラスト10は、錐台形状又に形成されることが好ましい。
【0024】
崩れ防止構造形成工程130では、バラスト10の周囲を覆うように崩れ防止構造30を設ける。崩れ防止構造30としての土は、枠体40とバラスト10との間を充填されることが好ましい。
【0025】
基礎形成工程140では、バラスト10上に基礎20を設ける。基礎形成工程140において、基礎20を設けた後、基礎形成工程140において、基礎20の周囲を覆うように崩れ防止構造30を設けてもよい。
【0026】
こうして、簡易免震工法100により、簡易免震構造2が形成される。
【0027】
次に、簡易免震構造2によれば、基礎20がバラスト10の上に設けられているため、地震の振動エネルギーは、バラスト10を構成する砕石又は砂利の流動や摩擦のエネルギーとなるため、建物BLに伝わるエネルギーは小さくなる。
【0028】
また、崩れ防止構造30がバラスト10の周囲に設けられるため、バラスト10の形状は、施工当時の状態が維持される。結果、バラスト10がもつ振動エネルギーの吸収性能は、所期のものを維持することができる。さらに、崩れ防止構造30により、バラスト10の形状は、施工当時の状態が維持されるため、その上に設けられる建物BLの位置のずれ(水平方向や垂直方向)を抑制することができる。
【0029】
さらに、崩れ防止構造30に含まれる土は、バラスト10を構成する砕石又は砂利の隙間に侵入可能なものであるため、簡易免震工法100の後、経時によって、バラスト10を構成する砕石又は砂利の隙間に土が入り込んだ状態で土が固まる。この結果、バラスト10の法面10NM近傍や上面10UM近傍には、砕石又は砂利の隙間に土が充填された混合構造Kができる。地震の振動エネルギーが混合構造Kに伝わると、混合構造Kにおいて、砕石又は砂利の隙間に充填され、これらを一体化させていた土部分は、混合構造K以外の崩れ防止構造30に比べ、優先的に破壊されやすい。すなわち、地震の振動エネルギーは、混合構造Kを破壊するエネルギーとして利用される。さらにその後、混合構造Kは流動性を持つので、地震の振動エネルギーは、土及びバラスト10を構成する砕石又は砂利の流動や摩擦のエネルギーとなる。混合構造Kの水平方向の長さは、それぞれ、対象エリアA1の長さの5%以上15%以下であることが好ましい。
【0030】
このように簡易免震構造2によれば、地震の振動エネルギーを吸収する性能が高いので、建物BLに伝わる振動エネルギーを抑えることができる。バラスト10の法面10NM近傍や上面10UM近傍に混合構造Kを短時間で形成することができる。
【0031】
なお、崩れ防止構造形成工程130では、枠体40とバラスト10との間に充填された崩れ防止構造30の上表面から押し固める、又は崩れ防止構造30の上表面に水を撒く等してもよい。これにより、混合構造Kを短時間で形成できる。
【0032】
上記実施形態では、基準となる地表面GLに設定された対象エリアA1にバラスト10を設けたが、本発明はこれに限られず、地表面GLに穴GLを形成し、穴GLの底面GMにバラスト10を設け、バラスト10の上に基礎20を設けてもよい(図3)。この場合には、穴GLの壁面が枠体40と同等の機能を果たす場合には、枠体40を省略してもよい。
【0033】
上記実施形態では、バラスト10は、錐台形状又に形成されたが、本発明はこれに限られず、バラスト10は、直方体状に形成されてもよい。
【0034】
上記実施形態では、基礎20は、ベタ基礎であるとしたが、本発明はこれに限られず、基礎20としては、独立基礎、布基礎、深基礎、杭基礎も利用可能である。
【0035】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0036】
2 簡易免震構造
10 バラスト
20 基礎
30 崩れ防止構造
40 枠体
100 簡易免震工法
110 枠体形成工程
120 バラスト形成工程
130 防止構造形成工程
140 基礎形成工程
K 混合構造

【要約】
【課題】比較的低コストで、免震性能が向上する簡易免震構造を提供する。
【解決手段】簡易免震構造2は、建物BLを支持するものであり、砕石又は砂利を含むバラスト10と、バラスト10の上に設けられた基礎20と、バラスト10の周囲を覆う崩れ防止構造30と、崩れ防止構造30の周囲に設けられた枠体40と、を備える。バラスト10は、基準となる地表面GLの上に設定された対象エリアA1に形成される。崩れ防止構造30は、バラスト10の周囲に設けられる。崩れ防止構造30には土や小石や砂が含まれる。この土は、バラスト10を構成する砕石又は砂利の隙間に侵入可能なものであることが好ましい。枠体40は、基準となる地表面GLの上において、バラスト10の周囲に設けられる。枠体40の形成材料として、コンクリートであることが好ましい。
【選択図】図1
図1
図2
図3