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  • 特許-画像表示セルの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-27
(45)【発行日】2025-04-04
(54)【発明の名称】画像表示セルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20250328BHJP
   H10K 50/842 20230101ALI20250328BHJP
   H10K 71/00 20230101ALI20250328BHJP
   H10K 71/50 20230101ALI20250328BHJP
【FI】
G09F9/00 342
H10K50/842 426
H10K71/00
H10K71/50
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022051628
(22)【出願日】2022-03-28
(65)【公開番号】P2023144578
(43)【公開日】2023-10-11
【審査請求日】2024-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英治
【審査官】石本 努
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-268310(JP,A)
【文献】特開2004-258572(JP,A)
【文献】特開2006-106036(JP,A)
【文献】特開2012-064365(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1571598(CN,A)
【文献】特開2010-135213(JP,A)
【文献】米国特許第5499127(US,A)
【文献】特開平10-177179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F1/133-1/1334
1/1339-1/1341
1/1347
G09F9/00
H05B33/00-33/28
44/00
45/60
H10K50/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素基板と対向基板とを有する画像表示セルの製造方法であって、
隙間が形成された枠状のシール材を介して前記画素基板と前記対向基板を貼り合わせる第一工程と、
前記画素基板と前記対向基板のうち少なくとも一方を他方に向かって外部から加圧することにより、前記画素基板と前記対向基板との間で前記シール材を押し潰し、押し潰された前記シール材で前記隙間を塞ぐ第二工程と、
前記加圧を解除することにより、前記画素基板と前記対向基板と前記シール材とで囲まれた空間の内圧を低下させ、前記画素基板と前記対向基板のうち少なくとも一方を他方に向かって近づくように変形させる第三工程と、
前記シール材を硬化させることにより、前記空間の内圧を上昇させ、前記画素基板と前記対向基板をフラットな状態にする第四工程と、
を有する、ことを特徴とする画像表示セルの製造方法。
【請求項2】
前記第四工程において、前記空間の内圧を上昇させることにより、前記空間の内圧と外圧との圧力差を無くす、ことを特徴とする請求項1に記載の画像表示セルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示セルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL素子、液晶素子、DLP(DMD)素子等、多種多用な画像表示セルが市場に投入されている。
【0003】
多くの画像表示セルでは、ガラスもしくはシリコン基板上に画素パターンが形成され、有機EL素子では、画素パターンを構成する発光素子自身の発光により、液晶素子やDLP素子では、画素パターンで外光を制御することにより、映像を表示する。
【0004】
しかしながら、基板上に形成された画素パターンは、外部応力による破壊や、例えば湿度などの環境による劣化の影響を受けやすいため、通常は、ガラス基板等(以下、対向基板)を画素パターンが形成された基板(以下、画素基板)の上に配置し、画素パターンの保護、封止を行う。
【0005】
この時、対向基板が画素パターンに触れることにより画素パターンにキズ等が生じることを防ぐため、対向基板は、ある一定の間隔を空けて画素基板の上に配置する必要があることから、通常は、画素基板の画素パターン以外の部分に、間隔を制御するためのスペーサーを含む樹脂材料(以下、シール材)を設置し、このシール材により画素基板と対向基板を貼り合わせることが行われる。ただし、スペーサーは、必須ではなく、省略されることもある。
【0006】
また、湿度等の影響を防ぐため、画素基板の画素パターンは、封止されている必要があることから、通常は、シール材を画素パターンの周囲に枠状に配置し、シール材で囲まれた空間を密封することで、湿気が画素パターンの形成エリアに侵入することを防止することが行われる。(例えば、特許文献1、2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-25764号公報
【文献】特開2005-228493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような構造の画像表示セルを作成する場合には、画素基板上にシール材を設置し、対向基板を貼り合わせた際に、画素基板と対向基板とシール材とで囲まれた密封された空間(以下、セルGap)に空気などの気体が残存することがある。そして、この残存した気体は、セルGapを押し広げようとする作用をもたらし、画素基板や対向基板に変形(ゆがみ等)を生じさせることがある。
【0009】
このように画素基板や対向基板に変形が生じた状態では、画像表示セルに入射した光あるいは画像表示セルから出射された光の光路長が部分的に変化し、画像の表示品位が著しく損なわれることになる。
【0010】
本発明は、以上のような問題点に鑑みて成されたものであり、画像表示セルを構成する基板の変形を抑制することが可能な画像表示セルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
画素基板と対向基板とを有する画像表示セルの製造方法であって、隙間が形成された枠状のシール材を介して前記画素基板と前記対向基板を貼り合わせる第一工程と、前記画素基板と前記対向基板のうち少なくとも一方を他方に向かって外部から加圧することにより、前記画素基板と前記対向基板との間で前記シール材を押し潰し、押し潰された前記シール材で前記隙間を塞ぐ第二工程と、前記加圧を解除することにより、前記画素基板と前記対向基板と前記シール材とで囲まれた空間の内圧を低下させ、前記画素基板と前記対向基板のうち少なくとも一方を他方に向かって近づくように変形させる第三工程と、前記シール材を硬化させることにより、前記空間の内圧を上昇させ、前記画素基板と前記対向基板をフラットな状態にする第四工程と、を有する、画像表示セルの製造方法である。
【0012】
前記第四工程において、前記空間の内圧を上昇させることにより、前記空間の内圧と外圧との圧力差を無くす、画像表示セルの製造方法であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、画像表示セルを構成する基板の変形を抑制することが可能な画像表示セルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例に係る画像表示セルの画素基板にシール材を配置した状態を示す(a)上面図および(b)A-A断面図である。
図2】本発明の実施例に係る画像表示セルの画素基板に対向基板を貼り合わせる作業を行っている途中の状態を示す(a)上面図および(b)A-A断面図である。
図3】本発明の実施例に係る画像表示セルの画素基板に対向基板を貼り合わせる作業が終了した状態を示す(a)上面図および(b)A-A断面図である。
図4】本発明の実施例に係る画像表示セルの対向基板への加圧を解除した後の状態を示す(a)上面図および(b)A-A断面図である。
図5】本発明の実施例に係る画像表示セルのシール材を硬化させた後の状態を示す(a)上面図および(b)A-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の実施例に係る画像表示セルの画素基板にシール材を配置した状態を示す(a)上面図および(b)A-A断面図である。図2は、本発明の実施例に係る画像表示セルの画素基板に対向基板を貼り合わせる作業を行っている途中の状態を示す(a)上面図および(b)A-A断面図である。図3は、本発明の実施例に係る画像表示セルの画素基板に対向基板を貼り合わせる作業が終了した状態を示す(a)上面図および(b)A-A断面図である。図4は、本発明の実施例に係る画像表示セルの対向基板への加圧を解除した後の状態を示す(a)上面図および(b)A-A断面図である。図5は、本発明の実施例に係る画像表示セルのシール材を硬化させた後の状態を示す(a)上面図および(b)A-A断面図である。以下、これらの図面を用いて本発明の実施例について説明する。
【0016】
この実施例において、画像表示セルは、有機EL素子もしくはDLP素子である。この実施例において、画像表示セルは、以下のステップS1~S5を含む製造プロセスにより製造される。
【0017】
<S1>
図1に示すように、画素基板101に形成された画素パターン103の周囲にシール材102を枠状に配置する。シール材102を配置する方法は、ディスペンサーによる塗布やスクリーン印刷などが適宜選択される。この時、シール材102の一部には、シール材102で囲まれた空間から空気を抜くための隙間(開口部)107が設けられる。なお、画素基板101の表面には、画素パターン103と電気的に接続された電極端子104が予め形成されている。
【0018】
隙間107の幅Dは、後述のステップS3において対向基板105の貼り合わせが終了した時に隙間107がシール材102で完全に埋まるような距離に設定される。例えば、この距離は、対向基板105の貼り合わせを開始してから終了するまでの間にシール材102が潰れて伸びる距離を予め計算や実験により求めておき、その伸びる距離の2倍以下の距離に設定される。
【0019】
<S2>
次に、図2に示すように、空気で満たされた大気圧環境において、シール材102を介して画素基板101に対向基板105を貼り合わせ、画素基板101に向かって対向基板105を外部から一定の圧力で徐々に加圧する。この時、画素基板101は、例えば、図示しない加圧ステージの上に載置され、対向基板105は、例えば、図示しない加圧プレートにより加圧される。そして、対向基板105への加圧が進行するにつれて、シール材102が対向基板105により押し潰されて幅方向へ少しずつ伸びていき、それに応じて、セルGap108内の空気106が隙間107を通してセルGap108外へ少しずつ押し出されていき、それと同時に、隙間107が伸びたシール材102で少しずつ埋まっていく。なお、このプロセスの途中では、隙間107は、シール材102で完全には埋まらないため、セルGap108の内圧は、外圧と等しい状態に保たれる。
【0020】
<S3>
次に、図3に示すように、上述のステップS2のプロセスを継続し、隙間107がシール材102で完全に埋まった時点でこのプロセスを終了する。これにより、隙間107がシール材102で完全に塞がれ、セルGap108が封止された状態となる。なお、この時点において、シール材102に混入されているスペーサー(不図示)は、画素基板101と対向基板105との間に、変形しない程度に挟まれた状態、あるいは、僅かに変形する程度に挟まれた状態となっている。
【0021】
<S4>
次に、図4に示すように、対向基板105への加圧を解除する。これにより、シール材102が対向基板105による加圧から解放され、シール材102自身の弾性による復元力やシール材102に混入されているスペーサーの弾性による復元力によって、シール102がその幅方向の中心へ向かって僅かに引き戻されると共に、対向基板105が画素基板101から僅かに引き離され、セルGap108の体積が一時的に増加するが、この時点では隙間107がすでにシール材102で埋まっていることから、セルGap108の外部から内部には新たに空気は供給されず、結果的に、セルGap108の内圧が外圧よりも低くなり、セルGap108の内圧と外圧との間に圧力差が生じる。そして、この圧力差により、画素基板101と対向基板105がシール材102を支点として互いに近づく方向へ湾曲し、セルGap108がその厚み方向の中心に向かって凹状に湾曲した状態になる。なお、この実施例では、画素基板101と対向基板105の両方が湾曲した状態を示しているが、画素基板101と対向基板105のうち一方のみが他方に向かって湾曲した状態となる場合もある。
【0022】
<S5>
次に、図5に示すように、シール材102を硬化させる。シール材102を硬化させる方法は、シール材102の材質に応じて適宜選択されるが、例えば、シール材102が紫外線硬化型樹脂である場合には、シール材102に紫外線を照射することでシール材102を硬化させる。この時、シール材102は、シール材102を硬化させる際に発生する熱(例えば、紫外線照射により発生する熱)により膨張すると同時に硬化収縮を引き起こし、それらが複合的に作用することで総じてセルGap108の体積が減少する、あるいは、シール材102の成分の一部が気化し、シール材102からガスが放出されることから、結果的に、セルGap108の内圧が上昇し、セルGap108の内圧と外圧との圧力差が無くなり、湾曲していた画素基板101と対向基板105がフラット(平坦)な状態となり、セルGap108の厚みが均一となる。なお、セルGap108の内圧と外圧との圧力差は、完全に無くなるのが望ましいが、湾曲していた画素基板101と対向基板105がフラットな状態となる程度に減少するだけでもよい。
【0023】
以上のプロセスは、シール材102の材質(粘度や硬度)、幅、厚み、隙間107の幅、対向基板105を外部から加圧する際の圧力、セルGap108の幅、厚みなどの組み合わせを、実験、計算、シミュレーションなどに基づいて適宜選択することにより、実現することができる。
【0024】
上述の実施形態によれば、画像表示セルの製造プロセスにおいて、画素基板101と対向基板105の変形(ゆがみ等)を効果的に抑制することができる。
【0025】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を取り得る。例えば、シール材102の隙間107は、一箇所に限らず、数ヶ所に設けられていてもよい。また、シール材102は、画素基板101と対向基板105を貼り合わせる前に、画素基板101のみに配置されるのではなく、対向基板105のみ、あるいは、画素基板101と対向基板105の両方に配置されてもよい。また、画素基板101と対向基板105を貼り合わせる際には、画素基板101に向かって対向基板105を外部から加圧するのではなく、対向基板105に向かって画素基板101を外部から加圧する、あるいは、画素基板101と対向基板105のそれぞれを互いに向き合う方向へ外部から加圧してもよい。また、ステップS2~S5のプロセスを行う際の周囲の圧力環境は、大気圧環境に限らず、完成した画像表示セルが実際に使用されるその他の圧力環境(大気圧よりも高い又は低い圧力環境)であってもよい。また、セルGap108に導入される気体は、空気に限らず、窒素などのその他の気体であってもよい。また、シール材102に混入されるスペーサーは、必須ではなく、省略されてもよい。また、画像表示セルは、有機EL素子やDLP素子に限らず、その他の画像表示セルであってもよい。
【符号の説明】
【0026】
101 画素基板
102 シール材
103 画素パターン
104 電極端子
105 対向基板
106 空気
107 隙間(開口部)
108 セルGap
図1
図2
図3
図4
図5