(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-27
(45)【発行日】2025-04-04
(54)【発明の名称】充填要素、充填要素の製造装置、及び充填要素の製造方法
(51)【国際特許分類】
A24D 3/02 20060101AFI20250328BHJP
A24D 3/00 20200101ALI20250328BHJP
【FI】
A24D3/02
A24D3/00
(21)【出願番号】P 2023567433
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 JP2021046516
(87)【国際公開番号】W WO2023112255
(87)【国際公開日】2023-06-22
【審査請求日】2024-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 純一郎
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 洋輔
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/128827(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/118042(WO,A1)
【文献】特開昭54-052799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24D 3/02
A24D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
香味吸引物品に用いる充填要素であって、
不織布からなる1枚のシートをその長手方向と交差する幅方向に折り込んで、前記充填要素の直径以下に縮径させた折り込み部と、
前記折り込み部にラッピングされる巻紙と
を備え、
前記シートは、前記幅方向における少なくとも一部を押圧する押圧処理が施されてなり、前記幅方向において前記シートが押圧される幅の合計を前記シートの総押圧幅と規定したとき、前記幅方向における前記シートのシート幅に対する前記総押圧幅の割合は所定割合となる、充填要素。
【請求項2】
前記所定割合は50%以下である、請求項1に記載の充填要素。
【請求項3】
香味吸引物品に用いる充填要素の製造装置であって、
不織布からなる1枚のシートを搬送経路にて搬送しながら処理するシート処理セクションと、
前記搬送経路における前記シートの搬送過程にて、前記シート処理セクションにて処理された前記シートをその長手方向と交差する幅方向に折り込んで、前記充填要素の直径以下に縮径させた折り込みロッドを形成する折り込みセクションと、
前記折り込みセクションにて形成された前記折り込みロッドを巻紙でラッピングして充填ロッドを形成するラッピングセクションと、
前記ラッピングセクションにて形成された前記充填ロッドを前記充填要素に切断する切断セクションと
を備え、
前記シート処理セクションは、それぞれ対をなすローラから構成されるとともに、前記各一対のローラにより前記搬送経路において前記シートを挟んで搬送する複数のローラセットを備え、
前記各ローラセットを構成する前記一対のローラの少なくとも一方の前記ローラには、前記ローラの外周面の全周に亘って突出した凸条がそれぞれ形成され、
前記凸条は、前記シートの前記幅方向における少なくとも一部を押圧する押圧処理を施し、
前記幅方向において前記凸条により前記シートが押圧される押圧領域の幅の合計を前記シートの総押圧幅と規定したとき、前記幅方向における前記シートのシート幅に対する前記総押圧幅の割合は所定割合に調整される、充填要素の製造装置。
【請求項4】
前記所定割合は50%以下である、請求項3に記載の充填要素の製造装置。
【請求項5】
前記折り込みセクションは、
前記搬送経路における前記シートの搬送過程にて、前記シートをその厚み方向に湾曲させる予備折り込みガイドと、
前記予備折り込みガイドを通過した湾曲した前記シートを風圧を伴う空気により引き込みつつ前記幅方向に所定回数折り込んで、前記折り込みロッドを形成する筒状のトランスポートジェットと、
前記トランスポートジェットを通過した前記折り込みロッドが前記風圧を伴う空気とともに放出され、この放出に伴う空気の散逸によって前記折り込みロッドの繊維を解いて開繊する筒状のトランペットガイドと、
前記トランペットガイドを通過した前記折り込みロッドを前記充填要素の直径以下に縮径する筒状のトングと
を備える、請求項3又は4に記載の充填要素の製造装置。
【請求項6】
前記トランスポートジェット及び前記トランペットガイドは、これらの内周面から径方向中央に向けて立設される邪魔板をそれぞれ有し、
前記トランスポートジェット及び前記トランペットガイドを通過する湾曲した前記シートは、前記風圧を伴う空気を受けて前記各邪魔板を挟んで折り込まれて、前記折り込みロッドに形成される、請求項5に記載の充填要素の製造装置。
【請求項7】
香味吸引物品に用いる充填要素の製造方法であって、
不織布からなる1枚のシートを搬送しながら処理するシート処理ステップと、
前記シートの搬送過程にて、前記シート処理ステップにて処理された前記シートをその長手方向と交差する幅方向に折り込んで、前記充填要素の直径以下に縮径させた折り込みロッドを形成する折り込みステップと、
前記折り込みステップにて形成された前記折り込みロッドを巻紙でラッピングして充填ロッドを形成するラッピングステップと、
前記ラッピングステップで形成された前記充填ロッドを前記充填要素に切断する切断ステップと
を含み、
前記シート処理ステップでは、前記シートの搬送過程にて、前記シートの前記幅方向における少なくとも一部を押圧する押圧プロセスが行われ、
前記押圧プロセスでは、前記シートが押圧される押圧領域の幅の合計を前記シートの総押圧幅と規定したとき、前記幅方向における前記シートのシート幅に対する前記総押圧幅の割合は所定割合に調整される、充填要素の製造方法。
【請求項8】
前記所定割合は50%以下である、請求項7に記載の充填要素の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填要素、充填要素の製造装置、及び充填要素の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シガレットに用いるフィルタ要素の製造方法が開示されている。このフィルタ要素は、フィルタ材料として濾過機能を有する2枚以上のシートを一定幅にずらして重ね合わせ、重ね合わせた各シートをS字形状、或いはZ字形状に折り曲げた後に絞って円柱状に巻き上げることにより形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フィルタ要素は、特許文献1に記載の燃焼加熱型のシガレットを含む香味吸引物品の他、非燃焼加熱型の香味吸引物品に用いることができる。フィルタ要素に充填されるフィルタ材料の充填密度は、ユーザが香味吸引物品を吸引する際の通気抵抗、ひいてはユーザが得られる喫味に大きく影響する。フィルタ要素の充填密度が低下すると、フィルタ要素に隙間や空洞が生じ、香味吸引物品の喫味及び外観が大きく損なわれる。すなわち、フィルタ要素の充填密度は、香味吸引物品の品質を確保するうえでの重要なファクターとなる。
【0005】
特許文献1に記載の製造方法においては、香味吸引物品及びそれに用いるフィルタ要素の仕様を変更する際、フィルタ要素の充填密度を調整するために、シートを複数枚用意して、各シートの枚数を変更したり、重ねた各シートのずらし幅を調整したり、或いは、シート自体の仕様を変更したりしなければならならない。
【0006】
このように、従来においては、シートを充填して形成されるフィルタ要素、換言すると、香味吸引物品に用いる充填要素の充填密度を管理するためのパラメータが多種多様となるため、要求仕様に応じて充填要素の充填密度を容易に且つ高精度に制御するのは困難である。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、充填密度を容易に且つ高精度に制御することができる充填要素、充填要素の製造装置、及び充填要素の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するべく、一態様に係る充填要素は、香味吸引物品に用いる充填要素であって、不織布からなる1枚のシートをその長手方向と交差する幅方向に折り込んで、充填要素の直径以下に縮径させた折り込み部と、折り込み部にラッピングされる巻紙とを備え、シートは、幅方向における少なくとも一部を押圧する押圧処理が施されてなり、幅方向においてシートが押圧される幅の合計をシートの総押圧幅と規定したとき、幅方向におけるシートのシート幅に対する総押圧幅の割合は所定割合となる。
【0009】
一態様に係る充填要素の製造装置は、香味吸引物品に用いる充填要素の製造装置であって、不織布からなる1枚のシートを搬送経路にて搬送しながら処理するシート処理セクションと、搬送経路におけるシートの搬送過程にて、シート処理セクションにて処理されたシートをその長手方向と交差する幅方向に折り込んで、充填要素の直径以下に縮径させた折り込みロッドを形成する折り込みセクションと、折り込みセクションにて形成された折り込みロッドを巻紙でラッピングして充填ロッドを形成するラッピングセクションと、ラッピングセクションにて形成された充填ロッドを充填要素に切断する切断セクションとを備え、シート処理セクションは、それぞれ対をなすローラから構成されるとともに、各一対のローラにより搬送経路においてシートを挟んで搬送する複数のローラセットを備え、各ローラセットを構成する一対のローラの少なくとも一方のローラには、ローラの外周面の全周に亘って突出した凸条がそれぞれ形成され、凸条は、シートの幅方向における少なくとも一部を押圧する押圧処理を施し、幅方向において凸条によりシートが押圧される押圧領域の幅の合計をシートの総押圧幅と規定したとき、幅方向におけるシートのシート幅に対する総押圧幅の割合は所定割合に調整される。
【0010】
一態様に係る充填要素の製造方法は、香味吸引物品に用いる充填要素の製造方法であって、不織布からなる1枚のシートを搬送しながら処理するシート処理ステップと、シートの搬送過程にて、シート処理ステップにて処理されたシートをその長手方向と交差する幅方向に折り込んで、充填要素の直径以下に縮径させた折り込みロッドを形成する折り込みステップと、折り込みステップにて形成された折り込みロッドを巻紙でラッピングして充填ロッドを形成するラッピングステップと、ラッピングステップで形成された充填ロッドを充填要素に切断する切断ステップとを含み、シート処理ステップでは、シートの搬送過程にて、シートの幅方向における少なくとも一部を押圧する押圧プロセスが行われ、押圧プロセスでは、シートが押圧される押圧領域の幅の合計をシートの総押圧幅と規定したとき、幅方向におけるシートのシート幅に対する総押圧幅の割合は所定割合に調整される。
【発明の効果】
【0011】
充填要素の充填密度を容易に且つ高精度に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】非燃焼加熱型の香味吸引物品の横断面図である。
【
図2】変形例に係る非燃焼加熱型の香味吸引物品の横断面図である。
【
図3】燃焼加熱型の香味吸引物品の横断面図である。
【
図4】変形例に係る燃焼加熱型の香味吸引物品の横断面図である。
【
図5】別の変形例に係る燃焼加熱型の香味吸引物品の横断面図である。
【
図12】
図11の状態から縮径されて形成された充填要素の斜視図である。
【
図13】添加物が配置された折り込み部の斜視図である。
【
図14】
図13の状態から縮径されて形成された充填要素の斜視図である。
【
図15】カプセルが配置された折り込み部の斜視図である。
【
図16】
図15の状態から縮径されて形成された充填要素の斜視図である。
【
図18】充填要素の製造方法を説明するフローチャートである。
【
図19】シートを挟んだ第1ローラセットの斜視図である。
【
図26】トランスポートジェットの横断面図である。
【
図27】トランスポートジェットの端面を示す図である。
【
図29】トランペットガイドの端面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<香味吸引物品>
図1は、非燃焼加熱型の香味吸引物品1(以下、物品ともいう)の横断面図を示す。物品1は、
図1で見て左側(物品1の先端側)から順に、香味要素2、管状要素4、及び充填要素6から構成されている。香味要素2は、香味原料8を充填することにより形成されている。
【0014】
香味要素2を加熱するために使用するデバイス(香味吸引器)は、例えばニードル形状のヒータ10を備えている。
図1にはデバイスのヒータ10のみが示される。デバイスに物品1をセットし、香味要素2にヒータ10を差し込んで加熱する。これにより、香味原料8の香味成分が揮散する。
【0015】
なお、香味要素2に充填された香味原料8内に、金属板や金属粒等の導電性部材を混在させても良い。この導電性部材は、デバイスが磁場を発生することにより誘導電流によって加熱され、加熱された導電性部材が香味要素2を加熱することにより、香味原料8の香味成分が揮散する。
【0016】
香味原料8は、例えば、刻みたばこ、たばこシートを細断した物、或いは、たばこシートをギャザー状に折り畳んだ物である。香味原料8は、たばこを含まないパルプから形成されたシートに香料を添加した物、非たばこ植物から形成されたシートを細断した物、或いは、これらのシートをギャザー状に折り畳んだ物であっても良い。香味原料8の周面は巻紙12で巻き上げられている。
【0017】
管状要素4は、物品1において気流経路を形成し、例えば円筒状の紙管14から形成されている。紙管14は、一重又は二重のペーパウエブから形成される。充填要素6は、充填材料16を充填した濾過体である。充填材料16は、不織布からなる1枚のシート34を折り込んで形成される。充填要素6の周面は巻紙18で巻き上げられる。
【0018】
各要素2、4、6を軸線方向Xに同軸に並べて突き合せて配置して連続体を形成する。各要素2、4、6は、連続体の周面にチップペーパ20を巻き付けることにより互いに接続される。管状要素4及びチップペーパ20には、物品1の吸引時に物品1内に空気を取り込むための通気孔22が形成される。通気孔22を介して外部から物品1内に取り込まれた空気により、香味要素2の香味成分や後述する添加剤の揮発成分が冷却され、これらの成分のエアロゾル化が促進される。
【0019】
図2は、変形例に係る非燃焼加熱型の物品1の横断面図を示す。この物品1は、
図1と同様の位置に充填要素6を備え、さらに香味要素2の管状要素4とは反対側の隣接位置、すなわち物品1の先端に充填要素6を備える。先端の充填要素6は、巻紙24により香味要素2に接続される。ヒータ10は、先端の充填要素6を貫通して香味要素2に差し込まれる。
【0020】
この際、先端の充填要素6は、香味要素2から香味原料8がヒータ10の根元に零れ落ちることを抑制する。すなわち、先端の充填要素6は、物品1において、香味要素2に充填された香味原料8がヒータ10側に零れ落ちないように支持する支持セグメントとして機能する。これにより、零れ落ちた香味原料8によってデバイスのヒータ10の根元周辺が汚れることが抑制される。
【0021】
図3は、燃焼加熱型の物品1の横断面図を示す。この物品1は、先端側から順に、香味要素2、及び充填要素6から構成され、香味要素2を着火して加熱することにより香味原料8の香味成分が揮発する。
図4は、変形例に係る燃焼加熱型の物品1の横断面図を示す。この物品1は、先端側から順に、香味要素2、フィルタ要素26、及び充填要素6から構成されている。フィルタ要素26は、充填要素6の充填材料16とは異なるフィルタ材料28、例えばアセテートトウに巻紙30を巻き付けて形成される。フィルタ要素26は、充填要素6と巻紙32により接続されている。
【0022】
図5は、別の変形例に係る燃焼加熱型の物品1の横断面図を示す。この物品1は、先端側から順に、香味要素2、充填要素6、及びフィルタ要素26から構成され、
図4の物品1のフィルタ要素26と充填要素6との配置を変えたパターンであり、その他の構成は
図4の物品1と同様である。
【0023】
<充填要素>
図6は、充填要素6の端面を示す。充填要素6の充填材料16は1枚のシート34であり、シート34の主原料は、水溶性バインダーで植物パルプ同士を接着した乾式の不織布である。植物パルプは、非たばこ植物である木材パルプを用いることができる。また、シート34は、不織布に、たばこ植物の粉砕物や、たばこ植物の抽出物を含ませて形成しても良い。
【0024】
この場合、香味要素2のみならず、充填要素6からも、たばこ植物由来の香味成分を揮散させることができる。すなわち、たばこ粉砕物や、たばこ抽出物を含ませた不織布からなるシート34を用いた充填要素6は、濾過体となるフィルタ要素の機能のみならず、香味要素2の機能をも有する。
【0025】
このシート34を幅方向Zに所定回数、例えば3回又は4回程度折り込んで縮径することにより、後述する折り込みロッド90が形成され、さらに切断を経て折り込み部36が形成される。幅方向Zは、シート34の長手方向X(軸線方向Xと同一方向)と交差する方向である。
【0026】
折り込み部36の周面を巻紙18で包み込み、巻紙18の両端を糊付してラッピングすることにより充填要素6が形成される。1枚のシート34を折り込んで折り込み部36ひいては充填要素6を形成することにより、充填要素6の充填密度を調整するために、従来のように、シート34を複数枚用意して、各シート34の枚数を変更したり、重ねた各シート34のずらし幅を調整したり、或いは、シート34自体の仕様を変更したりする必要はない。
【0027】
従って、従来の場合に比して、充填要素6の充填密度を容易に且つ高精度に制御することができる。さらに、折り込み部36は、シート34に以降に説明する処理を施すことにより、充填材料16としてのシート34の充填密度がさらなる最適化が可能であり、充填要素6における隙間や空洞の発生をさらに効果的に防止可能である。
【0028】
図7は、処理前のシート34の斜視図を示す。シート34は、織り込まずに絡み合わせた不織布から形成されるため、長手方向Xにおいてほぼ不可逆的な延伸性を有するとともに、表裏面に起毛部38を有する。シート34は、起毛部38を含む厚みtを有する。
【0029】
<シートの延伸処理>
図8は、延伸処理を施したシート34の斜視図を示す。シート34は、延伸処理が施されて長手方向Xに長くなるとともに、シート34の厚みtは、より小さいt1に減少する。また、シート34が長手方向Xに長くなり、シート34の表面積が大きくなることにより、シート34の表裏面における起毛部38の密度(起毛密度)が低下する。シート34の延伸度合を調整することにより、シート34の全体における厚み及び起毛密度を制御することができる。従って、1種類且つ1枚のシート34を用いて、複数種類の充填密度を有する折り込み部36、ひいては充填要素6を形成可能である。
【0030】
<シートの押圧処理>
図9は、押圧処理を施したシート34の斜視図を示す。
図10は、
図9のシート34の端面の一部拡大図を示す。シート34は、幅方向Zにおける少なくとも一部を押圧する押圧処理が施される。押圧形態の一例である
図6に示すシート34は、
図7に示すように、幅方向Zにおいて幅D1を有する多数の押圧領域A1と、幅方向Zにおいて幅D2を有する多数の非押圧領域A2とが長手方向Xに亘って形成されている。
【0031】
非押圧領域A2は、シート34における押圧領域A1以外の領域であり、不完全に押圧された傾斜面と、全く押圧されていない平坦面とを含む。幅方向Zにおいてシート34が押圧される押圧領域S1の幅D1の合計をシート34の総押圧幅Dt1と規定したとき、幅方向Zにおけるシート34の幅、すなわちシート幅Dsに対する総押圧幅Dt1の割合は所定割合となる。この所定割合は50%以下に設定される。
【0032】
シート34の押圧領域A1は、押圧によって厚みt1がより小さいt2に減少する。また、起毛部38が押し潰されることにより、押圧領域A1のシート34の表裏面における起毛密度が極端に低下する。一方、シートの非押圧領域A2は、延伸処理を施した後の厚みt1及び起毛密度をほぼ維持する。
【0033】
シート34の押圧領域A1の形成範囲を調整し、シート幅Dsに対する総押圧幅Dt1の割合を所定割合とすることにより、すなわち、シート34の押圧度合を調整することにより、シート34の全体における厚み及び起毛密度を制御することができる。従って、1種類且つ1枚のシート34を用いて、複数種類の充填密度を有する折り込み部36、ひいては充填要素6を容易に形成可能である。
【0034】
図11は、折り込み部36の斜視図を示す。
図12は、
図11の状態から縮径されて形成された充填要素6の斜視図を示す。折り込み部36は、シート34を折り込んだ結果、折り込み部36の周方向の一部に、軸線方向Xに亘って間口40が形成される。間口40が形成された折り込み部36を縮径した後に巻紙18でラッピングすることにより、間口40は塞がれ、
図12に示す充填要素6が形成される。
【0035】
このように、1枚のシート34を折り込んで折り込み部36を形成することにより、従来のように、充填要素6の充填密度を調整するために、シート34を複数枚用意して、各シート34の枚数を変更したり、重ねた各シート34のずらし幅を調整したり、或いは、シート34自体の仕様を変更したりする必要はない。
【0036】
従って、充填要素6の充填密度を容易に且つ高精度に制御することができる。また、1枚のシート34の折り込み回数、折り込み形態、或いは、折り込み部36の縮径度合を調整することにより、充填要素6の充填密度を最適化することが可能である。従って、充填要素6における隙間や空洞の発生を防止することができるため、物品1の品質を確保することができる。
【0037】
また、シート34の延伸処理及び押圧処理を行う場合、充填要素6の充填密度を管理するためのパラメータは、1枚のシート34に対する延伸度合及び押圧度合の設定のみとなる。このため、充填要素6の充填密度をより一層容易に且つ高精度に制御することができる。また、シート34の延伸処理及び押圧処理によって、充填要素6の充填密度をさらに最適化することにより、充填要素6における隙間や空洞の発生をさらに効果的に防止することができ、物品1の品質確保の確実性が向上する。
【0038】
特に、シート34に押圧処理を施す際には、シート幅Dsに対する総押圧幅Dt1の所定割合を50%以下とする。これにより、シート34にシート幅Dsの50%超の起毛部38を残すことができるため、シート34の起毛密度の極端な低下が抑制され、充填要素6における隙間や空洞の発生をより一層確実に防止可能である。
【0039】
<折り込み部への添加物配置>
図13は、添加物42が配置された折り込み部36の斜視図を示す。折り込み部36は、その周方向の一部に、折り込み部36の軸線方向Xに亘って開口する間口40を有し、間口40を介して折り込み部36の内部に添加物42が配置される。これにより、充填要素6の充填密度を最適化しつつ、充填要素6の適正位置に添加物42を配置することができる。
【0040】
さらに、折り込み部36には、間口40に連なるとともに折り込み部36の径方向Yの中央に至るまで凹んだ断面U字形状の凹条44が形成される。添加物42は、間口40を介して凹条44の軸線方向Xに亘って配置される。これにより、折り込み部36の径方向Yの中央に添加物42を確実に配置することができる。
【0041】
図14は、
図13の状態から縮径されて形成された充填要素6の斜視図を示す。折り込み部36が縮径されて巻紙18でラッピングされると、間口40は塞がれる。従って、添加物42が折り込み部36からはみ出ることはなく、折り込み部36の内部に添加物42を配置した充填要素6を容易に且つ確実に形成可能である。また、折り込み部36が縮径されると、添加物42を配置した凹条44はシート34で埋められる。
【0042】
これにより、添加物42は折り込み部36の径方向Yの中央に確実に位置付けられる。また、添加物42の成分を充填要素6の径方向Yの中央から径方向Yに均一に揮散させることができる。従って、充填要素6、ひいては物品1の品質確保の確実性が向上する。添加物42は、凹条44に収着される液体からなる添加剤であっても良いし、凹条44に配置されるスレッドであっても良い。スレッドを配置する場合、スレッドには、液体からなる添加剤が含浸される。
【0043】
また、添加物42は、スレッド状、或いは、細長い平板形状の導電性部材であっても良い。たばこ粉砕物や、たばこ抽出物を含ませた不織布からなるシート34を用いた充填要素6は、香味要素2の機能を有する。導電性部材は、デバイスが磁場を発生することにより誘導電流によって加熱され、加熱された導電性部材が充填要素6を加熱することにより、充填要素6に含まれるたばこ植物由来の香味成分が揮散する。
【0044】
<折り込み部へのカプセル配置>
図15は、カプセル46が配置された折り込み部36の斜視図を示す。カプセル46は、外殻が易破壊性の材料から形成され、外殻により添加剤が包摂される。折り込み部36に間口40が形成されることにより、折り込み部36の内部に間口40を介してカプセル46を所定位置に配置することができる。カプセル46は、例えば、折り込み部36の軸線方向Xにおける中央位置に配置される。
【0045】
図16は、
図15の状態から縮径されて形成された充填要素6の斜視図を示す。折り込み部36が縮径されて巻紙18でラッピングされると、間口40は塞がれる。従って、カプセル46が折り込み部36からはみ出ることはなく、折り込み部36の内部にカプセル46を配置した充填要素6を容易に且つ確実に形成可能である。また、折り込み部36が縮径されると、凹条44はシート34で埋められ、カプセル46の周囲にシート34が密着する。
【0046】
これにより、カプセル46は、折り込み部36の径方向Yの中央であって、軸線方向Xの所定位置に確実に固定される。また、カプセル46から放出される添加剤の成分を充填要素6の径方向Yの中央から径方向Yに均一に揮散させることができる。従って、充填要素6、ひいては物品1の品質を確保することができる。
【0047】
また、カプセル46が折り込み部36の径方向Yの中央においてシート34に密着して固定されることにより、ユーザがカプセル46を指で潰して添加剤を放出させる際の作業を行い易くなるため、ユーザの利便性が向上する。なお、前述した、凹条44に収着される添加物42を構成する添加剤、スレッドに含浸される添加剤、及びカプセル46に包摂される添加剤は、例えばメントールなどの香味剤であり、さらに活性炭やエアロゾル増量剤などを含んでいても良い。
【0048】
なお、カプセル46の代わりに、略球状の導電性部材を用いても良い。この導電性部材は、充填要素6に1つ又は複数個配置される。たばこ粉砕物や、たばこ抽出物を含ませた不織布からなるシート34を用いた充填要素6は、香味要素2の機能を有する。導電性部材は、デバイスが磁場を発生することにより誘導電流によって加熱され、加熱された導電性部材が充填要素6を加熱することにより、充填要素6に含まれるたばこ植物由来の香味成分が揮散する。
【0049】
<充填要素の製造装置及び製造方法>
図17は、充填要素6の製造装置50の概略図を示し、
図18は、充填要素6の製造方法を説明するフローチャートを示す。製造装置50は、シート供給セクション52、シート処理セクション54、折り込みセクション56、ラッピングセクション58、及び切断セクション60などを備えている。
【0050】
充填要素6の製造が開始されると、シート供給セクション52は、不織布からなる1枚の連続したシート34を搬送経路62に供給する(S1:シート供給ステップ)。次に、シート処理セクション54は、シート34を搬送経路62にて搬送しながら処理する(S2:シート処理ステップ)。
【0051】
シート処理セクション54は、第1ローラセット64、第2ローラセット66、及び第3ローラセット68と、制御ユニット70とを備えている。各ローラセット64、66、68は、それぞれ対をなすローラRa、Rbから構成されるとともに、各一対のローラRa、Rbにより搬送経路62においてシート34を挟んで搬送する。
【0052】
各ローラセット64、66、68を構成する一対のローラRa、Rbの少なくとも一方の回転軸は、それぞれ図示しないモータの駆動軸に連結され、各モータにより個別に回転駆動される。各モータは、制御ユニット70に電気的に接続されている。制御ユニット70からの信号により、各モータを介して各ローラセット64、66、68の回転速度が制御される。
【0053】
制御ユニット70は、各ローラセット64、66、68間の回転速度差を調整することにより、各ローラセット64、66、68間のシート34の搬送速度差を調整する。これにより、シート処理ステップにおいて、シート34に
図8に示した延伸処理が施される(P1:延伸プロセス)。
【0054】
具体的には、搬送経路62における上流側のローラセット(例えば第1ローラセット64)の回転速度よりも下流側のローラセット(第2ローラセット66又は第3ローラセット68)の回転速度を大きくする。これにより、上流側のローラセットにおけるシート34の搬送速度よりも下流側のローラセットにおけるシート34の搬送速度が大きくなり、上流側のローラセットと下流側のローラセットとの間でシート34が長手方向Xに延伸される。
【0055】
図19は、シート34を挟んだ第1ローラセット64の斜視図を示す。ローラRaには、ローラRaの外周面の全周に亘って突出した凸条72が多数形成されている。各凸条72によってシート34に押圧領域A1が形成される。ローラRaの外周面には、各凸条72の形成に伴い、溝条74が多数形成される。各溝条74によってシート34に非押圧領域A2が形成される。
【0056】
シート34の搬送過程において、各凸条72がシート34の表面に喰い込んでシート34を押圧する、換言するとシート34をグリップすることにより、シート34が第1ローラセット64から第2ローラセット66に向けて繰り出される。これにより、シート処理ステップにおいて、シート34に
図9に示した押圧処理が施される(P2:押圧プロセス)。
【0057】
図20は、
図19のローラRaの横断面を一部拡大して示す。凸条72の突端には、押圧面76が形成される。押圧面76は、ローラRaの幅方向Z(ローラRaの軸線方向と同一)において幅D3を有する。溝条74には底面78が形成される。溝条74は、幅方向Zにおいて幅D4を有する。押圧面76の幅D3は、
図10に示したシート34の押圧領域A1の幅D1と等しい。また、ローラRaの溝条74の幅D4は、
図10に示したシート34の押圧領域A2の幅D2と等しい。
【0058】
図21から
図23は、各ローラセット64、66、68を構成するローラRa、Rbの組み合わせ例を示す。
図21は、第1ローラセット64の横断面図を示す。この第1ローラセット64においては、
図19に示したように、多数の凸条72がローラRaの幅方向Zの全域に、且つローラRaの外周面の全周に亘って形成される。
図22は、第2ローラセット66の横断面図を示す。この第2ローラセット66においては、
図21の場合に比して大きな幅の凸条72がローラRaの幅方向Zの両端に、且つローラRaの外周面の全周に亘って形成される。
【0059】
図23は、第3ローラセット68の横断面図を示す。この第3ローラセット68においては、
図21の場合と同様の幅の凸条72がローラRaの幅方向Zにおける中央及び両端の3カ所に3個ずつ、且つローラRaの外周面の全周に亘って形成される。また、この第3ローラセット68においては、
図22の場合と同様の幅の凸条72がローラRbの幅方向Zにおける中央及び両端の3カ所に1個ずつ、且つローラRbの外周面の全周に亘って形成される。
【0060】
このように、各ローラセット64、66、68を構成する一対のローラRa、Rbの少なくとも一方のローラには、シート34をグリップして搬送を可能とするべく、ローラの外周面の全周に亘って突出した凸条72がそれぞれ形成される。各凸条72は、シート34の幅方向Zにおける少なくとも一部を押圧する押圧処理を施し、これにより前述した押圧プロセスが行われる。
【0061】
図24は、
図21から
図23の各ローラセット64、66、68を通過したシート34の端面を示す。幅方向Zにおいて凸条72によりシート34が押圧される押圧領域A1の幅D1の合計をシート34の総押圧幅Dt1と規定したとき、シート幅Dsに対する総押圧幅Dt1の割合は所定割合に調整される。この所定割合は前述したように50%以下である。ここで、
図24に示すように、シート34の裏面の幅方向Zにおける中央には、第3ローラセット68のローラRbの凸条72により押圧されて押圧領域A1が形成される。
【0062】
一方、シート34の表面の幅方向Zにおける中央には、第1ローラセット64のローラRa及び第3ローラセット68のローラRaの各凸条72により押圧領域A1が形成される。第3ローラセット68のローラRbの凸条72により形成される押圧領域A1の幅D1の方が、第1ローラセット64のローラRa及び第3ローラセット68のローラRaの各凸条72により形成される押圧領域A1の幅D1よりも大きい。
【0063】
この場合、
図24の場合、第3ローラセット68のローラRbの凸条72により形成される押圧領域A1の幅D1が総押圧幅Dt1に合算され、第1ローラセット64のローラRa及び第3ローラセット68のローラRaの各凸条72により形成される押圧領域A1の幅D1は総押圧幅Dt1に合算されない。すなわち、幅方向Zにおいて、各ローラセット64、66、68により形成される押圧領域A1が重複する場合、大きい側の押圧領域A1の幅D1を代表して総押圧幅Dt1に合算する。
【0064】
各ローラセット64、66、68に形成される凸条72の押圧面76の面積、凸条72の数、凸条72の形成範囲などを予め調整することにより、シート幅Dsに対する総押圧幅Dt1の割合を所望の所定割合とすることができる。詳しくは、各ローラセット64、66、68において、シート34の幅方向Zで重複する凸条72の形成範囲を考慮して、シート34の総押圧幅Dt1に寄与する凸条72の押圧面76の面積、凸条72の数、凸条72の形成範囲などを調整する。
【0065】
これにより、シート幅Dsに対する総押圧幅Dt1の割合を調整することができる。また、シート34に対する凸条72のグリップ力は、一対のローラRa、Rbの隙間、凸条72の突出高さ、凸条72の押圧面76の面積、凸条72の数などを変更することにより調整可能である。シート34に対する凸条72のグリップ力の最適化を図ることにより、延伸プロセスの精度が向上する。
【0066】
次に、折り込みセクション56は、搬送経路62におけるシート34の搬送過程にて、シート処理セクション54にて処理されたシート34を幅方向Zに折り込んで、充填要素6の直径以下に縮径させた折り込みロッド90を形成する(S3:折り込みステップ)。折り込みロッド90は、後のステップにおいて形成される充填ロッド98が切断されて充填要素6となったとき、折り込み部36となる。
【0067】
また、折り込みセクション56は、シート34の折り込み過程にて、折り込みロッド90の周方向の一部に、折り込みロッド90の軸線方向Xに亘って開口する間口40を形成する。さらに、折り込みセクション56は、間口40に連なるとともに折り込みロッド90の径方向Yの中央に至るまで凹んだ断面U字形状の凹条44を形成する。具体的には、折り込みセクション56は、搬送経路62の上流側から順に、予備折り込みガイド80、トランスポートジェット82、トランペットガイド84、及びトング86などを備えている。
【0068】
図25は、予備折り込みガイド80の正面図を示す。予備折り込みガイド80は、ガイドローラ80aと、ガイドローラ80aを回転自在に支持する回転軸80bとを備える。搬送経路62におけるシート34の搬送過程にて、シート34の幅方向Zの中央にガイドローラ80aが下側から接触する。これにより、シート34がその厚み方向にて上側凸状に湾曲される。
【0069】
図26は、トランスポートジェット82の横断面図を示し、
図27は、トランスポートジェット82の搬送経路62における上流側の端面を示す。トランスポートジェット82は、筒状をなし、搬送経路62の上流側の大径部82aと、大径部82aに連なる小径部82bとを有する。トランスポートジェット82の内周面82cは、大径部82aから小径部82bにかけて段差状に縮径される。
【0070】
トランスポートジェット82の内部には、内周面82cから径方向中央に向けて邪魔板88が立設されている。トランスポートジェット82は、予備折り込みガイド80を通過した湾曲したシート34を風圧を伴う空気により引き込みつつ、邪魔板88を挟んで幅方向Zに所定回数折り込み、さらに大径部82aから小径部82bに搬送される際に縮径する。これにより、折り込みロッド90が形成される。
【0071】
図28は、トランペットガイド84の横断面図を示し、
図29は、トランペットガイド84の搬送経路62における上流側の端面を示す。トランペットガイド84は、筒状をなし、搬送経路62の上流側から徐々に縮径された内周面84aを有する。また、トランペットガイド84の内部には、内周面84aから径方向中央に向けて邪魔板92が立設されている。各邪魔板88、92は、トランスポートジェット82、トランペットガイド84の各内部において、これらの軸線方向に亘って延設される。
【0072】
トランペットガイド84は、トランスポートジェット82を通過した折り込みロッド90が風圧を伴う空気とともに放出され、この放出に伴う空気の散逸によって折り込みロッド90の繊維を解いて開繊する。また、トランスポートジェット82で形成された折り込みロッド90は、邪魔板92を挟みつつトランペットガイド84を通過する。これにより、トランスポートジェット82で形成された折り込みロッド90の折り込み状態がトランペットガイド84においても維持される。
【0073】
このように、トランスポートジェット82及びトランペットガイド84には、これらの内周面82c、84aから径方向中央に向けて邪魔板88、92がそれぞれ立設されている。予備折り込みガイド80を通過する湾曲したシート34は、風圧を伴う空気を受けて各邪魔板88、92を挟んで折り込まれて、折り込みロッド90に形成される。シート34が各邪魔板88、92を挟んで折り込まれる際、折り込みロッド90の周方向の一部に、前述した間口40及び凹条44が形成される。
【0074】
図30は、トング86の横断面図を示す。トング86は、筒状をなし、充填要素6の直径以下となる内周面86aを有する。トランペットガイド84を通過した折り込みロッド90は、トング86において充填要素6の直径以下に縮径され、間口40が塞がれるとともに、凹条44がシート34で埋められる。
【0075】
図17に示すように、折り込みセクション56は、添加物供給ユニット94を備えている。添加物供給ユニット94は、添加物42を供給するためのノズル94aを有する。ノズル94aは、トランスポートジェット82及びトランペットガイド84の双方の内部に挿入される。添加物供給ユニット94は、少なくともトング86に折り込みロッド90が搬送される前に、ノズル94aから、間口40を介して折り込みロッド90の内部に添加物42を供給する(P3:添加物供給プロセス)。詳しくは、添加物供給ユニット94は、間口40を介して凹条44の軸線方向Xに亘って添加物42を供給する。
【0076】
また、折り込みセクション56は、カプセル供給ユニット96を備えている。カプセル供給ユニット96は、円柱形状の回転ホルダ96aを備え、回転ホルダ96aにはカプセル46が保持される。カプセル供給ユニット96は、少なくともトング86に折り込みロッド90が搬送される前に、回転ホルダ96aを回転させつつ、回転ホルダ96aに保持したカプセル46を間口40を介して折り込みロッド90の内部に間欠的に投下して供給する(P4:カプセル供給プロセス)。詳しくは、カプセル供給ユニット96は、間口40を介して凹条44の軸線方向Xにおける所定位置に、例えば折り込み部36となったときの軸線方向Xにおける中央位置に、カプセル46を供給する。
【0077】
次に、
図17に示すように、ラッピングセクション58は、巻紙18を供給し、折り込みセクション56にて形成された折り込みロッド90を巻紙18でラッピングして充填ロッド98を形成する(S4:ラッピングステップ)。次に、切断セクション60は、ラッピングセクション58にて形成された充填ロッド98を充填要素6に切断し(S5:切断ステップ)、充填要素6の製造が終了する。
【0078】
以上のように、実施形態の充填要素6は、折り込み部36と、折り込み部36にラッピングされる巻紙18とを備える。折り込み部36は、不織布からなる1枚のシート34を幅方向Zに折り込んで、充填要素6の直径以下に縮径させて形成され、折り込み部36を構成するシート34は、幅方向Zにおける少なくとも一部を押圧する押圧処理が施されてなり、幅方向Zにおけるシート幅Dsに対する総押圧幅Dt1の割合は所定割合となる。
【0079】
シート34の押圧度合を調整することにより、1種類且つ1枚のシート34を用いて、複数種類の充填密度を有する折り込み部36、ひいては充填要素6を形成することができる。また、シート34に押圧処理のみを施す場合、充填要素6の充填密度を管理するためのパラメータは、1枚のシート34に対する押圧度合の設定のみとなる。従って、充填要素6の充填密度を容易に且つ高精度に制御することができる。また、充填要素6の充填密度を最適化することにより、充填要素6における隙間や空洞の発生を防止することができるため、物品1の品質を確保することができる。
【0080】
また、シート幅Dsに対する総押圧幅Dt1の所定割合を50%以下とすることにより、シート34にシート幅Dsの50%超の起毛部38を残すことができる。従って、シート34の起毛密度の極端な低下が抑制され、充填要素6における隙間や空洞の発生をより一層確実に防止可能である。
【0081】
実施形態の製造装置50に備えられたシート処理セクション54は、各ローラセット64、66、68を備え、各ローラセット64、66、68を構成する一対のローラRa、Rbの少なくとも一方のローラには、ローラの外周面の全周に亘って突出した凸条72がそれぞれ形成される。凸条72は、シート34の幅方向Zにおける少なくとも一部を押圧する押圧処理を施し、幅方向Zにおけるシート幅Dsに対する総押圧幅Dt1の割合は所定割合に調整される。
【0082】
この押圧処理は、シート処理ステップにおいて、シート34の搬送過程における押圧プロセスとして行われる。これにより、シート34の搬送過程において、シート34の押圧度合を容易に調整することができる。従って、充填要素6の充填密度を容易に且つ高精度に制御することができる。また、前述したように、シート幅Dsに対する総押圧幅Dt1の所定割合を50%以下とすることにより、シート34の起毛密度の極端な低下が抑制されるため、充填要素6における隙間や空洞の発生をより一層確実に防止可能である。
【0083】
また、実施形態の製造装置50に備えられた折り込みセクション56は、予備折り込みガイド80、トランスポートジェット82、トランペットガイド84、及びトング86を備える。シート34の搬送過程にて、シート34が折り込みセクション56のこれらの部位を通過することにより、所望の折り込みロッド90、ひいては所望の充填要素6を確実に形成することができる。
【0084】
より具体的には、トランスポートジェット82及びトランペットガイド84は、これらの内周面82c、84aから径方向中央に向けてそれぞれ邪魔板88、92が立設される。トランスポートジェット82及びトランペットガイド84を通過する湾曲したシート34は、風圧を伴う空気により各邪魔板88、92を挟んで折り込まれて、折り込みロッド90に形成される。
【0085】
すなわち、各邪魔板88、92は、シート34の折り込みの際に、シート34の折り込みを開始するとともに、シート34の折り込み状態を維持する部位として機能する。従って、各邪魔板88、92を設けたことにより、所望の折り込みロッド90、ひいては所望の充填要素6をより一層確実に形成することができる。
【0086】
以上で実施形態についての説明を終えるが、上記実施形態は、限定的ではなく、趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。例えば、凸条72の数、形状、形成範囲は、説明した形態に限定されず、種々の変更が可能である。凸条72をローラRa、Rbの双方に形成しても良いし、ローラRa又はローラRbのみに形成しても良い。
【0087】
また、シート処理セクション54に設けるローラセットの数は、延伸プロセスを実行するために、少なくとも複数であれば良く、前述した各ローラセット64、66、68の3セットに限らない。また、シート幅Dsに対する総押圧幅Dt1の割合は好ましくは50%以下であるが、シート34の仕様や充填要素6の要求仕様に応じて50%を超える場合もあり得る。
【0088】
また、必ずしもシート34に延伸処理及び押圧処理の双方を施す必要はなく、シート34の仕様や充填要素6の要求仕様に応じて、シート34に延伸処理及び押圧処理の一方のみを施しても良い。また、シート34の仕様や充填要素6の要求仕様に応じては、延伸処理及び押圧処理の双方を施さない場合もあり得る。
【0089】
また、必ずしも折り込み部36の内部に添加物42及びカプセル46の双方を配置する必要はなく、充填要素6の仕様に応じて、添加物42及びカプセル46の一方のみを配置しても良い。また、
図6及び
図12に示したように、充填要素6の仕様によっては、折り込み部36の内部に何も配置しない場合もあり得る。
【0090】
また、折り込みセクション56は、折り込みロッド90を形成可能であれば、前述した構成に限定されない。また、添加物供給ユニット94は、添加物供給プロセスを行えるのであれば、前述した構成に限定されない。また、カプセル供給ユニット96は、カプセル供給プロセスを行えるのであれば、前述した構成に限定されない。また、物品1の構成、及び物品1における充填要素6の位置及び数は、説明した形態に限定されない。
【符号の説明】
【0091】
1 香味吸引物品
6 充填要素
18 巻紙
34 シート
36 折り込み部
50 製造装置
54 シート処理セクション
56 折り込みセクション
58 ラッピングセクション
60 切断セクション
62 搬送経路
64、66、68 ローラセット
70 制御ユニット
80 予備折り込みガイド
82 トランスポートジェット
84 トランペットガイド
86 トング
88、92 邪魔板
90 折り込みロッド
98 充填ロッド
Ra、Rb ローラ
X 長手方向
Z 幅方向